説明

振動モータ及び携帯機器

【課題】薄型化を図ることが可能であるとともに、十分な振動量を得ることができる振動モータを提供する。
【解決手段】振動モータ1は、磁石6を含む可動部2と、可動部2を移動させるコイル基板3と、筐体5と、可動部2の移動方向において筐体5と可動部2との間に配置された皿付きバネ4とを備えている。磁石6は、1対の磁極を有する領域61、62を含んでおり、領域61、62はコイル基板3と対向する側において異なる磁極を有しており、領域61と領域62との間には磁性材料からなる中性領域63が形成されていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動モータ及び振動モータを備えた携帯機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、PDAや携帯電話機等の携帯機器の小型化により、携帯機器を振動させるための装置にも小型化が要求されている。このような装置は、小型化に伴い振動量の低下が問題となる。携帯機器を振動させるための装置としては、一般に、コイルが発生する磁界により振動する可動部を備えた振動モータが用いられている。
【0003】
従来の振動モータとして、特許文献1には振動アクチュエータの構成が開示されている。
【0004】
特許文献1に記載された振動アクチュエータは、固定部と、マグネット及びヨークから構成される可動部と、可動部を固定部に対して可動自在に保持するM字型の弾性部材と、マグネットの磁束と鎖交するコイルとを備えており、コイルに電流を流すことにより可動部が横方向(可動部の厚み方向とは垂直な方向)に直線移動する。
【0005】
上記構成により、ブラシ付きモータを用いた従来の振動アクチュエータと比較して、摩耗部分をなくすことができる。そのため、ノイズの発生を抑制することができ、動作信頼性の高い振動アクチュエータを提供することができる。
【特許文献1】特開2002−200460号公報(公開日:2002年7月16日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された振動アクチュエータでは、マグネットは、1対の磁極を有する第1磁極対及び第2磁極対を隣接して含んでおり、第1磁極対と第2磁極対とは磁極が互いに逆方向となるように着磁されている。そのため、第1磁極対と第2磁極対との間に形成される下方向の磁束が大きくなり、下方向への磁束漏れが大きくなってしまう。したがって、上記振動アクチュエータの構成では、動作効率が低下してしまい、十分な振動量を得ることが困難である。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、薄型化を図ることが可能であるとともに、十分な振動量を得ることができる振動モータ及び携帯機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の振動モータは、上記課題を解決するために、固定部と、1対の磁極を有する第1磁極対及び第2磁極対を含む磁石と、前記磁石の磁束と鎖交して配置され、前記磁石を移動させるコイルと、前記磁石の移動方向において前記固定部と前記磁石との間に配置された弾性部材とを備え、前記磁石は、前記第1磁極対及び前記第2磁極対が前記コイルと対向する側において異なる磁極を有しており、前記第1磁極対と前記第2磁極対との間には磁性材料からなる中性領域が形成されていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の携帯機器は、上述した振動モータを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の振動モータは、可動部をコイル面に沿って移動させるために、可動部の移動スペースをその厚み方向に設ける必要がなく、薄型化することができる。また、上記振動モータでは、磁石が生じる下方向の磁束を低減することができるため、下方向への磁束漏れを抑制することができる。その結果、上記振動モータの動作効率を高めることができ、振動量を増大させることが可能となる。
【0011】
また、本発明の携帯機器は、上記振動モータを搭載しているために、薄型化を図るとともに、振動量を増大させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る振動モータの構成を説明するための分解斜視図である。
【図2】上記振動モータの可動部の構成を説明するための分解斜視図である。
【図3】(a)は上記振動モータの内部構造を説明するための上面図であり、(b)は(a)のA−A’断面図であり、(c)は(a)のB−B’断面図である。
【図4】(a)は上記振動モータのコイル基板の上層に形成された平面コイルの上面図であり、(b)は上記コイル基板の下層に形成された平面コイルの上面図であり、(c)は上記コイル基板のX−X’断面図である。
【図5】(a)は上記振動モータの皿付きバネの構成を説明するための上面図であり、(b)は(a)を矢印の方向から見た正面図である。
【図6】(a)〜(c)は、上記振動モータの駆動方法を説明するための断面図である。
【図7】皿付きバネの変形例である。
【図8】皿付きバネのその他の変形例である。
【図9】皿付きバネのその他の変形例である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る振動モータの可動部の構成を説明するための分解斜視図である。
【図11】(a)〜(c)は上記振動モータの駆動方法を説明するための断面図である。
【図12】(a)、(b)は、本発明の第3実施形態に係る振動モータの内部構造を説明するための断面図である。
【図13】(a)は上記振動モータのコイル基板の上層に形成された平面コイルの上面図であり、(b)は上記コイル基板の下層に形成された平面コイルの上面図であり、(c)は上記コイル基板のX−X’断面図である。
【図14】(a)〜(c)は、上記振動モータの駆動方法を説明するための断面図である。
【図15】本発明の第4実施形態に係る振動モータの構成を説明するための分解斜視図である。
【図16】(a)は本発明の第5実施形態に係る振動モータの内部構造を説明するための上面図であり、(b)は(a)のA−A’断面図であり、(c)は(a)のB−B’断面図である。
【図17】(a)は上記振動モータのコイル基板の上層に形成された平面コイルの上面図であり、(b)は上記コイル基板の下層に形成された平面コイルの上面図である。
【図18】(a)は本発明の第6実施形態に係る振動モータの内部構造を説明するための上面図であり、(b)は(a)のA−A’断面図であり、(c)は(a)のB−B’断面図である。
【図19】(a)は上記振動モータのコイル基板の上層に形成された平面コイルの上面図であり、(b)は上記コイル基板の下層に形成された平面コイルの上面図である。
【図20】本発明に係る携帯電話機について説明するための上面図である。
【図21】上記携帯電話機のX−X’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔振動モータ〕
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る振動モータ1の構成について、図1〜図5を参照して説明する。図1は、振動モータ1の構成を説明するための分解斜視図である。
【0014】
振動モータ1は、可動部2と、コイル基板3と、皿付きバネ4と、上側筐体5aと、下側筐体5bとから構成されている。上側筐体5a及び下側筐体5bは、互いの開口部を塞ぐように組み合わせることにより直方体の筐体5を形成する。筐体5の内部には、可動部2、コイル基板3及び皿付きバネ4が収容されている。振動モータ1は、コイル基板3に電流を流すことにより、筐体5内において可動部2を往復移動させ、皿付きバネ4及び筐体5で可動部2の移動を受け止めて振動する構成である。
【0015】
図2は、可動部2の構成を説明するための分解斜視図である。可動部2は、磁石6と、筒型ヨーク7と、側面用ヨーク8とから構成されている。磁気シールドとしての機能を有する筒型ヨーク7及び側面用ヨーク8が磁石6を覆うことにより、磁石6の磁束が可動部2の外部に漏出することを抑制している。
【0016】
磁石6は、磁性材料から構成された直方体の部材であり、その厚み方向に一対の磁極を有する2つの領域61、62と、領域61、62の間に磁性材料からなる中性領域63とを含む。ここで、領域61、62は、互いに磁極が逆方向となっている。
【0017】
なお、磁石6は、単一の磁性材料に対して領域61、62及び中性領域63を含むように着磁することによって形成してもよいし、2つの磁石の間に磁化されていない磁性材料を挟んで接着することによって形成してもよい。
【0018】
筒型ヨーク7は、保磁力が小さく透磁率が大きい材料によって構成された直方体の部材であり、その長手方向に中空が形成されている。筒型ヨーク7を構成する材料としては、パーマロイ、炭素鋼、普通鋼、珪素鋼、フェライト系ステンレス、パーメンジュール、マルテンサイト系ステンレス、析出硬化系ステンレス等が好適である。このように、筒型ヨーク7は透磁率が大きい材料から構成されているので、周囲の磁束線をより多くその内部に閉じこめることができる。磁石6と筒型ヨーク7との間に働く磁気引力により、磁石6は筒型ヨーク7の内壁底面に固定されている。このとき、磁石6の領域61、62及び中性領域63が筒型ヨーク7の開口面とは垂直な方向に延びるように、磁石6は筒型ヨーク7に固定されている。なお、磁石6と筒型ヨーク7との間の固定をより強固するために、接着剤を用いて接着させてもよい。
【0019】
側面用ヨーク8は、筒型ヨーク7と同一の材料によって構成されており、筒型ヨーク7の両開口面のうち、磁石6が設けられている部分を塞ぐように配置された側面領域8aと、筒型ヨーク7の外壁底面を覆うように配置された底面領域8bとを含んでいる。側面領域8aの高さは、可動部2の移動によりコイル基板3と接触しないように、磁石6の側面の上端よりも下側に形成されている。なお、側面用ヨーク8と、磁石6及び筒型ヨーク7とは、接着剤を用いて固定されている。
【0020】
図3(a)は振動モータ1の内部構造を説明するための上面図であり、図3(b)は図3(a)のA−A’断面図であり、図3(c)は図3(a)のB−B’断面図である。コイル基板3は、矩形状の基板であり、筒型ヨーク7の開口面からコイル基板3の長手方向に沿って挿入されている。コイル基板3の短辺側の両端部が上側筐体5a及び下側筐体5bで挟まれることにより、コイル基板3は筐体5に固定されている。コイル基板3と磁石
6の磁極面とは、筒型ヨーク7の内部で平行になるように配置されている。ここで、平行とは、互いに平行な状態だけでなく、可動部2が往復移動する際の妨げにならない程度に平行な状態からずれた状態を含んでいる。
【0021】
図4(a)はコイル基板3の上層に形成された平面コイル9の上面図であり、図4(b)はコイル基板3の下層に形成された平面コイル9の上面図であり、図4(c)はコイル基板3のX−X’断面図である。平面コイル9は、コイル基板3の内部に2層の渦巻状に形成されている。
【0022】
具体的には、コイル基板3は、図4(c)に示すように、4層構造となっており、平面コイル9が埋設されたコイル層3b、3cと、その両面に設けられた絶縁層3a、3dとから構成されている。絶縁層3a、3dは、コイル層3b、3cに設けられた平面コイル9を外部から絶縁している。平面コイル9は、コイル層3aにおいて、電極パッド10aからコイル基板3の中心部に向かって略矩形状に反時計回りに巻かれた上層コイル91と、コイル層3bにおいて、コイル基板3の中心部から電極パッド10bに向かって略矩形状に反時計回りに巻かれた下層コイル92とから構成されている。平面コイル9の上層コイル91及び下層コイル92は、コイル基板3の中心部において接続されている。
【0023】
また、平面コイル9は、図4(a)、(b)に示すように、コイル層3b、3cにおいて、コイル基板3の長手方向に沿って延びる複数のコイル線を含む領域9A、9Bを有しており、領域ごとに同じ方向に電流が流れるように形成されている。また、平面コイル9は、その両端が電極パッド10a、10bを介して図示しない駆動電流供給回路に接続されており、駆動電流供給回路から矢印A方向又はB方向に電流が供給される。駆動電流供給回路は、所定の周期で平面コイル9に供給する電流の方向を切り替える。
【0024】
図5(a)は皿付きバネ4の構成を説明するための上面図であり、図5(b)は図5(a)を矢印の方向から見た正面図である。皿付きバネ4は、非磁性材料から構成されており、2つの板バネ4a、4bと、受皿4cとが一体的に形成されている。皿付きバネ4は、受皿4c上に可動部2を搭載し、可動部2の移動方向における両側面を板バネ4a、4bによって挟みこんで支持し、可動部2の移動を受け止めるものである。皿付きバネ4を構成する材料としては、SUS301、304等が好適である。
【0025】
2つの板バネ4a、4bは、下側筐体5bに固定される固定部4d、4eと、可動部2を支持する支持部4f、4gとを含んでいる。支持部4f、4gは、可動部2の移動を受け止めるために、下側筐体5bと可動部2との間で1つの屈曲点4X、4Yを有している。また、支持部4f、4gは、図5(b)に示すように、可動部2の重心Aを含む移動方向上に位置するように配置されており、その高さは可動部2の高さに合わせて設計されている。
【0026】
一方、固定部4d、4eの上端の高さは、図5(c)に示すように、支持部4f、4gの上端の高さよりも低くなっている。これは、コイル基板3が配置された場合、固定部4d、4eの上端の高さを支持部4f、4gと同一にしていると、固定部4d、4eとコイル基板3とが接触してしまうためである。そのため、固定部4d、4eは、コイル基板3と接触しない高さに設計されている。
【0027】
また、可動部2の移動に伴い、受皿4c及び支持部4f、4gが下側筐体5bの内壁底面と接触しないように、受皿4c及び支持部4f、4gの下端が固定部4d、4eの下端よりも高い位置にくるように構成されている。すなわち、皿付きバネ4は、下側筐体5bの内壁底面から浮いた状態で可動部2を保持する。また、受皿4cは、可動部2が搭載されるために、可動部2の底面と略同一の形状を有している。
【0028】
なお、振動モータ1の組み立て段階において、皿付きバネ4は、受皿4cが2つに分かれており、一方の受皿4cには板バネ4aが、他方の受皿4cには板バネ4bが接続されている。各部品は、可動部2の底面に固定されることにより皿付き板バネ4を構成する。
【0029】
次に、振動モータ1の駆動方法について、図6を参照して説明する。図6(a)〜(c)は、振動モータ1の駆動方法を説明するための断面図である。ここでは、可動部2をまずX1方向に移動させる場合について説明する。
【0030】
振動モータ1を駆動する場合、コイル基板3の平面コイル9に、駆動電流供給回路より電極パッド10aを介して、図4(a)に示すA方向に電流が供給される。これにより、平面コイル9の領域9Aには、図6(a)に示すように、コイル基板3の長手方向に沿って紙面奥側から手前側、すなわちZ2方向に電流が流れる。また、平面コイル9の領域9Bには、コイル基板3の長手方向に沿って紙面手前側から奥側、すなわちZ1方向に電流が流れる。
【0031】
ここで、磁石6のコイル基板3と対向する面のN極面6AとS極面6Bとの間において発生する磁界の向きは、N極面6A上においては、N極面6Aの表面からコイル基板3に向かった方向、すなわちY1方向となる。また、S極面6B上においては、コイル基板3からS極面6Bに向かった方向、すなわちY2方向となる。このように、磁石6のN極面6AとS極面6Bとの間において発生する磁界は、平面コイル9の領域9A、9Bの電流の流れる方向と直交することとなる。
【0032】
そのため、平面コイル9の領域9Aを流れる電流は、磁石6のN極面6A上の磁界からX2方向への力を受ける。また、平面コイル9の領域9Bを流れる電流は、磁石6のS極面6B上の磁界からX2方向への力を受ける。すなわち、コイル基板3には、X2方向への力が作用する。
【0033】
しかし、コイル基板3は上側筐体5a及び下側筐体5bにより固定されているので、磁石6は反作用によりX1方向への力を受けることになる。したがって、可動部2は、図6(b)に示すように、X1方向に移動する。このとき、可動部2は、X1方向において皿付きバネ4の板バネ4bに支持されているために、板バネ4bが撓んで可動部2の移動を受け止める。
【0034】
次に、駆動電流供給回路は、平面コイル9に供給する電流の向きを、図4(b)に示すB方向に切り替える。これにより、平面コイル9の領域9Aには、図6(c)に示すように、コイル基板3の長手方向に沿って紙面手前側から奥側、すなわちZ1方向に電流が流れる。また、平面コイル9の領域9Bには、コイル基板3の長手方向に沿って紙面奥側から手前側、すなわちZ2方向に電流が流れる。
【0035】
そのため、平面コイル9の領域9Aを流れる電流は、磁石6のN極面6A上の磁界からX1方向への力を受ける。また、平面コイル9の領域9Bを流れる電流は、磁石6のS極面6B上の磁界からX1方向への力を受ける。これにより、可動部2は、図6(c)に示すように、X2方向に移動する。このとき、可動部2は、X2方向において皿付きバネ4の板バネ4aに支持されているために、板バネ4aが撓んで可動部2の移動を受け止める。
【0036】
以上のように、振動モータ1は、駆動電流供給回路により平面コイル9に供給する電流の方向を切り替えることにより、可動部2をX1方向及びX2方向に往復移動させる。このとき、駆動電流供給回路が平面コイル9に電流を供給するタイミングを調節することに
より、可動部2を共振させることができ、大きな振動量を得ることが可能である。
【0037】
なお、可動部2をX1方向に最大に移動させたとき、磁石6のN極面6Aが平面コイル9の領域9Bと重畳してしまうと、領域9Bを流れる電流がN極面6A上の磁界からX1方向の力を受け、磁石6にX2方向への力が作用してしまう。すなわち、可動部2が移動しようとする方向とは逆方向に力が作用し、振動モータ1の振動量が低下してしまう。
【0038】
そこで、磁石6は、可動部2をX1方向に最大に移動させたとき、磁石6のN極面6Aが平面コイル9の領域9Bと重畳することがないように、中性領域63の幅が調節されている。中性領域63は磁化されていないので、領域9Bと対向したとしても、磁石6をX2方向へ移動させるための力は作用しない。また、可動部2をX2方向に最大に移動させた場合も同様に、磁石6のS極面6Bと平面コイル9の領域9Aとが重畳しないように、磁石6の中性領域63の幅が調節されている。したがって、中性領域63の幅は、磁石6と平面コイル9との関係で決定される。
【0039】
以下に、本実施形態の振動モータ1の効果について説明する。
【0040】
(1)振動モータ1は、可動部2をコイル基板3に沿って移動させている。これにより、可動部2の移動スペースをその厚み方向に設ける必要がなく、装置全体を薄型化することが可能である。
【0041】
(2)振動モータ1は、下側筐体5bと筒型ヨーク7との間に板バネ4a、4bが設けられている。これにより、コイル基板3が挿入された部分を気にすることなく、板バネ4a、4bを配置することができ、設計自由度を向上させることができる。すなわち、板バネ4a、4bの設置位置を自由に設定でき、また、十分な高さを有する板バネ4a、4bを用いることが可能である。そのため、振動モータ1は、可動部2の移動を効率良く受け止めることができ、振動量を増大させることができる。
【0042】
(3)振動モータ1は、板バネ4a、4bが可動部2の重心Aを含む移動方向上に位置するように配置されている。これにより、板バネ4a、4bが可動部2の移動を効率良く受け止めることができるため、振動モータ1の振動量を増大させることができる。
【0043】
(4)振動モータ1は、筒型ヨーク7が磁気シールドとしての機能を有している。これにより、磁石6が生じる磁束が筒型ヨーク7内を通過するため、筒型ヨーク7が設けられていない場合と比較して、磁路を短くすることができる。そのため、平面コイル9に作用する磁力が大きくなり、振動モータ1の振動量を増大させることができる。
【0044】
(5)振動モータ1は、筒型ヨーク7の両開口面のうち、磁石6が設けられている部分を塞ぐよう配置されるとともに、筒型ヨーク7の外壁底面を覆うように配置された側面用ヨーク8を備えている。これにより、磁石6のN極面6A、S極面6Bと、側面用ヨーク8の端部との間で磁束が形成されるため、側面用ヨーク8が設けられていない場合と比較して、磁路を短くすることができる。そのため、平面コイル9に作用する磁力が大きくなり、振動モータ1の振動量を増大させることができる。
【0045】
(6)振動モータ1は、筒型ヨーク7及び側面用ヨーク8により、磁石6のコイル基板3と対向する面以外の部分を覆っている。これにより、磁石6が生じる磁束が可動部2の外部に漏出することを抑制することができるため、振動モータ1の動作効率を高めることができ、振動量を増大させることが可能である。
【0046】
(7)振動モータ1の磁石6は、その厚み方向に一対の磁極を有する2つの領域61、
62と、領域61、62の間に磁性材料からなる中性領域63とを含むように形成されており、領域61、62には互いに磁極が逆方向となっている。これにより、磁石6が生じる下方向の磁束を低減することができるため、振動モータ1における下方向への磁束漏れを抑制することができる。その結果、振動モータ1の動作効率を高めることができ、振動量を増大させることができる。
【0047】
(8)磁石6の中性領域63は、磁石6をX1方向に最大に移動させた場合に、平面コイル9の領域9Bと磁石6のN極面6Aとが重畳しないように設計されており、磁石6をX2方向に最大に移動させた場合に、平面コイル9の領域9Aと磁石6のS極面6Bとが重畳しないように設計されている。これにより、可動部2をX1、X2方向に最大に移動させた場合、可動部2が移動しようとする方向とは逆方向に力が作用することを防止することができる。そのため、振動モータ1の振動量を増大させることができる。
【0048】
(9)振動モータ1の皿付きバネ4は、受皿4c及び支持部4f、4gの下端が、固定部4d、4eの下端よりも高い位置にくるように構成されている。これにより、可動部2は下側筐体5bの内壁底面からは浮上した状態で保持されるために、可動部2が移動した場合に受皿4cと下側筐体5bの内壁底面との間に摩擦が生じることを防止することができる。そのため、可動部2を効率良く移動させることができるために、振動モータ1の振動量を増大させることができる。
【0049】
以上のように、本実施形態の振動モータ1の構成について説明してきたが、本発明の振動モータは上述した構成に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。以下に、振動モータ1の変形例及びその効果について説明する。
【0050】
(ア)本実施形態では、本発明の「コイル」として平面コイル9を用いているが、平面コイルに限られず、その厚み方向に厚みのあるコイルを用いてもよい。
【0051】
(イ)本実施形態では、本発明の「弾性部材」として板バネ4a、4bを用いているが、板バネに限られず、ねじりバネ等の他の構成の弾性部材を用いてもよい。ただし、どのような構成の弾性部材を用いるとしても、バネ定数を大きくするために、そのサイズは可動部2の高さに近い方が好ましい。
【0052】
(ウ)本実施形態では、板バネ4a、4bが可動部2の重心Aを含む移動方向上に位置するように配置されているが、重心Aを含む移動方向上でなくとも、可動部2の移動方向に設けられていればよい。また、本実施形態では、可動部2の移動方向における両側面に板バネが設けられているが、可動部2の移動方向における一方の側面にのみ設けられている構成であってもよい。また、可動部2の移動方向における両側面において、それぞれ2つ以上の板バネが設けられている構成であってもかまわない。
【0053】
(エ)本実施形態では、皿付きバネ4は板バネ4a、4bと受皿4cとが一体的に形成されているが、受皿4cが設けられていない構成であってもかまわない。
【0054】
(オ)本実施形態では、皿付きバネ4は非磁性材料から構成されているが、磁性材料から構成されていてもよい。この場合、皿付きバネ4は磁気シールドとしての機能を有するために、磁石6が生じる磁束が振動モータ1の外部に漏出することを更に抑制することができる。そのため、振動モータ1の動作効率を高め、振動量を増大させることが可能である。
【0055】
(カ)本実施形態では、振動モータ1の組み立て段階において、皿付きバネ4は、受皿4cが2つに分かれており、一方の受皿4cには板バネ4aが、他方の受皿4cには板バ
ネ4bが接続されている構成であるが、本発明はこれに限られない。すなわち、皿付き板バネ4は、振動モータ1の組み立て段階において、既に一体となった構成のものを用いてもよい。
【0056】
(キ)本実施形態では、コイル基板3の磁石6と対向する面には何も設けられていないが、コイル基板3表面の摩擦係数よりも低い摩擦係数を有する低摩擦層が形成されていてもよい。これにより、可動部2が移動する場合、コイル基板3と磁石6との摩擦によるエネルギーの損失を抑制できる。そのため、可動部2を効率的に移動させることができ、振動モータ1の振動量を増加させることが可能である。
【0057】
(ク)本実施形態では、可動部2は筒型ヨーク7の内壁底面に磁石6が固定されている構成であるが、本発明はこれに限られない。すなわち、可動部2は、側面用ヨーク8に磁石6を搭載し、側面用ヨーク8が筒型ヨーク7の内壁底面に固定されている構成であってもよい。また、筒型ヨーク7の下端が開口面から突出しており、折り曲げることにより磁石6の側面を覆うような構成であってもかまわない。この場合、側面用ヨーク8を設ける必要が無くなるため、部品数を低減することができ、装置全体を薄型化することが可能である。
【0058】
(ケ)本実施形態では、側面用ヨーク8の側面領域8aの高さは、磁石6の側面の上端よりも下側に形成されているが、本発明はこれに限られない。
【0059】
例えば、振動モータ1を薄型化する必要が無い場合には、側面領域8aの高さを、磁石6の側面の上端よりも突出した構成とすることが好ましい。振動モータ1を薄型化する必要がなければ、側面領域8aを高くしたとしても、可動部2の移動によりコイル基板3と側面領域8aとが接触することは防止することができる。さらに、側面領域8aを高くすることにより、磁石6が生じる磁束が可動部2の外部に漏出することを更に抑制することができる。
【0060】
また、振動モータ1の振動量を本実施形態よりも更に増大させたい場合には、側面領域8aの高さを、磁石6の側面の上端と略同一とすることが好ましい。これにより、磁石6のN極面6A、S極面6Bと、側面用ヨーク8の端部との間で形成される磁束の磁路を最短とすることができる。そのため、平面コイル9に作用する磁力が更に大きくなり、振動モータ1の振動量を増大させることができる。
【0061】
(コ)本実施形態では、側面用ヨーク8を筒型ヨーク7と同一の材料によって構成しているが、異なる材料を用いてもよい。この場合、側面用ヨーク8は筒型ヨーク7よりも磁石6からの距離が遠いために、低磁界でも透磁率の高い材料、例えば、パーマロイ等が好適に用いられる。
【0062】
(サ)本実施形態では、磁石6と平面コイル9との位置関係が、磁石6をX1方向に最大に移動させた場合に、平面コイル9の領域9Bと磁石6のN極面6Aとが重畳しないように設計されており、磁石6をX2方向に最大に移動させた場合に、平面コイル9の領域9Aと磁石6のS極面6Bとが重畳しないように設計されているが、本発明はこれに限られない。
【0063】
例えば、磁石6と平面コイル9との位置関係は、磁石6をX1方向に最大に移動させた場合に、領域9BとN極面6Aとが重畳する面積よりも、領域9BとS極面6Bとが重畳する面積の方が大きくなるように設計されており、磁石6をX2方向に最大に移動させた場合に、領域9AとS極面6Bとが重畳する面積よりも、領域9AとN極面6Aとが重畳する面積の方が大きくなるように設計されていてもよい。
【0064】
これにより、可動部2をX1、X2方向に最大に移動させた場合であっても、可動部2が移動しようとする方向に作用する力を、その逆方向に作用する力よりも大きくすることができる。
【0065】
また、本実施形態では、磁石6と平面コイル9との位置関係の調節を、磁石6の中性領域63の幅を調節することにより行っているが、皿付きバネ4の板バネ4a、4bの弾性力や、平面コイル9の領域9Aと領域9Bとの間隔や、筒型ヨーク7の短手方向の長さ等を調節することにより行ってもよい。
【0066】
(シ)皿付きバネ4の板バネ4a、4bの構成は、図7〜図9に示すような種々の構成に変更可能である。図7〜図9は、皿付きバネ4の変形例を説明するための上面図である。
【0067】
皿付きバネ4は、板バネ4a、4bの代わりに、図7に示すように、下側筐体5bに固定された第1固定部403、404と支持部405、406との間に、更に下側筐体5bに固定された第2固定部407、408が形成された板バネ401、402を用いてもよい。なお、第2固定部407、408は必ずしも下側筐体5bに固定されている必要はなく、第2固定部407、408と支持部405、406との間で屈曲している構成であればよい。
【0068】
また、皿付きバネ4は、図8に示すように、板バネ4a、4bの内側に、板バネ4a、4bと相似形状であって、受皿4cとの接合部を有しない板バネ409、410が設けられた構成であってもよい。
【0069】
また、皿付きバネ4は、図9に示すように、図7に示す板バネ401、402の内側に、板バネ401、402と相似形状であって、受皿4cとの接合部を有しない板バネ411、412が設けられた構成であってもよい。
【0070】
なお、図8において、板バネ409、410は板バネ4a、4bの外側に設けられていてもよく、図9において、板バネ411、412は板バネ401、402の外側に設けられていてもよい。
【0071】
このように、固定部を2箇所有する構成としたり、2つの板バネを重ねることにより、板バネの膜厚を厚くすることなく、バネ定数を大きくすることができる。これにより、板バネの疲労耐性を低下させることなく、共振周波数を高めることができるため、振動モータ1の振動量を増大させることが可能である。
【0072】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る振動モータ21の構成について説明する。振動モータ21は、可動部22と、コイル基板3と、皿付きバネ4と、上側筐体5aと、下側筐体5bとから構成されている。すなわち、振動モータ21は、第1実施形態の振動モータ1と比較して、可動部の構成が異なっている。
【0073】
図10は、振動モータ21の可動部22の構成を説明するための分解斜視図である。なお、第1実施形態の振動モータ1と同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して説明は省略する。
【0074】
可動部22は、磁石6、26と、筒型ヨーク7と、側面用ヨーク8、28とから構成されている。
【0075】
磁石26は、磁石6と同一の構成であり、コイル基板3を挟んで磁石6と対向して、筒型ヨーク7の内壁上面に固定されている。磁石26と筒型ヨーク7との間には磁気引力が働くため、磁石26は筒型ヨーク7の内壁上面にこの磁気引力により固定されている。ここで、磁石26は、磁石6と同様に、磁石26の領域61、62及び中性領域63が筒型ヨーク7の開口面とは垂直な方向に延びるように、筒型ヨーク7に固定されている。これにより、磁石6のN極面6Aと磁石26のS極面26Bとが対向し、磁石6のS極面6Bと磁石26のN極面26Aとが対向する。
【0076】
側面用ヨーク28は、筒型ヨーク7と同一の材料によって構成されており、筒型ヨーク7の両開口面のうち、磁石26が設けられている部分を塞ぐように配置された側面領域28aと、筒型ヨーク7の外壁上面を覆うように配置された上面領域28bとを含んでいる。なお、側面用ヨーク28と、磁石26及び筒型ヨーク7とは、接着剤を用いて固定されている。
【0077】
次に、振動モータ21の駆動方法について、図11を参照して説明する。図11(a)〜(c)は、振動モータ21の駆動方法を説明するための断面図である。
【0078】
振動モータ21では、第1実施形態と異なり磁石26が設けられているため、磁石6と磁石26との間で磁束が形成される。具体的には、磁石6のN極面6Aと磁石26のS極面26Bとが対向しているために、N極面6AとS極面26Bとの間に磁界が形成される。ここで、N極面6AとS極面26Bとの間に形成される磁界の向きは、N極面6AからS極面26Bに向かった方向、すなわちY1方向となる。また、磁石6のS極面6Bと磁石26のN極面26Aとが対向しているために、S極面6BとN極面26Aとの間に磁界が形成される。ここで、S極面6BとN極面26Aとの間に形成される磁界の向きは、N極面26AからS極面6Bに向かった方向、すなわちY2方向となる。
【0079】
振動モータ21を駆動する場合、コイル基板3の平面コイル9に、駆動電流供給回路により電極パッド10a、10bを介して図4(a)に示すA方向又は図4(b)に示すB方向に電流が供給される。これにより、平面コイル9の領域9A、9Bを流れる電流が磁石6と磁石26との間に形成された磁界により力を受け、図11(b)及び図11(c)に示すように、可動部22がX1方向及びX2方向に移動する。
【0080】
このように、振動モータ21は、第1実施形態と同様の原理で、駆動電流供給回路により平面コイル9に供給する電流の方向を切り替えることにより、可動部22をX1方向及びX2方向に往復移動させて振動する。
【0081】
以下に、第2実施形態の振動モータ21の効果について説明する。
【0082】
(10)振動モータ21は、コイル基板3を挟んで対向して配置された2つの磁石6、26を備えている。そして、磁石6のN極面6Aは磁石26のS極面26Bと対向しており、磁石6のS極面6Bは磁石26のN極面26Aと対向している。これにより、N極面6AとS極面26Bとの間及びN極面26AとS極面6Bとの間で磁束が形成されるために、磁石が1つしか設けられていない場合と比較して、磁路を短くすることができる。そのため、磁石6と磁石26との間の磁力が強くなり、振動モータの振動量を増大させることができる。なお、振動モータ21のその他の効果は、第1実施形態の振動モータ1と同一である。
【0083】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る振動モータ31の構成について、図12、図13を
参照して説明する。図12(a)、(b)は、振動モータ31の内部構造を説明するための断面図である。図13(a)はコイル基板33の上層に形成された平面コイル39、40の上面図であり、図13(b)はコイル基板33の下層に形成された平面コイル39、40の上面図であり、図13(c)はコイル基板33のX−X’断面図である。なお、第1実施形態の振動モータ1と同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して説明は省略する。
【0084】
振動モータ31は、可動部32と、コイル基板33と、皿付きバネ4と、上側筐体5aと、下側筐体5bとから構成されている。すなわち、振動モータ31は、第1実施形態の振動モータ1と比較して、可動部及びコイル基板の構成が相違している。
【0085】
可動部32は、図12(a)、(b)に示すように、磁石36と、筒型ヨーク7と、側面用ヨーク8とから構成されている。磁石36は、磁性材料から構成された直方体の部材であり、その厚み方向に一対の磁極を有するように着磁されている。また、磁石36は、その短手方向の長さが筒型ヨーク7の内壁面の短手方向の長さよりも短く、その重心が筒型ヨーク7の短手方向の中心に位置するように配置されている。
【0086】
コイル基板33は、矩形状の基板であり、筒型ヨーク7の開口面からコイル基板33の長手方向に沿って挿入されている。また、コイル基板33の内部には、図13(a)〜(c)に示すように、2層の渦巻状に形成された2つのコイル39、40が、コイル基板33の短手方向に沿って順番に形成されている。
【0087】
具体的には、コイル基板33は、図13(c)に示すように、4層構造となっており、平面コイル39、40が埋設されたコイル層33b、33cと、その両面に設けられた絶縁層33a、33dとから構成されている。絶縁層33a、33dは、コイル層33b、33cに設けられた平面コイル39、40を外部から絶縁している。
【0088】
平面コイル39、40は、コイル層33bにおいて、電極パッド10c、10dから略矩形状に互いに逆方向に巻かれた上層コイル391、401と、コイル層33cにおいて、上層コイルの渦巻きの中心部から電極パッド10e、10fに向かって略矩形状に互いに逆方向に巻かれた下層コイル392、402とから構成されている。平面コイル39の上層コイル391及び下層コイル392は、渦巻きの中心部において接続されている。また、平面コイル40の上層コイル401及び下層コイル402も、渦巻きの中心部において接続されている。
【0089】
また、平面コイル39、40は、コイル層33b、33cにおいて、コイル基板33の長手方向に沿って延びる複数のコイル線を含む領域E〜Gを有しており、領域ごとに同じ方向に電流が流れるように形成されている。具体的には、領域F、Gのコイル線には同じ方向に電流が流れるように形成されており、領域Eのコイル線と領域F、Gのコイル線とは逆方向に電流が流れるように形成されている。
【0090】
また、平面コイル39、40は、その両端が電極パッド10c、10d、10e、10fを介して駆動電流供給回路にそれぞれ接続されており、駆動電流供給回路から矢印A又はB方向に電流が供給される。駆動電流供給回路は、所定の周期で平面コイル39、40に供給する電流の方向を切り替える。なお、コイル基板33のその他の構成については、第1実施形態のコイル基板3と同一であるので説明は省略する。
【0091】
次に、振動モータ31の駆動方法について、図14を参照して説明する。図14(a)〜(c)は、振動モータ31の駆動方法を説明するための断面図である。なお、図14において磁石36は、上面がN極に、下面がS極に着磁されている。ここでは、可動部32
をまずX1方向に移動させる場合について説明する。
【0092】
振動モータ31を駆動する場合、コイル基板33の平面コイル39、40には、駆動電流供給回路により図13(a)に示す矢印Aの方向に電流が供給される。これにより、平面コイル39、40の領域Eには、図14(a)に示すように、コイル基板33の長手方向に沿って紙面奥側から手前側、すなわちZ2方向に電流が流れる。また、平面コイル39、40の領域F、Gには、コイル基板3の長手方向に沿って紙面手前側から奥側、すなわちZ1方向に電流が流れる。
【0093】
ここで、磁石36が発生する磁界はN極からS極へ向かうため、N極面上の磁界の向きはN極面の表面からコイル基板33に向かった方向、すなわちY1方向となる。そのため、磁石36のN極面と重畳している平面コイル39、40の領域Eを流れる電流は、磁石36の磁界からX2方向への力を受ける。すなわち、コイル基板33には、X2方向への力が作用する。
【0094】
しかし、コイル基板33は上側筐体5a及び下側筐体5bにより固定されているので、磁石36は反作用によりX1方向への力を受けることになる。したがって、可動部32は、図14(b)に示すように、X1方向に移動する。
【0095】
次に、駆動電流供給回路は、平面コイル39、40に供給する電流の向きを、図13(b)に示すB方向に切り替える。これにより、平面コイル39、40の領域Eには、図14(c)に示すように、コイル基板33の長手方向に沿って紙面手前側から奥側、すなわちZ1方向に電流が流れる。また、平面コイル39、40の領域F、Gには、コイル基板33の長手方向に沿って紙面奥側から手前側、すなわちZ2方向に電流が流れる。
【0096】
そのため、磁石36のN極面と重畳している平面コイル39、40の領域Eを流れる電流は、磁石36の磁界からX1方向への力を受ける。これにより、可動部32は、図14(c)に示すように、X2方向に移動する。
【0097】
ここで、可動部32をX1方向に最大に移動させた場合に、磁石36と領域Eとが重畳する面積よりも磁石36と領域Gと重畳する面積の方が大きくなると、領域Eを流れる電流が磁石36の磁界から受けるX2方向への力よりも、領域Gを流れる電流が磁石36の磁界から受けるX1方向への力の方が大きくなってしまう。したがって、可動部32が移動しようとする方向とは逆方向に力が作用し、振動モータ31の振動量が低下してしまう。
【0098】
そこで、磁石36と平面コイル39、40の領域E〜Gとの位置関係は、可動部32をX1方向に最大に移動させた場合に、磁石36と領域Gとが重畳する面積よりも、磁石36と領域Eとが重畳する面積の方が大きくなるように設計されている。また、可動部32をX2方向に移動させた場合も同様に、磁石36と領域Fとが重畳する面積よりも、磁石36と領域Eとが重畳する面積の方が大きくなるように、磁石36と平面コイル39、40の領域E〜Gとの位置関係が設定されている。
【0099】
以上のように、振動モータ31は、駆動電流供給回路により平面コイル39、40に供給する電流の方向を切り替えることにより、可動部32をX1方向及びX2方向に往復移動させる。
【0100】
また、本実施形態の駆動方法は、平面コイル39、40に電流を供給すると互いに逆向きの磁界を発生させるために、平面コイル39、40と磁石36との間に生じる引力及び斥力により、可動部32をX1方向及びX2方向に往復移動させているともいえる。
【0101】
以下に、第3実施形態の振動モータ31の効果について説明する。
【0102】
(11)振動モータ31は、磁石6の磁極面に対して互いに逆方向の磁界を作用させる平面コイル39及び平面コイル40を含む平面コイル33を備えている。これにより、磁石6のコイル基板33と対向する磁極面が1つの極性を有する構成であったとしても、可動部32を往復移動させることが可能となるために、製造コストを低減することができる。
【0103】
(12)振動モータ31は、短手方向の長さが筒型ヨーク7の内壁面の短手方向の長さよりも短い磁石36を備えている。このように、第1実施形態と比較して、体積の小さい磁石36を用いることができるため、装置全体を軽量化でき、振動モータ31の動作効率を高めることができる。
【0104】
なお、振動モータ31のその他の効果は、第1実施形態の振動モータ1と同一である。
【0105】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る振動モータ41の構成について、図15を参照して説明する。図15は、振動モータ41の構成を説明するための分解斜視図である。なお、第1実施形態の振動モータ1と同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して説明は省略する。
【0106】
振動モータ41は、図15に示すように、可動部42と、コイル基板3と、皿付きバネ44と、上側筐体5aと、下側筐体5bとから構成されている。振動モータ41は、磁気シールドとしての機能を有する皿付きバネ44を側面用ヨーク8の代わりに用いることにより、可動部42から側面用ヨーク8を省略したものである。
【0107】
可動部42は、磁石6と、筒型ヨーク7とから構成されている。
【0108】
皿付きバネ44は、磁性材料から構成されており、板バネ44a、44bと、受皿44cと、ヨーク部44dとが一体的に形成されている。皿付きバネ44を構成する材料としては、SUS631、632、ばね鋼、炭素鋼、炭素工具鋼等が好適である。ヨーク部44dは、受皿44cの短手方向の端部において、受皿44cに対して垂直な方向に設けられている。具体的には、ヨーク部44dは、可動部42を受皿44cに搭載した際に、筒型ヨーク7の両開口面のうち、磁石6が設けられている部分を塞ぐように形成されている。ヨーク部44dの高さは、可動部42の移動によりコイル基板3と接触しないように、磁石6の上端よりも下側に形成されている。
【0109】
なお、皿付きバネ44のその他の構成は、第1実施形態の皿付きバネ4と同一であるので説明は省略する。また、振動モータ41の駆動方法は、第1実施形態の振動モータ1と同一であるので、説明は省略する。
【0110】
以下に、第4実施形態の振動モータ41の効果について説明する。
【0111】
(13)振動モータ41は、側面用ヨーク8を備えておらず、磁気シールドとしての機能を有する皿付きバネ44を用いている。これにより、側面用ヨーク8を備えていない分、振動モータ41全体を薄型化することが可能である。なお、振動モータ41のその他の効果は、第1実施形態の振動モータ1と同一である。
【0112】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態に係る振動モータ51の構成について説明する。第1〜4実施形態では、コイル基板の筒型ヨークへの挿入方向に対して垂直な方向に可動部を移動させる構成であったが、本実施形態は、コイル基板の筒型ヨークへの挿入方向に沿って可動部を移動させる構成である。振動モータ51では、第1実施形態の可動部の磁石及びコイル基板の向きを90度異ならせることにより、可動部の移動方向を異ならせている。
【0113】
図16(a)は振動モータ51の内部構造を説明するための上面図であり、図16(b)は図16(a)のA−A’断面図であり、図16(c)は図16(a)のB−B’断面図である。図17(a)はコイル基板3の上層に形成された平面コイル9の上面図であり、図17(b)はコイル基板3の下層に形成された平面コイル9の上面図である。なお、第1実施形態の振動モータ1と同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して説明は省略する。
【0114】
振動モータ51は、可動部52と、コイル基板3と、皿付きバネ54と、上側筐体5aと、下側筐体5bとから構成されている。
【0115】
可動部52は、第1実施形態の可動部2と同様に、磁石6と、筒型ヨーク7と、側面用ヨーク8とから構成されているが、筒型ヨーク7内において磁石6を固定する方向が可動部2とは90度異なっている。すなわち、可動部52では、磁石6の領域61、62及び中性領域63が筒型ヨーク7の開口面と平行に延びるように、磁石6が筒型ヨーク7の内壁底面に固定されている。
【0116】
コイル基板3に形成された平面コイル9は、図17(a)、(b)に示すように、コイル基板3の短手方向に沿って延びる複数のコイル線を含む領域9C、9Dを有しており、領域ごとに同じ方向に電流が流れるように形成されている。振動モータ51では、磁石6及び平面コイル9の位置関係が、図16(b)に示すように、平面コイル9の領域9C、9Dと磁石6のN極面6A、S極面6Bとがそれぞれ重畳するように配置されている。
【0117】
皿付きバネ54は、2つの板バネ54a、54bと、受皿54cとが一体的に形成されている。皿付きバネ54は、受皿54c上に可動部52を搭載し、可動部52の移動方向における両側面を板バネ54a、54bによって挟みこんで支持し、可動部52の移動を受け止めるものである。
【0118】
可動部52の移動方向における両側面は、筒型ヨーク7の開口面であり、その開口面には磁石6が設けられている部分を塞ぐように配置された側面用ヨーク8の側面領域8aが設けられている。そのため、板バネ54a、54bは、側面領域8aを支持しており、その高さはコイル基板3と接触しないように設計されている。なお、皿付きバネ54のその他の構成は、第1実施形態の皿付きバネ4と同一であるので説明は省略する。
【0119】
次に、振動モータ51の駆動方法について説明する。
【0120】
振動モータ51の駆動方法は、第1実施形態の振動モータ1の駆動方法と同様であり、平面コイル9の領域9C、9Dに流れる電流が、磁石6のN極面6A上、S極面6B上の磁界から力を受けることにより、可動部52がコイル基板3の長手方向に沿って移動する。可動部52の移動方向における側面は、筒型ヨーク7の開口面であるために、筒型ヨーク7の内壁側面がコイル基板3に衝突することなく、可動部52は移動することができる。
【0121】
以下に、第5実施形態の振動モータ51の効果について説明する。
【0122】
(14)振動モータ51は、コイル基板3の筒型ヨーク7への挿入方向に沿って可動部52を移動させている。これにより、第1〜第4実施形態のように、コイル基板の筒型ヨークへの挿入方向に対して垂直な方向に可動部を移動させる場合と比較して、可動部の移動距離を大きくすることができ、振動量を増大させることが可能である。
【0123】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態に係る振動モータ61の構成について説明する。振動モータ61は、第3実施形態の振動モータ31の構成を、第5実施形態の振動モータ51のように、コイル基板の筒型ヨークへの挿入方向に沿って可動部を移動させる構成に変更したものである。振動モータ61は、第3実施形態の振動モータ31と比較して、コイル基板に形成された2つの平面コイルの配置方向を異ならせることにより、可動部の移動方向を異ならせている。
【0124】
図18(a)は振動モータ51の内部構造を説明するための上面図であり、図18(b)は図18(a)のA−A’断面図であり、図18(c)は図18(a)のB−B’断面図である。図19(a)はコイル基板63の上層に形成された平面コイル69、70の上面図であり、図19(b)はコイル基板63の下層に形成された平面コイル69、70の上面図である。なお、第3、5実施形態の振動モータ31、51と同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して説明は省略する。
【0125】
振動モータ61は、可動部62と、コイル基板63と、皿付きバネ54と、上側筐体5aと、下側筐体5bとから構成されている。
【0126】
可動部62は、磁石66と、筒型ヨーク7と、側面用ヨーク8とから構成されている。磁石66は、第3実施形態の磁石36と同様に、その厚み方向に一対の磁極を有するように着磁されているが、その短手方向の長さは筒型ヨーク7の内壁面の短手方向の長さと略同一となるように構成されている。
【0127】
コイル基板63は、図19(a)、(b)に示すように、矩形状の基板であり、内部に2層の渦巻き状の2つの平面コイル69、70が形成されている。平面コイル69、70は、コイル基板63の長手方向に沿って順番に形成されている。なお、コイル基板63のその他の構成は、第3実施形態のコイル基板33と同一であるので説明は省略する。
【0128】
振動モータ61の駆動方法は、第3実施形態の振動モータ31と同様であり、平面コイル69、70に流れる電流が、磁石36の磁界から力を受けることにより、可動部62が移動する。ここで、平面コイル69、70はコイル基板63の長手方向に沿って順番に形成されているため、可動部62はコイル基板63の長手方向、すなわちコイル基板63の筒型ヨーク7への挿入方向に沿って移動する。
【0129】
なお、振動モータ61の効果は、第3、第5実施形態の振動モータ31、51と同一であるので説明は省略する。
【0130】
〔携帯電話機〕
次に、本発明に係る携帯電話機について図20及び図21を参照して説明する。図20は、本実施形態の携帯電話機100について説明するための上面図である。図21は、図20に示す携帯電話機100のX−X’断面図である。
【0131】
携帯電話機100は、図20及び図21に示すように、第1実施形態の振動モータ1と、表示部101と、CPU102とを備えている。
【0132】
振動モータ1は、携帯電話機100を振動させるためのものであり、図21に示すように、携帯電話機100の内部において、表示部101が配置された側とは反対側の面に固定されている。表示部101は、タッチパネル方式のパネルにより構成されており、ユーザが表示部101に表示されたボタン部101aを押圧することにより携帯電話100を操作するためのものである。そして、CPU102は、携帯電話機100の種々の機能を制御するものであり、ボタン部101aが押圧されたことを検知した場合や、電話を着信した際にマナーモードに設定されている場合等に、振動モータ1が振動するように制御している。
【0133】
以下に、本実施形態の携帯電話機100の効果について説明する。
【0134】
(15)携帯電話機100は、薄型化を図ることが可能であるとともに、板バネ4a、4bの設計自由度が高い第1実施形態の振動モータ1を搭載している。これにより、装置全体を薄型化すること可能であり、さらに、ユーザが認識できる十分な振動量を得ることが可能である。
【0135】
なお、本実施形態では、第1実施形態の振動モータ1が携帯電話機に搭載された構成について説明したが、本発明はこれに限られず、振動モータ1はPDA等の他の携帯機器に搭載されていてもよい。特に、タッチパネルを用いた携帯機器において、振動モータ1は好適に用いられる。
【0136】
また、本実施形態では、第1実施形態の振動モータ1が搭載される例について説明したが、第2〜第6実施形態の振動モータも好適に搭載することができることは言うまでもない。
【0137】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0138】
1、21、31、41、51、61 振動モータ
2、22、32、42、52、62 可動部
3、33、63 コイル基板
4、44、54 皿付きバネ(弾性部材)
5 筐体(固定部)
5a 上側筐体(固定部)
5b 下側筐体(固定部)
6、26、36、66 磁石
7 筒型ヨーク
8、28 側面用ヨーク
9、39、40、69、70 平面コイル(コイル)
61、62 領域(第1磁極対、第2磁極対)
63 中性領域
100 携帯電話機(携帯機器)
101 表示部
102 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部と、
1対の磁極を有する第1磁極対及び第2磁極対を含む磁石と、
前記磁石の磁束と鎖交して配置され、前記磁石を移動させるコイルと、
前記磁石の移動方向において前記固定部と前記磁石との間に配置された弾性部材とを備え、
前記磁石は、前記第1磁極対及び前記第2磁極対が前記コイルと対向する側において異なる磁極を有しており、前記第1磁極対と前記第2磁極対との間には磁性材料からなる中性領域が形成されていることを特徴とする振動モータ。
【請求項2】
前記コイルは、第1の方向へ電流が流れる第1領域及び前記第1の方向とは反対方向の第2の方向へ電流が流れる第2領域を含み、
前記磁石及び前記コイルは、前記第1領域を流れる電流が前記第1磁極対に対して移動させる力を与え、前記第2領域を流れる電流が前記第2磁極対に対して移動させる力を与えるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の振動モータ。
【請求項3】
前記磁石と前記コイルとの位置関係は、前記磁石を一の方向に最大に移動させた場合に、前記第1領域と前記第2磁極対とが重畳する面積よりも、前記第1領域と前記第1磁極対とが重畳する面積の方が大きくなり、前記磁石を他の方向に最大に移動させた場合に、前記第2領域と前記第1磁極対とが重畳する面積よりも、前記第2領域と前記第2磁極対とが重畳する面積の方が大きくなるように設計されていることを特徴とする請求項2に記載の振動モータ。
【請求項4】
前記磁石と前記コイルとの位置関係は、前記磁石を一の方向に最大に移動させた場合に、前記第1領域と前記第2磁極対とが重畳せず、前記磁石を他の方向に最大に移動させた場合に、前記第2領域と前記第1磁極対とが重畳しないように設計されていることを特徴とする請求項3に記載の振動モータ。
【請求項5】
前記磁石と前記コイルとの前記位置関係は、前記中性領域の幅により調整されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の振動モータ。
【請求項6】
前記磁石と前記コイルとの前記位置関係は、前記弾性部材により調整されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の振動モータ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の振動モータを備えることを特徴とする携帯機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−213462(P2010−213462A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56903(P2009−56903)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】