説明

成膜方法および成膜装置

【課題】成膜方法および成膜装置において、ターゲットの使用効率を向上することができ、組成や膜厚の調整が容易であり、異なる膜構成を有する薄膜の成膜の効率を向上できるようにする。
【解決手段】スパッタ装置1を用いて、複数の膜構成に応じた材料のターゲット片を、第1電源11、第2電源12の陰極に接続されたバッキングプレート7上に設置するとともにターゲット片のいずれかの近傍に配置され第1電源11、第2電源12の陽極に接続可能に設けられた電極E〜Eを設置し、被処理体Wをターゲット片を横断する移動経路に沿って時間差を設けて2個以上移動させ、膜構成と移動位置との情報に基づいて、電極E〜Eの少なくともいずれかに選択的に電力を供給し、ターゲット片から選択的にターゲット粒子を放出させて、被処理体Wの各表面にそれぞれに応じた膜構成の成膜を行う成膜方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜方法および成膜装置に関する。例えば、ターゲット表面からターゲット粒子を放出させ、このターゲット粒子を被処理体の表面に付着させて薄膜を形成する成膜方法および成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜を成膜する方法として、例えば、スパッタリング(スパッタ)法、アークイオンプレーティング法、アークプラズマデポジッション法等の成膜方法(以下、スパッタ法等と称する)が広い分野で利用されている。これらの成膜方法によって薄膜を形成する場合、単物質材料からなるターゲットや、混合材料を固体化させたターゲットを用いる。そして、このターゲットに電子を衝突させる、あるいは、このターゲットを溶解して蒸発させることによって、ターゲットの構成材料を被処理体に堆積させて薄膜を形成する。
また、複数の元素を含む混合薄膜(多元系の薄膜)により表面処理されたものは、耐熱性、耐摩耗性、導電性等が向上することから、摺動機械部品や半導体LSI、光磁気ディスク等の幅広い分野で用いられている。
このようなスパッタ法等では、ターゲットとして、形成する薄膜の組成比に応じた1枚の合金ターゲットや組成に応じた異なる材料からなる複数のターゲットが用いられている。これらのターゲットは、被処理体の表面積に比べてターゲット粒子の放出範囲が大きくなるように設けられ、成膜範囲は略円状とするのが一般的である。このため、被処理体が小さい場合には、複数の被処理体をヤトイ等の治具に詰めてバッチ方式で成膜を行われることが多い。
例えば、特許文献1には、処理容器内に断面が内側に向けて傾斜されて環状に形成され、可変直流電源が接続されたCuMnターゲットが設けられ、処理容器内にプラズマを発生させて、被処理体である半導体ウエハに対してCuMnターゲットのスパッタリングを行い、CuMnターゲットに印加するバイアス電圧、処理容器内の圧力、印加電力等を変えて第1および第2の成膜工程を行うことにより、組成比の異なる合金膜を成膜するスパッタ成膜方法およびスパッタ成膜装置が記載されている。
特許文献1に記載の装置では、CuMnターゲットからスパッタされたターゲット粒子が円環状に拡がって半導体ウエハよりも面積の大きな円状に成膜範囲が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4324617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来の成膜方法および成膜装置には、以下のような問題があった。
特許文献1に記載の技術をはじめとする従来の技術では、装置内の一定位置に配置された被処理体に確実に成膜を行うため、成膜範囲が被処理体の表面積よりも広く設定されている。このため、被処理体に成膜されないターゲット粒子が大量に発生し、ターゲットの使用効率が悪いという問題がある。
ターゲットの使用効率を向上するために、複数の被処理体をヤトイ等の治具に詰めてバッチ方式で成膜を行うことも考えられるが、治具に詰め込んだり取り出したりする作業に時間がかかり、成形が終了した被処理体バッチを次の被処理体バッチに入れ替える際に成膜装置を真空排気し直すなどの時間が必要となり、生産性が悪いという問題がある。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、ターゲットの使用効率を向上することができ、組成や膜厚の調整が容易であり、異なる膜構成を有する薄膜の成膜の効率を向上することができる成膜方法および成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の成膜方法は、真空容器の内部で、ターゲット表面からターゲット粒子を放出させ、該ターゲット粒子を被処理体の表面に付着させて薄膜を形成する成膜方法であって、前記ターゲットを、予め定められた複数の膜構成に応じて2種類以上の材料からなる複数のターゲット片から構成し、該複数のターゲット片を独立に出力設定可能な複数の電源の陰極に電気的に接続された共用部電極上に設置するとともに、前記複数のターゲット片のいずれかの近傍に配置され前記電源の陽極にそれぞれ電気的に接続可能に設けられた複数の電極を設置し、前記被処理体を、前記複数のターゲット片を横断する移動経路に沿って時間差を設けて2個以上移動させ、前記被処理体のそれぞれに形成する前記膜構成の情報と、前記被処理体のそれぞれの移動位置の情報とに基づいて、前記複数の電極の少なくともいずれかに選択的に電力を供給し、前記複数のターゲット片のうちいずれかから、選択的にターゲット粒子を放出させて前記被処理体のそれぞれの表面に前記被処理体のそれぞれに応じた前記膜構成の成膜を行う方法とする。
【0007】
また、本発明の成膜方法では、前記移動経路に沿って時間差を設けて移動される前記2個以上の被処理体を、前記移動経路上に同時に移動させ、前記移動経路上の2箇所以上で並行して成膜を行うことが好ましい。
【0008】
また、本発明の成膜方法では、前記2個以上の被処理体のうちの少なくともいずれかの被処理体に対して、前記2個以上の被処理体のうちの他の被処理体と異なる膜構成の成膜を行うことが好ましい。
【0009】
また、本発明の成膜方法では、前記被処理体が、種類の異なるターゲット片を横断する際に、前記被処理体の移動速度および前記電源の前記出力電力の大きさの少なくともいずれかを変化させることによって、薄膜の組成が連続的に変化する傾斜層を形成することが好ましい。
【0010】
本発明の成膜装置は、真空容器を有し、該真空容器の内部で、ターゲット表面からターゲット粒子を放出させ、該ターゲット粒子を被処理体の表面に付着させて薄膜を形成する成膜装置であって、出力電力の大きさを独立に設定可能な複数の電源と、予め定められた複数の膜構成に応じて2種類以上の材料からなり、前記ターゲットを構成する複数のターゲット片と、前記複数の電極の陰極に電気的に接続され、前記複数のターゲット片を保持する共用部電極と、前記複数のターゲット片の近傍に設置され、前記複数の電源の陽極に個別の配線を介して電気的に接続された複数の電極と、前記被処理体を、前記複数のターゲット片を横断する移動経路上に時間差を設けて2個以上移動させる被処理体移動部と、該被処理体移動部から通知される前記被処理体のそれぞれの移動位置の情報と、前記被処理体のそれぞれに形成する前記膜構成の情報とに基づいて、前記複数の電極の少なくともいずれかに選択的に電力を供給して、前記複数のターゲット片のうち少なくともいずれかから、前記被処理体のそれぞれに向けてそれぞれに対応するターゲット粒子を選択的に放出させる成膜制御部と、を備える構成とする。
【0011】
また、本発明の成膜装置では、前記複数の電源は、0%〜100%の範囲で出力電力を独立に調整可能であり、前記成膜制御部は、前記出力電力の大きさを制御できるようにしたことが好ましい。
【0012】
また、本発明の成膜装置では、前記複数のターゲット片は、それぞれ平面視矩形状に形成され、それぞれの長辺が隣接するようにして、前記共用部電極上に設置され、前記複数の電極は、前記ターゲット片を短辺側から挟んで対向する位置に配置されたことが好ましい。
【0013】
また、本発明の成膜装置では、前記真空容器に隣接して、前記真空容器と同一雰囲気を形成した状態で、前記被処理体を前記真空容器に投入する投入室と、前記真空容器と同一雰囲気を形成した状態で、成膜が終了した前記被処理体を前記真空容器から排出する排出室と、が設けられたことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の成膜方法および成膜装置によれば、被処理体を複数のターゲット片を横断する移動経路上に時間差を設けて2個以上移動させ、被処理体のそれぞれに形成する膜構成の情報と、被処理体のそれぞれの移動位置に基づいて、複数のターゲット片のうち少なくともいずれかから選択的にターゲット粒子を放出させ、被処理体のそれぞれの表面に被処理体のそれぞれに応じた膜構成の成膜を行うため、ターゲットの使用効率を向上することができ、組成や膜厚の調整が容易であり、異なる膜構成を有する薄膜の成膜の効率を向上することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る成膜装置の概略構成を示す模式的な正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る成膜装置の概略構成を示す模式的な平面図である。
【図3】図2におけるA−A断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る成膜装置の成膜制御部の機能構成を示す機能ブロック図である。
【図5】本発明の実施形態に係る成膜装置で成膜された薄膜の膜構成の一例を示す模式的な断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る成膜装置の動作を説明する動作説明図、およびそのB−B断面図である。
【図7】本発明の実施形態の第1変形例に係る成膜装置の主要部の構成を示す模式的な断面図である。
【図8】本発明の実施形態の第1変形例に係る成膜装置で成膜された薄膜の膜構成の一例を示す模式的な断面図である。
【図9】本発明の実施形態の第2変形例に係る成膜装置の主要部の構成を示す模式的な断面図である。
【図10】本発明の実施形態の第3変形例に係る成膜装置の概略構成を示す模式的な正面図および平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
まず、本発明の実施形態に係る成膜装置について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る成膜装置の概略構成を示す模式的な正面図である。図2は、本発明の実施形態に係る成膜装置の概略構成を示す模式的な平面図である。図3は、図2におけるA−A断面図である。図4は、本発明の実施形態に係る成膜装置の成膜制御部の機能構成を示す機能ブロック図である。図5は、本発明の実施形態に係る成膜装置で成膜された薄膜の膜構成の一例を示す模式的な断面図である。
なお、各図は模式図のため、寸法関係や形状は誇張されている(以下の図面も同様)。
【0017】
本実施形態のスパッタ装置1は、図1〜3に示すように、真空容器2の内部で、ターゲット表面からターゲット粒子を放出させ、このターゲット粒子を被処理体Wの表面に付着させて薄膜を形成する成膜装置である。本実施形態では、一例として、DCマグネトロンスパッタ法を行う装置の例で説明する。
【0018】
スパッタ装置1の概略構成は、スパッタリングを行うための低圧の不活性雰囲気を形成する真空容器2と、真空容器2に隣接して設けられ被処理体Wを真空容器2に投入するための投入室3と、真空容器2に隣接して設けられ、薄膜が形成された被処理体Wを真空容器2から排出するための排出室4とを備える。
また、スパッタ装置1は、真空容器2の内部に、スパッタリングを行う装置部分であるターゲット部8(ターゲット)、バッキングプレート7(共用部電極)、マグネットユニット6、電極E、…、E(ただし、nは、2以上の整数)、被処理体移動部9、および移動ガイド10を備える。なお、電極E、…、Eの個数nは、本実施形態では、一例として、n=36を採用している。
また、スパッタ装置1は、真空容器2の外部に、真空容器2の内部の装置部分を動作させる第1電源11、第2電源12、スイッチ部13、および成膜制御ユニット50(成膜制御部、図4参照)を備える。
【0019】
なお、以下では、簡単のため、添字付きの符号を、範囲が定められた整数の変数i、j、kなどを用いて表記する場合がある。例えば、電極E、…、Eのうちのいずれかの電極を表す場合、iを1からnまでの整数として、「電極E」と表すことがある。また、電極E、…、Eを総称して、「各電極E」と称する場合がある。
【0020】
真空容器2の外形は、本実施形態では、図1に示すように、水平方向に細長い直方体状とされている。真空容器2の外壁部には、内部の雰囲気を減圧するため不図示の真空ポンプなどからなる減圧手段が接続された吸引管路2bと、不図示の不活性ガス供給源に接続され、真空容器2の内部に不活性ガスを供給する不活性ガス供給管路2aとが接続されている。
不活性ガス供給管路2aで供給される不活性ガスは、例えば、アルゴン(Ar)ガスなどの不活性ガスを挙げることができる。
【0021】
投入室3は、本実施形態では、図1、2に示すように、真空容器2の長手方向の一端部に隣接して箱状に形成されている。
また、投入室3は、被処理体Wを投入するため、側部に設けられた不図示の開口を開閉し閉止時に気密を保つゲートバルブ3aと、ゲートバルブ3aで開放された開口から投入した被処理体Wを内部に載置する載置台3cと、載置台3c上に載置された被処理体Wを把持して真空容器2に向けて移動する移載ロボット3dと、移載ロボット3dに把持された被処理体Wを真空容器2の内部に移動するため、真空容器2との境界に設けられた不図示の開口を開閉し、閉止時に気密を保つゲートバルブ3bとを備える。
なお、投入室3には投入室3内を減圧するため不図示の真空ポンプなどからなる減圧手段が接続されている。このため、投入室3は、ゲートバルブ3a、3bを閉止した状態で、この減圧手段を駆動することにより、投入室3の内部を真空容器2と同等の真空度に減圧することができるようになっている。
また、ゲートバルブ3a、3b、移載ロボット3dは、不図示の制御部によって操作者が遠隔操作可能に設けられている。
【0022】
排出室4は、本実施形態では、図1、2に示すように、真空容器2の長手方向の他端部に隣接して箱状に形成されている。
また、排出室4は、真空容器2内で成膜が終了した被処理体Wを真空容器2から移動するため真空容器2との境界に設けられた不図示の開口を開閉し、閉止時に気密を保つゲートバルブ4bと、ゲートバルブ4bの開放時に真空容器2内を移動した被処理体Wを把持して排出室4内に移動させる移載ロボット4dと、移載ロボット4dで移動した被処理体Wを内部に載置する載置台4cと、載置台4c上に載置された被処理体Wを外部に排出するため側部に設けられた不図示の開口を開閉し、閉止時に気密を保つゲートバルブ4aとを備える。
なお、排出室4には、投入室3と同様に、排出室4内を減圧するため不図示の真空ポンプなどからなる減圧手段が接続されている。このため、排出室4は、ゲートバルブ4a、4bを閉止した状態で、この減圧手段を駆動することにより、排出室4の内部を真空容器2と同等の真空度に減圧することができるようになっている。
また、ゲートバルブ4a、4b、移載ロボット4dは、不図示の制御部によって操作者が遠隔操作可能に設けられている。
【0023】
ターゲット部8は、薄膜を形成する材料の原子または分子からなるターゲット粒子を表面から放出するための固体材料であり、本実施形態では、図2に示すように、平面視矩形状のターゲット片T、…、Tが、真空容器2の底面寄りの位置に投入室3から排出室4に向かって、この順に、互いの長辺が隣接するようにして配列されている。
各ターゲット片Tの形状や材質は、被処理体Wの形状や被処理体Wに形成する薄膜の膜構成に応じて適宜設定する。本実施形態では、各ターゲット片Tの大きさは、短辺長さ×長辺長さが、a×b(ただし、a<b)である。
本実施形態では、被処理体Wごとに予め定められた膜構成に応じて2種類以上の材料のターゲット片Tが配列されている。
【0024】
以下では、本実施形態の具体例を述べる場合、被処理体Wの形状が、図5に示すように、直径Dが15mm、厚さtが3mmの円板であり、被処理体Wの材質はステンレス鋼であるものとして説明する。
また、被処理体Wに形成する薄膜の膜構成は、図5に示すように、一例として、薄膜15A、15Bの2種類の膜構成が設定されている。
薄膜15Aは、被処理体Wの被処理面である厚さ方向の一方の表面に、厚さtA1が300nmのシリコン(Si)膜層LA1と、厚さtA2が600nmのダイヤモンドライクカーボン(diamond-like carbon、以下、DLCと略称する)膜層LA2とがこの順に積層される多層膜構成である。
ここで、DLC膜層LA2は、被処理体Wの表面の表面平滑性および耐摩耗性を向上する表面層として設けられ、Si膜層LA1は、DLC膜層LA2の接合強度を向上するための中間層として設けられる。
薄膜15Bは、被処理体Wの被処理面である厚さ方向の一方の表面に、厚さtB1が300nmのクロム(Cr)膜層LB1と、厚さtB2が600nmのプラチナ(Pt)膜層LB2とがこの順に積層される多層膜構成である。
ここで、Pt膜層LB2は、被処理体Wの表面の耐酸化性を向上する表面層として設けられ、Cr膜層LB1は、Pt膜層LB2の接合強度を向上するための中間層として設けられる。
【0025】
各ターゲット片Tの具体的な寸法は、上記の被処理体Wに薄膜15Aを成膜する場合、短辺長さaが被処理体Wの直径Dの大きさ以下であることが好ましく、本実施形態では、a=15(mm)を採用している。また、長辺長さbは、b=30(mm)を採用している。
また、各ターゲット片Tの材質は、Si膜層LA1、Cr膜層LB1、DLC膜層LA2、Pt膜層LB2を成膜するために、一例として、ターゲット片T〜Tまでの5枚がSiで、ターゲット片T〜T10までの5枚がCrで、ターゲット片T11〜T23までの13枚が炭素(C)で、ターゲット片T24〜T36までの13枚がPtで構成されている。
各ターゲット片Tの厚さは、成膜時のターゲット材料の消費量、被処理体Wの処理個数等に応じて、適宜設定すればよい。
このような構成により、本実施形態のターゲット部8は、平面視の形状が、幅30mm、長さ540mmの矩形帯状に形成されている。
【0026】
バッキングプレート7は、図1〜3に示すように、ターゲット片T、…、Tで構成されるターゲット部8をその下面側で水平に保持する導電部材である。
本実施形態では、ターゲット部8の平面視の外形よりもわずかに大きい銅製の矩形板を採用している。このため、ターゲット部8の下面の全体が受けられている。
また、本実施形態では、各ターゲット片Tは、バッキングプレート7の表面に直接ボンディングされている。ターゲット片Tとバッキングプレート7は、ボンディングの他にネジ止めや単に載置するだけでも成膜は可能であるが、成膜時にターゲットに発生する熱を効率よく伝達させてターゲット温度上昇を低減するにはバッキングプレート7上にターゲット片Tをボンディングで固定するのが望ましい。
このような構成のバッキングプレート7は、真空容器2の内部から外部に向かって導かれた陰極配線11b、12bを介して、第1電源11、第2電源12の各陰極と電気的に接続されている。このため、各ターゲット片Tは、等電位となる平面上に保持されている。
【0027】
マグネットユニット6は、図3に示すように、バッキングプレート7上の各ターゲット片Tにそれぞれの長手方向の両端部から長手方向の中心に向かう磁界14を発生させる板状部材であり、バッキングプレート7においてターゲット部8が固定されたのと反対側の板面に配置されている。
このため、マグネットユニット6には、ターゲット部8の短手方向の中心に対応する位置にS極6aが設けられ、ターゲット部8の短手方向の両端部にそれぞれN極6bが設けられている。本実施形態では、S極6a、N極6bはいずれも永久磁石を採用している。
このようなマグネットユニット6により、ターゲット部8上には、各ターゲット片Tの長手方向に沿う断面において、各ターゲット片Tの長手方向の両端部から中心に向かうとともにターゲット部8の表面から凸状の弓形をなす磁界14が形成されている。
【0028】
各電極Eは、それぞれ各ターゲット片Tに放電することにより各ターゲット片Tをスパッタリングするための電極部材である。
本実施形態では、各電極Eは、短手方向の幅が対応するターゲット片Tの幅よりもわずかに短い1対の金属板からなる。各電極Eは、長手方向が鉛直軸に沿うとともに、それぞれ、ターゲット片Tを間に挟んで水平方向に対向する姿勢とされ、各ターゲット片Tの短辺の近傍に設置されている。
具体的には、図3に電極E、ターゲット片Tの例を示すように、各電極Eは、各ターゲット片Tの短辺に対して水平方向にd=1(mm)だけ離間された近傍位置に配置されている。また、各電極Eの上端は、各ターゲット片Tの上面に対して、h=5(mm)だけ突出されている。
また、電極E、…、Eには、図1に示すように、真空容器2の内部から外部に向かって導かれた個別の配線w、…、wが接続され、それぞれ後述するスイッチ部13の第1スイッチ13A、第2スイッチ13Bの端子に電気的に接続されている。
【0029】
被処理体移動部9は、被処理体Wの被処理面を下方に向けて水平に保持し、保持した被処理体Wをターゲット部8の上方においてターゲット部8の長手方向に沿う水平方向に移動させるものである。
被処理体移動部9は、真空容器2の内部に移動ガイド10に移動可能に取り付けられている。
【0030】
被処理体移動部9を移動させる移動機構は、被処理体移動部9および移動ガイド10の少なくともいずれかに設けることができる。このような移動機構としては、例えば、ねじ送り機構、ギヤ、ベルト、ワイヤ等の伝動機構とモータとを組み合わせた移動機構や、リニアモータを用いた移動機構や、被処理体移動部9に設けられ移動ガイド10をガイドとする自走機構などを採用することができる。
また、被処理体移動部9における被処理体Wの保持機構としては、被処理体Wの側面を中心に向かって把持するチャッキング機構などを採用することができる。
また、被処理体移動部9は、不図示の配線を介して、後述する成膜制御ユニット50と通信可能に接続され、成膜制御ユニット50からの制御信号に基づいて、起動、停止、および移動速度が制御されるようになっている。
また、被処理体移動部9は、例えば、エンコーダ、位置センサ等の位置検出手段を備えており、移動経路における移動位置の情報を成膜制御ユニット50に通知できるようになっている。
【0031】
移動ガイド10は、被処理体移動部9の移動経路を定める部材であり、ターゲット部8の上方では、ターゲット部8の長手方向に沿って、ターゲット部8と平行な水平方向に延ばされている。
移動ガイド10の各ターゲット片T上での配置は、図3にターゲット片Tに対する位置関係を示すように、被処理体移動部9に保持された被処理体Wの中心が各ターゲット片Tの長手方向(ターゲット部8の短手方向)の中心に対向し、被処理体Wの下面が各ターゲット片Tの上面から距離hだけ離間された配置とされている。
このため、被処理体移動部9による被処理体Wの移動経路は、ターゲット部8上では、各ターゲット片Tをその長手方向の中心の上方で横断する経路になっている。
移動経路上における被処理体Wの各ターゲット片Tに対する離間距離hは、被処理体Wの大きさとターゲット材料の使用効率の観点から適宜設定する。
本実施形態では、各ターゲット片Tから放出されるターゲット粒子が良好に被処理体Wの表面に付着する領域である成膜領域の平面視の大きさが、移動経路に直交する方向において、同方向の被処理体Wの被処理面の大きさをわずかに上回るとともに、移動経路に直交する方向の成膜領域の大きさが、同方向の被処理体Wの処理面の大きさよりも小さくなるように、距離hを設定している。
本実施形態では、一例として、h=50(mm)とすることにより、このような成膜領域を実現している。
【0032】
なお、移動ガイド10は、被処理体移動部9がターゲット部8上で往復移動可能な直線状のガイドであってもよいし、被処理体移動部9が一定方向に循環して移動できるような閉曲線状のガイドであってもよい。
移動ガイド10を閉曲線状に設ける場合、被処理体移動部9が複数であっても、これら複数の被処理体移動部9を一方向に循環移動させることで、ターゲット部8の上方では投入室3から排出室4に向かう一方向に、複数の被処理体移動部9を同時に移動させることができる。
【0033】
第1電源11および第2電源12は、それぞれ、出力電力の大きさを独立に設定可能な直流電源である。本実施形態では、いずれも出力電力2kWの電力が供給可能になっている。
第1電源11および第2電源12の陰極は、図1に示すように、それぞれ陰極配線11b、12bを介してバッキングプレート7に電気的に接続されている。
また、第1電源11および第2電源12の陽極は、それぞれ陽極配線11a、陽極配線12aを介して、スイッチ部13に電気的に接続されている。
【0034】
スイッチ部13は、第1電源11および第2電源12の出力電力を、それぞれ電極E、…、Eのいずれかに選択的に印加するための選択手段であり、第1電源11かオン・オフ電流をオン・オフするn個の第1スイッチ13Aと、第2電源12からの直流電流をオン・オフするn個の第2スイッチ13Bとを備える。
各第1スイッチ13Aの一方の接点は、陽極配線11aを介して第1電源11の陽極に電気的に接続されている。また、各第2スイッチ13Bの一方の接点は、陽極配線12aを介して第2電源12の陽極に電気的に接続されている。
また、各第1スイッチ13Aおよび各第2スイッチ13Bの他方の接点は、各電極Eと電気的に接続された各配線wとそれぞれ個別に接続されている。
このため、電極E、…、Eには、配線w、…、wを介して、第1電源11、第2電源12の陽極に電気的に接続可能に設けられている。
スイッチ部13は、図4に示すように、成膜制御ユニット50と電気的に接続され、成膜制御ユニット50から制御信号に基づいて、各第1スイッチ13A、各第2スイッチ13Bのオン・オフ状態が制御されるようになっている。
【0035】
成膜制御ユニット50は、スパッタ装置1における成膜動作を制御するもので、図4に示すように、記憶部53、条件設定部54、被処理体移動制御部51、および出力制御部52を備える。
また、成膜制御ユニット50には、操作者が成膜条件を入力したり、記憶部53に記憶された制御条件を選択したりする操作入力を行うため、例えば、入力バッド、キーボード、マウスなどからなる操作入力部20を備えている。
【0036】
記憶部53は、成膜動作における各種の制御条件の情報を記憶するものである。
記憶部53に予め記憶しておく制御条件の情報としては、被処理体Wに成膜する膜構成の情報、膜構成に応じた被処理体Wの移動位置の制御情報、各ターゲット片Tの形状や材質の情報、各ターゲット片Tに供給する電力と成膜速度との相関関係の情報、被処理体Wの移動位置と各ターゲット片Tの設置位置との対応関係の情報などを挙げることができる。
【0037】
条件設定部54は、操作入力部20に電気的に接続され、例えば、操作入力部20から入力された成膜条件などの情報を記憶部53に記憶させたり、操作入力部20から入力された操作入力の指示に基づいて記憶部53に記憶された情報を参照し、必要に応じて演算処理を行って、被処理体移動制御部51および出力制御部52の動作に必要な情報を被処理体移動制御部51および出力制御部52に送出したりするものである。
例えば、操作入力部20によって、薄膜15Aあるいは薄膜15Bを成膜する指示が入力されたとすると、このような膜構成を記憶部53内で検索し、入力された膜構成に対応した被処理体Wの移動位置の制御情報を記憶部53から読み出して、起動位置、停止位置、移動速度等の制御データを被処理体移動制御部51に送出する。また、この膜構成に対応して、ターゲット片T、…、Tに供給すべき電力の情報を出力制御部52に送出する。
また、条件設定部54は、操作入力部20からの成膜開始の指示に応じて、被処理体移動制御部51および出力制御部52の制御動作を開始させる。
【0038】
被処理体移動制御部51は、条件設定部54から送出された被処理体Wの移動位置の制御情報に基づいて、被処理体移動部9に制御信号を送出することにより、被処理体移動部9の起動、停止、移動速度の制御を行うものであり、被処理体移動部9と通信可能に接続されている。
また、被処理体移動制御部51は、出力制御部52と電気的に接続され、被処理体移動部9から通知される被処理体移動部9の移動位置の情報を出力制御部52に送出できるようになっている。
【0039】
出力制御部52は、条件設定部54から送出されたターゲット片T、…、Tに供給すべき電力の情報と、被処理体移動制御部51を介して被処理体移動部9から通知された被処理体Wの移動位置とに基づいて、第1電源11、第2電源12の出力電力を、スイッチ部13によるスイッチングを行うことで、電極E、…、Eの少なくともいずれかに選択的に供給する制御を行うものである。また、第1電源11、第2電源12の出力電力が可変できる場合には、出力電力の大きさの制御も行う。
このため、出力制御部52は、条件設定部54、スイッチ部13、第1電源11、および第2電源12に電気的に接続され、条件設定部54からの制御信号および被処理体移動部9からの移動位置の上方に基づいて、スイッチ部13、第1電源11、および第2電源12の動作を制御できるようになっている。
【0040】
成膜制御ユニット50の装置構成は、本実施形態では、CPU、メモリ、入出力インターフェース、外部記憶装置などからなるコンピュータからなり、これにより上記のような制御機能に対応した制御プログラムが実行されるようになっている。
【0041】
このような構成により、成膜制御ユニット50は、被処理体Wの移動位置の情報と、予め記憶された複数の膜構成のうちから選択された膜構成の情報とに基づいて、電極E、…、Eの少なくともいずれかに選択的に電力を供給して、ターゲット片T、…、Tのうち少なくともいずれかから、選択的にターゲット粒子を放出させる成膜制御部を構成している。
【0042】
次に、スパッタ装置1の動作について、本実施形態の成膜方法を中心として説明する。
図6(a)は、本発明の実施形態に係る成膜装置の動作を説明する動作説明図である。図6(b)は、図6(a)におけるB−B断面図である。
【0043】
スパッタ装置1を用いて被処理体W上に薄膜15Aを成膜するには、予め、バッキングプレート7上にターゲット部8を設置しておく。
このため、真空容器2の内部には、複数のターゲット片を独立に出力設定可能な複数の電源の陰極に電気的に接続された共用部電極上に設置するとともに、複数のターゲット片のいずれかの近傍に配置され電源の陽極にそれぞれ電気的に接続可能に設けられた複数の電極を設置した構成が実現されている。
【0044】
次に、スパッタ装置1の初期化を行う。
まず、ゲートバルブ3b、4bを閉止した状態で、不図示の減圧手段によって真空容器2の内部雰囲気を吸引管路2bから吸引して、真空容器2の内部を減圧する。そして、不活性ガス供給管路2aからArガスを供給し、真空容器2内の真空度を、1×10−2Paに調節する。
また、操作入力部20から初期化を指示することにより、成膜制御ユニット50から制御信号を送出し、被処理体移動部9、スイッチ部13、第1電源11、第2電源12を初期状態にリセットする。すなわち、被処理体移動部9を真空容器2内においてゲートバルブ3bの近傍に移動し、スイッチ部13の第1スイッチ13A、第2スイッチ13Bをすべてオフに設定し、第1電源11、第2電源12は、出力可能な状態に待機させる。
【0045】
次に、ゲートバルブ3bを閉止した状態で、投入室3を大気圧にし、ゲートバルブ3aを開放する。そして、ゲートバルブ3aによって開放された不図示の開口から、適宜の搬入手段を用いて、被処理体Wを投入室3の内部に搬入し、載置台3cに載置する(図1の被処理体W参照)。その後、ゲートバルブ3aを閉止して、不図示の減圧手段によって投入室3を減圧する。
【0046】
投入室3の減圧が終了したらゲートバルブ3bを開放する。そして、載置台3c上の被処理体Wを移載ロボット3dによって把持し、この被処理体Wを、ゲートバルブ3bによって開放された不図示の開口を通して真空容器2の内部に移動し、被処理体移動部9が把持可能な位置に位置付ける。
操作者は、操作入力部20に操作入力して、被処理体移動部9に被処理体Wを保持させる。これにより、図1に被処理体Wとして示すように、被処理体Wが被処理体移動部9に受け渡される。そこで、移載ロボット3dを投入室3内に退避させて、ゲートバルブ3bを閉じる。
【0047】
次に操作者が、操作入力部20から薄膜15Aの成膜を開始する指示を入力すると、成膜制御ユニット50の制御に基づいて自動的に成膜が開始される。
なお、薄膜15Aの膜厚は、被処理体Wの移動速度と、電極E、…、Eに供給する電力とによって変化する。本実施形態では、移動速度および出力電力を一定に保ち、成膜に寄与するターゲット片Tの枚数によって所望の膜厚を得る場合の例で説明する。
【0048】
まず、条件設定部54は、このような膜構成を記憶部53内で検索し、薄膜15Aの膜構成に対応した被処理体Wの移動位置の制御情報を記憶部53から読み出して、起動位置、停止位置、移動速度等の具体的な被処理体移動部9の制御データを算出して、これらの制御データを被処理体移動制御部51に送出する。
本実施形態では、薄膜15Aを成膜する場合には、ターゲット片T〜Tとターゲット片T11〜T23との寄与によって、薄膜15Bを成膜する場合には、ターゲット片T〜T10とターゲット片T24〜T36との寄与によって、それぞれ成膜する。いずれも場合でも、移動位置の制御情報としては、ターゲット片T〜T36上を停止することなく順次移動する、といった情報が記憶されている。
ただし、被処理体Wを特定のターゲット片T上に停止させて成膜を行う場合には、停止位置の情報も記憶されている。
【0049】
ここで、被処理体移動制御部51に送出する被処理体移動部9の制御データの算出方法について説明する。
まず、薄膜15Aを成膜する場合、条件設定部54は、記憶部53に記憶された薄膜15Aの膜構成の情報と、薄膜15Aの成膜に寄与するターゲット片Tの形状や材質の情報と、移動位置の制御情報とから、Si膜層LA1、DLC膜層LA2の成膜工程を以下のように解釈する。
まず、被処理体Wが、ターゲット片T〜Tまでの75mm(=15(mm)×5)の移動経路上を一定の移動速度vA1で移動する間に、ターゲット片T〜Tから放出されるSiのターゲット粒子によってそれぞれ膜厚60nmずつの成膜を行って、膜厚300nmのSi膜層LA1を成膜する。
次に、被処理体Wが、ターゲット片T11〜T23までの195mm(=15(mm)×13)の移動経路上を一定の移動速度vA2で移動する間に、ターゲット片T11〜T23から放出されるCのターゲット粒子によってそれぞれ膜厚46.15nmずつの成膜を行って、膜厚600nmのDLC膜層LA2を成膜する。
一方、記憶部53には、ターゲット片T等のSiターゲット片では、電極E等に供給する出力電力が2kWのとき、成膜速度が40nm/minになり、ターゲット片T11等のCターゲット片では、電極E11等に供給する出力電力が2kWのとき、成膜速度が30.77nm/minになるといった出力電圧と成膜速度との関係の情報が記憶されている。
そこで、条件設定部54は、これらの情報に基づいて、ターゲット片T〜Tまでの被処理体Wの移動速度vA1を、10mm/min(=75×40/300)、ターゲット片T11〜T23までの被処理体Wの移動速度vA2を、10(mm/min)(=195×30.77/600)、として算出する。
【0050】
条件設定部54は、このようにして算出された移動速度vA1、vA2と、移動速度の切り替えタイミングとを、被処理体移動部9の移動の制御データとして、被処理体移動制御部51に送出する。ただし、本実施形態では、vA1=vA2であるため、移動速度の切り替えは不要である。
ターゲット片Tの種類による成膜速度の違いによっては、このように算出される移動速度vA1、vA2は異なることがあるが、本実施形態では、上記したように、Siターゲット片と、Cターゲット片との成膜速度の違いと、それぞれによって成膜する膜厚の設定とを考慮して、ターゲット部8を構成するSiターゲット片とCターゲット片との枚数を、それぞれ5枚、13枚に設定しているため、被処理体Wの移動速度がvA1=vA2になっている。
【0051】
また、薄膜15Bを成膜する場合、条件設定部54は、記憶部53に記憶された薄膜15Bの膜構成の情報と、薄膜15Bの成膜に寄与するターゲット片Tの形状や材質の情報と、移動位置の制御情報とから、Cr膜層LB1、Pt膜層LB2の成膜工程を上記と同様にして解釈し、それぞれCr膜層LB1、Pt膜層LB2の成膜に寄与する、電極E等、電極E24等に供給する出力電力がそれぞれ2kWのときの成膜速度がそれぞれ40nm/min、30.77nm/minになるとの情報に基づいて、ターゲット片T〜T10までの被処理体Wの移動速度vB1と、ターゲット片T24〜T36までの被処理体Wの移動速度vB2とを、vB1=vB2=10(mm/min)として算出する。
【0052】
また、条件設定部54は、薄膜15A、15Bの膜構成に対応して、各ターゲット片Tに供給すべき電力の情報を出力制御部52に送出する。
ここで、本実施形態における各ターゲット片Tに供給すべき電力の情報の設定方法について説明する。
本実施形態では、ターゲット片Tによる成膜領域は、移動経路に沿う方向では同方向の被処理体Wの外形よりも狭いため、移動経路上を移動する被処理体Wは、最大でも移動経路に沿って隣接する2つのターゲット片T、Ti+1のターゲット粒子しか付着しない。
このため、被処理体Wが成膜領域に入ったターゲット片Tのみからターゲット粒子が放出されるように、このターゲット片Tの短辺の外側に設置された電極Eに出力電力が供給すれば、各ターゲット片Tの使用効率を最大化することができる。
したがって、ターゲット片Tごとの移動経路上における成膜領域の分布が知られている場合には、被処理体Wの移動位置に応じて被処理体Wと重なる成膜領域に対応するすべてのターゲット片Tを特定し、これに対応する電極Eの電力をオンにし、他の電極Eの電力をオフにするスイッチ部13の制御データを出力制御部52に送出すればよい。
【0053】
ただし、スパッタリングによる成膜領域は、ある程度バラツキがあるため、余裕をもって被処理体Wがターゲット片Tによる想定される成膜領域に近づいたときに、対応する電極Eの電力をオンにしてもよい。
本実施形態では、移動経路に沿う成膜領域の大きさはターゲット片Tの短手方向の幅に近いため、被処理体Wがターゲット片Tと重なる領域に移動するとともに、ターゲット片Tに対応する電極Eの電力をオンにするスイッチ部13の制御データを出力制御部52に送出するようにしている。
具体的には、被処理体Wの移動位置に応じて、被処理体Wが重なる1枚のターゲット片T、または被処理体Wが重なるターゲット片T、Ti+1に対して、第1電源11または第2電源12からの電力を供給する制御データを出力する。
なお、被処理体Wに重なるターゲット片Tの添字iが奇数のときは第1スイッチ13Aをオンとし、偶数のときは第2スイッチ13Bをオンに設定する。
【0054】
被処理体移動制御部51および出力制御部52に対して、条件設定部54からの制御データが送出されると、被処理体移動制御部51および出力制御部52の制御によって、成膜が開始される。以下では、一例として、薄膜15Aを成膜する場合の例で説明する。
被処理体移動制御部51は、被処理体移動部9を速度vA1で排出室4側に向かって移動させる。被処理体Wの移動位置の情報は、逐次、被処理体移動部9から出力制御部52に通知される。
出力制御部52は、被処理体移動部9から通知される被処理体Wの移動位置の情報に基づいて、薄膜15Aの成膜に寄与するターゲット片Tに対応する電極E、…、E、E11、…、E23のうちの少なくともいずれかに選択的に電力を供給するように、スイッチ部13のオン・オフ制御を行う。
具体的には、被処理体Wが、ターゲット片Tに重なる領域に移動すると、電極Eに接続された第1スイッチ13Aがオンされる。これにより、電極Eのみに2kWの電力が供給される。
被処理体Wは、vA1=10(mm/min)で移動するため、被処理体Wの移動方向の先端がターゲット片Tに重なり始めてから1分30秒後に、被処理体Wの全体がターゲット片Tと重なり、同時に被処理体Wの移動方向の先端がターゲット片Tとの境界に到達する。このため、被処理体移動部9からこのような移動位置が通知されると、電極Eに接続された第2スイッチ13Bがオンされる。これにより、電極E、Eの両方にそれぞれ2kWの電力が供給される。
また、被処理体Wの移動方向の先端がターゲット片Tに重なり始めてから3分後には、被処理体Wは、ターゲット片Tを横断し終わり、被処理体Wの移動方向の先端がターゲット片Tと境界に到達する。このため、被処理体移動部9からこのような移動位置が通知されると、電極Eに接続された第1スイッチ13Aがオフされ、電極Eに接続された第1スイッチ13Aがオンされる。これにより、電極E、Eの両方にそれぞれ2kWの電力が供給される。
このようにして、被処理体Wの移動位置に応じて、電極E、…、E、E11、…、E23において電力が供給される電極Eが順次切り替えられていく。
【0055】
ここで、電力が供給された電極Eによる成膜動作について説明する。
例えば、電極Eに2kWの電力が供給されると、ターゲット片Tは第1電源11、第2電源12の陰極に接続されたバッキングプレート7と等電位に保持されているため、図6(a)に示すように、各電極Eとターゲット片Tとの間に空間放電によって電流16が流れ、電子が流動することによってArがイオン化される。そしてこれらのArイオンがターゲット片Tに衝突することによって、ターゲット片Tがスパッタリングされる。
ターゲット片T上には、マグネットユニット6の作用によって、ターゲット片Tの両端部から中心部に向かう弓形の磁界14が形成されている。このため、電流16による電子密度は、ターゲット片Tの長手方向の両端部と中心との2箇所の中間部において高くなる。Arイオンはこれらの電子密度が高い領域に集中するため、ターゲット片Tは、長手方向の両端部と中心との2箇所の中間部を中心としてスパッタリングされる。
【0056】
このとき、ターゲット片Tの成膜領域Sは、図6(a)、(b)に破線矢印で示すように、これら2箇所の中間部から上方に向かってそれぞれコーン状に拡がる領域となる。このため、ターゲット片Tの上方の一定距離以上の位置では、各成膜領域Sが隣接して部分的に重なり、ターゲット片Tの長手方向に延びる成膜領域が形成される。
したがって、図6(a)に示すように、被処理体Wとターゲット片Tの表面との距離hを適宜設定することにより、ターゲット片Tの長手方向の成膜領域の大きさを被処理体Wの外形よりわずかに大きくしたとき、これと直交する方向では、図6(b)に示すように、被処理体Wの外形よりも狭い成膜領域が形成される。
【0057】
被処理体Wの先端がターゲット片T、Tとの境界の上方に達すると、電極E、Eに同時に2kWの電力が供給される。すると、電極E(E)から放電された電流は、ターゲット片T(T)に流れ、さらにターゲット片T(T)を保持するバッキングプレート7へと流れる。バッキングプレート7へ流れた電流は、陰極配線11b(12b)を介して第1電源11(第2電源12)に戻ってくる。
このとき、バッキングプレート7は、第1電源11、第2電源12の陰極側の電気回路の共用部であり、第1電源11、第2電源12から供給された電流が、それぞれ同時に流れる。これらの電流の大きさは第1電源11、第2電源12の陽極から流れた電流の合算値であり、第1電源11、第2電源12が陰極配線11b、12bを介して回収する電流量も、それぞれ陽極から出力した電流と同量となる。そのため、独立に出力電力を設定できる第1電源11、第2電源12によって、第1電源11、第2電源12の陽極から供給する電流量を調整することで、電極E、ターゲット片T間の放電電流量と、電極E、ターゲット片Tと間の放電電流量とを独立して制御することができる。
【0058】
このようにして、被処理体Wは、ターゲット片T〜Tを横断する移動経路上では、下面側からターゲット片T〜Tによって順次Si原子が放出される成膜領域S等を順次横断する。ただし、被処理体Wの先端がターゲット片T、Tの境界に到達すると、出力制御部52は、スイッチ部13を制御して、電極Eに接続された第2スイッチ13Bをオフし、被処理体Wがターゲット片T〜T10を通過する間は、電極E〜E10に接続された第1スイッチ13A、第2スイッチ13Bはすべてオフされる。このため、被処理体Wに対して、ターゲット片T〜T10からCr原子が放出されることはない。
このため、成膜領域S等におけるそれぞれの成膜速度に応じてSi原子が付着、堆積して、非晶質性のSiの薄膜が形成され、ターゲット片Tを通過した時点で膜厚300nmとなるSi膜層LA1が成膜される。
【0059】
また、同様にして、被処理体Wは、ターゲット片T11〜T23を横断する移動経路上では、下面側からターゲット片T11〜T23によって順次C原子が放出される成膜領域を順次横断するため、各成膜領域における成膜速度に応じてC原子が付着、堆積して、非晶質性のCの薄膜が形成され、ターゲット片T23を通過した時点で、Si膜層LA1上に膜厚600nmとなるDLC膜層LA2が成膜される。
【0060】
被処理体Wが、ターゲット片T23を通過すると、出力制御部52は、スイッチ部13を制御して、電極E25〜E36に接続された第1スイッチ13A、第2スイッチ13Bをすべてオフに設定して、第1電源11、第2電源12からの電力の供給を停止する。このため、被処理体Wに対して、ターゲット片T24〜T36からPt原子が放出されることはない。
また、被処理体移動制御部51は、被処理体移動部9を排出室4のゲートバルブ4bの近傍位置まで移動した後、被処理体移動部9を停止させる。
【0061】
次に、予め減圧しておいた排出室4のゲートバルブ4bを開放し、移載ロボット4dによって、成膜が終了した被処理体Wを把持し、移載ロボット4dを駆動して、被処理体Wを排出室4の内部に移動する。この状態でゲートバルブ4bを閉止し、移載ロボット4dを駆動して被処理体Wを載置台4c上に載置してから、移載ロボット4dの把持を解除する(図1の被処理体W参照)。
一方、被処理体移動制御部51は、被処理体移動部9の保持を解除して、被処理体移動部9を投入室3の近傍位置まで移動させる。これにより、次に成膜を行う被処理体Wを保持することが可能となる。
【0062】
次に、操作者は、ゲートバルブ4aを開放して、排出室4を大気圧にし、不図示の排出手段をゲートバルブ4aによって開放された不図示の開口に挿入して、成膜が終了した被処理体Wをスパッタ装置1の外部に排出する。
このようにして、薄膜15Aが成膜された被処理体Wが製造される。
また、操作入力部20から薄膜15Bを成膜する指示がなされた場合においては、ターゲット片T〜T10、T24〜T36上に被処理体Wが移動したときに、被処理体Wの下方の1つまたは2つのターゲット片Tに対応する電極Eに電力が供給される点が異なるのみで、薄膜15Bが成膜される。
以上を繰り返すことにより、複数の被処理体Wを順次投入室3に投入し、真空容器2内で薄膜15Aまたは薄膜15Bの成膜を行った後に、排出室4から排出することで、真空容器2を大気開放することなく、被処理体Wごとに、予め定められた薄膜15A、15Bを成膜することができる。
【0063】
このように、スパッタ装置1を用いた本実施形態の成膜方法によれば、被処理体Wを、ターゲット片T〜T36を横断する移動経路に沿って移動させ、被処理体Wの移動位置に基づいて、ターゲット片T〜T36のうちから、被処理体Wが重なる位置の1枚または隣接する2枚のターゲット片Tから選択的にターゲット粒子を放出させて成膜を行うことができる。このため、被処理体Wに付着する可能性のないターゲット片からのターゲット粒子の放出を抑制できるため、ターゲット部8の使用効率を向上することができる。
また、本実施形態では、ターゲット部8においてターゲット片Tの種類や、枚数を、成膜する膜構成に応じて予め設定するだけで成膜を行うことができる。このため、膜構成に応じて、被処理体Wの移動速度や第1電源11、第2電源12の出力電力を複雑に変化させることなく成膜を行うことができるため、薄膜の組成や膜厚の調整が容易となる。
したがって、薄膜の成膜工程において成膜の効率を向上することができる。
【0064】
また、本実施形態では、ターゲット片Tiの材質が、複数の膜構成に対応して複数の材質のものが配列されているため、成膜の膜構成を変更する場合にも、スイッチ部13を制御する制御データを変更するだけで、ターゲットの入れ替えなどの段取り替えを行うことなく連続的に成膜を続けることができる。このため、膜構成を変更するたびにターゲットを入れ替え場合に比べて、成膜の効率を向上することができる。
【0065】
また、本実施形態では、真空容器2に隣接して、投入室3および排出室4を設けることによって、真空容器2の雰囲気を変えることなく、複数の被処理体Wを1個ずつ連続的に成膜することができる。
このため、複数の被処理体Wをヤトイ等の治具に詰めてバッチ式の成膜を行う場合に比べて、被処理体Wのヤトイ詰めの手間や、バッチ交換する際の真空容器2の減圧などの作業時間、待機時間を低減できるため、生産効率を向上することができる。
また、真空容器2は、被処理体を1個ずつ直線的に移動できればよいため、真空容器2の移動経路に沿う断面積を低減することができる。
【0066】
[第1変形例]
次に、本実施形態の第1変形例について説明する。
図7は、本発明の実施形態の第1変形例に係る成膜装置の主要部の構成を示す模式的な断面図である。図8は、本発明の実施形態の第1変形例に係る成膜装置で成膜された薄膜の膜構成の一例を示す模式的な断面図である。
【0067】
本変形例のスパッタ装置1A(成膜装置)は、図7に主要部の構成を示すように、上記実施形態のスパッタ装置1のターゲット部8に代えて、ターゲット部8A(ターゲット)を備え、上記実施形態の電極Eと電極Eとの間に、ターゲット部8Aを間に挟んでターゲット部8Aの短手方向に対向するN対の電極EAj(ただし、jは1以上N以下の整数、Nは3以上の奇数)を追加したものである。
スパッタ装置1Aは、上記実施形態の薄膜15A、15Bに加えて、図8に示すように、Si膜層LA1とDLC膜層LA2との間に、SiとCとが混合した組成を有する混合膜層LA3を有する薄膜15Cを成膜する装置である。
以下、上記実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0068】
ターゲット部8Aは、上記実施形態のターゲット片Tと、ターゲット片Tとの間に、短辺×長辺が、c×b(ただし、c<a、c<D)の矩形形状を有するN枚のターゲット片TAjを、互いの長辺が隣接するように配置したものである。このため、ターゲット片TAjの短辺に沿う方向の幅は、ターゲット片Tに比べて狭くなっている。
ターゲット片TAjの材質は、jが偶数の場合はSi、jが奇数の場合はCから構成される。このため、ターゲット片T10に隣接するターゲット片TA1の材質はSiからなり、ターゲット片T11に隣接するターゲット片TANの材質はCからなる。
ターゲット片TAjの枚数Nは、成膜すべき混合膜層LA3の膜厚に応じて適宜の枚数に設定する。
【0069】
ターゲット片TAjの短辺の長さcは、図7に示すように、ターゲット片TAj上に拡がるコーン状の成膜領域SAjが、ターゲット片TAjの表面から被処理体Wまでの距離hにおいて、ターゲット片TAjに隣接するターゲット片TA(j+1)の成膜領域SA(j+1)のほぼ中心位置まで重なる程度の寸法に設定する。
【0070】
電極EAjは、上記実施形態の電極Eのターゲット片Tに対向する幅寸法を、電極EAjが対向するターゲット片TAjの短辺寸法に対応させて縮幅したものである。
また、特に図示しないが、スイッチ部13の第1スイッチ13A、第2スイッチ13Bの数は、それぞれN個ずつ増加され、各電極EAjは、上記実施形態の電極Eと同様、配線wに相当する個別の配線を介して、陽極配線11a、12aに電気的に接続された第1スイッチ13A、第2スイッチ13Bに接続されている。
【0071】
このような構成のスパッタ装置1Aでは、上記実施形態と同様にして、上記被処理体移動部9をターゲット部8Aに配列されたターゲット片T〜T、ターゲット片TA1〜TAN、ターゲット片T11〜T23の上方を距離hだけ離間した移動経路に沿って横断する間に成膜を行う。
このため、上記実施形態と同様にして、ターゲット片T〜T上では、Si膜層LA1が、ターゲット片T11〜T23上ではDLC膜層LA2が成膜される。
【0072】
一方、被処理体Wが、ターゲット片TA1〜TANの上方に移動すると、ターゲット片TAjの短手方向の幅cは、被処理体Wの外形Dよりも小さいため、被処理体Wの移動に際して、隣接する2枚以上のターゲット片に電力が供給される。
このため、被処理体Wの下面には、jの奇遇に応じて、ターゲット片TAj、TA(j+1)から、Si原子とC原子とがスパッタリングされる。しかも、被処理体Wの通過位置では、これらのターゲット粒子の成膜領域SAj、SA(j+1)が重なり合っているため、被処理体Wには、Si原子とC原子とが混合した混合膜層LA3が成膜される。
【0073】
混合膜層LA3は、Si膜層LA1とDLC膜層LA2との界面の密着強度を向上することができるため、薄膜15Cの密着性、耐久性を向上することができる。
このような混合膜層LA3は、上記実施形態の成膜方法であっても、SiC合金で構成したターゲット片をターゲット片T、Tの間に挿入すれば、成膜することができるが、本変形例によれば、このようなSiC合金のターゲット片を製造することなく混合膜層LA3を形成することができるため、成膜の準備工程が簡素化される。
また、合金が製造しにくい2種類の材料の混合膜を容易に形成することができる。
【0074】
なお、スパッタ装置1Aにおいて、薄膜15A、15Bを成膜する場合には、被処理体Wがターゲット片TAj上を移動する間、電極EAjに接続した第1スイッチ13A、第2スイッチ13Bをすべてオフにすればよい。
【0075】
[第2変形例]
次に、本実施形態の第2変形例について説明する。
図9は、本発明の実施形態の第2変形例に係る成膜装置の主要部の構成を示す模式的な断面図である。
【0076】
本変形例のスパッタ装置1B(成膜装置)は、図8に示す薄膜15Cを成膜するための変形例である。スパッタ装置1Bの主要部の構成は、図9に示すように、上記実施形態のスパッタ装置1のターゲット部8に代えて、ターゲット部8B(ターゲット)を備え、上記実施形態の電極Eと電極Eとの間に、電極Eと同様な構成を有し、ターゲット部8Bを間に挟んでターゲット部8Bの短手方向に対向するM対の電極EBk(ただし、kは1以上M以下の整数)を追加したものである。
以下、上記実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0077】
ターゲット部8Bは、上記実施形態のターゲット片Tと、ターゲット片Tとの間に、短辺×長辺が(a/2)×bの矩形形状を有するターゲット片Takとターゲット片Tbkとを互いの長辺が隣接するように交互に配置したものである。ターゲット片Tak、Tbkの枚数は、電極EBkの各対に対応してM枚とされる。
ターゲット片Takの材質はSiからなり、ターゲット片Tbkの材質はCからなる。
ターゲット片Tak、Tbkの各枚数Mは、成膜すべき混合膜層Lの膜厚に応じて適宜の枚数に設定する。
【0078】
また、スパッタ装置1Bでは、特に図示しないが、スイッチ部13の第1スイッチ13A、第2スイッチ13Bの数は、それぞれM個ずつ増加され、各電極EBkは、上記実施形態の電極Eと同様、配線wに相当する個別の配線を介して、陽極配線11a、12aに電気的に接続された第1スイッチ13A、第2スイッチ13Bに接続されている。
【0079】
本変形例のスパッタ装置1Bでは、ターゲット片Tak、Tbkが1組で配置され、これらをそれぞれの短辺側から挟む位置関係に、電極EBkが配置されている。
このため、電極EBkに電力が供給されると、図9に示すように、ターゲット片Tak、Tbkはそれぞれが隣接する長辺の近傍のスパッタリング領域で同時にスパッタリングされ、成膜領域SBkには、Si原子とC原子とが同時に放出される。
【0080】
Si原子とC原子との放出量の比は、ターゲット片Tak、Tbkとの境界となる長辺に対するスパッタリング領域の分布に依存する。本変形例では、ターゲット片Tak、Tbkの短辺寸法がa/2とされるため、スパッタリング領域が、境界を中心として略対称に形成されるため、Si原子とC原子との放出量の比は、略1:1になる。
このように、ターゲット片Tak、Tbkからは放出されるターゲット粒子は、電極EBkに供給する電力では、独立に制御することはできない。このため、本変形例では、条件設定部54は、ターゲット片Tak、Tbkが電極EBkに対応して、1枚のターゲット片を構成していると見なして、スイッチ部13のオン・オフ制御の設定を行う。
すなわち、被処理体Wが、ターゲット片Takまたはターゲット片Tbkに重なる位置に移動したら、電極EBkに接続された第1スイッチ13Aまたは第2スイッチ13Bをオンにする制御データを出力制御部52に送出する。
【0081】
このような構成のスパッタ装置1Bでは、上記実施形態と同様にして、上記被処理体移動部9をターゲット部8Bに配列されたターゲット片T〜T、ターゲット片Ta1、Tb1、…、TaM、TbM、ターゲット片T〜T36の上方を距離hだけ離間した移動経路に沿って横断する間に成膜を行う。
このため、上記実施形態と同様にして、ターゲット片T〜T上では、Si膜層LA1が、ターゲット片T11〜T23上ではDLC膜層LA2が成膜される。
【0082】
一方、被処理体Wが、ターゲット片Ta1、Tb1、…、TaM、TbMの上方に移動すると、被処理体Wが、ターゲット片Takまたはターゲット片Tbkに重なる位置に移動したら、電極EBkに接続された第1スイッチ13Aまたは第2スイッチ13Bがオンとなる。このため、被処理体Wの移動位置に応じて、ターゲット片Takおよびターゲット片Tbkが同時にスパッタリングされ、成膜領域SBkにおいてSi原子とC原子とが同時に放出される。このため、被処理体Wには、Si原子とC原子とが混合した混合膜層LA3が成膜される。
【0083】
本変形例によれば、上記第1変形例と同様に、SiC合金のターゲット片を製造することなく混合膜層LA3を形成することができるため、成膜の準備工程が簡素化される。
また、合金が製造しにくい2種類の材料の混合膜を容易に形成することができる。
【0084】
なお、スパッタ装置1Bにおいて、薄膜15A、15Bを成膜する場合には、被処理体Wがターゲット片Tak、Tbk上を移動する間、電極EBjに接続した第1スイッチ13A、第2スイッチ13Bをすべてオフにすればよい。
【0085】
[第3変形例]
次に、本実施形態の第3変形例について説明する。
図10(a)、(b)は、本発明の実施形態の第3変形例に係る成膜装置の概略構成を示す模式的な正面図および平面図である。
【0086】
本変形例のスパッタ装置1C(成膜装置)は、図10(a)、(b)に示すように、上記実施形態のスパッタ装置1の移動ガイド10、スイッチ部13に代えて、移動ガイド10A、スイッチ部23を備え、第1電源11、第2電源12と同様な構成を有する第1電源21、第2電源22を追加し、被処理体移動部9の個数を複数にしたものである。
以下、上記実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0087】
移動ガイド10Aは、平面視の形状が、ターゲット部8の上方をターゲット部8の長手方向に横断する直線経路10aと、これと平行な直線経路10bを含む略矩形枠状の閉曲線を描く形状に形成されている。直線経路10bは、直線経路10bに沿って移動する被処理体移動部9が、各ターゲット片Tによる成膜領域から確実に離間するように、平面視で、ターゲット部8および各電極Eに重ならない位置に迂回されている。
直線経路10a上には、2個の被処理体移動部9が同時に移動できるようになっている。
【0088】
スイッチ部23は、第1電源11、第2電源12、第1電源21、および第2電源22の出力電力を、それぞれ電極E、…、Eのいずれかに選択的に印加するための選択手段である。
スイッチ部23の構成は、上記実施形態の第1スイッチ13Aおよび第2スイッチ13Bに加え、第1電源21からの直流電流をオン・オフする第1スイッチ23Aと、第2電源22からの直流電流をオン・オフする第2スイッチ23Bとを有するn個のスイッチユニット23aを備える。
各第1スイッチ23Aの一方の接点は、陽極配線21aを介して第1電源21の陽極に電気的に接続されている。また、各第2スイッチ23Bの一方の接点は、陽極配線22aを介して第2電源22の陽極に電気的に接続されている。
また、各第1スイッチ23Aおよび各第2スイッチ23Bの他方の接点は、電極E、…、Eと電気的に接続された配線w、…、wとそれぞれ個別に接続されている。
スイッチ部23は、図4に示すように、成膜制御ユニット50と電気的に接続され、成膜制御ユニット50から制御信号に基づいて、各第1スイッチ13A、23A、各第2スイッチ13B、23Bのオン・オフ状態を制御できるようになっている。
【0089】
スパッタ装置1Cによれば、複数の被処理体移動部9を移動ガイド10Aに沿って一定の間隔を空けて同時に移動させることができる。このため、図10(a)、(b)に一例を示すように、移動ガイド10Aの直線経路10a上で、2個の被処理体移動部9を同時に移動させることができる。
このため、成膜制御ユニット50は、各被処理体移動部9の移動位置の情報の通知を受けて、それぞれの被処理体移動部9に保持された被処理体W(図示の被処理体W、W)に対して、上記実施形態と同様にして、その下方のターゲット片Tをスパッタリングして薄膜15Aまたは薄膜15Bを成膜する。
その際、第1電源11、第2電源12は、例えば、被処理体Wの成膜に用い、第1電源21、第2電源22は、被処理体Wの成膜に用いる。
本変形例では、第1電源11、21、第2電源12、22は、いずれも独立して出力電力を設定できるため、スイッチ部23がどのようなオン・オフ状態であっても、電力が供給されている電極Eでは、一定の成膜速度が得られる。このため、本変形例では、被処理体W、Wの移動位置に応じて、それぞれ1枚または2枚のターゲット片Tに、電力が印加され、真空容器2内の2箇所で並行してスパッタリングを行うことができる。
ただし、実際に2箇所で同時並行してスパッタリングが行われるかどうかは、ターゲット部8Bの各ターゲット片Tの材質の配置レイアウトと、真空容器2内を移動する被処理体W、Wの間の離間距離と、成膜の種類とによって異なる。
本変形例のターゲット片Tの配置レイアウトでは、例えば、被処理体W、Wの離間ピッチを270mm程度とした場合、被処理体W、Wの膜構成によらず、移動中にいずれかの位置では2箇所で同時並行的に成膜が行われることになる。
【0090】
被処理体Wを排出室4に受け渡した後の被処理体移動部9は、移動ガイド10A上をさらに移動して、直線経路10bを通って、投入室3の近傍に移動され、新たな被処理体Wの成膜を行うため、投入室3から真空容器2に導入された被処理体Wを保持するのに用いられる。
【0091】
このようにして、スパッタ装置1Cによれば真空容器2の内部で複数の被処理体Wを並行して成膜することで、複数の被処理体Wを連続的に成膜することができる。このため、スパッタ装置1Cの利用効率が向上し、成膜の生産性を向上することができる。
【0092】
なお、上記実施形態および各変形例の説明では、ターゲット片の材料の種類が、薄膜15AがSiとCとの2種類、薄膜15BがCrとPtとの2種類の場合の例で説明したが、薄膜は材料構成が異なる3種類以上でもよい。また、1つの薄膜の膜構成は、2層構成には限定されず、単層または3層以上でもよい。したがって、1つの薄膜の成膜に寄与するターゲット片Tiの材料の種類は、2種類には限定されず、1種類でもよいし、3種類以上でもよい。
【0093】
また、上記実施形態および各変形例の説明では、成膜装置が投入室と排出室とを備える場合の例で説明したが、例えば、真空容器が小型であって減圧にあまり時間がかからないような場合には、投入室、排出室を削除し、真空容器を大気圧に開放してから被処理体を入れ替えるバッチ式の成膜装置としてもよい。
【0094】
また、上記第3変形例の説明では、ターゲット上で、2個の被処理体を移動させる場合の例で説明したが、互いの成膜に影響しない程度に離間して移動することができれば、ターゲット上で同時に移動する被処理体の個数は、2個以上の適宜個数とすることができる。
この場合、同時に成膜を行う個数に応じて、スパッタリングを行うため電極に電力を供給する電源は、移動個数に応じて増設する。
【0095】
また、上記実施形態および各変形例の説明では、電源の設置数を低減するため、電源がすべての電極とスイッチ部を介して接続され、スイッチ部によって、接続を切り替えることで、電力を供給する電極を選択する場合の例で説明したが、電源を増設できる場合には、電極をブロック分けして、ブロックごとに電源を割り当ててブロック内で、電源の接続を切り替えるようにしてもよい。
また、陰極を共用部電極に接続していれば、陽極となるすべての電極対に異なる電源を接続し、電源の出力をオン・オフする制御を行ってもよい。
【0096】
また、上記の第1および第2変形例の説明では、混合膜層LA3を成膜するためのターゲット片や電極を、ターゲット片T、Tの間に配置した場合の例で説明したが、ターゲット片T10、T11の間に配置してもよい。
【0097】
また、上記の第1および第2変形例の説明では、Si膜層LA1とDLC膜層LA2との間に混合膜層LA3を形成した薄膜15Cを成膜する場合の例で説明したが、Cr膜層LB1とPt膜層LB2との間にCrとPtとが混合された混合膜層を成膜できる装置構成としてもよい。
【0098】
また、上記実施形態および各変形例の説明では、複数の電源の出力電力は、一定値に設定されている場合の例で説明したが、複数の電源は、0%〜100%の範囲で出力電力を独立に調整可能な構成とし、成膜制御部によって、出力電力の大きさを制御できるようにしてもよい。この場合、被処理体の移動位置に応じて、複数の電源を接続する電極に供給する電力を変化させることにより、ターゲット粒子の放出量を変化させることができる。
この場合、被処理体の移動速度が一定でも、ターゲット片ごとに成膜速度を変更することができるため、膜厚の変更がさらに容易となる。
【0099】
また、上記実施形態および各変形例の説明では、ターゲットを挟んで対向する電極には、それぞれスイッチがオンされた1つの電源から電力が供給される場合の例で説明したが、対向する電極に、出力を独立に設定できる異なる電源を接続してもよい。
この場合、電源の出力電力を調整可能な構成とすれば、1つのターゲット片の2箇所からのターゲット粒子の放出量を変化させることができる。
【0100】
また、上記実施形態および各変形例の説明では、ターゲット片は、被処理体の移動方向に沿って異なる配置が可能な構成の例で説明したが、上記実施形態のように、スパッタリング領域がターゲット片の長手方向の2箇所に形成される場合には、ターゲット片の材質をスパッタリング領域ごとに変えてもよい。
このようにして、異種材質が配置されたスパッタリング領域で同時にスパッタリングを行うことによっても、混合膜を成膜することができる。
また、さらにスパッタリング領域に寄与する電極に接続された電源の出力を独立に調整できるようにすることで、混合膜の組成比を変更することができる。
したがって、このような構成を移動経路に沿って複数設け、移動方向に沿って混合膜の組成比を変化させるようにすれば、段階的な傾斜層の成膜を行うことができる。
【0101】
また、上記の実施形態の説明では、成膜領域の幅は被処理体の移動方向(ターゲット片の長手方向と直交する方向)では被処理体の外形より狭い場合の例で説明したが、被処理体の外形と同等の幅でもよく、外形よりもわずかに大きな略同等の幅でもよい。
【0102】
また、上記の実施形態および各変形例の説明では、被処理体が複数のターゲット片上を停止することなく定速で移動する場合の例で説明したが、特定のターゲット片上で移動速度を変化させたり、停止したりして成膜を行うようにしてもよい。その際、停止して成膜する場合には、被処理体の全面が成膜されるように移動方向の成膜領域の幅を被処理体の外形よりわずかに大きくしておく。
例えば、第1変形例の構成において、j=2とし、電極EA1、EA2に供給する出力電力を0%〜100%の範囲で独立に調整できる構成とすれば、被処理体Wをターゲット片TA1、TA2の境界上に停止させた状態で、電極EA1の出力電力を100%から0%に、電極EA2の出力電力を0%から100%に、それぞれ同時に変化させることによって、Siの組成が100%から0%に、Cの組成が0%から100%に漸次連続的に変化する傾斜層を成膜することができる。
【0103】
また、上記第1変形例の説明では、電極およびターゲット片の大きさを変更することで、被処理体の移動方向に隣接する成膜領域の重なりを形成することで混合膜を成膜する場合の例で説明したが、電極およびターゲット片の大きさが上記実施形態と同様であっても、ターゲット片の表面から被処理体の被処理面までの距離を増大させることで、成膜領域の重なりを形成することができる。したがって、混合膜を成膜する経路において、ターゲット片の表面から被処理体の被処理面までの距離を増大するように、被処理体を昇降しつつ移動できる構成としてもよい。
【0104】
また、上記実施形態では、膜構成ごとに成膜に寄与するすべてのターゲット片を用いて成膜を行う場合の例で説明したが、成膜に用いるターゲット片を適宜間引いてもよい。
これにより、スパッタ装置1の構成を変えることなく、Si膜層LA1の膜厚が300nmより薄い薄膜や、DLC膜層LA2の膜厚が600nmよりも薄い薄膜を成膜することができる。
また、スパッタ装置1において、被処理体Wの移動速度を変えたり、停止時間を設けたり、電源の出力を変えたりすることで、膜厚を変える構成としてもよい。この場合、成膜に用いるターゲット片を間引いても、薄膜15A、15Bと同様な膜構成を成膜することができる。
【0105】
また、上記の実施形態および各変形例では、装置設定の条件によって、所望の膜厚が得られる場合の例で説明したが、膜厚誤差を低減するためには、ターゲット片と被処理体Wとの間に、例えば、水晶振動子型の膜厚モニタ等の、膜厚や成膜速度を検出する成膜量検出手段を設け、この検出出力を、被処理体Wの移動速度や、出力電力等にフィードバックして成膜を行ってもよい。
この場合、成膜量検出手段は、被処理体Wとともに移動させてもよいし、各ターゲット片上の成膜領域に配置してもよい。
【0106】
また、上記実施形態および各変形例の説明では、DCスパッタリング法に分類されるDCマグネトロンスパッタ法を採用した場合の例で説明したが、真空容器内で被処理体上にターゲット表面からターゲット粒子を放出させる適宜の成膜方法に適用することができる。例えば、RFスパッタリング法、電子ビームを用いた真空蒸着法等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更が可能である。
【0107】
また、上記実施形態および各変形例の説明では、複数の矩形状のターゲット片の長辺が隣接されて一方向に延ばされたターゲットを用いることにより、被処理体がターゲット上を直線状に移動する場合の例で説明したが、ターゲット片の形状は、矩形状には限定されず、被処理体の移動経路も直線状には限定されない。
例えば、ターゲット片を細長い扇形状に形成して、円弧状、円環状等の湾曲形状に配列してターゲットを構成し、移動経路を、このターゲット上で各ターゲット片を横断する円弧、円等の曲線状に設けてもよい。
【0108】
また、上記に説明したすべての構成要素は、本発明の技術的思想の範囲で適宜組み合わせたり削除したりして実施することができる。
【符号の説明】
【0109】
1、1A、1B、1C スパッタ装置(成膜装置)
2 真空容器
3 投入室
4 排出室
6 マグネットユニット
7 バッキングプレート(共用部電極)
8、8A、8B ターゲット部(ターゲット)
9 被処理体移動部
10、10A 移動ガイド
11、21 第1電源(電源)
11a、12a、21a、22a 陽極配線
11b、12b、21b、22b 陰極配線
12、22 第2電源(電源)
13、23 スイッチ部
15A、15B、15C 薄膜
50 成膜制御ユニット(成膜制御部)
51 被処理体移動制御部
52 出力制御部
53 記憶部
54 条件設定部
、…、E35、E、EAj、EBk 電極
A1 Si膜層
A2 DLC膜層
A3 混合膜層
B1 Cr膜層
B2 Pt膜層
、SAj、SBk 成膜領域
、…、T35、T、T、TA1、TAj、TAN、Ta1、Tak、Tb1、Tbk ターゲット片
W、W、W、W、W、W、W 被処理体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器の内部で、ターゲット表面からターゲット粒子を放出させ、該ターゲット粒子を被処理体の表面に付着させて薄膜を形成する成膜方法であって、
前記ターゲットを、予め定められた複数の膜構成に応じて2種類以上の材料からなる複数のターゲット片から構成し、該複数のターゲット片を独立に出力設定可能な複数の電源の陰極に電気的に接続された共用部電極上に設置するとともに、前記複数のターゲット片のいずれかの近傍に配置され前記電源の陽極にそれぞれ電気的に接続可能に設けられた複数の電極を設置し、
前記被処理体を、前記複数のターゲット片を横断する移動経路に沿って時間差を設けて2個以上移動させ、
前記被処理体のそれぞれに形成する前記膜構成の情報と、前記被処理体のそれぞれの移動位置の情報とに基づいて、前記複数の電極の少なくともいずれかに選択的に電力を供給し、
前記複数のターゲット片のうちいずれかから、選択的にターゲット粒子を放出させて、
前記被処理体のそれぞれの表面に前記被処理体のそれぞれに応じた前記膜構成の成膜を行う
ことを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
前記移動経路に沿って時間差を設けて移動される前記2個以上の被処理体を、前記移動経路上に同時に移動させ、前記移動経路上の2箇所以上で並行して成膜を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記2個以上の被処理体のうちの少なくともいずれかの被処理体に対して、前記2個以上の被処理体のうちの他の被処理体と異なる膜構成の成膜を行う
ことを特徴とする請求項2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記被処理体が、種類の異なるターゲット片を横断する際に、前記被処理体の移動速度および前記電源の前記出力電力の大きさの少なくともいずれかを変化させることによって、薄膜の組成が連続的に変化する傾斜層を形成する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の成膜方法。
【請求項5】
真空容器を有し、該真空容器の内部で、ターゲット表面からターゲット粒子を放出させ、該ターゲット粒子を被処理体の表面に付着させて薄膜を形成する成膜装置であって、
出力電力の大きさを独立に設定可能な複数の電源と、
予め定められた複数の膜構成に応じて2種類以上の材料からなり、前記ターゲットを構成する複数のターゲット片と、
前記複数の電極の陰極に電気的に接続され、前記複数のターゲット片を保持する共用部電極と、
前記複数のターゲット片の近傍に設置され、前記複数の電源の陽極に個別の配線を介して電気的に接続された複数の電極と、
前記被処理体を、前記複数のターゲット片を横断する移動経路上に時間差を設けて2個以上移動させる被処理体移動部と、
該被処理体移動部から通知される前記被処理体のそれぞれの移動位置の情報と、前記被処理体のそれぞれに形成する前記膜構成の情報とに基づいて、前記複数の電極の少なくともいずれかに選択的に電力を供給して、前記複数のターゲット片のうち少なくともいずれかから、前記被処理体のそれぞれに向けてそれぞれに対応するターゲット粒子を選択的に放出させる成膜制御部と、
を備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項6】
前記複数の電源は、0%〜100%の範囲で出力電力を独立に調整可能であり、
前記成膜制御部は、前記出力電力の大きさを制御できるようにした
ことを特徴とする請求項5に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記複数のターゲット片は、それぞれ平面視矩形状に形成され、それぞれの長辺が隣接するようにして、前記共用部電極上に設置され、
前記複数の電極は、前記ターゲット片を短辺側から挟んで対向する位置に配置された
ことを特徴とする請求項5または6に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記真空容器に隣接して、
前記真空容器と同一雰囲気を形成した状態で、前記被処理体を前記真空容器に投入する投入室と、
前記真空容器と同一雰囲気を形成した状態で、成膜が終了した前記被処理体を前記真空容器から排出する排出室と、
が設けられた
ことを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−111976(P2012−111976A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259152(P2010−259152)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】