説明

抗菌性材料及びその製造方法

【課題】水分や熱による変性が生じず、人体への影響も少なく、さらには透明性を有することにより様々な用途に使用することができる抗菌性材料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ガラス基板、プラスチックシート、プラスチックフィルム基板等の上に、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の手法で酸化亜鉛薄膜を形成させることを特徴とする抗菌性材料である。タッチパネルや携帯電話のプラスチック表面等への利用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸化亜鉛薄膜からなる抗菌性材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康志向や生活様式の変化に伴い,人体にとって有害な細菌の発育や増殖を阻止する抗菌性材料や殺菌剤(以下、抗菌性材料等と称す)の研究開発が活発化している。
一般的な抗菌性材料等としては有機系殺菌剤や無機系抗菌性材料を挙げることができる。例えば有機系殺菌剤としては四級アンモニウム塩やフェノール類等を挙げることができる。また、無機系抗菌性材料としては抗菌性がある銀イオンや銀ナノ微粒子をゼオライト、シリカゲル、水溶性ガラス、リン酸カルシウム、活性炭素等に担持した複合材料やハロゲン化銀に代表されるイオン性の銀化合物、光学活性を利用した酸化チタン等を挙げることができる。
これらの抗菌性材料等は有害な菌に対して有効に働くが、いくつかの問題を有する。例えば、有機系殺菌剤の場合は強い殺菌効果を有するが、人体への影響も大きく、安全性の面での問題が大きい。また、薬剤に対する耐性菌の出現に伴って、使用した有機系殺菌剤が有効に機能しないといった問題も有する。
一方、無機系抗菌性材料の場合には夫々以下のような問題を有する。銀イオンや銀ナノ粒子を用いた場合は、銀の希少価値が高いため、コストが向上するといった問題が生じる。またイオン性の銀化合物は光に弱く、光が当たると銀コロイドとなり、抗菌性能を失う。酸化チタンを用いた場合は、抗菌作用を発揮させるために光を照射する必要があり、暗所で使用できないといった問題が生じる。
【0003】
上記した問題に鑑み、下記特許文献1では、酸化亜鉛粒子が抗菌性を有することに着目して、酸化亜鉛粒子を膜中に分散含有させる技術が開示されている。酸化亜鉛粒子は、人体にとって安全性が高く、安価で、光の有無に関係なく強い抗菌力を有することができる。
【0004】
しかしながら、酸化亜鉛粒子を抗菌性材料として使用した場合でも、下記のような問題を有する。
まず、酸化亜鉛を粒子状にするため、水分の吸収や熱による変性が生じやすくなるという問題を有する。
また、酸化亜鉛を粒子状にするため、使用の過程で酸化亜鉛粒子が飛散する可能性もある。酸化亜鉛は人体に影響がないといわれているが、吸引による人体への影響を完全に否定することができるわけではなく、安全性が十分に確保できるとはいえない。
さらに、膜に透明性をもたせるためには、酸化亜鉛粒子の粒径を数10nm以下の超微粒子まで小さくしなければならず、コスト高となる。そのため、膜に透明性をもたせることが困難となり、使用用途が限定され、広く使用できないこととなっていた。
【0005】
【特許文献1】特開2007−250522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであり、水分や熱による変性が生じず、人体への影響も少なく、さらには透明性を有することにより様々な用途に使用することができる抗菌性材料及びその製造方法を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、酸化亜鉛薄膜からなることを特徴とする抗菌性材料に関する。
【0008】
請求項2に係る発明は、酸化亜鉛に対してドナーとなる元素がドーピングされていることを特徴とする請求項1記載の抗菌性材料に関する。
【0009】
請求項3に係る発明は、単位体積当たりの酸素原子(O)の空隙濃度より、前記酸化亜鉛に対してドナーとなる元素の濃度の方が大きいことを特徴とする請求項2記載の抗菌性材料に関する。
【0010】
請求項4に係る発明は、前記酸化亜鉛に対してドナーとなる元素が、Li、B、Al、Ga、In、Si、Snのうちいずれか1種以上であることを特徴とする請求項2又は3記載の抗菌性材料に関する。
【0011】
請求項5に係る発明は、前記酸化亜鉛薄膜の膜厚が50nm以上であることを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載の抗菌性材料に関する。
【0012】
請求項6に係る発明は、酸化亜鉛薄膜からなる抗菌性材料をイオンプレーティング法により成膜することを特徴とする抗菌性材料の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、抗菌性材料が酸化亜鉛薄膜からなることにより、酸化亜鉛粒子を用いた場合に比して熱や水分による変性に強い(耐熱性や耐湿性が高い)抗菌性材料とすることができる。さらに、酸化亜鉛薄膜は、酸化亜鉛粒子のように使用時に飛散することがなく、人が吸引することもないので安全性も向上させることができる。
また、酸化亜鉛薄膜は透明性と導電性を有するため、タッチパネルや携帯電話のプラスチック表面、窓ガラス表面、食品用容器の表面、医療機器や玩具等の表面へ成膜をすることで、抗菌性付加価値を有する製品としての利用が可能である。またプラスチックフィルム上へ抗菌性材料を成膜し、そのプラスチックフィルムの抗菌性材料とは反対側に接着層を設けることで、貼り付けが可能な抗菌性プラスチックフィルムとしても利用可能である。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、酸化亜鉛に対してドナーとなる元素がドーピングされていることにより、抗菌性材料の抵抗を低くすることができ、導電性を高くすることができる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、単位体積当たりの酸素原子(O)の空隙濃度より、前記酸化亜鉛に対してドナーとなる元素の濃度の方が大きいことにより、抗菌性材料全体を安定させることができる。それにより、抗菌効果をより高めることができる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、酸化亜鉛に対してドナーとなる元素が、Li、B、Al、Ga、In、Sn、Siのうちいずれか1種以上であることにより、抗菌性材料の抵抗を好適に低下させることができる。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、前記酸化亜鉛薄膜の膜厚が50nm以上であることにより、耐熱性や耐湿性を強化することができる。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、酸化亜鉛薄膜からなる抗菌性材料をイオンプレーティング法により成膜することにより、抗菌性材料の表面を平滑にすることができるので、ごみ等の付着による抗菌効果の低下を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る抗菌性材料の実施形態について説明する。
本実施形態に係る抗菌性材料は酸化亜鉛薄膜からなる。なお、ここでいう酸化亜鉛薄膜とは、ガラス基板、プラスチックシート、プラスチックフィルム基板等の上に真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の手法を用いて成膜された酸化亜鉛の原子層のことである。
【0020】
本実施形態の抗菌性材料は酸化亜鉛薄膜であり、大腸菌及び黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性値が2.0以上である。そのため、十分な抗菌効果を得ることができる。
さらに、本実施形態の抗菌性材料は、酸化亜鉛薄膜からなるため、透明性と導電性を有する。そのため、様々な用途に使用することができる。例えば、タッチパネルや携帯電話のプラスチック表面、窓ガラス表面、食品用容器の表面、医療機器や玩具等の表面へ成膜をすることで、抗菌性付加価値を有する製品としての利用が可能である。またプラスチックフィルム上へ抗菌性材料を成膜し、そのプラスチックフィルムの抗菌性材料とは反対側に接着層を設けることで、貼り付け可能な抗菌性プラスチックフィルムとしても利用が可能である。また、本実施形態に係る抗菌性材料は光を必要としないため、病院等において、暗い状況でも抗菌性を発揮することが可能であり、環境浄化やエネルギー消費の観点からも好ましい。
【0021】
また、抗菌性材料には酸化亜鉛に対してドナーとなる元素がドーピングされていることが好ましい。それにより、抗菌性材料(酸化亜鉛薄膜)の導電性を向上させることができ、利用用途が広がるからである。酸化亜鉛に対してドナーとなる元素としてはLi、B、Al、Ga、In、Sn、Si等を挙げることができ、これらの元素のうち1種以上を抗菌性材料にドーピングすることができる。
【0022】
また、酸化亜鉛に対してドナーとなる元素をドーピングした場合、体積当たりの酸素原子(O)の空隙濃度より、ドナーとなる元素の濃度の方が大きいことが好ましい。マイナスの電荷をもつ酸素イオンにとって、その酸素イオンを引力で安定化させるプラスの陽イオンの荷数が大きいことにより安定化するからである(クーロンの法則より)。ドナーとなる元素は、酸化亜鉛薄膜内で電子キャリアを出したときには、酸素イオンの周囲にあるプラスの電荷をもつ亜鉛イオン(荷数はプラス2)よりも荷数は大きくなる。例えば、B、Al、Ga、Inの荷数はプラス3であり、Sn、Siの荷数はプラス4となる。大きな荷数をもつドナーがドーピングされることより、酸素が安定化し、さらには薄膜全体が熱に対しても、湿度に対しても安定化され、抗菌性材料全体を安定させることができ、それにより抗菌効果を確実に発揮することができる。具体的には、ドナーとなる元素としてGaを用いたとき、1cm当たりの亜鉛原子(Zn)の濃度が1022オーダー、酸素欠損(O)の濃度が1019〜1020オーダー、ガリウム原子(Ga)の濃度が1020〜1021オーダーとなるように調整すればよい(酸化亜鉛薄膜の濃度は全体で1022オーダー)。
【0023】
また、本実施形態の抗菌性材料は薄膜化されているため、酸化亜鉛粒子に比して、体積に対する表面積の割合が小さくなる。これは基本的に外気にさらされる割合が小さいことを意味し、その結果、耐熱性や耐湿性が高くなる。また、耐熱性や耐湿性が高いことにより、様々な用途で利用することができる。ここで、抗菌性材料の膜厚は50nm以上であることが好ましい。50nm以上であることにより、耐熱性や耐湿性を強化することができる。また、抗菌性材料の生産性を考慮すると、100nm〜500nmであることがさらに好ましい。
加えて、抗菌性材料は酸化亜鉛が薄膜化されていることにより、酸化亜鉛粒子のように使用時に飛散することがなく、人が吸引することもないので安全性も高くなる。
【0024】
次いで、本実施形態の抗菌性材料(酸化亜鉛薄膜)の製造方法について説明する。本実施形態に係る抗菌性材料の成膜方法は特に限定されないが、イオンプレーティング法が好ましい。イオンプレーティング法とは、酸化亜鉛焼結体を電子ビーム、抵抗加熱、アークプラズマ等で昇華し、さらにその蒸発粒子を電子ビームやアークプラズマ等でイオン化し、電界で加速して基板表面に衝突させて被膜を成膜する方法である。イオンプレーティング法を用いることにより、例えば従来のスパッタリング法に比べて、基板に向かう粒子の持つ運動エネルギーを小さくすることができる。そのため、粒子が基板や基板に成膜される抗菌性材料薄膜表面に衝突するとき、基板や抗菌性材料薄膜に与えるダメージを小さくすることができ、抗菌性材料を結晶性が良好で且つ表面が平滑な膜とすることができる。表面を平滑にすることにより、抗菌性材料が空気中のごみ等を吸着して抗菌性が低下することを防ぐことができる。具体的には、イオンプレーティング法を用いることにより、平均表面粗さ(Ra)を0.5nm〜5nm程度に抑えることができる。
以下、イオンプレーティング法の一種である反応性プラズマ蒸着法について説明する。
【0025】
図1は、反応性プラズマ蒸着法により抗菌性材料(酸化亜鉛薄膜)を成膜するための成膜装置(100)を示す図である。
成膜装置(100)は、チャンバー(10)内に基板(1)、圧力勾配型プラズマガン(2)、ヒーター(3)、ハース(4)を有する。そして、ハース(4)に酸化亜鉛からなる蒸発材料(5)を設置する。
【0026】
チャンバー(10)には、圧力調整バルブ(図示せず)が設けられており、該バルブを介して高真空排気ポンプに接続される。そして、高真空排気ポンプがチャンバー(10)内を高真空状態にする。高真空排気ポンプとしては、例えばターボ分子ポンプやクライオポンプを例示することができる。チャンバー(10)を高真空に排気した後、プラズマの原料となる反応性ガス(原料ガス)が導入され、圧力調整バルブによりチャンバー(10)内を所定の圧力に維持する。反応性ガスとしてはアルゴン(Ar)と酸素(O)の混合ガスを挙げることができる。
【0027】
その後、基板(1)をヒーター(3)で加熱し、基板(1)を一定の速度(具体的には、
0〜40mm/秒)で搬送する。基板(1)を搬送することで、基板(1)上に均一な膜を成膜することができる。
【0028】
また、基板(1)を搬送している際、圧力勾配型プラズマガン(2)により、チャンバー(10)内にプラズマビームを供給する。そして、蒸発材料(5)である酸化亜鉛の周囲に設けたビーム修正装置(6)により該プラズマビームを蒸発材料(5)に集中させて、蒸発材料(5)を蒸発、イオン化させる。
具体的には、ビーム修正装置(6)としてマグネットリングを用い、磁場を発生することにより、圧力勾配型プラズマガン(2)から発生したプラズマを蒸発材料(5)の直上に入射するように調節し、そのプラズマ熱で蒸発材料(5)を蒸発、イオン化させる。
【0029】
そして、チャンバー(10)内に電界を生じさせることにより、イオン化した蒸発材料(酸化亜鉛)(5)が基板(1)上に成膜される。
【0030】
また、酸化亜鉛薄膜には酸化亜鉛に対してドナーとなる元素をドーピングすることが好ましい。それにより、酸化亜鉛薄膜の導電性を向上させることができ、利用用途が広がるからである。酸化亜鉛に対してドナーとなる元素としてはLi、B、Al、Ga、In、Sn、Si等を挙げることができ、これらの元素のうち1種以上を抗菌性材料にドーピングすることができる。酸化亜鉛に対してドナーとなる元素をドーピングする場合、蒸発材料(5)に当該元素のもととなる物質を混在させておく。例えば、Gaをドーピングする場合、Gaを1〜13重量%混在させておけばよい。
【0031】
また、酸化亜鉛に対してドナーとなる元素をドーピングした場合、成膜される抗菌性材料は、体積当たりの酸素原子(O)の欠損濃度より、ドナーとなる元素の濃度の方が大きいことが好ましい。それにより、抗菌性材料全体を安定させることができ、抗菌効果を確実に発揮することができるからである。この場合、亜鉛原子、酸素欠損、ガリウム原子の比率は、蒸発材料(5)の亜鉛、酸素、ガリウムの比率を変更する、あるいは成膜中にチャンバー(10)内に導入する酸素ガスの流量を変化させることにより調整することができる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の実施例について説明することで、本発明の効果をより明確なものとする。但し、本発明は本実施例に何ら限定されるものではない。
【0033】
本実施例では、抗菌性材料である酸化亜鉛薄膜を成膜した無アルカリガラス(HOYA NA35、厚み0.7mm、両面研磨)についてJIS Z 2801:2000「抗菌加工製品−抗菌性試験方法・抗菌効果」に準拠して抗菌力試験を行った。
具体的には、実施例1としてGaをドーピングしていない酸化亜鉛薄膜を成膜した無アルカリガラス、実施例2としてGaを4wt%ドーピングした酸化亜鉛薄膜を成膜した無アルカリガラスを用いた。また、比較例1として酸化亜鉛薄膜を成膜していない無アルカリガラス(HOYA NA35、厚み0.7mm、両面研磨)を用いた。
【0034】
また、実施例1,2における酸化亜鉛薄膜の成膜は、図1に示す成膜装置(100)により行った。
具体的には、実施例1では真空度1.42×10−4Paまで、実施例2では真空度1.96×10−4Paまでに真空引きしたチャンバー(10)内に無アルカリガラスからなる基板(1)を設置し、その後、基板(1)をヒーター(3)で200℃に上昇させ、2.3mm/秒の速度で基板(1)を搬送した。なお、この際、基板の温度は200℃とするために、ヒーター(3)自体の温度は300℃まで上昇させた。また、圧力勾配型プラズマガン(2)から供給されるプラズマとしては直流アークプラズマを用いた。
表1に、実施例1,2の成膜パラメータをまとめた。
なお、表1中の膜厚は、段差計、X線回折による反射特性、光干渉現象を利用した測定法の三つの異なる方法で測定し、クロスチェックを行った。シート抵抗はJIS K7194に準拠し、エヌピイエス株式会社製の抵抗率測定器Σ−5(測定方式:四端子四探針法定電流印加方式、測定レンジ:1.000mΩ/□〜5000.0kΩ/□)を用いて測定した。
また、表1の結果を得るための測定は、サンプルサイズ120mm×65mmの無アルカリガラスを用いて行った。
【0035】
【表1】

【0036】
表1より、Gaをドーピングすることにより、シート抵抗が下がり、抗菌性材料の導電性が向上することが分かる。
【0037】
次いで、上記した実施例1,2及び比較例1の無アルカリガラス上で菌を培養し、抗菌性能試験を行った。以下、抗菌性能試験の方法について説明する。
まず、50±2mm角の無アルカリガラス(実施例1,2では酸化亜鉛薄膜を成膜したもの)の表面に菌液0.4ml(1×10〜4×10の菌数)を滴下した。
ここで、菌液としては、大腸菌(Escherichia coli IFO3972)及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus IFO12732)を用いた。また、菌液調製溶液としては、1/500NB培地(NB培地(ペプトン1%、肉エキス0.3%、食塩0.5%)を精製水で500倍に希釈しpH6.8〜7.2に調整した溶液)を用いた。
菌液滴下後、菌液の上を40±2mm角のポリエチレンフィルムで覆い、温度35±1℃、相対湿度(RH)90%の条件下で24時間保存した。
そして、24時間保存後の実施例1,2及び比較例1の生菌数を測定した。このときの測定方法としては、標準寒天培地を使用した平板培養法(35±1℃、40〜48時間培養)を用いて行った。
また、菌液滴下直後にも無加工試料の生菌数を測定した。
なお、表2に本実施例における試験データをまとめた。
【0038】
【表2】

【0039】
上記方法により得られた試験結果を表3,4に示す。表3は培養後の菌数を示した表であり、表4は実施例1,2における抗菌活性値を示した表である。なお、表4における抗菌活性値は、Bを比較例1の24時間培養後の生菌数の平均値、Cを実施例1又は実施例2の24時間培養後の生菌数の平均値とした場合、log(B/C)で算出することができる。また、抗菌活性値2.0以上が抗菌効果を有すると判断できる。
また、接種直後又は培養後の生菌数測定プレートの写真を図2〜9に示した。具体的には図2が大腸菌接種直後の比較例1のプレートを示した写真、図3が大腸菌培養後の実施例1のプレートを示した写真、図4が大腸菌培養後の実施例2のプレートを示した写真、図5が大腸菌培養後の比較例1のプレートを示した写真、図6が黄色ブドウ球菌接種直後の比較例1のプレートを示した写真、図7が黄色ブドウ球菌培養後の実施例1のプレートを示した写真、図8が黄色ブドウ球菌培養後の実施例2のプレートを示した写真、図9が黄色ブドウ球菌培養後の比較例1のプレートを示した写真である。
【0040】
【表3】

【0041】
【表4】

【0042】
表3に示す如く、酸化亜鉛薄膜を成膜した無アルカリガラスでは、24時間培養後、大腸菌、黄色ブドウ球菌ともに菌数が大幅に減少(5桁ほどの減少)するという結果を得た。また、表4に示す如く、実施例1,2とも大腸菌及び黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性値が2.0以上を示し、十分高い値となった。
このことからも、本発明に係る抗菌性材料(酸化亜鉛薄膜)が十分な抗菌性を有することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係る酸化亜鉛薄膜は、タッチパネルや携帯電話のプラスチック表面、窓ガラス表面、食品用容器の表面、医療機器や玩具等の表面への成膜をすることで、抗菌性付加価値を有する製品としての利用が可能である。またプラスチックフィルム上への成膜を行い、そのプラスチックフィルム反対側に接着層を設け、貼り付けが可能とする抗菌性プラスチックフィルムとしても利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】反応性プラズマ蒸着法により、抗菌性材料(酸化亜鉛薄膜)を成膜するための装置を示した図である。
【図2】大腸菌接種直後の比較例1のプレートを示した写真である。
【図3】大腸菌培養後の実施例1のプレートを示した写真である。
【図4】大腸菌培養後の実施例2のプレートを示した写真である。
【図5】大腸菌培養後の比較例1のプレートを示した写真である。
【図6】黄色ブドウ球菌接種直後の比較例1のプレートを示した写真である。
【図7】黄色ブドウ球菌培養後の実施例1のプレートを示した写真である。
【図8】黄色ブドウ球菌培養後の実施例2のプレートを示した写真である。
【図9】黄色ブドウ球菌培養後の比較例1のプレートを示した写真である。
【符号の説明】
【0045】
1 基板
2 圧力勾配型プラズマガン
3 ヒーター
4 ハース
5 蒸着材料
6 ビーム修正装置
10 チャンバー
100 成膜装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化亜鉛薄膜からなることを特徴とする抗菌性材料。
【請求項2】
酸化亜鉛に対してドナーとなる元素がドーピングされていることを特徴とする請求項1記載の抗菌性材料。
【請求項3】
単位体積当たりの酸素原子(O)の空隙濃度より、前記酸化亜鉛に対してドナーとなる元素の濃度の方が大きいことを特徴とする請求項2記載の抗菌性材料。
【請求項4】
前記酸化亜鉛に対してドナーとなる元素が、Li、B、Al、Ga、In、Si、Snのうちいずれか1種以上であることを特徴とする請求項2又は3記載の抗菌性材料。
【請求項5】
前記酸化亜鉛薄膜の膜厚が50nm以上であることを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載の抗菌性材料。
【請求項6】
酸化亜鉛薄膜からなる抗菌性材料をイオンプレーティング法により成膜することを特徴とする抗菌性材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−143841(P2009−143841A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322624(P2007−322624)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)経済産業省四国経済産業局、平成19年度地域新生コンソーシアム研究開発事業(酸化亜鉛技術をベースとした多機能ハイブリッド部材の設計的創出)に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(508235623)株式会社ZnOラボ (2)
【Fターム(参考)】