説明

扁平モータ

【課題】簡単な構成で、確実に始動正転逆転ができ、しかも低電圧大電流での動作に適した扁平モータを実現する。
【解決手段】モータコイルを1本の導体で形成し、その折り曲げ周期をロータ磁石のSN磁極の周期に一致させた構造とし、このコイル二組を備え、一方を対応するロータ磁石のS極とN極の周期にあわせて配置するとともに他方を半周期ずれた配置とし、互いに半周期ずれた2相の電流で駆動するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は簡単な構成で、正逆転が可能な構造の低電圧大電流での使用に適した扁平モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の扁平モータの例としては小型化、薄型化を図ったもの(特許文献1)、始動を確実にする方法としてマグネットを用いるもの(特許文献2)、磁性体ワイヤを用いるもの(特許文献2)などがある。
【特許文献1】特許第3174517号 扁平モータ
【特許文献2】特開平10−336983 扁平モータの電機子構造
【特許文献3】特開2005−192320 扁平モータ
【0003】
以下従来の扁平モータについて説明する。文献1の図2にあるように従来の扁平モータにおいては、電導線(主に銅線)を複数回二等辺三角形状に巻いて一組のコイルを形成し、これを複数個組み合わせてリング状に配置してステータを構成する構造になっている。このコイル(ステータ)を文献1の図1に示されるようにロータを形成する磁石に近接して配置してモータを構成している。コイル各組は3相に結線されておりこの各相に電流を流すことで回転力を発生している。
このような扁平モータにおいて、ロータとステータの構成、配置に関し薄型化、確実な始動方法など多くの提案がある。文献1はコイルとその保持構造を工夫して薄型化を図っている。しかしながら従来の扁平モータにおいては、多数(6ないし9組)のコイルで構成され、さらに巻き数に応じてその厚みが増加するので簡単化や薄型化の限界がある。またロータコイルの位置がステータ磁石のS極とN極の境界に停止したときには磁石の磁束とコイル電流が直交しないため電磁力が発生しない、または弱い状態に置かれ、始動しにくいという課題があった。3相駆動の場合にはホールセンサなどのセンサにてその位置を検出し、ロータが適当な位置になるように初期駆動して解決することが出来るが相応の費用のかかる問題であった。
文献2は確実な始動が可能なようにコイルの停止位置を図3に示すように磁石を用いてステータ磁石のS極とN極の境界に停止しないようにしている。文献3は磁石のかわりに磁性体ワイヤを用いている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上に述べたように従来の扁平モータにおいては、簡単な構成であること、始動や正転逆転を容易にすることなどの課題があった。また従来の扁平モータにおいてはコイルが複数回(数十ないし数百回)の巻き線から構成されるため抵抗(インピーダンス)が高くなり、低電圧では大きな電流を流すことが出来ず低電圧大電流での使用には適していない形態であった。
一方、近年、半導体素子の微細化および大容量化が進み、これに伴って動作電圧は低下、動作電流は上昇傾向にある。半導体素子の塊ともいえる最近のマイクロプロセッサーを使用したパーソナルコンピュータ(以下パソコン)では、その電源としても低電圧大電流化(たとえば電源電圧1V前後で電流が100A近いもの)の傾向にある。
また超電導現象を応用した超電導モータなどにおいても低電圧大電流の分野がある。超電導モータは巻き線に超電導線を用いたものであり、超電導線は極低温(たとえばマイナス200度)におくことによってその抵抗値が0になるもので、モータ巻き線に応用した場合発熱がなく効率の改善が図れる。モータ巻き線の電気抵抗が0のため電源に対して本質的に低電圧大電流の要求がある。
本発明はこのような低電圧大電流の応用分野を背景に考案したもので、前述の従来の扁平モータの課題を改善するとともに低電圧大電流での使用に適したモータを提供するものである
【課題を解決するための手段】
【0005】
コイルは1本の導体で形成し、対応するロータ磁石の回転方向と直行する直線部分を有し、S極とN極の周期にあわせて折り曲げて周期的形状とする。この導体1本でなるコイル二組を備え、一方を対応するロータ磁石のS極とN極の周期にあわせて配置するとともに他方を半周期ずれた配置として、この二組のコイルを互いに半周期ずれた2相の電流で駆動するようにしたものである。
【0006】
上記の構成による扁平モータを動作させるには、二組のコイルに2相の駆動電流を与える。たとえば一方のコイルにデューティ50%の駆動電流をながし他方のコイルに同じくデューティ50%の半周期遅れた駆動電流を流すと、ロータ磁石がどのような位置にあってもどちらかの、あるいは両方のコイルの駆動電流との間で電磁力が発生し始動、回転する。この場合二組のコイルの電流の位相を変えることで回転方向を逆転することが出来る。たとえば上記、他方のコイルに半周期遅れた電流を与えて回転している場合を正転とすれば、これを半周期進んだ電流とすることで回転方向は逆転する。回転速度は駆動電流の周期を変えることで制御できる。
【発明の効果】
【0007】
従来複数組(6−9組)のコイルが二組のコイルですむので構造が簡単になり薄型化も可能である。また駆動回路も従来の3相駆動回路に比べ2相駆動回路で澄むので回路構成が簡単になる。二つのコイルは互いに半周期ずれているためロータ磁石のS極とN極の間に一方のコイルが停止した場合にも他方のコイルは半周期ずれたS極またはN極の中央に位置するので必ず電磁力が発生し、駆動が確実に出来る、さらに低電圧大電流での使用に適した扁平モータが実現できる、などの効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明の代表的実施例について説明する。図1はドーナツ型の形状で表裏方向(厚み方向)にNSの磁極をもつ磁石を、円周方向に8分割、8極、交互にS,N磁極を持つように着磁したロータ磁石である。図2は端子A1−A2を持つコイルAと端子B1−B2をもつコイルBであり、二つのコイルは図に示すように互いに半周期ずれた配置で構成されている。コイルAとBは導体版(銅版)で構成し絶縁された状態で貼り付けられている。ロータ磁石の面上に配置されるコイルの直線部分がトルクに寄与する有効部分である。外円周及び内円周にあるコイル部分は作図上直線であるが実際にはロータの外円周及び内円周に沿った円弧とした形状が好ましい。二つのコイルの折り曲げ周期(ピッチ)は図3のようにロータ磁石の極間のピッチに対応している、つまりロータ磁石のS極とN極の間に一方のコイルが停止した場合に他方のコイルは半周期(半ピッチ)ずれているためS極またはN極の中央に位置する関係となる。図4は本発明の扁平モータの概略図でありコイルA、BからなるステータHはカバーJに固定して取り付けられている、磁石CとヨークDで構成されるロータEは回転軸Fに取り付けられている。回転軸FはベアリングGを解してカバーに取り付けられ回転可能になっている。
【0009】
次に上記構成の動作を説明する。二組のコイルA,Bに図6に示す2相の駆動電流a、bを与える。駆動電流aは周期の50%ごとに電流の方向が反転し、駆動電流bは同じく50%ごとに方向が反転するがaからみて半周期遅れた波形である。ここで周期はロータ磁石のS極、N極の周期に一致している。ロータ磁石がたとえば図3の位置にありAのコイルが磁極間にあって磁気力が発生しない場合でもBのコイルにはS極の上では内向き(軸方向)の、n極の上では外向き(反軸方向)の電流となり、ファラデーの法則から右方向の電磁力が発生する。このとき他の各磁極の上でも同様の電磁力が発生するがコイルが固定されているのでロータ磁石が左回りに始動、回転する。磁石が回転してBコイルの下にS極とN極の間が来たとき、電流は逆転する。このときBコイルの下には磁極がないので電磁力は発生しないが、AコイルはS極上にあり、電流は内向きであるので右方向の電磁力が発生している。よってロータ磁石はさらに左に回転する。次にBコイルがN極上になると、電流が逆転しているので外向きの電流でありファラデーの法則から右方向の電磁力が発生する。つまりA、Bのコイルの電流波形によってS極の上では内向き、n極の上では外向きの電流が流れるように駆動される。
【0010】
したがってA、Bのコイルがどのような位置にあってもどちらかの、あるいは両方のコイル駆動電流とロータ磁石の間で電磁力が発生し始動、回転する。この場合二組のコイルの電流の位相を変えることで回転方向を逆転することが出来る。たとえば上記、他方のコイルに半周期遅れた電流を与えて回転している場合を正転とすれば、これを半周期進んだ電流とすることで回転方向は逆転する。回転速度は駆動電流の周期を変えることで制御できるが、より正確な制御のためには回転センサーによって現在の回転数を検出し、設定値との演算をして最適な周波数、電流値などを供給することで可能である。
以上のように単純な構成で確実に始動し、回転方向が制御できる。またコイルの数が少なく、巻き線が少ないため抵抗分(インピーダンス)が小さいので低電圧大電流に適した扁平モータを実現できる。
【0011】
コイルは図5のように薄い絶縁基板の両面に形成してもよい、つまりA面にA1−A2のコイルを形成し、B面にはB1−B2のコイルを半周期ずらして形成してステータを構成することもできる。
またコイル部分あるいは全体を極低温環境において該コイル部分に超電導体を使用することで超電導モータとすることが出来る。この場合コイルにはさらに大きな電流が流せるので特性(トルクなど)改善が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0012】
本発明は低電圧で動作する小型機械の動力源として、あるいは小型低電圧の発電装置などに利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ロータ磁石
【図2】コイル
【図3】ロータ磁石とコイルの配置
【図4】本発明の扁平モータの構造図
【図5】コイルの構成例
【図6】駆動波形図
【符号の説明】
【0014】
A コイルA
B コイルB
C ロータ磁石
D ヨーク
E ロータ
F 回転軸
G ベアリング
H ステータ
J カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低電圧大電流での使用に適した扁平モータであってコイルを1本の導体で形成し、その折り曲げ周期をロータ磁石のSN磁極の周期に一致させた構造とし、このコイル二組を備え、一方を対応するロータ磁石のS極とN極の周期にあわせて配置するとともに他方を半周期ずれた配置とする扁平モータ。
【請求項2】
請求項1においてコイル部分が超伝導体で構成された扁平モータ

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−153358(P2009−153358A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341851(P2007−341851)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(507258537)
【Fターム(参考)】