説明

抗ウイルス性複素環化合物

式A−R(式中、Aはヘテロアリールであり、RはIa、Ib又はIcであり、ここでA、R、R、R2a、R2b、R2c、R3a、R3b、R、R、R、R、R、R、R、X、X、X及びnは本明細書で定義されるとおりである)で示される化合物は、C型肝炎ウイルスNS5bポリメラーゼ阻害剤である。また、HCV感染症を処置し、且つ、HCV複製を阻害するための、組成物及び方法が開示される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RNA依存性RNAウイルスポリメラーゼの阻害剤である、式A−Rで示される非ヌクレオシド化合物及びその特定の誘導体を提供する。これらの化合物は、RNA依存性RNAウイルス感染症の処置に有用である。これらは、C型肝炎ウイルス(HCV)NS5Bポリメラーゼの阻害剤として、HCV複製の阻害剤として、そしてC型肝炎感染症の処置に特に有用である。
【0002】
C型肝炎ウイルスは、全世界における慢性肝臓疾患の主要原因である(Boyer, N. et al., J. Hepatol. 2000 32:98-112)。HCV感染症患者は、肝臓において肝硬変、その後の肝細胞癌を発症するリスクがあり、そのため、HCVは、肝移植の主な指標となる。
【0003】
HCVは、フラビウイルス属、ペスチウイルス属、及びC型肝炎ウイルスなどのヘパシウイルス属を含むフラビウイルス科ウイルスファミリーのメンバーとして分類されている(Rice, C. M., Flaviviridae: The viruses and their replication. In: Fields Virology, Editors: B. N. Fields, D. M. Knipe and P. M. Howley, Lippincott-Raven Publishers, Philadelphia, Pa., Chapter 30, 931-959, 1996)。HCVは、約9.4kbのプラスセンス一本鎖RNAゲノムを含有するエンベロ−プウイルスである。ウイルスゲノムは、高度に保存された5’非翻訳領域(UTR)、約3011アミノ酸のポリタンパク質前駆体をコードする長いオープンリーディングフレーム、及び短い3’UTRから構成される。
【0004】
HCVの遺伝子解析により、DNA配列の30%以上が相違する6種の主要な遺伝子型が同定された。30種以上のサブタイプが分類されている。米国では、感染個体の約70%が、1a型及び1b型感染症である。1b型は、アジアで最も一般的なサブタイプである(X. Forns and J. Bukh, Clinics in Liver Disease 1999 3:693-716; J. Bukh et al., Semin. Liv. Dis. 1995 15:41-63)。残念ながら、1型感染症は、2型又は3型遺伝子型よりも治療に対して耐性が高い(N. N. Zein, Clin. Microbiol. Rev., 2000 13:223-235)。
【0005】
ウイルス構造タンパク質は、ヌクレオカプシドコアタンパク質(C)並びに2個のエンベロープ糖タンパク質であるE1及びE2を含有する。HCVは、また、2個のプロテアーゼである、NS2−NS3領域によりコードされている亜鉛依存性メタロプロテイナーゼ及びNS3領域によりコードされているセリンプロテアーゼをコードする。これらのプロテアーゼは、前駆体ポリタンパク質の特定領域を開裂して成熟ペプチドにするために必要とされる。非構造タンパク質5のカルボキシ半分であるNS5Bは、RNA依存性RNAポリメラーゼを含有する。残りの非構造タンパク質であるNS4A及びNS4B、及びNS5A(非構造タンパク質5のアミノ末端半分)の機能は、未だに分かっていない。HCV RNAゲノムによりコードされている非構造タンパク質の多くが、RNA複製に関与していると考えられている。
【0006】
現在、限られた承認治療法がHCV感染症の処置に利用可能である。HCV感染症を処置し、且つ、HCV NS5Bポリメラーゼ活性を阻害する新規な及び既存の治療アプローチが以下に概説されている:R. G. Gish, Sem. Liver. Dis., 1999 19:5; Di Besceglie, A. M. and Bacon, B. R., Scientific American, October: 1999 80-85; G. Lake-Bakaar, Current and Future Therapy for Chronic Hepatitis C Virus Liver Disease, Curr. Drug Targ. Infect Dis. 2003 3(3):247-253; P. Hoffmann et al., Recent patent on experimental therapy for hepatitis C virus infection (1999-2002), Exp. Opin. Ther. Patents 2003 13(11):1707-1723; M. P. Walker et al., Promising Candidates for the treatment of chronic hepatitis C, Exp. Opin. Investing. Drugs 2003 12(8):1269-1280; S.-L. Tan et al., Hepatitis C Therapeutics: Current Status and Emerging Strategies, Nature Rev. Drug Discov. 2002 1:867-881; J. Z. Wu and Z. Hong, Targeting NS5B RNA-Dependent RNA Polymerase for Anti-HCV Chemotherapy, Curr. Drug Targ. - Infect. Dis. 2003 3(3):207-219。
【0007】
リバビリン(1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−ヒドロキシメチル−テトラヒドロ−フラン−2−イル)−1H−[1,2,4]トリアゾール−3−カルボン酸アミド;ビラゾール(登録商標))は、合成された非インターフェロン誘導性の広域スペクトル抗ウイルスヌクレオシドアナログである。リバビリンは、フラビウイルス科などの数種類のDNA及びRNAウイルスに対してin vitro活性を示す(Gary L. Davis. Gastroenterology 2000 118:S104-S114)。単剤療法においては、リバビリンは、患者の40%で血清アミノトランスフェラーゼレベルを正常値まで減少させるが、HCV−RNAの血清レベルは低下させない。リバビリンは、また、有意な毒性を示し、貧血を誘起することが知られている。ビラミジンは、肝細胞において、アデノシンデアミナーゼによりリバビリンに変換されるリバビリンプロドラッグである(J. Z. Wu, Antivir. Chem. Chemother. 2006 17(1):33-9)。
【0008】
インターフェロン(IFN)は、最近約10年間、慢性肝炎の処置に利用されている。IFNは、ウイルス感染に応答して免疫細胞により産生される糖タンパク質である。2種の異なるタイプのインターフェロンが認知されている:1型は、数種類のインターフェロンα及び1種のインターフェロンβを包含し、2型は、インターフェロンγを包含する。1型インターフェロンは、主に感染細胞により産生され、新たな感染から隣接細胞を保護する。IFNは、HCVなどの多くのウイルスのウイルス複製を阻害し、C型肝炎感染症に単剤処置として使用される場合、IFNは、血清HCV−RNAを検出不可能なレベルまで抑制する。さらに、IFNは、血清アミノトランスフェラーゼレベルを正常化する。残念ながら、IFNの効果は一時的である。治療の停止は70%の再発率をもたらし、わずか10〜15%において、血清のアラニントランスフェラーゼレベルが正常となり、持続的ウイルス陰性化を示す(Davis, Luke-Bakaar, 上記)。
【0009】
従来のIFN治療の制限の一つは、血中から当該タンパク質が急速に除去されることであった。IFNをポリエチレングリコール(PEG)で化学誘導化することにより、薬物動態学的特性が大幅に改善されたタンパク質が得られる。PEGASYS(登録商標)は、インターフェロンα−2aと40kD分岐モノメトキシPEGとのコンジュゲートであり、PEG−INTRON(登録商標)は、インターフェロンα−2bと12kDモノメトキシPEGとのコンジュゲートである(B. A. Luxon et al., Clin. Therap. 2002 24(9): 13631383; A. Kozlowski and J. M. Harris, J. Control. Release 2001 72:217-224)。
【0010】
リバビリンとインターフェロン−αを用いたHCVの併用療法が、現在のHCVの最適な治療法である。リバビリンとPEG−IFN(下記)の併用が、1型HCV患者の54〜56%で持続的ウイルス陰性化(SVR)をもたらす。2型及び3型HCVの場合では、SVRは80%に達する(Walker, 上記)。残念なことに、併用療法は、また、臨床的な問題を引き起こす副作用を生じる。鬱状態、インフルエンザ様症状及び皮膚反応が皮下IFN−αに付随し、そして溶血性貧血が持続的なリバビリン処置に付随する。
【0011】
現在、抗HCV治療薬として用いられる薬物開発のための、数多くの可能性のある分子標的が同定されており、これには、NS2−NS3自己プロテアーゼ、NS3プロテアーゼ、NS3ヘリカーゼ及びNS5Bポリメラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。RNA依存性RNAポリメラーゼは、一本鎖のプラスセンスRNAゲノムの複製に必要不可欠である。この酵素は、医薬品化学者の間で高い関心が持たれている。
【0012】
ヌクレオシド阻害剤は、ヌクレオチドとポリメラーゼとの結合を妨げる連鎖停止剤又は拮抗阻害剤として作用することができる。連鎖停止剤として機能するために、ヌクレオシドアナログはin vivoで細胞により取り込まれる必要があり、且つ、in vivoでその三リン酸型に変換され、ポリメラーゼヌクレオチド結合部位で基質として競合する必要がある。この三リン酸への変換は、通常、細胞キナーゼにより媒介されて、任意のヌクレオシドに対してさらなる構造的制限が付与される。さらに、リン酸化についてのこの要件は、細胞ベースアッセイのためのHCV複製阻害剤として、ヌクレオシドを直接評価することを制限している(J. A. Martin et al., U.S. Patent No. 6,846,810; C. Pierra et al., J. Med. Chem. 2006 49(22):6614-6620; J. W. Tomassini et al., Antimicrob. Agents and Chemother. 2005 49(5):2050; J. L. Clark et al., J. Med. Chem. 2005 48(17):2005)。
【0013】
本発明の化合物及びその異性体並びに製薬的に許容しうるその塩は、また、互いに併用した場合及び非限定的にインターフェロン、ペグ化インターフェロン、リバビリン、プロテアーゼ阻害剤、ポリメラーゼ阻害剤、低分子干渉RNA化合物、アンチセンス化合物、ヌクレオチドアナログ、ヌクレオシドアナログ、免疫グロブリン、免疫調節剤、肝保護剤、抗炎症性薬剤、抗生物質、抗ウイルス剤及び抗感染化合物からなる群を含む他の生物学的に活性な薬剤と併用した場合に、生きた宿主におけるウイルス感染症、特に、C型肝炎感染症及び疾患の治療及び予防に有用である。このような併用療法は、また、本発明の化合物を他の医薬用薬剤又は増強剤、例えば、リバビリン及び関連化合物、アマンタジン及び関連化合物、例えば、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γなどの様々なインターフェロン、並びにペグ化インターフェロンなどの他の形態のインターフェロンと同時に又は連続的に提供することを含むことができる。さらに、リバビリンとインターフェロンの組み合わせを、少なくとも1つの本発明の化合物との追加の併用療法として投与することができる。
【0014】
現在開発中の他のインターフェロンには、アルブインターフェロン−α−2b(アルブフェロン)、DUROSと組み合わせたIFN−ω、ロクテロン(商標)及びインターフェロン−α−2b XLなどが挙げられる。これらの及び他のインターフェロンが販売されると、それらを本発明の化合物との併用療法で使用することが予想される。
【0015】
HCVポリメラーゼ阻害剤は、創薬の他の標的であり、そして開発中の化合物には、R−1626、R−7128、IDX184/IDX102、PF−868554(Pfizer)、VCH−759(ViroChem)、GS−9190(Gilead)、A−837093及びA−848837(Abbot)、MK−3281(Merck)、GSK949614及びGSK625433(Glaxo)、ANA598(Anadys)、VBY708(ViroBay)が挙げられる。
【0016】
HCV NS3プロテアーゼの阻害剤は、また、HCVの処置に有用である可能性があると確認された。臨床試験中のプロテアーゼ阻害剤には、VX−950(Telaprevir, Vertex)、SCH503034(Broceprevir, Schering)、TMC435350(Tibotec/Medivir)及びITMN−191(Intermune)が挙げられる。開発初期段階の他のプロテアーゼ阻害剤には、MK7009(Merck)、BMS−790052(Bristol Myers Squibb)、VBY−376(Virobay)、IDXSCA/IDXSCB(Idenix)、BI12202(Boehringer)、VX−500(Vertex)、PHX1766(Phenomix)が挙げられる。
【0017】
抗HCV療法についての試験中の他の標的には、RNAとNS5bとの結合を阻害するサイクロフィリン阻害剤、ニタゾキサニド、Celgosivir(Migenix)、α−グルコシダーゼ−1の阻害剤、カスパーゼ阻害剤、Toll様レセプターアゴニスト及びZadaxin(SciClone)などの免疫刺激剤が挙げられる。
【0018】
現在、C型肝炎ウイルス(HCV)の予防的治療法はなく、HCVに対してのみ存在する現在承認されている治療法には制限がある。新規の医薬品の設計及び開発が必要である。
【0019】
本発明は、式A−R:
[式中、
Aは、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル、3−オキソ−3,4−ジヒドロ−ピラジン−2−イル、3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ピリダジン−4−イル、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリミジン−4−オン−5−イル及び6−オキソ−1,6−ジヒドロ−[1,2,4]トリアジン−5−イルからなる群から選択されるヘテロアリール基であり、前記ヘテロアリールは、ハロゲン、C1−6アルキル、C1−3ハロアルキル又はC1−6アルコキシで場合により置換されており;
Rは、Ia、Ib又はIcであり;
【化1】


Xは、NR又はOであり;
XがOである場合、X及びXは、一緒になってオキソであるか、又はX及びXの一方がOH若しくはC1−3アルコキシであり、X及びXの他方が水素であり;あるいは、XがNRである場合、X及びXは、一緒になってオキソであり;
3aは水素であり、R3bはCHArであるか、又はR3a及びR3bは、一緒になって=CHArであり;
Arは、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、ハロゲン、シアノ、CO、CONR、C1−3アシルアミノ、(CHNR、(CHCONR、(CHSONR及び−O(CHCONRからなる群から選択される1〜3個の置換基で場合により独立して置換されているフェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル又はピリダジニルであり;
及びRは、独立して水素、C1−6アルキル、C1−6アシル、C1−6アルキルスルホニル、C1−6ハロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル−スルホニル若しくはC1−6アルコキシ−C1−6アルキルスルホニル、SO(CHNR、カルバモイル、C1−3アルキルカルバモイル、C1−3ジアルキルカルバモイル又はベンゾイルであり、前記ベンゾイルは、アミノ、ハロゲン、C1−6アルキル又はC1−3アルキルスルホニルアミドからなる群から選択される1又は2個の基で場合により独立して置換されており;
及びRは、独立して水素、C1−6アルキル、C1−6アシル又は環状アミンであり;
は、水素、C1−6アルキルオキシ若しくはC1−6ハロアルキルオキシであるか、又はR及びR2aは、一緒になってCH−Oであり、そしてこれらが結合する原子と一緒になって、2,3−ジヒドロベンゾフランを形成し;
は、水素であるか、又はR及びR2aは、一緒になってCH−Oであり、そしてこれらが結合する原子と一緒になって、2,3−ジヒドロベンゾフランを形成し;
は、水素又はC1−6アルキルであり;
は、水素、C1−6アルキル、C1−6ハロアルキル、C1−3アルコキシ−C1−3アルキル又は場合により置換されているベンジルであり;
2a、R2b及びR2cは、(i)独立している場合、C1−3アルキル、C1−2アルコキシ、ハロゲン又はC1−2フルオロアルキルから独立して選択されるか、又は
(ii)一緒になる場合、R2a及びR2bは、一緒になってC2−4メチレンであり、R2cは、C1−3アルキル、C1−2アルコキシ、ハロゲン、シアノ、カルボキシル又はC1−2フルオロアルキルであるか;あるいは
(iii)R又はRのいずれかとR2aとが、一緒になってCH−Oであり、そしてこれらが結合する原子と一緒になって、2,3−ジヒドロ−ベンゾフランを形成し、R2b及びR2cはC1−3アルキルであり;
nは、各々出現ごとに独立して、0〜3の整数である]
に記載の化合物又は製薬的に許容しうるその塩を提供する。
【0020】
本発明は、また、式A−Rに記載の化合物の治療有効量を、それを必要とする患者に投与することにより、C型肝炎ウイルス(HCV)のウイルス感染症を処置する方法を提供する。本化合物は、単独で投与又は他の抗ウイルス化合物若しくは免疫調節剤と同時に投与することができる。
【0021】
本発明は、また、式A−Rに記載の化合物を、HCVを阻害する有効量で投与することにより、細胞におけるHCVの複製を阻害する方法を提供する。
【0022】
本発明は、また、式A−Rに記載の化合物及び少なくとも一つの製薬的に許容しうる担体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0023】
本明細書で使用される語句「a」又は「an」の実体は、その実体の一つ以上を指し、例えば、「a」化合物は、一つ以上の化合物又は少なくとも一つの化合物を指す。そのようなものとして、用語「a」(又は「an」)、「一つ以上の」、及び「少なくとも一つの」は、本明細書において互換的に使用することができる。
【0024】
語句「本明細書上記で定義される」は、本発明の概要又は最も広い特許請求の範囲で提供されるような各基に対する最も広い定義を指す。以下に提供されるその他の全ての実施態様において、各実施態様で存在することができ、且つ、明確に定義されない置換基は、本発明の概要で提供される最も広い定義を保持する。
【0025】
本明細書で使用されるように、請求項の移行句で用いられるか請求項の本体で用いられるかに関わらず、用語「含む(comprise)」及び「含む(comprising)」は、非制限的な意味を有すると解釈される。即ち、前記用語は、語句「少なくとも有する(having at least)」又は「少なくとも含有する(including at least)」と同意義として解釈される。プロセスに関して使用される場合、用語「含む(comprising)」は、プロセスが少なくとも列挙された工程を含むが、追加の工程を含んでいてもよいことを意味する。化合物又は組成物に関して使用される場合、用語「含む(comprising)」は、化合物又は組成物が少なくとも列挙された特徴又は要素を含むが、また、追加の特徴又は要素を含んでいてもよいことを意味する。
【0026】
用語「独立して(independently)」は、本明細書において、可変部が、同じ化合物内で同じ又は異なる定義を有する可変部の存在又は不在に関わらず、任意のある場合において適用されることを示すように使用される。従って、R”が2回出現し、「独立して炭素又は窒素」として定義される化合物において、両方のR”が炭素であることができ、両方のR”が窒素であることができ、又はR”の一方が炭素で他方が窒素であることができる。
【0027】
本発明で用いられる又は請求される化合物を表示又は記載する任意の部分又は式において、任意の可変部(例えば、R、R4a、Ar、X又はHet)が2回以上出現する場合、各出現におけるその定義は、他の出現ごとのその定義とは独立している。また、置換基及び/又は可変部の組み合わせは、このような化合物が安定な化合物を生じる場合においてのみ許容される。
【0028】
結合の末端の記号「*」又は結合を通って描かれる「---」のそれぞれは、官能基又は他の化学部分が、その一部である分子の残りの部分へ結合する点を指す。従って、例えば:
【化2】


である。
【0029】
環系内に向かって描かれる結合(明確に頂点に結合する場合に反して)は、結合が適切な環原子のいずれかに結合することができることを示す。
【0030】
本明細書で使用される用語「場合による(optional)」又は「場合により(optionally)」は、その後に続いて記載された事象または状況が起こってもよいが、起こる必要はないこと、およびその記載がその事象または状況が起こる場合の例と、起こらない場合の例とを含むことを意味する。例えば、「場合により置換されている(optionally substituted)」は、場合により置換されている部分が、水素又は置換基を含有することができることを意味する。
【0031】
本明細書で使用される用語「約(about)」は、ほぼ、辺り、おおよそ又は前後を意味する。用語「約(about)」が数値範囲に関して使用される場合、記載の数値の上限及び下限を延長することによって範囲を変更する。一般的に、用語「約(about)」は、本明細書において記載の数値の上下で20%の変動だけ数値を変更するために使用される。
【0032】
本明細書で使用されるように、可変部についての数値範囲の記述は、本発明がその範囲内の値のいずれかと等価な可変部で実施することができることを表すことを意図する。従って、可変部が本質的に不連続である場合、その可変部は、範囲の終点を含む数値範囲の任意の整数値と等価であることができる。同様に、可変部が本質的に連続である場合、その可変部は、範囲の終点を含む数値範囲の任意の実数値と等価であることができる。例として、0〜2の値を有するように記載される可変部は、可変部が本質的に不連続である場合、0、1又は2であることができ、可変部が本質的に連続である場合、0.0、0.1、0.01、0.001又は他の任意の実数値であることができる。
【0033】
式A−Rで示される化合物は互変異性を示す。互変異性化合物は、2個以上の相互変換可能な種で存在することができる。プロトトロピック互変異性体は、二つの原子間における共有結合した水素原子の移動により生成する。一般的に、互変異性体は平衡状態で存在し、個々の互変異性体を単離しようとすると、通常、化学的及び物理的性質が化合物の混合物と一致する混合物を生成する。平衡の位置は、分子の化学的特徴に依存している。例えば、アセトアルデヒドなどの多くの脂肪族アルデヒド及びケトンでは、ケト型が優位であり;フェノールでは、エノール型が優位である。通常のプロトトロピック互変異性体には、ケト/エノール(−C(=O)−CH−⇔−C(−OH)=CH−)、アミド/イミド酸(−C(=O)−NH−⇔−C(−OH)=N−)及びアミジン(−C(=NR)−NH−⇔−C(−NHR)=N−)互変異性体が挙げられる。後者の2つは、特に、ヘテロアリール及び複素環で一般的であり、本発明は化合物の全ての互変異性体を包含する。
【0034】
式A−Rで示されるいくつかの化合物が、1個以上のキラル中心を含有することができ、それによって、2個以上の立体異性体で存在することができることが当業者には明らかであろう。これらの異性体のラセミ体、個々の異性体及び1個のエナンチオマーが多く含まれた混合物、並びに2つのキラル中心が存在する場合のジアステレオマー及び特定のジアステレオマーが部分的に多く含まれた混合物が本発明の範囲に含まれる。さらに、トロパン環の置換がエンド又はエキソのいずれかの立体配置をとることができ、本発明がその両方の立体配置を包含することが当業者には明らかとなるであろう。本発明には、式A−Rで示される化合物の全ての個々の立体異性体(例えば、エナンチオマー)、ラセミ混合物又は部分的に分割した混合物、必要に応じて、その個々の互変異性体を含有する。
【0035】
ラセミ体をそのままで使用することができ、あるいはその個々の異性体に分割することができる。分割することにより、立体化学的に純粋な化合物又は1個以上の異性体が多く含まれた混合物を得ることができる。異性体の分離方法は公知であり(Allinger N. L. and Eliel E. L. in 「Topics in Stereochemistry」, Vol. 6, Wiley Interscience, 1971を参照)、キラル吸着剤を用いたクロマトグラフィーなどの物理的方法が挙げられる。個々の異性体をキラル前駆体からキラル型で調製することができる。あるいは、他の異性体を実質的に含有しない、即ち、光学純度が>95%である形態で、いずれか又は両方を得るために、個々の異性体を、例えば、10−カンファースルホン酸、ショウノウ酸、α−ブロモショウノウ酸、酒石酸、ジアセチル酒石酸、リンゴ酸、ピロリドン−5−カルボン酸などの個々のエナンチオマーのキラル酸とジアステレオマー塩を形成させ、その塩を分別結晶し、そして分割した塩基の一つ又は両方を遊離させることにより、場合により、このプロセスを繰り返すことにより混合物から化学的に分離することができる。あるいは、ラセミ体を、キラル化合物(補助剤)に共有結合させてジアステレオマーを生成し、これをクロマトグラフィー又は分別結晶により分離し、その後、キラル補助剤を化学的に除去して純粋なエナンチオマーを得ることができる。
【0036】
式Iで示される化合物は塩基性中心を含有することができ、適切な酸付加塩は非毒性塩を形成する酸から形成される。無機酸の塩の例には、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、硫酸塩、重硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩が挙げられる。有機酸の塩の例には、酢酸塩、フマル酸塩、パモ酸塩、アスパラギン酸塩、ベシル酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、カンシル酸塩、D及びL−乳酸塩、D及びL−酒石酸塩、エシル酸塩、メシル酸塩、マロン酸塩、オロチン酸塩、グルセプト酸塩、メチル硫酸塩、ステアリン酸塩、グルクロン酸塩、2−ナプシル酸塩、トシル酸塩、ヒベンズ酸塩、ニコチン酸塩、イセチオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、コハク酸塩、サッカリン酸塩、安息香酸塩、エシル酸塩及びパモ酸塩が挙げられる。適切な塩の説明は、Berge et al, J. Pharm. Sci., 1977 66:1-19 and G. S. Paulekuhn et al. J. Med. Chem. 2007 50:6665を参照されたい。
【0037】
本明細書で使用される技術及び科学用語は、特に規定しない限り、本発明に関連する当業者に一般的に理解される意味を有する。本明細書においては、当業者に公知の様々な方法及び材料を参照する。薬理学の一般原則を記載する標準的な参考文献には、Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, 10th Ed., McGraw Hill Companies Inc., New York (2001)が挙げられる。通常、これらの化合物の調製に使用する出発物質及び試薬は、Aldrich Chemical Co.などの販売業者から入手可能であるか、あるいは参考文献に記載の手順に従って当業者に公知の方法により調製される。以下の記述及び実施例で参照される材料、試薬などは、特に断りのない限り、販売業者から入手することができる。一般的な合成手順は、Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis; Wiley & Sons: New York, Volumes 1-21; R. C. LaRock, Comprehensive Organic Transformations, 2nd edition Wiley-VCH, New York 1999; Comprehensive Organic Synthesis, B. Trost and I. Fleming (Eds.) vol. 1-9 Pergamon, Oxford, 1991; Comprehensive Heterocyclic Chemistry, A. R. Katritzky and C. W. Rees (Eds) Pergamon, Oxford 1984, vol. 1-9; Comprehensive Heterocyclic Chemistry II, A. R. Katritzky and C. W. Rees (Eds) Pergamon, Oxford 1996, vol. 1-11;及びOrganic Reactions, Wiley & Sons: New York, 1991, Volumes 1-40などの論文に記載されており、これは当業者によく知られているだろう。
【0038】
本発明の一実施態様においては、式I(A、R、R、R2a、R2b、R2c、R3a、R3b、R、R、R、R、R、R、R、X、X、X及びnは、本明細書上記で定義されているとおりである)に記載の化合物が提供される。以下に提供される他の全ての実施態様においては、各実施態様に存在することができ、且つ、明確に限定されない置換基は、上記で提供された最も広い定義を保持する。
【0039】
好ましくは、R2a、R2b及びR2cが、(i)独立している場合、C1−3アルキル、C1−2アルコキシ又はC1−2フルオロアルキルから独立して選択されるか、又は、
(ii)一緒になる場合、R2a及びR2bが、一緒になってC2−4メチレンであり、R2cが、C1−3アルキル、C1−2アルコキシ、ハロゲン又はC1−2フルオロアルキルであるか;あるいは、
(iii)R又はRのいずれかとR2aとが、一緒になってCH−Oであり、そしてこれらが結合する原子と一緒になって、2,3−ジヒドロ−ベンゾフランを形成し、R2b及びR2cがC1−3アルキルである、本発明の化合物である。
【0040】
本発明の第二の実施態様においては、Aが、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イルであり、RがIaであり、XがNR又はOであり、X及びXが、一緒になってオキソであり、Arが、場合により置換されているフェニルであり、R2a、R2b、R2cの各々がメチルである、式Iに記載の化合物が提供される。
【0041】
本発明の別の実施態様においては、Aが、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イルであり、RがIaであり、XがNR又はOであり、X及びXが、一緒になってオキソであり、Arが、場合により置換されているフェニルであり、R及びR2aが、一緒になってCH−Oであり、そしてこれらが結合する原子と一緒になって、2,3−ジヒドロ−ベンゾフランを形成し、R2b及びR2cがC1−3アルキル、好ましくはメチルである、式Iに記載の化合物が提供される。
【0042】
好ましくは、Arが、少なくとも(CHNRにより置換されている(式中、Rは、C1−6アシル、C1−6アルキルスルホニル、C1−6ハロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル−スルホニル又はC1−6アルコキシ−C1−6アルキルスルホニル、特に、アルキルスルホニルであり、Rは水素であり、nは0である)、化合物である。
【0043】
本発明のさらに別の実施態様においては、Aが、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イルであり、RがIaであり、XがNR又はOであり、X及びXが、一緒になってオキソであり、Arが、場合により置換されているフェニルであり、R及びR2aが、一緒になってCH−Oであり、そしてこれらが結合する原子と一緒になって、2,3−ジヒドロ−ベンゾフランを形成し、R2b及びR2cがC1−3アルキルである、式Iに記載の化合物が提供される。
【0044】
本発明のなおさらに別の実施態様においては、Aが、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イルであり、RがIaであり、XがNR又はOであり、X及びXが、一緒になってオキソであり、Arが、場合により置換されているフェニルであり、R2a及びR2bが、一緒になってエチレンであり、R2cが、C1−3アルキル、ハロゲン又はC1−2フルオロアルキルである、式Iに記載の化合物が提供される。
【0045】
本発明の第三の実施態様においては、Aが、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イルであり、RがIaであり、XがNR又はOであり、X及びXが、一緒になってオキソであり、Arが、少なくとも(CHNRで置換されているフェニルであり(式中、Rは、C1−6アシル、C1−6アルキルスルホニル、C1−6ハロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル−スルホニル又はC1−6アルコキシ−C1−6アルキルスルホニルであり、Rは水素であり、nは0である)、R2a、R2b、R2cの各々がメチルである、式Iに記載の化合物が提供される。
【0046】
本発明の第四の実施態様においては、Aが、3−オキソ−3,4−ジヒドロ−ピラジン−2−イルであり、RがIaであり、XがNR又はOであり、X及びXが、一緒になってオキソであり、Arが、少なくとも(CHNR(式中、Rは、C1−6アシル、C1−6アルキルスルホニル、C1−6ハロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル−スルホニル又はC1−6アルコキシ−C1−6アルキルスルホニルであり、Rは水素であり、nは0である)で置換されているフェニルであり、R2a、R2b、R2cの各々がメチルである、式Iに記載の化合物が提供される。
【0047】
本発明の第五の実施態様においては、Aが、3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ピリダジン−4−イルであり、RがIaであり、XがNR又はOであり、X及びXが、一緒になってオキソであり、Arが、少なくとも(CHNR(式中、Rは、C1−6アシル、C1−6アルキルスルホニル、C1−6ハロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル−スルホニル又はC1−6アルコキシ−C1−6アルキルスルホニルであり、Rは水素であり、nは0である)で置換されているフェニルであり、R2a、R2b、R2cの各々がメチルである、式Iに記載の化合物が提供される。
【0048】
本発明の第六の実施態様においては、Aが、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イルであり、RがIbである、式Iに記載の化合物が提供される。
【0049】
本発明の第七の実施態様においては、Aが、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イルであり、RがIbであり、Arが、場合により置換されているフェニルであり、R2a、R2b、R2cの各々がメチルである、式Iに記載の化合物が提供される。
【0050】
本発明の第八の実施態様においては、Aが、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イルであり、RがIbであり、Arが、少なくとも(CHNR(式中、Rは、C1−6アシル、C1−6アルキルスルホニル、C1−6ハロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル−スルホニル又はC1−6アルコキシ−C1−6アルキルスルホニルであり、Rは水素であり、nは0である)で置換されているフェニルであり、R2a、R2b、R2cの各々がメチルである、式Iに記載の化合物が提供される。
【0051】
本発明の第九の実施態様においては、Aが、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イルであり、RがIcである、式Iに記載の化合物が提供される。
【0052】
本発明の第十の実施態様においては、Aが、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イルであり、RがIcであり、R3aが水素であり、R3bがCHArであり、Arが、場合により置換されているフェニルであり、R2a、R2b、R2cの各々がメチルである、式Iに記載の化合物が提供される。
【0053】
本発明の第十一の実施態様においては、Aが、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イルであり、RがIcであり、R3aが水素であり、R3bがCHArであり、Arが、少なくとも(CHNR(式中、Rは、C1−6アシル、C1−6アルキルスルホニル、C1−6ハロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル−スルホニル又はC1−6アルコキシ−C1−6アルキルスルホニルであり、Rは水素であり、nは0である)で置換されているフェニルであり、R2a、R2b、R2cの各々がメチルである、式Iに記載の化合物が提供される。
【0054】
本発明の第十二の実施態様においては、Aが、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イルであり、RがIcであり、R3a及びR3bが、一緒になって=CHArであり、Arが、場合により置換されているフェニルであり、R2a、R2b、R2cがメチルである、式Iに記載の化合物が提供される。
【0055】
本発明の第十三の実施態様においては、Aが、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イルであり、RがIcであり、R3a及びR3bが、一緒になって=CHArであり、Arが、少なくとも(CHNR(式中、Rは、C1−6アシル、C1−6アルキルスルホニル、C1−6ハロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル−スルホニル又はC1−6アルコキシ−C1−6アルキルスルホニルであり、Rは水素であり、nは0である)で置換されているフェニルであり、R2a、R2b、R2cがメチルである、式Iに記載の化合物が提供される。
【0056】
本発明の第十四の実施態様においては、表Iの化合物I−1〜I−18から選択される、式Iに記載の化合物が提供される。
【0057】
本発明の第十五の実施態様においては、それを必要とする患者におけるHCV感染症を処置する方法であって、式A−R(式中、A、R、R、R2a、R2b、R2c、R3a、R3b、R、R、R、R、R、R、R、X、X、X及びnは、本明細書上記で定義されているとおりである)に記載の化合物の治療有効量を投与することを含む方法が提供される。
【0058】
本発明の第十六の実施態様においては、それを必要とする患者におけるHCV感染症を処置する方法であって、式A−R(式中、A、R、R、R2a、R2b、R2c、R3a、R3b、R、R、R、R、R、R、R、X、X、X及びnは、本明細書上記で定義されているとおりである)に記載の化合物の治療有効量と、HCVの複製を阻害する少なくとも一つの免疫系モジュレーター及び/又は少なくとも一つの抗ウイルス剤を同時投与することを含む方法が提供される。
【0059】
本発明の第十七の実施態様においては、それを必要とする患者におけるHCVにより引き起こされる疾患を処置する方法であって、式A−R(式中、A、R、R、R2a、R2b、R2c、R3a、R3b、R、R、R、R、R、R、R、X、X、X及びnは、本明細書上記で定義されているとおりである)に記載の化合物の治療有効量と、インターフェロン、インターロイキン、腫瘍壊死因子又はコロニー刺激因子から選択される少なくとも一つの免疫系モジュレーターを同時投与することを含む方法が提供される。
【0060】
本発明の第十八の実施態様においては、それを必要とする患者におけるHCV感染症を処置する方法であって、式A−R(式中、A、R、R、R2a、R2b、R2c、R3a、R3b、R、R、R、R、R、R、R、X、X、X及びnは、本明細書上記で定義されているとおりである)に記載の化合物の治療有効量と、インターフェロン又は化学誘導化インターフェロンを同時投与することを含む方法が提供される。
【0061】
本発明の第十九の実施態様においては、それを必要とする患者におけるHCV感染症を処置する方法であって、式A−R(式中、A、R、R、R2a、R2b、R2c、R3a、R3b、R、R、R、R、R、R、R、X、X、X及びnは、本明細書上記で定義されているとおりである)に記載の化合物の治療有効量と、HCVプロテアーゼ阻害剤、他のHCVポリメラーゼ阻害剤、HCVヘリカーゼ阻害剤、HCVプライマーゼ阻害剤及びHCV融合阻害剤からなる群から選択される他の抗ウイルス化合物を同時投与することを含む方法が提供される。
【0062】
本発明の第二十の実施態様においては、式A−R(式中、A、R、R、R2a、R2b、R2c、R3a、R3b、R、R、R、R、R、R、R、X、X、X及びnは、本明細書上記で定義されているとおりである)で示される化合物の治療有効量を、少なくとも一つの製薬的に許容しうる担体、希釈剤又は賦形剤と混合して送達することにより、細胞におけるウイルス複製を阻害する方法が提供される。
【0063】
さらなる実施態様においては、HCV感染症の処置のための医薬を調製するための、式A−Rで示される化合物の使用が提供される。
【0064】
さらなる実施態様においては、HCV感染症の処置のための医薬を調製するための、式A−Rで示される化合物をHCVの複製を阻害する少なくとも一つの免疫系モジュレーター及び/又は少なくとも一つの抗ウイルス剤と併せて使用することが提供される。
【0065】
さらなる実施態様においては、インターフェロン又は化学誘導体化インターフェロンと同時投与するための、HCV感染症の処置のための医薬を調製するための、式A−Rで示される化合物の使用が提供される。
【0066】
本発明のさらなる実施態様においては、式A−R(式中、A、R、R、R2a、R2b、R2c、R3a、R3b、R、R、R、R、R、R、R、X、X、X及びnは、本明細書上記で定義されているとおりである)に記載の化合物を、少なくとも一つの製薬的に許容しうる担体、希釈剤又は賦形剤と混合して含む組成物が提供される。
【0067】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、さらに単独で又は他の基との組み合わせで用いられることに関わらず、1〜10個の炭素原子を含有する一価の非分岐鎖又は分岐鎖飽和炭化水素残基を意味する。用語「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐鎖炭化水素残基を意味する。本明細書で使用される「C1−6アルキル」は、1〜6個の炭素からなるアルキルを指す。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、ネオペンチル、へキシル及びオクチルなどの低級アルキル基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
本明細書に記載の定義には、「ヘテロアルキルアリール」、「ハロアルキルヘテロアリール」、「アリールアルキルヘテロシクリル」、「アルキルカルボニル」、「アルコキシアルキル」などの化学的に関連した組み合わせを形成することを補足することができる。用語「アルキル」が、「フェニルアルキル」又は「ヒドロキシアルキル」などのように別の用語に続く接尾語として使用される場合、これは、他の具体的に命名された基から選択される1〜2個の置換基で置換されている、上記で定義されたアルキル基を指すことを意図する。従って、例えば、「フェニルアルキル」は、1〜2個のフェニル置換基を有するアルキル基を指し、従って、ベンジル、フェニルエチル及びビフェニルが挙げられる。「アルキルアミノアルキル」は、1〜2個のアルキルアミノ置換基を有するアルキル基である。「ヒドロキシアルキル」には、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、1−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピル、2−ヒドロキシブチル、2,3−ジヒドロキシブチル、2−(ヒドロキシメチル)、3−ヒドロキシプロピルなどが挙げられる。従って、本明細書で使用される用語「ヒドロキシアルキル」は、下記に定義されるヘテロアルキル基のサブセットを定義するために使用される。用語−(Ar)アルキルは、非置換アルキル又はアラルキル基を指す。用語(ヘテロ)アリール又は(ヘテロ)アリールは、アリール又はヘテロアリール基を指す。
【0069】
本明細書で使用される用語「アルキレン」は、特に指定のない限り、1〜10個の炭素原子の二価の直鎖飽和炭化水素基(例えば、(CH)又は2〜10個の炭素原子の二価の分岐鎖飽和炭化水素基(例えば、−CHMe−又は−CHCH(i−Pr)CH−)を意味する。C0−4アルキレンは、1〜4個の炭素原子を含む二価の直鎖又は分岐鎖飽和炭化水素基を指す(あるいは、Cの場合は、アルキレン基は省略される)。メチレンの場合を除き、アルキレン基の空の原子価は同じ原子に結合しない。アルキレン基の例には、メチレン、エチレン、プロピレン、2−メチル−プロピレン、1,1−ジメチル−エチレン、ブチレン、2−エチルブチレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
本明細書で使用される用語「アルコキシ」は、−O−アルキル基(式中、アルキルは上記で定義されているとおりである)を意味し、メトキシ、エトキシ、n−プロピルオキシ、i−プロピルオキシ、n−ブチルオキシ、i−ブチルオキシ、t−ブチルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシなど、さらにこれらの異性体も含まれる。本明細書で使用される「低級アルコキシ」は、前記で定義された「低級アルキル」基を有するアルコキシ基を意味する。本明細書で使用される「C1−10アルコキシ」は、アルキルがC1−10である−O−アルキルを指す。
【0071】
本明細書で使用される用語「ハロアルキル」は、1、2、3又はそれ以上の水素原子が、ハロゲンで置換されている、上記で定義された非分岐鎖又は分岐鎖アルキル基を意味する。例には、1−フルオロメチル、1−クロロメチル、1−ブロモメチル、1−ヨードメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、1−フルオロエチル、1−クロロエチル、2−フルオロエチル、2−クロロエチル、2−ブロモエチル、2,2−ジクロロエチル、3−ブロモプロピル又は2,2,2−トリフルオロエチルがある。本明細書で使用される用語「フルオロアルキル」は、ハロゲンがフッ素である、ハロアルキル部分を指す。
【0072】
本明細書で使用される用語「ハロアルコキシ」は、基−OR(式中、Rは本明細書で定義されるハロアルキルである)を指す。本明細書で使用される用語「ハロアルキルチオ」は、基−SR(式中、Rは本明細書で定義されるハロアルキルである)を指す。
【0073】
本明細書で使用される用語「ハロゲン」又は「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を意味する。
【0074】
本明細書で使用される用語「ヒドロキシアルキル」及び「アルコキシアルキル」は、異なる炭素原子上の1〜3個の水素原子が、それぞれヒドロキシル又はアルコキシ基で置換されている、本明細書で定義されるアルキル基を意味する。C1−3アルコキシ−C1−6アルキル部分は、1〜3個の水素原子がC1−3アルコキシで置換されており、そしてアルコキシの結合点が酸素原子であるC1−6アルキル置換基を指す。
【0075】
本明細書で使用される用語「ヒドロキシアルコキシ」及び「アルコキシアルコキシル」は、異なる炭素原子上の1〜3個の水素原子が、それぞれヒドロキシル又はアルコキシ基で置換されている、本明細書で定義されるアルコキシ基を意味する。C1−3アルコキシ−C1−6アルコキシ部分は、1〜3個の水素原子がC1−3アルコキシで置換されており、そしてアルコキシの結合点が酸素原子である、C1−6アルコキシ置換基を指す。
【0076】
本明細書で使用される用語「アルコキシカルボニル」及び「アリールオキシカルボニル」は、式−C(=O)OR(式中、Rはそれぞれアルキル又はアリールであり、そしてアルキル及びアリールは本明細書で定義されるとおりである)の基を意味する。
【0077】
本明細書で使用される用語「シアノ」は、三重結合で窒素に結合している炭素、即ち、−C≡Nを指す。本明細書で使用される用語「ニトロ」は、基−NOを指す。本明細書で使用される用語「カルボキシ」は、基−COHを指す。
【0078】
用語オキソは、二重結合の酸素(=O)、即ち、カルボニル基を指す。
【0079】
本明細書で使用される用語「アシル」(又は「アルカノイル」)は、式−C(=O)R(式中、Rは水素又は本明細書で定義される低級アルキルである)の基を意味する。本明細書で使用される用語「アルキルカルボニル」は、式C(=O)R(式中、Rは本明細書で定義されるアルキルである)の基を意味する。用語C1−6アシル又は「アルカノイル」は、1〜6個の炭素原子を含有する基−C(=O)Rを指す。Cアシル基は、R=Hであるホルミル基であり、Cアシル基は、アルキル鎖が非分岐鎖である場合、ヘキサノイルを指す。本明細書で使用される用語「アリールカルボニル」又は「アロイル」は、式C(=O)R(式中、Rはアリール基である)の基を意味し;本明細書で使用される用語「ベンゾイル」は、Rがフェニルである「アリールカルボニル」又は「アロイル」基を意味する。
【0080】
本明細書で使用される用語「アシルアミノ」は、式−NHC(=O)R(式中、Rは水素又は本明細書で定義される低級アルキルである)の基を意味する。C1−6アシル−アミノは、C(=O)R部分が全部で6個の炭素原子を含有するアシルアミノ基を指す。
【0081】
本明細書で使用される用語「環状アミン」は、上記で定義したような3〜6個の炭素原子を含有する飽和炭素環を指し、ここで、少なくとも1個の炭素原子は、N、O及びSからなる群から選択されるヘテロ原子で置換されている。例えば、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、ジ−オキソ−チオモルホリン、ピロリジン、ピラゾリン、イミダゾリジン、アゼチジンであり、ここで、環状炭素原子は、ハロゲン、ヒドロキシ、フェニル、低級アルキル、低級アルコキシからなる群から選択される、1個以上の置換基により場合により置換されているか、あるいは、炭素上の2個の水素原子の両方がオキソ(=O)に置換されている。環状アミンがピペラジンである場合、一個の窒素原子がC1−6アルキル、C1−6アシル、C1−6アルキルスルホニルで場合により置換され得る。
【0082】
本明細書で使用される用語「アルキルスルホニル」及び「アリールスルホニル」は、式−S(=O)R(式中、Rはそれぞれアルキル又はアリールであり、アルキル及びアリールは本明細書で定義されるとおりである)の基を意味する。本明細書で使用される用語、C1−3アルキルスルホニルアミドは、基RSONH−(式中、Rは本明細書で定義されるC1−3アルキル基である)を指す。用語C1−6ハロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキルスルホニル又はC1−6アルコキシ−C1−6アルキルスルホニルは、化合物S(=O)R(式中、RはそれぞれC1−6ハロアルキル、C3−7シクロアルキル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル及びC1−6アルコキシ−C1−6アルキルである)を指す。
【0083】
本明細書で使用される用語「アルキルスルホニルアミノ」及び「アリールスルホニルアミノ)は、式−NR’S(=O)R(式中、Rはそれぞれアルキル又はアリールであり、R’は水素又はC1−3アルキルであり、アルキル及びアリールは本明細書で定義されるとおりである)の基を意味する。
【0084】
本明細書で使用される用語「スルファモイル」は、基−S(O)NHを指す。本明細書で使用される用語「N−アルキルスルファモイル」及び「N、N−ジアルキルスルファモイル」は、基−S(O)NR’R”(式中、R’及びR”は水素及び低級アルキルであり、R’及びR”はそれぞれ独立して低級アルキルである)を指す。N−アルキルスルファモイル置換基の例には、メチルアミノスルホニル、イソプロピルアミノスルホニルが挙げられるが、これらに限定されない。N,N−ジアルキルスルファモイル置換基の例には、ジメチルアミノスルホニル、イソプロピル−メチルアミノスルホニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
本明細書で使用される用語「カルバモイル」は、基−CONHを意味する。接頭語「N−アルキルカルバモイル」及び「N,N−ジアルキルカルバモイル」は、それぞれ基CONHR’又はCONR’R”(式中、R’及びR”基は、独立して本明細書で定義されるアルキルである)を意味する。接頭語「N−アリールカルバモイル」は、基CONHR’(式中、R’は本明細書で定義されるアリール基である)を意味する。
【0086】
本明細書で使用される用語「ベンジル」は、CCH基を指し、式中、フェニル環は、特に指定のない限り、ヒドロキシ、チオ、シアノ、アルキル、アルコキシ、低級ハロアルコキシ、アルキルチオ、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ニトロ、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル及びジアルキルアミノアルキル、アルキルスルホニル、アリールスルフィニル、アルキルアミノスルホニル、アリールアミノスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、カルバモイル、アルキルカルバモイル及びジアルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノから独立して選択される1個以上、好ましくは1〜3個の置換基で場合により置換され得る。
【0087】
本明細書で使用される用語「ピリジン」(「ピリジニル」)は、1個の窒素原子を有する6員芳香族複素環を指す。用語「ピリミジン」(「ピリミジニル」)、「ピラジン」(「ピラジニル」)及び「ピリダジン」(「ピリダジニル」)は、それぞれ、1,3、1,4及び1,2の関係で配置した2個の窒素原子を有する、6員非縮合芳香族複素環を指す。各基の名称は括弧で示す。
【0088】
用語(i)3−オキソ−3,4−ジヒドロ−ピラジン−2−イル、(ii)3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ピリダジン−4−イル又は(iii)2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリミジン−4−オン−5−イル、(iv)2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル及び(v)6−オキソ−1,6−ジヒドロ−[1,2,4]トリアジン−5−イルは、下記の部分:
【化3】


を指す。
【0089】
Arに関して、語句「少なくとも(CHNRで置換されている」は、単に環が(CHNRで置換されているが、特許請求の範囲内において、他に追加的な任意の置換が許容されることを示す。
【0090】
本発明の化合物及びその異性体並びに製薬的に許容しうるその塩は、また、互いに併用した場合及び非限定的にインターフェロン、ペグ化インターフェロン、リバビリン、プロテアーゼ阻害剤、ポリメラーゼ阻害剤、小分子干渉RNA化合物、アンチセンス化合物、ヌクレオチドアナログ、ヌクレオシドアナログ、免疫グロブリン、免疫調節剤、肝保護剤、抗炎症性薬剤、抗生物質、抗ウイルス剤及び抗感染化合物からなる群を含む他の生物学的に活性な薬剤と併用した場合に、生きた宿主におけるウイルス感染症、特に、C型肝炎感染症及び疾患の治療及び予防に有用である。このような併用療法は、また、本発明の化合物を他の医薬用薬剤又は増強剤、例えば、リバビリン及び関連化合物、アマンタジン及び関連化合物、例えば、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロンγなどの様々なインターフェロン、並びにペグ化インターフェロンなどの他の形態のインターフェロンと同時に又は連続的に提供することを含むことができる。さらに、リバビリンとインターフェロンの組み合わせを、少なくとも1つの本発明の化合物との追加の併用療法として投与することができる。
【0091】
一実施態様においては、式Iに記載の本発明の化合物は、HCVウイルス感染症患者を処置するために他の活性治療成分又は薬剤と併用される。本発明によれば、本発明の化合物と併用される活性治療成分は、本発明の化合物と併用した場合に治療効果を示す任意の薬剤であることができる。例えば、本発明の化合物と併用される活性薬剤は、インターフェロン、リバビリンアナログ、HCV NS3プロテアーゼ阻害剤、HCVポリメラーゼのヌクレオシド阻害剤、HCVポリメラーゼの非ヌクレオシド阻害剤及びHCVを処置するための他の薬物、又はこれらの混合物であることができる。
【0092】
ヌクレオシドNS5bポリメラーゼ阻害剤の例には、NM−283、バロピシタビン、R1626、PSI−6130(R1656)、IDX184及びIDX102(Idenix)BILB1941が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
非ヌクレオシドNS5bポリメラーゼ阻害剤の例には、HCV−796(ViroPharma and Wyeth)、MK−0608、MK−3281(Merck)、NM−107、R7128(R4048)、VCH−759、GSK625433及びGSK625433(Glaxo)、PF−868554(Pfizer)、GS−9190(Gilead)、A−837093及びA848837(Abbot Laboratories)、ANA598(Anadys Pharmaceuticals);GL100597(GNLB/NVS)、VBY708(ViroBay)、ベンゾイミダゾール誘導体(H. Hashimoto et al. WO 01/47833、H. Hashimoto et al. WO 03/000254, P. L. Beaulieu et al. WO 03/020240 A2; P. L. Beaulieu et al. US 6,448,281 B1; P. L. Beaulieu et al. WO 03/007945 A1)、ベンゾ−1,2,4−チアジアジン誘導体(D. Dhanak et al. WO 01/85172 A1, filed 5/10/2001; D. Chai et al., WO2002098424, filed 6/7/2002, D. Dhanak et al. WO 03/037262 A2, filed 10/28/2002; K. J. Duffy et al. WO03/099801 A1, filed 5/23/2003, M. G. Darcy et al. WO2003059356, filed 10/28/2002; D.Chai et al. WO 2004052312, filed 6/24/2004, D.Chai et al. WO2004052313, filed 12/13/2003; D. M. Fitch et al., WO2004058150, filed 12/11/2003; D. K. Hutchinson et al. WO2005019191, filed 8/19/2004; J. K. Pratt et al. WO 2004/041818 A1, filed 10/31/2003)、1,1−ジオキソ−4H−ベンゾ[1,4]チアジン−3−イル誘導体(J. F. Blake et al. in U. S. Patent Publication US20060252785)及び1,1−ジオキソ−ベンゾ[d]イソチアゾール −3−イル化合物(J. F. Blake et al. in U. S. Patent Publication 2006040927)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
HCV NS3プロテアーゼ阻害剤の例には、SCH−503034(Schering, SCH-7)、VX−950(telaprevir, Vertex)、BILN−2065(Boehringer-Ingelheim)、BMS−605339(Bristol Myers Squibb)及びITMN−191(Intermune)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
インターフェロンの例には、ペグ化rIFN−α−2b、ペグ化rIFN−α−2a、rIFN−α−2b、rIFN−α−2a、コンセンサスIFN−α(インファージェン)、フェロン、レアフェロン、インターマックス(intermax)−α、r−IFN−β、インファージェン及びアクティミューン、DUROSと組み合わせたIFN−ω、アルブフェロン、ロクテロン、アルブフェロン、レビフ、経口インターフェロン−α、IFN−α−2b XL、AVI−005、PEG−インファージェン及びペグ化IFN−βが挙げられるが、これらに限定されない。リバビリンアナログ及びリバビリンプロドラッグのビラミジン(タリバビリン)は、HCVを抑制するためにインターフェロンと併せて投与されている。
【0096】
一般的に使用される略語には、下記のものが含まれる:アセチル(Ac)、水性(aq.)、気圧(Atm)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(BINAP)、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、ピロ炭酸ジ−tert−ブチル又はBoc無水物(BOCO)、ベンジル(Bn)、ブチル(Bu)、ケミカルアブストラクト登録番号(CASRN)、ベンジルオキシカルボニル(CBZ又はZ)、カルボニルジイミダゾール(CDI)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1,2−ジクロロエタン(DCE)、ジクロロメタン(DCM)、アゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)、ジイソブチル水素化アルミニウム(DIBAL又はDIBAL−H)、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、4−N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI)、エチル(Et)、酢酸エチル(EtOAc)、エタノール(EtOH)、2−エトキシ−2H−キノリン−1−カルボン酸エチルエステル(EEDQ)、ジエチルエーテル(EtO)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N、N,N’N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸酢酸(HATU)、酢酸(HOAc)、1−N−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、イソプロパノール(IPA)、メタノール(MeOH)、融点(mp)、MeSO−(メシル又はMs)、メチル(Me)、アセトニトリル(MeCN)、m−クロロ過安息香酸(MCPBA)、質量スペクトル(ms)、メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)、N−メチルモルホリン(NMM)、N−メチルピロリドン(NMP)、フェニル(Ph)、プロピル(Pr)、イソプロピル(i−Pr)、重量ポンド/平方インチ(psi)、ピリジン(pyr)、室温(rt又はRT)、satd.(飽和)、tert−ブチルジメチルシリル又はt−BuMeSi(TBDMS)、トリエチルアミン(TEA又はEtN)、トリフラート又はCFSO−(Tf)、トリフルオロ酢酸(TFA)、O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸(TBTU)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、テトラヒドロフラン(THF)、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、トリメチルシリル又はMeSi(TMS)、p−トルエンスルホン酸一水和物(TsOH又はpTsOH)、4−Me−CH4SO−又はトシル(Ts)、N−ウレタン−N−カルボキシ無水物(UNCA)。従来の命名法には、接頭語ノルマル(n−)、イソ(i−)、二級(sec−)、三級(tert−)及びネオ(neo−)が含まれ、これらはアルキル部分で使用される場合、その慣習的意味を有する(J. Rigaudy and D. P. Klesney、Nomenclature in Organic Chemistry、IUPAC 1979 Pergamon Press、Oxford.)。
【0097】
化合物及び調製
本発明に包含され、且つ、本発明の範囲内の代表的化合物の例を表Iに提供する。下記のこれらの実施例及び調製は、当業者が本発明をより明確に理解し、実施することができるようにするために提供する。それらは、本発明の範囲を限定するものではなく、単にその説明及び例示的に示すものにすぎないことを理解すべきである。本発明の化合物を、以下に示し、記載する例示的な合成反応スキームに記述される様々な方法により製造することができる。これらの化合物の調製に使用する出発物質及び試薬は、通常、Aldrich Chemical Co.などの販売業者から入手できるか、あるいは下記の参考文献に記載されている手順に従って当業者に公知の方法により調製される:Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis; Wiley & Sons: New York, Volumes 1-21; R. C. LaRock, Comprehensive Organic Transformations, 2nd edition Wiley-VCH, New York 1999; Comprehensive Organic Synthesis, B. Trost and I. Fleming (Eds.) vol. 1-9 Pergamon, Oxford, 1991; Comprehensive Heterocyclic Chemistry, A. R. Katritzky and C. W. Rees (Eds) Pergamon, Oxford 1984, vol. 1-9; Comprehensive Heterocyclic Chemistry II, A. R. Katritzky and C. W. Rees (Eds) Pergamon, Oxford 1996, vol. 1-11; 及び/又はganic Reactions, Wiley & Sons: New York, 1991, Volumes 1-40。下記の合成反応スキームは、単に本発明の化合物が合成できるいくつかの方法を説明するためのものであり、これらの合成反応スキームに関して様々な改変を行うことができ、これは当業者が本願に含まれる開示を参照することにより示唆されるであろう。
【0098】
合成反応スキームの出発物質及び中間体は必要であれば、非限定的に、濾過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィーなどの従来技術を用いて単離及び精製することができる。このような物質は、物理定数及びスペクトルデータなどの従来の手段を用いて特徴づけることができる。
【0099】
特に断りのない限り、本明細書に記載の反応は、好ましくは、大気圧で、不活性雰囲気下、約−78℃〜約150℃、より好ましくは、約0℃〜約125℃、最も好ましくは、ほぼ室温(又は周囲温度)、例えば、約20℃の反応温度で簡便に行われる。
【0100】
下記のスキームのいくつかの化合物は、置換基を一般化したMarkush構造で記述される;しかし、請求項で定義されるR基の性質が、添付の特許請求の範囲に定義するように改変して、本発明で意図される様々な化合物を得ることができることを当業者はすぐに理解するであろう。さらに、その反応条件は例示的であり、代替的な条件を必要以上の実験を実施することなく特定することができる。下記の実施例の反応順序は、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を限定することを意味するものではない。
【0101】
一般的に、本願で使用される命名法は、IUPAC体系的命名法を作成するBeilstein Instituteのコンピューターシステム、AUTONOM(商標)v.4.0に基づいている。描かれた構造及びその構造に与えられた名称に相違がある場合、描かれた構造が優先されるものとする。さらに、構造又は構造の一部分の立体化学が、例えば、太線又は点線で示されていない場合は、その構造又は構造の一部分は、その立体異性体の全てを包含すると解釈される。
【0102】
本発明に包含され、且つ、本発明の範囲内の代表的化合物の実施例を下記の表に提供する。下記のこれらの実施例及び調製は、当業者が本発明をより明確に理解し、実施することができるようにするために提供する。それらは、本発明の範囲を限定するものではなく、単にその説明及び例示的に示すものにすぎないことを理解すべきである。
【0103】
【表1】







【0104】
下記のスキームの化合物は、方法の一般的性質を例示するために、置換基を一般化して記述することが多い。R基の性質を改変して、本発明で意図される様々な化合物を得ることができることを当業者はすぐに理解するであろう。さらに、その反応条件は例示的であり、代替的な条件を本明細書に記載の条件に置換可能であることが公知である。下記のスキームは、本発明に包含される化合物を調製するために使用することができる一般的な経路を例示するが、これらは限定されるものではない。特定の化合物の調製の詳細は、下記の実施例に見出すことができる。下記の実施例の反応順序は、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を限定することを意味するものではない。
【0105】
1H−キノリン−2−オン類及びクロメン−2−オン類は、適切な置換フェノール又はアニリンの近傍にプロピオン酸部分を導入して調製することができる。一つのアプローチ法として、6−アルキル−8−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−3−フェニル−1H−キノリン−2−オン化合物の調製が例示されるが、ここでは、Heck反応を用いて、4−アルキル−2,6−ジブロモアニリン、例えば、2,6−ジブロモ−4−tert−ブチルアニリン(30、CASRN 10546-67-5)に3個の炭素フラグメントのアクリル酸エチルを導入することにより32が得られる。
【0106】
【化4】

【0107】
Heck反応(又はMizoroki-Heck反応)は、アリール、アルケニル、アルキニル若しくはベンジルハライド又はトリフラートと、少なくとも1個のプロトンを含有するアルケン、スチレン、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、エノールエーテル又はエノールチオエーテルとのパラジウム触媒カップリングであり、アクリル酸エステル又はアクリロニトリルなどのような電子欠乏体がよく使用される(A. de Meijere and F. E. Meyer, Angew. Chem. Int. Ed. English 1994 33:2379-2411; W. Cabri and I. Candiani, Acc. Chem. Res. 1995 28(1):2-7)。一般的に使用されるパラジウム触媒には、Pd(PPh、Pd(OAc)、PdCl、Pd(dba)が挙げられる。一般的に、PPh、P(o−Tol)及びBINAPなどのホスフィン配位子が、形成パラジウム錯体として、又はin situで錯体を形成することができる遊離ホスフィンとして反応混合物に導入される。通常、TEA、1,2,2,6,6−ペンタメチル−ピペリジン、DBU、KCO、KOAc、AgCO及びKO−tert−Buなどの塩基が必要である。反応は、一般的に、非プロトン性溶媒、多くはDMF、DMSO、NMP又はアクリロニトリル中で行われる;しかし、低極性溶媒及び水性共溶媒を使用してもよい。いくつかの反応は変更可能であるが、プロトコールは確定されており、当業者は必要以上の実験を実施することなく、有用な条件を特定することができる。
【0108】
32を酸触媒環化して34を得て、これを2−ベンジルオキシ−ピリジン−3−イルボロン酸とSuzukiクロスカップリングさせて36aを得た後、NBSで処理してブロモラクタム36bを得た。数多くの様々に置換されたアリール及びヘテロアリールボロン酸が利用可能であり、例えば、3−メタンスルホニルアミノベンゼンボロン酸を、第二のSuzukiクロスカップリングを行うことにより導入して38aを得ることができる。ベンジルエーテルを接触水素化分解により又はHBr及びHOAcの存在下、酸触媒開裂により開裂させて、所望のピリドン39a(Ar=4−メタンスルホニルアミノフェニル)を得る。置換ボロン酸が入手し易いことから、本発明の範囲内においてAr置換を容易に行うことが可能である。
【0109】
Suzuki反応は、ボロン酸とアリール若しくはビニルハライド又はトリフラートとのパラジウム触媒カップリングである。典型的な触媒には、Pd(PPh、PdCl(dppf)、Pd(OAc)及びPdCl(PPhが挙げられる。PdCl(dppf)を用いて、一級アルキルボラン化合物を、β−脱離を起すことなくアリール若しくはビニルハライド又はトリフラートとカップリングさせることができる。反応は、トルエン、THF、ジオキサン、DCE、DMF、DMSO、MeOH、EtOH及びMeCNなどの様々な有機溶媒中、水性溶媒中、及び二相条件下で実施することができる。典型的には、反応は、ほぼ室温〜約150℃で行われる。添加剤(例えば、CsF、KF、TlOH、NaOEt及びKOH)は、カップリングを促進させることが多い。Suzuki反応では、特定のパラジウム触媒、配位子、添加剤、溶媒、温度などの多くの要因が挙げられるが、多くのプロトコールは特定されている。高活性な触媒が記載されている(例えば、J. P. Wolfe et al., J. Am. Chem. Soc. 1999 121(41):9550-9561 and A. F. Littke et al., J. Am. Chem. Soc. 2000 122(17):4020-4028を参照)。当業者は必要以上の実験を実施することなく、適正なプロトコールを特定することができるであろう。
【0110】
38aを強塩基及びアルキル化剤で処理して、アミドを簡便にN−アルキル化することにより38bを得て、その後ピリドンを脱マスク化する。
【0111】
【化5】

【0112】
あるいは、Knoevenagel縮合を用いて、2個の炭素フラグメントをオルト−ヒドロキシ又はオルト−アミノ−ベンズアルデヒドに導入して、3個の炭素フラグメントを作製することができる。Knoevenagel縮合は、アルデヒド及びケトンとZ−CH−Z’又はZ−CHR−Z’型(式中、Z及びZ’は、CHO、COR、COH、COR、CN、NO、SOR、SORなどから選択することができる)の炭素酸との縮合である。一級及び二級アミン塩基を反応の触媒に使用することができる。あるいは、触媒量のピペリジンを含有するピリジンが適切である。Z’が水素である場合、縮合は、NaOEt、KO−tert−Bu、リチウムジイソプロピルアミドなどの強塩基を用いて実施することができる。Z’がアリールであり、Zが上記で定義されるとおりである場合、縮合は、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属水酸化物又は炭酸塩などの塩基を用いて実施することができる。反応を広範な炭素酸に適用することができ、塩基は、反応物を脱プロトン化するのに十分な塩基性を有するものが選択される(Jones, Org. Reactions 1967 15:204-599)。
【0113】
EtOH水溶液中、4−ニトロ−フェニルアセトニトリルと20の塩基触媒縮合、その後のニトリルの加水分解により、クロメン−2−オン24が得られる。マスク化ピリドンは、上述するようにSuzukiカップリングにより導入される。26を水素化することで同時にニトロ基を還元し、ベンジルエーテルを水素化分解してI−3が得られる。得られたアミンを、スルホニルクロリドを用いてスルホニル化して、対応するスルホンアミドI−5を得る。
【0114】
70bを、DIBALで還元してヘミアセタール72を得て、これを、そのまま、実施例8に記載するように、72とB−(1,2−ジヒドロ−2−オキソ−3−ピリジニル)−ボロン酸とのSuzukiカップリングによりピリドンに変換した。
【0115】
【化6】

【0116】
2H−イソキノリン−1−オン類及びイソクロメン−1−オン類は、2個の炭素フラグメントをカルボン酸のオルト位に導入することにより調製することができる。一つのアプローチ法では、Sonogashiraカップリングプロトコールを用いて、アセチレン46を、4−tert−ブチル−2,6−ジブロモ−ベンゾニトリル(44)とカップリングさせる。Sonogashiraカップリング(K. Sonogashira et al., Tetrahedron Lett. 1975 4467-4470; K. Sonogashira, Comprehensive Organic Synthesis; B. M. Trost and I. Fleming Eds.; Pergamon Press, Oxford, 1991; Vol. 3, Chapter 2.4, p 521)は、典型的には、Pd(PPh又はPd(II)Cl(PPhなどのパラジウム触媒及びCuIなどの銅塩、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン及びTEAなどのジアルキル又はトリアルキルアミンの存在下、室温〜100℃の温度で実施される。反応は、溶媒としてアミン塩基を使用して又は炭化水素、エーテル、アルコール、DMA水溶液などの他の有機溶媒を用いて実施することができる。別の方法には、様々な置換アリール及びヘテロアリール置換基の導入が可能な合成計画に適応する方法がある。
【0117】
次に、マスク化ピリドンを、上述のようにしてSuzukiカップリングにより導入して50aを得る。ニトリルが、ヒドリド(ジメチル亜ホスフィン酸−kP)[水素ビス(ジメチル亜ホスホン酸−kP]白金(II)(CASRN 173416-05-2; X-b Jiang et al., Platinum-Catalyzed Selective Hydration of Hindered nitriles and nitriles with Acid- or Base Sensitive Groups, J. Org. Chem. 2004 69(7):2327-31; T. Ghaffar and A. W. Parkins, A New Homogenous Platinum Containing Catalyst for the hydrolysis of nitriles. Tetrahedron Lett. 1995 36(47):8657-8660)で加水分解される場合、分子内環化異性化が起こり、所望の2H−イソキノリン−1−オン52aが得られた。ベンジルオキシピリジンの水素化分解により、脱マスク化されて、所望のピリドンI−14が得られる。
【0118】
金塩が、アセチレン酸及びエステルの環化異性化を触媒することが実証された(E. Genin et al., J. Am. Chem. Soc. 2006 128(10):3112-3113)。2−フェニルエチニル−安息香酸メチルは、AuCl介在の6−エンド環化を受けて所望のイソクロメン−1−オン56bを与える(E. Marchal et al., Tetrahedron 2007 63:9979-9990)。必要なアセチレンエステルは、56と場合により置換されているフェニルアセチレンのSonogashiraカップリングにより調製された(工程5)。50bをAuCl触媒環化により52bにし、これを先に記載ようにして脱ベンジル化するとピリドンが得られ、I−15を与えた。
【0119】
AuCl触媒エンド環化とは対照的に、N−{4−[3−(2−ベンジルオキシ−ピリジン−3−イル)−5−tert−ブチル−2−ホルミル−フェニルエチニル]−フェニル}−メタンスルホンアミド(66)の酸化は、同時にエキソ環化を起こし68を与えた。ベンジルエーテルの水素化分解で用いられる条件により、I−16又はI−17のいずれかの化合物が回収された(実施例7)。
【0120】
抗ウイルス活性
HCV活性の阻害剤としての本発明の化合物の活性を、in vivo及びin vitroアッセイなどの当業者に公知の任意の適切な方法により測定することができる。例えば、式Iで示される化合物のHCV NS5B阻害活性を、Behrens et al., EMBO J. 1996 15:12-22, Lohmann et al., Virology 1998 249:108-118 and Ranjith-Kumar et al., J. Virology 2001 75:8615-8623に記載の標準アッセイ方法を用いて決定することができる。特に断りのない限り、このような標準アッセイにおいて、本発明の化合物はin vitroでHCV NS5B阻害活性を示した。本発明の化合物で使用するHCVポリメラーゼアッセイ条件は、実施例8に記載されている。Huh7細胞において、非構造タンパク質がサブゲノムウイルスRNAを安定的に複製する、HCV用の細胞ベースレプリコンシステムが開発された(V. Lohmann et al., Science 1999 285:110 and K. J. Blight et al., Science 2000 290:1972)。本発明の化合物で使用する細胞ベースレプリコンアッセイ条件は、実施例4に記載されている。ウイルスの非構造タンパク質及び宿主タンパク質から構成される、精製した機能性HCVレプリカーゼが存在しない場合は、フラビウイルス科のRNA合成についての我々の理解は、活性な組み換えRNA依存性RNAポリメラーゼを用いた研究及びHCVレプリコンシステムにおけるこれらの研究の検証からもたらされる。in vitro生化学アッセイにおける、化合物による精製した組み換えHCVポリメラーゼの阻害は、ポリメラーゼが、他のウイルス及び細胞ポリペプチドが適切な化学量論で会合したレプリカーゼ複合体内に存在する、レプリコンシステムを用いて検証するすることができる。in vitro生化学アッセイにおける、HCV複製の細胞ベース阻害の実証は、HCV NS5B阻害活性の実証よりin vivo機能をより予測しやすい。
【0121】
用量及び投与
本発明の化合物は、多種多様な経口投与剤形及び担体で製剤化することができる。経口投与は、錠剤、コーティング剤、糖衣剤、硬質及び軟質ゼラチンカプセル剤、液剤、乳剤、シロップ剤又は懸濁剤の剤形とすることができる。本発明の化合物は、他の投与経路、とりわけ、連続(点滴)局所非経口、筋肉内、静脈内、皮下、経皮的(浸透促進剤を含んでもよい)、口腔、経鼻、吸入及び坐剤を介した投与などにより投与した場合に有効である。好ましい投与方法は、一般的に、疾患の程度及び活性成分に対する患者の反応に従って調整可能な従来の一日投与量計画を用いた経口投与である。
【0122】
本発明の化合物(一つ又は複数)、並びに製薬的に有用なその塩は、一種以上の従来の賦形剤、担体又は希釈剤と併せて、医薬組成物及び単位投与剤形の形態にすることができる。医薬組成物及び単位投与剤形は、追加の活性化合物又は活性成分を加えた、あるいは加えないで、従来成分を従来の配合で含むことができ、そして、単位投与剤形は、使用される目的の一日投与量範囲に相当する任意の適切有効量の活性成分を含むことができる。医薬組成物は、経口用に錠剤若しくは充填カプセル剤などの固体製剤、半固体製剤、粉末製剤、徐放性製剤として、又は液剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤若しくは充填カプセル剤などの液体製剤として;あるいは、直腸若しくは膣内投与用の坐剤の形態で;あるいは、非経口用の無菌注射剤の形態で使用することができる。典型的な製剤は、約5%〜約95%(w/w)の活性化合物(一つ又は複数)を含有する。用語「製剤」又は「投与剤形」は、活性化合物の固体及び液体製剤の両方を含有することを意図とし、当業者には、活性成分が、標的器官又は組織、並びに所望の投与用量及び薬物動態パラメーターに応じて、種々の製剤で存在することができることが明らかであろう。
【0123】
本明細書で使用される用語「賦形剤」は、一般的に安全で、非毒性な生物学的にも別の面でも望ましい医薬組成物を調製する上で有用な化合物を指し、獣医用及びヒトの医薬的使用に許容しうる賦形剤を含む。本発明の化合物は単独で投与することができるが、一般的に、意図する投与経路及び標準的な薬務に関して選択される一以上の適切な製薬的に許容しうる賦形剤、希釈剤又は担体と混合して投与する。
【0124】
「製薬的に許容しうる」は、一般的に安全で、非毒性な生物学的にも別の面でも望ましい医薬組成物を調製する上で有用であること意味し、ヒトの医薬的使用に許容しうるものを含む。
【0125】
活性成分の「製薬的に許容しうる塩」形態は、また、最初に非塩形態では示さなかった所望の薬物動態学的特性を活性成分に付与することができ、体内でのその治療活性に関して活性成分の薬力学にさらに正の影響を及ぼすことができる。語句、化合物の「製薬的に許容しうる塩」は、製薬的に許容し得て、且つ、親化合物の所望の薬理活性を有する塩を意味する。このような塩には、(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸から形成される酸付加塩、若しくは酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクタ−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などの有機酸から形成される酸付加塩、又は(2)親化合物の酸性プロトンが、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン若しくはアルミニウムイオンで置換された、又はエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミンなどの有機塩基が配位したときに形成される塩が挙げられる。
【0126】
固体形態の製剤には、粉剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤及び分散性顆粒剤が挙げられる。固体担体は、また、希釈剤、香味剤、可溶化剤、潤滑剤、懸濁剤、結合剤、防腐剤、錠剤崩壊剤又は封入材料としても作用することができる一以上の物質であってもよい。粉剤の場合、担体は、一般的に微粉化活性成分と混合された微粉化固体である。錠剤の場合、活性成分は、一般的に必要な結合能を有する担体と適切な割合で混合され、所望の形状及びサイズに圧縮される。適切な担体には、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖類、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ロウ、ココアバターなどが挙げられるが、これらに限定されない。固体形態の製剤は、活性成分の他に、着色剤、香味剤、安定化剤、緩衝剤、人工及び天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含有していてもよい。
【0127】
液体製剤は、また、経口投与に適しており、液体製剤には、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、水性液剤、水性懸濁剤が挙げられる。これらは、使用直前に液体形態の製剤に変換することを目的とする固体形態の製剤を含む。乳剤は、溶液で、例えば、プロピレングリコール水溶液で調製することができ、あるいは、レシチン、ソルビタンオレイン酸モノエステル又はアラビアゴムなどの乳化剤を含有していてもよい。水性液剤は、活性成分を水に溶解し、適切な着色剤、香味剤、安定化剤及び増粘剤を添加して調製することができる。水性懸濁剤は、微粉化活性成分を、天然又は合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び他の周知の懸濁剤などの粘性材料と一緒に水に分散させて調製することができる。
【0128】
本発明の化合物は、非経口投与(例えば、注射、例えば、ボーラス注射又は持続注入)用に製剤化することができ、アンプル、プレフィルドシリンジ、少容量輸滴の単位用量形態で、又は防腐剤を添加した複数回用量容器に入れてもよい。組成物は、油性又は水性溶剤で懸濁剤、液剤又は乳剤、例えば、ポリエチレングリコール水溶液のような形態にしてもよい。油性又は非水性担体、希釈剤、液剤又は溶剤の例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油)及び注入用有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)が挙げられ、防腐剤、湿潤剤、乳化剤又は懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤などの製剤化剤を含有してもよい。あるいは、活性成分は、滅菌固体の無菌的単離又は溶液の凍結乾燥から得られる粉末形態であってよく、使用前に適切な溶剤(例えば、無菌のパイロジェンフリー水)で再構成される。
【0129】
本発明の化合物は、上皮への局所投与用に、軟膏、クリーム剤又はローション剤として、あるいは経皮パッチとして製剤化することができる。軟膏及びクリーム剤は、例えば、適切な増粘剤及び/又はゲル化剤を添加して、水性又は油性基剤で製剤化することができる。ローション剤は、水性又は油性基剤で製剤化することができ、また、一般的に一以上の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤又は着色剤を含んでいる。口腔の局所投与に適切な製剤化には、香料基剤(通常、スクロース及びアラビアゴム又はトラガカント)に活性剤を含むトローチ剤;ゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアラビアゴムなどの不活性基材に活性成分を含む芳香錠;並びに適当な液体担体に活性成分を含む洗口剤が挙げられる。
【0130】
本発明の化合物は、坐剤投与用に製剤化することができる。脂肪酸グリセリドの混合物又はココアバターなどの低融点ロウを最初に溶融して、活性成分を、例えば、撹拌により均一に分散する。次に、溶融した均一混合物を適当なサイズの鋳型に注ぎ、冷却して、固化する。
【0131】
本発明の化合物は、膣内投与用に製剤化することができる。ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレーは、活性成分に加えて、当技術分野で適切であると知られている担体を含有する。本発明の化合物は、経鼻投与用に製剤化することができる。液剤又は懸濁剤を従来の手段、例えば、スポイト、ピペット又はスプレーを用いて鼻腔に直接使用する。製剤は、単用量又は多用量形態で提供される。スポイト又はピペットの後者の場合では、適切で所定量の液剤又は懸濁剤を患者が投与することにより達成できる。スプレーの場合では、例えば、定量噴霧式スプレーポンプを用いて達成できる。
【0132】
本発明の化合物は、特に、呼吸器への鼻腔内投与などのエアロゾル投与用に製剤化することができる。一般的に、化合物は、例えば、5ミクロン以下のオーダーの小さい粒径を有する。そのような粒径は、当技術分野で公知の手段、例えば、微粒化することにより得ることができる。活性成分は、クロロフルオロカーボン(CFC)、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン若しくはジクロロテトラフルオロエタン又は二酸化炭素あるいは他の適切な気体などの適切な推進剤と共に圧縮パックで提供される。エアロゾルは、便宜上、レシチンなどの界面活性剤を含有していてもよい。薬物の用量は、定量バルブによって制御することができる。あるいは、活性成分は、乾燥粉末、例えば、ラクトース、デンプン、デンプン誘導体、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリジン(PVP)などの適切な粉末基剤と化合物の粉末混合物の形態で提供することができる。粉末担体は、鼻腔においてゲルを形成する。粉末組成物は単位用量形態であってもよく、例えば、ゼラチンのカプセル又はカートリッジあるいはブリスター包装で、粉末を吸入器により投与することができる。
【0133】
所望であれば、製剤は、活性成分の徐放又は制御放出投与用に適した腸溶コーティングを用いて調製することができる。例えば、本発明の化合物は、経皮的又は皮下的な薬物送達デバイスに製剤化することができる。化合物の徐放が必要である場合、そして患者が処置計画に従うことが極めて重要である場合、これらの送達システムは有利である。経皮的な送達システムでは、しばしば化合物を皮膚接着性固体の支持体に結合させる。対象化合物を、浸透促進剤、例えば、アゾン(1−ドデシルアザ−シクロヘプタン−2−オン)と組み合わせることもできる。徐放送達システムは、外科的処置又は注射により、皮下層へ皮下挿入される。皮下インプラントは、脂溶性の膜、例えば、シリコーンゴム又は生分解性高分子、例えば、ポリ乳酸に化合物を封入する。
【0134】
製薬的な担体、希釈剤及び賦形剤を一緒に含む適切な製剤化が、 Remington: The Science and Practice of Pharmacy 1995, edited by E. W. Martin, Mack Publishing Company, 19th edition, Easton, Pennsylvania に記載されている。熟練の製剤科学者は、本発明の組成物を不安定にすることなく、又はそれらの治療活性を損なうことなく、本明細書の教示の範囲内で製剤を変更して、特定の投与経路用の多数の製剤を提供することができる。
【0135】
本化合物を水又は他の溶剤により溶解させるための改変は、例えば、当技術分野で公知の小規模な改変(塩形成、エステル化など)を行うことで容易に達成することができる。また、患者が最大限の有益効果を得るように、本発明の化合物の薬物動態を管理するために特定の化合物の投与経路及び投与計画を変更することは、当技術分野の従来技術において公知である。
【0136】
本明細書で使用される用語「治療有効量」は、個々の疾患の症状を軽減するのに必要な量を意味する。用量は、各特定の事例において、個々の要件に対して調整される。用量は、多くの要因、例えば、処置する疾患の重症度、患者の年齢及び一般的な健康状態、患者の処置に用いられる他の医薬、投与経路及び形態、並びに担当の医者の選好及び経験などに応じて、広い範囲内で変更することができる。経口投与において、単剤療法及び/又は併用療法では、約0.01〜約1000mg/kg体重/日の一日用量が適切である。一日用量は、約0.1〜約500mg/kg体重/日が好ましく、より好ましくは、0.1〜約100mg/kg体重/日、最も好ましくは、1.0〜約10mg/kg体重/日である。従って、70kgのヒトでは、投与用量は、約7mg〜0.7g/日の範囲である。一日用量は、単回用量又は分割用量(典型的には1〜5回の用量/日)で投与することができる。一般的に、処置は化合物の最適用量より少ない用量から開始する。その後、個々の患者に最適な効果が得られるまで、用量を少量ずつ増やしていく。本明細書に記載の疾患を処置する当業者は、必要以上の実験を実施することなく、個人の知識、経験及び本願の開示を頼りに対象の疾患及び患者について本発明の化合物の治療有効量を確認することができるであろう。
【0137】
本発明の実施態様においては、活性化合物又は塩は、他の抗ウイルス剤、例えば、リバビリン、ヌクレオシドHCVポリメラーゼ阻害剤、その他のHCV非ヌクレオシドポリメラーゼ阻害剤又はHCVプロテアーゼ阻害剤と併用して投与することができる。活性化合物、その誘導体又は塩を他の抗ウイルス剤と併用して投与すると、活性を親化合物より増加させることができる。処置が併用療法の場合、その投与はヌクレオシド誘導体の投与と同時又は連続的に実施できる。従って、本明細書で使用される「同時投与」は、同時に又は異なった時間において薬剤を投与することを含む。同時に2個以上の薬剤を投与することは、2個以上の活性成分を含む単一製剤により、又は単一活性剤と共に2個以上の投与剤形の実質的な同時投与により行うことができる。
【0138】
本明細書において、処置とは、今ある症状を治療するだけでなく予防にまで及ぶことを理解されたい。さらに、本明細書で使用されるHCV感染の用語「処置」は、また、HCV感染を伴う若しくはHCV感染に媒介される疾患又は症状あるいはその臨床的症状の治療又は予防を含む。
【0139】
本明細書で使用される用語「治療有効量」は、個々の疾患の症状を軽減するのに必要な量を意味する。用量は、各特定の事例において、個々の要件に対して調整される。用量は、多くの要因、例えば、処置する疾患の重症度、患者の年齢及び一般的な健康状態、患者の処置に用いられる他の医薬、投与経路及び形態、並びに担当の医者の選好及び経験などに応じて、広い範囲内で変更することができる。経口投与において、単剤療法及び/又は併用療法では、約0.01〜約1000mg/kg体重/日の一日用量が適切である。一日用量は、約0.1〜約500mg/kg体重/日が好ましく、より好ましくは、0.1〜約100mg/kg体重/日、最も好ましくは、1.0〜約10mg/kg体重/日である。従って、70kgのヒトでは、投与用量は、約7mg〜0.7g/日の範囲である。一日用量は、単回用量又は分割用量(典型的には1〜5回の用量/日)で投与することができる。一般的に、処置は化合物の最適用量より少ない用量から開始する。その後、個々の患者に最適な効果が得られるまで、用量を少量ずつ増やしていく。本明細書に記載の疾患を処置する当業者は、必要以上の実験を実施することなく、個人の知識、経験及び本願の開示を頼りに対象の疾患及び患者について本発明の化合物の治療有効量を確認することができるであろう。
【0140】
本発明の化合物、及び場合により一以上の追加の抗ウイルス剤の治療有効量は、ウイルス量を減少させる又は治療に対して持続したウイルス応答を達成するのに有効な量である。ウイルス量の他に、持続応答の有用な指標には、肝線維症、血清トランスアミナーゼレベルの上昇及び肝臓の壊死性炎症活性が挙げられるが、これらに限定されない。例示的であり、限定的ではないマーカーの一般的な例として、標準的な臨床アッセイで測定される血清アラニントランスアミナーゼレベル(ALT)がある。本発明のいくつかの実施態様においては、有効な処置計画は、ALTレベルを血清中約45IU/mL未満に減少させるものである。
【0141】
本化合物を水又は他の溶剤により溶解させるための改変は、例えば、当技術分野で公知の小規模な改変(塩形成、エステル化など)を行うことで容易に達成することができる。また、患者が最大限の有益効果を得るように、本発明の化合物の薬物動態を管理するために特定の化合物の投与経路及び投与計画を変更することは、当技術分野の従来技術において公知である。
【0142】
下記の実施例では、本発明の範囲内の化合物の調製及び生物学的評価を示す。下記のこれらの実施例及び調製は、当業者が本発明をより明確に理解し、実施することができるようにするために提供する。これらは、本発明の範囲を限定するものではなく、単にその説明及び例示的に示すものにすぎないことを理解すべきである。
【0143】
実施例1
N−{4−[6−tert−ブチル−2−オキソ−8−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−2H−クロメン−3−イル]−フェニル}−メタンスルホンアミド(I−5)
【化7】


2−ベンジルオキシ−ピリジン−3−イルボロン酸(25)
2−ベンジルオキシ−3−ブロモ−ピリジン(2.50g、9.47mmol)、Pd(II)Cl(PPh(232mg、0.28mmol)、KOAc(2.32g、23.67mmol)、ビス−(ピナコラト)ジボラン(2.95g、11.36mmol)及びDME(75mL)の溶液を、70℃で26時間加熱した。反応混合物を冷却し、EtO及び水で分液した。有機相を分離し、乾燥して濃縮した。粗生成物を、SiOクロマトグラフィーを用いて、EtOAc/ヘキサン勾配(0〜5%EtOAc)で溶離させて精製して、1.81gの25(少量のビス−(ピナコラト)ジボランを含有する)を得た。
【0144】
工程1−20(2.00g、7.78mmol)、22(1.06g、7.78mmol)、NaOH(0.078g、1.94mmol)、トリメチルセチルアンモニウムブロミド(0.28g、0.78mmol)、HO(50mL)及びEtOH(5mL)の混合物を、室温で2日間撹拌した。反応混合物を濃HClで酸性にし、pHを約2にした。混合物を90℃で4時間加熱した後、室温に冷却した。明褐色の沈殿物を濾取して、HOで洗浄し、50℃の真空オーブンで乾燥して、1.12gの24を得た。
【0145】
工程2−管に24(0.340g、0.845mmol)、25(0.252g、1.90mmol)、Pd(dppf)Cl・CHCl(0.034g、0.042mmol)、NaCO(0.134g、1.268mmol)、MeOH(5mL)及びDCM(1mL)を入れて密閉し、マイクロ波シンセサイザ中、115℃で30分間照射した。反応混合物を減圧下で濃縮した。粗生成物を、SiOクロマトグラフィーを用いて、EtOAc/ヘキサン勾配(5〜25%EtOAc)で溶離させて精製して、0.256の26を得た。
【0146】
工程3−26(0.129g)、Pd(OH)/C(0.040g)、EtOAc(15mL)及びMeOH(5mL)の混合物を、水素1気圧下で2時間撹拌した。触媒を濾過して、濾液を減圧下で濃縮した。粗生成物を、分取SiOTLCプレートを用いて1%MeOH/EtOAcで展開させて精製して、36mgの28と44mgのわずかに不純な28を得た。
【0147】
工程4−0℃に冷却した28(0.100g、0.26mmol)のDCM(5mL)溶液に、ピリジン(52μL、0.65mmol)、メシルクロリド(24μL、0.31mmol)を順次添加した。反応物を室温に温めて一晩撹拌した。反応混合物をEtOAcで希釈して、飽和CuSO水溶液、HO、食塩水で順次洗浄して、乾燥し(MgSO)、濾過して減圧下で濃縮した。粗生成物を、分取SiOTLCプレートを用いて20%EtOAc/ヘキサンで展開させて精製して、53mgのI−5を得た。
【0148】
実施例2
N−{3−[6−tert−ブチル−2−オキソ−8−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−1,2−ジヒドロ−キノリン−3−イル]−フェニル}−メタンスルホンアミド(I−10)
【化8】


工程1−30(10.0g)及びMeCN(200mL)の溶液に、トリ−(o−トリル)ホスフィン(1.33g)、Pd(II)(OAc)(0.730g)、TEA(6.8mL)及びアクリル酸メチル(2.35mL)を添加した。反応物を100℃で一晩撹拌した。反応物を冷却して減圧下で濃縮した。粗生成物を、SiOクロマトグラフィーを用いて、EtOAc/ヘキサン勾配(0%EtOAcで0〜5分、20%EtOAcで5.5〜15分、40%EtOAcで15.5〜30分)で溶離させて精製して、3.02gの32を得た。
【0149】
工程2−32(6.73g)及びTHF(150mL)の溶液に6NHCl(150mL)を添加して、得られた溶液を100℃で一晩加熱した。溶液を冷却して減圧下で濃縮した。反応混合物を固体NaHCOで塩基性にし、EtOAc(3×150mL)で3回抽出した。集めた抽出物を食塩水で洗浄して、乾燥し(NaSO)、濾過して減圧下で濃縮した。粗生成物を、SiOクロマトグラフィーを用いて、工程1に記載の勾配を用いて精製した。集めたフラクションを濃縮し、EtOでトリチュレートして、34をオフホワイトの固体として得た。
【0150】
工程3−マイクロ波管に、34(0.500g)、25(0.490g)、Pd(PPh(0.206g)、NaCO(0.568g)、MeOH(9mL)及びDCM(3mL)を入れて密閉し、マイクロ波シンセサイザ中、115℃で30分間照射した。反応を4回繰り返し、集めた反応混合物を濃縮して、HO及びEtOAc(各100mL)で分液した。水層をEtOAcで2回抽出し、集めた抽出物を食塩水で洗浄して、乾燥し、減圧下で濃縮した。粗生成物を、SiOクロマトグラフィーを用いて、EtOAc/ヘキサン勾配(20%EtOAcで0〜15分、40%EtOAcで15.5〜30分、60%EtOAcで15.5〜50分)で溶離させて精製して、2.195gの36aを得た。
【0151】
工程4−0℃に冷却した36a(2.195g)のDCM(100mL)溶液に、NBS(2.03g)を添加した。溶液を室温に温めて一晩撹拌した。追加のNBS(1.0g)のアリコートを添加して、撹拌を室温でさらに24時間続けた後、50℃で2時間加熱した。反応物を冷却して減圧下で濃縮した。粗生成物を、SiOクロマトグラフィーを用いて、EtOAc/ヘキサン勾配(0%EtOAcで0〜5分、20%EtOAcで5.5〜15分、40%EtOAcで15.5〜40分)で溶離させて精製して、1.44gの36bを得た。
【0152】
工程5−管に36b(0.060g)、3−メタンスルホニルアミノベンゼンボロン酸(0.033g)、Pd(PPh(0.015g)、NaCO(0.041g)、MeOH(3mL)及びDCM(1mL)を入れて密閉し、マイクロ波シンセサイザ中、115℃で30分間照射した。反応物を冷却して減圧下で濃縮した。粗生成物を、SiOクロマトグラフィーを用いて、EtOAc/ヘキサン勾配(0%EtOAcで0〜5分、40%EtOAcで5.5〜15分、60%EtOAcで15.5〜30分、100%EtOAcで30.5〜40分)で溶離させて精製して、0.042g(59%)の38を得た。
【0153】
工程6−38(0.040g)、EtOAc(10mL)及びMeOH(10mL)の懸濁液に、Pd(OH)/C(触媒量)を添加して、反応物をH雰囲気下(バルーン)で2時間撹拌し、濾過して濾液を濃縮した。粗生成物を、分取SiOTLCプレートを用いて最初に60%EtOAcで展開させ(溶媒を半分流して、プレートをウェーブアップ(wave up))、乾燥し、80%EtOAc/ヘキサンで再展開させて溶離することで精製して、I−10を得た。
【0154】
下記を、工程3を除いて同様にして調製した。3−メタンスルホニルアミノベンゼンボロン酸を括弧内のボロン酸に換えた:I−9(4−メタンスルホニルアミノベンゼンボロン酸)、I−6(ベンゼンボロン酸)、I−13(B−[3−(アミノカルボニル)フェニル]−ボロン酸)及びI−11(B−[4−(アミノスルホニル)フェニル]−ボロン酸(CASRN 613660-87-0)。I−2は、36aを水素化分解することにより調製した。
【0155】
実施例3
N−{4−[6−tert−ブチル−1−メチル−2−オキソ−8−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−1,2−ジヒドロ−キノリン−3−イル]−フェニル}−メタンスルホンアミド(I−8)
【化9】


工程1−0℃に冷却した36b(0.500g)のDMSO(5mL)溶液に、NaH(0.049g、鉱油60%分散物)を添加し、その後ヨードメタン(0.10g)を添加した。氷浴を取り外して、反応混合物を室温で30分間撹拌した。反応混合物をHO及びEtOAcで分液した。EtOAc層をHO(3×50mL)で3回抽出して、集めた水性抽出物をEtOAc(3×50mL)で3回逆抽出した。集めたEtOAc抽出物を食塩水で洗浄して、乾燥し(NaSO)、濾過して減圧下で濃縮した。粗生成物を、SiOクロマトグラフィーを用いて、EtOAc/ヘキサン勾配(0%EtOAcで0〜5分、20%EtOAcで5.5〜15分、40%EtOAcで15.5〜25分、60%EtOAcで25.5〜35分)で溶離させて精製して、40を得た。
【0156】
40と4−メタンスルホニルアミノベンゼンボロン酸のSuzukiカップリング(工程2)及びベンジルエステルの水素化分解を、実施例2の工程5及び6に従って実施して、I−8を得た。
【0157】
I−12及びI−7を、工程3を除いて同様にして調製した。4−メタンスルホニルアミノベンゼンボロン酸を、それぞれ、B−[4−(アミノスルホニル)フェニル]−ボロン酸(CASRN 613660-87-0)及び4−ヒドロキシ−ベンゼンボロン酸に換えた。
【0158】
実施例4
N−{4−[6−tert−ブチル−1−オキソ−8−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−1,2−ジヒドロ−イソキノリン−3−イル]−フェニル}−メタンスルホンアミド(I−14)
【化10】


工程1−44(0.750g、1.9mmol、CASRN 80578-102)及び46(0.748g、CASRN 111448-81-8)のTHF(15mL)溶液に、CuI(0.027g)、DIPEA(5mL)及びPd(PPhCl(0.023g)を添加して、反応物を80℃で一晩加熱した。反応物を室温に冷却して減圧下で濃縮した。生成物を、SiOクロマトグラフィーを用いて、EtOAc/ヘキサン勾配(0%EtOAcで0〜5分、20%EtOAcで5.5〜20分、40%EtOAcで20.5〜30分)で溶離させて精製して、0.290g(24%)の48を得た。
【0159】
工程2−48と25のSuzukiカップリングを、実施例2の工程3に記載の手順に従って実施して50を得て、これを、SiOクロマトグラフィーを用いて、EtOAc/ヘキサン勾配(0%EtOAcで0〜5分、20%EtOAcで5.5〜15分、40%EtOAcで15.5〜25分)で溶離させて精製した。
【0160】
工程3−50(0.113g)及びEtOH(5mL)の溶液に、ヒドリド(ジメチル亜ホスフィン酸−kP)[水素ビス(ジメチル亜ホスホン酸−kP]白金(II)(Stem Chemicals Inc., 78-0725, CASRN 173416-05-2)を添加して、得られた溶液を還流下一晩撹拌した。反応物を室温に冷却して濃縮した。残渣をEtOAc/HO(各25mL)で分液した。水層をEtOAc(2×25mL)で2回洗浄した。EtOAc抽出物を集めて、食塩水で洗浄して、乾燥し(NaSO)、濾過して濃縮した。粗生成物を、分取SiOTLCプレートを用いて、10%MeOH/DCMで展開させて精製して、0.106gの52を得た。
【0161】
工程4−52の脱ベンジル化を、実施例1の工程3に記載の手順に従って実施した。生成物を、分取SiOTLCプレートを用いて、10%MeOH/DCMで展開させて精製した。溶離生成物を少量のMeOHを含有するDCMでトリチュレートして、得られた固体を濾取した。
【0162】
実施例5
N−{4−[6−tert−ブチル−1−オキソ−8−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−1H−イソクロメン−3−イル]−フェニル}メタンスルホンアミド(I−15)
【化11】


工程1−撹拌した54a(13.08g、42.60mmol、CASRN 10546-67-5)の水(16mL)及びHOAc(26mL)混合物に、濃硫酸(11.20mL、119.28mmol)を添加した。混合物を固体が完全に溶解するまで加熱した。溶液を10℃に冷却して、混合物が明褐色の溶液になるまで、亜硝酸ナトリウム(3.08g、46.86mmol)と水(30mL)の水溶液を、激しく撹拌しながら10分間かけて添加した。
【0163】
CuSO(7.68g、51.12mmol)の水(30mL)及び氷(40g)混合物に、氷をさらに加えて温度を20℃以下に維持しながら、KCN(13.00g、213.01mmol)を添加した。最初に生じた沈殿物を溶解させた。最後に、NaHCO(26.80g、340.81mmol)及びベンゼン(60mL)を混合物に添加した。この溶液に、ジアゾニウム塩を含有する溶液を、50〜55℃で激しく撹拌しながら、30分かけて滴下した。添加が完了した後、混合物をさらに30分間撹拌した。反応混合物を室温に冷却した後、ベンゼン(200mL)で希釈した。有機層を2NNaOH溶液、食塩水で洗浄して、乾燥し(NaSO)、濾過して濃縮した。残渣をDCM及びエーテルの混合物で分別再結晶して、7.84g(58%)の2,6−ジブロモ−4−tert−ブチル−ベンゾニトリル(54b)を明褐色の固体として得た。
【0164】
工程2−54bと25のSuzukiカップリングを、実施例2の工程3に記載の手順に従って実施して56aを得た。粗生成物を、SiOクロマトグラフィーを用いて、EtOAc/ヘキサン勾配(15〜25%EtOAc)で溶離させて精製して、1.0gの56aを得た。
【0165】
工程3−−75℃に冷却した56a(1.0g、2.4mmol)のトルエン(20mL)溶液に、DIBAL(2.9mL、1MDCM溶液)の溶液を滴下し、得られた反応混合物を−75℃で3時間撹拌した後、氷冷した5%HSO水溶液に注いだ。層を分離して水層をEtOAcで抽出した。トルエン及びEtOAcの溶液を集め、食塩水で洗浄して、乾燥し(MgSO)、濾過して濃縮した。粗生成物を、SiOクロマトグラフィーを用いて、EtOAc/ヘキサン勾配(5〜35%EtOAc)で溶離させて精製して、0.73g(72%)の56bを得た。
【0166】
工程4−5℃に冷却した56b(0.73g、1.72mmol)、NaHPO(2.85g、20.6mmol)、2−メチル−2−ブテン(3.7mL、34.4mmol)のtert−BuOH(30mL)、HO(30mL)及びTHF(10mL)溶液に、NaClO(0.39g、4.3mmol)を添加した。反応混合物を室温に温め、7時間撹拌した。追加の2−メチル−2−ブテン(1.0mL)及びNaClO(0.9g)を添加して、反応物を一晩撹拌した後、氷及び1NHClの混合物に注いだ。溶液をEtOAcで2回抽出して、集めた抽出物を乾燥し(NaSO)、濾過して濃縮して、0.76g(100%)の56cを得た。
【0167】
工程5−5℃に冷却した56c(0.76g、1.72mmol)、MeOH(5mL)及びDCM(15mL)の溶液に、トリメチルシリル−ジアゾメタン(1.29mL、2Mヘキサン溶液)を30分かけて滴下した。反応物を減圧下で濃縮した。粗生成物を、SiOクロマトグラフィーを用いて、EtOAc/ヘキサン勾配(2〜15%EtOAc)で溶離させて精製して、0.674g(86%)の56dを白色の固体として得た。
【0168】
工程6−フラスコに、56d(0.49g、1.08mmol)、N−(4−エチニルフェニル)−メタンスルホンアミド(0.31g、0.156mmol)、CuI(0.021g、0.108mmol)及びDMF(8mL)を入れた。溶液をArで5分間スパージした後、Pd(PPhCl(0.15g、0.2mmol)を添加し、溶液を5分間撹拌して、その後、DIPEA(4mL)を添加した。得られた反応混合物を75℃で2時間加熱した後、室温で一晩撹拌した。溶液を1NHClで希釈して、EtOAcで抽出した。抽出物を、水、食塩水で順次洗浄し、乾燥し、濾過して濃縮して、0.163g(27%)の58を得た。
【0169】
工程7−無水MeCN(2mL)に溶解させた58(0.163g、0.29mmol)の溶液に、HO(0.01mL)を添加して、Arガスを溶液に3分間バブリングした後、AuCl(0.009g、0.029mmol)を添加した。Arでさらに3分間スパージを続けて、次に反応物を、Ar下、50℃で3日間撹拌した。反応が完了するように追加のAuClを2回添加した。溶液を冷却し、CELITEで濾過して、パッドをEtOAcで洗浄した。濾液を濃縮して、粗生成物を、2回分取SiOTLCプレートを用いて10%EtOAc/DCMで展開させて精製して、30mg(19%)のI−15を得た。
【0170】
実施例6
3−(6−tert−ブチル−2−オキソ−2H−クロメン−8−イル)−1H−ピリジン−2−オン(I−1)
【化12】


工程1−0℃に冷却したメチル(ジメトキシ−ホスホリル)−酢酸(1.25mL、7.22mmol)のTHF(10mL)溶液に、NaHMDS(16mL、1.0MTHF溶液)を添加した。溶液を15分間撹拌した後、20(1.0g、3.89mmol)及びTHF(10mL)の溶液を添加した。溶液を室温に温めて一晩撹拌した。反応物を水でクエンチしてEtOAcで抽出した。抽出物を乾燥し(MgSO)、濾過して濃縮した。粗生成物を、SiOクロマトグラフィーを用いて、5%EtOAc/ヘキサンで溶離させて精製して、0.72gの62を得た。
【0171】
工程2−62とB−(2−メトキシ−3−ピリジニル)−ボロン酸(CASRN 163105-90-6)のSuzuki縮合を、実施例2の工程3に記載の手順に従って実施して64を得て、これを、SiOクロマトグラフィーを用いて、EtOAc/ヘキサン勾配(0〜15%EtOAc)で溶離させて精製した。
【0172】
工程3−密閉管中、64(0.120g)、48%HBr(125μL)及びHOAc(4mL)の溶液を70℃で一晩加熱した。反応混合物を冷却し、EtOAcで希釈して、1MNaHCO溶液に注いだ。有機相を乾燥し(MgSO)、濾過して濃縮した。粗生成物を、SiOクロマトグラフィーを用いて、EtOAc/ヘキサン勾配(50〜75%EtOAc)で溶離させて精製して、0.028g(25%)のI−1と対応するケイ皮酸を得た。
【0173】
実施例7
N−{4−[6−tert−ブチル−3−オキソ−4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−3H−イソベンゾフラン−(1Z)−イリデンメチル]−フェニル}−メタンスルホンアミド(I−16)及びN−{4−[6−tert−ブチル−3−オキソ−4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−1,3−ジヒドロ−イソベンゾフラン−1−イルメチル]−フェニル}−メタンスルホンアミド(I−17)
【化13】


工程1−56bとN−(4−エチニルフェニル)−メタンスルホンアミドの縮合を、実施例5の工程6に記載の手順に従って実施した。
【0174】
工程2−5℃に冷却した66b(0.186g、0.35mmol)、NaHPO(0.58g、4.2mmol)、2−メチル−2−ブテン(0.75mL、7mmol)のtert−BuOH(9mL)、HO(9mL)及びTHF(3mL)溶液に、NaClO(0.08g、0.863mmol)を添加した。反応混合物を室温に温め、7時間撹拌した。追加の2−メチル−2−ブテン(1.0mL)及びNaClO(0.9g)を添加して、反応物を一晩撹拌した後、1NHClに注いだ。溶液をEtOAcで2回抽出して、集めた抽出物を水、その後食塩水で3回洗浄して、乾燥し、濾過して濃縮した。粗生成物を、SiOクロマトグラフィーを用いて、EtOAc/ヘキサン勾配(20〜80%EtOAc)で溶離させて精製して、0.168g(87%)の68を黄色の膜として得て、これを固化させた。
【0175】
工程3−68(0.050g)、10%Pd/C(9.5mg)、EtOAc(25mL)及びMeOH(25mL)の懸濁液を、50psiの水素下、Parr振とう機で2.5時間振とうした。反応混合物をCELITEで濾過して、パッドをEtOAcで洗浄した。濾液を濃縮して、2回の連続分取SiOプレートにより、5%MeOH/DCMで展開させて精製して、I−16を得た。
【0176】
工程4−オレフィンの還元及びベンジルエーテルの水素化分解を、反応を4時間行う以外は同様にして実施した。生成物を、分取SiOTLCプレートを用いて、60%MeOH/DCMで展開させて精製して、13.8gのI−17を得た。
【0177】
実施例8
N−{4−[6−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−8−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−クロマン−3−イル]−フェニル}−メタンスルホンアミド(I−18)
【化14】


工程1−24(0.967g、2.4mmol)のMeOH(60mL)及びHO(30mL)の懸濁液に、NHCl(1.28g、24mmol)を添加し、混合物を65〜70℃に加熱した。鉄(0.67g、12mmol)を、1時間かけて数回に分けて添加した。添加が完了した後、反応物をさらに撹拌して冷却し、CELITEで濾過して、濾液を濃縮した。残渣をEtOAcで希釈し、HO、食塩水で順次洗浄して、乾燥し、濾過して減圧下で濃縮して、0.906gの70aを得た。
【0178】
工程2−メタンスルホニルクロリドを用いた70aのスルホンアミド70bへの変換を、実施例1の工程4に記載の手順に従って実施した。
【0179】
工程3−THF(20mL)に溶解させ、−15℃に冷却した70b(0.5g、1.1mmol)の溶液に、LiAlH及びTHF(4.44mL、1.0MTHF溶液)の溶液を添加し、得られた溶液を室温で一晩撹拌した。反応混合物を注意深く1NHClに注ぎ、得られた溶液をEtOAcで2回抽出した。集めた抽出物を食塩水で洗浄して、乾燥し、濾過して濃縮した。粗生成物を、SiOクロマトグラフィーを用いて、EtOAc/ヘキサン勾配(20〜85%EtOAc)で溶離させて精製して、72を得た。
【0180】
工程4−72とB−(1,2−ジヒドロ−2−オキソ−3−ピリジニル)−ボロン酸(CASRN 951655-49-5)のSuzukiカップリングを、実施例2の工程3に記載の手順に従って実施してI−18を得て、これを、分取SiOプレートを用いてEtOAcで展開させて精製した。
【0181】
実施例9
N−{4−[3,3−ジメチル−7−オキソ−9−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−2,3,7,8−テトラヒドロ−フロ[3,2−g]キノリン−6−イル]−フェニル}−メタンスルホンアミド
【化15】


工程1−74(2.457g、14mmol)及びアセトン(75mL)の溶液に、KCO(4.907g、36mmol)及び3−ブロモ−1−メチルプロペン(2.0mL、20mmol)を添加し、得られた溶液を一晩加熱還流した。反応混合物を冷却して減圧下で濃縮した。残渣をEtOAc(150mL)及びHO(40mL)で分液した。水相をEtOAcで抽出し、集めた有機抽出物をHO、食塩水で順次洗浄して、乾燥し(NaSO)、濾過して減圧下で濃縮した。残渣を、SiOクロマトグラフィーを用いて、EtOAc/ヘキサン勾配(0〜5%EtOAc)で溶離させて精製して、3.34g(98.5%)の76を得た。
【0182】
工程2−乾燥フラスコ中、76(3.33g、15mmol)及びベンゼン(150mL)の溶液に、BuSnH(6.625g、22mmol)及びAIBN(0.241g)を順次添加し、得られた溶液を一晩加熱還流した。反応混合物を室温に冷却し、10%KF溶液を添加して、得られた二相混合物を2時間激しく撹拌した。相を分離し、有機相を飽和NaHCO(50mL)、食塩水で順次洗浄した。集めた有機抽出物を乾燥し(NaSO)、濾過して濃縮した。粗生成物を、SiOクロマトグラフィーを用いて、DCM/ヘキサン勾配(0〜10%DCM)で溶離させて精製して、1.855g(85%)の78を得た。
【0183】
工程3−乾燥フラスコ中、78(0.700g、5mmol)及びDMF(50mL)の溶液に、NBS(1.765g、10mmol)を添加して、反応物を室温で一晩撹拌した。反応混合物をHO(30mL)及びEtO(150mL)で分液した。水層を分離して、EtO(150mL)で抽出した。有機抽出物をHOで3回、食塩水で1回洗浄した。集めた有機抽出物を乾燥し(NaSO)、濾過して減圧下で濃縮した。残渣をSiOに吸着させて、SiOカラムの上部に添加しヘキサンで溶離させて、0.9260(90%)の80を得た。
【0184】
工程4−0℃に冷却した80(0.956g、4mmol)及びHOAc(8.0mL)の溶液に、Br(320μL、6mmol)及びHOAc(2mL)の溶液を10分かけて滴下した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応物に10%Na(10mL)を添加してクエンチした後、HOAcを減圧下で除去した。残渣を、EtO(100mL)及び飽和NaHCO水溶液(20mL)で分液した。水層を分離して、EtO(100mL)で抽出した。有機抽出物を、飽和NaHCO(20mL)で2回、HOで1回洗浄した。集めた抽出物を乾燥し(NaSO)、濾過して濃縮した。残渣をSiOに吸着させてSiOカラムの上部に添加しヘキサンで溶離させて、1.22(95%)の82を得た。
【0185】
工程5−ジヒドロフラン82を、攪拌しながら濃HSO(2mL)で処理して0℃に冷却する。HNO(69%)を滴下して、反応混合物を0℃で10分間撹拌する。反応混合物を水及びEtOで分液し、有機層を濃縮する。粗物質を、SiOクロマトグラフィーを用いて、ヘキサン又はEtOAc/ヘキサン勾配で溶離させて精製して、84aを得ることができる。
【0186】
工程6−84a及びEtOAc(30mL)の溶液に、塩化スズ二水和物を添加する。反応混合物を室温で一晩撹拌した後、EtOAc及び飽和NaHCOで分液し、CELITEで濾過する。有機層を分離し、水で洗浄して、乾燥し(NaSO)、濾過して濃縮する。粗生成物を、SiOクロマトグラフィーを用いて、EtOAc/ヘキサン勾配で溶離させて精製して、84bを得る。
【0187】
アニリン84bを、実施例2の工程1〜6に記載の手順に適合させて、標記化合物に変換することができる。
【0188】
実施例10
N−{4−[5−メトキシ−6−(1−メチル−シクロプロピル)−2−オキソ−8−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−1,2−ジヒドロ−キノリン−3−イル]−フェニル}−メタンスルホンアミド(98)
【化16】


工程1:92のDCM−MeOH溶液に、テトラブチルアンモニウムトリブロミド(2.0当量)を添加し、得られた混合物を室温で撹拌する。溶媒を減圧下で除去して、残渣をEtOAc及び水で分液する。EtOAc層を水、食塩水で順次洗浄し、乾燥し(NaSO)、濾過して濃縮する。粗残渣を、SiOクロマトグラフィーを用いて、EtOAc/ヘキサン勾配で溶離させて精製して、94aを得ることができる。
【0189】
工程2−94a(0.44g、1.7mmol)のDMF溶液に、KCO(2.5当量)及びヨードメタン(1.3当量)を添加する。得られた混合物を60℃で撹拌する。反応混合物を室温に冷却して、水及びEtOで分液する。有機層を水、食塩水で順次洗浄し、乾燥し(NaSO)、濾過して濃縮して、94bを得る。
【0190】
工程3−ジブロミド94bを、攪拌しながら濃HSO(2mL)で処理して0℃に冷却する。HNO(69%)を滴下し、反応混合物を0℃で10分間撹拌する。反応混合物を水及びEtOで分液し、有機層を濃縮する。粗物質を、SiOクロマトグラフィーを用いて、ヘキサン又はEtOAc/ヘキサン勾配で溶離させて精製して、96aを得ることができる。
【0191】
工程4−96a及びEtOAcの溶液に、塩化スズ二水和物を添加する。反応混合物を室温で一晩撹拌した後、EtOAc及び飽和NaHCOで分液し、CELITEで濾過する。有機層を分離し、水で洗浄して、乾燥し(NaSO)、濾過して濃縮する。粗生成物を、SiOクロマトグラフィーを用いて、EtOAc/ヘキサン勾配で溶離させて精製して、96bを得る。
【0192】
アニリン96bを、実施例2の工程1〜6に記載の手順に適合させて、標記化合物に変換することができる。
【0193】
2−tert−ブチル−フェノールから同様の手順により、N−{4−[6−tert−ブチル−5−メトキシ−2−オキソ−8−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−1,2−ジヒドロ−キノリン−3−イル]−フェニル}−メタンスルホンアミドが得られる。
【0194】
実施例11
HCV NS5B RNAポリメラーゼ活性
HCVポリメラーゼ(NS5B570n−Con1)の酵素活性を、酸不溶性RNA産物への放射性標識ヌクレオチド一リン酸塩の取り込みとして測定した。非取り込み放射性標識基質を濾過により除去し、シンチラントを、放射性標識RNA産物を含有する洗浄及び乾燥したフィルタープレートに添加した。反応の最後のNS5B570−Con1により生成したRNA産物量は、シンチラントによる発光量に正比例していた。
【0195】
HCV Con1株、遺伝子型1b(NS5B570n−Con1)由来のN末端6−ヒスチジンタグ化HCVポリメラーゼは、全長HCVポリメラーゼに対してC末端に21アミノ酸の欠損があり、の大腸菌BL21(DE)pLysS株から精製された。HCV NS5B Con1(GenBank登録番号AJ242654)のコード配列を含有する構築物を、プラスミド構築物pET17bのT7プロモーター発現カセットの下流に挿入し、大腸菌で形質転換した。単一コロニーをスターター培養として一晩増殖させた後、100μg/mLアンピシリンを添加した10LのLB培地中、37℃でのインキュベーションに使用した。600nMにおける培養物の吸光度が0.6〜0.8になった時に、0.25mMイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加してタンパク質発現を誘導し、30℃で16〜18時間の後に細胞を回収した。NS5B570n−Con1を、その後のNi−NTAカラムクロマトグラフィー、SP−セファロースHP及びSuperdex75樹脂を含む3工程プロトコールを用いて精製し均一にした。
【0196】
各50μlの酵素反応物には、内部リボソーム導入部位(cIRES)の相補配列由来の20nMRNAテンプレート、20nMNS5B570n−Con1酵素、0.5μCiトリチウム化UTP(Perkin Elmer、カタログ番号TRK-412;比活性:30〜60Ci/mmol;ストック溶液濃度、7.5×10−5M〜20.6×10−6M)、各1μMのATP、CTP及びGTP、40mMTris−HCl(pH8.0)、40mMNaCl、4mMDTT(ジチオスレイトール)、4mMMgCl、及びDMSOで段階希釈した化合物5μlが含有される。反応混合物を、96ウェルフィルタープレート(カタログ番号MADVN0B、Millipore Co.)に入れて、30℃で2時間インキュベーションした。最終濃度10%(v/v)のトリクロロ酢酸を添加して反応を止め、4℃で40分間インキュベーションした。反応物を濾過し、8反応容量の10%(v/v)トリクロロ酢酸、4反応容量の70%(v/v)エタノールで洗浄して、風乾し、各反応ウェルに25μlのシンチラント(Microscint 20, Perkin-Elmer)を添加した。
【0197】
シンチラントからの発光量を、Topcount(登録商標)プレートリーダー(Perkin-Elmer、エネルギーレンジ:低効率モード:標準カウント時間:1分間、バックグラウンド減算:なし、クロストーク減少:オフ)でカウント/分(CPM)に変換した。
【0198】
Excel(登録商標)(Microsoft(登録商標))及びActivityBase(登録商標)(idbs(登録商標))でデータを解析した。酵素非存在下での反応を使用してバックグラウンドシグナルを決定し、これを酵素反応から差し引いた。ポジティブコントロール反応を化合物非存在下で行って、これからバックグラウンド補正活性を100%ポリメラーゼ活性として設定した。全データを、ポジティブコントロールのパーセンテージとして表した。RNA合成の酵素触媒速度が50%(IC50)減少した化合物の濃度を、数式(i):
【数1】


をデータに当てはめて算出した。式中、「Y」は、相対酵素活性(%)に対応し、「%Min」は、飽和化合物濃度における残存相対活性に対応し、「%Max」は、最大相対酵素活性に対応し、「X」は、化合物濃度に対応し、「S」は、Hill係数(又は傾き)に対応する。
【0199】
実施例12
HCVレプリコンアッセイ
本アッセイは、式Iで示される化合物のHCV RNA複製を阻害する能力、即ち、そのHCV感染症の処置のための潜在的有用性を測定するものである。アッセイは、細胞内HCVレプリコンRNAレベルに対する単純読み出しとしてレポーターを利用する。ウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子を、内部リボソーム導入部位(IRES)配列の直後の、遺伝子型1bレプリコン構築物NK5.1の第一オープンリーディングフレームに導入し(N. Krieger et al., J. Virol. 2001 75(10):4614)、口蹄疫ウイルス由来の自己開裂ペプチド2Aを介して、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(NPTII)遺伝子と融合させた(M.D. Ryan & J. Drew, EMBO 1994 13(4):928-933)。in vitro転写した後、RNAをヒト肝細胞癌Huh7細胞にエレクトロポレーションして、G418耐性コロニーを単離し増殖させた。安定に選択された細胞株2209−23は、複製HCVサブゲノムRNAを含有し、レプリコンにより発現されたウミシイタケルシフェラーゼ活性は、細胞におけるそのRNAレベルを反映する。化合物の抗ウイルス活性及び細胞毒性を並行して測定するために、一方が不透明白色であり、他方が透明である2連プレートでアッセイを実施し、細胞増殖の減少又は細胞死によるものではない実測活性を確認した。
【0200】
ウミシイタケルシフェラーゼレポーターを発現するHCVレプリコン細胞(2209−23)を、5%ウシ胎仔血清(FBS, Invitrogen cat. No. 10082-147)を添加したダルベッコMEM(Invitrogen cat No. 10569-010)中で培養し、96ウェルプレートに、5000細胞/ウェルで幡種して、一晩インキュベーションした。24時間後、様々な希釈化合物を含有する増殖培地を細胞に添加し、これをさらに37℃で3日間インキュベーションした。インキュベーション終了時に、白色プレートの細胞を回収し、ルシフェラーゼ活性を、ウミシイタケルシフェラーゼアッセイシステム(Promega, cat No. E2820)を用いて測定した。以下のパラグラフに記載の全ての試薬は、製造業者のキットに含まれており、その試薬の調製は製造業者の説明書に従って行った。各ウェルの細胞を100μlのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.0)(PBS)で1回洗浄し、20μlの1×ウミシイタケルシフェラーゼアッセイライシスバッファーで溶解した後、室温で20分間インキュベーションした。次に、プレートを、Centro LB 960マイクロプレートルミノメーター(Berthold Technologies)に入れ、100μlのウミシイタケルシフェラーゼアッセイバッファーを各ウェルに注入して、2秒遅れ、2秒測定プログラムを用いてシグナルを測定した。未処理細胞コントロール値と比較してレプリコンレベルを50%減少させるのに必要な薬物濃度であるIC50を、上述の、ルシフェラーゼ活性の減少パーセンテージ対薬物濃度のプロットから算出することができる。
【0201】
Roche Diagnostic(cat No. 1644807)のWST−1試薬を、細胞毒性アッセイに使用した。ブランクとして培地のみを含有するウェルを含む透明プレートの各ウェルに、10μlのWST−1試薬を添加した。次に、細胞を37℃で2時間インキュベーションして、450nm(リファレンスフィルター、650nm)におけるOD値を、MRX Revelationマイクロタイタープレートリーダー(Lab System)を用いて測定した。再度、未処理細胞コントロール値と比較して細胞増殖を50%減少させるのに必要な薬物濃度であるCC50を、上述の、WST−1値の減少パーセンテージ対薬物濃度のプロットから算出することができる。
【0202】
【表2】

【0203】
実施例13
いくつかの経路で投与するための対象化合物の医薬組成物を、本実施例に記載のようにして調製した。
【0204】
【表3】

【0205】
成分を混合し、それぞれ約100mgを含有するようにカプセルに分注した;1カプセルはおおよそ全一日用量に相当する。
【0206】
【表4】

【0207】
成分を混合し、メタノールなどの溶媒を用いて粉状にする。次に、製剤を乾燥して適切な錠剤成形機を用いて錠剤(約20mgの活性化合物を含有する)に成形する。
【0208】
【表5】

【0209】
成分を混合し、経口投与用の懸濁剤を作製する。
【0210】
【表6】

【0211】
活性成分を、注射用水の一部に溶解させる。次に、撹拌しながら十分量の塩化ナトリウムを添加し溶液を等張にする。残りの注射用水で溶液を目的の重量にして、0.2ミクロンのメンブランフィルターで濾過し無菌条件下で包装する。
【0212】
これまでの記載又は以下の特許請求の範囲に開示される特徴は、開示された機能を遂行するための特定の形態又は用語、あるいは、開示された結果を達成するための方法又はプロセスを表しており、必要に応じて、そのような特徴を個々に、又は任意に組み合わせて、その種々の形態で本発明を実現するために使用することができる。
【0213】
上記の発明を明確にし理解することを目的に、説明及び例を挙げて詳細に記載する。当業者にとって、添付の特許請求の範囲内で変更及び改変を実施できることは明らかであろう。従って、これまでの記載は例示的であって、限定するものではないことを意図したものであることを理解されたい。従って、本発明の範囲は、これまでの記載に関して決定されるものではなく、以下に添付の特許請求の範囲を当該請求項の均等物の全範囲と合わせて決定されるものとする。
【0214】
本願に引用される特許、特許出願及び科学文献は、当業者の知識を確立するものであり、それによって、あたかも、各々が参照により組み込まれたものであることを具体的に、個別に示されたかのように同程度に、ここにその全体が参照により組み込まれる。本明細書に引用される任意の参照と本明細書の特定の教示との間に何らかの不一致が生じた場合、後者を優先して理解されるものとする。同様に、言語又は語句の技術分野で理解される定義と本明細書において具体的に教示されたような言語又は語句の定義との間に何らかの不一致が生じた場合、後者を優先して理解されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化17】


[式中、
Aは、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル、3−オキソ−3,4−ジヒドロ−ピラジン−2−イル、3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ピリダジン−4−イル、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリミジン−4−オン−5−イル及び6−オキソ−1,6−ジヒドロ−[1,2,4]トリアジン−5−イルからなる群から選択されるヘテロアリール基であり、前記ヘテロアリールは、ハロゲン、C1−6アルキル、C1−3ハロアルキル又はC1−6アルコキシで場合により置換されており;
Rは、Ia、Ib又はIcであり;
【化18】


Xは、NR又はOであり;
XがOである場合、X及びXは、一緒になってオキソであるか、又はX及びXの一方がOH若しくはC1−3アルコキシであり、X及びXの他方が水素であり;あるいは、XがNRである場合、X及びXは、一緒になってオキソであり;
3aは水素であり、R3bはCHArであるか、又はR3a及びR3bは、一緒になって=CHArであり;
Arは、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、ハロゲン、シアノ、CO、CONR、C1−3アシルアミノ、(CHNR、(CHCONR、(CHSONR、(CHSO及びO(CHCONRからなる群から選択される1〜3個の置換基で場合により独立して置換されているフェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル又はピリダジニルであり;
及びRは、各々出現ごとに独立して、水素、C1−6アルキル、C1−6アシル、C1−6アルキルスルホニル、C1−6ハロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル−スルホニル又はC1−6アルコキシ−C1−6アルキルスルホニル、SO(CHNR、カルバモイル、C1−3アルキルカルバモイル、C1−3ジアルキルカルバモイル又はベンゾイルであり、前記ベンゾイルは、アミノ、ハロゲン、C1−6アルキル又はC1−3アルキルスルホニルアミドからなる群から選択される1又は2個の基で場合により独立して置換されており;
及びRは、各々出現ごとに独立して、水素、C1−6アルキル、C1−6アシル又は環状アミンであり;
は、水素、C1−6アルキルオキシ若しくはC1−6ハロアルキルオキシであるか、又はR及びR2aは、一緒になってCH−Oであり、そしてこれらが結合する原子と一緒になって、2,3−ジヒドロベンゾフラン形成し;
は、水素であるか、又はR及びR2aは、一緒になってCH−Oであり、そしてこれらが結合する原子と一緒になって、2,3−ジヒドロベンゾフランを形成し;
は、水素又はC1−6アルキルであり;
は、水素、C1−6アルキル、C1−6ハロアルキル、C1−3アルコキシ−C1−3アルキル又は場合により置換されているベンジルであり;
2a、R2b及びR2cは、(i)独立している場合、C1−3アルキル、C1−2アルコキシ、ハロゲン又はC1−2フルオロアルキルから独立して選択されるか、又は、
(ii)一緒になる場合、R2a及びR2bは、一緒になってC2−4メチレンであり、R2cは、C1−3アルキル、C1−2アルコキシ、ハロゲン、シアノ、カルボキシル又はC1−2フルオロアルキルであるか;あるいは
(iii)R又はRのいずれかとR2aとは、一緒になってCH−Oであり、そしてこれらが結合する原子と一緒になって、2,3−ジヒドロ−ベンゾフランを形成し、R2b及びR2cは、C1−3アルキルであり;
nは、各々出現ごとに独立して、0〜3の整数である]
に記載の化合物又は製薬的に許容しうるその塩。
【請求項2】
2a、R2b及びR2cが、(i)独立している場合、C1−3アルキル、C1−2アルコキシ又はC1−2フルオロアルキルから独立して選択されるか、又は、
(ii)一緒になる場合、R2a及びR2bが、一緒になってC2−4メチレンであり、R2cが、C1−3アルキル、C1−2アルコキシ、ハロゲン又はC1−2フルオロアルキルであるか;あるいは、
(iii)R又はRのいずれかとR2aとが、一緒になってCH−Oであり、そしてこれらが結合する原子と一緒になって、2,3−ジヒドロ−ベンゾフランを形成し、R2b及びR2cが、C1−3アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Aが、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イルであり、
Rが、Iaであり、
Xが、NR又はOであり、
及びXが、一緒になってオキソであり、
Arが、場合により置換されているフェニルであり、そして、
2a、R2b及びR2cの各々がメチルである、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
Arが、少なくとも(CHNRで置換されているフェニルであり、式中、Rが、C1−6アシル、C1−6アルキルスルホニル、C1−6ハロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル−スルホニル又はC1−6アルコキシ−C1−6アルキルスルホニルであり、Rが水素であり、nが0である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
が、C1−6アルキルスルホニルである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
Aが、3−オキソ−3,4−ジヒドロ−ピラジン−2−イルであり、
Rが、Iaであり、
Xが、NR又はOであり、X及びXが、一緒になってオキソであり、
Arが、少なくとも(CHNRで置換されているフェニルであり、
が、C1−6アシル、C1−6アルキルスルホニル、C1−6ハロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル−スルホニル又はC1−6アルコキシ−C1−6アルキルスルホニルであり、
が水素であり、nが0であり、そして、
2a、R2b及びR2cの各々がメチルである、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項7】
Aが、3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ピリダジン−4−イルであり、
Rが、Iaであり、
Xが、NR又はOであり、X及びXが、一緒になってオキソであり、
Arが、少なくとも(CHNRで置換されているフェニルであり、
が、C1−6アシル、C1−6アルキルスルホニル、C1−6ハロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル−スルホニル又はC1−6アルコキシ−C1−6アルキルスルホニルであり、
が水素であり、nが0であり、そして、
2a、R2b及びR2cの各々がメチルである、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項8】
Aが、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イルであり、RがIbである、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項9】
Arが、場合により置換されているフェニルであり、R2a、R2b及びR2cの各々がメチルである、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
Arが、少なくとも(CHNRで置換されているフェニルであり、Rが、C1−6アシル、C1−6アルキルスルホニル、C1−6ハロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル−スルホニル又はC1−6アルコキシ−C1−6アルキルスルホニルであり、Rが水素であり、nが0である、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
Aが、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イルであり、RがIcである、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項12】
3aが水素であり、R3bがCHArであり、Arが、場合により置換されているフェニルであり、R2a、R2b及びR2cの各々がメチルである、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
Arが、少なくとも(CHNRで置換されているフェニルであり、Rが、C1−6アシル、C1−6アルキルスルホニル、C1−6ハロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル−スルホニル又はC1−6アルコキシ−C1−6アルキルスルホニルであり、Rが水素であり、nが0である、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
3a及びR3bが、一緒になって=CHArであり、Arが、場合により置換されているフェニルであり、R2a、R2b及びR2cがメチルである、請求項11に記載の化合物。
【請求項15】
Arが、少なくとも(CHNRで置換されているフェニルであり、Rが、C1−6アシル、C1−6アルキルスルホニル、C1−6ハロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル−スルホニル又はC1−6アルコキシ−C1−6アルキルスルホニルであり、Rが水素であり、nが0である、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
化合物が、
3−(6−tert−ブチル−2−オキソ−2H−クロメン−8−イル)−1H−ピリジン−2−オン;
6−tert−ブチル−8−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−1H−キノリン−2−オン;
3−[3−(4−アミノ−フェニル)−6−tert−ブチル−2−オキソ−2H−クロメン−8−イル]−1H−ピリジン−2−オン;
6−tert−ブチル−8−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−3−フェニル−1H−キノリン−2−オン;
N−{4−[6−tert−ブチル−2−オキソ−8−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−2H−クロメン−3−イル]−フェニル}−メタンスルホンアミド;
6−tert−ブチル−1−メチル−8−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−3−フェニル−1H−キノリン−2−オン;
6−tert−ブチル−3−(4−ヒドロキシ−フェニル)−1−メチル−8−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−1H−キノリン−2−オン;
N−{4−[6−tert−ブチル−1−メチル−2−オキソ−8−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−1,2−ジヒドロ−キノリン−3−イル]−フェニル}−メタンスルホンアミド;
N−{4−[6−tert−ブチル−2−オキソ−8−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−1,2−ジヒドロ−キノリン−3−イル]−フェニル}−メタンスルホンアミド;
N−{3−[6−tert−ブチル−2−オキソ−8−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−1,2−ジヒドロ−キノリン−3−イル]−フェニル}−メタンスルホンアミド;
4−[6−tert−ブチル−2−オキソ−8−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−1,2−ジヒドロ−キノリン−3−イル]−ベンゼンスルホンアミド;
3−(4,4−ジメチル−2−オキソ−クロマン−8−イル)−1H−ピリジン−2−オン;
6−tert−ブチル−3−[4−(5−メチル−[1,3,4]オキサジアゾール−2−イル)−フェニル]−8−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−1H−キノリン−2−オン;
4−[6−tert−ブチル−1−メチル−2−オキソ−8−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−1,2−ジヒドロ−キノリン−3−イル]−ベンゼンスルホンアミド;
3−[6−tert−ブチル−2−オキソ−8−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−1,2−ジヒドロ−キノリン−3−イル]−ベンズアミド;
N−{4−[6−tert−ブチル−1−オキソ−8−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−1,2−ジヒドロ−イソキノリン−3−イル]−フェニル}−メタンスルホンアミド;
N−{4−[6−tert−ブチル−1−オキソ−8−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−1H−イソクロメン−3−イル]−フェニル}−メタンスルホンアミド;
N−{4−[6−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−8−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−クロマン−3−イル]−フェニル}−メタンスルホンアミド;
N−{4−[6−tert−ブチル−3−オキソ−4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−3H−イソベンゾフラン−(1Z)−イリデンメチル]−フェニル}−メタンスルホンアミド;及び
N−{4−[6−tert−ブチル−3−オキソ−4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−1,3−ジヒドロ−イソベンゾフラン−1−イルメチル]−フェニル}−メタンスルホンアミド;
からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の化合物又は製薬的に許容しうるその塩。
【請求項17】
C型肝炎ウイルス(HCV)感染症を処置する方法であって、請求項1又は2に記載の化合物の治療有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む方法。
【請求項18】
HCVの複製を阻害する少なくとも一つの免疫系モジュレーター及び/又は少なくとも一つの抗ウイルス剤を同時投与することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
免疫系モジュレーターがインターフェロン又は化学誘導化インターフェロンである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
HCV感染症の処置のための医薬を調製するための、請求項1又は2で定義されるような式A−Rで示される化合物の使用。
【請求項21】
HCV感染症の処置のための医薬を調製するための、HCV複製を阻害する少なくとも一つの免疫系モジュレーター及び/又は少なくとも一つの抗ウイルス剤と併せた、式A−Rで示される化合物の請求項20に記載の使用。
【請求項22】
インターフェロン又は化学誘導化インターフェロンと同時投与するための、HCV感染症の処置のための医薬を調製するための、式A−Rで示される化合物の請求項20に記載の使用。
【請求項23】
請求項1に記載の化合物、あるいは少なくとも一つの製薬的に許容しうる担体、希釈剤又は賦形剤と混合した、請求項1に記載の化合物を含む、組成物。

【公表番号】特表2012−519661(P2012−519661A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552427(P2011−552427)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052661
【国際公開番号】WO2010/100178
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】