投影光学装置
【課題】簡単な構成の光学系で全周360°の方向に映像を投影可能な投影光学装置。
【解決手段】中心軸1を含む平面内で中心軸に直交した放射方向に凸の部分を含む曲線を中心軸の周りで回転させて得られる正パワーの回転対称透明レンズ体からなる投影レンズ2と、その投影レンズ2の湾曲した像面3に沿って中心軸の周りで回転対称に配置された輪帯状の映像表示素子とからなる投影光学装置。
【解決手段】中心軸1を含む平面内で中心軸に直交した放射方向に凸の部分を含む曲線を中心軸の周りで回転させて得られる正パワーの回転対称透明レンズ体からなる投影レンズ2と、その投影レンズ2の湾曲した像面3に沿って中心軸の周りで回転対称に配置された輪帯状の映像表示素子とからなる投影光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影光学装置に関し、特に、任意の角度に映像を投影することが可能で、特に全方位に投影可能な投影光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、円筒面の全周360°に配置されたフィルムの映像を同心に配置された円筒状のスクリーンに投影する光学系が特許文献1において知られている。
【特許文献1】米国特許第4,078,860号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1において知られている従来例の場合、回転対称軸を含む断面内ではフィルムの映像をスクリーン上に結像させているが、回転対称軸に直交する断面内では結像させていないため、投影像の結像特性は原理的に不十分なものであった。
【0004】
本発明は従来技術のこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な構成の光学系で全周360°の方向に映像を投影可能な投影光学装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明の投影光学装置は、中心軸を含む平面内で中心軸に直交した放射方向に凸の部分を含む曲線を中心軸の周りで回転させて得られる正パワーの回転対称透明レンズ体からなる投影レンズと、その投影レンズの湾曲した像面に沿って中心軸の周りで回転対称に配置された輪帯状の映像表示素子とからなることを特徴とするものである。
【0006】
この場合に、前記投影レンズとして例えばボールレンズを用いることができる。
【0007】
また、前記映像表示素子は中心軸の周りで回転対称な3次元的な表示面を持つものであることが望ましい。
【0008】
また、前記映像表示素子の表示面が円筒状に構成され、前記映像表示素子に表示される映像は中心軸に沿って一方の方向を観察時の地面方向とするように表示されるか、前記映像表示素子の表示面が円錐状に構成され、前記映像表示素子に表示される映像は中心軸に沿って一方の方向を観察時の地面方向とするように表示されるか、前記映像表示素子の表示面が球面状に構成され、前記映像表示素子に表示される映像は中心軸に沿って一方の方向を観察時の地面方向とするように表示されることが望ましい。
【0009】
また、中心軸の周りで回転対称な3次元的な表示面を持つ前記映像表示素子は、2次元的に構成された映像表示素子を丸めて端部同士を繋ぐことで3次元的に構成されてもよい。
【0010】
また、前記映像表示素子の表示面は、円筒状に配置された複数の平面状表示面からなっていても、円錐状に配置された複数の平面状表示面からなっていても、球面状に配置された複数の平面状表示面からなっていてもよい。
【0011】
また、前記投影レンズは、メリジオナル断面とサジタル断面でのパワーが異なるものであることが望ましい。
【0012】
また、前記投影レンズの透過面は、対称面を持たない任意形状の曲線を回転対称軸の周りで回転させて形成される回転対称な形状を有するものとしてもよい。
【0013】
その場合に、前記投影レンズの透過面は、奇数次項を含む任意形状の曲線を回転対称軸の周りで回転させて形成される回転対称な形状を有するものとすることができる。
【0014】
また、前記投影レンズの透過面は、2つの異なる曲線を接続してなる曲線を回転対称軸の周りで回転させて形成される回転対称な形状を有するものとすることができる。
【0015】
また、前記投影レンズの中心軸と直交する断面での最大直径をφとするとき、
φ<400mm ・・・(1)
なる条件を満足することが望ましい。
【0016】
また、前記映像表示素子の表示面全体を前記投影レンズとは反対側全方位から照明する照明装置を備えているものとすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、簡単な構成の光学系で全周360°の方向に映像を投影可能な投影光学装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、実施例に基づいて本発明の投影光学装置について説明する。
【0019】
まず、本発明の原理を説明する。球体のように、中心軸を含む平面内で中心軸に直交した放射方向(半径方向)に凸の部分を含む曲線を中心軸の周りで回転させて得られる正パワーの回転対称透明レンズ体を投影レンズとして用いて、そのレンズ体の像面周辺に沿って中心軸と同軸に円筒面、円錐面又は球面の内面に輪帯状に配置された映像表示素子を配置すると、レンズ体の映像表示素子側の面と反対側の面とを経て投影されたその輪帯状の映像表示素子の表示像の拡大投影像が、遠方の中心軸と同軸な例えば円筒状のスクリーンの周上に投影され、中心軸に対して360°何れの方向からもその投影像を観察することが可能となり、その映像表示素子は輪帯状であるために、レンズ体の周辺の360°の何れの方向から観察しても輪帯状の映像表示素子の中心軸に対して反対側に位置する表示像部分の拡大投影像を観察することが可能となることにある。
【0020】
以下、図面を参照にして説明する。図1は後記する本発明の実施例1の投影光学装置の光学系の中心軸に沿ってとった断面図であり、図2はその光学系内の光路を示す中心軸に沿う方向に見た平面図である。以下、これら図1、図2を参照にして、本発明の投影光学装置を説明する。
【0021】
本発明の投影光学装置の光学系は、中心軸1を含む平面(図1)内で中心軸1に直交した放射方向(半径方向)に凸の例えば円弧部分を含む曲線を中心軸1の周りで回転させて得られる回転対称透明レンズ体2を投影レンズとして用いる。回転対称透明レンズ体2は、この実施例の場合、球体(ボールレンズ)を用いているが、他に、中心軸1に直交した放射方向に凸の奇数次項を有する自由曲線を中心軸1の周りで回転させて得られる拡張回転自由曲面からなり、正パワーを有するレンズ体を用いることができ、映像表示素子を配置する像面3と反対側の第1面21と像面3側の第2面22とが同一形状の曲面の異なる部分であっても(実施例1、2)、異なる形状の曲面の異なる部分であっても(実施例3)もよい。この回転対称透明レンズ体2の要件としては、逆光線追跡で、少なくとも第1面21又は第2面22の一方が中心軸1を含む平面内で中心軸1に直交した放射方向(半径方向)に凸の曲線を中心軸1の周りで回転させて得られる回転対称面からなり、そして、像面3に向かって進む光束に正のパワーを与えるものであることである。
【0022】
そして、回転対称透明レンズ体2と同様に、中心軸1と同軸な円筒面、円錐面又は球面(実施例1、2の場合は球面、実施例3の場合は円錐面)の内面に中心軸1の周りで回転対称に輪帯状の像面3が設定され、その像面3に像面と同じ形状の輪帯状の映像表示素子が配置される。
【0023】
そして、回転対称透明レンズ体2の第2面22と反対側の第1面21を経て中心軸1の周り360°方向に像面3に配置された映像表示素子の表示像が投影され、その投影像は、図示していない遠方の中心軸1と同軸な例えば円筒状のスクリーンの周上に拡大投影される。
【0024】
このような構成であるので、円筒状のスクリーンの外側あるいは内側の観察者は、中心軸1の周りの360°何れの方向からもそのスクリーン上の拡大投影像を観察することが可能となり、その映像表示素子は輪帯状であるために、回転対称透明レンズ体2の周辺の360°の何れの方向から観察しても輪帯状の映像表示素子の中心軸1に対して反対側に位置する表示像部分の拡大投影像を観察することができる。
【0025】
映像表示素子の表示像は例えば360°のパノラマの風景とか、周辺10°おきに撮影した36視点の離散的な映像を表示してもよい。
【0026】
また、像面3に配置する輪帯状の映像表示素子としては、円筒面、円錐面又は球面の内面に輪帯状に配置された映像表示素子を用いる。中心軸1を回転対称軸として、円筒面、円錐面又は球面の内面に連続的な表示面を持つ映像表示素子の代わりに、円筒面、円錐面又は球面の内面の輪帯状領域に沿って平面状の小さな表示面を隣接して配置してなる映像表示素子を用いてもよい。
【0027】
上記のように、映像表示素子は湾曲した像面3に沿って輪帯状の3次元的な表示面を持つものである。映像表示素子が2次元の平面の表示面を持つものの場合には、それに対応して投影レンズとして像面が平面のものを用いることになるが、本発明のように360°の全方位へ投影する光学系の場合、主光線が像面に対して傾いてしまう。これは映像表示素子の使い方としては好ましくなく、例えば有機ELパネルでは、映像表示素子の発光光線を有効に光学系に導くことができなくなり、光量が低下したり、発光のための電源の利用効率が低下してしまう。また、液晶表示素子の場合には、表示のコントラストが低下してしまい、クリアーな実像を投影することができなくなってしまう。したがって、本発明において、ボールレンズのような湾曲した像面を持つ回転対称透明レンズ体2と、輪帯状で3次元的な表示面を持つ映像表示素子とを用いることは重要である。
【0028】
そして、上記のように、回転対称透明レンズ体2の回転対称軸と映像表示素子の回転対称軸とが一致していることが好ましい。これが一致していないと、投影される実像の位置が一定ではなくなり、周囲に投影される実像のピント位置が一定にならない。
【0029】
さらに、本発明の投影光学装置は必ずしも部屋の中心に設置することが可能な訳ではないので、映像表示素子の回転対称軸と光学系の回転対称軸をずらせる機構が設けられていることがより好ましい。
【0030】
さらに好ましくは、特に水平方向へ映像を主に投影する場合は、映像表示素子の表示面を円筒状に配置することにより、特に水平に近い方向へ投影される投影像の表示素子側の光線の傾きが少なくなり、クリアーな像の観察が可能となる。また、観察映像の地面方向が円筒の上方向になるように表示することが正立映像を観察するために重要である。
【0031】
さらに好ましくは、特に斜め45°方向を中心として映像を投影する場合は、映像表示素子の表示面を円錐状に配置することにより、斜め方向への投影像の表示素子側の光線の傾きが少なくなり、クリアーな像の観察が可能となる。また、観察映像の上方向が円錐の頂点を向くように(装置全体を上下逆転する場合は逆)、円錐を展開した場合に扇型の要の方向が観察映像の地面方向になるように表示することが正立映像を観察するために重要である。また、映像表示素子の表示面を円錐状とする場合、図10に示すように、頂角の異なる複数の円錐状の表示面を持つ複数の映像表示素子13、13’を回転対称透明レンズ体2の湾曲した像面に沿って中心軸1の方向へ並列配置することで映像表示素子を構成することも可能である。このように複数の映像表示素子13、13’を並列配置すると、投影面(スクリーン)上の中心軸1に沿った方向に映像表示素子13の投影像と映像表示素子13’の投影像とが並列するすることになる。
【0032】
さらに好ましくは、映像表示素子の表示面を球状に配置することにより、水平から斜め方向までの広い観察範囲において投影像の表示素子側の光線の傾きが少なくなり、クリアーな観察が可能となる。また、観察映像の地面方向が球(下半分の球)の頂点(地球の南極)を向くように表示することが、正立像を観察するために重要である。
【0033】
さらに好ましくは、円筒状又は円錐状の表示面とする場合は、シート状の映像表示素子を丸めて構成することが可能である。例えば、図12は、図11(a)のような円錐面状の連続的な表示面を持つ映像表示素子13を構成するためのシート状で扇形の映像表示素子33を示す平面図であり、このシート状で扇形の映像表示素子33を丸めて扇形の両端を繋ぐことで、図11(a)のような円錐面状の連続的な表示面を持つ映像表示素子13が得られる。例えば、フレキシブルなシート状の有機EL表示素子や、液晶表示素子を円筒状や円錐状の表示素子に作製して使用することが、製作上安価にでき、好ましい。
【0034】
さらに好ましくは、表示面が円筒状、円錐状、球面状何れの場合も、2次元(平面)の表示面23(図11(b))を複数個連続的に円筒状、円錐状あるいは球面状に並べて配置することにより、小型の表示素子を複数使うことが可能となり、安価に立体(3次元的に配置された)の映像表示素子を実現することが可能となる。
【0035】
さらに好ましくは、回転対称透明レンズ体2の透過面は、対称面を持たない任意形状の曲線を回転対称軸1の周りで回転させて形成される回転対称な形状を有することにより、偏心収差の発生をさらに小さくすることが可能となる。特に偏心により発生するコマ収差を補正することが可能となる。
【0036】
さらに好ましくは、回転対称透明レンズ体2の透過面は、奇数次項を含む任意形状の曲線を回転対称軸の周りで回転させて形成される回転対称な形状を有することにより、さらに自由度の高い補正を行うことが可能となり、収差補正上好ましい。
【0037】
さらに好ましくは、回転対称透明レンズ体2の透過面は、2つの異なる曲線を接続してなる曲線を回転対称軸の周りで回転させて形成される回転対称な形状を有することにより、投影像を結像するときの投影レンズの2つの屈折面の形状を別々に設定できることになり、より自由度の高い補正を行うことが可能となり、収差補正上好ましい。特に、円筒状や円錐状の表示面を使う場合には、像面湾曲や像面の傾きを補正する必要がある。しかし、完全な球の場合には像面の補正を行うことができないので、2つの屈折面の形状を異ならせることにより、像面湾曲や像面の傾きを補正することが始めて可能となる。
【0038】
さらに好ましくは、回転対称透明レンズ体2は、サジタル面とタンジェンシャル面でパワーが異なるように構成されていることが望ましい。サジタル面とタンジェンシャル面でパワーが異なるように構成することにより、中心軸1方向を上下方向として光線を下方に屈曲する偏心光学系として構成しても、発生する偏心収差を補正することが可能となり、収差の少ない鮮明な映像と投影することが可能となる。
【0039】
さらに好ましくは、回転対称透明レンズ体2の中心軸1と直交する断面での最大直径をφとするとき、
φ<400mm ・・・(1)
なる条件を満足することが望ましい。上限の400mmを越えると、装置が大型になってしまう。
【0040】
さらに好ましくは、
φ<200mm ・・・(1−1)
なる条件を満足することが臨場感を得るためには好ましい。
【0041】
なお、以下に説明する実施例1〜3のφは次の通りである。
【0042】
実施例 1 2 3
Rs(mm) 80.00 80.00 85.00
また、回転対称透明レンズ体2の光線が通過しない領域に遮光部材を配置することが望ましい。例えば図13に示すように、回転対称透明レンズ体2の投影像結像用の光線が通過しない円錐状の部分を除去して、その中に黒い塗料11を塗る等の方法が好ましい。
【0043】
さらに好ましくは、遮光部材は光学系の回転対称軸1に対して回転対称な形状にすることにより、メリジオナル断面での絞り4として作用するように配置することが望ましい。これによりメリジオナル断面での不要光を遮光することが可能となり、投影像のコントラストが向上する。
【0044】
また、輪帯状で立体的に配置されている映像表示素子13の表示面を中心軸1の周りの全方位から照明する照明装置と共に本発明の投影光学装置を構成することが望ましい。照明は、例えば、図14に示すように、中心軸1を中心とするサークル状のリング状発光体8を用い、そのリング状発光体8から放射された照明光を中心軸1を含む断面内で映像表示素子13の位置に集光するリング状反射鏡9をリング状発光体8の周囲に配置して構成することができる。そして、観察像のコントラストを上げるために、映像表示素子13から射出する光線を中心軸1を含む断面(メリジオナル断面)内に制限するように、視野角制限フィルターあるいはルーバー15のような手段をリング状発光体8と映像表示素子3の間に配置することが好ましい。
【0045】
また、図15に示すように、回転対称透明レンズ体2と映像表示素子13の周囲に中心軸1と同心のリング状反射鏡16を配置し、そのリング状反射鏡16の面形状を、映像表示素子13の表示面と中心軸1上の位置17が相互に略共役になるようにすると、位置17から出た照明光はメリジオナル断面(中心軸1を含む断面)内に制限される。投影光以外のサジタル断面の光線が存在すると、光学系内でフレアーの原因となるので、図16に示すように、位置17に点光源18を配置して照明装置を構成すると、メリジオナル断面内に制限された照明光のみで映像表示素子13を照明でき、コントラストの良い投影像が観察可能になる。
【0046】
ところで、本発明の光学系の回転対称透明レンズ体2の屈折面21、22は中心軸1を含む断面の面形状をフレネルレンズ面で構成することができる。そのためには、図17に示すように、透明な中心軸1を持つ円柱20にそれぞれリニアフレネルレンズシート(中心軸1方向にのみ屈折力を有するフレネルレンズシート)21’、22’を上下に巻き付けて、屈折面21、22の作用を行わせるようにすることができる(実施例3)。回転対称透明レンズ体2の屈折面21、22が同一面(実施例1、2)の場合には、1個のリニアフレネルレンズシートを円柱20に巻き付けて構成することができる。
【0047】
以下に、本発明の投影光学装置の光学系の実施例1〜3を説明する。これら光学系の構成パラメータは後記する。これら実施例の構成パラメータは、例えば図1に示すように、物体面を投影実像の面(スクリーン面)とし、投影実像と共役な像面を像面3とし、物体面から絞り4を通り、像面3に向かう光線が回転対称透明レンズ体2の第1面21、第2面22を経て像面3に至る逆光線追跡の結果に基づくものである。
【0048】
座標系は、逆光線追跡において、例えば図1に示すように、絞り4の中心を偏心光学系の偏心光学面の原点とし、回転対称透明レンズ体2の中心軸1に沿った像面3とは反対側の側の方向をY軸正方向とし、図1の紙面内をY−Z平面とする。そして、図1の像面3側の方向をZ軸正方向とし、Y軸、Z軸と右手直交座標系を構成する軸をX軸正方向とする。
【0049】
偏心面については、その面が定義される座標系の上記光学系の原点の中心からの偏心量(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向をそれぞれX,Y,Z)と、光学系の原点に定義される座標系のX軸、Y軸、Z軸それぞれを中心とする各面を定義する座標系の傾き角(それぞれα,β,γ(°))とが与えられている。その場合、αとβの正はそれぞれの軸の正方向に対して反時計回りを、γの正はZ軸の正方向に対して時計回りを意味する。なお、面の中心軸のα,β,γの回転のさせ方は、各面を定義する座標系を光学系の原点に定義される座標系のまずX軸の回りで反時計回りにα回転させ、次に、その回転した新たな座標系のY軸の回りで反時計回りにβ回転させ、次いで、その回転した別の新たな座標系のZ軸の回りで時計回りにγ回転させるものである。
【0050】
また、各実施例の光学系を構成する光学作用面の中、特定の面とそれに続く面が共軸光学系を構成する場合には面間隔が与えられており、その他、面の曲率半径、媒質の屈折率、アッベ数が慣用法に従って与えられている。
【0051】
なお、拡張回転自由曲面は、以下の定義で与えられる回転対称面である。
【0052】
まず、Y−Z座標面上で原点を通る下記の曲線(d)が定められる。
【0053】
Z=(Y2 /RY)/[1+{1−(C1 +1)Y2 /RY2 }1 /2]
C2 Y+C3 Y2 +C4 Y3 +C5 Y4 +C6 Y5 +C7 Y6
+・・・・+C21Y20+・・・・+Cn+1 Yn +・・・・
・・・(d)
次いで、この曲線(d)をX軸正方向を向いて左回りを正として角度θ(°)回転した曲線F(Y)が定められる。この曲線F(Y)もY−Z座標面上で原点を通る。
【0054】
その曲線F(Y)をZ正方向に距離R(負のときはZ負方向)だけ平行移動し、その後にY軸の周りでその平行移動した曲線を回転させてできる回転対称面を拡張回転自由曲面とする。
【0055】
その結果、拡張回転自由曲面はY−Z面内で自由曲面(自由曲線)になり、X−Z面内で半径|R|の円になる。
【0056】
この定義からY軸が拡張回転自由曲面の軸(回転対称軸)となる。
【0057】
ここで、RYはY−Z断面での球面項の曲率半径、C1 は円錐定数、C2 、C3 、C4 、C5 …はそれぞれ1次、2次、3次、4次…の非球面係数である。
【0058】
なお、Y軸に平行な軸を中心軸に持つ円錐面は拡張回転自由曲面の1つとして与えられ、RY=∞,C1 ,C2 ,C3 ,C4 ,C5 ,…=0とし、θ=(円錐面の傾き角)、R=(X−Z面内での底面の半径)として与えられる。
【0059】
また、後記の構成パラメータ中にデータの記載されていない非球面に関する項は0である。屈折率、アッベ数については、d線(波長587.56nm)に対するものを表記してある。長さの単位はmmである。各面の偏心は、上記のように、基準面からの偏心量で表わす。
【0060】
実施例1の投影光学装置の光学系の中心軸1に沿ってとった断面図を図1に、その光学系内の光路を示す中心軸1に沿う方向に見た平面図を図2に示す。また、この実施例の光学系全体の横収差図を図3に示す。この横収差図において、中央に示された角度は、(水平方向画角、垂直方向の画角)を示し、その画角におけるY方向(メリジオナル方向)とX方向(サジタル方向)の横収差を示す。なお、マイナスの画角は、水平方向画角については、Y軸正方向を向いて右回りの角度、垂直方向画角については、X軸正方向を向いて右回りの角度を意味する。以下、同じ。
【0061】
本実施例は、投影レンズの回転対称透明レンズ体2が中心を中心軸1上に有する球体(ボールレンズ)で構成され、その回転対称透明レンズ体2の像面3は回転対称透明レンズ体2の中心と同心の球面状をしており、その球面状の像面3に中心軸1の周りで回転対称に配置された輪帯状の映像表示素子の表示像は、回転対称透明レンズ体2の第2面22と第1面21を順に経て、像面3と共役で中心軸1を中心軸とする円筒状の物体面(スクリーン面(不図示))の斜め上方に拡大投影像として結像される実施例である。そのため、中心軸1を鉛直軸とする場合、観察者が中心軸1の周りで円筒状のスクリーンの外側あるいは内側で中心軸1の周りの360°何れの方向からもそのスクリーン上の拡大投影像を観察することが可能となり、像面3に配置される映像表示素子は中心軸1の周りで回転対称な輪帯状であるために、回転対称透明レンズ体2の周辺の360°の何れの方向から観察しても輪帯状の映像表示素子の中心軸1に対して反対側に位置する表示像部分の拡大投影像を観察することができるものである。
【0062】
この実施例1の仕様は、
入射瞳径 φ40mm
投影画角 垂直 20〜60°
水平 360°
物体の大きさ Y30.94mm
である。
【0063】
実施例2の投影光学装置の光学系の中心軸1に沿ってとった断面図を図4に、その光学系内の光路を示す中心軸1に沿う方向に見た平面図を図5に示す。また、この実施例の光学系全体の横収差図を図6に示す。
【0064】
本実施例は、投影レンズの回転対称透明レンズ体2が円弧を中心軸1の周りで回転させて得られる回転対称トーリック面を持つ透明体で構成され、その回転対称透明レンズ体2の像面3は回転対称透明レンズ体2の中心と同心の球面状をしており、その球面状の像面3に中心軸1の周りで回転対称に配置された輪帯状の映像表示素子の表示像は、回転対称透明レンズ体2の第2面22と第1面21を順に経て、像面3と共役で中心軸1を中心軸とする円筒状の物体面(スクリーン面(不図示))の斜め上方に拡大投影像として結像される実施例である。そのため、中心軸1を鉛直軸とする場合、観察者が中心軸1の周りで円筒状のスクリーンの外側あるいは内側で中心軸1の周りの360°何れの方向からもそのスクリーン上の拡大投影像を観察することが可能となり、像面3に配置される映像表示素子は中心軸1の周りで回転対称な輪帯状であるために、回転対称透明レンズ体2の周辺の360°の何れの方向から観察しても輪帯状の映像表示素子の中心軸1に対して反対側に位置する表示像部分の拡大投影像を観察することができるものである。
【0065】
この実施例2の仕様は、
入射瞳径 φ40mm
投影画角 垂直 20〜60°
水平 360°
物体の大きさ Y30.40mm
である。
【0066】
実施例3の投影光学装置の光学系の中心軸1に沿ってとった断面図を図7に、その光学系内の光路を示す中心軸1に沿う方向に見た平面図を図8に示す。また、この実施例の光学系全体の横収差図を図9に示す。
【0067】
本実施例は、投影レンズの回転対称透明レンズ体2の2つの屈折面21、22を奇数次項を含む異なる曲線を中心軸1の周りで回転させて得られる拡張回転自由曲面で構成する実施例であり、メリジオナル断面内で、屈折面21、22共正のパワーを有する。その回転対称透明レンズ体2の像面3は中心軸1と同軸の円錐面形状をしており、その円錐面の像面3に中心軸1の周りで回転対称に配置された輪帯状の映像表示素子の表示像は、回転対称透明レンズ体2の第2面22と第1面21を順に経て、像面3と共役で中心軸1を中心軸とする円筒状の物体面(スクリーン面(不図示))の斜め上方に拡大投影像として結像される実施例である。この実施例において、上記のように、像面3の投影像を結像する第1面21と第2面22は別の拡張回転自由曲面である。このような構成のため、中心軸1を鉛直軸とする場合、観察者が中心軸1の周りで円筒状のスクリーンの外側あるいは内側で中心軸1の周りの360°何れの方向からもそのスクリーン上の拡大投影像を観察することが可能となり、像面3に配置される映像表示素子は中心軸1の周りで回転対称な輪帯状であるために、回転対称透明レンズ体2の周辺の360°の何れの方向から観察しても輪帯状の映像表示素子の中心軸1に対して反対側に位置する表示像部分の拡大投影像を観察することができるものである。
【0068】
この実施例3の仕様は、
入射瞳径 φ40mm
投影画角 垂直 20〜60°
水平 360°
物体の大きさ Y44.05mm
である。
【0069】
以下に、上記実施例1〜3の構成パラメータを示す。なお、以下の表中の“ERFS”は拡張回転自由曲面を示す。
【0070】
実施例1
面番号 曲率半径 面間隔 偏心 屈折率 アッベ数
物体面 円筒面[1] 1000.00
1 ∞(絞り面)
2 40.00 偏心(1) 1.5163 64.1
3 -40.00 偏心(2)
像 面 -59.05 偏心(3)
円筒面[1]
X方向曲率半径 1000.00
Y方向曲率半径 ∞
偏心(1)
X 0.00 Y 0.00 Z -40.00
α 0.00 β 0.00 γ 0.00
偏心(2)
X 0.00 Y 0.00 Z 40.00
α 0.00 β 0.00 γ 0.00
偏心(3)
X 0.00 Y 0.00 Z 59.05
α 0.00 β 0.00 γ 0.00 。
【0071】
実施例2
面番号 曲率半径 面間隔 偏心 屈折率 アッベ数
物体面 円筒面[1] 1000.00
1 ∞(絞り面)
2 ERFS[1] 偏心(1) 1.5163 64.1
3 ERFS[2] 偏心(2)
像 面 -58.89 偏心(3)
円筒面[1]
X方向曲率半径 1000.00
Y方向曲率半径 ∞
ERFS[1]
RY 39.64
θ 0.00
R -40.00
ERFS[2]
RY -39.64
θ 0.00
R 40.00
偏心(1)
X 0.00 Y 0.00 Z 0.00
α 0.00 β 0.00 γ 0.00
偏心(2)
X 0.00 Y 0.00 Z 0.00
α 0.00 β 0.00 γ 0.00
偏心(3)
X 0.00 Y 0.00 Z 58.89
α 0.00 β 0.00 γ 0.00 。
【0072】
実施例3
面番号 曲率半径 面間隔 偏心 屈折率 アッベ数
物体面 円筒面[1] 1000.00
1 ∞(絞り面)
2 ERFS[1] 偏心(1) 1.5163 64.1
3 ERFS[2] 偏心(2)
像 面 ERFS[3] 偏心(3)
円筒面[1]
X方向曲率半径 1000.00
Y方向曲率半径 ∞
ERFS[1]
RY 41.58
θ -46.25
R -30.00
C4 -1.8432 ×10-5
C5 -2.9400 ×10-7
ERFS[2]
RY -36.80
θ -41.42
R 30.00
C4 1.6554 ×10-4
C5 5.3944 ×10-6
ERFS[3]
RY ∞
θ -40.00
R 45.10
偏心(1)
X 0.00 Y 25.17 Z 0.00
α 0.00 β 0.00 γ 0.00
偏心(2)
X 0.00 Y -29.11 Z 0.00
α 0.00 β 0.00 γ 0.00
偏心(3)
X 0.00 Y -42.95 Z 0.00
α 0.00 β 0.00 γ 0.00 。
【0073】
なお、本発明の投影光学装置の光学系において、中心軸1の周りで回転対称な回転対称透明レンズ体2はそのまま用いることにより、回転対称透明レンズ体2の周辺の360°の全ての方向から輪帯状の映像表示素子13の表示像の拡大投影像を観察できるが、その回転対称透明レンズ体2を中心軸1を含む断面で切断して2分の1、3分の1、3分の2等にすることにより、中心軸1の周りの180°、120°、240°等の角度範囲で拡大投影像を観察できるようにしてももちろんよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施例1の投影光学装置の光学系の中心軸1に沿ってとった断面図である。
【図2】図1の光学系内の光路を示す中心軸に沿う方向に見た平面図である。
【図3】実施例1の光学系全体の横収差図である。
【図4】本発明の実施例2の投影光学装置の光学系の中心軸1に沿ってとった断面図である。
【図5】図4の光学系内の光路を示す中心軸に沿う方向に見た平面図である。
【図6】実施例2の光学系全体の横収差図である。
【図7】本発明の実施例3の投影光学装置の光学系の中心軸1に沿ってとった断面図である。
【図8】図7の光学系内の光路を示す中心軸に沿う方向に見た平面図である。
【図9】実施例3の光学系全体の横収差図である。
【図10】複数の映像表示素子を並列配置して映像表示素子を構成する例を説明するための図である。
【図11】円錐面状の表示面を持つ映像表示素子の構成を説明するための図である。
【図12】円錐面状の連続的な表示面を持つ映像表示素子を構成するためのシート状で扇形の映像表示素子を示す平面図である。
【図13】本発明の投影レンズの遮光方法の1つを説明するための図である。
【図14】本発明の投影光学装置の照明装置の1例を説明するための図である。
【図15】照明光をメリジオナル断面内に制限する配置を説明するための図である。
【図16】図15の原理を用いた本発明の投影光学装置の照明装置の1例を説明するための図である。
【図17】本発明の光学系の投影レンズの屈折面をリニアフレネルレンズシートで構成する場合の説明図である。
【符号の説明】
【0075】
1…中心軸
2…回転対称透明レンズ体(投影レンズ)
3…像面
4…絞り
8…リング状発光体
9…リング状反射鏡
11…黒い塗料
13、13’…映像表示素子
15…視野角制限フィルター(ルーバー)
16…リング状反射鏡
17…中心軸上の位置
18…点光源
20…円柱
21…回転対称透明レンズ体の第1面
22…回転対称透明レンズ体の第2面
21’、22’…リニアフレネルレンズシート
23…2次元(平面)の表示面
33…シート状で扇形の映像表示素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影光学装置に関し、特に、任意の角度に映像を投影することが可能で、特に全方位に投影可能な投影光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、円筒面の全周360°に配置されたフィルムの映像を同心に配置された円筒状のスクリーンに投影する光学系が特許文献1において知られている。
【特許文献1】米国特許第4,078,860号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1において知られている従来例の場合、回転対称軸を含む断面内ではフィルムの映像をスクリーン上に結像させているが、回転対称軸に直交する断面内では結像させていないため、投影像の結像特性は原理的に不十分なものであった。
【0004】
本発明は従来技術のこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な構成の光学系で全周360°の方向に映像を投影可能な投影光学装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明の投影光学装置は、中心軸を含む平面内で中心軸に直交した放射方向に凸の部分を含む曲線を中心軸の周りで回転させて得られる正パワーの回転対称透明レンズ体からなる投影レンズと、その投影レンズの湾曲した像面に沿って中心軸の周りで回転対称に配置された輪帯状の映像表示素子とからなることを特徴とするものである。
【0006】
この場合に、前記投影レンズとして例えばボールレンズを用いることができる。
【0007】
また、前記映像表示素子は中心軸の周りで回転対称な3次元的な表示面を持つものであることが望ましい。
【0008】
また、前記映像表示素子の表示面が円筒状に構成され、前記映像表示素子に表示される映像は中心軸に沿って一方の方向を観察時の地面方向とするように表示されるか、前記映像表示素子の表示面が円錐状に構成され、前記映像表示素子に表示される映像は中心軸に沿って一方の方向を観察時の地面方向とするように表示されるか、前記映像表示素子の表示面が球面状に構成され、前記映像表示素子に表示される映像は中心軸に沿って一方の方向を観察時の地面方向とするように表示されることが望ましい。
【0009】
また、中心軸の周りで回転対称な3次元的な表示面を持つ前記映像表示素子は、2次元的に構成された映像表示素子を丸めて端部同士を繋ぐことで3次元的に構成されてもよい。
【0010】
また、前記映像表示素子の表示面は、円筒状に配置された複数の平面状表示面からなっていても、円錐状に配置された複数の平面状表示面からなっていても、球面状に配置された複数の平面状表示面からなっていてもよい。
【0011】
また、前記投影レンズは、メリジオナル断面とサジタル断面でのパワーが異なるものであることが望ましい。
【0012】
また、前記投影レンズの透過面は、対称面を持たない任意形状の曲線を回転対称軸の周りで回転させて形成される回転対称な形状を有するものとしてもよい。
【0013】
その場合に、前記投影レンズの透過面は、奇数次項を含む任意形状の曲線を回転対称軸の周りで回転させて形成される回転対称な形状を有するものとすることができる。
【0014】
また、前記投影レンズの透過面は、2つの異なる曲線を接続してなる曲線を回転対称軸の周りで回転させて形成される回転対称な形状を有するものとすることができる。
【0015】
また、前記投影レンズの中心軸と直交する断面での最大直径をφとするとき、
φ<400mm ・・・(1)
なる条件を満足することが望ましい。
【0016】
また、前記映像表示素子の表示面全体を前記投影レンズとは反対側全方位から照明する照明装置を備えているものとすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、簡単な構成の光学系で全周360°の方向に映像を投影可能な投影光学装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、実施例に基づいて本発明の投影光学装置について説明する。
【0019】
まず、本発明の原理を説明する。球体のように、中心軸を含む平面内で中心軸に直交した放射方向(半径方向)に凸の部分を含む曲線を中心軸の周りで回転させて得られる正パワーの回転対称透明レンズ体を投影レンズとして用いて、そのレンズ体の像面周辺に沿って中心軸と同軸に円筒面、円錐面又は球面の内面に輪帯状に配置された映像表示素子を配置すると、レンズ体の映像表示素子側の面と反対側の面とを経て投影されたその輪帯状の映像表示素子の表示像の拡大投影像が、遠方の中心軸と同軸な例えば円筒状のスクリーンの周上に投影され、中心軸に対して360°何れの方向からもその投影像を観察することが可能となり、その映像表示素子は輪帯状であるために、レンズ体の周辺の360°の何れの方向から観察しても輪帯状の映像表示素子の中心軸に対して反対側に位置する表示像部分の拡大投影像を観察することが可能となることにある。
【0020】
以下、図面を参照にして説明する。図1は後記する本発明の実施例1の投影光学装置の光学系の中心軸に沿ってとった断面図であり、図2はその光学系内の光路を示す中心軸に沿う方向に見た平面図である。以下、これら図1、図2を参照にして、本発明の投影光学装置を説明する。
【0021】
本発明の投影光学装置の光学系は、中心軸1を含む平面(図1)内で中心軸1に直交した放射方向(半径方向)に凸の例えば円弧部分を含む曲線を中心軸1の周りで回転させて得られる回転対称透明レンズ体2を投影レンズとして用いる。回転対称透明レンズ体2は、この実施例の場合、球体(ボールレンズ)を用いているが、他に、中心軸1に直交した放射方向に凸の奇数次項を有する自由曲線を中心軸1の周りで回転させて得られる拡張回転自由曲面からなり、正パワーを有するレンズ体を用いることができ、映像表示素子を配置する像面3と反対側の第1面21と像面3側の第2面22とが同一形状の曲面の異なる部分であっても(実施例1、2)、異なる形状の曲面の異なる部分であっても(実施例3)もよい。この回転対称透明レンズ体2の要件としては、逆光線追跡で、少なくとも第1面21又は第2面22の一方が中心軸1を含む平面内で中心軸1に直交した放射方向(半径方向)に凸の曲線を中心軸1の周りで回転させて得られる回転対称面からなり、そして、像面3に向かって進む光束に正のパワーを与えるものであることである。
【0022】
そして、回転対称透明レンズ体2と同様に、中心軸1と同軸な円筒面、円錐面又は球面(実施例1、2の場合は球面、実施例3の場合は円錐面)の内面に中心軸1の周りで回転対称に輪帯状の像面3が設定され、その像面3に像面と同じ形状の輪帯状の映像表示素子が配置される。
【0023】
そして、回転対称透明レンズ体2の第2面22と反対側の第1面21を経て中心軸1の周り360°方向に像面3に配置された映像表示素子の表示像が投影され、その投影像は、図示していない遠方の中心軸1と同軸な例えば円筒状のスクリーンの周上に拡大投影される。
【0024】
このような構成であるので、円筒状のスクリーンの外側あるいは内側の観察者は、中心軸1の周りの360°何れの方向からもそのスクリーン上の拡大投影像を観察することが可能となり、その映像表示素子は輪帯状であるために、回転対称透明レンズ体2の周辺の360°の何れの方向から観察しても輪帯状の映像表示素子の中心軸1に対して反対側に位置する表示像部分の拡大投影像を観察することができる。
【0025】
映像表示素子の表示像は例えば360°のパノラマの風景とか、周辺10°おきに撮影した36視点の離散的な映像を表示してもよい。
【0026】
また、像面3に配置する輪帯状の映像表示素子としては、円筒面、円錐面又は球面の内面に輪帯状に配置された映像表示素子を用いる。中心軸1を回転対称軸として、円筒面、円錐面又は球面の内面に連続的な表示面を持つ映像表示素子の代わりに、円筒面、円錐面又は球面の内面の輪帯状領域に沿って平面状の小さな表示面を隣接して配置してなる映像表示素子を用いてもよい。
【0027】
上記のように、映像表示素子は湾曲した像面3に沿って輪帯状の3次元的な表示面を持つものである。映像表示素子が2次元の平面の表示面を持つものの場合には、それに対応して投影レンズとして像面が平面のものを用いることになるが、本発明のように360°の全方位へ投影する光学系の場合、主光線が像面に対して傾いてしまう。これは映像表示素子の使い方としては好ましくなく、例えば有機ELパネルでは、映像表示素子の発光光線を有効に光学系に導くことができなくなり、光量が低下したり、発光のための電源の利用効率が低下してしまう。また、液晶表示素子の場合には、表示のコントラストが低下してしまい、クリアーな実像を投影することができなくなってしまう。したがって、本発明において、ボールレンズのような湾曲した像面を持つ回転対称透明レンズ体2と、輪帯状で3次元的な表示面を持つ映像表示素子とを用いることは重要である。
【0028】
そして、上記のように、回転対称透明レンズ体2の回転対称軸と映像表示素子の回転対称軸とが一致していることが好ましい。これが一致していないと、投影される実像の位置が一定ではなくなり、周囲に投影される実像のピント位置が一定にならない。
【0029】
さらに、本発明の投影光学装置は必ずしも部屋の中心に設置することが可能な訳ではないので、映像表示素子の回転対称軸と光学系の回転対称軸をずらせる機構が設けられていることがより好ましい。
【0030】
さらに好ましくは、特に水平方向へ映像を主に投影する場合は、映像表示素子の表示面を円筒状に配置することにより、特に水平に近い方向へ投影される投影像の表示素子側の光線の傾きが少なくなり、クリアーな像の観察が可能となる。また、観察映像の地面方向が円筒の上方向になるように表示することが正立映像を観察するために重要である。
【0031】
さらに好ましくは、特に斜め45°方向を中心として映像を投影する場合は、映像表示素子の表示面を円錐状に配置することにより、斜め方向への投影像の表示素子側の光線の傾きが少なくなり、クリアーな像の観察が可能となる。また、観察映像の上方向が円錐の頂点を向くように(装置全体を上下逆転する場合は逆)、円錐を展開した場合に扇型の要の方向が観察映像の地面方向になるように表示することが正立映像を観察するために重要である。また、映像表示素子の表示面を円錐状とする場合、図10に示すように、頂角の異なる複数の円錐状の表示面を持つ複数の映像表示素子13、13’を回転対称透明レンズ体2の湾曲した像面に沿って中心軸1の方向へ並列配置することで映像表示素子を構成することも可能である。このように複数の映像表示素子13、13’を並列配置すると、投影面(スクリーン)上の中心軸1に沿った方向に映像表示素子13の投影像と映像表示素子13’の投影像とが並列するすることになる。
【0032】
さらに好ましくは、映像表示素子の表示面を球状に配置することにより、水平から斜め方向までの広い観察範囲において投影像の表示素子側の光線の傾きが少なくなり、クリアーな観察が可能となる。また、観察映像の地面方向が球(下半分の球)の頂点(地球の南極)を向くように表示することが、正立像を観察するために重要である。
【0033】
さらに好ましくは、円筒状又は円錐状の表示面とする場合は、シート状の映像表示素子を丸めて構成することが可能である。例えば、図12は、図11(a)のような円錐面状の連続的な表示面を持つ映像表示素子13を構成するためのシート状で扇形の映像表示素子33を示す平面図であり、このシート状で扇形の映像表示素子33を丸めて扇形の両端を繋ぐことで、図11(a)のような円錐面状の連続的な表示面を持つ映像表示素子13が得られる。例えば、フレキシブルなシート状の有機EL表示素子や、液晶表示素子を円筒状や円錐状の表示素子に作製して使用することが、製作上安価にでき、好ましい。
【0034】
さらに好ましくは、表示面が円筒状、円錐状、球面状何れの場合も、2次元(平面)の表示面23(図11(b))を複数個連続的に円筒状、円錐状あるいは球面状に並べて配置することにより、小型の表示素子を複数使うことが可能となり、安価に立体(3次元的に配置された)の映像表示素子を実現することが可能となる。
【0035】
さらに好ましくは、回転対称透明レンズ体2の透過面は、対称面を持たない任意形状の曲線を回転対称軸1の周りで回転させて形成される回転対称な形状を有することにより、偏心収差の発生をさらに小さくすることが可能となる。特に偏心により発生するコマ収差を補正することが可能となる。
【0036】
さらに好ましくは、回転対称透明レンズ体2の透過面は、奇数次項を含む任意形状の曲線を回転対称軸の周りで回転させて形成される回転対称な形状を有することにより、さらに自由度の高い補正を行うことが可能となり、収差補正上好ましい。
【0037】
さらに好ましくは、回転対称透明レンズ体2の透過面は、2つの異なる曲線を接続してなる曲線を回転対称軸の周りで回転させて形成される回転対称な形状を有することにより、投影像を結像するときの投影レンズの2つの屈折面の形状を別々に設定できることになり、より自由度の高い補正を行うことが可能となり、収差補正上好ましい。特に、円筒状や円錐状の表示面を使う場合には、像面湾曲や像面の傾きを補正する必要がある。しかし、完全な球の場合には像面の補正を行うことができないので、2つの屈折面の形状を異ならせることにより、像面湾曲や像面の傾きを補正することが始めて可能となる。
【0038】
さらに好ましくは、回転対称透明レンズ体2は、サジタル面とタンジェンシャル面でパワーが異なるように構成されていることが望ましい。サジタル面とタンジェンシャル面でパワーが異なるように構成することにより、中心軸1方向を上下方向として光線を下方に屈曲する偏心光学系として構成しても、発生する偏心収差を補正することが可能となり、収差の少ない鮮明な映像と投影することが可能となる。
【0039】
さらに好ましくは、回転対称透明レンズ体2の中心軸1と直交する断面での最大直径をφとするとき、
φ<400mm ・・・(1)
なる条件を満足することが望ましい。上限の400mmを越えると、装置が大型になってしまう。
【0040】
さらに好ましくは、
φ<200mm ・・・(1−1)
なる条件を満足することが臨場感を得るためには好ましい。
【0041】
なお、以下に説明する実施例1〜3のφは次の通りである。
【0042】
実施例 1 2 3
Rs(mm) 80.00 80.00 85.00
また、回転対称透明レンズ体2の光線が通過しない領域に遮光部材を配置することが望ましい。例えば図13に示すように、回転対称透明レンズ体2の投影像結像用の光線が通過しない円錐状の部分を除去して、その中に黒い塗料11を塗る等の方法が好ましい。
【0043】
さらに好ましくは、遮光部材は光学系の回転対称軸1に対して回転対称な形状にすることにより、メリジオナル断面での絞り4として作用するように配置することが望ましい。これによりメリジオナル断面での不要光を遮光することが可能となり、投影像のコントラストが向上する。
【0044】
また、輪帯状で立体的に配置されている映像表示素子13の表示面を中心軸1の周りの全方位から照明する照明装置と共に本発明の投影光学装置を構成することが望ましい。照明は、例えば、図14に示すように、中心軸1を中心とするサークル状のリング状発光体8を用い、そのリング状発光体8から放射された照明光を中心軸1を含む断面内で映像表示素子13の位置に集光するリング状反射鏡9をリング状発光体8の周囲に配置して構成することができる。そして、観察像のコントラストを上げるために、映像表示素子13から射出する光線を中心軸1を含む断面(メリジオナル断面)内に制限するように、視野角制限フィルターあるいはルーバー15のような手段をリング状発光体8と映像表示素子3の間に配置することが好ましい。
【0045】
また、図15に示すように、回転対称透明レンズ体2と映像表示素子13の周囲に中心軸1と同心のリング状反射鏡16を配置し、そのリング状反射鏡16の面形状を、映像表示素子13の表示面と中心軸1上の位置17が相互に略共役になるようにすると、位置17から出た照明光はメリジオナル断面(中心軸1を含む断面)内に制限される。投影光以外のサジタル断面の光線が存在すると、光学系内でフレアーの原因となるので、図16に示すように、位置17に点光源18を配置して照明装置を構成すると、メリジオナル断面内に制限された照明光のみで映像表示素子13を照明でき、コントラストの良い投影像が観察可能になる。
【0046】
ところで、本発明の光学系の回転対称透明レンズ体2の屈折面21、22は中心軸1を含む断面の面形状をフレネルレンズ面で構成することができる。そのためには、図17に示すように、透明な中心軸1を持つ円柱20にそれぞれリニアフレネルレンズシート(中心軸1方向にのみ屈折力を有するフレネルレンズシート)21’、22’を上下に巻き付けて、屈折面21、22の作用を行わせるようにすることができる(実施例3)。回転対称透明レンズ体2の屈折面21、22が同一面(実施例1、2)の場合には、1個のリニアフレネルレンズシートを円柱20に巻き付けて構成することができる。
【0047】
以下に、本発明の投影光学装置の光学系の実施例1〜3を説明する。これら光学系の構成パラメータは後記する。これら実施例の構成パラメータは、例えば図1に示すように、物体面を投影実像の面(スクリーン面)とし、投影実像と共役な像面を像面3とし、物体面から絞り4を通り、像面3に向かう光線が回転対称透明レンズ体2の第1面21、第2面22を経て像面3に至る逆光線追跡の結果に基づくものである。
【0048】
座標系は、逆光線追跡において、例えば図1に示すように、絞り4の中心を偏心光学系の偏心光学面の原点とし、回転対称透明レンズ体2の中心軸1に沿った像面3とは反対側の側の方向をY軸正方向とし、図1の紙面内をY−Z平面とする。そして、図1の像面3側の方向をZ軸正方向とし、Y軸、Z軸と右手直交座標系を構成する軸をX軸正方向とする。
【0049】
偏心面については、その面が定義される座標系の上記光学系の原点の中心からの偏心量(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向をそれぞれX,Y,Z)と、光学系の原点に定義される座標系のX軸、Y軸、Z軸それぞれを中心とする各面を定義する座標系の傾き角(それぞれα,β,γ(°))とが与えられている。その場合、αとβの正はそれぞれの軸の正方向に対して反時計回りを、γの正はZ軸の正方向に対して時計回りを意味する。なお、面の中心軸のα,β,γの回転のさせ方は、各面を定義する座標系を光学系の原点に定義される座標系のまずX軸の回りで反時計回りにα回転させ、次に、その回転した新たな座標系のY軸の回りで反時計回りにβ回転させ、次いで、その回転した別の新たな座標系のZ軸の回りで時計回りにγ回転させるものである。
【0050】
また、各実施例の光学系を構成する光学作用面の中、特定の面とそれに続く面が共軸光学系を構成する場合には面間隔が与えられており、その他、面の曲率半径、媒質の屈折率、アッベ数が慣用法に従って与えられている。
【0051】
なお、拡張回転自由曲面は、以下の定義で与えられる回転対称面である。
【0052】
まず、Y−Z座標面上で原点を通る下記の曲線(d)が定められる。
【0053】
Z=(Y2 /RY)/[1+{1−(C1 +1)Y2 /RY2 }1 /2]
C2 Y+C3 Y2 +C4 Y3 +C5 Y4 +C6 Y5 +C7 Y6
+・・・・+C21Y20+・・・・+Cn+1 Yn +・・・・
・・・(d)
次いで、この曲線(d)をX軸正方向を向いて左回りを正として角度θ(°)回転した曲線F(Y)が定められる。この曲線F(Y)もY−Z座標面上で原点を通る。
【0054】
その曲線F(Y)をZ正方向に距離R(負のときはZ負方向)だけ平行移動し、その後にY軸の周りでその平行移動した曲線を回転させてできる回転対称面を拡張回転自由曲面とする。
【0055】
その結果、拡張回転自由曲面はY−Z面内で自由曲面(自由曲線)になり、X−Z面内で半径|R|の円になる。
【0056】
この定義からY軸が拡張回転自由曲面の軸(回転対称軸)となる。
【0057】
ここで、RYはY−Z断面での球面項の曲率半径、C1 は円錐定数、C2 、C3 、C4 、C5 …はそれぞれ1次、2次、3次、4次…の非球面係数である。
【0058】
なお、Y軸に平行な軸を中心軸に持つ円錐面は拡張回転自由曲面の1つとして与えられ、RY=∞,C1 ,C2 ,C3 ,C4 ,C5 ,…=0とし、θ=(円錐面の傾き角)、R=(X−Z面内での底面の半径)として与えられる。
【0059】
また、後記の構成パラメータ中にデータの記載されていない非球面に関する項は0である。屈折率、アッベ数については、d線(波長587.56nm)に対するものを表記してある。長さの単位はmmである。各面の偏心は、上記のように、基準面からの偏心量で表わす。
【0060】
実施例1の投影光学装置の光学系の中心軸1に沿ってとった断面図を図1に、その光学系内の光路を示す中心軸1に沿う方向に見た平面図を図2に示す。また、この実施例の光学系全体の横収差図を図3に示す。この横収差図において、中央に示された角度は、(水平方向画角、垂直方向の画角)を示し、その画角におけるY方向(メリジオナル方向)とX方向(サジタル方向)の横収差を示す。なお、マイナスの画角は、水平方向画角については、Y軸正方向を向いて右回りの角度、垂直方向画角については、X軸正方向を向いて右回りの角度を意味する。以下、同じ。
【0061】
本実施例は、投影レンズの回転対称透明レンズ体2が中心を中心軸1上に有する球体(ボールレンズ)で構成され、その回転対称透明レンズ体2の像面3は回転対称透明レンズ体2の中心と同心の球面状をしており、その球面状の像面3に中心軸1の周りで回転対称に配置された輪帯状の映像表示素子の表示像は、回転対称透明レンズ体2の第2面22と第1面21を順に経て、像面3と共役で中心軸1を中心軸とする円筒状の物体面(スクリーン面(不図示))の斜め上方に拡大投影像として結像される実施例である。そのため、中心軸1を鉛直軸とする場合、観察者が中心軸1の周りで円筒状のスクリーンの外側あるいは内側で中心軸1の周りの360°何れの方向からもそのスクリーン上の拡大投影像を観察することが可能となり、像面3に配置される映像表示素子は中心軸1の周りで回転対称な輪帯状であるために、回転対称透明レンズ体2の周辺の360°の何れの方向から観察しても輪帯状の映像表示素子の中心軸1に対して反対側に位置する表示像部分の拡大投影像を観察することができるものである。
【0062】
この実施例1の仕様は、
入射瞳径 φ40mm
投影画角 垂直 20〜60°
水平 360°
物体の大きさ Y30.94mm
である。
【0063】
実施例2の投影光学装置の光学系の中心軸1に沿ってとった断面図を図4に、その光学系内の光路を示す中心軸1に沿う方向に見た平面図を図5に示す。また、この実施例の光学系全体の横収差図を図6に示す。
【0064】
本実施例は、投影レンズの回転対称透明レンズ体2が円弧を中心軸1の周りで回転させて得られる回転対称トーリック面を持つ透明体で構成され、その回転対称透明レンズ体2の像面3は回転対称透明レンズ体2の中心と同心の球面状をしており、その球面状の像面3に中心軸1の周りで回転対称に配置された輪帯状の映像表示素子の表示像は、回転対称透明レンズ体2の第2面22と第1面21を順に経て、像面3と共役で中心軸1を中心軸とする円筒状の物体面(スクリーン面(不図示))の斜め上方に拡大投影像として結像される実施例である。そのため、中心軸1を鉛直軸とする場合、観察者が中心軸1の周りで円筒状のスクリーンの外側あるいは内側で中心軸1の周りの360°何れの方向からもそのスクリーン上の拡大投影像を観察することが可能となり、像面3に配置される映像表示素子は中心軸1の周りで回転対称な輪帯状であるために、回転対称透明レンズ体2の周辺の360°の何れの方向から観察しても輪帯状の映像表示素子の中心軸1に対して反対側に位置する表示像部分の拡大投影像を観察することができるものである。
【0065】
この実施例2の仕様は、
入射瞳径 φ40mm
投影画角 垂直 20〜60°
水平 360°
物体の大きさ Y30.40mm
である。
【0066】
実施例3の投影光学装置の光学系の中心軸1に沿ってとった断面図を図7に、その光学系内の光路を示す中心軸1に沿う方向に見た平面図を図8に示す。また、この実施例の光学系全体の横収差図を図9に示す。
【0067】
本実施例は、投影レンズの回転対称透明レンズ体2の2つの屈折面21、22を奇数次項を含む異なる曲線を中心軸1の周りで回転させて得られる拡張回転自由曲面で構成する実施例であり、メリジオナル断面内で、屈折面21、22共正のパワーを有する。その回転対称透明レンズ体2の像面3は中心軸1と同軸の円錐面形状をしており、その円錐面の像面3に中心軸1の周りで回転対称に配置された輪帯状の映像表示素子の表示像は、回転対称透明レンズ体2の第2面22と第1面21を順に経て、像面3と共役で中心軸1を中心軸とする円筒状の物体面(スクリーン面(不図示))の斜め上方に拡大投影像として結像される実施例である。この実施例において、上記のように、像面3の投影像を結像する第1面21と第2面22は別の拡張回転自由曲面である。このような構成のため、中心軸1を鉛直軸とする場合、観察者が中心軸1の周りで円筒状のスクリーンの外側あるいは内側で中心軸1の周りの360°何れの方向からもそのスクリーン上の拡大投影像を観察することが可能となり、像面3に配置される映像表示素子は中心軸1の周りで回転対称な輪帯状であるために、回転対称透明レンズ体2の周辺の360°の何れの方向から観察しても輪帯状の映像表示素子の中心軸1に対して反対側に位置する表示像部分の拡大投影像を観察することができるものである。
【0068】
この実施例3の仕様は、
入射瞳径 φ40mm
投影画角 垂直 20〜60°
水平 360°
物体の大きさ Y44.05mm
である。
【0069】
以下に、上記実施例1〜3の構成パラメータを示す。なお、以下の表中の“ERFS”は拡張回転自由曲面を示す。
【0070】
実施例1
面番号 曲率半径 面間隔 偏心 屈折率 アッベ数
物体面 円筒面[1] 1000.00
1 ∞(絞り面)
2 40.00 偏心(1) 1.5163 64.1
3 -40.00 偏心(2)
像 面 -59.05 偏心(3)
円筒面[1]
X方向曲率半径 1000.00
Y方向曲率半径 ∞
偏心(1)
X 0.00 Y 0.00 Z -40.00
α 0.00 β 0.00 γ 0.00
偏心(2)
X 0.00 Y 0.00 Z 40.00
α 0.00 β 0.00 γ 0.00
偏心(3)
X 0.00 Y 0.00 Z 59.05
α 0.00 β 0.00 γ 0.00 。
【0071】
実施例2
面番号 曲率半径 面間隔 偏心 屈折率 アッベ数
物体面 円筒面[1] 1000.00
1 ∞(絞り面)
2 ERFS[1] 偏心(1) 1.5163 64.1
3 ERFS[2] 偏心(2)
像 面 -58.89 偏心(3)
円筒面[1]
X方向曲率半径 1000.00
Y方向曲率半径 ∞
ERFS[1]
RY 39.64
θ 0.00
R -40.00
ERFS[2]
RY -39.64
θ 0.00
R 40.00
偏心(1)
X 0.00 Y 0.00 Z 0.00
α 0.00 β 0.00 γ 0.00
偏心(2)
X 0.00 Y 0.00 Z 0.00
α 0.00 β 0.00 γ 0.00
偏心(3)
X 0.00 Y 0.00 Z 58.89
α 0.00 β 0.00 γ 0.00 。
【0072】
実施例3
面番号 曲率半径 面間隔 偏心 屈折率 アッベ数
物体面 円筒面[1] 1000.00
1 ∞(絞り面)
2 ERFS[1] 偏心(1) 1.5163 64.1
3 ERFS[2] 偏心(2)
像 面 ERFS[3] 偏心(3)
円筒面[1]
X方向曲率半径 1000.00
Y方向曲率半径 ∞
ERFS[1]
RY 41.58
θ -46.25
R -30.00
C4 -1.8432 ×10-5
C5 -2.9400 ×10-7
ERFS[2]
RY -36.80
θ -41.42
R 30.00
C4 1.6554 ×10-4
C5 5.3944 ×10-6
ERFS[3]
RY ∞
θ -40.00
R 45.10
偏心(1)
X 0.00 Y 25.17 Z 0.00
α 0.00 β 0.00 γ 0.00
偏心(2)
X 0.00 Y -29.11 Z 0.00
α 0.00 β 0.00 γ 0.00
偏心(3)
X 0.00 Y -42.95 Z 0.00
α 0.00 β 0.00 γ 0.00 。
【0073】
なお、本発明の投影光学装置の光学系において、中心軸1の周りで回転対称な回転対称透明レンズ体2はそのまま用いることにより、回転対称透明レンズ体2の周辺の360°の全ての方向から輪帯状の映像表示素子13の表示像の拡大投影像を観察できるが、その回転対称透明レンズ体2を中心軸1を含む断面で切断して2分の1、3分の1、3分の2等にすることにより、中心軸1の周りの180°、120°、240°等の角度範囲で拡大投影像を観察できるようにしてももちろんよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施例1の投影光学装置の光学系の中心軸1に沿ってとった断面図である。
【図2】図1の光学系内の光路を示す中心軸に沿う方向に見た平面図である。
【図3】実施例1の光学系全体の横収差図である。
【図4】本発明の実施例2の投影光学装置の光学系の中心軸1に沿ってとった断面図である。
【図5】図4の光学系内の光路を示す中心軸に沿う方向に見た平面図である。
【図6】実施例2の光学系全体の横収差図である。
【図7】本発明の実施例3の投影光学装置の光学系の中心軸1に沿ってとった断面図である。
【図8】図7の光学系内の光路を示す中心軸に沿う方向に見た平面図である。
【図9】実施例3の光学系全体の横収差図である。
【図10】複数の映像表示素子を並列配置して映像表示素子を構成する例を説明するための図である。
【図11】円錐面状の表示面を持つ映像表示素子の構成を説明するための図である。
【図12】円錐面状の連続的な表示面を持つ映像表示素子を構成するためのシート状で扇形の映像表示素子を示す平面図である。
【図13】本発明の投影レンズの遮光方法の1つを説明するための図である。
【図14】本発明の投影光学装置の照明装置の1例を説明するための図である。
【図15】照明光をメリジオナル断面内に制限する配置を説明するための図である。
【図16】図15の原理を用いた本発明の投影光学装置の照明装置の1例を説明するための図である。
【図17】本発明の光学系の投影レンズの屈折面をリニアフレネルレンズシートで構成する場合の説明図である。
【符号の説明】
【0075】
1…中心軸
2…回転対称透明レンズ体(投影レンズ)
3…像面
4…絞り
8…リング状発光体
9…リング状反射鏡
11…黒い塗料
13、13’…映像表示素子
15…視野角制限フィルター(ルーバー)
16…リング状反射鏡
17…中心軸上の位置
18…点光源
20…円柱
21…回転対称透明レンズ体の第1面
22…回転対称透明レンズ体の第2面
21’、22’…リニアフレネルレンズシート
23…2次元(平面)の表示面
33…シート状で扇形の映像表示素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を含む平面内で中心軸に直交した放射方向に凸の部分を含む曲線を中心軸の周りで回転させて得られる正パワーの回転対称透明レンズ体からなる投影レンズと、その投影レンズの湾曲した像面に沿って中心軸の周りで回転対称に配置された輪帯状の映像表示素子とからなることを特徴とする投影光学装置。
【請求項2】
前記投影レンズがボールレンズからなることを特徴とする請求項1記載の投影光学装置。
【請求項3】
前記映像表示素子は中心軸の周りで回転対称な3次元的な表示面を持つものであることを特徴とする請求項1又は2記載の投影光学装置。
【請求項4】
前記映像表示素子の表示面が円筒状に構成され、前記映像表示素子に表示される映像は中心軸に沿って一方の方向を観察時の地面方向とするように表示されることを特徴とする請求項1から3の何れか1項記載の投影光学装置。
【請求項5】
前記映像表示素子の表示面が円錐状に構成され、前記映像表示素子に表示される映像は中心軸に沿って一方の方向を観察時の地面方向とするように表示されることを特徴とする請求項1から3の何れか1項記載の投影光学装置。
【請求項6】
前記映像表示素子の表示面が球面状に構成され、前記映像表示素子に表示される映像は中心軸に沿って一方の方向を観察時の地面方向とするように表示されることを特徴とする請求項1から3の何れか1項記載の投影光学装置。
【請求項7】
中心軸の周りで回転対称な3次元的な表示面を持つ前記映像表示素子は、2次元的に構成された映像表示素子を丸めて端部同士を繋ぐことで3次元的に構成されていることを特徴とする請求項4、5の何れか1項記載の投影光学装置。
【請求項8】
前記映像表示素子の表示面は、円筒状に配置された複数の平面状表示面からなることを特徴とする請求項4記載の投影光学装置。
【請求項9】
前記映像表示素子の表示面は、円錐状に配置された複数の平面状表示面からなることを特徴とする請求項5記載の投影光学装置。
【請求項10】
前記映像表示素子の表示面は、球面状に配置された複数の平面状表示面からなることを特徴とする請求項6記載の投影光学装置。
【請求項11】
前記投影レンズは、メリジオナル断面とサジタル断面でのパワーが異なることを特徴とする請求項1から10の何れか1項記載の投影光学装置。
【請求項12】
前記投影レンズの透過面は、対称面を持たない任意形状の曲線を回転対称軸の周りで回転させて形成される回転対称な形状を有することを特徴とする請求項1から11の何れか1項記載の投影光学装置。
【請求項13】
前記投影レンズの透過面は、奇数次項を含む任意形状の曲線を回転対称軸の周りで回転させて形成される回転対称な形状を有することを特徴とする請求項12記載の投影光学装置。
【請求項14】
前記投影レンズの透過面は、2つの異なる曲線を接続してなる曲線を回転対称軸の周りで回転させて形成される回転対称な形状を有することを特徴とする請求項12記載の投影光学装置。
【請求項15】
前記投影レンズの中心軸と直交する断面での最大直径をφとするとき、
φ<400mm ・・・(1)
なる条件を満足することを特徴とする請求項1から14の何れか1項記載の投影光学装置。
【請求項16】
前記映像表示素子の表示面全体を前記投影レンズとは反対側全方位から照明する照明装置を備えていることを特徴とする請求項1から15の何れか1項記載の投影光学装置。
【請求項1】
中心軸を含む平面内で中心軸に直交した放射方向に凸の部分を含む曲線を中心軸の周りで回転させて得られる正パワーの回転対称透明レンズ体からなる投影レンズと、その投影レンズの湾曲した像面に沿って中心軸の周りで回転対称に配置された輪帯状の映像表示素子とからなることを特徴とする投影光学装置。
【請求項2】
前記投影レンズがボールレンズからなることを特徴とする請求項1記載の投影光学装置。
【請求項3】
前記映像表示素子は中心軸の周りで回転対称な3次元的な表示面を持つものであることを特徴とする請求項1又は2記載の投影光学装置。
【請求項4】
前記映像表示素子の表示面が円筒状に構成され、前記映像表示素子に表示される映像は中心軸に沿って一方の方向を観察時の地面方向とするように表示されることを特徴とする請求項1から3の何れか1項記載の投影光学装置。
【請求項5】
前記映像表示素子の表示面が円錐状に構成され、前記映像表示素子に表示される映像は中心軸に沿って一方の方向を観察時の地面方向とするように表示されることを特徴とする請求項1から3の何れか1項記載の投影光学装置。
【請求項6】
前記映像表示素子の表示面が球面状に構成され、前記映像表示素子に表示される映像は中心軸に沿って一方の方向を観察時の地面方向とするように表示されることを特徴とする請求項1から3の何れか1項記載の投影光学装置。
【請求項7】
中心軸の周りで回転対称な3次元的な表示面を持つ前記映像表示素子は、2次元的に構成された映像表示素子を丸めて端部同士を繋ぐことで3次元的に構成されていることを特徴とする請求項4、5の何れか1項記載の投影光学装置。
【請求項8】
前記映像表示素子の表示面は、円筒状に配置された複数の平面状表示面からなることを特徴とする請求項4記載の投影光学装置。
【請求項9】
前記映像表示素子の表示面は、円錐状に配置された複数の平面状表示面からなることを特徴とする請求項5記載の投影光学装置。
【請求項10】
前記映像表示素子の表示面は、球面状に配置された複数の平面状表示面からなることを特徴とする請求項6記載の投影光学装置。
【請求項11】
前記投影レンズは、メリジオナル断面とサジタル断面でのパワーが異なることを特徴とする請求項1から10の何れか1項記載の投影光学装置。
【請求項12】
前記投影レンズの透過面は、対称面を持たない任意形状の曲線を回転対称軸の周りで回転させて形成される回転対称な形状を有することを特徴とする請求項1から11の何れか1項記載の投影光学装置。
【請求項13】
前記投影レンズの透過面は、奇数次項を含む任意形状の曲線を回転対称軸の周りで回転させて形成される回転対称な形状を有することを特徴とする請求項12記載の投影光学装置。
【請求項14】
前記投影レンズの透過面は、2つの異なる曲線を接続してなる曲線を回転対称軸の周りで回転させて形成される回転対称な形状を有することを特徴とする請求項12記載の投影光学装置。
【請求項15】
前記投影レンズの中心軸と直交する断面での最大直径をφとするとき、
φ<400mm ・・・(1)
なる条件を満足することを特徴とする請求項1から14の何れか1項記載の投影光学装置。
【請求項16】
前記映像表示素子の表示面全体を前記投影レンズとは反対側全方位から照明する照明装置を備えていることを特徴とする請求項1から15の何れか1項記載の投影光学装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−279284(P2007−279284A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−104006(P2006−104006)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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