説明

振動軽減舗装及び振動軽減舗装への補修方法

【課題】振動軽減効果を高めながら、基層と表層の間に敷設するシートをアスファルト系の材料で構成することにより、シートと基層や表層との密着性を高めるとともに施工時に特別な配慮をしなくても確実な効果を有する振動軽減舗装を提供すること。
【解決手段】表層を切削して基層用アスファルト混合物8からなる基層を露出させ、露出した前記基層の表面の平滑処理をした後または平滑処理を省略し、繊維系織布を基材としてこの基材の上面及び下面にそれぞれアスファルトが積層されているシート9を敷設し、その上に表層用アスファルト混合物10からなる表層を敷設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、道路交通の振動を軽減した振動軽減舗装及び振動軽減舗装への補修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
主要幹線道路周辺の生活環境は、騒音・振動及び大気汚染などの交通公害によって著しく損なわれている。特に、近年の大量輸送における交通量の増加、車両の大型化、高速化、あるいは舗装の老朽化により交通振動に対する苦情は年々増加している。
【0003】
そして振動を軽減するためには、従来は基本的には路床改良や路盤強化といった全層打換えによる大規模な対策が必要とされている。
【0004】
しかし、路床改良や路盤強化は大規模な工事を必要とするので、なかなか実行することは困難である。そこで、全層打換えを必要としない振動軽減舗装が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には開粒度アスファルト混合物からなる基層の表面にガラス繊維からなる格子状シートを敷設し、その上にアスファルト混合物からなる表層を設けた振動軽減型アスファルト舗装体が示されている。
【0006】
また、特許文献2には振動軽減舗装体に使用することを目的として、制振性ゴム系シートの両面にガラス繊維織物を積層したものが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−137728号公報
【特許文献2】特開2006−249674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に示されるものにあっては、特許文献1にも記載されているようにガラス繊維製シートを敷設することによるアスファルト混合物の振動軽減効果は0.6dB程度であり、これ単独では振動軽減効果が不十分である。一方、基層を骨材の最大粒径が20mmで空隙率か20%である高粘度アスファルトを使用した開粒度アスファルト混合物とし、表層を骨材の最大粒径が13mmである高粘度アスファルトを使用した砕石マスチック混合物とし、これの間にガラス繊維製シートを敷設した場合の振動軽減効果は約3dBであり、振動軽減舗装としての役割は果たしている。
【0009】
また、特許文献2に示されるものにあっては、制振性ゴム系シートの両面にガラス繊維織物が積層されているため、シートと表層や基層との接着性を高めるため、シートはガラス繊維織物に熱接着性樹脂からなるフィルムが積層されている。そして、熱接着性樹脂の例としてポリオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂が示されている。
【0010】
特許文献1に示されるものにあっては、基層を骨材の最大粒径が20mmで空隙率が20%である高粘度アスファルトを使用した開粒度アスファルト混合物とする必要がある。したがって補修により特許文献1の振動軽減型アスファルト舗装体を構築するためには、表層と基層の全部を切削して除去し、基層から新規に舗設工事を行う必要がある。補修工事においては、道路の閉鎖期間を極力短くするために工期短縮が望まれるが、特許文献1の振動軽減型アスファルト舗装体を補修工事により行うためには最低2日を要する。振動軽減舗装が必要とされるのは基本的には交通量の多い道路であるので、工事期間は可能な限り短く、できれば1日で工事を完了させ即日交通開放することが望まれている。
【0011】
また、特許文献2に示されるものにあっては制振ゴムを使用することによりそれなりの効果は認められるが、基層や表層のアスファルトとの接着性を確保するために熱接着性樹脂をシートに予め塗布などしておく必要がある。道路に使用する材料は使用量が多いので可能な限り安価に製造できるものが望ましく、また耐久性や施工効果の確保の面などからも特殊な工法を用いなくてもほぼ同一の効果が実現されることが求められる。
【0012】
特許文献2に示されるものはこれらの要求に対し、シートの製造工程が複雑でありまた熱接着性樹脂を使用することによりシートの製造原価が高くなってしまう。さらに、シートを基層や表層と確実に接着させるためには、特別の作業工程が要求される。
【0013】
すなわち、振動軽減舗装としては簡易な工事で約3dB程度の振動軽減効果が望まれるとともに、そのために使用するシートは極力安価に提供されるとともに、施工に特別な配慮をしなくても一定レベルの振動軽減効果が確保されるようなものが望まれる。特に既存道路に対して補修工事により施工する場合は、このような道路は通常交通量が非常に多い道路であるので、きわめて短期間、例えば工事着手から道路開放までを一日で行えることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは振動軽減効果を高めながら、基層と表層の間に敷設するシートをアスファルト系の材料をメインとして構成することにより、シートと基層や表層との密着性を高めるとともに施工時に特別な配慮をしなくても確実な効果を有する振動軽減舗装を提供することである。
【0015】
上記の目的を達成するために、この発明に係る振動軽減舗装は、アスファルト混合物からなる基層とアスファルト混合物からなる表層の間に、繊維系織布を基材としてこの基材の上面及び下面にそれぞれアスファルトが積層されているシートが敷設されていることを特徴としている。
【0016】
また、この発明の振動軽減舗装においては、前記繊維系織布は、ガラス繊維織布であるのが好ましい。
【0017】
また、この発明の振動軽減舗装においては、前記繊維系織布は、合成繊維不織布であるのが好ましい。
【0018】
また、この発明の振動軽減舗装においては、前記基材上面のアスファルトは、ポリオレフィンにより改質されたアスファルトであるのが好ましい。
【0019】
また、この発明の振動軽減舗装においては、前記基材上面のアスファルトは、熱可塑性ゴムにより改質されたアスファルトであるのが好ましい。
【0020】
また、この発明の振動軽減舗装においては、前記基材下面のアスファルトは、ポリオレフィンにより改質されたアスファルトであるのが好ましい。
【0021】
また、この発明の振動軽減舗装においては、前記基材下面のアスファルトは、熱可塑性ゴムにより改質されたアスファルトであるのが好ましい。
【0022】
また、この発明に係る振動軽減舗装への補修方法は、表層を切削してアスファルト混合物からなる基層を露出させ、露出した基層表面の平滑処理をした後または平滑処理を省略し、繊維系織布を基材としてこの基材の上面及び下面にそれぞれアスファルトが積層されているシートを敷設し、その上にアスファルト混合物からなる表層を敷設したことを特徴としている。
【0023】
また、この発明に係る振動軽減舗装への補修方法は、表層及び基層の一部を切削してアスファルト混合物からなる基層を露出させ、露出した基層表面に必要な高さの新設基層を敷設した後、繊維系織布を基材としてこの基材の上面及び下面にそれぞれアスファルトが積層されているシートを敷設し、その上にアスファルト混合物からなる表層を敷設したことを特徴としている。
【0024】
また、この発明の振動軽減舗装への補修方法においては、前記繊維系織布は、ガラス繊維織布であるのが好ましい。
【0025】
また、この発明の振動軽減舗装への補修方法においては、前記繊維系織布は、合成繊維不織布であるのが好ましい。
【0026】
また、この発明の振動軽減舗装への補修方法においては、前記基材上面のアスファルトは、ポリオレフィンにより改質されたアスファルトであるのが好ましい。
【0027】
また、この発明の振動軽減舗装への補修方法においては、前記基材上面のアスファルトは、熱可塑性ゴムにより改質されたアスファルトであるのが好ましい。
【0028】
また、この発明の振動軽減舗装への補修方法においては、前記基材下面のアスファルトは、ポリオレフィンにより改質されたアスファルトであるのが好ましい。
【0029】
また、この発明の振動軽減舗装への補修方法においては、前記基材下面のアスファルトは、熱可塑性ゴムにより改質されたアスファルトであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
この発明に係る振動軽減舗装によれば、振動軽減効果を高めながら、基層と表層の間に敷設するシートをアスファルト系の材料で構成することにより、シートと基層や表層との密着性を高めるとともに施工時に特別な配慮をしなくても確実な効果を有する振動軽減舗装を提供することができる。
【0031】
また、この発明に係る振動軽減舗装への補修方法によれば、既存のアスファルト舗装道路の表層又は表基層の切削オーバーレイ工法で対処できるので短時間で工事を完了させることができ、しかも省資源かつ低コストで、確実な振動軽減効果を有する舗装へと補修できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明で使用するシートの断面図である。
【図2】振動減衰特性試験結果とホイールトラッキング試験結果を示すグラフである。
【図3】本発明のシートとガラス繊維をシートとして使用した場合の振動低減量と損失係数の比較を示すグラフである。
【図4】本発明の振動軽減舗装と、従来の一般的な舗装での層間接着性の比較を示すグラフである。
【図5】本発明の振動軽減舗装を示す断面図である。
【図6】本発明の振動軽減舗装と、従来の一般的な舗装での振動測定結果を示すグラフである。
【図7】本発明の振動軽減舗装への補修方法を示す断面図であり、(a)は補修前の道路舗装を示すものであり、(b)は補修後の舗装を示すものである。
【図8】本発明の振動軽減舗装への補修方法により補修した道路の、補修前と補修後の振動測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
先ず、予備実験を含め本発明の基本的な原理について説明する。先ず始めに本発明で使用するシートの一例を図1に基づいて説明する。シートは目付けが80〜200g/m2の繊維系織布を基材としてこれの上下面にそれぞれアスファルトが積層されている。例えばガラス繊維織布または合成繊維不織布の基材1の両面にアスファルト層が設けられている。敷設後に表層側となる基材1上面のアスファルト層2は薄く、基層側となる基材1下面のアスファルト層3は厚く形成されている。
【0034】
表層側となるアスファルト層2はAPP(アタクチック・ポリプロピレン)等のポリオレフィンにより改質されたアスファルトまたはSBS等の熱可塑性ゴムにより改質されたアスファルトが積層され、その表面には鉱物質粒子4が固着されている。鉱物質粒子4は敷設時にその上を歩いたりした場合にアスファルトが靴底にくっついたりすることを防止するためのものであり、シートとしての機能自体には関係しないものである。なお、アスファルト層2は改質系のアスファルトでなくてもよく、また改質系のアスファルトの場合も上記に限定されるものではない。
【0035】
また基層側となるアスファルト層3はAPP等のポリオレフィンにより改質されたアスファルトまたはSBS等の熱可塑性ゴムにより改質されたアスファルトが積層され、その下面にはフィルム5もしくは鉱物質粒子または粘着シール用はく離フィルムが設けられている。フィルム5や鉱物質粒子等はシートをロール状に巻いた場合に接する面がくっついてしまうことを防止するためのものであり、シートとしての機能自体には関係しないものである。なお、アスファルト層3は改質系のアスファルトでなくてもよく、また改質系のアスファルトの場合も上記に限定されるものではない。
【0036】
基材1は繊維系織布により構成され、その引っ張り特性によりシートの強度を確保するために使用されているものである。必要な強度を確保できればその材質に制限はなく、例えば合成繊維不織布としてはポリエステル繊維の不織布でもよいが、リサイクル性などを考慮するとガラス繊維で構成されているものが望ましい。
【0037】
アスファルト層2,3はその弾性特性により振動軽減効果を発揮するものであるとともに、基層や表層と同系統の素材(アスファルトまたは改質アスファルト)とすることにより格別の処置を行わなくとも自然に接着する特性を有するものである。なお、振動軽減効果を発揮するアスファルト層は基材1よりも下側の方が大きいので基層側に面することとなるアスファルト層3を厚くする。なお、シートは厚いほど振動軽減効果は大きいが、後述するように3mm〜4mm程度の厚さがあればよい。
【0038】
具体的には例えばアスファルト層2,3の層厚は、基材1の上面(表層側)のアスファルト層2では0.5〜1.0mm、下面(基層側)のアスファルト層3では1.5〜3.0mm程度とする。
基材1よりも下側のアスファルト層3を厚くするのは、振動は鉛直方向へ伝搬するので、基層に近い下面のアスファルト層3が厚いほうが減衰性の点で好ましく振動軽減効果を高められるからである。さらに、車両走行時、アスファルト舗装体がたわむと上面と比較して下面に大きな引張応力が働くので、シートが繰り返しのたわみにより破損すること防止するためでもある。
【0039】
また、基材1の上面のアスファルト層2は表層のアスファルト舗装の舗設時に、表層となるアスファルト混合物の熱によって溶融して表層との強い接着力が得られるような性状のものを使用する。例えば、軟化点が80〜160℃のものを用い、170〜200℃の温度域でアスファルトの粘度が500〜30,000cpsであるが、できれば3,000〜15,000cpsを示すものがより望ましい。
【0040】
一方、基材1の下面のアスファルト層3は、舗設時の熱で溶融して基層との接着力を確保するだけでなく、発生した振動エネルギーを減衰させる効果を有するものを使用する。例えば、軟化点は80〜160℃のものを用い、同温度域でアスファルト粘度が1,000〜200,000cpsであるが、できれば10,000〜80,000cpsの方がより熱安定性や減衰性に優れているため望ましい。
【0041】
次に、シートの厚さの相違による振動減衰効果の差とホイールトラッキング試験結果の差を図2に基づいて説明する。
シートとしては上記図1に示す構造のものを使用し、アスファルト層3の厚さを変更することによりシートの厚さを2.0mm、3.5mm、5.0mm、7.0mmのものにより実験を行った。また図2において、厚さ0mmはシート不使用の場合である。
【0042】
振動減衰特性試験については、シートの上面と下面をそれぞれ厚さ5cmのポーラスアスファルト混合物で挟むようにした幅15cm、長さ50cmの供試体を作成し、これを「JIS G 0602 制振鋼板の振動減衰特性試験方法」を参考にしてスポンジマットの上に載せ、供試体上面にインパクトハンマーによる打撃加振を与え、その時の伝達関数と周波数の関係から損失係数を算出した。図2の試験結果に示されるように、シートは厚いほど損失係数が大きく振動軽減効果が大きいことがわかる。
【0043】
ホイールトラッキング試験については、シートの上面を厚さ5cmの密粒度アスファルト混合物(骨材最大粒径13mm以下)で、下面を粗粒度アスファルト混合物(骨材最大粒径20mm以下)で挟むようにした供試体を作成し、ホイールトラッキング試験を行い変形量を計測した。図2は動的安定度DSの結果を示すものであり、シートは薄いほど動的安定度DSの大きいことがわかる。
【0044】
図2に示す結果より、厚さ3.5mmのシートが振動軽減効果と動的安定度DSのバランスがとれているので、以下においてはこの厚さ3.5mmのシートを用いることにした。なお、シートは3mm〜4mmの厚さであれば、図2のグラフに示されているように3.5mmのものとほぼ同等の効果が得られる。
【0045】
次に、本発明で使用するシートと、ガラス繊維を制振材として使用した場合の振動低減量と損失係数の比較試験結果を図3に基づいて説明する。
【0046】
本発明の供試体としては上記図2に示す振動減衰特性試験で用いたものと同じものを使用した。ガラス繊維を制振材と使用したものについては、厚さ2.0mmのガラスグリッドの上面と下面をそれぞれ厚さ5cmのポーラスアスファルト混合物で挟むようにした幅15cm、長さ50cmの供試体を作成した。そして、これらの供試体を図2の試験と同様な方法により試験を実施し損失係数を算出した。また、損失係数より振動軽減量を推定した。これらの結果は図3に示すとおりである。本発明で使用するシートを使用した場合、ガラスグリッドを使用した場合に比べ、損失係数が0.10高い値を示し、より振動減衰性能が高いことが確認された。
【0047】
次に、本発明の振動軽減舗装と標準舗装の層間接着力の評価結果を図4に基づいて説明する。
【0048】
本発明の振動軽減舗装の供試体としてはシートの上面を厚さ5cmの密粒度アスファルト混合物(骨材最大粒径13mm以下)で、下面を粗粒度アスファルト混合物(骨材最大粒径20mm以下)で挟むようにしたものを用意し、標準舗装の供試体としてはシートを使用せずに上面を厚さ5cmの密粒度アスファルト混合物(骨材最大粒径13mm以下)とし、下面を粗粒度アスファルト混合物(骨材最大粒径20mm以下)としたものを用意した。
試験の結果、図4(a)に示されるように、両舗装とも引っ張り強度がほぼ同等であることから、シートの影響により層間接着性が低下することはほぼ無いことが確認された。
【0049】
また、浸透した雨水等により層間剥離が懸念され接着力が低下することも想定される。そこで、表層をポーラスアスファルト舗装とした場合の層間接着力を比較するために、上面を密粒度アスファルト混合物(骨材最大粒径13mm以下)に代えポーラスアスファルト混合物(骨材最大粒径13mm以下)とした供試体も用意した。
そして、層間剥離の影響をシミュレートできる水浸WT試験を実施し、試験後の接着力を確認した。試験の結果、図4(b)に示されるように水が滞留した状態で動的荷重が作用し続けても接着力は低下しないことが確認された。
【実施例1】
【0050】
次に、本発明の振動軽減舗装の一実施例を図5に基づいて説明する。
図5は本発明の振動軽減舗装を示す断面図であり、クラッシャラン(C−40)による厚さ25cmの路床6の上に、粒度調整砕石(M−40)による厚さ20cmの粒度調整路盤とその上に厚さ6cmの瀝青安定処理路盤からなる路盤7が敷設され、その上にバインダーとしてポリマーアスファルトII型を使用した砕石マスチックアスファルト混合物(骨材粒径5〜13mm)により厚さ5cmの基層用アスファルト混合物8が敷設されている。
【0051】
基層用アスファルト混合物8の上に、図1に示す厚さ3.5mmのシート9が敷設され、その上に厚さ5cmの密粒度アスファルト混合物(骨材最大粒径13mm以下)が表層用アスファルト混合物10として敷設されている。舗装工事に当たっては、通常の舗装工事と同様に必要に応じて各層ごとにローラで均されている。
【0052】
次に、上記した本発明の振動軽減舗装の振動軽減効果を確認するために、比較例として上記舗装からシート9のみ使用していない一般的な舗装との比較実験を行った実験結果を図6に基づいて説明する。
【0053】
大型荷重車による走行実験において、段差通過時に発生する振動を測定した結果、本発明の振動軽減舗装はシート9を使用していない一般的な舗装と比較して、5dB程度振動が低減することが確認された。
【実施例2】
【0054】
次に、本発明の振動軽減舗装への補修方法の実施例について説明する。
図7の(a)は補修前のアスファルト舗装の断面図を示し、(b)は本発明による補修後の断面図を示したものである。
【0055】
先ず、補修の第1段階として表層と上層路盤の一部を切削した。図示した実施例の場合は表層から深さ9cm切削した。即ち、厚さ5cmの表層全部と、厚さ10cmの瀝青安定処理路盤を上から4cm切削した。
【0056】
そして、厚さ6cmとなった瀝青安定処理路盤の上に新設基層として砕石マスチックアスファルト混合物(骨材粒径5〜13mm)を厚さ3.5cm敷設し、その表面を平らに均した。
【0057】
そして、新設基層にタックコート処理をした後図1に示す厚さ3.5mmのシートを敷設し、その上に密粒度アスファルト混合物(骨材最大粒径13mm以下)を表層として厚さ5cm敷設した。
【0058】
上記補修方法により補修した振動軽減舗装について、補修箇所における補修前との振動の比較結果を図8に示す。
【0059】
補修箇所の補修前後において一般車の走行時の時間率振動レベル、および荷重車として4tダンプ車(満載)の走行時の振動レベルピーク値を測定し比較した。測定の結果、時間率振動レベルは約3dB、振動レベルピーク値は約5dB低減し、振動軽減効果が確認された。
【実施例3】
【0060】
次に、本発明の振動軽減舗装への補修方法の他の実施例について説明する。
図7の(a)に示す補修前のアスファルト舗装について、先ず、補修の第1段階として表層のみを一般的な切削機を使用して切削して基層表面を露出させた。
【0061】
そして、切削表面にレベリング層を敷設し、その表面を平らに均した。そして、タックコート処理した後レベリング層の上に図1に示す厚さ3.5mmのシートを敷設し、その上に密粒度アスファルト混合物(骨材最大粒径13mm以下)を表層として厚さ5cm敷設した。
【0062】
なお、表層のみを切削した場合は切削表面にレベリング層を敷設してタックコート処理することに代え、アスファルトバインダを切削面に充填して、平滑に仕上げその上に直接シートを敷設しても良い。この時使用するアスファルトバインダは、現場での作業性を考慮してAPPまたはSBSで改質されたものが望ましい。
【0063】
また、表層の切削をファイン・ミリング工法により切削した場合は、切削後の路面粗さが2mm以下の平滑な切削表面が得られるので、基層表面を平らにする工程(レベリング層敷設工程)は省略できる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、道路舗装の新設時に行うことができるのは勿論のこと、既設の舗装についても基本的には表層だけを切削するだけで補修工事が行えるので、特に振動軽減が望まれる交通量の激しい道路においても短時間で補修工事を行うことができる。
【符号の説明】
【0065】
1 基材
2、3 アスファルト層
4 細砂
5 フィルム
6 路床
7 路盤
8 基層用アスファルト混合物
9 シート
10 表層用アスファルト混合物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト混合物からなる基層とアスファルト混合物からなる表層の間に、繊維系織布を基材としてこの基材の上面及び下面にそれぞれアスファルトが積層されているシートが敷設されていることを特徴とする振動軽減舗装。
【請求項2】
前記繊維系織布は、ガラス繊維織布である請求項1に記載の振動軽減舗装。
【請求項3】
前記繊維系織布は、合成繊維不織布である請求項1に記載の振動軽減舗装。
【請求項4】
前記基材上面のアスファルトは、ポリオレフィンにより改質されたアスファルトである請求項1〜3の何れかに記載の振動軽減舗装。
【請求項5】
前記基材上面のアスファルトは、熱可塑性ゴムにより改質されたアスファルトである請求項1〜3の何れかに記載の振動軽減舗装。
【請求項6】
前記基材下面のアスファルトは、ポリオレフィンにより改質されたアスファルトである請求項1〜3の何れかに記載の振動軽減舗装。
【請求項7】
前記基材下面のアスファルトは、熱可塑性ゴムにより改質されたアスファルトである請求項1〜3の何れかに記載の振動軽減舗装。
【請求項8】
表層を切削してアスファルト混合物からなる基層を露出させ、露出した基層表面の平滑処理をした後または平滑処理を省略し、繊維系織布を基材としてこの基材の上面及び下面にそれぞれアスファルトが積層されているシートを敷設し、その上にアスファルト混合物からなる表層を敷設したことを特徴とする振動軽減舗装への補修方法。
【請求項9】
表層及び基層の一部を切削してアスファルト混合物からなる基層を露出させ、露出した基層表面に必要な高さの新設基層を敷設した後、繊維系織布を基材としてこの基材の上面及び下面にそれぞれアスファルトが積層されているシートを敷設し、その上にアスファルト混合物からなる表層を敷設したことを特徴とする振動軽減舗装への補修方法。
【請求項10】
前記繊維系織布は、ガラス繊維織布である請求項8又は9に記載の振動軽減舗装への補修方法。
【請求項11】
前記繊維系織布は、合成繊維不織布である請求項8又は9に記載の振動軽減舗装への補修方法。
【請求項12】
前記基材上面のアスファルトは、ポリオレフィンにより改質されたアスファルトである請求項8〜11の何れかに記載の振動軽減舗装への補修方法。
【請求項13】
前記基材上面のアスファルトは、熱可塑性ゴムにより改質されたアスファルトである請求項8〜11の何れかに記載の振動軽減舗装への補修方法。
【請求項14】
前記基材下面のアスファルトは、ポリオレフィンにより改質されたアスファルトである請求項8〜11の何れかに記載の振動軽減舗装への補修方法。
【請求項15】
前記基材下面のアスファルトは、熱可塑性ゴムにより改質されたアスファルトである請求項8〜11の何れかに記載の振動軽減舗装への補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−1692(P2011−1692A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143187(P2009−143187)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000201515)前田道路株式会社 (61)
【出願人】(000186913)昭和シェル石油株式会社 (322)
【Fターム(参考)】