説明

指先触覚入力装置

【課題】指先の動く範囲内のように、きわめて小さい範囲内に複数のキーを有する入力装置において、非常に小型かつ薄型でありながら、十分なクリック感を保持してキー入力を可能とし、さらには、量産性にも優れた指先触覚入力装置を提供する。
【解決手段】底板(50)には、1つのドームスプリング(51)が孔空間の側の略中央に配置され、ドームスプリング(51)の内部に接点構造(52)を有する。表面シート(20)は、自由状態で、フレーム(10)の他方の面と略同一水準となるように、フランジ(11)に固定され、ヒトの手の指先が動く範囲に展開する複数の表面突起(21)を備え、柔軟性、伸縮性および可撓性を有する。デジタイザー(30)は、表面シート(20)より孔空間の側に、表面シート(20)と摺動可能に配置され、表面シート(20)に与えられた力の最も強い位置を電気的に測定可能である。アクチュエータ(40)には、凸部(41)を備え、デジタイザー(30)に固定され、剛性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話を含む携帯情報端末や、リモコン、携帯オーディオプレイヤー、マウス、電子手帳、ゲーム機、医療機器を含む小型電子機器などに用いられ、指先の触覚を利用して数字や文字、あるいは図柄や位置情報を入力する指先触覚入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯情報端末の普及はめざましく、携帯電話のような小型の端末を用いて、従来の通話のみならず、e-mailなどを用いた文字や記号の入力による通信、さらには、インターネットを介してインタラクティブな情報のやりとりが頻繁になされるようになってきている。
【0003】
しかしながら、従来のキー入力においては、従来の電話における数字ボタンに対応するキーボタンを中心に、キー入力装置が構成されており、装置の小型化の制限となっていた。また、文字入力に際しては、かかるキーボタンの各数字キーに文字キーが割り当てられており、英語・日本語などの言語にかかわらず、文字の選択・入力・確定に際して何度もキーを操作する必要がある。
【0004】
このような小型電子機器には、小型化が要望され、携帯情報端末などに用いられる入力装置として、ヒトの手の指先が動く範囲に複数のスイッチを備え、それぞれのスイッチの導通状態を情報処理することにより選択された1つを入力情報とする指先触覚入力装置が開発されている。このような指先触覚入力装置としては、特許第3708508号公報(米国特許第728010号、国際公開第WO03019373号公報)に、複数個の導通接点を備え、入力される情報を選択して処理する技術が記載されている。
【0005】
操作する者は、指先触覚入力装置の入力プレートに備えられた表面突起などを触覚で感じ取り、所望の入力情報を与えることができるように、ヒトの手の指先が動く範囲の中で力を入れる中心を移動させて、入力情報を選択した後、それぞれの表面突起に対応して内部に配置されたスイッチが動作するまで、表面突起を押すことにより、入力情報を確定する。これにより、指先の動きで入力情報の選択、入力、確定が可能となり、小型で使い勝手が非常によい携帯情報端末用の入力装置が実現可能となっている。
【0006】
しかし、このような入力装置では、内部に配置されたスイッチと、表面突起との位置を整合させなければならず、構造が複雑になり、量産には適さないという問題がある。
【0007】
また、このような装置に多数のドームスプリングを使用する場合、ドームスプリングが極めて小型になり、確かなクリック感を受けにくくなるという問題もある。
【0008】
このような問題を解決するためには、使用されるドームスプリングを、タクトスイッチ(登録商標)やマイクロスイッチに代えることも検討されうるが、それぞれに要求される大きさから、入力装置を薄く、かつ、小型にすることができず、そのため、携帯情報端末の小型化には適さないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3708508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、指先の動く範囲内のように、きわめて小さい範囲内に複数のキーを有する入力装置において、非常に小型かつ薄型でありながら、十分なクリック感を保持してキー入力を可能とし、さらには、量産性にも優れた指先触覚入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る指先触覚入力装置は、中央に孔空間が開き、内壁面から該孔空間に伸び出るフランジを有するフレームと、該孔空間の周縁部で、該フレームの一方の面の側に固定され、または、前記フレームと一体に形成され、該孔空間の底面を形成する底板と、前記孔空間内に配置され、前記フランジの内周の輪郭よりも小さく、その表面に与えられた圧力により入力位置を電気的に測定することが可能であるデジタイザと、前記フランジの内周の輪郭よりも大きく、前記デジタイザの前記底面側に固定され、かつ、その周縁が前記フランジの底面側に配置された、剛性を有するアクチュエータと、前記底板とアクチュエータの間で、前記孔空間の中央部に設けられたスイッチ機構と、前記底板とアクチュエータの間で、前記孔空間の中央部に設けられ、前記アクチュエータの動作の支点となるクリック機構とからなり、自由状態では、前記スイッチ機構が非導通状態であり、前記デジタイザとアクチュエータが、任意の位置で、所定以上の圧力で押圧されると、前記クリック機構が作動するとともに、前記スイッチ機構が導通状態となるように構成されている。
【0012】
前記フレームの他方の面の側で、前記フランジに固定され、前記孔空間の表面側を覆い、前記デジタイザと摺動可能に配置される表面シートをさらに備えることが好ましい。また、該表面シートの表面に、キーに対応する複数の表面突起が設けられていることが好ましい。さらに、前記フレーム、前記底板、および前記表面シートにより、前記孔空間が、防水状、防滴状または気密状にシールされることが好ましい。
【0013】
また、前記スイッチ機構および前記クリック機構が、前記底板またはアクチュエータのいずれか一方の略中央に設けられ、内部に接点構造を有するドームスプリングと、前記底板またはアクチュエータのいずれか他方の略中央に設けられた凸部とからなり、自由状態では該接点構造が非導通状態となり、前記アクチュエータの任意の位置での所定以上の圧力による前記押圧により、ドームスプリングがクリック感を付与すると共に、前記接点構造が導通状態となるようにすることが好ましい。このドームスプリングがストロークする範囲は、0.10mm〜0.30mmであることが好ましい。
【0014】
より具体的には、本発明の指先触覚入力装置は、中央に孔空間が開き、内壁面から該孔空間にフランジが伸び出るフレームと、該孔空間の周縁で、該フレームの一方の面の側に固定され、1つのドームスプリングが前記孔空間の側の略中央に配置され、該ドームスプリングの内部に接点構造を有する底板と、自由状態で、該フレームの他方の面と略同一水準となるように、前記フランジに固定され、ヒトの手の指先が動く範囲に展開する複数の表面突起を備える柔軟性、伸縮性および可撓性のある表面シートと、該表面シートより前記孔空間の側に、該表面シートと摺動可能に配置され、前記フランジの内側の輪郭よりも小さく、前記表面シートに与えられた力の最も強い位置を電気的に測定可能であるデジタイザと、自由状態では、前記接点構造を非導通状態とし、かつ、前記表面シートが押された状態では、前記ドームスプリングを押圧し、前記接点構造を導通状態とするように寸法付けがされた凸部を備え、前記フランジの内側の輪郭よりも大きく、前記デジタイザに固定された剛性のあるアクチュエータとからなる。
【0015】
本明細書において、柔軟性、伸縮性および可撓性は、ヒトの指の力で軽く変形し、自由状態で形状が復元する程度に柔らかい場合に、「ある」または「有する」と判断する。同様に、剛性は、ヒトの指の力では変形しない程度に固い場合に、「ある」または「有する」と判断する。
【0016】
あるいは、本発明に係る指先触覚入力装置は、中央に孔空間が開き、内壁面から該孔空間にフランジが伸び出るフレームと、該孔空間の周縁で、該フレームの一方の面の側に固定される底板と、自由状態で、該フレームの他方の面と略同一水準となるように、前記フランジに固定され、ヒトの手の指先が動く範囲に展開する複数の表面突起を備える柔軟性、伸縮性および可撓性のある表面シートと、該表面シートより前記孔空間の側に、該表面シートと摺動可能に配置され、前記フランジの内側の輪郭よりも小さく、前記表面シートに与えられた力の最も強い位置を電気的に測定可能であるデジタイザと、前記フランジの内側の輪郭よりも大きく、前記デジタイザに固定された剛性のあるアクチュエータとからなり、
1つのドームスプリングが、前記アクチュエータの前記底板側の略中央に配置され、該ドームスプリングの内部には、接点構造が備えられ、該ドームスプリングの中央、または、前記底板の中央には、自由状態で、前記接点構造を非導通状態とし、かつ、前記表面シートが押された状態で、前記ドームスプリングが押圧されて前記接点構造を導通状態とするように寸法付けがされた凸部を備える。
【0017】
あるいは、本発明に係る指先触覚入力装置は、中央に孔空間が開き、内壁面から該孔空間にフランジが伸び出るフレームと、該フレームの一方の面の側で、該孔空間の縁に固定される底板と、自由状態で、該フレームの他方の面と略同一水準となるように、前記フランジに固定され、ヒトの手の指先が動く範囲に展開する複数の表面突起を備える柔軟性、伸縮性および可撓性のある表面シートと、該表面シートより前記孔空間の側に、該表面シートと摺動可能に配置され、前記フランジの内側の輪郭よりも小さく、前記表面シートに与えられた力の最も強い位置を電気的に測定可能であるデジタイザと、前記フランジの内側の輪郭よりも大きく、前記デジタイザに固定された剛性のあるアクチュエータとからなり、
1つのドームスプリングが、前記アクチュエータの前記底板の側の略中央、または、前記底板で前記アクチュエータの側の略中央に配置され、前記デジタイザとアクチュエータとの間には、接点構造を有する。
【0018】
あるいは、本発明に係る指先触覚入力装置は、ヒトの手の指先が動く範囲に展開する複数の表面突起を備える柔軟性、伸縮性および可撓性のある表面シート、フレーム、および、前記表面シートと平行な底板に囲まれることにより孔空間が形成され、
該孔空間には、前記表面シートと摺動可能に配置され、前記表面シートに与えられた力の最も強い位置を電気的に測定可能であるデジタイザ、および、該デジタイザより前記底板の側に固定された剛性のあるアクチュエータが配置され、
自由状態では非導通状態となり、かつ、前記表面シートが押された状態では導通状態となるように寸法付けがされた接点構造、および、ドームスプリングが、前記アクチュエータと前記底板との間に配置される。
【発明の効果】
【0019】
従来は、複数の接点構造をこのような装置に使用するためには、複数の極めて小型のドームスプリングが必要であったのに対して、本発明の指先触覚入力装置では、1つのドームスプリングで済む。また、構造および回路が単純であることから、量産が容易となり、小型化および薄型化ができる。参考に、樹脂製で2.6mm以下、金属製で1.6mm以下という薄型化を達成できる。
【0020】
また、ドームスプリングに関して、大きさの制約を少なくすることができ、さらに、表面シートの中央を所定以上の力で押した場合でも、表面シートの隅を所定以上の力で押した場合でも、違和感を全く感じることがない程、ほとんど同じストロークおよび均等で好適なクリック感が得られる。
【0021】
また、操作する指と、ドームスプリングとの間に、剛性のあるアクチュエータを表面シートに対して摺動可能に配置したことにより、従来技術のようにスイッチやドームスプリングの凹凸を指先で感じることがなくなり、指先操作に好適な荷重が得られるため、連続して使用した場合でも疲れにくいという良好な操作性が得られる。
【0022】
さらに、全体を防水状、防滴状または気密状に構成することができ、液体、ほこりおよびゴミなどの侵入を防止できることによって、高い信頼性を得ることができる。さらに、1種類のデジタイザおよびアクチュエータに対して、多様な表面シートを組み合わせることできるので、少量多品種に容易に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の指先触覚入力装置の一実施例を示す断面図である。
【図2】図1の指先触覚入力装置において、操作状態を示す断面図である。
【図3】図1に使用される表面シートのデザイン図である。
【図4】図1の指先触覚入力装置において、異なる操作状態を示す断面図である。
【図5】本発明の指先触覚入力装置の異なる実施例を示す断面図である。
【図6】本発明の指先触覚入力装置の異なる実施例を示す断面図である。
【図7】本発明の指先触覚入力装置の異なる実施例を示す断面図である。
【図8】図7の指先触覚入力装置を示す斜視図である。
【図9】図7の指先触覚入力装置に表面シートを重ねた状態を示す断面図である。
【図10】本発明の指先触覚入力装置の異なる実施例を示す断面図である。
【図11】本発明の指先触覚入力装置の異なる実施例を示す断面図である。
【図12】本発明の指先触覚入力装置の異なる実施例を示す断面図である。
【図13】本発明の指先触覚入力装置の異なる実施例を示す断面図である。
【図14】本発明の指先触覚入力装置の異なる実施例を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の指先触覚入力装置について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の指先触覚入力装置の一実施例を示す断面図である。図2は、図1の指先触覚入力装置において、操作状態を示す断面図である。図3は、表面シートのデザイン図である。
【0025】
本発明の指先触覚入力装置の一実施例は、フレーム(10)、底板(50)、表面シート(20)、デジタイザ(30)、および、アクチュエータ(40)を備える。
【0026】
フレーム(10)は、中央に孔空間が開き、内壁面から孔空間にフランジ(11)が伸び出る。また、フレーム(10)は、表面シート(20)よりわずかに大きい程度であってもよいし、使用される機器の構造の一部であってもよい。孔空間またはフランジの開口形状は、円形、楕円形または卵形などの他に、角の丸い四角形または多角形のように任意の形状であってもよい。
【0027】
底板(50)は、孔空間の周縁で、フレーム(10)の一方の面の側に固定され、該孔空間の底面を形成する。底板(50)の固定方法としては、直接接着することもでき、他の構造を介して公知技術のいずれかにより間接的に取り付けてもよい。1つのドームスプリング(51)が、底板(50)の孔空間の側の略中央に配置され、ドームスプリング(51)の内部には接点構造(52)が備えられる。ドームスプリング(51)の材質は、金属製や樹脂製など、耐久性および耐衝撃性などが高い素材から選択する。また、底板(50)を印刷回線板(PCB)で得て、接点構造(52)を印刷した配線として、ドームスプリング(51)と一体に製造してもよい。また、接点構造(52)は、金属製のドームスプリング(51)を一方の電極として、対向する位置に1つまたは2つの電極を配置し、ドームスプリング(51)の変形により非導通状態と導通状態とを遷移するように構成してもよい。さらに、ドームスプリング(51)か、あるいは対向する構造に凸部(41)を設けることにより、最も適したクリック感が得られるようにしてもよい。
【0028】
また、底板(50)は、フレーム(10)と一体に成形してもよい。さらには、フレーム(10)と底板(50)を一体に成形し、一体のケーシングとし、スイッチを外部と接続するフラットケーブル(64)などの配線を適宜設け、必要に応じて、フレーム(10)の外周面に固定用のツバを設けることにより、指先入力装置のパッケージとすることも可能である。
【0029】
表面シート(20)は、自由状態で、フレーム(10)の他方の面と略同一水準となるように、フランジ(11)に固定され、ヒトの手の指先が動く範囲に展開する複数の表面突起(21)を備え、柔軟性、伸縮性および可撓性を備える。さらに、整列して配置される表面突起(21)の他に、図3に示したように、長い表面突起(22)を、両側に配置すると、指先の触覚だけで、容易に操作をすることができる。
【0030】
デジタイザ(30)は、表面シート(20)より孔空間の側に、表面シート(20)と摺動可能に配置され、フランジ(11)の内側の輪郭よりも小さく、表面シート(20)に与えられた力の最も強い位置を電気的に測定可能である。デジタイザ(30)は、抵抗膜方式、感圧方式、または静電容量方式が利用可能である。デジタイザ(30)は、フラットゲーブル(32)などの配線により、外部と接続することもできる。
【0031】
アクチュエータ(40)は、自由状態では、接点構造(52)が非導通状態となり、かつ、表面シート(20)が所定以上の力で押された状態では、ドームスプリング(51)を押圧し、接点構造(52)が導通状態となるように寸法付けがされた凸部(41)を備え、フランジ(11)の内側の輪郭よりも大きく、デジタイザ(30)に固定され、剛性を有する。
【0032】
また、図示しないが、ドームスプリング(51)および接点構造(52)は、底板(50)に固定されず、アクチュエータ(40)に固定されていてもよい。
【0033】
いずれの部分および部品についても、公知の電子材料および電子部品を使用することが可能である。
【0034】
これらの形状および大きさについては、適用される携帯情報端末や、小型電子機器などの大きさ、構造、用途などにより適宜変更可能であるが、それぞれの構造において、可能な限り厚さを薄くすることにより、その小型化、薄型化、かつ軽量化を図ることができる。
【0035】
具体的には、直径が32mm、厚さが0.2mmで、シリコン製または樹脂フィルム製の表面シート(20)、直径が27.6mm、厚さが0.3mmのデジタイザ(30)、直径が32mm、厚さが0.2mmで、ステンレス製のアクチュエータ(40)、直径が5mm、高さが0.25mmで、金属製または樹脂製のドームスプリング(51)としたところ、底板(50)の面から表面シート(20)の表面までの厚さを1.2mm以下という、きわめて薄型の指先触覚入力装置が得られる。この場合、ドームスプリングのストロークの長さが0.2mm以下でありながら、好適なクリック感を得ることができる。
【0036】
本発明の指先触覚入力装置の動作について、図面を参照して説明する。
【0037】
自由状態では、図1に示すように、ドームスプリング(51)が変形せず、接点構造(52)が非導通状態である。
【0038】
表面シート(20)の中央が所定以上の力で押された状態では、アクチュエータ(40)が底板(50)に対して平行状態を維持したまま、凸部(41)がドームスプリング(51)を変形させて、接点構造(52)を導通状態とする。
【0039】
また、表面シート(20)の中央以外が所定以上の力で押された状態では、図2に示すように、押された位置が力点となり、対角にあたるアクチュエータ(40)の端部でフランジ(11)に当接していた位置が支点となり、凸部(41)が作用点となるように、押された力が、てこの原理で伝達されて、ドームスプリング(51)を変形させて、接点構造(52)が導通する。あるいは、図4に断面図を示したように、押された位置が力点となり、アクチュエータ(40)の端部で底板(50)に当接した位置が支点となり、凸部(41)が作用点となるように、押された力が、てこの原理で伝達されて、ドームスプリング(51)を変形させて、接点構造(52)が導通する。図2に示した支点および図4に示した支点のいずれが支点となるかは、それぞれの位置関係と柔軟性などにより決定されることになる。
【0040】
あるいは、図5に断面図を示したように、デジタイザ(31)とアクチュエータ(40)との間に、複数の接点構造(52)を有するスイッチ基板(60)を配置してもよい。このような構造とすることにより、ドームスプリングに異状が生じても、入力機能を失わないようにすることができる。
【0041】
あるいは、図6に断面図を示したように、デジタイザとスイッチ基板の機能を合わせ持つように複合基板(70)を備えるようにしてもよい。このような構造とすることにより、位置合わせに必要な工数をさらに削減することができる。
【0042】
フレームが上ケース(12)および下ケース(13)からなる実施例について、図7に断面図を示し、図8に斜視図を示し、表面シートをさらに重ねた状態の断面図を図9に示す。本実施例においては、上ケース(12)の一部が、前述のフランジの機能を果たし、得られる指先触覚入力装置は、独立した電子部品として扱うことができ、携帯電話などに取り付けることが容易となる。
【0043】
なお、本発明は、最良の実施の形態および実施例に限定されるものではない。
【0044】
すなわち、まず、本発明に係る指先触覚入力装置は、中央に孔空間が開き、内壁面から該孔空間に伸び出るフランジを有するフレームと、該孔空間の底面を形成する底板と、該孔空間内に配置されるデジタイザと、前記デジタイザの前記底面側に固定され、かつ、その周縁が前記フランジの底面側に配置された、剛性を有するアクチュエータと、前記底板とアクチュエータの間で、前記孔空間の中央部に設けられたスイッチ機構と、前記底板とアクチュエータの間で、前記孔空間の中央部に設けられ、前記アクチュエータの動作の支点となるクリック機構とからなり、自由状態では、前記スイッチ機構が非導通状態であり、前記デジタイザとアクチュエータが、任意の位置で、所定以上の圧力で押圧されると、前記クリック機構が作動するとともに、前記スイッチ機構が導通状態となるように構成されていることを特徴とする。これにより、たとえば、当該指先触覚入力装置に設けられる入力キーのそれぞれにスイッチを設ける必要がなく、かつ、入力キーのそれぞれにクリック感を付与するクリック機構を設ける必要がない。さらに上述のように、クリック機構を支点としてアクチュエータが揺動可能になっており、かつ、表面シートないしはデジタイザの任意位置における所定圧力以上の押圧により、該クリック機構およびスイッチ機構を作動させることが可能となっているため、表面シートないしはデジタイザのいずれの表面位置におけるスイッチング動作に対して、1つのスイッチ機構および1つのクリック機構のみで、クリック感のある複数の入力キーの入力、選択、確定の動作に対応できる点にある。
【0045】
なお、スイッチ機構とクリック機構は、上述の通り、ドームスプリング(51)およびこれに設けられた接点構造(52)により構成されることが好ましいが、0.1mm〜0.3mmというきわめて小さいストロークを可能にし、かつ、耐久性、明瞭なクリック感などの観点で代替できる構造のスイッチ部材があれば、これらに代替することは可能である。また、本発明では、複数の入力キーに対応して、1つのスイッチにより入力を可能にする点に特徴があるが、他の補助的なスイッチを別に設けてもよい。
【0046】
なお、本発明は、前記表面シート(20)の表面に、キーに対応する複数の表面突起(21)が設けられていて、該表面突起への触覚により、指先により、入力情報の入力、選択、確定を可能とする入力装置へ適用されることを主たる用途とするが、これに限らず、複数のキーをヒトの指先が可動なきわめて小さい範囲に配される小型化端末用の他の形態の入力装置においても、1つのスイッチのみで、明瞭なクリック感および入力操作が要求される他のタイプの入力装置にも適用されうる。
【0047】
以上の実施例では、デジタイザ(30)がアクチュエーター(40)に固定され、表面シート(20)がフレーム(10)の上端に固定され、よって、表面シート(20)の内面とデジタイザ(30)の上面とが、摺動可能に配置されている。しかしながら、表面シート(20)は、デジタイザ(50)に接着肯定することも可能である。以下、そのような構造を有する実施例を提示する。
【0048】
図10に、本発明の指先触覚入力装置の一実施例を断面図で示す。本実施例では、表面シート(20)の操作部分の内側の面を、デジタイザ(30)の上面に固定し、表面シート(20)の外周部分を、上ケース(12)の上端と製品のケース(14)の下面との間に挟むようにして固定している。
【0049】
図11に、本発明の指先触覚入力装置の一実施例を断面図で示す。本実施例では、表面シート(20)は、デジタイザ(30)の外形とほぼ同じサイズであり、デジタイザ(30)の上面に固定されている。表面シート(20)とデジタイザ(30)を、デジタイザ(30)の外形より小さく、かつ、表面シート(20)の操作部分の範囲より大きい開口部を有する製品のケースの外周の内側表面に、内側から押さえつけて固定している。
【0050】
図12に、本発明の指先触覚入力装置の一実施例を断面図で示す。本実施例では、デジタイザ(30)の外形とほぼ同じサイズの表面シート(20)を、デジタイザ(30)の上面に固定し、表面シート(20)の突起(21)が1mm以上の高さとなるように形成されている。さらに、製品の装飾パネル(15)には、突起(21)に合わせてそれぞれ孔(16)が開けられ、孔(16)は、突起(21)が0.1mm〜0.5mm程度、突き出るように、寸法付けされている。このように、本発明の指先触覚入力装置が、製品の表面に現れず、装飾パネル(15)によって上側が覆われて、突起(21)のみが表面に現れるようにしてもよい。
【0051】
図13に、本発明の指先触覚入力装置の一実施例を断面図で示す。図12と異なる部分は、突起(21)のうち高く伸長する部分が、独立したキャップ(23)に代替され、それぞれのキャップ(23)は、表面シート(20)に設けられている対応する突起(21)の上に固定されている。このように突起(21、23)を分割することで、適度な柔軟性、伸縮性および可撓性を備えるシート部分(20)とは別に、金属やメッキされたプラスチックのように、堅い材質からなる突起(23)を適用することが容易となる。本実施例により、多様な外観デザインが可能となる。
【0052】
図14に、本発明の指先触覚入力装置の一実施例を断面図で示す。本実施例は、図1〜図9に示す実施例とは、接点構造において異なっている。本実施例のスイッチ機構は、上側フィルム(63)および下側フィルム(62:フィルム基板)からなり、それぞれに印刷パターンが設けられている。自由状態で、下側フィルム(62)に印刷された接点パターンは非導通状態にある。接点パターンは、フラットケーブル(64)により、外部と接続可能である。ドームスプリング(51)は、ドームスプリング用固定フィルム(54)により、上側フィルム(63)の上面に配置固定されている。そして、ドームスプリング(51)が押圧されると、上側フィルム(63)の内側面に印刷されている導通用のパターンによって、下側フィルム(62)の接点パターンが導通状態となる。この構成により、耐久性を向上させることができる。図10〜13に示す実施例においても、装置は図14に示したのと同様の接点構造を採用しているが、これらの実施例において他の構造を採ることも可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 フレーム
11 フランジ
12 上ケース
13 下ケース
20 表面シート
21、22 表面突起
30、31 デジタイザ
32 フラットケーブル
33 スペーサー
40 アクチュエータ
41 凸部
50 底板
51 ドームスプリング
52 接点構造
53 配線パターン
60、61 スイッチ基板
62 フラットケーブル
70 複合基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの手の指先が動く範囲に配置された複数のキーを備える指先触覚入力装置であって、
中央に孔空間が開き、内壁面から該孔空間に伸び出るフランジを有するフレームと、
該孔空間の周縁部で、該フレームの内側に固定され、または、前記フレームと一体に形成され、該孔空間の底面を形成する底板と、
前記孔空間内に配置され、前記フランジの内周の輪郭よりも小さく、その表面に与えられた圧力により入力位置を電気的に測定することが可能であるデジタイザと、
前記フランジの内周の輪郭よりも大きく、前記デジタイザの内側に固定され、かつ、その周縁が前記フランジの内側に配置された、剛性を有するアクチュエータと、
前記底板とアクチュエータの間に設けられたスイッチ機構と、
前記底板とアクチュエータの間で、前記孔空間の中央部に設けられ、前記アクチュエータの動作の支点となるクリック機構とを備え
前記クリック機構は、前記底板またはアクチュエータのいずれか一方の略中央に設けられたドームスプリングと、前記底板またはアクチュエータのいずれか他方の略中央、またはドームスプリングの頂上に設けられた凸部とからなり、自由状態では該スイッチ機構が非導通状態となり、前記剛性を有するアクチュエータは、該クリック機構を支点として揺動可能であり、前記デジタイザとアクチュエータが、任意の位置で、所定以上の圧力で押圧されると、該クリック機構がクリック感を付与するように作動し、前記スイッチ機構が導通状態となり、前記ドームスプリングがストロークする範囲が、0.1mm〜0.3mmである、
指先触覚入力装置。
【請求項2】
前記フレームの外側に固定され、前記デジタイザの外側の孔空間を覆うよう配置される表面シートをさらに有する請求項1に記載の指先触覚入力装置。
【請求項3】
前記表面シートは、柔軟性、伸縮性および可撓性を有しており、自由状態で前記フレームの外側面と略同一水準となるように、前記フランジの外側に固定されている請求項2に記載の指先触覚入力装置。
【請求項4】
前記表面シートの表面に、キーに対応する複数の表面突起が設けられている請求項2または3に記載の指先触覚入力装置。
【請求項5】
前記フレーム、前記底板、および前記表面シートにより、前記孔空間が、防水状、防滴状または気密状にシールされる請求項2に記載の指先触覚入力装置。
【請求項6】
前記スイッチ機構が、前記ドームスプリングの内側に配置された接点機構である請求項1または2に記載の指先触覚入力装置。
【請求項7】
前記スイッチ機構が、前記1つのドームスプリングの内側に配置された接点機構であり、該ドームスプリングが、前記底板外側の略中央に配置され、凸部が、前記剛性を有するアクチュエータの内側に設けられ、該ドームスプリングと該凸部が、自由状態では、前記接点機構を非導通状態とし、かつ、前記表面シートが押された状態では、前記ドームスプリングを押圧してクリック感を付与し、前記接点機構を導通状態とするように寸法付けされている請求項1または2に記載の指先触覚入力装置。
【請求項8】
前記スイッチ機構が、前記1つのドームスプリングの内側に配置された接点機構であり、該ドームスプリングが、前記剛性を有するアクチュエータの内側の略中央に配置され、前記凸部が、前記底板の外側またはドームスプリングの頂部に設けられ、該ドームスプリングと該凸部が、自由状態では、前記接点機構を非導通状態とし、かつ、前記表面シートが押された状態では、前記ドームスプリングを押圧してクリック感を付与し、前記接点機構を導通状態とするように寸法付けされている請求項1または2に記載の指先触覚入力装置。
【請求項9】
前記スイッチ機構が、前記デジタイザと前記アクチュエータとの間に配置された接点機構である請求項1または2に記載の指先触覚入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2010−534899(P2010−534899A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503301(P2010−503301)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【国際出願番号】PCT/JP2008/063919
【国際公開番号】WO2009/014271
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(393012161)株式会社アイム (8)
【Fターム(参考)】