説明

排ガス浄化用触媒及びその製造方法

【課題】触媒層による通気孔(細孔)の閉塞が抑制された排ガス浄化用触媒及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】細孔を有するセル壁で区画された複数のセルを有する三次元構造担体と、この三次元構造担体に形成された触媒層を備える排ガス浄化用触媒である。触媒層が、セル壁の表面に沿って形成された表面被覆部位と、セル壁の細孔に沿って形成された細孔被覆部位を有し、細孔被覆部位が、当該触媒層に含まれる担持成分に由来する孔径0.1〜10μmの活性細孔を有する。
触媒層を構成する担持成分を含むスラリーとして、平均粒子径が1〜10μmであり、平均粒子径1μm以下の粒子の存在割合が20%以下、平均粒子径10μm以上の粒子の存在割合が10%以下であるスラリーを用いる排気ガス浄化用触媒の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒及びその製造方法に係り、更に詳細には、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出されるガスに含まれている物質のうち少なくともパティキュレート(以下、「PM」と略すことがある)を除去し、排気ガスを浄化する触媒、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排気ガスには、パティキュレートが含まれている。パティキュレートには、人体に有害な物質が含まれており、これを除去することが環境保全上からの要請となっている。
従来、パティキュレートの除去にはフィルタ触媒が用いられており、このようなフィルタ触媒は、例えば、特許文献1や特許文献2に開示されている。
【特許文献1】特開2002−295228号公報
【特許文献2】特開2005−224666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、かかる従来のフィルタ触媒においては、触媒担体基材上に形成された触媒層が触媒担体基材の細孔の開口径を狭くして通気孔(細孔)が十分な開口径を有さなくなったり、通気孔が開口しなくなる(閉塞する)という問題があった。
【0004】
具体的には、フィルタ触媒の触媒層は、アルミナ等を有するスラリーを調製し、このスラリーを触媒担体基材に塗布し、乾燥・焼成することで担持層を形成し、その後、触媒金属を担持させることで製造されている。しかし、スラリーの触媒担体基材への塗布時には、スラリーが触媒担体基材の細孔の内部にまで十分に分散(浸入)しないため、触媒担体基材の細孔の開口部近傍にスラリーが偏って存在するようになっていた。そして、この状態で乾燥・焼成して触媒層が形成されるため、通気孔(細孔)の開口部の縮径や閉塞が生じ、フィルタ触媒として十分な通気孔が形成できなくなっていた。
【0005】
一方、触媒担体基材の細孔内における基材表面上に単に触媒層を形成しただけでは、触媒層による触媒担体基材の細孔閉塞は抑制されるものの、触媒担持により触媒担体基材の通気孔が減少するため、圧損が大きくなってしまうという問題点があった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、触媒層による通気孔(細孔)の閉塞が抑制された排ガス浄化用触媒及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、触媒層の少なくとも一部に所定の活性細孔を形成することにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の排ガス浄化用触媒は、細孔を有するセル壁で区画された複数のセルを有する三次元構造担体と、この三次元構造担体に形成された触媒層を備える排ガス浄化用触媒である。
上記触媒層が、上記セル壁の表面に沿って形成された表面被覆部位と、上記セル壁の細孔に沿って形成された細孔被覆部位を有し、
少なくとも上記細孔被覆部位が、当該触媒層に含まれる担持成分に由来する孔径0.1〜10μmの活性細孔を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の排気ガス浄化触媒の製造方法は、上述の如き排ガス浄化用触媒を製造する方法である。
上記担持成分を含むスラリーとして、平均粒子径が1〜10μmであり、平均粒子径1μm以下の粒子の存在割合が20%以下、平均粒子径10μm以上の粒子の存在割合が10%以下であるスラリーを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、触媒層の少なくとも一部に所定の活性細孔を形成することとしたため、触媒層による通気孔(細孔)の閉塞が抑制された排ガス浄化用触媒及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の排ガス浄化用触媒につき詳細に説明する。
上述のように、本発明の排ガス浄化用触媒は、三次元構造担体と、この三次元構造担体上に形成された触媒層を備える。
ここで、三次元構造担体は、セル壁で区画された複数のセルを有し、このセル壁は排ガスが通過する細孔を有する。かかる三次元構造担体には、いわゆるハニカム担体やチェッカードハニカム担体(ウォールフロー型担体)が含まれる。
【0012】
図1は、本発明の排ガス浄化用触媒の一例において、三次元構造担体のセル壁近傍を示す概略的な部分断面図である。
図1(A)において、三次元構造担体10は、排ガスEGが通過可能な細孔13を有するセル壁12を有しており、触媒層20が被覆されている。また、触媒層20は、セル壁12の表面に沿って形成された表面被覆部位21と、細孔13に沿って形成された細孔被覆部位22を有している。
【0013】
図1(B)は図1(A)の一部を拡大して示す拡大断面図、図1(C)は図1(B)に示す部分をセル壁11の表面に対して垂直な方向から見た図である。
これらの図に示したように、セル壁12の細孔13に沿って形成された細孔被覆部位22は、多孔質性が高く、図示しない孔径0.1〜10μmの活性細孔を有している。
【0014】
この活性細孔は、触媒層20を三次元構造担体10に担持形成する際に形成されるもので、触媒層20に含まれる担持成分に由来するものであるが、適切な孔径を有する。よって、排ガスは活性細孔を良好に流通できるとともに、その際の圧損増大も有効に抑制される。
また、かかる適切な孔径から、活性細孔はパティキュレートを有効に捕集し、且つ捕集したパティキュレートを十分に酸化する。
このように、本発明の排ガス浄化用触媒では、触媒層20がパティキュレートを捕集し酸化することにより、捕集したパティキュレートを有効に除去できる。
【0015】
これに対し、従来の排ガス浄化用触媒では、図2(A)及び(B)に示すように、細孔被覆部位22’の多孔質性が低く、パティキュレートを殆ど捕集できず、十分に酸化浄化できないのみならず、排ガスの流通性も低下させてしまい、この結果、圧損の増大を引き起こしてしまう。
【0016】
図3は、三次元構造担体としてウォールフロー型担体を用いた本発明の排ガス浄化用触媒の一例を示す部分切欠斜視図であり、図中の破線部分を切欠いて示してある。
同図において、排ガス浄化用触媒1は、三次元構造担体の一例であるチェッカードハニカム担体10を備えている。
【0017】
このチェッカードハニカム担体10は、全体として円柱状をなしており、上述のような細孔を有するセル壁12で区画された複数のセル11を有しており、各セル11はセル壁12によって相互に平行に形成されている。また、セル11は、排ガス入口側又は出口側の端面が目封じされた閉塞端面16を有しており、隣接するセル間では、閉塞端面16が排ガス入口側及び出口側に関して交互に逆転した配置となるように構成されている。
【0018】
上述のようなセル11における端面の閉塞関係から、チェッカードハニカム担体10では、排ガス入口側又は出口側の端面全体がチェッカー盤(市松模様)のような閉塞パターン、詳細には、排ガス入口側と出口側とで開閉が逆転した閉塞パターンが形成されていることになる。
このようなチェッカードハニカム担体10において、原則として、排ガスEGは、図示したように、セル11の開放端面(セル入口14)を通過し、セル壁12の細孔13(図1参照)を通過して隣接したセルに流入し、隣接したセルの開放端面(セル出口15)から排出される。
【0019】
図3に示した排ガス浄化用触媒1は、このようなチェッカードハニカム担体10に図示しない触媒層を形成したものであり、この触媒層、特にその細孔被覆部位は、図1で説明したような活性細孔を有する。よって、排ガスに含まれるパティキュレートは、このような活性細孔によって、上述のように、排ガス流通時の圧損増大を十分に抑制されつつ、有効に捕集・浄化される。
【0020】
なお、本発明の排ガス浄化用触媒に用いる三次元構造担体としては、チェッカードハニカム担体のみならず通常のハニカム担体も用いることができるが、いずれの担体も、セル壁の細孔の4〜80%が孔径10〜50μmの細孔であり、気孔率が40vol%以上であることが好ましい。
セル壁細孔の孔径や気孔率が上記の範囲を逸脱すると、通常の触媒成分スラリーを用いて触媒成分を三次元構造担体の表面に付着させようとしても、触媒成分が担体内部に比較的多量に浸入してしまい、触媒活性を効果的に発揮させ難くなる。
【0021】
上述の三次元構造担体の材質としては、セラミック、セラミックフォーム及び金属発泡体を挙げることができる。
具体的には、コーディエライト、炭化ケイ素(SiC)、ムライトその他のセラミックスやセラミックスフォームフィルタ、発泡金属としてはフェライト系ステンレスなどを挙げることができる。
【0022】
次に、本発明の排ガス浄化用触媒における触媒層及び活性細孔について詳細に説明する。
上述のように、触媒層、特にその細孔被覆部位22(図1参照)は、孔径が0.1μm〜10μmの活性細孔を有し、この活性細孔は触媒層の担持成分に由来するものである。
なお、触媒層の表面被覆部位21(図1参照)も、通常は細孔被覆部位22と同様に活性細孔を有するが、活性細孔が表面被覆部位21に存在することは、本発明の必須要件ではない。
【0023】
活性細孔の孔径を10μm以下とすることにより、三次元構造担体の細孔(細孔13)を通過する排気ガスは、触媒層をも通過することが可能となり、圧損増大が抑制される。
また、極めて小さなパティキュレート、例えば、数nmのパティキュレートが触媒層に活性細孔に進入することも考えられるが、活性細孔内では、担持成分、特に触媒成分とパティキュレートとの接触性が極めて良好であり、パティキュレートの酸化特性を向上する効果も期待できる。更に、かかる接触性の向上により、ガス反応に起因する触媒層の温度上昇も期待できる。
【0024】
一方、活性細孔の孔径が10μmを超えると、三次元構造担体の細孔内に触媒層を形成・保持できず、担体の細孔を触媒層が閉塞してしまったり、触媒層が形成されずに担体表面が露出するようになり、排ガス浄化用触媒として用いられたときに圧損が大きくなるばかりでなく、PMとの接触面積が小さくなってPMの酸化性能が低下する。
この一方、活性細孔の孔径が0.1μmよりも小さくなると、孔径が小さすぎるため、十分な効果が得られない。
【0025】
なお、本発明の排ガス浄化用触媒においては、孔径0.1〜10μmの細孔の細孔容積総和が、全細孔の細孔容積総和の5〜30%を占めることが好ましい。
即ち、孔径0.1〜10μmの細孔には、上記の活性細孔と、三次元構造担体自体が有している細孔が含まれるが、これらの細孔容積の合算分が当該排ガス浄化用触媒における全て孔径の細孔容積総和の5〜30%に相当することが望ましい。
この比率が5%未満では、触媒層中に排ガスの十分な通路が確保されず、また、排ガスと触媒の接触面積も十分でないために、排圧が上昇したり、触媒の効果が減少することがあり、30%を超えると、触媒層を備える三次元構造担体のセル壁の平均細孔径が小さくなるため、触媒層を備える三次元構造担体全体の圧損が大きくなってしまうことがある。
【0026】
また、本発明においては、上記の孔径が0.1〜10μmの細孔の細孔容積総和の5〜100%、望ましくは10〜35%が、活性細孔の細孔容積総和に相当することが好ましい。
この関係は次式で表すことができる。
活性細孔の細孔容積/(活性細孔の細孔容積+孔径0.1〜10μmの三次元構造担体自体の細孔容積)×100=5〜100(%)
なお、三次元構造担体自体に孔径0.1〜10μmの細孔が存在しないこともあり、この場合は、孔径0.1〜10μmの細孔の100%が活性細孔から成る。
この比率は、触媒層形成に際し、活性細孔が形成される割合を意味しているが、この比率が5%未満では、触媒量が少なく、0.1〜10μmの細孔に進入したPMが十分に酸化できないことがある。
【0027】
一方、本発明の排ガス浄化用触媒においては、孔径が10μm超で100μm以下の細孔の細孔容積総和が、全細孔の細孔容積総和の70〜95%を占めることが好ましい。
即ち、孔径が10μm超で100μm以下の細孔の細孔には、上記の触媒層形成に起因する細孔と、三次元構造担体自体が有している細孔が含まれるが、これらの細孔容積の収支分が当該排ガス浄化用触媒における全て孔径の細孔容積総和の70〜95%に相当することが望ましい。
この比率が95%を超えると、排ガスと触媒の接触面積が十分でないために、触媒の効果が減少することがあり、70%未満では、触媒層を備える三次元構造担体のセル壁の平均細孔径が小さくなるため、触媒層を備える三次元構造担体全体の圧損が大きくなってしまうことがある。
【0028】
また、孔径が10μm超で100μm以下の細孔の細孔容積総和は、三次元構造担体における同孔径範囲の細孔の細孔容積総和よりも減少しており、この減少率が、1〜35%であることが好ましい。
この関係は次式で表すことができる。
(触媒担持前における孔径10μm超で100μm以下の細孔容積−触媒担持後における孔径10μm超で100μm以下の細孔容積)/(触媒担持前における孔径10μm超で100μm以下の細孔容積)×100=1〜35(%)
即ち、孔径が10μm超で100μm以下の細孔は、原則として、触媒層形成により減少するが、この減少率が、1〜35%であることが望ましい。
この減少率が1%未満では、10μm以上の細孔に形成される触媒層が少なくなる。径が大きな細孔の方がガスが流れ易いことを考慮すると、形成される触媒層が少ない場合は触媒と排ガスの接触性が低くなることがあり、また、35%を超えると、触媒層を備える三次元構造担体のセル壁の平均細孔径が小さくなるため、触媒層を備える三次元構造担体全体の圧損が大きくなってしまうことがある。
【0029】
なお、以上に説明した気孔率、各種比率は、水銀圧入法による細孔容積測定に基づくものである。
【0030】
次に、触媒層を構成する担持成分について説明する。
担持成分には、触媒成分と担持基材が含まれるが、担持基材としては、耐熱性の無機材料、例えばアルミナやジルコニアなどを用いることができる。
【0031】
一方、触媒成分としては、パティキュレートを触媒作用により酸化・燃焼させる観点から、金属酸化物を含むことが好適であり、好適な金属元素としては、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ガリウム(Ga)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)又はアルミニウム(Al)、及びこれらの任意の組み合わせに係る元素を挙げることができる。
具体的には、上記金属酸化物として、酸化セリウム(CeO)、酸化プラセオジム(PrO11)、酸化イットリウム(Y)、酸化ビスマス(Bi)、酸化ジルコニウム(ZrO)又は酸化アルミニウム(Al)、及びこれらの任意の組合わせに係るものを使用できる。
【0032】
また、本発明においては、触媒成分として、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)又はニッケル(Ni)、及びこれらの任意の組み合わせにかかる遷移金属の酸化物を加えることができる。これらを加えることにより、PMの浄化のみならず排ガスの浄化を行うことができるようになる。
具体的には、酸化鉄(FeO、Fe、Fe)、酸化マンガン(MnO、Mn、MnO)などを例示できる。
更に、これ以外にも、希土類元素酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物やこれらの複合酸化物の1種以上を用いることもできる。
【0033】
また、本発明の排ガス浄化用触媒においては、触媒成分として、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、銀(Ag)又は金(Au)、これらの任意の組み合わせに係る貴金属を加えることができる。これらを加えることにより、PMの浄化のみならず排ガスの浄化を行うことができるようになる。
【0034】
なお、本発明の排気ガス浄化用触媒は、触媒の担持量が三次元構造担体1L当たり25g/L〜100g/Lであることが好ましい。
触媒担持量が25g/Lより少ないと、触媒量が少なく、パティキュレートと触媒の接触性が悪化し、十分なパティキュレート酸化性能が得られないことがある。また、触媒量が100g/Lより多いと、パティキュレートと触媒は十分接触しており、触媒量をこれ以上増加しても効果はほぼ飽和に達してしまう。よって、更なるパティキュレート酸化性能向上を得られないばかりか、三次元構造担体の細孔内に担持される触媒量が増加したり、細孔の入り口部にも多くの触媒性分が担持されることがあることから、細孔閉塞を起こし、圧損が大きくなってしまうことがある。
【0035】
次に、本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法について説明する。
上述の如く、本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法は、以上に説明した排ガス浄化用触媒を製造する方法である。
上記の触媒層を形成する担持成分を含むスラリーとして、平均粒子径が1〜10μmであり、平均粒子径1μm以下の粒子の存在割合が20質量%以下、好ましくは10質量%以下、平均粒子径10μm以上の粒子の存在割合が10質量%以下、好ましくは5質量%以下であるスラリーを用いる。
【0036】
上記スラリーにおける担持成分粉末の粒子径を上述のように規制することにより、触媒成分が三次元構造担体の細孔内部にまで分布し、且つこの細孔内部に形成される触媒層、特に上記の細孔被覆部位(図1参照)にガス拡散が可能で触媒活性を向上させ得る活性細孔を形成することができる。
【0037】
なお、上記スラリーにおける担持成分粉末の粒子径分布は、粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
上記の粒子径制御において、1μm以下の粒子の存在割合が20質量%を超えると、三次元構造担体の細孔内に入るスラリー量が増加し、当該細孔が閉塞し、圧損が大きくなる。また、10μm以上の粒子の存在割合が10質量%を超えると、粒子が大きくなりすぎて、三次元構造担体の細孔内に担持される触媒量が減少し、パティキュレートと触媒成分との接触性が悪化し、パティキュレートの酸化性能が低下する。
【0038】
本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法においては、使用するスラリー調製に際し、上記担持成分のうちの触媒成分として、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ガリウム(Ga)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)等の酸化物に、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)及びニッケル(Ni)等の遷移金属の酸化物、並びに白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、銀(Ag)及び金(Au)等の貴金属の少なくとも一方を担持した粉末を用いることが好ましい。
かかる担持粉末を用いることにより、PMの浄化のみならず排ガスの浄化を行うことができるようになる。
【0039】
また、本発明の製造方法においては、上記担持成分を含むスラリーに、活性炭粒子、樹脂粒子、セルロース粒子又はもみ殻、及びこれらの任意の混合物に係る消失材を添加して使用することが好ましい。
このような消失材をスラリーに添加することにより、スラリーのコート後に消失材を消失させるための焼成工程を行えば、三次元構造担体の細孔内に形成する触媒層に対し、活性細孔を形成し易くなる。
【0040】
なお、かかる消失材としては、平均粒子径が0.5〜5μmのものを使用することが好ましい。平均粒子径が0.5μm未満では、消失材の粒子が小さすぎて効果が僅かになることがあり、5μmを超えると、消失材の粒子径が大きすぎて、触媒層が単に分断するだけで、狙いの空隙が形成されないことがある。
また、消失材の添加量としては、上記担持成分を含むスラリーに対して10〜30質量%の割合とすることが好ましい。
添加量が10質量%未満では、効果が僅かになることがあり、30質量%を超えると、触媒層が単に分断するだけで、狙いの空隙が形成されないことがある。
【0041】
以上に説明した本発明の製造方法は、代表的には、以下の手順に従って実行することができる。
まず、触媒層の原料である触媒成分、具体的には上記の金属酸化物と必要に応じてアルミナ等の担持基材及び活性炭粒子等の消失材からスラリーを調製する。この際、スラリーに含まれる金属酸化物は、酸化物の全体量を100質量%としたときに、平均粒子径が1μm〜10μmで、1μm以下の粒子の存在割合が20%質量以下、10μm以上の粒子の存在割合が10質量%以下となるように調整する。
【0042】
次に、このスラリーを三次元構造担体、例えばウォールフロー型担体にコートする。
この際、ウォールフロー型担体の(見かけの)容積1リットル当たりのコート量(酸化物換算)は、平均粒子径が1μm〜10μmで、1μm以下の粒子の存在割合が20%以下、10μm以上の粒子の存在割合が10%以下の場合には、50g以下とすることが好ましい。また、平均粒子径が1μm〜10μmで、1μm以下の粒子の存在割合が10%以下、10μm以上の粒子の存在割合が5%以下の場合には100g以下とすることが好ましい。なお、スラリーのコート量は、コートの前後の質量が求めればよい。
【0043】
ここで、ウォールフロー型担体へのスラリーのコートは、スラリーを担体表面に塗布した後に、過剰なスラリーを取り除き、スラリーを乾燥させた後に焼成することで行う。これにより、触媒層が形成される。
なお、Pt、Pd、Rh、Ag及びAuなどの貴金属成分は、触媒成分である金属酸化物溶液に貴金属成分を浸漬し、焼成することによって担持することもできるし、触媒成分である金属酸化物から成る触媒層を三次元構造担体に形成した後、貴金属成分の水溶液に担体をを浸漬し、乾燥して焼成することにより担持することもできる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
水1000gに、ジニトロジアミン白金水溶液(8.02質量%)488ml、CeとPrの複合酸化物(Ce:Pr=7:3(mol比))粉末450gを混合し、CeとPrの複合酸化物上へ白金を含浸担持した。白金担持量は8質量%とした。
水2000gに、上記の白金担持CePr複合酸化物粉末450g及びアルミナゾル50gを混合し、攪拌してスラリーを調製した。レーザー回折法で計測した平均粒子径は2.9μmで、1μm以下の粒子の存在割合が12%、10μm以上の粒子の存在割合が10%であった。
【0046】
次に、直径143.764mm、高さ152.4mm、セル密度300個/in、平均細孔径18μm、気孔率59vol%の三次元構造担体(コージェライト製ハニカム担体)を用意し、上記スラリ−に浸漬し、余分なスラリーを除去した後、150℃で2時間乾燥し、400℃で4時間焼成して触媒層を形成し、本例の排ガス浄化用触媒を得た。触媒層の形成量は、排ガス浄化用触媒の1リットル当たり50gであった。
なお、使用したハニカム担体は、各セルの両端部に形成された2つの開口部のうちの1つが封止材によって交互に封止されている。即ち、多数あるセルのうち、約半数のものは一方の端面において開口し、残りのものは他方の端面において開口している。担体の端面において、封止されたセルと開口したセルとが交互に並んでいる。従って、担体の端面が市松模様状になっているウォールフロー型担体である。
本例の排ガス浄化用触媒の成分、触媒層の形成量及び用いたスラリー物性などを表1に示す。
【0047】
(実施例2)
触媒層の形成量を排ガス浄化触媒の1リットル当たり25gとした以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本実施例の排ガス浄化用触媒を製造した。
本例の排ガス浄化用触媒の成分、触媒層の形成量及び用いたスラリー物性などを表1に示す。
【0048】
触媒層の形成量を排ガス浄化触媒の1リットル当たり100gとした以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本実施例の排ガス浄化用触媒を製造した。
本例の排ガス浄化用触媒の成分、触媒層の形成量及び用いたスラリー物性などを表1に示す。
【0049】
(実施例4)
水2000gに、CePr複合酸化物(Ce:Pr=7:3(mol比))粉末450g及びアルミナゾル50gを混合し、攪拌してスラリーを調製した。レーザー回折法で計測した平均粒子径は2.9μmで、1μm以下の粒子の存在割合が12%、10μm以上の粒子の存在割合が10%であった。
次に、直径143.764mm、高さ152.4mm、セル密度300個/in、平均細孔径18μm、気孔率59vol%の三次元構造担体(コージェライト製ハニカム担体)を用意し、上記スラリ−に浸漬し、余分なスラリーを除去した後、150℃で2時間乾燥し、400℃で4時間焼成して触媒層を形成し、本例の排ガス浄化用触媒を得た。触媒層の形成量は、排ガス浄化用触媒の1リットル当たり25gであった。
本例の排ガス浄化用触媒の成分、触媒層の形成量及び用いたスラリー物性などを表1に示す。
【0050】
(実施例5)
水1000gに、硝酸Mn水溶液とCeとPrの複合酸化物(Ce:Pr=7:3(mol比))粉末450gを混合し、CeとPrの複合酸化物上へMnを含浸担持した。Mn担持量は20質量%とした。
水2000gに、Mn担持CePr複合酸化物粉末450g及びアルミナゾル50gを混合し、攪拌してスラリーを調製した。
次に、直径143.764mm、高さ152.4mm、セル密度300個/in、平均細孔径18μm、気孔率59vol%の三次元構造担体(コージェライト製ハニカム担体)を用意し、上記スラリ−に浸漬し、余分なスラリーを除去した後、150℃で2時間乾燥し、400℃で4時間焼成して触媒層を形成し、本例の排ガス浄化用触媒を得た。触媒層の形成量は、排ガス浄化用触媒の1リットル当たり25gであった。
本例の排ガス浄化用触媒の成分、触媒層の形成量及び用いたスラリー物性などを表1に示す。
【0051】
(実施例6)
水1000gに、硝酸Mn水溶液とCeとPrの複合酸化物(Ce:Pr =7:3(mol比))粉末450gを混合し、CeとPrの複合酸化物上へMnを含浸担持した。Mn担持量は20質量%とした。
水1000gに、ジニトロジアミン白金水溶液(8.02質量%)488ml、Mn担持したCeとPrの複合酸化物(Ce:Pr=7:3(mol比))粉末450gを混合し、CeとPrの複合酸化物上へ白金を含浸担持した。白金担持量は8質量%とした。
水2000gに、Pt担持及びMn担持CePr複合酸化物粉末450gと、アルミナゾル50gを混合し、攪拌してスラリーを調製した。
【0052】
次に、直径143.764mm、高さ152.4mm、セル密度300個/in、平均細孔径18μm、気孔率59vol%の三次元構造担体(コージェライト製ハニカム担体)を用意し、上記スラリ−に浸漬し、余分なスラリーを除去した後、150℃で2時間乾燥し、400℃で4時間焼成して触媒層を形成し、本例の排ガス浄化触媒を得た。触媒層の形成量は、排ガス浄化触媒の1リットル当たり25gであった。
本例の排ガス浄化用触媒の成分、触媒層の形成量及び用いたスラリー物性などを表1に示す。
【0053】
(実施例7)
水1000gに、硝酸Fe水溶液とCeとPrの複合酸化物(Ce:Pr=7:3(mol比))粉末450gを混合し、CeとPrの複合酸化物上へFeを含浸担持した。Fe担持量は20質量%とした。
水2000gに、Fe担持CePr複合酸化物粉末450g及びアルミナゾル50gを混合し、攪拌してスラリーを調製した。
次に、直径143.764mm、高さ152.4mm、セル密度300個/in、平均細孔径18μm、気孔率59vol%の三次元構造担体(コージェライト製ハニカム担体)を用意し、上記スラリ−に浸漬し、余分なスラリーを除去した後、150℃で2時間乾燥し、400℃で4時間焼成して触媒層を形成し、本例の排ガス浄化用触媒を得た。触媒層の形成量は、排ガス浄化用触媒の1リットル当たり25gであった。
本例の排ガス浄化用触媒の成分、触媒層の形成量及び用いたスラリー物性などを表1に示す。
【0054】
(実施例8)
水1000gに、硝酸Fe水溶液とCeとPrの複合酸化物(Ce:Pr=7:3(mol比))粉末450gを混合し、CeとPrの複合酸化物上へFeを含浸担持した。Fe担持量は20質量%とした。
水1000gに、ジニトロジアミン白金水溶液(8.02質量%)488ml、Fe担持したCeとPrの複合酸化物(Ce:Pr=7:3(mol比))粉末450gを混合し、CeとPrの複合酸化物上へ白金を含浸担持した。白金担持量は8質量%とした。
水2000gに、Pt担持及びMn担持CePr複合酸化物粉末450gと、アルミナゾル50gを混合し、攪拌してスラリーを調製した。
【0055】
次に、直径143.764mm、高さ152.4mm、セル密度300個/in、平均細孔径18μm、気孔率59vol%の三次元構造担体(コージェライト製ハニカム担体)を用意し、スラリ−に浸漬し、余分なスラリーを除去した後、150℃で2時間乾燥し、400℃で4時間焼成して触媒層を形成し、本例の排ガス浄化用触媒を得た。触媒層の形成量は、排ガス浄化触媒用の1リットル当たり25gであった。本例の排ガス浄化用触媒の成分、触媒層の形成量及び用いたスラリー物性などを表1に示す。
【0056】
(実施例9)
水2000gに、CeGa複合酸化物(Ce:Ga=95:5(mol比))粉末450g及びアルミナゾル50gを混合し、攪拌してスラリーを調製した。
次に、直径143.764mm、高さ152.4mm、セル密度300個/in、平均細孔径18μm、気孔率59vol%の三次元構造担体(コージェライト製ハニカム担体)を用意し、スラリ−に浸漬し、余分なスラリーを除去した後、150℃で2時間乾燥し、400℃で4時間焼成して触媒層を形成し、本例の排ガス浄化用触媒を得た。触媒層の形成量は、排ガス浄化用触媒の1リットル当たり25gであった。
本例の排ガス浄化用触媒の成分、触媒層の形成量及び用いたスラリー物性などを表1に示す。
【0057】
(実施例10)
水1000gに、ジニトロジアミン白金水溶液(8.02質量%)488ml、CeとGaの複合酸化物(Ce:Ga=95:5(mol比))粉末450gを混合し、CeとGaの複合酸化物上へ白金を含浸担持した。白金担持量は8質量%とした。
水2000gに、白金担持CeGa複合酸化物粉末450g及びアルミナゾル50gを混合し、攪拌してスラリーを調製した。
次に、直径143.764mm、高さ152.4mm、セル密度300個/in、平均細孔径18μm、気孔率59vol%の三次元構造担体(コージェライト製ハニカム担体)を用意し、上記スラリ−に浸漬し、余分なスラリーを除去した後、150℃で2時間乾燥し、400℃で4時間焼成して触媒層を形成し、本例の排ガス浄化用触媒を得た。触媒層の形成量は、排ガス浄化用触媒の1リットル当たり25gであった。
本例の排ガス浄化用触媒の成分、触媒層の形成量及び用いたスラリー物性などを表1に示す。
【0058】
(実施例11)
水1000gに、硝酸Mn水溶液と、CeとGaの複合酸化物(Ce:Ga=95:5(mol比))粉末450gを混合し、CeとGaの複合酸化物上へMnを含浸担持した。Mnの担持量は20質量%とした。
水2000gに、Mn担持CeGa複合酸化物粉末450g及びアルミナゾル50gを混合し、攪拌してスラリーを調製した。
次に、直径143.764mm、高さ152.4mm、セル密度300個/in、平均細孔径18μm、気孔率59vol%の三次元構造担体(コージェライト製ハニカム担体)を用意し、スラリ−に浸漬し、余分なスラリーを除去した後、150℃で2時間乾燥し、400℃で4時間焼成して触媒層を形成し、本例の排ガス浄化用触媒を得た。触媒層の形成量は、排ガス浄化用触媒の1リットル当たり25gであった。
本例の排ガス浄化用触媒の成分、触媒層の形成量及び用いたスラリー物性などを表1に示す。
【0059】
(実施例12)
水1000gに、硝酸Mn水溶液と、CeとGaの複合酸化物(Ce:Ga=95:5(mol比))粉末450gを混合し、CeとGaの複合酸化物上へMnを含浸担持した。Mnの担持量は20質量%とした。
水1000gに、ジニトロジアミン白金水溶液(8.02質量%)488ml、Mn担持CeとGaの複合酸化物(Ce:Ga=95:5(mol比))粉末450gを混合し、Mnを担持したCeとGaの複合酸化物上へ白金を含浸担持した。白金担持量は8質量%とした。
水2000gに、PtとMnを担持したCeGa複合酸化物粉末450g及びアルミナゾル50gを混合し、攪拌してスラリーを調製した。
【0060】
次に、直径143.764mm、高さ152.4mm、セル密度300個/in、平均細孔径18μm、気孔率59vol%の三次元構造担体(コージェライト製ハニカム担体)を用意し、スラリ−に浸漬し、余分なスラリーを除去した後、150℃で2時間乾燥し、400℃で4時間焼成して触媒層を形成し、本例の排ガス浄化用触媒を得た。触媒層の形成量は、排ガス浄化用触媒の1リットル当たり25gであった。
本例の排ガス浄化用触媒の成分、触媒層の形成量及び用いたスラリー物性などを表1に示す。
【0061】
(実施例13)
水1000gに、硝酸Fe水溶液と、CeとGaの複合酸化物(Ce:Ga=95:5(mol比))粉末450gを混合し、CeとGaの複合酸化物上へFeを含浸担持した。Feの担持量は20質量%とした。
水2000gに、Fe担持CeGa複合酸化物粉末450g及びアルミナゾル50gを混合し、攪拌してスラリーを調製した。
次に、直径143.764mm、高さ152.4mm、セル密度300個/in、平均細孔径18μm、気孔率59vol%の三次元構造担体(コージェライト製ハニカム担体)を用意し、スラリ−に浸漬し、余分なスラリーを除去した後、150℃で2時間乾燥し、400℃で4時間焼成して触媒層を形成し、本例の排ガス浄化用触媒を得た。触媒層の形成量は、排ガス浄化用触媒の1リットル当たり25gであった。
本例の排ガス浄化用触媒の成分、触媒層の形成量及び用いたスラリー物性などを表1に示す。
【0062】
(実施例14)
水1000gに、硝酸Fe水溶液と、CeとGaの複合酸化物(Ce:Ga=95:5(mol比))粉末450gを混合し、CeとGaの複合酸化物上へFeを含浸担持した。Feの担持量は20質量%とした。
水1000gに、ジニトロジアミン白金水溶液(8.02質量%)488ml、Fe担持CeとGaの複合酸化物(Ce:Ga=95:5(mol比))粉末450gを混合し、Feを担持したCeとGaの複合酸化物上へ白金を含浸担持した。白金担持量は8質量%とした。
水2000gに、PtとFeを担持したCeGa複合酸化物粉末450g及びアルミナゾル50gを混合し、攪拌してスラリーを調製した。
【0063】
次に、直径143.764mm、高さ152.4mm、セル密度300個/in、平均細孔径18μm、気孔率59vol%の三次元構造担体(コージェライト製ハニカム担体)を用意し、スラリ−に浸漬し、余分なスラリーを除去した後、150℃で2時間乾燥し、400℃で4時間焼成して触媒層を形成し、本例の排ガス浄化用触媒を得た。触媒層の形成量は、排ガス浄化用触媒の1リットル当たり25gであった。
本例の排ガス浄化用触媒の成分、触媒層の形成量及び用いたスラリー物性などを表1に示す。
【0064】
(実施例15)
水2000gに、CeY複合酸化物(Ce:Y=9:1(mol比))粉末450g及びアルミナゾル50gを混合し、攪拌してスラリーを調製した。
次に、直径143.764mm、高さ152.4mm、セル密度300個/in、平均細孔径18μm、気孔率59vol%の三次元構造担体(コージェライト製ハニカム担体)を用意し、スラリ−に浸漬し、余分なスラリーを除去した後、150℃で2時間乾燥し、400℃で4時間焼成して触媒層を形成し、本例の排ガス浄化用触媒を得た。触媒層の形成量は、排ガス浄化触媒の1リットル当たり25gであった。
本例の排ガス浄化用触媒の成分、触媒層の形成量及び用いたスラリー物性などを表1に示す。
【0065】
(実施例16)
水1000gに、硝酸Mn水溶液とCeとYの複合酸化物(Ce:Y=9:1(mol比))粉末450gを混合し、CeとYの複合酸化物上へMnを含浸担持した。Mn担持量は20質量%とした。
水2000gに、Mn担持CeY複合酸化物粉末450g及びアルミナゾル50gを混合し、攪拌してスラリーを調製した。次に、直径143.764mm、高さ152.4mm、セル密度300個/in、平均細孔径18μm、気孔率59vol%の三次元構造担体(コージェライト製ハニカム担体)を用意し、スラリ−に浸漬し、余分なスラリーを除去した後、150℃で2時間乾燥し、400℃で4時間焼成して触媒層を形成し、本例の排ガス浄化用触媒を得た。触媒層の形成量は、排ガス浄化触媒用の1リットル当たり25gであった。
本例の排ガス浄化用触媒の成分、触媒層の形成量及び用いたスラリー物性などを表1に示す。
【0066】
(実施例17)
Ptの濃度を2質量%にした以外は実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の排ガス浄化用触媒を製造した。
本例の排ガス浄化用触媒の成分、触媒層の形成量及び用いたスラリー物性などを表1に示す。
【0067】
(比較例1)
水1000gに、ジニトロジアミン白金水溶液(8.02質量%)488ml、CeとPrの複合酸化物(Ce:Pr=7:3(mol比))粉末450gを混合し、CeとPrの複合酸化物上へ白金を含浸担持した。白金担持量は8質量%とした。
水2000gに、白金担持CePr複合酸化物粉末450g及びアルミナゾル50gを混合し、攪拌してスラリーを調製した。
レーザー回折法で計測した平均粒子径は0.17μmで、1μm以下の粒子の存在割合が100%、10μm以上の粒子の存在割合が0%であった。得られたスラリーを用いて、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の排ガス浄化用触媒を得た。
本例の排ガス浄化用触媒の成分、触媒層の形成量及び用いたスラリー物性などを表1に示す。
【0068】
(比較例2)
水2000gに、CePr複合酸化物(Ce:Pr=7:3(mol比))粉末450g及びアルミナゾル50gを混合し、攪拌してスラリーを調製した。
レーザー回折法で計測した平均粒子径は0.07μmで、1μm以下の粒子の存在割合が100%、10μm以上の粒子の存在割合が0%であった。得られたスラリーを用いて、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の排ガス浄化用触媒を得た。
本例の排ガス浄化用触媒の成分、触媒層の形成量及び用いたスラリー物性などを表1に示す。
【0069】
[性能評価]
上述のようにして得られた実施例及び比較例の排ガス浄化用触媒につき下記の性能評価を行った。
【0070】
(平均細孔径、細孔容積の測定)
上記実施例及び比較例の排ガス浄化用触媒の触媒層について、表2に示した所定孔径の細孔容積総和を測定し、活性細孔の容積総和や存在率などを算出した。
得られた結果を表2に示す。なお、これらの値を算出する際に必要となる平均細孔径及び細孔容積の測定は、水銀ポロシメータ(島津製作所製、商品名:オートポアー9500)を用いて行った。
【0071】
(圧損の測定)
まず、排気量が2.5リットルの加給式直噴ディーゼルエンジンを有する車両の排気系に、各例の排ガス浄化用触媒を設置した。評価には、日産自動車製4気筒、排気量2500ccのエンジンを用いた。
この際、排気系に設置した排ガス浄化用触媒の前後に圧力センサを取り付け、約2000rpmの回転数で定常運転を行った。排ガス浄化用触媒に約4gのパティキュレートが堆積した時点での圧力センサの測定値から圧損を測定した。
なお、圧損は二つの圧力センサの測定値の差とした。また、パティキュレートの堆積の判断は、エンジンの運転時間を一定とし、測定後の重量増加を確認することで行った。
得られた結果を表2に併記するとともに、実施例1及び比較例2の結果を図4に図示した。
【0072】
(パティキュレートの酸化速度の測定)
排気量が2.5リットルの加給式直噴ディーゼルエンジンを有する車両の排気系に各例の排ガス浄化用触媒を設置した。評価には、日産自動車製4気筒、排気量2500ccのエンジンを用いたが、排ガス浄化用触媒の前後には圧力センサを取り付け、約2000rpmの回転数での定常運転を行った。
まず、排ガス浄化用触媒でパティキュレートの酸化反応が殆ど起きない温度域で排ガス浄化用触媒に約10gのパティキュレートを堆積し、その後、排ガス浄化用触媒のパティキュレートの酸化反応が十分活性化する温度域まで急速に温度を上げる。
パティキュレートの酸化が開始すると、排ガス浄化用触媒の前後に取り付けた圧力センサの差圧が減少し変化がなくなるまでの時間を測定し、予め排ガス浄化用触媒に堆積させたパティキュレート量とその時間からパティキュレートの酸化速度を求めた。得られた結果を表2に併記する。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
表2及び図4より、本発明の範囲に属する実施例1〜17の排ガス浄化用触媒では、三次元担体の細孔が閉塞しておらず、触媒層に所望の活性細孔が形成されている。よって、これらの例の排ガス浄化用触媒では、パティキュレートが堆積したときの圧損の上昇を抑えることができる。また、パティキュレートとの接触面積が増すことからパティキュレートの酸化性能が向上することが分かる。
【0076】
以上、本発明を若干の実施例及び比較例を用いて説明したが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形が可能である。
例えば、 本発明の排気ガス浄化用触媒は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンのパティキュレート処理だけでなく、空気清浄機用の排気ガス浄化触媒などにも応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の排ガス浄化用触媒の一例において、三次元構造担体のセル壁近傍を示す概略的な部分断面図である。
【図2】従来の排ガス浄化用触媒の三次元構造体のセル壁近傍を示す概略的な部分断面図である。
【図3】三次元構造担体としてウォールフロー型担体を用いた本発明の排ガス浄化用触媒の一例を示す部分切欠斜視図である。
【図4】排ガス浄化用触媒の圧損を示すグラフである。
【符号の説明】
【0078】
1 排ガス浄化用触媒
10 チェッカードハニカム担体
11 セル
12 セル壁
13 細孔
14 セル入口
15 セル出口
16 閉塞端面
20 触媒層
21 表面被覆部位
22 細孔被覆部位
EG 排ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細孔を有するセル壁で区画された複数のセルを有する三次元構造担体と、この三次元構造担体に形成された触媒層を備える排ガス浄化用触媒において、
上記触媒層が、上記セル壁の表面に沿って形成された表面被覆部位と、上記セル壁の細孔に沿って形成された細孔被覆部位を有し、
少なくとも上記細孔被覆部位が、当該触媒層に含まれる担持成分に由来する孔径0.1〜10μmの活性細孔を有することを特徴とする排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
上記三次元構造担体は、上記セル壁の細孔の4〜80%が孔径10〜50μmの細孔であり、気孔率が40vol%以上であることを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
孔径0.1〜10μmの細孔の細孔容積総和が、全細孔の細孔容積総和の5〜30%を占めることを特徴とする請求項1又は2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
上記孔径0.1〜10μmの細孔の細孔容積総和の5〜100%が、上記活性細孔の細孔容積総和に相当することを特徴とする請求項3に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項5】
孔径が10μm超で100μm以下の細孔の細孔容積総和が、全細孔の細孔容積総和の70〜95%を占めることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの孔に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項6】
上記孔径が10μm超で100μm以下の細孔の細孔容積総和は、上記三次元構造担体における同孔径範囲の細孔の細孔容積総和よりも減少しており、この減少率が、1〜35%であることを特徴とする請求項5に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項7】
上記触媒層の担持成分のうちの触媒成分として、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ガリウム(Ga)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)から成る群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む酸化物を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項8】
上記触媒層の担持成分のうちの触媒成分として、更に、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)及びニッケル(Ni)から成る群より選ばれた少なくとも1種の遷移金属の酸化物を含有することを特徴とする請求項7に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項9】
上記触媒層の担持成分のうちの触媒成分として、更に、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、銀(Ag)及び金(Au)から成る群より選ばれた少なくとも1種の貴金属を含有することを特徴とする請求項7又は8に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項10】
上記触媒層の担持成分のうちの触媒成分が、上記三次元構造担体に対して25〜100g/Lの割合で含まれることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つの項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1つの項に記載の排ガス浄化用触媒を製造するに当たり、
上記担持成分を含むスラリーとして、平均粒子径が1〜10μmであり、平均粒子径1μm以下の粒子の存在割合が20%以下、平均粒子径10μm以上の粒子の存在割合が10%以下であるスラリーを用いることを特徴とする排気ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項12】
上記担持成分のうちの触媒成分として、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ガリウム(Ga)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)から成る群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む酸化物に、
鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)及びニッケル(Ni)から成る群より選ばれた少なくとも1種の遷移金属の酸化物、並びに白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、銀(Ag)及び金(Au)から成る群より選ばれた少なくとも1種の貴金属の少なくとも一方を担持した粉末を用い、
上記担持成分を含むスラリーを調製する、ことを特徴とする請求項11に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項13】
上記担持成分を含むスラリーが、活性炭粒子、樹脂粒子、セルロース粒子及びもみ殻から成る群より選ばれた少なくとも1種の消失材を含有することを特徴とする請求項11又は12に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−273961(P2009−273961A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124592(P2008−124592)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】