説明

抗癌治療における使用のためのジバニロイルおよびトリバニロイル誘導体

本発明は、医療分野に関しており、より正確には、抗癌治療およびアルツハイマー病、パーキンソン病 または ピック病の治療領域またはダウン症候群の症状を改善するための領域に関係し、新たに合成されたマルチ-バニロイル誘導体化合物および上記障害の治療におけるそれらの使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、医薬分野、より正確には新規治療用化合物、さらに詳細には、新たに合成したジバニロイル誘導体を用いる、抗癌治療またはダウン症候群においておよび鎌状赤血球貧血に対する使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
新規の抗癌剤の探索は、癌がヒトの死のより重要な原因になってきているので、決して終わりのないストーリーである。全抗癌剤の80%以上が、癌細胞のアポトーシス経路を指向して行われており、該経路の活性化に対しての細胞毒性である。
【0003】
グリア芽細胞腫(脳腫瘍)、脳転移、黒色腫、膵臓癌、NSCLC-型肺癌、難治性前立腺癌(HRPC)、トリプルネガティブ(triple negative)および他の型のような乳癌のような数多くの癌細胞は、元来アポトーシスに対して抵抗性であり、多くの公知の薬剤および化学療法剤により治療できない。したがって、本発明は、アポトーシス抵抗性腫瘍細胞または癌細胞に対し細胞毒性および/または細胞増殖抑制効果を有する新規化合物の可能性を研究した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の抗腫瘍剤との新薬の好適な組合せを提供することによるヒトにおける増殖抑制の治療の効果を改善するための技術的な継続的な必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の概要
本発明は、バニリン酸基を含む共通構造に基づく新たな化合物を提供することにより上記の問題に対する解決法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明による化合物で未処理または処理したヒトU373グリア芽細胞腫細胞に対するインビトロ細胞イメージングアプローチで得られた実例となる位相差顕微鏡写真。細胞イメージング:本発明によるバニロイル−エステル化合物(50μM)で未処理または処理して放置した各細胞系の写真(時間=72時間)。
【図2】ヒト通常線維芽細胞を用いた細胞イメージング:本発明によるバニロイル−エステル化合物(50μM)で未処理または処理して放置した各細胞系の写真(時間=72時間)。
【図3】251種のプロテインキナーゼに対してDLT-11 20μMを用いてDLT11キナーゼ阻害活性を試験した。この図は、分析した癌細胞系に依存して22〜71μMを範囲とするインビトロDLT11抗腫瘍活性に関する(MTT比色分析を用いて得られた)IC50増殖阻害値より低い濃度((20μM)におけるDLT11により、活性が傷つけられたキナーゼのみを図解する(図3参照)。Auroraキナーゼの活性は、20μMにおけるDLT11により最も傷つけられる。
【図4】図3における結果を考慮して、本発明者らは、本発明の異なるDLT化合物によるAuroraキナーゼの損傷に対するより広範囲の分析を実施した。この図は、コントロール化合物とは違って、約20μMの濃度における全てのDLT化合物は、少なくとも50%で全3つのAuroraキナーゼの活性を阻害することを示し、コントロールとして別個のDLT化合物およびバニリン酸(AcVan)を用いるAurora A、BおよびC キナーゼ活性阻害について用量反応曲線を示している。
【図5】図4Aにおけるように類似の研究を、コントロール物質として用いたAurora A (A)、B (B)およびC (C)、DYRK-1A (D)およびWEE1キナーゼ、(E)バニリン酸 (AcVan)に対する、DLT-95およびそのフッ化物(DLT-95-F)および塩化物(DLT-95-Cl)誘導体のために行った。コントロール化合物とは違って、濃度(≦7μM)におけるDLT-95-FおよびDLT-95-CLは、全5つのキナーゼをの活性を少なくとも50%阻害し、一方、DLT-95それ自身は、3つのAuroraキナーゼに対してより特異的な阻害活性を有する。
【図6】図1におけるように類似の研究を、化合物DLT-95およびそのフッ化物(DLT-95-F)および塩化物(DLT-95-Cl)置換分のために行った。化合物は、図に示された個別のIC50濃度で投与された。72時間後の図から明らかなように、DLT-95化合物はU373細胞増殖の減少において最も効果的であるが、一方でDLT-95-Clおよび-Fは効果が弱いが、しかしそれにもかかわらず、コントロール、すなわち未処理で放置されたU373細胞と比べるとU373細胞の増殖の顕著な減少に帰結している。
【発明を実施するための形態】
【0007】
前もって、ブルキニアファソ(Burkina Faso)に生育するアフリカの木、サンショウ属(Fagara zanthoxyloides)の根皮から、ブルキナビン(Burkinabin)A、BおよびCとそれぞれ命名された3つのジバニロイルキニン酸の新たな異性体を単離した。ブルキナビンは、鎌状赤血球病が、イオンチャンネルの損傷、続いてアクチン細胞骨格崩壊が起こることを通して生じるように見えることが知られている赤血球抗鎌状細胞生成活性に関連している。したがって、鎌状赤血球病において、イオンチャンネルの損傷は、赤血球生態を傷つける。
【0008】
また、アクチン細胞骨格は、細胞分裂(細胞質分裂)および細胞運動における中心的存在でもあるから、本発明者らは、癌細胞分裂および運動(転移)に関係するイオンチャンネルの損傷が、癌細胞分裂および転移を次々に損傷できる特性、癌細胞における「鎌状赤血球インストールメント(installment)」を擬態できると仮定した。
【0009】
したがって、本発明者らは、化学工程(<6)の限られた数での単純化したブルキナビンを得るための全化学合成の計画を提示し、それ故にポリバニロイル(例えば、ジ−およびトリバニロイル)誘導体をデザインし、合成した。これらの誘導体は、合成のために比較的容易で廉価であり、それは既に多数の公知の薬物および化学療法剤より優れる利点である。
【0010】
本発明の化合物は、それらの1) 抗増殖作用(比色MTT分析による)、2) 自食促進 およびアポトーシス促進効果(フローサイトメトリー分析による)、および3) 抗転移性効果(定量性ビデオ顕微鏡による)に対して、以下のヒト癌細胞系a) U373、T98GおよびHs683グリア芽細胞腫細胞、b) VM21およびVM48黒色腫細胞、c) PC-3前立腺癌細胞、d) MCF-7乳癌細胞、e) LoVo結腸癌細胞、f) OE21食道癌細胞、およびg) A549 NSCLC癌細胞において、ならびにヒトWS1およびWI38正常線維芽細胞(例えば、非癌細胞)においてその後評価した。本発明者らは、単純化したブルキナビン バニロイド(vanilloyd)誘導体、すなわち、本発明の化合物の基幹が、投与された濃度で重要な抗癌効果を有し、一方、該濃度で非腫瘍または非癌細胞の通常細胞の生態を損なわないように見えることを驚くべきことに見出した。
【0011】
その上、本発明者らは、本発明の化合物が、アポトーシス耐性腫瘍または癌を治療するため、および公知の抗癌剤の関連する問題を克服するための抗癌剤として、これらの化合物を良好な候補とするキナーゼが関連した、しかし確実に非アポトーシスが関連したメカニズムを通じて作動することを確立できた。
【0012】
本発明は、(癌などの)増殖性障害を治療するための方法および化合物に関する。特に、本発明は、(癌などの)増殖性障害を治療するためのジ−およびトリバニロイル誘導体化合物およびその使用を提供する。その上、本発明は、また酸化的障害、炎症性障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、ピック病の治療方法、またはダウン症候群の症状改善方法を提供し、かつ本発明は、酸化的障害、炎症性障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、ピック病の治療のため、またはダウン症候群の症状を改善するためのジ−およびトリバニロイル誘導体化合物およびその使用を提供する。
【0013】
本発明の化合物は、一般式(I):
【化1】

[式中、
R1-6は、互いにそれぞれ独立して=H、OH、C1-8アルコキシアルキレン、OMe、Ac、OAc、C1-8アルキル、NO2またはハロゲン、例えばFもしくはClであり得、ここでR1-3の間で隣接する2つの置換基は一緒になってジオキソールとなり得;
【0014】
式中のYは、COO、テトラゾール、OCO、OCOO、CONR10、NR10CO、OCONR10、NR10COO、NR10CONR10、COCH2CO、COCH2CH2、CH2CH2CO、CH2COCH2、COOCH2、CONHCH2、CON-C1-6アルキルCH2、CONHCO、CON-C1-6アルキルCO、CH2NHCH2、CH2N-C1-6アルキルCH2、CH2OCO、CH2NHCO、CH2N(C1-6アルキル)CO、CH2OCH2、CH2SCH2、SO2OCH2、SO2NHCH2、およびSO2N-C1-6アルキルCH2(ここで、R10=H、C1-4アルキルである)からなる群から選択され;
【0015】
式中のL1=C1-8アルキレン、好ましくはC5-10 アルキレンであるか;または
式中のL1=(CH2)n(ここでn は、2〜10から選択される整数であり)であるか;または
【0016】
式中:
【化2】

であるか、または
【0017】
式中:
【化3】

(ここで星印*は、記載されている一価−または二価の基が、それが関連し、基を形成する部位である構造に結合する点を示すために式中用いられている)
であり、
【0018】
[ここで、R9は、OH、CO2HまたはNH2からなる群から選択され、ここでqは、0、1、2または3から選択される整数であり、それぞれの基は、C1-6アルキル、CO2H、バニリン酸、アミンおよびC1-6アルキルオキシカルボニルからなる群からそれぞれ独立して選択される1つ、2つまたは3つの置換基で任意に置換されており、ここでpは、0、1、2または3から選択される整数である]である]であり得る]
を有する化合物またはその立体異性体あるいはその医薬的に許容な付加塩、水和物または溶媒和物である。
【0019】
これらの化合物は、増殖性障害、酸化的障害、炎症性障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、ピック病の治療のために、または ダウン症候群の症状を改善するために有効であることが、本発明者らにより示された。
【0020】
好ましい態様において、YはCOOまたはCOOCH2である。
【0021】
好ましい態様において、R1およびR4は、それぞれ独立して水素であり、R2、R3、R5およびR6は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシまたはC1-6アルコキシである。
【0022】

さらに好ましい態様において、R1およびR4は、それぞれ独立して水素であり、R2、R3、R5
よびR6は、それぞれ独立して ヒドロキシまたはC1-6アルコキシである。
【0023】
さらに好ましい態様において、R1およびR4は、それぞれ独立して水素であり、R2およびR5は、それぞれ独立してC1-6アルコキシであり、R3およびR6は、それぞれ独立してヒドロキシである。
【0024】
さらに好ましい態様において、R1およびR4は、それぞれ独立して水素であり、R2およびR5は、それぞれ独立してメトキシであり、R3およびR6は、それぞれ独立してヒドロキシである。
【0025】
さらに好ましい1つの態様において、Y=COOCH2であり、
【化4】

(ここで星印*は、記載されている一価−または二価の基が、それが関連し、基を形成する部位である構造に結合する点を示すために式中用いられている)、
式中、R1およびR4=OMe、FまたはClであり、R2およびR5 =OHであり、R3およびR6=H (DLT-95、DLT-95-FおよびDLT-95-Cl)である。
【0026】
本発明のさらに好ましい1つの態様において、本発明の化合物は、一般式(II):
【化5】

【0027】
[式中、Xは、O、O-C1-6アルキル、NHおよびN-C1-6アルキルからなる群から選択され;
式中各R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、H、OH、C1-8アルコキシC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、およびハロゲン、例えばFおよびClからなる群から独立して選択され;
式中のL1は、C1-8アルキレン、
【化6】

【0028】
または
【化7】

(ここで星印*は、記載されている一価−または二価の基が、それが関連し、基を形成する部位である構造に結合する点を示すために式中用いられている);
【0029】
それぞれの基は、それぞれ独立して、C1-6アルキル、CO2H、バニリン酸、アミン、およびC1-6アルキルオキシカルボニルからなる群から選択される1つ、2つまたは3つの置換基で任意に置換されており、ここでpは、0、1、2または3から選択される整数であり、;
ここでR9は、OH、CO2HおよびNH2 からなる群から選択され、ここでqは、0、1、2または3から選択される整数である]
を有する化合物、またはその立体異性体およびその医薬的に許容な付加塩、水和物もしくは溶媒和物。
【0030】
これらの化合物は、増殖性障害、酸化的障害、炎症性障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、ピック病の治療のために、またはダウン症候群の症状を改善するために有効であることが、本発明者らにより示された。
【0031】
好ましい態様において、XはOである。
好ましい態様の代替えにおいて、XはNHである。
【0032】
好ましい態様において、R1およびR4は、それぞれ独立して水素であり、R2、R3、R5およびR6は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシまたはC1-6アルコキシである。
【0033】
さらに好ましい態様において、R1およびR4は、それぞれ独立して水素であり、R2、R3、R5およびR6は、それぞれ独立して ヒドロキシまたはC1-6アルコキシである。
【0034】
さらに好ましい態様において、R1およびR4は、それぞれ独立して水素であり、R2およびR5は、それぞれ独立してC1-6アルコキシであり、R3およびR6は、それぞれ独立してヒドロキシである。
【0035】
さらに好ましい態様において、R1およびR4は、それぞれ独立して水素であり、R2およびR5は、それぞれ独立してメトキシであり、R3およびR6は、それぞれ独立してヒドロキシである。
【0036】
さらに好ましい1つの態様において、X=OCH2であり、
【化8】

(ここで星印*は、記載されている一価−または二価の基 が、それが関連し、基を形成する部位である構造に結合する点を示すために式中用いられている)
式中、R1およびR4=OMe、FまたはClであり、R2およびR5 =OHであり、R3およびR6=H (DLT-95、DLT-95-FおよびDLT-95-Cl)である。
【0037】
さらに好ましい態様において、本発明の化合物は、表1の化合物からなる群から選択される。
【0038】
その上、本発明は、式 (III):
【化9】

[式中、Xは、O、O-C1-6アルキル、NHおよびN-C1-6アルキルからなる群から選択され;
式中 n は、1、2、3、4、5、6、7および8から選択される整数であり、
式中R10およびR11は、それぞれ独立して、H、CO2H、C1-6アルキル、アミンおよびバニリン酸からなる群から選択される]
の化合物を提供する。
【0039】
さらに好ましい態様において、X は酸素であり、nは2である。
【0040】
さらに好ましい1つの態様において、XはNHであり、nは2である。
【0041】
より好ましい1つの態様において、本発明の化合物は、エタン-1,2-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート)、プロパン-1,3-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート)、ブタン-1,4-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート)、ペンタン-1,5-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート)、ヘキサン-1,6-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート)からなる群から選択される。
【0042】
その上、本発明は、式(IV):
【化10】

[式中、Xは、O、O-C1-6アルキル、NHおよびN-C1-6アルキルからなる群から選択され;
式中p は、0、1、2または3から選択される整数であり;そして
式中R9は、OH、CO2H、NH2からなる群から選択され、qは、0、1、2または3から選択される整数である]
の化合物を提供する。
【0043】
好ましい1つの態様において、Xは酸素であり、pは2であり、qは0である。
【0044】
さらに好ましい1つの態様において、XはNHであり、pは2であり、qは0である。
【0045】
さらに好ましい態様において、本発明の化合物は、トランス-シクロヘキサン-1,2-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート);シス-シクロヘキサン-1,2-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート);ラセミのシクロヘキサン-1,3-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート);シス-シクロヘキサン-1,3-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート);トランス-シクロヘキサン-1,3-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート);シス-シクロヘキサン-1,4-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート);トランス-シクロヘキサン-1,4-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート);ラセミのシクロヘキサン-1,4-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート) からなる群から選択される。
【0046】
さらに好ましい1つの態様において、本発明の化合物は、トランス-シクロヘキサン-1,2-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート)である。
【0047】
さらなる1つの態様において、本発明の化合物は、[2-[(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾイル)オキシメチル]フェニル]メチル 4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾエート (DLT 24)、6-(3,4-ジメトキシベンゾイル)オキシヘキシル 3,4-ジメトキシベンゾエート(DLT 26)、1,4-オキシブタ-2-エニル-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート) (DLT27)、1,4-オキシブタ-2-インイル ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート) (DLT 28)、6-(3-ヒドロキシ-4-メトキシ-ベンゾイル)オキシヘキシル 3-ヒドロキシ-4-メトキシ-ベンゾエート (DLT 29)、[3-[(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾイル)オキシメチル]フェニル]メチル 4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾエート (DLT 25)、2-[ビス[2-(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾイル)オキシエチル]アミノ]エチル 4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾエート (DLT93)、および[7-[(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾイル)オキシメチル]-2,6-ジメチル-3,5-ジオキソ-ピラゾロ[1,2-a]ピラゾール-1-イル]メチル 4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾエート (DLT 94)からなる群から選択される。
【0048】
その上、本発明は、式(V):
【化11】

[式中、Xは、O、O-C1-6アルキル、NHおよびN-C1-6アルキルからなる群から選択され;
式中R7は、H、CO2HまたはC1-6アルキルから選択される]
を有する化合物を提供する。
【0049】
その上、本発明は、一般式(VI):
【化12】

[式中、Zは、COCH2CO、COCH2CH2、CH2CH2CO、CH2COCH2、COOCH2、CONHCH2、CON-C1-6アルキルCH2、CONHCO、CON-C1-6アルキルCO、CH2NHCH2、CH2N-C1-6アルキルCH2、CH2OCO、CH2NHCO、CH2N(C1-6アルキル)CO、CH2OCH2、CH2SCH2、SO2OCH2、SO2NHCH2、SO2N-C1-6アルキルCH2からなる群から選択され;
式中R1-3は、互いにそれぞれ独立して=H、OH、ハロゲン、C1-8アルコキシアルキレン、OMe Ac、OAc、C1-8アルキル、NO2であり得;
式中R1-3の間の2つの隣接する置換基は、一緒になってジオキソールであり得る]
を有する化合物を提供する。
【0050】
より具体的な態様において、以下の化合物:[3,5-ビス-[(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾイル)-オキシメチル]-フェニル]-メチル-4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾエート (DLT95)、[3,5-ビス[(4-ヒドロキシ-3-フルオロ-ベンゾイル)オキシメチル]-フェニル]-メチル-4-ヒドロキシ-3-フルオロ-ベンゾエート (DLT95-F)、および[3,5-ビス-[(4-ヒドロキシ-3-クロロ-ベンゾイル)-オキシメチル]-フェニル]-メチル-4-ヒドロキシ-3-クロロ-ベンゾエート (DLT95-Cl)は、本発明によるとみなされる。
【0051】
本発明は、さらに、式 (IIa):
【化13】

[式中、Xは、O、O-C1-6アルキル、NH、N-C1-6アルキルからなる群から選択され;
式中各R1、R2、R3、R4、R5、R6は、H、OH、C1-8アルコキシC1-6アルキル、C1-6アルコキシおよびハロゲンからなる群から独立して選択され;
式中 p は、0、1、2または3から選択される整数であり;そして
式中R9 は、OH、CO2H、NH2 からなる群から選択され;そして
式中 q は、0、1、2または3から選択される整数である]
を有する化合物を提供する。
【0052】
好ましい1つの態様において、Xは酸素であり、pは2であり、qは0である。
【0053】
さらに好ましい1つの態様において、XはNHであり、pは2であり、qは0である。
【0054】
さらに本発明は、本発明の1以上の化合物および医薬的に許容な担体を含む医薬組成物を提供する。
【0055】
さらに本発明は、薬剤としての使用のための本発明による化合物または医薬組成物を提供する。
【0056】
さらに本発明は、(癌などの)増殖性障害、酸化的障害、炎症性障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、ピック病を治療するため、またはダウン症候群および鎌状赤血球貧血の症状を改善するための本発明による化合物または医薬組成物を提供する。
【0057】
さらに本発明は、(癌などの)増殖性障害、酸化的障害、炎症性障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、ピック病を治療するため、またはダウン症候群および鎌状赤血球貧血の症状を改善するための薬剤を製造するための本発明による化合物または医薬組成物の使用を提供する。
【0058】
さらに本発明は、本発明による1以上の化合物または医薬品の治療的有効量を、それらを必要とする患者に投与することを含むそのような治療を必要とする患者における (癌などの)増殖性障害、酸化的障害、炎症性障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、ピック病の治療方法、またはダウン症候群および鎌状赤血球貧血の症状を改善するための方法を提供する。この抗癌治療は、任意に、化学療法、放射線療法、免疫療法および/または遺伝子治療からなる群から選択される癌療法のいずれかと組み合わせて実施される。
【0059】
さらに本発明は、本発明による1以上の化合物または医薬品の治療的有効量を、患者に投与することを含むそのような治療を必要とする患者における酸化的および炎症性障害を治療するための方法を提供する。
【0060】
さらに本発明は、本発明による化合物または医薬品を、1以上の活性化合物と組み合わせて、当該化合物または医薬組成物の前後または同時に投与する、そのような治療を必要とする患者における酸化的および炎症性障害を治療するための方法を提供する。
【0061】
好ましい1つの態様において、本発明による組成物または医薬品は、経口的に、例えば、ピル、錠剤、ラッカーを塗った錠剤、糖衣錠、顆粒、硬および軟ゼラチンカプセル、水性、アルコール性もしくは油性溶液、シロップ、エマルジョンもしくは懸濁液の形態で投与されるか、または直腸的、例えば坐薬の形態で投与されるか、非経口的、例えば、皮下、筋肉内もしくは静脈内注射もしくは点滴のための溶液の形態で投与されるか、経皮的または局所投与、例えば、軟膏、チンキ剤、スプレーもしくは経皮吸収治療システムであるか、または吸入投与、鼻腔噴霧もしくはエアゾール混合物であるか、あるいは例えば、マイクロカプセル、植込錠または杆状体である。
【0062】
本発明は、増殖性障害、例えば腫瘍および癌、形成異常、前癌性または前癌性病変、異常細胞増殖、良性腫瘍、悪性腫瘍、癌または転移(ここで癌は;白血病、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、CNS癌、黒色腫、卵巣癌、腎臓癌、前立腺癌、乳癌、神経膠腫、結腸癌、膀胱癌、肉腫、膵臓癌、結腸直腸癌、頭頸部癌、肝臓癌、骨癌、骨髄癌、胃癌、十二指腸癌、食道癌、甲状腺癌、血液癌いおよびリンパ腫の群から選択される)を治療するための本発明によるジバニロイル誘導体を提供する。
【0063】
好ましい1つの態様において、癌は;白血病、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、CNS癌、黒色腫、卵巣癌、腎臓癌、前立腺癌、乳癌、神経膠腫、結腸癌、膀胱癌、肉腫、膵臓癌、結腸直腸癌、頭頸部癌、肝臓癌、骨癌、骨髄癌、胃癌、十二指腸癌、食道癌、甲状腺癌、血液癌およびリンパ腫の群 から選択される。
【0064】
好ましい1つの態様において、患者は、哺乳類、例えば馬、ウサギ、マウス、ラット、豚、羊、乳牛 または犬である。好ましくは患者はヒトである。
【0065】
その上、本発明は、1以上の本発明の化合物および医薬的に許容な担体および/または充填剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、湿潤剤、安定化剤、乳化剤、分散剤、保存剤、甘味剤、着色剤、矯味矯臭剤、芳香剤、増粘剤、希釈剤、緩衝物質、溶剤、可溶化剤、持続性効果の達成剤、浸透圧を変えるための塩、コーティング剤または抗酸化剤の群から選択される添加剤を含む医薬品を提供する。
【0066】
さらなる1つの態様において、本発明は、本発明による1以上の化合物または医薬品の治療的有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む、そのような療法を必要とする患者における治療方法を提供する。
【0067】
あるいは、本発明は、本発明による1以上の化合物または医薬品の治療的有効量を、患者に投与することを含む、そのような療法を必要とする患者における酸化的および炎症性障害の治療方法を提供する。具体的な1つの態様において、上記の治療は:化学療法、放射線療法、免疫療法、および/または遺伝子治療からなる群から選択される癌療法のいずれかとの組み合わせで実施される。さらなる1つの態様において、本発明による化合物または医薬品を、1以上の活性化合物と組み合わせて、本発明による当該化合物の前後または同時に投与される。投与は、例えば経口的、例えば、ピル、錠剤、ラッカーを塗った錠剤、糖衣錠、顆粒、硬および軟ゼラチンカプセル、水性、アルコール性もしくは油性溶液、シロップ、エマルジョンもしくは懸濁液の形態であり得るか、または直腸的、例えば坐薬の形態であり得るか、または非経口的、例えば、皮下、筋肉内もしくは静脈内注射もしくは点滴のための溶液の形態であり得るか、経皮的または局所投与、例えば、軟膏、チンキ剤、スプレーもしくは経皮吸収治療システムであり得るか、または吸入投与、鼻腔噴霧もしくはエアゾール混合物であり得るか、あるいは例えば、マイクロカプセル、植込錠または杆状体であり得る。
【0068】
さらなる1つの態様において、本発明は、増殖性障害、酸化的障害、炎症性障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、ピック病を治療するための物質、またはダウン症候群の症状を改善するための物質、Aurora A、BまたはC、WEE1およびDYRK1A キナーゼからなる群から選択されるか、または含む1以上のキナーゼの活性を阻害する物質を識別するための方法;上記の物質の存在下および非存在下における上記の1以上のキナーゼの活性を測定する方法(ここで、前記物質の存在下における酵素活性の減少は、それが阻害剤であり、従って上記の障害の治療に好適であることを示す)を提供する。
【0069】
そのようなスクリーニング方法の好ましい1つの態様において、該物質は本発明によるジバニロイル誘導体である。好ましくは、該化合物は、(癌などの)増殖性阻害の治療のためである。
【0070】
本発明は、基本的な構造活性相関の確立を認めました。いかなる学説により束縛されることを望むことなしに、抗増殖作用は、どのようにバニロイルエステルか互いに結合(例えば、炭素直鎖またはシクロアルカンジオール構造)するかに依存しているように見える。
【0071】
現在の最良のヒット、DLT12 およびDLT4は、通常の線維芽細胞におけるよりも癌細胞においてより顕著に〜10倍である、抗増殖性、抗転移性効果および抗キナーゼ効果を示す。フローサイトメトリー分析は、研究した癌細胞系においてプロオートファジック(pro-autophagic)またはプロアポトーシス効果を誘発しないことを明らかにした。しかしながら、コンピュター支援位相差顕微鏡法は、DLT化合物が、調査した明確な癌細胞系において細胞分裂および細胞転移の両方を著しく傷つけるが、通常の線維芽細胞は傷つけないことを明らかにした。図1はヒトU373グリア芽細胞腫モデルに関して得られたデータを図解するが、一方、図2は、ヒト通常線維芽細胞で得られたデータを図解する。癌細胞においてイオンチャンネルを傷つけることが知られている他の化合物と比較したとき、定量的ビデオ顕微鏡を用いて評価した、例えばDLT4を含む種々のDLT化合物を用いて得られたデータは、イオンチャンネルの阻害を実際に思わせるものである。DLT-95ならびにその誘導体DLT-95-FおよびDLT-95-Clは、7つの異なるヒト癌細胞系の増殖に対して顕著な効果を有することも示した。
【0072】
好適な実施形態の詳細な説明
本発明は、抗癌活性を有する新たな化合物を提供する。該化合物は、増殖性障害、酸化的障害、炎症性障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、ピック病を治療するための、またはダウン症候群の症状を改善するための、一般式(I):
【化14】

【0073】
[式中、
R1-6は、互いにそれぞれ独立して=H、OH、C1-8アルコキシアルキレン、OMe、Ac、OAc、C1-8アルキル、NO2またはハロゲン、例えばFもしくはClであり得、ここでR1-3の間で隣接する2つの置換基は一緒になってジオキソールとなり得;
式中のYは、COO、テトラゾール、OCO、OCOO、CONR10、NR10CO、OCONR10、NR10COO、NR10CONR10、COCH2CO、COCH2CH2、CH2CH2CO、CH2COCH2、COOCH2、CONHCH2、CON-C1-6アルキルCH2、CONHCO、CON-C1-6アルキルCO、CH2NHCH2、CH2N-C1-6アルキルCH2、CH2OCO、CH2NHCO、CH2N(C1-6アルキル)CO、CH2OCH2、CH2SCH2、SO2OCH2、SO2NHCH2、およびSO2N-C1-6アルキルCH2(ここで、R10=H、C1-4アルキルである)からなる群から選択され;
【0074】
式中のL1=C1-8アルキレン、好ましくはC5-10 アルキレンであるか;または
式中のL1=(CH2)n(ここでn は、2〜10から選択される整数であり)であるか;または
式中:
【化15】

であるか、または
【0075】
式中:
【化16】

(ここで星印*は、記載されている一価−または二価の基が、それが関連し、基を形成する部位である構造に結合する点を示すために式中用いられている)
であり、
【0076】
[ここで、R9は、OH、CO2HまたはNH2からなる群から選択され、ここでqは、0、1、2または3から選択される整数であり、それぞれの基は、C1-6アルキル、CO2H、バニリン酸、アミンおよびC1-6アルキルオキシカルボニルからなる群からそれぞれ独立して選択される1つ、2つまたは3つの置換基で任意に置換されており、ここでpは、0、1、2または3から選択される整数である]である]であり得る]
のジ−およびトリバニロイル誘導体、その立体異性体またはそれらの医薬的に許容な付加塩、水和物もしくは 溶媒和物であると定義される。
【0077】
より詳細には、一般式(II):
【化17】

【0078】
[式中、Xは、O、O-C1-6アルキル、NHおよびN-C1-6アルキルからなる群から選択され;
式中各R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、H、OH、C1-8アルコキシC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、およびハロゲン、例えばFおよびClからなる群から独立して選択され;
式中のL1は、C1-8アルキレン、
【化18】

または
【化19】

【0079】
(ここで*は、記載されている一価−または二価の基が、それが関連し、基を形成する部位である構造に結合する点を示すために式中用いられている);
それぞれの基は、それぞれ独立して、C1-6アルキル、CO2H、バニリン酸、アミン、およびC1-6アルキルオキシカルボニルからなる群から選択される1つ、2つまたは3つの置換基で任意に置換されており、ここでpは、0、1、2または3から選択される整数であり、;
ここでR9は、OH、CO2HおよびNH2 からなる群から選択され、ここでqは、0、1、2または3から選択される整数である]
のジバニロイル誘導体は、エステルまたはアミド、あるいはその立体異性体またはその医薬的に許容な付加塩、水和物もしくは溶媒和物であり;増殖性障害、酸化的障害、炎症性障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、ピック病を治療するため、またはダウン症候群および鎌状赤血球貧血の症状を改善するためのそれらの使用である。
【0080】
本発明の前記の化合物は、(癌などの)増殖性障害、酸化的障害、炎症性障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、ピック病を治療するため、またはダウン症候群および鎌状赤血球貧血の症状を改善するために用いられ得る。
【0081】
好ましい実施形態は:
I−直鎖状炭素鎖におけるジバニロイルエステルまたはアミド (式(III)):
【化20】

[式中、Xは、O、O-C1-6アルキル、NHおよびN-C1-6アルキルからなる群から選択され;
式中n は、1、2、3、4、5、6、7および8から選択される整数であり;
式中R10およびR11は、それぞれ独立して、H、CO2H、C1-6アルキルおよびバニリン酸からなる群から選択される]。
【0082】
本発明の化合物の具体的な例は(表1も参照):
DLT1:式中X=O、R10 およびR11=Hならびにn=2;
DLT2:式中X=O、R10 およびR11=Hならびにn=3;
DLT10:式中X=O、R10 およびR11=Hならびにn=4;
DLT3:式中X=O、R10 およびR11=Hならびにn=5;
DLT11:式中X=O、R10 およびR11=Hならびにn=6;
DLT12:式中X=O、R10 およびR11=Hならびにn=7;
DLT13:式中X=O、R10 およびR11=Hならびにn=8である。
【0083】
II−環状炭素鎖におけるジバニロイル エステルまたはアミド (式(IV)):
【化21】

式中、Xは、O、O-C1-6アルキル、NHおよびN-C1-6アルキルからなる群から選択され;
式中 p は、0、1、2および3から選択される整数であり;
式中R9は、OH、CO2H、NH2 からなる群から選択され;そして
式中 q は、0、1、2または3から選択される整数である。
【0084】
本発明の化合物の具体例は、シクロヘキセンエステル型(X=O、p=2 およびq=0)である(表1も参照):
DLT4:1、2ラセミのトランスである;
DLT7:1、2トランス S,Sである;;
DLT8:1,2トランス R,Rである;
DLT9:1,2シスである;
DLT5:1,3シス-トランス 3:7である。」
【0085】
III−トリバニロイル エステルまたはアミド (式(V)):
【化22】

式中、Xは、O、O-C1-6アルキル、NH、N-C1-6アルキルからなる群から選択され;
式中R7は、H、CO2HおよびC1-6アルキルから選択される。
【0086】
本発明によるさらなる具体例は:
[2-[(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾイル)オキシメチル]フェニル]メチル 4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾエート;メタノール) (DLT 24)
【化23】

【0087】
6-(3,4-ジメトキシベンゾイル)オキシヘキシル 3,4-ジメトキシベンゾエート(DLT 26)
【化24】

【0088】
1,4-オキシブタ-2-エニル-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート) (または[(E)-4-(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾイル)オキシブタ-2-エニル] 4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾエート;メタノール) (DLT27). シスおよびトランスの混合物
【化25】

【0089】
1,4-オキシブタ-2-インイル ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート) (DLT 28)
【化26】

【0090】
6-(3-ヒドロキシ-4-メトキシ-ベンゾイル)オキシヘキシル 3-ヒドロキシ-4-メトキシ-ベンゾエート (DLT 29)
【化27】

【0091】
[3-[(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾイル)オキシメチル]フェニル]メチル 4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾエート (DLT 25)
【化28】

【0092】
2-[ビス[2-(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾイル)オキシエチル]アミノ]エチル 4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾエート (DLT93)
【化29】

【0093】
本発明による化合物のさらなる具体例は、以下のビマン誘導体である。そのような化合物は蛍光特性があり、生化学的な厳密な調査の目的に好適である。
【0094】
[7-[(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾイル)オキシメチル]-2,6-ジメチル-3,5-ジオキソ-ピラゾロ[1,2-a]ピラゾール-1-イル]メチル 4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾエート (DLT 94)
【化30】

この化合物は、市販のジブロモビマンおよびバニリン酸から全く同じアルキル化方法に従って合成できる。
【0095】
IV 一般式(VI)のトリバニロイル誘導体:
【化31】

【0096】
式中Zは、COCH2CO、COCH2CH2、CH2CH2CO、CH2COCH2、COOCH2、CONHCH2、CON-C1-6アルキルCH2、CONHCO、CON-C1-6アルキルCO、CH2NHCH2、CH2N-C1-6アルキルCH2、CH2OCO、CH2NHCO、CH2N(C1-6アルキル)CO、CH2OCH2、CH2SCH2、SO2OCH2、SO2NHCH2、SO2N-C1-6アルキルCH2からなる群から選択され;
式中R1-3は、互いにそれぞれ独立して=H、OH、ハロゲン、C1-8アルコキシアルキレン、OMe Ac、OAc、C1-8アルキル、NO2であり得;
そして式中R1-3の間の2つの隣接する置換基は、一緒になってジオキソールであり得る。
【0097】
3つの化合物は、このシリーズの中で、単工程により既に合成されている:
【化32】

【0098】
[3,5-ビス[(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾイル)オキシメチル]フェニル]メチル 4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾエート. DLT95
【化33】

収率=11%、Rf=0.23 (シクロヘキサン / AcOEt:5/5)、次いで、CH2Cl2から結晶化。RP-HPLC:純度=100% (254 nm)、tR=4.04分;1H NMR (DMSO-d6):δ9.99 (bs、3H、OH)、7.50〜7.45 (m、9H、H-3、H-7、H-11)、6.85 (d、3J6,7=8.1、3H、H-6)、5.34 (s、6H、H-9)、3.78 (s、9H、H-8). 13C NMR (DMSO-d6):δ165.3 (C-1)、151.6 (C-5)、147.3 (C-4)、137.1 (C-10)、126.5 (C-11)、123.5 (C-7)、120.1 (C-2)、115.1 (C-6)、112.4 (C-3)、65.2 (C-9)、55.5 (C-8). Mp:161℃。元素分析;C33H30O12.3/2CH2Cl2:C、59.89;H、4.68. 実測値:C、59.84;H、4.72 (CH2Cl2 8 重量%に相当). MS (ESI+) m/z 641.1625 (MNa+)、0.6 ppm. IR-FT:3378.86;2941.00;1701.97;1597.35;1528.19;1516.96.
【0099】
[3,5-ビス[(4-ヒドロキシ-3-フルオロ-ベンゾイル)オキシメチル]フェニル]メチル 4-ヒドロキシ-3-フルオロ-ベンゾエート. DLT95-F
【化34】

収率=15%、Rf=0.4 (CH2Cl2 / MeOH:9/1)、RP-HPLC:純度=98.4% (254nm)、tR=3.96分、1H NMR (DMSO-d6):δ10.91 (bs、3H、OH)、7.68〜7.7.65 (m、6H、H-3、H-7)、7.51 (s、3H、H-10)、7.03 (t、3J6,74J6-F=9.0、2H、H-6)、5.34 (s、6H、H-8). 13C NMR (DMSO-d6):δ164.5 (d、4J1-F=2.3、C-1)、150.4 (d、1J4-F=240.7、C-4)、149.1 (d、2J5-F=12.0、C-5)、137.0 (C-9)、126.8 (C-10)、126.7 (d、4J7-F=2.3、C-7)、120.5 (d、3J2-F=6.0、C-2)、117.6 (d、3J6-F=3.0、C-6)、117.0 (d、2J3-F=19.5.0、C-3)、65.6 (C-8). Mp:88℃。元素分析;C30H21F3O91/4CH2Cl2:C、60.18;H、3.59. 実測値:C、60.16;H、4.00. IR-FT:3382.35;2957.89;1702.31;1617.81;1597.99;1518.77.
【0100】
[3,5-ビス[(4-ヒドロキシ-3-クロロ-ベンゾイル)オキシメチル]フェニル]メチル 4-ヒドロキシ-3-クロロ-ベンゾエート. DLT95-Cl
【化35】

収率=10%、Rf=0.27 (CH2Cl2 / MeOH:98/2)、RP-HPLC:純度=89.8% (210 nm)、tR=2.73分、1H NMR (DMSO-d6):δ11.3 (bs、3H、OH)、7.88 (d、4J3,7=1.8、3H、H-3)、7.79 (dd、3J6,7=8.7、4J3,7=1.8、3H、H-7)、7.51 (s、3H、H-10)、7.05 (d、3J6,7=8.7、3H、H-6)、5.34 (s、6H、H-8). 13C NMR (DMSO-d6):δ164.3 (C-1)、157.7 (C-5)、136.9 (C-4)、131.0 (C-3)、129.8 (C-7)、126.9 (C-2)、121.1 (C-4)、119.9 (C-10)、116.4 (C-6). Mp:178℃。元素分析;C30H21Cl3O91/8CH2Cl2:C、56.32;H、3.33. 実測値:C、56.43;H、3.58. IR-FT:3393.09;2961.56;1690.44;1601.50;1579.04;1500.77.
【0101】
一般式VIのファミリーの他の化合物は、類似の合成方法を用いて合成され得る。
本発明者らは、単純化したブルキナビン様化合物が、ある種の抗癌治療特性を有することを確かめた。これらの特性は、1)2つのバニリン酸構成要素の間の距離、すなわち、両方のバニリン酸基の間の直鎖状炭素鎖の長さが、重要と思われる;2)バニリン酸基の相対的な位置、すなわち、化学構造の立体異性体に依存して、同一平面であるか否か;3)化学構造中に存在するバニリン酸の数、すなわち、ジバニロイル エステルもしくはアミドにおける2またはトリバニロイル エステルもしくはアミドにおける3;に依存しているように思われる。全ての3つの因子の組み合わせは、化合物の活性に影響を及ぼす。したがって、本発明者らは、新たに合成された種々のバニロイルエステルの抗癌活性を詳細に調べた。そのような化合物の追加実施例は、以下の表1に見出され得る。
【0102】
したがって、本発明は、有効成分としての本発明の少なくとも1つの化合物または医薬組成物の癌が治療されるような有効量を、個々に投与することを含む癌の治療方法が提供される。例として、本発明の態様において、癌の治療に有効な本発明の少なくとも1つの化合物の治療的有効量を患者に投与することにより治療を必要とする患者において癌が治療される。
【0103】
その上、本発明者らは、本発明の化合物の実際のターゲットを確認する手段に着手し、増殖障害に含まれることが知られている特定のキナーゼが、本発明の化合物のいくつかにより阻害されることを確立した。その結果を実施例3〜5ならびに図3および4において示す。
【0104】
これらの結果から、DLT11化合物は、2つのAuroraキナーゼを80%以上阻害するが、しかしさらに15のキナーゼを40〜60%阻害し、1つのキナーゼが5%阻害されることが明白になってきている。Dyrk1A (二重特異性のチロシンリン酸化および制御キナーゼ1a)は、わずか5%DLT11により阻害されるが、しかし本発明の試験した他の2つの化合物、すなわち、DLT1 (51%阻害)およびDLT5 (26%阻害)によっても阻害される(表6)。分析した>250キナーゼのうち、本発明者らは、Aurora A、BおよびCキナーゼが、DLT化合物により最も著しく傷つけられたことを示した(表6および図4)。
【0105】
これは、発明者らに、細胞実験またはインビボ実験の必要なしに、類似作用を有するさらなる化合物のためのスクリーニングアッセイを構築することを可能にした。そのアイデアは、候補薬剤の存在下および非存在下における1以上の本発明の化合物により阻害されることが示される、特定のキナーゼの活性の測定であり、該キナーゼの阻害は、上記薬剤の抗増殖作用の暗示である。このように、ハイスループットスクリーニングアッセイまたはプラットフォームは、リード化合物を特定するのに確立されることができ、次いで、さらなるインビトロおよびインビボにおいて試験され得る。
【0106】
したがって、本発明は、以下の工程:
a)キナーゼおよびその活性測定の提供;
b)上記キナーゼを候補薬剤と接触させ、該キナーゼの活性の再測定;および
c)工程a)およびb)
の間での上記キナーゼ活性の比較、ここで、工程a)に比較して工程b)での該キナーゼの活性の減少は、候補薬剤が抗増殖作用を有することをしめす;
を含む、(癌などの)増殖性障害の治療における、しかし同じく酸化的障害、炎症性障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、ピック病、またはダウン症候群および鎌状赤血球貧血の症状を改善するための使用を有する薬剤または化合物のスクリーニング方法または特定方法を、さらに提供する。
【0107】
好ましい1つの態様において、上記のキナーゼは、Dyrk1A (二重特異性のチロシンリン酸化および制御キナーゼ1a)またはCK-1 (カゼインキナーゼ 1)またはAurora、最も好ましくはAurora A、BおよびCである。
【0108】
候補薬剤は、上記のキナーゼに結合するまたは作用するいかなる分子または化合物、例えば抗体、アプタマー、特異的相互作用する小分子または化合物、特異的相互作用するタンパク質、および生物指標化合物の1つと特異的に結合する他の分子であり得る。
【0109】
阻害効果は、好ましくは10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99% 以上であるか、または阻害の総計であり得る。
【0110】
好ましい1つの態様において、上記の阻害率は、少なくとも40%または少なくとも50%である。
【0111】
スクリーニング方法の好ましい1つの態様において、スクリーンされる化合物は、第1に抗増殖作用を有する本発明に記載のジバニロイル誘導体である。
【0112】
DYRK1Aキナーゼの過剰発現は、多重疾患または多重障害または多重症状:癌、腫瘍形成および無制御増殖(Laguna Aら、Dev Cell. 2008 Dec;15(6):841-53);アルツハイマー病、ダウン症候群、ピック病(Ferrer Iら、Neurobiol Dis. 2005 Nov;20(2):392-400;Kimura Rら、Hum Mol Genet. 2007 Jan 1;16(1):15-23)およびダウン症候群(Guedj Fら、PLoS ONE. 2009;4(2):e4606;Lepagnol-Bestel AMら、Hum Mol Genet. 2009 Feb 12;Wegiel Jら、Acta Neuropathol. 2008 Oct;116(4):391-407)に関連させられていた。したがって、本発明による化合物は、無制御または増加したDYRK1A発現に関連した疾患、例えば、癌、増殖障害、アルツハイマー病、ダウン症候群、ピック病およびダウン症候群の治療または影響の改善においても用いられ得る。
【0113】
Aurora A、BおよびCキナーゼの過剰発現は、関連した 多重疾患または多重障害または多重症候群、例えば癌、腫瘍形成および無制御増殖(Carjaval RDら、Clin Cancer Res 2006;Fu Jら、Mol Cancer Res 2007;Vader G & Lens SMA、Biochim Biophys Acta 2008)に関連させられていた。
【0114】
本明細書で用いられている用語「抗転移性」は、新生腫瘍組織からなくなることが求められ、細胞の転移を停止する本発明の化合物または医薬組成物の能力に言及し、したがって、これらの細胞による新たな組織の定着を減少する。
【0115】
本明細書で用いられている用語「治療」は、癌の基本的なまたは特徴的などんな1以上の状態を治療することを含む。癌の治療は、本発明の化合物または医薬組成物の形態にある薬剤の投与を意味し、その結果、癌は安定化され、縮小されるか、または患者は病気が治癒する。
【0116】
本明細書で用いられているように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上他に明確に示さない限り、単数形および複数形指示物の両方を含む。例として、「抗体(an antigen)」は1以上の抗体を言及し、「抗原(an antigen)」は1以上の抗原を言及する。
【0117】
本明細書で用いられている用語「含む(comprising)」、「含む(comprises)」および「含む(comprised of)」は、「含む(including)」、「含む(includes)」または「含む(containing)」、「含む(contains)」と同義であり、包含的であるか、または変更可能であり、付加的、列挙してない部分、要素または方法手順を除外するものではない。
【0118】
本明細書で用いられている「約」は、測定可能な値、例えばパラメーター、量、一時的な時間等に言及しているときは、特定の値の+/−20%または未満、好ましくは+/−10%または未満、より好ましくは+/−5%または未満、さらに好ましくは+/−1%または未満、さらにより好ましくは+/−0.1%または未満の変化を含むことを意味し、その限りにおいてそのような変化は、開示された本発明において適切に機能する。
【0119】
本明細書中で引用された全ての資料は、それらの全部の参照により本明細書に取り込まれる。とりわけ、特に本明細書中で特に引用された全ての資料は、引用により取り込まれる。
【0120】
本発明は、増殖性障害の治療のために有益な方法および化合物または医薬組成物に関する。
【0121】
「増殖性疾患または障害」により、悪性または良性のどちらでも腫瘍細胞増殖および増殖の全てが意味され、全ての形質転換細胞および組織ならびに全ての癌性の細胞および組織を含む。増殖性疾患または障害は、前癌性または前癌性病変、異常細胞増殖、良性腫瘍、悪性腫瘍および癌を含むが、これらに限定はされない。
【0122】
増殖性疾患および/または障害の追加例は:前立腺、結腸、腹部、骨、胸部、消化器系、肝臓、膵臓、腹膜、内分泌腺(副腎、副甲状腺、脳下垂体、睾丸、卵巣、胸腺、甲状腺)、眼、頭頸部、神経 (中枢および末梢)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟組織、脾臓、胸部および尿生殖路に位置する良性または悪性のどちらでも新生物を含むが、これらに限定されない。好ましい1つの態様において、増殖性障害は腫瘍を含む。
【0123】
本明細書で用いられている用語「腫瘍」または「腫瘍組織」は、過剰な細胞分裂に起因する組織の異常腫瘤に言及する。腫瘍または腫瘍組織は、異常増殖特性を有し、身体機能に有益でない新生細胞である腫瘍細胞を含む。腫瘍、腫瘍組織および腫瘍細胞は、良性または悪性であり得る。腫瘍または腫瘍組織は、「腫瘍関連非腫瘍細胞」、例えば腫瘍または腫瘍組織に供給する血管を形成する血管細胞をも含み得る。非腫瘍細胞は、例えば腫瘍または腫瘍組織における血管形成の誘導のように腫瘍細胞により副生および増殖を誘発され得る。好ましいその他の態様において、増殖性障害は、悪性腫瘍または癌を含む。
【0124】
本明細書で用いられているように、用語「悪性腫瘍」は、非良性腫瘍または癌を言及する。本明細書で用いられているように、用語「癌」は、無秩序な細胞増殖または無制御細胞増殖により特徴付けられる悪性腫瘍を含む増殖性疾患の1つのタイプを暗示する。癌の例は、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫および白血病またはリンパ系悪性疾患を含むが、これに限定されるものではない。そのような癌のより具体例は、下記の:扁平上皮細胞癌(例えば、上皮の扁平上皮細胞癌)、小細胞肺癌を含む肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌 and 肺大細胞癌、腹膜癌、肝細胞癌、消化管癌を含む胃の癌または胃癌、膵臓癌、グリア芽細胞腫、子宮頚癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎癌または腎臓癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、ならびにCNS癌、黒色腫、頭頸部癌、骨癌、骨髄癌、十二指腸癌、食道癌、甲状腺癌、血液癌でありこれらを含む。用語「癌」は、原発性悪性細胞または腫瘍(例えば、これらの細胞が、最初の悪性腫瘍または腫瘍の部位以外の患者の体内の部位に転移しないもの)および二次性悪性細胞または腫瘍(例えば、転移に起因するもの、悪性細胞または腫瘍細胞の第二の部位への転移が、最初の腫瘍の部位と異なる)を含む。
【0125】
好ましくは、上記の癌は、非小細胞肺癌、CNS癌、黒色腫、卵巣癌、腎臓癌、前立腺癌、乳癌、結腸癌、膀胱癌、肉腫、膵臓癌、結腸直腸癌、頭頸部癌、肝臓癌、胃癌、食道癌、またはリンパ腫 から選択される。
最も好ましくは、上記の癌は、用語の一般的な意味において結腸癌;前立腺癌;乳癌;頭頸部癌;神経膠腫、好ましくはグリア芽細胞腫または非小細胞肺癌(NSCLC)およびアポトーシス耐性の 癌細胞から選択される。
【0126】
アポトーシス耐性癌細胞は、アポトーシスに耐性を示し、アポトーシス促進薬により殺すことができない癌細胞を意味する。
【0127】
癌または悪性疾患の他の例は:急性小児リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、成人(原発性)肝細胞癌、成人(原発性)肝臓癌、成人急性リンパ性白血病、成人急性骨髄性白血病、成人ホジキン病、成人ホジキンリンパ腫、成人リンパ性白血病、成人非ホジキンリンパ腫、成人原発性肝臓癌、成人軟組織肉腫、AIDS-関連リンパ腫、AIDS-関連悪性疾患、肛門癌、星状細胞腫、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、乳癌、腎盂癌および尿道癌、中枢神経系(原発性)リンパ腫、中枢神経系リンパ腫、小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫、子宮頚癌、小児(原発性)肝細胞癌、小児(原発性)肝臓癌、小児急性リンパ芽球性白血病、小児急性骨髄性白血病、小児脳幹神経膠腫、グリア芽細胞腫、小児小脳星細胞腫、小児大脳星細胞腫、小児頭蓋外胚細胞腫瘍、
【0128】
小児ホジキン病、小児ホジキンリンパ腫、小児視床下部および視路神経膠腫、小児リンパ芽球性白血病、小児髄芽腫、小児非ホジキンリンパ腫、小児松果腺およびテント上未分化神経外肺葉性腫瘍、小児原発性肝臓癌、小児横紋筋肉腫、小児軟組織肉腫、小児視路および視床下部神経膠腫、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸癌、皮膚T細胞性リンパ腫、内分泌性ランゲルハンス島細胞癌、子宮内膜癌、上衣細胞腫、上皮癌、食道癌、ユーイング肉腫および関連腫瘍、膵外分泌癌(Exocrine Pancreatic Cancer)、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼癌、女性乳癌、ゴーシェ病、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、胃腸腫瘍、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛性腫瘍、ヘアリー細胞白血病、頭頸部癌、
【0129】
肝細胞癌、ホジキン病、ホジキンリンパ腫、高ガンマグロブリン血症、下咽頭癌、腸癌、眼内黒色腫、島細胞癌、ランゲルハンス島細胞癌、カボジ肉腫、腎臓癌、咽頭癌、口唇癌および口腔癌、肝臓癌、肺癌、リンパ増殖性障害、マクログロブリン血症、男性乳癌、悪性中皮腫、悪性胸腺腫、髄芽腫、黒色腫、中皮腫、転移性原発不明扁平頸部癌、転移性原発性扁平頸部癌、転移性扁平頸部癌、多発性骨髄腫、多発性骨髄腫/形質細胞腫、骨髄異形成症候群、骨髄性白血病、骨髄性白血病、骨髄増殖性障害、鼻腔および副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、妊娠中非ホジキンリンパ腫、非黒色腫皮膚癌、非小細胞肺癌、原発不明転移性扁平頸部癌、口腔咽頭癌、骨-/悪性繊維性肉腫、骨肉腫/悪性繊維性組織球腫、骨肉腫/骨の悪性繊維性組織球腫、上皮性卵巣癌、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵臓癌、パラプロテイン血症、紫斑病、副甲状腺癌、陰茎癌、褐色細胞腫、脳下垂体腫瘍、形質細胞腫/多発性骨髄腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性肝臓癌、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、
【0130】
腎盂および尿道癌、網膜芽腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、サルコイドーシス肉腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟組織肉腫、扁平頸部癌、胃癌、テント上初期神経外胚葉性および松果腺腫瘍、T細胞リンパ腫、精巣癌、胸腺腫、甲状腺癌、腎盂および尿道の移行上皮癌、移行性腎盂および尿道癌、絨毛性腫瘍、尿道および腎盂細胞癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、視路および視床下部神経膠腫、外陰癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍および上記の器官系に定着した新生物の傍らのいかなる他の増殖性疾患を含むが、これに限定されるものではない。
【0131】
さらなる1つの態様において、増殖性障害は前癌性の状態である。前癌性の状態は、特に、過形成、化生からなる非腫瘍細胞増殖、さらに特に形成異常が起きた新生物または癌への進行に先立つと知られているか、または疑われている(そのような異常増殖状態の総説は、RobbinsおよびAngell 1976 (Basic Pathology、第2版、W. B. Saunders Co.、Philadelphia、pp. 68-79を参照されたし)。
【0132】
「過形成」は制御された細胞増殖の形態であり、組織または器官における細胞数の増加を含む。本発明の方法による治療され得る過形成性障害は、脈管濾胞性縦隔リンパ節増殖症、好酸球増加随伴性血管類リンパ組織増殖症、非定型メラニン細胞過形成、基底細胞過形成、良性巨大リンパ節増殖、セメント質過形成、先天性副腎過形成、先天性皮脂過形成、嚢胞性過形成、乳房嚢胞性過形成、義歯性線維症、導管過形成、内膜増殖症、線維筋過形成、局所性上皮肥厚、歯肉過形成、炎症性線維性過形成、炎症性乳頭状過形成、血管内乳頭状内皮過形成、結節性前立腺過形成、結節性再生過形成、偽上皮腫性増殖、老人性脂腺増生症およびゆうぜい性肥厚を含むが、これに限定されるものではない。
【0133】
「化生」は、成熟細胞の1つのタイプか、または成熟細胞のその他のタイプに関する完全に分化した細胞再生である制御された細胞増殖の形態である。本発明の方法により治療され得る化生性障害は、原因不明骨髄様化生、アポクリン化生、非定型化生、自己実質化生、結合組織化生、上皮化生、腸上皮化生、化生性貧血、変形骨化、異形成性ポリープ、骨髄様化生、原発性骨髄様化生、二次性骨髄様化生、扁平上皮化生、羊膜の扁平上皮化生および症候性骨髄様化生を含むが、これに限定されるものではない。
【0134】
「形成異常」は、高い頻度で癌の兆候であり、主として上皮中に見出される;それは非腫瘍性細胞増殖の最も無秩序な形態であり、個々の細胞の均一性および細胞の構造上の順応における喪失を含む。異形細胞は、しばしば異常な大きさ、濃く染まった核を有し、多形態性を示す。特徴として形成以上は、慢性刺激または炎症が存在するところに生じる。本発明の方法により治療され得る形成異常障害は、無発汗性外胚葉性形成異常、前後形成異常、窒息性胸郭形成異常、エトリオデジタル形成異常、気管支肺形成異常、大脳形成異常、子宮頚部形成異常、軟骨外胚葉性形成異常、鎖骨頭蓋骨形成不全、先天性外胚葉性形成異常、頭蓋骨幹形成異常、頭蓋骨手根骨足根骨形成不全、頭蓋骨幹端形成異常、象牙質形成異常、
【0135】
骨幹形成異常、外胚葉性形成異常、エナメル質形成異常、脳眼形成異常、足根骨肥大、多発性骨端形成異常、点状骨端形成異常、上皮形成異常、顔面指趾生殖器形成異常、家族性線維性顎骨形成異常、家族性白色襞性異形成、線維筋性形成異常、線維性骨形成異常、開花性骨異形成症、遺伝性賢性網膜形成異常、発汗性外胚葉性形成異常、無汗性外胚葉形成異常症、リンパ性減少性胸腺形成異常、乳房形成異常、顎顔面形成異常、骨幹端形成異常、モンディーニ型内耳形成異常、単発性線維性形成異常、粘膜上皮形成異常、多発性骨端形成異常、眼耳脊椎形成異常、眼歯指形成異常、眼脊椎形成異常、歯牙形成異常、眼下顎四肢形成異常、根尖性セメント質形成異常、多発性線維性骨形成異常、偽軟骨発育不全脊椎骨端形成異常、網膜形成異常、中隔視神経形成異常、脊椎骨端形成異常および心室橈骨形成異常を含むが、これに限定されるものではない。
【0136】
その他の前新生物障害は、良性異常増殖性障害(例えば、良性腫瘍、繊維嚢胞性状態、組織肥大、腸管ポリープ、結腸ポリープおよび食道形成異常)、白斑症、角化症、ボーエン病、農夫皮膚、日光口唇炎および日光性角化症を含むが、これに限定されるものではない。
【0137】
好ましい態様において、増殖性障害は、神経膠腫、好ましくはグリア芽細胞腫;前立腺癌;非小細胞肺癌(NSCLC);黒色腫、頭頸部癌、膵臓癌または結腸癌から選択される。癌の種類それぞれに由来する細胞株に対する本発明の化合物の抗増殖作用を示すことにより、本発明者らは、上記の癌の種類が、本発明の方法および薬剤から恩恵を受け得ることを実感した。
【0138】
本明細書で用いられているように、用語「神経膠腫」は、その当該技術分野で認められている含蓄に言及する。限定しないさらなる実例の理由で、用語「神経膠腫」は、脳または脊髄の神経膠に由来する腫瘍に言及する。神経膠腫は、グリア細胞腫、例えば、星状細胞および希突起膠細胞に由来し得る、したがって、神経膠腫は、星状細胞腫および希突起膠芽細胞ならびに異型生グリオーマ、グリア芽細胞腫および脳室上衣細胞腫を含む。星状細胞腫および上衣細胞腫は、小児および成人の両方の脳および脊髄の全領域において生じ得る。希突起膠芽細胞は、典型的に成人の大脳半球において生じる。悪性神経膠星状細胞腫は、それらの正常脳実質内に拡散的に侵入できるので最悪の予後を予想させ、世界保健機構(WHO) グレードII、IIIおよびグレードIV 腫瘍を含む。
【0139】
本明細書で用いられているように、用語「グリア芽細胞腫」は、その当該技術分野で認められている含蓄に言及する。限定しないさらなる実例の理由で、グリア芽細胞腫は、「多形性グリア芽細胞腫」(GBM)として、または「グレード4 星状細胞腫」としても知られており、おそらく悪性原発性脳腫瘍の最も一般的で、進行性の種類を意味する。
【0140】
本明細書で用いられているように、用語「前立腺癌」(CaP)は、その当該技術分野で認められている含蓄に言及する。限定しないさらなる実例の理由で、用語「前立腺癌」は、前立腺の触診可能な腫瘍の外観および前立腺の顕微鏡で検出可能な新生物または形質転換細胞の両方に言及する。後者の場合において、該細胞学的に検出可能な前立腺癌は、無症状であり得、患者と医師のどちらも癌細胞の存在に気付かない。癌細胞は、70歳代または80歳代まで生きる男性の前立腺に、一般的に見出されるが、しかしながら、これらの全ての男性が前立腺癌を発症するわけではない。前立腺癌が、前立腺より遠位のさらなる部位に転移する場合には、その状態は転移性癌(MC)として表現され、この状態を、器官に閉じ込められた前立腺癌と区別する。CaP 致死率は、離れた部位、通常は体幹骨格への前立腺腺癌細胞の転移性播腫に、典型的に起因する。
【0141】
用語「非小細胞肺癌」(NSCLC)は、 は、その当該技術分野で認められている含蓄に言及する。限定しないさらなる実例の理由で、その用語は、そのサブタイプ、すなわち、肺癌および肺大細胞癌の肺腺癌、扁平上皮細胞癌腫のいずれも包含する。
【0142】
用語「結腸癌」は、その当該技術分野で認められている含蓄に言及する。限りなく例証を用いて、用語「結腸癌」は、どんな組織学的類型の大腸(結腸および直腸の両方を含む)に発生する癌に言及し、悪性上皮腫瘍を含むがこれに限定されるものではない。本明細書中で用いられているように、 用語結腸癌は、したがって、結腸直腸癌を包含する。大腸の悪性上皮腫瘍は、5つの主要な組織学的類型:腺癌、粘液性腺癌(コロイド腺癌とも称される)、印環細胞腺癌、硬性腫瘍および単純癌に分類され得る。結腸癌は、当業者に公知の分類システムのいずれかを用いて段階分けされる。Dukesシステムは、最も頻繁に用いられる病期分類システムの1つである。DukesおよびBussey 1958 (Br J Cancer 12:309)参照されたし。
【0143】
本発明は、本発明の化合物または医薬組成物の治療的有効量を投与することを含み、そのような治療を必要とする患者における増殖性障害の治療方法をも提供する。
【0144】
本発明は、本発明の化合物または医薬組成物の治療的有効量を投与することを含み、そのような治療を必要とする患者における酸化的および炎症性障害の治療方法をも提供する。
【0145】
特に言及しない限り、「患者(被験者(subject))」または「患者(patient)」は、区別なく用いられ、動物、好ましくは脊椎動物、より好ましくは哺乳類に言及し、そして具体的には、ヒトの患者および非ヒト哺乳類を含む。「哺乳動物」の患者は、ヒト、家畜家禽、商業用動物、家畜、動物園の動物、スポーツ動物、ペットおよび実験動物、例えば犬、猫、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、馬、畜牛、乳牛;霊長類、例えばサル、モンキー、オランウータンおよびチンパンジー;イヌ科の動物、例えば犬およびオオカミ;ネコ科の動物、例えば猫、ライオンおよびトラ;ウマ科の動物、例えば馬、ロバおよびシマウマ;食用動物、例えば乳牛、豚および羊;有蹄動物、例えばシカおよびキリン;齧歯動物、例えばマウス、ラット、ハムスターおよびモルモット;等を含むが、これに限定されるものではない。したがって、本明細書中で用いられているように「被験者」または「患者」は、いずれの哺乳動物の患者を意味するか、または本発明の組成物を投与され得る被験者を意味する。好ましくは患者はヒトの患者である。
【0146】
本明細書で用いられているように、用語「治療する」または「治療」は、治療および予防の両方または予防対策に言及し、ここで、その目的は、好ましくない生理的変化または障害、例えば増殖性疾患、例えば癌の発生または展性を防ぐまたは鈍化することである。有益なまたは望ましい臨床結果は、検出可能であろうと検知できないであろうと、症状の緩和、疾患の範囲の縮小、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化でない)、疾患の進行の遅延または減速、疾患状態の改善または寛解および緩解(部分的であろうと全体的であろうと)を含むが、これに限定されるものではない。「治療」は、もし治療を受けずに予想される生存と比べて、生存を長くすることも意味し得る。
【0147】
本明細書で用いられているように、「治療が必要な患者」のようなフレーズは、被験者、例えば与えられた状態、好ましくは増殖性疾患、例えば上記のような癌の治療により恩恵を受ける哺乳動物の被験者を含む。
【0148】
そのような被験者は、典型的に、状態、好ましくは増殖性疾患、例えば癌を有すると診断されたもの、該状態を有するかまたは進行する傾向にあるもの、および/またはその状態が防がれたものを含む。
【0149】
「治療的有効量」の用語は、患者の疾病および疾患を治療する、すなわち所望の局所もしくは全身の効果および性能を得るのに有効な、本発明の化合物または医薬組成物の量を意味する。限定されない例として、増殖性疾患、例えば癌の場合、薬物の治療的有効量は、癌細胞の数を減少し得る;腫瘍サイズを減少し得る;末梢器官への癌細胞浸潤を阻害(すなわち、かなりの程度まで遅くし、好ましは止める)し得る;癌転移を阻害(すなわち、かなりの程度まで遅くし、好ましくは止める)し得る;腫瘍の増殖をかなりの程度まで阻害し得る;別の癌治療の効率を高め得る;および/または癌に関連する1以上の症状をかなりの程度まで和らげ得る。薬物が存在する癌細胞の増殖を妨害および/または死滅させ得る程度に、それは細胞増殖抑制性および/または細胞毒性であり得る。癌治療に対して、効率は、例えば、疾病の進行時間(TTP)を評価することおよび/または応答速度(RR)測定することによって、測定され得る。したがって、該用語は、研究者、獣医、医師または他の臨床医によって探求される、組織、システム、動物またはヒトにおける、治療される癌の症状の緩和を含む、生物学的または医薬的応答を引き起こす、化合物または医薬組成物の量を意味する。特に、これらの用語は、単回投与か複数回投与のいずれかで、臨床的障害、症状または癌に関連する合併症を防ぐ、直す、改善する、または少なくとも最小限にするのに必要な、本発明による化合物または医薬組成物の量を意味する。
【0150】
本発明の化合物または医薬組成物は、単独または化学療法、放射線療法、免疫療法および/もしくは遺伝子治療を含む群から選択されるいずれかの癌療法と組み合わせて用いられ得る。本明細書で用いられる「癌治療」の用語は、放射線療法、化学療法、免疫療法、遺伝子に基づく治療、手術、ならびにそれらの組み合わせを含むことを意味する。
【0151】
もう一つの好ましい態様において、本発明の化合物または医薬組成物は、単独または癌、好ましくは神経膠腫、好ましくはグリア芽細胞腫;前立腺癌;NSCLC;もしくは結腸癌の治療に適する1以上の活性な化合物と組み合わせて用いられ得る。「活性な化合物」の用語は、癌の治療に用いられる本発明の作用剤以外の化合物を意味する。活性な化合物は、好ましくは、放射線療法、限定されない、テモゾロミド、ビンクリシチン、ビノレルビン、プロカルバジン、カルムスチン、ロムスチン、タキソール、タキソテーレ、タモキシフェン、レチノイン酸、5-フルオロウラシル、シクロホスホアミドおよびタリドミデを含む化学療法剤を含む群から選択され得る。
【0152】
したがって、本発明の化合物または医薬組成物は、単独または1以上の活性な化合物と組み合わせて投与され得る。後者は、該作用剤の投与の前に、後にまたは同時に投与され得る。
本発明のさらなる目的は、本明細書で定義される本発明の化合物もしくはそれらの医薬的に許容される塩の治療的有効量、および医薬的に許容される担体、すなわち1以上の医薬的に許容される担体物質および/添加剤、例えば緩衝剤、担体、賦形剤、安定化剤等をの治療的有効量を含む医薬品である。
【0153】
本明細書で用いられる「医薬的に許容される」の用語は、当該技術分野と矛盾しないものであり、医薬組成物の他の成分と共存でき、そのレシピエント(recipient)に有害でないことを意味する。
【0154】
本明細書で用いられる「医薬的に許容される塩」は、塩酸塩、硫酸塩およびリン酸塩のような無機酸付加塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩のような有機酸付加塩を意味する。医薬的に許容される金属塩の例は、ナトリウム塩およびカリウム塩のようなアルカリ金属塩、マグネシウム塩およびカルシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、および亜鉛塩である。医薬的に許容されるアンモニウム塩の例は、アンモニウム塩およびテトラメチルアンモニウム塩である。医薬的に許容される有機アミン付加塩は、モルホリンおよびピペリジンとの塩である。医薬的に許容されるアミノ酸付加塩は、リジン、グリシンおよびフェニルアラニンとの塩である。
【0155】
本発明による医薬組成物は、前記で定義されたような少なくとも1つの活性化合物をさらに含み得る。
【0156】
本発明による医薬組成物は、経口的に、例えば、丸剤、錠剤、ラッカーを塗った錠剤、糖衣錠、顆粒、硬および軟ゼラチンカプセル剤、水性、アルコール性もしくは油性溶液、シロップ、エマルジョンもしくは懸濁液の形態で、または直腸的に、例えば坐剤の形態で投与され得る。投与は、非経口的に、例えば、皮下、筋肉内または静脈内に、注射もしくは点滴用溶液の形態でも投与され得る。その他の適当な投与形態は、例えば、軟膏、チンキ剤、スプレーもしくは経皮吸収治療システムの形態での、例えば、経皮的または局所投与、または鼻腔スプレーもしくはエアロゾル混合物の形態での吸入投与であるか、あるいは例えば、マイクロカプセル、植込錠または杆状体である。
【0157】
本医薬組成物は、当業者にそれ自体公知の方法で製造され得る。この目的のために、必要なら他の医薬的に活性な化合物と組み合わせて、前記で定義された本発明による少なくとも1つの化合物もしくはそのシクロデキストリン塩および固体もしくは液体の1以上の医薬賦形剤が、次いでヒト医学または動物医学の医薬として用いられ得る適当な投与形態または投薬形態にされる。
【0158】
非限定的な例により、そのような製剤は、経口投与、非経口投与 (静脈内、筋肉内もしくは皮下注射、または静脈内点滴によるような)、局所投与 (眼を含む)、吸入、皮膚パッチ、埋め込み、坐剤等による投与に適した形態であり得る。そのような好適な投与形態(-投与様式-ならびにそれらの製造において用いられる方法ならびに担体、希釈剤および賦形剤に依存する、固体、半固体または液体である得る)は、当業者に明らかである。例えば、US-A-6,372,778、US-A-6,369,086、US-A-6,369,087およびUS-A-6,372,733、ならびにRemington's Pharmaceutical Sciencesの最新版のような標準的なハンドブックが参考になる。
【0159】
非限定的な例として、固体もしくは液体の1以上の医薬担体物質および/または添加剤(または補助物質)と一緒に、必要なら治療的または予防的作用を有するその他の医薬的に活性な化合物と組み合わせて、活性化合物は、適当な投与形態または投薬形態にされ、その結果、それはヒトの医薬の調合薬として使用されることができる。丸剤、錠剤、糖衣錠および硬ゼラチンカプセル剤の製造に対して、例えば、乳糖、澱粉、例えばトウモロコシ澱粉もしくは澱粉誘導体、タルク、ステアリン酸もしくはその塩等を用いることができる。軟ゼラチンカプセル剤および坐剤用の担体は、例えば油脂、ワックス、半固体および液体のポリオール、天然または硬化オイル等である。溶液、例えば注射用溶液、またはエマルジョンもしくはシロップの製造のために適した担体は、例えば、水、生理食塩水、エタノール、グリセロール、ポリオールのようなアルコール類、ショ糖、転化糖、グルコース、マンニトール、植物油等である。核酸および/または活性化合物を凍結乾燥し、得られる凍結乾燥物を、例えば、注射または点滴用の調合液を製造するために用いることもできる。マイクロカプセル剤、植込錠または杆状体用に適した担体は、例えばグリコール酸と乳酸のコポリマーである。
【0160】
医薬製剤は、添加剤、例えば充填剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、湿潤剤、安定化剤、乳化剤、分散剤、保存剤、甘味料、着色料、矯味矯臭剤、芳香剤、増粘剤、希釈剤、緩衝物質、溶剤、可溶化剤、持続性効果の達成剤、浸透圧を変えるための塩、コーティング剤または抗酸化剤を含むこともできる。
【0161】
経口投与形態のために、本発明の組成物は、賦形剤、安定化剤または不活性な希釈剤のような適当な添加剤と混合され、錠剤、コーティング錠剤、硬カプセル剤、水性、アルコール性もしくは油性溶液のような適当な投与形態にされ得る。好適な不活性な担体の例は、アラビアゴム、マグネシア、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、乳糖、グルコースまたは澱粉、特にトウモロコシ澱粉である。この場合、製造は乾燥および湿った顆粒の両方として行われ得る。好適な油性賦形剤または溶剤は、ひまわり油またはタラの肝油のような植物油または動物油である。水性またはアルコール性溶液のための好適な溶剤は、水、エタノール、糖溶液またはそれらの混合物である。ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールは、他の投与形態用のさらなる補助剤としても有用である。即効型錠剤として、これらの組成物は、微晶質セルロース、第二リン酸カルシウム、澱粉、ステアリン酸マグネシウムおよび乳糖、ならびに/または当該分野で公知の他の賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、希釈剤および滑沢剤を含み得る。
【0162】
本発明による少なくとも1つの化合物、またはその医薬的に許容される塩もしくはエステルおよび/もしくは溶媒和物を含む医薬組成物の経口投与は、任意に微粉化された固体担体も含む、粉末の形態の上記化合物の適当な量を、均一かつ完全に渾然一体化し、そのブレンドを例えば硬ゼラチンカプセルにカプセル化することによって、好適に成し遂げられる。固体担体は、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤等として作用する1以上の物質を含み得る。好適な固体担体は、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、乳糖、デキストリン、澱粉、ゼラチン、セルロース、ポリビニルピロリドン、低融点ワックスおよびイオン交換樹脂を含む。
【0163】
そのような製剤のいくつかの非限定的な好ましい例は、錠剤、丸剤、散剤、トローチ剤、サシェ(sachets)、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁液、エマルジョン、溶液、シロップ、エアロゾル、軟膏、クリーム、ローション、軟および硬ゼラチンカプセル剤、坐剤、点滴剤、ボーラスとして投与および/または連続投与用の無菌注射溶液および無菌包装粉末 (通常、使用前に再調製される)を含み、それ自身がそのような製剤に適する、乳糖、デキストロース、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、セルロース、(滅菌)水、メチルセルロース、メチル-およびプロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、食用油、植物油および鉱油またはそれらの好適な混合物のような、担体、賦形剤および希釈剤で製剤化され得る。本製剤は、その他の医薬的に活性な物質(本発明の物質と共に相乗効果を導いても導かなくてもよい)および滑沢剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、分散剤、崩壊剤、増量剤、充填剤、保存剤、甘味剤、着香剤、流量調整剤、放出剤等のような医薬製剤に普通に用いられるその他の物質を任意に含み得る。組成物は、その中に含まれる活性化合物の急速、持続または遅延放出を与えるように、例えば天然のゲルまたは合成ポリマーに基づくリポソームまたは親水性ポリマーマトリックスを用いて、製剤化もされ得る。
【0164】
好ましくは、本組成物は、シクロβデキストリンおよび/または同様の化合物を含むか含まない、GLP/GMP溶剤で投与される。
【0165】
投与される1以上の活性化合物と任意に組み合わせて用いられる本発明の化合物の用量は、個々の場合に依存し、通例のように、最適な効果を達成するために個々の状況に適合される。したがって、それは治療される疾患の性質および重篤度に依存し、治療されるヒトまたは動物の性別、年齢、体重および個々の応答性、用いられる化合物の効率および作用の持続時間、治療が急性または慢性または予防であるかどうか、または本発明の作用剤に加えてその他の活性化合物が投与されるかどうかにも依存する。
【0166】
制限なく、疾病のタイプおよび重篤度に依存して、典型的な1日用量は、約1μg/kg〜100 mg/kgの範囲であるかまたは上記の因子に依存してそれ以上であり得る。数日または病状に依存してそれより長くかけての反復投与に対して、治療は、病徴の所望の抑制が起こるまで維持される。本作用剤の好ましい用量は、約0.05 mg/kg〜約10 mg/kgの範囲であり得る。したがって、約0.5 mg/kg、2.0 mg/kg、4.0 mg/kgまたは10 mg/kg (またはそれらのあらゆる組合せ)の1以上の投与量が、患者に投与され得る。そのような投与量は、間欠的に、例えば毎週または毎三週で投与され得る。
【0167】
本発明の医薬品は、好ましくは単位投与量形態であり、製品情報および/または使用説明書を含む1以上の説明書と任意に一緒に、例えば箱、ブリスター、バイアル、サシェ(sachet)、アンプルに、その他の適当な単回投与量もしくは複数投与量ホルダーまたは容器(適当にラベルを張られてもよい)に適当に包装され得る。一般的に、そのような単位投与量は、本発明の少なくとも1つの化合物を1〜1000 mgの間、通常5〜500 mgの間、例えば単位投与量当たり約10、25、50、100、200、300または400 mg含む。
【0168】
もう一つの態様において、本発明は、それを必要とする患者に同時、分離または連続投与用の、本発明による医薬組成物および本明細書で定義される活性化合物を含むキットを提供する。
【0169】
これらの目的のため、本発明の化合物または医薬組成物は、慣用の無毒性の医薬的に許容される担体、補助剤(adjuvants)およびビヒクルを含む単位投与量製剤で、経口的に、非経口的、すなわち皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内(intrasternal)注射もしくは点滴で、吸入スプレーにより、または直腸的に投与され得る。一般的に、本発明の少なくとも1つの化合物は、適当な投与により、それが投与される個体に所望の治療的または予防的効果を達成するのに十分な、前記で定義された式Iの化合物またはそのシクロデキストリン塩のあらゆる量を意味する「有効量」で投与される。通常、予防または治療される病状および投与経路に依存して、そのような有効量は、通常、体重キログラム当り、0.01〜1000 mgの間、多くの場合、1〜250 mgの間のような0.1〜500 mgの間、例えば患者の体重キログラム当り、一日、約5、10、20、50、100、150、200または250 mgである。そして、それは単回の1日投与量として、1以上に分けられた1日投与量として、または例えば点滴を用いて本質的に連続的に投与され得る。投与される量、投与経路およびさらなる治療プログラムが、患者の年齢、性別および全身状態ならびに治療される疾病/症状の性質および重篤度のような因子に依存して、治療医によって決定され得る。
【0170】
本発明の方法により、前記医薬組成物は、治療の過程の間に、異なる回数に分けてか、または分割されるかもしくは単一の組み合わせの形態で同時に投与され得る。それゆえ、本発明は、同時または交互治療のようなすべての治療プログラムを包含すると理解されるべきであり、「投与」の用語は、それに応じて解釈されるべきである。
【0171】
本質的に、固形腫瘍癌の治療の主要な方法は、手術、放射線療法および化学療法を、独立および組合せで含む。本発明による化合物は、これらの医薬手法との組み合せての使用に適する。本発明の化合物は、放射線治療の放射線に対する腫瘍細胞の感受性を高めること、および化学療法剤による腫瘍の損傷を促進あるかまたは高めことにも役立ち得る。本化合物ならびにそれらの医薬的に許容される塩および/または溶媒和物は、多剤耐性腫瘍細胞を感受性にするのにも役立ち得る。本発明による化合物は、それらの効果を促進するために、DNA損傷細胞毒性薬または放射線療法で用いられる放射線と併用しての投与に役立つ治療化合物である。
【0172】
本発明のもう一つの態様において、投与は、食物、例えば高脂肪食と一緒に行われ得る。「食物と一緒」の用語は、本発明による医薬組成物の投与の間かまたは投与前もしくは投与後のわずか約1時間のいずれかの食物の摂取を意味する。
【0173】
本発明による少なくとも1つの化合物、またはその医薬的に許容される塩もしくはエステルおよび/もしくは溶媒和物を含む医薬組成物の経口投与は、前記で定義された固体担体を任意にブレンドした、前記化合物の所望の量を含むカプセル剤または錠剤を製造することによっても達成され得る。本発明の医薬組成物を含む圧縮錠剤は、必要な圧縮性を有する混合物を得るために、活性成分を前記のような固体担体と均一かつ完全に混合し、次いで該混合物を所望の形状およびサイズに適当な機械中で圧縮することによって製造され得る。湿製錠剤(Molded tablets)は、不活性な液体希釈剤で湿らせた粉末の化合物の混合物を、適当な機械中、型に入れて作られ得る。
【0174】
鼻エアロゾルまたは吸入によって投与されるとき、これらの組成物は、医薬製剤の分野で周知の手法により製造され得るし、ベンジルアルコールまたはその他の適当な保存剤、生物学的利用能を高めるための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または当該分野で公知の他の可溶化剤または分散剤を用いて、生理食塩水の溶液をして製造され得る。エアロゾルまたはスプレーの形態での投与に適した医薬製剤は、例えば本発明の化合物またはそれらの生理学的に忍容可能な塩の、エタノールもしくは水、またはそのような溶媒の混合物のような医薬的に許容される溶媒中の溶液、懸濁液またはエマルジョンである。もし必要とするなら、該製剤は、界面活性剤、乳化剤および安定化剤ならびに噴射剤のような他の医薬的な補助剤もさらに含み得る。
【0175】
皮下または静脈内投与に対して、本発明の化合物は、必要とするなら可溶化剤、乳化剤またはさらなる補助剤のような、それらのための通常の物質と共に、溶液、懸濁液またはエマルジョンにされる。本発明の化合物は、凍結乾燥もされ得るし、得られた凍結乾燥物が、例えば注射製剤または点滴製剤の製造のために用いられる。適当な溶媒は、例えば水、生理食塩水、またはアルコール類、例えばエタノール、プロパノール、グリセロールであり、さらにグルコースまたはマンニトール溶液のような糖溶液、あるいは前記の種々の溶媒の混合物である。注射可能な溶液または懸濁液は、適当な無毒性の非経口的に許容可能な希釈剤、またはマンニトール、1,3-ブタンジオール、水、リンガー溶液もしくは等張食塩水のような溶剤、または合成モノ-もしくはジグリセリドを含む無菌の、無刺激性の固定油およびオレイン酸を含む脂肪酸のような、適当な分散もしくは湿潤剤および懸濁化剤を用いて、公知の技術により製剤化され得る。
【0176】
坐剤の形態で直腸に投与されるとき、これらの製剤は、本発明による化合物を常温で固体であるが、薬物を放出するための直腸腔で液化および/または溶解する、ココアバター、合成グリセリドエステルまたはポリエチレングリコールのような適当な無刺激性の賦形剤と混合することによって製造され得る。
【0177】
この発明の医薬組成物は、該医薬組成物中に含まれる各化合物に対して特定の用量域でヒトに投与され得る。該組成物中に含まれる化合物は、一緒にまたは別々に投与され得る。
【0178】
しかしながら、特定の患者に対する特定の用量レベルおよび投薬回数は、変化し得るし、用いられる特定の化合物の活性、その化合物の代謝安定性および作用の長さ、患者の年齢、体重、全体的な健康、性別、食事、投与の様式および回数、排出速度、混合薬、特定の病状の重篤度および治療を受けるホストを含む種々の因子に依存するだろうことが理解される。
【実施例】
【0179】
本発明を以下の限定されない実施例により例証する。
【0180】
実施例1
本発明による化合物の合成
概要
1H NMR (300 M)は、Bruker Avance(商標)Spectrometerで記録した。1H NMR化学シフトは、重水素化クロロホルムに対する7.26 ppmにおける一重線に関して百万分の一(ppm)で、結合定数はHzで報告した。以下の省略は、スピン多重度に対して用いられている:s、一重線;d、二重線;t、三重線;q、四重線;qt、五重線;m、多重線;b、ブロード。所定の薄層クロマトグラフィー(TLC)は、シリカゲル板(Silicagel GF254(商標)、VWR製)で行い、カラムクロマトグラフィーは、シリカゲル(球状粒子径60〜200μm、MP Biomedicals製)で行った。Aldrich製溶媒は、さらに精製することなく用いた。
【0181】
1. 中間体I:3-メトキシ-4-[(メトキシカルボニル)オキシ]ベンゾイルクロリドの合成
1.A. 3-メトキシ-4-[(メトキシカルボニル)オキシ]安息香酸の合成:
【化36】

【0182】
K.Hallman (Tetrahedron:Asymmetry 10 (1999) 4037-4046)により記載された方法に従って、3-メトキシ-4-[(メトキシカルボニル)オキシ]安息香酸を合成した:バニリン酸(4 g、23,8 mmoles)を、0℃で激しい撹拌下に0,5M水酸化ナトリウム水(140 mL、70 mmoles)に溶解した。クロロギ酸メチル(15 mL、37,9 mmoles)を10〜15分間に亘り加えた。反応を、室温に戻し、次いで終夜撹拌し、pHが3に達するまでHClを添加して停止した。白色沈殿物を得、ろ取し、水洗して最後に乾燥した。収率:白色結晶93%。
【0183】
いくつかの生成物について、最終の脱保護が所望の生成物を与えないので、他の保護基、例えばベンジルエーテルを試した。
【0184】
1.B. 3-メトキシ-4-[(メトキシカルボニル)オキシ]ベンゾイルクロリド(I1)の合成:
【化37】

3-メトキシ-4-(メトキシカルボニルオキシ)安息香酸(5g 、22 mmoles A.1.を参照する)を、氷浴で0℃に冷却したチオニルクロリド(15 ml)に、激しい撹拌下に加えた。
【0185】
反応混合物を室温に戻し、次いで60℃で30分間還流した。この後、試薬を、減圧下に蒸発させた。残渣を、ジクロロメタン(15 mL)に溶解し、溶媒を減圧下に蒸発させた。この操作を2回行った。
収率:白色結晶96%。
【0186】
2. 中間体2:3-メトキシ-4-ベンジルオキシ-ベンゾイルクロリドの合成
2.A. 3-メトキシ-4-ベンジルオキシ-安息香酸の合成:
【化38】

撹拌したバニリン酸(5g、30 mmol)のTHF(15 mL)溶液に、NaOH (3g)の水(37 mL)溶液を加えた。媒体を0℃で冷却し、ベンジルクロリド(4.1 mL、34.8 mmol)の溶液を加えた。媒体を室温に戻し、次いで70℃で18時間、次いで90℃で4時間加熱した。室温に冷却後、有機溶媒を蒸発させ、残りの水相を、2M HClで酸性化した。沈殿物をろ過し、シクロヘキセンで洗浄して白色固体4.8gを得た。収率:63%。
【0187】
4-ベンジルオキシ-3-メトキシ安息香酸
【化39】

1H NMR (DMSO):12.68 (bs;1H;COOH);7.54 (dd;2H;7;3J6,7=8.4;4J3,7=2.1);7.42 (m;12H;3,11,12および13);7.14 (d;2H;6;3J6,7=8.4);5.16 (s;2H;9);3.80 (s;6H;8)。
【0188】
2.B. 3-メトキシ-4-ベンジルオキシ-ベンゾイルクロリドの合成:
【化40】

3-メトキシ-4-ベンジルオキシ-安息香酸(5g、22 mmoles A.2.を参照する)を、激しい撹拌下氷浴で0℃に冷却したチオニルクロリド(15 ml)にに溶解した。反応混合物を室温に戻し、次いで60℃で30分間還流した。この後、試薬を減圧下に蒸発させた。残渣をジクロロメタン(15 mL)に溶解し、溶媒を減圧下に蒸発させた。この操作を2回行った。収率:白色固体82%。
【0189】
3. エステル化およびその後の 加水分解の一般的手法。
【0190】
Yu (Ang. Chem. Int. Ed. 46(6) 881-3 (2007))により記載された方法に従って、ジエステルを合成した。以下の合成、加水分解を行った。完成した一般的な反応をスキーム1および2に示す。
【0191】
3.A. エステル化:
以下に例示したような異なるそれぞれのジオール(9.5 mmoles)、ピリジン(4 mL、49.5 mmol)およびジクロロメタン(10 mL)を、3-メトキシ-4-[(メトキシカルボニル)オキシ]ベンゾイルクロリド(I1を参照する)か、それとも3-メトキシ-4-ベンジルオキシ-ベンゾイルクロリド (I2を参照する) (各21 mmol)に加える。反応混合物を、10分間還流し次いで室温で終夜撹拌し、pHが3に達するまで2 M HClを加えることにより停止させた。有機層を無水Na2SO4で乾燥し、真空下に濃縮した。
【0192】
3.B. 加水分解:
3.B.1. ジエステルのメトキシカルボニル基の加水分解(スキーム1を参照する)を、撹拌したNH4OH (17 mL)中のジエステル(4 mmol)の懸濁液にTHF (30 mL)を加えることにより実施した。反応混合物を、室温で100分間撹拌した。その反応を、pH 3に達するまで濃HClを注意深く加えることにより、その反応を停止した。酢酸エチルを加え、振り混ぜた後、有機層を無水Na2SO4で乾燥して真空下に濃縮した。
【0193】
3.B.2. スキーム2に概説したようにベンジルオキシ保護基を有するジエステルの加水分解のために、以下のプロトコールに従った:10%Pd炭素(0.4 mmol)を、撹拌したジエステル(4 mmol)のMeOH (17 mL) 溶液に加えた。反応混合物を、水素(1 atm)下に室温で終夜撹拌した。その媒体をセライトろ過し、真空下にMeOHを蒸発させた。必要な時だけ粗生成物をクロマトグラフした。
【0194】
【化41】

【0195】
【化42】

式中、pは0、1、2または3の整数であり
式中Rは、I1またはI2のいずれが用いられるかに依存して:
【0196】
【化43】

から選択される必要とされる保護基である。
【0197】
4. 本発明の化合物の合成のための一般的なプロトコール
4.A. 化合物DLT1:エタン-1,2-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート)の合成:
上記のスキーム1に従って、項目3.A.で概説したようにエタン-1,2-ジオールをI1と反応させ、エタン-1,2-ジイル ビス-[3-メトキシ-4-[(メトキシカルボニル)オキシ]ベンゾエート] (n=2):白色固体;収率 70 %を得た。
【化44】

【0198】
項目3.B.1で概説した加水分解に従って、エタン-1,2-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート) (ワーキングネーム(working name) DLT1)を得た:琥珀色固体;収率 49 %;1H-NMR:δ(CDCl3):7.67-7.647 (2H、dd)、7.55-7.54 (2H、d)、6.94-6.92 (2H、d)、6.04 (2H、s)、4.63 (4H、s)、3.92 (6H、s)。
【化45】

【0199】
4.B. 化合物DLT2の合成:
上記のスキーム1に従って、項目3.Aで概説したようにプロパン-1,3-ジオールをI1と反応させ、プロパン-1,3-ジイル ビス-[3-メトキシ-4-[(メトキシカルボニル)オキシ]ベンゾエート] (n=3) を得た:白色粉末;収率 70 %。
【化46】

【0200】
項目3.B.1で概説した加水分解に従って、プロパン-1,3-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート) (ワーキングネームDLT2)を得た:白色粉末;収率 56 %;1H-NMR:δ(CDCl3):7.66-7.63 (2H、dd)、7.53-7.52 (2H、d)、6.93-6.91 (2H、d)、4.50 (4H、t、m)、3.90 (6H、s)、3.76 (2H、s)、2.26 (2H、m)。
【化47】

【0201】
4.C. 化合物DLT10の合成:
上記のスキーム1に従って、ブタン-1,4-ジオールをI1と反応させ、ブタン-1,4-ジイル ビス-[3-メトキシ-4-[(メトキシカルボニル)オキシ]ベンゾエート] (n=4)を得た:白色粉末;収率 65 %。
【化48】

【0202】
項目3.B.1で概説した加水分解に従って、ブタン-1,4-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート) (ワーキングネームDLT10)を得た:白色粉末;収率 60 %;1H-NMR:δ(CDCl3):7.67-7.64 (2H、dd)、7.55-7.54 (2H、d)、6.94-6.92 (2H、d)、6.23 (2H、bs)、4.37 (2H、t)、3.95 (6H、s)、1.90 (4H、t、m)。
【化49】

【0203】
4.D. 化合物DLT 3の合成:
上記のスキーム1に従って、ペンタン-1,5-ジオールをI1と反応させ、ペンタン-1,5-ジイル ビス-[3-メトキシ-4-[(メトキシカルボニル)オキシ]ベンゾエート] (n=5)を得た:白色粉末;収率 70 %。
【化50】

【0204】
項目3.B.1で概説した加水分解に従って、ペンタン-1,5-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート) (ワーキングネームDLT3)を得た:白色粉末;収率 77 %;1H-NMR:δ(CDCl3):7.67-7.647 (2H、d)、7.55-7.54 (2H、d)、6.94-6.92 (2H、d)、6.23 (2H,s)、4.37 (4H、t)、3.95 (6H、s)、1.86 (4H、m)、1.55 (2H、m)。
【化51】

【0205】
4.E. 化合物DLT 11の合成:
上記のスキーム1に従って、ヘキサン-1,6-ジオールをI1と反応させ、ヘキサン-1,6-ジイル ビス-[3-メトキシ-4-[(メトキシカルボニル)オキシ]ベンゾエート] (n=6)を得た:白色固体;収率 60 %。
【化52】

【0206】
項目3.B.1で概説した加水分解に従って、ヘキサン-1,6-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート) (ワーキングネームDLT11)を得た:白色固体;収率 50 %;1H-NMR:δ(CDCl3):7.67-7.64 (2H、dd)、7.55-7.54 (2H、d)、6.94-6.92 (2H、d)、6.23 (2H,s)、4.29 (4H、t)、3.91 (6H、s)、1.85 (4H、m) 1.52 (4H、t)。
【化53】

【0207】
4.F. 化合物DLT 4の合成:
上記のスキーム2に従って、トランス-シクロヘキサン-1,2-ジオールをI1と反応させ、トランス-シクロヘキサン-1,2-ジイル ビス-[3-メトキシ-4 [(メトキシカルボニル)オキシ]-ベンゾエート] を得た:ベージュ色の シロップ;収率 70 %。
【化54】

【0208】
項目3.B.1で概説した加水分解に従って、トランス-シクロヘキサン-1,2-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート) (ワーキングネームDLT4)を得た:カーボネート:白色固体;収率 39 %;1H-NMR:δ(CDCl3):7.60-7.57 (2H、dd)、7.48-7.47(2H、d)、6.90-6.87 (2H、d)、5.16 (2H、m)、3.85 (6H、s)、2.22 (2H、m)、1.81 (2H、m)、1.60-1.41 (4H、m)。
【化55】

【0209】
純粋なトランスエナンチオマーは、またエナンチオピュアーなシクロヘキセンジオールからも出発して合成された:DLT7 (S,S);収率 38%およびDLT8 (R,R);収率 39%。
【0210】
4.G. 化合物DLT9の合成:
上記のスキーム2に従って、シス-シクロヘキサン-1,2-ジオールをI1と反応させ、シス-シクロヘキサン-1,2-ジイル ビス-[3-メトキシ-4 [(メトキシカルボニル)オキシ]-ベンゾエート]または[(1R,2S)-2-(3-メトキシ-4-メトキシカルボニルオキシ-ベンゾイル)オキシシクロヘキシル] 3-メトキシ-4-メトキシ- カルボニルオキシ-ベンゾエートを得た。
【化56】

【0211】
項目3.B.1で概説した加水分解に従って、シス-シクロヘキサン-1,2-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート) (ワーキングネームDLT9) を得た:白色固体;収率 30 %;1H-NMR:δ(CDCl3):7.61-7.58 (2H、dd)、7.49-7.48 (2H、d)、6.89-6.86 (2H、d)、3.81 (6H、s)、4.55 (2H、s)、2.19 (2H、m)、1.82 (2H、m)、1.44 (4H、m)。
【化57】

【0212】
4.H. 化合物DLT5の合成:
上記のスキーム2に従って、シス-およびトランス-シクロヘキサン-1,3-ジオールをI2と反応させ、シス- and トランス-シクロヘキサン-1,3-ジイル ビス-[3-メトキシ-4 ベンジルオキシ]ベンゾエート]を得た。シス/トランス 1,3 シクロヘキセンジオールの混合物から出発して、その異性体は、クロマトグラフィーにより分離可能に見えたが、しかし今までのところ、我々は、80/20混合物としてシス異性体および 60/40混合物としてトランス異性体混合物を得た。それぞれの収率:20%および15%。白色固体。
【化58】

【0213】
項目3.B.2で概説した加水分解に従って、シスおよびトランス-シクロヘキサン-1,3-ジオール ジ-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート)のラセミ混合物(DLT5)を得た:白色固体。
【0214】
第1の実験収率=57 %;1H-NMR:δ(CDCl3):7.63-7.59 (2H、dd)、7.52-7.49 (2H、d)、6.92-6.85 (2H、d)、5.16 (2H、m)、3.82 (6H、s)、2.24 (2H、m)、1.85 (4H、m)、1.50 (2H、m)。
【0215】
第2の実験収率=24%;Rf=0.3 (シクロヘキサン / AcOEt 8/2)。主生成物の主なピークのみを記載した。
1H NMR (DMSO):7.48〜7.44 (m;4H;3および7);6.84 (d;2H;6;3J6,7=8.1);4.99 (bs;2H;10);3.80 (s;6H;8);2.38〜1.88 (m;8H;9、11および12)。
13C NMR (DMSO):164.6 (1);151.2 (5);147.0 (4);123.1 (7);120.4 (2);114.7 (6);112.2 (3);69.8 (10);55.3 (8);36.0 (9);29.9 (11);18.7 (12)。
【化59】

【0216】
5. フェノール保護基としてベンジルエーテルを用いる3工程合成の他の一般的な手法。
【0217】
ジオール(100〜200 mg)、DMAP (2.1当量)および保護したバニリン酸 (3-メトキシ-4-ベンジルオキシ-安息香酸(A.2.を参照する) (2.5当量)を反応器に秤量した。トルエン(ジオール100 mgに対して100 mL)、次いでDCC (2.3当量)を加えた。媒体をRTで3〜4日間撹拌した。溶媒を蒸発させて乾燥し、媒体を、そのRfを生じる溶離剤を用いるシリカゲルクロマトグラフィーにより直接精製した。
【0218】
ジベンジル化化合物(200〜500 mg)を反応器に秤量した。MeOH (100 mgに対して20 mL)を加え、媒体を、10%パラジウム炭素触媒(ジベンジル化生成物と同量)の添加前に氷水浴で冷却した。次いで媒体を水素雰囲気下に置き、RTで終夜撹拌した。媒体をシリカゲルろ過し、次いで必要であればクロマトグラフする。
収率=63%
【0219】
4-ベンジルオキシ-3-メトキシ安息香酸
【化60】

1H NMR (DMSO):12.68 (bs;1H;COOH);7.54 (dd;2H;7;3J6,7=8.4;4J3,7=2.1);7.42 (m;12H;3,11,12および13);7.14 (d;2H;6;3J6,7=8.4);5.16 (s;2H;9);3.80 (s;6H;8)。
【0220】
5. A. 化合物DLT8の合成:
トランス-R,R-1,2-シクロヘキサンジイル ビス(4-ベンジルオキシ-3-メトキシベンゾエート)
【化61】

収率=48%;Rf=0.25 (石油エーテル/ AcOEt 8/2)
1H NMR (DMSO):7.50 (dd;2H;7;3J6,7=8.5;4J3,7=1.8);7.40 (m;12H;3、14、15および16);7.08 (d;2H;6;3J6,7=8.5 );5.10 (bs;6H;8および12);3.75 (s;6H;11);2.10 (m;2H;9a);1.72〜1.42 (m;6H;2b、3aおよび3b)。
13C NMR (DMSO):164.9 (1);151.9 (5);148.5 (4);136.3 (10);128.4/127.8 (11&12);127.9 (13);122.8 (7);121.9 (2);112.4 (6);111.7 (3);74.1 (9);69.8 (14);55.54 (8);29.7 (15);23.0 (16)。
【0221】
トランス-R,R-1,2-シクロヘキサンジイル ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート) (DLT8)
【化62】

収率=81%;Rf=0.25 (石油エーテル/ AcOEt 8/2)
1H NMR (DMSO):7.36 (m;4H;7および3);6.81 (d;2H;6;3J6,7=8.1);5.08 (bs;2H;9);2.13〜2.10 (m;2H;10a);1.78〜1.48 (m;6H;10bおよび11)。
13C NMR (DMSO):164.9 (1);151.9 (5);148.5 (4);136.3 (10);128.4/127.8 (11および12);127.9 (13);122.8 (7);121.9 (2);112.4 (6);111.7 (3);74.1 (9);69.8 (14);55.54 (8);29.7 (15);23.0 (16)。
【0222】
5.B. 化合物DLT7の合成:
トランス-S,S-1,2-シクロヘキサンジイル ビス(4-ベンジルオキシ-3-メトキシベンゾエート)
【化63】

収率=29%;Rf=0.25 (石油エーテル/ AcOEt 8/2)
1H NMR (DMSO):7.50 (dd;2H;7;3J6,7=8.5;4J3,7=1.8);7.40 (m;12H;3、14、15および16);7.08 (d;2H;6;3J6,7=8.5 );5.10 (bs;6H;8および12);3.75 (s;6H;11);2.10 (m;2H;9a);1.72〜1.42 (m;6H;2b、3aおよび3b)。
13C NMR (DMSO):164.9 (1);151.9 (5);148.5 (4);136.3 (10);128.4/127.8 (11および12);127.9 (13);122.8 (7);121.9 (2);112.4 (6);111.7 (3);74.1 (9);69.8 (14);55.54 (8);29.7 (15);23.0 (16)。
【0223】
トランス-S,S-1,2-シクロヘキサンジイル ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート) (DLT7)
【化64】

収率=71%;Rf=0.25 (石油エーテル/ AcOEt 8/2)
1H NMR (DMSO):7.36 (m;4H;7および3);6.81 (d;2H;6;3J6,7=8.1);5.08 (bs;2H;9);2.13〜2.10 (m;2H;10a);1.78〜1.48 (m;6H;10bおよび11)。
13C NMR (DMSO):164.9 (1);151.9 (5);148.5 (4);136.3 (10);128.4/127.8 (11および12);127.9 (13);122.8 (7);121.9 (2);112.4 (6);111.7 (3);74.1 (9);69.8 (14);55.54 (8);29.7 (15);23.0 (16)。
【0224】
5.C. 化合物DLT9の合成:
シス-1,2-シクロヘキサンジイル ビス(4-ベンジルオキシ-3-メトキシベンゾエート)
【化65】

収率=24%;Rf=0.3 (シクロヘキサン / AcOEt 8/2)
1H NMR (DMSO):7.56 (dd;2H;7;3J6,7=8.5;4J3,7=2.1);7.40 (m;12H;3、11、12および13);7.12 (d;2H;6;3J6,7=8.5 );5.27 (bs;2H;14);5.16 (s;4H;9);3.66 (s;6H;8);1.92 to1.51 (m;8H;15および16)。
13C NMR (DMSO):164.9 (1);151.9 (5);148.5 (4);136.3 (10);128.4/127.8 (11および12);127.9 (13);122.8 (7);121.9 (2);112.4 (6);111.7 (3);74.1 (9);69.8 (14);55.54 (8);29.7 (15);23.0 (16)。
【0225】
シス-1,2-シクロヘキサンジイル ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート) (DLT9)
【化66】

収率=100%;Rf=0.3 (シクロヘキサン / AcOEt 6/4)
1H NMR (DMSO):7.50 (dd;2H;7;3J6,7=8.5;4J3,7=1.8);7.40 (m;12H;3、14、15および16);7.08 (d;2H;6;3J6,7=8.5 );5.10 (bs;6H;8および12);3.75 (s;6H;11);2.10 (m;2H;9a);1.72〜1.42 (m;6H;2b、3aおよび3b)。
13C NMR (DMSO):164.9 (1);151.9 (5);148.5 (4);136.3 (10);128.4/127.8 (11および12);127.9 (13);122.8 (7);121.9 (2);112.4 (6);111.7 (3);74.1 (9);69.8 (14);55.54 (8);29.7 (15);23.0 (16)。
【0226】
6. ジブロム化化合物を用いるバニリン酸の選択的アルキル化のため一般的手法。
ジアルキル化剤(100〜300 mg)、バニリン酸(2.2当量)およびNaHCO3 (2.2当量)を反応器中に秤量した。DMF (100 mgに対して10 mL)を加え、媒体を110℃で12時間加熱した。媒体を、水およびAcOEtの間で分配し、水相を3回抽出し、有機相をNa2SO4で乾燥し、真空下に濃縮した。得られた粗生成物を、次いで、Rfで特定される溶離剤を用いるシリカゲルクロマトグラフィーにより精製した。
【0227】
6.A. 化合物DLT10の合成:
1,4-ブタンジイル ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート) (または4-(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾイル)オキシブチル 4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾエート;メタノール) (ワーキングネームDLT10)
【化67】

収率=42%
1H NMR (DMSO):9.97 (bs;2H;OH);7.44 (m;4H;3および7);6.85 (d;2H;6;3J6,7=8.4);4.28 (bs;4H;9);3.79 (s;6H;8);1.82 (bs;4H;10)。
13C NMR (DMSO):165.6 (1);151.4 (5);147.3 (4);123.3 (7);120.6 (2);115.1 (6);112.4 (3);63.9 (9);55.5 (8);25.1 (10)。
【0228】
6.B. 化合物DLT11の合成:
1,6-ヘキサンジイル ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート) (または6-(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾイル)オキシヘキシル 4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾエート;メタノール) (ワーキングネームDLT11)
【化68】

収率=44%
1H NMR (DMSO):9.98 (bs;2H;OH);7.44 (m;4H;3および7);6.85 (d;2H;6;3J6,7=8.1);4.20 (t;4H;9;3J6,7=6.4);3.79 (s;6H;8);1.70 (bs;4H;10);1.44 (bs;4H;11)。
13C NMR (DMSO):165.6 (1);151.4 (5);147.3 (4);123.3 (7);120.7 (2);115.2 (6);112.4 (3);64.1 (9);55.6 (8);28.2 (10);25.2 (11)。
【0229】
6.C. 化合物DLT12の合成:
1,7-ヘプタンジイル ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート) (または7-(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾイル)オキシヘプチル 4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾエート;メタノール) (ワーキングネームDLT12)
【化69】

収率=40%
1H NMR (DMSO):9.94 (bs;2H;OH);7.44 (m;4H;3および7);6.85 (d;2H;6;3J6,7=8.1);4.20 (t;4H;9;3J6,7=6.4);3.80 (s;6H;8);1.68 (bs;4H;10);1.39 (bs;6H;11および12)。
13C NMR (DMSO):165.5 (1);151.4 (5);147.3 (4);123.2 (7);120.6 (2);115.1 (6);112.4 (3);64.1 (9);55.5 (8);28.2 (12);28.1 (10);25.3 (11)。
【0230】
6.D. 化合物 DLT13の合成:
1,8-オクタンジイル ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート) (または7-(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾイル)オキシヘプチル 4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾエート;メタノール) (ワーキングネームDLT13)
【化70】

収率=41%
1H NMR (CDCl3):7.63 (dd;2H;7;3J6,7=8.1;4J3,7=1.8);7.55 (d;2H;3;4J3,7=1.8);6.93 (d;2H;6;3J6,7=8.1);4.28 (t;4H;9;3J9,10=6.7);3.93 (s;6H;8);1.76 (m;4H;10);1.40 (bs;8H;11および12)。
13C NMR (CDCl3):166.5 (1);149.9 (5);146.1 (4);124.0 (7);122.6 (2);114.0 (6);111.7 (3);64.9 (9);56.1 (8);29.2/28.2 (10および12);26.0 (11)。
【0231】
6.E. 化合物 DLT24の合成:
α,α'-o-キシレンジイル ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート) (または[2-[(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾイル)オキシメチル]フェニル]メチル 4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾエート;メタノール)
【化71】

収率=43;Rf=0.17 (石油エーテル/ AcOEt 5/5)
1H NMR (CDCl3 + 1滴のDMSO-d6):7.58 (dd;2H;7;3J6,7=8.4;4J3,7=2.1);7.51 (m;4H;3および11);7.37 (m;2H;12);6.85 (d;2H;6;3J6,7=8.4);5.49 (s;4H;9);3.87 (s;6H;8)。
13C NMR (CDCl3 + 1 drop of DMSO-d6):165.9 (1);150.6 (5);146.6 (4);134.7 (10);129.6/128.5 (11および12);124.0 (7);121.3 (2);114.3 (6);112.0 (3);64.0 (9);55.8 (8)。
【0232】
上記の例示したもののように類似の合成経路をとおしてさくできる一般式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)および (VI)に基づく例示化合物は、表1に表示されている。これらの例のいくつかに対しては、我々は、ただの対象化合物であると考慮している:R1=R4、R2=R5および=R6。しかしながら、それはもちろんのこと非対称化合物合成することも可能である。必要とされた場合位は、市販のジオールは、純粋なエナンチオマーとして可能であるか、それともキラール塩基とのジアステレオマーの結晶化による最終生成物の2つのエナンチオマーに分離することが可能である。
【0233】
式(I):
【化72】

式中、R1-3=H、OH、C1-8アルコキシアルキレン、OMe、ハロゲン;
式中のYは、COO、テトラゾール、OCO、OCOO、CONR4、NR4CO、OCONR4、NR4COO、NR4CONR4からなる群から選択され;
式中R4=H、C1-4アルキルであり;
式中L1=C1-8アルキレン、好ましくはC5-10;または(CH2)n、(ここでnは、2〜10から選択される整数である)、または、
【0234】
【化73】

(ここで星印*は、記載されている一価−または二価の基が、それが関連し、基を形成する部位である構造に結合する点を示すために式中用いられている)、式中のpは、0、1、2または3から選択される整数であり、
式中のそれぞれの基は、CO2H、バニリン酸、アルキルオキシカルボニル、…からなる群から選択される1つまたは2つの物質で任意に置換され得る。
【0235】
式(II):
【化74】

式中、Xは、O、NH、N-C1-6アルキルからなる群から選択され;
式中のそれぞれのR1、R2、R3、R4、R5、R6は、H、OH、C1-8アルコキシC1-6アルキル、C1-6アルコキシおよび ハロゲンからなる群から独立して選択され;
L1は、C1-8アルキレンまたは:
【0236】
【化75】

【化76】

【0237】
(ここで星印*は、記載されている一価−または二価の基 が、それが関連し、基を形成する部位である構造に結合する点を示すために式中用いられている)
から選択される基であり、それぞれの基は、C1-6アルキル、CO2H、バニリン酸、アミンおよびC1-6アルキルオキシカルボニルからなる群からそれぞれ独立して選択される、1つ、2つまたは3つの置換基で任意に置換されており、式中のpは、0、1、2または3から選択される整数であり、;
【0238】
R9は、OH、CO2H、NH2からなる群から選択され、qは、0、1、2または3から選択される整数である;
または その立体異性体。
【0239】
最初の構造は、フェノールに対して選択的なベンジル保護基を用いる全く同じ合成戦略に従って想像される。
【0240】
式Iに基づく例示化合物:
6-(3,4-ジメトキシベンゾイル)オキシヘキシル 3,4-ジメトキシベンゾエート(DLT 26)
【化77】

収率=72%;Rf=0.2 (CH2Cl2 / AcOEt 97/3)。
1H NMR (DMSO + 数滴のCDCl3):7.55 (dd;2H;7;3J3,7=8.4;4J3,7=1.8);6.98 (d;2H;6;3J6,7=8.4);4.23 (t;4H;10;3J6,7=6.4);3.82/3.79 (2s;12H;8および9);1.73 (bs;4H;11);1.47 (bs;4H;12)。
【0241】
13C NMR (DMSO + 数滴のCDCl3):165.3 (1);152.7 (5);148.2 (4);122.9/121.9 (2および7);111.5/110.7 (3および6);64.0 (10);55.5/55.3 (8および9);28.0 (11);25.1 (12)。
【0242】
1,4-オキシブタ-2-エニル-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート) (または[(E)-4-(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾイル)オキシブタ-2-エニル] 4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾエート;メタノール) (DLT 27)
【0243】
シスおよびトランスの混合物
【化78】

主生成物(おそらくトランス)のピークのみを記載する。
1H NMR (DMSO):9.98 (bs;2H;OH);7.49 (dd;2H;7;3J6,7=8.1;4J3,7=1.8);7.44 (d;2H;3;4J3,7=1.8);6.87 (d;2H;6;3J6,7=8.1);6.03 (bs;2H;6);4.79 (bs;4H;9);3.81 (s;6H;8)。
13C NMR (DMSO):165.1 (1);151.5 (5);147.3 (4);127.9 (10);123.4 (7);120.2 (2);115.1 (6);112.4 (3);63.6 (9);55.5 (8)。
【0244】
1,4-オキシブタ-2-インイル ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート) (DLT28)
【化79】

1H NMR (DMSO):10.05 (bs;2H;OH);7.48 (dd;2H;7;3J6,7=8.2;4J3,7=1.4);7.43 (d;2H;3;4J3,7=1.4);6.89 (d;2H;6;3J6,7=8.2);5.99 (s;4H;9);3.82 (s;6H;8). 13C NMR (DMSO):164.7 (1);151.8 (5);147.4 (4);123.7 (7);119.6 (2);115.2 (6);112.5 (3);81.3 (10);55.5 (8);51.9 (9)。
【0245】
6-(3-ヒドロキシ-4-メトキシ-ベンゾイル)オキシヘキシル 3-ヒドロキシ-4-メトキシ-ベンゾエート (DLT29)
【化80】

収率=29%;Rf=0.2 (シクロヘキサン / AcOEt 6/4)。
1H NMR (DMSO):9.41 (bs;2H;OH);7.42 (dd;2H;7;3J6,7=8.4;4J3,7=2.1);7.37 (d;2H;3;3J3,7=2.1);6.98 (d;2H;6;3J6,7=8.4);4.20 (t;4H;9;3J6,7=6.4);3.82 (s;6H;8);1.70 (bs;4H;10);1.44 (bs;4H;11)。
13C NMR (DMSO):165.5 (1);151.8 (5);146.2 (4);122.1 / 121.4 (2および7);115.6 (6);111.4 (3);64.1 (9);55.6 (8);28.1 (10);25.2 (11)。
【0246】
[3-[(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾイル)オキシメチル]フェニル]メチル 4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾエート (DLT25)
【化81】

収率=43% (256 mg);Rf=0.17 (シクロヘキサン / AcOEt 7/3);HPLC純度:
1H NMR (DMSO):9.99 (bs;2H;OH); 7.51〜7.41 (m;8H;3,7,10,12および13);6.85 (d;2H;6;3J6,7=8.4);5.31 (s;4H;9);3.79 (s;6H;8)。
13C NMR (DMSO):165.0 (1);150.6 (5);146.6 (4);136.5 (11);128.4/127.1/126.7 (10,12および13);123.2 (7);120.0 (2);114.9 (6);112.2 (3);65.1 (9);55.2 (8)。
【0247】
式 VI:
【化82】

式中、Zは、COCH2CO、COCH2C H2、CH2CH2CO、CH2COCH2、COOC H2、CONHC H2、CON-C1-6アルキルC H2、CONHCO、CON-C1-6アルキルCO、CH2NHC H2、CH2N-C1-6アルキルCH2、CH2OCO、CH2NHCO、CH2N(C1-6アルキル)CO、CH2OC H2、CH2SC H2、SO2OC H2、SO2NHC H2、SO2N-C1-6アルキルCH2からなる群から選択され;
式中R1-3は、互いにそれぞれ独立して=H、OH、ハロゲン、C1-8アルコキシアルキレン、OMe Ac、OAc、C1-8アルキル、NO2であり得;
式中R1-3の間で、2つの隣接する置換基 は、 一緒になってジオキソールであり得る。
【0248】
以下に述べるように1工程で既に合成された式IVの例示化合物は、以下のとおりである:
【化83】

【0249】
[3,5-ビス[(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾイル)オキシメチル]フェニル]メチル 4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾエート. DLT95
【化84】

収率=11%、Rf=0.23 (シクロヘキサン / AcOEt:5/5)、次いで、CH2Cl2から結晶化。RP-HPLC:純度=100% (254 nm)、tR=4.04分;1H NMR (DMSO-d6):δ9.99 (bs、3H、OH)、7.50〜7.45 (m、9H、H-3、H-7、H-11)、6.85 (d、3J6,7=8.1、3H、H-6)、5.34 (s、6H、H-9)、3.78 (s、9H、H-8)。 13C NMR (DMSO-d6):δ165.3 (C-1)、151.6 (C-5)、147.3 (C-4)、137.1 (C-10)、126.5 (C-11)、123.5 (C-7)、120.1 (C-2)、115.1 (C-6)、112.4 (C-3)、65.2 (C-9)、55.5 (C-8)。Mp:161℃。元素分析;C33H30O12・3/2CH2Cl2:C、59.89;H、4.68. 実測値:C、59.84;H、4.72 (CH2Cl2 8重量%に相当)。MS (ESI+) m/z 641.1625 (MNa+)、0.6 ppm. IR-FT:3378.86;2941.00;1701.97;1597.35;1528.19;1516.96。
【0250】
[3,5-ビス[(4-ヒドロキシ-3-フルオロ-ベンゾイル)オキシメチル]フェニル]メチル 4-ヒドロキシ-3-フルオロ-ベンゾエート. DLT95-F
【化85】

収率=15%、Rf=0.4 (CH2Cl2 / MeOH:9/1)、RP-HPLC:純度=98.4% (254nm)、tR=3.96分、1H NMR (DMSO-d6):δ10.91 (bs、3H、OH)、7.68〜7.7.65 (m、6H、H-3、H-7)、7.51 (s、3H、H-10)、7.03 (t、3J6,74J6-F=9.0、2H、H-6)、5.34 (s、6H、H-8)。13C NMR (DMSO-d6):δ164.5 (d、4J1-F=2.3、C-1)、150.4 (d、1J4-F=240.7、C-4)、149.1 (d、2J5-F=12.0、C-5)、137.0 (C-9)、126.8 (C-10)、126.7 (d、4J7-F=2.3、C-7)、120.5 (d、3J2-F=6.0、C-2)、117.6 (d、3J6-F=3.0、C-6)、117.0 (d、2J3-F=19.5.0、C-3)、65.6 (C-8)。Mp:88℃。元素分析;C30H21F3O91/4CH2Cl2:C、60.18;H、3.59. 実測値:C、60.16;H、4.00。IR-FT:3382.35;2957.89;1702.31;1617.81;1597.99;1518.77。
【0251】
[3,5-ビス[(4-ヒドロキシ-3-クロロ-ベンゾイル)オキシメチル]フェニル]メチル 4-ヒドロキシ-3-クロロ-ベンゾエート. DLT95-Cl
【化86】

収率=10%、Rf=0.27 (CH2Cl2 / MeOH:98/2)、RP-HPLC:純度=89.8% (210 nm)、tR=2.73分、1H NMR (DMSO-d6):δ11.3 (bs、3H、OH)、7.88 (d、4J3,7=1.8、3H、H-3)、7.79 (dd、3J6,7=8.7、4J3,7=1.8、3H、H-7)、7.51 (s、3H、H-10)、7.05 (d、3J6,7=8.7、3H、H-6)、5.34 (s、6H、H-8)。13C NMR (DMSO-d6):δ164.3 (C-1)、157.7 (C-5)、136.9 (C-4)、131.0 (C-3)、129.8 (C-7)、126.9 (C-2)、121.1 (C-4)、119.9 (C-10)、116.4 (C-6)。Mp:178℃。元素分析;C30H21Cl3O91/8CH2Cl2:C、56.32;H、3.33. 実測値:C、56.43;H、3.58. IR-FT:3393.09;2961.56;1690.44;1601.50;1579.04;1500.77。
【0252】
式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)または(VI)に基づく例示化合物を、以下の表1に述べる。
【0253】
【表1−1】

【0254】
【表1−2】

【0255】
【表1−3】

【0256】
【表1−4】

【0257】
【表1−5】

【0258】
【表1−6】

【0259】
【表1−7】

【0260】
【表1−8】

【0261】
【表1−9】

【0262】
【表1−10】

【0263】
【化87】

【0264】
全ての合成された化合物は、Cl-、Na+、K+およびCa2++に焦点を合わせて、細胞内イオン濃度を改変するそれらの能力を分析することができる。
【0265】
実施例2:本発明による化合物の生化学的効果のインビトロ特徴付け
A/ 全体的な細胞増殖に対する効果
全体的な細胞増殖に対する本発明の化合物の効果を迅速に、すなわち5日間以内に測定するためにMTTテストを実施した。このテストは、黄色生成物3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(ここでMTTという)を、ミトコンドリアの還元により青色生成物フォルマザン色素に変換できる代謝的に活性な精細胞の数を測定する。分光光度計を用いて測定した実験の終わりに得られたフォルマザンの量は、直接生細胞の数に比例している。 したがって、光学濃度測定は、コントロール条件(非処理細胞)および/または他の参照化合物と比べて、調査した化合物の効果の定量的測定を可能にした。
【0266】
11のヒト癌細胞系および表2に記載の1つのマウス黒色腫細胞系(B16F10)を、以下のMTTテストに用いた。これらの癌細胞系は、前立腺癌(PC3)、神経膠腫(Hs683、T98G、U373、黒色腫(VM21、VM28)、非小細胞肺癌(A549)、胸部癌 (MCF-7)、結腸癌(LoVo)および食道癌(OE21、OE33)を含む7つの組織学的 癌の型をカバーする。
【0267】
アッセイを行うために、用いる細胞タイプに依存して5,000〜8,000 細胞/ウェルを有する、ウェル当たり100μlの量を用いて平底96ウェルマイクロウェル中で細胞を増殖させた。
【0268】
詳細な実験手法は、以下:37℃でのインキュベーションの24時間後、培地を、以下のモル濃度:10-8 M、5.10-8 M、10-7 M、5.10-7 M、10-6 M、5.10-6 M、10-5 M、5.10-5 M and 10-4 Mで、予めテスト化合物溶解した新鮮な媒体 100μlで置き換えた。各実験は、セスツプリケート(sestuplicates) (6 回)行った。
【0269】
テストされる化合物を、用いて(実験条件)あるいは用いずに(コントロール条件)37℃で72時間インキュベーション後、その媒体を、0.5または1 mg/mlの濃度でRPMI (1640フェノールレッドを用いずに)に溶解したMTT 100μlにより 置き換えた。
【0270】
そのマイクロウェルを、続いて37℃で3時間半インキュベートし、1300 rpmで10分間遠心分離にかけた。MTTを除去し、形成したフォルマザン結晶を、DMSO 100μlに溶解した。そのマイクロウェルを、5分間振り混ぜ570 nm (フォルマザンの極大吸収)の波長において分光光度計で読んだ。
【0271】
各実験条件について、平均光学濃度を計算し、コントロールと比較した残っている生細胞の割合を決定した。
【0272】
表3は、調査した各細胞系における各化合物に対するIC50 (全体的な腫瘍細胞増殖の50%阻害に帰結した試験化合物の濃度範囲を示す)を示す。
【0273】
我々が用いた、細胞系の由来、それらの生物学的特徴とともに、ここで用いられたMTT比色分析のバリデーション手法は、Van Quaquebekeら、2005、J Med Chem 48:849-856;Ingrassiaら、2009、J Med Chem 52:1100-1114;Mathieuら、2009、J Cell Mol Med、Feb. 20、2009に詳述されている。
【0274】
【表2−1】

【0275】
【表2−2】

【0276】
DLT95 化合物の純度は:DLT 95 99%、 DLT95F 98%およびDLT95Cl 92%である。
【0277】
ここで、表2の化合物1〜7は、直鎖炭素鎖を有する以下の一般式:
【化88】

を有しており、
および
【0278】
表2の化合物8〜12は、以下の一般式
【化89】

を有し、ここで、8〜11は、シクロ-1,2タイプであり、12は、シクロ-1,3タイプである。
【0279】
ここで、表2の化合物13〜15は、以下の一般式:
【化90】

【0280】
B/ 癌細胞における、本発明の化合物によって誘発される細胞増殖および細胞遊走の損傷
MTT試験はミトコンドリアの機能に基づくので、我々は、細胞イメージングアプローチ(Debeirら, Cytometry 60:29-40, 2004;Debeirら, IEEE Trans Med Imaging 24:697-711, 2005)により、アポトーシス耐性であるが自食作用(autophagy)感受性であるヒトU373-MG 神経膠腫細胞株(Lefranc F ら, Neurosurgery 2008)およびアポトーシス耐性で自食作用耐性であるヒトA549非小細胞肺癌細胞株(Mijatovic T ら, 新生物 2006, May;8(5):402-12)の両方の細胞増殖、遊走および形態への本発明によるジ-およびトリ-バニロイル誘導体の作用も検討した。
【0281】
検討は、ヒト正常線維芽細胞(WS1およびWI38 − 表4および5参照)でも行われた。細胞イメージングは、数日間の培養皿中の生細胞の挙動を撮影することが可能な、コンピューター支援位相差顕微鏡法の使用によった。
【0282】
細胞は、低密度で25-cm2 フラスコ中に播種され、本発明のバニロイルエステル(50μMの濃度で)で処理されるかまたはされないで、その後72時間撮影された。実験は4重(DLT-95化合物は2重)で行われた。
【0283】
このようにして、形態学の観点から細胞の挙動、増殖および死が検討された。全増殖における作用は、各撮影での最初の画像(0時間)と最後の画像(72時間)での細胞数をカウントすることによって測定された。次いで、全体の(global)増殖比(GGR)が、最後の画像の細胞数を最初の画像の細胞数で割って導き出された。さらに、それによってGGR処理細胞 / GGRコントロール細胞比が計算され、本発明の化合物の全細胞増殖における作用を表す値を得た。前記方法は、Debeirら, 2008, Exp Cell Res 314:2985-2998およびMathieuら, 2009, J Cell Mol Med, Feb 20, 2009に十分に記載されており、認証されている。
【0284】
得られた記録(非提示)およびデータは、本発明による化合物が、ヒト癌細胞の細胞形態および増殖を損傷することを示す。本発明によるポリ-バニリック(poly-vanillic)化合物(50μM)で無処理または処理された、膠芽細胞腫株および正常線維芽細胞株の実例図(時間 = 0時間および72時間)が、図1 (U373 膠芽細胞腫)および図2 (正常線維芽細胞)で示される。GGRパラメータ分析は、本発明によるポリ-バニリック化合物の両癌細胞株における細胞増殖の著しい損傷を支持した(表5)。
【0285】
表5は、このアッセイで得られた全てのデータを要約する;本発明によるDLT1およびDLT4化合物は、明らかに、癌細胞株における細胞形態および増殖を損傷するが、ヒト線維芽(非癌)細胞株においては損傷しない。
【0286】
【表3】

【0287】
【表4】

【0288】
実施例 3:20μMでのDLT11のキナーゼ阻害プロファイル
材料および方法
20μMでのDLT11のキナーゼ阻害プロファイルは、250のプロテイン キナーゼを用いて測定された。残存活性値は、各キナーゼアッセイにおいて2重で、各化合物を1つの濃度で試験することによって測定された。放射プロテイン キナーゼアッセイ (33PanQinase(登録商標)Activity Assay)が、250のプロテイン キナーゼのキナーゼ活性を測定するために用いられた。全てのキナーゼアッセイは、Perkin Elmer (Boston, MA, USA)からの96-ウェル フラッシュプレートTM中、50μlの反応容積で行われた。反応カクテルは次の順:
− 10μlの非放射活性ATP溶液 (H2O中)
− 25μlのアッセイ緩衝液 / [γ -33P]-ATP 混合物
− 10% DMSO中の5μlの試料
− 10μlの酵素 / 基質 混合物
の4段階でピペットで取られた。
【0289】
全ての酵素に対するアッセイは、60 mM HEPES-NaOH、pH 7.5、3 mM MgCl2、3 mM MnCl2、3μM Na-オルトバナデート、1.2 mM DTT、50μg/ml PEG20000、1μM ATP/[γ-33P]-ATP (ウェル当り約6 x 1005 cpm)、プロテイン キナーゼおよび基質を含んだ。全てのPKCアッセイ(PKC-muおよびPKC-nuアッセイを除く)は、さらに1 mM CaCl2、4 mM EDTA、5μg/ml ホスファチジルセリンおよび1μg/ml 1.2-ジオレイル-グリセロールを含んだ。MYLK2、CAMK1D、CAMK2A、CAMK2B、CAMK2D、CAMK4、CAMKK2、DAPK2およびEEF2Kアッセイは、さらに1μg/ml カルモジュリンおよび0.5 mM CaCl2を含んだ。PRKG1およびPRKG2アッセイは、さらに1μM cGMPを含んだ。
【0290】
組換えプロテイン キナーゼ:
プロテイン キナーゼは、組換えGST-融合プロテインまたはHis-標識プロテインとしてSf9昆虫細胞またはE.coliのいずれかに発現された。全てのキナーゼはcDNAから製造された。キナーゼは、GSH-アガロース(Sigma)またはNi-NTH-アガロース(Qiagen)のいずれかを用いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製された。プロテイン キナーゼの純度は、SDS-PAGE/coomassie染色により調べられた。プロテイン キナーゼの同一性は、マス スペクトロスコピーによってチェックされた。
【0291】
反応カクテルは、30℃で60分間インキュベートされた。反応は50μlの2 % (v/v) H3PO4で停止され、プレートは吸引され、200μl 0.9 % (w/v) NaClで2回洗浄された。全てのアッセイは、BeckmanCoulter Biomek 2000/SLロボットシステムで行われた。
【0292】
33Piの取り込み(「cpm」のカウント)は、マイクロプレート シンチレーション カウンター(Microbeta, Wallac)で測定された。
各キナーゼに対して、完全反応カクテルだがキナーゼが無い3つのウェルのcpmの平均値が、「低コントロール(low control)」(n=3)として定義された。この値は、プロテイン キナーゼの非存在下だが基質の存在下でのプレートへの放射活性の非特異的結合を示す。さらに、各キナーゼに対して、完全反応カクテルだが化合物が無い3つの別のウェルのcpmの平均値が、「高コントロール(high control)」、すなわちあらゆる阻害剤の非存在下での完全な活性として見なされた。高コントロールと低コントロールの差が、各キナーゼの100 %活性と見なされた。データ評価の一環として、各キナーゼの低コントロール値が、高コントロール値ならびにそれらの対応する「化合物値」から差し引かれた。各化合物ウェルに対する残存活性(%で)は、次の式:残存活性(%)=100×[(化合物のcpm−低コントロール)/(高コントロール−低コントロール)]を用いて計算された。
【0293】
結果
化合物のキナーゼ阻害プロファイルを確立するために、20μMでDLT11を用いて、250のキナーゼが試験された。図3は、250のうち19のキナーゼが、DLT11によって阻害される活性を有したことを示す。
【0294】
実施例4:8つの異なる濃度でのDLT1、DLT2、DLT 7、DLT8、DLT9、DLT11、DLT12およびバニリン酸のAurora A、BおよびCキナーゼ阻害プロファイル
我々は、前記と同じプロトコールを用いて、0、1、5、10、25、50、75および100μMでのDLT化合物およびバニリン酸のAurora A、BおよびCキナーゼ活性の阻害に対する用量-作用曲線を確立した(図4)。図から理解されるように、8化合物全て、Aurora キナーゼ A、BおよびCに著しい効果を有し、このことは、本発明のDLT化合物に対する共通の標的であることを示している。ここで留意すべきは、DLT化合物の20μMの濃度で、3つのAurora キナーゼの活性は、約40〜50%まで減少し、一方、50μMの濃度、すなわち実施例2Bの抗増殖で用いられた濃度で、前記キナーゼの活性は、60〜75%まで減少することである。
【0295】
実施例5:10μMでのDLT1およびDLT5のキナーゼ阻害プロファイル
材料および方法

緩衝液
緩衝液 A:10 mM MgCl2, 1 mM EGTA, 1 mM DTT, 25 mM トリス-HCl pH 7.5, 50μg ヘパリン/ml
緩衝液 C:60 mM β-グリセロホスフェート, 15 mM p-ニトロフェニルホスフェート, 25 mM Mops (pH 7.2)、5 mM EGTA, 15 mM MgCl2, 1 mM DTT, 1 mM ナトリウムバナデート, 1 mM フェニルホスフェート
【0296】
キナーゼ調製およびアッセイ
キナーゼ活性は、15μMの最終ATP濃度で、緩衝液AまたはC中、30℃でアッセイされた。ブランクの値が差し引かれ、活性は、最大活性、すなわち阻害剤非存在下の活性の%で表された。コントロールはDMSOの適当な希釈で行われた。
【0297】
CDK1/サクリン B (Mフェーズのヒトデ卵母細胞、天然)、CDK2/サイクリン A、CDK2/サイクリン E、CDK5/p25およびCDK7/サイクリン H (ヒト、組換え)が、以前に記載されている (Leclercら, 2001, J. Biol. Chem. 2001, 276, 251-260;Bachら, 2005, J Biol Chem 280:31208-31219)ようにして調製された。これらのキナーゼ活性は、緩衝液 C中、30μlの最終容積中の15μM [ガンマ-33P] ATP (3,000 Ci/mmol;10 mCi/ml)の存在下、1 mg ヒストン H1 /mlを用いてアッセイされた。30℃で30分間のインキュベーション後、上清液の25μlの一定分量が、Whatman P81ホスホセルロース ペーパーの2.5×3 cm片にスポットされ、20秒後、該フィルターは、10 ml リン酸/水のリッターの溶液で、5回(各回、少なくとも5分間)洗浄された。湿ったフィルターを1 ml ACS (Amersham) シンチレーション液の存在下にカウントされた。
【0298】
CDK9/サイクリン T (ヒト、組換え、昆虫細胞に発現)は、CDK1/サイクリン Bに対して記載されたようにしてではあるが、基質としてpRBフラグメント(a.a.773-928) (3.5μg/アッセイ)を用いてアッセイされた。
【0299】
GSK-3 (ブタの脳、天然)は、CDK1に対して記載されたようにしてではあるが、緩衝液 A中、GSK-3特異的基質(GS-1:YRRAAVPPSPSLSRHSSPHQSpEDEEE) (Seq. ID NO 1) (pSはリン酸化されたセリンを意味する) (Primotら, 2000, Protein Expr. & Purif. 20 (3)、394-404)を用いてアッセイされた。GS-1はMillegen (Labege, France)によって合成された。
【0300】
CK1 (ブタの脳、天然)は、CDK1に対して記載されたようにしてではあるが、Millegen (Labege, France)から入手した、CK1-特異的ペプチド基質 RRKHAAIGpSAYSITA (Seq. ID NO 2) (Reinhardtら, 2007, Protein Expr. & Purif. 54, 101-109)を用いてアッセイされた。
【0301】
Erk2 (ラット、組換え)は、CDK1に対して記載されたようにしてではあるが、緩衝液 A中、特異的基質Ets1 (アミノ酸 1-138)を用いてアッセイされた。
【0302】
DYRK1A (ラット、組換え、GST融合プロテインとしてE. coliに発現)は、グルタチオン-アガロースでのアフィニティー クロマトグラフィーにより精製し、基質としてミエリン塩基性プロテイン (1 mg/ml)を用いて、CDK1/サイクリン Bに対して記載されたようにしてアッセイされた。
【0303】
結果
結果は表6に示され、Dyrk1AおよびCkoneの酵素活性が、DLT1化合物によって顕著に減少され、DLT5化合物によってより小さい程度で減少されることを示している。
【表5】

【0304】
DLT1化合物は、10 μMで、DYRK1A キナーゼ活性の51%を阻害する。
実施例3〜5から、本発明中で試験されたDLT化合物は、全て実際に細胞増殖に関与することが知られているAuroraタイプのキナーゼまたはDyrk1A キナーゼの阻害を介して作用する作用メカニズムを有するということになる。この発見は、もちろん、癌または腫瘍細胞に抗増殖作用を有する化合物のスクリーニングアッセイを計画するのに役立つ。
【0305】
実施例6:8つの異なる濃度でのDLT95、DLT95-F、DLT95-Clおよびバニリン酸のAurora A、BおよびC、WEE1ならびにDYRK-1A キナーゼ阻害プロファイル
さらに、本発明者らは、本発明の化合物の実際の標的を確認するためのルートに着手し、増殖障害に関与することが知られているある種のキナーゼが、本発明のいくつかの化合物によって阻害されることを立証した。その結果を表7、図5および実施例7に示す。
【0306】
我々は、3重(n=3)で実験を行った以外は、以下に記載された(実施例 7)のと同じプロトコールで、0、1、5、10、25、50、75および100μMでの3つのDLT-95-化合物およびバニリン酸のAurora A、BおよびC、WEE1ならびにDYRK1A キナーゼ活性の阻害に対する用量-作用曲線を確立した。 図から理解できるように、8化合物全て、Aurora キナーゼ A、BおよびCに著しい作用を有し、このことは、本発明のDLT化合物に対する共通の標的であることを示している。DLT95-Cl化合物が、5 キナーゼに対してIC50 ≦ 3μMを有し、最も強力な阻害剤である。
【0307】
【表6】

【0308】
実施例7:20μMでのDLT31-Clのキナーゼ阻害プロファイル
図5および表7の結果を考慮して、本発明者らは、本発明のDLT95-Clによる255のプロテイン キナーゼの損傷におけるより幅広い分析を行った。
【0309】
本化合物のキナーゼ阻害プロファイルを確立するために、20μMでのDLT95-Clで、255のキナーゼが試験された。
【0310】
スクリーニングされた255のキナーゼについて249の活性が、20μMでのDLT95-Clによって≧50%損傷される。10倍低いDLT95-Clの濃度で強力なキナーゼ阻害活性が維持されるかどうかを知るために、2009年9月に、2μMでのDLT95-Clで同じ実験を行う。
【0311】
研究下での本化合物のキナーゼ活性阻害を試験するための一般的手順:
20μMでのDLT95-Clのキナーゼ阻害プロファイルは、255のプロテイン キナーゼを用いて測定された。残存活性値は、各キナーゼアッセイにおいて2重で、各化合物を1つの濃度で試験することによって測定された。放射プロテイン キナーゼアッセイ (33PanQinase(登録商標)Activity Assay)が、250のプロテイン キナーゼのキナーゼ活性を測定するために用いられた。全てのキナーゼアッセイは、Perkin Elmer (Boston, MA, USA)からの96-ウェル フラッシュプレートTM中、50μlの反応容積で行われた。反応カクテルは次の順:
− 10μlの非放射活性ATP溶液 (H2O中)
− 25μlのアッセイ緩衝液 / [γ-33P]-ATP 混合物
− 10% DMSO中の5μlの試料
− 10μlの酵素 / 基質 混合物
の4段階でピペットで取られた。
【0312】
全ての酵素に対するアッセイは、60 mM HEPES-NaOH、pH 7.5、3 mM MgCl2、3 mM MnCl2、3μM Na-オルトバナデート、1.2 mM DTT、50μg/ml PEG20000、1μM ATP/[γ-33P]-ATP (ウェル当り約6 x 1005 cpm)、プロテイン キナーゼおよび基質を含んだ。全てのPKCアッセイ(PKC-muおよびPKC-nuアッセイを除く)は、さらに1 mM CaCl2、4 mM EDTA、5μg/ml ホスファチジルセリンおよび1μg/ml 1.2-ジオレイル-グリセロールを含んだ。MYLK2、CAMK1D、CAMK2A、CAMK2B、CAMK2D、CAMK4、CAMKK2、DAPK2およびEEF2Kアッセイは、さらに1μg/ml カルモジュリンおよび0.5 mM CaCl2を含んだ。PRKG1およびPRKG2アッセイは、さらに1 μM cGMPを含んだ。
【0313】
組換えプロテイン キナーゼ:
プロテイン キナーゼは、組換えGST-融合プロテインまたはHis-標識プロテインとしてSf9昆虫細胞またはE.coliのいずれかに発現された。全てのキナーゼはcDNAから製造された。キナーゼは、GSH-アガロース(Sigma)またはNi-NTH-アガロース(Qiagen)のいずれかを用いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製された。プロテイン キナーゼの純度は、SDS-PAGE/coomassie染色により調べられた。プロテイン キナーゼの同一性は、マス スペクトロスコピーによってチェックされた。
【0314】
反応カクテルは、30℃で60分間インキュベートされた。反応は50μlの2 % (v/v) H3PO4で停止され、プレートは吸引され、200μl 0.9 % (w/v) NaClで2回洗浄された。全てのアッセイは、BeckmanCoulter Biomek 2000/SLロボットシステムで行われた。
【0315】
33Piの取り込み(「cpm」のカウント)は、マイクロプレート シンチレーション カウンター(Microbeta, Wallac)で測定された。
【0316】
各キナーゼに対して、完全反応カクテルだがキナーゼが無い3つのウェルのcpmの平均値が、「低コントロール」(n=2)として定義された。この値は、プロテイン キナーゼの非存在下だが基質の存在下でのプレートへの放射活性の非特異的結合を示す。さらに、各キナーゼに対して、完全反応カクテルだが化合物が無い3つの別のウェルのcpmの平均値が、「高コントロール」、すなわちあらゆる阻害剤の非存在下での完全な活性として見なされた。高コントロールと低コントロールの差が、各キナーゼの100 %活性と見なされた。データ評価の一環として、各キナーゼの低コントロール値が、高コントロール値ならびにそれらの対応する「化合物値」から差し引かれた。各化合物ウェルに対する残存活性(%で)は、次の式:残存活性(%)=100×[(化合物のcpm−低コントロール)/(高コントロール−低コントロール)]を用いて計算された。
【0317】
得られたデータは、研究下での本化合物が、化合物DLT-95-Clによって観察された著しい阻害活性を有し、強力な汎抗キナーゼ(pan-antikinase)阻害剤であることを示す。化合物DLT-95-Clによって標的とされる多くの一連のキナーゼは、予後不良に関与するほとんどの癌、すなわち転移する傾向にあるあらゆる癌(癌患者の>90%がそれらの転移で死亡することに留意)で過剰に発現されている。悪性神経膠腫のような転移しない癌も、化合物DLT-95-Clによって標的とされるキナーゼを過剰に発現する。それゆえ、化合物DLT-95-Clは、単独または(例えば放射線治療および化学療法を含む)他の治療との組合せで、転移する傾向にあり、かつ/または既に転移した癌および/または悪性神経膠腫の抑制に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】

[式中、
R1-6は、互いにそれぞれ独立して=H、OH、C1-8アルコキシアルキレン、OMe、Ac、OAc、C1-8アルキル、NO2またはハロゲン、例えばFもしくはClであり得、ここでR1-3の間で隣接する2つの置換基は一緒になってジオキソールとなり得;
式中のYは、COO、テトラゾール、OCO、OCOO、CONR10、NR10CO、OCONR10、NR10COO、NR10CONR10、COCH2CO、COCH2CH2、CH2CH2CO、CH2COCH2、COOCH2、CONHCH2、CON-C1-6アルキルCH2、CONHCO、CON-C1-6アルキルCO、CH2NHCH2、CH2N-C1-6アルキルCH2、CH2OCO、CH2NHCO、CH2N(C1-6アルキル)CO、CH2OCH2、CH2SCH2、SO2OCH2、SO2NHCH2、およびSO2N-C1-6アルキルCH2(ここで、R10=H、C1-4アルキルであり、R11=C1-6アルキル、CH2である)からなる群から選択され;
式中のL1=C1-8アルキレン、好ましくはC5-10 アルキレンであるか;または
式中のL1=(CH2)n(ここでn は、2〜10から選択される整数であり)であるか;または
式中:
【化2】

であるか、または
式中:
【化3】

であり、
[ここで、R9は、OH、CO2HまたはNH2からなる群から選択され、ここでqは、0、1、2または3から選択される整数であり、それぞれの基は、C1-6アルキル、CO2H、バニリン酸、アミンおよびC1-6アルキルオキシカルボニルからなる群からそれぞれ独立して選択される1つ、2つまたは3つの置換基で任意に置換されており、ここでpは、0、1、2または3から選択される整数である]である]であり得る]
を有する化合物またはその立体異性体あるいはその医薬的に許容な付加塩、水和物または 溶媒和物である。
【請求項2】
一般式(VI):
【化4】

[式中、Zは、COCH2CO、COCH2CH2、CH2CH2CO、CH2COCH2、COOCH2、CONHCH2、CON-C1-6アルキルCH2、CONHCO、CON-C1-6アルキルCO、CH2NHCH2、CH2N-C1-6アルキルCH2、CH2OCO、CH2NHCO、CH2N(C1-6アルキル)CO、CH2OCH2、CH2SCH2、SO2OCH2、SO2NHCH2、SO2N-C1-6アルキルCH2からなる群から選択され;
式中R1-3は、互いにそれぞれ独立して=H、OH、ハロゲン、C1-8アルコキシアルキレン、OMe Ac、OAc、C1-8アルキル、NO2であり得;
式中R1-3の間の2つの隣接する置換基は、一緒になってジオキソールであり得る]
を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
化合物が:[3,5-ビス-[(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾイル)-オキシメチル]-フェニル]-メチル-4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾエート (DLT95)、[3,5-ビス[(4-ヒドロキシ-3-フルオロ-ベンゾイル)オキシメチル]-フェニル]-メチル-4-ヒドロキシ-3-フルオロ-ベンゾエート (DLT95-F)および[3,5-ビス-[(4-ヒドロキシ-3-クロロ-ベンゾイル)-オキシメチル]-フェニル]-メチル-4-ヒドロキシ-3-クロロ-ベンゾエート (DLT95-Cl)からなる群から選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
一般式(II):
【化5】

[式中、Xは、O、O-C1-6アルキル、NHおよびN-C1-6アルキルからなる群から選択され;
式中各R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、H、OH、C1-8アルコキシC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、およびハロゲン、例えばFおよびClからなる群から独立して選択され;
式中のL1は、C1-8アルキレン、
【化6】

または
【化7】

ここで星印は、記載されている一価−または二価の基が、それが関連し、基を形成する部位である構造に結合する点を示すために式中用いられており;
それぞれの基は、それぞれ独立して、C1-6アルキル、CO2H、バニリン酸、アミン、およびC1-6アルキルオキシカルボニルからなる群から選択される1つ、2つまたは3つの置換基で任意に置換されており、ここでpは、0、1、2または3から選択される整数であり、;
ここでR9は、OH、CO2HおよびNH2 からなる群から選択され、ここでqは、0、1、2または3から選択される整数である]
により定義される化合物、またはその立体異性体およびその医薬的に許容な付加塩、水和物もしくは溶媒和物である請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
R1およびR4は、それぞれ独立して水素であり、R2、R3、R5およびR6は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシまたはC1-6アルコキシである請求項1、2または4のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項6】
R1およびR4は、それぞれ独立して水素であり、R2、R3、R5およびR6は、それぞれ独立して、ヒドロキシまたはC1-6アルコキシである請求項1、2、4または5のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項7】
R1およびR4は、それぞれ独立して水素であり、R2およびR5は、それぞれ独立してC1-6アルコキシであり、 R3およびR6は、それぞれ独立してヒドロキシである、請求項1、2および4〜6のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項8】
R1およびR4は、それぞれ独立して水素であり、R2およびR5は、それぞれ独立してメトキシであり、R3およびR6は、それぞれ独立してヒドロキシである請求項1、2または4〜7のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項9】
Xが酸素である請求項1、2または4〜8のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項10】
XがNHである請求項1、2または4〜9のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項11】
X=OCH2であり、
【化8】

ここで星印は、記載されている一価−または二価の基 が、それが関連し、基を形成する部位である構造に結合する点を示すために式中用いられており、式中、R1およびR4=OMe、FまたはClであり、R2およびR5 =OHであり、R3およびR6=Hである、請求項4に記載の化合物。
【請求項12】
式 (III):
【化9】

[式中、Xは、O、O-C1-6アルキル、NHおよびN-C1-6アルキルからなる群から選択され;
式中 n は、1、2、3、4、5、6、7および8から選択される整数であり、そして
式中R10およびR11は、それぞれ独立して、H、CO2H、C1-6アルキル、アミンおよびバニリン酸からなる群から選択される]
を有する、請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項13】
Xが酸素であり、R10 およびR11が水素であり、かつnが2である、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
XがNHであり、R10 およびR11が水素であり、かつnが2である請求項12に記載の化合物。
【請求項15】
エタン-1,2-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート)、プロパン-1,3-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート)、ブタン-1,4-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート)、ペンタン-1,5-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート)、ヘキサン-1,6-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート) からなる群から選択される、請求項13に記載の化合物。
【請求項16】
式(IV):
【化10】

[式中、Xは、O、O-C1-6アルキル、NHおよびN-C1-6アルキルからなる群から選択され;
式中p は、0、1、2または3から選択される整数であり;そして
式中R9は、OH、CO2H、NH2からなる群から選択され、qは、0、1、2または3から選択される整数である]
を有する、請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項17】
Xが酸素であり、pが2であり、qが0である、請求項14に記載の化合物。
【請求項18】
XがNHであり、pは2であり、qは0である、請求項14に記載の化合物。
【請求項19】
トランス-シクロヘキサン-1,2-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート);シス-シクロヘキサン-1,2-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート);ラセミのシクロヘキサン-1,3-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート);シス-シクロヘキサン-1,3-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート);トランス-シクロヘキサン-1,3-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート);シス-シクロヘキサン-1,4-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート);トランス-シクロヘキサン-1,4-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート);ラセミのシクロヘキサン-1,4-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート) からなる群から選択される、請求項17に記載の化合物。
【請求項20】
化合物が、トランス-シクロヘキサン-1,2-ジイル ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート)である、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
[2-[(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾイル)オキシメチル]フェニル]メチル 4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾエート、6-(3,4-ジメトキシベンゾイル)オキシヘキシル 3,4-ジメトキシベンゾエート、1,4-オキシブタ-2-エニル-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート)、1,4-オキシブタ-2-インイル ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート)、6-(3-ヒドロキシ-4-メトキシ-ベンゾイル)オキシヘキシル 3-ヒドロキシ-4-メトキシ-ベンゾエート、[3-[(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾイル)オキシメチル]フェニル]メチル 4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾエート、2-[ビス[2-(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾイル)オキシエチル]アミノ]エチル 4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾエートおよび[7-[(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾイル)オキシメチル]-2,6-ジメチル-3,5-ジオキソ-ピラゾロ[1,2-a]ピラゾール-1-イル]メチル 4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンゾエートからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項22】
式(V):
【化11】

[式中、Xは、O、O-C1-6アルキル、NHおよびN-C1-6アルキルからなる群から選択され;
式中R7は、H、CO2HまたはC1-6アルキルから選択される]
を有する、請求項1または4に記載の化合物。
【請求項23】
式 (IIa):
【化12】

[式中、Xは、O、O-C1-6アルキル、NH、N-C1-6アルキルからなる群から選択され;
式中各R1、R2、R3、R4、R5、R6は、H、OH、C1-8アルコキシC1-6アルキル、C1-6アルコキシおよびハロゲンからなる群から独立して選択され;それぞれの基は、それぞれ独立して、アミド、アミン、C1-6アルキル、CO2H、バニリン酸およびC1-6アルキルオキシカルボニルからなる群から選択される1つ、2つまたは3つの置換基で任意に置換されている;
式中 p は、0、1、2または3から選択される整数であり;そして
式中R9 は、OH、CO2H、NH2 からなる群から選択され;そして
式中 q は、0、1、2または3から選択される整数である]
を有する化合物。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか1つに記載の化合物および医薬的に許容な担体を含む医薬組成物。
【請求項25】
薬剤としての使用のための、請求項1〜23のいずれか1つに記載の化合物または請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
増殖性障害を治療するための、請求項1〜23のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項27】
請求項1〜23のいずれか1つに記載の化合物の治療的有効量または請求項24に記載の医薬品を、それらを必要とする患者に投与することを含む、そのような治療を必要とする患者における増殖性障害を治療する方法。
【請求項28】
請求項1〜23のいずれか1つに記載の化合物の治療的有効量または請求項24に記載の医薬品を、それらを必要とする患者に投与することを含む、そのような治療を必要とする患者における酸化的および炎症性障害を治療する方法。
【請求項29】
抗癌治療が、化学療法、放射線療法、免疫療法、および/または遺伝子治療からなる群から選択される癌療法のいずれかと組合わせて行われる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
請求項1〜23のいずれか1つに記載の化合物または請求項24に記載の医薬品を、1以上の活性化合物と組み合わせて、該化合物または医薬組成物の投与前、投与後または連続して投与される請求項27〜29のいずれか1つに記載の方法。
【請求項31】
請求項1〜23のいずれか1つに記載の組成物または請求項24に記載の医薬品が、経口的に、例えば、ピル、錠剤、ラッカーを塗った錠剤、糖衣錠、顆粒、硬および軟ゼラチンカプセル、水性、アルコール性もしくは油性溶液、シロップ、エマルジョンもしくは懸濁液の形態で、または直腸的、例えば坐薬の形態で、非経口的、例えば、皮下、筋肉内もしくは静脈内注射もしくは点滴のための溶液の形態で、経皮的または局所投与、例えば、軟膏、チンキ剤、スプレーもしくは経皮吸収治療システムで、または吸入投与、鼻腔噴霧もしくはエアゾール混合物であるか、あるいは例えば、マイクロカプセル、植込錠または杆状体として投与される、請求項27〜30のいずれか1つに記載の方法。
【請求項32】
増殖性障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、ピック病を治療するための物質、またはダウン症候群の症状を改善するための物質、Aurora A、BまたはCおよびDYRK1Aキナーゼの群から選択される1以上のキナーゼの活性を阻害する物質を識別し;上記の物質の存在下および非存在下における上記の1以上のキナーゼの活性を測定する方法(ここで、前記物質の存在下における酵素活性の減少は、阻害剤であることを示す)。
【請求項33】
物質が、請求項1〜23のいずれか1つに記載のジバニロイル誘導体である請求項32に記載の方法。
【請求項34】
増殖性障害、アルツハイマー病、パーキンソン病またはピック病を治療するため、またはダウン症候群の症状を改善するための、請求項1〜23のいずれか1つに記載の化合物。

【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【公表番号】特表2012−505855(P2012−505855A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531474(P2011−531474)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063369
【国際公開番号】WO2010/043631
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(511096042)ユニヴェルシテ リブレ ド ブリュッセル (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE LIBRE DE BRUXELLES
【住所又は居所原語表記】Avenue F.D. Roosevelt 50 CP161, B−1050 Bruxelles, BELGIUM
【Fターム(参考)】