説明

手押し車

【課題】枠部材、前部枠体及び後部枠体の折り畳み動作を同時に行う、又は、組み立て動作を同時に行うことが可能な手押し車を得る。
【解決手段】前部枠体1a、1bと、後部枠体2a、2bと、背部枠体3a、3bと、可動部材4a、4bと、枠部材5と、第1連結杵6a、6bと、第2連結杵7a、7bと、を備えている。可動部材4a、4bは、前部枠体1a、1bの長手方向に沿って、接続部材12a、12bの下端部から前部枠体1a、1bの途中までの間を可動自在となるように設けられている。第1連結杵6a、6bは、各一端部が枠部材5の各側部に回動自在に接続され、各他端部が各可動部材4a、4bに回動自在に接続されているものである。第2連結杵7a、7bは、各一端部が各後部枠体2a、2bの略中間部に回動自在に接続され、各他端部が各可動部材4a、4bに回動自在に接続されているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物を運搬したり、座ることが可能であったりする、いわゆるシルバーカー、ベビーカー、及びショッピングカーなどを含む手押し車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、手押し車は公知となっている。例えば、下記特許文献1には、走行形態に組み立てる場合には、操作レバーを手で引下げ操作し、前後枠体を前後方向に開角しながら、前部枠体を背部枠体に沿って前側斜め下方に引下げ、着座するときには座枠を前方に回動して使用し、折畳み形態に変形する場合には、座枠を前部枠体に沿う状態に折畳んだ後、操作レバーを把持する手で解除レバーをロック解除操作し、操作レバーを手で引上げ操作して、前後枠体を所定角度に閉角しながら、前部枠体の略全長を背部枠体に沿う状態に引き寄せるように動作させる、手押し車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−313796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の手押し車においては、座枠(枠部材)の折り畳み動作又は組み立て動作を、手押し車の前部枠体及び後部枠体の折り畳み動作又は組み立て動作と別々に行う必要があったので、動作が煩雑であり、近年では、座枠(枠部材)、前部枠体及び後部枠体の折り畳み動作を同時に行う、又は、組み立て動作を同時に行うことができるものが望まれていた。
【0005】
そこで、本発明の目的は、座枠(枠部材)、前部枠体及び後部枠体の折り畳み動作を同時に行う、又は、組み立て動作を同時に行うことが可能な手押し車を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、下端部に車輪が枢着されている左右一対の前部枠体と、上端部が前記前部枠体の上端部に回動自在に接続され、下端部に車輪が枢着されている左右一対の後部枠体と、上端部にハンドル部が設けられ、下端部が前記前部枠体の上端部に接続されている左右一対の背部枠体と、前記前部枠体に沿って可動自在に設けられている左右一対の可動部材と、両先端部が前記前部枠体の上端部に回動自在に接続されている略コ字状の枠部材と、各一端部が前記枠部材の各側部に回動自在に接続され、各他端部が各前記可動部材に回動自在に接続されている左右一対の第1連結杵と、各一端部が各前記後部枠体の略中間部に回動自在に接続され、各他端部が各前記可動部材に回動自在に接続されている左右一対の第2連結杵と、を備えているものである。
【0007】
上記(1)の構成によれば、簡易な構成であるにも関わらず、枠部材(座枠などに使用可能)、前部枠体及び後部枠体の折り畳み動作を同時に行う、又は、組み立て動作を同時に行うことが可能な手押し車を提供できる。また、部品点数も従来のものに比べ少なくできるので、従来に比べて小型化及び低コスト化した手押し車を提供できる。
【0008】
(2) 上記(1)の手押し車においては、前記可動部材が前記前部枠体の車輪側に可動した際、前記第1連結杵と前記前部枠体との間及び前記第2連結杵と前記前部枠体との間のうち少なくとも一方に、人の指以上の隙間が形成されていることが好ましい。
【0009】
上記(2)の構成によれば、折り畳んだ際に指が挟まれることを抑制できる。したがって、より安全に折り畳むことができる手押し車を提供できる。
【0010】
(3) 上記(1)又は(2)の手押し車においては、前記可動部材を一体的にかつ連通自在に連結する連結水平パイプと、前記連結水平パイプの中空部内に摺動自在に収納された左右一対のロックピンと、前記各ロックピンに固定され、かつ前記連結水平パイプの所定個所に軸心方向に形成したスロットから外側に突出する操作ノブとを有したロック機構を備えており、前記前部枠体の対向面側に、前記ロックピンと協働する複数個の位置決め穴が前記前部枠体の長手方向に形成され、前記可動部材について前記前部枠体に対する高さ位置を調整した上で、各操作ノブを操作して、各ロックピンの先端部を前記前部枠体の該当位置決め穴に差し込むことにより、前記可動部材を前記前部枠体に固定可能にしたものであることが好ましい。
【0011】
上記(3)の構成によれば、前記可動部材をスライドさせながらロックピンを挿入するという簡単な作業で、前記可動部材を前記前部枠体に固定又は固定解除できる。したがって、高齢者又は身体的弱者でも、安全に使用したり、持ち運びしたりすることができる手押し車を提供できる。また、ロックピンが連結水平パイプの中空部から取り外されることがないので、ロックピンの紛失がない。また、ロック機構が前部枠体より内側に配設されているので、安全衛生面やデザイン面で優れている。
【0012】
(4) 上記(3)の手押し車においては、前記ロック機構が、前記左右一対のロックピンの間に配設されているとともに各前記ロックピンを対向する前記前部枠体方向に向けてそれぞれ弾性的に付勢する圧縮弾性部材を備えており、左右の前記操作ノブを寄せた状態で、各前記ロックピンの先端部を各前記前部枠体の該当位置決め穴に位置決めしたあと、左右の前記操作ノブを離すことによって各前記ロックピンの先端部を前記前部枠体の該当位置決め穴に差し込むものであることが好ましい。
【0013】
上記(4)の構成によれば、各ロックピンを位置決め穴に付勢する付勢力が、常時、加えられているので、前記可動部材をわずかに上下にスライドさせながら位置決めする際に、付勢されたロックピンが位置決め穴に自動的に挿入されるとともに、挿入後においては、ロックピンが位置決め穴から抜けにくくなっている。したがって、高齢者又は身体的弱者でも高さ調節を確実且つ容易に行なうことができる手押し車を提供できる。
【0014】
(5) 上記(1)又は(2)の手押し車においては、前記前部枠体の上端部を一体的にかつ連通自在に連結する連結水平パイプと、前記連結水平パイプの中空部内に摺動自在に収納された左右一対のロックピンと、前記各ロックピンに固定され、かつ前記連結水平パイプの所定個所に軸心方向に形成したスロットから外側に突出する操作ノブとを有したハンドル部高さ調節機構を備えており、前記背部枠体の対向面側に、前記ロックピンと協働する複数個の位置決め穴が前記背部枠体の長手方向に形成され、前記背部枠体について前記前部枠体の上端部に対する高さ位置を調整した上で、各操作ノブを操作して、各ロックピンの先端部を前記背部枠体の該当位置決め穴に差し込むことにより、前記背部枠体を前記前部枠体に固定可能にしたものであることが好ましい。
【0015】
上記(5)の構成によれば、前記背部枠体をスライドさせながらロックピンを挿入するという簡単な作業で、前記背部枠体を前記前部枠体に固定又は固定解除できる。したがって、高齢者又は身体的弱者でも、安全に使用したり、持ち運びしたりすることができる手押し車を提供できる。また、ロックピンが連結水平パイプの中空部から取り外されることがないので、ロックピンの紛失がない。また、ハンドル部高さ調節機構が背部枠体より内側に配設されているので、安全衛生面及びデザイン面で優れている。
【0016】
(6) 上記(5)の手押し車においては、前記ハンドル部高さ調節機構が、前記左右一対のロックピンの間に配設されているとともに各前記ロックピンを対向する前記背部枠体方向に向けてそれぞれ弾性的に付勢する圧縮弾性部材を備えており、左右の前記操作ノブを寄せた状態で、各前記ロックピンの先端部を各前記背部枠体の該当位置決め穴に位置決めしたあと、左右の前記操作ノブを離すことによって各前記ロックピンの先端部を前記背部枠体の該当位置決め穴に差し込むものであることが好ましい。
【0017】
上記(6)の構成によれば、各ロックピンを位置決め穴に付勢する付勢力が、常時、加えられているので、前記背部枠体をわずかに上下にスライドさせながら位置決めする際に、付勢されたロックピンが位置決め穴に自動的に挿入されるとともに、挿入後においては、ロックピンが位置決め穴から抜けにくくなっている。したがって、高齢者又は身体的弱者でも高さ調節を確実且つ容易に行なうことができる手押し車を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る手押し車を示した概略斜視図である。
【図2】図1に示した手押し車の概略側面図である。
【図3】図1に示した手押し車の概略背面図である。
【図4】図1に示した手押し車の概略上視図である。
【図5】図1に示した手押し車のロック機構の断面図である。
【図6】(a)は図2に示した状態から折りたたむ際の動作途中を示す手押し車の側面図、(b)は(a)に示した状態から折りたたみ動作が完了した際の手押し車の側面図、(c)は(b)に示した状態からハンドル収納動作が完了した際の手押し車の側面図である。
【図7】本発明の実施形態の変形例に係る手押し車を示した概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1〜図7を参照して、本発明の実施形態に係る手押し車を説明する。なお、便宜のため、後述するブレーキ用ワイヤーについては、図示していないことがある。
【0020】
図1〜図3に示したように、手押し車100は、左右一対の前部枠体1a、1bと、左右一対の後部枠体2a、2bと、左右一対の背部枠体3a、3bと、左右一対の可動部材4a、4bと、枠部材5と、左右一対の第1連結杵6a、6bと、左右一対の第2連結杵7a、7bと、を備えているものである。
【0021】
前部枠体1a、1bのそれぞれの下端部には、首振り機構8を介して車輪9が枢着されている。車輪9は、2輪を並列してなるものであり、該2輪は首振り機構8に設けられている軸(図示せず)の両端部に回転自在に軸支されている。また、前部枠体1a、1bのそれぞれの上端部には、背部枠体3a、3bがスライド可能に内挿されて接続される筒部12a、12bと、後部枠体2a、2bの上端部が回動自在に支持・接続される支持部12a、12bとを有した接続部材12a、12bが設けられている。また、接続部材12a、12b間には、ハンドル部高さ調節機構13が設けられている。
【0022】
ハンドル部高さ調節機構13は、図5に示すように、前部枠体1a、1bの上端部を一体的にかつ連通自在に連結する連結水平パイプ14と、連結水平パイプ14の中空部14a内に摺動自在に収納された左右一対のロックピン15a、15bと、ロックピン15a、15bのそれぞれに固定され、かつ連結水平パイプ14の所定個所に軸心方向に形成したスロット16a、16bから外側に突出する操作ノブ17a、17bとを備えているものである。また、背部枠体3a、3bの対向面側には、ロックピン15a、15bと協働する複数の位置決め穴(図5の符号18a、18b、図1の符号18c、符号18cに対向する前部枠体1aの内側部分(図示せず)にあるもの)が背部枠体3a、3bの長手方向に形成されており、背部枠体3a、3bについて前部枠体1a、1bの上端部に対する高さ位置を調整した上で、各操作ノブ17a、17bを操作して、各ロックピン15a、15bの先端部を背部枠体3a、3bの該当位置決め穴に差し込むことにより、背部枠体3a、3bを接続部材12a、12bを介して前部枠体1a、1bに固定可能にしたものである。また、ハンドル部高さ調節機構13は、左右一対のロックピン15a、15bの間に配設されているとともに各ロックピン15a、15bを対向する背部枠体3a、3b方向に向けてそれぞれ弾性的に付勢する圧縮バネ19(圧縮弾性部材の一例)を備えており、左右の操作ノブ17a、17bを寄せた状態で、各ロックピン15a、15bの先端部を各背部枠体3a、3bの該当位置決め穴に位置決めしたあと、左右の操作ノブ17a、17bを離すことによって各ロックピン15a、15bの先端部を背部枠体3a、3bの該当位置決め穴に差し込むことができるようになっている。
【0023】
後部枠体2a、2bそれぞれの下端部には、前後方向に回転自在な車輪10が枢着されている。また、後部枠体2a、2bのそれぞれの上端部は、前部枠体1a、1bの上端部に設けられた接続部材12a、12bに所定角度回動自在となるように接続されている。
【0024】
背部枠体3a、3bの上端部にはハンドル部11が設けられ、背部枠体3a、3bのそれぞれの下端部は接続部材12a、12bの筒部12a、12bにスライド可能に内挿され接続されている。
【0025】
ハンドル部11には、ハンドル部11長手方向に沿ってレバー31が設けられている。このレバー31の一端部は、ハンドル部11の側部に設けられた軸(図示せず)に接続されており、レバー31は、該軸を中心にハンドル部11回りに所定角度回動できるようになっている。また、ハンドル部11の側部において前記軸を内部に有するように、ボタン部30が設けられている。また、レバー部31の一端部は、ボタン部30内においてブレーキ用ワイヤー32を介してブレーキ本体と繋がっている。なお、ボタン部30を押動させることにより、レバー31を下方に回動させて、後部枠体2a、2b下部に設けられた車輪10の回転を停止させるブレーキ本体(図示せず)を動作させるとともにロックすることができるようになっている。また、レバー31を上方に回動することで、ボタン部30のロックを解除することできるように構成されている。
【0026】
可動部材4a、4bは、前部枠体1a、1bの長手方向に沿って、接続部材12a、12bの下端部から前部枠体1a、1bの途中までの間を可動自在となるように設けられている。また、可動部材4a、4b間には、可動部材4a、4bを前部枠体1a、1bの所定位置でロックするロック機構20が架設されている。
【0027】
ロック機構20は、接続部材12a、12bの代わりに可動部材4a、4bを用いている点と、可動部材4a、4bとともに移動することが可能である点以外、図5に示したハンドル部高さ調節機構13とほぼ同様の構成を有したものである。詳述すると、ロック機構20は、可動部材4a、4bを可動部材4a、4bを一体的にかつ連通自在に連結する連結水平パイプ21と、連結水平パイプ21の中空部内に摺動自在に収納された左右一対のロックピン(図示しないが、図5のロックピン15a、15bと同様のもの)と、該ロックピンのそれぞれに固定され、かつ連結水平パイプ21の所定個所に軸心方向に形成したスロット23a、23b(図1参照)から外側に突出する操作ノブ22a、22b(図1参照)と、を備えているものである。また、前部枠体1a、1bの対向面側には、上記ロックピン(図示せず)と協働する位置決め穴(図1の符号24、符号24に対向する前部枠体1aの内側部分(図示せず)、前部枠体1b上部の内側部分(図示せず)、符号24に対向する前部枠体1aの上部の内側部分(図示せず)など)が前部枠体1a、1bの長手方向に形成されており、可動部材4a、4bについて前部枠体1a、1bに対する高さ位置を調整した上で、各操作ノブ22a、22bを操作して、各ロックピンの先端部を前部枠体1a、1bの該当位置決め穴に差し込むことにより、可動部材4a、4bを前部枠体1a、1bに固定可能にしたものである。また、ロック機構20は、上述した左右一対のロックピン(図示せず)の間に配設されているとともに各ロックピンを対向する前部枠体1a、1b方向に向けてそれぞれ弾性的に付勢する圧縮バネ(図示しないが、図5の圧縮バネ19と同様のもの)(圧縮弾性部材の一例)を備えており、左右の操作ノブ22a、22bを寄せた状態で、各ロックピンの先端部を各前部枠体1a、1bの該当位置決め穴に位置決めしたあと、左右の操作ノブ22a、22bを離すことによって各ロックピンの先端部を前部枠体1a、1bの該当位置決め穴に差し込むことができるようになっている。
【0028】
枠部材5は、略コ字状の部材であって、シートを張ることによって座部としたり、袋状シートの縁部を取り付けることによって荷物入れ部の一部としたりすることができるようになっている。
【0029】
第1連結杵6a、6bは、各一端部が枠部材5の各側部に回動自在に接続され、各他端部が各可動部材4a、4bに回動自在に接続されているものである。
【0030】
第2連結杵7a、7bは、各一端部が各後部枠体2a、2bの略中間部に回動自在に接続され、各他端部が各可動部材4a、4bに回動自在に接続されているものである。
【0031】
次に、図1、図2及び図6を参照しつつ、手押し車100の折り畳み動作及び組み立て動作の一例について説明する。
【0032】
<折り畳み動作>
まず、図1及び図2に示した手押し車100の使用状態から、ロック機構20の操作ノブ22a、22bを寄せるように操作して該当位置決め穴からロックピン(図示せず)を解放し、可動部材4a、4bを可動させ、図6(a)、図6(b)の順に、枠部材5及び後部枠体2a、2bを折り畳む。ここで、図6(b)に示した状態において、ロック機構20の操作ノブ22a、22bを離すことにより、各ロックピンの先端部を前部枠体1a、1bの該当位置決め穴に差し込んで、ロックする。次に、ハンドル部高さ調節機構13の操作ノブ17a、17bを寄せるように操作してロックピン15a、15bを解放し、ハンドル部11とともに背部枠体3a、3bを下方へスライドさせ、最小高さとした後、操作ノブ17a、17bを離すことによって各ロックピン15a、15bの先端部を背部枠体3a、3bの該当位置決め穴に差し込んで、ロックする(図6(c)参照)。これらの一連の動作により、手押し車100を折り畳むことができるとともに、折り畳み状態を保持できる。なお、一変形例として、ハンドル部高さ調節機構13を先に操作して、ハンドル部11の高さを調整してから、ロック機構20を操作して、手押し車100を折り畳んでもよい。
【0033】
<組み立て動作>
まず、図6(c)に示したように、折り畳み状態となっている手押し車100において、ハンドル部高さ調節機構13の操作ノブ17a、17bを寄せるように操作してロックピン15a、15bを解放し、ハンドル部11とともに背部枠体3a、3bを上方へスライドさせ、所定高さとした後、操作ノブ17a、17bを離すことによって各ロックピン15a、15bの先端部を背部枠体3a、3bにおける任意の該当位置決め穴に差し込んで、ロックする(図6(b)参照)。続いて、ロック機構20の操作ノブ22a、22bを寄せるように操作して該当位置決め穴からロックピン(図示せず)を解放し、可動部材4a、4bを可動させ、図6(a)の状態となるように、枠部材5と後部枠体2a、2bとを徐々に開く。そして、図1及び図2に示した状態となるように、さらに開いた後、ロック機構20の操作ノブ22a、22bを離すことにより、各ロックピンの先端部を前部枠体1a、1bの該当位置決め穴に差し込んで、ロックする。これらの一連の動作により、手押し車100を組み立てることができるとともに、組み立てられた状態を保持できる。なお、一変形例として、ロック機構20を先に操作して、枠部材5と後部枠体2a、2bとを開いてから、ハンドル部高さ調節機構13を操作し、ハンドル部11の高さを調整して、手押し車100を組み立てることとしてもよい。
【0034】
本実施形態によれば、簡易な構成であるにも関わらず、枠部材5、前部枠体1a、1b及び後部枠体2a、2bの折り畳み動作を同時に行う、又は、組み立て動作を同時に行うことが可能な手押し車100を提供できる。また、部品点数も従来のものに比べ少なくできるので、従来に比べて小型化及び低コスト化した手押し車100を提供できる。
【0035】
また、ロック機構20により、可動部材4a、4bをスライドさせながらロックピンを挿入するという簡単な作業で、可動部材4a、4bを前部枠体1a、1bに固定又は固定解除できる。したがって、高齢者又は身体的弱者でも、安全に使用したり、持ち運びしたりすることができる手押し車100を提供できる。また、ロックピン(図示せず)が連結水平パイプ21の中空部から取り外されることがないので、ロックピンの紛失がない。また、ロック機構20が前部枠体1a、1bより内側に配設されているので、安全衛生面やデザイン面で優れている。
【0036】
また、ロック機構20における各ロックピンを前部枠体1a、1bにおける位置決め穴24などに付勢する付勢力が、常時、加えられているので、可動部材4a、4bをわずかに上下にスライドさせながら位置決めする際に、付勢されたロックピンが前部枠体1a、1bにおける位置決め穴に自動的に挿入されるとともに、挿入後においては、ロックピンが該位置決め穴から抜けにくくなっている。したがって、高齢者又は身体的弱者でも可動部材4a、4bの高さ調節を確実且つ容易に行なうことができる手押し車100を提供できる。
【0037】
また、ハンドル部高さ調節機構13により、背部枠体3a、3bをスライドさせながらロックピン15a、15bを挿入するという簡単な作業で、背部枠体3a、3bを前部枠体1a、1bに接続部材12a、12bを介して固定又は固定解除できる。したがって、高齢者又は身体的弱者でも、安全に使用したり、持ち運びしたりすることができる手押し車100を提供できる。また、ロックピン15a、15bが連結水平パイプ14の中空部から取り外されることがないので、ロックピン15a、15bの紛失がない。また、ハンドル部高さ調節機構13が背部枠体3a、3bより内側に配設されているので、安全衛生面及びデザイン面で優れている。
【0038】
また、ハンドル部高さ調節機構13における各ロックピン15a、15bを背部枠体3a、3bの位置決め穴18cなどに付勢する付勢力が、常時、加えられているので、背部枠体3a、3bをわずかに上下にスライドさせながら位置決めする際に、付勢されたロックピン15a、15bが位置決め穴18cなどに自動的に挿入されるとともに、挿入後においては、ロックピン15a、15bが位置決め穴18cなどから抜けにくくなっている。したがって、高齢者又は身体的弱者でもハンドル部11及び背部枠体3a、3bの高さ調節を確実且つ容易に行なうことができる手押し車100を提供できる。
【0039】
<変形例>
なお、本発明は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で設計変更できるものであり、上記実施形態などに限定されるものではない。例えば、上記実施形態における可動部材4a、4b、枠部材5の代わりに、図7に示した可動部材44a、可動部材44aの反対側の可動部材(図示しないが、可動部材44aと同様のもの)、略コ字状の枠部材45(ほぼ枠部材5と同様)を用いるとともに、枠部材45が前部枠体41aに対して近づき過ぎないように回動を所定位置で止める回動ストッパー62を接続部材52aの前部側に設けた手押し車101としてもよい。なお、符号41a、42a、43a、44a、45、46a、47a、48、49、50、51、52a、52a、52a、57a、61の部位は、順に、上記実施形態の符号1a、2a、3a、4a、5、6a、7a、8、9、10、11、12a、12a、12a、17a、31の部位と同様であるので、説明を省略する。また、図示していない部位についても、上記実施形態の手押し車100と同様であるので、説明を省略する。本構成により、可動部材44aが前部枠体41aの車輪49側に可動した際、第1連結杵46aと前部枠体41aとの間に、人の指以上の隙間を形成することが可能になる。また、図示しないが、同様に、第2連結杵と前部枠体との間にも人の指以上の隙間を形成するように、各部位を構成するようにしてもよい。これらの構成によれば、折り畳んだ際に指が挟まれることを抑制できる。したがって、より安全に折り畳むことができる手押し車を提供できる。
【0040】
また、実施形態における前部枠体1a、1bのそれぞれと接続部材12a、12bのそれぞれとは、順に一体的に形成されているものであってもよい。
【0041】
また、ボタン部と、ブレーキ用ワイヤーと、ブレーキ本体とは、後部枠体2a、2bにそれぞれ設けられていてもよい。これにより、車輪10の両輪をブレーキで停止することができる共に、ブレーキ状態でロックすることができる。
【0042】
また、ハンドル部高さ調節機構13及びロック機構20のそれぞれにおける2つのロックピンの間に圧縮バネがそれぞれ配置されているが、2つのロックピンの間に圧縮バネを配設しない構成であってもよい。
【0043】
また、前部枠体1a、1b及び背部枠体3a、3bに設ける位置決め穴の数及び形成位置は、使用しやすくなるように、適宜、設定してよい。
【符号の説明】
【0044】
1a、1b、41a 前部枠体
2a、2b、42a 後部枠体
3a、3b、43a 背部枠体
4a、4b、44a 可動部材
5、45 枠部材
6a、6b、46a 第1連結杵
7a、7b、47a 第2連結杵
8、48 首振り機構
9、10、49、50 車輪
11、51 ハンドル部
12a、12b、52a 接続部材
12a、12b、52a 筒部
12a、12b、52a 支持部
13 ハンドル部高さ調節機構
14、21 連結水平パイプ
14a 中空部
15a、15b ロックピン
16a、16b、23a、23b スロット
17a、17b、22a、22b 操作ノブ
18a、18b、18c、24 位置決め穴
19 圧縮バネ
20 ロック機構
30 ボタン部
31 レバー
32 ブレーキ用ワイヤー
100 手押し車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端部に車輪が枢着されている左右一対の前部枠体と、
上端部が前記前部枠体の上端部に回動自在に接続され、下端部に車輪が枢着されている左右一対の後部枠体と、
上端部にハンドル部が設けられ、下端部が前記前部枠体の上端部に接続されている左右一対の背部枠体と、
前記前部枠体に沿って可動自在に設けられている左右一対の可動部材と、
両先端部が前記前部枠体の上端部に回動自在に接続されている略コ字状の枠部材と、
各一端部が前記枠部材の各側部に回動自在に接続され、各他端部が各前記可動部材に回動自在に接続されている左右一対の第1連結杵と、
各一端部が各前記後部枠体の略中間部に回動自在に接続され、各他端部が各前記可動部材に回動自在に接続されている左右一対の第2連結杵と、を備えていることを特徴とする手押し車。
【請求項2】
前記可動部材が前記前部枠体の車輪側に可動した際、前記第1連結杵と前記前部枠体との間及び前記第2連結杵と前記前部枠体との間のうち少なくとも一方に、人の指以上の隙間が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の手押し車。
【請求項3】
前記可動部材を一体的にかつ連通自在に連結する連結水平パイプと、
前記連結水平パイプの中空部内に摺動自在に収納された左右一対のロックピンと、
前記各ロックピンに固定され、かつ前記連結水平パイプの所定個所に軸心方向に形成したスロットから外側に突出する操作ノブとを有したロック機構を備えており、
前記前部枠体の対向面側に、前記ロックピンと協働する複数個の位置決め穴が前記前部枠体の長手方向に形成され、
前記可動部材について前記前部枠体に対する高さ位置を調整した上で、各操作ノブを操作して、各ロックピンの先端部を前記前部枠体の該当位置決め穴に差し込むことにより、前記可動部材を前記前部枠体に固定可能にしたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の手押し車。
【請求項4】
前記ロック機構が、前記左右一対のロックピンの間に配設されているとともに各前記ロックピンを対向する前記前部枠体方向に向けてそれぞれ弾性的に付勢する圧縮弾性部材を備えており、
左右の前記操作ノブを寄せた状態で、各前記ロックピンの先端部を各前記前部枠体の該当位置決め穴に位置決めしたあと、左右の前記操作ノブを離すことによって各前記ロックピンの先端部を前記前部枠体の該当位置決め穴に差し込むものであることを特徴とする請求項3に記載の手押し車。
【請求項5】
前記前部枠体の上端部を一体的にかつ連通自在に連結する連結水平パイプと、
前記連結水平パイプの中空部内に摺動自在に収納された左右一対のロックピンと、
前記各ロックピンに固定され、かつ前記連結水平パイプの所定個所に軸心方向に形成したスロットから外側に突出する操作ノブとを有したハンドル部高さ調節機構を備えており、
前記背部枠体の対向面側に、前記ロックピンと協働する複数個の位置決め穴が前記背部枠体の長手方向に形成され、
前記背部枠体について前記前部枠体の上端部に対する高さ位置を調整した上で、各操作ノブを操作して、各ロックピンの先端部を前記背部枠体の該当位置決め穴に差し込むことにより、前記背部枠体を前記前部枠体に固定可能にしたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の手押し車。
【請求項6】
前記ハンドル部高さ調節機構が、前記左右一対のロックピンの間に配設されているとともに各前記ロックピンを対向する前記背部枠体方向に向けてそれぞれ弾性的に付勢する圧縮弾性部材を備えており、
左右の前記操作ノブを寄せた状態で、各前記ロックピンの先端部を各前記背部枠体の該当位置決め穴に位置決めしたあと、左右の前記操作ノブを離すことによって各前記ロックピンの先端部を前記背部枠体の該当位置決め穴に差し込むものであることを特徴とする請求項5に記載の手押し車。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−247592(P2010−247592A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97501(P2009−97501)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(598087841)株式会社幸和製作所 (10)
【Fターム(参考)】