説明

投写型映像表示システム

【課題】スクリーンまでの距離を最小限にして、歪みや収差を抑えて映像を投射するこ
とによって、性能が良好で、便利で使い勝手にも優れた投写型映像表示システムを実現。
【解決手段】装置100とスクリーン5とを備え、装置100は内部に照明光学系と投
射光学系とを備え、投射光学系は、光束が投射される方向に向かって、光軸に対して回
転対称なレンズ素子を含む第1のレンズ群と、複数のレンズ素子を含む第2のレンズ群
と、第2のレンズ群からの光束をスクリーン5に導くミラーを備え、ミラーは装置10
0に収納できるように折り畳み可能、装置100はスクリーン5の上下又は左右の端辺
部からスクリーン5の投影面に垂直方向に延長した面の1面に沿って端辺部に配置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像表示素子の画像を拡大してスクリーンなどの投写面上に投写して画像表
示を行う投写型映像表示システムに関し、特に、大画面の映像表示に適した投写型映像表
示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
映像表示素子の画像を、複数のレンズから構成される投写光学ユニットを介してスクリ
ーン(投写面)上に拡大して投写するカラー映像表示システムは、既に、各種のものが知
られ、かつ、実用化されている。なお、かかる表示システムでは、スクリーン上に充分な
大きさの拡大映像を、歪みなく得ることが要求される。これを実現するため、例えば下記
の特許文献1〜2に記載されているように、投影画面を投影系の光軸に対して垂直方向に
シフトすると共に、やはり投影系の光軸に対して所定の角度傾けて配置された付加光学系
とを用いて、映像をスクリーンに対して斜め方向に拡大投影する投影装置又は光学系が既
に知られている。なお、ここで言う付加光学系(アフォーカルコンバータ)とは、投影像
の大きさを変換する作用を有する光学系であり、スクリーンに対する斜め方向からの投写
に伴う投影像の歪を補正・低減して長方形の投影像を得るためのものである。
【0003】
また、上記のレンズ(透過系光学素子)に代えて複数の反射鏡(反射系光学素子)を用
い、映像表示素子の画像をスクリーン(投写面)上に拡大して投写する反射型結像光学系
は、例えば下記の特許文献3によって、既に、知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−134213号公報
【特許文献2】特開2000−162544号公報
【特許文献3】特開2004−157560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
即ち、映像をスクリーンに対して斜め方向から投写すると、投写映像には、所謂、台形
歪みが生じる。これを解消するために、上記特許文献1に記載の投写光学ユニットでは、
スクリーン側に配置された付加光学系(アフォーカルコンバータ)を偏心させて台形歪み
抑える構成としている。しかしながら、かかる偏心付加光学系を構成するレンズは、広角
化が困難であり、そのため、必要な倍率の投影像を得るためには、投写装置からスクリー
ンまでの距離が大きくなってしまい、また、投影画面と投影系との間の距離も大きくなっ
てしまい、そのため、装置全体が大きく(特に、光学ユニットの光軸方向の長さ)なって
しまうという問題点がある。加えて、上述した偏心付加光学系を構成するレンズとしては
、口径の大きな付加光学系が必要となるが、それに伴って、投写光学ユニットのコスト上
昇の原因となってしまうことにもなる。
【0006】
また、上記特許文献2に記載の投写光学ユニットにおいても、上記特許文献1と同様、
広角化が困難であり、かつ、使用するレンズを個別に偏心させる必要があるため、その製
造が難しく、加えて、やはり口径の大きな付加光学系が必要となり、投写光学ユニットの
コスト上昇の原因となってしまう。
【0007】
一方、上記特許文献3に記載の反射型結像光学系においては、従来の透過型の結像光学
系(レンズ系)に代えて反射光学系(反射鏡)を利用することにより、結像光学系の大型
化を抑え且つ広画角化を図るものである。しかしながら、反射鏡での光の偏心(偏向)量
が大きなことから、特に、装置内において、その傾斜角度も含めて複数の反射鏡を正確な
位置に配置することが難しく、また、振動によっても容易に反射鏡の傾斜角度等が変化し
てしまうことから、やはり、その製造が極めて難しいという問題点があった。
【0008】
そこで、本発明者等によれば、同出願人により既に出願された特願2006−1664
34によれば、上記従来技術における問題点に鑑み、装置の外形が大きくすることなく広
角化を可能とすると共に、その製造も比較的容易な投写型映像表示装置と共に、そのため
の投写光学ユニット、即ち、口径の大きな付加光学系を必要とすることなく、かつ、台形
歪みが生じず、投写形表示装置自体を、よりコンパクトな外形寸法とするのに好適な技術
が提供されている。
【0009】
そして、本発明では、上述した特願2006−166434より既に提供された投写型
映像表示装置を採用することにより、映像表示素子の画像を拡大してスクリーンなどの投
写面上に投写して画像表示を行う投写型映像表示システムであって、歪みなく大画面の映
像表示が可能な投写型映像表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、上記の目的を達成するため、まず、投写型映像表示装置と、前記投写
型映像表示装置から投射される投射光を投影面に投射して映像を表示するスクリーンとを
備えた投写型映像表示システムであって、前記投写型映像表示装置は、光源と、映像表示素子と、前記光源からの光束を前記映像表示素子に照射する照明光学系と、前記映像表示素子からの映像光を前記スリーンに向かって投射する投射光学系とを含み、前記投射光学系は、前記映像表示素子から前記スクリーンに向かって、順に、光軸に対して対称に配置された複数のレンズ素子からなるレンズ群と、当該光軸に対して非軸対称な形状を有する反射ミラーとを有しており、前記投写型映像表示装置を、前記スクリーンの上下又は左右の端辺部から当該投影面に垂直方向に延長した面の1面に沿って、当該端辺部の一部に配置した投写型映像表示システムが提供される。
【0011】
なお、本発明では、前記に記載した投写型映像表示システムにおいて、前記投写型映像
表示装置は、前記スクリーンと機械的に結合されて構成されていることが好ましく、更に
、前記スクリーンは折り畳み可能な可搬スクリーンであることが、更には、その一部に可
搬用のハンドル部分を設けることが好ましい。
【0012】
また、本発明では、前記に記載した投写型映像表示システムにおいて、前記投写型映像
表示装置は、前記スクリーンの上端辺部の略中央部に配置されており、かつ、前記投写型
映像表示装置からの投射光を反射して前記スクリーンの投影面に導くミラー部を備えてい
る投写型映像表示システムが提供されている。又は、前記に記載した投写型映像表示シス
テムにおいて、前記投写型映像表示装置は、前記スクリーンの上端辺部の略中央部に配置
されており、かつ、前記投写型映像表示システムを、少なくと2つ又はそれ以上、各投写
型映像表示システムを構成するスクリーンの投影面が、隣接するスクリーンの投影面に対
して180度以下の角度となるように配置し、更には、前記投写型映像表示装置は、前記
隣接するスクリーンの投影面上に、互いに異なる映像を投射する投写型映像表示システム
が提供されている。又は、前記投写型映像表示装置は、前記隣接するスクリーンの投影面
上に投射する互いに異なる映像により、前記2つ又はそれ以上のスクリーンに1の画面を
構成することも可能である。
【0013】
また、本発明によれば、上記の目的を達成するため、投写型映像表示装置と、前記投写
型映像表示装置から投射される投射光を投影面に投射して映像を表示するスクリーンとを
備えた投写型映像表示システムであって、前記投写型映像表示装置は、光源と、映像表示
素子と、前記光源からの光束を前記映像表示素子に照射する照明光学系と、前記映像表示
素子からの映像光を前記リーンに向かって投射する投射光学系とを含み、前記投射光学系
は、前記映像表示素子から前記スクリーンに向かって、順に、光軸に対して対称に配置さ
れた複数のレンズ素子からなるレンズ群と、当該光軸に対して非軸対称な形状を有する反
射ミラーとを有しており、前記投写型映像表示装置を、前記スクリーンの上下又は左右の
端辺部から当該投影面に垂直方向に延長した面の一対の面に沿って、当該端辺部から近接
した位置で、かつ、当該端辺部の一部に配置した投写型映像表示システムが提供される。
【0014】
なお、本発明では、前記に記載した投写型映像表示システムにおいて、前記スクリーン
の上下又は左右の端辺部に配置された一対の前記投写型映像表示装置は、同一の映像を、
互いに重ね合わせて投射することが好ましく、又は、前記スクリーンの上下又は左右の端
辺部に配置された一対の前記投写型映像表示装置は、同一の映像を、前記スクリーンの投
影面上に、互いに重ね合わせて投射することが好ましい。更には、前記スクリーンの上下
又は左右の端辺部に配置された一対の前記投写型映像表示装置は、互いに異なる映像を、
前記スクリーンの投影面上に投射することが好ましく、前記スクリーンの上下の端辺部に
配置された一対の前記投写型映像表示装置を、水平方向に複数配置することが好ましい。
更には、前記に記載した投写型映像表示システムにおいて、前記スクリーンの左右の端辺
部に配置された一対の前記投写型映像表示装置を、垂直方向に複数配置したことが好まし
い。
【発明の効果】
【0015】
以上の本発明によれば、広角で投写面(スクリーン)までの距離を最小限にして、歪み
や収差を抑えて映像を投射することによって、性能が良好で、かつ、便利で使い勝手にも
優れた投写型映像表示システムを実現することを可能とするという優れた効果を発揮する

【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明になる投写型映像表示システムをプロジェクタに適用した全体構成を示す図である。
【図2】上記本発明になる投写型映像表示システムをホームシアターに採用した構成を示す図である。
【図3】上記本発明になる投写型映像表示システムを飛行機の機内に採用した構成を示す図である。
【図4】上記本発明になる投写型映像表示システムをホワイトボードに採用した構成を示す図である。
【図5】上記図4に示したホワイトボードの上部の詳細構成を示す図である。
【図6】上記本発明になる投写型映像表示システムを店舗の一部に配置した構成を示す図である。
【図7】上記本発明になる投写型映像表示システムを、やはり、店舗の一部に配置した構成を示す図である。
【図8】上記本発明になる投写型映像表示システムを、やはり、店舗の一部に配置した構成を示す図である。
【図9】上記本発明になる投写型映像表示システムを、ゲームセンターやシミュレーション設備に配置した構成を示す図である。
【図10】上記本本発明の投写型映像表示システムにおける投写型映像表示装置の全体構成を示す図である。
【図11】上記投写型映像表示装置の投写光学ユニットの基本構成を示す断面図である。
【図12】上記図11の光学ユニットにおけるレンズ配置の一例を示す斜視図である。
【図13】上記光学ユニットのレンズ面を説明するための垂直方向及び水平方向の断面図である。
【図14】本発明の他の実施形態になる投写型映像表示装置装置の全体構成を示す斜視図である。
【図15】上記他の実施形態になる投写型映像表示装置装置における光学ユニットのレンズ配置の一例を示す斜視図である。
【図16】上記光学ユニットのレンズ面を説明するための垂直方向の断面図である。
【図17】上記本発明の投写型映像表示装置装置における光路を示すYZ断面図である。
【図18】上記本発明の投写型映像表示装置装置における光路を示すXZ断面図である。
【図19】他の実施形態になる投写型映像表示装置装置の全体構成を示す斜視図である。
【図20】上記更に他の実施形態になる投写型映像表示装置装置における投写光学ユニットの基本構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明の投写型映像表示システムは、以下にその詳細を説明するが、基本的には、添付
の図10から明らかのように、映像表示素子からの映像光を投射する投写型映像表示装置
100と、当該投写型映像表示装置から投射される投射光を投影面に投射して映像を表示
するスクリーン5とを備えて構成されている。
【0018】
まず、添付の図10は、本発明の一実施の形態になる投写型映像表示システムを構成す
る投写型映像表示装置を示す斜視図である。即ち、この図において、投写型映像表示装置
100を構成する略箱型の筐体110の内部には、例えば、外部のパーソナルコンピュー
タから入力される画像又は映像を表示する画像表示素子1と、高輝度の白色光を発生する
ランプなどの光源8とを備えており、更に、その構造については以下に詳細に説明するが
、当該光源8から照射されて画像表示素子1で変調された光を拡大して照射するための投
写光学ユニットが搭載されている。そして、この投写型映像表示装置を室内で使用する場
合、当該投写光学ユニットから出射した光は、図に矢印で示すように、その筐体110の
一方向(図では、長手方向)に対向して位置するシート状のスクリーン等、所謂、上記投
写型映像表示システムの他の一部を構成するスクリーン5上に投写されることとなる。
【0019】
次に、添付の図11の断面図を参照しながら、上記投写型映像表示装置を構成する投写
光学ユニットの基本的な光学構成について説明する。なお、この図11の断面は、上記図
10の右下方向(図の白抜きの矢印を参照)から見た断面を示しており、この図11に示
したXYZ直交座標系(図中に矢印で示す)におけるYZ断面に相当する。
【0020】
この図11にも示すように、投写光学ユニットは、光源8からの光を入射して所望の映
像を射出する画像表示素子1とプリズム10、前方レンズ群2と後方レンズ群3とを含む
2つのレンズ群から構成される透過(レンズ)光学系、そして、回転対称でない(即ち、
非回転対称)の自由曲面形状の反射面を有する反射鏡(以下、自由曲面ミラーと言う)4
を含む反射光学系とによって構成される。
【0021】
ここでは、上記画像表示素子1として、例えば、液晶パネルに代表される透過型のもの
を採用した例を示しているが、本発明では、これに限らず、例えば、CRTのような自発
光型のものでもよい。また、上記画像表示素子1として、例えば上述した液晶パネルなど
の透過型のものを採用する場合には、液晶パネルを照射する光源8となるランプが必要と
なる。また、当該液晶パネルとして、所謂、3板式のように、R、G、Bの複数の画像を
合成する方式でもよく、その場合には、映像合成用のプリズム等が必要となる。しかしな
がら、これら液晶パネルの詳細やこれを照射する光源8となるランプ等については、後に
説明することとし、ここでは直接的に関係しないため、その図示は省略している。一方、
CRTのような自発光型のものでは、上記光源8を必要としないことは明らかであろう。
【0022】
以上のような構成になる投写光学ユニットでは、上記画像表示素子1からプリズム10
を介して射出した光は、まず、レンズ光学系を構成する前方レンズ群2に入射される。な
お、後にもその詳細を説明するが、この前方レンズ群2は、回転対称な面形状を有する、
正のパワー及び負のパワーを有する複数の屈折レンズを含んで構成されている。その後、
この前方レンズ群2から射出した光は、少なくとも一方の面が回転対称でない(回転非対
称の)自由曲面の形状を有する複数(本例では2枚)のレンズを含めた複数のレンズから
構成される後方レンズ群3を通過する。そして、この後方レンズ群3から射出した光は、
更に、回転対称でない自由曲面形状の反射面を有する反射鏡(以下、自由曲面ミラーと言
う)4を含む反射光学系で拡大反射された後、所定のスクリーン5(例えば、部屋の壁面
やシート状のスクリーン等)上に投写されることとなる。
【0023】
なお、本実施の形態では、上記図11からも明らかなように、従来技術(特に、上述の
特許文献1や2)のように投影画面(表示素子)を投影系の光軸に対して垂直方向にシフ
トし、更には、投影系の光軸に対して所定の角度傾けて付加光学系を配置する光学系とは
異なり、上記画像表示素子1は、その表示画面の中央がレンズ光学系のほぼ光軸上に位置
するように配置されている(即ち、共軸光学系を形成している)。従って、上記画像表示
素子1の表示画面の中央から出てレンズ光学系の入射瞳の中央を通ってスクリーン5上の
画面中央に向かう光線11は、ほぼ、レンズ光学系(上記前方レンズ群2と後方レンズ群
3を含む)の光軸に沿って進む(以下、これを「画面中央光線」という)。その後、この
画面中央光線11は、上記反射光学系(自由曲面ミラーを含む)の自由曲面形状を有する
反射面4上の点P2で反射された後、スクリーン5上の画面中央の点P5に、スクリーン
の法線7に対して下方から斜めに入射する。この角度を以下、「斜め入射角度」と称し、
θsで表わすこととする。このことは、即ち、前記レンズ光学系の光軸に沿って通過した
光線がスクリーンに対して斜めに入射していることで、実質的にレンズ光学系の光軸がス
クリーンに対して斜めに設けられている(斜め入射系となる)ことを意味することとなる

【0024】
なお、上述したように、スクリーンに対して光線を斜めに入射すると、上記画像表示素
子1から投写された長方形の形状が台形になる、所謂、台形歪を含め、その他にも、光軸
に対して回転対称でないことによる種々の収差が生じることとなるが、しかしながら、本
発明では、これらを前記レンズ光学系を構成する後方レンズ群3と、そして、前記反射光
学系の反射面とで補正するものである。
【0025】
特に、上記画像表示素子1から投写された光線を、前記反射光学系を構成する反射鏡4
の反射面で拡大反射してスクリーン5上に斜めに入射することによれば、レンズにより得
られる光の偏心量(偏向角)に比較し、より大きな偏心量(偏向角)が得られ、また、収
差も生じ難くいことから、装置の大型化を抑え、且つ、広画角化を図ることが可能となる
。即ち、上記前方レンズ群2と後方レンズ群3を含むレンズ光学系を、上述した従来技術
(特に、上述の特許文献1や2)の付加光学系(アフォーカルコンバータ)を偏心させて
台形歪み抑える構成に比較して、より口径の小さな光学系として構成することが可能とな
る。
【0026】
また、上記反射光学系を構成する反射鏡4の反射面に入射する光を、上述したように、
前記レンズ光学系により所定の大きさまで拡大して投射することから、従来の反射鏡だけ
で拡大投射系を構成する構造(例えば、上述した特許文献3)に比較しても、その製造が
容易となる。即ち、レンズ光学系を反射光学系とは個別に製造し、その後、装置筐体内に
おいて、これら両者の位置を固定調整する構成とすることにより、特に、量産に適したも
のとなる。また、上記のように、台形歪等を補正するための後方レンズ群3を、前記前方
レンズ群2の前方に配置する構成によれば、この後方レンズ群3と前方レンズ群2との間
の間隔を小さくして配置することが可能となることから、当該投写光学ユニットを搭載す
る装置を全体的にコンパクトとすることができ、特に、スクリーンの下部での高さを小さ
く出来るという好適な効果が得られる。
【0027】
このように、自由曲面形状を有する透過型のレンズ光学系と、自由曲面形状を有する反
射光学系とを組み合わせることによれば、特に、フロント投写型の映像表示装置に適した
場合、フロント投写型で強く要求される広画角化を、確実かつ比較的容易に実現し、かつ
、装置全体を小さくしたコンパクトな投写型映像表示装置として実現することが可能とな
る。または、背面投写型の映像表示装置に適した場合にも、同様に、広画角化を、確実か
つ比較的容易に実現し、かつ、装置全体を小さくしたコンパクトな投写型映像表示装置と
して実現することが可能となる。
【0028】
次に、添付の図12及び図13には、上記投写型映像表示装置を構成する投写光学ユニ
ットのレンズ光学系及び反射光学系を含む光学素子の詳細が示されている。即ち、図12
は上記投写光学ユニットの斜視図であり、図13はその垂直方向断面(図13(a))及
びその水平方向断面(図13(b))をそれぞれ示している。
【0029】
これらの図にも示されるように、レンズ光学系では、映像表示素子1からプリズム10
を介して出射される映像は、まず、回転対称形状を有する複数のレンズを含む前方レンズ
群2に入射される。上述したように、前方レンズ群2は、回転対称の球面レンズと非球面
レンズとを含んでいる。又は、添付の図14や図15に示すように、前方レンズ群2と後
方レンズ群3の途中に折り曲げミラー35を配置して光線を直角に折り曲げる構成として
もよい。
【0030】
また、後方レンズ群3は、少なくとも2つの自由曲面レンズにより構成されている。こ
れらの図にも示すように、反射鏡4の反射面S23に最も近い自由曲面レンズ31は、そ
の光の射出方向に凹部を向けており、かつ、前記スクリーンの下端に入射する光線が通過
する部分の曲率が、前記スクリーンの上端に入射する光線が通過する部分の曲率よりも大
きく設定されている。即ち、自由曲面レンズとは、その光の射出方向に凹部を向けて湾曲
されており、かつ、スクリーンの下端に入射する光線が通過する部分の曲率が、前記スク
リーンの上端に入射する光線が通過する部分の曲率よりも大きい形状を有するものとする

【0031】
また、本実施形態では、次の条件を満たすように構成されている。即ち、上記の図11
に示す断面内において、上記画像表示素子1の画面下端から射出されて前方レンズ群2の
入射瞳の中央を通り、スクリーン5の画面上端の点P6に入射する光線を光線12とする
。この光線12が自由曲面ミラー4を通過する点P3からスクリーン上の点P6にまで至
る光路長をL1とする。また、上記画像表示素子1の画面上端から射出されて前方レンズ
群2の入射瞳の中央を通り、スクリーン5の画面下端の点P4に入射する光線を光線13
とする。この光線13が自由曲面ミラー4を通過する点P1からスクリーン上の点P4に
まで至る光路長をL2とする。そして、上述した投写光学ユニットでは、上記L1、L2
が次の式を満足するように構成されている。
【0032】
【数1】

【0033】
但し、ここで、Dvは図11の断面内でのスクリーン上の画面の大きさであり、言い換
えると、スクリーン上の画面上端の点P6から画面下端の点P4までの距離である。また
、θsは上記斜め入射角度である。
【0034】
一方、前記画像表示素子1は、その表示画面の中央を前記レンズ光学系の光軸上に位置
するように配置されているが、或いは、添付の図16にも示すように、当該表示画面の法
線は前記レンズ光学系の光軸に対して僅かに傾けて配置することが望ましいであろう。
【0035】
なお、上記の図11を見ると、前述したように、点P3から点P6に到る光路長は、点
P1から点P4に到る光路長よりも長くなっている。これは、レンズ光学系から見て、ス
クリーン上の像点P6が像点P4よりも遠くにあることを意味している。そこで、スクリ
ーン上の像点P6に対応する物点(表示画面上の点)がよりレンズ光学系に近い点に、ま
た、像点P4に対応する物点がよりレンズ光学系から遠い点にあれば、像面の傾きを補正
できる。そのためには、上記図16にも示すように、前記画像表示素子1の表示画面中央
の法線ベクトルを、スクリーン5の法線と画面中央光線を含む平面内において、レンズ光
学系の光軸に対して僅かに傾けるようにすることが好ましい。そして、その傾斜の方向は
、スクリーン5が位置する方向と反対方向とすることが好ましい。
【0036】
なお、光軸に対して傾いた像平面を得るのに物平面を傾ける方法は知られているが、実
用的な大きさの画角では、物平面の傾きによる像面は、光軸に対して非対称な変形を生じ
、回転対称な投写レンズでは補正が困難であった。本実施形態では、上記の後方レンズ群
3において、回転非対称の自由曲面レンズ31を、更には、やはり自由曲面レンズ32を
用いているため、非対称な像面の変形に対応することができる。このため、物平面を傾け
ること、すなわち映像表示素子の表示面を傾けることで、低次の像面の歪を大きく低減で
きることから、自由曲面による収差補正を補助する上で効果的である。
【0037】
次に、上記した各光学要素の作用については、前記レンズ光学系ではその前方レンズ群
2(レンズ21〜25)が、前記画像表示素子1の表示画面をスクリーン5上に投写する
ための主レンズを構成しており、回転対称な光学系における基本的な収差を補正する。ま
た、前記レンズ光学系の後方レンズ群3(レンズ31〜34)は回転対称でない(回転非
対称)自由曲面形状を有するレンズで構成されている。更に、前記反射光学系4は、回転
対称でない自由曲面形状を有する反射面で構成されるため、主として、斜め入射によって
生じる収差の補正を行う。このように、前記反射光学系をなすミラー4が主として台形歪
を補正し、他方、レンズ光学系の後方レンズ系群3が主として像面の歪みなどの非対称な
収差の補正を行う構成となっている。
【0038】
以上のように、本発明の実施形態では、前記反射光学系は回転対称でない自由曲面形状
を有する1枚の反射面(ミラー)4で構成され、前記レンズ光学系の後方レンズ群3は、
両面共に回転非対称な自由曲面形状を有する2枚の透過型レンズを(反射ミラー4側のレ
ンズ31及び32)含んで構成されている。なお、ここで、自由曲面ミラー4は、その反
射方向に凸部を向けるように湾曲されている。そして、自由曲面ミラー4のスクリーンの
下端に入射する光線を反射する部分の曲率は、前記スクリーンの上端に入射する光線を反
射する部分の曲率よりも大きく設定されている。また、スクリーンの下端に入射する光線
を反射する部分がその反射方向に対し凸形状を為し、他方、前記スクリーンの上端に入射
する光線を反射する部分がその反射方向に凹形状を為すようにしてもよい。
【0039】
反射光学系の反射面(ミラー)4における座標原点と、前方レンズ群2のうち最も反射
面(ミラー)4に近いレンズ面との間の光軸方向での距離は、前方レンズ群2の焦点距離
の5倍、又は、それ以上に設定することが望ましい。これによれば、反射光学系の自由曲
面形状を有する反射面により、台形歪収差をより効果的に補正し、もって、良好な性能を
得ることができる。
【0040】
以下、本発明の具体的な数値実施例について説明する。
【実施例1】
【0041】
まず、添付の図17及び図18、更には、以下の表1〜表4を用いて、上記に説明した
本実施例になる投写光学ユニットの詳細を、特に、そのレンズ光学系及び反射光学系を含
む光学素子の具体的な数値を示しながら説明する。なお、これらの図は、第1の数値例に
基づく本発明に係る光学系の光線図を示している。即ち、図17は、前述した図2のXY
Z直交座標系におけるYZ断面、即ち、光学系をZ軸方向に展開して示している。また、
図18はXZ断面での構成を示している。なお、図18では、その詳細構造を添付の図1
4及び図15に示すように、レンズ光学系を構成するレンズ光学系の前方レンズ群2と後
方レンズ群3との途中に折り曲げミラー35を設置し、もって、光路をX軸方向に一度折
り曲げている例を示している。
【0042】
本例において、図17の下側に表示した映像表示素子1から射出した光は、複数のレン
ズを含むレンズ光学系のうち、まず回転対称形状の面のみを有するレンズのみで構成され
る前方レンズ群2を通過する。そして、回転非対称の自由曲面レンズを含む後方レンズ群
3を通り、反射光学系である自由曲面ミラー4の反射面で反射される。その反射光は、そ
の後スクリーン5に入射される。
【0043】
ここで、レンズ光学系の前方レンズ群2は、全て、回転対称な形状の屈折面を持つ複数
のレンズにより構成されており、これらレンズの屈折面のうち4つは回転対称な非球面で
あり、他は球面である。なお、ここに用いられた回転対称な非球面は、各面毎のローカル
な円筒座標系を用いて、次の式で表される。
【0044】
【数2】

ここで、「r」は光軸からの距離であり、「Z」はサグ量を表している。また、「c」
は頂点での曲率、「k」は円錐定数、「A」から「J」は上記「r」のべき乗の項の係数
である。
【0045】
一方、前記レンズ光学系の後方レンズ群3を構成する自由曲面は、各面の面頂点を原点
とするローカルな直交座標系(x、y、z)を用い、X、Yの多項式を含む次の式で表わ
される。
【0046】
【数3】

ここで、「Z」はX、Y軸に垂直な方向で自由曲面の形状のサグ量を表わしており、「
c」は頂点での曲率、「r」はX、Y軸の平面内での原点からの距離、「k」は円錐定数
、「C(m、n)」は多項式の係数である。
【0047】
次に、以下の表1は、本実施例に係る光学系の数値データを示している。この表1にお
いて、S0〜S23は、上記図13示された符号S0〜S23にそれぞれ対応している。
ここで、符号S0は映像表示素子11の表示面、すなわち物面を示しており、S23は自
由曲面ミラー5の反射面を示している。また、符号S24は、これらの図では示されてい
ないが、上記図11のスクリーン5の入射面、すなわち、像面を示している。
【0048】
【表1】

【0049】
また、上記表1において、「Rd」は各面の曲率半径であり、上記図13において面の
左側に曲率の中心がある場合は正の値で、逆の場合は負の値で表わしている。また、上記
表1において、「TH」は面間距離であり、そのレンズ面の頂点から次のレンズ面の頂点
までの距離を示す。そのレンズ面に対して、次のレンズ面が図の中で左側にある時には面
間距離は正の値、右側にある場合は負の値で表している。
【0050】
更に、上記表1において、S5、S6、S17、S18は回転対称な非球面であり、こ
の表1では面の番号の横に「*」を付けて分かり易く表示しており、これら4つ面の非球
面の係数を以下の表2に示している。
【0051】
【表2】

【0052】
また、上記表1においてS19からS22は前記レンズ光学系の後方レンズ群を構成す
る自由曲面形状を有する屈折面であり、S23は反射光学系の自由曲面S23形状を有す
る反射面であって、面の番号の横に#を付けて表示した。これら5つの自由曲面の形状を
表す係数の値を以下の表3に示す。
【0053】
【表3】

【0054】
また、本発明では、上記の図16に示すように、画像表示素子1の表示画面である物面
を、前記レンズ光学系の光軸に対して−1.163度傾けている。なお、傾斜の方向は、
この図16の断面内で物面の法線が時計回りに回転する方向を正の値で表わすことにする
。従って、本実施例では物面を図16の断面内で、前記レンズ光学系の光軸に垂直な位置
から反時計回り方向に1.163度傾けていることになる。
【0055】
また、上記の図13又は図16中の符号S23で示す自由曲面ミラー4は、そのローカ
ル座標の原点を前記レンズ光学系の光軸上に置き、ローカル座標の原点での法線、すなわ
ち、Z軸を、前記レンズ光学系の光軸と平行な位置から約+29度だけ傾斜して配置して
いる。なお、この傾きの方向は、前記物面と同様に、上記図13又は図16の断面内で反
時計回りに回転する方向を正とし、従って、反時計回りに傾けていることになる。これに
よって、画像表示素子1の画面中央から出て、ほぼ、前記レンズ光学系の光軸に沿って進
んできた画面中央光線は、S23で反射後、前記レンズ光学系の光軸に対して前記傾き角
度の2倍の58度だけ傾いた方向に進む(図の矢印を参照)。
【0056】
更に、本実施例における、各面のローカル座標系の傾き又は偏心の様子を以下の表4に
示す。この表4において、面番号の右側に傾き角度、偏心の値を示しており、「ADE」
は図13の断面と平行な面内での傾きの大きさであり、その表示規則は上に示した通りで
ある。また、「YDE」は偏心の大きさであり、偏心は上記図13の断面と平行な面内で
かつ光軸に垂直な方向で設定され、上記図13の断面において下側への偏心を正とする。
なお、以降に説明する実施例においても、光学要素の傾きや偏心は、表示した断面に平行
な断面内での方向で設定される。
【0057】
【表4】

【0058】
なお、上記の表1、表3を見ると、本実施例では、曲率「c」とコーニック係数「k」
が零(0)となっていることがわかる。即ち、斜め入射による台形歪は、斜め入射の方向
に極端に大きく発生し、これと垂直な方向での歪量は小さい。従って、斜め入射の方向と
これに垂直な方向とでは、大幅に異なる機能が必要であり、回転対称で全方向に機能する
上記曲率「c」やコーニック係数「k」を利用しないことにより、非対称な収差を良好に
補正することが可能となる。
【0059】
また、上記表4において、面S23の「ADE」は、上記図11に示すθmと同じであ
り、スクリーン5の面上での「ADE」は、上記図11に示すように、θsである。これ
らの両者の値から、前記条件を満足しており、従って、スクリーンの下部の高さをより小
さくして、コンパクトな光学系を実現している。
【0060】
また、上記の式1に示す光路長の差|L1−L2|の値は、スクリーンの画面の高さの
0.42倍であり、θsが30度であることから、上記数1の条件を満足している。上記
表1〜表4の数値は、物面(例えば、比率16:9の液晶パネル)上の範囲(12.16
×6.84mm)の映像を像面(60”+over-scan:1452.8×817.2mm)
上に拡大して投写する場合の一例である。即ち、比較的近い距離(Lp)でも、物面を十
分大きな画面に拡大して投射することが出来ること、即ち、投射拡大率に優れていること
が分る。
【実施例2】
【0061】
次に、表5〜表8を用いて第2の実施例について説明する。ここでも、レンズ光学系の
前方レンズ群2は、全て、回転対称な形状の屈折面で構成されており、これらレンズの屈
折面のうち4つは回転対称な非球面であり、他は球面である。ここに用いられた軸対称な
非球面は、各面ごとのローカルな円筒座標系を用いて、前記に示した式、[数2]で表さ
れる。また、前記レンズ光学系の後方レンズ群3を構成するレンズの自由曲面は、各面の
面頂点を原点とするローカルな直交座標系(x、y、z)を用い、X、Yの多項式を含む
、前記に示した式、[数3]で表される。
【0062】
以下の表5は、本数値実施例のレンズデータを示しており、面番号は物面をS0、順に
S1からS23まである。この表5において、「Rd」は各面の曲率半径であり、また、
「TH」は面間距離であり、そのレンズ面の頂点から次のレンズ面の頂点までの距離を示
す。
【0063】
【表5】

【0064】
この表5において面S5、S6、S17、S18は回転対称な非球面であり、表1では
面の番号の横に「*」を付けて分かり易く表示しており、これら4つ面の非球面の係数を
以下の表6に示している。
【0065】
【表6】

【0066】
また、上記表5において、面S19からS22は前記レンズ光学系の後群を構成する自
由曲面形状を有する屈折面であり、S23は前記反射光学系の自由曲面形状を有する反射
面であって、面の番号の横に「#」を付けて表示した。これら5つの自由曲面の形状を表
す係数の値を以下の表7に示す。
【0067】
【表7】

【0068】
更に、以下の表8には、この第2の実施例における各面の傾きと偏心の大きさとを示し
ている。この表8における「ADE」、「YDE」の値の表示の規則は前述した通りであ
る。また、本実施例における各面の傾きは、先の実施例1とほぼ同じ量である。
【0069】
【表8】

【0070】
なお、上記表8において、S23のADE(=θm)と、スクリーン面5のADE(=
θs)から、前記条件を満足してスクリーンの下部の高さが小さいコンパクトな光学系を
実現している。
【0071】
また、式1に示す光路長の差|L1−L2|の値は、スクリーンの画面の高さの0.4
3倍であり、θsが30度であることから、上記[数1]の条件を満足していることがわ
かる。
【0072】
一方、この第2の実施例では、上記表8に示すように、S15を−0.193mmだけ
偏心させ、S17面を逆に0.193mmだけ偏心させている。ある面を偏心させた場合
、以後の面ではその偏心量だけ光軸が移動する。従って、このS15とS17の偏心は、
S15とS16で構成される1枚のレンズを光軸から−0.193mm偏心させることを
意味している。なお、この偏心量は微量であり、レンズのサイズを大きくするような悪影
響は生じないが、この偏心によって、非対称な色収差の微調整を実現している。
【0073】
また、上記の表5及び表7を見ると、この実施例では、曲率「c」とコーニック係数「
k」が零(0)となっていることがわかる。斜め入射による台形歪は、斜め入射の方向に
極端に大きく発生し、これと垂直な方向に歪量は小さい。従って、斜め入射の方向とこれ
に垂直な方向とでは、大幅に異なる機能が必要であり、回転対称で全方向に機能する上記
曲率「c」やコーニック係数「k」を利用しないことにより、図形歪を良好に補正するこ
とが可能となる。
【0074】
以上に述べた数値による第2の実施例の有効範囲は、物面(比率16:9)上の範囲を
像面(70”+over-scan:1694.9×953.4mm)上に拡大して投写している
。すなわち、比較的近い距離(Lp)でも、物面を十分大きな画面に拡大して投射するこ
とが出来ることが、即ち、投射拡大率に優れていることが分る。
【実施例3】
【0075】
次に、本発明になる第3の実施例について説明する。ここでも、レンズ光学系の前方レ
ンズ2群は、全て、回転対称な形状の屈折面で構成されており、これら屈折面の内の4つ
は回転対称な非球面であり、他は球面である。ここに用いられた軸対称な非球面も、各面
ごとのローカルな円筒座標系を用いて、前記に示した式[数2]で表される。また、前記
レンズ光学系の後方レンズ群3を構成する自由曲面は、各面の面頂点を原点とするローカ
ルな直交座標系(x、y、z)を用い、X、Yの多項式を含む、前記に示した[数3]で
表わされる。
【0076】
以下の表9は、第3の実施例におけるレンズデータを示しており、面番号は物面をS0
、順にS1からS23まである。この表9において「Rd」は各面の曲率半径である。ま
た、「TH」は面間距離を示しており、そのレンズ面の頂点から次のレンズ面の頂点まで
の距離を示す。
【0077】
【表9】

【0078】
この表9においても、面S5、S6、S17、S18は回転対称な非球面であり、面の
番号の横に「*」を付けて分かり易く表示しており、また、これら4つ面の非球面の係数
を以下の表10に示している。
【0079】
【表10】

【0080】
また、上記の表9において、面S19からS22は前記レンズ光学系の後方レンズ群を
構成する自由曲面形状を有する屈折面であり、S23は前記反射光学系の自由曲面形状を
有する反射面であって、面の番号の横に「#」を付けて表示した。なお、これら5つの自
由曲面の形状を表す係数の値を以下の表11に示す。
【0081】
【表11】

【0082】
更に、以下の表12には、第3の実施例における各面の傾きと偏心の大きさを示してい
る。なお、この表12における「ADE」、「YDE」の値の表示の規則は前述した通り
である。
【0083】
【表12】

【0084】
なお、この表12からは、前述した条件は満足していないことが分る。しかしながら、
この第3の実施例では、その分奥行きが小さく、奥行きを優先した構成となっている。
【0085】
また、上記表12に示すように、先の実施例2と同様に、面S15とS16で構成され
る1枚のレンズを、光軸から−0.304mm偏心させている。この偏心量は微量であり
、レンズのサイズを大きくするような悪影響は生じないが、この偏心によって、非対称な
色収差の微調整を実現している。
【0086】
さらに、上記[数1]に示す光路長の差|L1−L2|の値は、スクリーンの画面高さ
の0.62倍であり、θsが45度であることから、上述の条件を満足している。
【0087】
また、上記の表9及び表11からは、この第3の実施例では、曲率「c」とコーニック
係数「k」が零(0)となっていることがわかる。斜め入射による台形歪は、斜め入射の
方向に極端に大きく発生し、これと垂直な方向に歪量は小さい。従って、斜め入射の方向
とこれに垂直な方向とでは、大幅に異なる機能が必要であり、回転対称で全方向に機能す
る上記曲率「c」やコーニック係数「k」を利用しないことにより、図形歪を良好に補正
することが可能である。
【0088】
また、上記第3の実施例の有効範囲は、物面(比率16:9)上の範囲を像面(50”
+over-scan:1210.7×681.0)上に拡大して投写している。この例でも、比
較的近い距離(Lp)でも、物面を十分大きな画面に拡大して投射することが出来ること
が、即ち、投射拡大率に優れていることが分る。
【実施例4】
【0089】
表13〜表16を用いて、本発明による第4の実施例について説明する。ここでも、画
像表示素子1から射出した光は、回転対称な面形状を有する透過型レンズで構成されるレ
ンズ光学系の前方レンズ群2、自由曲面形状を有する透過型レンズで構成されるレンズ光
学系の後方レンズ群3の順で通過後、反射光学系の自由曲面形状を有する反射面4で反射
され、スクリーン5に入射する。
【0090】
即ち、ここでも、レンズ光学系の前方レンズ群2は、全て、回転対称な形状の屈折面で
構成されており、各屈折面の内の4つは回転対称な非球面であり、他は球面である。また
、ここに用いられた軸対称な非球面は、各面ごとのローカルな円筒座標系を用いて、前述
した式[数1]で表される。また、前記レンズ光学系の後方レンズ群3を構成する自由曲
面は、やはり、各面の面頂点を原点とするローカルな直交座標系(x、y、z)を用い、
X、Yの多項式を含む前述した[数2]で表わされる。
【0091】
以下の表13は、第4の実施例のレンズデータを示しており、面番号は物面をS0、順
にS1からS24までありS25は像面である。表13において「Rd」は各面の曲率半
径であり、上記図13又は図16の中で面の左側に曲率の中心がある場合は正の値で、逆
の場合は負の値で表わしている。
【0092】
【表13】

【0093】
この表13において、「TH」は面間距離であり、そのレンズ面の頂点から次のレンズ
面の頂点までの距離を示す。また、そのレンズ面に対して、次のレンズ面が左側にある時
には、面間距離は正の値で、右側にある場合は負の値で表している。
【0094】
この表13においてS5、S6、S17、S18は回転対称な非球面であり、表13で
は面の番号の横に「*」を付けて分かり易く表示しており、これら4つ面の非球面の係数
を、以下の表14に示している。
【0095】
【表14】

【0096】
また、この表13において、S19からS22は前記レンズ光学系の後方レンズ群3を
構成する自由曲面形状を有する屈折面であり、S23は前記反射光学系の自由曲面形状を
有する反射面であって、面の番号の横に「#」を付けて表示した。これら5つの自由曲面
の形状を表す係数の値を、以下の表15に示す。
【0097】
【表15】

【0098】
更に、以下の表16には、本実施例における各面の傾きと偏心の大きさを示している。
この表16における「ADE」、「YDE」の値の表示の規則は、前述した通りであり、
本実施例における各面の傾きも、先の実施例1とほぼ同じ量である。
【0099】
【表16】

【0100】
即ち、この表16を見ると、前述した条件は満足していないことが分る。しかしながら
、その分奥行きが小さく、奥行きを優先した実施例となっている。
【0101】
一方、この第4の実施例では、上記の表16に示すように、S15面を−0.23mm
偏心させ、S17面を逆に0.23mm偏心させている。ある面を偏心させた場合、以後
の面ではその偏心量だけ光軸が移動する。従って、このS15とS17の偏心は、S15
とS16で構成される1枚のレンズを光軸から−0.193mm偏心させることを意味し
ている。この偏心量は微量であり、レンズのサイズを大きくするような悪影響は生じない
が、この偏心によって、非対称な色収差の微調整を実現している。
【0102】
さらに、光路長の差|L1−L2|の値は、スクリーン画面の高さの0.64倍であり
、θsが45度であることから、上記[数1]の条件を満足している。
【0103】
また表13及び表15を見ると、この第4の実施例では、曲率「c」とコーニック係数
「k」が零(0)となっていることがわかる。斜め入射による台形歪は、斜め入射の方向
に極端に大きく発生し、これと垂直な方向に歪量は小さい。従って、斜め入射の方向とこ
れに垂直な方向とでは、大幅に異なる機能が必要であり、回転対称で全方向に機能する上
記曲率「c」やコーニック係数「k」を利用しないことにより、図形歪を良好に補正する
ことができる。
【0104】
なお、本実施例の有効範囲は、物面(比率:16:9)上の範囲を像面(60”+over
-scan:1452.8×817.2mm)上に拡大して投写している。即ち、比較的近い
距離(Lp)でも、物面を十分大きな画面に拡大して投射することが出来ること、即ち、
投射拡大率に優れていることが分る。
【0105】
次に、添付の図19には、上記投写型映像表示装置の他の構成が示されている。即ち、
図からも明らかなように、この他の構成になる投写型映像表示装置100’では、上記図
10又は図14に示した投写型映像表示装置の投写光学ユニットの構成に加え、その自由
曲面の反射鏡4とスクリーン5との間の光路に、更に、平面の反射鏡21を配置して投写
光学ユニットを構成している。なお、この図の例では、この平面の反射鏡21は、上記自
由曲面の反射鏡4に対応して装置筐体110の上面に形成された開口部を覆うための蓋を
も兼ね、その上方で開閉自在に設けられている。
【0106】
かかる投写光学ユニットの構成では、添付の図20にも示すように、画像表示素子1か
らプリズム10を介して射出した光は、まず、レンズ光学系を構成する前方レンズ群2に
入射される。その後、この前方レンズ群2から射出した光は、やはり少なくとも一方の面
が回転対称でない(回転非対称の)自由曲面の形状を有する複数(本例では2枚)のレン
ズを含めた複数のレンズから構成される後方レンズ群3を通過する。そして、この後方レ
ンズ群3から射出した光は、回転対称でない自由曲面形状の反射面を有する反射鏡(以下
、自由曲面ミラーと言う)4を含む反射光学系で拡大反射された後、更に、上記平面の反
射鏡21により反射されて所定のスクリーン5(例えば、部屋の壁面やシート状のスクリ
ーン等)上に投写されることとなる。即ち、この図からも明らかなように、上述した実施
例(例えば、図11や図13)とは反対の方向に投写する。このことからも、この他の実
施形態になる投写型映像表示装置100’の投写光学ユニットの構成では、自由曲面ミラ
ー4からスクリーン5までの光路を上記平面反射鏡21により折り返すことから、スクリ
ーン5までの距離をより小さくすることが可能となり、広角化を可能とするのに好適であ
る。
【0107】
また、この投写光学ユニットの構成では、図20において破線で示すように、上記平面
反射鏡27は、その傾斜角度を微小な角度で調整可能となるように構成されている。即ち
、これによれば、やはり図中に破線及び矢印で示すように、この平面反射鏡27の傾斜角
度を変えることにより、スクリーン5上での投写画像の位置を上下に変更することが可能
となり、特に、投写型映像表示装置においては、好適な機能を提供することが可能となる
。なお、この平面反射鏡27は、当該投写型映像表示装置の使用状況に応じてユーザがそ
の傾斜角度を調整することが出来、或いは、ここでは図示しないが、例えば、電動モータ
などを含む駆動機構によって筐体110上面の開口部を覆おう位置から移動し(立ち上が
り)、そして、ユーザによって設定された角度に傾斜して配置されるように構成すること
も可能であろう。
【0108】
なお、以上に述べた本発明の実施例になる投写型映像表示装置では、画像表示素子1か
らの映像(画像)は、上記の投写光学ユニットから出射して自由曲面ミラー4で反射され
、又は、更に平面反射鏡27により反射されてスクリーン5上に投写される。そのため、
当該装置100、100’の位置を、映像(画像)を投写するスクリーン5に対して正確
に位置決めする必要がある。即ち、上記図14に示した画面中央の光線が上記スクリーン
5の面に対して垂直になるよう、その配置を調整することが、特に、その全体において歪
みや収差を最小限に抑え、良好な投写画面を得るために重要である。
【0109】
以上に述べたように、上述した従来技術のように使用するレンズを偏心させる必要がな
いことから、口径の大きな付加光学系を必要とすることなく、しかも広角角化を可能とす
ると共に、スクリーンまでの位置が変更しても歪みを最小限に抑えることが可能であり、
かつ、その製造も比較的容易な投写型映像表示装置が提供される。そして、本発明によれ
ば、かかる投写型映像表示装置からの映像(画像)をスクリーン5上に投写することによ
り、当該スクリーン上に、その全体において歪みや収差を最小限に抑えた良好な投写画面
を大画面で得ることが出来、もって、優れた実現することが可能となる。
【0110】
そこで、本発明では、上述した投写型映像表示装置100又は100’(以下、まとめ
て投写型映像表示装置100と言う)を利用することにより、映像表示素子の画像を拡大
してスクリーン5などの投写面上に投写して画像表示を行う投写型映像表示システムであ
って、歪みなく大画面の映像表示が可能な投写型映像表示システムを提供するものであり
、以下には、上記の投写型映像表示装置と共に、そして、当該システムの他の一部を構成
するスクリーン5とから構成される投写型映像表示システムについて、添付の図1〜9を
参照しながら、詳細に説明する。
【0111】
まず、添付の図1には、上記投写型映像表示装置100を可搬スクリーン5と一体に構
成した、所謂、プロジェクタ型の投写型映像表示システムが示されている。即ち、図1(
a)にも示すように、投写型映像表示装置100の一部、具体的には、その一側面には、
その内部にシート状の投射スクリーン5が折り畳み可能に(即ち、巻き取って)収納され
た円筒状のケース50が、一体化して固定されている。なお、これらの図において、上記
投写型映像表示装置100の一部には、特に、投射スクリーン5が一体に形成された場合
、その可搬を容易にするための可搬用のハンドルが設けられており、符号51により示さ
れている。
【0112】
そして、この投写型映像表示システムを使用する場合には、図1(b)にも示すように
、上記一体化した投写型映像表示装置100とスクリーン5(具体的には、ケース50)
とを平面上の所定の位置に固定し、その後、スクリーン5をケース50から(図の上方に
)取り出し、投写型映像表示装置100からの投写画像をスクリーン5上の投影面上に投
射することにより、その全体において歪みや収差を最小限に抑え、良好な投写画面を得る
ことが出来る。なお、上記投写型映像表示装置100とスクリーン5(具体的には、ケー
ス50)とは、必ずしも一体化する必要はなく、連結機構により着脱可能に構成すること
も可能であり、その場合、搬送が便利になる。また、投写型映像表示装置100は、上記
スクリーン5(具体的には、ケース50)の幅方向の略中央部に配置することが好ましく
、そして、当該スクリーン5を広げた場合、その投影面に垂直な方向に延長した面に沿っ
て取り付けられることが好ましい。
【0113】
なお、上述した投写型映像表示装置100によれば、例えば、テレビ放送されている映
画の画面を入力し、そして、添付の図2にも示すように、例えば、ユーザの室内(例えば
、リビング)の壁に沿って配置されたテーブル又はAVラック上に配置してそのスクリー
ン5上に画像を投影することによれば、簡単にホームシアターを実現することが可能とな
る。なお、本例では、スクリーン5上に投写画像を投影するものとして説明したが、しか
しながら、当該壁面を利用して投写画像を投影することも可能であろう。本例では、例え
ば、幅が45cm程度のAVラック上に投写型映像表示システムを配置することにより、
60インチ以上の大画面が簡単に得られる。このように、超短焦点でも(即ち、スクリー
ン5の略真下から投射しても)、良好な投写画面を得ることが出来ることから、狭い部屋
でも、空間を効率的に活用して、迫力ある大画面を楽しむことが出来る。
【0114】
または、添付の図3にも示すように、上記投写型映像表示システムを天井に配置するこ
とも可能である(天井吊り下げ配置)。即ち、上記図10にも示した投写型映像表示装置
100を、上下逆にして天井に取り付ける。そして、スクリーン5を、当該装置と一体に
取り付けたケース50から取り出して(なお、この場合、下方に取り出し)固定すること
により、例えば、飛行機(旅客機)、観光バス、長距離バス内などの狭い空間内でも、ス
クリーン5上に大きな画面を投影することが可能となる。
【0115】
更に、上記投写型映像表示装置100を可搬スクリーン5と一体に構成したプロジェク
タ型の投写型映像表示システムとして、例えば、添付の図4にも示すように、所謂、ホワ
イトボード200と一体化して、当該ホワイトボードの表面201に大画面を投影する投
写型映像表示システムを構成することも可能である。なお、この場合、投写型映像表示装
置100を、当該ホワイトボード200の枠体202の一部、特に、その上辺部203の
略中央部に配置することが好ましい。また、その取り付け構造としては、添付の図5(a
)にも示すように、上記図10にも示した投写型映像表示装置100をそのまま、投影面
(ホワイトボードの表面201)に垂直な方向に取り付け、そして、当該装置からの投写
画像を下方に投影するためのミラー210を取り付けてもよく、又は、図5(b)にも示
すように、上記投写型映像表示装置100を上下逆にして取り付けてもよい(なお、その
場合には、ミラー210は不要となる)。なお、投写型映像表示システムをホワイトボー
ド200と一体化する場合、通常、その表面201側に利用者が立って説明や書き込みを
する形態が多いことから、上述したように、特に、投写型映像表示装置100は、枠体2
02の上辺部203に配置することが好ましい。
【0116】
加えて、上記本発明になる投写型映像表示システムを、その大画面を利用して、店舗の
一部に配置して、大画面で、例えば、催し物の案内や広告するための形態が、添付の図6
〜8に示されている。即ち、本発明になる投写型映像表示システムによれば、上述したよ
うに、超短焦点でも(即ち、スクリーン5の略真下から投射しても)良好な投写画面を得
ることが出来ることから、告知板310を立てる台座320の内部に投写型映像表示装置
100を組み込むことが可能であり、もって、店舗の入口やショップの店頭などにおいて
、天吊りなどの設備を必要とせずに、簡単に、省スペースでかつ大画面で、催し物の案内
や広告を告知することが可能となる。特に、本発明になる投写型映像表示システムでは、
その入力により、静止画だけでなく動画をも大画面で表示することが可能であることから
、店舗の入口での、季節の催し物のディスプレイ、又は、ブティック店頭でのファッショ
ンショーのコマーシャル映像の表示に好適であろう。
【0117】
なお、上述した投写型映像表示システムの構成は、スタンドアローンで機能するもので
あり、そのため、その表示内容(コンテンツ)を交替するだけで、様々なシーンで様々な
告知を行うことが出来ることは明らかであろう。または、上記構成の投写型映像表示シス
テムを、例えば、添付の図7に示すように、複数台、横方向に組み立ててマルチ画面表示
することも可能となる。なお、その場合、従来のポスターでは難しかった動画による表現
も可能となり、より効果的な広告効果が期待できる。また、投写型映像表示装置100は
、台座320の内部に組み込まず、スクリーンの上部に配置することも可能である。
【0118】
また、上述した投写型映像表示システムは、添付の図8にも示すように、例えば、その
奥行きが制限されるショーウィンドウにおいても、その大画面の映像をスクリーン又は壁
面に投影することにより、より効果的な宣伝効果を得ることが可能となる。即ち、従来、
ショーウィンドウにおける通常のディスプレイは、マネキン410を含む飾り付け420
と共に、静止画(グラフィック)によるのであったが、上記の投写型映像表示システムに
よれば、更に、映像の表示という選択肢が増えることとなり、その演出の幅が広がること
となる。なお、この例では、上述した投写型映像表示装置100を複数台(本例では、2
台)を配置しており、一台を天吊りにしてより目立たない設置を可能にすると共に、他の
一台を、簡易的に使用できるよう、床置きにした例を示している。
【0119】
なお、本発明の投写型映像表示システムでは、ここでは図示しないが、これらの投写型
映像表示装置100は、スクリーン5の上下だけに限らず、左右に配置することも可能で
ある。そして、スクリーン5の上下又は左右に配置した複数の投写型映像表示装置100
からは、同一の映像を投射してもよく、又は、それぞれ異なる映像を投射し、もってスク
リーン上で合成することも可能である。このように、特に、複数の投写型映像表示装置1
00を使用する場合には、スクリーン5上に得られる映像の光量が増大することから、よ
り明るい映像が得られることとなる。更には、図に「l」と「l」で示すように、ス
クリーン5からの距離を異なる値に設定する(l≠l)ことにより、それぞれの映像
の大きさを変え、それらを合成して表示するこが可能となり、これによっても、表示の演
出の幅が広がることとなる。
【0120】
添付の図9には、上記本発明の投写型映像表示システムを、例えば、飛行機やレーシン
グカーの操縦などを擬似的に体験する、ゲームセンターやシミュレーション設備において
、利用した例が示されている。
【0121】
図9(a)に示すように、本例では、複数(本例では、3枚)のスクリーン5、5、5

、所定の空間を取り囲んで配置されており(即ち、隣接するスクリーンの投影面に対して
略90度以下の角度となるように配置)、これにより操縦者が位置する場所(本例では、
操縦席)をブース510として擬似的に表示している。なお、これらブース510を構成
する正面及び左右の画面を構成する各スクリーン5の上部には、それぞれ、投写型映像表
示装置100が取り付けられ、図に矢印で示すように、スクリーンの上方から映像を投射
し、超短焦点で(即ち、スクリーン5の略真下)、即ち、省スペースで、3方向での(立
体的な)擬似動画を大画面で実現している。
【0122】
即ち、従来では、通常、正面にだけ配置されていた擬似映像を、簡単に、その周囲にま
で拡大、即ち、左右に展開することが可能となることから、その臨場感が飛躍的に向上す
ることとなる。即ち、この図に示されたカーレースの例では、その右側のスクリーン5上
に他の車を表示することによれば、操作者は、横に並んで走行している車を確認するなど
、或いは、シューティングゲームでは、不意に横から出現する敵など、従来では不可能で
あった新たな表現が、容易に可能になる。なお、上記の例では、3枚のスクリーン5、5
によって略方形の空間を取り囲む例についてのみ述べたが、これらスクリーンの枚数を増
大して、多面体又は略曲面からなるスクリーン(即ち、隣接するスクリーンの投影面に対
して180度以下の角度となるように配置)を構成して、投写型映像表示装置100から
の映像を投射することも可能である。
【0123】
なお、以上の実施の形態では、主に、フロント型の投写映像表示システムについて説明
したが、本発明は、かかる実施の形態に限定されることなく、その他、例えば、背面投射
(リアプロジェクション)型の投写映像表示システムにも採用することが可能であり、そ
の場合、上記のスクリーンを、所謂、透過型のスクリーンとすることは当業者であれば明
らかであろう。
【符号の説明】
【0124】
1…映像表示素子、2…前方レンズ群、3…後方レンズ群、4…反射鏡(反射ミラー)
、5…スクリーン、6…反射鏡(反射ミラー)の原点座標の法線、7…スクリーンの法線
、8…光源、100、100’…投写型映像表示装置、110…筐体、27…平面反射鏡
、113…ストッパ、114…移動部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投写型映像表示装置と、前記投写型映像表示装置から投射される投射光を投影面に投
射して映像を表示するスクリーンとを備えた投写型映像表示システムにおいて、
前記投写型映像表示装置は、光源からの光束を映像表示素子に照射する照明光学系と
、前記映像表示素子からの映像光を前記スクリーンに向かって投射する投射光学系と、
を備え、
前記投射光学系は、前記映像表示素子から光束が投射される方向に向かって、順に、
光軸に対して回転対称なレンズ素子を含む第1のレンズ群と、複数のレンズ素子を含む
第2のレンズ群と、前記第2のレンズ群からの光束を前記スクリーンに導くためのミラ
ーを備え、
前記スクリーンの法線と前記光軸は、所定の角度を持って配置され、
前記ミラーは、前記投写型映像表示装置に収納できるように折り畳み可能であり、
前記投写型映像表示装置は、前記スクリーンの上下又は左右の端辺部から前記投影面
に垂直方向に延長した面の1面に沿って、当該端辺部の一部に配置される、ことを特徴
とする投写型映像表示システム。
【請求項2】
前記ミラーは、前記スクリーンに対して、前記照明光学系よりも遠い位置に配置され
る、請求項1記載の投写型映像表示システム。
【請求項3】
前記ミラーは、前記光軸に対して回転非対称な自由曲面形状の反射面を有する、請求
項1又は2記載の投写型映像表示システム。
【請求項4】
前記第2のレンズ群は、前記光軸に対して回転非対称な自由曲面形状を有するレンズ
素子を含む、請求項1乃至3何れか一に記載の投写型映像表示システム。
【請求項5】
前記ミラーは、当該ミラーで反射された投影光束が前記第1及び第2のレンズ群に遮
られないように所定の角度を持って配置される、請求項1乃至4何れか一に記載の投写
型映像表示システム。
【請求項6】
前記投写型映像表示装置は、前記スクリーンと機械的に結合されている、請求項1乃
至5何れか一に記載の投写型映像表示システム。
【請求項7】
前記スクリーンは、折り畳み可能な可搬用スクリーンである、請求項6記載の投写型
映像表示システム。
【請求項8】
前記可搬用スクリーンは、可搬用のハンドル部分を備える、請求項7記載の投写型映
像表示システム。
【請求項9】
前記スクリーンを複数備え、当該複数のスクリーンの各々は、隣接するスクリーンの
投射面に対して180度以下の角度となるよう配置される、請求項1乃至8何れか一に
記載の投写型映像表示システム。
【請求項10】
前記投写型映像表示装置は、前記複数のスクリーンの各々に、互いに異なる映像を投
射し、前記複数のスクリーンに一の画面を構成する、請求項9記載の投写型映像表示シ
ステム。
【請求項11】
前記投写型映像表示装置は、前記端辺部から近接した位置に配置される、請求項1記
載の投写型映像表示システム。
【請求項12】
前記スクリーンの上下又は左右の端辺部に配置された一対の前記投写型映像表示装置
は、同一の映像を、前記スクリーンの投射面上に、互いに重ね合わせて投射する、請求
項11記載の投写型映像表示システム。
【請求項13】
前記スクリーンの上下又は左右の端辺部に配置された一対の前記投写型映像表示装置
は、互いに異なる映像を、前記スクリーンの投射面上に、互いに重ね合わせて投射する
、請求項11記載の投写型映像表示システム。
【請求項14】
前記スクリーンの上下の端辺部に配置された一対の前記投写型映像表示装置は、水平
方向に複数配置される、請求項11記載の投写型映像表示システム。
【請求項15】
前記スクリーンの左右の端辺部に配置された一対の前記投写型映像表示装置は、垂直
方向に複数配置される、請求項11記載の投写型映像表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−118548(P2012−118548A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−4879(P2012−4879)
【出願日】平成24年1月13日(2012.1.13)
【分割の表示】特願2009−205636(P2009−205636)の分割
【原出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】