説明

抗微生物製剤

(a)過酸化ジアシル、アルキルヒドロペルオキシド、及び金属過酸化物からなる群より選択される過酸化物と、(b)ベンゾキノン又はヒドロキノンとを含有する抗微生物製剤。本製剤は、特にブドウ球菌又はプロピオン酸菌に対して、とりわけ皮膚及び皮膚構造の病状、例えばニキビを治療するために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗微生物製剤に関するとともに、特定の化合物の組合せの抗微生物剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
過酸化ベンゾイル等の過酸化物は、皮膚感染の処置、とりわけニキビの処置のための局所用製剤としての用途が知られている。特に過酸化ベンゾイルは、角質溶解(keratolytic)(面皰溶解(comedolytic))活性を有することで、よく知られている。
【0003】
しかしながら、過酸化物は皮膚刺激剤であり、漂白剤や酸化剤としても働くことが知られている。これらの副作用のために、局所用の皮膚調製剤に使用可能な過酸化物の濃度は制限されてしまい、また、当然ながらユーザに不快感を与えることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今回、特定の種類の過酸化物を特定の種類のキノンと組み合わせると、それらを組み合わせた抗微生物活性のレベルを凌ぐ相乗効果が見られるという、驚くべき知見が得られた。その結果、従来の製剤に比べて効力がより優れた、及び/又は、活性過酸化物のレベルがより低い、特に局所適用のための新規な抗微生物製剤を調製することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、(a)過酸化ジアシル、アルキルヒドロペルオキシド、及び金属過酸化物からなる群より選択される過酸化物と、(b)ベンゾキノン又はヒドロキノンとを含有する抗微生物製剤が提供される。
【0006】
本製剤は、皮膚(特にヒトの皮膚)への局所適用、及び/又は、皮膚への接触に適している。従って、前記の過酸化物及びベンゾ/ヒドロキノンは、皮膚及び/又は他の上皮への適用及び/又は接触を安全に行なうことができるよう、医薬的に許容可能なビヒクル内に包含されることが好ましい。本製剤は、鼻孔、目、頭皮及び/又は膣等の領域への局所適用、及び/又は、耳及び/又は口腔内の組織領域への局所適用に適していることが理想的である。中でも、皮膚、鼻孔、及び耳内の組織への適用に適していることが最も好ましく、特に皮膚及び鼻孔が好ましい。
【0007】
局所適用「に適した(suitable for)」製剤は、局所適用に適合させた(adapted for)製剤であってもよい。
【0008】
好適なビヒクルは、局所用のスキンケア又は医薬調製剤を調製する分野において、当業者にはよく知られている。ビヒクルは通常は流体である。流体という語には、クリーム、ペースト、ゲル、ローション、軟膏、フォーム、又はその他の粘性又は半粘性の流体が含まれ、更には、スプレーとして(例えば鼻用に)使用されるもの等、より粘性の低い流体も含まれる。前記ベンゾ/ヒドロキノンは、溶液又は懸濁液の形態で存在してもよい。ここで「懸濁液(suspension)」という語には、乳濁液(emulsions)やその他の多相分散液(multi-phase dispersions)が含まれる。
【0009】
前記の過酸化物及びベンゾ/ヒドロキノンの一方又は両方が、個別に又は一緒に、標的化に適した、或いは目標部位における放出及び/又は投与時間の制御に適した、送達用ビヒクル(delivery vehicle)に担持されて(carried in or on)いてもよい。こうしたビヒクルとしては、リポゾーム及び他のカプセル化用物質(encapsulating entities)、例えばニオゾーム(niosomes)、アスパゾーム(aspasomes)、マイクロスポンジ(microsponges)、マイクロエマルジョン、ヒドロゲル、及び固体脂質ナノ粒子等が挙げられる。
【0010】
過酸化物は、O22-基を有する化合物である。無機でも有機でもよいが、通常は過酸化水素(HbO2)ではない。本発明によれば、この過酸化物は、過酸化ジアシル(例えば、過酸化ジアセチル、過酸化ジデカノイル、過酸化ジラウロイル、又は過酸化ジベンゾイル)、アルキルヒドロペルオキシド(例えばt−ブチルヒドロペルオキシド)、及び金属過酸化物から選択される。一般的には、過酸化ジアシルが好ましい。
【0011】
好適な金属過酸化物としては、亜鉛、カルシウム、リチウム、ナトリウム、バリウム、マグネシウム、及び銅の過酸化物が挙げられる。最も好ましいのは、第(I)族又は第(II)族の金属の過酸化物、特に後者である。例としては、ナトリウム、マグネシウム、及びカルシウムの過酸化物が挙げられるが、中でも、カルシウム及びマグネシウムの過酸化物が好ましく、特にカルシウムの過酸化物が好ましい。
【0012】
過酸化ジアシルは式R1−C(O)−OO−C(O)−R2で表される。ここで、R1及びR2は、各々独立に、アルキル、シクロアルキル、及びアリール基から選択されるが、好ましくはアリールである。好適なアルキル基としては、C1からC20基から選択されるものが挙げられ、好ましくはC1からC16基から選択されるもの、より好ましくはC1からC12基から選択されるもの、最も好ましくはC1からC8、又はC1からC6、又はC1からC4(例えば、メチル、エチル、プロピル(好ましくはイソプロピル)、又はブチル(好ましくはt−ブチル))基から選択されるものが挙げられる。好適なアリール基としては、フェニルが挙げられる。
【0013】
過酸化ジアシルとしては特に、脂肪酸源に由来するものが挙げられる。例えば、過酸化ジラウリル、過酸化ジアミル、又は過酸化ジクミル過酸化物が挙げられる。アルキル、シクロアルキル、又はアリール基は、他の1又は複数の基により置換されていてもよいが、無置換であることが好ましい。
【0014】
1及びR2は、各々独立に、C1からC12アルキル及びC1からC8アリールから選択される基であることが好適であり、特にフェニルが好適である。
【0015】
好適な過酸化ジアシルである、中鎖(C6からC12)脂肪酸の過酸化ジアシルの一部は、例えばUS−4,479,939に開示されている。中でも、R1及びR2のうち少なくとも一方(好ましくは両方)がフェニルであることが好ましい。
【0016】
アルキルヒドロペルオキシドは式R3−OO−Hで表わされる。ここで、R3は、アルキル、シクロアルキル、及びアリール基から選択される。中でもアルキルが好ましく、C1からC8、又はC1からC6、又はC1からC4基が好ましい。一般に、R3は、R1及びR2について上述した定義と同様であればよい。中でも、R3としてはt−ブチルが最も好ましい。
【0017】
過酸化物は、過酸化ジアシル及び金属過酸化物から選択されることが好ましい。
【0018】
特に、本製剤をブドウ球菌に対して使用する場合には、過酸化物は過酸化ジアシルであることが好ましい。中でも、過酸化ベンゾイル(別称、過酸化ジベンゾイル、又は、超酸化ベンゾイル)が好ましい。これは式Ph−C(O)−O−O−C(O)−Phで表わされる。
【0019】
特に、本製剤をプロピオン酸菌に対して使用する場合には、過酸化物は過酸化ジアシル(好ましくは過酸化ベンゾイル)、アルキルヒドロペルオキシド(好ましくはt−ブチルヒドロペルオキシド)、及び金属過酸化物(好ましくは過酸化カルシウム、過酸化マグネシウム、又は過酸化ナトリウム、より好ましくは過酸化カルシウム又は過酸化マグネシウム)から選択されることが好ましい。
【0020】
過酸化物としては特に過酸化ベンゾイルが挙げられる。
【0021】
本発明に係る製剤は、2種以上の過酸化物を含有していてもよい。
【0022】
ベンゾキノンは、不飽和六員環に2つのC=O基を有するシクロヘキサジエン−ジオンである。残る4つの炭素原子は、1又は複数の置換基を有していてもよい。言い換えれば、ベンゾキノンは任意により置換されていてもよい。但し、「ベンゾキノン」という語は、二環式又は多環式のキノンを包含することを意図するものではない。
【0023】
ヒドロキノン(ヒドロキシキノンと呼ばれる場合もある)は、ベンゾキノンにおいて、C=O基のうち1つ又は複数(通常は両方)の代わりにC−OH基を有するものである。言い換えれば、通常はジヒドロキシベンゼンであって、任意により、1又は複数の他の基によって置換されたものである。
【0024】
ベンゾキノンの少なくとも一部が、対応するヒドロキノンの形態で存在してもよく、またはその逆でもよい。また、何れについても、少なくともその一部が、C=O又はC−OH基のうち1つ又は複数がC−O*であるラジカルの形態で存在していてもよい。こうした化合物は、その局所環境(例えばpH)に一部依存して、例えばベンゾキノン及びその対応するヒドロキノン等、2種以上の種の平衡混合物の形態で存在していてもよい。例えば、アルカリ性pHの場合、本化合物はベンゾキノンの形態で存在する傾向が強いのに対して、酸性pHにおいては、ヒドロキノンの形態で存在する傾向が強い。また、過酸化物等の酸化剤の存在によって、ヒドロキノンの少なくとも一部が対応するベンゾキノンへと変換される場合がある。即ち、本発明は、ベンゾキノン、ヒドロキノン、対応するラジカル、又はこうした化学種のうち2種以上の混合物について、その使用を包含するものである。
【0025】
ベンゾ/ヒドロキノンが有する2つのC=O基又はC−OH基は、互いにオルト、メタ、又はパラの何れの位置に存在していてもよい。互いにオルトに位置する場合は、シクロヘキサジエン−1,2−ジオン又はo−ベンゾキノンとして、或いは、対応するヒドロキノンの場合には、カテコールとして知られる化合物となる。互いにメタに位置する場合には、シクロヘキサジエン−1,3−ジオン又はm−ベンゾキノンとして、或いは、対応するヒドロキノンの場合には、レゾルシノールとして知られる化合物となる。互いにパラに位置する場合には、シクロヘキサジエン−1,4−ジオン又はp−ベンゾキノンとして、或いは、パラ置換HO−Ph−OHの場合には、単にp−ヒドロキノンとして知られる化合物となる。
【0026】
これら2つのC=O基又はC−OH基は、互いにオルト又はパラに位置することが好ましく、パラに位置するのが最も好ましい。
【0027】
本発明で使用されるベンゾ/ヒドロキノンは、例えばアルキル、アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ(−NO2)、及びアミン(−NR2、ここでRは各々独立に、水素又は炭化水素である)基から選択される1又は複数の他の基によって、置換されていてもよく、場合によっては置換されていることが好ましい。こうした基は、キノンのシクロヘキサジエン環内の炭素原子に結合することになる。
【0028】
一般に、アルキル置換基は、直鎖状及び分岐鎖状の何れのアルキル基であってもよい。また、シクロアルキル部分(moieties)を有していてもよい。その炭素原子の数は、例えば1から12、好ましくは1から10、より好ましくは1から8の範囲である。アルキル置換基はC1からC6のアルキル基であることが好ましく、C1からC5又はC1からC4のアルキル基であることが好ましい。第2級及び第3級アルキル基(例えばイソプロピル及びt−ブチル)が好ましい。従って、好適なアルキル基は、メチル、エチル、イソプロピル、及びt−ブチルから選択されるものである。
【0029】
アルコキシ置換基は、C1からC6アルコキシ基が好ましく、C1からC5、又はC1からC4、又はC1からC2アルコキシ基がより好ましく、メトキシが最も好ましい。
【0030】
ハロゲン置換基は、例えばフッ素、塩素、及び臭素から選択されるが、フッ素又は塩素が好ましく、塩素が最も好ましい。
アミン置換基としてはNH2が好ましい。
【0031】
ベンゾ/ヒドロキノンは、こうした置換基を少なくとも1つ有していることが好ましく、その置換位置は、(少なくともメタ又はパラ置換ベンゾ/ヒドロキノンの場合)2位、又は(オルト置換化合物の場合)3位であることが好ましい。場合によっては、ベンゾ/ヒドロキノンは、こうした置換基2つにより置換されていてもよく、或いは3つ、更には4つ有していてもよい場合もある。ベンゾ/ヒドロキノンが有するこうした置換基の数は1つ又は2つであることが好ましく、場合によっては1つだけであることが好ましい。
【0032】
特に好ましい置換基としては、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、及びニトロ基から選択されるもの、或いはアルキル、アルコキシ、及びハロゲン基から選択されるもの、或いはアルキル及びハロゲン基から選択されるもの、或いはアルキル及びアルコキシ基から選択されるものが挙げられる。最も好ましい置換基はアルキル基であり、特にC1からC4アルキル基が好ましい。
【0033】
ベンゾ/ヒドロキノンは最高4つのアルキル基で置換されていてもよいが、モノ又はジアルキルベンゾ/ヒドロキノンであることが好ましい。
【0034】
ベンゾ/ヒドロキノンとしては、例えば1つのブチル基により置換されたものが挙げられ、そのブチル基は2位に存在することが好ましい。但し、2以上のブチル基、例えば2つのブチル基で置換されていてもよい。ブチル基としてはt−ブチル基が好ましい。
【0035】
また、2つのブチル基によって置換されたベンゾ/ヒドロキノンも挙げられる。これらのブチル基が占める位置は、特にベンゾ/ヒドロキノンがパラ−ベンゾ/ヒドロキノンである場合、例えば2位及び5位が挙げられる。或いは、特にベンゾ/ヒドロキノンがオルト−ベンゾ/ヒドロキノンの場合には、3位及び5位が挙げられる。これらのブチルもt−ブチル基であることが好ましい。
【0036】
上記置換基に代わり、或いはそれらに加えて、ベンゾ/ヒドロキノンは1つのメチル基によって置換されていてもよい。このメチル基の存在位置は、2位又は5位であることが好ましい。但し、2以上のメチル、例えば2つ又は3つ、更には4つのメチルで置換されていてもよい。例えば、2つのメチル基で置換される場合、これらのメチル基の存在位置は2位及び3位であることが好ましい。2つのメチル基で置換される場合、その存在位置は2位、3位、及び5−位であることが好ましい。
【0037】
上記置換基に代わり、或いはそれらに加えて、ベンゾ/ヒドロキノンは1つのプロピル基で置換されていてもよい。このプロピル基は2位に存在することが好ましい。但し、ベンゾ/ヒドロキノンは2以上のプロピル基、例えば2つのプロピル基で置換されていてもよい。プロピルとしてはイソプロピル基が好ましい。
【0038】
上記置換基に代わり、或いはそれらに加えて、ベンゾ/ヒドロキノンは1つ、2つ、3つ、更には4つのエチル基で置換されていてもよい。エチル基の数は1つ又は2つが好ましく、1つがより好ましい。中でも、少なくとも1つのエチル基が2位を占めることが好ましい。
【0039】
また、多くの場合は好ましいことではないが、上記置換基に代わり、或いはそれらに加えて、ヒドロキノンのC−OH基の酸素原子に直接結合(し、これによりシクロヘキシル環上のヒドロキシル基の水素原子を置換)する置換基を、1つ又は2つ(好ましくは1つ)有していてもよい。例えば、これらの酸素原子のうち1つに、アルキル基が結合していてもよい。その好ましい例については上述した通りである。このアルキル基としては、例えば1−o−ヘキシル−2,3,5−トリメチルヒドロキノン(HTHQ)に見られるように、ヘキシルが挙げられる。
【0040】
ベンゾ/ヒドロキノンとしては特に、後述の実施例1及び6で列記されるものが挙げられる。例としては、2位をt−ブチル基で置換されたパラ−ヒドロキノンであるt−ブチルヒドロキノン(TBHQ)、2位をイソプロピル基で置換され、5位をメチル基で置換されたパラ−ベンゾキノンであるチモキノン、或いはその対応するヒドロキノンであるチモヒドロキノンが挙げられる。ベンゾ/ヒドロキノンは、例えばTBHQ、p−ヒドロキノン、2,3−ジメチル−p−ヒドロキノン、及び2−エチル−p−ヒドロキノンから選択されるが、中でもTBHQ、2,3−ジメチル−p−ヒドロキノン、及び2−エチル−p−ヒドロキノンから選択されることが好ましい。
【0041】
一般に、ベンゾ/ヒドロキノンは、無置換のベンゾキノンでも、無置換のヒドロキノンでもないことが好ましい。
【0042】
本発明で使用されるベンゾ/ヒドロキノン、特にチモキノン、ジチモキノン、又はチモヒドロキノンは、他の物質を多数含有する植物抽出物の一部として使用するよりも、単離されたキノン(天然由来でも合成由来でもよいが、後者が好ましい)の形態で使用するのが理想的である。
【0043】
ベンゾ/ヒドロキノンは、抗酸化剤として活性な種類であってもよい。
【0044】
場合によっては、キノンはヒドロキノンであることが好ましく、アルキル置換ヒドロキノンであることがより好ましい。勿論、TBHQが特に好ましい。
【0045】
本発明に係る製剤は、2以上のベンゾ/ヒドロキノンを含有していてもよい。
【0046】
本発明の一実施形態によれば、本製剤はブドウ球菌、特に黄色ブドウ球菌(S. aureus)に対して使用される。本実施形態で好ましいベンゾ/ヒドロキノンとしては:
【0047】
a)パラ置換ベンゾ/ヒドロキノン;及び/又は、
【0048】
b)ヒドロキノン、又は、少なくともヒドロキノンと対応するベンゾキノンとの混合物であって、ヒドロキノンを50%超、より好ましくは60、又は70、又は80、又は90%w/w超の割合で含有する混合物;及び/又は、
【0049】
c)アルキル及びハロゲンから選択される、より好ましくはアルキルから選択される、1又は複数、例えば1つ又は2つの置換基(こうした基の好ましい例は上述の通りである)を有する化合物;及び/又は、
【0050】
d)少なくとも2位を置換されたもの、より好ましくはアルキル及びハロゲンから選択される置換基、より一層好ましくはアルキル基(こうした基の好ましい例は上述の通りである)で置換された化合物;及び/又は、
【0051】
e)ハロゲンやニトロ基等の電子求引基を置換基として2つ以上有さない化合物、より好ましくは、電子求引基を置換基として全く有さない化合物;及び/又は、
【0052】
f)ベンゾ/ヒドロキノンのC−OH又はC=O基の両方について、それらに隣接する位置に、立体障害となる(sterically hindering)置換基(特にt−ブチル基、また、できればイソプロピル基)を有さない化合物;及び/又は、
【0053】
g)ベンゾ/ヒドロキノンのC−OH又はC=O基のうち少なくとも一方(好ましくは両方)について、その2つの隣接位置のうち少なくとも一方が無置換である(言い換えれば、C−OH又はC=O基のうち少なくとも一方、好ましくは両方について、その隣接する炭素原子のうち少なくとも一方が無置換の炭素原子である)化合物;及び/又は、
【0054】
h)特にベンゾキノンの場合、少なくとも1つ、好ましくは2つの電子供与基、例えばアルキル(特にt−ブチル又はイソプロピル、好ましくは前者)又はアルコキシ(特にメトキシ又はエトキシ、好ましくは前者)基で置換されている化合物;及び/又は、
【0055】
i)p−ベンゾキノン−ヒドロキノン、TBHQ、2−メチル−p−ヒドロキノン、2,3−ジメチル−p−ヒドロキノン、2−エチル−p−ヒドロキノン、及びチモヒドロキノン(2−イソプロピル−5−メチル−p−ヒドロキノン)から選択される化合物;及び/又は、
【0056】
j)TBHQ、2−メチル−p−ヒドロキノン、2,3−ジメチル−p−ヒドロキノン、2−エチル−p−ヒドロキノン、及びチモヒドロキノンから選択される化合物が挙げられる。
【0057】
上述の好ましい例は、より一般的な場合にも、例えば、本製剤がブドウ球菌以外の微生物に使用される場合にも該当する。
【0058】
本発明の他の実施形態によれば、本製剤はプロピオン酸菌、特にP.アクネスに対して使用され、より具体的には、ニキビの処置に使用される。この場合、好ましいベンゾ/ヒドロキノンとしては:
【0059】
a)パラ置換ベンゾ/ヒドロキノン;及び/又は、
【0060】
b)ヒドロキノン、又は、少なくともヒドロキノンと対応するベンゾキノンとの混合物であって、ヒドロキノンを50%超、より好ましくは60、又は70、又は80、又は90%w/w超の割合で含有する混合物;及び/又は、
【0061】
c)1又は複数の、例えば1つ又は2つのアルキル置換基(好ましい例は上述の通りである)を有する化合物;及び/又は、
【0062】
d)少なくとも2位を置換基により、より好ましくはアルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、及びt−ブチルから選択される基により、より好ましくはメチル、エチル、又はイソプロピルの何れかにより、最も好ましくはメチル又はエチルの何れかにより置換された化合物;及び/又は、
【0063】
e)ハロゲンやニトロ基等の電子求引基を置換基として有していない化合物;及び/又は、
【0064】
f)そのC−OH又はC=O基の何れについても、その隣接する位置に立体障害となる置換基(特にt−ブチル基、また、できればイソプロピル基)を有していない化合物;及び/又は、
【0065】
g)ベンゾ/ヒドロキノンのC−OH又はC=O基のうち少なくとも一方(好ましくは両方)について、その2つの隣接位置のうち少なくとも一方が無置換である(言い換えれば、C−OH又はC=O基のうち少なくとも一方、好ましくは両方について、その隣接する炭素原子のうち少なくとも一方が無置換の炭素原子である)化合物;及び/又は、
【0066】
h)特にパラ−ベンゾ/ヒドロキノンの場合、5位が無置換であるか、5位がメチル基で置換された化合物、より好ましくは前者;及び/又は、
【0067】
i)p−ヒドロキノン、p−ベンゾキノン、TBHQ、チモキノン(2−イソプロピル−5−メチル−p−ベンゾキノン)、2−エチル−p−ヒドロキノン、及び2,3−ジメチル−p−ヒドロキノンから選択される化合物;及び/又は、
【0068】
j)TBHQ、チモキノン、2−エチル−p−ヒドロキノン、及び2,3−ジメチル−p−ヒドロキノンから選択される化合物が挙げられる。
【0069】
上述の好ましい例は、より一般的な場合、例えば、本製剤がプロピオン酸菌以外の微生物に使用される場合にも該当する。
【0070】
理論に縛られることを望むものではないが、本発明に係る製剤において、前記の過酸化物とベンゾ/ヒドロキノンとの相互作用には、1又は複数のC−O*基を有するキノンラジカルの形成が関与しているものと考えられる。こうしたラジカルは、本発明の製剤が有する抗微生物活性の原因の少なくとも一部となっていると思われるが、アルキル基(特に第2級又は第3級のアルキル基、例えばイソプロピル、又は、好ましくはt−ブチル基)や電子供与基等の置換基により安定化されて共鳴する傾向がある。従って、本発明で使用されるベンゾ/ヒドロキノン上には、こうした置換基が存在することが好ましい。同様の理由から、電子吸引置換基はキノンラジカルを不安定化する傾向があるので、より好ましくない。
【0071】
また、例えばヒドロキノンからのプロトン引き抜き(proton loss from a hydroquinone)等によってこうしたラジカルが形成されるのを支援するために、ベンゾ/ヒドロキノンのC=O又はC−OH基のうち少なくとも一方、好ましくは両方が、例えば隣接するt−ブチル又はイソプロピル基など、嵩高い置換基による立体障害を受けていないことが好ましい
【0072】
上述した何れの場合においても、ベンゾ/ヒドロキノンは、各場合について特に明記された置換基の他には、置換基を有さないことが好ましい。
【0073】
本発明に係る製剤において、前記の過酸化物及びベンゾ/ヒドロキノンは、何れも活性(即ち、抗微生物活性)剤として存在する。とりわけ驚くべきことに、これら2種の化合物を共に用いることで、微生物活動の抑制に、そして多くの場合は予防にも、相乗的な作用が発揮され得る。過酸化物には酸化剤としての用途が知られているのに対し、多くのキノン、特にヒドロキノンには、抗酸化剤としての用途が知られている。従って、これらを併用すれば、互いの活性を減じ合ってしまうのではないかと予想される。実際、過去の抗酸化剤は、スキンケア調製物の分野でも、また、他の分野においても、特に酸化剤や触媒等の過酸化物の活性を低減する目的で、過酸化物と併用されてきた。
【0074】
ところが逆に、後述の実施例に示すように、これら2種類の化合物が互いに活性を高め合うこと、そして、これら2種類の化合物の各々が有する活性の和と比べて相乗的に作用し得ることが見出された。たとえこの組合せによる活性が、これら2種類の化合物各々の活性の線形和に過ぎない場合でも、やはり有利な効果が得られる場合がある。即ち、例えば局所用皮膚処置製剤において、抗微生物活性を過度に損なうことなく、潜在的に刺激性である過酸化物の使用量を低いレベルに抑えることが可能となるという点である。この利点は、これら2種類の化合物の作用機構が逆であると見られていたことを考慮すると、とても自明であったとは言えない利点である。
【0075】
ベンゾ/ヒドロキノンを過酸化物と併用した場合に相乗効果が観察される理由として、個々の反応物よりも大きな抗微生物活性を有する反応生成物(例えば、上述したキノンラジカル)が形成されている可能性がある。即ち、本発明は、ベンゾ/ヒドロキノンと過酸化ジアシル、アルキルヒドロペルオキシド、及び金属過酸化物から選択される過酸化物との間で形成される、特にベンゾ/ヒドロキノンと過酸化ベンゾイル等の過酸化ジアシルとの間で形成される、反応生成物を含有する抗微生物製剤をも包含する。この反応生成物は、使用の直前又は使用時に、原位置で(in situ)形成されるものであってもよい。
【0076】
本発明に係る製剤において、前記の過酸化物及びベンゾ/ヒドロキノン、並びにそれらの相対比率は、個々の化合物単独の活性と比較して、少なくとも加算レベル(additive level)の抗微生物活性を生じる(これを化合物間の「中立的(indifferent)」相互作用と呼ぶ場合がある。)ようなものであることが好ましい。中でも、これらの化合物及びそれらの相対比率は、抗微生物活性に対して相乗効果を及ぼすようなものであることがより好ましい。これは言い換えれば、これら2種の化合物の組合せによる抗微生物活性が、同量のこれら2種の化合物を個別に用いた場合における個々の抗微生物活性の和よりも大きいこと、或いは、場合によっては(使用する試験方法によっては)、組合せによる抗微生物活性が、その2種類の成分のうちより強い方の抗微生物活性を凌ぐことを意味する。以上の文脈において、活性レベルの増加(increased level of activity)は、例えば、関連する生物を抑制及び/又は死滅させるのに必要な活性成分濃度の低下、及び/又は、ディスク拡散アッセイにおける阻止領域の拡大、及び/又は、微生物の抑制又は死滅速度の上昇等として現れることになる。
【0077】
抗微生物活性には、細菌(グラム陽性及びグラム陰性の双方)、ウイルス、菌類(fungi)、原生動物、及び藻類等を含む、種々の微生物に対する活性が広く包含される。本活性は増殖阻害活性であってもよいが、殺生物活性(即ち、関連生物に対する致死活性)であることがより好ましい。本発明に係る製剤は、少なくとも殺細菌剤(bactericide)及び/又は殺菌剤(fungicide)(好ましくは少なくとも前者)としての活性を有することが好ましく、中でも皮膚感染又は皮膚媒介性感染に関連する細菌に対する活性を有することが好ましい。更には、ブドウ球菌(そして場合により、他のグラム陽性球菌)、及び/又は、プロピオン酸菌、及び/又は、より好適には、皮膚又は皮膚構造の病状を発生、増悪、又は伝染させる他の細菌に対する活性を有することが、より一層好ましい。中でも本製剤は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)株又はプロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)株に対する活性を有することが最も好ましい。
【0078】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、本製剤は、ニキビに関連する細菌に対して、例えばP.アクネスや、場合によってはP.グラヌロサム(P. granulosum)に対して活性である。上記活性の代わりに、或いは上記活性に加えて、グラム陽性球菌、例えばブドウ球菌(例えば後述の実施例で列記するもの、特に黄色ブドウ球菌(S. aureus))や腸球菌(enterococcus:例えばE.フェカリス(E. faecalis)及び/又はE.フェシウム(E. faecium)、特に前者)に対して活性であってもよい。
【0079】
本発明の文脈において、特定種の微生物に対する活性とは、その種の株のうち、少なくとも1つの株、好ましくは2以上の株に対する活性の意味であると解してもよい。
【0080】
本製剤は、1又は複数の抗生物質に、例えば臨床で一般に使用されている抗生物質に、全面的又は部分的な耐性を示す(wholly or partially resistant to)細菌に対して、特にブドウ球菌及び/又はプロピオン酸菌(そして、場合によっては他のグラム陽性球菌、例えば腸球菌)に対して、活性であることが好ましい。とりわけ、本製剤は、1又は複数のエリスロマイシン耐性、クリンダマイシン耐性、及び/又は、テトラサイクリン耐性のP.アクネス菌株に対して、及び/又は、1又は複数のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)株に対して、及び/又は、1又は複数のバンコマイシン低感受性黄色ブドウ球菌(vancomycin intermediate S. aureus:VISA)株に対して活性であることがより好ましい。中でも、1又は複数のエリスロマイシン耐性、クリンダマイシン耐性、及び/又は、テトラサイクリン耐性のP.アクネス株に対して、少なくとも活性であることが好ましい。
【0081】
抗微生物活性の測定は従来法で行なえばよい。例えば後述の実施例に記載された試験を用いることができる。一般に、活性試験は、関連微生物の培養物を候補抗微生物化合物で処理する工程と、処理した培養物を、通常であれば微生物の増殖を補助する条件下で培養する工程と、候補化合物の存在下で増殖が生じた場合には、その増殖レベルを評価する工程とを含んでなる。
【0082】
本発明で使用される過酸化物は、少なくともブドウ球菌及び/又はプロピオン酸菌に対し、500μg/ml未満、例えば0.5から500μg/mlの範囲の最小阻止濃度(MIC)を有することが好ましい。これに対応する最小殺生物濃度(MBC)は、4000μg/ml未満であることが好ましく、2000μg/ml未満であることがより好ましく、1000又は500μg/ml未満であることが更に好ましい。過酸化物のMICのMBCに対する比率は、好適には0.125から1の範囲であり、中でも0.5から1の範囲であることが理想的である。
【0083】
MIC及びMBCの値は、従来のアッセイ法を用いて、例えば例えば後述の実施例に記載されたものを用いて行なえばよい。
【0084】
過酸化物は、例えば後述の実施例で試験したように、血清、脂質、及び塩(塩化ナトリウム)のうち、少なくとも1種、好ましくは2種以上の存在下で、抗微生物活性を保持することが好ましい。これらは皮膚の表面に存在する可能性がある化学種であり、よって本条件における性能は、局所用皮膚処置製剤の用途に対する適性を示す指標となり得る。脂質及び塩化ナトリウムの存在下での活性は、特にニキビの処置にとって重要である場合がある。また、血清及び塩化ナトリウムの存在下での活性は、特にブドウ球菌感染の処置又は予防にとって重要である場合がある。
【0085】
過酸化物は、血清、脂質、及び塩のうち、少なくとも1種、好ましくは2種以上の存在下で、少なくともブドウ球菌及び/又はプロピオン酸菌に対するその抗微生物活性のうち、少なくとも一部の活性を保持することが理想的であり、少なくとも50、又は60、又は70、又は80、更には90%を保持することが好ましい。中でも、過酸化物の抗微生物活性、少なくともブドウ球菌及び/又はプロピオン酸菌に対する活性は、血清、脂質、及び塩のうち少なくとも1種の存在下で、増強されることがより好ましい。特に、過酸化物の抗微生物活性は、脂質によって増強されることが最も好ましい。
【0086】
発明で使用されるベンゾ/ヒドロキノンは、少なくともブドウ球菌及び/又はプロピオン酸菌に対して、150μg/ml未満、より好ましくは125又は100μg/ml未満、更に好ましくは70、又は50、又は40、又は30、更には20、又は10μg/ml未満の、例えば0.5から100又は50μg/mlの範囲のMICを有していることが好ましい。これに対応するMBCは、300μg/ml未満であることが好ましく、150μg/ml未満であることがより好ましく、100、又は70、又は50、又は40、又は30、更には20、又は10μg/ml未満であることが好ましい。ベンゾ/ヒドロキノンのMICのMBCに対する比率は、0.125から1の範囲が好適であり、中でも0.5から1の範囲が理想的である。
【0087】
ベンゾ/ヒドロキノンは、例えば後述の実施例で試験したように、血清、脂質、及び塩のうち少なくとも1種、好ましくは2種以上の存在下で、抗微生物活性を保持することが好ましい。血清、脂質、及び塩のうち少なくとも1種、好ましくは2種以上の存在下で、少なくともブドウ球菌及び/又はプロピオン酸菌に対する抗微生物活性のうち、少なくとも一部の活性を保持することが理想的であり、少なくとも50、又は60、又は70、又は80、更には90%を保持することが好ましい。中でも、ベンゾ/ヒドロキノンの抗微生物活性、少なくともブドウ球菌及び/又はプロピオン酸菌に対する活性は、血清、脂質、及び塩のうち少なくとも1種の存在下で、増強されることがより好ましい。特に、ベンゾ/ヒドロキノンの抗微生物活性は、脂質によって増強されることが最も好ましい。
【0088】
本発明に係る製剤中の過酸化物の濃度は、0.05%w/v以上、好ましくは0.1%w/v以上であることが好適である。その濃度は最大10%w/vであるが、2.5%w/vであることが好ましい。
【0089】
本製剤中のベンゾ/ヒドロキノンの濃度は、0.05%w/v以上、好ましくは0.1%w/v以上であることが好適である。その濃度は最大5%w/v、好ましくは最大2.5%w/vである。
【0090】
ベンゾ/ヒドロキノンの存在によって、例えば製剤がインビボ(in vivo)で適用される場合、その作用部位における過酸化物の濃度を、その過酸化物単独のMBCよりも低く、更にはMICよりも低く抑えることが可能となる。この点における過酸化物の濃度は、そのMBC又はMICの0.5倍よりも低いことが好ましく、0.25倍よりも低いことがより好ましい。同様の見解がベンゾ/ヒドロキノンについても当てはまるが、場合によって、例えば作用部位における存在濃度が、その単独のMBC又はMICの0.5又は0.25倍より低い。
【0091】
製剤中における過酸化物の濃度の、ベンゾ/ヒドロキノンの濃度に対する比率は、1:1000から1000:1の範囲が好ましく、1:10から100:1の範囲がより好ましく、1:4から100:1又は10:1の範囲が更に好ましい。
【0092】
本発明に係る製剤は、ヒト又は動物の皮膚、特にヒトの皮膚に対する局所投与に適している(suitable for)ことが好ましく、こうした皮膚への局所投与に適合させたものである(adapted for)ことがより好ましい。また、例えば鼻孔、頭皮、耳、目、膣、及び口腔等の他の上皮、特に鼻孔及び耳に対する局所投与にも適している(suitable for)ことが好ましく、こうした上皮への局所投与に適合させたものである(adapted for)ことがより好ましい。その形態としては、ローション、クリーム、軟膏、フォーム、ペースト、又はゲルが挙げられ、また、局所投与について知られているその他の任意の物理的形態、例えば、製剤の局所投与を容易にするために、スポンジ、綿球(swab)、ブラシ、ティシュー、皮膚用パッチ(skin patch)、包帯、又は歯科用線維(dental fibre)等の担体に製剤を適用した形態、或いは適用し得るようにした形態が挙げられる。鼻腔用スプレーや、点眼薬又は点耳薬の形態であってもよい。また、例えば皮膚感染の処置やMRSA等の感染の予防等、(獣医薬を含む)医薬用途を目的としたものであってもよく、及び/又は、化粧品又は他の非医療用途(例えば、一般的な衛生又は洗浄等)を目的としたものであってもよい。
【0093】
前記の過酸化物及びベンゾ/ヒドロキノンを包含するビヒクルとしては、局所適用に適した任意のビヒクル、又は複数のビヒクルの混合物が挙げられる。選択される種類は、目的とする適用の手法や部位によって異なる。こうしたビヒクルとしては、当業者に知られており、市場で入手可能なものが多数存在する。例としては、Williams著「Transdermal and Topical Drug Derivery」、Pharmaceutical Press、2003や、他の同様の参考文献に記載のものが挙げられる。また、局所薬物送達の方策の概説として、Date, A A et al, Skin Pharmacol. Physiol, 2006, 19(1): 2-16を参照されたい。
【0094】
上述したように、ビヒクルは、所望の部位を目標とするものであっても、及び/又は、製剤の送達時間を目標とするものであってもよい。例として、製剤を皮膚濾胞や毛嚢(skin or hair follicules)に送達するものでも、或いは前鼻孔に送達するものでもよい(後者は特に、MRSAやその他のブドウ球菌系の細菌に対する予防的な処置として、製剤を使用する場合に好適である。)。これにより、一定の時間にわたって、製剤の放出を遅延させるか、或いは制御することが可能である。前記の過酸化物及びベンゾ/ヒドロキノンの一方又は双方を、例えばリポゾーム等のマイクロカプセルに封入してもよい。局所用途の場合、とりわけ好適なリポゾームとしては、角質層脂質、例えばセラミド、脂肪酸、又はコレステロールからなるものが挙げられる。
【0095】
場合によっては、極性のビヒクルも好ましい。製剤が皮膚への使用を目的とする場合、特に皮膚及び皮膚構造の感染の処置を目的とする場合には、ビヒクルとしてはまず非水系のものが挙げられるが、抗ニキビ処置の場合には水系ビヒクルも使用できる。特に表面処理における使用を目的とする場合、例えば、特にブドウ球菌に対する器具や作業領域の洗浄を目的とする場合には、ビヒクルは表面活性であってもよい。場合により、ビヒクルはアルコール系やシリコン系であってもよい。
【0096】
本製剤は、医薬や獣医薬の製剤、特に局所用スキンケア製剤に使用されることが知られている、標準的な賦形剤やその他の添加剤を含有していてもよい。例としては、皮膚軟化剤、香料、抗酸化剤、保存料、及び安定剤が挙げられる。その他の例は、例えば上述のWilliams著「Transdermal and Topical Drug Delivery」に記載されている。
【0097】
本製剤は、更に、抗微生物剤等の追加の活性剤を含有していてもよい。本製剤が、皮膚への局所適用を目的とする場合、特に、皮膚及び皮膚構造の感染の処置、及び/又は、ニキビ又はアトピー性皮膚炎等の病状の処置を目的とする場合には、抗ニキビ剤、ケラトリース、面皰溶解剤、抗炎症剤、抗増殖剤、抗生物質、抗アンドロゲン剤、セボスタティック剤、痒み止め剤、免疫賦活剤、創傷治癒促進剤、及びこれらの混合物から選択される、1又は複数の薬剤を含有していてもよい。これらの代わりに、或いはこれらに加えて、本製剤は、日焼け防止剤、保湿剤、皮膚軟化剤、及びこれらの混合物から選択される、1又は複数の薬剤を含有していてもよい。一般的に、本発明に係る用途規定製剤(formulation for use)は、本発明に係る別の活性剤の活性を強化し、或いはそうした活性剤の副作用を低減し、或いは製剤の投与に対する患者の適応性を向上させる、1又は複数の薬剤を含有していてもよい。
【0098】
追加の抗微生物剤は、例えば、殺生物剤、消毒剤(disinfectants)、防腐剤(antiseptics)、抗生物質、抗微生物活性を有する抗酸化剤、及びそれらの混合物からなる群より選択される。中でも、殺細菌剤としての活性、特にプロピオン酸菌及び/又はブドウ球菌に対する活性を有することが好ましい。また、抗真菌剤としての活性を有していてもよい。
【0099】
但し、前記の(1又は複数の)過酸化物及び(1又は複数の)ベンゾ/ヒドロキノンが、製剤中の唯一の活性剤であるか、少なくとも、唯一の抗微生物性又は抗細菌性の活性剤であることが好ましい。
【0100】
本発明に係る製剤は、生物組織以外の表面に対する使用、例えば、微生物レベルを低減するための、床又は壁(内部か外部かは問わない)、作業面又は器具の処理、コンタクトレンズの消毒、毛髪や歯や爪の洗浄等の用途に適している(suitable for)ことが好ましく、これらの用途に適合させた(adapted for)ものであることがより好ましい。好適な適用対象としては、成長期又は収穫期の作物、食品、無生物の組織(例えば保存料としての使用)、寝具類又は衣類(例えば生物・薬剤の汚染除去用)が挙げられる。これらの場合において、前記の過酸化物及びベンゾ/ヒドロキノンと共に含有される、賦形剤、ビヒクル、及び/又は他の添加剤は、局所用スキンケア製剤において含有されるものと異なっていてもよいが、こうした場合における使用が従来知られているものであってもよい。
【0101】
本製剤は、他の製品に組み込んでもよく、ひいては他の製品の形態で適用してもよい。他の製品としては、化粧品、スキンケア又はヘアケア用調製物、(獣医薬品を含む)医薬調製物、洗面用品(例えば入浴剤又はシャワー剤、又は洗浄用調製物)、洗濯又は他の繊維処理用品、又は、農業又は園芸用品等が挙げられる。
【0102】
本製剤は、他の製品、例えば食品若しくは飲料、医薬調製物、化粧品若しくは洗面用品、又は、組織、血清若しくは他の身体サンプル等における微生物活動を抑制し、又は予防する目的で、そうした製品に保存剤として組み入れるのに適したものであってもよい。
【0103】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様に係る抗微生物製剤を含有する製品が提供される。
【0104】
場合によっては、本発明に係る製剤は、例えばUS−6,069,208に開示されたポリマー等の架橋性の熱可塑性又は弾性ポリマーを含有しないことが好ましく、及び/又は、同文献に開示のもの等の硫黄促進剤(sulphur accelerators)を含有しないことが好ましい。
【0105】
場合によっては、本発明に係る製剤は、GB−1 089 428に開示される種類のポリマー、特に、有機スズ化合物をジカルボン酸のグリコールモノアクリレートモノエステルと反応させて調製されるポリマーを含有しないことが好ましい。
【0106】
場合によっては、本発明に係る製剤は、過酸化ベンゾイルと、t−ブチルカテコール、ヒドロキノン、トルヒドロキノン、p−ベンゾキノン、TBHQ、2,5−ジ−t−ブチル−ヒドロキノン、及びヒドロキノンモノメチルエーテルから選択されるベンゾ/ヒドロキノンとを、併有しないことが好ましい。
【0107】
場合によっては、本発明に係る製剤は、可塑剤及び/又は界面活性剤及び/又は炭酸カルシウムを含有しないことが好ましく、特に本製剤は可塑剤を含有しないことが好ましい。本製剤は、特にWO−97/32845に開示されている種類の過酸化ベンゾイル含有製剤を含有しないことが好ましい。
【0108】
本発明に係る製剤は、例えば皮膚又はその他の表面に対する、その適用の直前又は適用時に、原位置で(in situ)調製されるものであってもよい。即ち、本発明の第3の態様によれば、抗微生物製剤、好ましくは第1の態様に係る製剤を調製するキットが提供される。本キットは、(a)過酸化ジアシル、アルキルヒドロペルオキシド、及び金属過酸化物からなる群より選択される過酸化物の原料と、(b)ベンゾキノン又はヒドロキノンの原料とを含んでなるとともに、更に、その目的とする適用の時又は適用の前に、前記二種の化合物を混合し、前記製剤を作製するための説明書、及び/又は前記二種の化合物を皮膚等の表面に同時投与するための説明書を含んでなる。前記の過酸化物及びベンゾ/ヒドロキノンはそれぞれ、好適なビヒクル中に存在していてもよい。
【0109】
一実施形態によれば、本発明の製剤又はキットは、特定の種類の過酸化物とベンゾ/ヒドロキノンとを各々、個別の送達用ビヒクルにカプセル封入(例えばマイクロカプセル封入)した状態で、共に含有するものであってもよい。これによって、例えば、これらの成分の放出を、ひいてはそれらの成分の互いの接触を、投与目標となる部位に限定することが可能となる。
【0110】
本発明の第4の態様によれば、抗微生物製剤を調製する方法であって、(a)過酸化ジアシル、アルキルヒドロペルオキシド、及び金属過酸化物から選択される過酸化物と、(b)ベンゾキノン又はヒドロキノンとを、好ましくは上述した医薬的に許容可能なビヒクルと共に、混合する工程を含んでなる方法が提供される。
【0111】
本発明の第5の態様によれば、(a)過酸化ジアシル、アルキルヒドロペルオキシド、及び金属過酸化物から選択される過酸化物と、(b)ベンゾキノン又はヒドロキノンとを含有する製剤(好ましくは本発明の第1の態様に係る製剤)であって、微生物活動、特に細菌又は菌の活動(bacterial or fungal activity)、とりわけ細菌活動、特にブドウ球菌及び/又はプロピオン酸菌の活動によって発生、増悪、又は伝染する病状の処置(好ましくは局所的処置)に使用される製剤が提供される。この病状は、皮膚又は皮膚構造の病状(例えばニキビ)であることが好ましい。
【0112】
本発明において、病状の処置(treatment)には、ヒト又は動物における、そして特に皮膚における、伝染病又は非伝染病の治療的(therapeutic)処置と予防的(prophylactic)処置との双方が包含される。即ち、本製剤の殺微生物剤としての使用、好ましくは殺細菌剤としての使用、最も好ましくはブドウ球菌及び/又はプロピオン酸菌及び/又は腸球菌に対する使用が含まれるものとする。
【0113】
本発明に従って処置され得る皮膚及び皮膚構造の病状としては、ニキビ、感染性アトピー性湿疹、表在感染性(superficial infected)外傷性病変、創傷、火傷、潰瘍、毛嚢炎、真菌症、並びに、他の皮膚及び皮膚構造における一次又は二次的な表在感染が挙げられる。特に本製剤は、ニキビ又はニキビ関連病変の処置(例えばニキビによる瘢痕の低減)に使用できる。
【0114】
ニキビの処置には、ニキビに関連する病変及び/又は瘢痕の処置及び/又は予防が包含される。ニキビは顔面及び上幹の毛嚢脂腺濾胞の多因子疾患であり、種々の炎症性及び非炎症性の病変、例えば丘疹、膿疱、小結節、並びに開放及び閉鎖の面皰等を特徴とする。従ってその処置には、これらの症状のうち何れかの処置も包含され得る。
【0115】
一般的に、本発明に係る製剤は、例えば、抗生物質等の他の活性剤によってニキビを処置した結果生じる感染等よりも、むしろ、ニキビを直接の原因とする症状の処理に使用されるであろう。
【0116】
本発明において「皮膚又は皮膚構造の病状(skin or skin structure condition)」とは、場合によっては、他の上皮、例えば鼻孔、頭皮、膣、目、耳、又は口腔内の上皮に影響を及ぼす病状も包含する。但し、多くの場合、皮膚又は皮膚構造の病状とは、皮膚又は皮膚構造に直接影響を及ぼす病状をいう。
【0117】
また、本発明に係る製剤は、身体の任意の領域(特に皮膚又は鼻孔)において、例えばMRSA関連性の感染や、湿疹性病変等の既存の病変における感染等を引き起こすおそれのある、ブドウ球菌に対する治療的又は予防的処置として用いてもよい。
【0118】
本発明の第5の態様に従って処置され得る病状の他の例としては、口腔、眼、耳、鼻、及び膣の病状が挙げられる。こうした病状の処置には、ヒト又は動物における(但し、特にヒトにおける)伝染病又は非伝染病の、治療的及び予防的処置の双方が包含される。特に、身体の任意の領域、特に皮膚又は鼻孔における微生物、とりわけ細菌の感染に対する予防的処置が包含される。
【0119】
病状の処置としては、病状の完全な又は部分的な根絶(eradication)、関連する症状の除去又は改善、その後の病状の進行の阻止、及び/又は、その後の病状の発生の予防又は発生の可能性の低減が含まれていてもよい。
【0120】
本発明の第5の態様によれば、過酸化物及びベンゾ/ヒドロキノンの製剤を、投与時又は投与の直前に原位置で(in situ)調製してもよい。即ち、本発明のこの態様は、微生物活動により発生、増悪、又は伝染する病状の処置(好ましくは局所的処置)における、特定の種類の過酸化物及びベンゾ/ヒドロキノンの任意の併用に関する。これら2種の化合物は同時に投与してもよく、逐次的に投与してもよい。この場合の病状も、皮膚又は皮膚構造の病状、及び/又は、皮膚に存在する微生物に関連する病状であることが好ましい。
【0121】
本発明の第6の態様によれば、微生物(特に細菌又は菌、とりわけ細菌)の活動、特にブドウ球菌及び/又はプロピオン酸菌の活動によって発生、増悪、又は伝染する病状の処置用の医薬の製造における、(a)過酸化ジアシル、アルキルヒドロペルオキシド、及び金属過酸化物から選択される過酸化物と、(b)ベンゾキノン又はヒドロキノンとの併用が提供される。この病状は、一般的には皮膚又は皮膚構造の病状であり、より一般的にはニキビである。これはブドウ球菌性の感染、特に皮膚媒介性の感染であってもよい。この医薬は、局所用途であることが好適である。
【0122】
更に、本発明の第7の態様によれば、抗微生物剤としての、特に殺細菌剤(bactericide)又は殺菌剤(fungicide)としての、或いは抗微生物製剤の製造、とりわけ殺細菌/殺菌(bactericidal/fungicidal)製剤の製造における、特定の種類の過酸化物及びベンゾ/ヒドロキノンの併用が提供される。
【0123】
第8の態様によれば、微生物の増殖、中でも細菌又は菌類(bacterial or fungal)微生物、特に細菌微生物、とりわけブドウ球菌又はプロピオン酸菌の増殖を抑制するための方法であって、微生物に感染した領域、又は感染が疑われる領域、又は感染する可能性がある領域に、(a)過酸化ジアシル、アルキルヒドロペルオキシド、及び金属過酸化物から選択される過酸化物と、(b)ベンゾキノン又はヒドロキノンとを適用する工程を含んでなる方法が提供される。この場合も、これら2種の化合物は同時に適用されてもよく、逐次的に適用されてもよい。
【0124】
この場合において、微生物の「増殖を抑制する(controlling the growth)」という語には、増殖を完全又は部分的に阻害又は予防することに加えて、その生物の培養物を完全又は部分的に死滅させることが包含される。また、処置される領域において、その後その生物が増殖する可能性を低減することも包含される。即ち、本発明の方法は、現に生物が発生している状態の処置に使用してもよく、後の発生の可能性を予防するために使用してもよい。
【0125】
本発明の第8の態様の方法は、水生微生物の増殖の抑制、特にUS−2003/0012804で述べられている種類の水生微生物の増殖抑制には、用いないことが好ましい。
【0126】
この場合も、前記の過酸化物及びベンゾ/ヒドロキノンが適用される領域は、通常はヒト又は動物の生体における、ヒト又は動物組織、特に皮膚又は鼻孔等の表面が一般的である。ここで、これら2種の化合物の適用の目的は、治療目的であってもよく、非治療(例えば純化粧品)目的であってもよい。また、適用対象の領域は、病院や食品調理領域等における無生物の表面であってもよい。例えば、本発明の第8の態様の方法は、作業面、手術器具やその他の器具、外科用インプラントやプロテーゼ、コンタクトレンズ、食品、作物、工業プラント、床や壁(内部及び外部の両方)、寝具、家具、衣類、及びその他の種々の表面の処理に使用することができる。
【0127】
本発明の第8の態様の方法には、ヒト又は動物の患者体内又は体外における(in or on a human or animal patient)微生物の増殖を抑制するための方法が包含される。この微生物は通常、ブドウ球菌及び/又はプロピオン酸菌であり、その増殖の抑制は、通常は皮膚において、或いは場合により、その他の鼻孔等の上皮において行なわれる。
【0128】
第8の態様の方法は、本発明の第1の態様に係る製剤を適用する工程を含むことが好ましい。
【0129】
本発明の第9の態様によれば、微生物、特に細菌類又は菌類の生物、より具体的には細菌生物を含有する製品、又は含有が疑われる製品、又は含有する可能性がある製品において、微生物の増殖を抑制する方法であって、(a)過酸化ジアシル、アルキルヒドロペルオキシド、及び金属過酸化物からなる群より選択される過酸化物と、(b)ベンゾキノン又はヒドロキノンとの組合せを、前記製品に組み入れる(incorporating)工程を含んでなる方法が提供される。製品としては、例えば食料品若しくは飲料品、医薬(獣医薬を含む)調製品、化粧品若しくは洗面用品、又は、農業若しくは園芸用品が挙げられる。
【0130】
即ち、本発明の第9の態様の方法は、製品を如何なる態様で保存する場合に使用してもよく、或いは、食料若しくは水供給の衛生や、農業地域の消毒に使用してもよい。
【0131】
本発明の第10の態様によれば、抗微生物製剤における、ベンゾキノン又はヒドロキノンの、上記定義の種の過酸化物との組合せにおける使用であって、製剤の抗微生物(特に、抗細菌及び/又は抗菌、特に抗ブドウ球菌及び/又はプロピオン酸菌)活性を増強すること、及び/又は、抗微生物活性を過度に損なうことなく、製剤中における過酸化物の量を低減することを目的とする使用が提供される。
【0132】
ベンゾ/ヒドロキノンを過酸化物と併用することにより、同濃度における過酸化物単独の活性と比べて、抗微生物活性を増加させることができる。中でも、これら過酸化物及びベンゾ/ヒドロキノンの併用によって、それぞれ同濃度におけるこれら2種各々の活性の合計と比べても、抗微生物活性に増加がみられることが理想的である。
【0133】
所望の活性レベルを達成するために、特にその目的とする用途において許容し得る効力を達成するために、製剤中に使用される過酸化物の量を、ベンゾ/ヒドロキノンの併用によって低減することができる。この低減は、ベンゾ/ヒドロキノン非併用下で製剤を使用する場合に観察される副作用の低減として、特に皮膚刺激性の低減として現れ得る。従って、本発明によれば、抗微生物活性を損なうことなく、又は過度に損なうことなく、皮膚刺激性の低減及び他の望ましからぬ製剤の特性を低減するという、二重の目的にベンゾ/ヒドロキノンを使用し得る。
【0134】
ベンゾ/ヒドロキノンの使用により、キノンの添加に先立って製剤が示すレベルと比べて、抗微生物活性を全く低減させないことが好ましい。中でもその使用によって、抗微生物活性に増加が生じることがより好ましい。但し、ベンゾ/ヒドロキノンの使用により、得られる製剤の抗微生物活性を、ベンゾ/ヒドロキノン非使用時に比べれば低いけれども、それでも目的とする用途においては依然許容し得る値に維持しつつ、過酸化物の存在量、及び/又は、関連する副作用を低減することができればよい。
【0135】
本発明の第11の態様によれば、抗微生物製剤における、上記定義の種類の過酸化物とベンゾキノン又はヒドロキノンとの組み合わせによる使用であって、抗微生物活性を損なうことなく、又は過度に損なうことなく、製剤の抗微生物活性を増大し、及び/又は、製剤中に存在するベンゾ/ヒドロキノン量を低減することを目的とする使用が提供される。本発明のこの態様にも、第10の態様の場合と同様の記載が当てはまるが、その成分は逆となる。
【0136】
本発明の第2の態様及び続く態様における好ましい特徴は、他の態様との関連で記載した特徴と同様であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0137】
本発明のその他の特徴は、以下の実施例によって明らかになるであろう。概して、本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲及び図面を含む)に開示された特徴のうち、あらゆる新規の特徴、或いはあらゆる新規の特徴の組合せにも及ぶものとする。更に、別途記載しない限り、本明細書に開示された何れの特徴も、同一又は類似の目的を果たす同一又は類似の別の特徴と置換することができる。
【実施例】
【0138】
本発明について、添付の参考図を参照しながら説明するが、あくまでも例である。
【0139】
本発明に係る製剤の抗微生物活性を決定する実験を実施した。比較のために、ベンゾ/ヒドロキノン又は過酸化物を単独で含有する製剤の抗微生物活性も同時に測定した。
【0140】
試験微生物
以下の試験微生物を用いた。これらは、本発明の製剤の使用対象となる生物のスペクトルを代表するものである。
【0141】
1.黄色ブドウ球菌 − これらの試験で使用した主たるブドウ球菌系の試験微生物は、黄色ブドウ球菌ATCC29213である。この菌株は、最小阻止濃度(MIC)アッセイにおけるQC/QAの目的で、FDA認証団体である米国臨床及び研究室規格協会(US Clinical and Laboratory Standards Institute。旧NCCLS)によって推奨されているものである。黄色ブドウ球菌ATCC29213は、メチシリン等のβラクタム抗生物質や、現在世界中で臨床使用されている他の多くの抗生物質に対して、感受性を示す。
【0142】
後述の実施例5に記載のように、他のブドウ球菌株についても試験を行なった。その中には、特定の抗生物質耐性を有するブドウ球菌、例えば、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)株EMRSA−15及びEMRSA−16(何れもthe Central Public Health Laboratory(CPHL)(コリンデール、UK)から入手可能)が含まれる。これらの菌株は、全てのβラクタムに対して耐性であるのみならず、臨床に用いられる他の多数の抗生物質に対しても耐性を示し、それゆえにヒトの健康に対する深刻な脅威となっている。また、これらは英国におけるMRSA院内感染の大多数(>95%)の原因ともなっている。
【0143】
黄色ブドウ球菌(S. aureus)及び他のブドウ球菌は、広範な皮膚、皮膚構造及び創傷感染に共通に見られる原因となっている。黄色ブドウ球菌(S. aureus)自体は、湿疹を悪化させることでも知られている。
【0144】
2.プロピオン酸菌属(Propionibacterium spp.) − これらの試験で使用した主たるプロピオン酸菌種は、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)NCTC737である。これは前記属の基準菌種(the type strain of the genus)であり、抗生物質に対して十分な感受性を有する。
【0145】
プロピオン酸菌はニキビに関与していることから、臨床的に重要である。ニキビは大変よく見られる、複雑且つ多因子性の皮膚病であり、P.アクネスや他のプロピオン酸菌属(Propionibacterium spp.)(例えばP.グラニュローサム(P. granulosum)等)が重要な役割を果たしている。また、これらは易感染性宿主(compromised hosts)における日和見病原体でもある。
【0146】
実施例7のFIC(分解阻止濃度(fractional inhibitory concentration)。後述の説明を参照)アッセイには、NCTC737の代わりに、その近縁種であるP.グラニュローサム(P. granulosum)(社内菌種、名称PRP−055)を用いた。
【0147】
後述の実施例8に示すように、他のプロピオン酸菌についても試験した。それらの中には、特定の抗生物質に耐性を有するプロピオン酸菌として、例えば、2種のP.アクネス菌株PRP−010及びPRP−053が含まれる。前者はマクロライド−リンコサミド−ストレプトグラミン−ケトライド(MLSK)に対して、後者はマクロライド−リンコサミド−ストレプトグラミン(MLS)及びテトラサイクリンに対して、それぞれ耐性を示す。言い換えれば、PRP−010はエリスロマイシン及びクリンダマイシンに対して、PRP−039はエリスロマイシン、クリンダマイシン及びテトラサイクリンに対して、それぞれ耐性を示す。
【0148】
更に、何れもニキビに関与する別のプロピオン酸菌である、P.グラニュローサム(P. granulosum)の特定の菌株と,P.アビダム(P. avidum)の基準株とについても、実施例8で試験を行なった。
【0149】
3.エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)ATCC29212 − これは腸球菌属(エンテロコッカス属:the genus Enterococcus)に属するグラム陽性細菌である。腸球菌(Enterococci)は連鎖球菌(streptococci)と同様の性質を有するが、胆汁塩含有マッコンキー寒天(bile-salt containing MacConkey's Agar)での生育能力に違いがある。その主な生息場所は、哺乳類の消化管である。
【0150】
これらの菌は、多数の重要な感染を引き起こす。例えば心内膜炎、尿路感染、及び膿瘍が挙げられる。皮膚に関して言えば、創傷感染から単離される場合が多い。連鎖球菌とは異なり、腸球菌は広範なペニシリン耐性を発現している。更に近年では、E.フェカリス(E. faecalis)及びE.フェシウム(E. faecium)株が、バンコマイシン等の糖ペプチド抗生物質に対する耐性をも発現している。バンコマイシン耐性腸球菌(Vancomycin-Resistant Enterococci:VRE)は、E.フェシウム(E. faecium)の主たるvanA株であるが、現在では米国、日本及び欧州西部において、医療原因感染(healthcare−acquired infection)により深刻な脅威を引き起こしている。
【0151】
上述の微生物に対して観察される活性は、抗微生物活性、特に皮膚及び皮膚構造の感染原因となる微生物に対する活性を、定性的に予測するための適切な手段となることが期待される。
【0152】
ブドウ球菌及び腸球菌は、pH7.2のミューラー−ヒントン(Mueller−Hinton)培地(寒天及びブロス)上で培養・維持した。37℃で24時間、好気的に培養した。
【0153】
プロピオン酸菌属(Propionibacterium spp.)生物は、pH6.0のウィルキンス−チャルグレンアナエロブ(Wilkins-Chalgren Anaerobe)培地(寒天及びブロス)上で培養・維持した。培養物を37℃で72時間、嫌気的に培養した。
【0154】
これらの生物に対する抗微生物活性を評価するため、以下の試験を行なった。
【0155】
(a)最小阻止濃度(MIC)アッセイ
これは、液体培地中の化合物の抗微生物活性を定量的に評価するための、国際的な標準法である。本方法には、各ウェルに約200μlの液体を保持し得る、96ウェルのマイクロタイタープレートを使用した。これらのウェルに液体培地を入れ、関連する試験化合物を2倍ずつ段階希釈して、希薄側に広がる濃度分布を作成した(例えば、1000、500、250、125...μg/ml等、最小値1.95μg/ml)。培地については、関連する試験生物毎に上述した通りである。
【0156】
これらのウェルに、新たに増殖させた微生物の懸濁液を接種し、上述した条件下で培養した。培養後、マイクロタイタープレートを(ライトボックス(light box)を用いて)目視で観察し、ウェル内の細胞ペレット、及び/又は、ウェルの濁化を、微生物の増殖の指標とした。微生物の増殖を抑制するのに必要な試験化合物の最小濃度、即ち、ウェル内の液体を清澄に維持するための最小濃度を、MIC値として記録した。
【0157】
アッセイは二重に実施し、更に負の対照(培地のみ)及び正の対照(培地、希釈溶媒及び接種材料)双方を含めた。
【0158】
微生物細胞の抑制は必ずしも微生物細胞の死滅を表わす訳ではなく、肉眼で視認し得る増殖が抑制されたことを表わすに過ぎない場合もある。よって、更なる試験(後述するMBCアッセイ)を行なうことにより、試験生物を死滅させるのに必要な試験化合物の濃度を確認することが望ましい。
【0159】
(b)最小殺細菌濃度(MBC)アッセイ
本アッセイは通常、MICアッセイの後に、試験対象の微生物を死に至らしめる化合物の最小濃度を決定するために実施される。
【0160】
MICアッセイの後、正の増殖を示した最初のマイクロタイターウェルと、それに続く、増殖を示さなかった全てのウェルとから、5μlのサンプルを採取した。続いて、これらのサンプルを上述の培養条件下、非選択的寒天培地で個別に継代培養した。培養後、細菌の増殖を目視で調べた。増殖を示さなかった培養サンプルにおける試験化合物の最小濃度をMBCとした。
【0161】
MICのMBCに対する比率は、できるだけ1に近いことが理想的である。これによって、可能な限り最小の試験化合物の有効濃度を、容易に選択することができるとともに、耐性を促進する可能性、或いは、天然の(即ち生得的な)抗菌耐性によって克服される可能性のある、亜致死濃度を選択してしまうおそれを減らすことができる。
【0162】
(c)ディスク拡散アッセイ(Disc Diffusion Assay:DDA)
これは、化合物の抗微生物活性を定性的に評価するための、国際的に認められている標準法である。
【0163】
無菌の紙ディスクに試験化合物のサンプルを含浸させ、最短でも30分かけて溶媒を可能な限り蒸発させた。その後、試験微生物を培養しておいた寒天プレート上にディスクを載置した。次いで、プレートを上述の条件下で培養した後、細菌増殖の徴候を目視で調べた。試験化合物が抗微生物活性を有する場合には、ディスク周囲に円状の非増殖領域が生じる筈である。この「抑制(inhibition)」領域の直径を、ProtoCOL(登録商標)自動ゾーンサイザー(automated zone sizer:Synbiosis(ケンブリッジ、UK)社製)を用いて測定した。一般には、抑制領域の直径及び/又は面積が大きいほど、関連する試験化合物における抗微生物活性が大きいことを示している。但し、寒天ゲル中における試験化合物の可動性等の他の因子も、結果に影響を与える可能性がある。
【0164】
抑制領域の面積は、測定された領域の半径(D)から、式π(D/2)2によって算出される。
【0165】
(d)相乗ディスク拡散アッセイ(Synergy Disc Diffusion Assay:SDDA)
これはDDA法の変法であり、2種の化合物を一緒に組み合わせた場合の抗微生物活性を試験するものである。これによって、化合物が相乗的に相互作用する可能性があるか否かに関する、定性的な指標が提供される。
【0166】
2種の試験化合物A及びBを単一の紙ディスク上に置き、上述のDDAの手順を繰り返した。これら2種の化合物各々の前記領域の直径のうち大きい方の直径と比較して、抑制領域の直径が増加していれば、抗菌相乗効果の可能性があるものと判断した。実用的な点から、5mmを超える増加を有意とした。領域サイズの増加が大きいほど、これら2種の試験化合物間に相乗的な相互作用がある可能性も高いことになる。
【0167】
(e)補充ディスク拡散アッセイ(Supplemented Disc Diffusion Assay)
DDA又はSDDA試験のうち一方を、血液、脂質及び/又は塩を補充した寒天ゲルを用いて実施することにより、ヒトの皮膚に存在する主要成分の一部を刺激するとともに、試験化合物について観察される抗微生物活性がそれらの物質によって低減されるか否かを評価してもよい。これらの条件下における性能は、局所適用における活性についての、より信頼性の高い指標を提供し得る。黄色ブドウ球菌(S. aureus)株を用いてアッセイを行なう場合、補充成分は、例えばウマ脱線維素血液(5%v/v)及び塩化ナトリウム(100mM)等とした。プロピオン酸菌属(Propionibacterium spp.)株を用いてアッセイを行なう場合、補充成分は、脂質(Tween(登録商標)80を1%v/v)及び塩化ナトリウム(100mM)等とした。
【0168】
(f)分解阻止濃度(Fractional inhibitory concentration:FIC)アッセイ
本アッセイは、2種の抗菌化合物A及びBの間の相互作用の態様を決定するために使用した。MICアッセイと同様に、96ウェルのマイクロタイタープレート及び液体培地を用いて行なった。上述の試験化合物を合わせて各ウェルに加えた。各試験化合物のMIC値を最高濃度として、MICアッセイと同様に2倍ずつ段階希釈することにより、希薄側に広がる濃度分布を作成した。通常は8×8ウェルのアレイを用いて、8段階の異なる濃度の化合物A(そのMICから希薄側へ、0まで)と、8段階の異なる濃度の化合物B(同上)とを組み合わせた。
【0169】
これらのウェルに、新たに増殖させた微生物を接種し、上述の条件下で培養した。
【0170】
MICアッセイと同様、結果は肉眼で判断した。A及びBの組合せの各々について最小阻止濃度を記録した。混合物中の各化合物について、分解FIC指数(FIC index:FICI)を算出し、これらの指数を加算して総FICI(overall FICI)を求め、相互作用の態様の指標とした。
【0171】
即ち、試験した各混合物について、化合物AのFIC(FICA)=(A+B)のMIC/A単独のMIC、となる。同様に、化合物BのFIC(FICB)=(A+B)のMIC/B単独のMIC、となる。総FICI=FICA+FICBである。
【0172】
FICIが0.5未満の場合には、相乗作用であると判断し、0.5から4.0の範囲内の値の場合には、中立的(indefferent)作用であると判断し、4.0を超える値の場合には、拮抗作用(即ちこれら2種の化合物が互いの活性を打ち消し合い、結果として全体の抗菌効果が減少する)であると判断した(Odds F C, "Synergy, antagonism, and what the chequerboard puts between them", J Antimicrob. Chemother., 2003;52:1 を参照)。FICAのFICBに対するプロット(アイソボログラム)により、試験した混合物についてのこれらの結果を表わすことができる。
【0173】
(g)致死時間(Time−to−kill:TTK)アッセイ
この定量アッセイは、試験化合物が試験微生物を死滅させるまでに要する時間を評価することを目的とする。
【0174】
関連する試験化合物及び微生物を含有する液体培養物から、所定の時間間隔でサンプルを取得し、寒天プレート上に接種した。次に、このプレートを上述したように培養した後、その増殖を目視で確認した。プレート上の生存微生物のコロニー数を計測し、適切な希釈係数を用いて1ml当たりのコロニー形成単位(colony-forming units per ml:cfu/ml)に変換した。一例として、106倍に連続希釈された100μlの接種材料を担持する寒天プレートにおいて、25のコロニーが得られた場合、そのコロニー計数を行なうと、生存細胞数は25×10(1mlに補正するため)×106となり、これは2.5×108cfu/mlに等しくなる。次いで、これらのcfu値を常用対数(log10)値に変換し、グラフ上でサンプル採取時間に対してプロットした。
【0175】
各時点におけるサンプルの評価は三重に行なった。3回の読み取り値の平均(average, mean)を最終的なcfu/ml値とした。
【0176】
本アッセイで使用される試験化合物についての適切な濃度は、それ以前に行なったMIC/FICアッセイに基づいて決定した。
【0177】
TTKアッセイによって、別の相乗作用も確認できる。併用された化合物が相互作用することによって、試験微生物を死滅させる速度が、個々の化合物単独よりも短縮される場合があるからである。これは、生存細菌細胞数を、個々の化合物単独について観察された値と比較した場合に、その減少がより急となることによって表わされる。
【0178】
(h)マトリックス致死時間(Matrix time−to−kill:MTTK)アッセイ
このアッセイは、2種の試験化合物X及びYの間の抗菌相乗作用の更なる指標を提供するものである。本アッセイによって、これらの化合物の何れかを同濃度で個別に用いた場合よりも、より効率的に微生物を死滅させることが可能な、これら2種の組合せを明らかにすることができる。
【0179】
2種の試験化合物の各々を適切な溶媒に溶解させ、必要な初期濃度の80倍とした。各化合物の濃度範囲を、そのMBCの2倍からそのMBCの0.125倍までとし、2倍ずつ段階希釈することによって、その範囲内の各濃度を得た。
【0180】
96ウェルのマイクロタイタープレートを用いて、2種の試験化合物を異なる濃度で組み合わせることにより、6×6のサンプルのアレイを得た。好適な試験ウェルの配置を以下に示す。ここでは、試験化合物X(MBC125μg/ml)の濃度を普通字で示し、化合物Y(MBC16μg/ml)の濃度を太字で示している。
【0181】
【表1】

【0182】
各々適切に希釈した試験化合物を、適切なウェルに5μlずつ加えた。試験化合物の濃度が0のウェルには、5μlの溶媒のみを加えた。また、各ウェルに適切なブロス(試験微生物に応じて異なる。例えば、黄色ブドウ球菌(S. aureus)にはミューラー−ヒントン(Mueller−Hinton)ブロス)190μlを加え、内容物をよく混合してから、100μl量を破棄した。
【0183】
続いて、適切な試験微生物を同じブロス中に含む100μlの接種材料を、各ウェルに加えた。接種材料は約1×107cfu/mlに希釈した。
【0184】
全36サンプルを、各試験微生物に適した上述の条件下で培養した。t=0、t=5時間、及びt=24時間の時点で、各試験ウェルから10μlのサンプルを採取した。これらのサンプルを各々、90μlの適切なブロスに加えた。更に7回連続で10倍希釈を行ない、10-1から10-8まで8つの希釈サンプルを得た。これらの各々から、10μlずつ3つのサブサンプルを個別の寒天プレートに接種し、(やはり上述したような)適切な条件下で培養した。
【0185】
培養後、適切な段階希釈を行ない(独立の可視コロニー数5〜50)、コロニーカウンター(Stuart(登録商標)Colony Counter SC6、Barloworld Scientific Ltd(ストーン、UK)社製)を用いてコロニー数を計数した。次いで、得られた測定値を、式cfu/ml=コロニー数×段階希釈計数×100(取得サンプルは10μlのみであるため)によって、コロニー形成ユニット(cfu)数に変換した。各時点における試験対象の各組み合わせについて、3回の反復値を平均して最終的なcfu/ml値とした。
【0186】
t=24時間のサンプリング時において、これらのアッセイの結果をプロットし、試験化合物X及びYの各組合せが微生物の増殖にどのような影響を与えたかを表わすマトリックスを作成した。24時間後において、組合せ(X+Y)とその最も活性な成分との間のcfu/mlの常用対数(log10)に2以上の(2)減少が見られた場合であって、その組合せの存在下における生存生物数が、cfu/mlの常用対数(log10)で2以上(2)であり、最初の接種材料における数よりも少ない場合に、これらの化合物が抗菌相乗作用を示すと判断した。
【0187】
実施例1 −黄色ブドウ球菌(S. aureus)に対する活性 − MIC、MBC、及び(S)DDAアッセイ
【0188】
以下の実験では何れも、黄色ブドウ球菌(S. aureus)ATCC29213を試験生物として使用した。
【0189】
試験化合物として過酸化ベンゾイル(BP)を用いるとともに、一連の各種ベンゾキノン及びヒドロキノンを用いて、上述したMIC、MBC、及びDDAアッセイを実施した。また、塩、脂質、及び血液の存在下における補充DDAアッセイも実施した。
【0190】
次いで、上記キノンの各々をBPとともに、上述したSDDAアッセイに供した。各ケースにつき、事前に実施した個々の化合物のディスク拡散アッセイで、より大きな直径の領域が観察された方の化合物を基準として、領域の直径(mm)及び面積(%)の増加を測定した。
【0191】
殆どの(S)DDAアッセイでは、各化合物200μgを各ディスクに加えた。例外として、チモキノンアッセイでは、ベンゾキノンを50μgしか使用しなかった。使用した溶媒は、DMSO(過酸化ベンゾイル、2−メチル−p−ヒドロキノン、2,3−ジメチル−p−ヒドロキノン、及び2−エチル−p−ヒドロキノン用)及びエタノール(TBHQ、チモキノン、p−ヒドロキノン、p−ベンゾキノン、及びチモヒドロキノン用)であった。
【0192】
MIC、MBC、及びDDAの結果を以下の表1に、SDDAの結果を以下の表2に示す。何れの結果も数回の実験から収集されたものである。
【0193】
【表2】

*データ可変:相乗作用が観察された試験と、観察されなかった試験とがあった。
【0194】
【表3】

【0195】
表1及び2のデータは、各ベンゾ/ヒドロキノンが単独で、黄色ブドウ球菌(S. aureus)ATCC29213に対して活性を示し、中にはその活性が強いものも存在することを示している。特に、MIC/MBCの結果に示されるように、置換ベンゾ/ヒドロキノンは、対応する無置換体よりもより活性が強いように見える。活性は、塩、脂質、及び血清の存在下でも、少なくともある程度は維持される。BP単独では、上記生物に対する活性は、ゼロではないにしても、遥かに少ない。
【0196】
しかしながら、BPをベンゾ/ヒドロキノンと併用した場合のSDDAデータは、これら2種の間に相乗抗菌相互作用が生じ得ることを示している。何れの場合も、その領域直径は、何れかの化合物単独によって得られるものと比較して、有意に増大している。
【0197】
BP/TBHQのSDDAアッセイを、上述したように、塩及び血液の存在下で繰り返した。領域の直径の増加は12.34mm、面積の増加は186.0%であったことから、これらの追加条件の下でも、抗細菌相乗作用は維持されるものと見られる。
【0198】
即ち、単独では比較的活性の低い過酸化物が、好適なベンゾ/ヒドロキノンの存在下では、黄色ブドウ球菌(S. aureus)に対して非常に強い活性を有する可能性がある。更に、この相乗作用は、皮膚への局所適用においても維持される可能性が高い。
【0199】
実施例2 − 黄色ブドウ球菌(S. aureus)に対する活性 − FICアッセイ
【0200】
BPとアルキル置換ヒドロキノンTBHQとの混合物を、これら2種の活性剤の相対比率を様々に変えて作製し、上述したように、黄色ブドウ球菌(S. aureus)ATCC29213に対するFICアッセイに供した。その結果を利用して、FICアイソボログラム(FIC isobolograms)を調製した。BP用の溶媒としてはアセトンを、TBHQ用にはエタノールを使用した。
【0201】
混合物について得られたFICIの最小値は、0.38から0.5の範囲であり、やはり相乗的な相互作用があることを示している。代表的なアイソボログラムを図1に示す。点線は、総FICI(即ち、FICBP+FICTBHQ)が1に等しくなる場合、即ち、純粋に加算的な効果(purely additive effect)を示している。図1は、BPとTBHQとの組合せによる相乗的な活性を、明確に示している。
【0202】
実施例3 − 黄色ブドウ球菌(S. aureus)に対する活性 − TTKアッセイ
【0203】
続いて、上述のように、BP、TBHQ、及びBP/TBHQ混合物のサンプルについて、黄色ブドウ球菌(S. aureus)ATCC29213を試験生物として用い、TTKアッセイを行なった。使用した溶媒は、BPについてはDMSO、TBHQについてはエタノールであった。結果を表3に示す。cfu値は、0、0.5時間、及び1時間の時点で測定した。
【0204】
【表4】

【0205】
これらのデータは、過酸化物とヒドロキノンとの組合せによれば、何れかの化合物を単独で、混合物中に同濃度で用いた場合と比べて、黄色ブドウ球菌(S. aureus)細菌をより速く死滅させることができることを示している。これは、これら2種の薬剤の間に抗菌相乗作用があることを示す、更なる証拠となる。
【0206】
実施例4 − 黄色ブドウ球菌(S. aureus)に対する活性 −MTTKアッセイ
【0207】
また、BP、TBHQ、及びBP/TBHQ混合物を含有するサンプルを、上述したように、黄色ブドウ球菌(S. aureus)ATCC29213を試験生物して用いたMTTKアッセイに供した。BPはDMSO中に、TBHQはエタノール中にそれぞれ溶解させた。
【0208】
24時間後における結果を、以下の表4に示す(最初の接種材料は3.25×107cfu/mlを含有していた。1×103cfu/mlが検出下限であった)。
【0209】
【表5】

【0210】
表4では、相乗作用を有するBPとTBHQとの混合物3種を、濃灰色の背景内に太字で示している。淡灰色のセルは、各活性成分が単独で致死作用を発揮するのに十分な最小濃度(即ち、MBC)を示している。相乗作用を有する混合物における(24時間後の)微生物活動の減少は、BP又はTBHQの何れかを単独で、混合物中に同濃度で用いた場合に得られる減少よりも大きかった。
【0211】
相乗作用を有するBP/TBHQの3種の組合せは、以下を含有するものである。
a)0.25×MBCのBP(31.25μg/ml)+0.5×MBCのTBHQ(3.9μg/ml)
b)0.5×MBCのBP(62.5μg/ml)+0.25×MBCのTBHQ(1.95μg/ml)
c)0.5×MBCのBP(62.5μg/ml)+0.5×MBCのTBHQ(3.9μg/ml)
【0212】
これらの結果は更に、過酸化物及びヒドロキノンを各々、対応するMBCよりも低い濃度で併用した場合でも、ブドウ球菌に対抗できることを裏付けるものである。
【0213】
これらの結果は更に、過酸化物及びヒドロキノンを各々、対応するMBCよりも低い濃度で併用した場合でも、ブドウ球菌に対抗できることを裏付けるものである。同様に、各試験化合物をより高濃度で含有する混合物も、黄色ブドウ球菌(S. aureus)ATCC29213に対して相乗作用を及ぼす可能性が高い。
【0214】
実施例5 − 他のブドウ球菌に対する活性 − MIC、MBC、及び(S)DDAアッセイ
【0215】
抗生物質耐性を有することが知られているものも含めた他のブドウ球菌株に対する、BP、TBHQ、及びこれら2種の組合せの活性について試験を行なった。各菌株に対して、上述のようにMIC、MBC及び(S)DDAアッセイを実施した。
【0216】
全ての(S)DDAアッセイにおいて、各化合物200μgを各ディスク上に加えた。使用した溶媒は、BPについてはDMSO、TBHQについてはエタノールであった。
【0217】
MIC及びMBCの結果を後述の表5に、(S)DDAの結果を後述の表6に示す。何れの結果も数回の実験から収集したものである。表5は、各試験菌株の耐性表現型(resistance phenotype)を示している。中には、一般に使用される抗生物質の多くに耐性を示す菌株もある。
【0218】
【表6】

【0219】
[略称:American Type Culture Collection(ATCC)、Central Public Health Laboratory UK(CPHL)、National Collection of Type Cultures (NCTC)、メチシリン(Met)、バンコマイシン(Van)、テイコプラニン(Tec)、未決定(ND)、流行性メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(EMRSA)、バンコマイシン低感受性黄色ブドウ球菌(VISA)、糖ペプチド耐性黄色ブドウ球菌(GISA)]
他に特定されていない抗生物質耐性が存在する可能性もある。
【0220】
【表7】

【0221】
領域サイズの増大が5mmを超える場合に、相乗作用の可能性があるものとすると、試験したブドウ球菌株の殆どにおいて、過酸化物とヒドロキノンとの組合せが、相乗的な抗細菌相互作用の可能性を示している。SDDA領域の増大が5mm未満の場合でも、その相互作用は、強い拮抗作用というよりは、むしろ中立的であるように見える。よってこれらの結果は、抗微生物活性を過度に損なうことなく、刺激性を示し得る過酸化物のレベルを低減した抗微生物製剤を調製する機会を提供するものである。これらの結果は特に、抗生物質耐性の試験菌株について、臨床的な価値を有する可能性が高い。
【0222】
実施例6 − P.アクネスに対する活性 −MIC、MBC、及び(S)DDAアッセイ
【0223】
以下の実験では、何れもP.アクネスNCTC737を試験生物として用いた。
【0224】
BP及び一連の各種ベンゾキノン及びヒドロキノンを用いて、上述したように、MIC、MBC、及び(S)DDAアッセイを実施した。また、塩及び脂質の存在下における補充DDAアッセイも実施した。
【0225】
続いて、これらキノンの各々を、BPと組み合わせて、上述したSDDAアッセイに供した。何れの場合も、領域の直径(mm)及び面積(%)の増大は、個々の化合物について事前に実施したディスク拡散アッセイにおいてより大きな直径の領域を示した方の化合物について観察された直系及び面積を基準として測定した。
【0226】
全ての(S)DDAアッセイにて、各化合物200μgを各ディスクに加えた。使用した溶媒は、(BP、2,3−ジメチル−p−ヒドロキノン、及びヒドロキノンについては)DMSO、及び、(TBHQ、チモキノン、p−ヒドロキノン、及びp−ベンゾキノンについては)エタノールであった。
【0227】
MIC、MBC、及びDDAの結果を後述の表7に、SDDAの結果を表8に示す。何れの結果も数回の実験から収集した。
【0228】
【表8】

【0229】
【表9】

【0230】
表7及び8のデータは、各キノンが単独でP.アクネスNCTC737に活性を示し、中にはその活性が強いものもある(特にTBHQ、2,3−ジメチル−p−ヒドロキノン、及び2−エチル−p−ヒドロキノン)ことを示している。また、BPも本生物に対して活性であったが、より活性なキノンと比べるとその活性は弱かった。ヒトの皮膚環境の特に重要な成分である塩及び脂質の存在下でも、キノンの活性は殆どの場合において、少なくともある程度は維持されていた。一部の場合では、これらの添加成分の一方又は両方の存在によって、キノンの活性が強化されているように見える。
【0231】
この場合も、BPをベンゾ/ヒドロキノンと併用した場合のSDDAデータによれば、何れかの化合物単独の場合に比べて、領域の直径に有意な増大が見られたことから、これら2種の間に相乗的な抗菌相互作用がある可能性が示唆される。
【0232】
塩及び脂質の存在下で、上述のようにBP/TBHQのSDDAアッセイを繰り返した。領域の直径が18.34mm増大し、面積が419.8%増大したことから、抗細菌相乗作用は、これらの条件を加えた場合でも維持されているように見える。
【0233】
実施例7 − プロピオン酸菌に対する活性 − FICアッセイ
【0234】
BPとTBHQとを活性成分として、種々の相対比率で含有する混合物を、上述のようにFICアッセイに供した。使用した試験生物は、上述した内部(in−house)P.グラニュローサム(P. granulosum)株PRP−055であった。使用した溶媒は、BPについてはDMSO、TBHQについてはエタノールであった。
【0235】
過酸化物とヒドロキノンとを併用した結果として、抗微生物活性の向上が見られた(最小FICI値0.53)。代表的なアイソボログラムを図2に示す。
【0236】
実施例8 −他のプロピオン酸菌に対する活性 − MIC、MBC、及び(S)DDAアッセイ
【0237】
抗生物質耐性が知られているものを含む他のプロピオン酸菌種(Propionibacterium spp.)の菌株に対する、TBHQの活性について試験を行なった。各菌株について、上述のようにMIC、MBC、及び(S)DDAアッセイを実施した。
【0238】
何れの(S)DDAアッセイでも、各化合物200μgを各ディスク上に加えた。使用した溶媒は、BPについてはDMSO、TBHQについてはエタノールであった。
【0239】
MIC及びMBCの結果を後述の表9に、(S)DDAの結果を表10に示す。何れの結果も数回の実験から収集した。表9には試験菌株の各々の耐性表現型を示している。
【0240】
【表10】

【0241】
[略称:American Type Culture Collection(ATCC)、National Collection of Type Cultures(NCTC)、Propionibacterial Panel Number(PRP)、テトラサイクリン(Tet)、エリスロマイシン(Ery)、クリンダマイシン(Clin)、マクロライド−リンコサミド−ストレプトグラミン(MLS)、マクロライド−リンコサミド−ストレプトグラミン−ケトライド(MLSK)]
【0242】
【表11】

【0243】
領域サイズの増大が5mmを超えた場合に相乗作用の可能性があるものとすると、試験したプロピオン酸菌株の殆どについて、過酸化物とヒドロキノンとの組合せが相乗的な抗細菌相互作用を有する可能性を示している。一部の場合には、SDDA試験で僅かな領域直径の増大しか見られなかったが、これは2種の試験化合物の間の相互作用が中立的である可能性を示すものである。これはやはり、抗微生物活性を過度に損なうことなく、刺激性を示し得る過酸化物のレベルを低減した抗微生物製剤を調製する機会を提供するものである。これらの結果は特に、抗生物質耐性の試験株について、臨床的価値を有する可能性が高い。
【0244】
実施例9 − P.アクネスに対する活性 − 他の過酸化物
【0245】
他の4種の過酸化物を、TBHQと併用する場合も含め、P.アクネスNCTC737に対するDDAアッセイに供した。結果を後述の表11に示す。何れも3回の反復試験の平均(average, mean)である。
【0246】
今回も、全ての(S)DDAアッセイで、各化合物200μgを各ディスク上に加えた。使用した溶媒は、金属過酸化物についてはdH2O、TBHQ及びt−ブチルヒドロペルオキシドについてはエタノールであった。
【0247】
【表12】

【0248】
表11のデータは、過酸化ベンゾイル以外の過酸化物も、TBHQ等のベンゾ/ヒドロキノンと併用した場合に、相乗的な抗菌効果を示し得ることを示している。何れの場合でも、これらの組合せのP.アクネスNCTC737に対する活性は、各試験化合物単独の活性と比べて有意に高かった。
【0249】
これら3種の金属過酸化物の各々のP.アクネスNCTC737に対するMIC及びMBCは、何れも250μg/mlを超える値であった。即ち、こうした過酸化物を適切なベンゾ/ヒドロキノンと併用することで、過酸化物単独で確実な抗菌効果を得るために必要な量に比べ、過酸化物の使用量を有意に低い濃度とすることができる可能性が高い。
【0250】
実施例10 − E.フェカリスに対する活性
【0251】
E.フェカリスATCC29212に対するBP、TBHQ、及びこれら2種の組合せの活性について、上述したMIC、MBC、及び(S)DDAアッセイを用いて試験を行なった。
【0252】
(S)DDAアッセイでは、各化合物200μgを各ディスクに加えた。使用した溶媒は、BPについてはDMSO、TBHQについてはエタノールであった。
【0253】
MIC及びMBCの結果を後述の表12に、(S)DDAの結果を表13に示す。何れの結果も数回の実験から収集した。
【0254】
【表13】

【0255】
【表14】

【0256】
表12及び13は、本発明に係る製剤が、実施例5及び8に示す一連の各種ブドウ球菌株及びプロピオン酸菌株に対する活性に加えて、E.フェカリスに対しても活性を有していることを示している。この場合も、過酸化物単独では、この生物に対して比較的低い活性しか示さないが、ヒドロキノンと併用した場合には、有意なレベルの抗細菌相乗作用が見られる。
【0257】
また、BP/TBHQの組合せを、アシネトバクター・バーマニー(Acinetobacter baumanni)ATCC19606、大腸菌(Escherichia coli)ATCC25922、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)ATCC49247、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)ATCC700603、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)ATCC27853、及び化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)ATCC12344に対するDDA及びSDDA試験に供した。何れの試験化合物も1ディスク当たり200μgで使用し、BPについてはDMSOを、TBHQについてはエタノールを溶媒とした。これらの場合のSDDAデータは、相乗的な相互作用を明確に示すものではなかった。
【0258】
実施例11 − 局所用抗ニキビ製剤
【0259】
実施例1から10の結果は、過酸化物とベンゾ/ヒドロキノンとの組合せが、特に皮膚感染に関連する細菌に対し、効果的な抗微生物剤として使用でき、多くの場合はこの組合せによって、個々の化合物単独の場合と比べてその抗微生物活性に相乗的な影響が現れることを示している。上記組合せは、こうした細菌が感染源として関与している可能性がある任意の場合において、予防又は治療用途の抗微生物製剤、特に皮膚への局所適用のための製剤に有用である。
【0260】
上記組合せが個々の化合物と比較して、相乗的ではなく、加算的(中立的)な抗微生物活性しか有さない場合でも、局所用途の製剤を調製する場合に、やはり相当な利点が得られ得る。過酸化ベンゾイル等の過酸化物の一部に代えてベンゾ/ヒドロキノンを使用することにより、抗微生物活性を過度に損なうことなく、上記組合せの刺激効果を和らげることができる。このように抗微生物活性が維持され、場合によっては改善されるということは、過酸化物及びベンゾ/ヒドロキノンの各々について知られていた活性及び用途からは、必ずしも予測できなかったものである。
【0261】
ニキビの処置に使用される局所用製剤は、例えば、過酸化ベンゾイル(又は実施例9で試験した化合物の何れか)等の過酸化物を、適切なベンゾキノン又はヒドロキノン、特にTBHQ等のアルキル置換ベンゾ/ヒドロキノンと、好適な流体ビヒクル中で、任意により従来の添加剤と共に、混合することによって調製できる。こうしたビヒクル及び添加剤は、例えばWilliams著「Transdermal and Topical Drug Delivery」、Pharmaceutical Press、2003や、他の同様の参考文献、及び/又は、Rolland A et al., "Site-specific drug delivery to pilosebaceous structures using polymeric microspheres", Pharm. Res. 1993; 10: 1738-44、Mordon S et al., "Site-specific methylene blue delivery to pilosebaceous structures using highly porous nylon microspheres: an experimental evaluation", Lasers Surg. Med. 2003; 33: 119-25、及び、Alvarez-Roman R et al, "Skin penetration and distribution of polymeric nanoperticules", J. Controlled Release 2004; 99: 53-62等に挙げられている。
【0262】
製剤の調製及び投与は、既知の手法を用いて行なうことができる。例えば、クリーム、ローション、又はゲルの形態とすることができる。その適用は、皮膚の感染領域に、及び/又は、後に感染し易い領域に対して、病状の性質や重症度、並びに製剤中の過酸化物、キノン、及び他の活性剤の濃度に応じた頻度で、例えば1日1回又は2回ずつ行なえばよい。
【0263】
前記の過酸化物及びベンゾ/ヒドロキノンの濃度は、上述した範囲内であればよい。この濃度は、目的とする製剤の用途、目的とする投与の態様、及び、具体的に選択した活性剤の活性に基づいて決定されるであろう。
【0264】
実施例12 − 抗ブドウ球菌感染用の局所用製剤
【0265】
黄色ブドウ球菌(S. aureus)又は他のブドウ球菌の対する用途の製剤は、過酸化ベンゾイル等の過酸化物を、TBHQ等のベンゾ/ヒドロキノンと、抗ニキビ製剤について上述したのと同様の手法で混合することにより、調製することができる。この場合における上記成分の製剤形態としては、例えば、作業面や手術用器具に対する適用用途であれば、スプレーが挙げられ、手洗い用途であれば、クレンジングジェル又はローションが挙げられ、前鼻孔に対する適用用途であれば、鼻腔用スプレーが挙げられ、他にも多くの適切な形態が挙げられる。こうした製剤は、特に予防的に、例えば、MRSAや同様の感染が発生するおそれを低減するために使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0266】
【図1】図1は、上述の実施例2で測定された、過酸化ベンゾイル(BP)及びt−ブチルヒドロキノン(TBHQ)の混合物のブドウ球菌株に対するFIC(分解阻止濃度)値を表わすアイソボログラムである。
【図2】図2は、上述の実施例7で測定された、BP及びTBHQの混合物のプロピオン酸菌株に対するFIC値を表わすアイソボログラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)過酸化ジアシル、アルキルヒドロペルオキシド及び金属過酸化物からなる群より選択される過酸化物と(b)ベンゾキノン又はヒドロキノンとを含有する抗微生物製剤。
【請求項2】
皮膚への局所適用に適した、請求項1記載の製剤。
【請求項3】
鼻孔への局所適用に適した、請求項1又は請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
クリーム、ペースト、ゲル、軟膏、フォーム、ローション、又は、他の粘性若しくは半粘性の流体の形態である、請求項1から3の何れか一項に記載の製剤。
【請求項5】
液滴及び/又はスプレーとして適用可能な液体の形態である、請求項1から3の何れか一項に記載の製剤。
【請求項6】
前記の過酸化物及び/又はベンゾ/ヒドロキノンが、個別に又は一緒に、標的化に適した、或いは目標部位における放出及び/又は投与時間の制御に適した、送達用ビヒクル(delivery vehicle)に担持されてなる(carried in or on)、請求項1から5の何れか一項に記載の製剤。
【請求項7】
前記過酸化物が、過酸化ジアシル、アルキルヒドロペルオキシド、又は金属過酸化物である、請求項1から6の何れか一項に記載の製剤。
【請求項8】
前記過酸化物が、マグネシウム及びカルシウムの過酸化物から選択される金属過酸化物である、請求項7記載の製剤。
【請求項9】
前記過酸化物が、式R3−C(O)−OO−C(O)−R4の過酸化ジアシル(式中、R3及びR4は各々独立に、C1からC12のアルキル、及び、C1からC8のアリールから選択される)である、請求項7記載の製剤。
【請求項10】
前記過酸化ジアシルが過酸化ベンゾイルである、請求項9記載の製剤。
【請求項11】
前記過酸化物が、式R5−OO−Hのアルキルヒドロペルオキシド(式中、R5はC1からC8のアルキルから選択される)である、請求項7記載の製剤。
【請求項12】
前記ベンゾ/ヒドロキノンが有する2つのC=O基又はC−OH基が、互いにオルト又はパラに位置する、請求項1から11の何れか一項に記載の製剤。
【請求項13】
前記ベンゾ/ヒドロキノンが有する2つのC=O基又はC−OH基が、互いにパラに位置する、請求項12記載の製剤。
【請求項14】
前記ベンゾ/ヒドロキノンが、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ(−NO2)、及びアミン(−NR2、ここで各Rは独立に、水素又は炭化水素の何れかである)基から選択される1又は複数の基によって置換されてなる、請求項1から14の何れか一項に記載の製剤。
【請求項15】
前記ベンゾ/ヒドロキノンが一置換又は二置換されてなる、請求項14記載の製剤。
【請求項16】
前記ベンゾ/ヒドロキノンの少なくとも2位が置換されてなる、請求項14又は請求項15に記載の製剤。
【請求項17】
前記置換基が、アルキル、アルコキシ、及びハロゲン基から選択される、請求項14から16の何れか一項に記載の製剤。
【請求項18】
前記置換基がアルキル基から選択される、請求項17記載の製剤。
【請求項19】
前記アルキル基がメチル、エチル、イソプロピル、及びt−ブチルから選択される、請求項14から18の何れか一項に記載の製剤。
【請求項20】
前記アルコキシ基がメトキシである、請求項14から17及び19の何れか一項に記載の製剤。
【請求項21】
前記ハロゲンが塩素である、請求項14から17、19及び20の何れか一項に記載の製剤。
【請求項22】
前記ベンゾ/ヒドロキノンを置換する電子求引基が1つ以下である、請求項1から21の何れか一項に記載の製剤。
【請求項23】
前記ベンゾ/ヒドロキノンを置換する電子求引基が存在しない請求項22記載の製剤。
【請求項24】
前記ベンゾ/ヒドロキノンが、そのC−OH又はC=O基の両方に隣接する位置に、立体障害となる(sterically hindering)置換基を有しない、請求項1から23の何れか一項に記載の製剤。
【請求項25】
前記ベンゾ/ヒドロキノンのC−OH又はC=O基のうち少なくとも一方、好ましくは両方について、その隣接する炭素原子のうち少なくとも1つが未置換である、請求項1から24の何れか一項に記載の製剤。
【請求項26】
前記ベンゾ/ヒドロキノンが、少なくとも1つの電子供与基で置換されてなる、請求項1から25の何れか一項に記載の製剤。
【請求項27】
前記ベンゾ/ヒドロキノンが、TBHQ、2−メチル−p−ヒドロキノン、2,3−ジメチル−p−ヒドロキノン、2−エチル−p−ヒドロキノン、チモキノン(thymoquinone)、及びチモヒドロキノン(thymohydroquinone)から選択される、請求項1から26の何れか一項に記載の製剤。
【請求項28】
前記ベンゾ/ヒドロキノンが、TBHQ、チモキノン、及びチモヒドロキノンから選択される、請求項27記載の製剤。
【請求項29】
前記ベンゾ/ヒドロキノンがTBHQである、請求項28記載の製剤。
【請求項30】
前記ベンゾ/ヒドロキノンが、TBHQ、2−メチル−p−ヒドロキノン、2,3−ジメチル−p−ヒドロキノン、2−エチル−p−ヒドロキノン、及びチモヒドロキノンから選択される、請求項1から29の何れか一項に記載の製剤。
【請求項31】
前記ベンゾ/ヒドロキノンが、TBHQ、チモキノン、2−エチル−p−ヒドロキノン、及び2,3−ジメチル−p−ヒドロキノンから選択される、請求項1から30の何れか一項に記載の製剤。
【請求項32】
前記の過酸化物及びベンゾ/ヒドロキノン、並びにそれらの相対比率が、個々の化合物単独の活性と比較して、少なくとも加算レベル(additive level)の抗微生物活性を生じるものである、請求項1から31の何れか一項に記載の製剤。
【請求項33】
前記の過酸化物及びベンゾ/ヒドロキノン、並びにそれらの相対比率が、抗微生物活性に対して相乗効果をもたらすものである、請求項32記載の製剤。
【請求項34】
殺細菌剤(bactericide)として活性を有する、請求項1から33の何れか一項に記載の製剤。
【請求項35】
皮膚感染又は皮膚媒介性感染に関連する1又は複数の細菌に対して活性を有する、請求項34記載の製剤。
【請求項36】
プロピオン酸菌及びグラム陽性球菌から選択される1又は複数の細菌に対して活性を有する、請求項34又は請求項35に記載の製剤。
【請求項37】
ブドウ球菌及び/又はプロピオン酸菌に対して活性を有する、請求項36記載の製剤。
【請求項38】
前記過酸化物の最小殺生物濃度(minimum biocidal concentration:MBC)が、少なくともブドウ球菌及び/又はプロピオン酸菌に対して、500μg/ml未満である、請求項1から37の何れか一項に記載の製剤。
【請求項39】
前記ベンゾ/ヒドロキノンのMBCが、少なくともブドウ球菌及び/又はプロピオン酸菌に対して、50μg/ml未満である、請求項1から38の何れか一項に記載の製剤。
【請求項40】
前記過酸化物の濃度が、0.05から10%w/vの範囲である、請求項1から39の何れか一項に記載の製剤。
【請求項41】
前記ベンゾ/ヒドロキノンの濃度が、0.05から5%w/vの範囲である、請求項1から40の何れか一項に記載の製剤。
【請求項42】
前記過酸化物の前記ベンゾ/ヒドロキノンに対する重量比が、1:10から100:1の範囲である、請求項1から41の何れか一項に記載の製剤。
【請求項43】
前記過酸化物の前記ベンゾ/ヒドロキノンに対する重量比が、1:4から10:1の範囲である、請求項42記載の製剤。
【請求項44】
前記製剤が生体内で適用される作用部位において、前記過酸化物の濃度が、前記過酸化物単独の最小殺細菌濃度(minimum bactericidal concentration:MBC)未満、好ましくは前記過酸化物単独の最小阻止濃度(minimum inhibitory concentration:MIC)未満である、請求項1から43の何れか一項に記載の製剤。
【請求項45】
前記製剤が生体内で適用される作用部位において、前記ベンゾ/ヒドロキノンの濃度が、前記ベンゾ/ヒドロキノン単独のMBC未満、好ましくは前記ベンゾ/ヒドロキノン単独のMIC未満である、請求項1から44の何れか一項に記載の製剤。
【請求項46】
抗微生物剤、抗ニキビ剤、ケラトリース(keratolyses)、コメドリティック(comedolytics)、抗炎症剤、抗増殖剤、抗生物質、抗アンドロゲン剤、セボスタティック剤(sebostatic agents)、痒み止め剤、免疫賦活剤、創傷治癒を促進する薬剤、前記製剤中に存在する他の活性剤の活性を増強する薬剤、又はこうした活性剤の副作用を低減する薬剤、或いは前記製剤の投与に対する患者の適応性を向上させる薬剤、及びそれらの混合物からなる群より選択される、1又は複数の追加の活性剤を含有する、請求項1から45の何れか一項に記載の製剤。
【請求項47】
前記の過酸化物及びベンゾ/ヒドロキノンが各々、別個の送達用ビヒクルにカプセル化されてなる、請求項1から46の何れか一項に記載の製剤。
【請求項48】
本願明細書に実質的に記載されてなる抗微生物製剤。
【請求項49】
請求項1から48の何れか一項に記載の抗微生物製剤を含有する製品。
【請求項50】
化粧品、スキンケア又はヘアケア用調製剤、(獣医薬を含む)医薬調製剤、洗面用品、洗濯又は他の繊維処理用品、又は、農業又は園芸用品である、請求項49記載の製品。
【請求項51】
抗微生物製剤を調製するためのキットであって、
(a)過酸化ジアシル、アルキルヒドロペルオキシド、及び金属過酸化物からなる群より選択される過酸化物の原料と、(b)ベンゾキノン又はヒドロキノンの原料とを含んでなるとともに、更に、
その目的とする適用の時又は適用の前に、前記二種の化合物を混合し、前記製剤を作製するための説明書、及び/又は前記二種の化合物を表面に同時投与するための説明書を含んでなる、キット。
【請求項52】
抗微生物製剤を調製するための方法であって、(a)過酸化ジアシル、アルキルヒドロペルオキシド、及び金属過酸化物からなる群より選択される過酸化物と、(b)ベンゾキノン又はヒドロキノンとを混合する工程を含む方法。
【請求項53】
前記方法による製品が、請求項1から48の何れか一項に記載の製剤である、請求項52記載の方法。
【請求項54】
(a)過酸化ジアシル、アルキルヒドロペルオキシド、及び金属過酸化物からなる群より選択される過酸化物と、(b)ベンゾキノン又はヒドロキノンとを含有する製剤であって、
微生物活動(microbial activity)、特に細菌活動(bacterial activity)により発生、増悪、又は伝染し、ヒト又は動物の身体に影響を及ぼす病状(condition)の処置に使用される製剤。
【請求項55】
前記病状が皮膚又は皮膚構造の病状である、請求項54記載の用途規定製剤(formulation for use)。
【請求項56】
前記病状が、ニキビ、感染性アトピー性湿疹、表在感染性(superficial infected)外傷性病変、創傷、火傷、潰瘍、毛嚢炎、及び真菌症から選択される、請求項55記載の用途規定製剤。
【請求項57】
前記病状がニキビである、請求項56記載の用途規定製剤。
【請求項58】
前記病状がブドウ球菌性(staphylococcal)感染である、請求項54から56の何れか一項に記載の用途規定製剤。
【請求項59】
前記製剤が、請求項1から48の何れか一項に記載の製剤である、請求項54から58の何れか一項に記載の用途規定製剤。
【請求項60】
前記製剤が投与時又は投与直前に原位置で(in situ)調製され、及び/又は、前記の過酸化物及びベンゾ/ヒドロキノンが逐次的に投与される、請求項54から59の何れか一項に記載の用途規定製剤。
【請求項61】
微生物活動、特に細菌活動によって発生、増悪、又は伝染する病状を処置するための医薬の製造における、(a)過酸化ジアシル、アルキルヒドロペルオキシド、及び金属過酸化物からなる群より選択される過酸化物と、(b)ベンゾキノン又はヒドロキノンとの組み合わせの使用。
【請求項62】
前記病状が、皮膚又は皮膚構造の病状である、請求項61記載の使用。
【請求項63】
前記病状がニキビである、請求項62記載の使用。
【請求項64】
前記病状がブドウ球菌性感染である、請求項61又は請求項62に記載の使用。
【請求項65】
微生物の増殖を抑制する方法であって、(a)過酸化ジアシル、アルキルヒドロペルオキシド、及び金属過酸化物からなる群より選択される過酸化物と、(b)ベンゾキノン又はヒドロキノンとの組み合わせを、微生物に感染した領域、又は感染が疑われる領域、又は感染する可能性がある領域に、適用する工程を含んでなる方法。
【請求項66】
前記微生物が細菌である、請求項65記載の方法。
【請求項67】
前記の過酸化物及びベンゾ/ヒドロキノンが適用される領域が、ヒト又は動物の組織である、請求項65又は請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記の過酸化物及びベンゾ/ヒドロキノンが適用される領域が、無生物の(non-living)表面である、請求項65又は請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記の過酸化物及びベンゾ/ヒドロキノンが、請求項1から48の何れか一項に記載の製剤の形態で適用される、請求項65から68の何れか一項に記載の方法。
【請求項70】
微生物の増殖を抑制する方法であって、本願明細書に実質的に記載されている方法。
【請求項71】
微生物を含有する製品、又は含有が疑われる製品、又は含有する可能性がある製品において、微生物の増殖を抑制する方法であって、(a)過酸化ジアシル、アルキルヒドロペルオキシド、及び金属過酸化物からなる群より選択される過酸化物と、(b)ベンゾキノン又はヒドロキノンとの組合せを、前記製品に組み入れる(incorporating)工程を含んでなる方法。
【請求項72】
ベンゾキノン又はヒドロキノンの、過酸化ジアシル、アルキルヒドロペルオキシド、及び金属過酸化物からなる群より選択される過酸化物との組み合わせによる、抗微生物製剤における使用であって、前記製剤の抗微生物活性を増加させること、及び/又は、抗微生物活性を過度に損なうことなく、前記製剤中における過酸化物の量を減少させることを目的とした使用。
【請求項73】
抗微生物活性を過度に損なうことなく、皮膚刺激性(skin irritancy)を、又は、前記製剤が有するその他の望ましくない特性を減少させることを目的とした、請求項72記載の使用。
【請求項74】
ベンゾキノン又はヒドロキノンを含有する抗微生物製剤における、過酸化ジアシル、アルキルヒドロペルオキシド、及び金属過酸化物からなる群より選択される過酸化物の使用であって、前記製剤の抗微生物活性を増加させること、及び/又は、抗微生物活性を過度に損なうことなく、前記製剤中におけるベンゾ/ヒドロキノンの量を減少させることを目的とした使用。
【請求項75】
前記製剤が、請求項1から48の何れか一項に記載の製剤である、請求項72から74の何れか一項に記載の使用。
【請求項76】
ヒト又は動物の患者において、微生物活動によって発生、増悪、又は伝染する病状を処置するための方法であって、(a)過酸化ジアシル、アルキルヒドロペルオキシド、及び金属過酸化物からなる群より選択される過酸化物、並びに(b)ベンゾキノン又はヒドロキノンの医薬的又は獣医薬的有効量を、前記患者に対して投与する工程を含む方法。
【請求項77】
前記病状が、ブドウ球菌性(staphylococcal)及び/又はプロピオン酸菌性(propionibacterial)の活性によって発生、増悪、又は伝染するものである、請求項76記載の方法。
【請求項78】
前記病状が皮膚又は皮膚構造の病状である、請求項76又は請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記病状がニキビである、請求項78記載の方法。
【請求項80】
前記病状がブドウ球菌性感染である、請求項76から78の何れか一項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2008−538108(P2008−538108A)
【公表日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502479(P2008−502479)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際出願番号】PCT/GB2006/001076
【国際公開番号】WO2006/100495
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(507314707)シントピックス リミティド (2)
【Fターム(参考)】