説明

排気駆動式過給機の冷却装置及びこれを具備する内燃機関の制御装置

【課題】車載内燃機関に搭載される排気駆動式過給機の過度な温度上昇を抑制しつつ、自動停止処理の実行頻度を確保して燃費の低減を図ることのできる排気駆動式過給機の冷却装置及びこれを具備する内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】車載内燃機関に冷却水を供給する冷却水ポンプとして電動式のポンプを採用し、この電動ポンプから過給機に対しても冷却水を供給する。電子制御装置は、自動停止条件が成立して(ステップS110:YES)、自動停止処理が開始される際に、冷却水温THWの温度が所定温度THWp以上であり、過給機の温度が高いと判断したときには(ステップS120:YES)、電動ポンプを作動状態にする一方、冷却水温THWの温度が所定温度THWp未満であり、過給機の温度が低いと判断したときには(ステップS120:NO)、電動ポンプの作動を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動停止条件が成立したときに機関運転を自動的に停止させる車載内燃機関に設けられた排気駆動式過給機をポンプから供給される冷却液によって冷却する排気駆動式過給機の冷却装置及びこれを具備する内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、燃費の低減を図るべく、車両に搭載された内燃機関の運転を自動的に停止させる内燃機関が知られている(例えば特許文献1)。こうした内燃機関では、所定の自動停止条件が成立したときに機関運転を自動的に停止する自動停止処理が実行され、その後、自動停止条件が不成立となった場合やこれとは別の自動始動条件が成立した場合には機関運転が自動的に再開される。
【0003】
また、こうした自動停止処理が実行される内燃機関も含め、排気駆動式の過給機を搭載してこの過給作用により吸気効率を高めるようにした内燃機関が知られている。ここで、過給機が過度に温度上昇すると、その回転軸の支持部分における焼き付き等を招くため望ましくない。このため、こうした過給機を搭載する内燃機関にあっては、その冷却水や同内燃機関の潤滑や冷却に供されるオイルをポンプから過給機に供給することにより、過給機、特にその回転軸の支持部分における過度な温度上昇を抑制するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3879419号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したような冷却水やオイルといった冷却液を供給するためのポンプはいずれも、内燃機関の出力軸に連結され同出力軸の回転に伴って駆動されている。このため、自動停止処理により機関運転が一時的に中断されてその出力軸の回転が停止すると、これらポンプも停止状態となり過給機に対する冷却液の供給が停止される。したがって、このように自動停止処理を実行する内燃機関においては、その自動停止処理の実行に伴う過給機の温度上昇についての配慮が不可欠なものとなる。近年では過給機の構成部品について耐熱性の向上が図られているとはいえ、こうした自動停止処理が短期間の間に頻繁に実行されてその度に過給機に対する冷却液の供給が停止されると、過給機の過度な温度上昇、具体的には内燃機関の停止に伴って最も高温となっているタービンホイールから回転軸の支持部分に熱が伝達されて同支持部分が過度に温度上昇することによる焼き付きが避けられないものとなる。
【0006】
そこで、上記特許文献1に記載の装置では、過給機が高温である場合には自動停止条件が成立しても自動停止処理の実行を禁止して機関運転を継続させるようにしている。これにより自動停止処理の実行に伴う過給機の過度な温度上昇を抑制するようにしている。しかしながら、その一方で過給機の温度状況によって自動停止処理の実行が制限されることになるため、その分だけ燃費低減の効果が得られないこととなる。すなわち、従来の技術にあっては、過給機の過度な温度上昇を抑制する点及び自動停止処理の実行頻度を確保する点について改善の余地を残すものとなっていた。
【0007】
この発明は、上記実情に鑑みてなされたものでありその目的は、車載内燃機関に搭載される排気駆動式過給機の過度な温度上昇を抑制しつつ、自動停止処理の実行頻度を確保して燃費の低減を図ることのできる排気駆動式過給機の冷却装置及びこれを具備する内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、自動停止条件が成立したときに機関運転を自動的に停止させる自動停止処理を実行する車載内燃機関に設けられた排気駆動式過給機をポンプから供給される冷却液によって冷却する排気駆動式過給機の冷却装置において、前記ポンプを車載内燃機関とは別の駆動源によって駆動される独立駆動式のポンプとし、排気駆動式過給機の温度を監視する温度監視手段と、前記自動停止処理の開始に際して前記監視される排気駆動式過給機の温度が相対的に高いときには低いときと比較して排気駆動式過給機に供給される冷却液の量が多くなるように前記ポンプの作動状態を制御する制御手段とを備えることをその要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、自動停止処理の開始に際して、排気駆動式過給機の温度が相対的に高いときには低いときと比較してポンプから排気駆動式過給機に供給される冷却液の量が多くなるため、その回転軸の支持部位における焼き付き等を招く排気駆動式過給機の過度な温度上昇を抑制することができる。したがって、こうした排気駆動式過給機の過度な温度上昇を抑制しつつ、自動停止処理の実行頻度を確保して燃費の低減を図ることができるようになる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の排気駆動式過給機の冷却装置において、前記制御手段は、前記自動停止処理の開始に際して前記監視される排気駆動式過給機の温度が所定温度以上であることを条件に前記ポンプを作動して排気駆動式過給機に冷却液を供給する一方、同排気駆動式過給機の温度が前記所定温度未満であることを条件に前記ポンプの作動を停止して排気駆動式過給機に対する冷却液の供給を停止することをその要旨とする。
【0011】
上記構成では、自動停止処理の開始に際して排気駆動式過給機の温度が所定温度未満である、すなわち、上述したような過度な温度上昇が排気駆動式過給機に発生しない程度に低温であるときにはポンプの作動を停止させるようにしている。このため、不必要なポンプの駆動に伴うエネルギ損失の増大を回避して更なる燃費の低減を図ることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の排気駆動式過給機の冷却装置において、前記制御手段は、前記自動停止処理の実行中において前記監視される排気駆動式過給機の温度が低下して前記所定温度未満となったときに前記ポンプの作動を停止することをその要旨とする。
【0013】
上記構成では、自動停止処理の開始に際して排気駆動式過給機の温度が所定温度以上であるため、自動停止処理の開始時にポンプを作動状態とした場合であっても、その後に排気駆動式過給機の温度が低下して所定温度未満となったときにはポンプの作動を停止して排気駆動式過給機に対する冷却液の供給を停止するようにしている。このため、ポンプの停止後はこれを駆動することに伴うエネルギ損失が発生せず、燃費の更なる低減を図ることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の排気駆動式過給機の冷却装置において、前記温度監視手段は、前記ポンプから排気駆動式過給機に供給される冷却液の温度を検出し、同冷却液の温度に基づいて排気駆動式過給機の温度を監視することをその要旨とする。
【0015】
ポンプから排気駆動式過給機に供給された冷却液は排気駆動式過給機との熱交換により温度が変化するため、その温度は排気駆動式過給機の温度と相関を有して変化する。したがって、上記構成によれば、ポンプから排気駆動式過給機に供給される冷却液の温度に基づいて排気駆動式過給機の温度を監視することができる。
【0016】
また、温度監視手段としては、請求項5に記載の構成によるように、ポンプから排気駆動式過給機に供給され、同排気駆動式過給機から排出された直後の冷却液の温度を検出し、同冷却液の温度に基づいて排気駆動式過給機の温度を監視するといった構成を採用することもできる。こうした構成によれば、排気駆動式過給機から排出された直後の冷却水の温度が検出されるため、排気駆動式過給機の温度とより相関の高い値として冷却水の温度を検出することができる。したがって、排気駆動式過給機の温度をより正確に監視することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の排気駆動式過給機の冷却装置において、前記ポンプは前記車載内燃機関を冷却液による冷却対象として排気駆動式過給機と併せ前記車載内燃機関にも冷却液を供給するものであり、前記ポンプから前記車載内燃機関及び排気駆動式過給機に供給される冷却液の供給流路に設けられて同供給流路における冷却液の流通状態を切り替える流路切替弁を更に備え、前記制御手段は前記自動停止処理の実行中は前記車載内燃機関及び排気駆動式過給機のうち同排気駆動式過給機に対してのみ前記ポンプから冷却液が供給されるように前記流路切替弁を制御することをその要旨とする。
【0018】
上記構成によれば、車載内燃機関に冷却液を供給するポンプを併用し、同ポンプを通じて排気駆動式過給機にも冷却液が供給されることとなるため、冷却装置の構成についてその簡略化を図ることができる。また、自動停止処理の実行中は流路切替弁を制御することにより排気駆動式過給機に対してのみポンプから冷却液が供給されるようになるため、車載内燃機関が不必要に冷却されることがなく、更に自動停止処理中におけるポンプの吐出量を抑えることができるため、同ポンプを駆動するためのエネルギを低下させることができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の排気駆動式過給機の冷却装置において、前記ポンプは、車載バッテリをその駆動源とし、冷却液としての冷却水を排気駆動式過給機に供給する電動式冷却水ポンプであることをその要旨とする。
【0020】
上記構成によれば、電動式ポンプの駆動電力を変更することにより、排気駆動式過給機に供給される冷却水の量を同排気駆動式過給機の温度に即して変更することができる。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の排気駆動式過給機の冷却装置を備える内燃機関の制御装置であって、車載バッテリの電圧が所定電圧以下のときに前記車載内燃機関の前記自動停止処理を禁止する禁止手段を備えることをその要旨とする。
【0021】
上記構成によれば、自動停止処理中に電動式冷却水ポンプが作動することで車載バッテリの電圧が低下し、自動始動要求時に車載内燃機関の始動装置を駆動できなくなる状況を未然に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態が適用される排気駆動式過給機及び車載内燃機関の構成を示す模式図。
【図2】同実施形態にかかる自動停止処理の実行時における電動ポンプの制御手順を示すフローチャート。
【図3】同実施形態の自動停止処理の実行時における冷却水温、電動ポンプの作動状態、機関運動の自動停止の実行態様、過給機の回転軸の温度の推移を示すタイミングチャート。
【図4】他の実施形態についてその機関冷却水温と電動ポンプの吐出量との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る排気駆動式過給機の冷却装置を具体化した一実施形態について図1〜図3を参照して説明する。
図1に本発明の実施形態が適用される排気駆動式過給機及び車載内燃機関、並びにその周辺構成の概略を示す。図1に示すように、車両に搭載される内燃機関10にはその燃焼室(図示略)に吸入空気を導入する吸気通路13と、同燃焼室から排気が排出される排気通路16とが接続されている。この吸気通路13及び排気通路16には、その過給作用により吸気効率を高める排気駆動式過給機(以下、単に過給機と称する)20が接続されている。過給機20は、タービンホイール21とコンプレッサホイール23と、これらホイール21,23を連結して回転可能に支持する回転軸22とを有している。この過給機20においては、排気通路16を流れる排気がタービンホイール21に吹き付けられることによって回転軸22が回転し、それに伴ってコンプレッサホイール23が回転する。そして、コンプレッサホイール23の回転に伴い吸気通路13内の空気が加圧されて燃焼室に送り込まれる。
【0024】
また、本実施形態においては、内燃機関10に冷却水を供給する冷却装置30や、潤滑や冷却を目的として内燃機関10にオイルを供給するオイル供給装置40によって、過給機20にも冷却液として冷却水やオイルが供給されることにより、上述した回転軸22の支持部分における焼き付き等の要因となる過度な温度上昇を抑制するようにしている。
【0025】
冷却装置30においては、まずラジエータやサーモスタット弁等を含む冷却系31の冷却水が、車載バッテリ(以下、単にバッテリと称する)60を駆動源として駆動する電動ポンプ32によって吸い上げられて供給通路33に吐出される。この供給通路33の下流側部分は第1供給通路34と第2供給通路35とに分岐しており、供給通路33の冷却水は第1供給通路34を通じて内燃機関10に供給される一方、第2供給通路35を通じて過給機20、具体的にはその回転軸22の支持部分の近傍に形成された冷却路に供給される。尚、第1供給通路34の途中に供給通路33から第1供給通路34及び第2供給通路35に対する冷却水の流通状態を切り替える流路切替弁36が設けられている。この流路切替弁36が開弁状態になると第1供給通路34、第2供給通路35を通じて内燃機関10、過給機20に冷却水がそれぞれ供給される。一方、流路切替弁36が閉弁状態になると、第1供給通路34が閉鎖されるため、内燃機関10に対する冷却水の供給は停止され、第2供給通路35を通じて過給機20にのみ冷却水が供給されるようになる。
【0026】
こうして内燃機関10や過給機20に供給された冷却水は同内燃機関10内や過給機20内を流れた後、排出通路38,39を介して再び冷却系31に戻される。そして、冷却系31に戻された冷却水は、再び電動ポンプ32によって内燃機関10及び過給機20に供給される。なお、これら排出通路38,39のうち過給機20から排出される冷却水が流入する排出通路39には、過給機20の近傍に水温センサ56が取り付けられている。この水温センサ56によって、過給機20から排出された直後の冷却水の温度(冷却水温THW)が検出される。
【0027】
一方、オイル供給装置40においては、タンク41内に貯留されたオイルがポンプ42により吸い上げられて供給通路43に吐出される。この供給通路43の下流側部分は第1供給通路44と第2供給通路45とに分岐しており、供給通路43のオイルは第1供給通路44を通じて内燃機関10に供給される一方、第2供給通路45を通じて過給機20にも供給される。このようにして内燃機関10及び過給機20に供給されたオイルは、再びタンク41に戻される。尚、オイル供給装置40のポンプ42は内燃機関10の出力軸(図示略)の回転に伴って駆動される機械駆動式のポンプである。
【0028】
また、車両には内燃機関10の各種制御を実行するための電子制御装置50が搭載されている。電子制御装置50は、各種制御に係る各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータが記憶されたROM、CPUの演算結果等が一時記憶されるRAM、外部からの信号を入力するための入力ポート及び外部に信号を出力するための出力ポート等を備えている。
【0029】
電子制御装置50の入力ポートには、内燃機関10の運転状態を含む車両の各部の状態を検出するための各種センサが接続されている。各種センサとしては、上記水温センサ56のほか、例えば運転者によるアクセルペダルの操作量を検出するアクセルセンサ51、運転者によるブレーキペダルの操作の有無を検出するブレーキスイッチ52、車両の走行速度(車速)を検出する車速センサ53等が挙げられる。また、電子制御装置50の出力ポートには、電動ポンプ32の駆動回路が接続されている。
【0030】
また、この電子制御装置50は、自動停止条件が成立したときに機関運転を自動的に停止させる自動停止処理を実行する。ちなみに、先の自動停止条件としては、例えば(1)内燃機関10の暖機が完了していること、(2)アクセルペダルの操作量が「0」であること、(3)バッテリ60の電圧が所定電圧以上であること、(4)ブレーキペダルが操作されている状態にあること、及び(5)車速が「0」であることといった条件が挙げられる。そして、上記各種センサの検出信号に基づいて上記条件(1)〜(5)が全て成立している場合に自動停止条件が成立していると判定する。尚、上記各条件(1)〜(5)は一例であり、その他の条件を加えてもよい。
【0031】
一方、電子制御装置50は、内燃機関10の自動停止中に自動始動条件が成立しているか否かを判定し、自動始動条件が成立している場合には内燃機関10を自動始動させる。この自動始動に際しては、まずバッテリ60から始動装置(図示略)に電力が供給されるとともに、同始動装置により内燃機関10の出力軸が強制的に回転駆動されるのに併せて燃料噴射が開始される。ここで、自動始動条件としては上述した自動停止条件として用いた各条件(1)〜(5)のうち1つでも不成立となった場合に自動始動条件が成立していると判定する。尚、この自動始動条件は一例であり、その他の条件、例えば上述した自動停止条件が不成立となること以外の条件を用いてもよい。
【0032】
ところで、オイル供給装置40のポンプ42は機械駆動式のポンプであるため、自動停止処理の実行中はこのポンプ42も停止状態となり、過給機20に対するオイルの供給も停止されることとなる。したがって、こうした自動停止処理の実行に伴って過給機20、特に回転軸22の支持部分が過度に温度上昇する懸念がある。特に、こうした自動停止処理が短期間の間に頻繁に実行されてその度に過給機20に対するオイルの供給が停止されると、回転軸22の支持部分における焼き付き等の要因となる過給機20の過度な温度上昇が避けられないものとなる。またこうした過給機20の過度な温度上昇を回避するために自動停止処理の実行を禁止するようにした場合には、自動停止処理の実行頻度が制限され、燃費の悪化を招く点については上述したとおりである。
【0033】
そこで、本実施形態においては、過給機20の過度な温度上昇を抑制しつつ、自動停止処理の実行頻度を確保して燃費の低減を図るべく、内燃機関10に冷却水を供給するポンプとして電動式のポンプを採用するとともに、自動停止処理の開始に際して過給機20の温度に基づいて冷却装置30の電動ポンプ32の作動状態を制御するようにしている。以下、こうした自動停止処理の実行時における電動ポンプ32の制御手順について図2のフローチャートを参照して説明する。尚、図2に示す一連の処理は電子制御装置50によって所定の周期をもって繰り返し実行される。
【0034】
図2に示すように、本処理の実行が開始されると、まず自動停止条件が成立しているか否かが判断される(ステップS110)。そして、自動停止条件が成立していると判断されると(ステップS110:YES)、冷却水温THWが所定温度THWp以上であるか否かが判断される(ステップS120)。ここで、冷却水温THWは過給機20の温度と相関を有して変化するため、過給機20の温度の代替値として採用されている。すなわち、冷却水温THWに基づいて過給機20の温度を推定するようにしている。そして、冷却水温THWが所定温度THWp以上であると判断されると(ステップS120:YES)、過給機20が温度上昇しており上述した過度な温度上昇を招くおそれがあるとして、電動ポンプ32を作動状態に維持する(ステップS130)。尚、上記所定温度THWpは、自動停止処理の開始に際して冷却水温THWが所定温度THWp以上であるときに、上述した過度な温度上昇が発生するおそれのある程度にまで過給機20の温度が上昇していると想定される値として実験等によって予め設定され、電子制御装置50のROMに記憶されている。
【0035】
このように電動ポンプ32を作動状態とした後、流路切替弁36を閉弁状態に制御する(ステップS140)。これにより、冷却水は電動ポンプ32の作動に伴って第2供給通路35に流入し、過給機20にのみ供給されることとなる。そして、機関運転の自動停止を実行し(ステップS150)、本処理は一旦終了する。
【0036】
一方、冷却水温THWが所定温度THWp未満であると判断されると(ステップS120:NO)、過給機20は上述した過度な温度上昇が発生するおそれのない程度の低温状態であるとして、電動ポンプ32を停止する(ステップS160)。その後、機関運転の自動停止を実行し(ステップS150)、本処理を一旦終了する。
【0037】
なお、本実施形態においては、機関駆動の自動停止を実行中である状況下においても図2に示した自動停止処理が繰り返し実行される。このため例えば、冷却水温THWが所定温度THWp以上であるとして自動停止処理の開始時に電動ポンプ32を作動状態とした場合であっても、自動停止の実行中に過給機20の温度が低下して冷却水温THWが所定温度THWp未満となったときには電動ポンプ32の作動が停止されることとなる。
【0038】
また、自動停止条件が成立していないと判断されると(ステップS110:NO)、機関運転を自動停止する状況にないとして、流路切替弁36を開弁状態に制御した後(ステップS145)、本処理を一旦終了する。
【0039】
次に、自動停止処理の実行時における冷却水温THW、電動ポンプ32の作動状態、機関運動の自動停止の実行態様、そして過給機20の温度(その回転軸22の温度)の推移について、図3のタイミングチャートを参照して説明する。
【0040】
自動停止条件が成立するとともに、冷却水温THWが所定温度THWp以上であると判断されると、電動ポンプ32が作動状態にされて機関運転の自動停止が実行される(タイミングt1)。このように機関運転の自動停止が実行されても電動ポンプ32は作動状態のまま継続されるため、電動ポンプ32を停止状態として自動停止を実行した場合(図3に一点鎖線にて図示)とは異なり、過給機20の回転軸22の温度は徐々に低下するようになる。そして、冷却水温THWが所定温度THWp未満となると、上述した過度な温度上昇が発生するおそれのない程度の温度まで過給機20、特に回転軸22の温度が低下したと判断し、電動ポンプ32の作動は停止される(タイミングt2)。そして電動ポンプ32の作動が停止された状態のまま機関運転の自動停止が継続して実行される(タイミングt2以降)。
【0041】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)自動停止処理の開始に際して、過給機20の温度が相対的に高いときには低いときと比較して電動ポンプ32から過給機20に供給される冷却水の量が多くなるため、その回転軸22の支持部位における焼き付き等を招く過給機20の過度な温度上昇を抑制することができる。したがって、こうした過給機20の過度な温度上昇を抑制しつつ、自動停止処理の実行頻度を確保して燃費の低減を図ることができるようになる。
【0042】
(2)特に、自動停止処理の開始に際して冷却水温THWが所定温度THWp未満である、すなわち、上述したような過度な温度上昇が過給機20に発生しない程度に過給機20が低温であるときには電動ポンプ32の作動を停止させるようにしている。このため、不必要な電動ポンプ32の駆動に伴うエネルギ損失の増大を回避して更なる燃費の低減を図ることができる。
【0043】
(3)更に、自動停止処理の開始に際して冷却水温THWが所定温度THWp以上であるため、自動停止処理の開始時に電動ポンプ32を作動状態とした場合であっても、その後に過給機20の温度が低下して冷却水温THWが所定温度THWp未満となったときには電動ポンプ32の作動を停止して過給機20に対する冷却水の供給を停止するようにしている。このため、電動ポンプ32の停止後はこれを駆動することに伴うエネルギ損失が発生せず、燃費の更なる低減を図ることができる。
【0044】
(4)電動ポンプ32から過給機20に供給された冷却水は過給機20との熱交換によりその温度が変化するため、その温度は過給機20の温度と相関を有して変化する。また、水温センサ56によって過給機20から排出された直後の冷却水の温度が検出されるため、過給機20の温度とより相関の高い値として冷却水温THWを検出することができる。したがって、上記実施形態によれば、電動ポンプ32から過給機20に供給される冷却水の温度である冷却水温THWに基づいて過給機20の温度を監視することができる。
【0045】
(5)内燃機関10に冷却水を供給する電動ポンプ32を併用し、これを通じて過給機20にも冷却水が供給されることとなるため、冷却装置30の構成についてその簡略化を図ることができる。また、自動停止処理の実行中は流路切替弁36を制御することにより過給機20に対してのみ電動ポンプ32から冷却水が供給されるようになるため、内燃機関10が不必要に冷却されることがなく、更に自動停止処理中における電動ポンプ32の吐出量を抑えることができるため、同電動ポンプ32を駆動するためのエネルギを低下させることができる。
【0046】
(6)電動式ポンプである電動ポンプ32の駆動電力を変更することにより、過給機20に供給される冷却水の量を同過給機20の温度に即して変更することができる。
(7)自動停止処理中に電動式冷却水ポンプである電動ポンプ32が作動することでバッテリ60の電圧が低下し、自動始動要求時に内燃機関10の始動装置を駆動できなくなる状況を未然に回避することができる。
【0047】
尚、上記実施形態はこれを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記実施形態においては、冷却水温THWが所定温度THWp以上か否かによって電動ポンプ32の作動状態を切り替えるようにしていたが、冷却水温THWに応じて電動ポンプの吐出量を制御するようにしてもよい。具体的には、図4に実線にて示すように、冷却水温THWが高いほど電動ポンプの吐出量を増大させるように制御するようにしてもよい。また、同図4に一点鎖線にて示すように、冷却水温THWが暖機完了時の温度T0、第1の所定温度T1、第2の所定温度T2、そして過給機20の温度が過度に上昇していると推定される温度T3の順に高くなるにつれて、電動ポンプの吐出量を段階的に増大させるようにしてもよい。なお、この形態においては、冷却水温THWについて温度T0〜T3を設定したが、これより多くの温度を設定して、電動ポンプの吐出量を更に段階的に増大させるようにしてもよい。
【0048】
・冷却装置30の第1供給通路34の途中に流路切替弁36を設けるようにしていたが、この流路切替弁は必ずしも設ける必要はない。すなわち、先の図2に示した自動停止処理にて、ステップS140及びステップS145の処理を省略してもよい。こうした形態によっては、上記実施形態にて得られた効果(1)〜(4)及び(6)、(7)に準ずる効果を得ることができる。
【0049】
・上記実施形態によれば、内燃機関10に冷却水を供給する電動ポンプ32を通じて、過給機20にも冷却水を供給するようにしていた。この他、内燃機関を冷却するための冷却装置とは別に、過給機20を冷却する冷却装置を更に設け、同冷却装置のポンプの作動状態を制御することにより過給機20に供給する冷却水の供給量を制御するようにしてもよい。こうした形態によれば、上記実施形態にて得られた効果(1)〜(4)及び(6)、(7)に準ずる効果を得ることができる。
【0050】
・上記実施形態においては、水温センサ56によって過給機20から排出した直後の冷却水温THWを検出するようにしていたが、冷却水温THWとして検出するのは過給機から排出した直後の冷却水温でなくともよい。例えば、過給機20への供給通路33の途中に水温センサを設けて過給機20に供給される冷却水の温度を冷却水温THWとして検出するようにしてもよい。こうした形態によれば、上記実施形態にて得られた効果(1)〜(3)、(5)〜(7)に準ずる効果を得ることができる。
【0051】
・冷却装置30の電動ポンプ32から過給機20に供給される冷却水温THWに基づいて過給機20の温度を推定するようにしていた。この他、オイル供給装置40から過給機20に供給されるオイルの温度や排気通路16を流れる排気の温度等、冷却水温THW以外のパラメータに基づいて過給機20の温度を推定するようにしてもよい。また、過給機20に温度センサを取り付け、同温度センサにより検出される過給機20の温度に基づいてポンプの作動状態を制御するようにしてもよい。こうした形態によれば、上記実施形態にて得られた効果(1)〜(3)、(5)〜(7)に準ずる効果を得ることができる。
【0052】
・上記実施形態においては、自動停止処理の開始時に電動ポンプ32を作動状態とした場合であっても、自動停止の実行中にて過給機20の温度が低下して所定温度THWp未満となったときには電動ポンプ32の作動を停止するようにしていた。この他、電動ポンプの作動状態の設定を自動停止処理の開始時にのみ行って、この開始時に設定された電動ポンプ32の作動状態のまま機関運転の自動停止を継続するようにしてもよい。すなわち、先の図2にて示した自動停止処理を自動停止処理の開始時にのみ実行するようにしてもよい。こうした形態によれば、上記実施形態にて得られた効果(1)及び(2)、(4)〜(7)に準ずる効果を得ることができる。
【0053】
・上記実施形態においては、冷却装置30のポンプを電動ポンプ32として、自動停止処理の実行に際して同電動ポンプ32の作動状態を制御するようにしていた。この他、オイル供給装置40のポンプ42を電動ポンプとし、この電動ポンプの作動状態を制御することにより過給機20へのオイルの供給量を制御するようにしてもよい。なお、こうして自動停止処理の実行に際してオイル供給装置40の電動ポンプを制御する場合には、冷却装置30のポンプは電動式であっても機械駆動式であってもよい。また、冷却装置30及びオイル供給装置40の各ポンプ32,42をいずれも電動ポンプとして、自動停止処理の実行に際して2つの電動ポンプを併せて制御することにより、自動停止処理中における過給機20の過度な温度上昇を抑制するようにしてもよい。
【0054】
・自動停止処理の実行に際してその作動状態が制御されるポンプ32として、電力によって駆動する電動ポンプを採用していたがこれに限定されない。すなわち、自動停止処理の実行に際してその作動状態が制御されるポンプとして採用するポンプは、内燃機関とは別の駆動源によって駆動される独立駆動式のポンプであればよい。こうした形態によれば、上記実施形態にて得られる効果の(1)〜(5)に準ずる効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0055】
10…内燃機関、13…吸気通路、16…排気通路、20…(排気駆動式)過給機、21…タービンホイール、22…回転軸、23…コンプレッサホイール、30…冷却装置、31…冷却系、32…電動ポンプ、33,43…供給通路、34,44…第1供給通路、35,45…第2供給通路、36…流路切替弁、38,39…排出通路、40…オイル供給装置、41…タンク、42…ポンプ、50…電子制御装置(制御手段、禁止手段)、51…アクセルセンサ、52…ブレーキスイッチ、53…車速センサ、56…水温センサ(温度監視手段)、60…(車載)バッテリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動停止条件が成立したときに機関運転を自動的に停止させる自動停止処理を実行する車載内燃機関に設けられた排気駆動式過給機をポンプから供給される冷却液によって冷却する排気駆動式過給機の冷却装置において、
前記ポンプを車載内燃機関とは別の駆動源によって駆動される独立駆動式のポンプとし、
排気駆動式過給機の温度を監視する温度監視手段と、
前記自動停止処理の開始に際して前記監視される排気駆動式過給機の温度が相対的に高いときには低いときと比較して排気駆動式過給機に供給される冷却液の量が多くなるように前記ポンプの作動状態を制御する制御手段とを備える
ことを特徴とする排気駆動式過給機の冷却装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記自動停止処理の開始に際して前記監視される排気駆動式過給機の温度が所定温度以上であることを条件に前記ポンプを作動して排気駆動式過給機に冷却液を供給する一方、同排気駆動式過給機の温度が前記所定温度未満であることを条件に前記ポンプの作動を停止して排気駆動式過給機に対する冷却液の供給を停止する
請求項1に記載の排気駆動式過給機の冷却装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記自動停止処理の実行中において前記監視される排気駆動式過給機の温度が低下して前記所定温度未満となったときに前記ポンプの作動を停止する
請求項2に記載の排気駆動式過給機の冷却装置。
【請求項4】
前記温度監視手段は、前記ポンプから排気駆動式過給機に供給される冷却液の温度を検出し、同冷却液の温度に基づいて排気駆動式過給機の温度を監視する
請求項1〜3のいずれか1項に記載の排気駆動式過給機の冷却装置。
【請求項5】
前記温度監視手段は、前記ポンプから排気駆動式過給機に供給され、同排気駆動式過給機から排出された直後の冷却液の温度を検出し、同冷却液の温度に基づいて排気駆動式過給機の温度を監視する
請求項4に記載の排気駆動式過給機の冷却装置。
【請求項6】
前記ポンプは前記車載内燃機関を冷却液による冷却対象として排気駆動式過給機と併せ前記車載内燃機関にも冷却液を供給するものであり、
前記ポンプから前記車載内燃機関及び排気駆動式過給機に供給される冷却液の供給流路に設けられて同供給流路における冷却液の流通状態を切り替える流路切替弁を更に備え、
前記制御手段は前記自動停止処理の実行中は前記車載内燃機関及び排気駆動式過給機のうち同排気駆動式過給機に対してのみ前記ポンプから冷却液が供給されるように前記流路切替弁を制御する
請求項1〜5のいずれか1項に記載の排気駆動式過給機の冷却装置。
【請求項7】
前記ポンプは、車載バッテリをその駆動源とし、冷却液としての冷却水を排気駆動式過給機に供給する電動式冷却水ポンプである
請求項1〜6のいずれか1項に記載の排気駆動式過給機の冷却装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の排気駆動式過給機の冷却装置を備え、車載バッテリの電圧が所定電圧以下のときに前記車載内燃機関の前記自動停止処理を禁止する禁止手段を備える
内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−122559(P2011−122559A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283007(P2009−283007)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】