説明

押しボタンスイッチ

【課題】コンパクトであり,しかも特別なカバーをを用いることなく,固定接点及び可動接点を雨水や塵埃から保護し得るようにした押しボタンスイッチを提供する
【解決手段】固定接点21aを支持するスイッチベース3に押しボタン8を,これが押し込み位置A及び解放位置B間を揺動し得るよう枢軸7を介して取り付け,この押しボタン8に,上記位置A,B間での揺動に応じて固定接点21aに接離する可動接点32を設け,押しボタン8に,これを解放位置B側に付勢する戻しばね9を接続してなる押しボタンスイッチにおいて,押しボタン8を,スイッチベース3に向かって開放した箱形に形成し,この箱形押しボタン8内に可動接点32及び固定接点21aを配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,固定接点を支持するスイッチベースに押しボタンを,これが押し込み位置及び解放位置間を揺動し得るよう枢軸を介して取り付け,この押しボタンに,これの押し込み位置及び解放位置への揺動に応じて固定接点に接離する可動接点を設け,押しボタンに,これを解放位置側に付勢する戻しばねを接続してなる押しボタンスイッチの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
かゝるスイッチは,特許文献1に開示されているように,既に知られている。
【特許文献1】実開昭59−101334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のかゝる押しボタンスイッチでは,押しボタンの下面に可動接点を突設していたので,固定接点及び可動接点の接触部は,押しボタンの外方に配置されることになり,スイッチが必然的に大型になり,また固定接点及び可動接点を雨水や塵埃から保護するために,それらを覆う特別なカバーを必要としていた。
【0004】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,コンパクトであり,しかも特別なカバーを用いることなく,固定接点及び可動接点を雨水や塵埃から保護し得るようにした前記押しボタンスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために,本発明は,固定接点を支持するスイッチベースに押しボタンを,これが押し込み位置及び解放位置間を揺動し得るよう枢軸を介して取り付け,この押しボタンに,これの押し込み位置及び解放位置への揺動に応じて固定接点に接離する可動接点を設け,押しボタンに,これを解放位置側に付勢する戻しばねを接続してなる押しボタンスイッチにおいて,押しボタンを,スイッチベースに向かって開放した箱形に形成し,この箱形押しボタン内に可動接点及び固定接点を配置したことを第1の特徴とする。
【0006】
また本発明は,第1の特徴に加えて,箱型押しボタンの,枢軸から最も遠い揺動端壁内面に形成されるクリックカムと,このクリックカムに向かって開口するようスイッチベースの端面に設けられる支持孔と,この支持孔に支持されてクリックカム上を転動し得るクリックボールと,支持孔に収納されてクリックボールをクリックカム側に付勢するクリックばねとよりなり,押しボタンの押し込み初動時,クリックカムの斜面がクリックボールを支持孔に押し込めてクリックばねの荷重を増加させることにより,上記初動に一定の抵抗を付与するようにしたクリック機構を備えることを第2の特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の第1の特徴によれば,箱形押しボタンの内部に,固定接点及び可動接点を収めることにより,押しボタンと,固定接点を支持するスイッチベースとの近接配置が可能となり,押しボタンスイッチをコンパクトに構成することができる。しかも箱型押しボタンは,固定接点及び可動接点を覆うカバーの役割を果すことができるので,それらを特別なカバーを使用することなく雨水や塵埃より保護することができ,構造の簡素化に寄与し得る。
【0008】
本発明の第2の特徴によれば,ユーザーが押しボタンを指で強く押せば,クリックカムの斜面がクリックボールを支持孔内方に押し込めてクリックばねの荷重を増加させるので,押しボタンの押し込み初動時には,運転者は明確な抵抗力を感じ,押し込みフィーリングを確実に得ることができる。
【0009】
しかもこのクリック機構も,可動及び固定接点と同様に箱型押しボタン内に収められるので,雨水や塵埃より保護され,常に安定した押し込みフィーリングを運転者に与えることができる。
【0010】
さらにクリックボールは,クリックばねの荷重をもって押しボタンの,枢軸から最も遠い揺動端壁を常に外方に押圧することになるから,枢軸と,スイッチベース及び押しボタンとの各間の遊びを排除することができ,押しボタンの操作フィーリングの向上に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態を,添付図面に示す本発明の好適な実施例に基づいて以下に説明する。
【0012】
図1は本発明に係る押しボタン式ホーンスイッチを備えた自動二輪車の操向ハンドル装置の背面図,図2は上記ホーンスイッチをオフ状態で示す,図1の2−2線拡大断面図,図3は図2の3−3線断面図,図4は同スイッチの分解斜視図,図5は図4とは異なる方向から見たときの同スイッチの一部分解斜視図,図6は同スイッチのオン状態を示す,図2との対応図である。
【0013】
先ず図1において,自動二輪車の操向ハンドル装置Hは,図示しないフロントフォークの上端に結合され,左右両端部にグリップHgを備えるハンドルバーHbと,このハンドルバーHbの,グリップHgを除く中間部分を覆うハンドルカバーHcとで構成されており,このハンドルカバーHcはハンドルバーHbの適所にねじ止めされる。このハンドルカバーHcの,ドライバに面する後壁には各種スイッチが取り付けられるが,特に,左端部に本発明を適用した押しボタン式のホーンスイッチ1が取り付けられる。またハンドルカバーHcの上部には,各種メータを組み合わせてなるメータユニットMが取り付けられる。
【0014】
図2〜図5において,上記ホーンスイッチ1は,スイッチケース2,スイッチベース3,第1端子部材4,ブラケット6,このブラケット6を支持する枢軸7,ブラケット6に一体に結合される押しボタン8及び,この押しボタン8の戻しばね9を主たる構成要素としている。
【0015】
スイッチケース2は合成樹脂製で,操縦者側の後面を開放したボックス形をなしており,ハンドルカバーHcの後壁に設けられる取り付け孔10に装着される。図示例では,スイッチケース2の側壁に一体成形されて外方に突出する複数の弾性係止爪11,11を,取り付け孔10の内方孔縁に係合することにより,スイッチケース2はハンドルカバーHcに支持される。このスイッチケース2には,その外側面より突出する角筒状のカプラ13が一体に形成されている。
【0016】
スイッチベース3は合成樹脂製であり,その上面に第1端子部材4,下面に第2端子部材5がそれぞれ重ねられ,これら三者はスイッチケース2内に収容,保持される。
【0017】
第1端子部材4は導電性材料よりなるもので,その長手方向一端部に前記カプラ13内に臨ませる第1端子15が形成され,また他端部に異形の位置決め孔16が設けられ,その位置決め孔16には,スイッチベース3の上面に隆起した位置決め突起17が係合される。その位置決め突起17の中心に開口するリベット孔18がスイッチベース3に設けられる。
【0018】
また第2端子部材5も導電性材料よりなるもので,その長手方向一端部に前記カプラ13内に臨ませる第2端子15′が形成され,また他端部には,上記リベット孔18に合致するリベット孔19が設けられる。前記位置決め突起17の端面に絶縁ワッシャ20が重ねられ,この絶縁ワッシャ20を貫通するリベット21をリベット孔18,19に挿通し,第2端子部材5の下面側でリベット21の先端部21bをかしめたり,クリップで固定したりすることで,第1端子部材4,スイッチベース3及び第2端子部材5の三者は一体に結合され,これにより端子ユニット22が構成される。またリベット21の膨大頭部21aは固定接点に兼用される。
【0019】
スイッチケース2の底部には複数の位置決めベッド24〜27が形成され,これらに端子ユニット22が載置される。またスイッチケース2の内側壁には,中間の位置決めベッド25を挟んで並ぶ一対の係止爪28,28が突設され,第1端子部材4の中間部に形成された一対の腕部29,29を上記係止爪28,28に弾性的に係合することにより,上記端子ユニット22はスイッチケース2に保持される。
【0020】
第1端子部材4の中間部には,その両側縁より起立する一対の固定軸受部30,30が形成される。一方,押しボタン8は合成樹脂製で,スイッチベース3に向かって開放した箱形をなしており,この押しボタン8内の天井壁にブラケット6がモールド結合される。
【0021】
ブラケット6は導電性材料よりなるもので,その一端部に上記固定軸受部30,30の内側面にそれぞれ重なる一対の可動軸受部31,31が,またその他端部には,上記固定接点21aに対向する可動接点32が形成される。これら固定接点21a及び可動接点32は,押しボタン8内に配置される。上記可動軸受部31,31は,前記枢軸7を介して固定軸受部30,30に回動自在に連結される。
【0022】
而して,押しボタン8は,スイッチベース3側の開口周縁部をスイッチケース2内に置きながら,可動接点32を固定接点21aに接触させる押し込み位置A(図6参照)と,可動接点32を固定接点21aから離間させる解放位置B(図2及び図6参照)との間を枢軸7周りに揺動するようになっている。この押しボタン8を解放位置B側に付勢する捩じりコイルばねよりなる戻しばね9が枢軸7の外周に装着される。押しボタン8の解放位置Bは,押しボタン8の,枢軸7から最も遠い揺動端壁8a外面に形成される可動ストッパ34が,スイッチケース2の内壁に形成される固定ストッパ35に当接することで規制されるようになっている。
【0023】
また押しボタン8の,枢軸7から最も遠い揺動端壁8aとスイッチベース3との間には,押しボタン8の押し込み初動に一定の抵抗を付与するクリック機構37が設けられる。このクリック機構37は,押しボタン8の揺動端壁8a内壁に形成されるクリックカム38と,このクリックカム38に向かって開口するようにスイッチベース3の端面に設けられる支持孔39と,この支持孔39に摺動自在に支持されてクリックカム38上を転動し得るクリックボール40と,支持孔39に収納されてクリックボール40をクリックカム38側に付勢するクリックばね41とで構成される。クリックカム38は,クリックボール40に対して後退した第1平坦面38aと,この第1平坦面38aより押しボタン8の内部寄りに位置する第2平坦面38cと,この両平坦面38a,38c間を接続する斜面38bとで構成される。而して,クリックボール40は,押しボタン8の解放位置Bで,斜面38bに近接した第1平坦面38aに接しているが,押しボタン8の押し込み初動時には,斜面38bにより支持孔39内方に押し込められながらクリックばね41を圧縮させることで,上記押し込み初動に一定の抵抗を付与するようになっている。
【0024】
前記カプラ13内の第1及び第2端子15,15′には,ホーン回路(図示せず)が接続される。
【0025】
次に,この実施例の作用について説明する。
【0026】
図2に示すように,ホーンスイッチ1がオフ状態にあるとき,即ち押しボタン8が解放位置Bを占めるときは,可動接点32が固定接点21aから離れており,しかも第1及び第2端子部材4,5間は,合成樹脂製のスイッチベース3により絶縁されているので,図示しないホーン回路は非作動状態に保たれる。
【0027】
このようなホーンスイッチ1のオフ状態では,クリック機構37のクリックボール40は,押しボタン8のクリックカム38の斜面38bに近接した第1平坦面38aに,クリックばね41のセット荷重をもって接しているので,押しボタン8に,その押し込み方向に車両の振動等に起因する外乱や,運転者の指の無意識な軽い接触があっても,クリックボール40が斜面38bに接することで,押しボタン8の押し込み抵抗が急増し,これにより押しボタン8の誤動作を防ぐことができる。
【0028】
運転者が意識して,押しボタン8の外面を指で強く押せば,クリックカム38の斜面38bがクリックボール40を支持孔39内方に押し込めながらクリックばね41を圧縮させ,その荷重を増加させるので,押しボタン8の押し込み初動時には,運転者は指に明確な抵抗力を感じることになる。したがって,運転者は,この抵抗力に抗して押しボタン8を押し込むことで,押し込みフィーリングを確実に得ることができる。
【0029】
その後,押しボタン8の押し込みの進行に伴ない,クリックボール40が斜面38bから第2平坦面38cへと接触位置を移すと,押しボタン8が可動接点32を固定接点21aに接触させる所定の押し込み位置Aまで回動する間,クリックボール40が第2平坦面38cを転がるだけで,クリックばね41の更なる増加は生じないから,図6に示すように,押しボタン8を所定の押し込み位置Aまで軽快に操作することができ,ホーンスイッチ1はオン状態となる。
【0030】
しかも,クリックボール40は,枢軸7の半径方向に沿って作用するクリックばね41の荷重をもって押しボタン8の揺動端壁8aを常に外方に押圧しているので,枢軸7と,固定軸受部30,30及び可動軸受部31,31との各間の遊びを排除することができ,これによりも押しボタン8の操作フィーリングの向上に貢献する。
【0031】
ホーンスイッチ1はオン状態では,第1及び第2端子部材4,5間は,リベット21,ブラケット6,枢軸7,戻しばね9等を介して導通状態となるので,図示しないホーン回路を作動させることになる。
【0032】
押しボタン8を,上記押し込み位置Aから解放すれば,押しボタン8は,戻しばね9の付勢力を当初の解放位置Bに復帰し,ホーンスイッチ1は再びオフ状態となる。
【0033】
ところで,このホーンスイッチ1において,押しボタン8は,スイッチベース3に向かって開放した箱形に形成され,この箱形押しボタン8の内部に,固定接点21a及び可動接点32のみならずクリック機構37を収めたので,押しボタン8と,固定接点21aを支持するスイッチベース3との近接配置が可能となり,ホーンスイッチ1をコンパクトに構成することができる。しかも箱型押しボタン8は,固定接点21a及び可動接点32,並びにクリック機構37を覆うカバーの役割を果すことができるので,それらを特別なカバーを使用することなく雨水や塵埃より保護することができ,構造の簡素化に寄与し得る。
【0034】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば,本発明の押しボタンスイッチは,上記ホーンスイッチ1に限らず,スタータスイッチ等,他の用途の押しボタンスイッチにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る押しボタン式ホーンスイッチを備えた自動二輪車の操向ハンドル装置の背面図。
【図2】上記ホーンスイッチをオフ状態で示す,図1の2−2線拡大断面図。
【図3】図2の3−3線断面図。
【図4】同スイッチの分解斜視図。
【図5】図4とは異なる方向から見たときの同スイッチの一部分解斜視図。
【図6】同スイッチのオン状態を示す,図2との対応図。
【符号の説明】
【0036】
A・・・・押し込み位置
B・・・・解放位置
2・・・・ホーンスイッチ(押しボタンスイッチ)
3・・・・スイッチベース
7・・・・枢軸
8・・・・押しボタン
8a・・・押しボタンの揺動端壁
21a・・固定接点
32・・・可動接点
37・・・クリック機構
38・・・クリックカム
38b・・クリックカムの斜面
39・・・支持孔
40・・・クリックボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点(21a)を支持するスイッチベース(3)に押しボタン(8)を,これが押し込み位置(A)及び解放位置(B)間を揺動し得るよう枢軸(7)を介して取り付け,この押しボタン(8)に,これの押し込み位置(A)及び解放位置(B)への揺動に応じて固定接点(21a)に接離する可動接点(32)を設け,押しボタン(8)に,これを解放位置(B)側に付勢する戻しばね(9)を接続してなる押しボタンスイッチにおいて,
押しボタン(8)を,スイッチベース(3)に向かって開放した箱形に形成し,この箱形押しボタン(8)内に可動接点(32)及び固定接点(21a)を配置したことを特徴とする押しボタンスイッチ。
【請求項2】
請求項1記載の押しボタンスイッチにおいて,
箱型押しボタン(8)の,枢軸(7)から最も遠い揺動端壁(8a)内面に形成されるクリックカム(38)と,このクリックカム(38)に向かって開口するようスイッチベース(3)の端面に設けられる支持孔(39)と,この支持孔(39)に支持されてクリックカム(38)上を転動し得るクリックボール(40)と,支持孔(39)に収納されてクリックボール(40)をクリックカム(38)側に付勢するクリックばね(41)とよりなり,押しボタン(8)の押し込み初動時,クリックカム(38)の斜面(38b)がクリックボール(40)を支持孔(39)に押し込めてクリックばね(41)の荷重を増加させることにより,上記初動に一定の抵抗を付与するようにしたクリック機構(37)を備えることを特徴とする押しボタンスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−112583(P2008−112583A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−293052(P2006−293052)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000222934)東洋電装株式会社 (69)
【Fターム(参考)】