説明

把手片が連結された合成樹脂製容器を製造する方法

【課題】把手片(2)が連結される部位でプリフォーム(40)が過剰に伸ばされてしまうことを確実に回避して、把手片が所要部位に連結されている合成樹脂製容器(4)を製造することを可能にする方法を提供する。
【解決手段】細長い筒形状であり軸線方向及び周方向に間隔をおいて複数個の噴出孔(50)が配設されている形態の延伸ロッド(46)を使用し、延伸ロッド内に高圧気体を供給して複数個の噴出孔から高圧気体を噴出せしめてプリフォームの成形部(44)をブローする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、別個に成形された把手片が所要部位に連結されている合成樹脂製容器を製造する方法、更に詳しくは筒形状の口頸部とこの口頸部に続く有底筒形状の成形部とを有する合成樹脂製プリフォームの成形部を延伸ブロー成形し、この際に延伸ブローされる成形部の所要部位に別個に成形された把手片を連結する、把手片が所要部位に連結された合成樹脂製容器を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洗剤、調味料或いは酒用の大容積容器として、取扱の便宜のために所要部位に把手片が連結されている合成樹脂製容器が実用に供されている。そして、かような合成樹脂製容器の製造方法として、下記特許文献1には、筒形状の口頸部とこの口頸部に続く有底筒形状の成形部とを有する合成樹脂製プリフォームの成形部と予め所要形状に成形した把手片とを、延伸ブロー成形型の成形空洞内に位置せしめて、プリフォームの成形部を延伸ブロー成形し、これによって把手片が所要位置に連結された合成樹脂製容器を製造する方法が開示されている。プリフォームの延伸ブローは、通常、延伸ロッドをプリフォーム内に進入せしめてプリフォームを延伸し、次いでプリフォームの口頸部と延伸ロッドとの間の環状間隙を通して高圧気体をプリフォーム内に供給してプリフォームをブローすることによって遂行される。
【特許文献1】特開平8−34049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
然るに、上述したとおりの従来の方法においては、把手片が連結される部位においてプリフォームが過剰に伸ばされて肉厚が過小になり把手片の連結強度が不充分になる、場合によっては把手片が連結される部位に穴が生成されてしまう、という問題がある。把手片が連結される部位においてプリフォームが過剰に伸ばされる理由は、必ずしも明白ではないが、把手片が配置されている部位において成形空洞が局部的に狭くなっている故に、プリフォームの口頸部と延伸ロッドとの間の環状間隙を通してプリフォーム内に供給される高圧気体の流動が局部的に阻害され、把手片が連結される部位において高圧気体が集中的に作用してしまう等に起因すると推定される。
【0004】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、把手片が連結される部位でプリフォームが過剰に伸ばされてしまうことを確実に回避して、把手片が所要部位に連結されている合成樹脂製容器を製造することを可能にする、新規且つ改良された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、鋭意研究及び実験の結果、細長い筒形状であり軸線方向及び周方向に間隔をおいて複数個の噴出孔が配設されている形態の延伸ロッドを使用し、延伸ロッド内に高圧気体を供給して複数個の噴出孔から高圧気体を噴出せしめてプリフォームの成形部をブローすることによって上記課題を解決することができることを見出した。
【0006】
即ち、本発明によれば、上記課題を解決する方法として、筒形状の口頸部と該口頸部に続く有底筒形状の成形部とを有する合成樹脂製プリフォームの該成形部と予め所要形状に成形した把手片とを、延伸ブロー成形型の成形空洞内に位置せしめて、該プリフォームの該成形部を延伸ブロー成形し、これによって該把手片が所要位置に連結された合成樹脂製容器を製造する方法にして、
細長い筒形状であり周壁には軸線方向及び周方向に間隔をおいて複数個の噴出孔が配設されている延伸ロッドを該プリフォーム内に進入せしめて、該プリフォームを延伸すること、及び
該成形部の延伸の終了と同時に或いは終了直前又は直後に、該延伸ロッド内に高圧気体を供給して該複数個の噴出孔から高圧気体を噴出せしめて該成形部をブローすること、
を含むことを特徴とする方法が提供される。
【0007】
好ましくは、該成形部の延伸の開始と同時に或いは該プリフォームの延伸を開始してから所定時間経過後に、該プリフォームの該口頸部と該延伸ロッドとの間に存在する環状間隙を通して該プリフォームの該成形部内に低圧気体を供給して該成形部をプレブローすることを含む。該高圧気体は圧力が2乃至4Mpaであり、該低圧気体は圧力が0.5乃至2Mpaであるのが好適である。該成形部のブローの際には、該環状間隙を雰囲気から遮断するが、該成形部のブローが終了すると、該環状間隙を雰囲気に開放して、該噴出孔から噴出せしめられた高圧気体を該環状間隙を通して雰囲気に排出し、延伸ブローされた該成形部を冷却するのが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法によれば、延伸ロッドに形成されている複数個の噴出孔を通して、延伸されたプリフォームの軸線方向全体に渡って充分均一に高圧気体を噴出せしめることができ、かくして把手片が連結される部位でプリフォームが過剰に伸ばされてしまうことを確実に回避して、把手片が所要部位に連結されている合成樹脂製容器を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明に従って構成された、把手片が所要部位に連結されている合成樹脂製容器を製造する方法の好適実施形態について、更に詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の方法によって製造される、把手片2が所要部位に連結されている合成樹脂製容器4の典型例を図示している。図面の明確化のために二点鎖線で図示している合成樹脂製容器は胴部の上部に凹部6を有し、かかる凹部6に把手片2が連結されている。図示の把手片2は、上下方向に延在する把手部8とこの把手部8の上部及び下端部から延出した連結アーム部10及び12とを有する。連結アーム部10及び12の先端には上方に突出する係止部14及び16が形成されている。容器4は、後に詳細に説明するとおり、ポリエチレンテレフタレートの如き適宜の合成樹脂から圧縮成形或いは射出成形することができるプリフォームを延伸ブローすることによって成形される。把手片2は、容器4とは別個に、ポリプロピレン、ポリエチレン或いはポリエチレンテレフタレートの如き適宜の合成樹脂から圧縮成形或いは射出成形によって予め所定形状(即ち図示の形状)に形成される。把手片2自体の形態及び容器4自体の形態は当業者には周知の形態でよく、従ってこれらについての詳細な説明は本明細書においては省略する。
【0011】
図2乃至図4は、夫々、把手片2が連結された容器4を製造するための、本発明に従って構成された方法における延伸ブロー開始準備段階、延伸終了段階、ブロー段階及び冷却段階を簡略に図示している。
【0012】
図2を参照して説明を続けると、図2に図示する段階においては、その一部のみを図示する延伸ブロー成形型18は既に閉じられていて、成形型18内には成形空洞20が規定されている。成形型18の下端部には横断面形状が円形でよい導入口22が配設されており、かかる導入口22の上端は成形空洞20に連通せしめられている。成形型18の導入口22には導入口部材24が配置されている。全体として円筒形状である導入口部材24の上端部には、外径を低減せしめることによって規定された支持リング部25が配置されている。導入口部材24の下部は、成形型18を超えて下方に延出している。導入口部材24の下方には案内部材26が配設されている。案内部材26の上端と導入口部材24の下端との間にはシールリング28が介在されている。案内部材26には上下方向に貫通する貫通穴30が形成されている。案内部材26の下端部には合成ゴムの如き柔軟な材料から形成することができるプラグ部材32が固定されている。このプラグ部材32にも貫通穴34が形成されており、貫通穴34の内径は貫通穴30の内径よりも幾分小さい。案内部材26には貫通穴30から半径方向外方に向かって下方に傾斜して延びる接続穴36も形成されている。接続穴36は制御弁38を介して低圧気体供給源39に接続されている。制御弁38は、接続穴36を低圧気体供給源39に接続する状態、接続穴36を遮断する状態(即ち接続穴36を閉塞する状態)及び接続穴36を雰囲気に接続する状態のいずれかに選択的に設定される。
【0013】
成形型18内には、プリフォーム40と把手片2とが収容されている。それ自体は周知の形態でよいプリフォーム40は円筒形状の口頸部42とこの口頸部42に続く有底円筒形状の成形部44とを有する。かかるプリフォーム40はその口頸部42を上記導入口部材24の支持リング部25に被嵌することによって所要位置に支持され、実質上鉛直に延在せしめられている。図2から明確に理解されるとおり、プリフォーム40の口頸部42は成形空洞20外に位置せしめられるが、プリフォーム40の成形部42は成形空洞20内に位置せしめられている。予め所要形状に成形されている把手片2は成形空洞20の所要部位に位置せしめられている。図2に図示する延伸ブロー開始準備段階においては、更に、延伸ロッド46がプラグ部材32の貫通穴34、案内部材26の貫通穴30、導入口部材24内、及びプリフォーム40の口頸部42を通して、プリフォーム40の成形部44内に進入せしめられている。図示の実施形態においては、延伸ロッド46は細長い円筒形状であり、その上端は閉じられている。延伸ロッド46の外径はプラグ部材32の貫通穴34の内径と実質上同一であり、プラグ部材32と延伸ロッド46との間には気密状態が確立されている。延伸ロッド46の周壁48には軸線方向及び周方向に適宜の間隔をおいて噴出孔50が形成されていることが重要である。かような噴出孔50は、延伸ロッド46が上方に移動されてプリフォーム40の延伸が完了した状態、即ち図3に図示する状態において、延伸ロッド46の、プリフォーム40内に位置する部分の軸線方向全体に渡ってほぼ均等に配置されているのが好適である。所望ならば、把手片2が連結される容器2の凹部6に対向する部位における噴出孔50の密度を比較的高くすることもできる。後述するとおりにして延伸ブローされたプリフォーム40の成形部44を冷却する際に、噴出された気体が把手片2の係止部14及び16に集中的に作用して係止部14及び16近傍においてプリフォーム40の成形部44が局部的に過冷却され、かかる部位における伸びが阻害されてしまうことを回避するために、噴出孔50の位置を把手片2の係止部14及び16から幾分変位せしめることもできる。また、全噴出孔50の合計面積を延伸ロッド46の内径を超えない程度にすることによって、高圧気体が延伸ロッド46の軸線方向全体に渡って充分均一に噴出せしめることができる。延伸ロッド46内は制御弁52を介して高圧気体供給源54に接続されている。制御弁52は延伸ロッド46内を高圧気体供給源54から遮断する状態と高圧気体供給源54に接続する状態とを選択的に設定される。
【0014】
プリフォーム40の延伸ブロー成形は次のとおりにして遂行される。最初に、延伸ロッド46を図2に図示する延伸開始位置から図3に図示する延伸終了位置まで上昇せしめ、プリフォーム40の成形部44を上方に引っ張ることによって延伸する。これに加えて、延伸ロッド46の上昇開始と同時に、即ち成形部44の延伸の開始と同時に、或いは成形部44の延伸を開始してから所定時間経過後に、例えば延伸ロッド46が図2に図示する延伸開始位置と図3に図示する延伸完了位置との中間まで上昇せしめられた時点で、プリブローを開始するのが好都合である。このプリブローにおいては、制御弁38を操作して接続穴36を低圧気体供給源39に接続し、かくして接続穴36、貫通穴30、導入口部材24内、及びプリフォーム40の口頸部42と延伸ロッド46との間の環状間隙56(図示の実施形態においては、かかる環状間隙56の一部は導入口部材24の支持リング部25と延伸ロッド46との間に規定されている)を通してプリフォーム40の成形部44内に低圧気体を供給する。供給する低圧気体は、圧力が0.5乃至2Mpa程度の常温(15乃至30℃程度)空気でよい。かような低圧空気をプリフォーム40の成形部44内に供給すると、図3に図示する如く、プリフォーム40の成形部44が半径方向外方に幾分拡張せしめられ、これによって延伸されたプリフォーム40の成形部44が延伸ロッド46の外周面に付着することが効果的に防止される。
【0015】
プリフォーム40の成形部44の延伸の終了と同時に或いはその直前又は直後に、メインブローを開始する。図4に図示する如く、このメインブローにおいては、制御弁38を操作して接続穴36を遮断(従って、プリフォーム40の口頸部42と延伸ロッド46との間の環状間隙56を遮断)し、制御弁52を操作して延伸ロッド46内を高圧気体供給源54に接続する。かくすると、延伸ロッド46内に高圧気体が流入し、延伸ロッド46の周壁48に形成された複数個の噴出孔50からプリフォーム40の成形部44に向けて高圧気体が噴出され、これによってプリフォーム40の成形部44が成形空洞20の外郭に対応した形状、即ち図5に図示する形状にブロー成形される。かくすると、図4及び図5を参照することによって明確に理解されるとおり、延伸ブロー成形されたプリフォーム40の成形部44の一部が把手片2の連結アーム部10及び12における先端部分を包む込み、これによって把手片2が延伸ブロー成形されたプリフォーム40の成形部44(即ち容器の胴部)に連結される。高圧気体は、圧力が2乃至4Mpa程度の常温(15乃至30℃程度)の空気でよい。かようなブロー成形に関しては、延伸ロッド46の噴出孔50から噴出される高圧空気がプリフォーム40の成形部44の全体に渡って充分均一に作用し、従って把手片2が連結される部位においてプリフォーム40の成形部44が過剰に伸ばされて肉厚が過小になり把手片2の連結強度が不充分になることが充分確実に回避されることが留意されるべきである。
【0016】
プリフォーム40の成形部44のブロー成形が終了すると、制御弁38を操作して接続穴36を雰囲気に接続(従って、プリフォーム40の口頸部42と延伸ロッド46との間の環状間隙56を雰囲気に接続)する。かくすると、延伸ロッド46の噴出孔50から延伸ブローされたプリフォーム40の成形部44に噴出された高圧気体は、プリフォーム40の口頸部42と延伸ロッド46との間の環状間隙56、導入口部材24内、貫通穴30及び接続穴36を通して雰囲気に排出され、従って延伸ブローされたプリフォーム40の成形部44を通して高圧気体が循環されることになり、延伸ブローされたプリフォーム40の成形部44、即ち延伸ブロー成形された容器が冷却される。延伸ブローされた容器が充分に冷却されると、制御弁52を操作して延伸ロッド46内を高圧気体供給源54から遮断し、成形型18を開き、把手片2が連結された容器4を成形型18から取り出す。
【0017】
以上、添付図面を参照して本発明に従って構成された方法の好適実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲から逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能であることは多言するまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の方法によって製造される、把手片が所要部位に連結されている合成樹脂製容器の典型例を、把持片を実線で容器を二点鎖線で示す正面図。
【図2】本発明の方法の好適実施形態における延伸ブロー開始準備段階を示す簡略断面図。
【図3】本発明の方法の好適実施形態における延伸終了段階を示す簡略断面図。
【図4】本発明の方法の好適実施形態におけるブロー段階を示す簡略断面図。
【図5】本発明の方法の好適実施形態における冷却段階を示す簡略断面図。
【符号の説明】
【0019】
2:把手片
4:合成樹脂製容器
18:延伸ブロー成形型
20:成形空洞
40:プリフォーム
42:プリフォームの口頸部
44:プリフォームの成形部
46:延伸ロッド
50:噴出孔
56:環状間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形状の口頸部と該口頸部に続く有底筒形状の成形部とを有する合成樹脂製プリフォームの該成形部と予め所要形状に成形した把手片とを、延伸ブロー成形型の成形空洞内に位置せしめて、該プリフォームの該成形部を延伸ブロー成形し、これによって該把手片が所要位置に連結された合成樹脂製容器を製造する方法にして、
細長い筒形状であり周壁には軸線方向及び周方向に間隔をおいて複数個の噴出孔が配設されている延伸ロッドを該プリフォーム内に進入せしめて、該プリフォームを延伸すること、及び
該成形部の延伸の終了と同時に或いは終了直前又は直後に、該延伸ロッド内に高圧気体を供給して該複数個の噴出孔から高圧気体を噴出せしめて該成形部をブローすること、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
該成形部の延伸の開始と同時に或いは該プリフォームの延伸を開始してから所定時間経過後に、該プリフォームの該口頸部と該延伸ロッドとの間に存在する環状間隙を通して該プリフォームの該成形部内に低圧気体を供給して該成形部をプレブローすること、を含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
該高圧気体は圧力が2乃至4Mpaであり、該低圧気体は圧力が0.5乃至2Mpaである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
該成形部のブローの際には、該環状間隙を雰囲気から遮断するが、該成形部のブローが終了すると、該環状間隙を雰囲気に開放して、該噴出孔から噴出せしめられた高圧気体を該環状間隙を通して雰囲気に排出し、延伸ブローされた該成形部を冷却すること、を含む請求項1から3までのいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−184258(P2009−184258A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27434(P2008−27434)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】