説明

指紋消去性フィルム

基材上に樹脂層を設けた指紋消去性フィルムであって、樹脂層の表面がマット化され、且つ樹脂層の表面のぬれ張力(JIS−K6768:1999)が25mN/m以上となるように構成されている。好ましくは、樹脂層の表面粗さは十点平均粗さRz(JIS−B0601:1994)で0.2〜2.0μmである。樹脂層は、好ましくは電離放射線硬化型樹脂とマット剤とを含み、より好ましくは平均粒子径が異なる2種のマット剤を含む。このような構成の指紋消去性フィルムは、指紋成分が付着しにくく、指紋成分が付着した場合にも布等で拭き取ることにより、ほぼ完全に或いは視認することができない程度に指紋成分を除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、液晶モニタ、テレビ、ショーケース、時計や計器のカバーガラスなどの表面に貼着されるフィルム、その他タッチパネル用のフィルムなどに関し、指紋消去性に優れるものに関する。
【背景技術】
液晶モニタ、テレビ、ショーケース、時計や計器のカバーガラスなどの表面には、表面を保護するために透明フィルムが貼着されることが多い。また、近年、銀行のATM、切符の券売機に代表されるように、タッチパネル方式の電子機器が増えている。
このような液晶モニタなどの表面保護用の透明フィルム、およびタッチパネルに使用される透明フィルムなどは、高透明性を有することから指紋が付着すると非常に目立ち、また、指紋が付着した部分を布などで拭いてもきれいにならないという問題があった。
このような指紋の成分は体内から分泌される皮脂、汗などであり、これを消去しやすくするものとして、透明フィルム表面の接触角を大きくしたもの(言い換えると、透明フィルム表面のぬれ張力を小さくしたもの、あるいは透明フィルム表面のエネルギーを小さくしたもの)が提案されている(例えば、特開2001−98190号公報(実施例)参照)。即ち、透明フィルム表面のぬれ張力を小さくすることにより、透明フィルム表面に付着した指紋成分ははじかれた状態となり、除去しやすくなるというものである。
ところで上述した透明フィルムは、外光の映り込みを防止するなどの目的で、表面がマット化されることがある。しかし、表面をマット化し、かつ表面のぬれ張力を小さくした透明フィルムは、指紋消去性が良好でないことが判明した。
【発明の開示】
そこで、本発明は、表面がマット化されたフィルムであって且つ指紋消去性に優れる指紋消去性フィルムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の指紋消去性フィルムは、一方の面がマット化されてなり、当該マット化面のぬれ張力が、25mN/m以上であることを特徴とするものである。
好ましくは、前記マット化面の表面粗さが、十点平均粗さRzで0.2〜2.0μmであることを特徴とするものである。
好ましくは、フィルム全体のヘーズが1.5〜35.0%であることを特徴とするものである。
好ましくは、基材上に樹脂層を有し、前記マット化面を前記樹脂層表面に有することを特徴とするものである。
好ましくは、前記樹脂層は、電離放射線硬化型樹脂を含む塗料から形成されてなるものであることを特徴とするものである。樹脂層は、鉛筆硬度が好ましくはH以上、より好ましくは2H以上である。
好ましくは、前記樹脂層は、マット剤を含み、より好ましくはマット剤として平均粒子径の異なる2種類のマット剤を含む。最も好ましくはマット剤はシリカである。
なお、本発明でいう、ぬれ張力とは、JIS−K6768:1999で規定されているぬれ張力のことをいい、十点平均粗さRzとは、JIS−B0601:1994(RzJIS94)で規定されている十点平均粗さRzのことをいう。またヘーズとは、JIS−K7105:1981で規定されているヘーズのことをいう。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明の指紋消去性フィルムの一実施例を示す断面図、図2は本発明の指紋消去性フィルムの他の実施例を示す断面図、図3は本発明の指紋消去性フィルムの他の実施例を示す断面図である。
発明を実施する最良の形態
以下、本発明の指紋消去性フィルムの実施の形態を詳述する。
本発明の指紋消去性フィルムは、液晶モニタ、テレビ、ショーケース、時計や計器のカバーガラスなどの表面に貼着されるフィルム、その他タッチパネル用のフィルムとして使用することが可能なフィルムであり、最上面にマット化された面(マット化面)を有し、その表面のぬれ張力が25mN/m以上であることを特徴としている。本発明において、マットとはJIS−B0601:1994で規定する算術平均粗さRaで0.05μm以上の表面状態をいう。
マット化面の表面粗さの程度は特に制限されることはないが、必要以上に粗さないことが好ましく、算術平均粗さRaで好ましくは0.7μm以下、より好ましくは0.3μm以下である。また下限は0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上の範囲である。このような範囲とすることにより、外光の映り込みなどを防止することができる。
さらに本発明の指紋消去性フィルムは、表面の十点平均粗さRzの下限が、好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.5μm以上であって、上限が好ましくは2.0μm以下、より好ましくは1.5μm以下である。一般に指紋成分はフィルム表面に凹凸があると付着しにくい反面、付着すると拭き取ったときに凹凸内に指紋成分が入り込み、拭き取りにくくなる。本発明ではRzを0.2〜2.0μmの範囲とすることにより、指紋成分の拭き残りを殆どなくすことができ、また、若干拭き残った場合でも、拭き残った指紋成分を見えなくすることができる。
なお、十点平均粗さRzとは、カットオフ値と等しいサンプリング長さのN倍の評価長さの粗さ曲線をN等分し、各区間毎に第1位から第5位までの高さの山頂の平均標高と第1位から第5位までの深さの谷底の平均標高の間隔Rz’を求めたときのN個のRz’の算術平均値をいう。したがって、算術平均粗さRaでは、Ra値よりも極端に標高が高い山が含まれてしまう一方で、十点平均粗さRzでは、Rz値よりも極端に標高が高い山が含まれることがない。したがって、Rz値を上述した範囲とすることにより、極端に標高が高い山の存在によって指紋成分が拭き取りづらくなることがなくなり、指紋消去性をより良好なものとすることができる。
また本発明の指紋消去性フィルムは、マット化面のぬれ張力を25mN/m以上、好ましくは30mN/m以上とする。従来ぬれ張力を低くして指紋消去性を付与していたものを、逆にぬれ張力を高くし、かつマット化することにより指紋消去性を良好にしたものである。かかる効果が得られる原因は必ずしも明らかではないが、ぬれ張力を25mN/m以上にすることで非常に薄い膜として広面積に塗り広げやすくなるためと考えられる。本発明者らの実験によれば、指紋成分を見えなくなるまで拭き取った後、ニンヒドリン試薬を用いた指紋発色試験を行っても発色しないことが確認されており、指紋成分は、試薬で反応しないレベルまで薄く塗り広げられている、あるいは完全に拭き取られていると考えられる。この指紋消去性の効果は、特にマット化面のRzを0.2〜2.0μmの範囲としたときにさらに良好であり、これはマット効果により塗り広げられた指紋成分が見えなくなるものとと考えられる。
これに対し、従来のようにぬれ張力を低くして指紋消去性を良好にしたものは、表面がマット化されていると指紋成分を十分に除去することができない。この原因は、はじかれた指紋成分が凹凸の隙間に入り込むなどして拭き取りづらくなっているためと考えられる。
本発明の指紋消去性フィルムの光学特性は、その用途によって異なり特に限定されないが、全体として透明性が高いものであることが好ましい。具体的には、JIS−K7105:1981でいう全光線透過率が82%以上であることが好ましい。またヘーズは好ましくは35.0%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましく5.0%とする。ヘーズの下限値は1.5%以上であることが好ましい。ヘーズを1.5〜35.0%の範囲とすることにより、透明性を維持しつつ、拭き残った指紋成分を見えなくすることができる。
また少なくともマット化面を構成する樹脂成分は、屈折率が1.46〜1.52の範囲であることが好ましい。このような範囲とすることにより、指紋成分の屈折率との差がほぼなくなるため、拭き残った指紋成分を見えにくくする効果がある。
次に本発明の指紋消去性フィルムの各要素について詳述する。本発明の指紋消去性フィルムの構造は、例えば、図1及び図2に示すように、基材1の上に樹脂層2を形成したものでも、図3に示すように、基材1のみからなるものでもよく、樹脂層2表面或いは基材1表面がマット化されている。
基材としては、透明性の高いものであれば特に材質を問わないが、例えばポリエステルフィルム、アクリルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリプロピレンフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、各種フッ素系樹脂フィルムなどのプラスチックフィルムが使用できる。
基材の厚みは特に限定されるものではないが、取り扱い性などの観点から5〜300μmのものが好適に使用される。
本発明の指紋消去性フィルムが図1に示すように基材のみからなる場合、即ちマット化面を基材表面にて形成する場合には、基材を構成する材料はぬれ張力が高いものが好ましい。ぬれ張力が高い基材としては、ポリエステルフィルム、アクリルフィルムなどがあげられる。
基材自体をマット化する手段としては、基材に細かい砂を高速で吹き付けるサンドブラスト加工、基材を金属彫刻ロールと弾性ロールとの間を通すことによってなされるエンボス加工、基材表面を化学薬品で処理するケミカルエッチング法などがあげられる。図1、図2に示すように、基材上に樹脂層を設ける場合には、基材はマット化されていてもよいし、マット化されていなくてもよい。
基材上に樹脂層を形成し、この樹脂層表面にマット化面を形成する場合、樹脂層は、例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂などの熱硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂などを含む塗料から形成することができる。これらの樹脂の中でも、指紋消去性の観点からポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、電離放射線硬化型樹脂が好ましく、特に電離放射線硬化型樹脂が好ましい。このような樹脂層は、フィルムに対し耐擦傷性などを付与するものでもあり、ハードコート性の観点からも電離放射線硬化型樹脂が好ましい。また指紋消去性およびハードコート性の両方の観点から、樹脂層の硬度は高い方がよく、好ましくは鉛筆硬度H以上、より好ましくは2H以上とする。
電離放射線硬化型樹脂としては、電離放射線(紫外線若しくは電子線)の照射により架橋硬化するものを使用することができる。このような電離放射線硬化型樹脂としては、光カチオン重合可能な光カチオン重合性樹脂、光ラジカル重合可能な光重合性プレポリマー若しくは光重合性モノマーなどの1種又は2種以上を混合したものを使用することができる。
光カチオン重合性樹脂としては、ビスフェノール系エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂やビニルエーテル系樹脂などをあげることができる。
また光重合性プレポリマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレートなどの各種(メタ)アクリレート類などを使用することができる。
また光重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマー類、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミドなどの不飽和カルボン酸アミド、(メタ)アクリル酸−2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸−2−(N,N−ジベンジルアミノ)エチルなどの不飽和酸の置換アミノアルコールエステル類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス−(2−ヒドロキシエチル)−イソシアヌル酸エステル(メタ)アクリレート、3−フェノキシ−2−プロパノイルアクリレート、1,6−ビス(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−ヘキシルエーテルなどの多官能性化合物、およびトリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレートなどの分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物などを使用することができる。
樹脂層として電離放射線硬化型樹脂を用いる場合には、電離放射線硬化型樹脂を含む塗料中に、光重合開始剤、紫外線増感剤などを添加することが好ましい。光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α−アシロキシムエステル、チオキサンソン類などの光ラジカル重合開始剤や、オニウム塩類、スルホン酸エステル、有機金属錯体などの光カチオン重合開始剤があげられ、紫外線増感剤としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィンなどがあげられる。
また熱硬化性樹脂或いは電離放射線硬化性樹脂から樹脂層を形成する場合、指紋消去性を向上するために十分に硬化することが好ましい。これにより指紋成分と結合しやすい官能基が表面に残らないようにすることができる。
樹脂層中にはマット剤を含有させることが好ましい。マット剤を含有せしめることにより、樹脂層表面に容易に所定の表面粗さのマット化面を形成することができる。マット剤の平均粒径は特に制限されることはないが、平均粒径1〜15μmの粒子を用いることが好ましく、さらに平均粒径1〜15μmの粒子と平均粒径が5〜50nmの粒子を組み合わせて使用することが好ましい。このような微粒子を組み合わせて使用することにより、表面形状の制御が容易となるとともに、指紋消去性を向上することができる。これは、粒径の大きい粒子によって指紋が付着しにくい表面粗さが形成されるとともに、粒径の小さい粒子がぬれ張力を高くし、付着した指紋を広がりやすくするためと考えられる。
マット剤としては、公知の無機微粉末および有機微粉末があげられる。無機微粉末としては、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、シリカ、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、クレー、アルミナなどが、有機微粉末としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂などがあげられる。これらマット剤は、単独であるいは2種以上混合して使用することができる。これらマット剤の中でも、耐擦傷性、指紋消去性の観点から無機微粉末が好適に使用され、その中でもシリカが特に好適に使用される。
マット剤の総添加量は、樹脂層を構成する樹脂100重量部に対して0.1〜30.0重量部であることが好ましい。マット剤の総添加量をかかる範囲とすることにより、樹脂層の表面状態を調整しやすくすることができる。具体的にはRzを0.2〜2.0μmの範囲に容易に調整できる。また、上述したように、平均粒径が1〜15μmの粒子と、平均粒径が5〜50nmの粒子を組み合わせて使用する場合には、何れの粒子ともに、樹脂層を構成する樹脂100重量部に対して0.05〜15.0重量部であることが好ましい。
樹脂層の厚みは特に制限されることはないが、2〜15μm程度である。
本発明の指紋消去性フィルムでは、一方の面がマット化され且つマット化面のぬれ張力が25mN/m以上であれば、反対側の面はいかなる構成からなっていてもよい。例えば、反対側の面は平滑であってもよいし、マット化されていてもよい。マット化面とは反対側の面には、液晶モニタなどに貼着するための接着剤層、セパレータを有していてもよい。この場合、接着剤層は、アクリル系、ウレタン系、ゴム系などの公知の接着剤などから構成される。接着剤層の厚みは、通常1〜50μmの範囲で使用される。
セパレータは、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどのプラスチックフィルムや、紙等の表面をシリコーンなどで適宜離型処理を施したものが使用できる。セパレータの厚みとしては、作業性を考慮して4〜200μm、好ましくは20〜100μmの範囲である。
以上のような樹脂層、接着剤層は、各層を構成する材料を塗料化した塗布液を、バーコーター法、ロールコーター法、カーテンフロー法などの公知の塗布方法により塗布、乾燥することにより形成することができる。
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に説明する。なお、「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。
【実施例1】
厚み100μmのポリエステルフィルム(コスモシャインA4300:東洋紡績社)の一方の表面に、下記組成の樹脂層塗布液を塗布、60℃・5分で加熱乾燥し、高圧水銀灯で紫外線を1〜2秒照射することにより約5μmの樹脂層を形成して、指紋消去性フィルムを得た。
<樹脂層塗布液>
・電離放射線硬化型樹脂(アクリル系) 30.0部
(BS−575:荒川化学社、固形分100%)
・光ラジカル重合開始剤 1.5部
(ダロキュア1173:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ
社)
・シリカ(平均粒径:5.7μm) 3.0部
(サイリシア250:富士シリシア化学社)
・シリカ(平均粒径:30nm) 3.0部
(アエロジル50:日本アエロジル社)
・酢酸エチル 20.0部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル10.0部
【実施例2】
実施例1の樹脂層塗布液を下記の処方に変更した以外は、実施例1と同様にして指紋消去性フィルムを得た。
<樹脂層塗布液>
・電離放射線硬化型樹脂(アクリル系) 30.0部
(BS−575:荒川化学社、固形分100%)
・光ラジカル重合開始剤 1.5部
(ダロキュア1173:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社)
・シリカ(平均粒径:5.7μm) 4.5部
(サイリシア250:富士シリシア化学社)
・酢酸エチル 20.0部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル10.0部
【実施例3】
実施例1の樹脂層塗布液を下記の処方に変更した以外は、実施例1と同様にして指紋消去性フィルムを得た。
<樹脂層塗布液>
・電離放射線硬化型樹脂(アクリル系) 30.0部
(BS−575:荒川化学社、固形分100%)
・光ラジカル重合開始剤 1.5部
(ダロキュア1173:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社)
・シリカ(平均粒径:30nm) 7.0部
(アエロジル50:日本アエロジル社)
・酢酸エチル 20.0部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル10.0部
【実施例4】
実施例1の樹脂層塗布液を下記の処方に変更した以外は、実施例1と同様にして指紋消去性フィルムを得た。
<樹脂層塗布液>
・電離放射線硬化型樹脂(アクリル系) 30.0部
(BS−575:荒川化学社、固形分100%)
・シリカ(平均粒径:2.7μm) 7.5部
(サイリシア530:富士シリシア化学社)
・光ラジカル重合開始剤 1.5部
(ダロキュア1173:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社)
・酢酸エチル 20.0部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル10.0部
【実施例5】
実施例1の樹脂層塗布液を下記の処方に変更した以外は、実施例1と同様にして指紋消去性フィルムを得た。
<樹脂層塗布液>
・電離放射線硬化型樹脂(エポキシ系) 30.0部
(アデカオプトマーKRM−2410:旭電化工業社、固形分100%)
・光カチオン重合開始剤 2.0部
(アデカオプトマーSP−170:旭電化工業社)
・シリカ(平均粒径:14.1μm) 0.15部
(サイリシア470:富士シリシア化学社)
・酢酸エチル 20.0部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル10.0部
【実施例6】
実施例1の樹脂層塗布液を下記の処方に変更した以外は、実施例1と同様にして指紋消去性フィルムを得た。
<樹脂層塗布液>
・電離放射線硬化型樹脂(エポキシ系) 30.0部
(アデカオプトマーKRM−2410:旭電化工業社、固形分100%)
・光カチオン重合開始剤 2.0部
(アデカオプトマーSP−170:旭電化工業社)
・アクリル樹脂ビーズ(平均粒径:5μm) 2.0部
(GB−05S:ガンツ化成社)
・酢酸ブチル 25.0部
・シクロヘキサノン 10.0部
【実施例7】
実施例1の樹脂層塗布液を下記の処方に変更した以外は、実施例1と同様にして指紋消去性フィルムを得た。
<樹脂層塗布液>
・電離放射線硬化型樹脂(エポキシ系) 30.0部
(アデカオプトマーKRM−2410:旭電化工業社、固形分100%)
・光カチオン重合開始剤 2.0部
(アデカオプトマーSP−170:旭電化工業社)
・シリカ(平均粒径:6.4μm) 4.5部
(サイリシア370:富士シリシア化学社)
・シリカ(平均粒径:30nm) 2.5部
(アエロジル50:日本アエロジル社)
・酢酸エチル 20.0部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル10.0部
[比較例1]
実施例1の樹脂層塗布液を下記の処方に変更した以外は、実施例1と同様にして指紋消去性フィルムを得た。
<樹脂層塗布液>
・電離放射線硬化型樹脂(アクリル系) 30.0部
(KRM6034:ダイセルUCB社、固形分100%)
・シリカ(平均粒径:5.7μm) 8.0部
(サイリシア250:富士シリシア化学社)
・酢酸エチル 20.0部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル10.0部
[比較例2]
実施例1の樹脂層塗布液を下記の処方に変更した以外は、実施例1と同様にして指紋消去性フィルムを得た。
<樹脂層塗布液>
・電離放射線硬化型樹脂(エポキシ系) 30.0部
(アデカオプトマーKRM−2410:旭電化工業社、固形分100%)
・光カチオン重合開始剤 2.0部
(アデカオプトマーSP−170:旭電化工業社)
・シリカ(平均粒径:4.7μm) 10.5部
(サイリシア436:富士シリシア化学社)
・酢酸エチル 20.0部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル10.0部
[比較例3]
実施例1の樹脂層塗布液を下記の処方に変更した以外は、実施例1と同様にして指紋消去性フィルムを得た。
<樹脂層塗布液>
・電離放射線硬化型樹脂(エポキシ系) 30.0部
(アデカオプトマーKRM−2410:旭電化工業社、固形分100%)
・光カチオン重合開始剤 2.0部
(アデカオプトマーSP−170:旭電化工業社)
・シリカ(平均粒径:2.7μm) 0.015部
(サイリシア530:富士シリシア化学社)
・酢酸エチル 20.0部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル10.0部
実施例および比較例で得られた指紋消去性フィルムにつき、以下の項目の評価を行った。結果を表1に示す。
(1)耐指紋付着性
樹脂層表面に指の腹を押しあて指紋をつけ、黒地にのせて目視で指紋の付着度合いを観察した。その結果、指紋が目立つものを「×」、若干目立つものを「△」、比較的目立たないものを「○」とした。
(2)指紋消去性
樹脂層表面に指の腹を押しあて指紋をつけた。次いで、ティッシュペーパーで拭き取りを行い、1回拭き取るごとに黒地にのせて目視で観察を行い、指紋が見えなくなるまでの回数を評価した。なお、10回以上拭き取っても指紋が見えるものは「×」とした。
(3)防眩性
画像を表示させた液晶モニタ上に指紋消去性フィルムを積層した際に、外部光の映り込みによって表示画像が見づらくなるかどうかについて目視にて評価を行った。その結果、表示画像が良好に観察されたものを「○」、表示画像が見づらかったものを「×」とした。
(4)ぬれ張力
JIS−K6768:1999に基き、ぬれ張力を測定した(単位は「mN/m」)。
(5)十点平均粗さRz
触針式表面粗さ測定器(SAS−2010 SAU−II:明伸工機社)を用い、JIS−B0601:1994に基き、算術平均粗さRa及び十点平均粗さRzを測定した(単位は「μm」)。
(6)ヘーズ
SMカラーコンピューターUGV−5K(スガ試験機社)を用い、JIS−K7105:1981に基き、ヘーズを測定した(単位は「%」)。なお、光は樹脂層側から入射させて測定を行った。
(7)鉛筆硬度
JIS K5600−5−4:1999に基づき、樹脂層の鉛筆硬度を測定した。
【表1】

表1の結果を見て明らかなように、実施例1から7のものは、何れも表面のぬれ張力が25mN/m以上であり、指紋が付着しにくく、付着した場合にも見えにくく、容易に消去できることがわかった。ただし比較的Rzが小さい実施例3、4のフィルム及び比較的ぬれ張力の小さい実施例5、7のフィルムでは、その他の実施例に比べ耐指紋付着性が劣っていた。さらに実施例1から7のものについて、指紋消去性の評価で指紋が見えなくなった後、ニンヒドリン試薬を用いて指紋発色試験を行ったところ、何れのものも発色することはなかった。
一方、比較例1、2のものは、表面がマット化されており防眩性は良好であるが、表面のぬれ張力が25mN/m未満であり、耐指紋付着性、指紋消去性ともに劣るものであった。
また、比較例3のものは、表面のぬれ張力が25mN/m以上であるものの、Rzが0.08μmと低く表面がマット化されておらず、良好な耐指紋付着性、指紋消去性および防眩性が得られなかった。
また比較例1から3のフィルムについても指紋消去性の評価で指紋を拭き取った後、ニンヒドリン試薬を用いて指紋発色試験を行ったところ、薄い赤紫色の発色が見られた。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面がマット化されてなり、当該マット化面のぬれ張力が、25mN/m以上であることを特徴とする指紋消去性フィルム。
【請求項2】
前記マット化面の表面粗さが、十点平均粗さRzで0.2〜2.0μmであることを特徴とする請求項1記載の指紋消去性フィルム。
【請求項3】
フィルム全体のヘーズが1.5〜35.0%であることを特徴とする請求項1又は2記載の指紋消去性フィルム。
【請求項4】
基材上に樹脂層を有し、前記マット化面を前記樹脂層表面に有することを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載の指紋消去性フィルム。
【請求項5】
前記樹脂層は、電離放射線硬化型樹脂を含む塗料から形成されてなるものであることを特徴とする請求項4記載の指紋消去性フィルム。
【請求項6】
前記樹脂層は、平均粒子径の異なる2種類のマット化剤を含むことを特徴とする請求項4又は5に記載の指紋消去性フィルム。
【請求項7】
前記樹脂層は、マット化剤としてシリカ粒子を含むことを特徴とする請求項4ないし6記載の指紋消去性フィルム。

【国際公開番号】WO2004/046230
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【発行日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553209(P2004−553209)
【国際出願番号】PCT/JP2003/014780
【国際出願日】平成15年11月20日(2003.11.20)
【出願人】(000125978)株式会社きもと (167)
【Fターム(参考)】