説明

排ガス分析装置およびガス処理装置の監視装置

【課題】複数のガス処理装置における除害効率を実使用条件で監視し、ガス中に多量に存在する水分やダストの影響を排除し、高精度の分析を行うことにより、処理装置によるフッ素系ガスの除害効率を正確かつ低コストで求める。
【解決手段】排ガス中の有害成分を除害処理して排出し処理前の排ガスを被測定ガスA、処理後のガスを被測定ガスBとして導出する複数のガス処理装置1Aと、第1のガス分析計3と、複数のガス処理装置からの複数の被測定ガスAまたは複数の被測定ガスBから選択的に1種のガスを採取して第1のガス分析計に送給するサンプリング装置2と、第1のガス分析計のための校正ガスを供給する校正ガス供給装置4と、サンプリング装置での複数の被測定ガスAと被測定ガスBの選択的採取を制御する制御部5と、ガス分析計からの測定値に基づいてガス処理装置での除害効率を算出する演算部6を備えたガス処理装置の監視装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のフッ素系ガス除害処理装置などのガス処理装置におけるフッ素系ガスの除害効率の実測値を、個別に高精度で測定できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程では、六フッ化エタンなどのフッ素系ガスを大量に消費する。消費されるガスの一部は半導体製造装置におけるプロセス中で分解されるが、大半は未分解のまま排出されたり、四フッ化メタンを副生成物として排出されている。
六フッ化エタンや四フッ化メタンは、二酸化炭素に比較して約5000から10,000倍高い温暖化係数を持っているため、大気中に排出される量を出来る限り低くしなくてはならない。
このため、これらのガスは無毒であるが、分解して二酸化炭素等に酸化処理する除害処理装置を配置し、大気中に放出される温暖化物質の量を低減させる方法が採られている。
【0003】
ところで、地球温暖化対策推進法では、これらフッ素系ガスの排出量を事業所毎に毎年報告することを定めているが、ここで報告しなければならない数値に除害処理装置におけるフッ素系ガスの「除害効率」が挙げられている。
除害処理装置の性能は、大量の排ガス処理に伴う粉体の堆積や、燃焼ガスの流量変動のほか、メンテナンス頻度が高いため、報告書に記載する除害効率の値は、実測した値であることが推奨されている。
【0004】
しかしながら、除害処理装置におけるガスの除害効率は、一般的なカタログ値を用いることが多く、現状では実測評価することは少ない。
これは、1台1台の除害処理装置を現場で個々に測定する作業が複雑で工数がかかるほか、除害処理装置の設置箇所に分析装置を個別に移動させると、分析計の光学系パージなどで数時間単位の立ち上げ時間が加わるため、実施できたとしても、数台の評価が行えるに過ぎないためである。
また、排ガス中には危険性物質も含まれるため、極微量であっても人体に接触したり吸引されることは避けなければならず、分析に必要となるサンプリングラインの取り付け取り外し作業なども、十分な注意が必要となる。
【0005】
この分析計にはフーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)などの赤外線分析計が用いられているが、除害処理装置より排出されるガス中には大量の水分や粉末状のダストが存在するため、分析計のガス導入部が劣化して感度が低下したり、サンプリングラインの腐食や閉塞といった問題を抱えている。また、FTIRは赤外線を利用した分析計であるため、測定箇所の温度の影響を受けるが、除害ガス処理装置の設置現場は、一定温度に空調制御がされていないことが多い。
【0006】
これらのことから、正確な分析を行うためには、測定箇所において分析計を標準ガスにより定期的に校正することが必要である。一方、標準ガスを用いる場合、市販されている標準ガスは高圧ガスであり、特別な容器固定と収納器具が必要となる。
現状行われている個別の測定では、標準ガスを様々な測定箇所に持ち込むことが必要となるが、前記対策を個々に行うことは実質的に不可能であり、安全上の問題を抱えているため、現状では、測定箇所にて分析計を校正する方法は行われていない。
【0007】
以上の問題があるため、現状では除害効率の実測が行われることは少なく、安全率をもったデフォルト値で算出されることが多い。
この場合、除害処理装置における除害効率を実質的に低く見積ることが多いため、報告する排出量は実際の量よりも過剰となる場合が多く、結果として、より多くの温暖化物質削減対策を講じなくてはならないことになる。
【特許文献1】特開2006−145341号公報
【特許文献2】特開平5−347443号公報
【特許文献3】特開平8−128948号公報
【特許文献4】特許第2926277号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
よって、本発明における課題は、複数のガス処理装置における除害効率を実使用条件で監視するとともに、ガス中に多量に存在する水分やダストの影響を排除し、分析計の劣化防止と高精度の分析を行うことにより、処理装置によるフッ素系ガスの除害効率を正確かつ低コストで求めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため、
請求項1にかかる発明は、第1のガス分析計と、
排ガスを導入して該ガス中の有害成分を除害処理して排出するとともに処理前の排ガスを被測定ガスAとして、処理後のガスを被測定ガスBとして導出する複数のガス処理装置から導出された複数の被測定ガスAまたは複数の被測定ガスBから選択的に1種のガスを採取して前記第1のガス分析計に送給するサンプリング装置と、
前記第1のガス分析計に校正を行うための校正ガスを供給する校正ガス供給装置と、
前記サンプリング装置での複数の被測定ガスAと複数の被測定ガスBの選択的採取を制御する制御部と、
前記第1のガス分析計からの測定値に基づいて複数のガス処理装置での個々の除害効率を個別に算出する演算部を備えたことを特徴とする排ガス分析装置である。
請求項2にかかる発明は、前記ガス処理装置の後段に、被測定ガスAまたは被測定ガスBに含まれる水分、ダストを除去する前処理装置を設けたことを特徴とする請求項1に記載の排ガス分析装置である。
請求項3にかかる発明は、前記校正ガス供給装置からの校正ガスをサンプリング装置を介して第1のガス分析計に送給するようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の排ガス分析装置である。
【0010】
請求項4にかかる発明は、排ガスを導入して該ガス中の有害成分を除害処理して排出するとともに処理前の排ガスを被測定ガスAとして、処理後のガスを被測定ガスBとして導出する複数のガス処理装置と、
第1のガス分析計と、
複数のガス処理装置から導出された複数の被測定ガスAまたは複数の被測定ガスBから選択的に1種のガスを採取して前記第1のガス分析計に送給するサンプリング装置と、
前記サンプリング装置での複数の被測定ガスAと複数の被測定ガスBの選択的採取を制御する制御部と、
前記第1のガス分析計からの測定値に基づいて複数のガス処理装置での個々の除害効率を個別に算出する演算部を備えたことを特徴とするガス処理装置の監視装置である。
請求項5にかかる発明は、排ガスを導入して該ガス中の有害成分を除害処理して排出するとともに処理前の排ガスを被測定ガスAとして、処理後のガスを被測定ガスBとして導出する複数のガス処理装置と、
第1のガス分析計と、
複数のガス処理装置から導出された複数の被測定ガスAまたは複数の被測定ガスBから選択的に1種のガスを採取して前記第1のガス分析計に送給するサンプリング装置と、
前記第1のガス分析計に校正を行うための校正ガスを供給する校正ガス供給装置と、
前記サンプリング装置での複数の被測定ガスAと複数の被測定ガスBの選択的採取を制御する制御部と、
前記第1のガス分析計からの測定値に基づいて複数のガス処理装置での個々の除害効率を個別に算出する演算部を備えたことを特徴とするガス処理装置の監視装置である。
【0011】
請求項6にかかる発明は、排ガスを導入して該ガス中の有害成分を除害処理して排出するとともに処理後のガスを被測定ガスBとして導出する複数のガス処理装置と、
第1のガス分析計と、
複数のガス処理装置から導出された複数の被測定ガスBから選択的に1種のガスを採取して前記第1のガス分析計に送給するサンプリング装置と、
前記第1のガス分析計に校正を行うための校正ガスを供給する校正ガス供給装置と、
前記サンプリング装置での複数の被測定ガスBの選択的採取を制御する制御部と、
前記ガス処理装置に導入される処理前の排ガスを被測定ガスAとして分析する第2のガス分析計と、
前記第1および第2のガス分析計からの測定値に基づいて複数のガス処理装置での個々の除害効率を個別に算出する演算部を備えたことを特徴とするガス処理装置の監視装置である。
【0012】
請求項7にかかる発明は、前記ガス処理装置の後段に、被測定ガスAまたは被測定ガスBに含まれる水分、ダストを除去する前処理装置を設けたことを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載のガス処理装置の監視装置である。
請求項8にかかる発明は、前記校正ガス供給装置からの校正ガスをサンプリング装置を介して第1のガス分析計に送給するようにしたことを特徴とする請求項5または6に記載のガス処理装置の監視装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数のフッ素系ガス除害処理装置などのガス処理装置におけるフッ化物系ガスの除害効率を実使用条件での実測値で正確かつ低コストで測定でき、ガス処理装置の性能を監視することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、この発明のガス処理装置の監視装置の一例を示すもので、図中符号1A、1B1Cはそれぞれガス処理装置を示し、2はサンプリング装置を、3はガス分析計を、4は校正ガス供給装置を、5は制御部を、6は演算部を示す。
前記ガス処理装置1A、1B、1Cは、例えば半導体製造工程から排出される四フッ化メタン、六フッ化エタンなどの除害効率測定対象となるフッ素系ガス(以下、単にフッ素系ガスと呼ぶ)が含まれる排ガスを管7A、7B、7Cから導入して、除害処理を施してこれらフッ素系ガス濃度を低減させて、処理後のガスを管8A、8B、8Cから排出する装置である。
この例では、このようなガス処理装置が3基1A、1B、1C設けられており、これらは互いに接近した位置にあってもよくあるいは互いに離れた位置にあってもよく、さらにはサンプリング装置2から例えば1〜100m程度遠く離れていてもよい。
【0015】
ここで、管7A、7B、7Cを流れるガスは除害処理前のもので、被測定ガスAと呼び、管8A、8B、8Cを流れるガスは除害処理後のもので、被測定ガスBと呼ぶ。
本発明では、各ガス処理装置1A、1B、1Cにおける除害効率を求めるので、被測定ガスAも被測定ガスBもガス分析計3に導入する必要がある。被測定ガスAをガス分析計3に流す場合には、管7A、7B、7Cと管8A、8B、8Cとをつなぐバイパス弁11A、11B、11Cを開とし、管7A、7B、7Cに設けられたガス導入弁12A、12B、12Cを閉として管8A、8B、8Cに流す。
【0016】
管8A、8B、8Cを流れるガスは、通常除害処理された後の被測定ガスBであり、その大部分は図示しないセントラルスクラバーを介して大気中に排出される。
管8A、8B、8Cを流れる被測定ガスBまたは被測定ガスAの一部は、管9A、9B、9Cに分岐され、ガス処理装置1A、1B、1Cの後段に配された前処理装置10A、10B、10Cに導入され、ここで被測定ガスAまたは被測定ガスBに含まれる水分、ダストを取り除き、後段でのガス分析計3での測定に不具合を与えないようになっている。
【0017】
図2は、この前処理装置10A、10B、10Cの一例を示すものである。この前処理装置は、全体が容器状となっており、本体101とこの本体101の口部を開閉可能に閉じる蓋部102とから構成されている。蓋部102の頂部には被測定ガスA、Bを導入するための管9が貫通しており、この管9は鉛直方向下方に延び、その開口部が本体101の底部近くに届くようになっている。また、蓋部102の側部には、管9が水平方向に接続されており、水分、ダストなどが除去された被測定ガスA、Bがここから導出されるようになっている。
【0018】
さらに、本体101の胴部および底部には、冷却ジャケット103が設けられており、冷却水が導入されて本体101内の空間を冷却できるようになっている。冷却ジャケットに変えてペルチェ素子の冷端部を設けてもよい。
管9から導入された被測定ガスA、Bは、本体101の底部に衝突してこれに含まれるダストが除去され、側部および底部で冷却されてこれに含まれる水分等の凝縮成分が凝縮して除去され、ダスト、水分等は本体101の底部に溜まる。ダスト、水分等が除去された被測定ガスA、Bは本体101の底部から上昇して、蓋部102の側部から管9を経て導出される。
本体101に溜まったダスト、水分等は、適宜蓋部102を開いて排出することができる。
なお、この前処理装置をガス処理装置内に内蔵させることもできる。
【0019】
前処理装置10A、10B、10Cからの被測定ガスAまたは被測定ガスBは、1台のサンプリング装置2に送られる。
サンプリング装置2は、3基のガス処理装置1A、1B、1Cから送られる3種の被測定ガスAまたは3種の被測定ガスBの中から1種を選択して採取してガス分析計3に送るものである。
【0020】
図3は、このサンプリング装置2の具体的な構成を示す図であり、3基のガス処理装置からの被測定ガスA、Bを切り替える例を示す。
ガス処理装置1Aから管9Aを通って被測定ガスAまたは被測定ガスBは開状態にある弁31と弁32を経て管33からガス分析計3に送られる。この時、弁34、弁35は閉状態にある。
ガス処理装置1Bから管9Bを通って被測定ガスAまたは被測定ガスBは開状態に切り替わった弁34を通り、弁32を経て管33からガス分析計3に送られる。この時、弁31、弁35は閉状態にある。
【0021】
ガス処理装置1Cから管9cを通って被測定ガスAまたは被測定ガスBは開状態に切り替わった弁35を通り、弁32を経て管33からガス分析計3に送られる。この時、弁31、弁34は閉状態にある。
また、図示のように、校正ガス供給装置4からの校正ガスが管41、弁42を通り、弁32、管33を経てガス分析計3に送られるようになっており、校正ガスをガス分析計3に送るときのみ弁42が開となるようになっている。
さらに、図3に示すように窒素ガスによるパージラインが設けられており、被測定ガスAまたは被測定ガスBを切り替える度に、管、弁内をパージできるようになっている。
【0022】
サンプリング装置2を構成するこれらの弁は電磁開閉弁であって、その開閉操作を指示する信号が制御部5から出力されるようになっている。
制御部5には、前記各電磁開閉弁の開閉操作のタイミングが予め記憶されたシーケンサーが内蔵されており、このシーケンサーからの指示信号により前記電磁開閉弁の開閉が経時的に行われ、3種の中から1種の被測定ガスAまたは被測定ガスBを、もしくは校正ガスを選択してガス分析計3に送り込む操作を制御するようになっている。
【0023】
ガス分析計3には、ガスセルを備えたフーリエ変換赤外分光光度計が用いられ、サンプリング装置2からの被測定ガスAまたは被測定ガスBが送り込まれてガス中の4フッ化メタン、6フッ化エタンなどのフッ素系ガスの濃度が測定される。また、校正ガス供給装置4からの校正ガスがサンプリング装置2を経て送り込まれ、ガス分析計3の校正が行われる。
ガスセルには、光路長が異なる2台を設け、被測定ガス中のフッ素系ガスの濃度に応じて2台のガスセルを切り替えて使用することもできる。
【0024】
ガス分析計3で測定された被測定ガスAおよび被測定ガスB中のフッ素系ガスの濃度は、演算部6に送られる。演算部6では、前記サンプリング装置2の各電磁開閉弁の開閉操作のタイミングに基づいて、各ガス処理装置1A、1B、1Cでの被測定ガスAおよび被測定ガスB中のフッ素系ガスの濃度の値が比較されて、各ガス処理装置の除害効率が算出され、この除害効率が印字または表示されるようになっている。
除害効率の値は、100×(被測定ガスB中のフッ素系ガス濃度÷被測定ガスA中のフッ素系ガス濃度)で計算される。
また、除害効率の定義は、第II編 温室効果ガス排出量の算定方法−電気電子産業用算定方法マニュアルrev.1、日本電気工業会(2006.11)に記載されている。
【0025】
図4は、校正ガス供給装置の一例を示すものである。この例の校正ガス供給装置4は、4フッ化メタン、6フッ化エタンの高純度標準ガスとこれを希釈する高純度窒素、アルゴンなどの希釈ガスとの混合ガスが充填された標準ガスボンベ45と、希釈ガスとなる高純度窒素が充填された窒素ガスボンベ46を備えたものである。標準ガスボンベ45からの濃度5000ppm程度の標準ガスは、流量調整弁47、流量調整器48、弁49を通って管41に送られる。
【0026】
窒素ガスボンベ46からの希釈ガスとしての窒素ガスは、流量調整器51、弁52を経由して管41に送られ、ここで前記標準ガスと混合されて、圧力0.3MPa程度の校正ガスとされ、管41からサンプリング装置2に送られるように構成されている。
前記標準ガスと窒素ガスとの混合は流量混合法でよって行われ、その混合比は、1:10〜1:5000程度とされ、校正ガス濃度として標準ガス濃度が1〜500ppm程度となるようにされる。
校正ガス供給装置4の管、弁の内部に留まっているガスは、弁50、排気ブロアー53により系外に排出される。
【0027】
なお、校正ガス供給装置4は、必ずしも必須ではなく、これを省略した監視装置であってもよい。校正ガス供給装置4を欠く監視装置では、ガス分析計3として安定性が高いものを用い、このガス分析計3が設置されている環境の温度が一定に管理されていることが望ましい。
【0028】
本発明の排ガス分析装置は、例えば、図1に示す装置において、サンプリング装置2、ガス分析計3、校正ガス供給装置4、制御部5および演算部6を構成要素とする装置であり、サンプリング装置2に送られる被測定ガスAまたはBは、ガス処理装置1A、1B、1Cからのものである。
【0029】
つぎに、このような構成の監視装置を用いた監視方法について説明する。
実際の運用では、以下の手順によって行われる。
(1)ガス分析計3を校正する。
(2)ガス処理装置1A、1B、1Cを通さずにそれをバイパスさせた被測定ガスAのガス濃度を測定する。
(3)決められたシーケンスにより、各ガス処理装置1A、1B、1Cを通した被測定ガスBの分析を定期的に分析する。
(4)所定期間経過後、ガス分析計3を校正する。
【0030】
ガス分析計3の校正は、校正ガス供給装置4からの校正ガスをサンプリング装置2を介して、ガス分析計3のFTIRのガスセルに導入して行う。
ガス分析計3となるFTIRのガスセルには、光路長が1〜240cmのものが好ましいが、あまり長光路になると感度が向上するがガスセルの内容量が増大するため、試料となるガス量が多くなり、結果的にガスセルとこれに続く管路をパージするパージガス量が増大するなどの不都合を来す。
【0031】
また、予めガスセル内を窒素ガスで満たしておき、ついでガスセル内を数トールまで真空排気して、その後試料ガスを大気圧程度の充圧し、この圧力で試料ガスを流すこともでき、この方法では試料ガス量を少なくすることができる。
【0032】
除害処理前の被測定ガスAの分析は、例えば弁11Aを開とし、弁12Aを閉として被測定ガスAを管8A、9Aからサンプリング装置2を経てガス分析計3に送って実行する。
被測定ガスA中の測定対象となるフッ素系ガスのガス濃度は、数100ppm〜数%と高く、一方被測定ガスB中のフッ素系ガスのガス濃度は数ppmと低く、両者の差は著しく離れている。
このため、被測定ガスAに窒素などの希釈ガスを混合して、濃度レベルをppmオーダーとしてガス分析計3に送る。
ガス分析計3で計測されたフッ素系ガスのガス濃度は演算部6に送られる。
【0033】
半導体製造工程から排出される除害処理前の被測定ガスA中のフッ素系ガスのガス濃度の時間的な変動は少なく、このため被測定ガスAの分析は半年〜1年に1回実施すれば十分である。
このような事情から、図5に示したように、各ガス処理装置1A、1B、1Cのそれぞれに被測定ガスA専用の別のガス分析計31、31、31を設け、このガス分析計31、31、31を用いて被測定ガスA中のフッ素系ガスのガス濃度を測定し、この計測値を演算部6に送るようにし、ガス分析計3では除害処理後の被測定ガスBを専ら分析するようにしてもよい。
【0034】
除害処理後の被測定ガスBのフッ素系ガスのガス濃度の計測は、管8A、9A、前処理装置10Aを通った被測定ガスBをサンプリング装置2を介してガス分析計3に送って実施される。この被測定ガスBの分析の時間的な頻度は、1〜24時間に1回行われ、3基のガス処理装置1A、1B、1Cに対して交互に行っても、あるいは適切な順番で行ってもよい。
【0035】
3基のガス処理装置1A、1B、1Cからの被測定ガスBのサンプリング装置2における切り替えは、制御部5のシーケンサーからの予め設定されているシーケンス信号をサンプリング装置2の各電磁開閉弁に送り、これらの電磁開閉弁を自動開閉することによって自動的に行われる。
【0036】
また、図3に示したサンプリング装置2内では図示した窒素ガスパージラインを使用して、1種の被測定ガスBをガス分析計3に供給した後に、サンプリング装置2内の管、弁内を窒素ガスなどでパージして、被測定ガスBがサンプリング装置2内の管、弁内に残留しないようにし、次の被測定ガスBに混入しないようにする必要がある。このパージ操作は、被測定ガスAの分析においても同様である。
ガス分析計3で計測された被測定ガスB中のフッ素系ガスのガス濃度は演算部6に送られる。
【0037】
演算部6では、各ガス処理装置毎に、除害効率を演算し、その結果を印字あるいはディスプレイに表示する。
除害効率は、被測定ガスB中のフッ素系ガスのガス濃度を被測定ガスA中のフッ素系ガスのガス濃度で除したパーセント値である。
【0038】
このような監視装置にあっては、3基のガス処理装置1A、1B、1Cのそれぞれの除害効率の実測値を知ることができる。また、各ガス処理装置1A、1B、1Cが相互に離れていても、ガス分析計3から離れていても一箇所で測定ができ、ガス分析計3などをガス処理装置が設置されている現場から離れた分析室などの測定環境が整った箇所に設置できるので安定した測定ができる。
さらに、従来のような除害効率を安全率が見込まれたデフォルト値で表す必要ないので、前記地球温暖化対策法に従って報告すべきフッ素系ガスの排出量を適正な量とすることができ、余分な温暖化物質削減対策を講じる必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の監視装置の一例を示す構成図である。
【図2】本発明での前処理装置の例を示す概略構成図である。
【図3】本発明でのサンプリング装置の例を示す概略構成図である。
【図4】本発明での校正ガス供給装置の例を示す概略構成図である。
【図5】本発明の監視装置の他の例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0040】
1A(1B、1C)・・ガス処理装置、2・・サンプリング装置、3・・ガス分析計、4・・校正ガス供給装置、5・・制御部、6・・演算部、10A(10B、10C)・・前処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のガス分析計と、
排ガスを導入して該ガス中の有害成分を除害処理して排出するとともに処理前の排ガスを被測定ガスAとして、処理後のガスを被測定ガスBとして導出する複数のガス処理装置から導出された複数の被測定ガスAまたは複数の被測定ガスBから選択的に1種のガスを採取して前記第1のガス分析計に送給するサンプリング装置と、
前記第1のガス分析計に校正を行うための校正ガスを供給する校正ガス供給装置と、
前記サンプリング装置での複数の被測定ガスAと複数の被測定ガスBの選択的採取を制御する制御部と、
前記第1のガス分析計からの測定値に基づいて複数のガス処理装置での個々の除害効率を個別に算出する演算部を備えたことを特徴とする排ガス分析装置。
【請求項2】
前記ガス処理装置の後段に、被測定ガスAまたは被測定ガスBに含まれる水分、ダストを除去する前処理装置を設けたことを特徴とする請求項1に記載の排ガス分析装置。
【請求項3】
前記校正ガス供給装置からの校正ガスをサンプリング装置を介して第1のガス分析計に送給するようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の排ガス分析装置。
【請求項4】
排ガスを導入して該ガス中の有害成分を除害処理して排出するとともに処理前の排ガスを被測定ガスAとして、処理後のガスを被測定ガスBとして導出する複数のガス処理装置と、
第1のガス分析計と、
複数のガス処理装置から導出された複数の被測定ガスAまたは複数の被測定ガスBから選択的に1種のガスを採取して前記第1のガス分析計に送給するサンプリング装置と、
前記サンプリング装置での複数の被測定ガスAと複数の被測定ガスBの選択的採取を制御する制御部と、
前記第1のガス分析計からの測定値に基づいて複数のガス処理装置での個々の除害効率を個別に算出する演算部を備えたことを特徴とするガス処理装置の監視装置。
【請求項5】
排ガスを導入して該ガス中の有害成分を除害処理して排出するとともに処理前の排ガスを被測定ガスAとして、処理後のガスを被測定ガスBとして導出する複数のガス処理装置と、
第1のガス分析計と、
複数のガス処理装置から導出された複数の被測定ガスAまたは複数の被測定ガスBから選択的に1種のガスを採取して前記第1のガス分析計に送給するサンプリング装置と、
前記第1のガス分析計に校正を行うための校正ガスを供給する校正ガス供給装置と、
前記サンプリング装置での複数の被測定ガスAと複数の被測定ガスBの選択的採取を制御する制御部と、
前記第1のガス分析計からの測定値に基づいて複数のガス処理装置での個々の除害効率を個別に算出する演算部を備えたことを特徴とするガス処理装置の監視装置。
【請求項6】
排ガスを導入して該ガス中の有害成分を除害処理して排出するとともに処理後のガスを被測定ガスBとして導出する複数のガス処理装置と、
第1のガス分析計と、
複数のガス処理装置から導出された複数の被測定ガスBから選択的に1種のガスを採取して前記第1のガス分析計に送給するサンプリング装置と、
前記第1のガス分析計に校正を行うための校正ガスを供給する校正ガス供給装置と、
前記サンプリング装置での複数の被測定ガスBの選択的採取を制御する制御部と、
前記ガス処理装置に導入される処理前の排ガスを被測定ガスAとして分析する第2のガス分析計と、
前記第1および第2のガス分析計からの測定値に基づいて複数のガス処理装置での個々の除害効率を個別に算出する演算部を備えたことを特徴とするガス処理装置の監視装置。
【請求項7】
前記ガス処理装置の後段に、被測定ガスAまたは被測定ガスBに含まれる水分、ダストを除去する前処理装置を設けたことを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載のガス処理装置の監視装置。
【請求項8】
前記校正ガス供給装置からの校正ガスをサンプリング装置を介して第1のガス分析計に送給するようにしたことを特徴とする請求項5または6に記載のガス処理装置の監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−128029(P2009−128029A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300253(P2007−300253)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】