説明

排水処理方法、排水処理装置、および排水回収システム

【課題】様々な界面活性剤を含有する排水に対して適用でき、しかも連続運転性の良好な排水回収システム等を提供する。
【解決手段】界面活性剤を含有する排水をNF膜に通水するNF膜通水装置113と、NF膜を通水した排水を活性炭で処理する活性炭塔117と、活性炭で処理した排水を原水として通水し、電子デバイス製造設備10へ供給する供給水を製造する純水製造装置120とを含む排水回収システム100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排水処理方法等に係り、より詳しくは、界面活性剤を含有する排水を処理する排水処理方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体デバイスや液晶ディスプレイの製造工程では、薬品を用いた洗浄工程における洗浄効果を高めるべく、種々の界面活性剤が配合された洗浄水が多用されている。界面活性剤等の有機物を含む排水は、通常、生物処理、或いは酸化処理等によって有機物を分解後に放流される。また、純水或いは超純水製造設備(以下、単に「純水製造設備」と略記することがある。)の原水として回収する場合も多い。特に、工業用水の取水制限等のある場所においては、排水から原水を回収することが重要である。
【0003】
ここで、純水製造設備には通常、逆浸透膜(RO膜)やイオン交換樹脂が使用される。そして、排水中に含まれる界面活性剤は、RO膜やイオン交換樹脂に不可逆的に吸着し易い。界面活性剤がRO膜に不可逆的に吸着すると、膜の閉塞による透過水量の低下、或いは透過圧力の上昇がもたらされる。また、界面活性剤がイオン交換樹脂に不可逆的に吸着すると、処理水質の悪化がもたらされる。従って、界面活性剤を含む排水から純水製造設備の原水を回収する場合には、予め界面活性剤を完全に分解しておく、或いは除去しておくことが望まれる。
【0004】
排水中に含まれる有機物を分解、或いは除去する方法としては、例えば生物処理法、生物活性炭処理法、活性炭により有機物を吸着・除去する方法、等が挙げられる。
また、RO膜を用いる方法も考えられるが、界面活性剤がRO膜表面に不可逆的に吸着してRO膜を閉塞させることが多いためあまり好ましくない。しかし、この閉塞を防止すべく、RO膜の入口水にアルカリを添加してpHを9.5以上に調整する方法が提案されている(特許文献1,2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−081268号公報(第3−4頁、図1)
【特許文献2】特開2005−081269号公報(第3−4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の方法はいずれも、汎用性等の観点から、なお改善の余地を有するものであった。
即ち、生物を用いて有機物を分解する方法、及び、活性炭を用いて有機物を吸着・除去する方法については、有機物の種類により生物分解性や吸着性が異なるため、汎用性に劣るものである。しかも、半導体デバイスや液晶ディスプレイの製造工程においては多種多様な界面活性剤が用いられるが、そのような界面活性剤の多くは生物分解性の低いものが多い。
また、特許文献1,2に記載のpHを調整する方法についても、必ずしも全ての界面活性剤に対して効果的であるとは言えない。一部の界面活性剤に対しては、pHを9.5以上としても界面活性剤のRO膜への不可逆的吸着を十分に抑制できず、RO膜を頻繁に交換せざるを得ない場合がある。
【0007】
本発明は、以上のような技術的課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、様々な界面活性剤を含有する排水に対して適用でき、しかも、連続運転性の良好な排水処理方法、排水処理装置、又は排水回収システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明は、ナノフィルトレーション膜(NF膜)のろ過特性に着目し、活性炭と組み合わせて用いることで、汎用性の向上と、ろ過膜の交換頻度の低下とを両立させた点に特徴がある。
即ち、本発明の排水処理方法は、界面活性剤を含有する排水をNF膜に通水するNF膜通水工程と、NF膜に通水した排水を活性炭で処理する活性炭処理工程とを含むことを特徴としている。
【0009】
ここで、NF膜通水工程を経た後であって、活性炭処理工程の前、又は活性炭処理工程の後に、アニオン交換樹脂で処理するイオン交換工程を更に含むことを特徴とすることができる。また、処理水の一部をRO膜に通水し、処理水中に含まれるRO膜閉塞物質を検知する検知工程を更に含むことを特徴とすることができる。更に、界面活性剤は、アニオン系、又はノニオン系界面活性剤であり、処理水を、製造設備へ供給する供給水の原水として回収することを特徴とすることができる。
【0010】
また、本発明は、排水処理装置と捉えることができ、本発明の排水処理装置は、界面活性剤を含有する排水をNF膜に通水するNF膜通水手段と、NF膜に通水した排水を活性炭で処理する活性炭処理手段とを備えることを特徴としている。
ここで、排水をアニオン交換樹脂で処理するイオン交換手段を更に備え、イオン交換手段は、NF膜に通水された排水が活性炭処理手段で処理される前、又は活性炭処理手段で処理された後に、排水のイオン交換を行なうことを特徴とすることができる。
【0011】
更に、本発明は、排水回収システムと捉えることができ、本発明の排水回収システムは、界面活性剤を含有する排水から、製造設備へ供給する供給水の原水を回収する排水回収システムであって、界面活性剤を含有する排水をNF膜に通水するNF膜通水装置と、NF膜を通水した排水を活性炭で処理する活性炭処理装置と、活性炭で処理した排水を原水として通水し、製造設備へ供給する供給水を製造する供給水製造装置とを含むことを特徴としている。なお、「システム」という語句は、単体の筐体を有する装置として構成される場合の他、各筐体からなる装置が連結されて全体を構成する場合を含む。
ここで、処理水の一部をRO膜に通水し、処理水中に含まれるRO膜閉塞物質を検知する検知装置を更に備えることを特徴とすることができる。
【0012】
本発明においては、従来の排水処理方法において用いられていたRO膜に代えて、NF膜が使用される。
NF膜はRO膜と同様に界面活性剤を除去できると共に、界面活性剤の不可逆的吸着に強い(不可逆的吸着が生じ難い)。しかし、NF膜の場合には、界面活性剤を完全には除去できず、界面活性剤の一部が透過水に漏洩する場合がある。そのような漏洩は微量であっても、純水製造装置に使用されるRO膜を閉塞させる等のトラブルを引き起こしてしまう。また、NF膜はRO膜に比べて脱塩性能に劣る。
従って、界面活性剤や塩類の除去能力の観点から、有機物含有排水(特に、多種多様な界面活性剤や塩類が含まれることがある、電子デバイス製造工場等から排出される排水)を処理する際に用いるろ過膜として、NF膜ではなく、RO膜を選択し、且つ、生物処理等の前処理と組み合わせることでRO膜の閉塞を抑制するのが、当業者としては一般的であった。
【0013】
本発明においては、NF膜と活性炭とを組み合わせて使用する。これにより、NF膜から漏洩した界面活性剤を吸着・除去し得、純水製造装置の原水として回収可能な程度の水質を確保することが可能である。
ここで、活性炭はNF膜の後段に設置されるので、排水を直接に活性炭で処理する場合に比べ、活性炭への全有機炭素量(TOC:Total Organic Carbon)の負荷を大幅に低減することができる。つまり、活性炭のライフが大幅に伸び、活性炭の交換頻度が低減される。また、上述の通り、NF膜に対しては界面活性剤の不可逆的吸着が生じにくい。
そして、これらNF膜と活性炭とを組み合わせて使用する結果、それぞれの作用により排水中の不要物が除去可能であるのみならず、それらが有機一体的に機能することにより、全体として連続運転性の良好な排水処理方法等が実現されるものである。
【0014】
なお、「RO膜」とは、膜分離技術振興協会が定める規格(AMST−002)のRO膜モジュールの項目で定義された測定方法における脱塩率(塩化ナトリウム除去率)が93%以上のろ過膜を意味し、「NF膜」とは、同規格のNF膜の項目で定義された脱塩率(塩化ナトリウム除去率)が5%以上93%未満のろ過膜を意味するものである。
【0015】
また、活性炭への吸着性の比較的低い、例えばアニオン系界面活性剤をより良好に除去する目的で、NF膜の後段であって、活性炭の前段又は後段に、更にアニオン交換樹脂等のイオン交換樹脂を設置することが効果的である。
【0016】
一方、本発明における活性炭やイオン交換樹脂の交換時期については、処理された水のTOC濃度から判断する方法が考えられる。しかし、後段に純水製造設備を擁する場合、純水製造設備で使用されるRO膜への影響の有無をTOC濃度のみから判断することは妥当でないと考えられる。界面活性剤にはRO膜を閉塞させる成分と、ほとんど閉塞させない成分とがあるためである。
また、活性炭やイオン交換樹脂による処理工程からRO膜を閉塞させる成分がリークしているか否かについては、純水製造設備のRO膜の透過水量や操作圧力の変化から直接判断することも可能である。しかし、界面活性剤によるRO膜の閉塞は急激な場合もあるので、より早く界面活性剤のリークを検出する手段が望まれる。
【0017】
そこで、本発明においては、活性炭やイオン交換樹脂による処理工程を経た処理水の一部を、純水製造設備とは別の小型のRO膜装置(検知装置)に通水し、その透過量の変化等を監視することにより、RO膜を閉塞させる成分のリークを検出することができる。つまり、RO膜を閉塞させる成分のリーク状況(検知装置に備えられたRO膜の閉塞状況)に基づいて、上記活性炭やイオン交換樹脂が失活しているか否かを判断することができる。
なお、この方法では、活性炭やイオン交換樹脂による処理水を直接RO膜に通水させるので、リークした界面活性剤の影響をより早く検知することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、汎用性が良好で、しかも、連続運転性の良好な排水処理方法、排水処理装置、又は排水処理システムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
〔実施の形態1〕
図1は、本実施の形態が適用される排水回収システム100を説明するための構成図である。図1に示す排水回収システム100は、半導体デバイスや液晶ディスプレイといった電子デバイスの製造ライン等を含む電子デバイス製造設備10に接続され、この電子デバイス製造設備10からの排水を回収して再利用するための設備(システム)を構成している。
電子デバイス製造設備10は、電子デバイスを水洗する洗浄工程を含んでいる。また、排水回収システム100は、このような洗浄工程から生じる排水を処理し、電子デバイス製造設備10に戻して排水の再利用を実現している。
【0020】
ここで、電子デバイス製造設備10における水洗工程では、電子デバイスを良好に洗浄することを目的として、純水(本実施の形態においては、超純水を含む概念である。)に界面活性剤を配合した洗浄液が用いられる。従って、電子デバイス製造設備10において生ずる排水には界面活性剤が含有される。このような排水(界面活性剤含有排水。以下、単に「排水」と略記することがある。)を処理するシステムとして、本実施の形態が適用される排水回収システム100は、電子デバイス製造設備10より排出される排水を処理する排水処理装置110と、排水処理装置110にて処理された排水から電子デバイス製造設備10へ供給する供給水を製造する、供給水製造装置の一例としての純水製造装置120とを備えている。
【0021】
排水処理装置110は、排水を回収して貯蔵する回収原水槽111と、回収原水槽111に貯蔵された排水をNF膜通水装置113へ移送するポンプ112とを備える。また、NF膜が設置されると共にポンプ112により移送された排水をNF膜に通水するNF膜通水装置113と、NF膜通水装置113にて通水処理の施された排水を貯蔵するNF処理水槽114とを備える。また、NF処理水槽114に貯蔵された排水を活性炭塔117へ移送するポンプ116と、活性炭が設置されると共にポンプ116により移送された排水を活性炭で処理する、活性炭処理装置としての活性炭塔117とを備えている。それらは、排水が供給される上流側から下流側へ向けて順に接続されている。また、NF膜からの濃縮水は排水溝115より廃水処理装置(図示せず)に移送される。
【0022】
電子デバイス製造設備10より排出される排水は、回収原水槽111にまず移送される。そして、回収原水槽111に移送された排水は、ポンプ112によりNF膜通水装置113に移送される。NF膜通水装置113では、ポンプ112により移送された排水をNF膜に通水する。当該通水により、排水に含まれるろ過対象物(界面活性剤等)の大部分を分別・除去する。
【0023】
ここで、本実施の形態において用いられるNF膜の脱塩率(塩化ナトリウム除去率)としては、前述の規格(AMST−002)にて定義された脱塩率として通常5%〜93%、好ましくは20%〜80%である。脱塩率が過度に大きいと、界面活性剤の不可逆的吸着を抑制する効果が不十分となる場合がある。一方、過度に小さいと、NF膜を漏洩する界面活性剤濃度が高くなり、後段の活性炭の負荷が大きくなる場合がある。
【0024】
また、本実施の形態において用いられるNF膜としては、特に限定されるものではないが、例えば、架橋全芳香族ポリアミド系、線状全芳香族ポリアミド系、アリル−アルキルポリアミド/ウレア系、セルロースアセテート系、セルローストリアセテート系、ポリアクリロニトリル系、ポリベンズイミダゾロン系、ポリピペラジンアミド系、架橋ポリエーテル系、スルホンポリサルフォン系、ポリビニルアルコール系、ポリエーテルスルホン系、等の膜を採用することができる。これらはその複数種、或いは他の基材と組み合わせた複合膜であっても良い。中でも、特に界面活性剤による閉塞の少ない膜として、ポリアミド系、ポリビニルアルコール系、ポリエーテルスルホン系のNF膜を用いることが好ましく、特に、ポリピペラジンアミド系のNF膜を用いることが好ましい。
【0025】
更に、本実施の形態において用いられるNF膜の態様としては、スパイラル型、中空糸型、管状型など、いかなる形式のものであっても良い。中でも、汚染に対する強さの観点から、スパイラル型のものを使用することが好適である。
また更に、ノニオン系またはアニオン系界面活性剤の不可逆的な吸着が比較的少ない膜としてアニオン荷電膜、ノニオン膜のいずれかが好ましい。
【0026】
上記のようなNF膜としては市販品を用いることができ、例えばSU−200,SU−600,SU−610,SU−620(東レ株式会社製)、NTR−729HF,NTR−7250,NTR−7450,NTR−7410(日東電工株式会社製)、等を挙げることができる。中でも、SU−600,NTR−729HF,NTR−7250,NTR−7450が好適である。
【0027】
なお、NF膜通水装置113における排水の流れとしては、排水中に含まれる不要成分がNF膜表面に不可逆的に吸着するおそれをより低減する観点から、クロスフローとすることが好適である。ここで、「クロスフロー」とは、NF膜通水装置113へポンプ112より供給される排水のうち、一部をNF膜に通水させると共に、他の部分についてはNF膜の膜面を洗浄させつつ循環させる排水の流れをいう。
また、NF膜に供給される界面活性剤含有排水中に含まれる界面活性剤の濃度としては、特に限定されるものではないが、TOC濃度として、通常20mg/L〜0.2mg/L、好ましくは10mg/L〜0.2mg/Lである。このような界面活性剤含有排水に対して排水処理を行なう場合、NF膜の閉塞のおそれがより低減されるため好適である。
【0028】
NF膜通水装置113においてNF膜を通水した排水は、NF処理水槽114に移送される。またNF膜通水装置113から排出される濃縮水は排水溝115を経て廃水処理設備に移送される。
NF処理水槽114に移送された排水は、更に、ポンプ116により活性炭塔117に移送される。活性炭塔117では、その内部に設置された活性炭により、移送された排水中に含まれる界面活性剤等(NF膜通水装置113を漏洩した界面活性剤等)が吸着・除去される。
【0029】
ここで、活性炭塔117において使用される活性炭としては、公知の活性炭を使用することができる。このような活性炭としては、石炭系活性炭、椰子殻系活性炭等を挙げることができる。
また、このような活性炭としては市販品を用いることができ、例えばダイヤホープ008N,006N,Filtrasorb400(いずれも、三菱化学カルゴン株式会社製)等を使用することができる。
【0030】
そして、活性炭塔117を通水した排水は、原水20と混合されて純水製造装置120へ移送される。純水製造装置120には1又は2以上のRO膜が備えられている。純水製造装置120においては、排水に対する最終的な精製(不要物のろ過、脱塩等)が行なわれて純水が製造される(排水から純水が回収される)。製造された純水は、電子デバイス製造設備10に移送され、電子デバイス製造設備10における洗浄用水として使用される。
【0031】
〔実施例〕
以下、実施例により本実施の形態(実施の形態1)を具体的に説明する。但し、本実施例は、本実施の形態を限定するものではない。
(実施例1)
NF膜通水装置113としてSU−610(4インチモジュール、1本、東レ株式会社製)、活性炭塔117としてダイヤホープ008N(三菱化学カルゴン株式会社製)を用いて、図1に示す排水処理装置110を構成した。
回収原水槽111に貯蔵される界面活性剤含有排水としては、界面活性剤(横浜油脂工業株式会社製 セミクリーンKG−3)を、TOC濃度として10mg/L(即ち、10ppm)含有するメイクアップ水を用いた。そして、表1に示すNF膜通水条件にて30日間の連続運転を行ない、NF膜通水装置113の平均操作圧、NF膜通水装置113を通水後の処理水のTOC濃度、更に、活性炭塔117を通水後の処理水のTOC濃度を測定した。結果を図5に示した。
【0032】
【表1】

【0033】
(濃縮水循環量)
NF膜の透過しない濃縮側の水をNF膜供給水に循環することを意味する。通常、NF膜、RO膜ともに膜表面での過度の濃度分極を避けるために、濃縮水の最小流量を決めている。しかし、少ないモジュール数で回収率を高く、すなわち濃縮水を少なくすると最小濃縮水量より少なくなる場合がある。これを避けるために、濃縮水の量を大きくするとともに、その大部分を供給水に循環する方式が取られる。
(濃縮水ブロー量)
NF膜の透過しない濃縮側の水のうちで、供給水側に循環せずに、系外に排水する量を意味する。
(SV≒18)
活性炭体積あたりに通水する水の量(空間速度)を意味する。SV:Space Velocity。処理量(m/h)/充填剤量(m)で算出される。
【0034】
(比較例1)
NF膜通水装置113、NF処理水槽114、ポンプ116、及び活性炭塔117の代わりに、RO膜通水装置(LF−10、4インチモジュール1本、日東電工株式会社製)を用いた。
実施例1と同様の界面活性剤含有排水を用い、表2に示すRO膜通水条件にて2日間の連続運転を行なった。RO膜通水装置の平均操作圧、及びRO膜通水装置を通水後の処理水のTOC濃度を測定した。なお、表2中の項目の意義は表1と同様である。結果を図6に示した。
【0035】
【表2】

【0036】
実施例1(図5)においては、30日の連続運転後にもNF膜通水装置113の平均操作圧は一定しており、長期に亘り安定した排水処理が実現されている。しかも、界面活性剤含有排水のTOC濃度は、初期の10ppmレベルからNF膜通過後には約270ppbレベルへ、更に活性炭処理後には約10ppbレベルにまで低減されている。つまり、実施例1の排水処理装置は、原水20に混合可能な処理水を、電子デバイス製造設備10より排出される界面活性剤含有排水から、長期に亘り安定して回収することが可能な装置であった。
一方、比較例1(図6)においては、RO膜通水装置の平均操作圧が経時的に連続して上昇し、2日程度の連続運転により平均操作圧が初期操作圧の約1.4倍程度にまで上昇した。比較例1の排水処理装置においては、頻繁なRO膜の交換が必要である。つまり、比較例1の排水処理装置は、連続運転の観点からはなお改良の余地を有する排水処理装置であった。
【0037】
〔実施の形態2〕
実施の形態1では、図1に示すように、NF処理水槽114に貯蔵された排水をポンプ116により活性炭塔117に移送した。実施の形態2では、実施の形態1と同様な課題に対応するために、NF処理水槽114に貯蔵された排水をポンプ116により、まずアニオン交換樹脂塔218に移送し、その後、活性炭塔117に移送する。これにより、活性炭に吸着され難いアニオン系の界面活性剤等を、排水からより確実に除去することができる。
尚、実施の形態1と同様な機能については同様な符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
【0038】
図2は、実施の形態2における排水回収システム200を説明するための構成図である。図2に示す排水回収システム200は、電子デバイス製造設備10より排出される排水を処理する排水処理装置210と、排水処理装置210にて処理された排水から電子デバイス製造設備10へ供給する供給水を製造する、供給水製造装置の一例としての純水製造装置120とを備えている。
【0039】
排水処理装置210は、イオン交換装置としてのアニオン交換樹脂塔218を備えている。アニオン交換樹脂塔218は、アニオン交換樹脂が設置されると共にポンプ116により移送された排水をアニオン交換樹脂で処理する。アニオン交換樹脂塔218により処理された排水は、次いで、活性炭塔117にて処理される。アニオン交換樹脂塔218では、排水に対するイオン交換処理が行なわれる。
【0040】
ここで、アニオン交換樹脂塔218において使用されるアニオン交換樹脂としては、特に限定されるものではなく、−Cl形や再生形(−OH形)等、いずれのアニオン交換樹脂も使用することができる。
また、そのようなアニオン交換樹脂としては市販品を用いることができ、例えばSAT10L、SA10A(ともに三菱化学株式会社製)等を挙げることができる。
【0041】
排水処理装置210は、実施の形態1の場合と同様にしてNF処理水槽114に排水を移送した後、ポンプ116により排水をアニオン交換樹脂塔218へ移送し、更に活性炭塔117へ排水を移送する。
【0042】
〔実施例〕
以下、実施例により本実施の形態(実施の形態2)を具体的に説明する。但し、本実施例は、本実施の形態を限定するものではない。
(実施例2)
NF膜通水装置113としてSU−610(4インチモジュール、1本、東レ株式会社製)、活性炭塔117としてダイヤホープ008N(三菱化学カルゴン株式会社製)、アニオン交換樹脂塔218としてSAT10L(三菱化学株式会社製)を用いて、図2に示す排水処理装置210を構成した。
回収原水槽111に貯蔵される界面活性剤含有排水としては、実施例1と同様のメイクアップ水を用いた。そして、表3に示す通水条件にて30日間の連続運転を行ない、NF膜通水装置113の平均操作圧、NF膜通水装置113を通水後の処理水のTOC濃度、アニオン交換樹脂塔218を通水後の処理水のTOC濃度、更に、活性炭塔117を通水後の処理水のTOC濃度を測定した。なお、表3中の項目の意義は表1と同様である。結果を図7に示した。
【0043】
【表3】

【0044】
実施例2(図7)においては、30日の連続運転後にもNF膜通水装置113の平均操作圧は一定しており、長期に亘り安定した排水処理が実現されている。しかも、界面活性剤含有排水のTOC濃度は、初期の10ppmレベルからNF膜通過後には約270ppbレベルへ、また、アニオン交換樹脂処理後には約200ppbレベルへ、更に活性炭処理後には約6ppbレベルにまで低減されている。つまり、実施例2の排水処理装置210は、原水20に混合可能な処理水を、電子デバイス製造設備10より排出される界面活性剤含有排水から、長期に亘り安定して回収することが可能な装置であった。
また、アニオン交換樹脂塔218を更に備えた装置構成とした結果、上記実施例1と比較して、最終的に得られる処理水のTOC濃度が更に低減されていた。
【0045】
〔実施の形態3〕
実施の形態2では、図2に示すように、NF処理水槽114に貯蔵された排水をポンプ116によりアニオン交換樹脂塔218に移送し、更に、活性炭塔117に移送した。実施の形態3では、実施の形態2と同様な課題に対応するために、NF処理水槽114に貯蔵された排水をポンプ116により活性炭塔117に移送し、更に、アニオン交換樹脂塔218に移送する。これにより、排水中からより良好に界面活性剤等が除去される。しかも、実施の形態2の場合と比較して、高価なアニオン交換樹脂へのTOC負荷が低減されるため、アニオン交換樹脂の交換頻度をより低減することができる。
尚、実施の形態2と同様な機能については同様な符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
【0046】
図3は、実施の形態3における排水回収システム300を説明するための構成図である。図3に示す排水回収システム300は、電子デバイス製造設備10より排出される排水を処理する排水処理装置310と、排水処理装置310にて処理された排水から電子デバイス製造設備10へ供給する供給水を製造する、供給水製造装置の一例としての純水製造装置120とを備えている。
【0047】
排水処理装置310は、イオン交換装置としてのアニオン交換樹脂塔218を備えている。アニオン交換樹脂塔218は、アニオン交換樹脂が設置されると共に活性炭塔117にて処理された排水をアニオン交換樹脂で処理する。アニオン交換樹脂塔218により処理された排水は、原水20に配合される。
【0048】
排水処理装置310は、実施の形態2の場合と同様にしてNF処理水槽114に排水を移送した後、ポンプ116により排水を活性炭塔117へ移送し、更にアニオン交換樹脂塔218へ排水を移送する。
【0049】
〔実施の形態4〕
実施の形態3では、図3に示すように、アニオン交換樹脂塔218で処理した排水を全て原水20に混合させて純水製造装置120へ移送した。実施の形態4では、実施の形態3と同様な課題に加え、排水処理装置に備えられる活性炭やイオン交換樹脂の交換時期を適切に検知する観点から、アニオン交換樹脂塔218で処理した排水の一部を検知装置の一例としてのRO膜装置419に移送する。
【0050】
即ち、排水処理装置410において、NF膜通水装置113を漏洩する界面活性剤等については、後段に位置する活性炭塔117、及びアニオン交換樹脂塔218によりその大部分が除去された後、RO膜を用いた純水製造装置120へ供給される。ここで、活性炭やイオン交換樹脂の交換時期については、処理された水のTOC濃度から判断する方法が考えられる。しかし、界面活性剤にはRO膜を閉塞させる成分と、ほとんど閉塞させない成分とがあるため、純水製造設備で使用されるRO膜への影響の有無をTOC濃度のみから判断することは妥当でない。
【0051】
従って、本実施の形態においては、活性炭やイオン交換樹脂による処理工程を経た処理水の一部を、純水製造装置120とは別に設けた小型のRO膜装置419(検知装置)に通水する。そして、その運転時の平均操作圧の変化等を監視することにより、RO膜を閉塞させる成分が漏洩しているか否かを検出する(RO膜を閉塞させる成分が漏洩していれば、運転時の平均操作圧が上昇する等の様子が観察される。)。RO膜を閉塞させる成分が漏洩している場合には、排水処理装置410に使用されている活性炭やイオン交換樹脂が失活していると判断することができる。
つまり、RO膜装置419の運転時の平均操作圧の変化等を監視することにより、活性炭やイオン交換樹脂の適切な交換時期を判断することができる。活性炭やイオン交換樹脂が過度に失活する以前に、適切なタイミングでそれらを交換することにより、純水製造装置120へ供給される処理水に含まれるRO膜閉塞物質を、一定レベル濃度以下に維持することができる。
以下、実施の形態4についてさらに説明する。尚、実施の形態3と同様な機能については同様な符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
【0052】
図4は、実施の形態4における排水回収システム400を説明するための構成図である。図4に示す排水回収システム400は、電子デバイス製造設備10より排出される排水を処理する排水処理装置410と、排水処理装置410にて処理された排水から電子デバイス製造設備10へ供給する供給水を製造する、供給水製造装置の一例としての純水製造装置120とを備えている。
【0053】
排水処理装置410は、RO膜が設置されると共にアニオン交換樹脂塔218にて処理された排水の一部を処理するRO膜装置419を備えている。アニオン交換樹脂塔218とRO膜装置419とを接続する流路Aからは、原水20と純水製造装置120とを結ぶ流路へと処理水を移送する流路Bが分岐している。RO膜装置419に導入される排水を除く他の排水は、流路Bを通じて原水20に配合される。
【0054】
排水処理装置410においては、実施の形態3の場合と同様にしてNF処理水槽114、活性炭塔117、アニオン交換樹脂塔218に排水が通水され、処理される。そして、アニオン交換樹脂塔218に通水されて得られた処理水は、上記流路Aと流路Bとに分岐されて移送される。
処理水の流量のうち、流路Aにて移送される処理水の流量は、RO膜装置419に備えられた膜の本数と単位膜面積あたりの流量から決められる。RO膜装置419に備えられるRO膜は検知装置としての役割が果たすことが出来ればいいので、通常1〜2本で構わない。またRO膜装置419の単位面積あたりの流量としては、純水製造装置120に備えられるRO膜を通過する単位面積あたりの流量の通常1.2倍〜3倍、好ましくは1.5倍〜2倍である。
このような流量比とすることにより、活性炭塔117又はアニオン交換樹脂塔218からRO膜閉塞成分が漏洩した場合、RO膜装置419に備えられたRO膜を、純水製造装置120に1又は2以上備えられたRO膜よりも優先的に閉塞させ、純水製造装置120に備えられたRO膜が閉塞するより前に活性炭またはイオン交換樹脂の交換時期を判断することが出来る。
【0055】
そして、流路Aにて移送された排水はRO膜装置419へ移送され、RO膜装置419に備えられたRO膜の閉塞具合を参照し、活性炭塔117に備えられた活性炭、及び/又はアニオン交換樹脂塔218に備えられたアニオン交換樹脂の交換時期が判断される。
【0056】
なお、RO膜装置419に備えられたRO膜の閉塞具合については、例えば、処理水を一定流量で流通させた場合の操作圧力をモニタする方法や、処理水を一定圧力で流通させた場合の流量の変動をモニタする方法、等が挙げられる。
また、RO膜装置419に備えられたRO膜としては、特に限定されるものではないが純水製造装置120に備えられたRO膜と同一の銘柄あるいは同系列の銘柄を用いるのが好ましい。
【0057】
本実施の形態において用いられたRO膜装置419は、上記実施の形態1,2に適用することも可能である。この場合、RO膜装置419の設置位置としては、活性炭又はアニオン交換樹脂の交換時期の決定の観点から、排水処理装置から純水製造装置へ処理水が導入される流路の途中に分岐して設置されることが好適である。
【0058】
なお、上記実施の形態1〜4は、いずれも処理水を純水製造装置120への供給水として回収する排水回収システムに関するものであったが、処理水をそのまま排水(廃棄)してよいことについては、云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、例えば電子デバイス製造設備等、より具体的には、例えば半導体デバイス製造工場や液晶ディスプレイ製造工場等から排出される排水に対して、好ましく適用可能な排水回収システム、排水処理装置、又は排水処理方法である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施の形態1が適用される排水回収システムを説明するための構成図である。
【図2】実施の形態2が適用される排水回収システムを説明するための構成図である。
【図3】実施の形態3が適用される排水回収システムを説明するための構成図である。
【図4】実施の形態4が適用される排水回収システムを説明するための構成図である。
【図5】実施例1の評価結果を示した図である。
【図6】比較例1の評価結果を示した図である。
【図7】実施例2の評価結果を示した図である。
【符号の説明】
【0061】
10…電子デバイス製造設備、20…原水、100,200,300,400…排水回収システム、110…排水処理装置、111…回収原水槽、112,116…ポンプ、113…NF膜通水装置、114…NF処理水槽、115…排水溝、117…活性炭塔、120…純水製造装置、218…アニオン交換樹脂塔、419…RO膜装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤を含有する排水をNF膜に通水するNF膜通水工程と、
前記NF膜に通水した排水を活性炭で処理する活性炭処理工程と
を含む排水処理方法。
【請求項2】
前記NF膜通水工程を経た後であって、前記活性炭処理工程の前、又は前記活性炭処理工程の後に、アニオン交換樹脂で処理するイオン交換工程を更に含むことを特徴とする請求項1記載の排水処理方法。
【請求項3】
処理水の一部をRO膜に通水し、当該処理水中に含まれるRO膜閉塞物質を検知する検知工程を更に含むことを特徴とする請求項1又は2記載の排水処理方法。
【請求項4】
前記界面活性剤は、アニオン系、又はノニオン系界面活性剤であり、処理水を、製造設備へ供給する供給水の原水として回収することを特徴とする請求項1,2又は3記載の排水処理方法。
【請求項5】
界面活性剤を含有する排水をNF膜に通水するNF膜通水手段と、
前記NF膜に通水した排水を活性炭で処理する活性炭処理手段と
を備える排水処理装置。
【請求項6】
前記排水をアニオン交換樹脂で処理するイオン交換手段を更に備え、
前記イオン交換手段は、前記NF膜に通水された排水が前記活性炭処理手段で処理される前、又は前記活性炭処理手段で処理された後に、排水のイオン交換を行なうことを特徴とする請求項5記載の排水処理装置。
【請求項7】
界面活性剤を含有する排水から、製造設備へ供給する供給水の原水を回収する排水回収システムであって、
界面活性剤を含有する排水をNF膜に通水するNF膜通水装置と、
前記NF膜を通水した排水を活性炭で処理する活性炭処理装置と、
前記活性炭で処理した排水を原水として通水し、製造設備へ供給する供給水を製造する供給水製造装置と
を含む排水回収システム。
【請求項8】
処理水の一部をRO膜に通水し、当該処理水中に含まれるRO膜閉塞物質を検知する検知装置を更に備えることを特徴とする請求項7記載の排水回収システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−313445(P2007−313445A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−146527(P2006−146527)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000232863)日本錬水株式会社 (75)
【Fターム(参考)】