説明

排水処理方法及び排水処理システム

【課題】工場内設備である窒素ガス製造装置と排水処理システムをあわせて工場全体の効率的な設備運転が必要とされていた。
【解決手段】窒素ガス製造装置を用いる施設から排出される排水を嫌気槽中で処理し一次処理水を得る嫌気処理工程と、前記一次処理水を曝気が供給された好気槽中で処理し二次処理水を得る好気処理工程を有する排水処理方法であって、前記嫌気処理工程で発生した放出気体を前記窒素ガス製造装置の原料空気とする工程と、前記放出気体中の窒素濃度が所定値以上であった場合は、前記窒素ガス製造装置の製造した窒素ガスと混合する工程とを有することを特徴とする排水処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体や電池といった電子デバイス等の製造工場で使用される排水処理方法および排水処理システムにかかわるものであり、特に工場内で使用される窒素ガス製造装置と排水処理装置を組み合わせる事によって、工場全体として省エネ、低コストを達成しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
電子デバイス等の工場では、主として洗浄や原料加工のために、有機溶媒が使用される。これらの有機溶媒は、排水として廃棄されるが、環境汚染につながるために、そのまま廃棄するわけにはいかない。そのため、これらの排水を、環境に無害な物質に浄化するために、排水処理システムが提案されている。
【0003】
有機溶媒等の窒素含有排水(以後「有機性排水」という。)の浄化処理にはいくつかの方法があるが、大気汚染がなく、コストも安価にできるという理由から微生物を利用した処理方法が多用されている。この処理方法の基本的な考え方は、有機性排水を嫌気性雰囲気中の脱窒菌を利用してアンモニア性窒素物質まで分解し、次にそのアンモニア性窒素物質を好気性雰囲気中の硝化菌を利用して硝酸性窒素物質に分解するというものである。硝酸性窒素物質は、再び脱窒菌を利用して窒素と水に分解することができる。
【0004】
従って、排水処理システムには、有機性排水を嫌気性雰囲気で分解する嫌気槽と、嫌気槽で生成されたアンモニア性窒素物質を分解する好気槽を有する。また、好気槽は槽内を好気性雰囲気にするために、空気を送風する曝気装置が備えられる。
【0005】
一方、電子デバイス等の工場では、さまざまな目的で窒素ガスが利用される。これは、原料の加工中に発火しやすい物質の取り扱いや、耐熱限界以上の温度で接合処理を行うことがあるからである。そのため、このような工場では、窒素ガスの製造装置を個別に有する場合が多い。
【0006】
窒素ガスの製造は、深冷分離法や、膜分離法、PSA式ガス分離法といった方法を利用する。いずれの方法も、空気を原材料とし、空気中の窒素以外の物質を分離することで窒素ガスを得るものである。空気中で窒素の次に多く含まれる成分は酸素であるので、窒素ガスを製造すると、その副産物として酸素リッチな空気(以後「酸素富化ガス」と呼ぶ)を得る事ができる。
【0007】
以上のように電子デバイス等の工場では、排水処理システムと窒素ガス製造装置が併設される場合が多い。そこで、これらの設備全体としての省エネ運転が課題となる。
【0008】
特許文献1には、窒素ガス製造装置の副産物である酸素富化ガスを好気性処理槽への曝気へ混入させることで、好気性処理槽中の酸素量を増やし、曝気を供給する曝気装置の省エネと酸素富化ガスの効率的な利用を狙った発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−229436号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
窒素ガス製造装置の副産物である酸素富化ガスを排水浄化システムで利用するのは、窒素ガス製造装置の効率的な利用である。しかし、排水処理システム自体がさまざまな副産物を排出するので、これらの利用をさらに検討する余地がある。本発明は、このような見地から工場内設備である窒素ガス製造装置と排水処理システムの、より効率的な利用を目指して想到されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために、嫌気槽から排出される窒素ガスを窒素ガス製造装置の製造ガスとともに、工場内のユースポイントで利用する。具体的には、本発明の排水処理方法は、
窒素ガス製造装置を用いる施設から排出される排水を嫌気槽中で処理し一次処理水を得る嫌気処理工程と、
前記一次処理水を曝気が供給された好気槽中で処理し二次処理水を得る好気処理工程を有する排水処理方法であって、
前記嫌気処理工程で発生した放出気体を前記窒素ガス製造装置の原料空気とする工程と、
前記放出気体中の窒素濃度が所定値以上であった場合は、前記窒素ガス製造装置の製造した窒素ガスと混合する工程とを有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の排水処理システムは、
原料空気を取り込む吸入口と
生成した窒素を送出する主ガス送出口と
副生産された酸素富化ガスを送出する副ガス送出口を有する窒素ガス製造装置と、
有機物を含む排水を導入し嫌気雰囲気で一次処理水を得る嫌気槽と、
前記一次処理水を導入し好気雰囲気で二次処理水を得る好気槽と、
空気を吸入し前記好気槽へ曝気を供給する曝気装置と、
前記嫌気槽からの放出ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度計と、
前記嫌気槽から、前記窒素ガス製造装置の吸入口の上流側若しくは主ガス送出口の下流側へ流路を切り替える三方弁と、
前記酸素濃度計の出力値に応じて前記三方弁を切り替える制御装置を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、嫌気槽から排出される放出ガス(窒素リッチなガス)を、工場内で利用するために窒素ガス製造装置で製造した窒素ガスと共に、工場内のユースポイントで利用するので、排水処理システムを有効に利用することができる。
【0014】
また、さらに窒素ガス製造装置の副産物である酸素富化ガスを好気槽の曝気に混入させることで、工場設備の効率的な運用および省エネを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の排水処理システムの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の排水処理システムを図を用いて説明する。なお、本実施の形態での説明は本発明の一例であり、本発明の趣旨の範囲内で本説明以外の形態へ変更することを妨げるものではない。
【0017】
図1には、本発明の排水処理システム1の概要を示す。工場からの有機性排水50は、まず嫌気槽2に送られる。嫌気槽2には、脱窒菌が生成している。これらの微生物は、有機物と亜硝酸や硝酸などの硝酸性窒素物質を使って増殖する従属栄養細菌と呼ばれる微生物である。これらの微生物は、嫌気性雰囲気中では、酸素の代わりに硝酸性窒素物質で代謝を行い、窒素を放出する。また、この際に有機物をアンモニア性窒素物質に分解する。
【0018】
アンモニア性窒素物質に分解された有機性排水(以後「一次処理水51」とも呼ぶ。)は、好気槽3に移される。好気槽3では、硝化菌が発生しており、酸素の存在下でアンモニア性窒素物質を亜硝酸や硝酸(硝酸性窒素物質)に分解する。
【0019】
好気槽3で生成された硝酸性窒素物質53は、一部が嫌気槽2へ返される。脱窒菌が必要な硝酸性窒素物質の供給のためである。また、嫌気槽2ではアンモニア性窒素物質が生成されるが、その際の副産物として生成される水酸基は、好気槽3へ一次処理水51の一部として送られる。好気槽3中の硝化菌はもともと中性で活動するが、アンモニア性窒素物質を分解して硝酸性窒素物質を生成すると、水素イオンが発生し、好気槽3の中が酸性になってしまう。一次処理水51中の水酸基は、これを中和するために使われる。
【0020】
好気槽3で処理された排水52(以後「二次処理水52」とも呼ぶ)は、沈殿槽(図示せず)に送られ、汚泥を沈殿させる。汚泥は、硝化菌といった微生物の集合体であるので、定期的に汲みだして好気槽3へ返される。
【0021】
また、好気槽3には、液中を好気性雰囲気にするために、曝気装置4が配設される。曝気装置4は、大気40aをブロア5で吸引し、好気槽3の底に配置した散気管6から吹き出す装置である。ブロア5で大気40aを吸引する際に、酸素富化装置7中の酸素富化膜8を通過させて酸素濃度を高くした気体を送ることで、処理の効果をより高くすることができる。
【0022】
次に窒素ガス製造装置10について同じく図1を参照して説明する。窒素ガス製造装置10としては、PSA(プレッシャー・スイング・吸着)式ガス分離装置を例示する。PSA式ガス分離装置には、吸着槽が2連(11aと11b)装備されている。なお、2連の吸着槽をまとめて示す場合は、吸着槽11という。この吸着槽11には、分子篩炭(Molecular Sieving Carbon)が充填されている。この分子篩炭は、分子の大きさによって吸着速度に差がある。
【0023】
そして、吸着時に加圧すると分子の小さい酸素が、酸素より分子の大きな窒素より早く吸着される。逆に、減圧すると吸着した酸素が脱着する。そこで、2連の吸着槽11を交互に加圧減圧を繰り返すことで、窒素ガスと酸素富化ガスを得る事ができる。
【0024】
より具体的には、例えば吸着槽11bで加圧しながら原料空気40を流すことで酸素を吸着させ窒素ガス41Nを得ている場合は、他の吸着槽11aは、減圧し分子篩炭に吸着した酸素41oを放出させる。これらは、図示しないバルブと圧力および減圧装置によって行われる。なお、分子篩炭に吸着した酸素を放出させることを逆洗と呼ぶ。
【0025】
従って、窒素ガス製造装置10には、原料空気40を取り込む吸入口10aと、原料空気40から分離した主ガスとなる窒素ガス41を送出する主ガス送出口10bと、副産物として得られる酸素富化ガス42を送出する副ガス送出口10cを有する。副ガスである酸素富化ガス42は、直接若しくは昇圧装置13を介して、ブロア5に酸素富化ガス42bを供給する酸素富化装置7に、若しくはブロア5が吐き出し散気管6に送られるパイプ中に、供給される。曝気中に酸素を混入させることで、曝気量が少なくても好気槽3は十分に好気性雰囲気を維持することができる。
【0026】
酸素富化装置7は、大気40aを酸素富化膜8に通すことによって酸素富化ガス42bを得ているが、窒素ガス製造装置10からの副産物である酸素富化ガス42aが投入されると、より高い酸素濃度を有する酸素富化ガス42bを容易に得る事ができ、酸素富化膜8の効率的な利用を図ることができる。この点は、設備全体から見て低コストに寄与する。なお、酸素富化装置7を通過しているか否かに関わらず、酸素富化ガス42aがブロア5に供給されていれば、酸素富化ガス42aは曝気装置4に送り込まれていると言える。
【0027】
なお、PSA式ガス分離装置10では、空気から酸素を分離して窒素を得るので、酸素および窒素以外の成分である、浮遊物、水分、二酸化炭素といった不純物とみなされる物質は、フィルタ、冷却、二酸化炭素吸着といった方法で、空気から分離するような前処理工程を行ってもよい。図1では、前処理工程を行う機器を、一括して前処理装置12として表したが、それぞれ別々の装置で構成してもよい。
【0028】
窒素ガス製造装置10で製造された窒素ガス41は、一度バッファタンク14に貯留され、配管等によって工場内使用窒素ガス47として工場内のユースポイント18に送られる。
【0029】
次に本発明特有の構成について説明する。本発明では、嫌気槽2内で発生する窒素ガスをそのまま廃棄するのではなく、窒素ガス製造装置10の原料として利用する。そのため、密閉された嫌気槽2から排出された放出ガス44中の酸素濃度を検出する酸素濃度計20と、嫌気槽2から窒素ガス製造装置10の吸入口10aの上流側と、窒素ガス製造装置10の主ガス送出口10bの下流側へ流路を切り替えることができる三方弁22と、酸素濃度計20による酸素濃度に応じて三方弁22を制御する制御装置21を有する。
【0030】
嫌気槽2中の脱窒菌は、有機物をアンモニア性窒素物質にまで分解するが、その際に硝酸若しくは亜硝酸を消費し、水(水酸基)と窒素ガスを放出する。したがって嫌気槽2からは、窒素ガスが放出される。そこで、嫌気槽2から放出されたガスを、窒素ガス製造装置10の原料空気40とすることで、分離しなければならない酸素量が少なくて済む。
【0031】
特に窒素ガス製造装置10がPSA式ガス分離方式の場合においては、原料空気40中の酸素を分子篩炭に吸着させることで窒素ガスを得ているので、原料空気40中の酸素が少なければ、分離させる酸素量が少なくてよい。その結果、2連の吸着槽11の切替時間を長くすることができるので、窒素ガス製造装置10を効率的に運転できるという効果を奏する。このような効果は、深冷分離法や膜分離法などに比べPSA式ガス分離方式の場合に、より顕著に表れる。
【0032】
酸素濃度計20は、嫌気槽2から放出された放出ガス44中の酸素濃度を計測するもので、方式は特に限定されるものではなく、磁気式、ジルコニア式、限界電流式といった方式を利用することができる。本発明では、酸素濃度計20は持ち運び性や小型化を考慮する必要はないからである。ただし、計測した酸素濃度を電気式若しくは光学式に出力する出力端子を有する必要がある。三方弁22を制御する制御装置21に伝達するためである。なお、酸素濃度計20は、窒素濃度計に置き換えてもよい。ただし、酸素濃度計20であれば、嫌気槽2中の酸素濃度を常にモニタできるので、嫌気槽2の清掃作業における作業員の安全性も確保できるので好適である。
【0033】
制御装置21も構成は特に限定されることはなく、MPU(Micro Processor Unit)とメモリの組合せで構成されていてもよいし、PID制御や所謂シーケンサと呼ばれるものであってもよい。制御の対象が複雑ではないからである。
【0034】
三方弁22は、嫌気槽2からの放出ガス44を窒素ガス製造装置10の吸入口10aの上流側と、主ガス送出口10bの下流側のどちらかに流路変更をするように設置される。吸入口10aの上流側とは、吸入口10aであってもよいし、また吸入口10aに引き込まれる空気に混入させるような位置であってもよい。より具体的には、粉塵や水分、二酸化炭素を分離する前処理装置12の直後などである。
【0035】
主ガス送出口10bの下流側とは、主ガス送出口10bであってもよいし、バッファタンク14であってもよい。また、主ガス送出口10bの下流側は、バッファタンク14に送る前に設けられた貯留場所であってもよい。具体的には、昇圧装置23などである。嫌気槽2から三方弁22を通じて流れる窒素ガス45は、量的には窒素ガス製造装置10からの窒素ガス41と比較して少ないので、直接バッファタンク14や主ガス送出口10bに接続しては、窒素ガスが逆流するおそれもあるからである。
【0036】
三方弁22も制御装置21によって流路を切り替えることができれば、タイプに限定されない。中を流す気体に腐食性のガスが混入するおそれは少ないからである。
【0037】
次に本発明の排水処理システム1の動作について説明する。工場内で生成された有機性排水50は、嫌気槽2に送られ、有機物がアンモニア性窒素物質に分解され一次処理水51となる。一次処理水51は、好気槽3に送られ、硝酸性窒素物質にまで分解される。硝酸性窒素物質は一部脱窒菌用として嫌気槽2にもどされる(53)。また、好気槽3では処理液が酸性となるが、一次処理水51がアルカリ性のため中和される。
【0038】
有機物が十分に分解された処理水は、二次処理水52として沈殿槽に送られ、上澄みは全窒素計などで窒素含有量を確認した後、放流される。
【0039】
一方、窒素ガス製造装置10は、前処理された原料空気40を取り込み、酸素を吸着分離することで窒素ガス41を主ガス送出口10bから、また副産物として酸素富化ガス42を副ガス送出口10cから送出する。窒素ガス41はバッファタンク14に送られ、そこからユースポイント18に工場内で利用する窒素ガス47として送られる。酸素富化ガス42は、昇圧装置13を用いて昇圧した後、酸素富化装置7を介してブロア5から曝気として好気槽3内の散気管6に送られる。
【0040】
嫌気槽2からの放出ガス44は、酸素濃度計20によって酸素濃度が測定される。測定値は、信号Soとして制御装置21に送られる。制御装置21は、嫌気槽2からの放出ガス44中の酸素量が十分に低い濃度であれば、三方弁22で窒素ガス製造装置10の下流側に流路を切り替える。すなわち、嫌気槽2からの放出ガス44中の酸素濃度が十分に低いということは、放出ガス44中の窒素濃度がそのままでも十分に工場内で使用できるほど高いと判断して、放出ガス44をそのまま工場内で利用する。もちろん、昇圧装置23を介してバッファタンク14に送ってもよいし、そのまま、特定のユースポイント18に送ってもよい。
【0041】
なお、主ガス送出口10bの下流側に流路を変更する場合は、制御装置21は少なくともその旨の信号Sdを生成する。すなわち、この制御装置21が昇圧装置23自体を制御している場合は、信号Sdを内部信号として用い、昇圧装置23を駆動させる。また、昇圧装置23が独自で制御部を有する場合は、制御装置21は信号Sdを昇圧装置23の制御部に送信する。昇圧装置23の制御部はこの信号Sdによって駆動のタイミングを知る。
【0042】
もし、酸素濃度計20からの信号Soによって放出ガス44中には、酸素が多く含まれていると判断された場合は、制御装置21は、放出ガス44を窒素ガス製造装置10の吸入口10a上流側に流路を切り替える。すなわち、放出ガス44aを窒素ガス製造装置10の原料空気40として使用する。なお、制御装置21から三方弁22への信号はCpとする。
【0043】
酸素濃度が高いといっても、嫌気槽2から放出される放出ガス44は、通常の空気より窒素リッチな気体なので、窒素ガス製造装置10の原料空気40として利用することで、吸着槽11の切替時間を長くすることができる。吸着すべき酸素量が少ないからである。これは、逆洗の時間を短くでき、吸着槽11の延命化という効果も奏する。
【0044】
従って、放出ガス44を窒素ガス製造装置10に流す際には、PSA式ガス分離装置10の分離タンクの切替時間を長くするように制御することができる。ここで、酸素濃度計20によって三方弁22を制御する制御装置21は、少なくとも放出ガス44を窒素ガス製造装置10の吸入口10aの上流側に送るという信号Ssを生成する。すなわち、この制御装置21自体がPSA式ガス分離装置10の運転を制御してもよいし、PSA式ガス分離装置10を制御する制御部に、この信号Ssを送信してもよい。PSA式ガス分離装置10が独自に制御部を有する場合は、制御部は信号Ssを受信することで、吸着槽11の切替時間を長めに変更する。
【0045】
以上のように、本発明の排水処理システム1は、嫌気槽2からの放出ガス44中の酸素濃度の高低によって放出ガス44中の窒素ガス濃度を判断し、工場内で使用される窒素ガス製造装置10の原料空気40として、若しくは使用される窒素ガス45aとして利用することとしたので、工場の設備全体の効率的な運転ができる。また、窒素リッチな空気を窒素ガス製造装置10の原料空気40として利用することができるので、窒素ガス41を効率的に製造することができる。特に窒素ガス製造装置10がPSA式ガス分離方式である場合は、吸着分離する酸素量が少ないので、効率的な運転をすることができる。
【0046】
なお、放出ガス44中の酸素濃度の測定については、放出ガス44中の窒素ガス濃度を判断するための基データの取得が目的であるので、放出ガス44の窒素ガス濃度を直接測定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の排水処理システムは、半導体、電池といった電子デバイス製造工場を始め、化学工場、食品製造工場等、各種のプラント設備で窒素ガス製造装置と排水処理システムを共設している場所で利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 排水処理システム
2 嫌気槽
3 好気槽
4 曝気装置
5 ブロア
6 散気管
7 酸素富化装置
8 酸素富化膜
10 窒素ガス製造装置(PSA式ガス分離装置)
10a 吸入口
10b 主ガス送出口
10c 副ガス送出口
11、11a、11b 吸着槽
12 前処理装置
13 昇圧装置
14 バッファタンク
18 ユースポイント
20 酸素濃度計
21 制御装置
22 三方弁
23 昇圧装置
40 原料空気
40a 大気
41、41N 窒素ガス
41o 酸素
42、42a、42b 酸素富化ガス
44 放出ガス
45、45a、47 窒素ガス
50 有機性排水
51 一次処理水
52 二次処理水
53 嫌気槽中の硝酸や亜硝酸(硝酸性窒素物質)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素ガス製造装置を用いる施設から排出される排水を嫌気槽中で処理し一次処理水を得る嫌気処理工程と、
前記一次処理水を曝気が供給された好気槽中で処理し二次処理水を得る好気処理工程を有する排水処理方法であって、
前記嫌気処理工程で発生した放出気体を前記窒素ガス製造装置の原料空気とする工程と、
前記放出気体中の窒素濃度が所定値以上であった場合は、前記窒素ガス製造装置の製造した窒素ガスと混合する工程とを有することを特徴とする排水処理方法。
【請求項2】
前記曝気中に酸素富化ガスを供給する工程をさらに有する請求項1に記載の排水処理方法。
【請求項3】
前記窒素製造ガス装置が窒素を製造する際に副生成する酸素富化空気を前記酸素富化ガスとして前記曝気中に供給する工程を有する請求項2に記載の排水処理方法。
【請求項4】
前記窒素ガス製造装置はPSA式ガス分離である請求項1乃至3に記載された排水処理方法。
【請求項5】
原料空気を取り込む吸入口と
生成した窒素を送出する主ガス送出口と
副生産された酸素富化ガスを送出する副ガス送出口を有する窒素ガス製造装置と、
有機物を含む排水を導入し嫌気雰囲気で一次処理水を得る嫌気槽と、
前記一次処理水を導入し好気雰囲気で二次処理水を得る好気槽と、
空気を吸入し前記好気槽へ曝気を供給する曝気装置と、
前記嫌気槽からの放出ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度計と、
前記嫌気槽から、前記窒素ガス製造装置の吸入口の上流側若しくは主ガス送出口の下流側へ流路を切り替える三方弁と、
前記酸素濃度計の出力値に応じて前記三方弁を切り替える制御装置を有する排水処理システム。
【請求項6】
前記曝気装置は、大気吸引側に酸素富化装置を有する請求項5に記載された排水処理システム。
【請求項7】
前記副ガス送出口からの酸素富化ガスは前記曝気装置に送りこまれる請求項6に記載された排水処理システム。
【請求項8】
前記窒素ガス製造装置はPSA式ガス分離装置である請求項5乃至7のうちの1の請求項に記載された排水処理システム。
【請求項9】
前記制御装置は前記三方弁を前記窒素ガス製造装置の吸入口の上流側若しくは主ガス送出口の下流側へ流路を切り替える際には、それぞれ個別の信号を生成する請求項5乃至8のうちの1の請求項に記載された排水処理システム。

【図1】
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【公開番号】特開2012−76031(P2012−76031A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224511(P2010−224511)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】