説明

振動締固め機の防振ハンドル

【課題】 従来の作業機の操作ハンドルは、防振ゴムの両端をハンドルロッドとグリップバーとの間に挟むように連結する構造であり、ハンドルロッドの振動を防振ゴムの捩れにより吸収するものであるため、ハンドルロッドの振動を低減できるという程度の作用しか得られない。
【解決手段】グリップバー2をハンドルロッド1の上端に揺動可能に軸着して、グリップバー2が揺動した際の振れによるショックをハンドルロッド1に設けたストッパゴム10により吸収させ、揺動可能な軸着部とストッパゴム10とによりグリップバー2の振動を効率よく吸収できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、プレートコンパクター、バイブロコンパクターなどのような、振動により路盤等を締固める作業機の防振ハンドルの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、この種の作業機では、機体を操作するための操作ハンドルが作業機の後部上方へ突出していて、機体に発生する振動が操作ハンドルに伝達されるので、操作ハンドルを保持している作業者に作業機の振動が直接伝えられ、作業者が振動による障害を受けるとうい問題がある。
【0003】
そのため、従来よりこの種の作業機においては、どのようにすれば、操作ハンドルに伝達される機体からの振動を軽減できるか、ということが古くから課題とされており、基本的な考えとしては、例えば、左右のハンドルロッドの上端に防振ゴムの一端を連結するとともに、この防振ゴムの他端に把手バーの一端を連結して、ハンドルロッドから伝えられる振動が防振ゴムにより吸収されて、把手バーには振動が伝わらないようにするという構造によって対応していた。
【0004】
【特許文献1】実開昭54−0607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この種のハンドル防振手段は、防振ゴムの両端をハンドルロッドの上端と把手バーの一端との間に挟むようにして一体に固着連結する構造であるため、ハンドルロッドと把手バーとが防振ゴムを介して一体物として連結構成されることになり、原理的には、ハンドルロッドの振動を防振ゴムの捩れにより吸収して、把手バーに振動が伝わらないようにするものであるため、いかに優れた防振ゴムを使用しても、この構造ではハンドルロッドから伝えられる振動が、把手バーに伝わらないようにすることは不可能であり、せいぜい振動を低減できるという程度の作用しか得られないという問題があった。
【0006】
本発明は、この種の作業機用操作ハンドルにおける防振ゴムを用いた場合の問題点を解消するため、ハンドルロッドの振動を防振ゴムの捩れにより吸収するのではなく、把手バーをハンドルロッドの上端に揺動可能な状態で軸着して、把手バーが回動した際の振れ角ショックをハンドルロッドに設けたストッパゴムにより吸収させ、揺動可能な軸着部とストッパゴムとにより把手バーの振動を効率よく吸収できるようにした振動締固め機用防振ハンドルの提供を目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、従来の振動締固め機用防振ハンドルにおける上記のような問題点を解消するための手段として、振動により路盤等を締固める作業機の防振ハンドルであって、下端が作業機の両側に接続された左右のハンドルロッドと、このロッドの上端に、機体の前後方向へ揺動可能なるように軸着されたU字形グリップバーとからなり、前記ロッドの上端には軸受けと、該軸受けの下方に環状のストッパゴムとを備え、前記グリップバーの両側接続脚下端には、前記軸受けに連結軸を挿通して前記ロッドと前記グリップバーとを連結する接続金具を備え、この接続金具の下面には、前記軸受けを挿入し得る大きさで、内周縁を前記ストッパゴムにより支持するための挿入口を有していることを特徴とする。
【0008】
グリップバーの接続金具は、一方の側面にボルト孔の開設された側壁を有し、他方の側面は側壁のない開口端を有する横向き円筒体からなっていて、下面の挿入口を通して接続金具内へ挿入された軸受けの軸孔に、前記開口端側から該開口端を閉塞する蓋板を有する筒形ナット軸を遊挿し、側壁を有する側面のボルト孔からボルトを前記ナット軸内へ螺着して、ハンドルロッドの軸受けと連結する構造とすることにより得られる。
【0009】
また、グリップバーの接続金具は、一方の側面にボルト孔の開設された側壁と、他方の側面に側壁のない開口端と、上端に山形の接続面とを有する縦向き円筒体からなっていて、下面の挿入口を通して接続金具内へ挿入された軸受けの軸孔に、前記開口端側から該開口端を閉塞する蓋板を有する筒形ナット軸を遊挿し、側壁を有する側面のボルト孔からボルトを前記ナット軸内へ螺着して、ハンドルロッドの軸受けと連結するような構造としてもよい。
【0010】
グリップバーの両側の接続脚の間には、水平なパイプによるバーが形成されるが、このパイプ製バー内には、バーの質量を付加するための機能を果たす金属製中実部を設けておくことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の操作ハンドルでは、ハンドルロッドの上端に設けた軸受けと、グリップバーの接続脚下端に設けた接続金具の連結軸とを揺動可能に軸着したので、グリップバーはハンドルロッドに対して連結軸を中心に揺動可能に軸着されることになり、そのままでは、グリップバーにハンドルロッドの振動が直接伝えられて、防振手段とはならない。
【0012】
しかし、連結軸を備えた接続金具は、下面にハンドルロッド上端の軸受けを挿入するための挿入口が開設されていて、この挿入口の内周縁が、ハンドルロッドの軸受けの下方に設けたストッパゴムにより支持されているので、振動によりグリップバーが揺動した際の振れ角を、この挿入口がストッパゴムと接触して、グリップバーの振れに伴うショックを的確に吸収し、グリップバーの手元振動を効率よく逃がすことができる。
【0013】
グリップバーの両接続脚間の水平部を形成するパイプ内に、質量を付加するための金属製中実部を設けた場合には、グリップバーが振動により前後方向へ振れようとする力に対して、中実部が抵抗を与え、振動を制御する機能を発揮し、作業者が感じるグリップバーの振動を吸収することができる。
【0014】
ハンドルロッドの軸受けの下方の設けられるストッパゴムは、環状のゴムを軸受けの下方に嵌合するだけの構造で足りるため、従来のこの種の防振手段に用いられる防振ゴムのように、捩れる方向に使用されていないので耐久性があり、しかも、接続用のボルトをゴムと一体的に融着する必要がないので、安価で効率のよい防振手段を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
ハンドルロッドの上端に接続されるグリップバーは、両側の接続脚を、ハンドルロッドに対して、上方へ向け90度の角度をもって折り曲げられるような形状とし、このグリップバー内には質量を付加するための中実部を設けておくことが好ましい。
【実施例】
【0016】
次に、本発明に係る振動締固め機の防振ハンドルの実施例を図面に基づいて説明すると、図1は、本発明の防振ハンドルを構成する左右一対のハンドルロッド1と、このハンドルロッドの上端に設けられるようにU字形に折曲げられたグリップバー2と、これらのハンドルロッド1とグリップバー2とを連結するための各種部品の構成を示す組み立て説明図である。
【0017】
ハンドルロッド1は、図2に示すように、振動締固め機3の側面から斜め後方へ傾斜状に突出しており、一方、グリップバー2は、両側の接続脚4が、ハンドルロッド1に対して、上方へ向け90度の角度をもって折り曲げられるように突出しているとともに、図3に示すように、両側の接続脚4,4の間の水平部を形成するパイプ2a内には、このバーパイプの質量を付加するための金属製中実部20が設けられている。
【0018】
図1に示すように、ハンドルロッド1の上端と、前記グリップバー2の両側の接続脚4とは、後に述べる接続金具5を介して、機体の前後方向へ揺動可能に軸着されることで構成されている。
【0019】
前記ハンドルロッド1の上端には、図1に示すように、これら左右のハンドルロッド1,1の上端間を結ぶ軸線Aが通る向きの軸孔7をもった軸受け6が突設されているが、図3及び図4のように、この軸受け6の下端には、ハンドルロッド1の上端内に挿着される差込み軸8と、この差込み軸8の上部に設けられるフランジ9と、このフランジ9の上部に設けられた前記軸受け6を突設する基軸11と、この基軸11の外周に嵌合されてフランジ9により所定の位置に支持される環状のストッパゴム10とが設けられている。
【0020】
一方、グリップバー2の接続脚4の下端には、この接続脚4の下端をハンドルロッド1の上端の軸受け6に接続するための接続金具5が設けられている。この接続金具5は、左右のハンドルロッド1,1の上端間を結ぶ軸線Aと平行な横向きの円筒体12からなっていて、一方の側面にボルト孔14の開設された側壁13を有し、他方の側面は側壁のない開口端15となっていて、円筒体12の上部周面にグリップバー接続脚4の下端4aが溶接されるとともに、円筒体12の下部周面には、ハンドルロッド1の軸受け6を内部に挿入するための挿入口16が設けられている。
【0021】
ハンドルロッド1の上端の軸受け6と、グリップバー接続脚4の接続金具5とを連結する際には、ハンドルロッド1の軸受け6が、グリップバー接続金具5の下部周面に設けられた挿入口16内へ挿入されるように配置して、接続金具5内へ挿入された軸受け6の軸孔7に向けて、接続金具5の開口端15側から、一端に該開口端15を閉塞するような大きさの蓋板17を有する筒形ナット軸18を遊挿し、反対側の側壁13に開設されたボルト孔14から前記ボルト19を前記筒形ナット軸18内へ螺着することで、ハンドルロッド1の軸受け6とグリップバー2の接続金具5とを揺動可能なるように連結する。
【0022】
このようにしてハンドルロッド1の軸受け6とグリップバー2の接続金具5とが、筒形ナット軸18を中心に揺動可能に連結されていると、図3に示すように、グリップバー2が矢印Bの方向へ回動した際、接続金具5における内側の挿入口内周面16bが、ストッパゴム10の外周面と接触し、また、グリップバー2が矢印Cの方向へ回動した際には、接続金具5における外側の挿入口内周面16cが、ストッパゴム10の外周面と接触し、いずれもストッパゴム10がグリップバー2の揺動角を規制するとともに、グリップバー2の振れ角度を抑制する際のショックを吸収する。
【0023】
また、図3に示すように、グリップバー2の両接続脚4,4間の水平部を形成するパイプ2a内に、質量を付加するための金属製中実部20を設けた場合には、グリップバー2が筒形ナット軸18を中心に矢印B及びCの方向へ揺動しようとする力に対し、中実部20が反力としての抵抗力を与えて、振動を制御する機能を発揮し、作業者が感じるグリップバーの手元振動を効率よく逃がすことができる。
【0024】
図7、図8は、接続金具5の別の実施例であり、前の実施例では、接続金具5が、左右のハンドルロッド1,1の上端間を結ぶ軸線Aと平行な横向きの円筒体12からなっていたのに対し、この実施例では、接続金具5が左右のハンドルロッド1,1の上端間を結ぶ軸線Aと直交する縦向きの円筒体22から構成されている点が相違する。
【0025】
この実施例では、円筒体22の一方の側面にボルト孔24の開設された側壁23を設け、他方の側面には側壁のない開口端25を設ける点は、先の実施例の場合と同じであるが、円筒体22の上端を山形として、グリップバー接続脚4の下端4aを円筒体22の上端に溶接し易くするとともに、ストッパゴム10と接触する円筒体22の下端は開口端を挿入口26としてそのまま利用できるので、先の実施例の横向き円筒体12のように、円筒体周面に挿入口16をガスバーナで開設する必要がなく、コストの低減化を図ることができること、さらに、挿入口を大きくして、ストッパゴムの厚さを大きなものに設定できるので、振動の吸収を良好にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の防振ハンドルでは、ハンドルロッドの上端とグリップバーの接続脚下端とを揺動可能に軸着する構造とし、グリップバー接続脚が揺動する際の振れ角度をストッパゴムにより吸収するようにしたので、従来形の防振ゴムを用いるこの種の防振ハンドルに比較して、振動の吸収が良好で、コストの低い製品を提供できるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る操作ハンドルの組立て前の部品構成を示す斜視図。
【図2】この操作ハンドルが適用される振動締固め機の側面図。
【図3】ハンドルロッドとグリップバーの接続部をハンドルロッドの側面方向から見た部分断面図。
【図4】ハンドルロッドとグリップバーの接続部をハンドルロッドの前面方向から見た部分断面図。
【図5】ハンドルロッドとグリップバーの接続部の接続前の部材形状を示す部分斜視図。
【図6】同じくハンドルロッドとグリップバーの接続部の接続後の部材形状を示す部分斜視図。
【図7】ハンドルロッドとグリップバーの接続部に用いられる接続金具の別の実施例形状を示す斜視図。
【図8】図7の接続金具を縦断した状態の断面図。
【符号の説明】
【0028】
1:ハンドルロッド、
2:グリップバー、
3:振動締固め機、
4:接続脚、
5:接続金具、
6:軸受け、
7:軸孔、
8:差込み軸、
9:フランジ、
10:ストッパゴム、
11:基軸、
12:円筒体、
13:側壁、
14:ボルト孔、
15:開口端、
16:挿入口、
17:蓋板、
18:ナット軸、
19:ボルト、
20:中実部、
22:円筒体、
23:側壁、
24:ボルト孔、
25:開口端、
26:挿入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動により路盤等を締固める作業機の防振ハンドルであって、下端が作業機の両側に接続された左右のハンドルロッドと、このロッドの上端に、機体の前後方向へ揺動可能なるように軸着されたU字形グリップバーとからなり、前記ロッドの上端には軸受けと、該軸受けの下方に環状のストッパゴムとを備え、前記グリップバーの両側接続脚下端には、前記軸受けに連結軸を挿通して前記ロッドと前記グリップバーとを連結する接続金具を備え、この接続金具の下面には、前記軸受けを挿入し得る大きさで、内周縁を前記ストッパゴムにより支持するための挿入口を有している振動締固め機の防振ハンドル。
【請求項2】
グリップバーの接続金具が、一方の側面にボルト孔の開設された側壁を有し、他方の側面は側壁のない開口端を有する横向き円筒体からなっていて、下面の挿入口を通して接続金具内へ挿入された軸受けの軸孔に、前記開口端側から該開口端を閉塞する蓋板を有する筒形ナット軸を遊挿し、側壁を有する側面のボルト孔からボルトを前記ナット軸内へ螺着して、ハンドルロッドの軸受けと連結した請求項1の振動締固め機の防振ハンドル。
【請求項3】
グリップバーの接続金具が、一方の側面にボルト孔の開設された側壁と、他方の側面に側壁のない開口端と、上端に山形の接続面とを有する縦向き円筒体からなっていて、下面の挿入口を通して接続金具内へ挿入された軸受けの軸孔に、前記開口端側から該開口端を閉塞する蓋板を有する筒形ナット軸を遊挿し、側壁を有する側面のボルト孔からボルトを前記ナット軸内へ螺着して、ハンドルロッドの軸受けと連結した請求項1の振動締固め機の防振ハンドル。
【請求項4】
グリップバーの両接続脚間の水平部を形成するパイプ内に、バーの質量を付加するための機能を有する金属製中実部が設けられている請求項1の振動締固め機の防振ハンドル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−336424(P2006−336424A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−165892(P2005−165892)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(000175386)三笠産業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】