説明

振動タンブリング装置

【課題】狭く、幅の狭い溝、空洞部、ハウジングおよび穴を含む面であっても、そのような内面を処理可能な振動タンブリング装置の提供。
【解決手段】研磨剤混合物によって、製造済製品(18)の内面を処理するために特に使用される振動タンブリング装置(10)において、振動タンブリング装置(10)は、製造済製品(18)の表面処理を実行するために、研磨剤混合物の様々な要素と、製造済製品(18)との相対運動を発生させるための振動手段を具備し、製造済製品(18)を直接振動させ、それにより、製造済製品(18)の表面処理を実行するために、振動手段は、製造済製品(18)と連係される。振動タンブリング装置(10)は、製造済製品(18)に関して研磨剤混合物の強制流れを得るための、特に、製造済製品(18)の少なくとも1つの空洞部の内側で強制流れを得るための圧力手段を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動タンブリング装置に関し、特に、少なくとも1つの空洞部又は内面を有する製造済製品の処理に適用可能な振動タンブリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
振動タンブリングプロセスは、特に電気侵食技法によって得られる、少なくとも1つの面を有する物品の場合に表面層を除去する方法のうち、経済性に優れた代表的な方法である。
【0003】
実質的に硬質で、もろい表面層、又はある種の用途には受け入れられない微細構造特性及び形態特性を有するような表面層は、実際に、電気侵食によって得られる。
【0004】
この種の製造済製品の一例は、特に、ロータなどの少なくとも1つの空洞部を有する物品である。
【0005】
処理されるべき製造済製品が、研磨剤混合物の中に浸漬されるため、振動タンブリングによる外面の処理は、単純且つ経済的である。
【0006】
製造済製品は、容器の中に保持され、容器自体は、振動手段によって振動される。
【0007】
通常、研磨剤混合物は、英語では「media(媒質)」として知られる、通常は特に硬質ではない材料から成る様々な要素と、研磨剤粒子と、水と、添加剤とを含む。
【0008】
様々な材料要素、すなわち、媒質の機能は、処理されるべき製造済製品に研磨剤粒子が衝突するように、研磨剤粒子に運動エネルギーを伝達することである。
【0009】
各媒体要素は、研磨剤混合物中に存在する研磨剤粒子により包囲され、振動手段から、容器を介して、振動を受け取る。
【0010】
このようにして、研磨剤混合物の様々な要素は、処理されるべき製造済製品の外面に衝突し、研磨剤粒子をその表面にこすり付ける。
【0011】
研磨剤粒子は、表面とこすれ合うことにより、製造済製品の外面から材料を除去し、その結果、表面層が研磨され、そこから材料が除去される。
【0012】
従って、現在、市場に出ている研磨剤混合物使用の振動タンブリング装置又は振動仕上げ装置の場合、装置に振動運動が与えられ、その後、振動運動は、処理されるべき、すなわち、表面を滑らかに仕上げられるべき製造済製品に伝達される。
【0013】
換言すれば、製造済製品は、研磨剤混合物の中に完全に浸漬されており、研磨剤混合物を介して、処理されるべき製造済製品に振動が伝達されるということになる。研磨剤混合物は、振動を受ける容器の中に保持される。
【0014】
振動は、容器から研磨剤混合物に伝達され、その結果、製造済製品に伝達される。
【0015】
処理されるべき製品の表面に関する研磨剤混合物の相対運動は、振動手段によって研磨剤混合物に対して誘起される振動によってのみ発生される。
【0016】
従って、現在の装置の欠点の1つは、溝、開口部、内部空洞及び狭いフィン部分に研磨剤混合物が滞留し、いわゆる「プラグ」効果を発生させるために、そのような部分において、上記の相対運動が減少するか、又は全く起こらなくなることである。
【0017】
現在の装置では、研磨剤混合物と、多くの場合に、処理の手が届きにくい場所にある処理されるべき製品の内面との間に、効率よく相対運動を発生させることが不可能であるため、そのような内面を効率よく処理できない。
【0018】
その結果、研磨剤混合物の研磨作用によって、内面を処理することが不可能になるので、多くの場合、異なる技術により、製品を得ることが必要になる。通常、そのような技術を使用することにより、作業コストは高くなり、しかも、仕上がり後の品質は低い。
【0019】
振動侵食装置の使用が可能である場合であっても、特に、例えば、ある種のロータのように、溝や、幅の狭い部分を含む細い空洞部を有する面などの内面を処理するには効果的ではない。
【0020】
この場合、研磨手段は、振動エネルギーを伴わずに内面に到達する。更に不都合な状況においては、研磨手段は、溝又は空洞部の中に残留してしまう。
【0021】
いずれにせよ、最小断面幅が5mm〜10mmの範囲にある、かなり細く狭い部分を通して研磨剤が供給されるような内面においては、研磨剤混合物による効率のよい研磨作用を得ることは不可能である。
【0022】
もう1つの欠点は、それより広い部分に関して、主に処理されるべき製品の外側部分に近接する面の研磨が均一でないということである。
【0023】
これは、方向及び速度の変化によって、製品に対する研磨剤混合物の要素の衝突の頻度及び強さが増加するためである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的は、狭く、幅の狭い溝、空洞部、ハウジング及び穴を含む面であっても、そのような内面を処理可能な振動タンブリング装置を提供することである。
【0025】
本発明の別の目的は、処理されるべき少なくとも1つの空洞部又はくぼみを有する製造済製品の少なくとも1つの内面から、一様に材料を除去可能な振動タンブリング装置を製造することである。
【0026】
本発明の別の目的は、内面及び外面の双方を効率よく、一様に処理可能な振動タンブリング装置を提供することである。
【0027】
本発明の更に別の目的は、単純で、経済性に優れた振動タンブリング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明によれば、これらの目的は、特許請求の範囲第1項に指定されるような振動タンブリング装置を製造することにより達成される。
【0029】
本発明のその他の特徴は、特許請求の範囲第2項から第12項に示される。
【0030】
本発明による振動タンブリング装置の特徴及び利点は、添付の図面を参照する以下の限定的な意味を持たない実施形態の説明から、更に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図面を参照すると、図面は、特に硬質ではない材料から成る様々な要素と、研磨剤粒子と、水と、添加剤とを含む研磨剤混合物によって、例えば、ロータなどの製造済製品18の振動タンブリングを実行する装置10を示す。
【0032】
装置10は、製造済製品18の処理を実行するために、研磨剤混合物と、製造済製品18との相対運動を発生させる振動手段を具備する。
【0033】
製造済製品18を直接振動させ、製造済製品18の処理を実行するために、振動手段は、製造済製品18と連係される。
【0034】
振動手段は、ロッド20によって、製造済製品18と連係されるのが好ましい。あるいは、振動手段は、製造済製品に直接結合される。
【0035】
振動タンブリング装置10は、製造済製品18に関して研磨剤混合物の強制流れを得るための、特に、製造済製品18の少なくとも1つの空洞部の内側で強制流れを得るための圧力手段を更に具備する。
【0036】
製造済製品18から材料を一様に除去するために、圧力手段は、製造済製品18に関して、製造済製品18に近接している研磨剤混合物の一部の相対流れを強制的に発生するように、製造済製品18の上方に配置された研磨剤混合物の柱を含むのが好ましい。
【0037】
同時に、図3に示されるゴムコレクタ62によって、ロータ18に、市販の研磨剤混合物(媒質、研磨剤製品、水、添加剤)が供給される。ゴムコレクタ62は、約1,000mm上方に懸垂されたタンク60に接続される送り導管61から、研磨剤混合物を受け取る。
【0038】
好ましい一実施形態によれば、振動タンブリング装置10は、フレーム12を具備するのが好ましい。フレーム12には、特に、一連のばねなどの弾性手段40によって、ロッド20が拘束される。
【0039】
ロッド20は、第1の端部、すなわち、上端部21で、一連の垂直ガイド45によってフレーム12に拘束され、弾性手段40によって、フレーム12から懸垂されるのが好ましい。この構成により、ロッド20は、フレーム12に関して、垂直方向に相対運動できる。
【0040】
垂直ロッド20は、ロータ18が締め付け固定された下端部22を更に有する。ロッド20の上端部21は、特に、ロッド20に振動を伝達する非平衡モータ30などの振動手段に結合される。
【0041】
モータ30は、フレーム12の上方に配置されるのが好ましく、また、ロッド20と一体の円板24によって、ロッド20の上端部21に拘束されるのが好ましい。
【0042】
従って、振動手段は、処理されるべき製造済製品18と直接連係され、従って、振動を全く減衰させずに、製品に振動を伝達できる。
【0043】
振動タンブリング装置10は、製造済製品18の少なくとも1つの空洞部の内部へ、又は空洞部の上へ研磨剤混合物を搬送するためのゴムコレクタ62を具備するのが好ましい。
【0044】
圧力手段は、タンク60と、送り導管61とを含むのが好ましい。送り導管61は、第1の端部と、第2の端部とを具備し、製造済製品18に向かって研磨剤混合物を流すために、第1の端部は、タンク60の下流側に配置され、第2の端部は、製造済製品18の上流側に配置される。
【0045】
タンク60は、送り導管61の上方に配置される。ゴムコレクタ62は、製造済製品18の少なくとも1つの空洞部の内部へ研磨剤混合物を搬送するように、送り導管61の下方に結合される。
【0046】
製造済製品18に向かって研磨剤混合物を流すために、送り導管61の第2の端部は、ゴムコレクタ62の上流側に結合されるのが好ましい。
【0047】
送り導管61に入れられた研磨剤混合物の柱の自重により、製造済製品18に接触又は近接する研磨剤混合物の一部に圧力が加わるように、タンク60は、製造済製品18の約1,000mm上方に懸垂されるのが好ましい。
【0048】
このように、研磨剤混合物は、製造済製品18に関して強制的に流され、それにより、製品の表面から材料が一様に除去される。
【0049】
振動タンブリング装置10は、製造済製品に拘束された水盤形容器63を具備するのが好ましい。製造済製品の内面及び外面の双方を同時に処理できるように、水盤形容器63は、製造済製品を取り囲む。
【0050】
ロータ18の少なくとも1つの空洞部を通って流れた後、研磨剤混合物は、水盤形容器63の中に回収され、その結果、研磨剤混合物は、製造済製品18の外面をも処理する。
【0051】
水盤形容器63の最高液面に達するまで、このプロセスは繰り返され、最高液面を越えると、研磨剤混合物は、水盤形容器から溢れ、フレーム12に拘束された容器64に回収される。
【0052】
振動タンブリング装置10は、水盤形容器63から溢れ落ちる研磨剤混合物を回収する容器64を具備するのが好ましい。
【0053】
容器64に回収された使用済研磨剤混合物は、洗浄され、新たな研磨剤と混合される。その後、上部のタンク60に戻される。
【0054】
以上説明したような動作は、手動操作手段により実行されてもよく、あるいは、連続動作サイクルを実現するために、自動手段によって実行されることも可能である。
【0055】
本発明によれば、研磨装置10は、次のような新規な特徴を有する。
・装置は、処理されるべき製造済製品に対して、研磨剤混合物を介してではなく、直接振動を伝達する;
・流体は、処理されるべき製造済製品に関して、特に、例えば、細く、幅の狭い空洞部、穴又は溝などの内面に関して、相対的に流れるように強制される。
【0056】
処理されるべき対象物を直接振動させることにより、非常に狭い部分を有する処理されるべき内面と、研磨剤混合物の流れとの間に相対運動を発生することができる。研磨剤混合物は、少なくとも1つの内部空洞の内側を流れるように強制されるため、空洞部の表面を滑らかにし、いずれにせよ、空洞部から一様に材料を除去することが可能な振動研磨効果を実現する。
【0057】
研磨剤混合物は、圧力手段によって、少なくとも1つの内面の内側を流れるように強制され、それにより、混合物中に分散する研磨剤粒子と、処理されるべき内部空洞との相対運動は、増強される。
【0058】
その結果、研磨剤粒子は、処理されるべき少なくとも1つの内面に衝突し、その面自体で、研磨効果を発生する。
【0059】
処理されるべき少なくとも1つの内面に向かって、研磨剤混合物を強制的に流すために圧力手段を使用することにより、ロータ及びその他の構成要素の穴及び空洞部の内側に、研磨剤混合物が滞留することが防止され、浸食された材料を排出できるので、好都合である。
【0060】
本発明の振動タンブリング装置は、特に、溝、空洞部及び穴のように、手の届きにくい又は処理しにくい内面の場合に、きわめて効率よく研磨でき、好都合である。
【0061】
従って、本発明による振動タンブリング装置は、先に指定された目的を達成することがわかる。
【0062】
以上のように考えられる本発明の振動タンブリング装置は、同一の発明概念に含まれる数多くの変更及び変形が可能である。
【0063】
更に、実際に、技術的要求に応じて、使用される材料、並びに寸法及び成分を変えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明による振動タンブリング装置の好ましい一実施形態の立ち上げ右側斜視図である。
【図2】図1の振動タンブリング装置の部分断面概略立ち上げ図である。
【図3】図2の詳細を示した図である。
【図4】図1の詳細を示した図である。
【符号の説明】
【0065】
10…振動タンブリング装置、12…フレーム、18…ロータ(製造済製品)、20…ロッド、24…円板、30…非平衡モータ、40…弾性手段、45…垂直ガイド、60…タンク、61…送り導管、62…ゴムコレクタ、63…水盤形容器、64…容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に硬質ではない材料から成るいくつかの要素と、研磨剤粒子と、水と、添加剤とを含む研磨剤混合物によって、製造済製品(18)の内面を処理するために特に使用され、前記製造済製品(18)の表面処理を実行するために、前記研磨剤混合物と、前記製造済製品(18)との相対運動を発生させる振動手段を具備する振動タンブリング装置(10)において、前記製造済製品(18)を直接振動させ、それにより、前記製造済製品(18)の表面処理を実行するために、前記振動手段は、前記製造済製品(18)と連係されることと、前記振動タンブリング装置(10)は、前記製造済製品(18)に関する前記研磨剤混合物の強制流れを得るための、特に、前記製造済製品(18)の少なくとも1つの空洞部の内部で強制流れを得るための圧力手段を具備することとを特徴とする振動タンブリング装置(10)。
【請求項2】
前記振動手段は、ロッド(20)によって、前記製造済製品(18)と連係されることを特徴とする請求項1記載の振動タンブリング装置(10)。
【請求項3】
前記振動手段は、前記製造済製品(18)に直接拘束されることを特徴とする請求項1記載の振動タンブリング装置(10)。
【請求項4】
前記振動手段は、非平衡モータ(30)を具備することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の振動タンブリング装置(10)。
【請求項5】
前記圧力手段は、水盤形容器(60)と、送り導管(61)とを具備し、前記送り導管(61)は、第1の端部と、第2の端部とを具備し、前記製造済製品(18)に向かって前記研磨剤混合物を流すために、前記第1の端部は、前記水盤形容器(60)の下流側に結合され、前記第2の端部は、前記製造済製品(18)の上流側に結合されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の振動タンブリング装置(10)。
【請求項6】
前記製造済製品(18)から一様に材料を除去するために、前記圧力手段は、前記製造済製品(18)に関して、前記製造済製品(18)に近接する前記研磨剤混合物の一部の相対的流れを強制的に発生するように、前記製造済製品(18)の上方に配置された研磨剤混合物の柱を具備することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の振動タンブリング装置(10)。
【請求項7】
弾性装置(40)によって、前記ロッド(20)が装着されたフレーム(12)を具備することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の振動タンブリング装置(10)。
【請求項8】
前記研磨剤混合物を前記製造済製品(18)の前記少なくとも1つの空洞部の中へ送り込むためのゴムコレクタ(62)を具備することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の振動タンブリング装置(10)。
【請求項9】
前記製造済製品(18)に向かって前記研磨剤混合物を流すために、前記送り導管(61)の前記第2の端部は、前記ゴムコレクタ(62)の上流側に結合されることを特徴とする請求項8記載の振動タンブリング装置(10)。
【請求項10】
前記製造済製品に固定された水盤形容器(63)を具備し、前記製造済製品(18)の内面及び外面を同時に処理できるように、前記水盤形容器(63)は、前記製造済製品(18)を取り囲むことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の振動タンブリング装置(10)。
【請求項11】
前記研磨剤混合物を回収するための容器(64)を具備することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の振動タンブリング装置(10)。
【請求項12】
以下に説明及び図示されるような、以下に指定される目的のための振動タンブリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−142475(P2006−142475A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320292(P2005−320292)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(505347503)ヌオーヴォ ピニォーネ ソシエタ ペル アチオニ (112)
【Fターム(参考)】