抗酸化活性を有する組成物の製造方法
【課題】
ササ及び/又はタケの葉を原料にして優れた抗酸化活性を有する組成物を製造する方法を提供する。
【解決手段】
ササ及び/又はタケの葉の低級脂肪族アルコール抽出液から、該アルコールを蒸発するとともに水に置換し、石油エーテル及び/又はジエチルエーテルで液・液分配を行わせ、水層の液を取り出し、該水層の液に酢酸エチルを添加して液・液分配を行い、酢酸エチル層の液と水層を採取し、各水層や酢酸エチル層、ジエチルエーテル層からルテオリン6−C−グルコシド、ルテオリン6−C−アラビノシド等の抗酸化活性を有するルテオリン配糖体やトリシン等を含む抗酸化性組成物を得る。
ササ及び/又はタケの葉を原料にして優れた抗酸化活性を有する組成物を製造する方法を提供する。
【解決手段】
ササ及び/又はタケの葉の低級脂肪族アルコール抽出液から、該アルコールを蒸発するとともに水に置換し、石油エーテル及び/又はジエチルエーテルで液・液分配を行わせ、水層の液を取り出し、該水層の液に酢酸エチルを添加して液・液分配を行い、酢酸エチル層の液と水層を採取し、各水層や酢酸エチル層、ジエチルエーテル層からルテオリン6−C−グルコシド、ルテオリン6−C−アラビノシド等の抗酸化活性を有するルテオリン配糖体やトリシン等を含む抗酸化性組成物を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ササ及び/又はタケの葉を原料として、優れた抗酸化活性を有する組成物を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人は酸素を利用して生きている。ところが、酸素をエネルギーとして利用している限り、一部の酸素は過酸化水素(H2O2),スーパーオキサイドラジカル(・O2−),ヒドロキシラジカル(・OH−)等の活性酸素となって、この活性酸素は種々の疾病や老化の原因になることが知られている。
このため、化粧品や食品等の分野において、酸素の弊害を除去するための抗酸化剤の開発が行われている。
【0003】
例えば、ハイビスカス,アロエ,ダイオウ,黄精,ウワウルシ,延命草,楊梅皮,葛根,センキュウ,ソウジュツ,薄荷葉,甘草,シャクヤク,ヨクイニン,辛夷,桂皮,十薬,黄連,牡丹皮,ゲンチアナ,五倍子,センブリ,ゲンノショウコ,黄柏,乾姜,オウゴン,猪苓,ガーリック,セイジ,オレガノ,ローズマリー,ローレル,セロリ,タイム,タラゴン,ナッツメグ,メース,クローブ,わさび,サボリ,バジル,唐辛子,豆茶,紅茶,緑茶,柿の葉,コーヒー,すぎな,ハチク,よもぎ,アマチャズル,クマササ,クコ,ヤブソテツ,シイタケ,ひじき,わかめ,いぎす,こんぶ,あらめ,オニワカメ,青のりからなる各植物より水若しくは低級アルコール又は低級アルコール水溶液により抽出された各種植物抽出物群から選択された1種又は2種以上を有効成分として含有することを特徴とする抗酸化剤が、下記の特許文献1に提案されている。
【0004】
【特許文献1】 特開平6−24937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、単に低級アルコール又は低級アルコール水溶液により抽出された各種植物抽出物は抗酸化活性が十分とはいえない。そこで、本発明は、卓越した抗酸化活性を有する組成物を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の植物としてタケ類及びササ類に注目した。タケ・ササの仲間は、マダケ属、ナリヒラダケ属、トウチク属、オカメザサ属、ササ属、アズマザサ属、ヤダケ属、メダケ属、カンチク属、ホウライチク属の10属から成っている。中でもササ類は温帯や亜寒帯に広く分布する植物で、ササ属は日本を分布の中心とし、全国に種類、量ともに広く分布する。
従来の市販笹エキスには、抗菌作用、フリーラジカル消去活性、アルコール性脂肪肝、糖尿病、食欲増進作用、抗腫瘍作用等の機能性が知られているものの有効成分が特定されているものは少ない。
【0007】
一般に植物にはフラボノイド類が含まれており、抗酸化能が期待される。しかし、タケ・ササの仲間、特にササ属植物、のフラボノイドに関する知見は少ない。本発明者らは、これらの葉に含まれているフラボノイド成分に着目し、抗酸化活性成分を抽出して活性の優れた組成物を製造する本発明の方法を完成したものである。
【0008】
かくして、本発明によれば、以下のような方法が提供される。
(1)ササ及び/又はタケの葉の低級脂肪族アルコール、アセトン、アセトニトリル、熱水又は希酸溶液による抽出液から、当該溶液を蒸発するとともに水に置換又は加水し、濾過後又は濾過をせず、石油エーテル、ジクロロメタン、ベンゼン及び/又はジエチルエーテルで液・液分配を行わせて水層の液を取り出すことでクロロフィルを除去した後、該水層の液に酢酸エチルを添加して液・液分配を行い、酢酸エチル層の液並びに水層、ジエチルエーテル層を採取しササ及び/又はタケの葉由来のフラボノイド成分、特にルテオリン6−C−グルコシド及び/又はルテオリン6−C−アラビノシド等のルテオリン配糖体やトリシンを含む組成物を得ることを特徴とする抗酸化性組成物の製造方法。
【0009】
(2)ササ葉及び/又はタケの葉の低級脂肪族アルコール抽出液から、該アルコールを蒸発するとともに水に置換し、石油エーテル及び/又はジエチルエーテルで液・液分配して水層の液を採取し、該水層の液に酢酸エチルを配合して液・液分配を行い、酢酸エチル層の液を採取し、ササ葉及び/又はタケの葉由来のフラボノイド、特にルテオリン6−C−グルコシド、ルテオリン6−C−アラビノシド等のルテオリン配糖体及び/又はトリシンを含む組成物を得る、抗酸化性組成物の製造方法。
【0010】
(3)ササ葉及び/又はタケの葉の低級脂肪族アルコール抽出液から、該アルコールを蒸発するとともに水に置換し、石油エーテル及び/又はジエチルエーテルで液・液分配を行わせて水層の液を採取し、該水層の液に酢酸エチルを添加して液・液分配を行い、ジエチルエーテル層と酢酸エチルの2層からトリシンを含む液を採取することを特徴とする上記(1)の抗酸化性組成物の製造方法。
【0011】
(4)前記低級脂肪族アルコール抽出液を濃縮し、水に置換又は加水し濾過後クロロフィルを濾去、水層にジエチルエーテルを添加し液・液分配を行い、得られる水層にさらに酢酸エチルを加え液・液分配を行い、これらの操作を複数回繰り返し、ジエチルエーテル層、酢酸エチル層からトリシンを、水層及び酢酸エチル層から6−C−グルコシド、ルテオリン6−C−アラビノシド等のルテオリン配糖体を含む液を採取することを特徴とする上記(2)の抗酸化性組成物の製造方法。
【0012】
(5)前記低級脂肪族アルコール抽出液を濃縮し、水に置換又は加水し濾過後クロロフィルを濾去、水層にジエチルエーテルを添加し液・液分配を行い、得られる水層からルテオリン6−C−グルコシド、ルテオリン6−C−アラビノシド等のルテオリン配糖体を含む液又はトリシンを含む液を採取することを特徴とする抗酸化性組成物の製造方法。
(6)ササ葉又はタケの葉の抽出液を直接又は分画後に加水分解することにより、ルテオリン6C−グルコシド、ルテオリン6−C−アラビノシド、トリシンの含有率を高めることを特徴とする上記(1)〜(5)の抗酸化性組成物の製造方法。
【0013】
本発明の方法により得られる抗酸化性組成物には、ササ葉及び/又はタケの葉由来のフラボノイドとして、それ自体新規な化合物であるルテオリン6−C−アラビノシドを含むことがある。この新規化合物は、本発明者らによって発見された従来未知のルテオリン配糖体であって、下記の化学式(1)で表される構造を有する。この新規化合物は、後述する実施例に示す測定データ等から明らかなごとく、良好なDPPHラジカル消去活性、SOD様活性を有するのに加えて、脂質過酸化抑制活性に優れている。しかも、この新規化合物(ルテオリン6−C−アラビノシド)は、褐変酵素ポリフェノールオキシダーゼ(PPO)の阻害活性も非常に大きいという、種々の利点を有する。
【0014】
【化1】
(ただし、上記式中、Heqはequatorial Hを示し、Haxはaxial Hを示す。糖の同じ炭素に付いたプロトンのどちらかを明記するために用いた記号)
【0015】
上記化合物の1H−NMRの値は、δ=3.60(dd,J=2.8,9.6Hz,1H,3”−H),3.72(d,J=12.0Hz,1H,5”−Heq),3.95(m,1H,4”−H),3.99(dd,J=2.4,12.0Hz,1H,5”−Hax),4.24(dd,J=9.6,9.6Hz,1H,2”−H),4.79(d,J=9.6Hz,1H,1”−H),6.50(s,1H,8−H),6.55(s,1H,3−H),6.89(d,J=8.4Hz,1H,5’−H),7.36(br.d,J=2.0Hz,1H,2’−H),7.37(dd,J=2.0,8.4Hz,1H,6’−H)である。
【0016】
また、本発明の方法による抗酸化性組成物は、ササ葉及び/又はタケの葉由来のフラボノイドとして、下記の化学式(2)で表されるルテオリン6−C−グルコシドを含むことがある。ルテオリン6−C−グルコシド自体は、下記の化学式で表される既知の化合物ではあるが、後述する実施例に示すとおり、良好なDPPHラジカル消去活性、SOD様活性を有するのに加えて、脂質過酸化抑制活性にも優れているだけでなく、驚くべきことに、極めて優れた褐変酵素ポリフェノールオキシダーゼ(PPO)の阻害活性を有する。しかも、その活性は、一般に知られているPPO阻害剤、他のフラボノイド類とは比較にならないほどに優れたものである。
ササ葉やタケの葉由来のルテオリン6−C−グルコシドがこのような優れた特性を有することは、従来全く知見がなく、誰もが予想し得ないところであった。
【0017】
【化2】
【0018】
上記化合物の1H−NMRの値は、δ=3.41(m,1H,5”−H),3.44−3.49(m,2H,3”,4”−H),3.72(dd,J=5.6,12.4Hz,1H,6”−CHH),3.86(dd,J=2.8,12.4Hz,1H,6”−CHH),4.16(ddd,J=2.8,9.6,9.6Hz,1H,2”−H),4.90(m,1H,1”−H),6.49(s,1H,8−H),6.56(s,1H,3−H),6.89(d,J=8.4Hz,1H,5’−H),7.36(br.d,J=2.0Hz,1H,2’−H),7.37(dd,J=2.0,8.4Hz,1H,6’−H)である。
【0019】
また、本発明では得られる組成物に含まれる抗酸化性成分が、下記の化学式(3)で表されるトリシン化合物であってもよく、上記の各化合物(ルテオリン6−C−グルコシド、ルテオリン6−C−アラビノシド、トリシン等)が2種以上混在していてもよい。
【0020】
【化3】
【0021】
上記化合物の1H−NMRの値は、δ=3.1−3.6(br.s,2H,7,4’−H−O),3.87(s,6H,2×Me−O),6.17(d,J=2.0Hz,1H,6−H),6.53(d,J=2.0Hz,1H,8−H),6.96(s,1H,3−H),7.31(s,2H,2’,6’−H),13.0(s,1H,5−H−O)である。
【0022】
上記のトリシン化合物は、後述の実施例に示すとおり、抗酸化活性のうちの1つである、脂質過酸化抑制活性に特に優れている。
【0023】
以下、本発明の製造方法に関し、原料及び各工程並びに得られる抗酸化性組成物について、以下に順次詳述する。
【0024】
(原料)
原料となるササは、クマイザサ、チマキザサ、クマザサ、チシマザサ、ミヤコザサ、ヤクシマダケ、スズタケ等その種類は問わない。また、タケも、モウソウチク、インヨウチク、マダケ、オオバヤダケ、メダケ、ホウライチク等が使用可能である、これらのササあるいはタケの葉の部分を、水洗した後、必要に応じて適当な大きさに細断し乾燥(水分除去)して使用する。ササ又はタケの葉は、粉末にしてもよく、枯れさせてもよい。
【0025】
この原料を用いて、図1に例示するようなフローで抽出及び液・液分配を行う。各工程の具体例は、以下のとおりである。
(第1工程:アルコール抽出・蒸発乾固・粗抽出液の調製)
ササ葉1gに対して10倍容のメタノールで抽出する。抽出は暗所で24時間放置し、24時間後濾過する。この操作を4回繰り返し、得られた濾液をあわせ、ロータリーエバポレーターで濃縮乾固し、試料重量の2倍容の純水に溶解する。このようにして得られた溶液を粗抽出液とする。
【0026】
(第2工程:石油エーテルによる液・液分配)
上記の粗抽出液に対して同量の石油エーテルを加え、分液ロートにて水・石油エーテル溶媒の液・液分配を行う。この操作を2〜3回繰り返し行い、石油エーテル層と水層とを得る。石油エーテル層にはクロロフィルが含まれるので廃棄する。
【0027】
(第3工程:ジエチルエーテルによる液・液分配)
次に、得られた水層に該水層と同量のジエチルエーテルを添加し、分液ロートにて水・ジエチルエーテル溶媒の液・液分配を行う。この操作を2〜3回繰り返し行い、ジエチルエーテル層、水層を得る。ジエチルエーテル層をロータリーエバポレーターで乾固する。
【0028】
(第4工程:酢酸エチルによる液・液分配)
第3工程で得られた水層に、該水層と同量の酢酸エチルを加え、分液ロートにて、水・酢酸エチル溶媒の液・液分配を行う。この操作を2〜3回繰り返し行い、酢酸エチル層、水層を得る。各層をロータリーエバポレーターで濃縮乾固し、メタノールに置換する。
【0029】
(組成物に含まれる有効成分)
上述のようにして得たジエチルエーテル層には、主にトリシンが含まれ、酢酸エチル層には、ルテオリン6−C−アラビノシド、ルテオリン6−C−グルコシド並びにトリシンが主に含まれる。一方、水層には、ルテオリン6−C−グルコシドが主に含まれる。すでに述べたように、これらは抗酸化活性を有する化合物であり、これらの少なくとも1種の化合物を含む組成物もまた抗酸化活性を有する。
【0030】
(新規化合物の単離・精製及び同定)
酢酸エチル層に抗酸化成分として含まれるルテオリン6−C−アラビノシドは、それ自体、従来未知の新規化合物である。以下、ルテオリン6−C−アラビノシド及びその他の有効成分の単離・精製及び同定について詳細に説明する。
【0031】
(単離・精製方法)
メタノールに置換した酢酸エチル層2mlを、セファデックス(Sephadex)LH−20をガラス管(内径2cm、高さ90cm)に充填したカラムクロマトグラフィーにアプライする。溶離液に60%メタノールを用い、フラクションコレクターで8mlずつ分画する。それぞれのフラクションについて波長350、330及び250nmにおける吸光度に従い分画し、ピークを得たら、該当ピークを濃縮しフォトダイオードアレイ検出器を用いたHPLCによる分取を行う。HPLCの条件は下記のとおりである。
カラム:TSKgel ODS−80Ts(21.5mmI.D.×300mm)
移動相:水/アセトニトリル/メタノール=7/2/1(v/v/v)
流速:6.0ml/min
オーブン温度:40℃
【0032】
(物質の同定)
本発明で得られる抗酸化性組成物に含まれる有効成分の化合物は、吸収スペクトル分析、質量分析及びNMR分析等により同定することが出来る。以下、本発明者らが実施した同定法について詳述する。
<吸収スペクトル法>
精製物をメタノールに溶解し、450〜230nmにおけるUV・VIS吸収スペクトルを測定した。すなわち、試料のメタノール溶液を測定した後、ナトリウムメチラート(NaOMe)、塩化アルミニウム(AlCl3)、12%塩酸(12%HCl)、酢酸ナトリウム(NaOAc)、ホウ酸(H3BO3)の各種試薬を添加し吸収スペクトルを測定した。その結果は、下記の表1に示すとおりである。
【0033】
【表1】
【0034】
ルテオリン6−C−アラビノシド(Luteolin6−C−arabinoside)
NaOMe添加によってBd.Iが45〜65nmの深色移動することから、3位の遊離水酸基の欠如又は酸素化(OR)が示唆される。また、Bd.Iの極大吸収が増大することより4′位に遊離水酸基が存在することがわかる。
AlCl3添加によってBd.Iが深色移動することより、3位又は5位又はその両方に遊離水酸基ないしは隣接する遊離水酸基が存在する。
AlCl3+HCl添加によってAlCl3のBd.Iより浅色移動するが元のBd.Iに戻りきらないことより、3位又は5位又はその両方に遊離水酸基が存在し、さらにB環中に隣接する遊離水酸基の存在することがわかる。
NaOAc添加によりBd.IIが5〜20nmの深色移動することから7位に遊離水酸基が存在する。
NaOAc+H3BO3添加により、Bd.Iが12〜36nmの深色移動することから3′,4′位に遊離水酸基が存在する。
なお、Bd.Iとは、波長330〜420nm付近の極大吸収を示し、Bd.IIとは230〜290nm付近の極大吸収を示す。また、深色移動は長波長側、浅色移動は短波長側にシフトすることを示す。
以上の事より、3′,4′,5,7位に遊離水酸基が存在するフラボン骨格のルテオリンであることが、また、Bd.IIに2つの極大が見られることから6位又は8位に結合糖が存在することがわかる。
【0035】
ルテオリン6−C−グルコシド(Luteolin6−C−glucoside)
NaOMe添加によってBd.Iが45〜65nmの深色移動することから、3位の遊離水酸基の欠如又は酸素化(OR)が示唆された。また、Bd.Iの極大吸収が増大することより4′位に遊離水酸基が存在することがわかる。
AlCl3添加によってBd.Iが深色移動することより、3位又は5位又はその両方に遊離水酸基ないしは隣接する遊離水酸基が存在する。
AlCl3+HCl添加によってAlCl3のBd.Iより浅色移動するが元のBd.Iに戻りきらないことより、3位又は5位又はその両方に遊離水酸基が存在し、さらにB環中に隣接する遊離水酸基が存在することがわかる。
NaOAc添加によりBd.IIが5〜20nmの深色移動することから7位に遊離水酸基が存在する。
NaOAc+H3BO3添加によってBd.Iから12〜36nmの深色移動することより、3′,4′位に遊離水酸基が存在する。
以上の事より、3′,4′,5,7位に遊離水酸基が存在するフラボン骨格のルテオリンであることが、そして、Bd.IIに2つの極大が見られることから6位又は8位に結合糖が存在することがわかる。
【0036】
トリシン(Tricin)
NaOMe添加によりBd.Iが45〜65nmの深色移動することより、3位の遊離水酸基の欠如又は酸素化(OR)がわかる。また、Bd.Iの極大吸収が増大することより、4′位に遊離水酸基が存在する。
AlCl3添加によりBd.Iが深色移動することから、3位又は5位又はその両方に遊離水酸基ないしは隣接する遊離水酸基が存在する。
AlCl3+HCl添加によりAlCl3のBd.Iと比較し浅色移動しないことより、3位又は5位又はその両方に遊離水酸基が存在するが、B環中に隣接する遊離水酸基がないことがわかる。
NaOAc添加によりBd.IIが5〜20nmの深色移動することから、7位に遊離水酸基が存在する。
NaOAc+H3BO3の添加によりメタノール溶液のBd.Iと比べて深色移動がないことより、隣接する遊離水酸基がないことがわかる。
以上の事より、4′,5,7位に遊離水酸基が存在するフラボン骨格を持つ色素であることがわかる。
【0037】
<質量分析>
精製した試料について、パーセプティブ社製質量分析計Marinerを用い、分子量を正イオンモード(POS)で測定した。条件は下記の表2に示すとおりである。
[質量分析条件]
内部標準:4−acetamidophenol(m/z152.07),reserpine(m/z609.28)
インターフェイス:Electrospray ionization(ESI)
温度:室温(25℃)
【0038】
【表2】
【0039】
ルテオリン6−C−アラビノシド(Luteolin6−C−arabinoside)
吸収スペクトルで糖の結合が示唆されるが、ルテオリン骨格であることを考慮するとm/zから結合糖はペントース1つであることがわかる。また、イオン化の際に断片化を生じていないことから、糖との結合はC結合であることがわかる。
【0040】
ルテオリン6−C−グルコシド(Luteolin6−C−glucoside)
吸収スペクトルで糖の結合が示唆されたが、ルテオリン骨格であることを考慮するとm/zから結合糖はヘキソース1つであることがわかる。またイオン化の際に断片化を生じていないことから、糖とアグリコンの結合はC結合であることがわかる。
【0041】
一般に、ルテオリン配糖体には、抗酸化の他に、抗炎症、ガン予防、抗不整脈作用等が報告されており、上記の2種の化合物にも、本発明者らが確認した抗酸化活性のほかに、抗炎症、ガン予防、抗不整脈作用等も期待される。
【0042】
トリシン(Tricin)
吸収スペクトルからフラボン類であることがわかるが、m/zから結合糖は存在しないアグリコンであることがわかった。また、m/zから構造の2カ所がメトキシル化されていることが推測される。
トリシンには、抗腫瘍活性、抗白血病活性があること、脂質の過酸化を抑制することが知られている。また、防虫効果もある。
【0043】
<NMR分析>
それぞれ、十分に乾燥したサンプルを2〜10mg計量採取し、NMR測定管に移して重メタノールもしくは重ジメチルスルホキシド0.7mlに溶解して、1H−NMRをJeolJNM−A400(400MHz)にて測定する。(内部標準:CD3OD,3.30,DMSO−d6,2.49)
【0044】
ルテオリン6−C−アラビノシド(Luteolin6−C−arabinoside)
δ=3.60(dd,J=2.8,9.6Hz,1H,3”−H),3.72(d,J=12.0Hz,1H,5”−Heq),3.95(m,1H,4”−H),3.99(dd,J=2.4,12.0Hz,1H,5”−Hax),4.24(dd,J=9.6,9.6Hz,1H,2”−H),4.79(d,J=9.6Hz,1H,1”−H),6.50(s,1H,8−H),6.55(s,1H,3−H),6.89(d,J=8.4Hz,1H,5’−H),7.36(br.d,J=2.0Hz,1H,2’−H),7.37(dd,J=2.0,8.4Hz,1H,6’−H).
【0045】
1H−NMRでは測定溶媒として重メタノールが用いられる。芳香族由来と思われるシグナルが5種類それぞれ1H観測される。そのうちδ=6.89(d,J=8.4Hz),7.36(br.d,J=2.0Hz),7.37(dd,J=2.0,8.4Hz)の3種のシグナルの結合定数から、3置換ベンゼンの存在が推定され、置換位置は、オルト及びパラであると考えられる。また、その他2種の芳香族プロトンδ=6.50(s),6.55(s)は一重線であったが、その化学シフトと前述の3種の化学シフトを既知化合物であるルテオリンと比較すると比較的よい一致を示すので、アグリコン部はルテオリンであると推定される。ただし、ルテオリンの6位に相当するシグナルは観測されないので、6位に何らかの置換基の存在が示唆され、吸収スペクトルの結果によく一致する。
次に、δ=3.60(dd,J=2.8,9.6Hz),3.72(d,J=12.0Hz),3.95(m),3.99(dd,J=2.4,12.0Hz),4.24(dd,J=9.6,9.6Hz),4.79(d,J=9.6Hz)のシグナルにより、糖の存在が示唆される。アノマー位(1”位)のプロトン4.79(d,J=9.6Hz)の結合定数から、アノマー位の隣接プロトンとはアキシアル−アキシアルの関係にある、即ち糖部分はβ結合にてアグリコンに結合していると決定される。またその化学シフトがO−グルコシドよりも高磁場シフトしていることから、糖部分はC−グリコシル化しているものと考えられ質量分析の結果に整合した。糖部分のシグナルの化学シフトと結合定数はアラビノースのものとよい対応を示すことから糖部分はアラビノースであると推定される。
以上、アグリコン部、糖部を総合し、先の吸収スペクトルと質量分析結果ををあわせて考慮した結果、この化合物はルテオリン6−C−アラビノシドと決定することができる。
【0046】
ルテオリン6−C−グルコシド(Luteolin6−C−glucoside)
δ=3.41(m,1H,5”−H),3.44−3.49(m,2H,3”,4”−H),3.72(dd,J=5.6,12.4Hz,1H,6”−CHH),3.86(dd,J=2.8,12.4Hz,1H,6”−CHH),4.16(ddd,J=2.8,9.6,9.6Hz,1H,2”−H),4.90(m,1H,1”−H),6.49(s,1H,8−H),6.56(s,1H,3−H),6.89(d,J=8.4Hz,1H,5’−H),7.36(br.d,J=2.0Hz,1H,2’−H),7.37(dd,J=2.0,8.4Hz,1H,6’−H).
【0047】
1H−NMRでは測定溶媒として重メタノールを用いられる。芳香族由来と思われるシグナルが5種類それぞれ1H観測される。そのうちδ=6.89(d,J=8.4Hz),7.36(br.d,J=2.0Hz),7.37(dd,J=2.0,8.4Hz)の3種のシグナルの結合定数から、3置換ベンゼンの存在が推定され、置換位置は、オルト及びパラであると考えられる。また、その他2種の芳香族プロトンδ=6.49(s),6.56(s)は一重線であったが、その化学シフトと前述の3種の化学シフトを既知化合物であるルテオリンと比較すると、かなりよい一致を示すことから、アグリコン部はルテオリンであると推定される。ただし、ルテオリンの6位に相当するシグナルは観測されなかったので、6位に何らかの置換基の存在が示唆され先の吸収スペクトルの結果によく一致する。
次に、δ=3.41(m,1H),3.44−3.49(m,2H),3.72(dd,J=5.6,12.4Hz,1H),3.86(dd,J=2.8,12.4Hz,1H),4.16(ddd,J=2.8,9.6,9.6Hz,1H),4.90(m,1H)のシグナルにより、糖の存在が示唆される。アノマー位(1”位)のプロトン4.90(m)に隣接していると考えられるプロトン4.16(ddd,J=2.8,9.6,9.6Hz)の結合定数より、2”位は二つの隣接するプロトンとアキシアルーアキシアルーアキシアルの関係にあると考えられる。すなわち、糖部分はβ結合にてアグリコン部に結合していると推定される。また、その化学シフトがO−グルコシドよりも高磁場シフトしていることから、C−グリコシル化しているものと考えられ、先の質量分析の結果と一致する。糖部分のシグナルの化学シフトと結合定数はグルコースのものとよい対応を示すことから糖部分はグルコースであると推定される。
以上、アグリコン部、糖部を総合し、先の吸収スペクトルと質量分析結果とをあわせて考慮した結果、この化合物はルテオリン6−C−グルコシドと決定することができる。
【0048】
トリシン(Tricin)
δ=3.1−3.6(br.s,2H,7,4’−H−O),3.87(s,6H,2×Me−O),6.17(d,J=2.0Hz,1H,6−H),6.53(d,J=2.0Hz,1H,8−H),6.96(s,1H,3−H),7.31(s,2H,2’,6’−H),13.0(s,1H,5−H−O).
【0049】
1H−NMRでは測定溶媒として重ジメチルスルホキシドが用いられる。δ=6.17(d,J=2.0Hz,1H,6−H),6.53(d,J=2.0Hz,1H,8−H),6.96(s,1H,3−H),7.31(s,2H,2’,6’−H)に4種の芳香族プロトンが観測される。このうち、δ=6.17(d,J=2.0Hz),6.53(d,J=2.0Hz)に相関が観測され、その結合定数よりこの二つのプロトンはメタの関係にあると推定される。δ=7.31(s)のシグナルが積分比として2プロトン分あること、メトキシ基と考えられるδ=3.87(s)のシグナルが積分比として6プロトン分あること等から、対象性を有する4置換ベンゼンの存在が示唆される。また、δ=3.1−3.6(br.s,2H)に水酸基由来のプロトンが2プロトン、及びδ=13.0(s,1H)の低磁場に水素結合をしていると考えられる水酸基のプロトンが観測されることから、水酸基が3種あると推定される。
以上、先の吸収スペクトル、質量分析結果とをあわせた結果、この化合物はトリシンと決定することができる。
【0050】
なお、後述の実施例2、3で詳述するように、本発明者らの研究によれば、ルテオリン6−C−グルコシド、ルテオリン6−C−アラビノシド、トリシンの3種のフラボノイド成分の収量を上げる方法として、(1)ササ葉抽出液の酸加水分解による方法、及び、(2)分画後ピークの酸加水分解による方法、の2つの方法があることが見出された。また、加水分解は酸を用いるほか、アミラーゼ等の糖鎖切断酵素によっても可能である。
これらの方法によれば、より高い収率で上記3種のフラボノイド化合物を得ることができるので、工業的に特に有利である。
【発明の効果】
【0051】
本発明方法により得られる液状組成物は、抗酸化活性に優れたものであり、従来のササエキス等に比べて、抗酸化活性に優れ、かつ耐熱性、耐光性も良好な組成物が得られる、という利点を有する。具体的に説明すると、ルテオリン6−C−アラビノシド、ルテオリン6−C−グルコシド等のルテオリン配糖体を含む組成物は、DPPHラジカル消去活性、スーパーオキシドアニオンラジカル消去活性(SOD様活性)、脂質過酸化抑制効果等に優れており、しかも、褐変酵素ポリフェノールオキシダーゼ(PPO)の阻害効果が極めて大きいという利点を有する。また、トリシンを含む組成物は、脂質過酸化抑制効果に優れている。
したがって、本発明による抗酸化性の組成物は、化粧品、食品、医薬品等の広い分野で有用である。
さらに、本発明の組成物は、優れた消臭作用を有するため、例えば魚介類等を用いた食品加工時や調理ごみ、畜産廃棄物処理時等に発生する臭気を、該組成物を添加することにより有効に抑制することができるという効果も期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下に、本発明方法の実施例及び比較例を詳述する。ただし、本発明はこれらの実施例によってその範囲が限定されるものではない。なお、例中の%は特に断らない限り重量%を意味する。なお、抗酸化活性の測定は次のように実施した。
【0053】
1.DPPHラジカル消去活性
安定なラジカルであるDPPHラジカルに対するラジカル消去活性について検討した。
0.5mMのDPPHラジカル・エタノール溶液100μl、試料100μlの順に小ワッセルマンに採取し混合した。すばやく攪拌し、偏平セルに吸い上げてキャビティに挿入し、一定時間後(45秒)にESR装置(JeolJES−FR30)に装填し測定を開始した。ブランクには超純水又はアセトニトリルを用いた。下記条件のESRに供した。なお、ラジカルの消去率を(1−サンプル値/ブランク値)×100として求めた。
Field:335±5mT
Power:4mW
Modulation Width:40μT
Sweep Time:2min
Time const:0.1sec
Amp:250
【0054】
2.スーパーオキシドアニオンラジカル消去活性(SOD様活性)
ヒポキサンチンを基質とし、キサンチンオキシターゼ(XOD)の反応によるスーパーオキシドアニオンラジカル発生系を用い、SOD様活性を測定した。
原液DMPO(ラボテックNH−687)15μl、5mMのHypoxanthine(SIGMA H−9377)50μl、5.5mMのDTPA(同仁化学347−01141)35μl、試料50μl、0.4U/mlのXOD(SIGMA X−4376)50μlの順に小ワッセルマンに採取し混合した。すばやく攪拌し、偏平セルに吸い上げてキャビティに挿入し、一定時間後(45秒)にESR装置(JeolJES−FR30)に装填し測定を開始した。ブランクには超純水又はアセトニトリルを用いた。下記条件のESRに供した。スーパーオキシドアニオンラジカルの消去率を(1−サンプル値/ブランク値)×100として求めた。
Field:335±5mT
Power:4mW
Modulation Width:0.079mT
Sweep Time:2min
Time const:0.1sec
Amp:250
【0055】
3.脂質過酸化抑制効果
4%リノール酸メチル・メタノール溶液10ml、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)10mlを遠沈管に採取し、サンプル1ml加え、オーブンで55℃、48時間加熱処理し、過酸化脂質を生成させた。サンプルはササ葉1g/100mlの濃度になるように調製した。ブランクとしてメタノール、対象として20ppmトコフェロールをサンプルの代わりに加え、同様にオーブンで55℃、48時間加熱処理し、過酸化脂質を生成させた。
生じた過酸化脂質の過酸化物価(POV)を常法にしたがい測定し、抗酸化剤が無い状態のコントロールのPOVを0%とし、試料の脂質過酸化抑制率を求めた。
【実施例1】
【0056】
(1)組成物の調製
原料のササ葉として北海道に自生しているクマイザサ(Sasa senanensis)の葉(採取地:網走市葉八坂)を用い、これを図1に示すような手順で、以下のように処理し、液状の組成物を得た。
まず、水洗したササ葉1gを5倍容のメタノールに浸漬・抽出した。暗所で24時間放置して抽出した後、濾過した。次いで濾液をロータリーエバポレーターで濃縮乾固し、ササ葉重量の2倍容の純水に溶解した。得られた水溶液を粗抽出液とした。
上記の粗抽出液に対して、等量の石油エーテルを加え、水・石油エーテル溶媒の液・液分配を行った。この操作を2〜3回繰り返し行い、石油エーテル層及び水層を得た。得られた水層を用い、水・ジエチルエーテル溶媒の液・液分配を行った。この操作を2〜3回繰り返し行い、ジエチルエーテル層と水層とを得た。得られた水層を採取してこれに酢酸エチルを加え、水・酢酸エチルの液・液分配を行った。この操作を2〜3回繰り返し行い、酢酸エチル層及び水層を得た。
得られた各層を採取し、ササ葉重量に対して等量の液量になるようにロータリーエバポレーターで濃縮・乾固し、これをメタノールに置換して抗酸化性組成物を得た。水層については、XADカラムにより遊離の糖を取り除いて抗酸化性組成物を得た。
置換した各層の液状組成物を用い、それぞれフェノール物質の定量及び抗酸化活性の測定を行った。
【0057】
(2)得られた各層組成物のフェノール物質含量の測定
フォリン試薬を用いるSwainらの方法を一部改良した方法により組成物のフェノール物質含量を測定した。すなわち、試料0.5mlに1Nフェノール試薬を1ml加え混合し、1N水酸化ナトリウムを含む10%炭酸ナトリウム2.5mlを加え混合した。混合後、室温で30分間放置した。濁ったサンプルについては遠心分離(1000rpm、10分間)を行い、波長650nmにおける吸光度を測定した。また、0.5mM没食子酸を用いて検量線を作成し、検量線より各層中のフェノール含量及び、ササ葉1g中のフェノール含量を没食子酸換算で求めた。その結果を、図2に示す。
【0058】
(3)得られた各層組成物の抗酸化活性の測定
各層組成物の抗酸化活性を評価するため、安定なラジカルであるDPPHラジカルに対するラジカル消去活性及びSOD様活性(O2−・[スーパーオキシドアニオンラジカル]消去活性)について検討した。
まず、DPPHラジカル消去活性を測定するため、0.5mMDPPHラジカル・エタノール溶液100μl、試料100μlの順に小ワッセルマンに採取し混合した。すばやく攪拌し、偏平セルに吸い上げてキャビティに挿入し、一定時間後(45秒)にESR測定を開始した。ブランクには超純水又はアセトニトリルを用いた。上記の条件のESRに供した。消去率を(1−サンプル値/ブランク値)×100として求めた。得られた消去率より消去率が50%になる濃度(IC50)を求めた。
【0059】
次に、SOD様活性を測定するため、ヒポキサンチンを基質とし、キサンチンオキシターゼ(XOD)の反応によるスーパーオキシドアニオンラジカル発生系を用い、SOD様活性を測定した。
原液DMPO(ラボテックNH−687)15μl、5mM Hypoxanthine50μl、5.5mM DTPA35μl、試料50μl、0.4U/ml XOD50μlの順に小ワッセルマンに採取し混合した。すばやく攪拌し、偏平セルに吸い上げてキャビティに挿入し、一定時間後(45秒)にESR測定を開始した。ブランクには超純水又はアセトニトリルを用いた。上記と同様の条件でESRに供した。
消去率を(1−サンプル値/ブランク値)×100として求めた。得られた消去率より消去率が50%になる濃度(IC50)を求めた。
【0060】
それらの結果を図3に示す。図3に示す結果から、本発明による液状組成物は良好な抗酸化活性を有することがわかる。
【0061】
(分画)
そこで、酢酸エチル層及び水層について、それぞれ、セファデックスLH−20吸着カラムクロマトグラフィーによる分画を行った。
酢酸エチル層、水層のLH−20カラムによる吸着分画の結果、図4及び図5に示すように、酢酸エチル層が8個、水層が7個のピークが観察された。酢酸エチル層のそれぞれのピークをEA#1からEA#8とし、水層のそれぞれのピークをW#1からW#7とした。この得られたピークの各部分を濃縮・乾固し、メタノールに置換した。
【0062】
次に、酢酸エチル層のEA#1からEA#8のピーク部分のフェノール物質の定量を行った。フェノール含量は没食子酸換算で算出した。その結果、EA#3のフェノール物質含有量が0.12mg/gと最も高く、次にEA#7=0.11mg/g、EA#6=0.09mg/g,EA#5=0.07mg/gであった。
【0063】
<抗酸化活性>
また、抗酸化活性を測定した結果、図6に示すごとく、DPPHラジカル消去活性では、EA#3,EA#5,EA#6,EA#7の消去率が高く、それぞれ、60.09%、52.03%、73.74%、79.73%の消去率であった。SOD様活性(スーパーオキシドアニオンラジカル消去活性)では、EA#5,EA#6,EA#7が高く、それぞれ、39.97%、42.35%、53.80%の消去率を示した。
【0064】
一方、酢酸エチルによる液・液分配の結果得られた水層側の液体組成物は、図7に示すように、W#1、W#5〜W#7で、抗酸化活性を有するものであった。
【0065】
また、各分画ピークのフェノール含量と抗酸化活性で相関を調べた。図8に示すように、フェノール含量とDPPHラジカル活性では、R2=0.874、フェノール含量とSOD様活性ではR2=0.7707と、ともに高い比例関係がみられた。このことより、ササ葉の抗酸化活性はフラボノイドに代表されるフェノール成分が関与していると言える。
【0066】
また、図9に見られるように、DPPHラジカル消去能とSOD様活性との関係にも比例関係が見られた。ササ葉の抗酸化成分はDPPHラジカル消去活性、SOD様活性では同じ成分が寄与していると言える。
【0067】
ササ葉から抽出し同定したルテオリン6−C−グルコシドの安定性を調べるため、耐熱性及び耐光性の試験を行った。耐熱性試験は100℃の条件で行い、耐光性試験は紫外線照射により行った。それぞれの試験において、比較試料としてルテオリン7−O−グルコシドを用いた。
耐熱性試験の結果を図10、図12に、耐光性試験の結果を図11、図13に示す。
【0068】
その結果、図10及び図12に示すように、100℃における耐熱性では、各サンプルで時間経過と共に残存率及びDPPHラジカル消去活性に減少傾向がみられたが、ルテオリン6−C−グルコシドはルテオリン7−O−グルコシドに比べても安定性が高く、抗酸化活性の大幅な低下も見られなかった。また、耐光性についても、図11及び図13に示すように、紫外線照射による大きな変化は認められなかった。
この結果より、ササ葉の抗酸化成分であるルテオリン6−C−グルコシドは100℃では壊れにくく、実用上十分な熱安定性を有すること、紫外線に対する安定性が高く耐光性にも優れていることがわかった。
【0069】
下記の表3に、本発明の組成物に含まれる上記各化合物(ルテオリン6−C−アラビノシド、ルテオリン6−C−グルコシド及びトリシン)精製品の抗酸化活性をまとめて示す。
【0070】
【表3】
【0071】
なお、表3中の油脂過酸化抑制率の測定は次のように行った。
<油脂過酸化抑制率の測定>
(1)試料油脂の調整
4%リノール酸メチル・メタノール溶液10ml、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)10mlを遠沈管に採取し、サンプル1ml加え、オーブンで55℃、48時間加熱処理し、過酸化脂質を生成させた。サンプルはササ葉1g/100mlの濃度になるように調製した。ブランクとしてメタノール、対象として20ppmトコフェロールをサンプルの代わりに加え、同様にオーブンで55℃、48時間加熱処理し、過酸化脂質を生成させた。
【0072】
(2)POV検定
POV検定は、日本油脂学会による酸化油脂中の過酸化物価の測定法に従い、過酸化脂質(ヒドロペルオキシド)が酸性条件下で還元される反応に基づき、遊離されるヨウ素をチオ硫酸ナトリウムで滴定する方法で行った。
重クロム酸カリウムを純水に溶解し、0.01N重クロム酸カリウム溶液を作成する。このとき、重クロム酸カリウム溶液のファクター(f=採取量/理論値)を求めておく。ヨウ化カリウム1gを純水5mlに溶解させる。そこに0.01N重クロム酸カリウム溶液20ml、塩酸5mlを加え、撹拌後栓をして5分間暗所に放置した。5分後、純水300mlを加え、遊離ヨウ素を0.01Nチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定した。褐色が消えかかったら、1%澱粉指示薬を加え、青色が完全に消失するまで滴定した。滴定値がVmlのとき、0.01Nチオ硫酸ナトリウム溶液のファクターは、F=20×f/Vで求め、滴定を行った。
上述のように調製した試料油脂1gを採取し、クロロホルム−氷酢酸混液(3:2)25ml、飽和ヨウ化カリウム溶液1ml加え、すぐに撹拌し、1分間暗所に放置した。反応を止めるために純水75mlを加えた。2層に分かれる上層の赤紫色の消失を終点とし、遊離ヨウ素を0.01Nチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定した。空試験には純水1gを用いて行った。ここで、過酸化物価(POV)は、以下の数式で算出される。
【0073】
【数1】
【0074】
表3に示す結果から、本発明者らの発明に係る新規物質であるルテオリン6−C−アラビノシドは、DPPHラジカル消去活性、SOD様活性において特に優れていること、また、ルテオリン6−C−グルコシドは、良好なDPPHラジカル消去活性、SOD様活性を有するのに加えて、脂質過酸化抑制活性に優れていること、一方、トリシンは、DPPHラジカル消去活性、SOD様活性は見られないが、脂質過酸化抑制活性に優れていることがわかった。
【0075】
次に、ササの葉由来のフラボン類について、褐変酵素ポリフェノールオキシダーゼ(PPO)の阻害効果を調べるため、一般に知られているPPO活性阻害剤、他のフラボノイド類との比較測定を行った。その測定方法は以下のとおりであり、測定結果は下掲の表4に示すとおりである。
【0076】
<PPO(褐変酵素ポリフェノールオキシダーゼ)阻害活性の測定>
0.05Mクロロゲン酸を基質とし酵素液としてタマネギ鱗茎より抽出・部分精製を行った酵素液を用いた。すなわち、1.3mlの10mMリン酸緩衝液(pH7.0)に1mM濃度、2mM濃度、10mM濃度に調製した阻害剤を0.1ml、酵素液を0.1ml添加し混合、30℃に10分間予備加温後、0.05Mクロロゲン酸基質溶液を0.1ml加え混合し30℃、30分間加温後の波長420nmにおける褐変度を求めた。阻害剤添加の代わりに10mMリン酸緩衝液(pH7.0)を加えたものをコントロールとし、活性を100%として阻害効果を相対活性で示した。
【0077】
この結果、ササの葉由来のフラボン類(ルテオリン6−C−アラビノシド及びルテオリン6−C−グルコシド)は、一般のPPO活性阻害剤や他のフラボノイド類と比べて卓越したPPO阻害活性を有し、少量の使用でも褐変を防止できることがわかった。
したがって、これらのササの葉由来のフラボン類は、例えば、食品類の褐変防止剤として有効に利用することができる。
【0078】
【表4】
【0079】
さらに、採取した水層、酢酸エチル層の液状組成物等について、ヒト白血病細胞の増殖抑制を調べた。すなわち、対数増殖期にあるU−937細胞を5×104cells/mlの細胞密度に調製し、24ウェルマイクロプレートに0.5mlずつ播種後、インキュベーター内(37℃、95%Air−5%CO2,湿度90%以上)で24時間前培養後、試料を0.25mlずつ加え、インキュベーター内で24時間培養し、トリパンブルー染色法を用い、生細胞数を測定した。陰性対象であるPBS(−)の生細胞数を100とし、試料の増殖抑制率を算出した。
細胞増殖抑制率の測定結果を図14に示す。また、各層のクロマチン凝縮について測定した結果を図15に示す。
これらの図から明らかなように、本発明の抗酸化性組成物のうち、特に水層、水(メタノール可溶性)、酢酸エチル層は、ヒト腫瘍細胞(白血病)の増殖抑制効果も有し、水層、水(メタノール可溶性)、酢酸エチル層、ジエチルエーテル層はクロマチン凝縮活性を有することがわかった。
【0080】
さらに、前記ササの葉から抽出単離したルテオリン6−C−グルコシド、ルテオリン、ルテオリン7−O−グルコシドについても、同様の方法でヒト白血病細胞の増殖抑制効果を測定した。その結果は図16に示すとおりであり、ササの葉由来のルテオリン6−C−グルコシドは、卓越した高い増殖抑制効果を有することが確認された。
【実施例2】
【0081】
本実施例では、クマイザサのササ葉抽出液を加水分解した場合について説明する。
すなわち、クマイザサ抽出液の酸加水分解とは、クマイザサ抽出液(メタノール溶液)に塩酸(最終濃度が0.2〜0.7N)を加え(抽出液と塩酸の比率は1:1になるようにする)、混合後、100℃のウォーターバスで30分間加熱し、30分後、氷中で冷却した。
各加水分解物(無処理を含む)は、XADカラムに吸着させ、加水分解物から酸を洗い流し、メタノールに溶媒置換後、LH−20カラムに供し、精製後HPLCで定量分析した。
【0082】
まず、図17にササ葉抽出液の非加水分解物のLH−20溶出パターンを示す。そして、ササ葉抽出液を0.2N塩酸中、100℃、30分間、加水分解した後のLH−20溶出パターンを図18に、0.7N塩酸中、100℃、30分間加水分解した後のLH−20溶出パターンを図19に示す。
図17において、BIIはルテオリン6−C−グルコシド(Luteolin6−C−glucoside)の溶出ピーク、BIIIはルテオリン6−C−アラビノシド(Luteolin6−C−arabinoside)のピークであり、トリシンアグリコンは図18では2HIIIのピークである。それぞれの処理によって得られる各フラボンの結果を、それぞれ図20、図21及び図22に示す。なお、HPLCやXADカラム、LH−20カラムの条件はすでに述べた条件と同じである。
図17、図18、図19から、加水分解によって図17のBIピークが減少し、図18の2HIII及び図19の7HIIIが新たに検出することが確認できる。図17のBIIピーク、図18の2HIピーク及び図19の7HIピークは溶出位置から同じ成分であることがわかる。このピークは以前に同定したルテオリン6−C−グルコシドである。図17のBIIIピーク、図18の2HIIピーク及び図19の7HIIピークは溶出位置から同じ成分であることがわかる。このピークは、以前に同定したルテオリン6−C−アラビノシドである。
【0083】
また、図20より酸加水分解処理を行うことでルテオリン6−C−グルコシドの含量が約1.7倍多くなったことがわかる。したがって、最終濃度0.2〜0.7Nの塩酸で100℃、30分間加熱処理することでルテオリン6−C−グルコシドの収量を上げることが出来る。また、図21より同様の酸加水分解処理を行うことでルテオリン6−C−アラビノシドの含量が約3.3倍多くなったことがわかる。したがって、最終濃度0.2〜0.7Nの塩酸で100℃、30分間加熱処理することで、その収量を大幅に上げることが出来る。さらに、図22に示すように、酸加水分解処理を行うことで、トリシンアグリコンを含んでいないサンプルでも、最終濃度0.2〜0.7Nの塩酸で100℃、30分間加熱処理することでトリシンを得ることが出来る。
【実施例3】
【0084】
本実施例では、ササ葉抽出液をLH−20カラムで分画し、配糖体を含むフラクションを加水分解し、各加水分解物(無処理を含む)はXADカラムに吸着させ加水分解物から酸を洗い流しメタノールに溶媒置換し、HPLC分析した。すなわち、クマイザサ抽出液のLH−20カラム分画液(メタノール溶液)に塩酸(最終濃度が0.2〜0.7N)を加える(分画液と塩酸の比率は1:1になるようにする)。混合後、100℃のウォーターバスで30分間加熱し、30分後、氷中で冷却した。
【0085】
図23、図24及び図25に、図17の無処理ササ葉抽出液のLH−20カラム分画分で、配糖体が含まれていると考えられるフラクション(BI)を加水分解して得られる各フラボン量の定量結果を示す。これらの図23、図24及び図25から明らかなように、ササ葉抽出液をセファデックスLH−20カラムで分画した後でも、酸加水分解処理を行うことにより、ルテオリン6−Cグルコシド、ルテオリン6−Cアラビノシド、トリシンを高収率で得ることが出来ることが確認された。
【0086】
以上より、ルテオリン6−C−グルコシド、ルテオリン6−C−アラビノシド、トリシンの3種のフラボノイド成分の収量を上げる方法として、(1)ザサ葉抽出液の酸加水分解による方法、及び(2)分画後ピークの酸加水分解による方法、の2つの方法があることが確認された。
【実施例4】
【0087】
トリシンアグリコンを含むササ葉検体(採取地:北海道興部町)を試料として、実施例1と同様にジエチルエーテルによる液・液分配して得られた水層を採取し、セファデックスLH−20カラムによる分画を行った。そのチャートを図26に示す。この図26より、波長350nmでは液中にルテオリン6−C−グルコシド、ルテオリン6−C−アラビノシド、トリシンが多く含有することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】 本発明の方法の工程概略図
【図2】 各層のフェノール物質含有量を示すグラフ
【図3】 各層の抗酸化活性の測定結果を示すグラフ
【図4】 酢酸エチル層の分画を示すチャート
【図5】 水層の分画を示すチャート
【図6】 酢酸エチル層の各ピークの抗酸化活性の測定結果を示すグラフ
【図7】 水層の各ピークの抗酸化活性の測定結果を示すグラフ
【図8】 フェノール含量と抗酸化活性との相関を示すグラフ
【図9】 O2消去率とDPPHラジカル消去率の相関を示すグラフ
【図10】 ルテオリン6−C−グルコシドとルテオリン7−O−グルコシドの耐熱性測定結果を示すグラフ
【図11】 ルテオリン6−Cグルコシドとルテオリン7−O−グルコシドの耐光性測定結果を示すグラフ
【図12】 ルテオリン6−C−グルコシドとルテオリン7−O−グルコシドの耐熱試験における時間経過によるDPPHラジカル消去活性の変化を示すグラフ
【図13】 ルテオリン6−C−グルコシドとルテオリン7−O−グルコシドの耐光試験における時間経過によるDPPHラジカル消去活性の変化を示すグラフ
【図14】 各層のヒト白血病細胞の増殖抑制を測定した結果を示すグラフ
【図15】 各層のクロマチン凝縮を測定した結果を示すグラフ
【図16】 ルテオリン6−C−グルコシド、ルテオリン及びルテオリン7−O−グルコシドについてヒト白血病細胞の増殖抑制を測定した結果を示すグラフ
【図17】 クマイザサ抽出液のセファデックスLH−20カラムによる分画を示すチャート(LH−20カラム条件=カラム径:2I.D.×80cm、移動相:60%メタノール流速:1.0ml/min、分画サイズ:8ml、BI:Frac.No.66〜94、BII:Frac.No.95〜115、BIII:Frac.No.116〜143に分画)
【図18】 クマイザサ抽出液を加水分解(最終濃度0.2N塩酸、100℃、30分間加熱)処理した液のセファデックスLH−20カラムによる分画を示すチャート(LH−20カラム条件=カラム径:2I.D.×80cm、移動相:60%メタノール、流速:1.0ml/min、分画サイズ:8ml、2HI:Frac.No.91〜112.2HII:Frac.No.113〜132、2HIII:Frac.No.199〜220に分画)
【図19】 クマイザサ抽出液を加水分解(最終濃度0.7N塩酸、100℃、30分間加熱)処理した液のセファデックスLH−20カラムによる分画を示すチャート(LH−20カラム条件=カラム径:2I.D.×80cm、移動相:60%メタノール、流速:1.0ml/min、分画サイズ:8ml、7HI:Frac.No.88〜108、7HII:Frac.No.109〜132、2HIII:Frac.No.189〜212に分画)
【図20】 ルテオリン6−C−グルコシド含量を示すグラフであって、図17のBIIピーク、図18の2HIピーク及び図19の7HIピークの各ピークに含まれるルテオリン6−C−グルコシドを定量したときの結果を示すデータ(BIIピークを未処理、2HIピークを0.2N HCl処理、7HIピークを0.7NHCl処理としてそれぞれX軸表記)
【図21】 ルテオリン6−C−アラビノシドの含量を示すグラフであって、図17のBIIIピーク、図18の2HIIピーク及び図19の7HIIピークの各ピークに含まれるルテオリン6−C−アラビノシドを定量したときの結果を示すデータ(BIIIピークを未処理、2HIIピークを0.2N HCl処理、7HIIピークを0.7NHCl処理としてそれぞれX軸表記)
【図22】 トリシン(アグリコン)の含量を示すグラフであって、図18の2HIIIピーク及び図19の7HIIIピークを使用したときのデータ(クマイザサ抽出液のセファデックスLH−20カラムの溶出結果からトリシンのピークが検出されなかったため、未処理は0として算出し,2HIIIピークを0.2NHCl処理、7HIIIピークを0.7NHCl処理とそれぞれX軸表記)
【図23】 BIピークの酸加水分解によるルテオリン6−C−グルコシド含量の変化を示すグラフであって、図17のBIピークに加水分解[最終濃度0.2N塩酸、100℃、30分間加熱処理]を施したときのデータ(酸加水分解処理前のものを水解前、酸加水分解処理したものを水解後とX軸に表記)
【図24】 BIピークの酸加水分解(水解)によるルテオリン6−C−アラビノシド含量の変化を示すグラフであって、図17のBIピークを最終濃度0.2N塩酸、100℃、30分間加熱処理を行った場合のデータ(酸加水分解処理前のものを水解前、酸加水分解処理したものを水解後とX軸に表記)
【図25】 BIピークの酸加水分解(水解)によるトリシン(アグリコン)含量の変化を示すグラフであって、図17のBIピークを最終濃度0.2N塩酸、100℃、30分間加熱処理を行ったときのデータ(酸加水分解前のものを水解前、酸加水分解処理したものを水解後とそれぞれX軸に表記)
【図26】 ジエチルエーテルによる液・液分配で得られる水層のセファデックスLH−20カラムによる分画を示すチャート(試料葉採取地:北海道興部町)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ササ及び/又はタケの葉を原料として、優れた抗酸化活性を有する組成物を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人は酸素を利用して生きている。ところが、酸素をエネルギーとして利用している限り、一部の酸素は過酸化水素(H2O2),スーパーオキサイドラジカル(・O2−),ヒドロキシラジカル(・OH−)等の活性酸素となって、この活性酸素は種々の疾病や老化の原因になることが知られている。
このため、化粧品や食品等の分野において、酸素の弊害を除去するための抗酸化剤の開発が行われている。
【0003】
例えば、ハイビスカス,アロエ,ダイオウ,黄精,ウワウルシ,延命草,楊梅皮,葛根,センキュウ,ソウジュツ,薄荷葉,甘草,シャクヤク,ヨクイニン,辛夷,桂皮,十薬,黄連,牡丹皮,ゲンチアナ,五倍子,センブリ,ゲンノショウコ,黄柏,乾姜,オウゴン,猪苓,ガーリック,セイジ,オレガノ,ローズマリー,ローレル,セロリ,タイム,タラゴン,ナッツメグ,メース,クローブ,わさび,サボリ,バジル,唐辛子,豆茶,紅茶,緑茶,柿の葉,コーヒー,すぎな,ハチク,よもぎ,アマチャズル,クマササ,クコ,ヤブソテツ,シイタケ,ひじき,わかめ,いぎす,こんぶ,あらめ,オニワカメ,青のりからなる各植物より水若しくは低級アルコール又は低級アルコール水溶液により抽出された各種植物抽出物群から選択された1種又は2種以上を有効成分として含有することを特徴とする抗酸化剤が、下記の特許文献1に提案されている。
【0004】
【特許文献1】 特開平6−24937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、単に低級アルコール又は低級アルコール水溶液により抽出された各種植物抽出物は抗酸化活性が十分とはいえない。そこで、本発明は、卓越した抗酸化活性を有する組成物を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の植物としてタケ類及びササ類に注目した。タケ・ササの仲間は、マダケ属、ナリヒラダケ属、トウチク属、オカメザサ属、ササ属、アズマザサ属、ヤダケ属、メダケ属、カンチク属、ホウライチク属の10属から成っている。中でもササ類は温帯や亜寒帯に広く分布する植物で、ササ属は日本を分布の中心とし、全国に種類、量ともに広く分布する。
従来の市販笹エキスには、抗菌作用、フリーラジカル消去活性、アルコール性脂肪肝、糖尿病、食欲増進作用、抗腫瘍作用等の機能性が知られているものの有効成分が特定されているものは少ない。
【0007】
一般に植物にはフラボノイド類が含まれており、抗酸化能が期待される。しかし、タケ・ササの仲間、特にササ属植物、のフラボノイドに関する知見は少ない。本発明者らは、これらの葉に含まれているフラボノイド成分に着目し、抗酸化活性成分を抽出して活性の優れた組成物を製造する本発明の方法を完成したものである。
【0008】
かくして、本発明によれば、以下のような方法が提供される。
(1)ササ及び/又はタケの葉の低級脂肪族アルコール、アセトン、アセトニトリル、熱水又は希酸溶液による抽出液から、当該溶液を蒸発するとともに水に置換又は加水し、濾過後又は濾過をせず、石油エーテル、ジクロロメタン、ベンゼン及び/又はジエチルエーテルで液・液分配を行わせて水層の液を取り出すことでクロロフィルを除去した後、該水層の液に酢酸エチルを添加して液・液分配を行い、酢酸エチル層の液並びに水層、ジエチルエーテル層を採取しササ及び/又はタケの葉由来のフラボノイド成分、特にルテオリン6−C−グルコシド及び/又はルテオリン6−C−アラビノシド等のルテオリン配糖体やトリシンを含む組成物を得ることを特徴とする抗酸化性組成物の製造方法。
【0009】
(2)ササ葉及び/又はタケの葉の低級脂肪族アルコール抽出液から、該アルコールを蒸発するとともに水に置換し、石油エーテル及び/又はジエチルエーテルで液・液分配して水層の液を採取し、該水層の液に酢酸エチルを配合して液・液分配を行い、酢酸エチル層の液を採取し、ササ葉及び/又はタケの葉由来のフラボノイド、特にルテオリン6−C−グルコシド、ルテオリン6−C−アラビノシド等のルテオリン配糖体及び/又はトリシンを含む組成物を得る、抗酸化性組成物の製造方法。
【0010】
(3)ササ葉及び/又はタケの葉の低級脂肪族アルコール抽出液から、該アルコールを蒸発するとともに水に置換し、石油エーテル及び/又はジエチルエーテルで液・液分配を行わせて水層の液を採取し、該水層の液に酢酸エチルを添加して液・液分配を行い、ジエチルエーテル層と酢酸エチルの2層からトリシンを含む液を採取することを特徴とする上記(1)の抗酸化性組成物の製造方法。
【0011】
(4)前記低級脂肪族アルコール抽出液を濃縮し、水に置換又は加水し濾過後クロロフィルを濾去、水層にジエチルエーテルを添加し液・液分配を行い、得られる水層にさらに酢酸エチルを加え液・液分配を行い、これらの操作を複数回繰り返し、ジエチルエーテル層、酢酸エチル層からトリシンを、水層及び酢酸エチル層から6−C−グルコシド、ルテオリン6−C−アラビノシド等のルテオリン配糖体を含む液を採取することを特徴とする上記(2)の抗酸化性組成物の製造方法。
【0012】
(5)前記低級脂肪族アルコール抽出液を濃縮し、水に置換又は加水し濾過後クロロフィルを濾去、水層にジエチルエーテルを添加し液・液分配を行い、得られる水層からルテオリン6−C−グルコシド、ルテオリン6−C−アラビノシド等のルテオリン配糖体を含む液又はトリシンを含む液を採取することを特徴とする抗酸化性組成物の製造方法。
(6)ササ葉又はタケの葉の抽出液を直接又は分画後に加水分解することにより、ルテオリン6C−グルコシド、ルテオリン6−C−アラビノシド、トリシンの含有率を高めることを特徴とする上記(1)〜(5)の抗酸化性組成物の製造方法。
【0013】
本発明の方法により得られる抗酸化性組成物には、ササ葉及び/又はタケの葉由来のフラボノイドとして、それ自体新規な化合物であるルテオリン6−C−アラビノシドを含むことがある。この新規化合物は、本発明者らによって発見された従来未知のルテオリン配糖体であって、下記の化学式(1)で表される構造を有する。この新規化合物は、後述する実施例に示す測定データ等から明らかなごとく、良好なDPPHラジカル消去活性、SOD様活性を有するのに加えて、脂質過酸化抑制活性に優れている。しかも、この新規化合物(ルテオリン6−C−アラビノシド)は、褐変酵素ポリフェノールオキシダーゼ(PPO)の阻害活性も非常に大きいという、種々の利点を有する。
【0014】
【化1】
(ただし、上記式中、Heqはequatorial Hを示し、Haxはaxial Hを示す。糖の同じ炭素に付いたプロトンのどちらかを明記するために用いた記号)
【0015】
上記化合物の1H−NMRの値は、δ=3.60(dd,J=2.8,9.6Hz,1H,3”−H),3.72(d,J=12.0Hz,1H,5”−Heq),3.95(m,1H,4”−H),3.99(dd,J=2.4,12.0Hz,1H,5”−Hax),4.24(dd,J=9.6,9.6Hz,1H,2”−H),4.79(d,J=9.6Hz,1H,1”−H),6.50(s,1H,8−H),6.55(s,1H,3−H),6.89(d,J=8.4Hz,1H,5’−H),7.36(br.d,J=2.0Hz,1H,2’−H),7.37(dd,J=2.0,8.4Hz,1H,6’−H)である。
【0016】
また、本発明の方法による抗酸化性組成物は、ササ葉及び/又はタケの葉由来のフラボノイドとして、下記の化学式(2)で表されるルテオリン6−C−グルコシドを含むことがある。ルテオリン6−C−グルコシド自体は、下記の化学式で表される既知の化合物ではあるが、後述する実施例に示すとおり、良好なDPPHラジカル消去活性、SOD様活性を有するのに加えて、脂質過酸化抑制活性にも優れているだけでなく、驚くべきことに、極めて優れた褐変酵素ポリフェノールオキシダーゼ(PPO)の阻害活性を有する。しかも、その活性は、一般に知られているPPO阻害剤、他のフラボノイド類とは比較にならないほどに優れたものである。
ササ葉やタケの葉由来のルテオリン6−C−グルコシドがこのような優れた特性を有することは、従来全く知見がなく、誰もが予想し得ないところであった。
【0017】
【化2】
【0018】
上記化合物の1H−NMRの値は、δ=3.41(m,1H,5”−H),3.44−3.49(m,2H,3”,4”−H),3.72(dd,J=5.6,12.4Hz,1H,6”−CHH),3.86(dd,J=2.8,12.4Hz,1H,6”−CHH),4.16(ddd,J=2.8,9.6,9.6Hz,1H,2”−H),4.90(m,1H,1”−H),6.49(s,1H,8−H),6.56(s,1H,3−H),6.89(d,J=8.4Hz,1H,5’−H),7.36(br.d,J=2.0Hz,1H,2’−H),7.37(dd,J=2.0,8.4Hz,1H,6’−H)である。
【0019】
また、本発明では得られる組成物に含まれる抗酸化性成分が、下記の化学式(3)で表されるトリシン化合物であってもよく、上記の各化合物(ルテオリン6−C−グルコシド、ルテオリン6−C−アラビノシド、トリシン等)が2種以上混在していてもよい。
【0020】
【化3】
【0021】
上記化合物の1H−NMRの値は、δ=3.1−3.6(br.s,2H,7,4’−H−O),3.87(s,6H,2×Me−O),6.17(d,J=2.0Hz,1H,6−H),6.53(d,J=2.0Hz,1H,8−H),6.96(s,1H,3−H),7.31(s,2H,2’,6’−H),13.0(s,1H,5−H−O)である。
【0022】
上記のトリシン化合物は、後述の実施例に示すとおり、抗酸化活性のうちの1つである、脂質過酸化抑制活性に特に優れている。
【0023】
以下、本発明の製造方法に関し、原料及び各工程並びに得られる抗酸化性組成物について、以下に順次詳述する。
【0024】
(原料)
原料となるササは、クマイザサ、チマキザサ、クマザサ、チシマザサ、ミヤコザサ、ヤクシマダケ、スズタケ等その種類は問わない。また、タケも、モウソウチク、インヨウチク、マダケ、オオバヤダケ、メダケ、ホウライチク等が使用可能である、これらのササあるいはタケの葉の部分を、水洗した後、必要に応じて適当な大きさに細断し乾燥(水分除去)して使用する。ササ又はタケの葉は、粉末にしてもよく、枯れさせてもよい。
【0025】
この原料を用いて、図1に例示するようなフローで抽出及び液・液分配を行う。各工程の具体例は、以下のとおりである。
(第1工程:アルコール抽出・蒸発乾固・粗抽出液の調製)
ササ葉1gに対して10倍容のメタノールで抽出する。抽出は暗所で24時間放置し、24時間後濾過する。この操作を4回繰り返し、得られた濾液をあわせ、ロータリーエバポレーターで濃縮乾固し、試料重量の2倍容の純水に溶解する。このようにして得られた溶液を粗抽出液とする。
【0026】
(第2工程:石油エーテルによる液・液分配)
上記の粗抽出液に対して同量の石油エーテルを加え、分液ロートにて水・石油エーテル溶媒の液・液分配を行う。この操作を2〜3回繰り返し行い、石油エーテル層と水層とを得る。石油エーテル層にはクロロフィルが含まれるので廃棄する。
【0027】
(第3工程:ジエチルエーテルによる液・液分配)
次に、得られた水層に該水層と同量のジエチルエーテルを添加し、分液ロートにて水・ジエチルエーテル溶媒の液・液分配を行う。この操作を2〜3回繰り返し行い、ジエチルエーテル層、水層を得る。ジエチルエーテル層をロータリーエバポレーターで乾固する。
【0028】
(第4工程:酢酸エチルによる液・液分配)
第3工程で得られた水層に、該水層と同量の酢酸エチルを加え、分液ロートにて、水・酢酸エチル溶媒の液・液分配を行う。この操作を2〜3回繰り返し行い、酢酸エチル層、水層を得る。各層をロータリーエバポレーターで濃縮乾固し、メタノールに置換する。
【0029】
(組成物に含まれる有効成分)
上述のようにして得たジエチルエーテル層には、主にトリシンが含まれ、酢酸エチル層には、ルテオリン6−C−アラビノシド、ルテオリン6−C−グルコシド並びにトリシンが主に含まれる。一方、水層には、ルテオリン6−C−グルコシドが主に含まれる。すでに述べたように、これらは抗酸化活性を有する化合物であり、これらの少なくとも1種の化合物を含む組成物もまた抗酸化活性を有する。
【0030】
(新規化合物の単離・精製及び同定)
酢酸エチル層に抗酸化成分として含まれるルテオリン6−C−アラビノシドは、それ自体、従来未知の新規化合物である。以下、ルテオリン6−C−アラビノシド及びその他の有効成分の単離・精製及び同定について詳細に説明する。
【0031】
(単離・精製方法)
メタノールに置換した酢酸エチル層2mlを、セファデックス(Sephadex)LH−20をガラス管(内径2cm、高さ90cm)に充填したカラムクロマトグラフィーにアプライする。溶離液に60%メタノールを用い、フラクションコレクターで8mlずつ分画する。それぞれのフラクションについて波長350、330及び250nmにおける吸光度に従い分画し、ピークを得たら、該当ピークを濃縮しフォトダイオードアレイ検出器を用いたHPLCによる分取を行う。HPLCの条件は下記のとおりである。
カラム:TSKgel ODS−80Ts(21.5mmI.D.×300mm)
移動相:水/アセトニトリル/メタノール=7/2/1(v/v/v)
流速:6.0ml/min
オーブン温度:40℃
【0032】
(物質の同定)
本発明で得られる抗酸化性組成物に含まれる有効成分の化合物は、吸収スペクトル分析、質量分析及びNMR分析等により同定することが出来る。以下、本発明者らが実施した同定法について詳述する。
<吸収スペクトル法>
精製物をメタノールに溶解し、450〜230nmにおけるUV・VIS吸収スペクトルを測定した。すなわち、試料のメタノール溶液を測定した後、ナトリウムメチラート(NaOMe)、塩化アルミニウム(AlCl3)、12%塩酸(12%HCl)、酢酸ナトリウム(NaOAc)、ホウ酸(H3BO3)の各種試薬を添加し吸収スペクトルを測定した。その結果は、下記の表1に示すとおりである。
【0033】
【表1】
【0034】
ルテオリン6−C−アラビノシド(Luteolin6−C−arabinoside)
NaOMe添加によってBd.Iが45〜65nmの深色移動することから、3位の遊離水酸基の欠如又は酸素化(OR)が示唆される。また、Bd.Iの極大吸収が増大することより4′位に遊離水酸基が存在することがわかる。
AlCl3添加によってBd.Iが深色移動することより、3位又は5位又はその両方に遊離水酸基ないしは隣接する遊離水酸基が存在する。
AlCl3+HCl添加によってAlCl3のBd.Iより浅色移動するが元のBd.Iに戻りきらないことより、3位又は5位又はその両方に遊離水酸基が存在し、さらにB環中に隣接する遊離水酸基の存在することがわかる。
NaOAc添加によりBd.IIが5〜20nmの深色移動することから7位に遊離水酸基が存在する。
NaOAc+H3BO3添加により、Bd.Iが12〜36nmの深色移動することから3′,4′位に遊離水酸基が存在する。
なお、Bd.Iとは、波長330〜420nm付近の極大吸収を示し、Bd.IIとは230〜290nm付近の極大吸収を示す。また、深色移動は長波長側、浅色移動は短波長側にシフトすることを示す。
以上の事より、3′,4′,5,7位に遊離水酸基が存在するフラボン骨格のルテオリンであることが、また、Bd.IIに2つの極大が見られることから6位又は8位に結合糖が存在することがわかる。
【0035】
ルテオリン6−C−グルコシド(Luteolin6−C−glucoside)
NaOMe添加によってBd.Iが45〜65nmの深色移動することから、3位の遊離水酸基の欠如又は酸素化(OR)が示唆された。また、Bd.Iの極大吸収が増大することより4′位に遊離水酸基が存在することがわかる。
AlCl3添加によってBd.Iが深色移動することより、3位又は5位又はその両方に遊離水酸基ないしは隣接する遊離水酸基が存在する。
AlCl3+HCl添加によってAlCl3のBd.Iより浅色移動するが元のBd.Iに戻りきらないことより、3位又は5位又はその両方に遊離水酸基が存在し、さらにB環中に隣接する遊離水酸基が存在することがわかる。
NaOAc添加によりBd.IIが5〜20nmの深色移動することから7位に遊離水酸基が存在する。
NaOAc+H3BO3添加によってBd.Iから12〜36nmの深色移動することより、3′,4′位に遊離水酸基が存在する。
以上の事より、3′,4′,5,7位に遊離水酸基が存在するフラボン骨格のルテオリンであることが、そして、Bd.IIに2つの極大が見られることから6位又は8位に結合糖が存在することがわかる。
【0036】
トリシン(Tricin)
NaOMe添加によりBd.Iが45〜65nmの深色移動することより、3位の遊離水酸基の欠如又は酸素化(OR)がわかる。また、Bd.Iの極大吸収が増大することより、4′位に遊離水酸基が存在する。
AlCl3添加によりBd.Iが深色移動することから、3位又は5位又はその両方に遊離水酸基ないしは隣接する遊離水酸基が存在する。
AlCl3+HCl添加によりAlCl3のBd.Iと比較し浅色移動しないことより、3位又は5位又はその両方に遊離水酸基が存在するが、B環中に隣接する遊離水酸基がないことがわかる。
NaOAc添加によりBd.IIが5〜20nmの深色移動することから、7位に遊離水酸基が存在する。
NaOAc+H3BO3の添加によりメタノール溶液のBd.Iと比べて深色移動がないことより、隣接する遊離水酸基がないことがわかる。
以上の事より、4′,5,7位に遊離水酸基が存在するフラボン骨格を持つ色素であることがわかる。
【0037】
<質量分析>
精製した試料について、パーセプティブ社製質量分析計Marinerを用い、分子量を正イオンモード(POS)で測定した。条件は下記の表2に示すとおりである。
[質量分析条件]
内部標準:4−acetamidophenol(m/z152.07),reserpine(m/z609.28)
インターフェイス:Electrospray ionization(ESI)
温度:室温(25℃)
【0038】
【表2】
【0039】
ルテオリン6−C−アラビノシド(Luteolin6−C−arabinoside)
吸収スペクトルで糖の結合が示唆されるが、ルテオリン骨格であることを考慮するとm/zから結合糖はペントース1つであることがわかる。また、イオン化の際に断片化を生じていないことから、糖との結合はC結合であることがわかる。
【0040】
ルテオリン6−C−グルコシド(Luteolin6−C−glucoside)
吸収スペクトルで糖の結合が示唆されたが、ルテオリン骨格であることを考慮するとm/zから結合糖はヘキソース1つであることがわかる。またイオン化の際に断片化を生じていないことから、糖とアグリコンの結合はC結合であることがわかる。
【0041】
一般に、ルテオリン配糖体には、抗酸化の他に、抗炎症、ガン予防、抗不整脈作用等が報告されており、上記の2種の化合物にも、本発明者らが確認した抗酸化活性のほかに、抗炎症、ガン予防、抗不整脈作用等も期待される。
【0042】
トリシン(Tricin)
吸収スペクトルからフラボン類であることがわかるが、m/zから結合糖は存在しないアグリコンであることがわかった。また、m/zから構造の2カ所がメトキシル化されていることが推測される。
トリシンには、抗腫瘍活性、抗白血病活性があること、脂質の過酸化を抑制することが知られている。また、防虫効果もある。
【0043】
<NMR分析>
それぞれ、十分に乾燥したサンプルを2〜10mg計量採取し、NMR測定管に移して重メタノールもしくは重ジメチルスルホキシド0.7mlに溶解して、1H−NMRをJeolJNM−A400(400MHz)にて測定する。(内部標準:CD3OD,3.30,DMSO−d6,2.49)
【0044】
ルテオリン6−C−アラビノシド(Luteolin6−C−arabinoside)
δ=3.60(dd,J=2.8,9.6Hz,1H,3”−H),3.72(d,J=12.0Hz,1H,5”−Heq),3.95(m,1H,4”−H),3.99(dd,J=2.4,12.0Hz,1H,5”−Hax),4.24(dd,J=9.6,9.6Hz,1H,2”−H),4.79(d,J=9.6Hz,1H,1”−H),6.50(s,1H,8−H),6.55(s,1H,3−H),6.89(d,J=8.4Hz,1H,5’−H),7.36(br.d,J=2.0Hz,1H,2’−H),7.37(dd,J=2.0,8.4Hz,1H,6’−H).
【0045】
1H−NMRでは測定溶媒として重メタノールが用いられる。芳香族由来と思われるシグナルが5種類それぞれ1H観測される。そのうちδ=6.89(d,J=8.4Hz),7.36(br.d,J=2.0Hz),7.37(dd,J=2.0,8.4Hz)の3種のシグナルの結合定数から、3置換ベンゼンの存在が推定され、置換位置は、オルト及びパラであると考えられる。また、その他2種の芳香族プロトンδ=6.50(s),6.55(s)は一重線であったが、その化学シフトと前述の3種の化学シフトを既知化合物であるルテオリンと比較すると比較的よい一致を示すので、アグリコン部はルテオリンであると推定される。ただし、ルテオリンの6位に相当するシグナルは観測されないので、6位に何らかの置換基の存在が示唆され、吸収スペクトルの結果によく一致する。
次に、δ=3.60(dd,J=2.8,9.6Hz),3.72(d,J=12.0Hz),3.95(m),3.99(dd,J=2.4,12.0Hz),4.24(dd,J=9.6,9.6Hz),4.79(d,J=9.6Hz)のシグナルにより、糖の存在が示唆される。アノマー位(1”位)のプロトン4.79(d,J=9.6Hz)の結合定数から、アノマー位の隣接プロトンとはアキシアル−アキシアルの関係にある、即ち糖部分はβ結合にてアグリコンに結合していると決定される。またその化学シフトがO−グルコシドよりも高磁場シフトしていることから、糖部分はC−グリコシル化しているものと考えられ質量分析の結果に整合した。糖部分のシグナルの化学シフトと結合定数はアラビノースのものとよい対応を示すことから糖部分はアラビノースであると推定される。
以上、アグリコン部、糖部を総合し、先の吸収スペクトルと質量分析結果ををあわせて考慮した結果、この化合物はルテオリン6−C−アラビノシドと決定することができる。
【0046】
ルテオリン6−C−グルコシド(Luteolin6−C−glucoside)
δ=3.41(m,1H,5”−H),3.44−3.49(m,2H,3”,4”−H),3.72(dd,J=5.6,12.4Hz,1H,6”−CHH),3.86(dd,J=2.8,12.4Hz,1H,6”−CHH),4.16(ddd,J=2.8,9.6,9.6Hz,1H,2”−H),4.90(m,1H,1”−H),6.49(s,1H,8−H),6.56(s,1H,3−H),6.89(d,J=8.4Hz,1H,5’−H),7.36(br.d,J=2.0Hz,1H,2’−H),7.37(dd,J=2.0,8.4Hz,1H,6’−H).
【0047】
1H−NMRでは測定溶媒として重メタノールを用いられる。芳香族由来と思われるシグナルが5種類それぞれ1H観測される。そのうちδ=6.89(d,J=8.4Hz),7.36(br.d,J=2.0Hz),7.37(dd,J=2.0,8.4Hz)の3種のシグナルの結合定数から、3置換ベンゼンの存在が推定され、置換位置は、オルト及びパラであると考えられる。また、その他2種の芳香族プロトンδ=6.49(s),6.56(s)は一重線であったが、その化学シフトと前述の3種の化学シフトを既知化合物であるルテオリンと比較すると、かなりよい一致を示すことから、アグリコン部はルテオリンであると推定される。ただし、ルテオリンの6位に相当するシグナルは観測されなかったので、6位に何らかの置換基の存在が示唆され先の吸収スペクトルの結果によく一致する。
次に、δ=3.41(m,1H),3.44−3.49(m,2H),3.72(dd,J=5.6,12.4Hz,1H),3.86(dd,J=2.8,12.4Hz,1H),4.16(ddd,J=2.8,9.6,9.6Hz,1H),4.90(m,1H)のシグナルにより、糖の存在が示唆される。アノマー位(1”位)のプロトン4.90(m)に隣接していると考えられるプロトン4.16(ddd,J=2.8,9.6,9.6Hz)の結合定数より、2”位は二つの隣接するプロトンとアキシアルーアキシアルーアキシアルの関係にあると考えられる。すなわち、糖部分はβ結合にてアグリコン部に結合していると推定される。また、その化学シフトがO−グルコシドよりも高磁場シフトしていることから、C−グリコシル化しているものと考えられ、先の質量分析の結果と一致する。糖部分のシグナルの化学シフトと結合定数はグルコースのものとよい対応を示すことから糖部分はグルコースであると推定される。
以上、アグリコン部、糖部を総合し、先の吸収スペクトルと質量分析結果とをあわせて考慮した結果、この化合物はルテオリン6−C−グルコシドと決定することができる。
【0048】
トリシン(Tricin)
δ=3.1−3.6(br.s,2H,7,4’−H−O),3.87(s,6H,2×Me−O),6.17(d,J=2.0Hz,1H,6−H),6.53(d,J=2.0Hz,1H,8−H),6.96(s,1H,3−H),7.31(s,2H,2’,6’−H),13.0(s,1H,5−H−O).
【0049】
1H−NMRでは測定溶媒として重ジメチルスルホキシドが用いられる。δ=6.17(d,J=2.0Hz,1H,6−H),6.53(d,J=2.0Hz,1H,8−H),6.96(s,1H,3−H),7.31(s,2H,2’,6’−H)に4種の芳香族プロトンが観測される。このうち、δ=6.17(d,J=2.0Hz),6.53(d,J=2.0Hz)に相関が観測され、その結合定数よりこの二つのプロトンはメタの関係にあると推定される。δ=7.31(s)のシグナルが積分比として2プロトン分あること、メトキシ基と考えられるδ=3.87(s)のシグナルが積分比として6プロトン分あること等から、対象性を有する4置換ベンゼンの存在が示唆される。また、δ=3.1−3.6(br.s,2H)に水酸基由来のプロトンが2プロトン、及びδ=13.0(s,1H)の低磁場に水素結合をしていると考えられる水酸基のプロトンが観測されることから、水酸基が3種あると推定される。
以上、先の吸収スペクトル、質量分析結果とをあわせた結果、この化合物はトリシンと決定することができる。
【0050】
なお、後述の実施例2、3で詳述するように、本発明者らの研究によれば、ルテオリン6−C−グルコシド、ルテオリン6−C−アラビノシド、トリシンの3種のフラボノイド成分の収量を上げる方法として、(1)ササ葉抽出液の酸加水分解による方法、及び、(2)分画後ピークの酸加水分解による方法、の2つの方法があることが見出された。また、加水分解は酸を用いるほか、アミラーゼ等の糖鎖切断酵素によっても可能である。
これらの方法によれば、より高い収率で上記3種のフラボノイド化合物を得ることができるので、工業的に特に有利である。
【発明の効果】
【0051】
本発明方法により得られる液状組成物は、抗酸化活性に優れたものであり、従来のササエキス等に比べて、抗酸化活性に優れ、かつ耐熱性、耐光性も良好な組成物が得られる、という利点を有する。具体的に説明すると、ルテオリン6−C−アラビノシド、ルテオリン6−C−グルコシド等のルテオリン配糖体を含む組成物は、DPPHラジカル消去活性、スーパーオキシドアニオンラジカル消去活性(SOD様活性)、脂質過酸化抑制効果等に優れており、しかも、褐変酵素ポリフェノールオキシダーゼ(PPO)の阻害効果が極めて大きいという利点を有する。また、トリシンを含む組成物は、脂質過酸化抑制効果に優れている。
したがって、本発明による抗酸化性の組成物は、化粧品、食品、医薬品等の広い分野で有用である。
さらに、本発明の組成物は、優れた消臭作用を有するため、例えば魚介類等を用いた食品加工時や調理ごみ、畜産廃棄物処理時等に発生する臭気を、該組成物を添加することにより有効に抑制することができるという効果も期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下に、本発明方法の実施例及び比較例を詳述する。ただし、本発明はこれらの実施例によってその範囲が限定されるものではない。なお、例中の%は特に断らない限り重量%を意味する。なお、抗酸化活性の測定は次のように実施した。
【0053】
1.DPPHラジカル消去活性
安定なラジカルであるDPPHラジカルに対するラジカル消去活性について検討した。
0.5mMのDPPHラジカル・エタノール溶液100μl、試料100μlの順に小ワッセルマンに採取し混合した。すばやく攪拌し、偏平セルに吸い上げてキャビティに挿入し、一定時間後(45秒)にESR装置(JeolJES−FR30)に装填し測定を開始した。ブランクには超純水又はアセトニトリルを用いた。下記条件のESRに供した。なお、ラジカルの消去率を(1−サンプル値/ブランク値)×100として求めた。
Field:335±5mT
Power:4mW
Modulation Width:40μT
Sweep Time:2min
Time const:0.1sec
Amp:250
【0054】
2.スーパーオキシドアニオンラジカル消去活性(SOD様活性)
ヒポキサンチンを基質とし、キサンチンオキシターゼ(XOD)の反応によるスーパーオキシドアニオンラジカル発生系を用い、SOD様活性を測定した。
原液DMPO(ラボテックNH−687)15μl、5mMのHypoxanthine(SIGMA H−9377)50μl、5.5mMのDTPA(同仁化学347−01141)35μl、試料50μl、0.4U/mlのXOD(SIGMA X−4376)50μlの順に小ワッセルマンに採取し混合した。すばやく攪拌し、偏平セルに吸い上げてキャビティに挿入し、一定時間後(45秒)にESR装置(JeolJES−FR30)に装填し測定を開始した。ブランクには超純水又はアセトニトリルを用いた。下記条件のESRに供した。スーパーオキシドアニオンラジカルの消去率を(1−サンプル値/ブランク値)×100として求めた。
Field:335±5mT
Power:4mW
Modulation Width:0.079mT
Sweep Time:2min
Time const:0.1sec
Amp:250
【0055】
3.脂質過酸化抑制効果
4%リノール酸メチル・メタノール溶液10ml、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)10mlを遠沈管に採取し、サンプル1ml加え、オーブンで55℃、48時間加熱処理し、過酸化脂質を生成させた。サンプルはササ葉1g/100mlの濃度になるように調製した。ブランクとしてメタノール、対象として20ppmトコフェロールをサンプルの代わりに加え、同様にオーブンで55℃、48時間加熱処理し、過酸化脂質を生成させた。
生じた過酸化脂質の過酸化物価(POV)を常法にしたがい測定し、抗酸化剤が無い状態のコントロールのPOVを0%とし、試料の脂質過酸化抑制率を求めた。
【実施例1】
【0056】
(1)組成物の調製
原料のササ葉として北海道に自生しているクマイザサ(Sasa senanensis)の葉(採取地:網走市葉八坂)を用い、これを図1に示すような手順で、以下のように処理し、液状の組成物を得た。
まず、水洗したササ葉1gを5倍容のメタノールに浸漬・抽出した。暗所で24時間放置して抽出した後、濾過した。次いで濾液をロータリーエバポレーターで濃縮乾固し、ササ葉重量の2倍容の純水に溶解した。得られた水溶液を粗抽出液とした。
上記の粗抽出液に対して、等量の石油エーテルを加え、水・石油エーテル溶媒の液・液分配を行った。この操作を2〜3回繰り返し行い、石油エーテル層及び水層を得た。得られた水層を用い、水・ジエチルエーテル溶媒の液・液分配を行った。この操作を2〜3回繰り返し行い、ジエチルエーテル層と水層とを得た。得られた水層を採取してこれに酢酸エチルを加え、水・酢酸エチルの液・液分配を行った。この操作を2〜3回繰り返し行い、酢酸エチル層及び水層を得た。
得られた各層を採取し、ササ葉重量に対して等量の液量になるようにロータリーエバポレーターで濃縮・乾固し、これをメタノールに置換して抗酸化性組成物を得た。水層については、XADカラムにより遊離の糖を取り除いて抗酸化性組成物を得た。
置換した各層の液状組成物を用い、それぞれフェノール物質の定量及び抗酸化活性の測定を行った。
【0057】
(2)得られた各層組成物のフェノール物質含量の測定
フォリン試薬を用いるSwainらの方法を一部改良した方法により組成物のフェノール物質含量を測定した。すなわち、試料0.5mlに1Nフェノール試薬を1ml加え混合し、1N水酸化ナトリウムを含む10%炭酸ナトリウム2.5mlを加え混合した。混合後、室温で30分間放置した。濁ったサンプルについては遠心分離(1000rpm、10分間)を行い、波長650nmにおける吸光度を測定した。また、0.5mM没食子酸を用いて検量線を作成し、検量線より各層中のフェノール含量及び、ササ葉1g中のフェノール含量を没食子酸換算で求めた。その結果を、図2に示す。
【0058】
(3)得られた各層組成物の抗酸化活性の測定
各層組成物の抗酸化活性を評価するため、安定なラジカルであるDPPHラジカルに対するラジカル消去活性及びSOD様活性(O2−・[スーパーオキシドアニオンラジカル]消去活性)について検討した。
まず、DPPHラジカル消去活性を測定するため、0.5mMDPPHラジカル・エタノール溶液100μl、試料100μlの順に小ワッセルマンに採取し混合した。すばやく攪拌し、偏平セルに吸い上げてキャビティに挿入し、一定時間後(45秒)にESR測定を開始した。ブランクには超純水又はアセトニトリルを用いた。上記の条件のESRに供した。消去率を(1−サンプル値/ブランク値)×100として求めた。得られた消去率より消去率が50%になる濃度(IC50)を求めた。
【0059】
次に、SOD様活性を測定するため、ヒポキサンチンを基質とし、キサンチンオキシターゼ(XOD)の反応によるスーパーオキシドアニオンラジカル発生系を用い、SOD様活性を測定した。
原液DMPO(ラボテックNH−687)15μl、5mM Hypoxanthine50μl、5.5mM DTPA35μl、試料50μl、0.4U/ml XOD50μlの順に小ワッセルマンに採取し混合した。すばやく攪拌し、偏平セルに吸い上げてキャビティに挿入し、一定時間後(45秒)にESR測定を開始した。ブランクには超純水又はアセトニトリルを用いた。上記と同様の条件でESRに供した。
消去率を(1−サンプル値/ブランク値)×100として求めた。得られた消去率より消去率が50%になる濃度(IC50)を求めた。
【0060】
それらの結果を図3に示す。図3に示す結果から、本発明による液状組成物は良好な抗酸化活性を有することがわかる。
【0061】
(分画)
そこで、酢酸エチル層及び水層について、それぞれ、セファデックスLH−20吸着カラムクロマトグラフィーによる分画を行った。
酢酸エチル層、水層のLH−20カラムによる吸着分画の結果、図4及び図5に示すように、酢酸エチル層が8個、水層が7個のピークが観察された。酢酸エチル層のそれぞれのピークをEA#1からEA#8とし、水層のそれぞれのピークをW#1からW#7とした。この得られたピークの各部分を濃縮・乾固し、メタノールに置換した。
【0062】
次に、酢酸エチル層のEA#1からEA#8のピーク部分のフェノール物質の定量を行った。フェノール含量は没食子酸換算で算出した。その結果、EA#3のフェノール物質含有量が0.12mg/gと最も高く、次にEA#7=0.11mg/g、EA#6=0.09mg/g,EA#5=0.07mg/gであった。
【0063】
<抗酸化活性>
また、抗酸化活性を測定した結果、図6に示すごとく、DPPHラジカル消去活性では、EA#3,EA#5,EA#6,EA#7の消去率が高く、それぞれ、60.09%、52.03%、73.74%、79.73%の消去率であった。SOD様活性(スーパーオキシドアニオンラジカル消去活性)では、EA#5,EA#6,EA#7が高く、それぞれ、39.97%、42.35%、53.80%の消去率を示した。
【0064】
一方、酢酸エチルによる液・液分配の結果得られた水層側の液体組成物は、図7に示すように、W#1、W#5〜W#7で、抗酸化活性を有するものであった。
【0065】
また、各分画ピークのフェノール含量と抗酸化活性で相関を調べた。図8に示すように、フェノール含量とDPPHラジカル活性では、R2=0.874、フェノール含量とSOD様活性ではR2=0.7707と、ともに高い比例関係がみられた。このことより、ササ葉の抗酸化活性はフラボノイドに代表されるフェノール成分が関与していると言える。
【0066】
また、図9に見られるように、DPPHラジカル消去能とSOD様活性との関係にも比例関係が見られた。ササ葉の抗酸化成分はDPPHラジカル消去活性、SOD様活性では同じ成分が寄与していると言える。
【0067】
ササ葉から抽出し同定したルテオリン6−C−グルコシドの安定性を調べるため、耐熱性及び耐光性の試験を行った。耐熱性試験は100℃の条件で行い、耐光性試験は紫外線照射により行った。それぞれの試験において、比較試料としてルテオリン7−O−グルコシドを用いた。
耐熱性試験の結果を図10、図12に、耐光性試験の結果を図11、図13に示す。
【0068】
その結果、図10及び図12に示すように、100℃における耐熱性では、各サンプルで時間経過と共に残存率及びDPPHラジカル消去活性に減少傾向がみられたが、ルテオリン6−C−グルコシドはルテオリン7−O−グルコシドに比べても安定性が高く、抗酸化活性の大幅な低下も見られなかった。また、耐光性についても、図11及び図13に示すように、紫外線照射による大きな変化は認められなかった。
この結果より、ササ葉の抗酸化成分であるルテオリン6−C−グルコシドは100℃では壊れにくく、実用上十分な熱安定性を有すること、紫外線に対する安定性が高く耐光性にも優れていることがわかった。
【0069】
下記の表3に、本発明の組成物に含まれる上記各化合物(ルテオリン6−C−アラビノシド、ルテオリン6−C−グルコシド及びトリシン)精製品の抗酸化活性をまとめて示す。
【0070】
【表3】
【0071】
なお、表3中の油脂過酸化抑制率の測定は次のように行った。
<油脂過酸化抑制率の測定>
(1)試料油脂の調整
4%リノール酸メチル・メタノール溶液10ml、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)10mlを遠沈管に採取し、サンプル1ml加え、オーブンで55℃、48時間加熱処理し、過酸化脂質を生成させた。サンプルはササ葉1g/100mlの濃度になるように調製した。ブランクとしてメタノール、対象として20ppmトコフェロールをサンプルの代わりに加え、同様にオーブンで55℃、48時間加熱処理し、過酸化脂質を生成させた。
【0072】
(2)POV検定
POV検定は、日本油脂学会による酸化油脂中の過酸化物価の測定法に従い、過酸化脂質(ヒドロペルオキシド)が酸性条件下で還元される反応に基づき、遊離されるヨウ素をチオ硫酸ナトリウムで滴定する方法で行った。
重クロム酸カリウムを純水に溶解し、0.01N重クロム酸カリウム溶液を作成する。このとき、重クロム酸カリウム溶液のファクター(f=採取量/理論値)を求めておく。ヨウ化カリウム1gを純水5mlに溶解させる。そこに0.01N重クロム酸カリウム溶液20ml、塩酸5mlを加え、撹拌後栓をして5分間暗所に放置した。5分後、純水300mlを加え、遊離ヨウ素を0.01Nチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定した。褐色が消えかかったら、1%澱粉指示薬を加え、青色が完全に消失するまで滴定した。滴定値がVmlのとき、0.01Nチオ硫酸ナトリウム溶液のファクターは、F=20×f/Vで求め、滴定を行った。
上述のように調製した試料油脂1gを採取し、クロロホルム−氷酢酸混液(3:2)25ml、飽和ヨウ化カリウム溶液1ml加え、すぐに撹拌し、1分間暗所に放置した。反応を止めるために純水75mlを加えた。2層に分かれる上層の赤紫色の消失を終点とし、遊離ヨウ素を0.01Nチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定した。空試験には純水1gを用いて行った。ここで、過酸化物価(POV)は、以下の数式で算出される。
【0073】
【数1】
【0074】
表3に示す結果から、本発明者らの発明に係る新規物質であるルテオリン6−C−アラビノシドは、DPPHラジカル消去活性、SOD様活性において特に優れていること、また、ルテオリン6−C−グルコシドは、良好なDPPHラジカル消去活性、SOD様活性を有するのに加えて、脂質過酸化抑制活性に優れていること、一方、トリシンは、DPPHラジカル消去活性、SOD様活性は見られないが、脂質過酸化抑制活性に優れていることがわかった。
【0075】
次に、ササの葉由来のフラボン類について、褐変酵素ポリフェノールオキシダーゼ(PPO)の阻害効果を調べるため、一般に知られているPPO活性阻害剤、他のフラボノイド類との比較測定を行った。その測定方法は以下のとおりであり、測定結果は下掲の表4に示すとおりである。
【0076】
<PPO(褐変酵素ポリフェノールオキシダーゼ)阻害活性の測定>
0.05Mクロロゲン酸を基質とし酵素液としてタマネギ鱗茎より抽出・部分精製を行った酵素液を用いた。すなわち、1.3mlの10mMリン酸緩衝液(pH7.0)に1mM濃度、2mM濃度、10mM濃度に調製した阻害剤を0.1ml、酵素液を0.1ml添加し混合、30℃に10分間予備加温後、0.05Mクロロゲン酸基質溶液を0.1ml加え混合し30℃、30分間加温後の波長420nmにおける褐変度を求めた。阻害剤添加の代わりに10mMリン酸緩衝液(pH7.0)を加えたものをコントロールとし、活性を100%として阻害効果を相対活性で示した。
【0077】
この結果、ササの葉由来のフラボン類(ルテオリン6−C−アラビノシド及びルテオリン6−C−グルコシド)は、一般のPPO活性阻害剤や他のフラボノイド類と比べて卓越したPPO阻害活性を有し、少量の使用でも褐変を防止できることがわかった。
したがって、これらのササの葉由来のフラボン類は、例えば、食品類の褐変防止剤として有効に利用することができる。
【0078】
【表4】
【0079】
さらに、採取した水層、酢酸エチル層の液状組成物等について、ヒト白血病細胞の増殖抑制を調べた。すなわち、対数増殖期にあるU−937細胞を5×104cells/mlの細胞密度に調製し、24ウェルマイクロプレートに0.5mlずつ播種後、インキュベーター内(37℃、95%Air−5%CO2,湿度90%以上)で24時間前培養後、試料を0.25mlずつ加え、インキュベーター内で24時間培養し、トリパンブルー染色法を用い、生細胞数を測定した。陰性対象であるPBS(−)の生細胞数を100とし、試料の増殖抑制率を算出した。
細胞増殖抑制率の測定結果を図14に示す。また、各層のクロマチン凝縮について測定した結果を図15に示す。
これらの図から明らかなように、本発明の抗酸化性組成物のうち、特に水層、水(メタノール可溶性)、酢酸エチル層は、ヒト腫瘍細胞(白血病)の増殖抑制効果も有し、水層、水(メタノール可溶性)、酢酸エチル層、ジエチルエーテル層はクロマチン凝縮活性を有することがわかった。
【0080】
さらに、前記ササの葉から抽出単離したルテオリン6−C−グルコシド、ルテオリン、ルテオリン7−O−グルコシドについても、同様の方法でヒト白血病細胞の増殖抑制効果を測定した。その結果は図16に示すとおりであり、ササの葉由来のルテオリン6−C−グルコシドは、卓越した高い増殖抑制効果を有することが確認された。
【実施例2】
【0081】
本実施例では、クマイザサのササ葉抽出液を加水分解した場合について説明する。
すなわち、クマイザサ抽出液の酸加水分解とは、クマイザサ抽出液(メタノール溶液)に塩酸(最終濃度が0.2〜0.7N)を加え(抽出液と塩酸の比率は1:1になるようにする)、混合後、100℃のウォーターバスで30分間加熱し、30分後、氷中で冷却した。
各加水分解物(無処理を含む)は、XADカラムに吸着させ、加水分解物から酸を洗い流し、メタノールに溶媒置換後、LH−20カラムに供し、精製後HPLCで定量分析した。
【0082】
まず、図17にササ葉抽出液の非加水分解物のLH−20溶出パターンを示す。そして、ササ葉抽出液を0.2N塩酸中、100℃、30分間、加水分解した後のLH−20溶出パターンを図18に、0.7N塩酸中、100℃、30分間加水分解した後のLH−20溶出パターンを図19に示す。
図17において、BIIはルテオリン6−C−グルコシド(Luteolin6−C−glucoside)の溶出ピーク、BIIIはルテオリン6−C−アラビノシド(Luteolin6−C−arabinoside)のピークであり、トリシンアグリコンは図18では2HIIIのピークである。それぞれの処理によって得られる各フラボンの結果を、それぞれ図20、図21及び図22に示す。なお、HPLCやXADカラム、LH−20カラムの条件はすでに述べた条件と同じである。
図17、図18、図19から、加水分解によって図17のBIピークが減少し、図18の2HIII及び図19の7HIIIが新たに検出することが確認できる。図17のBIIピーク、図18の2HIピーク及び図19の7HIピークは溶出位置から同じ成分であることがわかる。このピークは以前に同定したルテオリン6−C−グルコシドである。図17のBIIIピーク、図18の2HIIピーク及び図19の7HIIピークは溶出位置から同じ成分であることがわかる。このピークは、以前に同定したルテオリン6−C−アラビノシドである。
【0083】
また、図20より酸加水分解処理を行うことでルテオリン6−C−グルコシドの含量が約1.7倍多くなったことがわかる。したがって、最終濃度0.2〜0.7Nの塩酸で100℃、30分間加熱処理することでルテオリン6−C−グルコシドの収量を上げることが出来る。また、図21より同様の酸加水分解処理を行うことでルテオリン6−C−アラビノシドの含量が約3.3倍多くなったことがわかる。したがって、最終濃度0.2〜0.7Nの塩酸で100℃、30分間加熱処理することで、その収量を大幅に上げることが出来る。さらに、図22に示すように、酸加水分解処理を行うことで、トリシンアグリコンを含んでいないサンプルでも、最終濃度0.2〜0.7Nの塩酸で100℃、30分間加熱処理することでトリシンを得ることが出来る。
【実施例3】
【0084】
本実施例では、ササ葉抽出液をLH−20カラムで分画し、配糖体を含むフラクションを加水分解し、各加水分解物(無処理を含む)はXADカラムに吸着させ加水分解物から酸を洗い流しメタノールに溶媒置換し、HPLC分析した。すなわち、クマイザサ抽出液のLH−20カラム分画液(メタノール溶液)に塩酸(最終濃度が0.2〜0.7N)を加える(分画液と塩酸の比率は1:1になるようにする)。混合後、100℃のウォーターバスで30分間加熱し、30分後、氷中で冷却した。
【0085】
図23、図24及び図25に、図17の無処理ササ葉抽出液のLH−20カラム分画分で、配糖体が含まれていると考えられるフラクション(BI)を加水分解して得られる各フラボン量の定量結果を示す。これらの図23、図24及び図25から明らかなように、ササ葉抽出液をセファデックスLH−20カラムで分画した後でも、酸加水分解処理を行うことにより、ルテオリン6−Cグルコシド、ルテオリン6−Cアラビノシド、トリシンを高収率で得ることが出来ることが確認された。
【0086】
以上より、ルテオリン6−C−グルコシド、ルテオリン6−C−アラビノシド、トリシンの3種のフラボノイド成分の収量を上げる方法として、(1)ザサ葉抽出液の酸加水分解による方法、及び(2)分画後ピークの酸加水分解による方法、の2つの方法があることが確認された。
【実施例4】
【0087】
トリシンアグリコンを含むササ葉検体(採取地:北海道興部町)を試料として、実施例1と同様にジエチルエーテルによる液・液分配して得られた水層を採取し、セファデックスLH−20カラムによる分画を行った。そのチャートを図26に示す。この図26より、波長350nmでは液中にルテオリン6−C−グルコシド、ルテオリン6−C−アラビノシド、トリシンが多く含有することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】 本発明の方法の工程概略図
【図2】 各層のフェノール物質含有量を示すグラフ
【図3】 各層の抗酸化活性の測定結果を示すグラフ
【図4】 酢酸エチル層の分画を示すチャート
【図5】 水層の分画を示すチャート
【図6】 酢酸エチル層の各ピークの抗酸化活性の測定結果を示すグラフ
【図7】 水層の各ピークの抗酸化活性の測定結果を示すグラフ
【図8】 フェノール含量と抗酸化活性との相関を示すグラフ
【図9】 O2消去率とDPPHラジカル消去率の相関を示すグラフ
【図10】 ルテオリン6−C−グルコシドとルテオリン7−O−グルコシドの耐熱性測定結果を示すグラフ
【図11】 ルテオリン6−Cグルコシドとルテオリン7−O−グルコシドの耐光性測定結果を示すグラフ
【図12】 ルテオリン6−C−グルコシドとルテオリン7−O−グルコシドの耐熱試験における時間経過によるDPPHラジカル消去活性の変化を示すグラフ
【図13】 ルテオリン6−C−グルコシドとルテオリン7−O−グルコシドの耐光試験における時間経過によるDPPHラジカル消去活性の変化を示すグラフ
【図14】 各層のヒト白血病細胞の増殖抑制を測定した結果を示すグラフ
【図15】 各層のクロマチン凝縮を測定した結果を示すグラフ
【図16】 ルテオリン6−C−グルコシド、ルテオリン及びルテオリン7−O−グルコシドについてヒト白血病細胞の増殖抑制を測定した結果を示すグラフ
【図17】 クマイザサ抽出液のセファデックスLH−20カラムによる分画を示すチャート(LH−20カラム条件=カラム径:2I.D.×80cm、移動相:60%メタノール流速:1.0ml/min、分画サイズ:8ml、BI:Frac.No.66〜94、BII:Frac.No.95〜115、BIII:Frac.No.116〜143に分画)
【図18】 クマイザサ抽出液を加水分解(最終濃度0.2N塩酸、100℃、30分間加熱)処理した液のセファデックスLH−20カラムによる分画を示すチャート(LH−20カラム条件=カラム径:2I.D.×80cm、移動相:60%メタノール、流速:1.0ml/min、分画サイズ:8ml、2HI:Frac.No.91〜112.2HII:Frac.No.113〜132、2HIII:Frac.No.199〜220に分画)
【図19】 クマイザサ抽出液を加水分解(最終濃度0.7N塩酸、100℃、30分間加熱)処理した液のセファデックスLH−20カラムによる分画を示すチャート(LH−20カラム条件=カラム径:2I.D.×80cm、移動相:60%メタノール、流速:1.0ml/min、分画サイズ:8ml、7HI:Frac.No.88〜108、7HII:Frac.No.109〜132、2HIII:Frac.No.189〜212に分画)
【図20】 ルテオリン6−C−グルコシド含量を示すグラフであって、図17のBIIピーク、図18の2HIピーク及び図19の7HIピークの各ピークに含まれるルテオリン6−C−グルコシドを定量したときの結果を示すデータ(BIIピークを未処理、2HIピークを0.2N HCl処理、7HIピークを0.7NHCl処理としてそれぞれX軸表記)
【図21】 ルテオリン6−C−アラビノシドの含量を示すグラフであって、図17のBIIIピーク、図18の2HIIピーク及び図19の7HIIピークの各ピークに含まれるルテオリン6−C−アラビノシドを定量したときの結果を示すデータ(BIIIピークを未処理、2HIIピークを0.2N HCl処理、7HIIピークを0.7NHCl処理としてそれぞれX軸表記)
【図22】 トリシン(アグリコン)の含量を示すグラフであって、図18の2HIIIピーク及び図19の7HIIIピークを使用したときのデータ(クマイザサ抽出液のセファデックスLH−20カラムの溶出結果からトリシンのピークが検出されなかったため、未処理は0として算出し,2HIIIピークを0.2NHCl処理、7HIIIピークを0.7NHCl処理とそれぞれX軸表記)
【図23】 BIピークの酸加水分解によるルテオリン6−C−グルコシド含量の変化を示すグラフであって、図17のBIピークに加水分解[最終濃度0.2N塩酸、100℃、30分間加熱処理]を施したときのデータ(酸加水分解処理前のものを水解前、酸加水分解処理したものを水解後とX軸に表記)
【図24】 BIピークの酸加水分解(水解)によるルテオリン6−C−アラビノシド含量の変化を示すグラフであって、図17のBIピークを最終濃度0.2N塩酸、100℃、30分間加熱処理を行った場合のデータ(酸加水分解処理前のものを水解前、酸加水分解処理したものを水解後とX軸に表記)
【図25】 BIピークの酸加水分解(水解)によるトリシン(アグリコン)含量の変化を示すグラフであって、図17のBIピークを最終濃度0.2N塩酸、100℃、30分間加熱処理を行ったときのデータ(酸加水分解前のものを水解前、酸加水分解処理したものを水解後とそれぞれX軸に表記)
【図26】 ジエチルエーテルによる液・液分配で得られる水層のセファデックスLH−20カラムによる分画を示すチャート(試料葉採取地:北海道興部町)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ササ及び/又はタケの葉の低級脂肪族アルコール、アセトン、アセトニトリル、熱水又は希酸溶液による抽出液から、当該溶液を蒸発するとともに水に置換又は加水し、濾過後又は濾過をせず、石油エーテル、ジクロロメタン、ベンゼン及び/又はジエチルエーテルで液・液分配を行わせて水層の液を採取し、該水層の液に酢酸エチルを添加して液・液分配を行い、酢酸エチル層、水層及び/又はジエチルエーテル層の液を採取し、ササ及び/又はタケの葉由来のフラボノイド成分を含む組成物を得ることを特徴とする抗酸化性組成物の製造方法。
【請求項2】
ササ葉及び/又はタケの葉の低級脂肪族アルコール抽出液から、該アルコールを蒸発するとともに水に置換し、石油エーテル及び/又はジエチルエーテルで液・液分配して水層の液を採取し、該水層の液に酢酸エチルを配合して液・液分配を行い、酢酸エチル層の液を採取し、該液及び各水層、ジエチルエーテル層からササ葉及び/又はタケの葉由来のフラボノイド、特にルテオリン6−C−グルコシド、ルテオリン6−C−アラビノシド等のルテオリン配糖体及び/又はトリシンを含む組成物を得ることを特徴とする請求項1に記載の抗酸化性組成物の製造方法。
【請求項3】
ササ葉及び/又はタケの葉の低級脂肪族アルコール抽出液から、該アルコールを蒸発するとともに水に置換し、石油エーテル及び/又はジエチルエーテルで液・液分配を行わせて水層の液を採取し、該水層の液に酢酸エチルを添加して液・液分配を行い、ジエチルエーテル層と酢酸エチルの2層からトリシンを含む組成物を得ることを特徴とする請求項1に記載の抗酸化性組成物の製造方法。
【請求項4】
前記低級脂肪族アルコール抽出液を濃縮し、水に置換又は加水し濾過後クロロフィルを濾去、水層にジエチルエーテルを添加し液・液分配を行い、得られる水層にさらに酢酸エチルを加え液・液分配を行い、これらの操作を複数回繰り返し、ジエチルエーテル層、酢酸エチル層からトリシンを含む液を、水層及び酢酸エチル層からルテオリン6−C−グルコシド、ルテオリン6−C−アラビノシド等のルテオリン配糖体を含む組成物をそれぞれ採取することを特徴とする請求項2記載の抗酸化性組成物の製造方法。
【請求項5】
前記低級脂肪族アルコール抽出液を濃縮し、水に置換又は加水し濾過後クロロフィルを濾去、水層にジエチルエーテルを添加し液・液分配を行い、得られる水層からルテオリン6−C−グルコシド、ルテオリン6−C−アラビノシド等のルテオリン配糖体を含む液又はトリシンを含む液を採取することを特徴とする抗酸化性組成物の製造方法。
【請求項6】
ササ葉又はタケの葉の抽出液を直接又は分画後に加水分解することにより、ルテオリン6−C−グルコシド、ルテオリン6−C−アラビノシド、トリシンの含有率を高めることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の抗酸化性組成物の製造方法。
【請求項1】
ササ及び/又はタケの葉の低級脂肪族アルコール、アセトン、アセトニトリル、熱水又は希酸溶液による抽出液から、当該溶液を蒸発するとともに水に置換又は加水し、濾過後又は濾過をせず、石油エーテル、ジクロロメタン、ベンゼン及び/又はジエチルエーテルで液・液分配を行わせて水層の液を採取し、該水層の液に酢酸エチルを添加して液・液分配を行い、酢酸エチル層、水層及び/又はジエチルエーテル層の液を採取し、ササ及び/又はタケの葉由来のフラボノイド成分を含む組成物を得ることを特徴とする抗酸化性組成物の製造方法。
【請求項2】
ササ葉及び/又はタケの葉の低級脂肪族アルコール抽出液から、該アルコールを蒸発するとともに水に置換し、石油エーテル及び/又はジエチルエーテルで液・液分配して水層の液を採取し、該水層の液に酢酸エチルを配合して液・液分配を行い、酢酸エチル層の液を採取し、該液及び各水層、ジエチルエーテル層からササ葉及び/又はタケの葉由来のフラボノイド、特にルテオリン6−C−グルコシド、ルテオリン6−C−アラビノシド等のルテオリン配糖体及び/又はトリシンを含む組成物を得ることを特徴とする請求項1に記載の抗酸化性組成物の製造方法。
【請求項3】
ササ葉及び/又はタケの葉の低級脂肪族アルコール抽出液から、該アルコールを蒸発するとともに水に置換し、石油エーテル及び/又はジエチルエーテルで液・液分配を行わせて水層の液を採取し、該水層の液に酢酸エチルを添加して液・液分配を行い、ジエチルエーテル層と酢酸エチルの2層からトリシンを含む組成物を得ることを特徴とする請求項1に記載の抗酸化性組成物の製造方法。
【請求項4】
前記低級脂肪族アルコール抽出液を濃縮し、水に置換又は加水し濾過後クロロフィルを濾去、水層にジエチルエーテルを添加し液・液分配を行い、得られる水層にさらに酢酸エチルを加え液・液分配を行い、これらの操作を複数回繰り返し、ジエチルエーテル層、酢酸エチル層からトリシンを含む液を、水層及び酢酸エチル層からルテオリン6−C−グルコシド、ルテオリン6−C−アラビノシド等のルテオリン配糖体を含む組成物をそれぞれ採取することを特徴とする請求項2記載の抗酸化性組成物の製造方法。
【請求項5】
前記低級脂肪族アルコール抽出液を濃縮し、水に置換又は加水し濾過後クロロフィルを濾去、水層にジエチルエーテルを添加し液・液分配を行い、得られる水層からルテオリン6−C−グルコシド、ルテオリン6−C−アラビノシド等のルテオリン配糖体を含む液又はトリシンを含む液を採取することを特徴とする抗酸化性組成物の製造方法。
【請求項6】
ササ葉又はタケの葉の抽出液を直接又は分画後に加水分解することにより、ルテオリン6−C−グルコシド、ルテオリン6−C−アラビノシド、トリシンの含有率を高めることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の抗酸化性組成物の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
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【図11】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2006−265247(P2006−265247A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−75571(P2006−75571)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年9月1日 日本食品科学工学会第51回大会事務局発行の「日本食品科学工学会 第51回大会講演集」に発表
【出願人】(598096991)学校法人東京農業大学 (85)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年9月1日 日本食品科学工学会第51回大会事務局発行の「日本食品科学工学会 第51回大会講演集」に発表
【出願人】(598096991)学校法人東京農業大学 (85)
【Fターム(参考)】
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