説明

抗CD3抗体による潰瘍性大腸炎の処置方法

本発明は、自己免疫疾患の処置方法を提供する。特に、潰瘍性大腸炎の処置方法であって、治療的に有効量の、CD3に結合する抗体を含んで成る医薬製剤を対象者に投与することを含んで成る方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫学及び自己免疫疾患の処置の技術分野に属する。特に、本発明は抗CD3抗体による潰瘍性大腸炎の処置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症性腸疾患(IBD)、例えば潰瘍性大腸炎(UC)及びクローン病は、小腸及び大腸の慢性の炎症性疾患である。約100万人のアメリカ人がIBDに罹患していると推定されており、彼等のうちの約半数がUCである。UC及びクローン病の正確な原因はわかっていないが、IBDは慢性の炎症性疾患と一般的にみなされている。
【0003】
潰瘍性大腸炎の主な症候は出血性の下痢及び腹痛であり、これはしばしば発熱及び体重減少を伴う。潰瘍性大腸炎の臨床経過は変化しやすい。患者の多くは初発の一年以内に再発する。しかしながら、ごくわずかな症候で緩解が続くことがある。患者によっては、間欠的な性質の軽度から中程度の疾患に罹り、そして入院せずに何とか済ませることがある。約15%の患者において、当該疾患は劇症の経過を呈し、全結腸に影響を及ぼし、そして深刻な出血性の下痢並びに全身性の徴候及び症候を示す。患者は結腸の毒性の拡張(toxic dilation)及び穿孔を発症する危険性があり、そして医療緊急時に相当する(Harrison's Principles of Internal Medicine 12th Edition, McGraw-Hill Inc. (1991))。
【0004】
現在、UCの治療法は無い。採りうる処置は結腸上皮の炎症を軽減し、それにより胃腸(GI)症状を調節することを目的としている。今日使用されている薬剤の主要なクラスには、アミノサリチル酸塩、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン)、及び免疫調節薬(例えば、アザチオプリン及びシクロスポリン)が含まれる。結腸切除術は当該疾患を排除するが、この外科手術は、潜在的に回腸嚢炎、回腸嚢の機能障害、又は異形成との妥協によるものである(Miner PB. , et al. , In Kirsner JB, ed. Inflammatory Bowel Disease. 5th ed. Baltimore: Williams and Wilkins: 299-304 (2000))。
【0005】
USの初発は通常軽度であり、標準的な薬物療法のみを用いて91%の割合で緩解する。しかしながら、70%超の患者が、慢性的な間欠性の又は慢性的な連続性の経過の後、再発を経験する。患者は通常、最初に、ステロイドを経口(PO)5−アミノサリチル酸塩の薬物と組み合わせて、あるいは組み合わせずに処置される。当該疾患がPOステロイドに応答しない場合、IVステロイド又は6−メルカプトプリンが追加されうる。疾患がこれらの治療に応答しない患者については、短期のシクロスポリン又は治験薬を含む制限付きの薬物のレパートリーが利用可能である。シクロスポリンは約50%の患者に緩解をもたらすのに成功している。しかしながら、シクロスポリンは高レベルの急性毒性を伴い、そして最大70%のシクロスポリンで処置された患者が自身の疾患を調節するために1年以内に手術を必要とすることになる(Naftali T, et al. , Isr Med Assoc J; 2 (8): 607-609 (2000); Haslam N, et al. , Eur J Gastroenterol. Hepatol. 12 (6): 657-660 (2000); Rowe FA, et al. Am. J Gastroenterol; 95 (8): 2000-2008 (2000))。この集団はUC患者のうちの有意な比率(29%)に相当し、そして外科的介入に付随する相当の病的状態が存在する(Singleton JW, et al. , In Kirsner JB and Shorter RG, eds. Inflammatory Bowel Disease. 4th ed. Baltimore: Williams and Wilkins ; 335-343 (1995))。
【0006】
これらの既存の処置のアプローチの非有効性は、活性化T細胞の特異的な調節というよりむしろそれらの疾患の制御機構、例えば免疫抑制に少なくとも部分的に起因する。これらの治療物質は全てのT細胞の活性化及び増殖の一時的な低下を引き起こすだけである。その結果、患者の症候は当該処置が終了したらすぐにぶり返す。
【0007】
潰瘍性大腸炎の既存の処置方法の欠陥を考慮すると、更に有効な治療物質であって、特に、常用の非特異的免疫抑制に応答せず、それにより予後不良であるUCの型のためのものを開発することが所望とされる。
【0008】
T細胞上のCD3複合体は、T細胞受容体(TCR)ヘテロ二量体と密接に関連しており、そして抗原結合に際してのT細胞の活性化において重要な役割を果たしている。Tリンパ球はIBDの誘導及び進行を媒介する主要な免疫細胞であると考えられている。UCは、Th1及びTh2の両方のT細胞炎症媒介物質の成分をその疾患の病理学と関連させているので、Th1及びTh2細胞の両方を認識する抗体、例えば抗CD3抗体がUCにおいて治療上の利益をもたらしうると提唱されている(Elson C. , et al., In Kirsner JB, ed. Inflammatory Bowel Disease. 5h ed. Baltimore: Williams and Wilkins: 208-239. (2000))。伝統的な治療物質、例えばシクロスポリンと異なり、抗CD3抗体は活性化T細胞の増殖を阻害又はそのアポトーシスを誘導するのみであり、他のT細胞の機能を害することはない。従って、抗CD3抗体はより選択的であり、且つ前記処置の終了から長期間経過後の疾患活動性に対しても影響を及ぼすはずである。
【0009】
薬物学的試験及び毒物学的試験は、抗CD3抗体、例えばvisilizumabがチンパンジーにおいて耐用性が良好であったことを示唆した(発明者Brochure, Visilizumab (Nuvion(商標); HuM291) : Autoimmune and Inflammatory Diseases. Edition No. 3; PDL, Inc. April, (2002))。この抗体はまた、耐用性が良好であり、且つ移植片対宿主病(GVHD)(Carpenter PA, Appelbaum FR, Corey L, et al. , Blood 99 (8): 2712-2719 (2002))及び乾癬(係属中の米国特許出願USSN:10/001,234、2001年10月30日出願)の処置についてのフェーズI及びIIの臨床研究において所望の臨床効果をもたらすことが証明された。また、別のCD3抗体であるHuOKTγ1(Ala−Ala)がフェーズIの臨床試験において急性腎移植片拒絶を覆したことも報告されている(Woodle, E. S. , et al., Transplantation Vol. 68: 608-616 (1999) )。更に、この抗体はインスリン産生の低下を緩和させ、そして1型糖尿病の代謝制御を改善した(America College of Rheumatology Meeting November, 2002)。
【0010】
しかしながら、抗CD3抗体で潰瘍性大腸炎を処置することの可能性を検討する臨床研究は行われていない。本発明は、抗CD3抗体による潰瘍性大腸炎の処置のためのフェーズI/IIの臨床研究を開示し、UC、好ましくは重度のステロイド難治性潰瘍性大腸炎の処置のための抗CD3抗体の使用方法を提供する。本発明の方法は、既存の処置アプローチと比較して、優れた臨床的有効性及び長期持続性の有益な結果を提供する。
【0011】
本発明の要約
本発明は、免疫系の疾患、例えば自己免疫疾患の処置方法を提供する。
【0012】
本発明は、処置を必要とする患者の潰瘍性大腸炎の処置方法であって、前記患者に対し、活性化T細胞を特異的に調節する、好ましくはT細胞の増殖又は活性化を阻害する分子を投与することを含んで成る方法、を提供する。
【0013】
本発明は、処置を必要とする患者の潰瘍性大腸炎の処置方法であって、前記患者に対し、CD3と結合する抗体を含んで成る治療的に有効量の医薬製剤を投与することを含んで成る方法、を提供する。前記処置は、前記疾患の症候の軽減、例えば前記患者のModified Truelove and Witts Severity Index (MTWSI)スコア(表4を参照のこと)により測定した場合の臨床的及び/又は内視鏡的な緩解をもたらす。好ましくは、前記抗体は中和抗体であり、すなわちCD3の1又は複数のあるいは全ての生物学的活性を中和する。好ましくは、前記抗体はマウスM291抗体(米国特許第5,834,597号を参照のこと)又はマウスM291抗体と同一のエピトープを認識する抗体である。好ましくは、当該抗体はヒト化抗体又はヒト抗体である。最も好ましくは、当該抗体はvisilizumab(米国特許第5,834,597号を参照のこと)又はvisilizumabと同一のエピトープを認識する抗体である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
定義
本明細書で使用する場合、用語「抗体」又は「免疫グロブリン」とは、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の両方を包含することを意図している。好ましい抗体は、CD3と反応性のあるモノクローナル抗体である。用語「抗体」はまた、CD3と反応性のある1つ以上の抗体の混合物を包含することを意図している(例えば、CD3と反応性のある異なる型のモノクローナル抗体のカクテル)。用語「抗体」は更に、抗体全体、それらの生物学的に機能的なフラグメント、一本鎖抗体、並びに1以上の種由来の部分を含んで成るキメラ抗体、二機能性抗体及び抗体複合体及びヒト化抗体又はヒト抗体を包含することを意図している。生物学的に機能的な抗体フラグメントであって、更に使用することができるものは、CD3と結合するのに十分な抗体由来のペプチドフラグメントである。
【0015】
「治療的に有効」とは、薬物又は薬理学的に活性な物質又は医薬製剤の量が、当該薬物、物質又は製剤が所望の効果を提供するのに十分な量ということである。
【0016】
「対象者」、又は「患者」は本明細書で同義的に使用され、これは脊椎動物、好ましくは哺乳類、更に好ましくはヒトを意味する。
【0017】
用語「エピトープ」には、免疫グロブリン又は抗体と特異的に結合する任意なタンパク質の決定基が含まれる。エピトープの決定基は通常、アミノ酸又は糖の側鎖のような分子の活性表面の群から成り、そして通常、特異的な三次元的な構造的特性、並びに特異的な電荷特性を有している。2つの抗体は、一方の抗体の結合を軽減させ又は排除する、タンパク質におけるアミノ酸の突然変異が、他方の抗体の結合を軽減させ又は排除する場合、そして/あるいは当該抗体が前記タンパク質との結合、すなわち、一方の抗体と、他方の抗体の結合を軽減させ又は排除するタンパク質との結合、について競合する場合には、タンパク質の同一のエピトープと結合すると言われる。
【0018】
用語「に由来する」とは、「から得られる」又は「により生産される」又は「から派生する」ことを意味する。
【0019】
用語「遺伝的に改変された抗体」とは、アミノ酸配列が天然の抗体のものから変化している抗体を意味する。組換えDNA技術と本発明との関連性のため、本発明は天然抗体で見られるアミノ酸配列に限定される必要はなく、抗体は所望の特性を得るために再設計されうる。起こりうる変化は多数あり、そしてわずかに1個又は数個のアミノ酸の変化から、例えば可変領域又は定常領域の完全な再設計に及ぶ。定常領域の変化は、通常、補体結合、膜との相互作用及び他のエフェクター機能、のような特性を改善し、あるいは変化させるために行われる。可変領域の変化は、抗原結合特性を改善するために行われる。
【0020】
用語「ヒト化抗体」又は「ヒト化免疫グロブリン」は、ヒトのフレームワークの、非ヒト抗体由来の少なくとも1つ、好ましくは全ての相補性決定領域(CDR)を含んで成り、且つ存在するあらゆる定常領域が、ヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同一、すなわち少なくとも約85〜90%、好ましくは少なくとも95%同一である、免疫グロブリンを言及する。従って、ヒト化免疫グロブリンの全部分であって、出来る限りCDRを除いたもの、は、1又は複数の天然ヒト免疫グロブリン配列の相当部分と実質的に同一である。例えば、Winter et al. 、米国特許第5,225,539号;Queen et al.、米国特許第6,180,370号を参照のこと(これらは、それぞれ引用によってその全体が組み入れられる)。
【0021】
用語「キメラ抗体」とは、定常領域がある種(典型的にはヒト)の抗体に由来し、そして可変領域が別の種(典型的にはげっ歯類)の抗体に由来する抗体を意味する。
【0022】
本発明は、処置又は予防が必要な対象者の少なくとも1つのT細胞媒介型の障害を、活性化T細胞の活性化又は増殖を特異的に阻害することにより、あるいは活性化T細胞のアポトーシスを誘導することにより、好ましくは前記対象者に治療的に有効量の抗CD3抗体を投与することにより処置又は予防する方法、を提供する。1つの態様において、T細胞媒介型の障害は、不所望の免疫応答を示す症状である。そのような症状には、自己免疫疾患、移植片拒絶、移植片対宿主病、炎症、アレルギー反応、及び敗血症、が含まれる。例示的な自己免疫疾患には、限定しないが、アジソン病、耳の自己免疫疾患、眼の自己免疫疾患、例えばブドウ膜炎、自己免疫性肝炎、クローン病、糖尿病(I型)、精巣上体炎、糸球体腎炎、グレーブス病、移植片対宿主病、ギランバレー症候群、橋本病、溶血性貧血、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、乾癬、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、脊椎関節症、甲状腺炎、潰瘍性大腸炎及び血管炎、が含まれる。
【0023】
これらのT細胞媒介型の障害は、処置を必要とする患者に対し、活性化T細胞と特異的に調節する分子、すなわち活性化T細胞にのみ影響を及ぼし、一方他のT細胞を妨害しない分子を投与することにより処置されうる。これらのT細胞調節分子は、活性化T細胞の不所望な活性化及び増殖を特に阻害することができる。従って、本発明の処置は疾患改質過程である。本発明の好ましい態様において、当該処置は、本明細書に記載の障害、好ましくは炎症性腸疾患、例えばUC、の長期の緩解をもたらすであろう。1つの態様において、これらの分子は、抗CD3抗体である。
【0024】
T細胞活性化過程は、偶発的な事象のカスケードであって、各事象が各構成要素の発現に依存するものを表す。T細胞活性化の初期の間、T細胞は、タンパク質リン酸化、膜脂質の変化、イオン流入、環状ヌクレオチド変化、構成的且つ新規に活性化された遺伝子産物のRNA合成の増大又は低下、及び細胞の体積増大(芽球化現象)を特徴とする甚大な変化を受ける。後者の細胞応答、例えば増殖は、通常、遺伝子活性化事象の複雑なカスケード及びこれらの遺伝子の産物の協調した連続的な影響から起こる。最終的には、休止しているTリンパ球の活性化は、様々な方法で顕在化されうるが、これには新規細胞表面分子の発現、リンホカインの宿主の分泌、細胞増殖、細胞分化、そして更にはプログラム化された細胞死(アポトーシス)さえ含まれる。本発明の目的のために、活性化T細胞には、上述した活性化したフェーズのあらゆるT細胞が含まれる。
【0025】
T細胞の活性化を評価するために種々のパラメーターが当業者により使用される。これらのパラメーターには、(a)初期のシグナル伝達事象、例えばタンパク質チロシンリン酸化又は細胞質にある遊離カルシウム([Ca2+])の増大、であって、必ずしも細胞応答を引き起こさないもの;(b)新規細胞表面活性化抗原、例えばIL−2受容体(IL−2R)の鎖(CD25)トランスフェリン受容体、ヒトT細胞上のクラスIIのMHC分子、及びCD69、未知の機能を有する分子、の発現;(c)リンホカイン、例えばIL−2又はIL−4の産生;(d)細胞増殖;並びに(e)細胞溶解活性、が含まれる。これらのパラメーターは、当業界で知られている方法により検出されうる。
【0026】
本発明は、潰瘍性大腸炎(UC)及び/又は他の炎症性腸疾患、例えばクローン病、の処置方法であって、それを必要としている患者に対し、治療的に有効量のCD3認識抗体を投与することを含んで成る方法、を提供する。当該処置は、UCの重症度を軽減させ、UCの緩解期間を延長し、再発頻度を減少させ、そして/あるいは前記の症候を完全に根絶する。
【0027】
UCの重症度は、例えば、前記対象者のMTWSIスコア又はMAYOスコアにより表される。MTWSIは、処置を行う医師がUC患者の疾患の重症度を分類するのに使用する標準化された評価尺度である(Lichtiger S. , et al. , N. Engl. J. Med; 330 (26): 1841-1845 (1994); Truelove, S. C. , et al. , British Medical Journal 2: 1041 (1955))。疾患の症候は、下痢、夜間下痢、直腸出血、便失禁、腹部の痙攣、一般的な健康問題、下痢止め薬の必要性、及び腹部圧痛、についての個々の尺度を用いて等級付けされる。それぞれのカテゴリーは、それ自身の尺度(0〜1−5の範囲)(0=正常、そして、より大きい番号は重症度の増大を反映している)を有しており、最大の合計スコアは21ポイントである。MTWSIスコアのパラメーターは、表4に記載されている。処置に対する臨床的応答は、少なくとも30日間維持された10ポイント未満の絶対的MTWSIスコアへの少なくとも2ポイントのMTWSIスコアの低下として定義される。これらのUC患者における緩解、例えば臨床的緩解及び内視鏡的緩解は、60日間維持された4以下へのMTWSIスコアの低下として定義される。経口グルココルチコイド治療の処置に対する応答に失敗した11以上のMTWSIスコアを有する対象者は、臨床的に「重症」なケースのUCを有している。5−ASA±アザチオプリンで維持された、あるいは短期のグルココルチコイドに応答する、7超で且つ10以下のMTWSIスコアを有する対象者は、臨床的に「中程度」のケースのUCを有している。5−ASAで維持された、4超で且つ7以下のMTWSIスコアを有する対象者は、臨床的に「軽度」のケースのUCを有している。4以下のMTWSIスコアを有する対象者。
【0028】
Mayoのスコアリングシステムは、処置を行う医師がUC患者の疾患の重症度を分類するのに使用する別の標準化された評価尺度である(Schroeder, K. W. , et al., N. Engl. J. Med. 317: 1625-1629 (1987))。疾患の症候は、排便回数、直腸出血、医師の包括的評価(physician's global assessment, PGA)、及び軟性直腸S状結腸鏡検査法の所見、についての個々の尺度を用いて等級付けされる。MAYOスコアのパラメーターを表5に記載する。0〜2ポイントの合計のMayo UC活動性スコアは、緩解又は最小の活動性の疾患を示し、3〜5ポイントのスコアは、軽度に活動性の疾患を示し、6〜10のポイントのスコアは中程度に活動性の疾患を示し、そして11〜12のスコアは、患者のMTWSIスコアに依存して、中程度又は重症の疾患を示すことがある。
【0029】
UCの重症度はまた、結腸の内視鏡検査で測定される。重症の内視鏡的な外観は、化膿性滲出液並びに粘膜の血管パターン及び膨起構造の消失を伴う集密的粘膜潰瘍を有している。中程度の内視鏡的な外観は、膨起性の浮腫、粘膜の紅班、粘膜の血管パターンの浸食及び消失、を有している。軽度の内視鏡的な外観は、面幕の血管パターン及び紅班の消失、を有している。正常な内視鏡的外観は、ピンクの集密的となっている視覚可能な粘膜の血管を有している。
【0030】
本発明の方法は、軽度、中程度、及び/又は重症の潰瘍性大腸炎、好ましくはステロイド難治性の潰瘍性大腸炎、更に好ましくは重症のステロイド難治性潰瘍性大腸炎の処置に使用されうる。
【0031】
UC患者の集団に適用した場合、抗CD3抗体による処置は、MTWSIスコアの少なくとも50%(MTWSI)ないし75%(MTWSI)の低下あるいはUCの症候のまさに完全な又はほぼ完全な排除をもたらすであろう。UC患者の集団に適用した場合、抗CD3抗体による処置は、MTWSIスコアの少なくとも5,6,7,8,9又は10の低下をもたらすであろう。緩解、例えば臨床的緩解及び/又は内視鏡的緩解は、本発明の方法により、少なくとも20%ないし30%、しかし、好ましくは40%ないし50%、あるいは場合によっては60%、更に好ましくは70%ないし80%、そして最も好ましくは90%以上、あるいはまさにほぼ100%の患者において達成されるはずである。好ましくは、この効果は、臨床試験、例えばフェーズI又はフェーズIIの臨床試験において証明されるはずであり、且つ、コントロール群(抗CD3抗体で処置されていない群)と比較しての応答又は緩解の増大は、統計的に有意なはずである。MTWSIスコアは、処置の開始又は終了から約8,15,30,60,90日後に、そして6ヶ月又は1年後に、あるいはまた他の都合のよい時に測定されうる。
【0032】
緩解は、処置終了からわずかに20,30,60,90,120又は150日後という短期間で達成されうる。一旦達成されると、緩解は、少なくとも1,2,3,4,5,6,7,8,10ヶ月ないし、1,2ないし5年から不定期間続くはずである。何ら他の臨床的処置、例えばステロイド又は5−ASA処置を行わなくても、より少ない再発回数又は再発無しが観察されるはずである。好ましい態様において、UC患者は、前記処置から少なくとも1,2,4、ないし6ヶ月、あるいは1,2、ないし5年間臨床的改善を経験し続ける。臨床的改善は、MTWSI及び/又はMAYOスコアのパラメーターにおいて現れるあらゆる症候のあらゆる改善であり得る。
【0033】
本発明の使用のための抗CD3抗体には、CD3の任意のエピトープに結合する抗体が含まれる。それらには、天然抗CD3抗体(宿主動物により産生される抗体)及び組換え抗CD3抗体が含まれる。全ての種を起源とする抗CD3抗体が含まれる。限定されない例示的な天然抗CD3抗体には、ヒト、ニワトリ、ヤギ及びげっ歯類(例えば、ラット、マウス、ハムスター及びウサギ)であって、ヒト抗体を産生するよう遺伝子操作されたトランスジェニックげっ歯類を含むもの、に由来する抗CD3抗体が含まれる(例えば、Lonberg et al. , WO93/12227 (1993)及びKucherlapati, et al. , WO 91/10741 (1991)を参照のこと。これらは引用によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる)。本発明において有用な抗体はまた、ファージディスプレー法を用いて生成されうる(例えば、Dower et al. , WO 91/17271及びMcCafferty et al. , WO 92/01047を参照のこと。これらは引用によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる)。ヒトの患者において使用するために、前記抗体はヒトCD3に結合しなければならない。当該抗体は、CD3について、少なくとも107-1、しかし、好ましくは少なくとも108-1、更に好ましくは少なくとも108-1、最も好ましくは少なくとも109-1、そして理想としては1010-1以上の結合親和性を有する。当該抗体の親和性は、ファージディスプレー又は他の方法を用いてin vitro突然変異誘発により増大されうる(例えば、Co, et al. , 米国特許第5,714, 350号を参照のこと。これらは引用によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる)。
【0034】
好ましくは、当該抗体は中和抗体であることがあり、すなわち、それらは、少なくとも1つ、しかし、好ましくは全てのCD3の生物学的特性、例えばT細胞増殖の刺激、を中和するであろう。当該抗体は通常T細胞受容体に対するCD3の結合を阻害又は阻止するであろう。当該抗体は、活性化T細胞の増殖及び活性化を阻害するはずであり、あるいは、活性化T細胞のアポトーシスを誘導するはずである。
【0035】
好ましくは、当該抗体は、Fcγ受容体に特異的に結合する能力を実質的に有しておらず、それにより当該抗体は、ほとんど又は全ての患者のT細胞における分裂促進応答を実質的に活性化しない。好ましくは、当該抗体は、免疫抑制剤として以下の所望の特性を有する:それらは、少なくとも大部分(本明細書で使用する場合には少なくとも67%、75%、90%ないし95%を意味する)の患者において、裂促進活性を誘導してサイトカインの有害な放出をもたらすことなくT細胞の免疫応答を抑制することができること。好ましくは、当該抗体は米国特許第5,834,597号(これは、引用によりその全体が組み入れられる)に記載のような免疫抑制剤としての1又は複数の所望な特性を有する。
【0036】
これらの抗体のポリクローナルの形態は、ヒトCD3を用いた免疫感作によりヒト以外の宿主動物において産生されうる。モノクローナル抗体は、免疫感作及びハイブリドーマ方法論により産生されうる。ハイブリドーマ方法論及び免疫感作手段は当業界で周知である。
【0037】
組換えDNA技術は、組換え抗CD3抗体を産生するのに使用することができ、これらも本発明に含まれる。そのような組換え抗体のアミノ酸配列は、天然抗体で見られるアミノ酸配列と同一であってもよい。あるいは、それは、当該アミノ酸配列が天然抗体のものから変化するように遺伝子改変されてもよい。組換え抗CD3抗体には、原核生物の発現系及び真核生物の発現系の両方を含む任意の発現系により産生される抗体が含まれる。例示的な原核生物の発現系は、外来から導入された配列を大量に発現することが典型的に可能な細菌系である。例示的な真核生物の発現系には、真菌の発現系、ウイルスの発現系を包含する真核細胞、例えば昆虫細胞、植物細胞、特に哺乳類細胞(例えば、CHO細胞及び骨髄細胞、例えばNS0及びSP2/0)が含まれ、これらは当業者にとって周知なものである。当該抗体はまた、化学合成により産生されうる。しかしながら、それらは産生され、当該抗体は、当業界で知られている方法、例えば濾過、クロマトグラフィー(例えば、アフィニティークロマトグラフィー、例えばプロテインAによるもの、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、及びゲル濾過)により精製されるであろう。医薬製剤における使用にとって最小の許容可能な抗体純度は90%であるとされ、但し、95%が好ましく、98%が更に好ましく、そして99%以上が最も好ましい。
【0038】
好ましくは、本発明で使用する遺伝子改変された抗CD3抗体には、CD3に結合して中和するヒト化抗体が含まれる。これらのヒト化抗体の例は、米国特許第5,834,597号及び第6,129,914号において開示されており、これらは引用によりその全体が本明細書に組み入れられる。一例として、好ましいヒト化抗CD3抗体はvisilizumabであり、これはアミノ酸配列が配列番号1の21〜126位の成熟軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列が配列番号2の20〜139位の成熟重鎖可変領域、を含んで成る。visilizumab(HuM291; Nuvion(登録商標))は、Protein Design Labs, Inc. (Fremont, CA)(PDL)で開発されたヒト化IgG2モノクローナル抗体であって、Fc領域のCH2ドメインの234及び237位にアミノ酸置換を有するものである。配列番号3は、visilizumabの重鎖の定常領域のアミノ酸配列を表す。この変化は、in vitroでの当該抗体に対するヒト末梢血単核細胞の曝露によるサイトカインの放出の減少、並びにヒト末梢血Tリンパ球による活性化マーカーの発現の低下、を伴う。修飾されたFc領域に起因して、visilizumabは、重症のサイトカイン放出症候群、又は免疫原性の高度化を引き起こすことなく効率的な免疫抑制を媒介することが可能である。
【0039】
他の好ましい抗体には、visilizumab (Nuvion(登録商標)),と同じCD3エピトープに結合するもの、特に米国特許第5,834,597号に記載のM291抗体の他のヒト化形態が含まれる。好ましくは、visilizumabと同じCD3エピトープに結合する抗体は、visilizumabのアミノ酸配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有する。更に好ましくは、当該アミノ酸配列は少なくとも85%同一である。より更に好ましくは、当該アミノ酸配列は少なくとも90%同一である。より一層更に好ましくは、当該アミノ酸配列は少なくとも95%同一である。好ましくは、visilizumabと同じCD3エピトープに結合する抗体のCDRは、visilizumabのCDRのアミノ酸配列と少なくとも80%同一である。更に好ましくは、当該アミノ酸配列は少なくとも85%同一である。より更に好ましくは、当該アミノ酸配列は少なくとも90%同一である。より一層更に好ましくは、当該アミノ酸配列は少なくとも95%同一である。最も好ましくは、当該アミノ酸配列は100%同一である。当該抗体は、認識されているイソ型のうちのいずれでもよいが、4つのIgGのイソ型が好ましく、IgG2が特に好ましい。エフェクター機能が低下するよう突然変異した定常領域を有する抗体、例えば、米国特許第5,834,597号(これは、引用によりその全体が組み入れられる)に記載のIgG2m3及び他のIgG2突然変異体が、追加の好ましい選択である。
【0040】
遺伝子改変された抗CD3抗体には更に、CD3に結合して中和するキメラ抗体が含まれる。好ましくは、当該キメラ抗体は、ヒトの対象者に対し投与された場合により長い半減期を有し、且つあまり免疫原性がないように、マウス又はラット由来の可変領域及びヒト由来の定常領域を含んで成る。キメラ抗体を生成する方法は当業界で知られている。
【0041】
上記抗CD3抗体のフラグメントであって、CD3に対しての結合特異性を保持するものも本発明に含まれる。例としては、限定しないが、上述の抗体の重鎖、軽鎖、及び可変領域並びにFab及び(Fab’)2が含まれる。
【0042】
遺伝子改変された抗体には更に、上記抗体及び抗体フラグメントと機能的に等価の修飾された抗CD3抗体が含まれる。向上した安定性及び/又は治療的有効性を提供する修飾された抗体が好ましい。修飾された抗体の例には、抗原に結合する有用性を大きく有害に変えないアミノ酸残基の保存的置換、及びアミノ酸の1又は複数の欠失又は付加によるものが含まれる。置換は、治療的有用性が維持される限り、1又は複数のアミノ酸残基の変化又は修飾からある領域の再設計に及ぶことがある。本発明の抗体は翻訳後に修飾されることがあり(例えば、アセチル化、及びリン酸化)、あるいは合成的に修飾されることがある(例えば、標識基の付着)。結合特異性を保持しているこれらの修飾された抗体のフラグメントも使用されうる。
【0043】
本発明は、本明細書に記載の抗体を含んで成る医薬製剤を提供する。抗体の医薬製剤は、保存のために、所望の程度の純度を有する抗体と、任意の生理学的に許容される担体、賦形剤、又は安定化剤とを混合することにより、凍結乾燥された形態又は水溶液の形態で調製される。許容される担体、賦形剤又は安定化剤は、採用した用量及び濃度ではレシピエントに対して毒性がなく、且つ緩衝液、例えばリン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸;酸化防止剤、保存剤、低分子量ポリペプチド、タンパク質、親水性ポリマー、アミノ酸、炭水化物、キレート剤、糖、及び当業者に知られている他の標準的な成分(Remington's Pharmaceutical Science 16th edition, Osol, A. Ed. 1980)、を含む。
【0044】
本明細書の製剤はまた、処置される特定の徴候のために必要に応じて複数の活性化合物を含むことがあり、これは、好ましくは互いに有害に影響を及ぼさない補完的な活性を有するものである。そのような分子は、適切には、意図する目的にとって有効な量の組み合わせで存在する。
【0045】
上記医薬製剤の活性成分はまた、マイクロカプセル、コロイド状の薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)、マクロエマルジョン、あるいは徐放調製物に封入されることがある。そのような技術は当業者に知られている(Remington's Pharmaceutical Sciences)。
【0046】
in vivoでの投与に使用される製剤は、通常2〜8℃で保存される。当該製剤はしばしば保存剤を含まず、そして、バイアルからの引き抜き及び生理食塩水中での希釈から4,12ないし24時間以内に使用されるべきである。当該製剤は、好ましくは、静脈内から又は皮下から濾過して又は濾過せずに投与される。好ましくは、ヒト化抗CD3抗体、visilizumabは、1.0mLのvisilizumabを滅菌生理食塩緩衝液中1.0mg/mLの濃度で含む使い捨てのバイアル中で保存される。しかしながら、1〜10mg/mL(例えば、1,2,5ないし10)、20〜50mg/mL(例えば、20,30,40ないし50)ないし60〜100mg/mL(例えば、60,70,80,90ないし100)の濃度も許容される。
【0047】
医薬製剤において調製された抗体は、経口、経腸、経鼻、局所(経皮、エアロゾル、頬側及び舌下を含む)含む適当な経路により、あるいは吸入治療により投与されうる。また、好ましい経路は、レシピエントのコンディション及び年齢により変化することがある。
【0048】
好ましくは、医薬製剤は、非経口で、例えば静脈内からボーラス注入で、治療的有効量の前記製剤が全身吸収及び循環を介して送達されるように送達される。
【0049】
上記製剤の治療的に有効量は、UCの重症度、患者の病歴及び応答、並びに担当医の裁量に依存する。当該製剤は、適切には、一回で又は一連の治療にわたり投与される。最初の候補用量が患者に投与されうる。適正な用量及び治療計画は、当業者に知られている常用の技術を用いて治療の進行をモニタリングすることにより確立されうる。
【0050】
単回投与剤形を生成するために担体材料と組合されうる活性成分の量は、処置される対象者及び特定の投与形態に依存して変更されるであろう。しかしながら、任意の特定の患者についての特定の投与レベルが種々の要因、例えば採用された特定の製剤の活性、年齢、体重、一般的健康状態、性別、食事、投与期間、投与経路、排泄回数、薬物の組み合わせ及び治療を受けている特定の疾患の重症度に依存して変化し、そして当業者により決定されうることは理解されよう。
【0051】
特に、UCの処置のための例示的な有効用量は、約0.001mg/kg〜約100mg/kg、好ましくは約0.001mg/kg〜約10mg/kg、更に好ましくは約0.005mg/kg〜約0.100mg/kgである。好ましい用量レベルには、約0.001mg/kg、約0.005mg/kg、約0.0075mg/ml、約0.010mg/kg、約0.015mg/kg、約0.020mg/kg、約0.030mg/kg、約0.045mg/ml、約0.050mg/kg、約0.060mg/ml、約0.070mg/ml、約0.080mg/ml、及び約0.1mg/kg、が含まれる。好ましい用量は、上文の示した用量レベルのうちのいずれか2つの範囲内でありうる。
【0052】
処置及び患者の生理学的なコンディションにおける経過に依存して、UCの処置計画は大きく変化することがある。典型的には、患者は、本明細書に記載の抗体のうちのいずれか1つを含んで成る医薬製剤を少なくとも1回量で投与され、これはあらゆる追加の用量が生じる場合には「初期用量」又は「初期投与(initial administering又はadministration)」と命名される。抗体医薬は、1回又は複数回、例えば、1日につき、1週につき、隔週で、6週ごとに、又は月ごとに、あるいは2,3,又は6ヶ月ごとに1,2,3,又は4回の頻度で投与されうる。ある治療単位の処置期間は少なくとも1又は2日、例えば1〜数(2,3,4,5,又は6)日、数週、数ヶ月又は数年、あるいは無期限、疾患の性質及び重症度に依存して持続されるはずである。処置期間は、抗体の初期投与から抗体の最後の投与までの期間として算出される。患者は、疾患が再発する場合、2,3,4ないしそれ以上の期間の処置を受けることがある。投与頻度は、患者の改善経過に従い調節されうる。
【0053】
UCにとって好ましい処置計画として、ある用量の抗CD3抗体が、2日連続する日のそれぞれの日に、1日1回のボーラス注射として患者に投与される。そのような好ましい計画のついての例示的な用量レベルは0.015mg/kg、0.030mg/kg、0.045mg/kg、0.060mg/kgである。
【0054】
注入に関連する症候を軽減させるために、抗CD3抗体を含んで成る医薬製剤はまた、別々に投与される製剤として、他の物質と併用して使用されることもある。典型的に、これらの物質には、メチルプレドニゾロン(methyprednisolone)、ヒドロコルチゾン、オンダンセトロン、アセトアミノフェン、及び、同様の機能を有し、且つ当業者に周知の多数の追加物質が含まれる。これらの他の物質は、任意の適当な経路、例えば経口、経腸、経鼻、局所、非経口(皮下、筋肉内、静脈内及び皮内を含む)により、あるいは吸入治療により投与されうる。
【0055】
これらの物質の用量レベルも当業界で知られており、例えば患者当たり1mg〜100gである。例示的な用量には、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン及びオンダンセトロンの場合、10〜50mg、60〜200mg、又は200〜500mg;そしてアセトアミノフェンの場合、100〜500mg、600〜1000mg、1〜5gが含まれる。単一又は複数の追加の免疫調節剤が、患者に対し、例えば、抗CD3抗体の医薬製剤の初期投与及び/又は各投与の前及び/又は後少なくとも約1,2,3,4,5,6,7,8,10,12,14,20,24,36時間ないし2,3,4,5,7,10,20,40,ないし60日投与されうる。
【0056】
一例において、患者は、メチルプレドニゾロン(又はヒドロコルチゾン)及びオンダンセトロンで、前記抗体の初回投与(first dose)を受ける約1時間前にあらかじめ処置され、例えば約50mgのメチルプレドニゾロン及びオンダンセトロンを静脈内からである。別の実施例において、患者は、抗CD3抗体の各投与を受けてから約1〜2時間後にアセトアミノフェンを受け、例えば約1000mgのアセトアミノフェンを経口からである。好ましい態様において、患者は、メチルプレドニゾロン及びオンダンセトロンの両方であらかじめ処置され、そして、上述の2つの例示的態様において記載したように抗CD3抗体の各投与を受けた後にアセトアミノフェンを受ける。
【0057】
本発明の方法は、UC又は他の炎症性超疾患、特にステロイド難治性の潰瘍性大腸炎を処置するのに優れた臨床的有効性(処置された患者において約100%の緩解)をもたらす。当該方法は、単独で、又は任意な他の治療単位と組み合わせて使用されうる。例えば、常用の処置を受けている患者は、同時に所望の有効性が達成されるまで本明細書に記載の抗体処置計画の対象たり得る。一例において、表3に列記するようなステロイド又は他の物質の処置を受けている患者は、本明細書に記載の抗体処置計画の対象である。当該患者は、抗CD3抗体処置計画の開始(前記抗体医薬製剤の初期投与)前に少なくとも1,2,3,5,7,10,20,30、又は90日間前記ステロイドを受けるべきである。当該患者は、抗CD3抗体の最後の投与を受けた後、少なくとも約1日(例えば、約5,7,10,15,20,又は50日)前記ステロイドを受ける続けるであろう。患者は、自身の現在の処置計画の一部である任意な他の免疫調節剤を受け続けるであろう。用量範囲は処置する医師により決定され、例えば、ステロイド又はA−ABAの場合、通常1mg/kg〜100mg/kgであろう。
【0058】
UCの処置の有効性について、患者は、MTWSI及びMAYOについてスコアリングされる。結腸生検材料は、炎症活動について評価される。あらゆる外科的介入が記録されるであろう。
【0059】
以下の実施例は例示目的で提供され、限定目的ではない。本願明細書の全ての引用説明は、全ての目的のために引用により明示的に本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0060】
実施例1
本実施例は、コルチコステロイド難治性である重症の潰瘍性大腸炎を有する患者におけるvisilizumabの、フェーズIの、用量漸増の、試験的研究の研究概要を説明する。
【0061】
研究概要
コルチコステロイド難治性である重症の潰瘍性大腸炎を有する患者におけるvisilizumabの、フェーズIの、用量漸増の、試験的研究
プロトコール番号: 291−406、訂正B
フェーズ: 1
治験薬: visilizumab (Nuvion(登録商標); HuM291)
徴候: 潰瘍性大腸炎
規制状況 US IND No.9443
研究デザイン
安全性、耐容性、及び予備的な有効性のデータを得るために設計された用量漸増の試験的研究。2つのステージがこの研究のために計画された。ステージ1において、最大10人の患者の連続した群が、最大耐量(MTD)又は至適生物学的用量(Optimum Biological Dose, OBD)に達するまで4つの漸増する用量レベルでの2つのIV用量のVisilizumabで処置された。用量漸増は、30日目の安全性及び有効性のデータが全ての患者につきその時点の用量レベルで得られるまで行われない。必要に応じて、用量レベル1未満への2用量レベルへの漸減もステージ1において考えられうる。ステージ2において、最大20人の追加の患者がOBD又はMTDに登録されうる。
【0062】
患者集団
18〜70歳の、静脈内(IV)ステロイド治療に対する応答に失敗した重症の潰瘍性大腸炎(UC)を有する男性及び女性
【0063】
組み入れ基準
・UCの診断が研究のエントリー前36月以内に実施された結腸鏡検査又はバリウム注腸によって確認されたこと。
・活動性の疾患が、研究のエントリー前最少5日間のIVステロイドの治療単位が係属しているにも関わらずMTWSIスコアが11〜21と記録されたこと。
【0064】
投与経路:
ボーラス注射により静脈内(IV)から。
【0065】
用量レベル:
用量レベル1*:15μg/kgを一日一回1日目と2日目に投与する。
用量レベル2:30μg/kgを一日一回1日目と2日目に投与する。
用量レベル3:45μg/kgを一日一回1日目と2日目に投与する。
用量レベル4:60μg/kgを一日一回1日目と2日目に投与する。
*用量レベル1から漸減することが必要であった場合、以下の2つの用量レベルが使用されうる:
10μg/kgを一日一回1日目と2日目に投与する。
7.5μg/kgを一日一回1日目と2日目に投与する。
用量漸増及び漸減のガイドライン(dose-escalation and de-escalation guidelines)及びOBDとMTDの定義についてセクション3.5を参照のこと。
【0066】
剤形及び強度:1.0mg/mL滅菌生理食塩水
【0067】
Visilizumabの保存:
Visilizumabは、2〜8℃(36〜46°F)に制御して冷蔵された条件下で保存されるべきである。製剤は保存剤を含まず、そしてバイアルから採取して12時間以内に使用されるべきである。
【0068】
前投薬及び後投薬
・vilisizumabの初回投与を受ける1時間前:50mgのメチルプレドニゾロンIV(又は同等の用量のヒドロコルチゾンIV)、及びオンダンセトロン(Zofran(登録商標))。
・vilisizumabによる各処置の1〜2時間後:1000mgのアセトアミノフェン。
・患者は、vilisizumabを受けてから少なくとも7日間の期間自身の現在の処置計画に従いコルチコステロイドを受け続ける。7日後、コルチコステロイド処置計画を続けてもよく、あるいは漸減してもよい。患者は、自身の現在の処置計画の一部である、あらゆる他の免疫調節剤を受け続けた。
【0069】
処置及びフォローアップの期間
スクリーニング(ベースライン試験)は、visilizumab投与前最大3週間行った。投与は、1日目及び2日目に行われ、そしてフォローアップのための訪問は、8日目、15日目、30日目、60日目、及び90日目、並びに6ヶ月に計画された。6ヶ月目及び1年目に、患者は長期間の安全性の情報について従い;6ヶ月目に、彼等はまた、有効性の情報についてフォローアップされるべきである(下文を参照のこと)。
【0070】
場所の数/試料のサイズ
本研究は、米国内で最大10ヶ所のセンターで行う。最大60人のUCの患者(4つのレベルにつきそれぞれ最大10、そしてOBD又はMTDで最大20超)がこのトライアルに登録されることが予想される。
【0071】
統計学的方法
記述統計学及び95%の信頼区間が適切な場合に適用されうる。作表及びリスティングは、患者集団の特徴を要約することになる。薬物動態学的(PK)及び薬力学的(PD)結果は、グループ間の差異の形式学的試験をすることなく、表及びグラフにおいて用量レベルで表した。抗体応答について注目し、そしてAEが作表される。MTWSI及びMayoシステムのスコア、並びにそれらの相当する時間ごとの変化が要約され、そしてリスティングされた。
【0072】
第一目的
ステロイド難治性である重症のUCを有する患者に投与した場合の、visilizumabの安全性及び耐容性を評価すること。
【0073】
第二目的
1)本試験におけるvisilizumabの最大耐量(MTD)又は至適生物学的用量(OBD)を決定すること。
2)この徴候における生物学的活動度の予備的な証拠を得ること。
3)visilizumabの薬物動態と薬力学の間の関係、臨床的応答、及び毒性を決定すること。
【0074】
安全性の測定
有害事象(AE)及び重症有害事象(SAE)が60日を通じて記録され、そして重症度及び治験薬との関係に従い特徴付けられた。併用薬は60日を通じて記録された。患者は、処置後6ヶ月目及び1年目に日和見感染及び悪性度についてフォローアップされた。
【0075】
全ての患者の検査値がモニタリングされた(血清化学は最大15日、そして血液学は最大30日)。追加の血液試料がT細胞の回復を記録するために30日経過後に必要とされ、追加の血液試料が血液学及びPK試料のために時々採取される。
【0076】
エプスタインバーウイルス(EBV)DNAのコピー数が、全ての患者において、ベースライン時、そして8日目、25日目、及び30日目に採取された血液試料を用いてモニタリングされた。30日目のEBVの力価が患者のベースラインレベルを超す場合、EBVアッセイは、ベースラインに戻るまで2週間毎に繰りかえされた。
【0077】
有効性の測定
疾患の活動度(症候の重症度)はベースライン時、visilizumab投与後1日目、2週目、そして1,2,3、及び6ヶ月目でTMWSIスコアリングシステムを用いて測定された。尚、患者のUCの症候は、ベースライン時、そして1ヶ月目のフォローアップの訪問の際に、Mayoスコアリングシステムを用いて評価された。患者はまた、ベースライン時、そして1ヶ月目に軟性S状結腸鏡検査を受けた;結腸生検試料を病理学について試験した。あらゆる外科的介入を記録した。
【0078】
薬物動態学的測定
循環しているCD3+CD4+T細胞数が、全ての患者において。最低限度で、30日を通じてモニタリングされた。その後、T細胞のデータは、回復が記録されるまで7日毎に患者から回復される。適当なT細胞の回復とは、≧200細胞/μL又は>50%の患者のベースライン値と定義される。
【0079】
薬物動態学的測定
薬物動態学的(PK)プロファイルが、各患者につき、1日目及び2日目、そして再び8日目、15日目、30日目及び90日目のvisilizumabの投与前後に採取された血液試料を用いて決定された。追加の血液試料がT細胞の回復を記録するために30日経過後に必要とされ、追加の血清試料がPKアッセイのために同時に採取される。
【0080】
抗Ab評価
患者は、visilizumabに対する抗体(抗Abs)の発生についての研究の間、1日目、そして更に15日目、30日目、及び90日目の投与の前に採取された血液試料を用いて評価された。
【0081】
実施例2
本実施例は、コルチコステロイド難治性である重症の潰瘍性大腸炎を有する患者におけるvisilizumabの、フェーズIの、用量漸増の、試験的研究の研究概要を説明する。
【0082】
1.研究目的
1.1.第一目的
ステロイド難治性である重症のUCを有する患者に投与した場合の、visilizumabの安全性及び耐容性を評価すること。
【0083】
1.2.第二目的
1)本試験におけるvisilizumabの最大耐量(MTD)又は至適生物学的用量(OBD)を決定すること。
2)この徴候における生物学的活動度の予備的な証拠を得ること。これは、MTWSIスコア、又はMayoスコアの低下により(これらの両方が疾患の徴候の重症度を反映する)、そして外科的介入の頻度の低下により示唆されうる。
3)visilizumabの薬物動態と薬力学の間の関係、臨床的応答、及び毒性を決定すること。
【0084】
2.研究デザイン及び方法
2.1.デザイン及びコントロール
本研究は、米国内で最大10ヶ所のセンターで行われるフェーズIの用量漸増の試験的研究である。重症のUCを有する最大60人のUCの患者がこのトライアルに登録される。2つのステージがこの研究のために計画された。ステージ1において、最大10人の患者の連続した群が、MTD又はOBDに達するまで4つの漸増する用量レベルでの2つのIV用量のVisilizumabで処置される。用量漸増は、30日目の安全性及び有効性のデータが全ての患者につきその時点の用量レベルで得られるまで行われない。必要に応じて、用量レベル1未満への2用量レベルへの漸減もステージ1において考えられうる。ステージ2において、最大20人の追加の患者がOBD又はMTDに登録されうる。
【0085】
2.2.患者の割り当て方法
スクリーニングについての適格性基準に合致し、且つ書面によるインフォームドコンセントを提示している患者が本試験に登録された。主任研究員又は被指名人は、完成した登録許可症例報告書(CRF)をPDLにファックスする(コンタクトをとるための個々の名前についてのページiiのPatient Enrollment Assignmentsを参照のこと)。これらのCRFの受け取りに際し、適格な患者には識別(I.D.)番号が割り当てられた。割り当てられた患者の番号は、相当の場所及び患者が登録された順番を反映する。
【0086】
2.3.処置計画
患者は、1日1回のボーラス注射として2日連続する日のそれぞれに投与される4つの用量レベル(用量レベル1〜4)のうちの1つでvisilizumabを受けた(q24h)(表1)。
【0087】
【表1】

【0088】
a用量レベル1から漸減する必要がある場合、2つのより低い用量レベルが準備される:10μg/kg及び7.5μg/kg;最大10人の患者が、それぞれの漸減の用量レベルで登録されうる。
b最大20人の追加の患者がOBD又はMTDで登録されうる。
【0089】
2.4.前投与及び後投与
visilizumabの初回投与を受ける1時間前に(1日目)、全ての患者が、耐性がある場合、50mgのメチルプレドニゾロンIV(又は同等の量のヒドロコルチゾンIV)、及びオンダンセトロン(Zofran(登録商標);32mgIV又は16mgPO)で予め処置された。
【0090】
全ての患者が、visilizumabの各投与を受けてから1〜2時間後(1日目及び2日目)、1000mgのアセトアミノフェンをPOで受けた。全身の症候がvisilizumabの投与後に生じた場合、適切な治療が研究員の判断で処方されうる。患者は、visilizumabを受けてから少なくとも7日の期間コルチコステロイドを受け続けた(研究開始前と同じ用量)。7日後、コルチコステロイド処置計画は、医学的に適応される場合、続けられることもあり、あるいは漸減されることもある。患者は、自身の現在の処置計画の一部である、あらゆる他の免疫調節剤を受け続けた。
【0091】
2.5.用量漸増、漸減及び停止の規則
2つのステージがこの研究のために計画された。ステージ1において、最大10人の患者の連続した群が、MTD又はOBDに達するまで4つの漸増する用量レベルでの2回のIV用量のVisilizumabで処置された。MTDは、2又はそれ以上の患者がDLT又は不適当なCD3+CD4+T細胞の回復を経験する用量レベルよりも低い次の用量レベルであった(下文で定義する)。OBDは、多くの患者が緩解を経験し(1ヶ月1以上)、且つ最小数の患者がDLT又は不適当なCD3+CD4+T細胞の回復を最低の用量として定義される。一旦OBD又はMTDが決定されると、最大20超の患者がその用量レベルで追加される(ステージ2)
【0092】
DLTは、治験薬の投与と関連して、グレード3又はそれ以上の重症度の急性毒性として定義される。適当なCD3+CD4+T細胞の回復は、≧200CD3+CD4+細胞/μL、又は>50%の患者のベースライン値として、治験薬を受けてから4週間目までに定義される。
【0093】
用量漸増は、1ヶ月の安全性及び有効性のデータが全ての患者で現在の用量レベルで得られるまで行われない。漸減は、現在の用量のグループが2又はそれ以上の患者がDLT及び/又は遅発性のCD3+CD4+T細胞の回復を経験した場合には直ちに行われる。適切な場合には、用量レベル1より低い2つの用量レベルへの漸減のための準備を行った。用量漸増、漸減及び登録のステージ2へのエントリー、並びに停止の規則についての条件は、以下の表2に概説した。
【0094】
注記:
・用量レベル1(15μg/kg)に登録された最初の10人の患者から得られたデータが、OBDであり得ることを示した場合、1ヶ月の安全性及び有効性のデータがまた最大10人の患者について次のより低い用量レベル(10μg/kg)で得られるまで、OBDとして用量レベル1の漸減を遅らせる準備がなされる。(表2を参照のこと)その時点で、スポンサーと研究員は両方の用量レベルに由来するデータを再調査し、そして考察し、続いてこのレベルがOBDであるかを決定する。
【0095】
・ステージ2の間、更なるDLTは、それらが生じる場合、スポンサーにより概説され、そして適切な行動が許容不可能な毒性の事象においてとられる。ステージ2の間に観察される新規の毒性についての懸案事項がないが、1ヶ月目に臨床的応答を有していた患者の80%未満が3ヶ月目に望ましい応答を有していたことが明らかとなった場合、スポンサーは、用量漸増を熟考する。
【0096】
【表2】

【0097】
a現在の用量レベルが計画された中で最高の用量レベル(すなわち、60μg/kg)であるか、あるいはOBD又はMTDに達成した場合、最大20人の追加の患者を現在の用量レベルに登録する。
b一旦安全性及び有効性のデータが10μg/kgの用量レベルの患者で得られた場合、スポンサー及び研究員は、その結果を考察し、そしてOBDが10又は15μg/kgであるか否かを決定する。
c現在の用量レベルが計画された中でも最低の用量レベル(すなわち、7.5μg/kg)である場合、追加の患者を本研究に登録することはない。
N/A=不適用
【0098】
3.患者の選択
3.1.研究集団
重症のステロイド難治性UCを有する最大60人の患者が本研究に登録された。全ての患者は、その時点で、ステロイド処置過程になければならず(後述のセクション4.2に記載のとおり)、そしてvilisizumabを受けてから少なくとも1週間この治療を受け続けることができなければならない。
【0099】
3.2.組み入れ基準
患者は、彼等が以下の全ての基準に合致する場合組み入れることが考慮された:
1)18〜70歳の年齢の男性又は女性であること。
2)UCの診断が研究のエントリー前36月以内に実施された結腸鏡検査又はバリウム注腸によって確認されたこと。
3)活動性の疾患が、研究のエントリー前最少5日間のIVステロイドの処置単位が係属しているにも関わらずMTWSIスコアが11〜21と記録されたこと。
4)患者が生殖能がある男性又は女性である場合、彼又は彼女が、本研究の間、且つvisilizumabを受けてから3ヶ月間適切な避妊法を使用することに同意すること。
5)出産能力のある女性であって、ベースラインスクリーニングで妊娠テスト(尿又は血清)が陰性であること。
6)患者が、研究にエントリーする前30日以内にクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)についてネガティブと試験されたこと。
7)患者が、本研究の目的及びリスクを理解することができ、且つ本研究についてのインフォームドコンセントにサインする者であること。
【0100】
4.手順
一旦予備的な適格性が、経歴、チャートの検討、及びルーチンな評価により確立され、そしてサインされたインフォームドコンセントが患者から得られると、研究員又は被指名人は患者の識別コード番号及び用量レベルの割り当てについてPDLにコンタクトを図る。
【0101】
患者は、最大1年参加することが予期された。スクリーニング(ベースライン試験)は、visilizumabの投与前最大3週間行われた。投与は1日目及び2日目に行われ、そしてフォローアップのための訪問は8,15,30,60,90日後に、そして6ヶ月目に計画された。患者は、ベースライン時、そして30日目の訪問で軟性S状結腸鏡検査を受ける。長期の安全性の情報が6ヶ月目及び1年目に回収された;患者は1年のフォローアップについて電話でコンタクトをとることについての選択肢を有していた。
【0102】
4.1.ベースライン
ベースライン試験は、下文で特に定めのない限り、visilizumabの投与前3週間以内に実施されなければならない。研究員は、許可がPDLの医学的監視より得られない限り、初回用量のvisilizumabが投与される前にベースライン試験結果を知らなければならない。患者の適格性を決定するために使用する特定の評価を下文に概説した。
1)人口学的情報を含む病歴。
2)伸長、体重、及び生命徴候(血圧、脈拍、呼吸数、及び体温)を含む身体検査。
3)神経学的検査。
4)投与前3週間以内に行われた併用薬の記録。
5)軟性S状結腸鏡検査と生検。生検は、サイトメガロウイルス(CMV)の封入体を除くために病理学に送られる。病変の写真が撮られる。
6)MTWSI(表4のModified Truelove and Witts Severity Indexを参照のこと)及びMayo(表5を参照のこと)スコアリングシステムを用いた患者のUCの症候の重症度の評価。
7)胸部X線、EKG。
8)分化及び血小板数によるCBC。
9)血清化学パネル、例えばBUN、クレアチニン、総タンパク質、アルブミン、総ビリルビン、直接ビリルビン(総計が異常に上昇した場合)、アルカリホスファターゼ、GGT、ALT(SGPT)、AST(SGOT)、グルコース、カルシウム、リン、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、塩素、及び二酸化炭素。
10)フローサイトメトリー(T細胞)解析のための採血。
11)研究の登録前6ヶ月以内に実施されない場合の、ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1)抗体、B型肝炎ウイルス(HBV)表面抗原、C型肝炎ウイルス(HCV)抗体、及びCMV IgMについての血清学。
12)EBV試験のための採血。
13)検尿(ディップスティック、異常な場合には顕微鏡で)。
14)生殖能がある女性のための尿又は血清による妊娠テスト。
【0103】
4.2.処置:研究1日目及び2日目
以下の試験及び評価は、下文で特に定めのない限り、1日目及び2日目に実施した:
1)血液学(分化及び血小板数によるCBC)のための採血は、1日目及び2日目に、血液がフローサイトメトリーのために抜き取られると同時に行われた。血液学のための採血は、1日目は、visilizumabの投与15分前及び投与1.0時間後に;そして2日目は、投与15分前に行われた。
2)1日目だけの、visilizumabの投与前24時間以内の血清化学パネル。
3)1日目だけの、visilizumabの投与前24時間以内のヴェステルグレン赤血球沈降速度(ESR)。
4)1日目だけの、投与前のMTWSI評価(表4を参照のこと)。
5)1日目及び2日目の、以下の時間に調べられる生命徴候(血圧、脈拍、呼吸数、及び体温):visilizumab注射15分前;及び注射後30分、1時間、2時間、及び6時間。(2日目、最後のモニタリングは、visilizumab注射の4〜6時間後に行うことがある)。
6)1日目及び2日目の併用薬の記録。
7)1日目及び2日目のAE及びSAEの記録。
8)1日目:visilizumab投与15分前、そして投与1.0及び4.0時間後の;2日目:visilizumab投与15分前、そして投与1.0及び6.0時間後のPK決定のための採血。
9)1日目だけの、visilizumab投与15分前の免疫原性(抗Ab)アッセイのための採血。
10)1日目:visilizumab投与15分前、そして投与1.0時間後の;2日目:visilizumab投与15分前のフローサイトメトリー(T細胞)解析のための採血。
【0104】
4.3.フォローアップ:8,15,及び30日目
以下の試験及び評価が、下文で特に定めのない限り、8±1日目、15±1日目、及び30±2日目に実施された。注記:AE、SE、及び併用薬は患者により報告され、そして、指定の訪問日だけでなく、30日のフォローアップ期間の間の任意の時間に収集された。
【0105】
1)8日、15日、及び30日目の、フローサイトメトリー試料のための採血と同時の血液学(分化及び血小板数によるCBC)のための採血。患者のCD3+CD4+T細胞数が、30日目までに200細胞/μL以上又は患者のベースライン値の50%超にまで戻らなかった場合、血液学用の採血は、このT細胞レベルが達成されるまで、フローサイトメトリーのための連続した採血に従い、7日毎(すなわち、37日目、44日目等)に繰り返される。
2)15日目のみの血清化学パネル。
3)8日目、15日目、及び30日目のEBV試験のための採血。30日目のEBVの力価が患者のベースラインレベルを超えていた場合、EBVアッセイは、それがベースラインに戻るまで2週間毎に繰り返される。
4)8日目、15日目、及び30日目の赤血球沈降速度(ESR)。
5)8日目、15日目、及び30日目の併用薬の記録。
6)8日目、15日目、及び30日目のAE及びSAEの記録。
7)30日目のみの、軟性S状結腸鏡検査とあらゆる残りの病変の写真撮影。
8)研究15日及び30日目のみのMTWSI。30日目のみのMayoスコア。
9)8日目、15日目、及び30日目のフローサイトメトリー(T細胞)解析のための採血。患者のCD3+CD4+T細胞数が、30日目までに200細胞/μL以上又は患者のベースライン値の50%超にまで戻らなかった場合、このT細胞レベルが達成されるまで、フローサイトメトリー用の試料採取は7日毎(すなわち、37日目、44日目等)に続けられる。
10)8日目、15日目、及び30日目のPK決定のための採血。患者のCD3+CD4+T細胞数が、30日目までに200細胞/μL以上又は患者のベースライン値の50%超にまで戻らなかった場合、このT細胞レベルが達成されるまで、フローサイトメトリーのための連続した採血に従い、PK用の試料採取は7日毎(すなわち、37日目、44日目等)に続けられる。
11)15日及び30日目のみの免疫原性(抗Ab)解析のための採血。
【0106】
4.4.フォローアップ:60日及び90日目
以下の試験及び評価が、下文で特に定めのない限り、60±4日目及び90±4日目に実施された。注記:AE、SE、及び併用薬は患者により報告され、そして、指定の訪問日だけでなく、60日のフォローアップ期間の間の任意の時間に収集された。
【0107】
1)60日目のみの併用薬の記録。
2)60日目のみのAE及びSAEの記録。
3)60日及び90日目のMTWSI。
4)90日目のみのPK決定及びの免疫原性(抗Ab)解析のための採血。
【0108】
4.5.長期のフォローアップ:6ヶ月及び1年
6ヶ月目のフォローアップの訪問時、患者のUCの症候がMTWSI質問書(表4を参照のこと)を用いて評価された。
【0109】
患者は、彼等がなんらかの日和見感染又は悪性腫瘍を発症したか否か、そして彼等の疾患が外科的介入を必要としたか否かを決定するために6ヶ月及び1年のフォローアップの際に質問された。1年のフォローアップの際、患者は、研究場所への訪問を介して又は電話によりコンタクトしうる。
【0110】
5.材料及び供給品
5.1.供給品
PDLは、visilizumab(1.0mg/mL)/20mMのクエン酸ナトリウム、120mMの塩化ナトリウム、及び0.01%ポリソルベート80から成るpH6.0の溶液、を含む使い捨て容器中の治験薬を供給した。当該容器は、約1.0mLの溶液を含む。
【0111】
5.2.投与経路
visilizumabは、ボーラス注射として静脈から投与された。溶液の血管外遊出を防ぐよう注意すべきである;紅班の局所的炎症応答、腫脹、硬結、及び痛みは、静脈注射時のvisilizumabの浸透後に報告された。
【0112】
初回投与のvisilizumabを受ける1時間前(1日目)、全ての患者が、耐性がある場合、50mgのメチルプレドニゾロンIV(又は同等の量のヒドロコルチゾンIV)、及びオンダンセトロン(Zofran(登録商標);32mgIV又は16mgPO)で予め処置された。
【0113】
visilizumabはボーラスIV注射で投与された(1分を超えない)。
【0114】
visilizumabは、他の薬物溶液と一緒には投与されなかった。
【0115】
全ての患者は、visilizumabの各投与を受けてから1〜2時間後(1日及び2日目)、1000mgのアセトアミノフェンPOを受けた。患者は、visilizumabを受けてから少なくとも7日間コルチコステロイドを受け続けた。7日後、コルチコステロイド処置計画は、続けられることもあり、あるいは漸減されることもある。患者は、自身の現在の処置計画の一部である、あらゆる他の免疫調節剤を受け続けた。visilizumabは、以下の様式で投与された:
【0116】
・翼状針輸液セットをシリンジに取り付ける。
・翼状針を患者の血管又は特許の静脈カニューレ内に挿入する。
・visilizumabをボーラス注射として1分未満で送達する。
・翼状針のラインからvisilizumab用シリンジを取り除き、それを5mLの通常の生理食塩水を含むシリンジと置き換える。
・生理食塩水を送達して翼状針のラインを勢いよく流す。
・病院のプロトコールを通じてシリンジ(及び輸液セット)を廃棄する。
【0117】
5.3.visilizumabの保存
Visilizumabは、2〜8℃(36〜46°F)に制御して冷蔵された条件下で保存されるべきである。製剤は保存剤を含まず、そしてバイアルから採取して12時間以内に使用されるべきである。
【0118】
薬物の保存装置の温度を示す記録は、臨床の現場で維持された。
【0119】
6.介在性の事象の管理
6.1.見かけの毒性
患者が経験するあらゆる見かけの毒性の総合的評価が、本研究単位を通じて実施される。研究現場の人員は、あらゆる臨床的AEについて、それが研究員又は患者によって観察されるか否かを問わず報告する(AEの定義、管理及び報告に関する更なる詳細については、セクション6.の有害事象を参照のこと)。
【0120】
6.1.1.毒性の等級付け
臨床的AE又は研究所での試験結果は、National Cancer Institute Common Toxicity Criteria (NCI CTC)バージョン2(http://ctep.info.nih.gov/CTC3.ctc.htm)によって確立された等級付けの尺度に従い評価される。既存の大腸炎の症候(例えば、血便、下痢、及び炎症性超疾患、例えばUCの基礎疾患過程に付随する胃腸障害の他の症候)は、それらが患者のベースラインの評価から悪化した場合のみ記録される。これらの徴候はSAEの報告のきっかけとならず、あるいは、患者のベースラインの評価と比較して2又はそれ以上の重症度の等級レベルが悪化しない限り用量漸増/漸減に影響を与えず、そしてSAEを定義するための基準を満たす(セクション6.2.1.1)。SAE報告は、その事象が研究員又はスポンサーによって治験薬に関連があると考えられる場合、わずかに1つの重症度の等級が悪化したAEについても尚行われることがあるセクション7.2.3)。NCI CTCの表に列記されている臨床的症候について使用されうる重症度の等級付けの尺度については、別表Dを参照のこと。臨床的に有意に異常な研究所での結果のみがAEとして記録される。
【0121】
6.1.2.毒性のモニタリング及び処置
研究員、補助研究員、又は指定の医療従事者が、visilizumabの投与の間、そしてあらゆるAEの評価及び処置のために存在していなければならない。これは、本研究の記録において文書化される。
【0122】
6.2.有害事象
研究員は、以下の定義に基づきAEの重症度、強度、及び因果関係を評価する:
【0123】
6.2.1.有害事象の定義
有害事象(AE)は、当該事象が治験薬に関連すると考えられるか否かを問わず、臨床試験に登録された患者に対し、又は患者において生じるあらゆる不所望な事象である。これには、薬物が患者に投与されてない期間、導入(run-in)期間、ウォッシュアウト期間、フォローアップ期間が含まれる。AEには、以下の変化の型が含まれる:
・疑いのある有害薬物反応
・治験薬に対するそれらの関係を無視しての、他の医学的経験、例えば損傷、手術、アクシデント、症候の広がり又は一見関係ない病気、及び臨床的検査値、生理学的試験、又は身体検査の知見における有意な異常。
【0124】
6.2.1.1.重症有害事象
重症有害事象(SAE)は、任意の用量で生じ、且つ以下の結果のいずれかをもたらすあらゆる有害な薬物の経験である:
・死亡。これには、臨床的研究の実施の間に起こるあらゆる死が含まれ、これは治験薬と完全に関係のないような死も含む(例えば、車のアクシデント)。患者が本研究の間に死に、そして検死が行われる場合、検死結果は患者の症例報告書(CRF)に添付される。臓器毒性の有力な証拠及び治験薬に対する毒性の潜在的な関係は特に注目すべきものである。検死報告は、基礎疾患と、それらの副作用と、死因との間の関係を区別するはずである。
・生命に関わる有害な薬物経験。これには、患者が、研究員の視点で、起きた場合にその反応からすぐに死亡する危険性がある間のあらゆるAEを含む。この定義には、より重症の形態で起こった場合に死をもたらしうる事象は何ら含まれない。
・持続性の又は重大な身体障害又は不能。
・入院又は現在の入院の延長。
・先天異常又は出生時欠損。
・他の医学的に重要な事象であって、適切な医学的判断により、上文で列記した結果のうちの1つを予防するための医学的又は外科的介入を必要としうるもの。
【0125】
6,2.1.2.重症でない有害事象
重症でないAEには、先のSAEのカテゴリーに記載されていないあらゆるAEが含まれる。
【0126】
6.2.1.3.予期されない有害事象
予期されないAEとは、現在の研究についての研究員のパンフレットにおいて、性質、重症度、又は頻度が同定されていないあらゆるAEである。
【0127】
6.2.2.全ての有害事象の文書化
1日目(visilizumabの投与後)から60日目(±4日)までに生じる全てのAEは、患者のCRFの有害事象のページ上に正確に記録されなければならない。AEの開始日及び期間が記録され、そして1〜5の尺度(1=軽度;2=中程度;3=重症;4=生死に関わる;及び5=AEに関連する死)で各徴候又は症候の重症度が NCI CTC(セクション6.1.1を参照のこと)に従い等級付けされる。NCI CTCにおいて列記されていないAEの重症度も、同一の尺度に従い分類される。使用される処置及び事象の結果が記録される。AEが続く場合、有害事象のページはそれに応じて印をつけられる。研究員は、それぞれのAEと治験薬との関係(関係ないもの、おそらく関係しているもの、たぶん関係しているもの、あるいは関連しているもの)を説明するよう心がけなければならない。
【0128】
6.2.3.重症有害事象の報告及び文書化
visilizumabの投与後1日目から60日目(±4日)までの期間内に生じるSAEは報告されなければならない(例外については、セクション6.1.1を参照のこと)。治験薬に関連していないようであっても、あらゆるSAEについて迅速に報告し、且つ正確に記録するために以下のステップがとられる:
1)SAEを経験したということを患者が研究所員に知らせてから24時間以内に電話又はテレファックスでSAEがPDLに報告される。
2)上記セクション6.2.2に記載のような患者のCRFの有害事象のページ上にSAEが正確に記録される。
3)患者の重症有害事象報告上の、全ての明らかとなっている患者の情報が、SAE発生24時間以内にファックス又は電話でPDLに提出される。提出前に各報告書に日付が記入され、そしてサインされる。新規な情報が分かったら更新された情報が提供される。以下の完全な情報が回収されなければならない:
・研究のプロトコール数及び徴候
・研究の現場及び研究員の身分証明
・治験薬の名前及び当該研究が盲検であるか否か
・患者の研究ID(識別コード及びイニシャル)、年齢又は出生日、及び性別
・患者の体重、体表面積
・ランダム化の日(妥当な場合)
・SAEの記載、例えば開始日及び期間、重症度、並びに結果
・用量及び患者に投与された治験薬の合計の投与回数
・最初及び直近(最後)の投与日
・治験薬の投与経路
・治験薬投与からSAE開始までの期間
・SAEと治験薬との関係
・併用薬療法、例えば処置計画又は徴候
・介入、例えば、SAEを処置するために使用される併用薬療法
・関連する研究室でのデータ/実施された診断試験及び日付
・患者の関連する病歴
・入院/退院日
・死亡日(妥当な場合)
4)適切な診断試験及び治療的手段が実施され、そして全てのフォローアップについての立証データ、例えば診断試験報告がPDLに提出される。
5)当該事象が解決され、あるいは主任研究員によって他の方法で説明されるまで、適切な協議及びフォローアップ評価が実施される。
6)各SAE報告がPDLで再検討され、そしてSAEと治験薬処置及び基礎疾患との関係が評価される。PDLは、SAEが自然に予期されるか否かを決定する。
7)PDLによるAEの協調的評価に基づき、あらゆる追加の動作についての決定がなされる。主に考慮されるのは患者の安全性である。治験薬に関連する新規AEの発見が、患者に対するその連続投与の安全性に対する懸念を増大させる場合、PDLは、FDA及び本研究に参加している全ての研究員に知らせる緊急の措置をとる。
8)研究員は、これらの事象が患者に対する重大な危険性を表明している場合、彼/彼女の治験審査委員会(IRB)に対し迅速に全てのSAE及び予期されない問題を報告しなければならない(FDA ICHガイドライン、GCP E6、セクション4.11.1を参照のこと;この情報は、www.fda.gov/cder/guidance/959fnl.pdf.にてアクセス可能である)。
9)PDLは、他のアクション、例えば以下の1又は複数のものが必要とされるかを決定することがある:
1)当該プロトコールの改良による既存のリサーチの変更。
2)本研究の中止又は一時停止。
3)新規な発見を現在の研究参加者に報告する現在のコンセントの形式の修飾によるインフォームドコンセントの変更。
4)妥当な場合、予期され、そして/あるいは治験薬と関連しているとして新規に同定されたAEを含ませるための研究員のパンフレットの修飾。
【0129】
6.2.4.有害事象のフォローアップ
全てのAEは、それらが解決され、あるいは主任研究員により説明されるまでフォローされる。
【0130】
6.3.併用薬
表3に列記した併用薬は、潰瘍性大腸炎の処置のために認められている。患者は、visilizumabの投与から1週間コルチコステロイドによる自らの処置計画を継続するべきである。1週間後、これらは担当医の決定で漸減されることがある。
【0131】
visilizumabの最初の投与前3週間から60日目までに採った全ての併用を薬患者のCRFの併用薬のページ上に記録する。
【0132】
【表3】

【0133】
7.研究のパラメーター
7.1.人口統計及びベースラインの特徴
注目の人口統計及びベースラインの特徴には、年齢、性別、種族/民族、疾患の期間及び重症度、以前の治療、及びベースラインのMTWSI及びMayoシステムのスコアが含まれる。
【0134】
7.2.安全性
安全性の変量には、有害事象(AE)、重症有害事象(SAE)、日和見感染、悪性度、手術、患者の臨床的状況(生命徴候及び体温)、及び検査値(完全血球数、例えば分化及び血小板数、血清化学、及びPCRによる定量的EBV試験)が含まれる。
【0135】
7.2.1.有害事象
有害事象(AE)をリストに提示した。各AEは、MedDRA又はCOSTARTシソーラスを用い、好ましい用語及び体系に従い分類した。AEを報告している患者の数及び比率は、体系及び好ましい用語に従い要約した。
【0136】
7.2.2.臨床的及び研究室的評価
各患者の臨床的状況は、AE、SAE、日和見感染及び悪性度、生命徴候の変化、並びに研究室での解析を記録することによりモニタリングされた。
【0137】
7.2.3.特別評価
CMV大腸炎を有する患者を排除するために、腸粘膜の生検が1日目(初回visilizumab投与)前3週間以内にS状結腸鏡検査のスクリーニングの間実施された。CMVの封入体が病理学試験の際に高倍率の視野で1つ以上観察された場合、患者は本研究に参加するのに不適格とされる。
【0138】
7.3.薬物動態学
本研究を通じて得られたvisilizumabの血清濃度は、時間毎のvisilizumabの薬物動態学的(PK)プロファイルを解析するために使用された。血清試料は、visilizumabの投与前、及び投与後の種々の時点で、セクション4で特定したように各患者から回収した。スタンダードのPKパラメーター、例えば最大血清濃度(Cmax)、Cmaxの時間、時間−濃度曲線下面積(AUC)、及びvisilizumabの血清半減期、が決定された。
【0139】
7.4.薬力学
薬力学データには、合計及び末梢のT細胞数が含まれる。末梢T細胞数を測定するための血液試料(T細胞の枯渇/回復を評価するためのもの)は、visilizumabの初回投与前後に、そして最大30日目までの複数の間隔で各患者から回収された。CD3+CD4+T細胞数が、≧200CD3+CD4+細胞/μL、又は>50%の患者のベースライン値に30日目までに達しなかった場合、このT細胞レベルに達するまで試験は7日毎に続けられた。
【0140】
7.5.免疫原性(抗Ab)
投与されたヒト化抗体(抗Ab)に対する抗体応答の解析のための血清試料は、セクション4で特定した日及び時点で患者から回収された。試料は、解析のためにPDLに送られた。
【0141】
7.6.有効性パラメーター
本研究において、MTWSIは、ベースライン時、治験薬投与前1日目;投与後15日、30日、60日、及び90日目;そして治験薬投与後6ヶ月目にUC患者の断面の疾患活動性を測定するために使用される。Mayoスコアリングシステムは、ベースライン時及び30日目にのみUC患者の疾患活動度を測定するために使用される。
【0142】
Modified Truelove and Witts Severity Index (MTWSI)
MTWSIは、処置を行う医師がUC患者の疾患の重症度を分類するのに使用する標準化された評価尺度である。疾患の症候は、下痢、夜間下痢、直腸出血、便失禁、腹部の痙攣、一般的な健康問題、下痢止め薬の必要性、及び腹部圧痛、についての個々の尺度を用いて等級付けされる。それぞれのカテゴリーは、それ自身の尺度(0〜1−5の範囲)(0=正常、そして、より大きい番号は重症度の増大を反映している)を有しており、最大の合計スコアは21ポイントである(表4のModified Truelove and Witts Severity Indexを参照のこと)。本研究において、各症候のカテゴリー(腹部の痙攣を除く)のMTWSIスコアは、現在の評価の直前の期間を網羅して3日の平均として算出される。全ての平均は小数点第1位で四捨五入され、Yes(1)又はNo(2)としてスコアリングされる徴候についてのものが含まれた。
【0143】
ベースラインからの連続的な変化を算出した。処置に対する応答は、10未満の絶対的なMTWSIスコアとして定義した。これらのUC患者における緩解は3以下のMTWSIスコアとして定義した。
【0144】
潰瘍性大腸炎の活動度の評価についてのMayoスコアリングシステム
Mayoのスコアリングシステムは、処置を行う医師がUC患者の疾患の重症度を分類するのに使用する別の標準化された評価尺度である。疾患の症候は、排便回数、直腸出血、医師の包括的評価(PGA)、及び軟性直腸S状結腸鏡検査法の所見、についての個々の尺度を用いて等級付けされる。それぞれのカテゴリーは、それ自身の尺度(0〜3の範囲)(0=正常、そして、より大きい番号は重症度の増大を反映している)を有しており、最大の合計スコアは21ポイントである(表5の潰瘍性大腸炎の活動度の評価についてのMayoスコアリングシステムを参照のこと)。排便回数及び直腸出血の症候は、現在の評価の直前の期間を網羅して3日の平均として算出される。全ての平均は小数点第1位で四捨五入された。PGAスコアは、他の3つの基準、腹部不快感及び一般的な健康の感覚についての患者の日誌、並びに他の観察結果、例えば医師の所見及び患者の一般状態、を認識する。
【0145】
0〜2ポイントの合計のMayo UC活動性スコアは、緩解又は最小の活動性の疾患を示し、3〜5ポイントのスコアは、軽度に活動性の疾患を示し、6〜10のポイントのスコアは中程度に活動性の疾患を示し、そして11〜12のスコアは、患者のMTWSIスコアに依存して、中程度又は重症の疾患を示すことがある。
【0146】
8.解析方法
8.1.全体的な仮説
このフェーズIの研究についての結果は、グループ間の差異の形式的な統計学的試験なしに用量レベルで要約した。記述統計学及び95%の信頼区間が適切な場合に適用された。
【0147】
9.2.人口統計
人口統計データ(すなわち、年齢、性別、種族/民族)、疾患の期間及び重症度、以前の治療、喫煙歴、及びベースラインのMTWSIスコアは、用量レベルで要約され、そして患者ごとに集計された。
【0148】
9.3.安全性
9.4.薬物動態学
血清visilizumab濃度は、スタンダードのPKパラメーター、例えばCmaxAUC、クリアランス及び血清半減期(T1/2)を算出するために使用された。全ての測定可能な結果が患者又は用量群ごとに集計され、そして図示的に提示された。
【0149】
9.5.薬力学
合計の及び亜集団のT細胞数が患者のリストに提示された。T細胞数の平均ピーク値は用量レベルで時間毎にグラフ化された。
【0150】
9.6.免疫原性(抗Ab)
血清試料は、投与されたvisilizumabに対する循環抗体(抗Ab)のレベルのELISA解析のためにPDLに送られた。あらゆる検出可能な抗体応答が対象者ごとに集計され、そして応答頻度は用量群ごとに集計された。
【0151】
9.7.有効性パラメーター
MTWSI及びMayoスコアの時間ごとのベースラインからの変化は、用量レベルごとに要約された。妥当な場合、郡内の変化は、ウィルコクソンの符号付き検定で統計学的に評価された。形式的な統計学的グループ間比較は計画されなかった。
【0152】
異なる時点での応答及び緩解率は、StatXaxt-4(登録商標)(Cytel Sofware Corporation)で計算した場合、推定値及び95%の信頼区間(CI)で記載された。OBDで、30人のうち21人の患者が応答する場合、これは70%の推定値及び51%と85%で区切られた95%のCIを生成する。
【0153】
9.8.患者の性質
本研究単位を通じての全患者の計算は、用量群ごとに報告される。患者分布は、処置群の割り当て及び研究員、並びに適格性の状態により報告される。尚、スクリーニングされたが、除外され、あるいは参加を望まない全ての患者の性質(スクリーニング失敗)が、本研究に組み入れないことの主要な理由ごとに報告される。
【0154】
このプロトコールの完全な記載はPDLのプロトコール番号291−406("A Phase I, Dose-Escalation, Pilot Study of Visilizumab in patients With Severe Ulcerative Colitis That is Refractory to Corticosteroids"), Visilizumab (Nuvion(登録商標); HuM291),)、日付2001年10月14日;修正A:2002年9月16日;修正B2002年10月27日(これは引用によりその全体が本明細書に組み入れられる)において見ることができる。
【0155】
【表4】

それぞれの指定した症候のカテゴリーにおいて、MTWSIスコアは、現在の評価の直前の期間を網羅して3日の平均として算出される。全ての平均は小数点第1位で四捨五入され、Yes(1)又はNo(2)としてスコアリングされる症候についてのものが含められる。
【0156】
【表5】

a各患者は、排便回数の異常の度数を確立するために彼又は彼女自身のコントロールの役割を果たす。
b3日平均は現在の評価の直前の3日の期間を含む。全ての平均は小数点第1位で四捨五入される。
c毎日の出血のスコアは、出血の最も重症な日を表す。
dPGAスコアは、他の3つの基準、他の観察結果、例えば医師の所見及び患者の一般状態、を認識する。
【0157】
実施例3
本実施例は、最初の10人の患者の重症のステロイド難治性潰瘍性大腸炎の処置のための、ヒト化抗CD3モノクローナル抗体であるVisilizumabの結果を説明する。
【0158】
重症の潰瘍性大腸炎(UC)の治療的アプローチは、炎症を制御するために標的とされたT細胞に対して用いられてきた。例えば、シクロスポリンは、この集団において短期間にわたり有効であるが、副作用がその使用を制限している。ヒト化抗CD3モノクローナル抗体であるVisilizumab(Protein Design Labs, Inc., Fremont, CA)は、in vitroで活性化T細胞の優先的なアポトーシスを誘導し、UCにおける治療的な有益性を提供する。
【0159】
処置した10人の患者のうち、8人が15μg/kgのvisilizumabを投与され、そして2人が10μg/kgのvisilizumabを投与された。10人のうち、6人が男性であり、そして4人が女性であった。年齢は33歳から70歳に及んだ。年齢の中央値は46歳であった。疾患の範囲で、4人が左側UCであり、そして6人が全大腸炎型(pancolitis)UCであった。登録時のMTWSIスコアは11〜14であり、スコアの中央値は13.25であった。EBV全血ウイルスDNAコピーは<80mLであった。投薬計画は、10人の患者にメチルプレドニソロン(MP)、5人の患者に5−アミノサリチル酸(5−ASA)、そして1人の患者にアザチオプリンとした。ヘモクリット(hemocrit)値は28.5〜45.3%の範囲にわたり、平均は36.3%であった。アルブミン含量は、2.4〜3.5g/dLの範囲にわたり、平均は3.0g/dLであった。ESR値は5〜54mm/時であり、平均は26mm/時であった。
【0160】
フェーズIのUC研究の安全性評価には、急性毒性及び中間作用についての観察が含まれた。急性毒性については、処置1日目に、10人の患者のうち8人が軽度から中程度のサイトカイン放出症候群(CRS)であった。CREは、疲労、吐き気、頭痛、関節痛、発熱、嘔吐、脱水症状、目眩、及び発汗を特徴とする。これらの症候は一過性であり、そして典型的には注入後1〜2時間続く。2日目、10人の患者のうち5人がCRSを有しており、ここで、その症候は強度及び頻度が1DLTに低下していた。中間作用には、T細胞が各投与後最低レベルに達していることが含まれた。8人の患者のうち6人については、T細胞がその後2〜6週間で>200CD4/μLに回復した(図1を参照のこと)。2人の患者は回復の遅れを経験した。共に最終的には回復したが、特定の回復日は、長期の評価間期間により決定することができない。ほとんどの患者につき、EBV全血ウイルスDNAコピーがT細胞数とは反対に変動した。8人の患者のうち6人が一過性の上昇(184〜3640の範囲;平均1468)。3人の患者については、EBV全血ウイルスDNAコピーが30日目まで検出されず、そして残りの3人についてのものは60日目まで検出されなかった(図2を参照のこと)。
【0161】
処置の有効性は、1日目及び2日目に15μg/kg受けた各患者についてMTWSIスコアを決定することにより測定された。1日目及び2日目の15μg/kgに対する8人の患者の臨床的応答結果は図3に編集されている。ベースラインの平均MTWSIスコアは13.5である。0日目の平均MTWSIスコアは13.25である。15日目の平均MTWSIスコアは4.5である(ベースラインの平均MTWSIスコアより9.0低い)。30日目の平均MTWSIスコアは3.5である(ベースラインの平均MTWSIスコアより10.0低い)。30日目に4未満であるMTWSIスコアは、「緩解」とみなされる。「緩解」は、60日間4以下に維持されたMTWSIの低下を指す。8人の患者のうち7人がこの終点に達した。30日目に10未満であるMTWSIスコアは、臨床的な「応答」とみなされる。「応答」は、少なくとも30日間10未満の値に維持された少なくとも2ポイントのMTWSIの低下を指す。8人の患者のうち7人がこの終点に達した。8人の患者のうちそれぞれがこの終点に達した。30日目のMTWSIスコアは、ベースラインP<0.0039から平均74%の低下を示した。
【0162】
内視鏡検査に関しては、8人の患者のうち8人が30日目に内視鏡検査での改善を示した。8人の患者のうち7人が処置時に重症であったが、8人の患者のうち6人が30日目に軽度又は正常な症状であった。図4は、処置前と比較した場合の処置30日後の内視鏡検査での応答を示す。UCに罹患していた処置前の結腸は、自然発生的な出血及び潰瘍化を有していた。図5は、処置前と比較した場合の処置30日後の組織学的応答を示す。UCに罹患した結腸から採取した処置前の結腸粘膜は、固有層中の好中球並びに増大したリンパ球及び形質細胞を示す。処置の有効性は、1日目及び2日目に10μg/kg受けた各患者についてMTWSIスコアを決定することにより測定された。2人の患者が15日目に「応答」と記録され、そして1人は30日目に「応答」と記録された。フォローアップ観察は、応答期間の中央値が7ヶ月であったことを示した(2〜11ヶ月の範囲)。15μg/kgの用量を受けた8人の患者の中でも、緩解の当該8人の患者のうちの6人が治療後5〜1ヶ月ステロイド無しであり、そして8人の患者のうち2人が初期は応答したが、その後62日及び100日目に結腸切除術を受けた。
【0163】
visilizumab療法を受けた11人の患者のうち、1人がvisilizumab注入の初日から2日で退院し、5人の患者がvisilizumab注入の初日から3日で退院し、3人の患者がvisilizumab注入の初日から4日で退院し、そして2人の患者がvisilizumab注入の初日から5日で退院した。visilizumab注入の初日から退院まで平均3.5日であり、そして中央値は3日であった。これらの結果は、1日目及び2日目に10又は15μg/kgで処置された患者が比較的短期間で退院することができることを示している。これらの結果を、シクロスポリンA処置又は結腸切除術後7〜14日の期間と比較する。応答速度は、病院費の低下及び非常に活動性のある疾患に対する強力な活性の両方に対しその衝撃が顕著である。明らかに、疾患が制御不能で且つ重症である入院患者にとって、迅速な応答は結腸切除を回避するのに必要である。
【0164】
現在、評価された患者に基づいた、visilizumabによる処置後の患者のEBVレベルの一過性の増大が臨床的に有意であるとの証拠はない。サイトカインの放出が軽度から中程度という証拠のみがある。末梢血において一過性のT細胞の低下がある。2〜6週間ベースラインに回復する。EBVの力価は一過的に上昇し、そしてベースラインレベルへのT細胞の回復前に検出不可能なレベルに戻る。有意な初期の臨床応答が、典型的な手術候補である非常に難治性の患者群で認められる。
【0165】
実施例4
本実施例は、重症のステロイド難治性潰瘍性大腸炎の処置のための、ヒト化抗CD3モノクローナル抗体であるVisilizumabの結果を説明する。以下の結果は、実施例3で報告された結果を組み込んでいる。
【0166】
重症の潰瘍性大腸炎(UC)の治療的アプローチは、炎症を制御するために標的とされたT細胞に対して用いられてきた。例えば、シクロスポリンは、この集団において短期間にわたり有効であるが、副作用がその使用を制限している。ヒト化抗CD3モノクローナル抗体であるVisilizumab(Protein Design Labs, Inc., Fremont, CA)は、in vitroで活性化T細胞の優先的なアポトーシスを誘導し、UCにおける治療的な有益性を提供する。
【0167】
これらの予備的な結果は、検出不能なEBVレベルを有する、疾患が最少5日の静脈(IV)コルチコステロイドに応答しなかった重症UCの患者の、visilizumabの多施設フェーズI研究に由来する。23人の患者が研究1日及び2日目にvisilizumabのIV注入を受けた。最初の8人は15μg/kgの用量を受け、次の18人は10μg/kgであった。患者は処置から80日の中央値(8〜516)フォローされた。
【0168】
23人の患者が13.6の中央値のベースラインMTWSI(11〜20)を有していた。3人の患者は、少なくとも30日初期応答を維持するのに失敗した。4人目の患者は、102日目に結腸切除術を受けた。19人の応答していた患者は、処置から最大16ヶ月間臨床的改善を維持し続けた。1人の患者の疾患は、処置から1年して突発した。末梢血由来のT細胞の数の一過性(1〜4週)の低下が観察された。1/11人(10μg/kg)及び2/8人(15μg/kg)が200未満のCD3+4+細胞/μLを30日目に維持していた。全ての患者が60日目までに回復した。軽度から中程度のサイトカイン放出症候(吐き気、嘔吐、悪寒、関節痛)が12/16人の患者で観察された。これらの症候は一過性であり、1〜2時間以内に解決し、そしてほとんどが1日目に生じた。17人のうち13人の患者がPCRで検出される全血中の一過性エプスタインバーコピー力価を有しており(15日目の中央値566(153〜190000))、これは臨床的症候を伴っていなかった。全ての患者が60日目までに検出不能なレベルにまで戻った。伝染性の合併症は記録されなかった。
【0169】
重症なUCの患者のvisilizumabの非盲検フェーズI研究のこの予備的な解析は、最少の用量での潜在的な耐用性及び臨床的活性を証明した。このアプローチは、この患者群にとって重要な治療的オプションを提供する。
【0170】
本発明は現時点で好ましい態様を参照して説明しているが、種々の変更が本発明の精神を逸脱することなくなされることがあると解されるべきである。全ての刊行物、特許、特許出願、及びウェブサイトは、個々の刊行物、特許、特許出願、及びウェブサイトが引用によりその全体が組み入れられるのと同程度に、引用によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】図1は、患者のCD3及びCD4カウント(細胞/μl)を表す。矢印は、visilizumabが患者に投与された日(0日目)を示す。
【図2】図2は、visilizumabで処置された患者から測定されたEBV DNAコピー(/μl)を表す。visilizumabは1日目に患者に投与された。
【図3】図3は、visilizumabによる処置に対する臨床的応答(MTWSIスコアに基づいたもの)を表す。処置した患者数は8人であり、そしてvisilizumabの用量は15μg/kgであり、これは静脈注入により1日目及び2日目に投与された。
【図4】図4Aは、「重症」の粘膜の変化の内視鏡で見た外観を表す。これらの変化は、1日目及び2日目に15μg/kgのvisilizumabを2回投与して処置してから30日で「正常」な結腸へと帰着した。図4Bは、30日で完全緩解を達成した患者の内視鏡からの外観を表す。
【図5】図5A−Bは、図4A−Bに記載の内視鏡検査の間に採取した生検のH&E染色を表す。図5Aは、上皮細胞が完全に消失している潰瘍を表す。粘膜下に残っているものには、顆粒球が密に浸潤している。結腸の内腔ないに漏出しているこれらの顆粒球は、図4Aで見られる膿を表している。図5Bは、浮腫が無く、且つ顆粒球又はリンパ球が粘膜下に浸潤していない本質的に正常な結腸粘膜を示すH&E顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置を必要とする患者の潰瘍性大腸炎を処置する方法であって、CD3と結合する抗体を含んで成る治療的に有効量の医薬製剤を前記患者に投与することを含んで成る方法。
【請求項2】
前記潰瘍性大腸炎が重症のステロイド難治性潰瘍性大腸炎である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記投与が、前記患者の潰瘍性大腸炎の症候の重症度を軽減する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記処置が前記患者のMTWSIスコア又はMAYOスコアを軽減する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記患者の前記MTWSIスコア又は前記MAYOスコアが少なくとも75%軽減する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記処置が潰瘍性大腸炎の緩解をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記緩解が少なくとも90日続く、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記緩解が前記処置後30日未満で達成される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体がCD3を中和する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体が前記ヒトCD3について少なくとも108-1の結合親和性を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体が前記ヒトCD3について少なくとも109-1の結合親和性を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体がキメラ抗体又はヒト抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体がヒト化抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ヒト化抗体がヒト化M291抗体である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ヒト化M291抗体がvisilizumabである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記抗体がvisilizumabと同一のエピトープに結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記抗体が、visilizumabのアミノ酸配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記抗体が、visilizumabのCDR領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有するCDR領域を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
医薬製剤が非経口、静脈内、筋肉内、又は皮下から投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記治療的に有効量が0.001mg/kg〜10mg/kgである、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記治療的に有効量が0.005mg/kg〜0.100mg/kgである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記治療的に有効量が15μg/kg以下である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記治療的に有効量が10μg/kg以下である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記患者がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記追加の物質が、メチルプレドニゾロン(methyprednisolone)、ヒドロコルチゾン、オンダンセトロン、アセトアミノフェン、6−メルカプトプリン、及び5−アミノサリチル酸(5−ASA)から成る群から選択される1又は複数の物質である、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−511620(P2006−511620A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−508486(P2005−508486)
【出願日】平成15年12月5日(2003.12.5)
【国際出願番号】PCT/US2003/038809
【国際公開番号】WO2004/052397
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(500533422)プロテイン デザイン ラブス インコーポレイティド (18)
【Fターム(参考)】