説明

排ガス浄化装置

【課題】触媒性能に影響を与えずに触媒温度を昇温することのできる排ガス浄化装置を提供する。
【解決手段】SCR触媒5は、コンバータケース11と、コンバータケース11内に設けられた円柱形状の触媒担体12とを有している。SCR触媒5には、コンバータケース11に部分的に設けられた孔15を介して、マイクロ波発生装置であるマグネトロン16が接続されている。触媒担体12を構成するハニカム片20の4つの外周面20aにはそれぞれ、炭素からなる板状のマイクロ波吸収体23が設けられている。マイクロ波吸収体23は、シリカからなる保護膜24で被覆されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は排ガス浄化装置に係り、特に、排ガス浄化装置を構成する触媒の昇温に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を低減するために、尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムが開発されている。尿素SCRシステムの基本構成は、一酸化窒素(NO)を酸化して二酸化窒素(NO)にするための酸化触媒と、酸化触媒の下流側に設けられ、尿素に水を反応させて生成したアンモニアとNOxとの化学反応によりNOxを窒素及び水にするためのSCR触媒と、SCR触媒に尿素を添加するための尿素添加システムと、SCR触媒の下流側に設けられ、SCR触媒における化学反応で消費されずに残ったアンモニアを酸化するための酸化触媒とから構成される。
【0003】
酸化触媒もSCR触媒も一般的に、ある温度よりも温度が高い場合には十分な触媒性能を示すものの、ある温度よりも低い場合には、極端に触媒性能が低下してしまう。このため、例えばエンジン起動直後のような排ガス温度が低い場合には、触媒温度も低く、十分な触媒性能が得られないため、触媒の昇温が必要となる。触媒の昇温技術として、特許文献1には、電磁波吸収体と触媒との混合物をセラミック壁の表面に担持した触媒が開示されている。この触媒にマイクロ波を照射すると、電磁波吸収体がマイクロ波を吸収して発熱し、触媒を昇温させる。
【0004】
【特許文献1】特開平5−49939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の排ガス浄化装置では、電磁波吸収体と触媒とが混合した状態で担持されているので、電磁波吸収体が触媒性能に影響を与えてしまうおそれがあるといった問題点があった。
【0006】
この発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、触媒性能に影響を与えずに触媒温度を昇温することのできる排ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る排ガス浄化装置は、内部に複数の孔を有すると共に該孔の内面に触媒を担持した複数のハニカム片からなる触媒担体と、該触媒担体に照射するマイクロ波を発生させるためのマイクロ波発生装置とを備え、前記ハニカム片の外周に、前記マイクロ波を吸収可能な材質からなるマイクロ波吸収体が設けられている。マイクロ波発生装置によって発生したマイクロ波が触媒担体に照射されると、マイクロ波吸収体がマイクロ波を吸収して発熱する。
前記マイクロ波吸収体は保護膜で被覆されていてもよい。保護膜はシリカ膜でもよい。
排ガスの温度を測定するための少なくとも1つの温度センサと、前記少なくとも1つの温度センサに対して前記マイクロ波を遮断するためのマイクロ波遮断手段とを備えてもよい。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、マイクロ波発生装置によって発生したマイクロ波が触媒担体に照射されると、ハニカム片の外周に設けられたマイクロ波吸収体がマイクロ波を吸収して発熱するので、触媒性能に影響を与えずに触媒温度を昇温することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
この発明の実施の形態に係る排ガス浄化装置の構成模式図を図1に示す。ディーゼルエンジン1から排出された排ガスが流通する排気管2に、酸化触媒3と、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)4と、SCR触媒5と、酸化触媒6とが設けられている。DPF4とSCR触媒5との間には、尿素水を噴射する噴射ノズル7が設けられており、噴射ノズル7は、配管8を介して、尿素水を貯留する尿素水タンク9に連通している。配管8には、尿素水タンク9内の尿素水を噴射ノズル7に供給するための尿素水添加システム10が設けられている。尿素水添加システム10は、制御装置であるECU14に電気的に接続されている。
【0010】
図2に、SCR触媒5の詳細図を示す。SCR触媒5は、コンバータケース11と、コンバータケース11内に設けられた円柱形状の触媒担体12とを有している。SCR触媒5には、コンバータケース11に部分的に設けられた孔15を介して、マイクロ波発生装置であるマグネトロン16が接続されている。コンバータケース11の両端にはそれぞれ、マイクロ波遮断手段としての一対の金属メッシュ17a,17bが設けられている。排気ガスは図中左から右へ流れる。上流側の金属メッシュ17aより上流側には、排気ガス温度を測定するための温度センサ13aが設けられている。また、下流側の金属メッシュ17bより下流側には、触媒担体12を通過後の排気ガス温度を測定するための温度センサ13bが設けられている。温度センサ13a,13b及びマグネトロン16はそれぞれ、ECU14に電気的に接続されている。
【0011】
図3に示されるように、触媒担体12は、炭化ケイ素(SiC)からなる複数の直方体形状のハニカム片20から構成されている。ハニカム片20には、ハニカム片20の軸方向にハニカム片20を貫通するように複数の孔21が設けられている。孔21の内周面21aには、選択還元触媒22が担持されている。
【0012】
図4に示されるように、ハニカム片20の4つの外周面20aにはそれぞれ、炭素からなる板状のマイクロ波吸収体23が設けられている。マイクロ波吸収体23は、ポリシラザンを塗布後に硬化させて形成したシリカ(SiO)からなる保護膜24で被覆されている。保護膜24で被覆されたハニカム片20を接着剤によって互いに接着され、円柱形状の触媒担体12が形成される。
【0013】
図2〜4には、SCR触媒5の構造を詳細に示したが、酸化触媒3及び6についても同じ構成となっており、SCR触媒5においてハニカム片20の孔21の内周面21aに担持された選択還元触媒22が、酸化触媒3ではNOを酸化してNOにするための酸化触媒となっており、酸化触媒6ではアンモニアを酸化するための酸化触媒となっている。
【0014】
次に、この実施の形態に係る排ガス浄化装置の動作について説明する。
ディーゼルエンジン1のスタート時やアイドリング時には、ディーゼルエンジン1から排出される排ガスの温度が低いため、酸化触媒3と、SCR触媒5と、酸化触媒6とのそれぞれに排ガスが流通しても、十分な触媒性能を発揮するのに必要な温度まで温度が昇温しない。そこで、SCR触媒5について、昇温動作を説明する。温度センサ13aによって測定された温度が、予め設定された温度(以下、「設定温度」と称する)よりも低い場合には、ECU14はマグネトロン16を起動させて、マイクロ波を発生させる。発生したマイクロ波は、孔15を介してコンバータケース11内に入り込み、触媒担体12に照射される。この際、マイクロ波は、一対の金属メッシュ17a,17bによって遮断され、これにより、排気管2内を、金属メッシュ17aよりも上流側及び金属メッシュ17bよりも下流側に広がるのを防止する。この結果、マイクロ波は、温度センサ13a及び13bに対して遮断される。
【0015】
マイクロ波が触媒担体12に照射されると、触媒担体12を構成するハニカム片20の外周面20aに設けられたマイクロ波吸収体23は、マイクロ波を吸収して発熱する。マイクロ波吸収体23の発熱により、ハニカム片20が昇温され、ハニカム片20の孔21の内周面21aに担持された選択還元触媒22が昇温される。
【0016】
温度センサ13bによって測定された温度が設定温度以上になったら、ECU14はマグネトロン16の稼働を停止する。これにより、マイクロ波吸収体23に吸収されるマイクロ波が発生しなくなるので、マイクロ波吸収体23が発熱しなくなる。これ以降、温度センサ13a,13bの測定値に基づいて、ECU14がマグネトロン16を起動させたり停止させたりすることにより、選択還元触媒22が適切な温度に保たれる。
尚、酸化触媒3及び6についても、各設定温度は異なるものの、SCR触媒5についての昇温動作と同様にして、適切な温度に保たれる。
【0017】
酸化触媒3及び6とSCR触媒5とがそれぞれ適切な温度になると、排ガスが酸化触媒3を流通することにより、排ガス中のNOがNOに酸化される。続いて排ガスがDPF4を流通することにより、排ガス中のパティキュレートマター(PM)がDPF4に捕捉される。ECU14は適切なタイミングで尿素水添加システム10を作動させ、尿素水タンク9内の尿素水を、配管8を介して噴射ノズル7に供給し、噴射ノズル7から尿素水がSCR触媒5に添加される。SCR触媒5に添加された尿素水は加水分解されてアンモニアと二酸化炭素となり、生成したアンモニアと排ガス中のNOxとが反応して、窒素及び水となる。SCR触媒5において消費されずに残ったアンモニアは、酸化触媒6において酸化される。
【0018】
このように、マグネトロン16によって発生したマイクロ波が触媒担体12に照射されると、ハニカム片20の外周面20aに設けられたマイクロ波吸収体23がマイクロ波を吸収して発熱するので、選択還元触媒22の触媒性能に影響を与えずに選択還元触媒22の温度を昇温することができる。酸化触媒3及び6についても同様である。
また、マイクロ波吸収体23は炭素から形成されているため、高温の排ガスが直接接触すると酸化してなくなってしまうが、シリカからなる保護膜24で被覆されているため、これを防ぐことができる。尚、シリカはマイクロ波を透過させるので、マイクロ波吸収体23によるマイクロ波の吸収を阻害することはない。
また、各ハニカム片20それぞれの外周面20aにマイクロ波吸収体23が設けられているので、触媒担体12を均等に昇温することができる。
【0019】
この実施の形態では、マイクロ波吸収体23として、炭素からなる板状の部材を使用したが、この形態に限定するものではない。炭素の粉末や任意の形状の小片であってもよい。また、材質も炭素に限定するものでもなく、マイクロ波を吸収できる材質ならどのような材質であってもよく、炭素繊維やグラファイト、SiC等でもよい。
【0020】
この実施の形態では、保護膜24の材質としてポリシラザン由来のシリカを使用したが、これに限定するものではない。マイクロ波を透過すると共に排ガスからマイクロ波吸収体を保護できる材質であればどのようなものでもよく、例えば、アルミナ等、セラミック系の材質であればよい。
【0021】
この実施の形態では、温度センサ13a,13bで触媒担体12を通過する前と後の排ガスの温度を測定し、その温度に基づいてマグネトロン16の稼働を調整するようにしたが、この形態に限定するものではない。マグネトロン16の起動後、一定時間が経過したらマグネトロン16を停止するようにしてもよい。
また、温度センサも2つに限定するものではなく、金属メッシュ17aよりも上流側または金属メッシュ17bよりも下流側に、少なくとも1つ以上の温度センサを設け、この温度センサの測定値に基づいてマグネトロン16の稼働を調整するようにしてもよい。
【0022】
この実施の形態では、触媒担体12としてSiC製の触媒担体を使用したが、これに限定するものではない。セラミックス、ゼオライト、コージェライト製等の触媒担体でもよい。また、触媒担体12の形状も円柱形状に限定するものではなく、楕円柱形状等どのような形状であってもよい。
この実施の形態では、各ハニカム片20の外周面20a全面にマイクロ波吸収体23を設けたが、例えば互いに接着される外周面20aの一方にマイクロ波吸収体23が設けられるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の実施の形態に係る排ガス浄化装置の構成模式図である。
【図2】この実施の形態に係る排ガス浄化装置を構成するSCR触媒の詳細図である。
【図3】この実施の形態に係る排ガス浄化装置を構成するSCR触媒の触媒担体の部分拡大図である。
【図4】この実施の形態に係る排ガス浄化装置を構成するSCR触媒の触媒担体のハニカム片の正面図である。
【符号の説明】
【0024】
12 触媒担体、13a,13b 温度センサ、16 マグネトロン(マイクロ波発生装置)、17a,17b 金属メッシュ(マイクロ波遮断手段)、20 ハニカム片、20a (ハニカム片の)外周面(ハニカム片の外周)、21 孔、22 選択還元触媒(触媒)、23 マイクロ波吸収体、24 保護膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に複数の孔を有すると共に該孔の内面に触媒を担持した複数のハニカム片からなる触媒担体と、
該触媒担体に照射するマイクロ波を発生させるためのマイクロ波発生装置と
を備え、
前記ハニカム片の外周に、前記マイクロ波を吸収可能な材質からなるマイクロ波吸収体が設けられている排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記マイクロ波吸収体は保護膜で被覆されている、請求項1に記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記保護膜はシリカ膜である、請求項2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項4】
排ガスの温度を測定するための少なくとも1つの温度センサと、
前記少なくとも1つの温度センサに対して前記マイクロ波を遮断するためのマイクロ波遮断手段と
を備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−19229(P2010−19229A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182875(P2008−182875)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】