手術装置およびそれに用いるマニピュレータ
【課題】
手術用マニピュレータを小型化し、メンテナンス性を向上させる。
【解決手段】
医療用マニピュレータ102は、患者の患部にアクセス可能な術具301を先端部に有する。対向して1対の転がり部材309、318が配置されている。対をなす転がり部材の一方を他方の転がり部材に対してフレキシブルワイヤが転がり運動させる。1対の転がり部材の回転中心間距離をプレート306が一定に保つ。対をなす転がり部材のそれぞれと同軸に1対のギア312、315が保持され、互いに噛み合っている。反術具側のギアをリンクが回転させる。
手術用マニピュレータを小型化し、メンテナンス性を向上させる。
【解決手段】
医療用マニピュレータ102は、患者の患部にアクセス可能な術具301を先端部に有する。対向して1対の転がり部材309、318が配置されている。対をなす転がり部材の一方を他方の転がり部材に対してフレキシブルワイヤが転がり運動させる。1対の転がり部材の回転中心間距離をプレート306が一定に保つ。対をなす転がり部材のそれぞれと同軸に1対のギア312、315が保持され、互いに噛み合っている。反術具側のギアをリンクが回転させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は手術装置およびそれに用いるマニピュレータに関し、特に医療用マニピュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
MRIや超音波スキャナー、内視鏡などの診断装置を用いて患部を観察しながら、高周波処置具を患者の体内に穿刺し、体腔内の患部を処置する温熱治療法の例が、特許文献1に記載されている。この公報に記載の方法では、気腹法を用いて患者の腹腔を膨らませ、体外から直線状の治療用アプリケータおよび内視鏡を挿入している。そして、治療用アプリケータに取り付けたマーカをMR装置により観察しながら、患部へ治療用アプリケータを導き治療している。
【0003】
温熱治療法の他の例が、特許文献2に記載されている。この公報に記載の処置法では、治療具である穿刺針の後端に赤外線カメラが認識できるマーカを取り付けている。赤外線カメラが撮像した穿刺針の位置情報とMRIが取得した画像に基づいて、患部へ治療具を導いている。
【0004】
医療用マニピュレータを治療に用いる例が、特許文献3および特許文献4に記載されている。これらの公報に記載のマニピュレータでは、ワイヤを用いて関節を駆動している。医療用マニピュレータに用いられる関節機構は、安全性および小型化を考慮して、関節機構に直接駆動アクチュエータを取り付けるのを回避している。特許文献3に記載のマニピュレータでは、先端部関節とこの関節よりもさらに先端部に設けた術具関節を、ワイヤを用いて回動および開閉している。特許文献4に記載のマニピュレータでは、転がり部材を2つ用いて駆動ワイヤの経路長および位相を関節の角度変化によらず一定に保持している。
【0005】
【特許文献1】特開平11−267133号公報
【特許文献2】特開2003−339664号公報
【特許文献3】米国特許 第6394998号明細書
【特許文献4】特開2004−122286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1および特許文献2に記載された従来の温熱治療用術具は、直線状の形状をしているので、患部ではない傷をつけてはいけない臓器や血管等(以下、障害物と称す)を避けながら目標とする患部へ術具を到達させることが困難な場合があった。また、術具の刺入姿勢も限られていた。患部へ術具を導く際、術具先端位置をMRI断層画像上で認識しているが、多数のMRI断層画像から術具先端付近に配置されたマーカを探しだすのに長い時間を要することもあった。
医療用マニピュレータでは、マニピュレータの先端部に設ける術具が小型で複数の自由度を有することが求められている。特許文献3および特許文献4に記載のマニピュレータでは、1つの屈曲関節からそれに隣り合う先端部の関節に動力を伝達するときに、ワイヤにより屈曲関節から術具へ駆動力が伝達される。ワイヤが屈曲する関節内を経由して駆動力を伝達する場合は、ワイヤの疲労や摩耗によりワイヤが切れるおそれがある。術具のような径の細いワイヤを使用する関節機構では、頻繁なメンテナンスが必要となっている。
【0007】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、手術用マニピュレータを小型化するとともに、メンテナンス性を向上させることにある。本発明の他の目的は、手術用マニピュレータの使い勝手を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の特徴は、先端3自由度を有するマニピュレータを備えた手術装置において、マニピュレータは患者の体腔内で屈曲運動と直動または揺動運動が可能な複数の関節部を有し、この関節部に関節部外からリンク機構とラックアンドピニオン機構の少なくともいずれかの機構を用いて動力伝達するものである。
【0009】
そしてこの特徴において、関節部は、互いに噛み合う1対の歯車と、この1対の歯車を取り付けた板状部材と、1対の歯車のいずれか一方に一体的に形成した小歯車と、この小歯車と噛み合う変形可能なラックと、一対の歯車の他方に一端部を取り付けた第1のリンクと、板状部材に一端部を取り付けた第2のリンクとを有し、第1のリンクを駆動して屈曲運動を、第2のリンクを駆動して直動運動を可能とするのが好ましく、第1、第2のリンクの他端部に被動ローラまたは被動歯車を取り付け、この被動ローラまたは被動歯車に転がり接触する駆動ローラまたは駆動歯車を設け、駆動ローラまたは駆動歯車を駆動するプーリ及びこのプーリに装架されたフレキシブルワイヤとを有するのがよい。
【0010】
また上記特徴において、関節部は、互いに噛み合う2対の歯車と、この2対の歯車を1対ずつ別個に取り付けた板状部材と、2対の歯車間に配置され互いに転がり接触するローラ及び板状部材と、対を成す歯車の一方に噛み合い、かさ歯車が一体的に形成された小歯車と、この小歯車と一体的に形成した第1のかさ歯車に噛み合い、外径方向に延びる把持部を有する第2のかさ歯車とを備え、ローラを駆動して屈曲運動を、対をなす歯車を駆動して把持運動を可能としてもよい。
【0011】
また上記特徴において、マニピュレータは先端部に術具を保持可能であり、関節部は、対向して配置した1対の転がり部材と、この転がり部材の一方を他方の転がり部材に対して転がり運動させる第1の駆動手段と、1対の転がり部材間の距離を保持する保持手段と、転がり部材の各々と同軸に形成され互いに噛み合う1対の歯車と、反術具側の歯車を駆動する第2の駆動手段とを備るてもよく、関節部は、互いに噛み合う1対の歯車と、この歯車をそれぞれ保持する1対のリンクと、この1対のリンクを転がり接触させる部材と、1対の歯車の距離を一定に保持する保持手段と、一方の歯車と一方の保持手段とを駆動する駆動手段とを備えるようにしてもよい。さらに、1対の歯車のうちの術具側の歯車に一体的に小歯車を形成し、この小歯車と噛み合う変形可能なラックと、このラックとピニオンを移動可能に保持するガイドを有するようにしてもよい。
【0012】
上記目的を達成する本発明の他の特徴は、患者の状態を検出し可視化する画像診断機器と、患者の患部にアクセス可能な術具と、この術具を先端部に有するマニピュレータと、前記マニピュレータを駆動制御する制御部とを有し、マニピュレータは患者の体腔内で術具を屈曲および直動可能としたものである。そして画像診断機器はMRI装置であることが好ましく、術具の近傍であって取替え可能な直動術具をガイドするガイド部材に、MRI装置が認識可能なマーカを配置するようにしてもよい。
【0013】
上記目的を達成する本発明のさらに他の特徴は、患者の患部にアクセス可能な術具を先端部に有するマニピュレータであって、対向して配置された1対の転がり部材と、対をなす転がり部材の一方を他方の転がり部材に対して転がり運動させる第1の駆動手段と、1対の転がり部材の回転中心間距離を一定に保つ手段と、対をなす転がり部材のそれぞれと同軸に保持され互いに噛み合う1対のギアと、反術具側のギアを回転させる第2の駆動手段とを設けたことにある。
【0014】
上記目的を達成する本発明のさらに他の特徴は、術具側に配置されたギアと同軸に形成した小歯車と、この小歯車に噛み合いフレキシブルに形成されたラックと、術具側に位置する転がり部材と同期して移動するラックガイドとを設けたことにある。そしてこの特徴において、フレキシブルなラックに術具を交換可能に連結し、ラックを駆動することにより術具を直動させ、術具を交換可能とするのがよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、手術装置が備えるマニピュレータに屈曲可能な関節装置を設け、マニピュレータの先端部に位置する術具をワイヤ駆動とするとともに関節装置自体はワイヤを用いずに駆動するので、術具の姿勢範囲が増大し、マニピュレータの使い勝手が向上する。また、手術装置が小型化し手術装置のメンテナンス性も向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る手術装置10の一実施例を、図面を参照して説明する。図1に、手術装置を適用した手術システムを、ブロック図で示す。上下に磁石が対向して配置された開放型のMRI装置101では、水平方向に移動可能であって患者103を載置するベッド天板104が手術ベッド120上に配置されている。患者103の患部をMRI装置120の磁石間に設定した撮像位置に位置決めし、患部の画像をMRI装置101が撮像する。患部画像は共鳴信号として検出され、検出された信号は伝送路117を経てMRI制御部116に送信される。MRI制御部116は、画像処理等の信号処理を施し、処理された信号は画像情報提示部113で画像112として提示される。
【0017】
本実施例に示した手術装置10は、ベッド天板104に一端部を固定された手術用マニピュレータ102を有している。マニピュレータ102は、信号回線106を介してマニピュレータ駆動部107に接続されている。マニピュレータ駆動部107には、伝送路108を介してマニピュレータ制御部115が接続されている。マニピュレータ制御部115は、伝送路114を介してMRI制御部116に、また伝送路109を介して操作入力装置110にも接続されている。
【0018】
開放型MRI装置101では、フロント信号を受信するRF受信コイル119がリング状に設けられている。このRF受信コイル119の外周側を覆って、ガイドフレーム118が設置されている。ガイドフレーム118は、ベッド120に取り付けられ長手方向に延びたガイドレール105に、任意の位置で固定可能になっている。ガイドレール105をガイドフレーム118に取り付けるときの取り付け位置情報を取得するために、位置センサを設ける。または、ガイドレールに目盛りを設ける。
【0019】
術者111は、画像情報提示部113に示された画像112を見ながら操作入力装置110を操作する。術者111が操作入力装置110を操作すると操作入力信号が発生し、この操作入力信号は伝送路109を経てマニピュレータ制御部115に送られる。マニピュレータ制御部115は、この操作入力信号とマニピュレータ駆動部107が検出したマニピュレータ102が有する各関節の関節値情報とに基づいて、マニピュレータ102の動作指令制御信号を生成する。変換された動作指令制御信号は、伝送路108を経てマニピュレータ駆動部107に送られる。
【0020】
マニピュレータ駆動部107は、詳細を後述する蛇管・ワイヤ駆動方式によりマニピュレータ102の各関節を駆動する動力を供給する。マニピュレータの各関節のデータは、マニピュレータ駆動部107に取り付けた図示しないセンサが検出する。検出されたデータは、伝送路108を介してマニピュレータ制御部115へ送信される。
【0021】
マニピュレータ駆動部107とマニピュレータ制御部115は、開放型MRI装置101が信号を検出するのを妨げないように、適切に電気的アイソレーションを施こす。マニピュレータ制御部115を、開放型MRI装置101を覆って形成された図示しないシールドルームの外部に置く。そして、確実にシールドされた制御線および信号線を図示しない導波管内を通しマニピュレータ駆動部107に導く。もしくは、シールドルーム内および外に接地された導体パネルを設け、この導体パネルにコネクタを取り付けて信号を入出力する。手術用ベッド120およびマニピュレータ102がMRI装置101の近傍でも動作作可能であるように、その材質は非磁性である。例えば、強度の必要な金属部分にはチタンやジュラルミン、真鍮等を用い、その他の部分は低磁性かつ絶縁体であるエンジニアリングプラスチックなどを使用している。
【0022】
図2に、図1で示した手術装置10に用いるマニピュレータ102の詳細を、斜視図で示す。マニピュレータ102は、開放型MRI装置101の撮像領域内に配置可能な程度に小型化されている。マニピュレータは、ガイドフレーム118にその基部を固定具214を用いて固定されている。固定具214をガイドフレーム118に固定するときの固定位置を検出するために、ガイドフレーム118に目盛りを設けるか、位置センサをガイドフレーム118またはマニピュレータ102の少なくともいずれかに設ける。
【0023】
固定具214には、マニピュレータ102の基部の関節に用いる各部材を収納するマニピュレータフレーム208が取り付けられている。マニピュレータフレーム214の側面部および反固定具側の面には、図示しない画像診断装置がマニピュレータ102位置を認識できるように、マーカ207、210、215、216が取り付けられている。マーカ207…に基づいて検出したマニピュレータ102の位置は、画像診断装置に設定された座標系で表示される。画像診断装置に設定された座標系を、マニピュレータ102に設定された座標系に座標変換するかその逆の変換をして、画像診断装置にマニピュレータ102の情報をCG等で表示可能にする。これにより、MRI画像にマニピュレータ情報を写しこむことができる。
【0024】
マニピュレータフレーム208に、図示しない軸受を介して、第1の関節の関節軸218が回転可能に取り付けられている。この関節軸218には、プーリ217が固定されている。プーリ217には、図示しない樹脂ワイヤが装架されている。樹脂ワイヤは、樹脂製フレキシブルチューブ219、220内を通って、後述するモータ507に導かれる。関節軸218の端部には、第2の関節のベース211が固定されている。第2の関節のベース211は、関節軸218と共に回転する。
【0025】
長短2種類のリンク223、225が、その一端部において軸212、209を用いて第2の関節のベース211に回動可能に取り付けられている。長リンク223の他端部は、リンク228の一端部に軸224を用いて取り付けられている。同様に、短リンク226の他端部は、リンク227の一端部に軸226を用いて取り付けられている。リンク227、228の他端部は、術具軸205に取り付けたガイド802(図6参照)に軸204、203を用いて回動可能に取り付けられている。長リンク223は、中間部において短リンク226が取り付けられたリンク227にも、軸213を用いて取り付けられている。これにより、リンク227、228が平行に動くことが可能になっている。
【0026】
術具軸205は、先端部に術具が取り付けられる屈曲・直動関節300を先端部に有している。術具軸205のリンク227、228が取り付けられた側には、術具を駆動するためのワイヤが内部を挿通するフレキシブルチューブ201を複数本保持する術具駆動中継部202が設けられている。
【0027】
リンク223、225、227、228および術具軸205は、平行リンクを構成する。したがって、長短リンク223、226を軸209、212周りに回転させると、術具軸205は、長短リンク223、226がベース211に対する角度と同一の角度をベース211に対して保ちながら移動する。
【0028】
長リンク223をベース211に取り付ける軸212に図示しないプーリを固定し、このプーリに樹脂ワイヤを巻回する。プーリに巻回されたワイヤは、チューブ221、2222内を挿通して、駆動源に導かれる。軸212をワイヤで回転駆動すると、長リンク223が軸212周りに回動する。軸209に同軸に取り付けられた図示しないプーリにも、ワイヤが巻きつけられており、ワイヤはチューブ221、222に導かれている。ワイヤを引くと軸209が回動し、リンク226を動かす。このとき、リンク226とともに平行リンクを構成するリンク223も移動する。これに伴い、術具軸205はピボット運動する。
【0029】
すなわち、ピボット運動のピボット点をPとすると、術具軸205は点Pを中心として2方向A、Bの向きに回転可能となっている。術具205を患者103の体腔内に挿入するときは、ピボット点Pの位置が体表上にあけた穴に一致するようにマニピュレータ102を初期設定する。これにより、体表上に大きな傷を作ることなく低侵襲手術が可能になる。なお、A方向の運動は、軸218により生成されるので、このA方向の運動を生成する部材を関節Aとも呼ぶ。同様に、B方向の運動は、長短リンク223、226とそれらの取り付け軸212、209により生成されるので、この運動を生成する部材を関節Bとも呼ぶ。
【0030】
術具軸205の先端部に取り付ける屈曲・直動関節300の概略構造と動作を、図3ないし図5を用いて以下に説明する。図3は、屈曲・直動関節300と術具軸205とが一直線状になる屈曲・直動関節300の基準位置における正面図であり、図4および図5は関節部を屈曲させたときの正面図である。屈曲・直動関節300は、先端部に取り付けた穿刺針を直動および屈曲可能にする。
【0031】
屈曲・直動関節300は、一対の同形のギア312、315を有している。一対のギア312、315は、長円形のプレート306に取り付けたピン311、317に、互いに噛み合う状態で取り付けられる。一方のギア315と同軸に、このギア315と同期回転する小歯車316が取り付けられている。
【0032】
小歯車316には、フレキシブルな樹脂製のラック303が噛み合っている。ここで、フレキシブルな樹脂製ラック303は、フレキシブルに曲がる樹脂性の棒にラックを形成したものである。ラックの303の先端には、穿刺針301を取り付けた柄302が接続されている。フレキシブルなラック303を固定せずに術具軸205に収めるために、術具軸205および軸受部材309には、ラック303をスムーズに通すスリットが形成されている。なお、穿刺針301先端を冷やしたり熱したりするために、電線や水路を柄302に設けるようにしてもよく、これらの電線や水路をフレキシブルなラック303に形成してもよい。
【0033】
柄302の外周部には、この柄302の運動を規制する直動ガイド308が設けられている。直動ガイド308は、穿刺針301側の歯車315が取り付けられるピン317に取り付けられている。術具軸205の先端部には、対向して1対の突出部である軸受部材309が設けられており、この軸受部材309の中間部にはピン311の両端部を回転支持する軸受が保持されている。
【0034】
術具軸205側のギア312の表側には、ギア駆動リンク308の一端側がピン307により回動可能に固定されている。プレート306の裏面側には、図示しないピンによりプレート駆動リンク310の一端側が、回動可能に固定されている。
【0035】
一対のギア312、315では、外周部付近に外向きの3角形状のラベル313、314が貼られている。ラベル313、314は、屈曲・直動関節300が真直ぐな姿勢をとる基準位置にあるときに、お互いが対向する位置に貼られている。小歯車316の外周部付近およびラック303にも、同様のラベル304、305が貼られている。このラベル304、305も、屈曲・直動関節300が基準位置にあるときに、互いに対向するように貼られている。これらのラベル304、305、314、315は、各部の動きを視認できるようにする。
【0036】
このように構成した屈曲・直動関節300では、ギア駆動リンク308を動かすと、ギア312がピン311を中心として回転する。この状態を図4に示す。プレート駆動リンク310を術具軸205方向に引くと、プレート306は術具軸205側の歯車312が取り付けられたピン311を中心にに回転する。このとき、プレート306に取り付けたもう一方のピン317およびこのピン317に取り付けたギア315とピニオン316と直動ガイド318も、同時に動こうとする。
【0037】
しかしながら、ギア駆動リンク308を動かさないとギア312は固定されたままであり、回転しない。そこで、プレート306にピン317を介して取り付けたギア315は、他方のギア312の周りを噛み合いながら回転し、プレート306の動きに従う。プレート306が軸受部材309に対して動いた角度だけ、直動ガイド318はプレート306に対してピン317を中心に回転する。したがって、ギア315がギア312の周りを45度だけ回転すれば、直動ガイド318は軸受部材309に対して90度傾く。
【0038】
直動ガイド318がピン317周りに回転しても、ギア315と一体化した小歯車316は、直動ガイド318内に保持されたフレキシブルな樹脂製ラック303との噛み合い位置を変えない。その結果、フレキシブルな樹脂製ラック303に連結された穿刺針301と直動ガイド318との相対位置は不変となる。フレキシブルな樹脂製ラック303は端部側を軸受部材309の中にフリーに収納されている。したがって、フレキシブルな樹脂製ラック303は術具軸205の軸方向には移動可能であり、直動ガイド318が傾くと、屈曲して軸受部材309からいくらか引き出される。このように、穿刺針301の姿勢を傾ける屈曲駆動に対して、ラック303と小歯車316は干渉しない。
【0039】
穿刺針301を術具軸205に対して傾けた後、穿刺針301を突き出す動作を図5を用いて説明する。プレート駆動用リンク310の位置を固定して、ギア駆動用リンク308を術具軸205側に動かす。術具軸205側のギア312は、ピン311を中心に回転する。術具205側のギア312と噛み合う穿刺針301側のギア315は、ピン317を中心として回転する。穿刺針301側のギア315と一体化した小歯車316も、ピン317を中心として回転する。小歯車16の回転により、小歯車16と噛み合う樹脂製ラック303は噛み合い位置を変え、図5の左側に押し出される。その結果、穿刺針301は柄302を介して突き出る。当然のことながら、ギア駆動用リンク308を穿刺針301側に動かせば、穿刺針301は直動ガイド318側に引き込まれる。
【0040】
なお、穿刺針301の上記屈曲動作および進退動作の説明においては、説明を簡単にするため、屈曲・直動関節300の部品を一部省略している。図6や図7のマニピュレータの斜視図では、その他の機構部品も示している。つまり、一対のギア312、315の噛み合いだけで屈曲・直動関節300の姿勢を保持するのが困難な場合等を想定して、ピン317、312には、ギア312、314以外に転がり接触部材309a、318aを取り付けている。転がり接触部材309a、318は、互いに接触する部分が半円形の所定厚さの平板である。転がり接触部材318a、309aは、滑らずに転がり接触するので、直動ガイド318とプレート306の角度は保持される。また、穿刺針は長さ約5cm程度であり、柄302も2cm弱の長さである。
【0041】
本実施例に示した屈曲・直動関節300は、屈曲運動と直動運動を互いに干渉しないで実施できる。したがって、各軸を協調制御する必要がない。制御性の自由度が増す。また、プレート306とギア312、315を有する屈曲関節よりも先端部に位置する穿刺針301のような術具を駆動するときであっても、屈曲関節をワイヤが経由することなく術具を駆動できるので、ワイヤの疲労切断やたるみ等を回避でき、メンテナンス性が向上する。なお本実施例では、屈曲部の駆動やギアの駆動にリンク機構を用いているが、ワイヤやベルト等の駆動機構も利用できる。
【0042】
図6に、マニピュレータ102の詳細を斜視図で示す。術具軸205および屈曲・直動関節300は、4種の動き、すなわち術具軸205の直動Cおよび軸捻りD、屈曲・直動関節300の屈曲Eおよび直動Fが可能である。術具軸205および屈曲・直動関節300がこの4種の動きC〜Fが可能なので、屈曲・直動関節300の先端は、位置および姿勢の6自由度を有する。これにより、体腔内で任意の位置姿勢をとることができる。
【0043】
図7に、マニピュレータ102の一部を構成する屈曲・直動関節300の詳細斜視図を示す。屈曲・直動関節300の一部であって術具軸205の端部に位置する関節の外周部には、円筒形の直動ガイド318が設けられている。この直動ガイド318よりも先端側には中央部に穴のあいた蓋である穿刺針ガイド蓋602が配置されている。直動ガイド318と穿刺針ガイド蓋602は、2本の断面円弧形状の板である穿刺針ガイド601を両端で保持する。穿刺針ガイド601は、柄302の両側面に形成された突起を狭持する。穿刺針301は、穿刺針ガイド蓋602に形成された穴を進退する。
【0044】
図3に詳細を示した穿刺針301とこれに接続する柄302、ラック303は一体化されて柄302の突起をガイドとして穿刺針ガイド601に沿う直動運動する。穿刺針301等の術具を交換するときは、穿刺針ガイド601と穿刺針ガイド蓋602とのねじ止めを外し、穿刺針ガイド蓋602を外す。その後、小歯車316を回転させてラック303を穿刺針301側の限界まで押し出し、穿刺針301等を穿刺針ガイド601から外す。
【0045】
本実施例によれば、種類の異なる先端術具、例えば針径が異なるもの等を交換できる。また、穿刺針ガイド601と穿刺針ガイド蓋602とをネジ締結しているので、術具の取り出し及び交換が容易になる。また、穿刺針ガイド蓋602の先端部に、MRIのような診断装置が認識できるリング状のマーカ602aを配置する。その際、リング状マーカ602aの穴部を穿刺針301が通るようにマーカ602aを配置する。マーカ602aを配置したので、術具マニピュレータ座標系と診断装置座標系の較正や、MRI画像上での目印等に利用できる。
【0046】
ここで、2個の座標系の較正においては、術具マニピュレータ座標系で計算され、MRI診断画像上に表示された術具先端位置と、実際に配置したマーカ602aとの位置誤差により、マニピュレータの各関節の精度を較正または評価する。また、センシング寿命の短いマーカ602aを使用しても、マーカ602aを穿刺針301自身に取り付けていないので、マーカ602a交換の際に穿刺針301を分解する必要がなく、マーカ602aの交換が容易になる。
【0047】
図7から図10に、屈曲・直動関節300の詳細を示す。図7はマニピュレータ102の一部をなす屈曲・直動関節300の詳細斜視図、図8は屈曲・直動関節300に用いる駆動源の斜視図、図9は術具駆動中継部202の分解斜視図であり、図10に図9の内部を斜視図で示す。
【0048】
図6に示す直動Cを達成するために、マニピュレータ102は、以下の構成を有している。マニピュレータ102の基部側に配置した角柱状のリンク227、228は、それぞれ1対の突出部227a、228aを側端部に有しており、この突出部227a、228aの突出端近傍にはピン203、204を回転支持する軸受が保持されている。ピン203、204は、図9に詳細形状を示す断面T型の板状の直動ガイド806および断面F型の板状の直動ガイド814とリンク227、228とを接続している。リンク227、228は直動ガイド814、806に対して回転自由である。
【0049】
直動ガイド806、814の線状の突起は、互いに内側を向いて配置されており、この突起に嵌合する溝がそれぞれ形成された直動コマ807、813が、直動ガイド806、814の内側に配置されている。一方の直動コマ813の反術具側には、フレキシブルなラック816が連結されている。ラック816は、図示しないガイドチューブ内を通ってMRI装置外部に配置された図示しない超音波モータまで導かれる。そして、超音波モータ軸に取り付けたピニオンと噛み合っている。ラック816を超音波モータで動かすと、直動コマ813は直動ガイド814上を直動Cする。
【0050】
図6に示す軸捻りDを達成するために、マニピュレータ102は以下の構成を有している。図9に示すように、術具軸205の反穿刺針側端部には、段付き円筒状に形成された術具アダプタ810が配置されている。術具アダプタ810の上面にはフランジ811が設けられており、フランジ811の4角に形成した穴に段付きのスペーサ軸804a〜804dが嵌合する。スペーサ軸804a〜804dの上端にも段が形成されており、4角部に穴が形成されたフランジ部材である術具捻り軸ガイド802の穴に嵌合する。
【0051】
術具捻り軸ガイド802は、円柱状のギアワイヤ変換ガイド815の軸方向中間部に位置している。術具捻り軸ガイド802では、その下面に円柱状の突起802a〜802dが形成されており、この突起802a〜802dは、直動コマ807、813の上下両端面に形成された穴813a〜813dに嵌合する。ギアワイヤ変換ガイド815の上面には穴が形成されており、その内部に設けた駆動機構を駆動するワイヤが挿通された樹脂製フレキシブルチューブ201a〜201dがこの穴を貫通する。
【0052】
フランジ811と術具捻り軸ガイド802の間に形成される空間であって、図9の奥側には、図示しないプーリと一体化したギア805が配置されており、このギア805はギアワイヤ変換ガイド815に形成した図示しないギア部に噛み合う。ギア805と一体化したプーリには、樹脂製フレキシブルチューブ801a、801bを挿通する図示しない樹脂ワイヤが巻回されている。蛇管・ワイヤ駆動方式により樹脂ワイヤを駆動すると、プーリ及びギア805が回転し、ギア805に噛み合うギアワイヤ変換ガイド815が回転する。これにより、術具軸205の軸捻りDを発生する。
【0053】
円柱状のギアワイヤ変換ガイド815の下端部は、術具アダプタ810のフランジ811に形成した穴に着脱可能に嵌合する。ギアワイヤ変換ガイド815と術具アダプタ810とを嵌合したときは、ギア402、408はギア808、809に噛み合う。このように脱着可能な構造としたので、屈曲・直動関節300を含む術具205の交換が容易になり、メンテナンス性が向上する。また、術具部205だけを取り外すために、ギア402、408と噛み合うギアを有する術具であれば、術具先端形状が他の形状であっても使用できる。これにより、術具形状の制約が減り、多種の術具を使用可能になる。また、術具を取り外し可能であるから、駆動部を滅菌することなく術具だけを滅菌すればよく、滅菌の手間が省けるとともに、滅菌装置を小型化できる。。
【0054】
図10に、ギアワイヤ変換ガイド815の内部構造を示す。ギアワイヤ変換ガイド815に形成した穴を通って導かれたフレキシブルチューブ201a〜201d内の樹脂ワイヤ401、409を装架するプーリ403、407が同一のピン404に形成されている。このプーリ403、407よりも大径のギア402、408が、プーリ403、407よりも軸方向内側にピン404およびプーリ403、407と一体に形成されている。
【0055】
ギア402と噛み合うギア808およびギア408と噛み合うギア809が、各ギア402、408に隣り合って配置されている。ギア808、809は、術具アダプタ810の内部に、ピン405、406を介して保持される。ギア808、809の内側面には、屈曲・直動関節300を駆動するリンク308、310の一端部が図示しないピンにより回転自由に取り付けられている。
【0056】
ワイヤ401、409は、図8に示す超音波モータ508に取り付けたプーリ506に導かれる。超音波モータ508には減速器507が取り付けられており減速器507の出力軸にはプーリ506が取り付けられている。減速器507の側部には、モータ508を取り付けるためのブラケット503が取り付けられている。プーリ506に導かれたワイヤは401(409)は、蛇管・ワイヤ駆動方式により駆動される。樹脂ワイヤ401、409を駆動すると、プーリ403、407およびそれと一体化したギア402、408が、ピン404を軸として回転する。
【0057】
屈曲・直動関節300を駆動するリンク308、310をギア808、809に取り付ける図示しないピンとピン405、406との軸中心間距離は、図3に示すギア駆動リンク308の端部固定用ピン307とギア固定用ピン311間の距離に等しく、この距離はギア駆動リンク308の端部固定用ピン307とプレート駆動リンク310の図示しない端部固定用ピン間の距離にも等しい。これにより、ギアワイヤ変換ガイド805内に収めたギア808、809が回転すると、屈曲・直動関節内のギア312およびプレート306が駆動される。
【0058】
本発明に係る手術装置の他の実施例を、図11および図12を用いて説明する。本実施例が上記実施例と異なるのは、先端術具部の自由度が1だけ増えたことにある。これにより、術具は、先端3自由度を有する術具となる。図11は、屈曲・直動関節300の代わりに用いる、屈曲・把持関節900の斜視図である。図12は、屈曲・把持関節900が有する術具筒906等のカバー部を取り去った要部の斜視図である。屈曲・直動関節300同様に屈曲運動Gができるとともに、この屈曲運動Gと干渉せずに鋏またはピンセットを模擬した把持運動H、Iが可能になっている。2自由度の把持運動H、Iを協調して実行して、把持が可能になる。
【0059】
屈曲・把持関節900は、術具軸205との連結部側端部に、術具軸205側に設けたギアに噛み合う3個のギア901〜903を有している。ギア901〜903は、同一のピン920に取り付けられている。最左側に位置するギア901の外側面には、2本のリンク925、926が、最右側に位置するギア903の外側面には、2本のリンク905、906がそれぞれ平行に配置されている。中央に位置するギア902の一方の側面にも、2本の926、910が平行に配置されている。これらのリンク925〜927、905、906、910は、端部を回転自由にピンでギア901〜903の側面に取り付けられている。なお、ギヤ901〜903は噛み合い部の幅方向厚さを厚く、リンク925〜927、905、906の可動範囲の部分は幅方向厚さを薄くしている。同様に、リンク925〜927、905、906、910側も、ギヤ901〜903に対向する部分の厚さを薄くしている。これにより、屈曲・把持関節900の小型化を図っている。リンク925〜927、905、906、910の外周部は、術具筒906により覆われている。
【0060】
リンク925〜927、905、906、910の他端部は、軸908に同軸に取り付けたギア924、907およびローラ931の側面に図示しないピンで回転自由に取り付けられている。したがって、リンク925〜927、905、906、910及びギア901〜903、924、907、ローラ931は3個の平行リンク機構を構成する。ギア903の回転角度が大きくなると、平行リンクを構成するリンク904、905が相互に干渉し、ギア903の回転が阻害される。ギア901〜903の回転可能角度は、リンク904、905の太さにも依存するが、およそ±60度程度に限られる。
【0061】
なお、リンク904とリンク905を、ギア903を挟んで互いに反対側に配置すれば、リンク904、905の干渉を回避できる。しかし、ギア903の回転角度が大きくなると、今度は軸920にリンク904、905と干渉するので、結局ギア901〜903の回転可能角度はおよそ±60度程度に限られる。
【0062】
リンク925〜927、905、906、910の下端部は、上端部と同様に、ギア907、924との対向部及びローラ931に対向する部分の厚さを薄くしている。ギア907、924およびローラ931も噛み合い部または駆動プレート923との接触部の軸方向厚さを厚くし、その他の部分の厚さを薄くしている。ギア907、924およびローラ931を取り付けた軸908の両端部は、摩擦抵抗を減らすスペーサ911を介して術具筒906に保持されている。
【0063】
ギア924に噛み合うギア921と、ギア907に噛み合うギア914と、ローラ931に接触しローラ外形形状と同じ形状が部分的に形成された駆動プレート922が、同一の軸913に取り付けられている。ギア921は先端側でさらに小歯車919に、ギア914も先端側でさらに小歯車916に噛み合っている。小歯車916、919は同一の軸915に間隔を置いて取り付けられている。ギア916は軸915に対して回動自由であり、ギア919も軸915に対して回転自由である。したがって、ギア916とギア919は干渉することなく、それぞれ独立に回転可能である。
【0064】
軸913、915の両端部は、先端部ブラケット912に保持されている。術具筒906の先端部の内側および先端部ブラケット912の術具筒906側の内側には、術具筒906側と術具部とを接続するプレート922、909が配置されている、これらのプレート922、909を、軸908、913が貫通している。
【0065】
なお、術具筒906および先端部ブラケット912がそれぞれ対向する側であって、軸908、913方向の中間部には、互いに噛み合うギア906a、912aが部分的に形成された転がり接触部が形成されている。この転がり接触部により、術具筒906部と術具部とは、滑らずに転がり接触しながら回転できる。本実施例では転がり接触部にギア906a、912aを用いているが、ギア906a、912aの代わりに、滑らずに転がり接触する円板や、ゴム等を表面に貼り付けた滑らずに転がり接触する反円板同士を用いてもよい。転がり接触部は、ピン908、913を中心とする半円状に形成する。
【0066】
小歯車919、916の軸方向内側であって軸915には、かさ小歯車919a、916aが間隔を置いて取り付けられている。2個のかさ小歯車919a、916aの双方に噛み合うかさ小歯車918aが軸915の下方に配置されている。図12では図示を省略しているが、かさ小歯車919a、916aの双方に噛み合うもう1つのかさ小歯車917aが軸915の上方に配置されている。したがって、かさ小歯車916a〜919aは、差動歯車装置を構成する。
【0067】
上下に配置したかさ小歯車917a、918aには、周方向1箇所に外周側に突き出た把持部917、918がかさ小歯車917a、918aと一体的に形成されている。把持部917、918は、先端部ブラケット912に上方に突起して設けたピン912bおよび下方に突起して設けたピンの周りに回転する。なお、軸方向に並べて配置したギアやロータ、例えばギア924とロータ931間、ロータ931とギア907間には、摩擦抵抗を低減するために、スペーサ911のような部材を随時挟んでいる。
【0068】
このように構成した術具筒部及び術具部では、ギア902を回転させると、平行リンク機構により駆動プレート923が軸908を中心に回転しようとする。このとき、駆動プレート923に接続されている軸913は、軸908を中心に、軸908と軸913間の距離を保ちながら公転運動しようとする。軸913に連結された先端部ブラケット912も同様に回転しようとするが、ギア906aとギア912aが噛み合っているので、先端部ブラケット912は、軸908を中心とした公転運動をしながら、軸913周りに自転運動する。術具筒906のギア906aと先端部ブラケット912のギア912aが、転がり接触しながら回転する。
【0069】
ギア901、903の位置が固定されているので、ギア924とギア921、ギア907とギア914も同様に転がり接触しながら回転する。この運動は図3、4に示した屈曲運動と同じである。ギア921、914は、先端部ブラケット912との相対的位置を変えていないので、ギア921、914および把持部918、917は所定位置を保ちながら屈曲運動する。
【0070】
把持運動H、Iのためには、両端のギア901、903を駆動する。例えば、左端側のギア901を動かすと、ギア924が駆動される。それに伴い、ギア921、919、かさ歯車919a、918a、及び把持部918が駆動され、屈曲運動Gとは独立に把持運動Iが実行される。同様に、右端側のギア903を動かすと、ギア907が駆動される。ギア914、916、かさ歯車916a、917aおよび把持部917が駆動され、屈曲運動Gとは独立に把持運動Hが実行される。
【0071】
なお、ギア916、919と一体化したかさ歯車916a、919aの径をそれぞれ変えて、把持部917、918と一体化したかさ歯車917a、918aの干渉を防止する。ぎ、関節Hと関節Iの動きも独立に駆動可能としているここで、ギア914とギア916の減速比を1.5に設定すれば、ギア903、907、914可動範囲を±60度にしても、把持部917では±90度の動きが可能になる。把持部918についても同様である。
【0072】
本実施例によれば、リンクと転がり接触機構を用いて術具先端の動きを実現したので、術具先端の3自由度をワイヤを用いずに独立に駆動できる。術具部にワイヤを用いないので、ワイヤのたるみや疲労に起因する切断等のおそれがなく、医療用マニピュレータの制御性およびメンテナンス性が向上する。また、関節を独立に駆動できるので、マニピュレータの制御性の向上および安定性の向上が可能になる。
【0073】
本発明に係る屈曲・直動関節1000の他の実施例を、図13に斜視図で示す。上記実施例では平行リンク機構を用いて屈曲・直動関節を駆動していたが、本実施例ではラックアンドピニオン機構を用いてマニピュレータを駆動している。屈曲・直動関節1000では、術具軸205への取り付け端である根元部をブラケット1032が覆っている。根元部と、先端部である術具部との間を円筒状のブラケット1033および図示しない円筒状のブラケットで覆った中間部が、接続している。図示しないブラケットは、根元部のブラケット1032と中間部のブラケット1033間の距離を一定に保持する。
【0074】
根元側端部には、術具軸から術具部へ動力を伝達するために、複数のギア1001〜1021が、軸1031に同軸に取り付けられている。ギア1001とギア1011間には、ピニオン1001aが、ギア1011とギア1021間にはピニオン、1011a、1021aが配置されている。ギア1001とピニオン1001a、ギア1011とピニオン1011a、ギア1021とピニオン1021aとはそれぞれ一体化されている。
【0075】
各ピニオン1001a〜1021aには、術具側に延びるラック1002〜1022の一端側がそれぞれ噛み合っている。ラック1002〜1022の他端側は、屈曲・直動関節術具1000の中間部に配置したピニオン1003a〜1023aにそれぞれ噛み合っている。ピニオン1003aはギア1003と、ピニオン1013aはギア1013と、ピニオン1023aはギア1023とそれぞれ一体化されている。これらのピニオン1003a〜1023aおよびギア1003〜1023は、中間部の第1の軸1034に取り付けられている。
【0076】
中間部の第1の軸1034の両端部側に配置したギア1003、1023と噛み合うギア1004、10024が、第1の軸1034に平行でより術具側に配置した第2の軸1035に取り付けられている。第1の軸1034の中間に配置したギア1013は、駆動プレート1014の一部に形成された歯車部に噛み合っている。駆動プレート1014も、第2の軸1035に取り付けられている。中間部の第2の軸1035の両端部であってギア1004、10024よりも軸方向内側には長円形状のプレート1041、1042が取り付けられている。中間部のブラケット1033の術具側端部であって周方向に2箇所には、第2の軸1035と同心の歯車1033aが部分的に形成されている。
【0077】
中間部の術具側端部は、術具側に取り付けたギア噛み合っている。すなわち、術具側の両外側面には、長円形の先端ブラケット1036が配置されており、この先端ブラケット1036の中間部側端部には部分的に、歯車1036aが形成されている。先端ブラケット1036には、術具部の第1の軸1037、術具側の第2の軸1038が取り付けられている。術具側の第1の軸1037には、中間部の第2の軸1035に取り付けたギア1004、1024に噛み合うピニオン1005、10025および長円形状のプレート1041、1042が取り付けられている。
【0078】
術具およびそれを取り付ける部分は、図11および図12に示したのと同様の構成である。つまり、術具側の第2の軸には、先端ブラケット1036側から内側に、順にギア1006、10026、かさ歯車1006a,1026aが取り付けられている。ギア1006とかさ歯車1006a、ギア1026とかさ歯車1026aとは一体化されている。ギア1006は、術具側の第1の軸1036に取り付けたギア1005と、ギア1026はギア1025と噛み合っている。
【0079】
かさ歯車1006a、1026aを取り付ける第2の軸1038に直交する方向に延びる軸1039には、ブレード1007、1027と一体化されたかさ歯車1007a、1027aが対向して取り付けられている。直交する方向のかさ歯車1007a、10027aが取り付けられた軸1039は、術具側の第2の軸1036に取り付けられている。
【0080】
なお、中間部に配置したブラケット1033と、術具側に配置した先端ブラケット1036では、長円形状のプレート1041、1042および駆動プレート1014により、中間部の第2の軸1035と術具側の第1の軸1037間の距離が一定に保たれている。また、中間部に配置したブラケット1033と、先端ブラケット1036とは、各々に形成された歯車1033a、1036aが噛み合っているので、滑らずに転がり接触する。
【0081】
このように構成した屈曲・直動関節1000の動作を、以下に説明する。根元側の軸1031に取り付けたギア1001を回転駆動すると、ピニオン1001aが回動し、ラック1002をこの屈曲・直動関節1000の軸線方向に移動させる。すると、中間部の第1の軸1034に取り付けたピニオン1003aが回動し、このピニオン1003aと一体化されたギア1003も回動する。
【0082】
ギア1003〜1006はギアトレインを構成しているから、ギア1006と一体化されたかさ歯車1006aも回動する。かさ歯車1006aは上側のかさ歯車1027aに噛み合っているので、かさ歯車107aと一体化した上側のブレード1007が揺動運動する。同様に、ギア1021を回転駆動すると、下側のブレード1027が揺動運動する。
【0083】
根元側の軸1031の中間部に配置したギア1011を回転駆動すると、ギア1001、1021の場合と同様に、中間部の第1の軸1034に取り付けたギア1013が回動する。このギア1013には、駆動プレート1014に部分的に形成された歯車が噛み合っているから、駆動プレート1014が回動する。駆動プレート1014は術具側の第1の軸1037にも取り付けられているので、術具側の第1の軸1037は中間部の第2の軸1035を中心に回動する。その際、中間部の第2の軸1035と術具側の第1の軸1037の間の距離は、駆動プレート1014により一定に保たれる。
【0084】
なお、先端ブラケット1036に形成した歯車1036aと中間部のブラケット1033に形成した歯車1033aが噛み合っているから、ブラケット1036、1033同士は滑らずに転がり接触する。したがって、先端ブラケット1036は、術具側の第2の軸1036の周りを自転しながら、中間部の第2の軸1035の周りを公転する。
【0085】
ギアとレインを構成する術具側の第1の軸1037に取り付けたギア1005、1025は、中間部の第2の軸1035に取り付けたギア1004、10024の周りを滑らずに転がり接触しながら公転するから、駆動プレート1014の動きに何ら影響を与えない。したがって、術具を構成するブレード1007、1027は、術具部の屈曲運動と独立して、回動運動できる。
【0086】
本実施例によれば、関節を屈曲運動させた後にこの屈曲運動をさせる関節に直交して配置した揺動軸に設けた術具を揺動運動させることができる。したがって、各運動が干渉することがない。また、駆動動力にワイヤを使用していないので、ワイヤのたるみや摩耗、切断の恐れがなく、メンテナンス性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明に係る手術システムの一ブロック図。
【図2】図1に示した手術システムに用いる手術支援マニピュレータの斜視図。
【図3】関節装置の動作を説明する図で、その正面図。
【図4】関節装置の動作を説明する図で、その正面図。
【図5】関節装置の動作を説明する図で、その正面図。
【図6】図1に示した手術システムに用いる術具マニピュレータの斜視図。
【図7】図1に示した手術システムに用いる術具マニピュレータの先端部の斜視図。
【図8】図6に示した術具マニピュレータに用いるワイヤ駆動部の斜視図。
【図9】図6に示した術具マニピュレータに用いる術具駆動部の分解斜視図。
【図10】図8に示した術具駆動部の内部の斜視図。
【図11】図6に示した術具マニピュレータに用いる術具の他の実施例の斜視図。
【図12】図11に示した術具の内部の斜視図。
【図13】本発明に係る術具マニピュレータの他の実施例の斜視図。
【符号の説明】
【0088】
10…手術装置、101…開放型MRI装置、102…マニピュレータ、103…患者104…ベッド天板、105…レール、106…伝送路、107…マニピュレータ駆動部、108、109…伝送路、110…操作入力部、111…術者、112…画像、113…画像情報提示部、114…伝送路、115…制御部、116…MRI制御部、117…伝送路、118…ガイドフレーム、119…RFコイル、120…ベッド台座、201…フレキシブルチューブ、202…術具駆動中継部、203、204…軸、205…術具軸、207…マーカ、208…マニピュレータフレーム、209…軸、210…マーカ、211…ベース、212、213…軸、214…固定具、215、216…マーカ、217…プーリ、218…関節軸、219、220…フレキシブルチューブ、221、222…チューブ、223、224…軸、225〜228…リンク、300…屈曲・直動関節、301…穿刺針、302…柄、303…樹脂製ラック、304、305…ラベル、306…プレート、307…ピン、308…ギア駆動リンク、309…軸受部材、309a…ガイド部材、310…プレート駆動リンク、311…ピン、312〜315…ギア、316…小歯車(ピニオン)、317…ピン、318…直動ガイド、318a…ガイド部材、401…樹脂ワイヤ、402…ギア、403…プーリ、404〜406…ピン、407…プーリ、408…ギア、409…樹脂ワイヤ、507…モータ、601…穿刺針ガイド、602…穿刺針ガイド蓋、602a…マーカ、801a、801b…フレキシブルチューブ、802…術具捻り軸ガイド、802a〜802d…突起、805…ギア、806…直動ガイド、807…直動コマ、807a、807b…穴、808、809…ギア、810…術具アダプタ、813…直動コマ、811…フランジ、813c、813d…:穴、814…直動ガイド、815…ギアワイヤ変換ガイド、816…ラック、901〜903…ギア、904〜906…リンク、906a…転がり接触部、907…ギア、908…ブラケット、909…プレート、910…リンク、911…スペーサ、912…ブラケット、913…軸、914…ギア、915…軸、916…ギア、917、918…把持部、919…ギア、919a…かさ歯車、920…軸、921…ピン、922…プレート、923…駆動プレート、924…ギア、925〜927…リンク、1001…ギア、1001a…ピニオン、1002…ラック、1003…ギア、1003a…ピニオン、1004〜1006…ギア、1006a…かさ歯車、1007…ブレード、1007a…かさ歯車、1011a…ピニオン、1012…ラック、1014…駆動プレート、1021…ギア、1021a…ピニオン、1022…ラック、1023…ギア、1023a…ピニオン、1024〜1026…ギア、1026a…かさ歯車、1027…ブレード、1027a…かさ歯車、1031…軸、1032、1033…ブラケット、1034、1035…軸、1036a…ギア、1037〜1039…軸。
【技術分野】
【0001】
本発明は手術装置およびそれに用いるマニピュレータに関し、特に医療用マニピュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
MRIや超音波スキャナー、内視鏡などの診断装置を用いて患部を観察しながら、高周波処置具を患者の体内に穿刺し、体腔内の患部を処置する温熱治療法の例が、特許文献1に記載されている。この公報に記載の方法では、気腹法を用いて患者の腹腔を膨らませ、体外から直線状の治療用アプリケータおよび内視鏡を挿入している。そして、治療用アプリケータに取り付けたマーカをMR装置により観察しながら、患部へ治療用アプリケータを導き治療している。
【0003】
温熱治療法の他の例が、特許文献2に記載されている。この公報に記載の処置法では、治療具である穿刺針の後端に赤外線カメラが認識できるマーカを取り付けている。赤外線カメラが撮像した穿刺針の位置情報とMRIが取得した画像に基づいて、患部へ治療具を導いている。
【0004】
医療用マニピュレータを治療に用いる例が、特許文献3および特許文献4に記載されている。これらの公報に記載のマニピュレータでは、ワイヤを用いて関節を駆動している。医療用マニピュレータに用いられる関節機構は、安全性および小型化を考慮して、関節機構に直接駆動アクチュエータを取り付けるのを回避している。特許文献3に記載のマニピュレータでは、先端部関節とこの関節よりもさらに先端部に設けた術具関節を、ワイヤを用いて回動および開閉している。特許文献4に記載のマニピュレータでは、転がり部材を2つ用いて駆動ワイヤの経路長および位相を関節の角度変化によらず一定に保持している。
【0005】
【特許文献1】特開平11−267133号公報
【特許文献2】特開2003−339664号公報
【特許文献3】米国特許 第6394998号明細書
【特許文献4】特開2004−122286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1および特許文献2に記載された従来の温熱治療用術具は、直線状の形状をしているので、患部ではない傷をつけてはいけない臓器や血管等(以下、障害物と称す)を避けながら目標とする患部へ術具を到達させることが困難な場合があった。また、術具の刺入姿勢も限られていた。患部へ術具を導く際、術具先端位置をMRI断層画像上で認識しているが、多数のMRI断層画像から術具先端付近に配置されたマーカを探しだすのに長い時間を要することもあった。
医療用マニピュレータでは、マニピュレータの先端部に設ける術具が小型で複数の自由度を有することが求められている。特許文献3および特許文献4に記載のマニピュレータでは、1つの屈曲関節からそれに隣り合う先端部の関節に動力を伝達するときに、ワイヤにより屈曲関節から術具へ駆動力が伝達される。ワイヤが屈曲する関節内を経由して駆動力を伝達する場合は、ワイヤの疲労や摩耗によりワイヤが切れるおそれがある。術具のような径の細いワイヤを使用する関節機構では、頻繁なメンテナンスが必要となっている。
【0007】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、手術用マニピュレータを小型化するとともに、メンテナンス性を向上させることにある。本発明の他の目的は、手術用マニピュレータの使い勝手を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の特徴は、先端3自由度を有するマニピュレータを備えた手術装置において、マニピュレータは患者の体腔内で屈曲運動と直動または揺動運動が可能な複数の関節部を有し、この関節部に関節部外からリンク機構とラックアンドピニオン機構の少なくともいずれかの機構を用いて動力伝達するものである。
【0009】
そしてこの特徴において、関節部は、互いに噛み合う1対の歯車と、この1対の歯車を取り付けた板状部材と、1対の歯車のいずれか一方に一体的に形成した小歯車と、この小歯車と噛み合う変形可能なラックと、一対の歯車の他方に一端部を取り付けた第1のリンクと、板状部材に一端部を取り付けた第2のリンクとを有し、第1のリンクを駆動して屈曲運動を、第2のリンクを駆動して直動運動を可能とするのが好ましく、第1、第2のリンクの他端部に被動ローラまたは被動歯車を取り付け、この被動ローラまたは被動歯車に転がり接触する駆動ローラまたは駆動歯車を設け、駆動ローラまたは駆動歯車を駆動するプーリ及びこのプーリに装架されたフレキシブルワイヤとを有するのがよい。
【0010】
また上記特徴において、関節部は、互いに噛み合う2対の歯車と、この2対の歯車を1対ずつ別個に取り付けた板状部材と、2対の歯車間に配置され互いに転がり接触するローラ及び板状部材と、対を成す歯車の一方に噛み合い、かさ歯車が一体的に形成された小歯車と、この小歯車と一体的に形成した第1のかさ歯車に噛み合い、外径方向に延びる把持部を有する第2のかさ歯車とを備え、ローラを駆動して屈曲運動を、対をなす歯車を駆動して把持運動を可能としてもよい。
【0011】
また上記特徴において、マニピュレータは先端部に術具を保持可能であり、関節部は、対向して配置した1対の転がり部材と、この転がり部材の一方を他方の転がり部材に対して転がり運動させる第1の駆動手段と、1対の転がり部材間の距離を保持する保持手段と、転がり部材の各々と同軸に形成され互いに噛み合う1対の歯車と、反術具側の歯車を駆動する第2の駆動手段とを備るてもよく、関節部は、互いに噛み合う1対の歯車と、この歯車をそれぞれ保持する1対のリンクと、この1対のリンクを転がり接触させる部材と、1対の歯車の距離を一定に保持する保持手段と、一方の歯車と一方の保持手段とを駆動する駆動手段とを備えるようにしてもよい。さらに、1対の歯車のうちの術具側の歯車に一体的に小歯車を形成し、この小歯車と噛み合う変形可能なラックと、このラックとピニオンを移動可能に保持するガイドを有するようにしてもよい。
【0012】
上記目的を達成する本発明の他の特徴は、患者の状態を検出し可視化する画像診断機器と、患者の患部にアクセス可能な術具と、この術具を先端部に有するマニピュレータと、前記マニピュレータを駆動制御する制御部とを有し、マニピュレータは患者の体腔内で術具を屈曲および直動可能としたものである。そして画像診断機器はMRI装置であることが好ましく、術具の近傍であって取替え可能な直動術具をガイドするガイド部材に、MRI装置が認識可能なマーカを配置するようにしてもよい。
【0013】
上記目的を達成する本発明のさらに他の特徴は、患者の患部にアクセス可能な術具を先端部に有するマニピュレータであって、対向して配置された1対の転がり部材と、対をなす転がり部材の一方を他方の転がり部材に対して転がり運動させる第1の駆動手段と、1対の転がり部材の回転中心間距離を一定に保つ手段と、対をなす転がり部材のそれぞれと同軸に保持され互いに噛み合う1対のギアと、反術具側のギアを回転させる第2の駆動手段とを設けたことにある。
【0014】
上記目的を達成する本発明のさらに他の特徴は、術具側に配置されたギアと同軸に形成した小歯車と、この小歯車に噛み合いフレキシブルに形成されたラックと、術具側に位置する転がり部材と同期して移動するラックガイドとを設けたことにある。そしてこの特徴において、フレキシブルなラックに術具を交換可能に連結し、ラックを駆動することにより術具を直動させ、術具を交換可能とするのがよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、手術装置が備えるマニピュレータに屈曲可能な関節装置を設け、マニピュレータの先端部に位置する術具をワイヤ駆動とするとともに関節装置自体はワイヤを用いずに駆動するので、術具の姿勢範囲が増大し、マニピュレータの使い勝手が向上する。また、手術装置が小型化し手術装置のメンテナンス性も向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る手術装置10の一実施例を、図面を参照して説明する。図1に、手術装置を適用した手術システムを、ブロック図で示す。上下に磁石が対向して配置された開放型のMRI装置101では、水平方向に移動可能であって患者103を載置するベッド天板104が手術ベッド120上に配置されている。患者103の患部をMRI装置120の磁石間に設定した撮像位置に位置決めし、患部の画像をMRI装置101が撮像する。患部画像は共鳴信号として検出され、検出された信号は伝送路117を経てMRI制御部116に送信される。MRI制御部116は、画像処理等の信号処理を施し、処理された信号は画像情報提示部113で画像112として提示される。
【0017】
本実施例に示した手術装置10は、ベッド天板104に一端部を固定された手術用マニピュレータ102を有している。マニピュレータ102は、信号回線106を介してマニピュレータ駆動部107に接続されている。マニピュレータ駆動部107には、伝送路108を介してマニピュレータ制御部115が接続されている。マニピュレータ制御部115は、伝送路114を介してMRI制御部116に、また伝送路109を介して操作入力装置110にも接続されている。
【0018】
開放型MRI装置101では、フロント信号を受信するRF受信コイル119がリング状に設けられている。このRF受信コイル119の外周側を覆って、ガイドフレーム118が設置されている。ガイドフレーム118は、ベッド120に取り付けられ長手方向に延びたガイドレール105に、任意の位置で固定可能になっている。ガイドレール105をガイドフレーム118に取り付けるときの取り付け位置情報を取得するために、位置センサを設ける。または、ガイドレールに目盛りを設ける。
【0019】
術者111は、画像情報提示部113に示された画像112を見ながら操作入力装置110を操作する。術者111が操作入力装置110を操作すると操作入力信号が発生し、この操作入力信号は伝送路109を経てマニピュレータ制御部115に送られる。マニピュレータ制御部115は、この操作入力信号とマニピュレータ駆動部107が検出したマニピュレータ102が有する各関節の関節値情報とに基づいて、マニピュレータ102の動作指令制御信号を生成する。変換された動作指令制御信号は、伝送路108を経てマニピュレータ駆動部107に送られる。
【0020】
マニピュレータ駆動部107は、詳細を後述する蛇管・ワイヤ駆動方式によりマニピュレータ102の各関節を駆動する動力を供給する。マニピュレータの各関節のデータは、マニピュレータ駆動部107に取り付けた図示しないセンサが検出する。検出されたデータは、伝送路108を介してマニピュレータ制御部115へ送信される。
【0021】
マニピュレータ駆動部107とマニピュレータ制御部115は、開放型MRI装置101が信号を検出するのを妨げないように、適切に電気的アイソレーションを施こす。マニピュレータ制御部115を、開放型MRI装置101を覆って形成された図示しないシールドルームの外部に置く。そして、確実にシールドされた制御線および信号線を図示しない導波管内を通しマニピュレータ駆動部107に導く。もしくは、シールドルーム内および外に接地された導体パネルを設け、この導体パネルにコネクタを取り付けて信号を入出力する。手術用ベッド120およびマニピュレータ102がMRI装置101の近傍でも動作作可能であるように、その材質は非磁性である。例えば、強度の必要な金属部分にはチタンやジュラルミン、真鍮等を用い、その他の部分は低磁性かつ絶縁体であるエンジニアリングプラスチックなどを使用している。
【0022】
図2に、図1で示した手術装置10に用いるマニピュレータ102の詳細を、斜視図で示す。マニピュレータ102は、開放型MRI装置101の撮像領域内に配置可能な程度に小型化されている。マニピュレータは、ガイドフレーム118にその基部を固定具214を用いて固定されている。固定具214をガイドフレーム118に固定するときの固定位置を検出するために、ガイドフレーム118に目盛りを設けるか、位置センサをガイドフレーム118またはマニピュレータ102の少なくともいずれかに設ける。
【0023】
固定具214には、マニピュレータ102の基部の関節に用いる各部材を収納するマニピュレータフレーム208が取り付けられている。マニピュレータフレーム214の側面部および反固定具側の面には、図示しない画像診断装置がマニピュレータ102位置を認識できるように、マーカ207、210、215、216が取り付けられている。マーカ207…に基づいて検出したマニピュレータ102の位置は、画像診断装置に設定された座標系で表示される。画像診断装置に設定された座標系を、マニピュレータ102に設定された座標系に座標変換するかその逆の変換をして、画像診断装置にマニピュレータ102の情報をCG等で表示可能にする。これにより、MRI画像にマニピュレータ情報を写しこむことができる。
【0024】
マニピュレータフレーム208に、図示しない軸受を介して、第1の関節の関節軸218が回転可能に取り付けられている。この関節軸218には、プーリ217が固定されている。プーリ217には、図示しない樹脂ワイヤが装架されている。樹脂ワイヤは、樹脂製フレキシブルチューブ219、220内を通って、後述するモータ507に導かれる。関節軸218の端部には、第2の関節のベース211が固定されている。第2の関節のベース211は、関節軸218と共に回転する。
【0025】
長短2種類のリンク223、225が、その一端部において軸212、209を用いて第2の関節のベース211に回動可能に取り付けられている。長リンク223の他端部は、リンク228の一端部に軸224を用いて取り付けられている。同様に、短リンク226の他端部は、リンク227の一端部に軸226を用いて取り付けられている。リンク227、228の他端部は、術具軸205に取り付けたガイド802(図6参照)に軸204、203を用いて回動可能に取り付けられている。長リンク223は、中間部において短リンク226が取り付けられたリンク227にも、軸213を用いて取り付けられている。これにより、リンク227、228が平行に動くことが可能になっている。
【0026】
術具軸205は、先端部に術具が取り付けられる屈曲・直動関節300を先端部に有している。術具軸205のリンク227、228が取り付けられた側には、術具を駆動するためのワイヤが内部を挿通するフレキシブルチューブ201を複数本保持する術具駆動中継部202が設けられている。
【0027】
リンク223、225、227、228および術具軸205は、平行リンクを構成する。したがって、長短リンク223、226を軸209、212周りに回転させると、術具軸205は、長短リンク223、226がベース211に対する角度と同一の角度をベース211に対して保ちながら移動する。
【0028】
長リンク223をベース211に取り付ける軸212に図示しないプーリを固定し、このプーリに樹脂ワイヤを巻回する。プーリに巻回されたワイヤは、チューブ221、2222内を挿通して、駆動源に導かれる。軸212をワイヤで回転駆動すると、長リンク223が軸212周りに回動する。軸209に同軸に取り付けられた図示しないプーリにも、ワイヤが巻きつけられており、ワイヤはチューブ221、222に導かれている。ワイヤを引くと軸209が回動し、リンク226を動かす。このとき、リンク226とともに平行リンクを構成するリンク223も移動する。これに伴い、術具軸205はピボット運動する。
【0029】
すなわち、ピボット運動のピボット点をPとすると、術具軸205は点Pを中心として2方向A、Bの向きに回転可能となっている。術具205を患者103の体腔内に挿入するときは、ピボット点Pの位置が体表上にあけた穴に一致するようにマニピュレータ102を初期設定する。これにより、体表上に大きな傷を作ることなく低侵襲手術が可能になる。なお、A方向の運動は、軸218により生成されるので、このA方向の運動を生成する部材を関節Aとも呼ぶ。同様に、B方向の運動は、長短リンク223、226とそれらの取り付け軸212、209により生成されるので、この運動を生成する部材を関節Bとも呼ぶ。
【0030】
術具軸205の先端部に取り付ける屈曲・直動関節300の概略構造と動作を、図3ないし図5を用いて以下に説明する。図3は、屈曲・直動関節300と術具軸205とが一直線状になる屈曲・直動関節300の基準位置における正面図であり、図4および図5は関節部を屈曲させたときの正面図である。屈曲・直動関節300は、先端部に取り付けた穿刺針を直動および屈曲可能にする。
【0031】
屈曲・直動関節300は、一対の同形のギア312、315を有している。一対のギア312、315は、長円形のプレート306に取り付けたピン311、317に、互いに噛み合う状態で取り付けられる。一方のギア315と同軸に、このギア315と同期回転する小歯車316が取り付けられている。
【0032】
小歯車316には、フレキシブルな樹脂製のラック303が噛み合っている。ここで、フレキシブルな樹脂製ラック303は、フレキシブルに曲がる樹脂性の棒にラックを形成したものである。ラックの303の先端には、穿刺針301を取り付けた柄302が接続されている。フレキシブルなラック303を固定せずに術具軸205に収めるために、術具軸205および軸受部材309には、ラック303をスムーズに通すスリットが形成されている。なお、穿刺針301先端を冷やしたり熱したりするために、電線や水路を柄302に設けるようにしてもよく、これらの電線や水路をフレキシブルなラック303に形成してもよい。
【0033】
柄302の外周部には、この柄302の運動を規制する直動ガイド308が設けられている。直動ガイド308は、穿刺針301側の歯車315が取り付けられるピン317に取り付けられている。術具軸205の先端部には、対向して1対の突出部である軸受部材309が設けられており、この軸受部材309の中間部にはピン311の両端部を回転支持する軸受が保持されている。
【0034】
術具軸205側のギア312の表側には、ギア駆動リンク308の一端側がピン307により回動可能に固定されている。プレート306の裏面側には、図示しないピンによりプレート駆動リンク310の一端側が、回動可能に固定されている。
【0035】
一対のギア312、315では、外周部付近に外向きの3角形状のラベル313、314が貼られている。ラベル313、314は、屈曲・直動関節300が真直ぐな姿勢をとる基準位置にあるときに、お互いが対向する位置に貼られている。小歯車316の外周部付近およびラック303にも、同様のラベル304、305が貼られている。このラベル304、305も、屈曲・直動関節300が基準位置にあるときに、互いに対向するように貼られている。これらのラベル304、305、314、315は、各部の動きを視認できるようにする。
【0036】
このように構成した屈曲・直動関節300では、ギア駆動リンク308を動かすと、ギア312がピン311を中心として回転する。この状態を図4に示す。プレート駆動リンク310を術具軸205方向に引くと、プレート306は術具軸205側の歯車312が取り付けられたピン311を中心にに回転する。このとき、プレート306に取り付けたもう一方のピン317およびこのピン317に取り付けたギア315とピニオン316と直動ガイド318も、同時に動こうとする。
【0037】
しかしながら、ギア駆動リンク308を動かさないとギア312は固定されたままであり、回転しない。そこで、プレート306にピン317を介して取り付けたギア315は、他方のギア312の周りを噛み合いながら回転し、プレート306の動きに従う。プレート306が軸受部材309に対して動いた角度だけ、直動ガイド318はプレート306に対してピン317を中心に回転する。したがって、ギア315がギア312の周りを45度だけ回転すれば、直動ガイド318は軸受部材309に対して90度傾く。
【0038】
直動ガイド318がピン317周りに回転しても、ギア315と一体化した小歯車316は、直動ガイド318内に保持されたフレキシブルな樹脂製ラック303との噛み合い位置を変えない。その結果、フレキシブルな樹脂製ラック303に連結された穿刺針301と直動ガイド318との相対位置は不変となる。フレキシブルな樹脂製ラック303は端部側を軸受部材309の中にフリーに収納されている。したがって、フレキシブルな樹脂製ラック303は術具軸205の軸方向には移動可能であり、直動ガイド318が傾くと、屈曲して軸受部材309からいくらか引き出される。このように、穿刺針301の姿勢を傾ける屈曲駆動に対して、ラック303と小歯車316は干渉しない。
【0039】
穿刺針301を術具軸205に対して傾けた後、穿刺針301を突き出す動作を図5を用いて説明する。プレート駆動用リンク310の位置を固定して、ギア駆動用リンク308を術具軸205側に動かす。術具軸205側のギア312は、ピン311を中心に回転する。術具205側のギア312と噛み合う穿刺針301側のギア315は、ピン317を中心として回転する。穿刺針301側のギア315と一体化した小歯車316も、ピン317を中心として回転する。小歯車16の回転により、小歯車16と噛み合う樹脂製ラック303は噛み合い位置を変え、図5の左側に押し出される。その結果、穿刺針301は柄302を介して突き出る。当然のことながら、ギア駆動用リンク308を穿刺針301側に動かせば、穿刺針301は直動ガイド318側に引き込まれる。
【0040】
なお、穿刺針301の上記屈曲動作および進退動作の説明においては、説明を簡単にするため、屈曲・直動関節300の部品を一部省略している。図6や図7のマニピュレータの斜視図では、その他の機構部品も示している。つまり、一対のギア312、315の噛み合いだけで屈曲・直動関節300の姿勢を保持するのが困難な場合等を想定して、ピン317、312には、ギア312、314以外に転がり接触部材309a、318aを取り付けている。転がり接触部材309a、318は、互いに接触する部分が半円形の所定厚さの平板である。転がり接触部材318a、309aは、滑らずに転がり接触するので、直動ガイド318とプレート306の角度は保持される。また、穿刺針は長さ約5cm程度であり、柄302も2cm弱の長さである。
【0041】
本実施例に示した屈曲・直動関節300は、屈曲運動と直動運動を互いに干渉しないで実施できる。したがって、各軸を協調制御する必要がない。制御性の自由度が増す。また、プレート306とギア312、315を有する屈曲関節よりも先端部に位置する穿刺針301のような術具を駆動するときであっても、屈曲関節をワイヤが経由することなく術具を駆動できるので、ワイヤの疲労切断やたるみ等を回避でき、メンテナンス性が向上する。なお本実施例では、屈曲部の駆動やギアの駆動にリンク機構を用いているが、ワイヤやベルト等の駆動機構も利用できる。
【0042】
図6に、マニピュレータ102の詳細を斜視図で示す。術具軸205および屈曲・直動関節300は、4種の動き、すなわち術具軸205の直動Cおよび軸捻りD、屈曲・直動関節300の屈曲Eおよび直動Fが可能である。術具軸205および屈曲・直動関節300がこの4種の動きC〜Fが可能なので、屈曲・直動関節300の先端は、位置および姿勢の6自由度を有する。これにより、体腔内で任意の位置姿勢をとることができる。
【0043】
図7に、マニピュレータ102の一部を構成する屈曲・直動関節300の詳細斜視図を示す。屈曲・直動関節300の一部であって術具軸205の端部に位置する関節の外周部には、円筒形の直動ガイド318が設けられている。この直動ガイド318よりも先端側には中央部に穴のあいた蓋である穿刺針ガイド蓋602が配置されている。直動ガイド318と穿刺針ガイド蓋602は、2本の断面円弧形状の板である穿刺針ガイド601を両端で保持する。穿刺針ガイド601は、柄302の両側面に形成された突起を狭持する。穿刺針301は、穿刺針ガイド蓋602に形成された穴を進退する。
【0044】
図3に詳細を示した穿刺針301とこれに接続する柄302、ラック303は一体化されて柄302の突起をガイドとして穿刺針ガイド601に沿う直動運動する。穿刺針301等の術具を交換するときは、穿刺針ガイド601と穿刺針ガイド蓋602とのねじ止めを外し、穿刺針ガイド蓋602を外す。その後、小歯車316を回転させてラック303を穿刺針301側の限界まで押し出し、穿刺針301等を穿刺針ガイド601から外す。
【0045】
本実施例によれば、種類の異なる先端術具、例えば針径が異なるもの等を交換できる。また、穿刺針ガイド601と穿刺針ガイド蓋602とをネジ締結しているので、術具の取り出し及び交換が容易になる。また、穿刺針ガイド蓋602の先端部に、MRIのような診断装置が認識できるリング状のマーカ602aを配置する。その際、リング状マーカ602aの穴部を穿刺針301が通るようにマーカ602aを配置する。マーカ602aを配置したので、術具マニピュレータ座標系と診断装置座標系の較正や、MRI画像上での目印等に利用できる。
【0046】
ここで、2個の座標系の較正においては、術具マニピュレータ座標系で計算され、MRI診断画像上に表示された術具先端位置と、実際に配置したマーカ602aとの位置誤差により、マニピュレータの各関節の精度を較正または評価する。また、センシング寿命の短いマーカ602aを使用しても、マーカ602aを穿刺針301自身に取り付けていないので、マーカ602a交換の際に穿刺針301を分解する必要がなく、マーカ602aの交換が容易になる。
【0047】
図7から図10に、屈曲・直動関節300の詳細を示す。図7はマニピュレータ102の一部をなす屈曲・直動関節300の詳細斜視図、図8は屈曲・直動関節300に用いる駆動源の斜視図、図9は術具駆動中継部202の分解斜視図であり、図10に図9の内部を斜視図で示す。
【0048】
図6に示す直動Cを達成するために、マニピュレータ102は、以下の構成を有している。マニピュレータ102の基部側に配置した角柱状のリンク227、228は、それぞれ1対の突出部227a、228aを側端部に有しており、この突出部227a、228aの突出端近傍にはピン203、204を回転支持する軸受が保持されている。ピン203、204は、図9に詳細形状を示す断面T型の板状の直動ガイド806および断面F型の板状の直動ガイド814とリンク227、228とを接続している。リンク227、228は直動ガイド814、806に対して回転自由である。
【0049】
直動ガイド806、814の線状の突起は、互いに内側を向いて配置されており、この突起に嵌合する溝がそれぞれ形成された直動コマ807、813が、直動ガイド806、814の内側に配置されている。一方の直動コマ813の反術具側には、フレキシブルなラック816が連結されている。ラック816は、図示しないガイドチューブ内を通ってMRI装置外部に配置された図示しない超音波モータまで導かれる。そして、超音波モータ軸に取り付けたピニオンと噛み合っている。ラック816を超音波モータで動かすと、直動コマ813は直動ガイド814上を直動Cする。
【0050】
図6に示す軸捻りDを達成するために、マニピュレータ102は以下の構成を有している。図9に示すように、術具軸205の反穿刺針側端部には、段付き円筒状に形成された術具アダプタ810が配置されている。術具アダプタ810の上面にはフランジ811が設けられており、フランジ811の4角に形成した穴に段付きのスペーサ軸804a〜804dが嵌合する。スペーサ軸804a〜804dの上端にも段が形成されており、4角部に穴が形成されたフランジ部材である術具捻り軸ガイド802の穴に嵌合する。
【0051】
術具捻り軸ガイド802は、円柱状のギアワイヤ変換ガイド815の軸方向中間部に位置している。術具捻り軸ガイド802では、その下面に円柱状の突起802a〜802dが形成されており、この突起802a〜802dは、直動コマ807、813の上下両端面に形成された穴813a〜813dに嵌合する。ギアワイヤ変換ガイド815の上面には穴が形成されており、その内部に設けた駆動機構を駆動するワイヤが挿通された樹脂製フレキシブルチューブ201a〜201dがこの穴を貫通する。
【0052】
フランジ811と術具捻り軸ガイド802の間に形成される空間であって、図9の奥側には、図示しないプーリと一体化したギア805が配置されており、このギア805はギアワイヤ変換ガイド815に形成した図示しないギア部に噛み合う。ギア805と一体化したプーリには、樹脂製フレキシブルチューブ801a、801bを挿通する図示しない樹脂ワイヤが巻回されている。蛇管・ワイヤ駆動方式により樹脂ワイヤを駆動すると、プーリ及びギア805が回転し、ギア805に噛み合うギアワイヤ変換ガイド815が回転する。これにより、術具軸205の軸捻りDを発生する。
【0053】
円柱状のギアワイヤ変換ガイド815の下端部は、術具アダプタ810のフランジ811に形成した穴に着脱可能に嵌合する。ギアワイヤ変換ガイド815と術具アダプタ810とを嵌合したときは、ギア402、408はギア808、809に噛み合う。このように脱着可能な構造としたので、屈曲・直動関節300を含む術具205の交換が容易になり、メンテナンス性が向上する。また、術具部205だけを取り外すために、ギア402、408と噛み合うギアを有する術具であれば、術具先端形状が他の形状であっても使用できる。これにより、術具形状の制約が減り、多種の術具を使用可能になる。また、術具を取り外し可能であるから、駆動部を滅菌することなく術具だけを滅菌すればよく、滅菌の手間が省けるとともに、滅菌装置を小型化できる。。
【0054】
図10に、ギアワイヤ変換ガイド815の内部構造を示す。ギアワイヤ変換ガイド815に形成した穴を通って導かれたフレキシブルチューブ201a〜201d内の樹脂ワイヤ401、409を装架するプーリ403、407が同一のピン404に形成されている。このプーリ403、407よりも大径のギア402、408が、プーリ403、407よりも軸方向内側にピン404およびプーリ403、407と一体に形成されている。
【0055】
ギア402と噛み合うギア808およびギア408と噛み合うギア809が、各ギア402、408に隣り合って配置されている。ギア808、809は、術具アダプタ810の内部に、ピン405、406を介して保持される。ギア808、809の内側面には、屈曲・直動関節300を駆動するリンク308、310の一端部が図示しないピンにより回転自由に取り付けられている。
【0056】
ワイヤ401、409は、図8に示す超音波モータ508に取り付けたプーリ506に導かれる。超音波モータ508には減速器507が取り付けられており減速器507の出力軸にはプーリ506が取り付けられている。減速器507の側部には、モータ508を取り付けるためのブラケット503が取り付けられている。プーリ506に導かれたワイヤは401(409)は、蛇管・ワイヤ駆動方式により駆動される。樹脂ワイヤ401、409を駆動すると、プーリ403、407およびそれと一体化したギア402、408が、ピン404を軸として回転する。
【0057】
屈曲・直動関節300を駆動するリンク308、310をギア808、809に取り付ける図示しないピンとピン405、406との軸中心間距離は、図3に示すギア駆動リンク308の端部固定用ピン307とギア固定用ピン311間の距離に等しく、この距離はギア駆動リンク308の端部固定用ピン307とプレート駆動リンク310の図示しない端部固定用ピン間の距離にも等しい。これにより、ギアワイヤ変換ガイド805内に収めたギア808、809が回転すると、屈曲・直動関節内のギア312およびプレート306が駆動される。
【0058】
本発明に係る手術装置の他の実施例を、図11および図12を用いて説明する。本実施例が上記実施例と異なるのは、先端術具部の自由度が1だけ増えたことにある。これにより、術具は、先端3自由度を有する術具となる。図11は、屈曲・直動関節300の代わりに用いる、屈曲・把持関節900の斜視図である。図12は、屈曲・把持関節900が有する術具筒906等のカバー部を取り去った要部の斜視図である。屈曲・直動関節300同様に屈曲運動Gができるとともに、この屈曲運動Gと干渉せずに鋏またはピンセットを模擬した把持運動H、Iが可能になっている。2自由度の把持運動H、Iを協調して実行して、把持が可能になる。
【0059】
屈曲・把持関節900は、術具軸205との連結部側端部に、術具軸205側に設けたギアに噛み合う3個のギア901〜903を有している。ギア901〜903は、同一のピン920に取り付けられている。最左側に位置するギア901の外側面には、2本のリンク925、926が、最右側に位置するギア903の外側面には、2本のリンク905、906がそれぞれ平行に配置されている。中央に位置するギア902の一方の側面にも、2本の926、910が平行に配置されている。これらのリンク925〜927、905、906、910は、端部を回転自由にピンでギア901〜903の側面に取り付けられている。なお、ギヤ901〜903は噛み合い部の幅方向厚さを厚く、リンク925〜927、905、906の可動範囲の部分は幅方向厚さを薄くしている。同様に、リンク925〜927、905、906、910側も、ギヤ901〜903に対向する部分の厚さを薄くしている。これにより、屈曲・把持関節900の小型化を図っている。リンク925〜927、905、906、910の外周部は、術具筒906により覆われている。
【0060】
リンク925〜927、905、906、910の他端部は、軸908に同軸に取り付けたギア924、907およびローラ931の側面に図示しないピンで回転自由に取り付けられている。したがって、リンク925〜927、905、906、910及びギア901〜903、924、907、ローラ931は3個の平行リンク機構を構成する。ギア903の回転角度が大きくなると、平行リンクを構成するリンク904、905が相互に干渉し、ギア903の回転が阻害される。ギア901〜903の回転可能角度は、リンク904、905の太さにも依存するが、およそ±60度程度に限られる。
【0061】
なお、リンク904とリンク905を、ギア903を挟んで互いに反対側に配置すれば、リンク904、905の干渉を回避できる。しかし、ギア903の回転角度が大きくなると、今度は軸920にリンク904、905と干渉するので、結局ギア901〜903の回転可能角度はおよそ±60度程度に限られる。
【0062】
リンク925〜927、905、906、910の下端部は、上端部と同様に、ギア907、924との対向部及びローラ931に対向する部分の厚さを薄くしている。ギア907、924およびローラ931も噛み合い部または駆動プレート923との接触部の軸方向厚さを厚くし、その他の部分の厚さを薄くしている。ギア907、924およびローラ931を取り付けた軸908の両端部は、摩擦抵抗を減らすスペーサ911を介して術具筒906に保持されている。
【0063】
ギア924に噛み合うギア921と、ギア907に噛み合うギア914と、ローラ931に接触しローラ外形形状と同じ形状が部分的に形成された駆動プレート922が、同一の軸913に取り付けられている。ギア921は先端側でさらに小歯車919に、ギア914も先端側でさらに小歯車916に噛み合っている。小歯車916、919は同一の軸915に間隔を置いて取り付けられている。ギア916は軸915に対して回動自由であり、ギア919も軸915に対して回転自由である。したがって、ギア916とギア919は干渉することなく、それぞれ独立に回転可能である。
【0064】
軸913、915の両端部は、先端部ブラケット912に保持されている。術具筒906の先端部の内側および先端部ブラケット912の術具筒906側の内側には、術具筒906側と術具部とを接続するプレート922、909が配置されている、これらのプレート922、909を、軸908、913が貫通している。
【0065】
なお、術具筒906および先端部ブラケット912がそれぞれ対向する側であって、軸908、913方向の中間部には、互いに噛み合うギア906a、912aが部分的に形成された転がり接触部が形成されている。この転がり接触部により、術具筒906部と術具部とは、滑らずに転がり接触しながら回転できる。本実施例では転がり接触部にギア906a、912aを用いているが、ギア906a、912aの代わりに、滑らずに転がり接触する円板や、ゴム等を表面に貼り付けた滑らずに転がり接触する反円板同士を用いてもよい。転がり接触部は、ピン908、913を中心とする半円状に形成する。
【0066】
小歯車919、916の軸方向内側であって軸915には、かさ小歯車919a、916aが間隔を置いて取り付けられている。2個のかさ小歯車919a、916aの双方に噛み合うかさ小歯車918aが軸915の下方に配置されている。図12では図示を省略しているが、かさ小歯車919a、916aの双方に噛み合うもう1つのかさ小歯車917aが軸915の上方に配置されている。したがって、かさ小歯車916a〜919aは、差動歯車装置を構成する。
【0067】
上下に配置したかさ小歯車917a、918aには、周方向1箇所に外周側に突き出た把持部917、918がかさ小歯車917a、918aと一体的に形成されている。把持部917、918は、先端部ブラケット912に上方に突起して設けたピン912bおよび下方に突起して設けたピンの周りに回転する。なお、軸方向に並べて配置したギアやロータ、例えばギア924とロータ931間、ロータ931とギア907間には、摩擦抵抗を低減するために、スペーサ911のような部材を随時挟んでいる。
【0068】
このように構成した術具筒部及び術具部では、ギア902を回転させると、平行リンク機構により駆動プレート923が軸908を中心に回転しようとする。このとき、駆動プレート923に接続されている軸913は、軸908を中心に、軸908と軸913間の距離を保ちながら公転運動しようとする。軸913に連結された先端部ブラケット912も同様に回転しようとするが、ギア906aとギア912aが噛み合っているので、先端部ブラケット912は、軸908を中心とした公転運動をしながら、軸913周りに自転運動する。術具筒906のギア906aと先端部ブラケット912のギア912aが、転がり接触しながら回転する。
【0069】
ギア901、903の位置が固定されているので、ギア924とギア921、ギア907とギア914も同様に転がり接触しながら回転する。この運動は図3、4に示した屈曲運動と同じである。ギア921、914は、先端部ブラケット912との相対的位置を変えていないので、ギア921、914および把持部918、917は所定位置を保ちながら屈曲運動する。
【0070】
把持運動H、Iのためには、両端のギア901、903を駆動する。例えば、左端側のギア901を動かすと、ギア924が駆動される。それに伴い、ギア921、919、かさ歯車919a、918a、及び把持部918が駆動され、屈曲運動Gとは独立に把持運動Iが実行される。同様に、右端側のギア903を動かすと、ギア907が駆動される。ギア914、916、かさ歯車916a、917aおよび把持部917が駆動され、屈曲運動Gとは独立に把持運動Hが実行される。
【0071】
なお、ギア916、919と一体化したかさ歯車916a、919aの径をそれぞれ変えて、把持部917、918と一体化したかさ歯車917a、918aの干渉を防止する。ぎ、関節Hと関節Iの動きも独立に駆動可能としているここで、ギア914とギア916の減速比を1.5に設定すれば、ギア903、907、914可動範囲を±60度にしても、把持部917では±90度の動きが可能になる。把持部918についても同様である。
【0072】
本実施例によれば、リンクと転がり接触機構を用いて術具先端の動きを実現したので、術具先端の3自由度をワイヤを用いずに独立に駆動できる。術具部にワイヤを用いないので、ワイヤのたるみや疲労に起因する切断等のおそれがなく、医療用マニピュレータの制御性およびメンテナンス性が向上する。また、関節を独立に駆動できるので、マニピュレータの制御性の向上および安定性の向上が可能になる。
【0073】
本発明に係る屈曲・直動関節1000の他の実施例を、図13に斜視図で示す。上記実施例では平行リンク機構を用いて屈曲・直動関節を駆動していたが、本実施例ではラックアンドピニオン機構を用いてマニピュレータを駆動している。屈曲・直動関節1000では、術具軸205への取り付け端である根元部をブラケット1032が覆っている。根元部と、先端部である術具部との間を円筒状のブラケット1033および図示しない円筒状のブラケットで覆った中間部が、接続している。図示しないブラケットは、根元部のブラケット1032と中間部のブラケット1033間の距離を一定に保持する。
【0074】
根元側端部には、術具軸から術具部へ動力を伝達するために、複数のギア1001〜1021が、軸1031に同軸に取り付けられている。ギア1001とギア1011間には、ピニオン1001aが、ギア1011とギア1021間にはピニオン、1011a、1021aが配置されている。ギア1001とピニオン1001a、ギア1011とピニオン1011a、ギア1021とピニオン1021aとはそれぞれ一体化されている。
【0075】
各ピニオン1001a〜1021aには、術具側に延びるラック1002〜1022の一端側がそれぞれ噛み合っている。ラック1002〜1022の他端側は、屈曲・直動関節術具1000の中間部に配置したピニオン1003a〜1023aにそれぞれ噛み合っている。ピニオン1003aはギア1003と、ピニオン1013aはギア1013と、ピニオン1023aはギア1023とそれぞれ一体化されている。これらのピニオン1003a〜1023aおよびギア1003〜1023は、中間部の第1の軸1034に取り付けられている。
【0076】
中間部の第1の軸1034の両端部側に配置したギア1003、1023と噛み合うギア1004、10024が、第1の軸1034に平行でより術具側に配置した第2の軸1035に取り付けられている。第1の軸1034の中間に配置したギア1013は、駆動プレート1014の一部に形成された歯車部に噛み合っている。駆動プレート1014も、第2の軸1035に取り付けられている。中間部の第2の軸1035の両端部であってギア1004、10024よりも軸方向内側には長円形状のプレート1041、1042が取り付けられている。中間部のブラケット1033の術具側端部であって周方向に2箇所には、第2の軸1035と同心の歯車1033aが部分的に形成されている。
【0077】
中間部の術具側端部は、術具側に取り付けたギア噛み合っている。すなわち、術具側の両外側面には、長円形の先端ブラケット1036が配置されており、この先端ブラケット1036の中間部側端部には部分的に、歯車1036aが形成されている。先端ブラケット1036には、術具部の第1の軸1037、術具側の第2の軸1038が取り付けられている。術具側の第1の軸1037には、中間部の第2の軸1035に取り付けたギア1004、1024に噛み合うピニオン1005、10025および長円形状のプレート1041、1042が取り付けられている。
【0078】
術具およびそれを取り付ける部分は、図11および図12に示したのと同様の構成である。つまり、術具側の第2の軸には、先端ブラケット1036側から内側に、順にギア1006、10026、かさ歯車1006a,1026aが取り付けられている。ギア1006とかさ歯車1006a、ギア1026とかさ歯車1026aとは一体化されている。ギア1006は、術具側の第1の軸1036に取り付けたギア1005と、ギア1026はギア1025と噛み合っている。
【0079】
かさ歯車1006a、1026aを取り付ける第2の軸1038に直交する方向に延びる軸1039には、ブレード1007、1027と一体化されたかさ歯車1007a、1027aが対向して取り付けられている。直交する方向のかさ歯車1007a、10027aが取り付けられた軸1039は、術具側の第2の軸1036に取り付けられている。
【0080】
なお、中間部に配置したブラケット1033と、術具側に配置した先端ブラケット1036では、長円形状のプレート1041、1042および駆動プレート1014により、中間部の第2の軸1035と術具側の第1の軸1037間の距離が一定に保たれている。また、中間部に配置したブラケット1033と、先端ブラケット1036とは、各々に形成された歯車1033a、1036aが噛み合っているので、滑らずに転がり接触する。
【0081】
このように構成した屈曲・直動関節1000の動作を、以下に説明する。根元側の軸1031に取り付けたギア1001を回転駆動すると、ピニオン1001aが回動し、ラック1002をこの屈曲・直動関節1000の軸線方向に移動させる。すると、中間部の第1の軸1034に取り付けたピニオン1003aが回動し、このピニオン1003aと一体化されたギア1003も回動する。
【0082】
ギア1003〜1006はギアトレインを構成しているから、ギア1006と一体化されたかさ歯車1006aも回動する。かさ歯車1006aは上側のかさ歯車1027aに噛み合っているので、かさ歯車107aと一体化した上側のブレード1007が揺動運動する。同様に、ギア1021を回転駆動すると、下側のブレード1027が揺動運動する。
【0083】
根元側の軸1031の中間部に配置したギア1011を回転駆動すると、ギア1001、1021の場合と同様に、中間部の第1の軸1034に取り付けたギア1013が回動する。このギア1013には、駆動プレート1014に部分的に形成された歯車が噛み合っているから、駆動プレート1014が回動する。駆動プレート1014は術具側の第1の軸1037にも取り付けられているので、術具側の第1の軸1037は中間部の第2の軸1035を中心に回動する。その際、中間部の第2の軸1035と術具側の第1の軸1037の間の距離は、駆動プレート1014により一定に保たれる。
【0084】
なお、先端ブラケット1036に形成した歯車1036aと中間部のブラケット1033に形成した歯車1033aが噛み合っているから、ブラケット1036、1033同士は滑らずに転がり接触する。したがって、先端ブラケット1036は、術具側の第2の軸1036の周りを自転しながら、中間部の第2の軸1035の周りを公転する。
【0085】
ギアとレインを構成する術具側の第1の軸1037に取り付けたギア1005、1025は、中間部の第2の軸1035に取り付けたギア1004、10024の周りを滑らずに転がり接触しながら公転するから、駆動プレート1014の動きに何ら影響を与えない。したがって、術具を構成するブレード1007、1027は、術具部の屈曲運動と独立して、回動運動できる。
【0086】
本実施例によれば、関節を屈曲運動させた後にこの屈曲運動をさせる関節に直交して配置した揺動軸に設けた術具を揺動運動させることができる。したがって、各運動が干渉することがない。また、駆動動力にワイヤを使用していないので、ワイヤのたるみや摩耗、切断の恐れがなく、メンテナンス性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明に係る手術システムの一ブロック図。
【図2】図1に示した手術システムに用いる手術支援マニピュレータの斜視図。
【図3】関節装置の動作を説明する図で、その正面図。
【図4】関節装置の動作を説明する図で、その正面図。
【図5】関節装置の動作を説明する図で、その正面図。
【図6】図1に示した手術システムに用いる術具マニピュレータの斜視図。
【図7】図1に示した手術システムに用いる術具マニピュレータの先端部の斜視図。
【図8】図6に示した術具マニピュレータに用いるワイヤ駆動部の斜視図。
【図9】図6に示した術具マニピュレータに用いる術具駆動部の分解斜視図。
【図10】図8に示した術具駆動部の内部の斜視図。
【図11】図6に示した術具マニピュレータに用いる術具の他の実施例の斜視図。
【図12】図11に示した術具の内部の斜視図。
【図13】本発明に係る術具マニピュレータの他の実施例の斜視図。
【符号の説明】
【0088】
10…手術装置、101…開放型MRI装置、102…マニピュレータ、103…患者104…ベッド天板、105…レール、106…伝送路、107…マニピュレータ駆動部、108、109…伝送路、110…操作入力部、111…術者、112…画像、113…画像情報提示部、114…伝送路、115…制御部、116…MRI制御部、117…伝送路、118…ガイドフレーム、119…RFコイル、120…ベッド台座、201…フレキシブルチューブ、202…術具駆動中継部、203、204…軸、205…術具軸、207…マーカ、208…マニピュレータフレーム、209…軸、210…マーカ、211…ベース、212、213…軸、214…固定具、215、216…マーカ、217…プーリ、218…関節軸、219、220…フレキシブルチューブ、221、222…チューブ、223、224…軸、225〜228…リンク、300…屈曲・直動関節、301…穿刺針、302…柄、303…樹脂製ラック、304、305…ラベル、306…プレート、307…ピン、308…ギア駆動リンク、309…軸受部材、309a…ガイド部材、310…プレート駆動リンク、311…ピン、312〜315…ギア、316…小歯車(ピニオン)、317…ピン、318…直動ガイド、318a…ガイド部材、401…樹脂ワイヤ、402…ギア、403…プーリ、404〜406…ピン、407…プーリ、408…ギア、409…樹脂ワイヤ、507…モータ、601…穿刺針ガイド、602…穿刺針ガイド蓋、602a…マーカ、801a、801b…フレキシブルチューブ、802…術具捻り軸ガイド、802a〜802d…突起、805…ギア、806…直動ガイド、807…直動コマ、807a、807b…穴、808、809…ギア、810…術具アダプタ、813…直動コマ、811…フランジ、813c、813d…:穴、814…直動ガイド、815…ギアワイヤ変換ガイド、816…ラック、901〜903…ギア、904〜906…リンク、906a…転がり接触部、907…ギア、908…ブラケット、909…プレート、910…リンク、911…スペーサ、912…ブラケット、913…軸、914…ギア、915…軸、916…ギア、917、918…把持部、919…ギア、919a…かさ歯車、920…軸、921…ピン、922…プレート、923…駆動プレート、924…ギア、925〜927…リンク、1001…ギア、1001a…ピニオン、1002…ラック、1003…ギア、1003a…ピニオン、1004〜1006…ギア、1006a…かさ歯車、1007…ブレード、1007a…かさ歯車、1011a…ピニオン、1012…ラック、1014…駆動プレート、1021…ギア、1021a…ピニオン、1022…ラック、1023…ギア、1023a…ピニオン、1024〜1026…ギア、1026a…かさ歯車、1027…ブレード、1027a…かさ歯車、1031…軸、1032、1033…ブラケット、1034、1035…軸、1036a…ギア、1037〜1039…軸。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端3自由度を有するマニピュレータを備えた手術装置において、前記マニピュレータは患者の体腔内で屈曲運動と直動または揺動運動が可能な複数の関節部を有し、この関節部に関節部外からリンク機構とラックアンドピニオン機構の少なくともいずれかの機構を用いて動力伝達することを特徴とする手術装置。
【請求項2】
前記関節部は、互いに噛み合う1対の歯車と、この1対の歯車を取り付けた板状部材と、前記1対の歯車のいずれか一方に一体的に形成した小歯車と、この小歯車と噛み合う変形可能なラックと、前記一対の歯車の他方に一端部を取り付けた第1のリンクと、前記板状部材に一端部を取り付けた第2のリンクとを有し、前記第1のリンクを駆動して屈曲運動を、前記第2のリンクを駆動して直動運動を可能としたことを特徴とする請求項1に記載の手術装置。
【請求項3】
前記第1、第2のリンクの他端部に被動ローラまたは被動歯車を取り付け、この被動ローラまたは被動歯車に転がり接触する駆動ローラまたは駆動歯車を設け、前記駆動ローラまたは前記駆動歯車を駆動するプーリ及びこのプーリに装架されたフレキシブルワイヤとを有することを特徴とする請求項2に記載の手術装置。
【請求項4】
前記関節部は、互いに噛み合う2対の歯車と、この2対の歯車を1対ずつ別個に取り付けた板状部材と、2対の歯車間に配置され互いに転がり接触するローラ及び板状部材と、前記対を成す歯車の一方に噛み合い、かさ歯車が一体的に形成された小歯車と、この小歯車と一体的に形成した第1のかさ歯車に噛み合い、外径方向に延びる把持部を有する第2のかさ歯車とを備え、前記ローラを駆動して屈曲運動を、前記対をなす歯車を駆動して把持運動を可能としたことを特徴とする請求項1に記載の手術装置。
【請求項5】
患者の状態を検出し可視化する画像診断機器と、患者の患部にアクセス可能な術具と、この術具を先端部に有するマニピュレータと、前記マニピュレータを駆動制御する制御部とを有し、前記マニピュレータは患者の体腔内で術具を屈曲および直動可能としたこと特徴とする手術装置。
【請求項6】
患者の患部にアクセス可能な術具を先端部に有するマニピュレータであって、対向して配置された1対の転がり部材と、対をなす転がり部材の一方を他方の転がり部材に対して転がり運動させる第1の駆動手段と、1対の転がり部材の回転中心間距離を一定に保つ手段と、対をなす転がり部材のそれぞれと同軸に保持され互いに噛み合う1対のギアと、反術具側のギアを回転させる第2の駆動手段とを設けたことを特徴とするマニピュレータ。
【請求項7】
術具側に配置されたギアと同軸に形成した小歯車と、この小歯車に噛み合いフレキシブルに形成されたラックと、術具側に位置する前記転がり部材と同期して移動するラックガイドとを設けたことを特徴とする請求項6に記載のマニピュレータ。
【請求項8】
前記フレキシブルなラックに術具を交換可能に連結し、前記ラックを駆動することにより術具を直動させ、術具を交換可能としたことを特徴とする請求項7に記載のマニピュレータ。
【請求項9】
前記画像診断機器はMRI装置であることを特徴とする請求項5に記載の手術装置。
【請求項10】
前記術具の近傍であって取替え可能な直動術具をガイドするガイド部材に、MRI装置が認識可能なマーカを配置したことを特徴とする請求項9に記載の手術装置。
【請求項11】
前記マニピュレータは先端部に術具を保持可能であり、前記関節部は、対向して配置した1対の転がり部材と、この転がり部材の一方を他方の転がり部材に対して転がり運動させる第1の駆動手段と、前記1対の転がり部材間の距離を保持する保持手段と、前記転がり部材の各々と同軸に形成され互いに噛み合う1対の歯車と、反術具側の歯車を駆動する第2の駆動手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の手術装置。
【請求項12】
前記関節部は、互いに噛み合う1対の歯車と、この歯車をそれぞれ保持する1対のリンクと、この1対のリンクを転がり接触させる部材と、前記1対の歯車の距離を一定に保持する保持手段と、一方の歯車と一方の保持手段とを駆動する駆動手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の手術装置。
【請求項13】
前記1対の歯車のうちの術具側の歯車に一体的に小歯車を形成し、この小歯車と噛み合う変形可能なラックと、このラックとピニオンを移動可能に保持するガイドを有することを特徴とする請求項11に記載の手術装置。
【請求項1】
先端3自由度を有するマニピュレータを備えた手術装置において、前記マニピュレータは患者の体腔内で屈曲運動と直動または揺動運動が可能な複数の関節部を有し、この関節部に関節部外からリンク機構とラックアンドピニオン機構の少なくともいずれかの機構を用いて動力伝達することを特徴とする手術装置。
【請求項2】
前記関節部は、互いに噛み合う1対の歯車と、この1対の歯車を取り付けた板状部材と、前記1対の歯車のいずれか一方に一体的に形成した小歯車と、この小歯車と噛み合う変形可能なラックと、前記一対の歯車の他方に一端部を取り付けた第1のリンクと、前記板状部材に一端部を取り付けた第2のリンクとを有し、前記第1のリンクを駆動して屈曲運動を、前記第2のリンクを駆動して直動運動を可能としたことを特徴とする請求項1に記載の手術装置。
【請求項3】
前記第1、第2のリンクの他端部に被動ローラまたは被動歯車を取り付け、この被動ローラまたは被動歯車に転がり接触する駆動ローラまたは駆動歯車を設け、前記駆動ローラまたは前記駆動歯車を駆動するプーリ及びこのプーリに装架されたフレキシブルワイヤとを有することを特徴とする請求項2に記載の手術装置。
【請求項4】
前記関節部は、互いに噛み合う2対の歯車と、この2対の歯車を1対ずつ別個に取り付けた板状部材と、2対の歯車間に配置され互いに転がり接触するローラ及び板状部材と、前記対を成す歯車の一方に噛み合い、かさ歯車が一体的に形成された小歯車と、この小歯車と一体的に形成した第1のかさ歯車に噛み合い、外径方向に延びる把持部を有する第2のかさ歯車とを備え、前記ローラを駆動して屈曲運動を、前記対をなす歯車を駆動して把持運動を可能としたことを特徴とする請求項1に記載の手術装置。
【請求項5】
患者の状態を検出し可視化する画像診断機器と、患者の患部にアクセス可能な術具と、この術具を先端部に有するマニピュレータと、前記マニピュレータを駆動制御する制御部とを有し、前記マニピュレータは患者の体腔内で術具を屈曲および直動可能としたこと特徴とする手術装置。
【請求項6】
患者の患部にアクセス可能な術具を先端部に有するマニピュレータであって、対向して配置された1対の転がり部材と、対をなす転がり部材の一方を他方の転がり部材に対して転がり運動させる第1の駆動手段と、1対の転がり部材の回転中心間距離を一定に保つ手段と、対をなす転がり部材のそれぞれと同軸に保持され互いに噛み合う1対のギアと、反術具側のギアを回転させる第2の駆動手段とを設けたことを特徴とするマニピュレータ。
【請求項7】
術具側に配置されたギアと同軸に形成した小歯車と、この小歯車に噛み合いフレキシブルに形成されたラックと、術具側に位置する前記転がり部材と同期して移動するラックガイドとを設けたことを特徴とする請求項6に記載のマニピュレータ。
【請求項8】
前記フレキシブルなラックに術具を交換可能に連結し、前記ラックを駆動することにより術具を直動させ、術具を交換可能としたことを特徴とする請求項7に記載のマニピュレータ。
【請求項9】
前記画像診断機器はMRI装置であることを特徴とする請求項5に記載の手術装置。
【請求項10】
前記術具の近傍であって取替え可能な直動術具をガイドするガイド部材に、MRI装置が認識可能なマーカを配置したことを特徴とする請求項9に記載の手術装置。
【請求項11】
前記マニピュレータは先端部に術具を保持可能であり、前記関節部は、対向して配置した1対の転がり部材と、この転がり部材の一方を他方の転がり部材に対して転がり運動させる第1の駆動手段と、前記1対の転がり部材間の距離を保持する保持手段と、前記転がり部材の各々と同軸に形成され互いに噛み合う1対の歯車と、反術具側の歯車を駆動する第2の駆動手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の手術装置。
【請求項12】
前記関節部は、互いに噛み合う1対の歯車と、この歯車をそれぞれ保持する1対のリンクと、この1対のリンクを転がり接触させる部材と、前記1対の歯車の距離を一定に保持する保持手段と、一方の歯車と一方の保持手段とを駆動する駆動手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の手術装置。
【請求項13】
前記1対の歯車のうちの術具側の歯車に一体的に小歯車を形成し、この小歯車と噛み合う変形可能なラックと、このラックとピニオンを移動可能に保持するガイドを有することを特徴とする請求項11に記載の手術装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−191939(P2006−191939A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−3296(P2005−3296)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成16年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「基盤技術研究促進事業(民間基盤技術研究支援制度)/未来型医療を実現する小型手術用ロボティックシステムの研究開発」、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成16年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「基盤技術研究促進事業(民間基盤技術研究支援制度)/未来型医療を実現する小型手術用ロボティックシステムの研究開発」、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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