説明

指静脈撮影装置及び個人認証装置

【課題】指が正しい位置に配置された状態で指静脈の映像を撮影する。
【解決手段】指静脈撮影装置は、指の腹の先端を載せる先端載置面TFと静電容量の変化から指の接近を検知する第1の指センサ21とを備える先端載置部11と、指の腹の付け根を載せる付け根載置面TFを備える付け根載置部12と、先端載置面TF及び付け根載置面TFの間に凹部を形成する撮影面BFと、先端載置面TF及び付け根載置面TFに指の腹の先端及び付け根がそれぞれ接触した状態の指に向けて、指の静脈に対する光の吸収率が指の他の部位よりも高い光線を射出する光源部14aと、撮影面BFを通じて指の静脈の映像を撮影する撮影部と、少なくとも第1の指センサ21が指の接近を検知した時に撮影部に対して撮影を指示する撮影制御部と、先端載置面TFと撮影面BFとを繋ぐ凹部の側面SFに沿って配置された絶縁部材15とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指の静脈の映像を撮影する装置及び撮影した静脈の映像データを利用して個人を認証する個人認証装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、暗証番号と共にバーコードや非接触ICカード等を用いて認証を行うことができる貴重品ロッカー(特許文献1)が普及してきている。最近では、指紋や指静脈などの生体情報を利用して個人を認証することにより利便性とセキュリティ性を同時に向上させたものも提案されている。その中でも、指静脈認証技術は、金融機関のATMなどを通じて一般ユーザに認知され始めており、貴重品ロッカーの認証手段としても注目されている。
【0003】
指静脈認証技術に関して、指に対して様々なガイド部を設けて指の位置を規制することにより静脈データの読取り再現性を高めて認証精度を向上させる考案(特許文献2参照)や、指及び掌の静脈データを読み取る機能を備える個人認証装置の考案(特許文献3参照)が知られている。
【特許文献1】特開2002−129795号公報
【特許文献2】特開2006−331441号公報
【特許文献3】特開2006−331239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
指静脈認証装置は、アクリルの撮影面の上方に浮かせて配置された指の静脈を撮影する為のユーザインターフェースを備えるのが一般的である。しかし、指静脈認証装置のユーザインターフェースは指紋認証装置と近似している部分があり、指静脈認証装置に不慣れなユーザはこれを指紋認証装置と誤認してしまうおそれがある。特に、不特定多数のユーザが利用する貴重品ロッカーの認証手段として指静脈認証装置を用いた場合、このような誤認が発生する率が高くなることが予想される。
【0005】
指静脈認証装置を指紋認証装置と誤認した場合、ユーザは、指の腹の先端部をアクリルの撮影面に接触させた状態で指静脈の撮影を開始させてしまうことになる。このようにして撮影された指静脈の映像データでは正しい生体認証を行うことができず、認証精度が低下してしまう。
【0006】
そこで、指の腹の先端と付け根を載せる各ガイド部に指の接近を検知するセンサをそれぞれ内蔵させて、各ガイド部に指が載せられていることを検知してから撮影を行う制御アルゴリズムを備えたものがある。しかし、指の腹の先端をアクリルの撮影面に接触させた状態であっても指の先端がガイド部に近づけば、センサが指の先端が接近したことを検知して撮影が開始されてしまう。このように前記の制御アルゴリズムを十分に機能させることができていないのが現状である。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、指が正しい位置に配置された状態で指静脈の映像を撮影することができる指静脈撮影装置及びこの指静脈撮影装置により撮影された指静脈の映像データを用いて個人認証を行う個人認証装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の特徴は、指の腹の先端を載せる先端載置面と静電容量の変化から指の接近を検知する第1の指センサとを備える先端載置部と、指の腹の付け根を載せる付け根載置面を備える付け根載置部と、先端載置面及び付け根載置面の間に凹部を形成する撮影面と、先端載置面及び付け根載置面に指の腹の先端及び付け根がそれぞれ接触した状態の指に向けて、指の静脈に対する光の吸収率が指の他の部位よりも高い光線を射出する光源部と、撮影面を通じて指の静脈の映像を撮影する撮影部と、少なくとも第1の指センサが指の接近を検知した時に撮影部に対して撮影を指示する撮影制御部と、先端載置面と撮影面とを繋ぐ凹部の側面に沿って配置された絶縁部材とを有する指静脈撮影装置であることを要旨とする。
【0009】
本発明の第1の特徴によれば、先端載置面と撮影面とを繋ぐ凹部の側面に沿って絶縁部材を配置することにより、ユーザは先端載置面と撮影面とを繋ぐ凹部の側面に指の先端を接近させることが出来なくなる。よって、指の腹の先端が撮影面に接触した状態で第1の指センサが指の接近を検知することが抑制されるので、指の腹の先端が撮影面に接触した状態で撮影部が指の静脈の映像を撮影することも抑制される。
【0010】
本発明の第2の特徴は、指の腹の先端部を載せる先端載置面と静電容量の変化から指の接近を検知する第1の指センサとを備える先端載置部と、指の腹の付け根を載せる付け根載置面を備える付け根載置部と、先端載置面及び付け根載置面の間に凹部を形成する撮影面と、先端載置面及び付け根載置面に指の腹の先端及び付け根がそれぞれ接触した状態の指に向けて、指の静脈に対する光の吸収率が指の他の部位よりも高い光線を射出する光源部と、撮影面を通じて指の静脈の映像を撮影する撮影部と、少なくとも第1の指センサが指の接近を検知した時に撮影部に対して撮影を指示する撮影制御部と、先端接触面と撮影面とを繋ぐ凹部の側面に沿って配置された絶縁部材と、撮影部が撮影した指の静脈の映像データを登録する静脈映像データ登録部と、撮影部が撮影した指の静脈の映像データと静脈映像データ登録部に登録されている映像データとを照合するデータ照合部とを有する個人認証装置であることを要旨とする。
【0011】
本発明の第2の特徴によれば、先端載置面と撮影面とを繋ぐ凹部の側面に沿って絶縁部材を配置することにより、ユーザは先端載置面と撮影面とを繋ぐ凹部の側面に指の先端を接近させることが出来なくなる。よって、指の腹の先端が撮影面に接触した状態で第1の指センサが指の接近を検知することが抑制されるので、指の腹の先端が撮影面に接触した状態で撮影部が指の静脈の映像を撮影することも抑制される。したがって、正しい位置に配置された指の静脈の映像データを登録することができ、また、正しい位置に配置された指の静脈の映像データを登録されている映像データと照合することもできるので、認証精度が向上する。
【0012】
第1及び第2の特徴において、絶縁部材の露出部分を光源部が射出する光線の乱反射を起さない材質で形成してもよい。これにより、絶縁部材による光の乱反射が抑制され、撮影部は鮮明な指静脈の映像を撮影することができる。
【0013】
或いは、絶縁部材の露出面に対して、光源部が射出する光の乱反射を起さない表面処理が施されていてもよい。これにより、絶縁部材による光の乱反射が抑制され、撮影部は鮮明な指静脈の映像を撮影することができる。
【0014】
第1及び第2の特徴において、付け根載置部は、静電容量の変化から指の接近を検知する第2の指センサを更に備え、撮影制御部は、第1の指センサが指の接近を検知し、且つ第2の指センサが指の接近を検知した時に、撮影部に対して撮影を指示してもよい。これにより、第1及び第2の指センサが指の接近を検知した時に指の静脈の映像を撮影するので、撮影部は、指が正しい位置に配置された状態で指静脈の映像を撮影することができる。
【0015】
第2の特徴において、静脈映像データ登録部は、撮影部が撮影した指の静脈の映像データと第1及び第2の指センサが指の接近を検知した順序とを連結させて登録し、データ照合部は、撮影部が撮影した指の静脈の映像データ及び指の接近を検知した順序と、静脈映像データ登録部に登録されている映像データ及び順序とを照合してもよい。
【0016】
指の置き方の順序として、指の先端を載置した後に指の付け根を載置する指の置き方と、指の付け根を載置した後に指の先端を載置する指の置き方とがある。指の静脈の映像データと指の置き方、即ち指センサが指の接近を検知した順序とを連結させて登録し、指の静脈の映像データ及び指の置き方の順序を照合することにより、この指の置き方の違いによる指の位置のズレや指の置き方の個人差(癖)を考慮した指静脈認証を実施することができるので、認証精度が向上する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、指が正しい位置に配置された状態で指静脈の映像を撮影することができる指静脈撮影装置及びこの指静脈撮影装置により撮影された指静脈の映像データを用いて個人認証を行う個人認証装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付している。
(第1の実施の形態)
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係わる指静脈撮影装置の全体構成を説明する。第1の実施の形態に係わる指静脈撮影装置は、ユーザの手1の指の内部に在る静脈の映像を撮影する装置であり、例えば、撮影された指の静脈の映像を利用して個人を認証する個人認証装置(生体認証装置)の一部分として利用可能なものである。撮影する手1の指はいずれの指(母指、示指、中指、薬指、小指)であっても構わないが、ここでは中指(以後、単に「指」という)の静脈を撮影する場合を例に取り説明する。
【0019】
具体的に、図1に示すように、指静脈撮影装置は、ユーザの手1全体を支えるベース部2と、指の腹の先端を載せる先端載置部11と、指の腹の付け根を載せる付け根載置部12と、先端載置部11と付け根載置部12を結ぶ線上に配置された透明板13と、指の腹の先端及び付け根がそれぞれ先端載置部11及び付け根載置部12に載せされた状態の指に向けて光線を射出する光源部14aと、先端載置部11と透明板13の間に配置された絶縁部材15とを備える。
【0020】
ユーザは、自らの手1の平をベース部2の表面に載せる。この時、ユーザは、1の指(中指)の腹の先端を先端載置部11の表面(先端載置面)に載せ、1の指(中指)の腹の付け根を付け根載置部12の表面(付け根載置面)に載せる。光源部14aは、先端載置部11と付け根載置部12の間に配置されている。光源部14aから射出される光線は、主に、先端載置部11と付け根載置部12を結ぶ線に対して略垂直な方向に向けて射出される。これにより、図1に示す状態に載せられた手1の指に対して光源部14aから射出された光線が照射される。
【0021】
図1の例では、先端載置部11及び付け根載置部12を結ぶ線に沿って、先端載置部11、透明板13及び付け根載置部12の両脇に2つの側壁が形成され、光源部14aは一方の側壁の内部に配置されている。先端載置部11及び付け根載置部12を結ぶ線に沿って側壁の内側面に細長い窓が形成され、光源部14aから射出された光線はこの窓を通じて図1に示す状態に載せられた手1の指に照射される。なお、図1には示さないが、同様にして、他方の側壁の内部にも光源部が配置され、その内側面に細長い窓が形成され、光源部から射出された光線はこの窓を通じて図1に示す状態に載せられた手1の指に照射される。なお、2つの側壁の各々は、示指と中指の間及び中指と薬指の間に挿入されることにより、撮影対象となる中指の左右方向(先端載置部11及び付け根載置部12を結ぶ線に垂直な方向)の位置ずれを規制する機能を果たす。
【0022】
図1には示さないが、指静脈撮影装置は、透明板13を通じて指の静脈の映像を撮影する撮影部と、撮影部の動作を制御する撮影制御部とを更に備える。撮影部については図3を参照して後述し、撮影制御部については図4、図7及び図8を参照して後述する。また、ベース部2の表面は平面であるが、ユーザの手1の平に馴染みやすい形状であっても構わない。
【0023】
図3を参照して、図1のベース部2内部に配置された撮影部17や撮影制御部18等の構成を説明する。図3は、図1のB−B切断面に沿った断面図である。薬指1bと中指1aの間及び中指1aと示指1cの間の各々に側壁が配置され、各側壁の内部に、光源部14a、14bが配置されている。光源部14a、14b各々は、1つの回路基板上に複数のLEDを図1の窓の長手方向に沿って配列したものである。複数のLEDから射出された光線は、側壁の内側面に形成された窓から中指1aに照射される。
【0024】
ベース部2内部には、CCD(電荷結合素子)イメージセンサやCMOSイメージセンサなどの固体撮像素子を備える撮影部17と、透明板13を透過する光を撮影部17に向けて反射するミラー19と、撮影部17の撮影動作を制御する撮影制御部18とが配置されている。撮影部17は、透明板13を透過し、ミラー19により反射される光により構成される映像を撮影する。撮影部17が撮影する映像の一部として、指1aの静脈の映像が撮影される。
【0025】
図2を参照して、図1のベース部2を除く他の部材の詳細な構成を説明する。図2は、図1のA−A切断面に沿った断面図である。先端載置部11は、指の腹の先端を載せる先端載置面TFと、静電容量の変化から指の接近を検知する第1の指センサ21と、指の先端が載せされる箇所に配置された誘導ランプ23とを備える。先端載置面TFは指の腹の先端が接触する面であり、指の腹の先端に馴染むような凹曲面の形状を有する。第1の指センサ21は、先端載置部11の内部に配置され、先端載置部11に指が接近することを検知する。誘導ランプ23は、点灯・点滅などすることにより指の先端を配置すべき位置をユーザに対して教示する機能を果たす。また、誘導ランプ23は先端載置面TFに対して凸部を形成しており、指の先端をこの凸部に接する位置まで誘導することにより、中指の前後方向(先端載置部11及び付け根載置部12を結ぶ線に平行な方向)の位置ずれを規制することができる。
【0026】
付け根載置部12は、指の腹の付け根を載せる付け根載置面TFと、静電容量の変化から指の接近を検知する第2の指センサ22とを備える。付け根載置面TFは指の腹の付け根が接触する面であり、指の腹の付け根に馴染むような凹曲面の形状を有する。第2の指センサ22は、付け根載置部12の内部に配置され、付け根載置部12に指が接近することを検知する。
【0027】
図3の撮影制御部18は、第1の指センサ21が指の接近を検知し、且つ第2の指センサ22が指の接近を検知した時に、撮影部17に対して指の静脈を撮影することを指示する。なお、これに限らず、撮影制御部18は、第1の指センサ21が指の接近を検知した時に、第2の指センサ22の結果に関わらず、撮影部17に対して指の静脈を撮影することを指示しても構わない。
【0028】
透明板13は、先端載置面TF及び付け根載置面TFの間に凹部を形成する撮影面BFを備える。撮影面BFが凹部を形成することにより、先端載置面TF及び付け根載置面TFに指の腹の先端及び付け根をそれぞれ載せた時に、指を透明板13の撮影面BFの上方に浮かせて安定に保持することができる。透明板13の例として、アクリル板或いはガラス板などが挙げられる。
【0029】
光源部14aは、透明板13の撮影面BFの上方に浮かせて配置された指に光線を照射する。撮影部17は、光線が照射される範囲において指の静脈の映像を撮影する。光線が照射される指の範囲には、母指を除く第2指〜第5指(示指、中指、環指、小指)の場合、指先から数えて一番目の関節(遠位指節間関節:DIP関節;distal interphalangeal joint)から二番目の関節(近位指節間関節:PIP関節; proximal interphalangeal joint)までの間が少なくとも含まれている。勿論、更に、遠位指節間関節から指先までの範囲や近位指節間関節から指の付け根(中手指節間関節:MP関節;metacarpophalangeal joint)までの範囲に光線が照射されても構わない。また、撮影部17が撮影する指静脈の映像範囲についても同様である。
【0030】
光源部14aが射出する光線の波長帯は、指の静脈に対する光の吸収率が指の他の部位よりも高いものが望ましい。静脈が他の部位よりも多くの光線を吸収することにより、撮影部は、指の静脈の映像をより鮮明に撮影することができる。なお、これに限らず、光源部14aが射出する光線の波長帯は、指の静脈に対する光の吸収率が指の他の部位よりも低いものであっても構わない。即ち、指の静脈に対する光の吸収率が指の他の部位と異なる波長帯の光を照射すればよい。
【0031】
絶縁部材15は、先端載置面TFと撮影面BFとを繋ぐ上記凹部の側面に沿って配置されている。絶縁部材15の表面は、指の腹の先端が接触する面であり、先端載置面TFと同様に、指の腹の先端に馴染むような凹曲面の形状を有する。更に、絶縁部材15の表面は先端載置面TFと連続する形状を有することが好ましい。
【0032】
絶縁部材15の材質は、光源部が射出する光線の乱反射を起さない材質から成ることが望ましい。絶縁部材15全体の材質のうち少なくとも露出部分は、光源部14a、14bが射出する光線の乱反射を起さない材質から成ることが望ましい。絶縁部材による光の乱反射を抑制することにより、撮影部17は鮮明な指静脈の映像を撮影することができる。或いは、絶縁部材の露出面に対して、光源部14a、14bが射出する光の乱反射を起さない表面処理が施されていても構わない。
【0033】
凹部の側面に垂直な方向の絶縁部材15の厚みは、第1の指センサ21が検知することができる指の接近の程度によって予め設定される。
【0034】
具体的に、第1の指センサ21は、導体である指の接近による静電容量の変化を計測し、静電容量の変化量から先端載置部11に指が接近したことを検知する。よって、図4(a)に示すように、指1aの腹の先端を先端載置面TFの上に載せることにより、第1の指センサ21は、先端載置部11に指が接近したことを検知する。
【0035】
しかし、指の接近は、先端載置面TFのみならず、先端載置面TFと撮影面BFとを繋ぐ上記凹部の側面からも可能である。よって、図4(b)に示すように、指の先端が上記凹部の側面SFに接触するか或いは近づくことにより、第1の指センサ21は、先端載置部11に指が接近したことを検知してしまう。
【0036】
図1及び図2に示したように、透明板13の撮影面BFの上方に浮かせて配置された指の静脈を撮影する指静脈認証装置のユーザインターフェースは指紋認証装置のそれと近似している部分があり、指静脈認証装置に対して不慣れなユーザはこれを指紋認証装置と誤認してしまうおそれがある。指静脈認証装置を指紋認証装置と誤認した場合、図4(b)に示すように、ユーザは、指の腹の先端部を透明板13の撮影面BFに接触させてしまう場合がある。
【0037】
指の腹の先端部を透明板13の撮影面BFに接触させても、指の先端が上記凹部の側面SFに接触するか或いは近づいていれば、第1の指センサ21は指の接近を検知してしまう。よって、第2の指センサ22も指の接近を検知していることを条件として、図3の撮影制御部18は、撮影部17に対して指の静脈を撮影することを指示してしまい、指静脈の撮影が開始されてしまうことになる。指の腹の先端部を透明板13の撮影面BFに接触させた状態で撮影された指静脈の映像データでは正しい生体認証を行うことができず、認証精度が低下してしまう。
【0038】
そこで、図4(c)に示すように、先端載置面TFと撮影面BFとを繋ぐ凹部の側面SFに沿って絶縁部材15を配置することにより、ユーザは凹部の側面SFに指1aの先端を接近させることが出来なくなる。よって、指の腹の先端が撮影面BFに接触した状態で第1の指センサ21が指1aの接近を検知することが抑制されるので、指1aの腹の先端が撮影面BFに接触した状態で撮影部17が指1aの静脈の映像を撮影することも抑制される。
【0039】
したがって、絶縁部材15は、凹部の側面SFから側面SFに垂直な方向に広がる第1の指センサ21の感度領域に少なくとも配置されていればよく、凹部の側面SFに垂直な方向の絶縁部材15の厚みは、凹部の側面SFに接近する指1aを検知しない程度の厚みであればよい。
【0040】
図7を参照して、第1の指センサ21及び第2の指センサ22の検知原理を説明する。ここでは、第1の指センサ21及び第2の指センサ22を単に「指センサ」という。図7(a)に示すように、指センサの回路構成においては、直列接続された抵抗R及びスイッチの間に所定の電源電圧が印加され、スイッチに対して並列にコンデンサCa及びセンサ部が接続されている。図7(a)はセンサ部に指が接触していない時を示し、図7(b)はセンサ部に指が接触している時の回路構成を示す。センサ部に指が接触することにより、新たに、センサ部及び指により形成されるコンデンサCxがスイッチに対して並列に接続されることになる。図7(c)のグラフは、スイッチをオフしてからスイッチの両端に印加される電圧Vcの時間変化を示す。(a)は指が接触していない時を示し、(b)は指が接触している時を示す。スイッチをオフしてから電圧Vcが所定のしきい電圧Vthまで到達するまでに要する時間が、指が接触していない時(Tca)と指が接触している時(Tcx)とで異なることを利用して、指センサは指の接近を検知する。
【0041】
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態によれば、以下の作用効果が得られる。
【0042】
先端載置面TFと撮影面BFとを繋ぐ凹部の側面SFに沿って絶縁部材15を配置することにより、ユーザは先端載置面TFと撮影面BFとを繋ぐ凹部の側面SFに指の先端を接近させることが出来なくなる。よって、指の腹の先端が撮影面BFに接触した状態で第1の指センサ21が指の接近を検知することが抑制されるので、指の腹の先端が撮影面BFに接触した状態で撮影部17が指の静脈の映像を撮影することも抑制される。
【0043】
絶縁部材15の露出部分を光源部14a、14bが射出する光線の乱反射を起さない材質で形成することにより、絶縁部材15による光の乱反射を抑制することができ、撮影部17は鮮明な指静脈の映像を撮影することができる。同様に、絶縁部材15の露出面に対して光源部14a、14bが射出する光の乱反射を起さない表面処理を施すことにより、絶縁部材15による光の乱反射を抑制することができ、撮影部17は鮮明な指静脈の映像を撮影することができる。
【0044】
撮影制御部18は、第1の指センサ21が指の接近を検知し、且つ第2の指センサ22が指の接近を検知した時に、撮影部17に対して撮影を指示することにより、第1及び第2の指センサ21、22が指の接近を検知した時に指の静脈の映像を撮影するので、撮影部17は、指が正しい位置に配置された状態で指静脈の映像を撮影することができる。
(第2の実施の形態)
図5を参照して、本発明の第2の実施の形態に係わる個人認証装置の全体構成を説明する。第2の実施の形態に係わる個人認証装置は、図1の指静脈撮影装置42を用いて撮影された指の静脈の映像を利用して個人を認証する生体認証装置の一例である。
【0045】
具体的に、個人認証装置は、図1の指静脈撮影装置42と、指の静脈の映像データを登録して、撮影された指の静脈の映像データと登録データとを照合する静脈データ照合装置43と、指静脈撮影装置42と静脈データ照合装置43の間を接続して相互にデータの送受信を行う為のデータケーブル32とを備える。指静脈撮影装置42は、図1〜図3に示した同様の構成を有するため、構成の詳細な説明及び詳細な断面図の図示を省略する。
【0046】
図6を参照して、図5の個人認証装置の機能的な構成を説明する。個人認証装置41は、指静脈撮影装置42と、静脈データ照合装置43とを備える。静脈データ照合装置43は、指静脈撮影装置42が撮影した指静脈の映像データを登録する静脈映像データ登録部51と、静脈映像データ登録部51に登録されている映像データと撮影された指の静脈の映像データとを照合するデータ照合部52と、静脈映像データ登録部51が登録する映像データを記憶するメモリ53とを備える。
【0047】
例えば、静脈映像データ登録部51は、メモリ53内にユーザの指静脈の映像データが登録されているか否かを判断する。登録されていない場合、静脈映像データ登録部51は、指静脈撮影装置42を制御して、ユーザの指静脈の映像データを撮影し、撮影された映像データをメモリ53に登録する。一方、登録されている場合、データ照合部52は、指静脈撮影装置42を制御して、ユーザの指静脈の映像データを撮影し、撮影された映像データとメモリ53に登録されている映像データとを対比して、両者が一致するか否かを判定する。これにより、個人認証装置は、指静脈(生体情報)を利用して個人を認証することができる。
【0048】
静脈データ照合装置43は、例えば、データの演算処理を行うCPUなどのマイクロプロセッサ、データを記憶するRAMやROMなどの記憶装置及びデータケーブル32を介して外部とのデータの入出力を制御する入出力制御部を備えている通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。静脈データ照合装置43を構成する機能ブロックのうち、静脈映像データ登録部51及びデータ照合部52はコンピュータシステム内のマイクロプロセッサが果たす機能を特定するコンピュータプログラムとして実施することができる。また、このコンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に保存することができる。この記録媒体をコンピュータシステムによって読み込ませ、前記コンピュータプログラムを実行してコンピュータを制御しながら上述した静脈データ照合装置43を実現することができる。ここで、前記記録媒体としては、メモリ装置、磁気ディスク装置、光ディスク装置、その他のプログラムを記録することができるような装置が含まれる。
【0049】
図8のフローチャートを参照して、図5及び図6に示した個人認証装置が指の接近を検知して指静脈の撮影を開始するまでの動作手順の一例を説明する。
【0050】
(イ)先ずステップS01において、撮影制御部18は、指の腹の先端及び付け根各々が先端載置部11及び付け根載置部12に載せられていない状態において、第1の指センサ21及び第2の指センサ22の浮遊容量などを初期化する。
【0051】
(ロ)ステップS03に進み、撮影制御部18は撮影部17を起動する。これにより、撮影部17は撮影を開始する。
【0052】
(ハ)ステップS05に進み、撮影部17が撮影する映像に変化が発生することを待機する。具体的に、撮影面BF上に指が表れたことにより撮影部17が指の映像を撮影した場合に映像の変化を検知する。
【0053】
(ニ)映像の変化を検知したとき(ステップS03でYES)、ステップS05に進み、撮影制御部18は、第1の指センサ21及び第2の指センサ22の電圧Vcの積分処理を開始することにより、第1の指センサ21及び第2の指センサ22の電圧Vcの時間変化を計測する。
【0054】
(ホ)ステップS09に進み、第1の指センサ21の電圧Vcの時間変化を計測した結果、第1の指センサ21が指の接近を検知したとき(ステップS09でYES)、ステップS11へ進み、第2の指センサ22が指の接近を検知したか否かを判断する。そして、第2の指センサ22が指の接近を検知したとき(ステップS11でYES)、ステップS15へ進み、図6の静脈映像データ登録部51は、指の置き方の順序が「指の先端→指の付け根」であることをメモリ53内に登録する。その後、図8のフローは終了して、指静脈の映像の撮影が開始される。
【0055】
(へ)第2の指センサ22が指の接近を検知しないとき(ステップS11でNO)、ステップS13へ進み、所定の時間が経過するまで(ステップS13でYES)、ステップS11及び13を繰り返し実施して、第2の指センサ22が指の接近を検知することを待機する。所定の時間が経過した場合(ステップS13でYES)ステップS09に戻る。
【0056】
(ト)一方、ステップS09において第1の指センサ21が指の接近を検知しなかったとき(ステップS09でNO)、ステップS17に進み、第2の指センサ22が指の接近を検知したか否かを判断する。そして、第2の指センサ22が指の接近を検知したとき(ステップS17でYES)、ステップS19へ進む。第2の指センサ22が指の接近を検知しないとき(ステップS17でNO)、ステップS09に戻る。
【0057】
(チ)ステップS19において第1の指センサ21が指の接近を検知したか否かを判断する。そして、第1の指センサ21が指の接近を検知したとき(ステップS19でYES)、ステップS23へ進み、図6の静脈映像データ登録部51は、指の置き方の順序が「指の付け根→指の先端」であることをメモリ53内に登録する。その後、図8のフローは終了して、指静脈の映像の撮影が開始される。
【0058】
(リ)一方、ステップS19において第1の指センサ21が指の接近を検知しないとき(ステップS19でNO)、ステップS21へ進み、所定の時間が経過するまで(ステップS21でYES)、ステップS19及び21を繰り返し実施して、第1の指センサ21が指の接近を検知することを待機する。所定の時間が経過した場合(ステップS21でYES)ステップS09に戻る。
【0059】
なお、静脈映像データ登録部51は、指の置き方のデータ、即ち各指センサが指の接近を検知した順序のデータを、指の静脈の映像データと連結させてメモリ53に登録する。そして、データ照合部52は、指の静脈の映像データ及び指の置き方の順序を連結させてデータの照合を行う。
【0060】
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態に加えて更に以下の作用効果が得られる。
【0061】
先端載置面TFと撮影面BFとを繋ぐ凹部の側面SFに沿って絶縁部材15を配置することにより、ユーザは先端載置面TFと撮影面BFとを繋ぐ凹部の側面SFに指の先端を接近させることが出来なくなる。よって、指の腹の先端が撮影面BFに接触した状態で第1の指センサ21が指の接近を検知することが抑制されるので、指の腹の先端が撮影面BFに接触した状態で撮影部17が指の静脈の映像を撮影することも抑制される。したがって、静脈映像データ登録部51は、正しい位置に配置された指の静脈の映像データを登録することができ、また、データ照合部52は、正しい位置に配置された指の静脈の映像データを登録されている映像データと照合することもできるので、認証精度が向上する。
【0062】
指の置き方の順序として、指の先端を載置した後に指の付け根を載置する指の置き方と、指の付け根を載置した後に指の先端を載置する指の置き方とがある。静脈映像データ登録部51が、指の静脈の映像データと指の置き方、即ち指センサが指の接近を検知した順序とを連結させて登録し、データ照合部52が、指の静脈の映像データ及び指の置き方の順序を連結して照合することにより、この指の置き方の違いによる指の位置のズレや指の置き方の個人差(癖)を考慮した指静脈認証を実施することができるので、認証精度が向上する。
【0063】
上記のように、本発明は、第1及び第2の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。即ち、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる指静脈撮影装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】ベース部2を除く他の部材の詳細な構成を示す、図1のA−A切断面に沿った断面図である。
【図3】図1のB−B切断面に沿った断面図である。
【図4】図4(a)は指の腹の先端を先端載置面TFの上に載せた「正しい指の位置」の例を示す断面図であり、図4(b)は指の腹の先端を透明板13の撮影面BFの上に載せた「間違った指の位置」の例を示す断面図であり、図4(c)は先端載置面TFと撮影面BFとを繋ぐ凹部の側面SFに沿って絶縁部材15を配置した場合の「間違った指の位置」の例を示す断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係わる個人認証装置の全体構成を示す斜視図である。
【図6】図5に示した個人認証装置、特に静脈データ照合装置43の機能的構成を示すブロック図である。
【図7】第1の指センサ21及び第2の指センサ22の検知原理を説明する為の図であり、図7(a)は指が接触していない時の回路構成を示し、図7(b)は指が接触した時の回路構成を示し、図7(c)は指が接触していない時及び接触している時の電圧Vcの時間変化を示すグラフである。
【図8】図5及び図6に示した個人認証装置の動作手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0065】
1…手
1a…中指(指)
1b…薬指
1c…示指
2…ベース部
11…先端載置部
12…付け根載置部
13…透明板
14a、14b…光源部
15…絶縁部材
17…撮影部
18…撮影制御部
19…ミラー
21…第1の指センサ
22…第2の指センサ
23…誘導ランプ
32…データケーブル
41…個人認証装置
42…指静脈撮影装置
43…静脈データ照合装置
51…静脈映像データ登録部
52…データ照合部
53…メモリ
BF…撮影面
SF…側面
TF…付け根載置面
TF…先端載置面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指の腹の先端を載せる先端載置面と静電容量の変化から前記指の接近を検知する第1の指センサとを備える先端載置部と、
前記指の腹の付け根を載せる付け根載置面を備える付け根載置部と、
前記先端載置面及び前記付け根載置面の間に凹部を形成する撮影面と、
前記先端載置面及び前記付け根載置面に指の腹の先端及び付け根がそれぞれ接触した状態の前記指に向けて、前記指の静脈に対する光の吸収率が前記指の他の部位よりも高い光線を射出する光源部と、
前記撮影面を通じて前記指の静脈の映像を撮影する撮影部と、
少なくとも前記第1の指センサが指の接近を検知した時に前記撮影部に対して前記撮影を指示する撮影制御部と、
前記先端載置面と前記撮影面とを繋ぐ前記凹部の側面に沿って配置された絶縁部材と
を有することを特徴とする指静脈撮影装置。
【請求項2】
前記絶縁部材の露出部分は前記光源部が射出する光線の乱反射を起さない材質から成ることを特徴とする請求項1に記載の指静脈撮影装置。
【請求項3】
前記絶縁部材の露出面は、前記光源部が射出する光の乱反射を起さない表面処理が施されていることを特徴とする請求項1に記載の指静脈撮影装置。
【請求項4】
前記付け根載置部は静電容量の変化から前記指の接近を検知する第2の指センサを更に備え、
前記撮影制御部は、前記第1の指センサが指の接近を検知し、且つ前記第2の指センサが指の接近を検知した時に、前記撮影部に対して前記撮影を指示する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の指静脈撮影装置。
【請求項5】
指の腹の先端部を載せる先端載置面と静電容量の変化から前記指の接近を検知する第1の指センサとを備える先端載置部と、
前記指の腹の付け根を載せる付け根載置面を備える付け根載置部と、
前記先端載置面及び前記付け根載置面の間に凹部を形成する撮影面と、
前記先端載置面及び前記付け根載置面に指の腹の先端及び付け根がそれぞれ接触した状態の前記指に向けて、前記指の静脈に対する光の吸収率が前記指の他の部位よりも高い光線を射出する光源部と、
前記撮影面を通じて前記指の静脈の映像を撮影する撮影部と、
少なくとも前記第1の指センサが指の接近を検知した時に前記撮影部に対して前記撮影を指示する撮影制御部と、
前記先端接触面と前記撮影面とを繋ぐ前記凹部の側面に沿って配置された絶縁部材と、
前記撮影部が撮影した指の静脈の映像データを登録する静脈映像データ登録部と、
前記撮影部が撮影した指の静脈の映像データと前記静脈映像データ登録部に登録されている映像データとを照合するデータ照合部と
を有することを特徴とする個人認証装置。
【請求項6】
前記絶縁部材の露出部分は前記光源部が射出する光線の乱反射を起さない材質から成ることを特徴とする請求項5に記載の個人認証装置。
【請求項7】
前記絶縁部材の露出面は、前記光源部が射出する光の乱反射を起さない表面処理が施されていることを特徴とする請求項5に記載の個人認証装置。
【請求項8】
前記付け根載置部は静電容量の変化から前記指の接近を検知する第2の指センサを更に備え、
前記撮影制御部は、前記第1の指センサが指の接近を検知し、且つ前記第2の指センサが指の接近を検知した時に、前記撮影部に対して前記撮影を指示する
ことを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載の個人認証装置。
【請求項9】
前記静脈映像データ登録部は、前記撮影部が撮影した指の静脈の映像データと前記第1及び第2の指センサが前記指の接近を検知した順序とを連結させて登録し、
前記データ照合部は、前記撮影部が撮影した指の静脈の映像データ及び前記指の接近を検知した順序と、前記静脈映像データ登録部に登録されている映像データ及び順序とを照合する
ことを特徴とする請求項8に記載の個人認証装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−148485(P2009−148485A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330645(P2007−330645)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000170598)株式会社アルファ (433)
【出願人】(506226658)株式会社アルファロッカーシステム (39)
【Fターム(参考)】