抗アレルギー剤
【課題】安全性が高く、従来のものよりさらにアレルギー症状の抑制効果に優れた抗アレルギー剤の提供。
【解決手段】食用オリーブから抽出されるOleuropein aglycone、Hydroxytyrosol、Verbascoside、3,4−DHPEA−EDAからなる群から選択される少なくとも一種の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、又はそれらの塩を含むことを特徴とする抗アレルギー剤を含む抗アレルギー剤。
【解決手段】食用オリーブから抽出されるOleuropein aglycone、Hydroxytyrosol、Verbascoside、3,4−DHPEA−EDAからなる群から選択される少なくとも一種の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、又はそれらの塩を含むことを特徴とする抗アレルギー剤を含む抗アレルギー剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗アレルギー剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アレルギーに苦しむ患者は、世界的に増加の傾向にある。その症状は、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、食物アレルギー等、多岐にわたっている。アレルギー反応は、(1)感作、(2)脱顆粒、(3)免疫反応の3つの遷延化のステージからなる。感作状態とは、免疫系が、生体が将来同じアレルゲンに接触したときに即座に反応できるように準備している状態のことである。感作の過程は、マクロファージがアレルゲンを食して断片にまで裁断し、それらの断片をTリンパ球に提示することから始まる。引き続いて起こる過程は、T細胞がインターロイキン4を分泌し、B細胞が形質細胞に成熟する過程である。形質細胞は、免疫グロブリンE(IgE)として知られるアレルゲン特異的な分子を作り出す。こうして作られたIgEという抗体は、組織中の肥満(マスト)細胞又は血液中の好塩基球の表面にあるレセプターと結合する。感作後にアレルゲンが生体と接触すると、アレルゲンは肥満細胞の表面でIgEと直ちに結合する。1個のアレルゲン分子が細胞表面上の2個のIgE分子と結合すると、IgE分子と結合しているレセプター同士が会合し、その結果、細胞膜内の幾種類もの酵素が直接的、間接的に活性化する。活性化するのはチロシンキナーゼ、フォスフォリパーゼC、プロテインキナーゼC及びカルシウムイオンで、これらは情報の流れを作り、顆粒から化学伝達物質を放出させる(脱顆粒)。この情報の流れは、サイトカインとして知られる化学物質の生合成と分泌も促進させる。分子の相互作用に基づいた情報の流れは他にもあり、プロスタグランジン又はロイコトリエンといった脂質由来メディエーター(伝達物質)の分泌につながる。肥満細胞から放出される様々な化学物質は、多くのアレルギー症状の原因となる。炎症組織内の活性化肥満細胞又はその近くに位置する他の細胞から化学伝達物質が放出されると、好塩基球又は抗酸球等の細胞は血管を通り抜け、その炎症組織へと遊走する。これらの細胞の遊走が容易になるのは、放出された化学伝達物質が末梢血管中の細胞又は血管内皮の細胞にくっついている接着分子の発現又は結合活性を促進するからである。血液中の細胞は、血管内皮細胞に接着し、それらの細胞に沿って回転し、さらにそれらの細胞の間隙を通過して周りの細胞へと潜り込む。そして、自ら化学伝達物質を放出する。この化学伝達物質は、免疫活性を維持したり、組織を傷害したりする。
【0003】
前述のアレルギー症状の治療薬として、植物抽出物、例えば、南天実又はオリーブ等の抽出物を含む抗アレルギー剤が提案されている(例えば、特許文献1及び2)。これらの抗アレルギー剤は、食用植物を原料としているため、安全性が高い。しかしながら、従来の抗アレルギー剤は、効果が不十分なことがあるため、さらに有効な抗アレルギー剤の研究が続けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−210909号公報
【特許文献2】特開2002−316937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、安全性が高く、従来のものよりさらにアレルギー症状の抑制効果に優れた抗アレルギー剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の抗アレルギー剤は、下記化学式(1)で表わされる化合物、下記化学式(2)で表わされる化合物、下記化学式(3)で表わされる化合物及び下記化学式(4)で表わされる化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、又はそれらの塩を含むことを特徴とする。
【化1】
化学式(1)において、
R11は、水素原子、アルキル基、アシル基、アリール基又はアラルキル基であり、2つのR11は同一でも異なっていてもよく、
R12は、水素原子又はアルキル基であり、
R13は、ヒドロキシ基、アルコキシ基又はオキソ基であり、
R15及びR16は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン基であり、3つのR15、及びR16は同一でも異なっていてもよく、
Lは、単結合であるか、又は存在せず、
Lが単結合の場合、R14は、酸素原子、硫黄原子又はN−R17(R17は、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン基)であり、
Lが存在しない場合、R14は、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アリールオキシ基又はアリールアルキルオキシ基であり、
Z1は、酸素原子、硫黄原子又はN−R18(R18は、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン基)であり、
m及びnは、それぞれ、正の整数である。
【化2】
化学式(2)において、
R21は、水素原子、アルキル基、アシル基、アリール基又はアラルキル基であり、2つのR21は同一でも異なっていてもよく、
R22は、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン基であり、3つのR22は同一でも異なっていてもよく、
pは、正の整数である。
【化3】
化学式(3)において、
R31〜R37は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アシル基、アリール基又はアラルキル基であり、2つのR31、2つのR32、及びR33〜R37は同一でも異なっていてもよく、
R38〜R40は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン基であり、3つのR38、3つのR39、及びR40は同一でも異なっていてもよく、
Z2〜Z4は、それぞれ、酸素原子、硫黄原子又はN−R41(R41は、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン基)であり、同一でも異なっていてもよく、
sは、正の整数である。
【化4】
化学式(4)において、
R42は、水素原子、アルキル基、アシル基、アリール基又はアラルキル基であり、2つのR42は同一でも異なっていてもよく、
R43は、水素原子又はアルキル基であり、
R44は、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン基であり、3つのR44は同一でも異なっていてもよく、
Z5は、酸素原子、硫黄原子又はN−R45(R45は、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン基)であり、
t及びuは、それぞれ、正の整数である。
【発明の効果】
【0007】
本発明者らは、アレルギー症状を抑えるためには、前述の脱顆粒を阻害することが必要であるとの考えのもと、研究を行った。脱顆粒反応を抑制することができれば、ヒスタミン等の化学伝達物質を肥満細胞中に封じ込めることができ、アレルギー症状を抑えることができる。研究の結果、前記化学式(1)で表わされる化合物、前記化学式(2)で表わされる化合物、前記化学式(3)で表わされる化合物及び前記化学式(4)で表わされる化合物が、脱顆粒反応を抑制することを見出し、本発明に想到した。これらの4つの化合物は、例えば、後述のように、食用オリーブから抽出されるものであり、安全性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の実施例における抗アレルギー活性評価方法のフローチャートである。
【図2】図2は、本発明の実施例の抗アレルギー活性評価における24ウェルマイクロプレート上の配置図である。
【図3】図3は、本発明の実施例の抗アレルギー活性評価における96ウェルマイクロプレート上の配置図である。
【図4】図4は、本発明の実施例における抗アレルギー活性評価結果を示すグラフである。
【図5】図5は、本発明の実施例におけるポメス各フラクションの抗アレルギー活性評価結果を示すグラフである。
【図6】図6は、本発明の実施例におけるフラボノイド標品群のHPLCクロマトグラム(波長=290nm)である。
【図7】図7は、本発明の実施例におけるポリフェノール標品群のHPLCクロマトグラム(波長=290nm)である。
【図8】図8は、本発明の実施例におけるイリドイド標品群のHPLCクロマトグラム(波長=290nm)である。
【図9】図9は、本発明の実施例におけるFr.3及びHydroxytyrosolのHPLCクロマトグラム(波長=290nm)である。
【図10】図10は、本発明の実施例におけるFr.3の主成分及びHydroxytyrosolの吸収スペクトルである。
【図11】図11は、本発明の実施例におけるFr.4、5及びVerbascosideのHPLCクロマトグラム(波長=290nm)である。
【図12】図12は、本発明の実施例におけるFr.4、5の主成分及びVerbascosideの吸収スペクトルである。
【図13】図13は、本発明の実施例におけるFr.6、7のHPLCクロマトグラム(波長=290nm)である。
【図14】図14は、本発明の実施例におけるFr.6、7の主成分の吸収スペクトルである。
【図15】図15は、本発明の実施例におけるFr.8、9及びフラボノイド標品群のHPLCクロマトグラム(波長=290nm)である。
【図16】図16は、本発明の実施例におけるFr.8、9の主成分及びLuteolinの吸収スペクトルである。
【図17】図17は、本発明の実施例におけるカラム分離前のポメスメタノール抽出液乾固物のHPLCクロマトグラムである。
【図18】図18は、本発明の実施例におけるHPLC条件の変更によるFr.7の未知成分のリテンションタイムの変化を示すグラフである。
【図19】図19は、本発明の実施例におけるHPLCによるFr.7のフラクション分離を示すグラフである。
【図20】図20は、本発明の実施例におけるFr.7及びFr.7−1〜7−3のHPLCクロマトグラムである。
【図21】図21は、本発明の実施例におけるFr.7及びFr.7−1〜7−3の抗アレルギー活性評価の結果を示すグラフである。
【図22】図22は、本発明の実施例におけるFr.7乾固物、50%TFA水溶液に24時間浸漬した後のFr.7乾固物及びHydroxytyrosolのHPLCクロマトグラム(波長=290nm)である。
【図23】図23は、本発明の実施例における50%TFA水溶液に24時間浸漬した後のFr.7乾固物のリテンションタイム8.93分のピーク及びHydroxytyrosolの吸収スペクトルである。
【図24】図24は、本発明の実施例におけるFr.7乾固物及び50%TFA水溶液に24時間浸漬した後のFr.7乾固物のHPLCクロマトグラム(波長=250nm)である。
【図25】図25は、本発明の実施例におけるFr.7の未知成分の13C−NMRスペクトル(溶媒:CDCl3)である。
【図26】図26は、本発明の実施例におけるFr.7の未知成分のDEPTスペクトル(溶媒:CDCl3)である。
【図27】図27は、本発明の実施例におけるFr.7の未知成分の1H−NMRスペクトル(溶媒:CDCl3)である。
【図28】図28は、本発明の実施例におけるFr.7の未知成分の1H−NMR拡大スペクトル(溶媒:CDCl3)である。
【図29】図29は、本発明の実施例におけるFr.7の未知成分のC−H COSYスペクトル(溶媒:CDCl3)である。
【図30】図30は、本発明の実施例におけるFr.7の未知成分のH−H COSYスペクトル(溶媒:CDCl3)である。
【図31】図31は、本発明の実施例におけるFr.7の未知成分のH−H COSY拡大スペクトル(溶媒:CDCl3)である。
【図32】図32は、本発明の実施例におけるFr.7の未知成分のHMBCスペクトル(溶媒:CDCl3)である。
【図33】図33は、本発明の実施例におけるFr.7の未知成分のHMBC結果からの相関性を示す図である。
【図34】図34は、本発明の実施例におけるFr.7の未知成分のHMBC拡大スペクトル(溶媒:CDCl3)である。
【図35】図35は、本発明の実施例におけるFr.7の未知成分のHMBC拡大スペクトル(溶媒:CDCl3)である。
【図36】図36は、本発明の実施例における11位照射デカップリングの結果を示すグラフである。
【図37】図37は、本発明の実施例における11位照射デカップリング時の6位の1H−NMRスペクトルである。
【図38】図38は、本発明の実施例における2’位照射デカップリングの結果を示すグラフである。
【図39】図39は、本発明の実施例における2’位照射デカップリング時の1’位の1H−NMRスペクトルである。
【図40】図40は、本発明の実施例における4位照射デカップリングの結果を示すグラフである。
【図41】図41は、本発明の実施例における4位照射デカップリング時の5、8位の1H−NMRスペクトルである。
【図42】図42は、本発明の実施例における1’位照射デカップリングの結果を示すグラフである。
【図43】図43は、本発明の実施例における1’位照射デカップリング時の2’位の1H−NMRスペクトルである。
【図44】図44は、本発明の実施例における6位照射デカップリングの結果を示すグラフである。
【図45】図45は、本発明の実施例における6位照射デカップリング時の11位の1H−NMRスペクトルである。
【図46】図46は、本発明の実施例における6位照射デカップリング時の5位の1H−NMRスペクトルである。
【図47】図47は、本発明の実施例における10位照射デカップリングの結果を示すグラフである。
【図48】図48は、本発明の実施例における10位照射デカップリング時の5位の1H−NMRスペクトルである。
【図49】図49は、本発明の実施例におけるFr.7の未知成分のMSスペクトルである。
【図50】図50は、本発明の実施例における抗アレルギー活性比較に用いたフラボノイドを示す図である。
【図51】図51は、本発明の実施例における抗アレルギー活性比較に用いたその他のフラボノイドを示す図である。
【図52】図52は、本発明の実施例における抗アレルギー活性比較に用いたフェノール及びイリドイドを示す図である。
【図53】図53は、本発明の実施例におけるポリフェノール標品の抗アレルギー活性評価の結果を示すグラフである。
【図54】図54は、本発明の実施例におけるヒドロキシ基の有無と抗アレルギー活性の関係を示すグラフである。
【図55】図55は、本発明の実施例における2−3位間の結合様式の違いと抗アレルギー活性の関係を示すグラフである。
【図56】図56は、本発明の実施例における糖の有無と抗アレルギー活性の関係を示すグラフである。
【図57】図57は、本発明の実施例における糖の結合場所の違いと抗アレルギー活性の関係を示すグラフである。
【図58】図58は、本発明の実施例における3、3’、4’、5’位の違いと抗アレルギー活性の関係を示すグラフである。
【図59】図59は、本発明の実施例における3、3’、4’、5’位の違いと抗アレルギー活性の関係を示す別のグラフである。
【図60】図60は、本発明の実施例におけるHydroxytyrosol誘導体の抗アレルギー活性比較結果を示すグラフである。
【図61】図61は、本発明の実施例におけるCaffeic acid及びRosmarinic acidの抗アレルギー活性比較結果を示すグラフである。
【図62】図62は、本発明の実施例におけるCurcumin及びFerulic acidの抗アレルギー活性比較結果を示すグラフである。
【図63】図63は、本発明の実施例におけるCatecholを基本骨格として持つポリフェノール標品の抗アレルギー活性評価の結果を示すグラフである。
【図64】図64は、本発明の実施例における活性の高いポリフェノール標品の抗アレルギー活性評価の結果を示すグラフである。
【図65】図65は、本発明の実施例におけるポメス含有成分の抗アレルギー活性評価の結果を示すグラフである。
【図66】図66は、本発明の実施例のβ―hexosaminidase阻害活性試験における96ウェルマイクロプレート上の配置図である。
【図67】図67は、本発明の実施例におけるHydroxytyrosol標品を用いて作成したHPLC検量線(波長=290nm)である。
【図68】図68は、本発明の実施例におけるVerbascoside標品を用いて作成したHPLC検量線(波長=290nm)である。
【図69】図69は、本発明の実施例におけるLuteolin標品を用いて作成したHPLC検量線(波長=290nm)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の抗アレルギー剤において、前記化学式(1)で表わされる化合物が、下記化学式(1−1)で表わされる化合物(Oleuropein aglycone)であることが好ましい。
【化5】
【0010】
本発明の抗アレルギー剤において、前記化学式(2)で表わされる化合物が、下記化学式(2−1)で表わされる化合物(Hydroxytyrosol)であることが好ましい。
【化6】
【0011】
本発明の抗アレルギー剤において、前記化学式(3)で表わされる化合物が、下記化学式(3−1)で表わされる化合物(Verbascoside)であることが好ましい。
【化7】
【0012】
本発明の抗アレルギー剤において、前記化学式(4)で表わされる化合物が、下記化学式(4−1)で表わされる化合物(3,4−DHPEA−EDA)であることが好ましい。
【化8】
【0013】
本発明の抗アレルギー剤において、前記化学式(1)で表わされる化合物、前記化学式(2)で表わされる化合物、前記化学式(3)で表わされる化合物及び前記化学式(4)で表わされる化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、又はそれらの塩が、オリーブ(Olea europea)由来であることが好ましい。食用に適するオリーブ由来であれば、より安全性が高い。
【0014】
本発明の抗アレルギー剤は、オリーブ残渣(以下、「ポメス」と言う。)由来であることがより好ましい。ポメスとは、オリーブ果実からオリーブ果汁液及びオリーブオイルを圧搾したのちの搾りかすを意味する。これまで産業廃棄物として処理されてきたポメスを用いることで、未利用資源の有効活用につながる。
【0015】
本発明の抗アレルギー剤において、前記オリーブは、ミッション種、マンザニロ種及びルッカ種からなる群から選択される少なくとも一種であることがさらに好ましい。
【0016】
本発明において、アレルギー(アレルギー性疾患)としては、特に制限されないが、例えば、I型アレルギー性疾患、II型アレルギー性疾患、III型アレルギー性疾患、IV型アレルギー性疾患、V型アレルギー性疾患等があげられ、好ましくは、I型アレルギー性疾患である。前記I型アレルギー性疾患としては、特に制限されないが、具体的には、例えば、蕁麻疹、花粉症、喘息、PIE症候群、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、食物アレルギー、薬物アレルギー、アナフィラキシー等があげられる。
【0017】
本発明において、アルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基等があげられ、アルコキシ基、アリールアルキルオキシ基等のアルキル基を構造中に含む基においても同様である。本発明において、前記アルキル基は、例えば、その一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記アルキル基における置換基としては、特に制限されないが、例えば、ヒドロキシ基、ハロゲン基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、カルバモイル基等があげられる。
【0018】
本発明において、アシル基としては、特に限定されないが、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサノイル基、ベンゾイル基、エトキシカルボニル基等があげられ、アシル基を構造中に含む基(アシルオキシ基等)においても同様である。
【0019】
本発明において、アリール基としては、特に限定されないが、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピリジン環、チオフェン環、ピレン環等の任意の芳香環又は複素芳香環から誘導される基等があげられる。
【0020】
本発明において、アラルキル基としては、特に限定されないが、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ジフェニルメチル基、トリチル基等があげられる。
【0021】
本発明において、アルコキシ基としては、特に限定されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等があげられる。本発明において、前記アルコキシ基は、例えば、その一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記アルコキシ基における置換基としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシ基、ハロゲン基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、カルバモイル基等があげられる。
【0022】
本発明において、ハロゲン基としては、特に限定されないが、例えば、フルオロ基(フッ素原子)、クロロ基(塩素原子)、ブロモ基(臭素原子)及びヨード基(ヨウ素原子)等があげられる。なお、前記ハロゲン基とは、置換基としてのハロゲン原子の名称である。
【0023】
本発明において、アシルオキシ基としては、特に限定されないが、例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブタノイルオキシ基、3−クロロブチリルオキシ基等があげられる。本発明において、前記アシルオキシ基は、例えば、一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記アシルオキシ基における置換基としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシ基、ハロゲン基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、カルバモイル基等があげられる。
【0024】
本発明において、アリールオキシ基としては、特に限定されないが、例えば、フェノキシ基等があげられる。前記アリールオキシ基は、例えば、一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記アリールオキシ基における置換基としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシ基、ハロゲン基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、カルバモイル基等があげられる。
【0025】
本発明において、アリールアルキルオキシ基としては、特に限定されないが、例えば、ベンジルオキシ基等があげられる。前記アリールアルキルオキシ基は、例えば、一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記アリールアルキルオキシ基における置換基としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシ基、ハロゲン基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、カルバモイル基等があげられる。
【0026】
前記化学式(1)において、mは、1から5までの整数であることが好ましく、特に好ましくは、2であり、nは、1から5までの整数であることが好ましく、特に好ましくは、1である。前記化学式(2)において、pは、1から5までの整数であることが好ましく、特に好ましくは、2である。前記化学式(3)において、sは、1から5までの整数であることが好ましく、特に好ましくは、2である。前記化学式(4)において、tは、1から5までの整数であることが好ましく、特に好ましくは、2であり、uは、1から5までの整数であることが好ましく、特に好ましくは、1である。
【0027】
本発明の抗アレルギー剤は、前述のとおり、前記化学式(1)で表わされる化合物、前記化学式(2)で表わされる化合物、前記化学式(3)で表わされる化合物及び前記化学式(4)で表わされる化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、又はそれらの塩を含むことを特徴とする。本発明の抗アレルギー剤は、その機能を損なわない範囲で、これらの成分以外のその他の成分を含んでもよい。前記その他の成分としては、例えば、ビタミン、ミネラル、着色料、保存料等があげられる。
【0028】
本発明の抗アレルギー剤の製造方法は、特に限定されず、例えば、後述の実施例に記載の方法により、オリーブ果実からポメスメタノール抽出液乾固物を分離することで製造できる。ただし、実施例に記載の方法は例示に過ぎず、本発明の抗アレルギー剤の製造方法は、これに限定されない。
【0029】
本発明の抗アレルギー剤の投与対象は、特に限定されず、ヒト;サル、ウシ、ブタ、イヌ等の非ヒト哺乳類;ニワトリ等の鳥類;魚介類等があげられる。投与方法は、特に限定されず、例えば、経口投与でもよいし、非経口投与でもよい。前記非経口投与は、例えば、静脈注射、筋肉注射、皮下投与、直腸投与、経皮投与、腹腔内投与、局所投与等があげられる。本発明の抗アレルギー剤の投与量は、特に限定されず、例えば、動物種、年齢等に応じて適宜設定できる。本発明の抗アレルギー剤をヒト成人に投与する場合、1日あたりの投与量は、本発明の抗アレルギー剤に含まれる抗アレルギー活性成分量として、例えば、0.1mg/50kg〜100mg/50kgであり、好ましくは、1mg/50kg〜50mg/50kgであり、より好ましくは、10mg/50kg〜20mg/50kgである。
【0030】
本発明の抗アレルギー剤の剤型は、特に限定されず、用途に応じて適宜決定できる。本発明の抗アレルギー剤を経口投与する場合、その剤型は、例えば、固体状又は液体状の経口製剤があげられ、具体的には、錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、トローチ剤、液剤等があげられる。本発明の抗アレルギー剤を非経口投与する場合、その剤型は、例えば、注射用製剤、点滴製剤等の非経口製剤があげられる。本発明の抗アレルギー剤は、例えば、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、吸収促進剤、乳化剤、安定化剤、防腐剤等の各種添加剤を含んでもよく、従来公知の製剤化技術等により製剤化可能である。
【0031】
本発明の抗アレルギー剤は、飲食品に添加してもよい。本発明において、飲食品とは、一般食品、保健機能食品を含む。前記一般食品としては、特に限定されないが、例えば、穀物加工食品、野菜加工食品、果物加工食品、食肉加工食品、水産物加工食品、乳製品、飲料、健康食品等があげられる。前記穀物加工食品としては、特に限定されないが、例えば、小麦粉、米粉、シリアルバー、せんべい、あられ、クッキー等があげられる。前記野菜加工食品としては、特に限定されないが、例えば、野菜ペースト、乾燥野菜、野菜スープ等があげられる。前記果物加工食品としては、特に限定されないが、例えば、果物ピューレ、乾燥果物等があげられる。前記食肉加工食品としては、特に限定されないが、例えば、ハム、ベーコン、ソーセージ等があげられる。前記水産物加工食品としては、特に限定されないが、例えば、佃煮、塩干物、魚肉ソーセージ、はんぺん、かまぼこ、ちくわ等があげられる。前記乳製品としては、特に限定されないが、例えば、乳飲料、ヨーグルト、アイスクリーム、チーズ等があげられる。前記飲料としては、特に限定されないが、例えば、清涼飲料、緑茶、紅茶、コーヒー等があげられる。また、前記保健機能食品は、一般に、機能性食品とも称される。前記保健機能食品としては、例えば、特定保健用食品、栄養機能食品等があげられる。
【実施例】
【0032】
つぎに、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、下記の実施例に限定されない。
【0033】
(実施例1)
[オリーブ果実からの分離]
下記工程により、オリーブ果実から、ポメスメタノール抽出液乾固液及び果汁液乾固物を分離した。
(1)まず、オリーブ果実1.15kgの圧搾及びメタノール抽出により、オイルを含むポメスメタノール抽出液と、オイルを含む果汁液とに分離した。
(2)つぎに、前記オイルを含むポメスメタノール抽出液及び前記オイルを含む果汁液を、それぞれ、ヘキサンにより分液することで、ポメスメタノール抽出液及び果汁液と、オイルとに分離した。
(3)つぎに、前記ポメスメタノール抽出液及び前記果汁液を、それぞれ、減圧乾固させることで、ポメスメタノール抽出液乾固物34.5g及び果汁液乾固物(以下、被験物質と言うことがある。)を得た。
【0034】
[抗アレルギー活性評価]
ラット好塩基球由来肥満細胞RBL−2H3を用い、好塩基球の顆粒中に豊富に存在するβ−hexosaminidaseの放出率を脱顆粒の指標として測定することにより、被験物質の脱顆粒抑制作用の有無を評価した。β−hexosaminidase放出率は、β−hexosaminidaseが糖分解酵素であることから、基質p−nitrophenyl−2−acetamide−β−D−glucopyranosideに作用して遊離したp−nitrophenolによる黄色発色の吸光度(波長=405nm)測定の結果から算出した。
【0035】
つぎに、図1を参照して、抗アレルギー活性評価方法の詳細について説明する。抗アレルギー活性評価は、つぎの材料を用いて行った。
培地:Fetal Bovine Serum(Biowest社製)を10%、Antibiotic−Antimycotic 100X(GIBCO社製)を1%含んだDEME(和光純薬工業(株)製)
PBS(−):和光純薬工業(株)製
0.25%トリプシンEDTA溶液:和光純薬工業(株)製
抗体溶液:mouse monoclonal anti−dinitrophenol(Sigma社製)を培地に溶かして、50ng/mLに調製したAnti DNP−IgE溶液
抗原溶液:Albumin,dinitrophenyl(Sigma社製)をMT Bufferに溶かして、2.5μg/mLに調製したDNP−HSA(DNP−labeled human serum albumin)溶液
MT Buffer:Tyrode’s salt solution(Sigma社製)にHEPES((株)同仁化学研究所製)を4.76g/L、Bovine Serum Albumin(Jackson ImmunoResearch社製)を1g/Lとなるように加えたもの
0.1M Citrate Buffer:0.1M クエン酸水溶液と0.1M クエン酸ナトリウム水溶液を51:49の割合で混合したもの(pH 4.5)
基質溶液:p−nitrophenyl−2−acetamide−β−D−glucopyranoside(Sigma社製)を0.1M Citrate Bufferに溶かして、3.3mMになるように調製したもの
酵素反応停止液:4M グリシン水溶液と4M NaOH水溶液とイオン交換水を50:32:18の割合で混合した2M Glycine Buffer(pH 10.0)
0.1%Triton X−100溶液:Triton X−100(和光純薬工業(株)製)をMT Bufferで0.1%に希釈したもの
被験物質溶液:被験物質を100%DMSOに溶かし、MT Bufferで適当な濃度に希釈したもの(このとき、DMSOの最終濃度を0.1%以下となるようにした)
【0036】
(RBL−2H3細胞の継代培養)
まず、50mL容培養フラスコで、RBL−2H3細胞の培養を行った。コンフルエントになったところで継代を行った。培養フラスコから古くなった培地を取り除き、PBS(−)を3mL入れ、フラスコ内全面を洗浄し、すぐに取り除いた。再度PBS(−)を3mL入れ、今度は1分間細胞表面のみを洗浄し、すぐに取り除いた。ついで、培養フラスコに0.25%トリプシンEDTA溶液を3mL入れ、フラスコの壁に付着している細胞を浮遊させた。この操作は、10分以内に行った。つぎに、フラスコに新しい培地を12mL入れ、トリプシンEDTAの働きを停止させ、50mL容遠沈管にフラスコ内の溶液をすべて移し、2000rpm、8分間の条件で遠心分離を行った後、上清を除去した。つぎに、遠沈管に新しい培地を6mL入れ、ピペッティングし、1mLを元のフラスコに戻し、そのフラスコに5mLの新しい培地を加えてインキュベーター(37℃、5%CO2)で培養した。
【0037】
(ステップ1(S1):24ウェルマイクロプレートへの播種)
50mL容培養フラスコで培養したRBL−2H3細胞を2.5×105cells/mLとなるように50mL容遠沈管に培地で希釈した。希釈後の細胞液を24ウェルマイクロプレート上のCL(Cell lysate) well(図2参照)に1mL/wellとなるように分注し、インキュベーター(37℃、5%CO2)で1晩培養した。
【0038】
(ステップ2(S2):抗体添加)
培養後、培地を吸引除去し、1mL/wellのPBS(−)で洗浄後、抗体溶液を500μL/wellとなるように加えた。このとき、Blankには、抗体溶液の代わりに培地を加えた。これを2時間培養することにより細胞を感作させた。
【0039】
(ステップ3(S3):被験物質溶液添加)
2時間後、抗体溶液を除去し、1mL/wellのMT Bufferで2回洗浄した後、被験物質溶液を490μL/wellとなるように加えた。このとき、B(Blank) well及びN(Negative) well(図2参照)には、被検物質溶液の代わりにMT Bufferを加えた。これを10分間培養した。
【0040】
(ステップ4(S4):抗原添加)
培養後、抗原溶液を10μL/well加えよく混合し、さらに30分間培養した。これにより、細胞を刺激した(脱顆粒)。
【0041】
(ステップ5(S5):氷冷)
30分後、インキュベーターから24ウェルマイクロプレートを取り出し、10分間氷冷して反応を止めた。
【0042】
(ステップ6(S6):上清分取・細胞溶解)
CL wellの上清全量(500μL)を、それぞれ、その真下に位置するS(Supernatant) wellに移し(図2参照)、CL wellに0.1%Triton X−100溶液500μLを加え、底面に付着している細胞を溶解させた。
【0043】
(ステップ7(S7):96ウェルマイクロプレートへの播種)
S wellから50μLを、及びCL wellから50μLを、それぞれ、2連で96ウェルマイクロプレートに移し(図3参照)、5分間プレインキュベーションした。図3に示す96ウェルマイクロプレートの各ウェルの抗体と被験物質の違いを、表1に示す
【表1】
【0044】
(ステップ8(S8):基質添加)
基質溶液をX well(図3参照)のみに100μL/wellとなるように加え、25分間インキュベーションした。
【0045】
(ステップ9(S9):酵素反応停止液添加)
その後、酵素反応停止液を全ウェルに100μL/wellとなるように加えた。
【0046】
(ステップ10:マイクロプレートリーダーによる吸光度測定)
ついで、基質溶液をY well(図3参照)のみに100μL/wellとなるように加え、マイクロプレートリーダーで吸光度(波長=405nm)を測定した。X wellとY wellの溶液の色の違いを、表2に示す。得られた吸光度より、β−hexosaminidase放出率及びNegative controlの放出率を100%としたときの相対放出率を下記式を用いて算出した。
【表2】
【数1】
【0047】
図4に、抗アレルギー活性評価の結果を示す。図示のとおり、被験物質としてポメスメタノール抽出液乾固物を用いたときのみ、その濃度が高くなるにつれてβ−hexosaminidase放出率が低くなっており、ポメスメタノール抽出液乾固物に抗アレルギー活性があることがわかった。
【0048】
[ポメス各フラクションの抗アレルギー活性評価]
抗アレルギー活性の認められたポメスについて、さらに活性成分を探索するために、Amberlite XAD−7カラムにより分画して活性フラクションを明らかにした。ポメスメタノール抽出液乾固物34.5gをAmberlite XAD−7カラムによって分離して得た各フラクション乾固物の重量を表3に、抗アレルギー活性評価結果を図5にそれぞれ示す。
【表3】
【0049】
図5に示すとおり、Fr.1、2に抗アレルギー活性は無かったが、Fr.3〜9には抗アレルギー活性があった。Fr.6、7では100μg/mL、Fr.5、8、9では300〜500μg/mL、Fr.3、4では800μg/mLで放出率を50%抑制したことから、その抗アレルギー活性の強さは、Fr.6、7>5、8、9>3、4であることがわかった。
【0050】
前記抗アレルギー活性評価におけるのと同様の材料を用いて、下記方法により、Fr.3〜9の乾固物のβ−hexosaminidase阻害活性試験を実施した。その結果を、表4に示す。表4に示すとおり、β−hexosaminidase阻害率が最も大きいものでも10%前後しかないことがわかった。このことから、抗アレルギー活性評価中のp−nitrophenol遊離反応におけるβ−hexosaminidase酵素活性をFr.3〜9の乾固物が阻害しないことがわかった。したがって、Fr.3〜9の乾固物が肥満細胞からのβ−hexosaminidaseの放出そのものを抑制していると判断できる。
<β−hexosaminidase阻害活性試験方法>
前記抗アレルギー活性評価におけるのと同様にして50mL容培養フラスコに培養したRBL−2H3細胞を、5×105cells/mLとなるように0.1%Triton X−100溶液に溶解した。それを遠心分離して上清をとり、β−hexosaminidase粗酵素液とした。96ウェルマイクロプレートの全てのウェルに粗酵素液を25μLずつ加え、N well(図66参照)にはMT Bufferを、sample well(図66参照)には被験物質溶液を25μL添加し、5分間プレインキュベーションした。5分後、基質溶液をX well(図66参照)に100μLずつ加え、25分間インキュベーションした。その後、酵素反応停止液を100μLずつ全ウェルに加え、Y well(図66参照)に基質溶液を100μLずつ加えた。つぎに、吸光度をマイクロプレートリーダーで測定し(波長=405nm)、下記式により、β−hexosaminidase阻害率を算出した。
【数2】
【表4】
【0051】
(HPLCによる各フラクションの成分分析・同定)
図6〜8に、成分同定のために用いた下記既知成分標品のHPLCクロマトグラム(波長=290nm)を示す。また、それらより得た各標品のリテンションタイム(R.T.)を表6に示す。なお、図6は、フラボノイド標品群のHPLCクロマトグラム(波長=290nm)であり、図7は、ポリフェノール標品群のHPLCクロマトグラム(波長=290nm)であり、図8は、イリドイド標品群のHPLCクロマトグラム(波長=290nm)である。ほとんどが1種類の標品に対して、1本の主要ピークが見られたが、Silymarin及びOleuropeinでは多くのピークが見られた。HPLC分析条件は、下記のとおりである。
<HPLC分析条件>
送液ポンプ :JASCO PU−980×2
検出器 :JASCO MD2010Plus
波長 :290nm
カラム :COSMOSIL 5C18−ARII 4.6×250mm
流速 :1mL/分
移動相原液 :酢酸:アセトニトリル:超純水:リン酸=40:50:8.5:1.5
移動相溶媒 :A 移動相原液を1.5%リン酸水溶液で20倍に希釈
B 移動相原液を1.5%リン酸水溶液で2倍に希釈
カラム温度 :40℃
サンプル濃度 :5mg/mL
インジェクト容量 :20μL
グラジエントタイムプログラム:表5
【表5】
【0052】
<既知成分標品>
Apigenin−7−O−glucoside(AppliChem社製)
Catechin(ナカライテスク(株)製)
Ferulic acid(東京化成工業(株)製)
Gallic acid、Syringic acid、o−coumaric acid、Flavanone、Luteolin、Quercetin、Rutin、Caffeic acid、Catechol(和光純薬工業(株)製)
Rosmarinic acid(Sigma社製)
Hesperidin、Silymarin(LKT Laboratories社製)
Diosmin、Apigenin、Eriodictyol、Hesperetin、Homoeriodictyol、Isorhamnetin、Kaempferol、Luteolin−7−O−glucoside、Naringenin、Naringenin−7−O−glucoside、Rhoifolin、(+)−Taxifolin、Hydroxytyrosol、Curcumin、Verbascoside、Oleuropein(Extrathese社製)
【0053】
【表6】
【0054】
図9に、Fr.3及びHydroxytyrosolのHPLCクロマトグラム(波長=290nm)を示す。図示のとおり、AのピークがFr.3の主成分であることがわかった。そして、Aのピーク及びHydroxytyrosolのR.T.が一致した(9.0分)。図10に、Aのピーク及びHydroxytyrosolの吸収スペクトルを示す。図示のとおり、Aのピーク及びHydroxytyrosolの吸収スペクトルの形、極大吸収波長(235、279nm)が一致した。これらの結果から、Fr.3の主成分は、Hydroxytyrosolであると同定された。
【0055】
図11に、Fr.4、5及びVerbascosideのHPLCクロマトグラム(波長=290nm)を示す。図示のとおり、Fr.4、5にはBに共通した大きなピークが見られた。そして、Fr.4、5のBのピーク及びVerbascosideのR.T.が一致した(20.8分)。図12に、Fr.4、5のBのピーク及びVerbascosideの吸収スペクトルを示す。図示のとおり、Fr.4、5のBのピーク及びVerbascosideの吸収スペクトルの形、極大吸収波長(235、331nm)が一致した。これらの結果から、Fr.4、5の主成分は、Verbascosideであると同定された。
【0056】
図13に、Fr.6、7のHPLCクロマトグラム(波長=290nm)を示す。図示のとおり、34.4分に共通のピークが見られた。図14に、Fr.6、7の34.4分のピークの吸収スペクトルを示す。図示のとおり、極大吸収波長は、243、279nmであった。今回用いた標品の中には、Fr.6、7の34.4分のピークとR.T.及び吸収スペクトルが一致するものは無かった。
【0057】
図15に、Fr.8、9及びフラボノイド標品群のHPLCクロマトグラム(波長=290nm)を示す。図示のとおり、Fr.8、9にはCに共通した大きなピークが見られた。そして、Fr.8、9のCのピーク及びLuteolinのR.T.が一致した(30.2分)。図16に、Fr.8、9のCのピーク及びLuteolinの吸収スペクトルを示す。図示のとおり、Fr.8、9のCのピーク及びLuteolinの吸収スペクトルの形、極大吸収波長(243、279nm)が一致した。これらの結果から、Fr.8、9の主成分は、Luteolinであると同定された。
【0058】
図17に、カラム分離する前のポメスメタノール抽出液乾固物のHPLCクロマトグラムを示す。図示のとおり、ポメス中には、Hydroxytyrosol、Verbascoside及びLuteolinという3つの既知成分と、1つの未知成分(R.T.=34.4分)が含まれていることがわかった。表7に、ポメスメタノール抽出液乾固物のHPLC分析による成分同定結果をまとめた。表7に示すとおり、ポメスメタノール抽出液乾固物には、既知成分としてHydroxytyrosol(オリーブ果実1.15kgあたり334mg)及びVerbascoside(オリーブ果実1.15kgあたり117mg)が多く含まれていることがわかった。なお、ポメス含有既知成分の含有量の算出には、図67〜69に示すHPLC検量線を用いた。図67は、Hydroxytyrosol標品を用いて作成したHPLC検量線(波長=290nm)であり、図68は、Verbascoside標品を用いて作成したHPLC検量線(波長=290nm)であり、図69は、Luteolin標品を用いて作成したHPLC検量線(波長=290nm)である。
【表7】
【0059】
[Fr.7含有未知成分の構造解析]
Fr.7から未知成分を分取しやすいようにHPLC分析条件を下記のように変更することで、図18に示すように未知成分のR.T.が速くなるようにし、下記HPLC分取条件により、図19に示すようにFr.7−1〜7−3に分離した。なお、図18において、上の図がHPLC条件変更前の結果であり、下の図が、HPLC条件変更後の結果である。図20に、Fr.7及びFr.7−1〜7−3のHPLC分析結果を示す。図示のとおり、Fr.7及びFr.7−2が同じR.T.に大きなピークを示しており、Fr.7からFr.7−2に未知成分を分取できたことが確認された。図21に、Fr.7及びFr.7−1〜7−3の抗アレルギー活性評価の結果を示す。図示のとおり、Fr.7−1、7−3には抗アレルギー活性は無かった。一方、Fr.7−2の濃度が70μg/mLのときに放出率が50%以下に低下しており、Fr.7−2には抗アレルギー活性が認められた。これらの結果から、Fr.7−2に分取された未知成分が、Fr.7の抗アレルギー活性の中心成分であることが確認された。
<HPLC分析条件>
送液ポンプ :JASCO PU−980×2
検出器 :JASCO MD2010Plus
波長 :290nm
カラム :COSMOSIL 5C18−ARII 4.6×250mm
流速 :1mL/分
移動相原液 :酢酸:アセトニトリル:超純水:TFA=40:50:9.5:0.5
移動相溶媒 :A 移動相原液を0.5%TFA水溶液で20倍に希釈
B 移動相原液を0.5%TFA水溶液で2倍に希釈
カラム温度 :40℃
サンプル濃度 :100mg/mL
インジェクト容量 :50μL
グラジエントタイムプログラム:表8
【表8】
<HPLC分取条件>
送液ポンプ :JASCO PU−980
検出器 :JASCO 875UV
波長 :290nm
カラム :DEVELOSIL ODS−8 10×250mm
流速 :1mL/分
移動相溶媒 :A 20%アセトニトリル−16%酢酸水溶液
B 25%アセトニトリル−20%酢酸水溶液
カラム温度 :40℃
インジェクト重量 :50mg
タイムプログラム :表9
【表9】
【0060】
(未知成分の50%TFA(トリフルオロ酢酸)水溶液による分解)
図22に、Fr.7乾固物、室温(18℃)で50%TFA水溶液に24時間浸漬した後のFr.7乾固物及びHydroxytyrosolのHPLCクロマトグラム(波長=290nm)を示す。図22において、上の図が、Fr.7乾固物のHPLCクロマトグラムであり、真ん中の図が、50%TFA水溶液に24時間浸漬した後のFr.7乾固物のHPLCクロマトグラムであり、下の図が、HydroxytyrosolのHPLCクロマトグラムである。図示のとおり、Fr.7乾固物を50%TFA水溶液に24時間浸漬すると、R.T.8.93分に新たなピークが検出されることがわかった。図23に、R.T.8.93分のピーク及びHydroxytyrosolの吸収スペクトルを示す。図23において、上の図が、R.T.8.93分のピークの吸収スペクトルであり、下の図が、Hydroxytyrosolの吸収スペクトルである。これらの結果から、R.T.8.93分のピークの成分は、Hydroxytyrosolと同定された。図24に、Fr.7乾固物及び50%TFA水溶液に24時間浸漬した後のFr.7乾固物のHPLCクロマトグラム(波長=250nm)を示す。図24において、上の図が、Fr.7乾固物のHPLCクロマトグラムであり、下の図が、50%TFA水溶液に24時間浸漬した後のFr.7乾固物のHPLCクロマトグラムである。図示のとおり、TFA水溶液と反応させることにより、波長=250nmでR.T.22.37分に新たなピークが検出されることがわかった。Fr.7乾固物を50%TFA水溶液に浸漬させると、抗アレルギー活性に関与する未知成分の量が減り、Hydroxytyrosol及び波長=250nmでR.T.22.37分のピークの成分の量が増えることから、未知成分の構造にはHydroxytyrosol骨格が含まれており、酸による加水分解反応により、Hydroxytyrosolとそれ以外の部分に分解されたと考えられた。
【0061】
(NMR、MSによる未知成分の構造解析)
分取用HPLCにより50mgのFr.7から20mgの未知成分を単離した。図25に、単離した未知成分の13C−NMRスペクトル(溶媒:CDCl3)を示す。図26には、さらに、単離した未知成分のDEPT(DEPT45°、DEPT90°、DEPT135°)スペクトル(溶媒:CDCl3)をあわせて示す。図示のとおり、13C−NMRの結果から、未知成分の全炭素数は19個であることがわかった。また、DEPTの結果から、各炭素の級数がわかった。図27に、単離した未知成分の1H−NMRスペクトル(溶媒:CDCl3)を、図28に、単離した未知成分の1H−NMR拡大スペクトル(溶媒:CDCl3)を示す。また、図29に、単離した未知成分のC−H COSYスペクトル(溶媒:CDCl3)を示し、炭素と水素の結合を表10にまとめた。未知成分の全炭素に結合している全水素数は20個であることがわかり、炭素の級数との関係も一致した。図30に、単離した未知成分のH−H COSYスペクトル(溶媒:CDCl3)を、図31に、単離した未知成分のH−H COSY拡大スペクトル(溶媒:CDCl3)を示す。これらから、4−5位間、5−6位間、6−11位間、4−8位間、8−8位間、1’−2’位間に相関性が見られ、これらはそれぞれ隣接していると考えられた。図32に、単離した未知成分のHMBCスペクトル(溶媒:CDCl3)を、図33に、HMBC結果からの相関性を、図34及び35に、単離した未知成分のHMBC拡大スペクトル(溶媒:CDCl3)を示す。図示のとおり、2−6位間、5−8位間、5−6位間、5−11位間、6−11位間、1’−2’位間、2’−4’位間、2’−8’位間、4’−8’位間については両方向に相関性が見られ、これらはそれぞれ近接していると考えられた。2→3位間、2→4位間、2→7位間、5→3位間、5→4位間、6→4位間、6→10位間、8→3位間、8→4位間、8→9位間、12→7位間、1’→3’位間、2’→3’位間、4’→5’位間、4’→6’位間、7’→3’位間、7’→6’位間、7’→8’位間、8’→6’位間については一方向からではあるが相関性が見られ、これらもそれぞれ近接していると考えられた。TFA水溶液により、未知成分が分解されHydroxytyrosolが出てきたことと、これまでのNMR測定結果を総合して、未知成分は、IUPAC名:4−[2−(3,4−Dihydroxy−phenyl)−ethoxycarbonylmethyl]−5−formyl−6−methyl−5,6−dihydro−4H−pyran−3−carboxylic acid methyl esterの化学式(3)で表わされる構造(C19H22O8、分子量378)であると考えられた。図36〜48に、デカップリングの結果を示す。図36は、11位照射デカップリングの結果であり、図37は、11位照射デカップリング時の6位の1H−NMR拡大スペクトルである。図38は、2’位照射デカップリングの結果であり、図39は、2’位照射デカップリング時の1’位の1H−NMR拡大スペクトルである。図40は、4位照射デカップリングの結果であり、図41は、4位照射デカップリング時の5、8位の1H−NMR拡大スペクトルである。図42は、1’位照射デカップリングの結果であり、図43は、1’位照射デカップリング時の2’位の1H−NMR拡大スペクトルである。図44は、6位照射デカップリングの結果であり、図45は、6位照射デカップリング時の11位の1H−NMR拡大スペクトルであり、図46は、6位照射デカップリング時の5位の1H−NMR拡大スペクトルである。図47は、10位照射デカップリングの結果であり、図48は、10位照射デカップリング時の5位の1H−NMR拡大スペクトルである。図示のとおり、11位を照射すると6位が、2’位を照射すると1’位が、4位を照射すると5位と8位が、1’位を照射すると2位が、6位を照射すると5位と11位が、10位を照射すると5位が、それぞれスペクトルが変化したので、4−5位間、6−11間、4−8位間、1’−2’位間、6−5位間、5−10位間の隣接が証明された。図49に、単離した未知成分のMSスペクトルを示す。図示のとおり、未知成分の分子量は378であることがわかった。これとNMRの結果とを総合して、未知成分は、4−[2−(3,4−Dihydroxy−phenyl)−ethoxycarbonylmethyl]−5−formyl−6−methyl−5,6−dihydro−4H−pyran−3−carboxylic acid methyl esterと同定された。この物質は、Oleuropeinから糖が外れた構成をしているので、Oleuropein aglyconeと呼ぶことができる。なお、NMR、MSは、下記条件にて実施した。
<NMR>
装置:日本電子(株)製「JNM−ECA型核磁気共鳴装置」
データ処理装置:日本電子(株)製「Win Alpha NMRオペレーション」
溶媒:Chloroform−d(Isotec社製)
標準物質:TMS(TetraMethylSilane)
周波数:600MHz
<MS>
装置:日本電子(株)製「JMS−SX102AQQ Hybrid Mass Spectrometer」
データ処理装置:日本電子(株)製「JMS−DA5000」
イオン化法:EI
イオン化電圧:70eV
分解能:1000(低分解能)
標準物質:PFK(Perfluorokerosene)
【表10】
【0062】
[各成分とポリフェノール標品との抗アレルギー活性比較]
つぎに、Hydrotyrosol、Verbacscoside、Luteolin、Oleuropein aglycone及び他のポリフェノール標品につき、抗アレルギー活性の比較を行った。図50〜52に、比較に用いたポリフェノール標品を示す。図50及び51には、フラボノイドを示し、図52には、フェノール及びイリドイドを示している。比較結果を、図53〜64に示す。図53は、ポリフェノール標品の抗アレルギー活性評価結果を示すグラフであり、図54は、ヒドロキシ基の有無と抗アレルギー活性の関係を示すグラフであり、図55は、2−3位間の結合様式の違いと抗アレルギー活性の関係を示すグラフであり、図56は、糖の有無と抗アレルギー活性の関係を示すグラフであり、図57は、糖の結合場所の違いと抗アレルギー活性の関係を示すグラフであり、図58及び59は、3、3’、4’、5’位の違いと抗アレルギー活性の関係を示すグラフであり、図60は、Hydroxytyrosol誘導体の抗アレルギー活性比較結果を示すグラフであり、図61は、Caffeic acid及びRosmarinic acidの抗アレルギー活性比較結果を示すグラフであり、図62は、Curcumin及びFerulic acidの抗アレルギー活性比較結果を示すグラフであり、図63は、Catecholを基本骨格として持つポリフェノール標品の抗アレルギー活性評価の結果を示すグラフであり、図64は、活性の高いポリフェノール標品の抗アレルギー活性評価の結果を示すグラフである。図54に示すとおり、Flavanoneには抗アレルギー活性が認められず、Naringenin(IC50=0.321μmol/mL)には抗アレルギー活性が認められたことから、ヒドロキシル基を有していなければ、抗アレルギー活性が無いことがわかった。図55に示すとおり、Apigenin(IC50=0.00371μmol/mL)の抗アレルギー活性が、Naringenin(IC50=0.321μmol/mL)の抗アレルギー活性より約100倍高いことから、フラボノイド骨格の2−3位間が二重結合になっていると抗アレルギー活性が約100倍高くなることがわかった。図56に示すとおり、Apigenin(IC50=0.00371μmol/mL)の抗アレルギー活性が、Apigenin−7−glucoside(IC50=1.26μmol/mL)及びRhoifolin(IC50=1.13μmol/mL)の抗アレルギー活性より約400倍高いことから、糖が結合しているフラボノイドは抗アレルギー活性が弱く、糖の結合していないフラボノイドは抗アレルギー活性が強いことがわかった。図57に示すとおり、フラボノイド骨格の3位に糖が結合しているRutin(IC50=0.250μmol/mL)及び7位に糖が結合しているRhoifolin(IC50=1.13μmol/mL)を比較すると、Rutinの抗アレルギー活性の方が約4倍高いことから、糖の結合場所によって抗アレルギー活性の高さが変わることがわかった。図58に示すとおり、Homoeriodictyol(IC50=0.159μmol/mL)、Hesperetin(IC50=0.182μmol/mL)、Naringenin(IC50=0.321μmol/mL)、Eriodictyol(IC50=0.0946μmol/mL)、(+)−Taxifolin(IC50=0.165μmol/mL)の抗アレルギー活性の高さにはさほど差は無かった。図59に示すとおり、Apigenin(IC50=0.00371μmol/mL)、Isorhamnetin(IC50=0.00311μmol/mL)、Kaempferol(IC50=0.0108μmol/mL)、Luteolin(IC50=0.00339μmol/mL)、Quercetin(IC50=0.00363μmol/mL)の抗アレルギー活性の高さにもさほど差は無かった。図58及び59から、3、3’、4’、5’位に結合しているものの違いと抗アレルギー活性の高さには関係が無いことがわかった。図60に示すとおり、Hydroxytyrosol(IC50=1.91μmol/mL)、Vabascoside(IC50=1.17μmol/mL)、Oleuropein aglycone(IC50=0.0725μmol/mL)、Oleuropein(IC50=1.39μmol/mL)の4つのHydroxytyrosol誘導体のうち、最も抗アレルギー活性が高かったのは、Oleuropein aglyconeであった。図61に示すとおり、Rosmarinic acid(IC50=1.14μmol/mL)は、Caffeic acid(IC50=1.54μmol/mL)に似た構造を2つ有しているが、両者の抗アレルギー活性の高さにさほど差は無かった。図62に示すとおり、2つのFerulic acid(IC50=1.70μmol/mL)を結合させた構造をしているCurcumin(IC50=0.0143μmol/mL)の抗アレルギー活性は、Ferulic acidよりも約100倍高かった。図61及び62から、抗アレルギー活性を有する構造が2つ結合したとしても、その結合様式及び糖の有無によって、抗アレルギー活性が高くなることも変化しないこともあることがわかった。図63に示すとおり、Catechol(IC50=1.16μmol/mL)、Hydroxytyrosol(IC50=1.91μmol/mL)、Caffeic acid(IC50=1.54μmol/mL)、Ferulic acid(IC50=1.70μmol/mL)、Oleuropein(IC50=1.39μmol/mL)、Verbascoside(IC50=1.17μmol/mL)、Rosmarinic acid(IC50=1.44μmol/mL)の抗アレルギー活性の高さにさほど差が無かったことから、Hydroxytyrosol、Ferulic acid、Oleuropein、Verbascoside、Rosmarinic acidの抗アレルギー活性は、Catechol構造に由来すると考えられた。図64に示すとおり、使用したポリフェノール標品のうち、抗アレルギー活性の高いのは、Apigenin(IC50=0.00371μmol/mL)、Isorhamnetin(IC50=0.00311μmol/mL)、Kaempferol(IC50=0.0108μmol/mL)、Luteolin(IC50=0.00339μmol/mL)、Quercetin(IC50=0.00363μmol/mL)、Curcumin(IC50=0.0143μmol/mL)であることがわかった。以上の結果から、抗アレルギー活性が高くなる条件は、(1)フラボノイド構造をしていること、(2)その構造の2−3位間が2重結合となっていること、(3)アグリコンであること、があげられる。使用したポリフェノール標品の抗アレルギー活性評価におけるIC50を、表11にまとめた。表11において、ポメス含有成分には下線を付している。表11に示すとおり、ポメス含有成分のうち、Luteolin(IC50=0.00339μmol/mL)及びOleuropein aglycone(IC50=0.0725μmol/mL)の抗アレルギー活性が高いことがわかった。
【表11】
【0063】
(ポメス含有成分の抗アレルギー活性評価)
図65に、ポメス含有成分の抗アレルギー活性評価の結果を示す。また、表12に、ポメス含有成分の濃度(μg/mL)とβ−hexosaminidase活性阻害率(%)との関係を示す。表12に示すとおり、Verbascoside濃度600(μg/mL)のとき、β−hexosaminidase活性阻害率が17.40%と最も高く、図65より、同じ濃度のときの脱顆粒抑制率(100(%)−β−hexosaminidase放出率(%))は40%であり、少なくとも23%は放出自体を抑制していることとなる。以上から、抗アレルギー活性評価中のp−nitrophenol遊離反応におけるβ−hexosaminidase酵素活性をポメス含有成分が阻害しないことがわかった。したがって、ポメス含有成分が、肥満細胞からのβ−hexosaminidaseの放出そのものを抑制していると言える。
【表12】
【0064】
表13に、各Frにおける各成分の含有割合を示す。また、図65及び表13から得られるポメスフラクション乾固物及び各成分標品の抗アレルギー活性の比較結果を、表14〜20に示す。表14は、Fr.3及びHydroxytyrosol標品の抗アレルギー活性(脱顆粒抑制活性)結果の比較を示し、表15は、Fr.4及びVerbascoside標品の抗アレルギー活性(脱顆粒抑制活性)結果の比較を示し、表16は、Fr.5及びVerbascoside標品の抗アレルギー活性(脱顆粒抑制活性)結果の比較を示し、表17は、Fr.6及びOleuropein aglycone標品の抗アレルギー活性(脱顆粒抑制活性)結果の比較を示し、表18は、Fr.7及びOleuropein aglycone標品の抗アレルギー活性(脱顆粒抑制活性)結果の比較を示し、表19は、Fr.8及びLuteolin標品の抗アレルギー活性(脱顆粒抑制活性)結果の比較を示し、表20は、Fr.9及びLuteolin標品の抗アレルギー活性(脱顆粒抑制活性)結果の比較を示す。表14の放出率60%のときのHydroxytyrosol濃度を見ると約3倍の違いがあるので、Fr.3の抗アレルギー活性が全てHydroxytyrosolによるものとは言えない。したがって、Fr.3にはHydroxytyrosol以外の抗アレルギー活性成分が含まれていると考えられた。表15及び16から、Verbascosideは低濃度(10、20μg/mLで放出率96%)で抗アレルギー活性を示さないはずであるのに、Fr.4、5(推定含有Verbascoside濃度10、20μg/mLで放出率55%、44%)では抗アレルギー活性を示していることから、Fr.4、5の主要抗アレルギー活性成分はVerbascoside以外の成分であると考えられた。表17及び18から、Oleuropein aglycone濃度と放出率との関係がフラクション状態とOleuropein aglycone単体の状態で一致していることから、Fr.6、7の抗アレルギー活性は、Oleuropein aglyconeによるものと言える。したがって、Fr.6、7の主要抗アレルギー活性成分はOleuropein aglyconeであると同定された。表19及び20から、Luteolin濃度と放出率との関係がフラクション状態とLuteolin単体の状態で一致していることから、Fr.8、9の抗アレルギー活性は、Luteolinによるものと言える。したがって、Fr.8、9の主要抗アレルギー活性成分はLuteolinであると同定された。表21に、ポメス含有成分のオリーブ果実中における含有量を示す。表21に示すとおり、Verbascoside、Hydroxytyrosol及びOleuropein aglyconeの含有量は、Luteolinと比べて極めて多かった。
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【0065】
(実施例2)
実施例1と同様にしてオリーブ果実から分離した3,4−DHPEA−EDAにつき、Oleuropein aglyconeとの抗アレルギー活性の比較を行った。その結果、3,4−DHPEA−EDAは、IC50=28.3μg/mLであり、Oleuropein aglycone(IC50=27.4μg/mL)と数字上はほぼ同程度であったが、比較試験を行うと、Oleuropein aglyconeよりも抗アレルギー活性がやや強かった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗アレルギー剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アレルギーに苦しむ患者は、世界的に増加の傾向にある。その症状は、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、食物アレルギー等、多岐にわたっている。アレルギー反応は、(1)感作、(2)脱顆粒、(3)免疫反応の3つの遷延化のステージからなる。感作状態とは、免疫系が、生体が将来同じアレルゲンに接触したときに即座に反応できるように準備している状態のことである。感作の過程は、マクロファージがアレルゲンを食して断片にまで裁断し、それらの断片をTリンパ球に提示することから始まる。引き続いて起こる過程は、T細胞がインターロイキン4を分泌し、B細胞が形質細胞に成熟する過程である。形質細胞は、免疫グロブリンE(IgE)として知られるアレルゲン特異的な分子を作り出す。こうして作られたIgEという抗体は、組織中の肥満(マスト)細胞又は血液中の好塩基球の表面にあるレセプターと結合する。感作後にアレルゲンが生体と接触すると、アレルゲンは肥満細胞の表面でIgEと直ちに結合する。1個のアレルゲン分子が細胞表面上の2個のIgE分子と結合すると、IgE分子と結合しているレセプター同士が会合し、その結果、細胞膜内の幾種類もの酵素が直接的、間接的に活性化する。活性化するのはチロシンキナーゼ、フォスフォリパーゼC、プロテインキナーゼC及びカルシウムイオンで、これらは情報の流れを作り、顆粒から化学伝達物質を放出させる(脱顆粒)。この情報の流れは、サイトカインとして知られる化学物質の生合成と分泌も促進させる。分子の相互作用に基づいた情報の流れは他にもあり、プロスタグランジン又はロイコトリエンといった脂質由来メディエーター(伝達物質)の分泌につながる。肥満細胞から放出される様々な化学物質は、多くのアレルギー症状の原因となる。炎症組織内の活性化肥満細胞又はその近くに位置する他の細胞から化学伝達物質が放出されると、好塩基球又は抗酸球等の細胞は血管を通り抜け、その炎症組織へと遊走する。これらの細胞の遊走が容易になるのは、放出された化学伝達物質が末梢血管中の細胞又は血管内皮の細胞にくっついている接着分子の発現又は結合活性を促進するからである。血液中の細胞は、血管内皮細胞に接着し、それらの細胞に沿って回転し、さらにそれらの細胞の間隙を通過して周りの細胞へと潜り込む。そして、自ら化学伝達物質を放出する。この化学伝達物質は、免疫活性を維持したり、組織を傷害したりする。
【0003】
前述のアレルギー症状の治療薬として、植物抽出物、例えば、南天実又はオリーブ等の抽出物を含む抗アレルギー剤が提案されている(例えば、特許文献1及び2)。これらの抗アレルギー剤は、食用植物を原料としているため、安全性が高い。しかしながら、従来の抗アレルギー剤は、効果が不十分なことがあるため、さらに有効な抗アレルギー剤の研究が続けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−210909号公報
【特許文献2】特開2002−316937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、安全性が高く、従来のものよりさらにアレルギー症状の抑制効果に優れた抗アレルギー剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の抗アレルギー剤は、下記化学式(1)で表わされる化合物、下記化学式(2)で表わされる化合物、下記化学式(3)で表わされる化合物及び下記化学式(4)で表わされる化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、又はそれらの塩を含むことを特徴とする。
【化1】
化学式(1)において、
R11は、水素原子、アルキル基、アシル基、アリール基又はアラルキル基であり、2つのR11は同一でも異なっていてもよく、
R12は、水素原子又はアルキル基であり、
R13は、ヒドロキシ基、アルコキシ基又はオキソ基であり、
R15及びR16は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン基であり、3つのR15、及びR16は同一でも異なっていてもよく、
Lは、単結合であるか、又は存在せず、
Lが単結合の場合、R14は、酸素原子、硫黄原子又はN−R17(R17は、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン基)であり、
Lが存在しない場合、R14は、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アリールオキシ基又はアリールアルキルオキシ基であり、
Z1は、酸素原子、硫黄原子又はN−R18(R18は、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン基)であり、
m及びnは、それぞれ、正の整数である。
【化2】
化学式(2)において、
R21は、水素原子、アルキル基、アシル基、アリール基又はアラルキル基であり、2つのR21は同一でも異なっていてもよく、
R22は、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン基であり、3つのR22は同一でも異なっていてもよく、
pは、正の整数である。
【化3】
化学式(3)において、
R31〜R37は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アシル基、アリール基又はアラルキル基であり、2つのR31、2つのR32、及びR33〜R37は同一でも異なっていてもよく、
R38〜R40は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン基であり、3つのR38、3つのR39、及びR40は同一でも異なっていてもよく、
Z2〜Z4は、それぞれ、酸素原子、硫黄原子又はN−R41(R41は、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン基)であり、同一でも異なっていてもよく、
sは、正の整数である。
【化4】
化学式(4)において、
R42は、水素原子、アルキル基、アシル基、アリール基又はアラルキル基であり、2つのR42は同一でも異なっていてもよく、
R43は、水素原子又はアルキル基であり、
R44は、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン基であり、3つのR44は同一でも異なっていてもよく、
Z5は、酸素原子、硫黄原子又はN−R45(R45は、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン基)であり、
t及びuは、それぞれ、正の整数である。
【発明の効果】
【0007】
本発明者らは、アレルギー症状を抑えるためには、前述の脱顆粒を阻害することが必要であるとの考えのもと、研究を行った。脱顆粒反応を抑制することができれば、ヒスタミン等の化学伝達物質を肥満細胞中に封じ込めることができ、アレルギー症状を抑えることができる。研究の結果、前記化学式(1)で表わされる化合物、前記化学式(2)で表わされる化合物、前記化学式(3)で表わされる化合物及び前記化学式(4)で表わされる化合物が、脱顆粒反応を抑制することを見出し、本発明に想到した。これらの4つの化合物は、例えば、後述のように、食用オリーブから抽出されるものであり、安全性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の実施例における抗アレルギー活性評価方法のフローチャートである。
【図2】図2は、本発明の実施例の抗アレルギー活性評価における24ウェルマイクロプレート上の配置図である。
【図3】図3は、本発明の実施例の抗アレルギー活性評価における96ウェルマイクロプレート上の配置図である。
【図4】図4は、本発明の実施例における抗アレルギー活性評価結果を示すグラフである。
【図5】図5は、本発明の実施例におけるポメス各フラクションの抗アレルギー活性評価結果を示すグラフである。
【図6】図6は、本発明の実施例におけるフラボノイド標品群のHPLCクロマトグラム(波長=290nm)である。
【図7】図7は、本発明の実施例におけるポリフェノール標品群のHPLCクロマトグラム(波長=290nm)である。
【図8】図8は、本発明の実施例におけるイリドイド標品群のHPLCクロマトグラム(波長=290nm)である。
【図9】図9は、本発明の実施例におけるFr.3及びHydroxytyrosolのHPLCクロマトグラム(波長=290nm)である。
【図10】図10は、本発明の実施例におけるFr.3の主成分及びHydroxytyrosolの吸収スペクトルである。
【図11】図11は、本発明の実施例におけるFr.4、5及びVerbascosideのHPLCクロマトグラム(波長=290nm)である。
【図12】図12は、本発明の実施例におけるFr.4、5の主成分及びVerbascosideの吸収スペクトルである。
【図13】図13は、本発明の実施例におけるFr.6、7のHPLCクロマトグラム(波長=290nm)である。
【図14】図14は、本発明の実施例におけるFr.6、7の主成分の吸収スペクトルである。
【図15】図15は、本発明の実施例におけるFr.8、9及びフラボノイド標品群のHPLCクロマトグラム(波長=290nm)である。
【図16】図16は、本発明の実施例におけるFr.8、9の主成分及びLuteolinの吸収スペクトルである。
【図17】図17は、本発明の実施例におけるカラム分離前のポメスメタノール抽出液乾固物のHPLCクロマトグラムである。
【図18】図18は、本発明の実施例におけるHPLC条件の変更によるFr.7の未知成分のリテンションタイムの変化を示すグラフである。
【図19】図19は、本発明の実施例におけるHPLCによるFr.7のフラクション分離を示すグラフである。
【図20】図20は、本発明の実施例におけるFr.7及びFr.7−1〜7−3のHPLCクロマトグラムである。
【図21】図21は、本発明の実施例におけるFr.7及びFr.7−1〜7−3の抗アレルギー活性評価の結果を示すグラフである。
【図22】図22は、本発明の実施例におけるFr.7乾固物、50%TFA水溶液に24時間浸漬した後のFr.7乾固物及びHydroxytyrosolのHPLCクロマトグラム(波長=290nm)である。
【図23】図23は、本発明の実施例における50%TFA水溶液に24時間浸漬した後のFr.7乾固物のリテンションタイム8.93分のピーク及びHydroxytyrosolの吸収スペクトルである。
【図24】図24は、本発明の実施例におけるFr.7乾固物及び50%TFA水溶液に24時間浸漬した後のFr.7乾固物のHPLCクロマトグラム(波長=250nm)である。
【図25】図25は、本発明の実施例におけるFr.7の未知成分の13C−NMRスペクトル(溶媒:CDCl3)である。
【図26】図26は、本発明の実施例におけるFr.7の未知成分のDEPTスペクトル(溶媒:CDCl3)である。
【図27】図27は、本発明の実施例におけるFr.7の未知成分の1H−NMRスペクトル(溶媒:CDCl3)である。
【図28】図28は、本発明の実施例におけるFr.7の未知成分の1H−NMR拡大スペクトル(溶媒:CDCl3)である。
【図29】図29は、本発明の実施例におけるFr.7の未知成分のC−H COSYスペクトル(溶媒:CDCl3)である。
【図30】図30は、本発明の実施例におけるFr.7の未知成分のH−H COSYスペクトル(溶媒:CDCl3)である。
【図31】図31は、本発明の実施例におけるFr.7の未知成分のH−H COSY拡大スペクトル(溶媒:CDCl3)である。
【図32】図32は、本発明の実施例におけるFr.7の未知成分のHMBCスペクトル(溶媒:CDCl3)である。
【図33】図33は、本発明の実施例におけるFr.7の未知成分のHMBC結果からの相関性を示す図である。
【図34】図34は、本発明の実施例におけるFr.7の未知成分のHMBC拡大スペクトル(溶媒:CDCl3)である。
【図35】図35は、本発明の実施例におけるFr.7の未知成分のHMBC拡大スペクトル(溶媒:CDCl3)である。
【図36】図36は、本発明の実施例における11位照射デカップリングの結果を示すグラフである。
【図37】図37は、本発明の実施例における11位照射デカップリング時の6位の1H−NMRスペクトルである。
【図38】図38は、本発明の実施例における2’位照射デカップリングの結果を示すグラフである。
【図39】図39は、本発明の実施例における2’位照射デカップリング時の1’位の1H−NMRスペクトルである。
【図40】図40は、本発明の実施例における4位照射デカップリングの結果を示すグラフである。
【図41】図41は、本発明の実施例における4位照射デカップリング時の5、8位の1H−NMRスペクトルである。
【図42】図42は、本発明の実施例における1’位照射デカップリングの結果を示すグラフである。
【図43】図43は、本発明の実施例における1’位照射デカップリング時の2’位の1H−NMRスペクトルである。
【図44】図44は、本発明の実施例における6位照射デカップリングの結果を示すグラフである。
【図45】図45は、本発明の実施例における6位照射デカップリング時の11位の1H−NMRスペクトルである。
【図46】図46は、本発明の実施例における6位照射デカップリング時の5位の1H−NMRスペクトルである。
【図47】図47は、本発明の実施例における10位照射デカップリングの結果を示すグラフである。
【図48】図48は、本発明の実施例における10位照射デカップリング時の5位の1H−NMRスペクトルである。
【図49】図49は、本発明の実施例におけるFr.7の未知成分のMSスペクトルである。
【図50】図50は、本発明の実施例における抗アレルギー活性比較に用いたフラボノイドを示す図である。
【図51】図51は、本発明の実施例における抗アレルギー活性比較に用いたその他のフラボノイドを示す図である。
【図52】図52は、本発明の実施例における抗アレルギー活性比較に用いたフェノール及びイリドイドを示す図である。
【図53】図53は、本発明の実施例におけるポリフェノール標品の抗アレルギー活性評価の結果を示すグラフである。
【図54】図54は、本発明の実施例におけるヒドロキシ基の有無と抗アレルギー活性の関係を示すグラフである。
【図55】図55は、本発明の実施例における2−3位間の結合様式の違いと抗アレルギー活性の関係を示すグラフである。
【図56】図56は、本発明の実施例における糖の有無と抗アレルギー活性の関係を示すグラフである。
【図57】図57は、本発明の実施例における糖の結合場所の違いと抗アレルギー活性の関係を示すグラフである。
【図58】図58は、本発明の実施例における3、3’、4’、5’位の違いと抗アレルギー活性の関係を示すグラフである。
【図59】図59は、本発明の実施例における3、3’、4’、5’位の違いと抗アレルギー活性の関係を示す別のグラフである。
【図60】図60は、本発明の実施例におけるHydroxytyrosol誘導体の抗アレルギー活性比較結果を示すグラフである。
【図61】図61は、本発明の実施例におけるCaffeic acid及びRosmarinic acidの抗アレルギー活性比較結果を示すグラフである。
【図62】図62は、本発明の実施例におけるCurcumin及びFerulic acidの抗アレルギー活性比較結果を示すグラフである。
【図63】図63は、本発明の実施例におけるCatecholを基本骨格として持つポリフェノール標品の抗アレルギー活性評価の結果を示すグラフである。
【図64】図64は、本発明の実施例における活性の高いポリフェノール標品の抗アレルギー活性評価の結果を示すグラフである。
【図65】図65は、本発明の実施例におけるポメス含有成分の抗アレルギー活性評価の結果を示すグラフである。
【図66】図66は、本発明の実施例のβ―hexosaminidase阻害活性試験における96ウェルマイクロプレート上の配置図である。
【図67】図67は、本発明の実施例におけるHydroxytyrosol標品を用いて作成したHPLC検量線(波長=290nm)である。
【図68】図68は、本発明の実施例におけるVerbascoside標品を用いて作成したHPLC検量線(波長=290nm)である。
【図69】図69は、本発明の実施例におけるLuteolin標品を用いて作成したHPLC検量線(波長=290nm)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の抗アレルギー剤において、前記化学式(1)で表わされる化合物が、下記化学式(1−1)で表わされる化合物(Oleuropein aglycone)であることが好ましい。
【化5】
【0010】
本発明の抗アレルギー剤において、前記化学式(2)で表わされる化合物が、下記化学式(2−1)で表わされる化合物(Hydroxytyrosol)であることが好ましい。
【化6】
【0011】
本発明の抗アレルギー剤において、前記化学式(3)で表わされる化合物が、下記化学式(3−1)で表わされる化合物(Verbascoside)であることが好ましい。
【化7】
【0012】
本発明の抗アレルギー剤において、前記化学式(4)で表わされる化合物が、下記化学式(4−1)で表わされる化合物(3,4−DHPEA−EDA)であることが好ましい。
【化8】
【0013】
本発明の抗アレルギー剤において、前記化学式(1)で表わされる化合物、前記化学式(2)で表わされる化合物、前記化学式(3)で表わされる化合物及び前記化学式(4)で表わされる化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、又はそれらの塩が、オリーブ(Olea europea)由来であることが好ましい。食用に適するオリーブ由来であれば、より安全性が高い。
【0014】
本発明の抗アレルギー剤は、オリーブ残渣(以下、「ポメス」と言う。)由来であることがより好ましい。ポメスとは、オリーブ果実からオリーブ果汁液及びオリーブオイルを圧搾したのちの搾りかすを意味する。これまで産業廃棄物として処理されてきたポメスを用いることで、未利用資源の有効活用につながる。
【0015】
本発明の抗アレルギー剤において、前記オリーブは、ミッション種、マンザニロ種及びルッカ種からなる群から選択される少なくとも一種であることがさらに好ましい。
【0016】
本発明において、アレルギー(アレルギー性疾患)としては、特に制限されないが、例えば、I型アレルギー性疾患、II型アレルギー性疾患、III型アレルギー性疾患、IV型アレルギー性疾患、V型アレルギー性疾患等があげられ、好ましくは、I型アレルギー性疾患である。前記I型アレルギー性疾患としては、特に制限されないが、具体的には、例えば、蕁麻疹、花粉症、喘息、PIE症候群、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、食物アレルギー、薬物アレルギー、アナフィラキシー等があげられる。
【0017】
本発明において、アルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基等があげられ、アルコキシ基、アリールアルキルオキシ基等のアルキル基を構造中に含む基においても同様である。本発明において、前記アルキル基は、例えば、その一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記アルキル基における置換基としては、特に制限されないが、例えば、ヒドロキシ基、ハロゲン基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、カルバモイル基等があげられる。
【0018】
本発明において、アシル基としては、特に限定されないが、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサノイル基、ベンゾイル基、エトキシカルボニル基等があげられ、アシル基を構造中に含む基(アシルオキシ基等)においても同様である。
【0019】
本発明において、アリール基としては、特に限定されないが、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピリジン環、チオフェン環、ピレン環等の任意の芳香環又は複素芳香環から誘導される基等があげられる。
【0020】
本発明において、アラルキル基としては、特に限定されないが、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ジフェニルメチル基、トリチル基等があげられる。
【0021】
本発明において、アルコキシ基としては、特に限定されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等があげられる。本発明において、前記アルコキシ基は、例えば、その一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記アルコキシ基における置換基としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシ基、ハロゲン基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、カルバモイル基等があげられる。
【0022】
本発明において、ハロゲン基としては、特に限定されないが、例えば、フルオロ基(フッ素原子)、クロロ基(塩素原子)、ブロモ基(臭素原子)及びヨード基(ヨウ素原子)等があげられる。なお、前記ハロゲン基とは、置換基としてのハロゲン原子の名称である。
【0023】
本発明において、アシルオキシ基としては、特に限定されないが、例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブタノイルオキシ基、3−クロロブチリルオキシ基等があげられる。本発明において、前記アシルオキシ基は、例えば、一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記アシルオキシ基における置換基としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシ基、ハロゲン基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、カルバモイル基等があげられる。
【0024】
本発明において、アリールオキシ基としては、特に限定されないが、例えば、フェノキシ基等があげられる。前記アリールオキシ基は、例えば、一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記アリールオキシ基における置換基としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシ基、ハロゲン基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、カルバモイル基等があげられる。
【0025】
本発明において、アリールアルキルオキシ基としては、特に限定されないが、例えば、ベンジルオキシ基等があげられる。前記アリールアルキルオキシ基は、例えば、一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記アリールアルキルオキシ基における置換基としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシ基、ハロゲン基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、カルバモイル基等があげられる。
【0026】
前記化学式(1)において、mは、1から5までの整数であることが好ましく、特に好ましくは、2であり、nは、1から5までの整数であることが好ましく、特に好ましくは、1である。前記化学式(2)において、pは、1から5までの整数であることが好ましく、特に好ましくは、2である。前記化学式(3)において、sは、1から5までの整数であることが好ましく、特に好ましくは、2である。前記化学式(4)において、tは、1から5までの整数であることが好ましく、特に好ましくは、2であり、uは、1から5までの整数であることが好ましく、特に好ましくは、1である。
【0027】
本発明の抗アレルギー剤は、前述のとおり、前記化学式(1)で表わされる化合物、前記化学式(2)で表わされる化合物、前記化学式(3)で表わされる化合物及び前記化学式(4)で表わされる化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、又はそれらの塩を含むことを特徴とする。本発明の抗アレルギー剤は、その機能を損なわない範囲で、これらの成分以外のその他の成分を含んでもよい。前記その他の成分としては、例えば、ビタミン、ミネラル、着色料、保存料等があげられる。
【0028】
本発明の抗アレルギー剤の製造方法は、特に限定されず、例えば、後述の実施例に記載の方法により、オリーブ果実からポメスメタノール抽出液乾固物を分離することで製造できる。ただし、実施例に記載の方法は例示に過ぎず、本発明の抗アレルギー剤の製造方法は、これに限定されない。
【0029】
本発明の抗アレルギー剤の投与対象は、特に限定されず、ヒト;サル、ウシ、ブタ、イヌ等の非ヒト哺乳類;ニワトリ等の鳥類;魚介類等があげられる。投与方法は、特に限定されず、例えば、経口投与でもよいし、非経口投与でもよい。前記非経口投与は、例えば、静脈注射、筋肉注射、皮下投与、直腸投与、経皮投与、腹腔内投与、局所投与等があげられる。本発明の抗アレルギー剤の投与量は、特に限定されず、例えば、動物種、年齢等に応じて適宜設定できる。本発明の抗アレルギー剤をヒト成人に投与する場合、1日あたりの投与量は、本発明の抗アレルギー剤に含まれる抗アレルギー活性成分量として、例えば、0.1mg/50kg〜100mg/50kgであり、好ましくは、1mg/50kg〜50mg/50kgであり、より好ましくは、10mg/50kg〜20mg/50kgである。
【0030】
本発明の抗アレルギー剤の剤型は、特に限定されず、用途に応じて適宜決定できる。本発明の抗アレルギー剤を経口投与する場合、その剤型は、例えば、固体状又は液体状の経口製剤があげられ、具体的には、錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、トローチ剤、液剤等があげられる。本発明の抗アレルギー剤を非経口投与する場合、その剤型は、例えば、注射用製剤、点滴製剤等の非経口製剤があげられる。本発明の抗アレルギー剤は、例えば、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、吸収促進剤、乳化剤、安定化剤、防腐剤等の各種添加剤を含んでもよく、従来公知の製剤化技術等により製剤化可能である。
【0031】
本発明の抗アレルギー剤は、飲食品に添加してもよい。本発明において、飲食品とは、一般食品、保健機能食品を含む。前記一般食品としては、特に限定されないが、例えば、穀物加工食品、野菜加工食品、果物加工食品、食肉加工食品、水産物加工食品、乳製品、飲料、健康食品等があげられる。前記穀物加工食品としては、特に限定されないが、例えば、小麦粉、米粉、シリアルバー、せんべい、あられ、クッキー等があげられる。前記野菜加工食品としては、特に限定されないが、例えば、野菜ペースト、乾燥野菜、野菜スープ等があげられる。前記果物加工食品としては、特に限定されないが、例えば、果物ピューレ、乾燥果物等があげられる。前記食肉加工食品としては、特に限定されないが、例えば、ハム、ベーコン、ソーセージ等があげられる。前記水産物加工食品としては、特に限定されないが、例えば、佃煮、塩干物、魚肉ソーセージ、はんぺん、かまぼこ、ちくわ等があげられる。前記乳製品としては、特に限定されないが、例えば、乳飲料、ヨーグルト、アイスクリーム、チーズ等があげられる。前記飲料としては、特に限定されないが、例えば、清涼飲料、緑茶、紅茶、コーヒー等があげられる。また、前記保健機能食品は、一般に、機能性食品とも称される。前記保健機能食品としては、例えば、特定保健用食品、栄養機能食品等があげられる。
【実施例】
【0032】
つぎに、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、下記の実施例に限定されない。
【0033】
(実施例1)
[オリーブ果実からの分離]
下記工程により、オリーブ果実から、ポメスメタノール抽出液乾固液及び果汁液乾固物を分離した。
(1)まず、オリーブ果実1.15kgの圧搾及びメタノール抽出により、オイルを含むポメスメタノール抽出液と、オイルを含む果汁液とに分離した。
(2)つぎに、前記オイルを含むポメスメタノール抽出液及び前記オイルを含む果汁液を、それぞれ、ヘキサンにより分液することで、ポメスメタノール抽出液及び果汁液と、オイルとに分離した。
(3)つぎに、前記ポメスメタノール抽出液及び前記果汁液を、それぞれ、減圧乾固させることで、ポメスメタノール抽出液乾固物34.5g及び果汁液乾固物(以下、被験物質と言うことがある。)を得た。
【0034】
[抗アレルギー活性評価]
ラット好塩基球由来肥満細胞RBL−2H3を用い、好塩基球の顆粒中に豊富に存在するβ−hexosaminidaseの放出率を脱顆粒の指標として測定することにより、被験物質の脱顆粒抑制作用の有無を評価した。β−hexosaminidase放出率は、β−hexosaminidaseが糖分解酵素であることから、基質p−nitrophenyl−2−acetamide−β−D−glucopyranosideに作用して遊離したp−nitrophenolによる黄色発色の吸光度(波長=405nm)測定の結果から算出した。
【0035】
つぎに、図1を参照して、抗アレルギー活性評価方法の詳細について説明する。抗アレルギー活性評価は、つぎの材料を用いて行った。
培地:Fetal Bovine Serum(Biowest社製)を10%、Antibiotic−Antimycotic 100X(GIBCO社製)を1%含んだDEME(和光純薬工業(株)製)
PBS(−):和光純薬工業(株)製
0.25%トリプシンEDTA溶液:和光純薬工業(株)製
抗体溶液:mouse monoclonal anti−dinitrophenol(Sigma社製)を培地に溶かして、50ng/mLに調製したAnti DNP−IgE溶液
抗原溶液:Albumin,dinitrophenyl(Sigma社製)をMT Bufferに溶かして、2.5μg/mLに調製したDNP−HSA(DNP−labeled human serum albumin)溶液
MT Buffer:Tyrode’s salt solution(Sigma社製)にHEPES((株)同仁化学研究所製)を4.76g/L、Bovine Serum Albumin(Jackson ImmunoResearch社製)を1g/Lとなるように加えたもの
0.1M Citrate Buffer:0.1M クエン酸水溶液と0.1M クエン酸ナトリウム水溶液を51:49の割合で混合したもの(pH 4.5)
基質溶液:p−nitrophenyl−2−acetamide−β−D−glucopyranoside(Sigma社製)を0.1M Citrate Bufferに溶かして、3.3mMになるように調製したもの
酵素反応停止液:4M グリシン水溶液と4M NaOH水溶液とイオン交換水を50:32:18の割合で混合した2M Glycine Buffer(pH 10.0)
0.1%Triton X−100溶液:Triton X−100(和光純薬工業(株)製)をMT Bufferで0.1%に希釈したもの
被験物質溶液:被験物質を100%DMSOに溶かし、MT Bufferで適当な濃度に希釈したもの(このとき、DMSOの最終濃度を0.1%以下となるようにした)
【0036】
(RBL−2H3細胞の継代培養)
まず、50mL容培養フラスコで、RBL−2H3細胞の培養を行った。コンフルエントになったところで継代を行った。培養フラスコから古くなった培地を取り除き、PBS(−)を3mL入れ、フラスコ内全面を洗浄し、すぐに取り除いた。再度PBS(−)を3mL入れ、今度は1分間細胞表面のみを洗浄し、すぐに取り除いた。ついで、培養フラスコに0.25%トリプシンEDTA溶液を3mL入れ、フラスコの壁に付着している細胞を浮遊させた。この操作は、10分以内に行った。つぎに、フラスコに新しい培地を12mL入れ、トリプシンEDTAの働きを停止させ、50mL容遠沈管にフラスコ内の溶液をすべて移し、2000rpm、8分間の条件で遠心分離を行った後、上清を除去した。つぎに、遠沈管に新しい培地を6mL入れ、ピペッティングし、1mLを元のフラスコに戻し、そのフラスコに5mLの新しい培地を加えてインキュベーター(37℃、5%CO2)で培養した。
【0037】
(ステップ1(S1):24ウェルマイクロプレートへの播種)
50mL容培養フラスコで培養したRBL−2H3細胞を2.5×105cells/mLとなるように50mL容遠沈管に培地で希釈した。希釈後の細胞液を24ウェルマイクロプレート上のCL(Cell lysate) well(図2参照)に1mL/wellとなるように分注し、インキュベーター(37℃、5%CO2)で1晩培養した。
【0038】
(ステップ2(S2):抗体添加)
培養後、培地を吸引除去し、1mL/wellのPBS(−)で洗浄後、抗体溶液を500μL/wellとなるように加えた。このとき、Blankには、抗体溶液の代わりに培地を加えた。これを2時間培養することにより細胞を感作させた。
【0039】
(ステップ3(S3):被験物質溶液添加)
2時間後、抗体溶液を除去し、1mL/wellのMT Bufferで2回洗浄した後、被験物質溶液を490μL/wellとなるように加えた。このとき、B(Blank) well及びN(Negative) well(図2参照)には、被検物質溶液の代わりにMT Bufferを加えた。これを10分間培養した。
【0040】
(ステップ4(S4):抗原添加)
培養後、抗原溶液を10μL/well加えよく混合し、さらに30分間培養した。これにより、細胞を刺激した(脱顆粒)。
【0041】
(ステップ5(S5):氷冷)
30分後、インキュベーターから24ウェルマイクロプレートを取り出し、10分間氷冷して反応を止めた。
【0042】
(ステップ6(S6):上清分取・細胞溶解)
CL wellの上清全量(500μL)を、それぞれ、その真下に位置するS(Supernatant) wellに移し(図2参照)、CL wellに0.1%Triton X−100溶液500μLを加え、底面に付着している細胞を溶解させた。
【0043】
(ステップ7(S7):96ウェルマイクロプレートへの播種)
S wellから50μLを、及びCL wellから50μLを、それぞれ、2連で96ウェルマイクロプレートに移し(図3参照)、5分間プレインキュベーションした。図3に示す96ウェルマイクロプレートの各ウェルの抗体と被験物質の違いを、表1に示す
【表1】
【0044】
(ステップ8(S8):基質添加)
基質溶液をX well(図3参照)のみに100μL/wellとなるように加え、25分間インキュベーションした。
【0045】
(ステップ9(S9):酵素反応停止液添加)
その後、酵素反応停止液を全ウェルに100μL/wellとなるように加えた。
【0046】
(ステップ10:マイクロプレートリーダーによる吸光度測定)
ついで、基質溶液をY well(図3参照)のみに100μL/wellとなるように加え、マイクロプレートリーダーで吸光度(波長=405nm)を測定した。X wellとY wellの溶液の色の違いを、表2に示す。得られた吸光度より、β−hexosaminidase放出率及びNegative controlの放出率を100%としたときの相対放出率を下記式を用いて算出した。
【表2】
【数1】
【0047】
図4に、抗アレルギー活性評価の結果を示す。図示のとおり、被験物質としてポメスメタノール抽出液乾固物を用いたときのみ、その濃度が高くなるにつれてβ−hexosaminidase放出率が低くなっており、ポメスメタノール抽出液乾固物に抗アレルギー活性があることがわかった。
【0048】
[ポメス各フラクションの抗アレルギー活性評価]
抗アレルギー活性の認められたポメスについて、さらに活性成分を探索するために、Amberlite XAD−7カラムにより分画して活性フラクションを明らかにした。ポメスメタノール抽出液乾固物34.5gをAmberlite XAD−7カラムによって分離して得た各フラクション乾固物の重量を表3に、抗アレルギー活性評価結果を図5にそれぞれ示す。
【表3】
【0049】
図5に示すとおり、Fr.1、2に抗アレルギー活性は無かったが、Fr.3〜9には抗アレルギー活性があった。Fr.6、7では100μg/mL、Fr.5、8、9では300〜500μg/mL、Fr.3、4では800μg/mLで放出率を50%抑制したことから、その抗アレルギー活性の強さは、Fr.6、7>5、8、9>3、4であることがわかった。
【0050】
前記抗アレルギー活性評価におけるのと同様の材料を用いて、下記方法により、Fr.3〜9の乾固物のβ−hexosaminidase阻害活性試験を実施した。その結果を、表4に示す。表4に示すとおり、β−hexosaminidase阻害率が最も大きいものでも10%前後しかないことがわかった。このことから、抗アレルギー活性評価中のp−nitrophenol遊離反応におけるβ−hexosaminidase酵素活性をFr.3〜9の乾固物が阻害しないことがわかった。したがって、Fr.3〜9の乾固物が肥満細胞からのβ−hexosaminidaseの放出そのものを抑制していると判断できる。
<β−hexosaminidase阻害活性試験方法>
前記抗アレルギー活性評価におけるのと同様にして50mL容培養フラスコに培養したRBL−2H3細胞を、5×105cells/mLとなるように0.1%Triton X−100溶液に溶解した。それを遠心分離して上清をとり、β−hexosaminidase粗酵素液とした。96ウェルマイクロプレートの全てのウェルに粗酵素液を25μLずつ加え、N well(図66参照)にはMT Bufferを、sample well(図66参照)には被験物質溶液を25μL添加し、5分間プレインキュベーションした。5分後、基質溶液をX well(図66参照)に100μLずつ加え、25分間インキュベーションした。その後、酵素反応停止液を100μLずつ全ウェルに加え、Y well(図66参照)に基質溶液を100μLずつ加えた。つぎに、吸光度をマイクロプレートリーダーで測定し(波長=405nm)、下記式により、β−hexosaminidase阻害率を算出した。
【数2】
【表4】
【0051】
(HPLCによる各フラクションの成分分析・同定)
図6〜8に、成分同定のために用いた下記既知成分標品のHPLCクロマトグラム(波長=290nm)を示す。また、それらより得た各標品のリテンションタイム(R.T.)を表6に示す。なお、図6は、フラボノイド標品群のHPLCクロマトグラム(波長=290nm)であり、図7は、ポリフェノール標品群のHPLCクロマトグラム(波長=290nm)であり、図8は、イリドイド標品群のHPLCクロマトグラム(波長=290nm)である。ほとんどが1種類の標品に対して、1本の主要ピークが見られたが、Silymarin及びOleuropeinでは多くのピークが見られた。HPLC分析条件は、下記のとおりである。
<HPLC分析条件>
送液ポンプ :JASCO PU−980×2
検出器 :JASCO MD2010Plus
波長 :290nm
カラム :COSMOSIL 5C18−ARII 4.6×250mm
流速 :1mL/分
移動相原液 :酢酸:アセトニトリル:超純水:リン酸=40:50:8.5:1.5
移動相溶媒 :A 移動相原液を1.5%リン酸水溶液で20倍に希釈
B 移動相原液を1.5%リン酸水溶液で2倍に希釈
カラム温度 :40℃
サンプル濃度 :5mg/mL
インジェクト容量 :20μL
グラジエントタイムプログラム:表5
【表5】
【0052】
<既知成分標品>
Apigenin−7−O−glucoside(AppliChem社製)
Catechin(ナカライテスク(株)製)
Ferulic acid(東京化成工業(株)製)
Gallic acid、Syringic acid、o−coumaric acid、Flavanone、Luteolin、Quercetin、Rutin、Caffeic acid、Catechol(和光純薬工業(株)製)
Rosmarinic acid(Sigma社製)
Hesperidin、Silymarin(LKT Laboratories社製)
Diosmin、Apigenin、Eriodictyol、Hesperetin、Homoeriodictyol、Isorhamnetin、Kaempferol、Luteolin−7−O−glucoside、Naringenin、Naringenin−7−O−glucoside、Rhoifolin、(+)−Taxifolin、Hydroxytyrosol、Curcumin、Verbascoside、Oleuropein(Extrathese社製)
【0053】
【表6】
【0054】
図9に、Fr.3及びHydroxytyrosolのHPLCクロマトグラム(波長=290nm)を示す。図示のとおり、AのピークがFr.3の主成分であることがわかった。そして、Aのピーク及びHydroxytyrosolのR.T.が一致した(9.0分)。図10に、Aのピーク及びHydroxytyrosolの吸収スペクトルを示す。図示のとおり、Aのピーク及びHydroxytyrosolの吸収スペクトルの形、極大吸収波長(235、279nm)が一致した。これらの結果から、Fr.3の主成分は、Hydroxytyrosolであると同定された。
【0055】
図11に、Fr.4、5及びVerbascosideのHPLCクロマトグラム(波長=290nm)を示す。図示のとおり、Fr.4、5にはBに共通した大きなピークが見られた。そして、Fr.4、5のBのピーク及びVerbascosideのR.T.が一致した(20.8分)。図12に、Fr.4、5のBのピーク及びVerbascosideの吸収スペクトルを示す。図示のとおり、Fr.4、5のBのピーク及びVerbascosideの吸収スペクトルの形、極大吸収波長(235、331nm)が一致した。これらの結果から、Fr.4、5の主成分は、Verbascosideであると同定された。
【0056】
図13に、Fr.6、7のHPLCクロマトグラム(波長=290nm)を示す。図示のとおり、34.4分に共通のピークが見られた。図14に、Fr.6、7の34.4分のピークの吸収スペクトルを示す。図示のとおり、極大吸収波長は、243、279nmであった。今回用いた標品の中には、Fr.6、7の34.4分のピークとR.T.及び吸収スペクトルが一致するものは無かった。
【0057】
図15に、Fr.8、9及びフラボノイド標品群のHPLCクロマトグラム(波長=290nm)を示す。図示のとおり、Fr.8、9にはCに共通した大きなピークが見られた。そして、Fr.8、9のCのピーク及びLuteolinのR.T.が一致した(30.2分)。図16に、Fr.8、9のCのピーク及びLuteolinの吸収スペクトルを示す。図示のとおり、Fr.8、9のCのピーク及びLuteolinの吸収スペクトルの形、極大吸収波長(243、279nm)が一致した。これらの結果から、Fr.8、9の主成分は、Luteolinであると同定された。
【0058】
図17に、カラム分離する前のポメスメタノール抽出液乾固物のHPLCクロマトグラムを示す。図示のとおり、ポメス中には、Hydroxytyrosol、Verbascoside及びLuteolinという3つの既知成分と、1つの未知成分(R.T.=34.4分)が含まれていることがわかった。表7に、ポメスメタノール抽出液乾固物のHPLC分析による成分同定結果をまとめた。表7に示すとおり、ポメスメタノール抽出液乾固物には、既知成分としてHydroxytyrosol(オリーブ果実1.15kgあたり334mg)及びVerbascoside(オリーブ果実1.15kgあたり117mg)が多く含まれていることがわかった。なお、ポメス含有既知成分の含有量の算出には、図67〜69に示すHPLC検量線を用いた。図67は、Hydroxytyrosol標品を用いて作成したHPLC検量線(波長=290nm)であり、図68は、Verbascoside標品を用いて作成したHPLC検量線(波長=290nm)であり、図69は、Luteolin標品を用いて作成したHPLC検量線(波長=290nm)である。
【表7】
【0059】
[Fr.7含有未知成分の構造解析]
Fr.7から未知成分を分取しやすいようにHPLC分析条件を下記のように変更することで、図18に示すように未知成分のR.T.が速くなるようにし、下記HPLC分取条件により、図19に示すようにFr.7−1〜7−3に分離した。なお、図18において、上の図がHPLC条件変更前の結果であり、下の図が、HPLC条件変更後の結果である。図20に、Fr.7及びFr.7−1〜7−3のHPLC分析結果を示す。図示のとおり、Fr.7及びFr.7−2が同じR.T.に大きなピークを示しており、Fr.7からFr.7−2に未知成分を分取できたことが確認された。図21に、Fr.7及びFr.7−1〜7−3の抗アレルギー活性評価の結果を示す。図示のとおり、Fr.7−1、7−3には抗アレルギー活性は無かった。一方、Fr.7−2の濃度が70μg/mLのときに放出率が50%以下に低下しており、Fr.7−2には抗アレルギー活性が認められた。これらの結果から、Fr.7−2に分取された未知成分が、Fr.7の抗アレルギー活性の中心成分であることが確認された。
<HPLC分析条件>
送液ポンプ :JASCO PU−980×2
検出器 :JASCO MD2010Plus
波長 :290nm
カラム :COSMOSIL 5C18−ARII 4.6×250mm
流速 :1mL/分
移動相原液 :酢酸:アセトニトリル:超純水:TFA=40:50:9.5:0.5
移動相溶媒 :A 移動相原液を0.5%TFA水溶液で20倍に希釈
B 移動相原液を0.5%TFA水溶液で2倍に希釈
カラム温度 :40℃
サンプル濃度 :100mg/mL
インジェクト容量 :50μL
グラジエントタイムプログラム:表8
【表8】
<HPLC分取条件>
送液ポンプ :JASCO PU−980
検出器 :JASCO 875UV
波長 :290nm
カラム :DEVELOSIL ODS−8 10×250mm
流速 :1mL/分
移動相溶媒 :A 20%アセトニトリル−16%酢酸水溶液
B 25%アセトニトリル−20%酢酸水溶液
カラム温度 :40℃
インジェクト重量 :50mg
タイムプログラム :表9
【表9】
【0060】
(未知成分の50%TFA(トリフルオロ酢酸)水溶液による分解)
図22に、Fr.7乾固物、室温(18℃)で50%TFA水溶液に24時間浸漬した後のFr.7乾固物及びHydroxytyrosolのHPLCクロマトグラム(波長=290nm)を示す。図22において、上の図が、Fr.7乾固物のHPLCクロマトグラムであり、真ん中の図が、50%TFA水溶液に24時間浸漬した後のFr.7乾固物のHPLCクロマトグラムであり、下の図が、HydroxytyrosolのHPLCクロマトグラムである。図示のとおり、Fr.7乾固物を50%TFA水溶液に24時間浸漬すると、R.T.8.93分に新たなピークが検出されることがわかった。図23に、R.T.8.93分のピーク及びHydroxytyrosolの吸収スペクトルを示す。図23において、上の図が、R.T.8.93分のピークの吸収スペクトルであり、下の図が、Hydroxytyrosolの吸収スペクトルである。これらの結果から、R.T.8.93分のピークの成分は、Hydroxytyrosolと同定された。図24に、Fr.7乾固物及び50%TFA水溶液に24時間浸漬した後のFr.7乾固物のHPLCクロマトグラム(波長=250nm)を示す。図24において、上の図が、Fr.7乾固物のHPLCクロマトグラムであり、下の図が、50%TFA水溶液に24時間浸漬した後のFr.7乾固物のHPLCクロマトグラムである。図示のとおり、TFA水溶液と反応させることにより、波長=250nmでR.T.22.37分に新たなピークが検出されることがわかった。Fr.7乾固物を50%TFA水溶液に浸漬させると、抗アレルギー活性に関与する未知成分の量が減り、Hydroxytyrosol及び波長=250nmでR.T.22.37分のピークの成分の量が増えることから、未知成分の構造にはHydroxytyrosol骨格が含まれており、酸による加水分解反応により、Hydroxytyrosolとそれ以外の部分に分解されたと考えられた。
【0061】
(NMR、MSによる未知成分の構造解析)
分取用HPLCにより50mgのFr.7から20mgの未知成分を単離した。図25に、単離した未知成分の13C−NMRスペクトル(溶媒:CDCl3)を示す。図26には、さらに、単離した未知成分のDEPT(DEPT45°、DEPT90°、DEPT135°)スペクトル(溶媒:CDCl3)をあわせて示す。図示のとおり、13C−NMRの結果から、未知成分の全炭素数は19個であることがわかった。また、DEPTの結果から、各炭素の級数がわかった。図27に、単離した未知成分の1H−NMRスペクトル(溶媒:CDCl3)を、図28に、単離した未知成分の1H−NMR拡大スペクトル(溶媒:CDCl3)を示す。また、図29に、単離した未知成分のC−H COSYスペクトル(溶媒:CDCl3)を示し、炭素と水素の結合を表10にまとめた。未知成分の全炭素に結合している全水素数は20個であることがわかり、炭素の級数との関係も一致した。図30に、単離した未知成分のH−H COSYスペクトル(溶媒:CDCl3)を、図31に、単離した未知成分のH−H COSY拡大スペクトル(溶媒:CDCl3)を示す。これらから、4−5位間、5−6位間、6−11位間、4−8位間、8−8位間、1’−2’位間に相関性が見られ、これらはそれぞれ隣接していると考えられた。図32に、単離した未知成分のHMBCスペクトル(溶媒:CDCl3)を、図33に、HMBC結果からの相関性を、図34及び35に、単離した未知成分のHMBC拡大スペクトル(溶媒:CDCl3)を示す。図示のとおり、2−6位間、5−8位間、5−6位間、5−11位間、6−11位間、1’−2’位間、2’−4’位間、2’−8’位間、4’−8’位間については両方向に相関性が見られ、これらはそれぞれ近接していると考えられた。2→3位間、2→4位間、2→7位間、5→3位間、5→4位間、6→4位間、6→10位間、8→3位間、8→4位間、8→9位間、12→7位間、1’→3’位間、2’→3’位間、4’→5’位間、4’→6’位間、7’→3’位間、7’→6’位間、7’→8’位間、8’→6’位間については一方向からではあるが相関性が見られ、これらもそれぞれ近接していると考えられた。TFA水溶液により、未知成分が分解されHydroxytyrosolが出てきたことと、これまでのNMR測定結果を総合して、未知成分は、IUPAC名:4−[2−(3,4−Dihydroxy−phenyl)−ethoxycarbonylmethyl]−5−formyl−6−methyl−5,6−dihydro−4H−pyran−3−carboxylic acid methyl esterの化学式(3)で表わされる構造(C19H22O8、分子量378)であると考えられた。図36〜48に、デカップリングの結果を示す。図36は、11位照射デカップリングの結果であり、図37は、11位照射デカップリング時の6位の1H−NMR拡大スペクトルである。図38は、2’位照射デカップリングの結果であり、図39は、2’位照射デカップリング時の1’位の1H−NMR拡大スペクトルである。図40は、4位照射デカップリングの結果であり、図41は、4位照射デカップリング時の5、8位の1H−NMR拡大スペクトルである。図42は、1’位照射デカップリングの結果であり、図43は、1’位照射デカップリング時の2’位の1H−NMR拡大スペクトルである。図44は、6位照射デカップリングの結果であり、図45は、6位照射デカップリング時の11位の1H−NMR拡大スペクトルであり、図46は、6位照射デカップリング時の5位の1H−NMR拡大スペクトルである。図47は、10位照射デカップリングの結果であり、図48は、10位照射デカップリング時の5位の1H−NMR拡大スペクトルである。図示のとおり、11位を照射すると6位が、2’位を照射すると1’位が、4位を照射すると5位と8位が、1’位を照射すると2位が、6位を照射すると5位と11位が、10位を照射すると5位が、それぞれスペクトルが変化したので、4−5位間、6−11間、4−8位間、1’−2’位間、6−5位間、5−10位間の隣接が証明された。図49に、単離した未知成分のMSスペクトルを示す。図示のとおり、未知成分の分子量は378であることがわかった。これとNMRの結果とを総合して、未知成分は、4−[2−(3,4−Dihydroxy−phenyl)−ethoxycarbonylmethyl]−5−formyl−6−methyl−5,6−dihydro−4H−pyran−3−carboxylic acid methyl esterと同定された。この物質は、Oleuropeinから糖が外れた構成をしているので、Oleuropein aglyconeと呼ぶことができる。なお、NMR、MSは、下記条件にて実施した。
<NMR>
装置:日本電子(株)製「JNM−ECA型核磁気共鳴装置」
データ処理装置:日本電子(株)製「Win Alpha NMRオペレーション」
溶媒:Chloroform−d(Isotec社製)
標準物質:TMS(TetraMethylSilane)
周波数:600MHz
<MS>
装置:日本電子(株)製「JMS−SX102AQQ Hybrid Mass Spectrometer」
データ処理装置:日本電子(株)製「JMS−DA5000」
イオン化法:EI
イオン化電圧:70eV
分解能:1000(低分解能)
標準物質:PFK(Perfluorokerosene)
【表10】
【0062】
[各成分とポリフェノール標品との抗アレルギー活性比較]
つぎに、Hydrotyrosol、Verbacscoside、Luteolin、Oleuropein aglycone及び他のポリフェノール標品につき、抗アレルギー活性の比較を行った。図50〜52に、比較に用いたポリフェノール標品を示す。図50及び51には、フラボノイドを示し、図52には、フェノール及びイリドイドを示している。比較結果を、図53〜64に示す。図53は、ポリフェノール標品の抗アレルギー活性評価結果を示すグラフであり、図54は、ヒドロキシ基の有無と抗アレルギー活性の関係を示すグラフであり、図55は、2−3位間の結合様式の違いと抗アレルギー活性の関係を示すグラフであり、図56は、糖の有無と抗アレルギー活性の関係を示すグラフであり、図57は、糖の結合場所の違いと抗アレルギー活性の関係を示すグラフであり、図58及び59は、3、3’、4’、5’位の違いと抗アレルギー活性の関係を示すグラフであり、図60は、Hydroxytyrosol誘導体の抗アレルギー活性比較結果を示すグラフであり、図61は、Caffeic acid及びRosmarinic acidの抗アレルギー活性比較結果を示すグラフであり、図62は、Curcumin及びFerulic acidの抗アレルギー活性比較結果を示すグラフであり、図63は、Catecholを基本骨格として持つポリフェノール標品の抗アレルギー活性評価の結果を示すグラフであり、図64は、活性の高いポリフェノール標品の抗アレルギー活性評価の結果を示すグラフである。図54に示すとおり、Flavanoneには抗アレルギー活性が認められず、Naringenin(IC50=0.321μmol/mL)には抗アレルギー活性が認められたことから、ヒドロキシル基を有していなければ、抗アレルギー活性が無いことがわかった。図55に示すとおり、Apigenin(IC50=0.00371μmol/mL)の抗アレルギー活性が、Naringenin(IC50=0.321μmol/mL)の抗アレルギー活性より約100倍高いことから、フラボノイド骨格の2−3位間が二重結合になっていると抗アレルギー活性が約100倍高くなることがわかった。図56に示すとおり、Apigenin(IC50=0.00371μmol/mL)の抗アレルギー活性が、Apigenin−7−glucoside(IC50=1.26μmol/mL)及びRhoifolin(IC50=1.13μmol/mL)の抗アレルギー活性より約400倍高いことから、糖が結合しているフラボノイドは抗アレルギー活性が弱く、糖の結合していないフラボノイドは抗アレルギー活性が強いことがわかった。図57に示すとおり、フラボノイド骨格の3位に糖が結合しているRutin(IC50=0.250μmol/mL)及び7位に糖が結合しているRhoifolin(IC50=1.13μmol/mL)を比較すると、Rutinの抗アレルギー活性の方が約4倍高いことから、糖の結合場所によって抗アレルギー活性の高さが変わることがわかった。図58に示すとおり、Homoeriodictyol(IC50=0.159μmol/mL)、Hesperetin(IC50=0.182μmol/mL)、Naringenin(IC50=0.321μmol/mL)、Eriodictyol(IC50=0.0946μmol/mL)、(+)−Taxifolin(IC50=0.165μmol/mL)の抗アレルギー活性の高さにはさほど差は無かった。図59に示すとおり、Apigenin(IC50=0.00371μmol/mL)、Isorhamnetin(IC50=0.00311μmol/mL)、Kaempferol(IC50=0.0108μmol/mL)、Luteolin(IC50=0.00339μmol/mL)、Quercetin(IC50=0.00363μmol/mL)の抗アレルギー活性の高さにもさほど差は無かった。図58及び59から、3、3’、4’、5’位に結合しているものの違いと抗アレルギー活性の高さには関係が無いことがわかった。図60に示すとおり、Hydroxytyrosol(IC50=1.91μmol/mL)、Vabascoside(IC50=1.17μmol/mL)、Oleuropein aglycone(IC50=0.0725μmol/mL)、Oleuropein(IC50=1.39μmol/mL)の4つのHydroxytyrosol誘導体のうち、最も抗アレルギー活性が高かったのは、Oleuropein aglyconeであった。図61に示すとおり、Rosmarinic acid(IC50=1.14μmol/mL)は、Caffeic acid(IC50=1.54μmol/mL)に似た構造を2つ有しているが、両者の抗アレルギー活性の高さにさほど差は無かった。図62に示すとおり、2つのFerulic acid(IC50=1.70μmol/mL)を結合させた構造をしているCurcumin(IC50=0.0143μmol/mL)の抗アレルギー活性は、Ferulic acidよりも約100倍高かった。図61及び62から、抗アレルギー活性を有する構造が2つ結合したとしても、その結合様式及び糖の有無によって、抗アレルギー活性が高くなることも変化しないこともあることがわかった。図63に示すとおり、Catechol(IC50=1.16μmol/mL)、Hydroxytyrosol(IC50=1.91μmol/mL)、Caffeic acid(IC50=1.54μmol/mL)、Ferulic acid(IC50=1.70μmol/mL)、Oleuropein(IC50=1.39μmol/mL)、Verbascoside(IC50=1.17μmol/mL)、Rosmarinic acid(IC50=1.44μmol/mL)の抗アレルギー活性の高さにさほど差が無かったことから、Hydroxytyrosol、Ferulic acid、Oleuropein、Verbascoside、Rosmarinic acidの抗アレルギー活性は、Catechol構造に由来すると考えられた。図64に示すとおり、使用したポリフェノール標品のうち、抗アレルギー活性の高いのは、Apigenin(IC50=0.00371μmol/mL)、Isorhamnetin(IC50=0.00311μmol/mL)、Kaempferol(IC50=0.0108μmol/mL)、Luteolin(IC50=0.00339μmol/mL)、Quercetin(IC50=0.00363μmol/mL)、Curcumin(IC50=0.0143μmol/mL)であることがわかった。以上の結果から、抗アレルギー活性が高くなる条件は、(1)フラボノイド構造をしていること、(2)その構造の2−3位間が2重結合となっていること、(3)アグリコンであること、があげられる。使用したポリフェノール標品の抗アレルギー活性評価におけるIC50を、表11にまとめた。表11において、ポメス含有成分には下線を付している。表11に示すとおり、ポメス含有成分のうち、Luteolin(IC50=0.00339μmol/mL)及びOleuropein aglycone(IC50=0.0725μmol/mL)の抗アレルギー活性が高いことがわかった。
【表11】
【0063】
(ポメス含有成分の抗アレルギー活性評価)
図65に、ポメス含有成分の抗アレルギー活性評価の結果を示す。また、表12に、ポメス含有成分の濃度(μg/mL)とβ−hexosaminidase活性阻害率(%)との関係を示す。表12に示すとおり、Verbascoside濃度600(μg/mL)のとき、β−hexosaminidase活性阻害率が17.40%と最も高く、図65より、同じ濃度のときの脱顆粒抑制率(100(%)−β−hexosaminidase放出率(%))は40%であり、少なくとも23%は放出自体を抑制していることとなる。以上から、抗アレルギー活性評価中のp−nitrophenol遊離反応におけるβ−hexosaminidase酵素活性をポメス含有成分が阻害しないことがわかった。したがって、ポメス含有成分が、肥満細胞からのβ−hexosaminidaseの放出そのものを抑制していると言える。
【表12】
【0064】
表13に、各Frにおける各成分の含有割合を示す。また、図65及び表13から得られるポメスフラクション乾固物及び各成分標品の抗アレルギー活性の比較結果を、表14〜20に示す。表14は、Fr.3及びHydroxytyrosol標品の抗アレルギー活性(脱顆粒抑制活性)結果の比較を示し、表15は、Fr.4及びVerbascoside標品の抗アレルギー活性(脱顆粒抑制活性)結果の比較を示し、表16は、Fr.5及びVerbascoside標品の抗アレルギー活性(脱顆粒抑制活性)結果の比較を示し、表17は、Fr.6及びOleuropein aglycone標品の抗アレルギー活性(脱顆粒抑制活性)結果の比較を示し、表18は、Fr.7及びOleuropein aglycone標品の抗アレルギー活性(脱顆粒抑制活性)結果の比較を示し、表19は、Fr.8及びLuteolin標品の抗アレルギー活性(脱顆粒抑制活性)結果の比較を示し、表20は、Fr.9及びLuteolin標品の抗アレルギー活性(脱顆粒抑制活性)結果の比較を示す。表14の放出率60%のときのHydroxytyrosol濃度を見ると約3倍の違いがあるので、Fr.3の抗アレルギー活性が全てHydroxytyrosolによるものとは言えない。したがって、Fr.3にはHydroxytyrosol以外の抗アレルギー活性成分が含まれていると考えられた。表15及び16から、Verbascosideは低濃度(10、20μg/mLで放出率96%)で抗アレルギー活性を示さないはずであるのに、Fr.4、5(推定含有Verbascoside濃度10、20μg/mLで放出率55%、44%)では抗アレルギー活性を示していることから、Fr.4、5の主要抗アレルギー活性成分はVerbascoside以外の成分であると考えられた。表17及び18から、Oleuropein aglycone濃度と放出率との関係がフラクション状態とOleuropein aglycone単体の状態で一致していることから、Fr.6、7の抗アレルギー活性は、Oleuropein aglyconeによるものと言える。したがって、Fr.6、7の主要抗アレルギー活性成分はOleuropein aglyconeであると同定された。表19及び20から、Luteolin濃度と放出率との関係がフラクション状態とLuteolin単体の状態で一致していることから、Fr.8、9の抗アレルギー活性は、Luteolinによるものと言える。したがって、Fr.8、9の主要抗アレルギー活性成分はLuteolinであると同定された。表21に、ポメス含有成分のオリーブ果実中における含有量を示す。表21に示すとおり、Verbascoside、Hydroxytyrosol及びOleuropein aglyconeの含有量は、Luteolinと比べて極めて多かった。
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【0065】
(実施例2)
実施例1と同様にしてオリーブ果実から分離した3,4−DHPEA−EDAにつき、Oleuropein aglyconeとの抗アレルギー活性の比較を行った。その結果、3,4−DHPEA−EDAは、IC50=28.3μg/mLであり、Oleuropein aglycone(IC50=27.4μg/mL)と数字上はほぼ同程度であったが、比較試験を行うと、Oleuropein aglyconeよりも抗アレルギー活性がやや強かった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)で表わされる化合物、下記化学式(2)で表わされる化合物、下記化学式(3)で表わされる化合物及び下記化学式(4)で表わされる化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、又はそれらの塩を含むことを特徴とする抗アレルギー剤。
【化1】
化学式(1)において、
R11は、水素原子、アルキル基、アシル基、アリール基又はアラルキル基であり、2つのR11は同一でも異なっていてもよく、
R12は、水素原子又はアルキル基であり、
R13は、ヒドロキシ基、アルコキシ基又はオキソ基であり、
R15及びR16は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン基であり、3つのR15、及びR16は同一でも異なっていてもよく、
Lは、単結合であるか、又は存在せず、
Lが単結合の場合、R14は、酸素原子、硫黄原子又はN−R17(R17は、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン基)であり、
Lが存在しない場合、R14は、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アリールオキシ基又はアリールアルキルオキシ基であり、
Z1は、酸素原子、硫黄原子又はN−R18(R18は、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン基)であり、
m及びnは、それぞれ、正の整数である。
【化2】
化学式(2)において、
R21は、水素原子、アルキル基、アシル基、アリール基又はアラルキル基であり、2つのR21は同一でも異なっていてもよく、
R22は、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン基であり、3つのR22は同一でも異なっていてもよく、
pは、正の整数である。
【化3】
化学式(3)において、
R31〜R37は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アシル基、アリール基又はアラルキル基であり、2つのR31、2つのR32、及びR33〜R37は同一でも異なっていてもよく、
R38〜R40は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン基であり、3つのR38、3つのR39、及びR40は同一でも異なっていてもよく、
Z2〜Z4は、それぞれ、酸素原子、硫黄原子又はN−R41(R41は、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン基)であり、同一でも異なっていてもよく、
sは、正の整数である。
【化4】
化学式(4)において、
R42は、水素原子、アルキル基、アシル基、アリール基又はアラルキル基であり、2つのR42は同一でも異なっていてもよく、
R43は、水素原子又はアルキル基であり、
R44は、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン基であり、3つのR44は同一でも異なっていてもよく、
Z5は、酸素原子、硫黄原子又はN−R45(R45は、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン基)であり、
t及びuは、それぞれ、正の整数である。
【請求項2】
前記化学式(1)で表わされる化合物が、下記化学式(1−1)で表わされる化合物である請求項1記載の抗アレルギー剤。
【化5】
【請求項3】
前記化学式(2)で表わされる化合物が、下記化学式(2−1)で表わされる化合物である請求項1又は2記載の抗アレルギー剤。
【化6】
【請求項4】
前記化学式(3)で表わされる化合物が、下記化学式(3−1)で表わされる化合物である請求項1から3のいずれか一項に記載の抗アレルギー剤。
【化7】
【請求項5】
前記化学式(4)で表わされる化合物が、下記化学式(4−1)で表わされる化合物である請求項1から4のいずれか一項に記載の抗アレルギー剤。
【化8】
【請求項6】
前記化学式(1)で表わされる化合物、前記化学式(2)で表わされる化合物、前記化学式(3)で表わされる化合物及び前記化学式(4)で表わされる化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、又はそれらの塩が、オリーブ由来である請求項1から5のいずれか一項に記載の抗アレルギー剤。
【請求項7】
オリーブ残渣由来である請求項6記載の抗アレルギー剤。
【請求項8】
前記オリーブが、ミッション種、マンザニロ種及びルッカ種からなる群から選択される少なくとも一種である請求項6又は7記載の抗アレルギー剤。
【請求項1】
下記化学式(1)で表わされる化合物、下記化学式(2)で表わされる化合物、下記化学式(3)で表わされる化合物及び下記化学式(4)で表わされる化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、又はそれらの塩を含むことを特徴とする抗アレルギー剤。
【化1】
化学式(1)において、
R11は、水素原子、アルキル基、アシル基、アリール基又はアラルキル基であり、2つのR11は同一でも異なっていてもよく、
R12は、水素原子又はアルキル基であり、
R13は、ヒドロキシ基、アルコキシ基又はオキソ基であり、
R15及びR16は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン基であり、3つのR15、及びR16は同一でも異なっていてもよく、
Lは、単結合であるか、又は存在せず、
Lが単結合の場合、R14は、酸素原子、硫黄原子又はN−R17(R17は、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン基)であり、
Lが存在しない場合、R14は、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アリールオキシ基又はアリールアルキルオキシ基であり、
Z1は、酸素原子、硫黄原子又はN−R18(R18は、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン基)であり、
m及びnは、それぞれ、正の整数である。
【化2】
化学式(2)において、
R21は、水素原子、アルキル基、アシル基、アリール基又はアラルキル基であり、2つのR21は同一でも異なっていてもよく、
R22は、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン基であり、3つのR22は同一でも異なっていてもよく、
pは、正の整数である。
【化3】
化学式(3)において、
R31〜R37は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アシル基、アリール基又はアラルキル基であり、2つのR31、2つのR32、及びR33〜R37は同一でも異なっていてもよく、
R38〜R40は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン基であり、3つのR38、3つのR39、及びR40は同一でも異なっていてもよく、
Z2〜Z4は、それぞれ、酸素原子、硫黄原子又はN−R41(R41は、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン基)であり、同一でも異なっていてもよく、
sは、正の整数である。
【化4】
化学式(4)において、
R42は、水素原子、アルキル基、アシル基、アリール基又はアラルキル基であり、2つのR42は同一でも異なっていてもよく、
R43は、水素原子又はアルキル基であり、
R44は、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン基であり、3つのR44は同一でも異なっていてもよく、
Z5は、酸素原子、硫黄原子又はN−R45(R45は、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン基)であり、
t及びuは、それぞれ、正の整数である。
【請求項2】
前記化学式(1)で表わされる化合物が、下記化学式(1−1)で表わされる化合物である請求項1記載の抗アレルギー剤。
【化5】
【請求項3】
前記化学式(2)で表わされる化合物が、下記化学式(2−1)で表わされる化合物である請求項1又は2記載の抗アレルギー剤。
【化6】
【請求項4】
前記化学式(3)で表わされる化合物が、下記化学式(3−1)で表わされる化合物である請求項1から3のいずれか一項に記載の抗アレルギー剤。
【化7】
【請求項5】
前記化学式(4)で表わされる化合物が、下記化学式(4−1)で表わされる化合物である請求項1から4のいずれか一項に記載の抗アレルギー剤。
【化8】
【請求項6】
前記化学式(1)で表わされる化合物、前記化学式(2)で表わされる化合物、前記化学式(3)で表わされる化合物及び前記化学式(4)で表わされる化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、又はそれらの塩が、オリーブ由来である請求項1から5のいずれか一項に記載の抗アレルギー剤。
【請求項7】
オリーブ残渣由来である請求項6記載の抗アレルギー剤。
【請求項8】
前記オリーブが、ミッション種、マンザニロ種及びルッカ種からなる群から選択される少なくとも一種である請求項6又は7記載の抗アレルギー剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図50】
【図51】
【図66】
【図67】
【図68】
【図69】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図2】
【図3】
【図50】
【図51】
【図66】
【図67】
【図68】
【図69】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
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【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【公開番号】特開2012−229204(P2012−229204A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−84852(P2012−84852)
【出願日】平成24年4月3日(2012.4.3)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月3日(2012.4.3)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【Fターム(参考)】
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