説明

成膜装置、電気光学装置の製造方法

【課題】異物に起因するピンホールの発生を抑制し、欠陥のない膜を形成可能な成膜装置を提供することを目的とする。
【解決手段】被処理基板Xの被処理面Xsに膜材料を成膜する成膜部10と、成膜部10に接続され被処理面Xsに付着する異物Fを除去する異物除去部20と、を備え、異物除去部20は、被処理基板Xを収納する処理室21と、処理室21内に設けられ、被処理面Xsの異物Fを除去する噴出ノズル22と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置、電気光学装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
情報機器の多様化等に伴い、消費電力が少なく軽量化された平面表示装置のニーズが高まっている。この様な平面表示装置の一つとして、有機発光層を備えた有機エレクトロルミネッセンス装置(以下「有機EL装置」という)が知られている。
【0003】
有機EL装置は、陽極と陰極との間に有機発光層(発光層)や、電子注入層などの機能層が挟持される構成の有機発光素子(有機EL素子)を複数備えている。これらのうち、陰極や電子注入層は、電子を放出しやすい特性を備える材料で形成することから、大気中に存在する水分と反応し劣化しやすい。これらが劣化すると、ダークスポットと呼ばれる非発光領域を形成してしまう。そのため、有機EL装置では、有機発光素子から大気中の水分を遮断する封止構造が重要となる。
【0004】
近年では、数μmの厚みの薄い無機封止膜を用いて有機発光素子を外部雰囲気と遮断することが可能となっている。このような封止技術を用いると、内部に気体や液体を封入するための中空構造を備えず完全な固体構造が実現可能となる。固体構造を備える有機EL装置は、大幅な薄型化や軽量化が可能となり、更なる高機能・高品質な有機EL装置とすることが期待できる。
【0005】
上述した薄膜の無機封止膜は、透光性が高く透湿性の低い無機化合物を積層して形成されている。このような無機封止膜は、通常、スパッタや蒸着などの気相反応を用いて成膜を行っている。このような気相反応を行う成膜装置では、チャンバー内に有機EL装置を戴置し、所定のプロセスガスを導入して反応を行うが、プロセスガス導入の際の気流でチャンバー内の異物が巻き上げられ、有機EL装置の表面に付着しやすい。
【0006】
無機封止膜を形成する際に、例えば無機封止膜の成膜面に異物が存在すると、異物の陰となる部分で成膜不良となりピンホールを生じる。無機封止膜がピンホールを有していると、ピンホールから水分が浸入し、発光素子が劣化し続けることになる。すると、封止膜のピンホールにダークスポットが発生するのみならず、ピンホールを中心としてダークスポットが成長し、非発光部分を周囲に広げてしまうため、製品寿命が著しく短くなってしまう。
【0007】
このような気相反応による成膜時のピンホール抑制技術として、膜表面の異物を溶剤で洗浄して除去する洗浄工程を挟みながら成膜を複数回繰り返す方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−118440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記方法を有機EL装置の無機封止膜の形成に適用する場合、ピンホールが生じている状態で膜表面を溶剤で洗浄すると、ピンホールから溶剤が浸入し、かえって欠陥を成長させることになってしまう。
【0010】
また、例えば半導体基板における層間絶縁膜のように、有機EL装置以外にも薄膜を有する機器は多数存在するが、このような薄膜の成膜においても溶剤洗浄により成膜を行う基板が劣化してしまう場合には上記特許文献の方法を用いることができない。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、異物に起因するピンホールの発生を抑制し、封止欠陥のない成膜が可能な成膜装置を提供することを目的とする。また、異物に起因するピンホールの発生を抑制した電気光学装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明の成膜装置は、被処理基板の被処理面に膜材料を成膜する成膜部と、前記成膜部に接続され前記被処理面に付着する異物を除去する異物除去部と、を備え、前記異物除去部は、前記被処理基板を収納する処理室と、前記処理室内に設けられ、前記被処理面の異物を除去する異物除去手段と、を有することを特徴とする。
この構成によれば、成膜部内で異物が付着するおそれがあるとしても、併設された異物除去部における異物の除去とその後の成膜とを、連続した1つの装置内で繰り返し行うことができる。したがって、例えば、異物が付着した状態で成膜すると異物に起因する成膜の欠陥(ピンホール)が生じるが、異物除去を行った後に再度成膜を行うことで、欠陥部分が修復された良好な成膜を実現することが可能な成膜装置とすることができる。
【0013】
本発明においては、前記異物除去手段は、前記被処理面に不活性ガスを吹き付ける吹き付け手段を有し、前記異物除去部は、前記処理室内を脱気し、前記不活性ガスおよび吹き付けられる前記不活性ガスで飛散する前記異物を吸引する脱気手段を有することが望ましい。
この構成によれば、被処理面に付着する異物を吹き飛ばすことで良好な異物除去を実現することができる。
【0014】
本発明においては、前記吹き付け手段は、前記不活性ガスと共にドライアイスの微粉末を吹き付けることが望ましい。
この構成によれば、ドライアイスの微粉末が衝突するエネルギーを利用して異物をはじき飛ばし、より確実に異物を除去することができる。
【0015】
本発明においては、前記異物除去手段は、前記被処理面の異物に当接し、前記異物を粘着させて除去する粘着部材を有するが望ましい。
この構成によれば、粘着部材が異物に直接作用することで確実に異物を取り除き、良好な異物除去を実現することができる。
【0016】
本発明においては、前記処理室内に、前記被処理基板を戴置する戴置部と、前記戴置部に前記被処理基板を固定する保持部と、を有する基板保持手段が設けられていることが望ましい。
この構成によれば、保持部により被処理基板が固定されているために、異物除去手段が作用しても被処理基板がずれることなく、安定した異物除去が可能となる。
【0017】
また、本発明の電気光学装置の製造方法は、被処理基板における被処理面に膜材料の薄膜を成膜する薄膜形成工程と、前記被処理面に対して乾式の異物除去を行う異物除去工程と、を交互に繰り返す成膜工程を備えることを特徴とする。
この方法によれば、異物が付着した状態で成膜すると生じる成膜の欠陥(ピンホール)を修復しながら成膜を行うことができ、欠陥部分の無い良好な成膜を実現することができる。また、溶剤を用いない乾式の異物除去を行うため、被処理基板が溶剤に対して活性である場合であっても、被処理基板を劣化させることなく、良好に成膜を行うことができる。
【0018】
本発明においては、前記異物除去工程では、前記被処理面に不活性ガスを吹き付けることが望ましい。
この方法によれば、被処理面に付着する異物を吹き飛ばすことで良好な異物除去を実現することができる。
【0019】
本発明においては、前記異物除去工程では、前記不活性ガスと共にドライアイスの微粉末を吹き付けることが望ましい。
この方法によれば、ドライアイスの微粉末が衝突するエネルギーを利用して異物をはじき飛ばし、より確実に異物を除去することができる。
【0020】
本発明においては 前記異物除去工程では、前記被処理面の異物を粘着させる粘着部材を当接させて除去することが望ましい。
この方法によれば、粘着部材が異物に直接作用することで確実に異物を取り除き、良好な異物除去を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明が適用される有機EL装置の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る成膜装置を示す概略図である。
【図3】本発明の成膜装置の動作を示す説明図である。
【図4】本発明の製造方法を示す工程図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る成膜装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
以下、図を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る成膜装置について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の膜厚や寸法の比率などは適宜異ならせてある。
【0023】
まず、図1を用いて、本発明が製造に適用される有機EL装置について説明した後に、図2,3を用いて成膜装置1を用いた成膜工程について説明を行う。
【0024】
図1は、有機EL装置100の構成を示す断面図である。有機EL装置100は、基材101aに素子層101bが設けられた素子基板101と、素子層101b上に設けられた画素電極102と、画素電極102上に設けられた有機発光層103と、有機発光層103を覆って設けられた共通電極104と、を有している。
【0025】
有機発光層103は、複数の隔壁105で分割されており、分割された有機発光層103は、これを挟持する画素電極102,共通電極104と複数の有機EL素子110を形成している。また、素子基板101に対向配置され有機EL素子110を保護する保護基板120を備えており、素子基板101と保護基板120とは、シール層130および接着層135を介して貼り合わされている。
【0026】
また、複数の有機EL素子110は、順に積層して形成される電極保護層107と有機緩衝層108とガスバリア層109と、からなる保護層に覆われている。
【0027】
これらの保護層のうち、有機緩衝層108は、隔壁105の形状を反映して凹凸状に形成された電極保護層107の凹凸部分を埋め平坦化するために設けられ、エポキシ樹脂などの樹脂材料を用いて形成される。また、電極保護層107およびガスバリア層109は、透明性や密着性、耐水性、絶縁性、更にはガスバリア性を考慮し、無機材料を形成材料として形成されており、有機EL素子110への水分浸入を防ぐ機能を有している。本実施形態では、酸化シリコン(SiO)、酸窒化シリコン(SiON)、窒化シリコン(SiN)などのケイ素化合物を用いて形成される。
【0028】
このような電極保護層107およびガスバリア層109は、蒸着やスパッタなどの気相反応を用いて形成されるが、上述のように形成面に異物が付着した状態で成膜を行うと、ピンホールを生じやすく、信頼性が低下する。本発明の成膜装置は、隔壁105、有機EL素子110が形成された素子基板101(被処理基板X)に対し、このような電極保護層107およびガスバリア層109を形成する際に好適に用いられる。
【0029】
図2は、本実施形態の成膜装置1を示す概略図である。図に示すように、本実施形態の成膜装置1は、被処理基板Xの被処理面に所望の成膜を行う成膜部10と、成膜部10の壁面に接続され、被処理基板X表面に付着した異物を除去する異物除去部20と、異物除去部20内の真空度を制御する排気装置30とを有している。
【0030】
成膜部10は、密閉可能なチャンバー11と、加熱されることで膜材料を放出する材料源12と、チャンバー11内にプロセスガスを導入するプロセスガス導入ライン13と、被処理基板Xを戴置して保持するホルダー14と、チャンバー11内の圧力を測定する圧力計15と、を有している。成膜部10では、不図示の真空装置を用いてチャンバー11内を減圧し、材料源12を加熱することで、材料源12から放出される各種の膜材料を用いて被処理基板X上に成膜を行う。成膜部10には、スパッタ、蒸着など、通常知られた真空成膜法を実施可能な装置構成を用いることができる。
【0031】
ホルダー14は、被処理基板Xを戴置する戴置部14aと、被処理基板Xを背面から支持する保持部14bと、を有し、被処理基板Xの被処理面Xsを材料源12に対向させて保持する。図では、鈎状の保持部14bを用いて被処理基板Xを押さえることとしているが、被処理基板Xの固定が可能であれば、保持部14bの構成はこれに限らない。被処理面Xsには、材料源12から放出される膜材料が積層され、成膜が行われる。
【0032】
異物除去部20は、密閉可能なチャンバー21と、異物除去に用いるガスgを噴出する噴出ノズル22と、チャンバー21内の圧力を測定する圧力計25と、を有している。ガスgとしては、窒素や二酸化炭素、ヘリウム、アルゴンといった希ガスなどの不活性ガスを用いることができる。本実施形態の成膜装置1では、ガスgに窒素を用いる。
【0033】
成膜部10と異物除去部20との接続部は、ゲートバルブ24で密閉可能となっており、当該接続部を介して、被処理基板Xを戴置したホルダー14が、成膜部10と異物除去部20との間を移動可能に設けられている。
【0034】
排気装置30は、第1排気ライン33を介してチャンバー21に接続された第1ポンプ31と、第2排気ライン34を介して接続された第2ポンプ32と、第1ポンプ31と第2ポンプ32とを接続する第3排気ライン35と、を有している。また、第1排気ライン33に設けられたメインバルブ36と、第2排気ライン34に設けられたラフバルブ37と、第3排気ライン35に設けられたフォアバルブ38と、によりライン開度が調整されている。
【0035】
第1ポンプ31は、主にチャンバー21内を低い真空度で減圧する際の粗引きポンプとして用い、第2ポンプ32は、チャンバー21内を高い真空度で減圧する際に用いる。第1ポンプ31には、ドライポンプを好適に用いることができ、第2ポンプ32には、ドライポンプの中でもターボ分子ポンプを好適に用いることができる。
本実施形態の成膜装置1は、以上のような構成となっている。
【0036】
本実施形態の成膜装置1は、被処理基板Xに付着する異物の除去と、被処理基板Xに対する成膜と、を繰り返し行うことで、ピンホールのない成膜を可能とする構成となっている。
【0037】
被処理基板Xに付着する異物としては、次のようなものが挙げられる。通常、成膜部10のチャンバー11の内壁には、成膜処理時に膜材料が付着して堆積しており、この内壁に堆積した膜材料が剥がれ落ちることで細かな異物となる。このようにして生じる異物が、成膜時に成膜部10内へ導入されるプロセスガスの気流により巻きあげられ、被処理基板Xの表面に付着することで、被処理基板Xへの成膜時にピンホールの原因となる。
【0038】
また、スプラッシュと呼ばれる現象に由来して成膜時に材料源12から飛来し付着する粒子もピンホールの原因となる。スプラッシュとは、例えば、膜材料として酸化シリコンを用いスパッタ法にて成膜を行う場合に、膜材料の過熱部分においてケイ素が析出し、水しぶきのように弾けたSi粒子が基板の表面に付着する現象である。
【0039】
本実施形態の成膜装置1は、被処理面Xsに付着するこれらの異物の除去と、被処理基板Xの被処理面Xsへの膜材料の成膜と、を交互に行うことで、異物を除去しながら複数回に分けて成膜を行う。以下、図3、4を用いて成膜装置1の動作および、成膜工程について説明する。
【0040】
図3は、成膜装置1の動作を示す説明図である。まず、図3(a)に示すように、成膜部10において、所定の膜材料を用いて被処理基板Xに成膜を行う。被処理基板Xの被処理面Xsには、成膜時に付着した異物Fが存在している。成膜後、被処理基板Xを戴置したホルダー14は、ゲートバルブ24を介して異物除去部20へ移動し、移動後にはゲートバルブ24を閉じて、異物除去部20を密閉状態とする。
【0041】
次いで、図3(b)に示すように、ラフバルブ37を開き、第1ポンプ31を用いてチャンバー21内から排気する。排気しながら噴出ノズル22からガスgを噴出させると共に、噴出ノズル22に被処理面Xsを対向させて被処理基板Xを移動させると、ガスgにて被処理面Xsに付着する異物Fを吹き飛ばすことができる。吹き飛ばされた異物Fは、ガスgと共に、第2排気ライン34を介して排気される。
【0042】
この際、被処理基板Xは、ホルダー14の保持部14bにて裏面から押さえられる構成となっているため、ガスgの吹きつけによって被処理基板Xがずれることなく、異物除去が可能である。
【0043】
次いで、図3(c)に示すように、一定時間の異物除去作業後に、噴出ノズル22からのガスg噴出を終了する。その後、第1ポンプ31を用いてチャンバー21内を減圧にした後に、ラフバルブ37を閉じ、メインバルブ36およびフォアバルブ38を開いて、第2ポンプ32を用いてチャンバー21内を更に減圧にする。成膜部10のチャンバー11内は、0.2〜0.3Pa程度の圧力となっており、チャンバー21内の圧力が同等の圧力となるまで減圧する。
【0044】
その後、被処理基板Xを戴置したホルダー14は、ゲートバルブ24を介して成膜部10へ移動し、再び成膜を行う。後は、図3(a)から図3(c)の操作を繰り返し、必要とする膜厚となるまで成膜を行う。
【0045】
図4は、本実施形態の成膜装置1を用いた有機EL装置の製造工程を示す工程図である。ここでは、図1に示した有機EL装置100において、被処理基板X上に電極保護層107を形成する成膜工程について説明する。被処理基板Xは、従来公知の方法を用いて製造することができる。
【0046】
まず、図4(a)に示すように、成膜部10において異物Fが付着した被処理基板Xに対してSiONを成膜すると、被処理基板Xの被処理面Xsおよび異物Fの表面に無機膜107aが成膜される。この際、図において符号Aで示す異物Fの陰となる部分では、無機膜107aが形成されず残される。
【0047】
次いで、図4(b)に示すように、異物除去部20において窒素を吹き付け、異物Fを吹き飛ばして除去する。異物が除去された後には、無機膜107aに異物に起因するピンホールH1が形成される。
【0048】
次いで、図4(c)に示すように、異物を除去した被処理基板Xは、成膜部10へ再度移動し成膜処理が行われる。成膜部10の内部には、異物Fと成り得る膜材料の堆積物が浮遊しているため、成膜部10内に導入する被処理基板Xの表面には、再度異物Fが付着する。しかしこの時、微小なピンホールH1を埋没するように異物Fが付着することは略有り得ないため、異物FはピンホールH1と異なる位置である無機膜107aの表面に付着する。
【0049】
このような状態でSiONを成膜すると、無機膜107aの表面および異物Fの表面に無機膜107bが成膜される。この際、ピンホールH1は、形成される無機膜107bにより埋没し、同時に、異物Fの陰となる部分では、ピンホールH2が生じる。
【0050】
その後、異物除去と成膜とを繰り返すことで、図4(d)に示すように、複数(図では4層)の無機膜が積層してなる電極保護層107が形成される。各無機膜を成膜する毎に形成されるピンホールは、上層に形成される無機膜により埋没するため、電極保護層107の表面から被処理基板Xの表面に達する貫通孔は形成されず、封止性能が高い電極保護層107とすることができる。
以上のようにして、電極保護層107を形成する。
【0051】
以上のような構成の成膜装置1によれば、異物Fの除去を行った後に再度成膜を行うことで、ピンホールが修復された良好な成膜を実現することが可能な成膜装置1とすることができる。
【0052】
また、以上のような製造方法によれば、異物Fが付着した状態で成膜すると生じる成膜のピンホールH1,H2を修復しながら成膜を行うことができ、欠陥部分の無い良好な電極保護層107を成膜することができる。また、溶剤を用いない乾式の異物除去を行うため、溶剤に対して活性な有機発光層を劣化させることなく、良好に成膜を行うことができる。
【0053】
なお、本実施形態においては、電極保護層107の形成工程を示したが、同様にしてガスバリア層109を形成することができる。
【0054】
また、本実施形態においては、噴出ノズル22に被処理面Xsを対向させて被処理基板Xを移動させることとしたが、噴出ノズル22が移動して被処理基板X表面にガスgを吹き付ける構成としても構わない。
【0055】
また、本実施形態においては、噴出ノズル22からはガスgを噴出することとしたが、高圧のガスgを用いてドライアイス粉末を吹きつけ、ドライアイス洗浄を行うこととしても構わない。ドライアイス洗浄を行うと、ドライアイスの微粉末が衝突するエネルギーを利用して異物をはじき飛ばすことができ、より確実に異物を除去することができる。
【0056】
[第2実施形態]
図4は、本発明の第2実施形態に係る成膜装置2の説明図である。本実施形態の成膜装置2は、第1実施形態の成膜装置1と一部共通している。異なるのは、粘着フィルムを基板表面に接触させて異物を吸着除去することである。したがって、本実施形態において第1実施形態と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0057】
異物除去部20内には、粘着除去手段26が設けられている。粘着除去手段26は、被処理基板X上の異物を粘着除去する粘着フィルム(粘着部材)FL、使用前の粘着フィルムFLが巻かれている第1ローラー27、粘着フィルムFLを被処理基板Xに押しつけ、異物を除去する第2ローラー28、異物が付着した粘着フィルムFLを巻き取る第3ローラー29、を有している。
【0058】
粘着フィルムFLとしては、微小な異物を除去するためには十分な接着力を有し、被処理基板Xに無用な粘着成分を残存させない、微粘着性の粘着フィルムを用いることができる。このような粘着フィルムとしては、例えば、パナプロテクトET(パナック株式会社製)やパナプロテクトMK38(同社製)を例示することができる。
【0059】
被処理基板Xを戴置したホルダー14は、第2ローラー28において粘着フィルムFLと被処理基板Xとが接した状態で移動することで、被処理面Xs上に粘着フィルムFLを走査させ、異物を除去する。
本実施形態の成膜装置2は、以上のような構成となっている。
【0060】
この構成によれば、粘着フィルムFLが異物Fに直接作用することで確実に異物Fを取り除き、良好な異物除去を実現することができる。
【0061】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0062】
例えば、上述の実施形態においては、本発明の成膜装置を有機エレクトロルミネッセンス装置の製造に用いることとしたが、これに限るものではなく、他の装置の製造においても好適に用いることが出来る。
【符号の説明】
【0063】
1,2…成膜装置、10…成膜部、14…ホルダー(基板保持手段)、14a…戴置部、14b…保持部、20…異物除去部、21…チャンバー(処理室)、22…噴出ノズル(吹き付け手段、異物除去手段)、30…脱気手段(排気装置)、F…異物、FL…粘着フィルム(粘着部材、異物除去手段)、g…ガス(不活性ガス)、X…被処理基板、Xs…被処理面、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板の被処理面に膜材料を成膜する成膜部と、
前記成膜部に接続され前記被処理面に付着する異物を除去する異物除去部と、を備え、
前記異物除去部は、
前記被処理基板を収納する処理室と、
前記処理室内に設けられ、前記被処理面の異物を除去する異物除去手段と、を有することを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記異物除去手段は、前記被処理面に不活性ガスを吹き付ける吹き付け手段を有し、
前記異物除去部は、前記処理室内を脱気し、前記不活性ガスおよび吹き付けられる前記不活性ガスで飛散する前記異物を吸引する脱気手段を有することを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記吹き付け手段は、前記不活性ガスと共にドライアイスの微粉末を吹き付けることを特徴とする請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記異物除去手段は、前記被処理面の異物に当接し、異物を粘着させて除去する粘着部材を有する請求項1に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記処理室内に、前記被処理基板を戴置する戴置部と、前記戴置部に前記被処理基板を固定する保持部と、を有する基板保持手段が設けられていることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項6】
被処理基板における被処理面に膜材料の薄膜を成膜する薄膜形成工程と、
前記被処理面に対して乾式の異物除去を行う異物除去工程と、を交互に繰り返す成膜工程を備えることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項7】
前記異物除去工程では、前記被処理面に不活性ガスを吹き付けることを特徴とする請求項6に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項8】
前記異物除去工程では、前記不活性ガスと共にドライアイスの微粉末を吹き付けることを特徴とする請求項7に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項9】
前記異物除去工程では、前記被処理面の異物に粘着部材を当接させることを特徴とする請求項6に記載の電気光学装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−175629(P2010−175629A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15526(P2009−15526)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】