説明

抗B型肝炎ウィルス活性を有するヌクレオシド

【課題】抗B型肝炎ウィルス(HBVとも称される)活性化合物と、その治療法の提供。
【解決手段】抗B型肝炎活性を示すヌクレオシドの安定化されたヌクレオチドプロドラッグである、β−L−ジデオキシアデノシンのヌクレオチドプロドラッグと第二の化合物であるAZT等とを併用して投与することを含む、HBVに感染した宿主、特にヒトの治療方法。また、そのプロドラッグ体が、モノ、ジ、トリホスフェート等である医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗B型肝炎ウィルス(HBVとも称される)の治療法の分野にあり、1又はそれ以上の本明細書中に開示された活性化合物又は薬学的に許容しうるその誘導体、あるいはそれらの化合物の1つのプロドラッグの有効量を投与することを含む。
【背景技術】
【0002】
HBVはヒトの癌の原因としてたばこに劣らない。HBVが癌を誘導する機作は不明であるが、HBVが腫瘍の成長を直接的に誘発するか、又は感染に関連した慢性の炎症、硬変、及び細胞再生によって間接的に腫瘍成長を誘発する可能性があることが考えられる。
【0003】
B型肝炎ウィルスは世界中に伝染するレベルに達した。宿主が感染に気づかない2〜6か月の潜伏期間の後、HBV感染は急性肝炎及び肝障害を引き起こし、それにより腹痛、黄疸及びある種の酵素の血中レベルを高める原因となる。HBVは、肝臓の対部分が破壊され、非常に進行性で往々にして致死的である激症肝炎の原因となりうる。患者は、一般に急性ウィルス性肝炎からは回復する。しかし、ある患者においては、長期的に又は一生高いレベルのウィルス性抗原が血液中に存続し続け、慢性的感染を起こす。慢性的感染は、慢性持続性肝炎を引き起こすことになる。慢性持続性HBVに感染した患者は、発展途上国で最も一般的である。1991年の半ばまでに、アジアだけで約2億2,500万人の慢性のHBVキャリアがおり、世界にはほぼ3億人のキャリアが存在した。慢性持続性肝炎は、疲労、肝硬変及び第一期の肝臓癌である肝細胞性癌腫の原因となりうる。西側産業高度発展諸国において、HBVに感染するリスクの高いグループは、HBVキャリア又はかれらの血液検体と接触するグループである。HBVの疫学は、後天性免疫不全症候群のそれに非常に似ており、このことはHBV感染が、AIDS又はAIDS関連感染症の患者の間に普遍的である理由を説明している。しかしながら、HBVはHIVよりも感染性が高い。
【0004】
遺伝子工学で製造された蛋白であるα−インターフェロンによる日常の治療は、有望であることが判明している。ヒト血清に由来するワクチンもHBVに対して患者を免疫化するために開発されている。ワクチンは遺伝子工学により製造されている。ワクチンが効果的であることは判明しているが、その製造は慢性のキャリアからのヒト血清の供給が限られているので困難であり、その精製工程は長時間を有し、費用がかかる。更に別々の血清から作られたバッチごとにそのワクチンをチンパンジーで試験して安全性を試験しなければならない。加えて、ワクチンはすでにウィルスに感染した患者には効果がない。
【0005】
ヨーロッパ特許出願第92304530.6号は、1,2−オキサチオランヌクレオシドがB型肝炎の治療に有用であることを開示している。2−ヒドロキシメチル−5−(シトシン−1−イル)−1,3−オキサチオランが抗B型肝炎活性を有していると報告されている(Doong,et al.,Proc.of Natl.Acad.Sci.ISA,88,8495-8499(1991);Chang,et al.,J.of Biological Chem.,Vol.267(20),13938-13942)。2−ヒドロキシメチル−5−(5−フルオロシトシン−1−イル)−1,3−オキサチオランの(−)及び(+)−エナンチオマーの抗B型肝炎活性は、Furman,et al.により、Antimicrobial Agents and Chemotherapy,Dec.1992,pp.2686-2692に発表されている。
【0006】
エール大学が出願したPCT/US92/03114(国際公開パンフレットWO92/18517)においては、HBV及びHIVの治療のためのいくつかのβ−L−ヌクレオシドが開示されている。HBVの治療のために開発された他の薬剤としては、アデノシンアラビノシド、チモシン、アシクロビル、ホスホノホルメート、ジドブジン、(+)−シアニダノール、キナクリン及び2′−フルオロアラビノシル−5−ヨードウラシルがある。
【0007】
ウィルス性疾患、特にHBV及びHIVに対するプリン及びピリミジンヌクレオシドの作用機作の基本的段階は、細胞性及びウィルス性キナーゼによる代謝的な活性化によりモノ−、ジ−及びトリホスフェート誘導体を得ることにある。多くのヌクレオシドのなかで生物学的に活性なのは、トリホスフェート型のものであって、これがDNAポリメラーゼ又は逆転写酵素を阻害するか、あるいは鎖の終止を起こさせる。HBV及びHIVの治療のために今日まで開発されてきたヌクレオシド誘導体は、ヌクレオシドがその抗ウィルス効果を表すのに先立って細胞内でホスホリル化されなければならないのにもかかわらず、宿主に投与するためにはホスホリル化されていない形で提供されてきている。というのは、トリホスフェート型は、一般に細胞に到達する以前に脱ホスホリル化されるか、又は、細胞にほとんど吸収されないからである。一般にヌクレオチドは、細胞膜を通過するのが非常に困難であり、一般にin vitroでは強力であるとは言いがたい。ヌクレオチドの吸収及びこの効力を増加させるためにヌクレオチドを改変する試みは、R.Jones and N.Bischofberger,Antiviral Research,27,(1995)1-17に記載されており、その内容は、参考として本明細書中に包含した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
B型肝炎ウィルスが世界中に伝染するレベルに達し、感染した患者に、重篤でかつしばしば悲劇的な影響を与えることからして、このウイルスに感染した人々を治療するための、宿主に毒性の少ない、新しく効果的な薬剤に対する強い要望が存在する。
【0009】
したがって、HBVに感染したヒト患者及び他の宿主の治療のための方法及び組成物を提供することが本発明のもうひとつの目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
HBVに感染した宿主、特にヒトの治療のための方法を提供するものであり、その方法は、次式:
【0011】
【化2】

(式中、R1は、水素、フルオロ、ブロモ、クロロ、ヨード、メチル又はエチルであり;R2は、OH、Cl、NH2又はHである)で示されるヌクレオシド又は薬学的に許容しうるその塩のHBV治療量を、場合によっては薬学的に許容しうる担体又は希釈剤に加えて投与することを含む。
【0012】
他の態様においては、次式:
【0013】
【化3】

(式中、R5は、アデニン、キサンチン、ヒポキサンチン、あるいはアルキル化又はハロゲン化したプリンを含む他のプリンである)で示される化合物のβ−L−エナンチオマーの、本明細書中により詳しく記載されているHBV治療量を宿主に投与する。
【0014】
他の代替的態様においては、ヌクレオシドは、次式:
【0015】
【化4】

〔式中、「塩基」はプリン又はピリミジン塩基であり;
1、Y2、Y3及びY4は、独立してH、OH、N3、NR12、NO2、NOR3、−O−アルキル、−O−アリール、ハロ(F、Cl、Br又はIを含む)、−CN−、C(O)NH2、SH、−S−アルキル又は−S−アリールであり、一般に、Y1、Y2、Y3及びY4のうちの3つがH又はOHである。この−OH置換基は、存在する時は、一般にY1又はY3基である。構造式に示されるように、Y2及びY4はアラビノ(エリトロ)配置にあり、Y1及びY3は、トレオ(リボース)配置にある。Rは、H、モノホスフェート、ジホスフェート、トリホスフェート、アルキル、アシル又は以下により詳細に記載するホスフェート誘導体である。R1、R2及びR3は、独立してアルキル(特に低級アルキル)、アリール、アラルキル、アルキルアリール、アシル又は水素である〕で示されるものである。
【0016】
好ましい態様においては、ヌクレオシドは示したエナンチオマーとして提供され、実質的に、その対応のエナンチオマーを含まない(すなわち、エナンチオマー過剰の状態)で提供される。
【0017】
他の実施態様においては、本発明はHBVに感染したヒトの治療方法を含み、これは、特定の開示されたヌクレオシドのプロドラッグのHBV治療量を投与することを含む。ここで用いる「プロドラッグ」とは、特に開示されたヌクレオシドの薬学的に許容しうる誘導体を意味し、これは、投与されると生体内で該ヌクレオシドに変換されるか、又は、それ自身が活性を有している。限定の意味ではなく例としてあげられるのは、活性化合物の5′、及びN4−ピリミジン、あるいはN6−プリンをアシル化又はアルキル化した誘導体である。
【0018】
本発明の好ましい態様においては、ヌクレオシドは、脱ホスホリル化から化合物を保護するための処方のモノホスフェート、ジホスフェート又はトリホスフフェートの形で提供される。処方としては、リポソーム、リポスフェア、ミクロスフェア又はナノスフェア(そのなかでも後の三者が感染細胞を標的とすることができる)を含む。代替的な好ましい態様としては、ヌクレオシドは、モノホスフェート、ジホスフェート又はトリホスフェート誘導体(すなわち、ヌクレオチドプロドラッグ)、例えばエステルとして提供され、この形はインビボでホスフェートを安定化する。本発明の他の代替的態様としては、FTC、BCH−189又は3TCの安定化したホスフェート誘導体(以下に更に記載する)を肝炎の治療のために提供する。
【0019】
開示されたヌクレオシド、又はその薬学的に許容しうるプロドラッグ又は塩、あるいはそれらの化合物を含有する薬学的に許容しうる処方は、HBV感染及び他の関連症状、例えば抗HBV抗体陽性及びHBV陽性症状、HBVにより引き起こされる慢性的肝炎症、硬変、急性肝炎、激症肝炎、慢性持続性肝炎及び疲労の予防及び治療に有用である。これらの化合物又は処方はまた、抗HBV抗体又はHBV−抗原陽性であるか、あるいは、HBVに暴露され続けてきた人々における臨床疾患を防ぐために予防的に又はその進行を遅らせるために用いられる。
【0020】
本発明のひとつの態様として、活性化合物の1又はそれ以上を、他の抗HBV剤の1又はそれ以上と交互に、又は組み合わせて投与して、効果的に抗HBV治療を提供する。交互治療又は組み合わせ治療に用いられる抗HBV剤の例としては、限定の意味なく、2−ヒドロキシメチル−5−(5−フルオロシトシン−1−イル)−1,3−オキサチオラン(FTC、WO92/14743参照)、その生理学的に許容しうる誘導体、又は生理学的に許容しうる塩;2−ヒドロキシメチル−5−(シトシン−1−イル)−1,3−オキサチオラン(ラセミBCH−189型を含むか、又は3TC((−)−エナンチオマー富化されたBCH−189)、その生理学的に許容しうる誘導体又は生理学的に許容しうる塩;2’−フルオロ−5−エチル−アラビノシルウラシル(FEAU);カルボビル又はインターフェロンがある。
【0021】
患者に対して処理をするいかなる交互治療法も用いることができる。限定の意味なく、その変法の例としては、1種の薬剤の有効量を1〜6週投与し、それに続いて第二の抗HBV剤の有効量を1〜6週投与するという方法がある。交互法のスケジュールは、治療を行わない期間を含んでもよい。組み合わせ治療は、一般に、2又はそれ以上の抗HBV剤を有効な用量比で同時に投与することを含む。
【0022】
HBVがしばしば抗HIV抗体又はHIV−抗原陽性でもある患者、あるいはHIVに暴露されてきた人々において見い出される事実にかんがみ、本明細書中に開示されている活性な抗HBV化合物又はその誘導体もしくはプロドラッグは、適切な状況において、限定の意味なしに3′−アジド−3′−デオキシチミジン(AZT)、2′,3′−ジデオキシイノシン(DDI)、2′、3′−ジデオキシシチジン(DDC)、2′、3′−ジデオキシ−2′、3′−ジデヒドロチミジン(D4T)、2−ヒドロキシメチル−5−(5−フルオロシトシン−1−イル)−1,3−オキサチオラン(FTC)又は2−ヒドロキシメチル−5−(シトシン−1−イル)−1,3−オキサチオラン(BCH−189のラセミ体もしくは(−)エナンチオマー過剰のBCH−189、3TC)をはじめとする抗HIV剤と組み合わせるかあるいはそれと交互に投与することができる。非ヌクレオシドRT阻害剤、例えばTiboクラスの化合物、ネビラピン(nevirapine)又はピリミジノンもまた、本発明の化合物と組み合わせて投与しうる。
【0023】
活性な抗HBV剤はまた、第二の感染症の治療のために投与される抗生物質、他の抗ウィルス化合物、抗真菌剤又は他の薬剤と組み合わせて投与される。
【0024】
ひとつの態様として、ヌクレオシドは、感染細胞に取り込まれるのに先立って、脱ホスホリル化を減少させたり阻止するため安定化された、ホスフェート誘導体として提供される。ヌクレオシドの5′−位で安定化されたホスフェート誘導体のいくつかが既知であって、文献に発表されている。ひとつの態様として、ヌクレオシドは以下により詳細に開示するSATE誘導体として投与される。該化合物の活性を実質的に損なうことがなければ、いかなる代替的安定化ホスフェート誘導体もヌクレオシド5′−位に置き換えることができる。
【0025】
発明の詳細な説明
ここで用いられている「エナンチオマー的に純粋な」という用語は、ヌクレオシドの1つのエナンチオマーを少なくとも約95%、好ましくは約97%、98%、99%又は100%含むヌクレオシド組成物を意味する。
【0026】
ここで用いられている用語「アルキル」は、特に言及しない限り、C1〜C10の、飽和の直鎖、分岐鎖又は環状の、一級、二級又は三級炭化水素であって、特にメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、3−メチルペンチル、2,2−ジメチルブチル及び2,3−ジメチルブチルを含む。このアルキル基は、場合によっては、1以上の部分(保護されていなくてもよく、必要であれば当業者に既知の方法、例えば、Greene,et al.,"Protective Groups in Organic Synthesis," John Wiley and sons,Second Edition,1991 に教示のように保護されていてもよい、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、ニトロ、シアノ、スルホン酸、スルフェート、ホスホン酸、ホスフェート又はホスホネートからなる群から選択される)により置換されていてもよい。ここで用いられる用語「低級アルキル」とは、特に言及しない限りは、C1〜C4エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル又はt−ブチル基を意味する。
【0027】
ここで用いられる用語「アシル」は、限定の意味なしに、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ペンタノイル、3−メチルブチリル、コハク酸水素エステル基、3−クロロベンゾエート基、ベンゾイル、アセチル、ピバロイル、メシレート基、プロピオニル、バレリル、カプロイック、カプリリック、カプリック、ラウリック、ミリスチック、パルミチック、ステアリック及びオレイックを含む。
【0028】
ここで用いられている「アリール」とは、特に言及しないかぎり、フェニル、ビフェニル又はナフチルであり、好ましくはフェニルである。このアリール基は場合により、1以上の部分(保護されていなくてもよく、又は必要であれば、当業者に既知の方法、例えば、Greene,et al.,“Protective Groups in Organic Synthesis, ” John Wiley and Sons,Second Edition,1991 に教示されているように保護されていてもよい、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、ニトロ、シアノ、スルホン酸、スルフェート、ホスホン酸、ホスフェート又はホスホネートからなる群から選択される)により置換されていてもよい。
【0029】
「プリン又はピリミジン塩基」という用語には、限定の意味なしに、アデニン、N6−アルキルプリン、N6−アシルプリン(ここで、「アシル」とはC(O)(アルキル、アリール、アルキルアリール又はアリールアルキル)である)、N6−ベンジルプリン、N6−ハロプリン、N6−ビニルプリン、N6−アセチレン(acetylenic)プリン、N6−アシルプリン、N6−ヒドロキシアルキルプリン、N6−チオアルキルプリン、N2−アルキルプリン、N2−アルキル−6−チオプリン、チミン、シトシン、6−アザピリミジン、2−及び/又は4−メルカプトピリジミジン、ウラシル、C5−アルキルピリミジン、C5−ベンジルピリミジン、C5−ハロピリミジン、C5−ビニルピリミジン、C5−アセチレンピリミジン、C5−アシルピリミジン、C5−ヒドロキシアルキルプリン、C5−アミドピリミジン、C5−シアノピリミジン、C5−ニトロピリミジン、C5−アミノピリミジン、N2−アルキルプリン、N2−アルキル−6−チオプリン、5−アザシチジニル、5−アザウラシリル、トリアゾロピリジニル、イミダゾロピリジニル、ピロロピリミジニル、ピラゾロピリミジニルを含む。塩基上の官能基としての酸素及び窒素基は、必要に応じて又は所望であれば、保護されていてよい。適切な保護基は、当業者に既知のものであって、トリメチルシリル、ジメチルヘキシルシリル、t−ブチルジメチルシリル及びt−ブチルジフェニルシリル、トリチル、アルキル基、アセチル及びプロピオニルのようなアシル基、メチルスルホニルならびにp−トルイルスルホニルを含む。
【0030】
ここで用いられる用語「天然アミノ酸」には、限定の意味なしに、アラニル、バリニル、ロイシニル、イソロイシニル、プロリニル、フェニルアラニニル、トリプトファニル、メチオニニル、グリシニル、セリニル、トレオニニル、システイニル、チロシニル、アスパラギニル、グルタミニル、アスパルトイル、グルタオイル、リシニル、アルギニニル及びヒスチジニルを含む。
【0031】
本明細書に開示されている発明は、HBV、及び同様の方法で複製する他のウィルスのヒト又は他の宿主動物における感染の治療方法及び治療用組成物を開示するものであって、場合により薬学的に許容しうる担体中の、1以上の上記の化合物又は生理学的に許容しうるその誘導体、あるいは生理学的に許容しうるその塩の有効量を投与することを含む。本発明の化合物は、抗HBV活性を有するか、あるいは、代謝されて抗HBV活性を示す複数であってもよい化合物となるものである。
【0032】
I.活性ヌクレオシドの構造及びその製造
立体化学
本明細書中に開示される方法に用いられている化合物は、2′,3′−ジデオキシシチジン、2′,3′−ジデオキシ−5−(ハロ又はメチル)シチジン、2−ヒドロキシメチル−5−(5−フルオロシトシン−1−イル)−1,3−ジオキソラン又は2−アミノ−6−(OH、Cl、NH2又はH)−9−[(4−ヒドロキシメチル)−テトラヒドロフラン−1−イル]プリンである。
【0033】
ヌクレオシドの糖又はジオキソラニル部の1′及び4′位の炭素(一般的に糖部と以下に記載する)は、キラルであるので、水素以外のその置換基(それぞれ、CH2ORと、ピリミジン又はプリン塩基)は、糖環系に関してシス(同じ側に存在)又はトランス(反対側に存在)のいずれかである。それゆえ、4つの光学的異性体が、以下の配置のように存在する(糖部を、「第一の」酸素(C1′とC4′原子の間、図2参照)が後ろにくるような、水平方向の平面に配置する場合):シス(両方の基が上方向、これは、天然に存在するヌクレオシドの配置に相当する)、シス(両方の基が下方向、これは天然には存在しない配置である)、トランス(C2置換基が上方向でC5置換基が下方向)及びトランス(C2置換基が下方向でC5置換基が上方向)。図1に図式的に示したように、「D−ヌクレオシド」は、天然配置のシスヌクレオシドであり、「L−ヌクレオシド」は、天然には存在しない配置のシスヌクレオシドである。
【0034】
HBV感染症を治療するための開示された方法において有用なヌクレオシドは、β−L−エナンチオマーであり、β−D−エナンチオマー型を使用するFDOCは例外である。というのは、FDOCのβ−D−エナンチオマーはFDOCのβ−L−エナンチオマーよりも驚くほど毒性が少ないからである。
【0035】
プロドラッグ処方
本発明中に開示されているヌクレオシドは、それを患者に投与した場合に直接的又は間接的に、親の活性化合物か、又はそれ自身活性を示す化合物を提供することができるいかなる誘導体で投与されてもよい。1つの態様として、5′−OH基の水素は、C1−C5アルキルを含むC1−C20アルキル;エステル基のカルボニルでない部分が、直鎖、分岐鎖又は環状の、C1−C5アルキルを含むC1−C20アルキル、フェニル又はベンジルから選択される、アシル基;天然に存在するアミノ酸又は天然に存在しないアミノ酸;メトキシメチルをはじめとするアルコキシアルキル;ベンジルをはじめとするアラルキル;フェノキシメチルのようなアリールオキシアルキル;場合によりハロゲン、C1−C4アルキル又はC1−C4アルコキシにより置換されているフェニルをはじめとするアリール;コハク酸のようなジカルボン酸;メタンスルホニルを含むアルキル又はアラルキルスルホニルのようなスルホン酸エステル基;あるいは、モノ、ジ又はトリホスフェートエステル基により置き換えられていてもよい。
【0036】
プリン又はピリミジン塩基のアミノ酸の1又は2個の水素は、C1〜C5アルキルをはじめとするC1〜C20アルキル;エステル基の非カルボニル部分が、直鎖、分岐鎖もしくは環状の、C1〜C5アルキルを含むC1〜C20アルキル、フェニル又はベンジルから選択されるアシル;メトキシメチルをはじめとするアルコキシアルキル;ベンジルをはじめとするアラルキル;フェノキシメチルのようなアリールオキシアルキル;場合によりハロゲン、C1−C4アルキル又はC1−C4アルコキシにより置換されている、フェニルをはじめとするアリールによって置換されていてもよい。
【0037】
活性なヌクレオシドはまた、5′−エーテル脂質物として提供されてよく、それは、以下の文献;Kucera,L.S.,N.Iyer,E.Leake,A.Raben,Modest E.J.,D.L.W.,and C.Piantadosi.1990 に開示されており、参考として本明細書に含めた。新規な膜−相互作用性エーテル脂質アナログは、感染性のHIV−1の産生を阻害して欠陥のあるウィルスを生成させる。AIDS Res Hum Retroviruses.6:491-501; Piantadosi,C.,J.Marasco C.J.,S.L.Morris-Natschke,K.L.Meyer,F.Gumus,J.R.Surles,K.S.Ishaq,L.S.Kucera,N.Iyer,C.A.Wallen,S.Piantadosi,and E.J.Modest.1991,新規なエーテル脂質ヌクレオシド複合体の合成及び抗HIV活性の評価。J.Med.Chem.,34:1408.1414; Hostetler,K.Y.,D.D.Richman,D.A.Carson,L.M.Stuhmiller,G.M.T.van Wijk,and H.van den Bosch.1992,3′−デオキシチミジンの脂質プロドラッグである3′−デオキシチミジンジホスフェートジミリストイルグリセロールによる、CEM細胞及びHT4−6C細胞におけるヒト免疫不全I型ウィルス複製の強力な阻害。Antimicrob,Agents Chemother.36:2025.2029; Hostetler,K.Y.,L.M.Stuhmiller,H.B.Lenting,H.van den Bosch,and D.D.Richman,1990,アジドチミジン及び他の抗ウィルス性ヌクレオシドのホスホリピドアナログの合成及び抗レトロウィルス活性。J.Biol.Chem.265:6112.7.
【0038】
ヌクレオチドプロドラッグ
ここに記載したいずれのヌクレオシド、又は抗B型肝炎活性を有するいかなる他のヌクレオシドも、ヌクレオシドの活性、バイオアベイラビリティ、安定性を増強するかそうでなければヌクレオシドの性質を変化させるためのヌクレオチドプロドラッグとして投与されてよい。多くのヌクレオチドプロドラッグリガンドが知られている。ここで記載するヌクレオチドプロドラッグとは、親のホスフェートよりもインビトロでより安定なホスフェート誘導体を5′−位に有し、ヌクレオシドの抗B型肝炎活性に実際に悪影響を及ぼさないヌクレオシドを意味する。ホスホネートはホスフェート誘導体として含まれる。一般に、ヌクレオシドのモノ、ジ又はトリホスフェートのアルキル化、アシル化又は他の親脂質性の改変は、ヌクレオシドの安定性を増強する。ホスフェート部分の1以上の水素に置き換わる置換基の例としては、アルキル、アリール、ステロイド、糖、1,2−ジアシルグリセロール及びアルコールをはじめとする炭水化物である。多くのものが、R.Jones and N.Bischofberger,Antiviral Research,27(1995)1-17に記載されている。これらのいずれもが開示されたヌクレオシドと組み合わせて用いられて、所望の効果を達成する。以下の文献には、ヌクレオチドプロドラッグの例が、限定の意味なく記載されている。
【0039】
Ho,D.H.W.(1973)ヒト及びマウス組織における1β−D−アラビノフラノシルシトシンのキナーゼ及びデアミナーゼの分布。Cancer Res.33,2816-2820; HOly,A.(1993),等極性の(isopolar)リンにより改質されたヌクレオチドアナログ。In: De Clercq(Ed.),Advances in Antiviral Drug Design,Vol.I,JAI Press,pp.179-231; Hong,C.I.,Nechaev,A.,and West,C.R.(1979a),コルチゾール及びコルチゾンの1β−D−アラビノフラノシルシトシン複合体の合成及び抗腫瘍活性。Biochem.Biophys.Rs.Commun.88,1223-1229; Hong,C.I.,Nechaev,A.,Kirisits,A.J.Buchheit,D.J.and West,C.R.(1980),強力な抗腫瘍剤としてのヌクレオシド複合体、3.コルチコステロイド及び選択された親油性アルコール類の1−(β−D−アラビノフラノシル)シトシン複合体の合成及び抗腫瘍活性。J.Med.Chem.28,171-177; Hostetler,K.Y.,Stuhmiller,L.M.,Lenting,H.B.M.van den Bosch.
【0040】
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【0041】
抗HIV剤であるAZTのアルキル水素ホスホネート誘導体は、親のヌクレオシドアナログよりも毒性が低いようである。Antiviral Chem.Chemother.5,271-277; Meyer,R.B.,Jr.,Shuman,D.A.and Robins,R.K.(1973),プリンヌクレオシド3′,5′−サイクリックホスホラミデート類の合成。Tetrahedron Lett.269-272; Nagyvary,J.Gohil,R.N.,Kirchner,C.R.and Stevens,J.D.(1973),サイクリックAMPの中性エステルの研究。Biochem.Biophys.Res.Commun.55,1072-1077; Namane,A.Gouyette,C.,Fillion,M.P.,Fillion,G.and Huynh-Dinh,T.(1992),グリコシルホスホトリエステルプロドラッグを用いる改良されたAZTの脳内送達。J.Med.Chem.35,3039-3044; Nargeot,J.Nerbonne,J.M.Engels,J.and Leser,H.A.(1983)Natl.Acad,Sci.U.S.A.80,2395-2399; Nelson,K.A.,Bentrude,W.G.,Stser,W.N.and Hutchinson,J.P.(1987),ヌクレオシドサイクリック3′,5′−モノホスフェートのホスフェート環の椅子型ねじれ平衡の疑問、チミジンフェニルサイクリック3′,5′−モノホスフェートのジアステレオマーの1HMR及びX線結晶学的研究。J.Am.Chem.Soc.109,4058-4064; Nerbonne,J.M.,Richard,S.,Nargeot,J.and Lester,H.A.(1984),光により活性化されうる新しいサイクリックヌクレオチド類がサイクリックAMP及びサイクリックGMP濃度の細胞内濃度の上昇をもたらす。Nature 301,74-76; Neumann,J.M.,Herve,M.,Debouzy,J.C.,Guerra,F.I.,Gouyette,C.,Dupraz,B.and Huynh-Dinh,T.(1989),チミジンのグルコシルホスホリピドの合成及びNMRによるトランスメンブラン輸送の研究。J.Am.Chem.Soc.111,4270-4277; Ohno,R.,Tatsumi,N.,Hirano,M.,Imai,K.,Mizoguchi,H.,Nakamura,T.,Kosaka,M.,Takatuski,K.,Yamaya,T.,Toyama,K.,Yoshida,T.,Masaoka,T.,Hashimoto S.,Ohshima,T.,Kimura,I.,Yamada,K.and Kimura,J.(1991),経口投与1−β−D−アラビノフラノシルシトシン−5′−ステアリルホスフェートによる脊髄形成異常症の治療。Oncology 48,451-455;
【0042】
Palomino,E.,Kessle,D.and Horwitz,J.P.(1989),脳への2′,3′−ジデオキシヌクレオシドの持続的送達のためのジヒドロピリジンキャリアシステム。J.Med.Chem.32,622-625; Perkins,R.M.,Barney,S.,Wittrock,R.,Clark,P.H.,Levin,R.Lambert,D.M.,Petteway,S.R.,Serafinowska,H.T.,Bailey,S.M.,Jackson,S.,Harnden,M.R.Ashton,R.,Sutton,D.,Harvey,J.J.and Brown,A.G.(1993),マウスにおけるマウスラウシャー白血病ウィルス感染に対するBRL47923及びその経口プロドラッグSB203657Aの活性。Antiviral Res.20(Suppl.I).84; Piantadosi,C.,Marasco,C.J.,Jr.,Morris-Natschke,S.L.,Meyer,K.L.,Gumus,F.,Surles,J.R.,Ishaq,K.S.,Kucera,L.S.Iyer,N.,Wallen,C.A.,Piantadosi,S.and Modest,E.J.(1991),抗HIV−1活性のための新規なエーテル脂質ヌクレオシド複合体の合成及び評価。J.Med.Chem.34,1408-1414;Pompon,A.,Lefebvre,I.,Imbach,J.L.,Kahn,S.and Farquhar,D.(1994),細胞抽出物内及び組織培養メディウム内でのアジドチミジン−5′−モノホスフェートのモノ−及びビス(ピバロイルオキシメチル)エステルの分解経路;“オンラインISRPクリーニング”HPLC法の適用。Antiviral Chem.Chemother.5,91-98; Postemark,T.(1974),サイクリックAMP及びサイクリックGMP。Annu.Rev.Pharmacol.14,23-33; Prisbe,E.J.,Martin,J.C.M.,McGee,D.P.C.,Barker,M.F.,Smee,D.F.Duke,A.E.,Matthews,T.R.and Verheyden,J.P.J.(1986),9−[(1,3−ジヒドロキシ−2−プロポキシ)メチル]グアニンのホスホネート及びホスホネート誘導体の合成及び抗ヘルペスウィルス活性。J.Med.Chem.29,671-675; Puncch,F.,Gosselin,G.,Lefebvre,I.,Pompon,A.,Aubertin,A.M.Dirn,A.and Imbach,J.L.(1993),レダクターゼ媒介活性化プロセスによるヌクレオシドモノホスフェートの細胞内送達。Antiviral Res.22,155-174; Pugaeva,V.P.,Klochkeva,S.I.,MMashbits,F.D.and Eizengart,R.S.(1969)。
【0043】
工業的雰囲気中のエチレンスルフィドの毒物学的分析及び健康標準に関する評価。Gig.Trf.Prof.abol.13,47-48(Chem.Abstr.72,212);Robins,R.K.(1984),レトロウィルス及び腫瘍に対する阻害剤としてのヌクレオチドアナログの効力。Pharm.Res.11-18; Rosowsky,A.,Kim.S.H.,Ross and J.Wick,M.M.(1982),潜在的なプロドラッグとしての1−β−D−アラビノフラノシルシトシンの親油性5′−(アルキルホスフェート)エステル及びそのN4−アシル及び2,2′−アンヒドロ−3′−O−アシル誘導体。J.Med.Chem.25,171-178; Ross,W.(1961),グルコースによる予備処置後の、塩基性側鎖を有する芳香族ナイトロジェンマスタードに対するウォーカーターンアウト(walker turnout)感受性の増大。Biochem.Pharm.8,235-240; Ryu,e.K.,Ross,R.J.Matsushita,T.,MacCoss,M.,Hong,C.I.and West,C.R.(1982),ホスホリピド−ヌクレオシド複合体、3.1−β−D−アラビノフラノシルシトシン5′−ジホスフェート〔−〕,2−ジアシルグリセロールの合成及び予備的生物学的評価。J.Med.Chem.25,1322-1329; Saffhill,R.and Hume,W.J.(1986),5−ヨードデオキシウリジン及び5−ブロモデオキシウリジンの種々の供給源からの血清による分解、並びにこれらの化合物のDNAへの組み込みのための使用の結果。Chem.Biol.Interact.57,347-355; Saneyoshi,M.,Morozumi,M.,Kodama,K.,Machida,J.,Kuninaka,A.and Yoshino,H.(1980),合成ヌクレオシド及びヌクレオチド、XVI.一連の1−β−D−アラビノフラノシルシトシン5′−アルキル又はアリールホスフェートの合成及び生物学的評価。Chem.Pharm.Bull.28,2915-2923; Sastry,J.K.,Nehete,P.N.,Khan,S.,Nowak,B.J.,Plunkett,W.,Arlinghaus,R.B.and Farquhar,D.(1992),膜透過性ジデオキシウリジン5′−モノホスフェート同族体はヒト免疫不全ウィルス感染を阻害する。Mol.Pharmacol.41,441-445; Shaw,J.P.,Jones,R.J.Arimilli,M.N.,Louie,M.S.,Lee,W.A.and Cundy,K.C.(1994),雄Sprague-DawleyラットにおけるPMEAプロドラッグからのPMEAの経口的バイオアベイラビリティ。9th Annual AAPS Meeting.San Diego,CA(Abstract);Shuto,S.,Ueda,S.,Imamura,S.,Fukukawa,K.Matsuda,A.and Ueda,T.(1987),酵素的2段階反応による5′−ホスファチジルヌクレオシド類の容易な1段階的合成。Tetrahedron Lett.28,199-202; Shuto,S.,Itoh,H.,Ueda,S.,Imamura,S.,Fukukawa,K.,Tsujino,M.,Matsuda,A.and Ueda,T.(1988)5′−(3−sn−ホスファチジル)ヌクレオシド類の容易な酵素的合成及びその抗白血病活性。Chem.Pharm.Bull,36,209-217.好ましいホスフェートプロドラッグ群は、S−アシル−2−チオエチル基であってこれはまた「SATE」とも呼ばれる。
【0044】
活性化合物の調製
本開示方法において、宿主生体におけるHBV感染症を治療するために使用されているヌクレオシドは、公表されている方法により調製することができる。β−L−ヌクレオシドは、例えば以下の刊行物に開示されている方法、又は開示されている方法を標準的に変更した方法により調製することができる:Jeong,et al.,J.of Med.Chem.,36,182-195,1993;ヨーロッパ特許出願公開第 0 285 844号;Genu−Dellac,C.,G.Gosselin,A.-M.Aubertin,G.Obert,A.Kirn,and J.-L.Imbach,強力な抗ウィルス剤としての3−置換チミンα−L−ヌクレオシド誘導体;合成及び生物学的評価,Antiviral Chem.Chemother.2:83-92(1991); Johansson,K.N.G.,B.G.Lindborg,and R.Noreen,ヨーロッパ特許出願第352 248号; Mansuri,M.M.,V.Farina,J.E.Starrett,D.A.Benigni,V.Brankovan,and J.C.Martin,潜在的な抗HIV剤としてのDDC、DDA、D4C及びD4Tの幾何異性体の調製,Bioorg.Med.Chem.Lett.1:65-68(1991);Fujimori,S.,N.Iwanami,Y.Hashimoto,and K.Shudo,2′−デオキシ−β−L−リボヌクレオシドの簡便かつ立体選択的合成,Nucleosides & Nucleotides11:341-349(1992);Genu-Dellac,C.,G.Gosselin,A.-M.Aubertin,G.Obert, A.Kirn,and J.-L.Imbach,潜在的な抗ウィルス剤としての3−置換チミンα−L−ヌクレオシド誘導体;合成及び生物学的評価、AntiviralChem.Chemother.2:83-92(1991); Holy,A.,2′−デオキシ−L−ウリジンの合成,Tetrahedron Lett.2:189-192(1992); Holy,A.,核酸成分とそのアナログ。CLIII。ピリミジン系列の2′−デオキシ−L−リボヌクレオシドの調製。Collect Czech Chem Commun.37:4072-4087(1992);Holy,A.,2′−デオキシ−L−ウリジン:糖2−アミノオキサゾリンから2,2′−アンヒドロヌクレオシド中間体を介してのウラシル2′−デオキシヌクレオシドの全合成。In: Townsend LB,Tipson RS,ed.Nucleic Acid Chem.New York: Wiley,1992: 347-353,vol 1)(1992);Okabe,M.,R.-C.Sun,S.Tan,L.Todaro,and D.L.Coffen,グルタミン酸、リボノラクトン及びピリミジン塩基からのジデオキシヌクレオシドddC及びCNTの合成。J.Org.Chem.53:4780-4786(1988); Robins,M.J.,T.A.Khwja,and R.K.Robins.プリンヌクレオシド。XXIX。21−デオキシ−L−アデノシン及び21−デオキシ−L−グアノシン、並びにそれらのアルファ−アノマーの合成。J.Org.Chem.35:363-639(1992);Genu-Dellac,C.,Gosselin G.,Aubertin A-M,Obert G., Kirn A.,and Imbach J-L,強力な抗ウィルス剤としての3′−置換チミンα−L−ヌクレオシド誘導体;合成及び生物学的評価。Antiviral Chem.Chemother.2(2):83-92(1991);Genu-Dellac,C.,Gosselin G.,Imbach J-L; 強力な抗ウィルス剤としての新規なチミンの2′−デオキシ−3′−置換−α−L−トレオ−ペントフラノヌクレオシドの合成。Tet.Lett.32(1):79-82(1991);Genu-Dellac,C.,Gosselin G.,Imbach J-L.1−ペントフラノシルヌクレオシド合成の前駆体としてのL−アラビノ−フラノース及び2−デオキシ−1−エリトロ−ペントフラノースの新規アシル化誘導体の調製。216:240-255(1991);及びGenu-Dellac,C.,Gosselin G.,Puech F.et al.5種類の天然に存在する核酸塩基のα−L−アラビノフラノシル及び2′−デオキシ−α−L−エリトロ−ペントフラノシルヌクレオシドの系統的合成及び抗ウィルス評価。10(b):1345-1376(1991).
2′,3′−ジデオキシシチジン(DDC)は、既知の化合物である。DDCのD−エナンチオマーは、現在、HIV感染患者の治療における使用のために、ザルシタビン(Zalcitabine)の名称で、ホフマン−ラロシュ(Hoffmann-LaRoche)社によって販売されている。米国特許第4,879,277号及び第4,900,828号を参照。
【0045】
β−D−FDOCなどのエナンチオマー的に純粋なβ−D−ジオキソラン−ヌクレオシドは、詳細にはPCT/US91/09124に詳細に開示されているように調製することができる。本方法は、糖の1位(後に形成されるヌクレオシドにおいて4′−位となる)に関する正しいジアステレオマー立体配置を含む、エナンチオマー的に純粋な最終生成物に必要な立体配置のすべてを含む糖である1,6−アンヒドロマンノースから、(2R,4R)−及び(2R,4S)−4−アセトキシ−2−(保護されたオキシメチル)−ジオキソランをまず調製することからなる。(2R,4R)−及び(2R,4S)−4−アセトキシ−2−(保護されたオキシメチル)−ジオキソランを、SnCl4、その他のルイス酸、又はトリメチルシリルトリフレートの存在下、ジクロロエタン、アセトニトリル、又は塩化メチレンなどの有機溶媒中、所望の複素環式塩基と縮合して、立体化学的に純粋なジオキソラン−ヌクレオシドを得る。
【0046】
cis−ヌクレオシドのD及びLエナンチオマーの分離のための酵素による方法は、例えばNucleosides and Nucleotides,12(2),225-236(1993);ヨーロッパ特許出願Nos.92304551.2 及び92304552.0(Biochem Pharma,Inc.出願);及びPCT公開パンフレットWO 91/11186、WO 92/14729 及びWO 92/14743(Emory University出願)に開示されている。
【0047】
cis−ヌクレオシドのD及びLエナンチオマーのアシル化又はアルキル化ラセミ混合物の分離は、PCT公開パンフレットNo.WO 92/14729に開示されているように、キラル固定相を用いた高速液体クロマトグラフィーによって行うことができる。
【0048】
活性ヌクレオシドのモノ、ジ及びトリホスフェート誘導体は、発表された方法により記載されているように調製することができる。モノホスフェートは、Imai et al.,J.Org.Chem.,34(6),1547-1550(June 1969)の方法により調製することができる。ジホスフェートは、Davisson et al.,J.Org.Chem.,52(9),1794-1808(1987)の方法により調製することができる。トリホスフェートは、Hoard et al.,J.Am.Chem.Soc.,87(8),1785-1788(1965)の方法により調製することができる。
【0049】
β−L−ジデオキシヌクレオシドのビス(S−アシル−2−チオエチル)ホスホエステル〔ビス(SATE)β−L ddxMP〕の調製のための一般的操作
【0050】
【化5】

【0051】
ビス(SATE)β−L−ddxMP
1、Y2、Y3、及びY4は、独立して、H、OH、N3、NR12、NO2、NOR3、−O−アルキル、−O−アリール、ハロ(F、Cl、Br、又はIを含む)、−CN、−C(O)NH2、SH、−S−アルキル、又は−S−アリールであり、一般的に、Y1、Y2、Y3、及びY4のうち3つが、H又はOHのいずれかである。この−OH置換基は、存在する時は、一般には、Y1又はY3基である。構造式中に図示したように、Y2及びY4は、アラビノ(エリトロ)配置であり、Y1及びY3は、トレオ(リボース)配置である。塩基は、プリン又はピリミジンである。代替的に、擬似糖(pseudo-sugar)残基は、1,3−オキサチオランである(FTC及びBCH−189又は3TCにおけるように。あるいは1,3−ジオキソラン誘導体である)。テトラヒドロフラン(2ml)中のβ−L−ジデオキシヌクレオシド(1.0mmol)及び適切なホスホルアミダイト(phosphoramidite)C(1.2mmol)の撹拌溶液に、室温で、(i)ICH2CH2OH、DBU/C65CH3;(ii)Cl2PN(iPr)2、NEt3/THF;(iii)β−L−ジデオキシヌクレオシド、1H−テトラゾール/THF、次にClC64CO3H/CH2Cl21H−テトラゾール(0.21g、3.0mmol)を加えた。30分後、反応混合物を−40℃に冷却し、3−クロロペルオキシ安息香酸(0.23g、1.3mmol)をジクロロメタン(2.5ml)に含む溶液を加えた;次に混合物を1時間放置して、室温まで戻した。亜硫酸ナトリウム(10%溶液、1.3ml)を混合物に加えて、過剰の3−クロロペルオキシ安息香酸を分解し、その後、有機層を分離し、水層をジクロロメタン(2×10ml)で洗浄した。合わせた有機層を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(5ml)、次に水(3×5ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧下で蒸発乾固させた。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付して、標題のビス(SATE)β−L−ddxmPを得た。
【0052】
実施例=β−L−2′,3′−ジデオキシアデノシン−5′−イルビス(2−ピバロイルチオエチル)ホスフェート〔ビス(SATE)β−L−ddAMP〕
【0053】
【化6】

【0054】
上記の一般的操作の後、純粋なビス(SATE)β−L−ddAMPが、シリカゲルカラムクロマトグラフィー後に、72%の収率で、無色の油状物として得られた〔溶離剤:ジクロロメタン中のメタノール(0−3%)の段階的勾配〕;1NMR(DMSO-d6)δppm: 8.26 及び8.13(2s,2H、それぞれH-2 及びH-8),7.20(br s,2H,NH2),6.24(t,1H,H-1'; J=6.0Hz),4.35-4.25(m,1H,H-4'),4.25-4.00(m,2H,H-5',5"),3.96(m,4H,2SCH2CH2O),3.04(t,4H,2 SCH2CH2O; J=6.3Hz),2.5-2.4(m,2H,H-2',2")2.2-2.0(m,2H,H-3',3"),1.15[s,18H,2(CH3)3C];31P・NMR(DMSO-d6)δppm = -0.76(s);UV(EtOH),λmax=259 nm(ε 15400);質量スペクトル(グリセロール、チオグリセロール、1:1、υ/υで実施)、FAB>0 604(M+H)+,136(BH2)+.
3′−置換β−L−ジデオキシヌクレオシドの立体特異的合成の一般的反応式
【0055】
【化7】

X=脱離基〔CH3SO2、CH364SO2、CF3SO2
Y,Y′=F、N3、NR12〔R1,R2=H、アルキル、アリール〕、NO2、NOR〔R=H、アルキル、アシル〕、O−アルキル、O−アリールなど。
【0056】
実施例=1−(3−アジド−2,3−ジデオキシ−β−L−エリトロ−ペントフラノシル)チミン〔β−L−AZT〕
【0057】
【化8】

【0058】
ジエチルアゾジカルボキシレート(0.46ml;2.9mmol)及びジフェニルホスホルアジデート(0.62ml;2.9mmol)をTHF(2.9ml)に含む混合物を、1−(2−デオキシ−5−O−モノメトキシトリチル−β−L−トレオ−ペントフラノシル)チミン 8〔0.5g、0.97mmol〕及びトリフェニルホスフィン(0.76g、2.9mmol)をTHF(11.6ml)に含む溶液に、0℃で、30分間かけて滴下した。混合物を室温で3.5時間攪拌し、エタノールを加えた。真空中で濃縮乾固した後、残渣を、酢酸(240ml)及び水(60ml)の混合物に溶解して、mMTr保護基を除去した。混合物を室温で5時間攪拌し、トルエンで希釈した。分離した水相を真空中で濃縮乾固した。残渣を、酢酸エチルで溶離するシリカゲルカラムで精製して、β−L−AZT(105mg、40%、酢酸エチルから結晶化)を得た。β−L−AZTの物理化学的データは、文献記載のデータどおりであった[J.Wengel,J-Lau,E.B.Ledersen,C.N.Nielsen,J.Org.Chem.56(11),3591-3594(1991)].
2′−置換β−L−ジデオキシヌクレオシドの立体特異的合成の一般的スキーム
【0059】
【化9】

【0060】
実施例=1−(2−フルオロ−2,3−ジデオキシ−β−L−トレオ−ペントフラノシル)−5−フルオロシトシン〔2′−F−β−L β−L−FddC〕
【0061】
【化10】

【0062】
これまで知られていなかった2′−F−β−L−FddCを、1−(5−O−ベンゾイル−3−デオキシ−β−L−エリトロ−ペントフラノシル)−5−フルオロウラシル 17から、5段階で合成し、全体的収率は28%であった。融点:209−210℃(無水エタノールから結晶化);UV(Et OH)λmax276 nm(ε,9000),λmin226 nm(ε,4000);19F-NMR(DMSO-d6)δppm: -179.7(m,F2'),-167.2(dd,F5;JF,6=7.3Hz,JF,1'=1.5Hz); 1H-NMR(DMSO-d6)δppm: 8.30(d,1H,H-6;J6,F=7.3Hz),7.8-7.5(br s,2H,NH2),5.80(d,1H,H-1'J1',F=17.4Hz),5.34(t,1H,OH-5'; J=4.8Hz),5.10(dd,1H,H-2';J2',F=51.2Hz; J2',3'=3.4Hz),4.3(m,1H,H-4'),3.8-3.6(m,2H,H-5',5"),2.2-2.0(m,2H,H-3',H-3");質量スペクトル(実施:グリセロール−チオグリセロール、1:1υ/υ)、FAB>0:248(M+H)+,130(BH2)+;FAB<0:246(M-H)-;[α]D20=-16.5(-c 0.85,DMSO).
911332の計算値:C、43.73;H、9.49;N、17.00;
F、15.37.実測値:C、43.56;H、4.78;N、16.75;F、14.96.
【0063】
【化11】

スキームI:塩基=場合により緩和に保護されたプリン又はピリミジン類;
R=ベンゾイル(Bz)アセチル(Ac),モノメトキシトリチル(mMTr)又はtert−ブチルジフェニルシリル(TBDPSI)
【0064】
II.ヌクレオシドの抗HBV活性
活性化合物の、HBV阻害能は、各種実験技術により測定することができる。開示化合物のHBVの複製に対する阻害能を評価するためにここで用いたアッセイは、Korba and Gerin,Antiviral Res.19: 55-70(1992)に詳細に記載されている。β−L−2′,3′−ジデオキシシチジン(β−L−FddC)、β−L−2′,3′−ジデオキシ−5−フルオロシチジン(β−L−ddC)、及び(+)−β−D−2−ヒドロキシメチル−5−(5−フルオロシトシン−1−イル)−1,3−ジオキソラン((+)−β−D−FDOC)については、説明のためだけに、その毒性及び抗HBV−活性の評価結果を以下に示すが、本発明を限定するものではない。(−)−β−L−2−ヒドロキシメチル−5−(5−フルオロシトシン−1−イル)−1,3−オキサチオラン((−)−β−L−FTC)及びβ−D−2′,3′−ジデオキシシチジン(β−D−ddC)の毒性及び抗HBV活性は、コントロールとした。ここに開示するそのほかの化合物は、同様に評価することができる。
【0065】
抗HBVアッセイに使用したβ−L−ddC及びβ−L−5−FddCの試料は、以下の特徴を有していた:
2′,3′−ジデオキシ−β−L−シチジン(β−L−DDC)
融点=220−220℃;UV(EtOH 95)max273 nm,λmin 252 nm; NMR-1H(DMSO-d6)δppm= 7.89(d.1H.H-6; J=7.4Hz).7.15-6.95(d large,2H,NH2),5.91(dd.1H,H-1'; J=3.0 及び6.5Hz),5.66(d,1H,H-5; J=7.4Hz),4.99[t.1H,OH-5';J-5.2Hz].4.05-3.95(m,1H,H-4'),3.60-3.70(m,1H,H-5';D2O交換後:dd,3.64ppm,J=3.6 及び12.0Hz).3.60-3.50(m.1H,H-5";D2O交換後:dd,3.50 ppm,J=4.1 及び12.0Hz),2.30-2.15(m.1H,H-2'),1.9-1.65(m,3H,H-2",3'及び3");[α]D20-103.6(c 0.8MeOH);質量スペクトル(実施:グリセロール−チオグリセロール、50:50.v/v);FAB>0 423[2M+H]+,304[M+ グリセロール+H]+.212[M+H]+,112[BH2]+,101[s]+;FAB<0 210[M-H]-.C91333(M=211.21)の計算値;C 51.18;H 6.20;N 19.89、実測値;C 51.34;H 6.25;N 20.12.
2′,3′−ジデオキシ−β−L−5−フルオロシチジン(β−L−5−FDDC)
融点=158−160℃;UV(EtOH 95)λmax 281 nm(ε,8100)及び237 nm(ε,8500);min 260nm(ε,5700)及び225 nm(ε,7800);NMR-1H(DMSO-d6)δppm 8.28(d.1H,H-6; J-7.4Hz),7.7-7.4(d large,2H,NH2),5.83(ddほとんど解像されず,1H,H-1'),5.16(t.1H,OH-5';J=5.1Hz),4.05-3.95(m,1H,H-4'),3.8-3.70[m,1H,H5';D2O交換後:dd,3.71ppm.J=2.7及び12.3Hz],3.60-3.50[m,1H,H-5";D2O交換後:dd,3.52ppm; J:3.3 及び12.3Hz],2.35-2.15(m,1H,H-2').1.95-1.75(m,3H,H-2”,3'及び3”):[α]D20-80.0(-c 1.0,DMSO);質量スペクトル〔実施:3−ニトロベンジルアルコール〕FAB>0 230[M+H]+及び101[s]+;FAB<0 228[M-II]-.C9123FO3(M=229.21)の計算値;C 47.16;H 5.28;N 18.33,F 8.29、実測値;C 16.90;H 5.28;N 18.07;F 8.17 細胞の異なる2種類の継代で、抗ウィルス活性の評価を行った(1継代当たり2培養、合計4培養)。全プレートの全ウエルに、同一濃度、同一時間で接種を行った。
【0066】
細胞内及び細胞外HBV DNAの両方の濃度の固有の変動のため、非処理細胞中のこれらのHBV DNA形態の平均濃度から3.0倍(HBVビリオンDNAについて)を超える、又は2.5倍(HBV DNA複製中間体について)を超える抑制のみを、統計学的に有意〔P<0.05〕(Korba and Gerin,Antiviral Res.19: 55-70,1992)であると一般にみた。それぞれの細胞DNA調製物における組込まれたHBV DNAの濃度(これらの実験においては、細胞当たりのベースでは、一定のままである)を、細胞内HBV DNA形態の濃度を算出するために使用して、ブロットハイブリダイゼーションアッセイに固有の技術的変動を排除した。
【0067】
非処理細胞における細胞外HBVビリオンDNAの代表的値は、培地1ml当たり50〜150pg(平均約76pg/ml)の範囲であった。非処理細胞における細胞内HBV DNA複製中間体は、細胞DNA1μg当たり50〜100pgであった(細胞DNA1μg当たり平均約74pg)。一般的に、抗ウィルス性化合物処理による細胞内HBV DNA濃度の抑制は、それほど顕著ではなく、HBVビリオンDNA濃度の抑制よりも、緩徐に起きた。
【0068】
参考のため、これらの実験のためにハイブリダイゼーション分析を行った方法では、細胞DNA1μg当たり約1.0pgの細胞内HBV DNAが、細胞当たり2〜3ゲノムコピーに等しく、培地1ml当たり1.0pgの細胞外HBV DNAは、1ml当たり3×105個のウィルス粒子に等しかった。
【0069】
観察されたなんらかの抗ウィルス性効果が、細胞生存度に対する一般的効果によるものであるかどうかを評価するために、毒性の分析を行った。用いた方法は、HSV(単純ヘルペスウィルス)及びHIVを含む各種ウィルス−宿主系において標準的かつ広く使用されている細胞生存度のアッセイである、ニュートラルレッド染料取り込みに基づく方法である。
【0070】
試験化合物は、40mM保存用DMSO溶液(ドライアイスで凍結)の形で使用した。試験試料は、毎日の使用量づつ作成し、−20℃で凍結して、それぞれ個々の量が、一回の凍結−解凍周期に付されるようにした。毎日の試験量を解凍し、室温で培地に懸濁し、すぐに細胞培養物に加えた。化合物は、その抗ウィルス活性について、0.01〜10μMで試験した。毒性については、1〜300μMの濃度で試験した。結果を、表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
実施例2 化合物の毒性
活性化合物が2,2,15セルカルチャー(肝炎ビリオンにより形質転換されたHepG2 細胞)中のウィルス増殖を阻害する能力を評価した。表1に示したように、顕著な毒性(非処理細胞において染料取り込みレベルの50%以上の抑制が観察される)は、100μM濃度においてどの試験化合物においても観察されなかった。これらの化合物は300μMにおいて中程度に毒性であるが、しかし、3種の化合物すべてが、この濃度においてβ−D−ddCよりも低い毒性を示した。β−L−ddC及びβ−L−FddCのIC50は、β−D−ddCのそれの約2倍であると思われる。
【0073】
毒性分析は、96ウェルの平底組織培養プレートで行った。毒性分析用の細胞を培養し、抗ウィルス評価に用いられるのと同様な方法により、試験化合物で処理した。各々の化合物を4濃度で、それぞれ3培養物において試験した。相対的毒性レベルを決定するために、ニュートラルレッド染料の取り込みを用いた。定量的分析のために、510nMにおける取り込まれた染料の吸光度(A510)を用いた。数値は、同じ96ウェルプレート上で保持した9個の別々の非処理細胞培養物の試験化合物処理細胞に対する平均A510値のパーセント(±標準偏差)を表す。プレート40上の9個の対照群培養物における染料の取り込み%は、100±3であった。これらの分析において、一般に、β−D−ddCの150〜190μMにおいては、染料取り込みが(非処理培養物において観察されたレベルに対し)半減することが観察された(Korba and Gerin,Antiviral Res.19:55-70,1992;)。
【0074】
実施例3 抗B型肝炎ウィルス活性
陽性の治療対照物β−D−2′,3′−ジデオキシシトシン〔β−D−ddC〕は、用いた濃度においてHBVのDNAの複製の顕著な抑制を誘導した。これまでの研究によれば、この分析方法においては、β−D−ddCの9〜12μMは、HBV RIを90%抑制する(非処理細胞における平均的レベルに対して)ことが一般に観察されるということが示されてきた。これは、表1に示したデータと一致する。
【0075】
表1に示したデータは、3種の試験化合物(β−L−FddC、β−L−ddC及びβ−D−FDOC)が、HBV複製の強力な阻害剤であって、HBVビリオンDNA及びHBV RIに対し、β−D−ddCによる処理後に観察されるのに匹敵するほどの、又はそれ以上の抑制を引き起こすことを示している。
【0076】
実施例4
トランスフェクトされたHep G 細胞におけるB型肝炎ウィルス複製に対する、選択されたβ−L−誘導体の効果を表2に示した。
【0077】
【表2】

【0078】
実施例5
マーモット肝炎ウィルスDNAポリメラーゼに対する、選択されたトリホスフェート類の相対的阻害効果を表3に示した。
【0079】
【表3】

【0080】
III.医薬組成物の製造 本明細書に開示した化合物及びその薬学的に許容しうる塩、プロドラッグ及び誘導体は、HBV感染及び他の関連症状、例えば抗HBV抗体陽性及びHBV−陽性症状、HBVに起因する慢性的肝炎症、肝硬変、急性肝炎、激症肝炎、慢性持続性肝炎及び疲労などの予防及び治療に有用である。これらの化合物又は配合物は、抗−HBV抗体又はHBV−抗原陽性であるかもしくはHBVに暴露されてきた人々において臨床疾患を予防したり、これの進行を遅らせたりするのに用いることもできる。
【0081】
これらの症状のどれかに罹患している人間は、この患者に本明細書中に記載された活性な化合物又はその薬学的に許容しうる誘導体もしくは塩の1つ又は混合物の、HBN治療に有効な量を、場合によっては薬学的に許容しうる担体もしくは希釈剤に含めて、投与することにより治療される。この活性な物質は、いかなる適切な経路によって投与してもよく、例えば、経口、非経口、静脈内、皮膚内、皮下又は局所的に、液体又は固形の形態で投与される、 この活性な化合物は、治療される患者に重篤な毒作用を引き起こさずに治療上有効な量をその患者に送達するのに十分な量において、薬学的に許容しうる担体又は希釈剤に包含されている。
【0082】
この活性な化合物の好ましい用量は、上記したすべての条件において、一日あたり体重1kgあたり約1〜60mgであり、好ましくは1〜20mgであり、より一般的には、一日あたり、患者の体重1kgあたり0.1〜100mgである。この薬学的に許容しうる誘導体の有効な用量範囲は、送達すべき親ヌクレオシドの重量を基礎に計算することができる。もし、誘導体がそれ自身で活性を示すのであれば、上記に記載したように誘導体の重量を用いるか、又は当業者に既知の他の方法により見積もることができる。1つの実施態様として、活性化合物は製品の添付文書(productinsert)、又はHIV処方のための3′−アジド−3′−デオキシチミジン(AZT)、2′,3′−ジデオキシイノシン(DDI)、2′,3′−ジデオキシシチジン(DDC)又は2′,3′−ジデオキシ−2′,3′−ジデヒドロチミジン(D4T)に関する医師の卓上参考書(Physician's Desk Reference)に記載されているように投与する。
【0083】
この化合物は、便利には、いかなる適切な投与形態の単位で投与してもよく、この形態は、7−3000mg、好ましくは70〜1400mgの活性成分を単位投与形態あたり含有するものが含むが、これに限定されるわけではない。経口用量としては、通常、50〜1000mgが便利である。
【0084】
理想としては、活性成分は、活性化合物の約0.2〜70μM、好ましくは1.0〜10μMの血漿濃度のピークを達成するように投与されるべきである。このことは、例えば、活性成分の0.1〜5%溶液、場合によっては生理食塩水溶液を静脈注射することにより、あるいは、活性成分のボーラス投与により達成される。
【0085】
活性化合物は薬学的に許容しうる塩の形で提供される。ここで用いられる「薬学的に許容しうる塩又は複合体」とは、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、もしあるとすれば最小の望ましくない毒性学的効果を示すヌクレオシドの塩又はその複合体を意味する。そのような塩の例としては、(a)無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸など)により形成される酸付加塩、ならびに酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パモ酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸及びポリガラクツロン酸のような有機酸により形成される付加塩;(b)ナトリウム、カリウム、亜鉛、カルシウム、ビスマス、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、銅、コバルト、ニッケル、カドミウム、などのカチオンによる塩基付加塩、又はN,N−ジベンジルエチレンジアミン、アンモニウム又はエチレンジアミンから形成された有機カチオンにより形成された塩基付加塩;あるいは、(c)(a)と(b)の組み合わせ、例えばタンニン酸亜鉛塩など、を意味する。
【0086】
活性化合物の修飾、特にN6又はN4、及び5′−O位における修飾は、活性種のバイオアベイラビリティ及び代謝速度に影響を与えて、活性種の送達を調節する。
【0087】
薬物組成物中の活性化合物の濃度は、この薬物の吸収、不活性化及び排泄速度ならびに当業者に既知の他の要素に依存する。用量は治癒すべき症状の程度によっても変化することに注意すべきである。更に、いかなる特定の患者に対しても、その個人の必要性及びこの組成物を患者に投与しそれを監督する人間の専門的判断にしたがって特定の投与方式を経時的に適用すべきであって、ここに示す濃度範囲は単に例として挙げたに過ぎず、本発明の組成物の実施の範囲を限定するものではないことを理解すべきである。活性成分は、一度に投与されてもよく、又は時間間隔を変化させてより少ない用量を数回投与してもよい。
【0088】
この活性化合物の好ましい投与方法は、経口投与である。経口投与用組成物は、一般に、不活性な希釈剤又は食用の担体を含む。これらはゼラチンカプセルに封入されても、又は錠剤に打錠されてもよい。治療用経口投与の目的のためには、活性化合物は賦形剤に包含されて錠剤、トローチ又はカプセルの形で用いられる。薬学的に調和しうる結合剤及び/又はアジュバント物質も組成物の一部として含有されていてもよい。
【0089】
錠剤、丸薬、カプセル、トローチなどは、以下の成分のどれか、又はそれと同様な性質の化合物を含有してよい;微結晶性セルロース、トラガカントゴム又はゼラチンのような結合剤;澱粉又は乳糖のような賦形剤、アルギニン酸、プリモゲル(Primogel)又はコーンスターチのような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム又はSterotesのような滑沢剤(glident);コロイド状シリコンジオキシドのような滑剤;ショ糖又はサッカリンのような甘味料;あるいはペパーミント、サリチル酸メチル又はオレンジ香料のような賦香剤。単位投与形態がカプセルである場合、これは、上記の物質に加えて、脂肪油(fatty oil)のような液状担体を含有できる。これに加えて、単位投与形態は、この投与形態の物理的形態を変化させる種々の他の物質、例えば砂糖、シェラック又は他の腸溶成分による被覆を含んでいてもよい。
【0090】
この活性化合物又はその薬学的に許容しうる塩もしくは誘導体は、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウェファー、チューインガムなどの成分として投与されてもよい。シロップは、活性化合物に加えて、甘味剤としてのショ糖及びある種の防腐剤、染料ならびに着色料及び香料を含んでよい。
【0091】
活性化合物、又は薬学的に許容しうるその誘導体もしくは塩はまた、所望の作用を損なわない他の活性な物質、又は所望の作用を補足する他の物質、例えば抗生物質、抗真菌剤、抗炎症剤あるいは、抗−HBV剤、抗サイトメガロウィルス剤又は抗HIV剤をはじめとする他の抗ウィルス剤と混合してもよい。
【0092】
非経口、皮内、皮下又は局所適用の溶液又は懸濁液は、以下の成分を含有していてもよい;
滅菌した希釈剤、例えば注射用水、食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒;ベンジルアルコール又はメチルパラベンのような抗菌剤;アスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウムのような抗酸化剤;エチレンジアミンテトラ酢酸のようなキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩のような緩衝剤及び塩化ナトリウム又はデキストロースのような浸透圧を調節する物質。非経口投与用の製剤は、アンプル、ディスポーザブルシリンジ、又はガラスもしくはプラスチック製の多回投与用バイアル中に封入されていてよい。
【0093】
静脈内投与される場合は、好ましい担体は生理的食塩水又はリン酸緩衝食塩水(PBS)である。好ましい態様においては、活性化合物は、この化合物が体から急速に排出されることを防ぐ担体、例えば、インプラント(implants)及びマイクロカプセルに封入された送達系をはじめとする、調節放出配合物のような担体とともに製造される。生分解性で生体適合性(biocompatible)ポリマー、例えばエチレンビニルアセテート、ポリアンヒドリド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル類及びポリ乳酸が使用しうる。そのような配合物の製造は、当業者には明らかである。これらの材料は、市販の、Alza Corporation及びNovaPharmaceuticals,Inc.から得てもよい。
【0094】
リポソーム懸濁液(ウィルス抗原に対するモノクローナル抗体により感染細胞を標的とするリポソームを含む)もまた薬学的に許容しうる担体として好ましい。これらは、当業者に既知の方法、例えば米国特許第4,522,811号(本明細書中に参考としてその全文を包含する)に記載された方法により製造される。例えば、リポソーム配合物は、適切な脂質(例えばステアロイルホスファチジルエタノールアミン、ステアロイルホスファチジルコリン、アラキドイル(arachadoyl)ホスファチジルコリン及びコレステロール)を無機溶媒に溶解し、次いでこれを蒸留し、乾燥した脂質の薄いフィルムを容器の表面に残すことにより製造される。活性化合物又はそのモノホスフェート、ジホスフェート及び/又はトリホスフェート誘導体の水溶液を、次いでこの容器内に導入する。この容器を、次いで、用手的に攪拌して容器の側面から脂質物質を遊離させて脂質の凝集体を拡散させ、これによりリポソーム懸濁液を形成する。
【0095】
本発明をその好ましい態様に関して記載した。当業者にとっては、上記した本発明の詳細な説明から、本発明の変形及び修飾は当然のことである。このような変形及び修飾は、別紙の請求項の範囲内に包含されることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】β−L−2′,3′−ジデオキシシチジン(β−L−FddC)、β−D−2′,3′−ジデオキシシチジン(β−D−ddC)、β−L−2′,3′−ジデオキシ−5−フルオロシチジン(β−L−ddC)、(−)−β−L−2−ヒドロキシメチル−5−(5−フルオロシトシン−1−イル)−1,3−オキサチオラン((−)−β−L−FTC)、(+)−β−D−2−ヒドロキシメチル−5−(5−フルオロシトシン−1−イル)−1,3−ジオキソラン((+)−β−D−FDOC)及びβ−L−2−アミノ−6−(R4)−9−[(4−ヒドロキシメチル)−テトラヒドロフラン−1−イル]プリンの化学的構造を示すものである。
【図2】本文中のヌクレオシドの化学命名法による番号付けを説明したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式:
【化1】

(式中、「塩基」はプリン又はピリミジン塩基であり;
1、Y2、Y3及びY4は、独立して、H、OH、N3、NR12、NO2、NOR3、−O−アルキル、−O−アリール、ハロ、−CN、−C(O)NH2、−SH、−S−アルキル又は−S−アリールであり、ここで、Y1、Y2、Y3及びY4のうちの3つは、H又はOHであり、Rは、安定化されたホスフェート誘導体である)で示されるヌクレオチドのB型肝炎治療量を投与することを含むHBV感染症の治療法。
【請求項2】
B型肝炎に感染した患者の治療法であって、抗B型肝炎活性を示すヌクレオシドの安定化されたヌクレオチドプロドラッグのB型肝炎治療量を投与することを含む方法。
【請求項3】
安定化されたヌクレオチドがSATE誘導体である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
ヌクレオシドが、3TC及びFTCからなる群から選択される、請求項2記載の方法。
【請求項5】
ヌクレオシドが、AZT、DDI、D4T及びDDCからなる群から選択される、請求項2記載の方法。
【請求項6】
ヌクレオシドが、ジデオキシシチジン(β−L−FddC)、β−D−2′,3′−ジデオキシシチジン(β−D−ddC)、β−L−2′,3′−ジデオキシ−5−フルオロシチジン(β−L−ddC)、(−)−β−L−2−ヒドロキシメチル−5−(5−フルオロシトシン−1−イル)−1,3−オキサチオラン((−)−β−L−FTC)、(+)−β−D−2−ヒドロキシメチル−5−(5−フルオロシトシン−1−イル)−1,3−ジオキソラン((+)−β−D−FDOC)、及びβ−L−2−アミノ−6−(R4)−9−〔(4−ヒドロキシメチル)−テトラヒドロフラン−1−イル〕プリンからなる群から選択される、請求項2記載の方法。
【請求項7】
B型肝炎に感染した患者を治療するのに有効な量の請求項1記載のヌクレオチドを含む医薬組成物。
【請求項8】
B型肝炎に感染した患者を治療するのに有効な量の請求項2記載のヌクレオチドを含む医薬組成物。
【請求項9】
B型肝炎に感染した患者を治療するのに有効な量の請求項3記載のヌクレオチドを含む医薬組成物。
【請求項10】
B型肝炎に感染した患者を治療するのに有効な量の請求項6記載のヌクレオチドを含む医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−204485(P2007−204485A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77327(P2007−77327)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【分割の表示】特願平9−502163の分割
【原出願日】平成8年6月7日(1996.6.7)
【出願人】(503124447)エモリー ユニバーシティ (8)
【出願人】(507095851)ザ・ユーエービー・リサーチ・ファンデーション (1)
【出願人】(507095013)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシェ・シャンティフィク(セエヌエールエス) (1)
【Fターム(参考)】