説明

成膜装置、露光装置、デバイス製造方法

【課題】部材に形成される膜の膜厚分布を高い精度で制御するために好適な技術を提供する。
【解決手段】膜を形成する成膜装置1は、供給源20から供給される材料によって部材30に膜が形成されるように部材30を保持する保持機構40と、保持機構40によって保持された部材30と供給源20との間に部材30から離隔して配置されて、部材30に形成される膜の膜厚分布を制御する制御板100とを備える。制御板100は、少なくとも部材30に対する膜の形成時は、保持機構40によって保持された部材30との相対位置が固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置、露光装置およびデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、表示デバイス、磁気ヘッドデバイス等のデバイスは、リソグラフィー工程を経て製造されうる。リソグラフィー工程では、原版(マクスまたはレチクルとも呼ばれる)のパターンを、フォトレジスト(感光剤)が塗布された基板(例えば、ウエハ、ガラスプレート)等に転写する露光装置が使用されうる。原版の微細なパターンを基板上に正確に転写するためには、原版および基板を均一な照度分布で露光する必要がある。均一な照度分布を得るためには、例えば、反射防止膜、反射膜、透過率分布補正フィルタ膜などの膜厚分布を高精度に制御する必要がある。特に、透過率分布補正フィルタ膜では、回転対称な膜厚分布を有するだけではなく、レンズの任意の位置に設計された膜厚分布が有することが要求される場合がある。
【0003】
特許文献1〜6には、膜厚分布を制御する方法が開示されている。これらのうち特許文献1〜4には、蒸発源と処理対象物との間に膜厚分布補正板を配置する方法が開示され、特許文献5、6には、膜厚分布補正板を用いることなく、処理対象物と蒸発源との相対位置を変更することによって膜厚分布を制御することが開示されている。特許文献1、6には、非回転対称な膜厚分布を形成しうることが開示されている。
【特許文献1】特開平10−026698号公報
【特許文献2】特開平10−030170号公報
【特許文献3】特開平6−192835号公報
【特許文献4】特開2002−285331号公報
【特許文献5】特開2001−152336号公報
【特許文献6】特開2004−269988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜4に記載された方法では、膜厚分布補正板と処理対象物との相対位置を変更することによって膜厚分布を制御するものであるので、その相対位置の変更の制御精度に膜厚分布が強く依存する。特許文献5、6は、蒸発源と処理対象物との相対位置を制御することによって膜厚分布を制御するものであるので、その相対位置の変更の制御精度に膜厚分布が強く依存する。
【0005】
本発明は、上記の背景に鑑みてなされたものであり、例えば、部材に形成される膜の膜厚分布を高い精度で制御するために好適な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面は、膜を形成する成膜装置に係り、前記成膜装置は、供給源から供給される材料によって部材に膜が形成されるように前記部材を保持する保持機構と、前記保持機構によって保持された前記部材と前記供給源との間に前記部材から離隔して配置されて、前記部材に形成される膜の膜厚分布を制御する制御板とを備え、前記制御板は、少なくとも前記部材に対する膜の形成時は、前記保持機構によって保持された前記部材との相対位置が固定される。
【0007】
本発明の第2の側面は、原版を照明する照明光学系と、該原版のパターンを基板に投影する投影光学系とを有し、該原版および該基板を走査方向に沿って走査しながら該基板を露光する走査露光装置に係り、前記走査露光装置は、前記照明光学系を構成する複数の光学部品および前記投影光学系を構成する複数の光学部品、の少なくとも1つの光学部品は、膜厚が所定厚さよりも厚いドット部が配列された膜厚分布を有し、前記ドット部の配列方向が前記走査方向に対して傾いている。
【0008】
本発明の第3の側面は、デバイス製造方法に係り、前記デバイス製造方法は、上記の走査露光装置によって基板を露光する工程と、該基板を現像する工程とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば、部材に形成される膜の膜厚分布を高い精度で制御するために好適な技術が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。
【0011】
図1は、本発明の好適な実施形態の成膜装置の概略構成を示す図である。本発明の好適な実施形態の成膜装置1は、例えば、真空蒸着装置として構成されうる。成膜装置1は、チャンバー10と、処理対象物である部材30を保持する保持機構40と、保持機構40によって保持された部材30に膜を形成するための材料を部材30に供給する供給源20とを備えている。供給源20は、図1に示す例では、固体材料を蒸発させて部材30に供給する蒸発源として、構成されうる。
【0012】
成膜装置1はまた、保持機構40によって保持された部材30と供給源20との間に部材30から離隔して配置された制御板100を備えている。制御板100は、部材30に形成される膜の膜厚分布を制御する。制御板100は、少なくとも部材30に対する膜の形成時は、保持機構40によって保持された部材30との相対位置が固定され。一方、制御板100は、例えば、部材30を保持機構40に保持させるときや、部材30を保持機構40から取り去るときなどにおいては、部材30との相対位置が変更される。
【0013】
成膜装置1はまた、成膜の終了時等に、供給源20と部材30(または、制御板100)との間の経路を塞ぐためのシャッター60を備えうる。成膜装置1はまた、チャンバー10の内部空間を減圧する排気機構50を備えうる。
【0014】
図2は、本発明の他の好適な実施形態の成膜装置の概略構成を示す図である。本発明の好適な実施形態の成膜装置2は、例えば、スパッタ装置として構成されうる。成膜装置2は、チャンバー10と、処理対象物である部材30を保持する保持機構40と、保持機構40によって保持された部材30に膜を形成するための材料を部材30に供給する供給源20とを備えている。供給源20は、図2に示す例では、ターゲットから材料を放出させるように構成されている。
【0015】
成膜装置2はまた、保持機構40によって保持された部材30と供給源20との間に部材30から離隔して配置された制御板100とを備えている。制御板100は、部材30に形成される膜の膜厚分布を制御する。制御板100は、少なくとも部材30に対する膜の形成時は、保持機構40によって保持された部材30との相対位置が固定され。一方、制御板100は、例えば、部材30を保持機構40に保持させるときや、部材30を保持機構40から取り去るときなどにおいては、部材30との相対位置が変更される。
【0016】
成膜装置2はまた、成膜の終了時等に、供給源20と部材30(または、制御板100)との間の経路を塞ぐためのシャッター60を備えうる。成膜装置1はまた、チャンバー10の内部空間を減圧する排気機構50を備えうる。
【0017】
図3は、制御板100の構成例を示す図である。制御板100は、制御板100の構造、および、部材30と制御板100との相対位置の少なくとも1つによって部材30に形成される膜の膜厚分布を制御する。制御板100は、例えば、部材30の膜形成領域に目標膜厚分布を形成するために、当該膜形成領域に対向する部分に膜厚制御部110を有する。膜厚制御部110は、部材30の膜形成領域に形成される膜の膜厚分布を制御するように配置された複数の開口120を有しうる。部材30に形成される膜の膜厚分布は、例えば、開口120のサイズ140、開口120の配置間隔130、部材30と膜厚制御部110(制御板100)との間隔、膜厚制御部110(制御板100)の厚さ等に依存しうる。部材30に形成される膜の膜厚分布は、例えば、目標とする透過率分布に基づいて設計されうる。
【0018】
開口120のサイズ140は、開口120を通過する材料の量を調整することによって膜厚を制御する。開口120の配置は、周辺の複数の開口120を通過する材料が部材30またはその近傍で重なり合う度合いを調整することによって膜厚を制御する。例えば、図4(a)に例示するように開口120の配置間隔130を狭くすると、供給源20から放出されそれぞれ複数の開口120を経由してきた材料が成膜面(部材30の表面)Aで重なり合って平均的な膜厚が厚くなる。また、図4(a)に例示するように開口120の配置間隔130を狭くすると、平均化された膜厚分布が形成される。
【0019】
一方、図4(b)に例示するように開口120の配置間隔130を広げると、成膜面Aでの重なり合いが弱まって平均的な膜厚が薄くなる。また、図4(b)に例示するように配置間隔130を広げると、開口120に対向する部分に形成される膜が厚くなる。これにより、開口120と開口120との間の遮蔽部分に対向する部分に対向する部分に形成される膜が薄くなり、開口120の配列周期を反映した膜厚分布が形成されうる。
【0020】
図4に矢印で示されているように供給源20と制御板100との相対位置を変更することで、成膜に寄与する材料が様々な角度で制御板100の開口120を通過しうる。部材30と制御板100との間隔を制御することにより、各々の開口120を通過した材料が部材30に供給される領域の大きさを制御することができる。部材30と制御板100との間隔を成膜面Aから成膜面Bに広げると、各々の開口120を通過した材料が部材30に供給される領域の大きさを広げることができる。よって、部材30と制御板100との間隔を成膜面Aから成膜面Bに広げると、平均化された膜厚分布を得ることができる。
【0021】
制御板100の厚さは、開口120の内壁面で材料を遮蔽する量を調整するので、特に、開口120に対して斜めに入射してくる材料が開口120を通過することを制限する。制御板100の厚さの調整は、部材30と制御板100との間隔の調整にも寄与し、例えば、制御板100の一部分の厚みを薄くすることで、部材30と制御板100との間隔を広げることができる。以上のような調整要素の調整により、部材30の表面に目標膜厚分布を有する膜を形成することができる。
【0022】
次に、目標膜厚分布を得ることができる複数の開口120の配置を決定するために好適な膜厚の計算方法を説明する。ここで、一例として、開口120が円形である場合を仮定する。図5は、単一の開口を通過する材料によって部材の表面に形成される膜の膜厚分布(これを基本膜厚分布と呼ぶことにする)を例示する図である。横軸は、部材30の表面における開口120の中心に対向する位置からの距離(r)を示し、縦軸は、部材30の表面における開口120の中心に対向する位置での膜厚で正規化した膜厚である。
【0023】
基本膜厚分布を示す関数を関数f(r)とする。関数f(r)は、例えば、多項式(f(r)=a+ar+a+a+・・・)、または、ガウス関数(f(r)=a・exp(−(r−b)/2c))などで表現することができる。
【0024】
開口の配列が図6に例示される配置である場合、各開口の中心からの距離rを関数f(r)に代入し、各々開口について計算される基本膜厚分布を積算することで、部材30の表面における座標(x、y)における膜厚d(x、y)は、次式で与えられうる。
【0025】
d(x、y)=f(r)+f(r)+f(r)+f(r)+・・・
ここで、r、r、r、r・・・は、開口0、1、2、3・・・の中心から座標(x、y)までの距離)。例えば、d(x、y)を単位格子領域150について計算し、当該単位格子領域150と同様の膜厚分布が部材30の全面に繰り返して形成されるものと考えることができる。
【0026】
基本膜厚分布は、例えば、成膜圧力が低く、成膜材料(粒子)の散乱の影響が少ない条件においては、幾何的なシミュレーションによって予測することができる。シミュレーションによる予測が難しい場合は、実験を通して基本膜厚分布を求めてもよい。制御板100に設ける開口は、円形に限定されるものではなく、例えば、楕円形、四角形、六角形の他、任意の形状とすることができる。この場合は、関数f(r)に代えて、開口の形状に依存する関数f(r、θ)を定義すればよい。なお、θは、開口の中心から見た座標(x、y)の方向(x軸に対する角度)を意味する。
【0027】
単一の開口を通過する材料によって形成される基本膜厚分布f(r)が基板面内で異なる場合は、それを考慮して各開口についての関数f(r)をそれぞれ設定して膜厚分布を計算してもよい。また、この場合には、単位格子領域150の膜厚分布のみならず部材30の表面の全域における膜厚d(x、y)を算出するべきである。
【0028】
以下、制御板を有する成膜装置の実施例を説明する。
【0029】
[第1実施例]
図1に示す成膜装置(真空蒸着装置)の実施例を説明する。部材30は、直径が200mmの平行平板のガラス基板であり、チャンバー10の内部空間における上部に配置され、保持機構40によって保持されている。保持機構40は、駆動機構(回転機構)としての遊星回転機構35によって駆動されて回転(より具体的には、自転および公転)する。
【0030】
公転軌道の半径は約400mmである。膜厚分布を制御する制御板100は、保持機構40によって保持される部材30に対して一定の相対位置を維持するように配置され、部材30と一体となって自転および公転する。これにより、成膜中に供給源20に対する保持機構40および制御板100の相対位置が変更され、部材30の膜形成領域に目標膜厚分布が形成される。
【0031】
供給源20は、固体材料を蒸発させて部材30に供給するように構成された蒸発源であり、チャンバー10の内部空間における下部に配置されている。供給源20としての蒸発源と部材30との間の高さ方向における距離は、約1000mmである。供給源20は、遊星回転機構35の中心軸に対して250mmオフセットした位置に設置されている。このような配置において、供給源20としての蒸発源から蒸発した材料(粒子)が制御板100(および、制御板100の開口を通過して部材30の表面)に入射する角度は、制御板100(部材30の表面)の法線方向に対して約0〜40°の範囲である。図7(a)、(b)は、部材30としてのガラス基板の膜形成領域210に形成される膜の膜厚分布を例示する図である。
【0032】
この実施例では、制御板100の厚さは1.0mmであり、部材30と制御板100との間隔は約2.0mmである。制御板100の膜厚制御部110には、直径が0.4〜0.8mmの円形の開口120が図6(b)のように六方最密状に配列されている。開口120の配置間隔は一定値(1.0mm)とした。1つの開口120を通過してきた材料(粒子)が部材30に付着する領域は、少なくとも隣りの開口120を通過してきた材料(粒子)が部材30に付着する領域と重なり合う。これにより、単位格子領域150(開口の中心と該開口に隣接する開口の中心とで画定される領域)における膜厚分布の不均一性は小さくなる。
【0033】
図8は、制御板100の開口120のサイズ(直径)と平均膜厚比との関係を例示する図である。図8において、平均膜厚比は、開口120の直径が0.8mmであるときの平均膜厚で規格化された平均膜厚である。開口120のサイズを変化させると膜厚分布が変化すること、即ち開口120のサイズを調整することによってより膜厚分布を制御することができることが分かる。
【0034】
開口のサイズ140は、単一の開口を通過する材料によって形成される基本膜厚分布をシミュレーションによって予測し、これに基づいて決定されうる。例えば、膜厚を厚くすべき方向に向かって開口のサイズ140を大きくすることによって目標膜厚分布を得ることができる。なお、制御板100を使用しない状態で成膜した場合には、部材30の面内の径方向における膜厚分布は、部材30の中心部から周辺部に向かって薄くなっていた。そこで、開口120のサイズ140と配置間隔130を決定する際に、制御板100を使用しない状態で成膜した場合の膜厚分布についても考慮することが好ましい。
【0035】
[第2実施例]
図2で示す成膜装置(スパッタ装置)の実施例を説明する。部材30は、直径が250mmの平行平板のガラス基板であり、チャンバー10の内部空間における側面側に配置され、保持機構40によって保持されている。保持機構40は、回転機構を含む駆動機構36によって駆動されて自転するとともに第1方向に沿って移動する。膜厚分布を制御する制御板100は、保持機構40によって保持される部材30に対して一定の相対位置を維持するように配置され、部材30と一体となって自転するとともに第1方向に沿って移動する。これにより、成膜中に供給源20に対する保持機構40および制御板100の相対位置が変更され、部材30の膜形成領域に目標膜厚分布が形成される。
【0036】
供給源20は、ターゲットから材料を放出させるように構成されていて、チャンバー10の内部空間に設置されている。供給源20は、駆動機構21により、部材30を保持する保持機構40の移動方向である前記第1方向と直交する第2方向に沿って駆動される。供給源20は、更に、不図示の駆動機構により、前記第1方向および前記第2方向に直交する回転軸のまわりで回転駆動される。以上のような供給源20の駆動によっても、成膜中に供給源20に対する保持機構40および制御板100の相対位置が変更され、部材30の膜形成領域に目標膜厚分布が形成される。
【0037】
供給源20と部材30との距離は、約100〜150mmである。この成膜装置は、制御板100を取り外して成膜を実施した場合に、部材30の面内における径方向の膜厚分布が均一になるように調整されている。成膜の材料(粒子)が制御板100(部材30)に入射する角度は、制御板100(部材30の表面)の法線方向に対して約0〜70°の範囲である。供給源20は、ターゲットを支持する金属製の支持部材と、該支持部材の背面に配置された磁石とを有する。ターゲットの近傍に配置されたガス供給部から放電ガス(希ガス)と反応性ガスを流して、DCマグネトロン放電によりターゲットから材料を放出させる。
【0038】
第1実施例と同様に、図7に示すような膜厚分布を有する膜を形成することを考える。第1実施例のように開口120のサイズ140で膜厚分布を制御する方法では、目標膜厚分布が部材30の面内で急峻に変化するものであっても、開口120のサイズ140を小さくすることによって当該目標膜厚分布を得ることができる。また、開口120のサイズ140を小さくすると、開口120の配置間隔130も小さくすることができるので、単位格子領域150における膜厚不均一性も小さくすることができる。しかし、その反面、開口のサイズ140を小さくすると、制御板100の加工が容易ではなくなる。その場合は、開口120の配置間隔130を調整することによって膜厚分布を制御することが好ましい。
【0039】
この実施例では、制御板100の厚さは1.0mmであり、部材30と制御板100との間隔は約2.0mmである。制御板100の膜厚制御部110には、直径が0.7mmの円形開口が図6(b)のように六方最密状に配列されている。1つの開口120を通過してきた材料(粒子)が部材30に付着する領域は、少なくとも隣りの開口120を通過してきた材料(粒子)が部材30に付着する領域と重な合う。
【0040】
図9は、制御板100の開口120の配置間隔と平均膜厚比の関係を例示する図である。図9において、平均膜厚比は、最小の配置間隔0.8mmの平均膜厚で規格化された平均膜厚である。開口120の配置間隔を変化させると膜厚分布が変化すること、即ち開口120の配置間隔を調整することによって膜厚分布を制御することができることが分かる。
【0041】
[第3実施例]
上記のような成膜装置を用いて製造されうる光学部品の具体例を説明する。ここでは、光学部品は、透過率分布補正フィルタであるとする。部材30としてのガラス基板の膜形成領域に目標膜厚分布を有する膜を形成することにより、目標透過率分布を有する光学部品を得ることができる。ここで、部材30としてのガラス基板を石英、成膜する材料をMgF、使用する光源の波長を193.4nm(ArFレーザー波長)とする。この場合、膜厚と透過率との関係は図10のようになる。MgFの膜厚に応じて3%程度透過率を低減することができる。図10に示す関係に基づいて目標膜厚分布を計算することができる。この膜厚分布に基づいて第1、第2実施例で示したように制御板100を設計する。設計した制御板100を用いてガラス基板の膜形成領域に目標膜厚分布を有する膜を形成することで、目標透過率分布を有する光学部品(透過率分布補正フィルタ)を製造することができる。3%よりも大きな透過率分布を要する場合は、MgFの代わりに高屈折率材料や多層膜を使用すればよい。
【0042】
[応用例]
図12は、本発明の好適な実施形態の露光装置である。本発明の好適な実施形態の露光装置300は、照明装置310によって原版320を照明して原版320のパターンを投影光学系330によって基板340に投影することによって基板340を露光する。
【0043】
照明装置310は、光源部312と、照明光学系314とを有する。光源部312は、例えば、光源部312としては、波長約193nmのArFエキシマレーザー、波長約248nmのKrFエキシマレーザーなどを使用することができるが、光源の種類はエキシマレーザーに限定されない。例えば、波長約157nmのFレーザーを使用してもよいし、その光源の個数も限定されない。また、光源部312として、レーザーが使用される場合、レーザー光源からの平行光束を目標ビーム形状に整形する光束整形光学系、コヒーレントなレーザー光束をインコヒーレント化するインコヒーレント化光学系を使用することが好ましい。或いは、光源部312として、水銀ランプまたはキセノンランプなどのランプも使用してもよい。
【0044】
照明光学系314は、複数の光学部品314aを有し、原版320を照明する光学系である。光学部品314aは、例えば、レンズ、ミラー、オプティカルインテグレーター、絞り等を含む。照明光学系314は、軸上光、軸外光を問わずに使用することができる。オプティカルインテグレーターは、ハエの目レンズや2組のシリンドリカルレンズアレイ(又はレンチキュラーレンズ)板を重ねることによって構成されるインテグレーター等を含むが、光学ロッドや回折素子に置換される場合もある。
【0045】
露光装置300は、照明装置310のほか、原版320を保持する原版ステージ325と、投影光学系330と、基板340を保持する基板ステージ345とを有する。
【0046】
露光装置300は、例えば、ステップ・アンド・リピート方式またはステップ・アンド・スキャン方式で原版320のパターンを基板340に投影して基板340に原版320のパターンを転写する。前者の方式の露光装置はステッパ―と呼ばれ、後者の方式の露光装置はスキャナー(走査露光装置)と呼ばれる。
【0047】
原版320は、例えば、石英製で、その上には基板340に転写されるべきパターンが形成されている。原版320から射出された回折光は、投影光学系330を通り基板340上に投影される。原版320と基板340とは、光学的に共役の関係にある。
【0048】
原版ステージ325は、チャックによって原版320を保持し、図示しない駆動機構によって駆動される。該駆動機構は、例えば、リニアモーターを含み、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向及び各軸の回転方向に原版ステージ325を駆動することで原版320を移動させることができる。
【0049】
露光装置300は、スキャナー(走査露光装置)として構成される場合、原版320と基板340とを互いに同期させて走査方向に沿って走査する。ここで、原版320又は基板340の面内にXY平面をとり、それらの走査方向をY方向、それに垂直な方向をX方向とする。また、原版320又は基板340の面に垂直な方向をZ方向とする。照明光学系314は、走査方向(Y方向)に長さが短いスリット状の照明視野を有していて、基板340は、スリット状の照明視野の走査方向における幅(スリット幅)で積算露光される。
【0050】
照明光学系314を構成する複数の光学部品の少なくとも1つの光学部品314aとして、前述の成膜装置を使用して製造される光学部品を使用することができる。光学部品314aは、目標透過率分布を有するように製造されるので、照明光学系314は、原版320のパターンを均一な照明光により照明することができる。
【0051】
また、第2実施例において説明したように、制御板100の開口の配置間隔が広くなると1つの開口を通過する材料によって形成される膜厚分布(ドット形状)が顕在化し、全体の膜厚分布に不均一性(凹凸)が生じる。膜厚分布に不均一性が生じると、原版または基板の面上で均一な照度分布が得られなかったり、当該面上で均一な瞳透過率分布が得られなかったりしうる。
【0052】
図11は、光学部品314aの透過率分布を例示する図である。この透過率分布は、透過率が所定透過率よりも低いドット部220が配列された分布を有しうる。このような透過率分布は、光学部品314aの表面に形成されている膜の膜厚分布に依存し、該膜厚分布は、光学部品314aの製造に使用される制御板100の開口120の配列に依存する。該膜厚分布は、膜厚が所定厚さよりも厚いドット部が配列された分布を有する。
【0053】
図11(a)のように透過率分布におけるドット部220の配列を原版320が走査されるY方向に平行にすると、X方向にけるドット部220の配置間隔230が広くなる。そのため、原版320(および基板340)における照度分布に配置間隔230の周期を有する斑が生じうる。一方、図11(b)のように、ドット部220の配列方向を走査方向に対してαだけ傾けて設計した場合、X方向における照度分布は、スリット状の照明視野の走査方向における幅(スリット幅)240の領域で平均化されるため、実質的な配置間隔230は狭くなる。図11(b)に示す例における実質的な配置間隔230は、図11(a)に示す例における配置間隔230の約1/4である。これにより、X方向におけるドット部220の配列による照度斑の影響を低減することができる。また、これ以外でも、走査露光した際にX方向におけるドット部の実質的な配置間隔を狭くすることで光学部材の透過率分布による照度斑の影響が低減することができればよい。
【0054】
投影光学系330は、複数の光学部品330aを有し、原版320のパターンを基板340に投影する。投影光学系330を構成する複数の光学部品の少なくとも1つの光学部品330aに対しても、前述の成膜装置を使用して製造される光学部品を使用することができる。光学部品330aは、目標透過率分布を有するように製造されるので、投影光学系330は、原版320のパターンを均一な照度で基板340に投影することができる。
【0055】
照明光学系314を構成する複数の光学部品および投影光学系330を構成する複数の光学部品の少なくとも1つの光学部品を前述の成膜装置を使用して製造し、ドット部の配列方向を走査方向に対して傾斜させることにより、照度斑を低減することができる。
【0056】
本発明の好適な実施形態のデバイス製造方法は、例えば、半導体デバイス、液晶デバイス等のデバイスの製造に好適である。前記方法は、感光剤が塗布された基板を、上記の走査露光装置を用いて露光する工程と、前記露光された基板を現像する工程とを含みうる。さらに、前記デバイス製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含みうる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の好適な実施形態の成膜装置(真空蒸着装置)の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の他の好適な実施形態に係る成膜装置(スパッタ装置)の概略構成を示す図である。
【図3】膜厚分布を制御する制御板の構成例を示す図である。
【図4】処理対象の部材に膜が形成される領域を模式的に示す図である。
【図5】単一の開口を通過する材料によって形成される膜の膜厚分布(基本膜厚分布)を例示する図である。
【図6】制御板の複数の開口の配列を例示する図である。
【図7】目標膜厚分布を例示する図である。
【図8】制御板の開口のサイズ(直径)と平均膜厚比との関係を例示する図である。
【図9】制御板の開口の配置間隔と平均膜厚比の関係を例示する図である。
【図10】膜厚と透過率との関係を例示する図である。
【図11】光学部品が有しうる透過率分布を例示する図である。
【図12】本発明の好適な実施形態の露光装置である。
【符号の説明】
【0058】
1 成膜装置
2 成膜装置
10 チャンバー
20 供給源
21 供給源側駆動機構
30 基板
35 遊星回転機構
36 部材側駆動機構
40 保持機構
50 排気機構
60 シャッター
70 ガス供給部
100 制御板
110 膜厚制御部
120 開口
130 開口の間隔
140 開口のサイズ
150 単位格子領域
210 膜形成領域
300 露光装置
310 照明装置
312 光源部
313 照明光学系
314a 光学部品
320 原版
325 原版ステージ
330 投影光学系
330a 光学部品
340 基板
345 基板ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜を形成する成膜装置であって、
供給源から供給される材料によって部材に膜が形成されるように前記部材を保持する保持機構と、
前記保持機構によって保持された前記部材と前記供給源との間に前記部材から離隔して配置されて、前記部材に形成される膜の膜厚分布を制御する制御板とを備え、
前記制御板は、少なくとも前記部材に対する膜の形成時は、前記保持機構によって保持された前記部材との相対位置が固定される、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記制御板は、前記部材に形成される膜の膜厚分布を制御するように配置された複数の開口を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記供給源に対する前記保持機構および前記制御板の相対位置を変更する駆動機構を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記駆動機構は、前記保持機構を前記制御板とともに回転させる回転機構を含むことを特徴とする請求項3に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記制御板は、前記制御板の構造、および、前記部材と前記制御板との相対位置の少なくとも1つによって前記部材に形成される膜の膜厚分布を制御する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記供給源は、固体材料を蒸発させて前記部材に供給するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記供給源は、ターゲットから材料を放出させるように構成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項8】
原版を照明する照明光学系と、該原版のパターンを基板に投影する投影光学系とを有し、該原版および該基板を走査方向に沿って走査しながら該基板を露光する走査露光装置であって、
前記照明光学系を構成する複数の光学部品および前記投影光学系を構成する複数の光学部品、の少なくとも1つの光学部品は、膜厚が所定厚さよりも厚いドット部が配列された膜厚分布を有し、前記ドット部の配列方向が前記走査方向に対して傾いている、
ことを特徴とする露光装置。
【請求項9】
デバイスを製造するデバイス製造方法であって、
請求項8に記載の走査露光装置によって基板を露光する工程と、
該基板を現像する工程と、
を含むことを特徴とするデバイス製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−106325(P2010−106325A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280276(P2008−280276)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】