説明

抗酸化剤及び肝機能障害抑制剤

【課題】
米由来ペプチドの新たな用途を提供する。
【解決手段】
Thr−Trp、Ile−Trp、Pro−Tyr、Val−Tyr、Asn−Trp、Phe−Phe、Arg−Phe、Phe−Trp、Gln−Trp、Ser−Trp、Ile−Lys−Tyr、Leu−Lys−Tyr、Leu−Gln−Pro、Ile−Tyr−Pro、Phe−Pro−Pro、Ile−Tyr−Pro−Arg−Tyr、Val−Arg−Tyr、Val−Arg−Pro、及び/又はTyr−Lys−Pro、Tyr−Gly−Gly−Tyrを含む肝機能障害抑制剤。Thr−Trp、Ile−Trp、Pro−Tyr、Val−Tyr、Asn−Trp、Phe−Phe、Ile−Tyr、Arg−Phe、Phe−Trp、Gln−Trp、Ser−Trp、Ile−Lys−Tyr、及び/又はLeu−Lys−Tyrを含む抗酸化剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米由来のペプチドを含む抗酸化剤、酸化防止方法、肝機能障害抑制剤、及び食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
酒粕は、蒸米に麹及び酵母を作用させて得られるものであり、麹菌や酵母の生産する酵素により米の糖類が分解されて高分子化合物としてタンパク質やペプチドが高比率で含まれている。これらのタンパク質やペプチドをプロテアーゼ処理して得られる低分子量のペプチドは種々の有用な生理活性を有することが期待される。また、酒粕の糖類はある程度分解されているため、酒粕をプロテアーゼ処理して得られる処理物中のペプチドは単離、精製が容易である。
例えば、特許文献1には酒粕を原料とした新規なアンギオテンシン変換酵素阻害剤が開示されている。また特許文献2には米タンパクのタンパク質分解酵素分解物として酒粕を用いたACE阻害用経口摂取物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3054462号
【特許文献2】特許第3414761号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、米由来ペプチドの新たな用途を提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行い、以下の知見を得た。
(i) 酒粕、米焼酎粕、加熱米、及び糠からなる群より選ばれる少なくとも1種の原料をプロテアーゼ処理して得られるペプチド混合物は、肝機能障害抑制活性、及び抗酸化活性を併せ持つ。
(ii) 上記混合物中に含まれるThr−Trp、Ile−Trp、Pro−Tyr、Val−Tyr、Asn−Trp、Phe−Phe、Arg−Phe、Phe−Trp、Gln−Trp、Ser−Trp、Ile−Lys−Tyr、及びLeu−Lys−Tyrの各ペプチドは、肝機能障害抑制活性、及び抗酸化活性を併せ持つ。
(iii) 上記混合物中に含まれるIle−Tyrのペプチドは、抗酸化活性を有する。
(iv) 上記混合物中に含まれるLeu−Gln−Pro、Ile−Tyr−Pro、Phe−Pro−Pro、Ile−Tyr−Pro−Arg−Tyr、Val−Arg−Tyr、Val−Arg−Pro、及びTyr−Lys−Pro、Tyr−Gly−Gly−Tyrの各ペプチドは肝機能障害抑制活性を有する。
【0006】
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、以下の肝機能障害抑制剤、抗酸化剤、酸化防止方法、及び食品組成物を提供する。
項1. Thr−Trp、Ile−Trp、Pro−Tyr、Val−Tyr、Asn−Trp、Phe−Phe、Arg−Phe、Phe−Trp、Gln−Trp、Ser−Trp、Ile−Lys−Tyr、Leu−Lys−Tyr、Leu−Gln−Pro、Ile−Tyr−Pro、Phe−Pro−Pro、Ile−Tyr−Pro−Arg−Tyr、Val−Arg−Tyr、Val−Arg−Pro、及びTyr−Lys−Pro、Tyr−Gly−Gly−Tyrからなる群より選ばれる少なくとも1種のペプチドを含む肝機能障害抑制剤。
項2. 酒粕、米焼酎粕、加熱米、及び糠からなる群より選ばれる少なくとも1種の米原料をプロテアーゼ処理する工程を含む方法により得られるペプチド混合物を含む肝機能障害抑制剤。
項3. 米原料が液化粕である項2に記載の肝機能障害抑制剤。
項4. 肝機能障害が、アルコール性肝障害、ウィルス性肝障害、薬物性肝障害、自己免疫低下による肝障害、自己免疫疾患による肝障害、慢性又は急性肝炎、アルコール性脂肪肝、胆石、肝硬変、胆道癌、及び肝臓癌からなる群より選ばれるものである、項1〜3のいずれかに記載の肝機能障害抑制剤。
項5. Thr−Trp、Ile−Trp、Pro−Tyr、Val−Tyr、Asn−Trp、Phe−Phe、Ile−Tyr、Arg−Phe、Phe−Trp、Gln−Trp、Ser−Trp、Ile−Lys−Tyr、及びLeu−Lys−Tyrからなる群より選ばれる少なくとも1種のペプチドを含む抗酸化剤。
項6. 酒粕、米焼酎粕、加熱米、及び糠からなる群より選ばれる少なくとも1種の米原料をプロテアーゼ処理する工程を含む方法により得られるペプチド混合物を含む抗酸化剤。
項7. 米原料が液化粕である項6に記載の抗酸化剤。
項8. Thr−Trp、Ile−Trp、Pro−Tyr、Val−Tyr、Asn−Trp、Phe−Phe、Ile−Tyr、Arg−Phe、Phe−Trp、Gln−Trp、Ser−Trp、Ile−Lys−Tyr、及びLeu−Lys−Tyrからなる群より選ばれる少なくとも1種のペプチドを医薬品、食品、又は化粧品に添加する工程を含む、医薬品、食品、又は化粧品の酸化防止方法。
項9. 酒粕、米焼酎粕、加熱米、及び糠からなる群より選ばれる少なくとも1種の米原料をプロテアーゼ処理する工程を含む方法により得られるペプチド混合物を医薬品、食品、又は化粧品に添加する工程を含む、医薬品、食品、又は化粧品の酸化防止方法。
項10. 米原料が液化粕である項9に記載の医薬品、食品、又は化粧品の酸化防止方法。
項11. 酒粕、米焼酎粕、加熱米、及び糠からなる群より選ばれる少なくとも1種の米原料をプロテアーゼ処理する工程を含む方法により得られるペプチド混合物を0.001〜100重量%含む食品組成物。
項12. 米原料が液化粕である項11に記載の食品組成物。
項13. Thr−Trp、Ile−Trp、Pro−Tyr、Val−Tyr、Asn−Trp、Phe−Phe、Ile−Tyr、Arg−Phe、Phe−Trp、Gln−Trp、Ser−Trp、Ile−Lys−Tyr、Leu−Lys−Tyr、Leu−Gln−Pro、Ile−Tyr−Pro、Phe−Pro−Pro、Ile−Tyr−Pro−Arg−Tyr、Val−Arg−Tyr、Val−Arg−Pro、及びTyr−Lys−Pro、Tyr−Gly−Gly−Tyrからなる群より選ばれる少なくとも1種のペプチドを0.001〜100重量%含む食品組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明により米由来のペプチドからなる新規な肝機能障害抑制剤、及び抗酸化剤が提供された。このペプチドは、酒粕、米焼酎粕、加熱米、又は/及び糠をプロテアーゼ処理することにより得ることができる。このように、本発明で使用するペプチドは米由来であるため、摂取しすぎても人体に害はなく、また長期継続摂取による副作用の心配もない。よって、本発明で使用するペプチドは副作用や過剰摂取を気にすることなく安心して長期間服用できる。また、本発明で使用するペプチドは、清酒製造の副産物である粕や、産業廃棄物となる糠などから製造できる点でも有用である。
【0008】
Thr−Trp、Ile−Trp、Pro−Tyr、Val−Tyr、Asn−Trp、Phe−Phe、Arg−Phe、Phe−Trp、Gln−Trp、Ser−Trp、Ile−Lys−Tyr、Leu−Lys−Tyr、Leu−Gln−Pro、Ile−Tyr−Pro、Phe−Pro−Pro、Ile−Tyr−Pro−Arg−Tyr、Val−Arg−Tyr、Val−Arg−Pro、及びTyr−Lys−Pro、Tyr−Gly−Gly−Tyrの各ペプチドは、肝機能障害から肝細胞を保護するため、アルコール性肝障害、ウィルス性肝障害、薬物性肝障害、自己免疫低下による肝障害、自己免疫疾患による肝障害、慢性又は急性肝炎、アルコール性脂肪肝、胆石、肝硬変、胆道癌、肝臓癌などのあらゆる肝機能障害ないしは肝臓疾患の抑制剤、予防、緩和、又は治療剤の有効成分として有用である。
また、Thr−Trp、Ile−Trp、Pro−Tyr、Val−Tyr、Asn−Trp、Phe−Phe、Ile−Tyr、Arg−Phe、Phe−Trp、Gln−Trp、Ser−Trp、Ile−Lys−Tyr、及びLeu−Lys−Tyrの各ペプチドは、脂質などの物質の酸化防止や活性酸素の除去などの酸化抑制活性を有することから酸化防止剤の有効成分として好適である。活性酸素の発生はあらゆる疾患の一因となり、また疾患を助長することから上記のペプチドは各種の医薬品や機能性食品の有効成分として好適に使用できる。さらに、本発明のペプチドは、食品由来の安全なペプチドであることから、医薬品、食品、化粧品などに添加してそれらの酸化を防止する目的でも好適に使用できる。
上記の各ペプチドは、酒粕、米焼酎粕、加熱米、又は/及び糠をプロテアーゼ処理して得られる処理物ごと使用しても同様に肝機能障害抑制活性や、抗酸化活性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】肝障害モデルマウスに対する、酒粕ペプチドの血清GOT・GPT値低下作用を示すグラフである(4週間摂取)。
【図2】肝障害モデルマウスに対する、酒粕ペプチドの血清GOT・GPT値低下作用を示すグラフである(6週間摂取)。
【図3】肝障害モデルマウスに対する、酒粕ペプチドの血清LDH値低下作用を示すグラフである(4週間摂取)。
【図4】肝障害モデルマウスに対する、酒粕ペプチドの血清LDH値低下作用を示すグラフである(6週間摂取)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。先ず、本発明で使用するペプチドについて説明し、次いで、これらのペプチドの用途を説明する。
(I)ペプチド
本発明では、Thr−Trp、Ile−Trp、Pro−Tyr、Val−Tyr、Asn−Trp、Phe−Phe、Ile−Tyr、Arg−Phe、Phe−Trp、Gln−Trp、Ser−Trp、Ile−Lys−Tyr、Leu−Lys−Tyr、Leu−Gln−Pro、Ile−Tyr−Pro、Phe−Pro−Pro、Ile−Tyr−Pro−Arg−Tyr(配列番号1)、Val−Arg−Tyr、Val−Arg−Pro、及びTyr−Lys−Pro、Tyr−Gly−Gly−Tyr(配列番号2)を有効成分として使用する。
これらのペプチドは、化学合成することができる。また、酒粕、米焼酎粕、加熱米、及び/又は糠の米原料をプロテアーゼ処理する工程を含む方法によっても得ることができる。本発明の肝機能障害抑制剤及び抗酸化剤では、上記米原料をプロテアーゼ処理して得られるペプチド混合物をそのまま有効成分として使用することもできる。このペプチド混合物は、好ましくは、上記米原料にセルラーゼを作用させる第1工程と、第1工程により得られる混合物から液体画分を除去する第2工程と、第2工程により得られる固形分に中性プロテアーゼ及び/又は酸性プロテアーゼを作用させる第3工程とを含む方法により得ることができる。
【0011】
米原料
米原料としては、米由来のタンパク質加水分解物が用いられる。具体的には酒粕、米焼酎粕、加熱米、及び/又は精米するときに出る糠が使用される。中でも、夾雑物である糖質が少なくタンパク質が多く含まれる点や、酒類製造の副産物であり入手し易い点で、酒粕及び米焼酎粕が好ましく、酒粕がより好ましい。酒粕は、蒸米、米麹から醸造した場合の酒粕でも、液化した米、米麹を用いる液化仕込みによって醸造した場合の液化粕でもどちらでもよい。特に、液化粕は、タンパク質含量が多く夾雑物も少ないため有効成分が濃縮されている点で、好ましい。
【0012】
第1工程
第1工程は、上記原料にセルラーゼを作用させる工程である。セルラーゼは公知のセルラーゼを制限なく使用できる。セルラーゼには、セルロース鎖をランダムに切断するエンドグルカナーゼと、セルロースの還元末端から切断してセルビオースを生成するセロビオヒドロラーゼとが含まれる。いずれを使用してもよいが両者を併用することにより、効率よくセルロースを分解することができる。
また、セルラーゼの由来は特に限定されないが、本発明方法の原料に対して機能し易い点で、トリコデルマ属菌由来のセルラーゼが好ましい。
セルラーゼの使用量は、原料(酒粕、米焼酎粕、加熱米、及び/又は糠)に対して約0.005〜0.2重量%が好ましく、約0.05〜0.1重量%がより好ましい。上記範囲であれば、実用的な時間内にセルロースが十分に分解されて液体画分に可溶化される。また、反応温度と反応時間は使用する原料とセルラーゼの種類によって異なるが、反応温度は約40〜60℃が好ましく、反応時間は約2〜20時間が好ましい。また、反応時のpHは酵素が機能し易い約3.5〜6が好ましい。上記範囲であれば、セルラーゼが失活することなく、かつその機能を十分に発揮できる。セルラーゼによる反応は、必ずしも停止させなくてもよいが、反応混合物を例えば約80〜90℃で約30〜60分間加熱することにより停止させることができる。
【0013】
第1工程では夾雑物である糖質を除去するために、さらにアミラーゼを使用することができる。アミラーゼとはデンプンを加水分解する酵素の総称であり、アミラーゼとしては、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼなどが挙げられる。アミラーゼは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。中でも、β−アミラーゼ、α−アミラーゼ、及びα−グルコシダーゼが好ましく、β−アミラーゼがより好ましく、小麦由来のβ−アミラーゼがさらにより好ましい。
アミラーゼの使用量は、原料(酒粕、米焼酎粕、加熱米、及び/又は糠)に対して約0.005〜0.2重量%が好ましく、約0.05〜0.1重量%がより好ましい。上記範囲であれば、実用的な時間内に糖質が十分に可溶化される。反応温度と反応時間は使用する原料及び酵素の種類によって異なるが、反応温度は約50〜60℃が好ましく、反応時間は約5〜20時間が好ましい。アミラーゼによる反応は、必ずしも停止させなくてもよいが、反応混合物を例えば約80〜90℃で約30〜60分間加熱することにより停止させることができる。反応時のpHは酵素が機能し易い約5〜6が好ましい。
【0014】
第2工程
第2工程は、上記第1工程により得られる混合物から液体画分を除去する工程である。この工程により低分子化された糖質をはじめ、主に水溶性成分が除去される。固液分離の方法としては、圧搾、ろ過、遠心分離などが挙げられるが、ある程度の水分が除去できればよい。この工程により米由来のタンパク質を多く含む固形分が得られる。
【0015】
第3工程
第3工程は、上記第2工程で得られた固形分にプロテアーゼを作用させる工程である。この工程では、原料中のタンパク質から有効成分となるペプチドを得るためにプロテアーゼを使用する。この工程により米由来のタンパク質からACE阻害活性を有するペプチド混合物が生成する。
本発明方法では、プロテアーゼとして、中性プロテアーゼと酸性プロテアーゼを単独で使用、又は併用する。各プロテアーゼの由来は特に限定されない。バチルス属細菌由来、アスペルギルス属菌由来、リゾプス属菌由来のプロテアーゼなどが知られているが、中でも、バチルス属細菌由来の中性プロテアーゼとアスペルギルス属菌由来の酸性プロテアーゼが好ましい。本発明において用いられるプロテアーゼはエンド型でもエキソ型でも、どちらでも良いが、目的とするペプチドがさらに断片化されないためにはエンド型が好ましい。中性プロテアーゼは1種を単独で使用しても良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。酸性プロテアーゼも同様に1種を単独で使用しても良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0016】
プロテアーゼの使用量は、中性プロテアーゼも酸性プロテアーゼも、それぞれ第2工程後に得られる混合物、即ち糖質分解後の圧搾物に対して約0.1〜0.8重量%が好ましく、約0.3〜0.6重量%がより好ましい。上記範囲であれば、実用的な時間内に原料中のタンパク質を、肝機能障害抑制活性及び/又は抗酸化活性を有するペプチド(以下、「活性ペプチド」ということがある)にまで分解できる。
【0017】
反応温度と反応時間は使用する酵素の種類によって異なるが、中性プロテアーゼの場合は、反応温度は約40〜60℃が好ましく、反応時間は約5〜20時間が好ましい。また、酸性プロテアーゼの場合は、反応温度は約50〜60℃が好ましく、反応時間は約5〜20時間が好ましい。各プロテアーゼによる反応は、反応混合物を例えば約80〜100℃で約10〜30分間加熱することにより停止させればよい。プロテアーゼによる反応を停止させることにより、切り出された活性ペプチドがさらに分解されて、阻害活性が低下することが回避される。または、活性ペプチド以外の夾雑ペプチドが切り出されることによる、活性ペプチドの純度の低下を防止できる。
反応時のpHは、中性プロテアーゼの場合、約6〜9が好ましく、酸性プロテアーゼの場合、約3〜5が好ましい。上記範囲であれば、各プロテアーゼが機能し易い。
中性プロテアーゼと酸性プロテアーゼは、それぞれ単独で作用させてもよく、併用しても良い。併用する場合は、いずれを先に反応させてもよいが、より活性の強いペプチド混合物を得ることができる点で、中性プロテアーゼを先に反応させるのが好ましい。また、両プロテアーゼが機能するpHが重複する場合は、同時に反応させてもよい。
【0018】
上記第3工程で得られた混合物から固形分を除去してもよい。これにより、固体の夾雑物が除去されて、活性ペプチドが溶解した液体画分を得ることができる。固体分の除去は、例えば圧搾、ろ過、遠心分離等により行うことができる。この液体画分は、そのまま食品に添加する、あるいは医薬品の有効成分として用いることができる。
さらに、この液体画分を濃縮したり、乾燥させて粉末化したりすることも出来る。これにより、より長期間保存が可能で、加工しやすいペプチド混合物を得ることができる。
さらに、この混合物から、各種クロマトグラフィーにより目的ペプチドを単離すればよい。
【0019】
(II)肝機能障害抑制剤
本発明の肝機能障害抑制剤は、酒粕、米焼酎粕、加熱米、及び糠からなる群より選ばれる少なくとも1種の米原料をプロテアーゼ処理する工程を含む方法により得られるペプチド混合物、又はThr−Trp、Ile−Trp、Pro−Tyr、Val−Tyr、Asn−Trp、Phe−Phe、Arg−Phe、Phe−Trp、Gln−Trp、Ser−Trp、Ile−Lys−Tyr、Leu−Lys−Tyr、Leu−Gln−Pro、Ile−Tyr−Pro、Phe−Pro−Pro、Ile−Tyr−Pro−Arg−Tyr、Val−Arg−Tyr、Val−Arg−Pro、及びTyr−Lys−Pro、Tyr−Gly−Gly−Tyrからなる群より選ばれる少なくとも1種のペプチドを有効成分として含む。ペプチドは、Arg−Phe、Gln−Trp、Ile−Lys−Tyr、Ile−Tyr−Pro、Phe−Pro−Proが好ましく、Arg−Phe、Gln−Trp、Phe−Pro−Proがより好ましい。
肝機能障害の種類は特に限定されず、アルコール性肝障害、ウィルス性肝障害、薬物性肝障害、自己免疫の低下による肝障害などのあらゆる肝機能障害を対象とすることができる。
肝機能の障害は、例えば血中のアスパラギン酸アミノ基転移酵素(GOT)、グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT)、アルカリ性フォスファターゼ、γ−グルタミルトランスペプチダーゼ、総ビリルビン、乳酸脱水素酵素(LDH)の増加または総蛋白質およびアルブミン量、コリンエステラーゼ活性の変化を指標に知ることができる。本発明のペプチドは、肝機能障害を抑制することから、慢性又は急性肝炎、アルコール性脂肪肝、胆石、肝硬変、胆道癌、肝臓癌などのあらゆる肝臓疾患の予防、軽減、又は治療剤の有効成分とすることができる。肝機能障害抑制剤は、医薬品、食品組成物などとして使用できる。
【0020】
(III)抗酸化剤
本発明の抗酸化剤は、酒粕、米焼酎粕、加熱米、及び糠からなる群より選ばれる少なくとも1種の米原料をプロテアーゼ処理する工程を含む方法により得られるペプチド混合物、又はThr−Trp、Ile−Trp、Pro−Tyr、Val−Tyr、Asn−Trp、Phe−Phe、Ile−Tyr、Arg−Phe、Phe−Trp、Gln−Trp、Ser−Trp、Ile−Lys−Tyr、及びLeu−Lys−Tyrからなる群より選ばれる少なくとも1種のペプチドを有効成分として含む。
脂質などの生体成分の酸化抑制活性や、活性酸素を除去する活性を有することから抗酸化剤として好適である。生体成分の酸化、及びそれによる活性酸素の発生はあらゆる疾患の元となったり、疾患を助長したりするため、抗酸化剤は医薬品、食品組成物などとして使用できる。また、医薬品、化粧品、食品などの酸化防止のための抗酸化剤としても使用できる。
【0021】
(IV)医薬品製剤
上記ペプチド又はペプチド混合物を肝機能障害抑制用途又は抗酸化用途の医薬品の有効成分として使用する場合、ペプチドは、そのまま又はジペプチドやアミノ酸にまで分解されて容易に吸収されることから、これらの医薬品は各種の経口投与形態を有する製剤とすることができる。固形製剤としては、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、タブレット剤、丸剤、カプセル剤、チュアブル剤などが挙げられ、液体製剤としては、乳剤、液剤、シロップ剤などが挙げられる。
【0022】
固形製剤は、有効成分であるペプチド又はペプチド混合物に、薬学的に許容される担体や添加剤を配合して調製される。例えば、白糖、乳糖、ブドウ糖、でんぷん、マンニットのような賦形剤;アラビアゴム、ゼラチン、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロースのような結合剤;カルメロース、デンプンのような崩壊剤;無水クエン酸、ラウリン酸ナトリウム、グリセロールのような安定剤などが配合される。さらに、ゼラチン、白糖、アラビアゴム、カルナバロウなどでコーティングしたり、カプセル化したりしてもよい。また、液体製剤は、例えば、本発明のペプチドを、水、エタノール、グリセリン、単シロップ、又はこれらの混液などに、溶解又は分散させることにより調製される。これらの製剤には、甘味料、防腐剤、粘滑剤、希釈剤、緩衝剤、着香剤、着色剤のような添加剤が添加されていてもよい。
肝機能障害抑制剤中の上記ペプチド又はペプチド混合物の含有量は、乾燥重量に換算して、剤全体に対して、約0.001〜100重量%が好ましく、約1〜95重量%がより好ましく、約10〜90重量%がさらにより好ましく、約30〜85重量%がさらにより好ましい。
抗酸化剤中の上記ペプチド又はペプチド混合物の含有量は、乾燥重量に換算して、剤全体に対して、約0.001〜100重量%が好ましく、約1〜95重量%がより好ましく、約10〜90重量%がさらにより好ましく、約30〜85重量%がさらにより好ましい。
【0023】
医薬品製剤の使用方法
本発明の肝機能障害抑制剤の1日使用量は、対象者の症状、体重などによっても異なるが、有効成分であるペプチド又はペプチド混合物の乾燥重量に換算した1日使用量が、例えば約0.1〜20g、好ましくは約0.5〜10g、より好ましくは約1〜5gになるようにすればよい。
本発明の肝機能障害抑制剤は、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝臓癌などの肝臓疾患に罹患している人や、アルコール依存症の人、薬物依存症の人、肝炎ウィルス陽性の人など肝臓疾患になる可能性の高い人も好適な対象となる。
本発明の抗酸化剤の1日使用量は、対象者の症状、体重などによっても異なるが、有効成分であるペプチドの乾燥重量に換算した1日使用量が、例えば約0.1〜20g、好ましくは約0.5〜10g、より好ましくは約1〜5gになるようにすればよい。
本発明の抗酸化剤は、あらゆる疾患の治療剤の補助剤として使用できることから、どのような疾患の人も対象とすることができる。また、未病状態の人の発症予防にも有効であるため、これらの人も好適な対象となる。
【0024】
(V)食品組成物
本発明の肝機能障害抑制剤、又は抗酸化剤が食品組成物である場合、この食品組成物は、上記ペプチド又はペプチド混合物を、乾燥重量に換算して、食品組成物全体に対して、例えば約0.001〜100重量%、好ましくは約1〜95重量%、より好ましくは約10〜90重量%、さらにより好ましくは約30〜85重量%含んでいればよい。この食品組成物は、栄養補助食品(サプリメント)として用いるのに適している。また、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品)として好適に使用できる。この食品組成物は、上記ペプチド又はペプチド混合物を上記範囲で含むことにより、無理なく摂取できる食品量中に、十分な肝機能障害抑制作用又は/及び十分な酸化抑制作用を示すペプチドが含まれることになる。
【0025】
この食品組成物は、食品に通常用いられる賦形剤または添加剤を配合して、錠剤、タブレット剤、丸剤、顆粒剤、散剤、粉剤、カプセル剤、水和剤、乳剤、液剤、エキス剤、またはエリキシル剤等の剤型に調製することができる。中でも、ペプチド粉末の劣化を防止できる点で、カプセル剤が好ましい。
食品に通常用いられる賦形剤としては、シロップ、アラビアゴム、ショ糖、乳糖、粉末還元麦芽糖、セルロース糖、マンニトール、マルチトール、デキストラン、デンプン類、ゼラチン、ソルビット、トラガント、ポリビニルピロリドンのような結合剤;ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ポリエチレングリコールのような潤沢剤;ジャガイモ澱粉のような崩壊剤;ラウリル硫酸ナトリウムのような湿潤剤等が挙げられる。添加剤としては、香料、緩衝剤、増粘剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤などが挙げられる。
【0026】
また、この食品組成物は、汁物(味噌汁、吸い物、コーンスープ、ポテトスープ、コンソメスープ、たまごスープ、野菜スープ、カレー、シチュー)、飲料(スポーツ飲料、ドリンク剤、乳飲料、乳酸菌飲料、果汁飲料、炭酸飲料、野菜飲料、茶飲料等)、菓子類(クッキー等の焼き菓子、ゼリー、ガム、グミ、飴、ヨーグルト、アイスクリーム、プリン等)を含むものであってもよい。中でも、毎日の食生活で無理なく摂取できるという点で汁物食品が好ましく、その中でも食習慣が確立している味噌汁が好ましい。
本発明には、(i)上記ペプチド又はペプチド混合物を含有する肝機能障害抑制用食品組成物、又は抗酸化用食品組成物、(ii)肝機能障害抑制用食品組成物、又は抗酸化用食品組成物の製造における上記ペプチド又はペプチド混合物の使用、(iii)上記ペプチド又はペプチド混合物を含有する肝機能障害抑制作用、又は抗酸化作用を有する食品組成物も包含される。
本発明の食品組成物の摂取量は、摂取者の健康状態、体重などによって異なるが、1日あたりの摂取量が、上記ペプチド又はペプチド混合物の乾燥重量に換算して、例えば約0.001〜10g、好ましくは約0.01〜5g、より好ましくは約0.1〜2gとなる量とすればよい。上記ペプチド及びペプチド混合物は、米由来であるため、摂取しすぎても人体に害はなく、また長期継続摂取による副作用の心配もない。
【0027】
(V)酸化防止方法
さらに、酒粕、米焼酎粕、加熱米、及び糠からなる群より選ばれる少なくとも1種の米原料をプロテアーゼ処理する工程を含む方法により得られるペプチド混合物、又はThr−Trp、Ile−Trp、Pro−Tyr、Val−Tyr、Asn−Trp、Phe−Phe、Ile−Tyr、Arg−Phe、Phe−Trp、Gln−Trp、Ser−Trp、Ile−Lys−Tyr、及びLeu−Lys−Tyrからなる群より選ばれる少なくとも1種のペプチドは、医薬品、化粧品、食品などに添加することにより、それらの成分の酸化を防止することができる。即ち、本発明は、上記ペプチドを医薬品、化粧品、又は食品に添加する、医薬品、化粧品、又は食品の防止方法も提供する。
ペプチド又はペプチド混合物の使用量は、対象物の組成によって異なるが、乾燥重量に換算して、対象物全体に対して、例えば約0.001〜100重量%、好ましくは約1〜95重量%、より好ましくは約10〜90重量%、さらにより好ましくは約30〜85重量%とすればよい。
[実施例]
【0028】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0029】
酒粕分解ペプチド混合物の製造
酒粕60kg(湿重量、固形分58.4%)に水120Lを添加し十分に攪拌した。この混合物を50℃に保温した状態でセルラーゼ(セルロイシンT2;エイチビィアイ社製)30gとβ−アミラーゼ(ビオザイムM;天野エンザイム社製)30gを添加し、50℃で16時間分解した。分解終了後、90℃で10分間加熱して反応を停止した。圧搾機(NSKエンジニアリング(株);ONS自動圧濾圧搾機500型)にて5kg/cmで3時間圧搾し、タンパク高含有酒粕41.9kg(湿重量、固形分56.8%)を得た。
【0030】
次いで、得られたタンパク高含有酒粕41.9kgに水180Lを加え、KOHでpH6.8に調製し、よく攪拌した。50℃に保温した状態で、中性プロテアーゼ(バチルス属細菌由来、プロテアーゼNアマノG;天野エンザイム社製)210gを添加し、50℃で16時間分解した。さらに、HClでpH4.2に調製し、よく攪拌した後、酸性プロテアーゼ(アスペルギルス属菌由来、スミチームAP;新日本化学工業社製)250gを添加して60℃で22時間さらに分解した。分解終了後、90℃で10分間加熱して反応を停止した。圧搾機(NSKエンジニアリング(株)、ONS自動圧濾圧搾機 500型)にて5kg/cmで3時間圧搾し、ACE阻害作用を有するペプチド混合液200Lを得た。
得られたペプチド混合物を減圧濃縮法で濃縮し、さらにフリーズドライ法で粉末化した。減圧濃縮はロータリーエバポレーター(日本ビュッヒ株式会社製 RE121 Rotavapor:湯浴温度50℃、100rpm)とアスピレーター(ヤマト科学製 Neocool Aspirator BP-51:冷却温度5℃)を用いて行なった。フリーズドライは凍結乾燥機(EYELA 東京理化器械株式会社製 FDU-2100)を用いてマイナス80℃、真空度0.4Paで粉末になるまで除湿乾燥させることにより行った。
【実施例2】
【0031】
ペプチドの定量
上記ペプチド画分中に含まれるペプチドをLC/MS分析法により定量した。分析条件を以下に示す。
<ペプチド標準試料の測定>
(i)ペプチド標準溶液の調製
分取した各ペプチド、Thr−Trp(東レリサーチセンター社製)、Ile−Trp(東レリサーチセンター社製)、Pro−Tyr(シグマ社製)、Val−Tyr(シグマ社製)、Asn−Trp(東レリサーチセンター社製)、Phe−Phe(シグマ社製)、Ile−Tyr(東レリサーチセンター社製)、Arg−Phe(シグマ社製)、Phe−Trp(国産化学社製)、Gln−Trp(東レリサーチセンター社製)、Ser−Trp(東レリサーチセンター社製)、Ile−Lys−Tyr(国産化学社製)、Leu−Lys−Tyr(国産化学社製)、Ile−Gln−Pro(東レリサーチセンター社製)、Leu−Gln−Pro(東レリサーチセンター社製)、Ile−Tyr−Pro(東レリサーチセンター社製)、Phe−Pro−Pro(東レリサーチセンター社製)、Ile−Tyr−Pro−Arg−Tyr(ペプチド合成装置により自社製造)、Val−Arg−Tyr(国産化学社製)、Val−Arg−Pro(国産化学社製)、及びTyr−Lys−Pro(東レリサーチセンター社製)、Tyr−Gly−Gly−Tyr(ペプチド合成装置により自社製造)10mgをそれぞれ量り取り、水または0.1N塩酸水溶液を加え完全に溶解させ、1mlに定容し、各々のペプチド標準溶液を作成した。
【0032】
(ii)内部標準物質溶液の調製
N−carbamyl−L−Arg(SIGMA社製)10mgを量り取り、0.06N塩酸水溶液1mlで完全に溶解させ、内部標準原液とした。
(iii)標準溶液の調製
ペプチド標準溶液と内部標準原液を混合し、ペプチドと内部標準物質が各0.01mg/ml、0.1mg/mlになるよう各々のペプチド標準溶液を調製した。下記のLC/MS分析条件により、ペプチドのMSピーク面積を測定した。
装置:Waters Alliance 2695-2996-ZQ4000(LC-フォトダイオードアレイ検出器-MS検出器)
カラム: Imtakt UK-C18 4.6×75mm
移動相:A液:0.05% HCOOH/水、B液:アセトニトリル(0-25%/0-7.5分、100%/7.5-8.5分)
注入量:10 μL
流速:1.0ml/分
カラム温度:35℃
検出条件:UV 190-300 nm
MS エレクトロスプレーイオン(ESI)法 positive SIRモード +25V
【0033】
【表1】

【0034】
<ペプチドの測定>
酒粕ペプチドとして、実施例1で調製したペプチド混合物(以下、「酒粕ペプチド2」と称する。)、及び特許第3414761号公報(特許文献2)に記載の方法で得たペプチド混合物(以下、「酒粕ペプチド1」と称する。)を使用した。酒粕ペプチド1は、次の方法で調製した。即ち、液化液による清酒醸造法により米から清酒を醸造したときの酒粕(水分36%)10gを0.2lの水に懸濁し、大和化成製蛋白分解酵素(サモアーゼ)を0.2g加え、37℃で反応させた。その後沸騰水浴中で10分間加熱した後5000回転10分間の遠心分離により溶解物を得、凍結乾燥によりペプチド画分を得た。

(i) 酒粕ペプチド10mgを純水1mlに溶解し、ペプチド水溶液とした。
(ii) ペプチド水溶液と内部標準原液と混合し、酒粕ペプチドと内部標準物質が各0.002g/ml、0.1mg/mlになるよう試料溶液を調製し、標準溶液の場合と同様に各ペプチドのMSピーク面積を測定した。
(iii) 得られたペプチドのMSピーク面積より、以下の式に従ってペプチド含有量を算出した。
試料のペプチド含有量(mg/g)=
[標準溶液のペプチド濃度(mg/ml)×(試料溶液のペプチドピーク面積/試料のISピーク面積)/(標準溶液のペプチドピーク面積/標準溶液のISピーク面積)/試料のペプチド濃度(g/ml)]
【0035】
<結果>
酒粕ペプチド1及び酒粕ペプチド2中の各ペプチドの含有量(w/w%)を以下の表2に示す。
【表2】

【実施例3】
【0036】
肝機能障害抑制活性
<細胞の前培養>
ヒト肝臓細胞HepG2(HS研究資源バンク製)を、10%FBS入りのDMEM培地(大日本製薬製)に懸濁して、細胞密度2.0×105個/mlに調製した。これを24穴培養プレートに1ウェルあたり500μlずつ播種して、5%CO2気流下37℃で、コンフルエントになるまで7日間培養した。
<肝障害モデルの作製>
肝障害モデルを作製するため、イソアミルアルコールを添加することによって、細胞死を誘発させた。具体的には、まず、細胞を懸濁している培地をDMEM培地(FBS無し、フェノールレッド無し;大日本製薬製)500μlに交換後、イソアミルアルコールを2.5μlずつ、90分間隔で2回に分けて添加した。培地中のアルコール濃度を合計1.0%としてから(即ち、2回目のイソアミルアルコール添加直後から)120分間、細胞生存率を測定した。またアルコールを添加しない群をブランクとした。
【0037】
<生細胞数の測定>
市販の細胞数測定キット;Cell Counting Kit-8(同仁化学研究所製)を用いて、生細胞数を測定した。アルコール濃度を1.0%にしたのと同時に、本試薬溶液を1ウェルあたり5μl添加して、そのまま培養を続けた。120分後に細胞内酵素反応による試薬の発色を測定し、生細胞数の指標とした。吸光度の測定は、培地上清を100μlずつマイクロプレートに採取し、プレートリーダーを用いて、450nmと600nmの2波長で行った。
<細胞生存率の算出>
まずアルコール無添加群(ブランク)では死滅が起こっていないとみなし、その生細胞数を各群共通の総細胞数と近似した。各群の生細胞数を、ブランクの総細胞数で割った値をもって、各群の細胞生存率とした。
細胞生存率(%)=100×(被験区の吸光度450nm−被験区の吸光度600nm)
÷(ブランクの吸光度450nm−ブランクの吸光度600nm)
【0038】
<被験物質の添加>
1.0%被験物質水溶液を調製し、アルコール添加の30分前に、無色無血清培地500μlに対して10μl添加することによって、被験物質を最終濃度200ppmの添加とした。これによりアルコールによる生存率の低下がいかに抑制されるかを検討した。コントロールでは、被験物質の代わりに水のみを10μl添加した。尚、いずれの被験物とも本濃度において、Cell Counting Kit-8の着色反応そのものに影響しないことを事前に確認した。
<被験物質>
酒粕ペプチド1、酒粕ペプチド2、酒粕ペプチドに含有されるペプチド、並びにポジティブコントロールとしてグルタチオン、カルノシン、及びフェルラ酸を用いた。表3中のブランクはアルコール無添加細胞を用いたものであり、コントロールはペプチドを使用しなかったものである。
【0039】
<結果>
結果を以下の表3に示す。
【表3】

本発明のペプチド及びそれらの混合物は、極めて強い肝機能障害抑制活性を有することが分る。
【実施例4】
【0040】
抗酸化活性測定(リノール酸自動酸化抑制活性)
<測定原理>
リノール酸過酸化物が、β-カロテンの二重結合と反応することによって、β-カロテンの色(470nm)が消失する。被験物添加時の470nm退色抑制をもって、抗酸化活性と評価する(津志田ら;日食工誌、41(9)、611-618、1994)。
<操作手順>
(i)リノール酸-β-カロテンエマルジョンの調製
15ml遠心チューブに、リノール酸(1%溶液/クロロホルム)80μl、Tween40(20%溶液/クロロホルム)40μl、β−カロテン(1%溶液/クロロホルム)20μlを入れ、遠心エバポレーターで濃縮乾固した。乾固物に蒸留水4mlを加え、0.2M PBS(pH7.0)400μlを添加し、必要最小限度の強さで撹拌して、リノール酸-β-カロテンエマルジョンを調製した。
(ii)退色反応
96穴マイクロプレートに、被験物溶液10μl、上記調製したエマルジョン190μl、470nmと600nmの2波長の吸光度を45℃で30分間自動計測し、反応速度を自動印字し、コントロールと被験区の反応速度から阻害活性%を計算した。
【0041】
<被験物>
上記酒粕ペプチド1、上記酒粕ペプチド2、酒粕ペプチドに含有されるThr−Trp、Ile−Trp、Pro−Tyr、Val−Tyr、Asn−Trp、Phe−Phe、Ile−Tyr、Arg−Phe、Phe−Trp、Gln−Trp、Ser−Trp、Ile−Lys−Tyr、及びLeu−Lys−Tyrを用いた。また、ポジティブコントロールとして、グルタチオン、フェルラ酸を用いた。
【0042】
<結果>
結果を以下の表4に示す。
【表4】

上記ペプチド及びペプチド混合物は強い抗酸化活性を示した。
【実施例5】
【0043】
マウス肝機能障害保護試験
“伊豆ら、日本醸造協会誌、101、893-899(2006)Biosci. Biotechnol. Biochem., 71(4) 951-957、2007”に従い試験を行った。以下、詳述する
<マウス群構成>
Balb/cマウス雄8週齢を1週間予備飼育の後、1群n=18(ブランク群のみn=6)として4群とした。4群は、それぞれ、基本試料を摂取させたブランク群(肝機能障害を誘発しない)、基本試料を摂取させたコントロール群(肝機能障害を誘発する)、実施例1で得た酒粕ペプチド1を添加した基本試料を摂取させた酒粕ペプチド群(肝機能障害を誘発する)、及び液化粕を添加した基本試料を摂取させた酒粕群(肝機能障害を誘発する)である。
基本飼料は日本クレア製のCE-2を用いた。酒粕ペプチド、及び液化粕の基本試料への添加量は、それぞれ10重量%とした。飼料は、6週間経口自由摂取させた。
【0044】
<肝障害誘発>
肝機能障害を誘発するために、ブランク群をのぞく3つの群に対し、ガラクトサミン1200mg/Kgを、上記飼料摂取開始後、1週目、2週目、3週目、4週目、5週目、及び6週目の計6回腹腔内投与した。
<血清分析>
ガラクトサミン投与の24時間後に尾部採血をしたのち、血液を15000rpmで15分間遠心分離し、遠心上清を血清画分とした。血清画分を用いて肝障害マーカーであるGPT値、GOT値、LDH値を測定した。
なお、GPT、GOTは、肝細胞が障害を受けると肝細胞から血液などの中に流出する。従って、アルコール性肝障害、ウィルス性肝障害、薬物性肝障害、自己免疫低下による肝障害、慢性・急性肝炎、アルコール性脂肪肝などの肝障害ないしは肝臓疾患時にはGPT値、GOT値が高くなり、GPT値、GOT値の低下は、これらの疾患の抑制、改善、治癒などを示す。
また、LDHは、肝臓で生成した胆汁が胆管を通って十二指腸に分泌される通路に何らかの障害が発生すると、血清中濃度が上昇する酵素である。従って、胆石、胆道癌、肝臓癌などの場合、その他、自己免疫疾患による肝障害、薬物性肝障害などの場合に、血清中LDH値が上昇し、LDH値の低下は、これらの疾患の抑制、改善、治癒などを示す。
【0045】
(i)GOT測定
トランスアミナーゼ CII−テストワコー(和光純薬製)キットを用い、その添付マニュアルに従って血清中GOT濃度を測定した。具体的には、GOT用酵素液(ピルビン酸オキシダーゼ5.4単位/mL、オキサロ酢酸脱炭酸酵素14単位/ML、4-アミノアンチピリン 2.0mmol/L、アスコルビン酸オキシダーゼ 0.90単位/L、カタラーゼ270単位/mL)と発色剤(ペルオキシダーゼ5.9単位/mL)を等量添加したものをGOT用基質発色液とした。GOT用基質発色液0.5mLを37℃で5分間加温した後、血清試料0.02mLを添加し、37℃で正確に20分間加温した後、反応停止液を2.0mL添加し、混和後、吸光度555nmを測定した。
GOT活性値は下記の式から算出した。
GOT活性値(Karmen単位)
=[サンプル吸光度(Es)/スタンダード吸光度(Estd)]×100
【0046】
(ii)GPT測定
トランスアミナーゼ CII−テストワコー(和光純薬製)キットを用い、その添付マニュアルに従って血清中GOT濃度を測定した。具体的には、GPT用酵素液(ピルビン酸オキシダーゼ5.4単位/mL、4-アミノアンチピリン 2.0mmol/L、アスコルビン酸オキシダーゼ 0.90単位/L、カタラーゼ270単位/mL)と発色剤(ペルオキシダーゼ5.9単位/mL)を等量添加したものをGPT用基質発色液とした。GPT用基質発色液0.5mLを37℃で5分間加温した後、血清試料0.02mLを添加し、37℃で正確に20分間加温した後、反応停止液(クエン酸 50mmol/L)を2.0mL添加し、混和後、吸光度555nmを測定した。
GPT活性値は下記の式から算出した。
GPT活性値(Karmen単位)
=[サンプル吸光度(Es)/スタンダード吸光度(Estd)]×100
【0047】
(iii)LDH測定
MTX-LDH(極東製薬工業株式会社製)キットを用い、その添付マニュアルに従って血清中GOT濃度を測定した。具体的には、96穴マイクロプレートに血清を50μL分注し、基質発色試薬(3.7mg/5mlニトロテトラゾリウムブルー)を50μL添加後、37℃で正確に30分間反応をさせた。反応停止液を100μL分注し混和した後、90分以内に、マイクロプレートリーダーにて波長560nmで、試薬ブランクに対する吸光度を測定した。LDH濃度はスタンダードの吸光度から算出した。
【0048】
<結果>
試験開始(被験試料の摂取開始)4週間後のGOT活性値及びGPT活性値を図1に示し、試験開始6週間後のGOT活性値及びGPT活性値を図2に示す。また、試験開始4週間後のLDH値を図3に示し、試験開始6週間後のLDH値を図4に示す。
また、試験開始2〜6週間後の血清GOT値、血清GPT値、及び血清LDH値を、後掲の表5〜7にそれぞれ示す。
(i)GOT測定結果
血清GOT値は、試験(被験試料の摂取)開始2週間後から、コントロール群がブランク群に比べて上昇し始めた。試験開始4週間後より、酒粕ペプチド投与群のGOT値が、コントロール群のGOT値に比べて有意に低くなり始め(T検定片側)、6週間後にも、酒粕ペプチド投与群の血清GOT値とコントロール群の血清GOT値との間に、有意差が認められた(T検定両側およびDunnett検定;p<0.05)。試験開始6週間後には、酒粕投与群でも血清GOT値の抑制傾向が見られたが、コントロール群に対して有意差は認められなかった。
このように、本発明の酒粕ペプチドは、血清GOT値を有意に低下させ、その低下効果は液化粕に比べて高かった。
【0049】
【表5】

【0050】
(ii)GPT測定結果
血清GPT値は、試験(被験試料の摂取)開始2週間後より、コントロール群がブランク群に比べて上昇し始めた。
試験開始2週間後より、酒粕ペプチド投与群のGPT値がコントロール群のGPT値より低くなり始め、試験開始6週間後には、酒粕ペプチド投与群とコントロール群との間に有意差が認められた(T検定両側およびDunnett検定;p<0.05)。試験開始6週間後には、酒粕投与群でも血清GPT値の抑制傾向が見られたが、コントロール群に対して有意差は認められなかった。
このように、本発明の酒粕ペプチドは、血清GPT値を有意に低下させ、その低下効果は液化粕に比べて高かった。
【0051】
【表6】

【0052】
(iii)LDH測定結果
血清LDH値は、試験開始3週間後より、コントロール群がブランク群に比べて上昇し始めた。
試験開始4週間後より、酒粕ペプチド投与群のLDH値がコントロール群のLDH値に
比べて低くなり始め、試験開始4週間後、及び6週間後に、コントロール群との間に有意差が認められた(T検定片側)。一方、全試験期間において、酒粕投与群のLDH値はコントロール群のLDH値とほぼ同等であった。
このように、本発明の酒粕ペプチドは、血清LDH値を有意に低下させた。これに対して、液化粕には血清LDH低下作用は全く認められなかった。
【0053】
【表7】

【0054】
処方例
以下に、本発明の食品組成物の処方例を示す。
<処方例1 クッキー>
小麦粉(薄力粉)100g、ベーキングパウダー2.5g、食塩1.5g、ペプチド混合物(酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2)1gを配合し、これにバター40gとミルク50gを加え、これをオーブンで180℃、10分間焼き上げ、抗酸化クッキーを得た。得られたクッキーには、酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2が0.02mg/g含まれていた。
<処方例2 ゼリー>
ゼラチン5g、ショ糖20g、水50gから膨潤ゼラチンを作る。プレーンヨーグルト140gにペプチド混合物(酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2)0.5gを加え、上記膨潤ゼラチンを加えて冷やす。これを固めて抗酸化ゼリーを得た。得られたゼリーには、酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2が0.01mg/g含まれていた。
<処方例3 アイスクリーム>
牛乳1200g、生クリーム310g、上白糖300g、脱脂粉乳60g、脱脂卵黄蛋白分解物1g、増粘安定剤6g、ペプチド混合物(酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2)4gに水を加えて全量2000mlにして溶解した。これを80℃まで加熱した後、ホモミキサーで予備乳化し、引き続きホモゲナイズした。冷却し熟成させた後バニラエッセンス2gを加えフリージングを行った。その後−40℃まで急冷して抗酸化アイスクリームを得た。得られたアイスクリームには酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2が0.01mg/g含まれていた。
<処方例4 羊羹>
糸寒天7.5gを溶かし、これに小豆飴660g、グラニュー糖300g、水550ml、ペプチド混合物(酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2)15gを混ぜて溶かして煮詰め、冷やして抗酸化羊羹を得た。得られた羊羹には、酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2が0.05mg/gが含まれていた。
【0055】
<処方例5 ヨーグルト>
20%脱脂乳を120℃で、3秒間殺菌した後、ストレプトコッカサス・サーモフィルス及びラクトバチルス・カゼイの種菌を培養してヨーグルトベース400gを得た。さらに砂糖70g、ペクチン3g、ペプチド混合物(酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2)1gを水に溶解させ、上記のヨーグルトベースとシロップを混合し、香料1gを添加した後、均質化して、抗酸化ヨーグルトを得た。得られたヨーグルトには、酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2が0.01mg/g含まれていた。
<処方例6 牛乳>
牛乳100mlにペプチド混合物(酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2)0.1gを入れてよく攪拌し、抗酸化牛乳を得た。得られた牛乳には、酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2が0.005mg/ml含まれていた。
<処方例7 チョコレート>
カカオマス25g、カカオバター15g、全脂粉乳15g、粉砂糖30g、粉ミルク15gとペプチド混合物(酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2)1gを混和し、45℃で暖めた後に冷却し、抗酸化チョコレートを得た。えられたチョコレートには、酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2が0.04mg/gふくまれていた。
<処方例9 マヨネーズ>
卵黄20gに食塩2.5g、ショ糖1.5g、マスタード1.5g、胡椒0.1g、レモン汁5g、ペプチド混合物(酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2)4gを加え、これに酢10gとサラダ油160gとを加えてよく攪拌して抗酸化マヨネーズを得た。得られたマヨネーズには、酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2が0.10mg/g含まれていた。
【0056】
<処方例10 ケチャップ>
トマト1Kg皮をむいてミキサーにかけ、加熱して煮詰めた後、すりおろしたタマネギ10g、ニンニク3gを加え、さらに砂糖10g、塩2g、ペプチド混合物(酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2)22gを加え、弱火にして香辛料(シナモンスティック、クローブ、胡椒、唐辛子)1g、酢を30g加え、一度加熱した後、冷まして抗酸化ケチャップを得た。得られたケチャップは、酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2が0.12mg/g含まれていた。
<処方例11 カレールウ>
小麦粉(薄力粉)125g、バター100g、カレー粉20gとペプチド混合物(酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2)2.5gに少量の水を加えて混合し、固めて抗酸化カレールウを得た。得られたカレールウには、酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2が0.05mg/g含まれていた。
<処方例12 蒲鉾>
魚のすり身100g、マッシュポテト10g、小麦粉5g、卵白50g、塩2g、砂糖0.2g、みりん10g、ペプチド混合物(酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2)0.8gを加えこれらを混ぜてペースト状にし、蒸し器で蒸して抗酸化蒲鉾を得た。得られた蒲鉾には、酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2が0.02mg/g含まれていた。
<処方例13 佃煮>
戻した昆布25g、かつおだし150ml、砂糖15g、醤油15g、酢10g、ペプチド混合物(酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2)1gを混合し、沸騰させてから中火で煮詰めて抗酸化佃煮を得た。得られた佃煮には、酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2が0.03mg/g含まれていた。
【0057】
<処方例15 米飯>
白米150g、水220gとペプチド混合物(酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2)0.7gを混合し、炊飯器で炊き上げ、抗酸化米飯を得た。得られた米飯には、酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2が0.01mg/g含まれていた。
<処方例16 うどん麺>
水400g、塩50gを混合して塩を溶かし、これに小麦粉(中力粉)1000g、ペプチド混合物(酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2)3gを混ぜ、よくこねた。固まったらこれをよく伸ばし、5mm幅にきった。これを10分茹でて、その後冷やして抗酸化うどん麺を得た、得られたうどん麺には酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2が0.01mg/g含まれていた。
<処方例17 清酒>
清酒100mlにペプチド混合物(酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2)0.1gを加え、よく攪拌して、抗酸化清酒を得た。得られた清酒には、酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2が0.005mg/mlが含まれていた。
<処方例18 焼酎>
焼酎100mlにペプチド混合物(酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2)0.1gを加え、よく攪拌して、抗酸化焼酎を得た。得られた焼酎には、酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2が0.05mg/mlが含まれていた。
<処方例19 ワイン>
ワイン100mlにペプチド混合物(酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2)0.1gを加え、よく攪拌して、抗酸化ワインを得た。得られたワインには、酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2が0.05mg/mlが含まれていた。
【0058】
<処方例20 ビール>
ビール100mlにペプチド混合物(酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2)0.05gを加え、よく攪拌して、抗酸化ビールを得た。得られたビールには、酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2が0.025mg/mlが含まれていた。
<処方例21 ウイスキー>
ウイスキー100mlにペプチド混合物(酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2)0.2gを加え、よく攪拌して、抗酸化ウイスキーを得た。得られたウイスキーには、酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2が0.010mg/mlが含まれていた。
<処方例22 ブランデー>
ブランデー100mlにペプチド混合物(酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2)0.2gを加え、よく攪拌して、抗酸化ブランデーを得た。得られたブランデーには、酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2が0.010mg/mlが含まれていた。
<処方例23 スピリッツ>
スピリッツ100mlにペプチド混合物(酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2)0.2gを加え、よく攪拌して、抗酸化スピリッツを得た。得られたスピリッツには、酒粕ペプチド2が0.010mg/mlが含まれていた。
<処方例24 リキュール>
リキュール100mlにペプチド混合物(酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2)0.1gを加え、よく攪拌して、抗酸化リキュールを得た。得られたリキュールには、酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2が0.005mg/mlが含まれていた。
【0059】
<処方例25 みりん>
みりん100mlにペプチド混合物(酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2)1gを加え、よく攪拌して、抗酸化みりんを得た。得られたみりんには、酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2が0.05mg/mlが含まれていた。
<処方例26 茶>
お茶100mlにペプチド混合物(酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2)0.05gを加え、よく攪拌して、抗酸化お茶を得た。得られたお茶には、酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2が0.002mg/mlが含まれていた。
<処方例27 コーヒー>
コーヒー100mlにペプチド混合物(酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2)0.1gを加え、よく攪拌して、抗酸化コーヒーを得た。得られたコーヒーには、酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2が0.005mg/mlが含まれていた。
<処方例28 スポーツドリンク>
水100ml、果糖5g、ショ糖2g、クエン酸0.3g、ナトリウム20mg、カルシウム2mg、カリウム20mg、アルギニン20mg、イソロイシン10mg、バリン10mg、ロイシン10mg、ビタミンC100mg、β―カロチン1mgにペプチド混合物(酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2)0.05gを加え、よく攪拌して抗酸化ウイスキーを得た。得られたスポーツドリンクには、酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2が0.002mg/mlが含まれていた。
<処方例29 清涼飲料水>
バレンシアオレンジ果汁30ml、レモン果汁3ml、果糖1.5g、クエン酸0.5g、ビタミンC100mgにペプチド混合物(酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2)0.05gを加え、これに水を加えて100mlとし、よく攪拌した後に炭酸ガスを封入し、抗酸化清涼飲料水を得た。得られた清涼飲料水には、酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2が0.002mg/mlが含まれていた。
【0060】
<処方例30 スープ>
ポタージュスープ100mlにペプチド混合物(酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2)0.1gを加え、よく攪拌して、抗酸化スープを得た。得られたスープには、酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2が0.005mg/mlが含まれていた。
<処方例31 錠剤>
ペプチド混合物(酒粕ペプチド1、又は酒粕ペプチド2)85%、結晶セルロース14%に増粘剤1%を含む錠剤を作製した。酒粕ペプチド1又は酒粕ペプチド2が0.85g/g含まれていた。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明で使用する酒粕ペプチドは、肝機能障害を効果的に抑制するので、医薬、保健機能食品などとして好適に使用できる。また、抗酸化作用にも優れるため、医薬、保健機能食品などとして好適に使用できるとともに、医薬品、食品、化粧品などの酸化防止に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Thr−Trp、Ile−Trp、Pro−Tyr、Val−Tyr、Asn−Trp、Phe−Phe、Arg−Phe、Phe−Trp、Gln−Trp、Ser−Trp、Ile−Lys−Tyr、Leu−Lys−Tyr、Leu−Gln−Pro、Ile−Tyr−Pro、Phe−Pro−Pro、Ile−Tyr−Pro−Arg−Tyr、Val−Arg−Tyr、Val−Arg−Pro、及びTyr−Lys−Pro、Tyr−Gly−Gly−Tyrからなる群より選ばれる少なくとも1種のペプチドを含む肝機能障害抑制剤。
【請求項2】
酒粕、米焼酎粕、加熱米、及び糠からなる群より選ばれる少なくとも1種の米原料をプロテアーゼ処理する工程を含む方法により得られるペプチド混合物を含む肝機能障害抑制剤。
【請求項3】
米原料が液化粕である請求項2に記載の肝機能障害抑制剤。
【請求項4】
肝機能障害が、アルコール性肝障害、ウィルス性肝障害、薬物性肝障害、自己免疫低下による肝障害、自己免疫疾患による肝障害、慢性又は急性肝炎、アルコール性脂肪肝、胆石、肝硬変、胆道癌、及び肝臓癌からなる群より選ばれるものである、請求項1〜3のいずれかに記載の肝機能障害抑制剤。
【請求項5】
Thr−Trp、Ile−Trp、Pro−Tyr、Val−Tyr、Asn−Trp、Phe−Phe、Ile−Tyr、Arg−Phe、Phe−Trp、Gln−Trp、Ser−Trp、Ile−Lys−Tyr、及びLeu−Lys−Tyrからなる群より選ばれる少なくとも1種のペプチドを含む抗酸化剤。
【請求項6】
酒粕、米焼酎粕、加熱米、及び糠からなる群より選ばれる少なくとも1種の米原料をプロテアーゼ処理する工程を含む方法により得られるペプチド混合物を含む抗酸化剤。
【請求項7】
米原料が液化粕である請求項6に記載の抗酸化剤。
【請求項8】
Thr−Trp、Ile−Trp、Pro−Tyr、Val−Tyr、Asn−Trp、Phe−Phe、Ile−Tyr、Arg−Phe、Phe−Trp、Gln−Trp、Ser−Trp、Ile−Lys−Tyr、及びLeu−Lys−Tyrからなる群より選ばれる少なくとも1種のペプチドを医薬品、食品、又は化粧品に添加する工程を含む、医薬品、食品、又は化粧品の酸化防止方法。
【請求項9】
酒粕、米焼酎粕、加熱米、及び糠からなる群より選ばれる少なくとも1種の米原料をプロテアーゼ処理する工程を含む方法により得られるペプチド混合物を医薬品、食品、又は化粧品に添加する工程を含む、医薬品、食品、又は化粧品の酸化防止方法。
【請求項10】
米原料が液化粕である請求項9に記載の医薬品、食品、又は化粧品の酸化防止方法。
【請求項11】
酒粕、米焼酎粕、加熱米、及び糠からなる群より選ばれる少なくとも1種の米原料をプロテアーゼ処理する工程を含む方法により得られるペプチド混合物を0.001〜100重量%含む食品組成物。
【請求項12】
米原料が液化粕である請求項11に記載の食品組成物。
【請求項13】
Thr−Trp、Ile−Trp、Pro−Tyr、Val−Tyr、Asn−Trp、Phe−Phe、Ile−Tyr、Arg−Phe、Phe−Trp、Gln−Trp、Ser−Trp、Ile−Lys−Tyr、Leu−Lys−Tyr、Leu−Gln−Pro、Ile−Tyr−Pro、Phe−Pro−Pro、Ile−Tyr−Pro−Arg−Tyr、Val−Arg−Tyr、Val−Arg−Pro、及びTyr−Lys−Pro、Tyr−Gly−Gly−Tyrからなる群より選ばれる少なくとも1種のペプチドを0.001〜100重量%含む食品組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−221193(P2009−221193A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36443(P2009−36443)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000165251)月桂冠株式会社 (88)
【Fターム(参考)】