説明

掘削工具

【課題】削孔壁の崩落を防止して良好に掘削できる掘削工具を提供する。
【解決手段】ケーシングパイプ11の先端部にケーシングトップ12が軸線O方向に移動可能かつ回転可能に取り付けられ、ケーシングトップ12は、先端側に掘削ビット15のスカート部15bの外周まで張り出す張り出し筒部23を有する構成とした。そして、ケーシングトップ12の内周部及びデバイス14の外周部間に、ロッド13に伝達された推力と打撃をケーシングトップ12に伝達するとともに、ケーシングトップ12をケーシングパイプ11に対して軸線O方向に対して移動させる推力打撃伝達手段22を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削工具に係り、特に略円筒状のケーシングパイプ内に、先端に掘削ビットが装着されたロッドを挿入した、いわゆる二重管ビット式の掘削工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アンカー工事や各種掘削工事、基礎杭工事、トンネル先受け工事、水抜きボーリング工事などの土木工事において、地盤の掘削を行う場合、円筒状のケーシングパイプ内に挿入されたロッドの先端に掘削ビットを装着した二重管ビット式の掘削工具が多用されており、前記ロッドを介して掘削ビットに回転及び打撃振動等を与えて掘削を行い、こうして掘削された削孔にケーシングパイプを建て込んで削孔の崩落を防ぐようにしている。
【0003】
図7はそのような従来の一構成例を示している。図7において、符号1は略円筒状をなすケーシングパイプであって、その内周部にロッド2が挿入されており、このロッド2の先端には、デバイス3(掘削工具本体)がその先端をケーシングパイプ1から突出させた状態で取り付けられている。そして、デバイス3の突出した先端に掘削ビット4が螺着されている。この掘削ビット4は、掘削終了後にデバイス3から取り外されて削孔内に取り残し可能とされる、いわゆるロストビットと称されるものであり、先端面には掘削用のチップが設けられている。
【0004】
また、ケーシングパイプ1の先端部にはケーシングトップ5が溶接されることによって取り付けられている。ケーシングトップ5は、通常では図8に示すように、掘削ビット4との間で所定の距離Lを隔てており、削孔が終了して掘削ビット4が後端側へ移動されると、掘削ビット4のスカート部4aに嵌合し、その状態でロッド2を掘削ビット4ごと掘削時と反対方向に回転することにより、掘削ビット4をデバイス3から取り外せるようになっている。
【0005】
前記ロッド2は、ケーシングパイプ1の内径より一回り小さな外径を有する厚肉の略円筒状に形成されていて、ケーシングパイプ1の軸線と同軸上に挿入されている。なお、外形が略正六角柱状の六角ロッドが使用されることもある。また、ロッド2の後端部には図示していないが、ロッドアダプタが連結され、そのロッドアダプタに削岩機などのような掘削装置の駆動軸が取り付けられている。さらに、ケーシングパイプ1の後端部にも図示しない筒状のフロントアダプタが連結され、このフロントアダプタが前記ロッドアダプタに取り付けられている。
【0006】
そして、駆動軸の駆動装置によってロッドアダプタに回転力が伝えられると共に、軸線の先端側に向けて打撃振動が伝えられ、その回転及び打撃振動がロッドアダプタを介してロッド2に伝わり、掘削ビット4が回転しかつ打撃しながら地盤を削孔する一方、ロッドアダプタからフロントアダプタを介しケーシングパイプ1の後端部に打撃振動が伝わることにより、ケーシングパイプ1と、このケーシングパイプ1に一体化して取り付けられたケーシングトップ5とが削孔内に建て込まれていくこととなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記に示す従来の掘削工具は、削孔時に発生する削孔ずりを取り込むため、ケーシングパイプ1に一体化して取り付けられたケーシングトップ5と掘削ビット4との間の隙間Lが所定の間隔を保つように構成されている。
【0008】
ところが、崩落が激しい地山の削孔において孔壁崩壊が生じると、図8に示すように、ケーシングトップ5と掘削ビット4との間の隙間Lに崩落した土砂dが入ってしまうので、削孔の周壁から崩れた土砂dによってケーシングトップ5の削孔への建て込みが妨害されてしまい、削孔ずりを取り込むことができなくなるばかりでなく、掘削工具そのものが破損してしまう問題があった。また、こうして掘削ずりを取り込んで排出することができなくなると、ケーシングパイプ1及びケーシングトップ5への外圧抵抗が高くなって、例えばケーシングパイプ1が鋼製であってもその両端のジョイント部の薄肉となる部分が変形して継ぎ足しができなくなるなど、破損が生じてしまうという問題もある。そして、このようにケーシングパイプ1やケーシングトップ5、あるいは掘削工具そのものに破損が生じると、掘削後、掘削ビット4の切り離しができなくなり、ロッド2が回収できなくなるといった問題が起きる。
【0009】
本発明は、前記事情に鑑み、削孔壁の崩落を防止して良好に削孔を掘削し、確実にケーシングパイプを建て込むことができる掘削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために本発明においては、以下の手段を採用した。本発明では、軸線方向に推力と打撃が伝達されるケーシングパイプと、このケーシングパイプの内部に同芯上に配置されていて、軸線方向に推力と打撃が伝達されると共に回転力が伝達されるロッドと、該ロッドの先端部に取り付けられた掘削工具本体と、該掘削工具本体の先端にこの掘削工具本体に対する回転が拘束されて装着される掘削ビットとを備えた掘削工具において、前記ケーシングパイプの先端には、前記ケーシングパイプに対して軸線方向に移動可能でかつ軸線周りに回転可能な円筒状のケーシングトップが前記掘削工具本体に外嵌されるようにして取り付けられ、前記ケーシングトップの先端には、前記掘削ビットの外周部まで張り出す張り出し筒部が形成され、前記ケーシングトップの内周部及び前記掘削工具本体の外周部間に、前記ロッドに伝達された推力と打撃を前記ケーシングトップに伝達するとともに、前記ケーシングトップを軸線方向に移動させる推力打撃伝達手段を設けたことを特徴とする。
【0011】
掘削ビットによる削孔時、ケーシングトップの内周部及び掘削工具本体の外周部間に設けられた推力打撃伝達手段により、ケーシングトップを前方に打撃することができ、掘削工具本体に推力と打撃が伝わる度にケーシングトップを前方に押し込む一方、ケーシングトップの先端に掘削ビットの外周まで張り出す張り出し筒部が設けられているので、掘削工具本体を常に包囲した状態でケーシングトップを削孔に建て込むことができる。張り出し筒部によってケーシングトップと掘削ビットとの間の隙間を小さくすることができるので、削孔壁が崩落しても崩落した土砂がこの隙間に入り込んで掘削ずりの取り込みが妨害されたりすることがなくなり、掘削ずりの排出不良を防いで掘削作業を良好に行うことができる。また、上述したように掘削工具本体によってケーシングトップを打撃すると、ケーシングトップに対し適正な打撃力を伝達することができる。そのため、従来のようにケーシングパイプからケーシングトップに打撃力を伝達するような場合には、ケーシングトップへの打撃力が減衰され、ケーシングトップの削孔に対しての建て込み力が弱まるおそれがあるが、本発明によれば、剛性の高いロッドに取り付けられた掘削工具本体によってケーシングトップに打撃力を減衰させることなく確実に伝達することができ、ケーシングトップを的確に建て込ませることができる。
【0012】
加えて、建て込みにかかる抵抗は、ケーシングパイプに対して軸線方向に移動可能とされたこのケーシングトップに専ら作用し、後続のケーシングパイプへの抵抗を軽減することができるので、このケーシングパイプに与えられる打撃力や推力は少なくて済み、過大な打撃力や推力が与えられてケーシングパイプが破損するような事態も防ぐことができる。また、このようにケーシングトップがケーシングパイプに対して軸線方向に移動可能とされることにより、例えば複数のケーシングパイプやロッドを継ぎ足して深い削孔を掘削する場合において、これらのケーシングパイプとロッドとの軸線方向の長さが変化したり、製造仕上がり寸法に誤差が生じたりしても、これに拘わらずケーシングパイプ先端のケーシングトップや掘削ビットには確実に掘削工具本体を介してロッドから推力や打撃力を伝達することができる。
【0013】
ところで、このようにケーシングトップをケーシングパイプに対して軸線方向に移動可能とするにしても、ケーシングトップがケーシングパイプ先端から抜け外れたりするのを防ぐためには、ケーシングトップは、前記ケーシングパイプに対する前記軸線方向の少なくとも先端側への移動範囲を制限するケーシング係止機構を介して該ケーシングパイプの先端に取り付けられるのが望ましい。ここで、こうしてケーシングトップをケーシングパイプに対して軸線方向に移動可能にその先端に取り付けるには、これらケーシングトップとケーシングパイプとを、一方の内周に他方を嵌挿して取り付けるのが容易であり、そのような場合においては、まず第1に、前記ケーシング係止機構を、これらケーシングトップとケーシングパイプとの互いに嵌挿される内外周のうち、一方に取り付けられた前記軸線に対する径方向に拡縮径可能な弾性部材と、他方にこの弾性部材を収容可能に形成された収納凹部とから構成することにより、その弾性によって拡径または縮径して前記収納凹部内に収容された弾性部材の軸線方向の移動が、この収納凹部が形成された範囲内に制限されるので、これに伴いケーシングトップとケーシングパイプの一方に対する他方の軸線方向の移動も、この収納凹部の範囲内に制限することができる。また、前記と同様にケーシングトップとケーシングパイプとが、一方の内周に他方が嵌挿されて取り付けられている場合において、第2に、前記ケーシング係止機構を、これらケーシングトップとケーシングパイプとの互いに嵌挿される内外周にそれぞれ形成された互いに螺合可能な雌雄ネジ山部と、各雌雄ネジ山部に連続して反対側のネジ山部を収容可能に形成された前記軸線方向に延びる収納凹部とから構成することもでき、これら雌雄ネジ山部を螺合させ、さらにねじ込んで雄ネジ山部を雌ネジ山部に連続する収納凹部に、雌ネジ山部を雄ネジ山部に連続する収納凹部にそれぞれ収容することにより、軸線方向においてこれらの収納凹部の長さの範囲内でケーシングトップとケーシングパイプとの一方に対する他方の移動を制限することができる。
【0014】
一方、前記掘削ビットも、前記ケーシングトップに対して前記軸線方向に移動可能とされていてもよく、ただしこの場合でも掘削ビットの不用意な脱落を防ぐには、このケーシングトップに対する掘削ビットの前記軸線方向の少なくとも先端側への移動範囲を制限するビット係止機構を介して該ケーシングトップの先端に取り付けられるのが望ましい。そして、掘削ビットはその外周部がケーシングトップの前記張り出し筒部の内周部に収容されて取り付けられることとなるので、このようなビット係止機構を、前記ケーシング係止機構と同様、第1に、前記掘削ビットの外周部と前記張り出し筒部の内周部とのうち、一方に取り付けられた前記軸線に対する径方向に拡縮径可能な弾性部材と、他方にこの弾性部材を収容可能に形成された前記軸線方向に延びる収納凹部とから構成することができ、また第2には、前記掘削ビットの外周部と前記張り出し筒部の内周部とにそれぞれ形成された互いに螺合可能な雌雄ネジ山部と、各雌雄ネジ山部に連続して反対側のネジ山部を収容可能に形成された前記軸線方向に延びる収納凹部とから構成することができる。しかも、このようなビット係止機構によって掘削ビットの先端側への移動を制限しておけば、掘削途中で掘削工具本体を掘削ビットから分離しても、掘削ビットはケーシングトップから脱落することなく、また前記軸線と同芯上に保持されているため、再度掘削工具本体の先端に掘削ビットを容易に装着することが可能となる。
【0015】
また、前記ケーシングトップの最大径部の外径を、前記掘削ビットの最大外径以下で、かつ前記ケーシングパイプの外径以上とすれば、当該掘削工具の外径は先端の掘削ビットから、ケーシングトップ、ケーシングパイプと後端側に向けて大きくなることがなくなり、削孔ずりがケーシングパイプの外周にまで流れ込み難くなってケーシングパイプに作用する外圧抵抗の低減を図ることができるとともに、このケーシングパイプの外径よりは最大外径が大きいケーシングトップがガイドとなって削孔が形成されるため、削孔の直進性を確保して孔曲がりを防ぐことができ、このような孔曲がりによりケーシングパイプに抵抗が作用するのも防ぐことが可能となる。この点、例えばケーシングパイプの外径がケーシングトップの外径よりも大きく、逆に掘削された削孔の内周との間隔はケーシングトップ部分の方がケーシングパイプ部分よりも大きいとすると、仮にこれらケーシングトップ、ケーシングパイプの外周に削孔ずり流れ込んだ場合、間隔が大きくされたケーシングトップの外周に削孔ずりが滞留することによりやがては外圧抵抗となって削孔の障害となってしまうが、上述のようにケーシングトップの最大径部の外径をケーシングパイプの外径以上とすれば、削孔ずりをケーシングトップの外周から後端側にスムーズに排出させることもできる。さらに、上述のようにケーシングトップとケーシングパイプとを、一方の内周に他方を嵌挿して取り付ける場合でも、ケーシングトップの内周にケーシングパイプの先端を嵌挿して取り付けるようにすれば、これらケーシングトップとケーシングパイプとの嵌挿部分に削孔ずりが溜まってケーシングトップが軸線方向に移動不可能となるような事態を防止することができる。
【0016】
さらにまた、前記掘削工具本体から掘削ビットに回転力を伝達するには、前記掘削ビットの後端部に前記掘削工具本体の先端部が挿入可能な孔部を形成して、この掘削工具本体の先端部外周には前記軸線方向に延びる突条部を形成するとともに、前記孔部の内周には前記突条部が挿通可能な凹溝部を形成し、前記掘削工具本体の回転によって前記突条部の側壁を前記凹溝部の側壁に当接させることにより、前記掘削ビットに前記掘削工具本体から回転力が伝達されるようにすればよい。さらに、前記掘削ビットと前記掘削工具本体の外周に、前記ケーシングトップの張り出し筒部より先端側の前記掘削ビットの外周側と、前記ロッドと前記ケーシングパイプの間の空間とを連通させるように、前記掘削ビットから前記掘削工具本体の後端にかけて、くり粉溝を形成した場合において、このくり粉溝の底面と該底面に対向する前記ケーシングトップおよびケーシングパイプの内周面との間の間隔を、前記ケーシングトップの張り出し筒部の先端において最も小さくなるようにすることにより、削孔ずりの入口となるこの張り出し筒部先端における間隔よりも大きな土砂がくり粉溝に進入することがなくなって、くり粉溝における詰まりを防止し、より確実な掘削ずりの排出を促すことができる。
【0017】
加えて、前記掘削工具本体の前記軸線方向に延びる突条部には、前記軸線に直交する断面がこの突条部に対して突出または陥没する係合部が形成されるとともに、前記凹溝部に前記突条部と係合部とを挿通して、前記掘削工具本体の先端部を前記孔部に挿入した上で該掘削工具本体を前記軸線回りの周方向の少なくとも一方に回動させることにより、前記係合部と前記軸線方向後端側に向けて係合可能な被係合部とが形成されていることにより、掘削中にジャミング等によって掘削不能状態に陥ったりした場合でも、ロッドによって上記掘削工具本体を回動させてこのように係合部と被係合部とを軸線方向後端側に係合させることにより、この掘削工具本体を介して掘削ビットを後退させることが可能となり、例えば、掘削ビットがケーシングパイプに止め輪等を介して係止されていたとしても、この止め輪等に無理な力を作用させることなく掘削工具を確実に後退させることができる。
【0018】
一方、このような掘削工具を用いた各種掘削工事では、例えば当該掘削工具によって建て込まれたケーシングパイプから薬液を注入したりして地盤を安定させた後、このケーシングパイプごとさらに地盤を掘削してトンネルを形成するような場合があり、このような場合にケーシングパイプはトンネル掘削時に容易に破壊される低強度の材質であることが望ましいが、その反面このような低強度のケーシングパイプを用いると従来はケーシングパイプの建て込み時に破損が生じるおそれがあったのに対し、本発明による掘削工具では上述のように建て込みにかかる抵抗は専らケーシングトップに作用し、ケーシングパイプへの抵抗を軽減することができるので、ケーシングパイプの少なくとも一部を、ケーシングトップよりも強度の低い材質によって形成することにより、その建て込み時の破損を防ぎつつも、上述のようなトンネル掘削の際には容易に破壊されるようにして該ケーシングパイプごと地盤を掘削可能とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る掘削工具によれば、削孔壁の崩落を防止して良好に削孔を掘削し、確実にケーシングパイプを建て込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。
図1ないし図4は、本発明の第1の実施形態を示すものである。図1に示すように本実施形態においては、削孔の深さ等に応じてネジまたはテーパソケット等により順次継ぎ足される円管状のケーシングパイプ11の先端に、概略円筒状のケーシングトップ12がケーシングパイプ11の中心軸線Oと同軸にこの軸線O回りに回転自在かつ該軸線O方向に移動可能に取り付けられるとともに、このケーシングパイプ11の内周には厚肉中空の多段六角柱状をなすロッド13が、やはり削孔の深さ等に応じてカップリングまたはネジ等により順次継ぎ足されて前記軸線Oと同軸に挿入され、このロッド13の先端にはデバイス(掘削工具本体)14を介して掘削ビット15が、デバイス14に対して係脱可能に装着されている。
【0021】
ここで、上述のように順次継ぎ足されるロッド13のうち最後端に継ぎ足されたロッド13の後端には、図1に示すように外周部後端側が一段拡径させられて鍔部16aが形成された中空状のロッドアダプタ16の先端部がやはりカップリング17を介して連結され、このロッドアダプタ16の後端には、掘削時に軸線O回りに回転方向Tに向けての回転力と軸線O方向先端側に向けての推力及び打撃力とを該ロッドアダプタ16を介してロッド13に与える掘削装置の駆動軸18が連結されている。また、最後端に継ぎ足されたケーシングパイプ11の後端にはジョイント部の保護のための保護キャップ11Aが取り付けられるとともに、この保護キャップ11Aの後端と前記ロッドアダプタ16の鍔部16aとの間には、筒状のフロントアダプタ19が、前記最後端のロッド13の後端部とロッドアダプタ16の先端部および前記カップリング17の外周を取り囲むように、鍔部16aとの間にリング状の緩衝材20を介して介装されており、保護キャップ11Aが後端に取り付けられた前記ケーシングパイプ11にはこのフロントアダプタ19を介して、前記駆動軸18からロッドアダプタ16に与えられる回転力と推力及び打撃力のうち、軸線O方向先端側に向けての推力及び打撃力のみが伝達されるようになされている。
【0022】
また、前記ケーシングパイプ11のうち最先端のケーシングパイプ11はファーストケーシングパイプ11Bとされ、その先端部外周には図2(イ)に示すように環状溝11aが形成されていて、この環状溝11aには、本実施形態におけるケーシング係止機構21の弾性部材として、その径方向に拡縮径可能な金属製のC字状の止め輪21Aが弾性的に縮径させられた状態で収容されている。一方、前記ケーシングトップ12は、その外径が前記ファーストケーシングパイプ11Bも含めたケーシングパイプ11の外径よりも大径の一定外径とされるとともに、内径は軸線O方向中央部が最も小径でその前後がこれより大径とされた概略円筒状をなしていて、前記ファーストケーシングパイプ11Bの先端部はこのケーシングトップ12の後端側内周部12aに嵌挿されて取り付けられており、この後端側内周部12aの後端寄りには、該後端側内周部12aに嵌挿された前記ファーストケーシングパイプ11Bの止め輪21Aよりも後端側に位置するように、本実施形態におけるケーシング係止機構21の収納凹部21Bが環状に形成されている。
【0023】
この収納凹部21Bは、軸線Oに沿った断面において軸線Oに平行とされた該軸線O方向に延びる底面21aと、この底面21aの後端側に位置して軸線Oに略垂直とされた後端側壁面21b、および底面21aの先端側に位置して先端側に向かうに従い内周側に向かうように傾斜させられた先端側壁面21cとから画成されている。そして、ケーシングトップ12がファーストケーシングパイプ11Bに対して先端側に移動すると、この収納凹部21Bが前記環状溝11aの位置に達して弾性的に縮径させられていた前記止め輪21Aが拡径し、その内周側部分が環状溝11a内に残ったまま外周側部分が収納凹部21B内に収容され、さらにケーシングトップ12が前進するとこの収納凹部21B内に収納された止め輪21Aの外周側部分が図2(ロ)に示すように前記後端側壁面21bに当接して、それ以上の先端側への移動が制限されるようになされている。
【0024】
また、ケーシングトップ12の前記後端側内周部12aから小径とされた中央部の内周部に至る後端側を向く段差部は、その外周側が軸線Oに略垂直な平坦面12bとされるとともに、内周側は先端側に向かうに従い内周側に向かうように傾斜させられたテーパ面状とされ、このテーパ面状の段差部22Aが後述する本実施形態における推力打撃伝達手段22を構成する。そして、前記止め輪21Aが収納凹部21B内に収容された状態からケーシングトップ12がファーストケーシングパイプ11Bに対して後端側へ移動(後退)すると、止め輪21Aが収納凹部21Bの傾斜した先端側壁面21cに当たってその傾斜に案内されるように縮径しつつ、収納凹部21Bから外れて前記後端側内周部12aに乗り上げ、さらにケーシングトップ12が後退すると、図2(ハ)に示すようにファーストケーシングパイプ11Bの先端が前記平坦面12bに当接したところで、それ以上の後端側への移動が制限されるようになされている。
【0025】
さらに、ケーシングトップ12内周部の前記中央部よりも先端側は、この中央部から先端側に向けて内径が漸次拡径するようにされた後に略一定の内径とされて軸線Oに平行に延びるようにされ、この内周部の内径が略一定とされたケーシングトップ12の先端側部分が、本実施形態における張り出し筒部23とされている。なお、この張り出し筒部23の内周部最先端部分は先端側に向かうに従い再び内径が拡径するようにされた拡径部23aとされるとともに、この拡径部23aの後端側には、間に前記内径が一定とされた部分を残して本実施形態におけるビット係止機構24の収納凹部24Aが形成されており、この収納凹部24Aと前記拡径部23aを除いて張り出し筒部23の内径は一定とされている。なお、このビット係止機構24の収納凹部24Aは、軸線Oに沿った断面において、前記収納凹部21Bと同様に軸線Oに平行とされた該軸線O方向に延びる底面24aと、収納凹部21Bとは逆に底面24aの先端側に位置して軸線Oに略垂直とされた先端側壁面24b、および底面24aの後端側に位置して後端側に向かうに従い内周側に向かうように傾斜させられた後端側壁面24cとから画成されている。
【0026】
一方、前記デバイス14は、図3各図に示すように内外周とも後端側が先端側よりも一段拡径させられた概略多段円筒状をなし、その後端側内周部には、最先端の前記ロッド13の先端部外周に形成される雄ねじ部13aに螺合する雌ねじ部14aが形成されていて、図2に示したようにこの雌ねじ部14aに前記雄ねじ部13aをねじ込んで、ロッド13の先端が、軸線Oに垂直な平坦面とされたデバイス14の後端側内周部の底部14bに当接したところで、デバイス14後端側に軸線Oを中心とする円の接線方向にピン25を打ち込んで、前記雄ねじ部13aの根元に形成された環状溝13bに係合させることにより、この最先端のロッド13の先端に着脱可能に取り付けられる。そして、このデバイス14の先端側外周部の外径と後端側外周部の外径は、ケーシングトップ12の前記中央部の内径とファーストケーシングパイプ11Bの内径よりもそれぞれ僅かに小さくされるとともに、後端側外周部の外径はケーシングトップ12中央部の内径より大きくされ、かつこの外周部が先端側から後端側に向けて一段拡径する段差部22Bは、ケーシングトップ12の前記段差部22Aがなすテーパ面と等しい傾斜角で先端側に向かうに従い内周側に向かうように傾斜させられたテーパ面とされて、本実施形態における前記推力打撃伝達手段22を構成しており、上述のようにデバイス14がロッド13の先端に取り付けられた状態で、この段差部22Bが前記ファーストケーシングパイプ11Bの先端から突出して段差部22Aに後端側から当接することにより、継ぎ足されたロッド13を介して伝えられた軸線O方向先端側への推力及び打撃力がケーシングトップ12に伝達される。
【0027】
また、このデバイス14の外周には、その先端から後端に亙って軸線Oに平行に延びるくり粉溝26が、周方向に等間隔に複数(本実施形態では3つ)形成されている。このくり粉溝26は、その底面26aが、デバイス14の先端部では軸線Oを中心とした円筒面状とされる一方、これよりも後端側の中央部では前記円筒面に外接して軸線O方向に延びる平坦面とされ、さらにこれよりも後端側のデバイス14後端部では、デバイス14の後端側内周部が一段拡径するのに合わせて、中央部の前記平坦面から後端側に向かうに従い外周側に向かう傾斜面を介し、前記円筒面よりも径の大きな円筒面に外接して軸線O方向に延びるやはり平坦面とされている。さらに、デバイス14の小径とされた先端側内周部がなす中空部14cは、当該デバイス14が上述のように最先端のロッド13の先端に取り付けられた状態で、継ぎ足されたロッド13の中空部13cを介してロッドアダプタ16の中空部16bに連通させられ、掘削時に前記掘削装置の駆動軸18から削孔水または圧縮空気等の流体が供給可能とされている。そして、デバイス14のこの中空部14cから少なくとも1のくり粉溝26の底面26aに向けては、外周側(底面26a)側に向かうに従い後端側に向かうように傾斜したブロー穴14dが形成されており、このうちさらに少なくとも1のくり粉溝26においては、その底面26aが前記先端部において円筒面状をなす部分と前記中央部の平坦面をなす部分とが連なる部分に、このブロー穴14dが開口させられている。
【0028】
さらに、こうしてデバイス14の外周に複数のくり粉溝26が形成されることにより、周方向に隣接するくり粉溝26,26の間には軸線O方向に延びる複数条(本実施形態では3つ)の突条部が画成されることとなり、前記段差部22Bはこの突条部上に形成されることになる。そして、この突条部のうち、前記段差部22Bよりも先端側のデバイス14における前記先端部に画成された突条部27は、その前記回転方向Tの後方側を向く部分が当該突条部27の先端部27aを残して軸線O方向に延びる凹部27bによって切り欠かれることにより、外周側からの側面視に図3(ロ)に示すように前記先端部27aが回転方向T後方側に折れ曲がったL字型のフック状を呈するように形成され、従ってこの先端部27aは、図3(イ)に示すように前記凹部27bによって画成された突条部27の回転方向T後方を向く側壁27cからさらに回転方向T後方側に突出することとなり、すなわち軸線Oに直交する断面が突条部27から周方向に突出する凸部を構成することとなる。
【0029】
なお、こうして突出した先端部27aの後端側を向く側壁27dは、軸線Oに直交する略平坦面とされている。また、前記凹部27bの底面はデバイス14の先端部においてくり粉溝26の底面26aがなす円筒面と連続する同径の円筒面状とされている。さらに、この突条部27の外周面は前記先端部27aを含む先端側部分が図3(ニ)に示すように僅かに一段低くされているとともに、突条部27の回転方向Tを向く側壁27eはその先端側部分が図3(ロ)に示したように後端側に向かうに従い回転方向T側に向かう凹曲面状に切り欠かれている。なお、この突条部27の回転方向Tを向く側壁27eの先端側部分は後端側に向かうに従い回転方向T側に向かう傾斜面でもよい。さらにまた、デバイス14の先端面14eは、軸線Oに垂直な平坦面とされている。
【0030】
また、前記掘削ビット15は、図4に示すように先端部側の外径が円筒部の外径よりも一段大径とされた概略有底円筒状に形成されており、この先端部はヘッド部15aとされてその前記外径はケーシングトップ12の外径よりも若干大きくされるとともに、円筒部はスカート部15bとされてその外径はケーシングトップ12の前記張り出し筒部23の内周部に嵌挿可能な大きさとされている。従って、前記ケーシングトップ12の最大径部の外径は、この掘削ビット15のヘッド部15aにおける最大外径以下とされる。そして、前記スカート部15bの外周には環状溝15cが形成されていて、この環状溝15cには、本実施形態におけるビット係止機構24の弾性部材として、やはりその径方向に拡縮径可能な金属製のC字状の止め輪24Bが弾性的に縮径させられた状態で収容されており、こうして止め輪24Bが縮径させられたまま前記スカート部15bが張り出し筒部23内周部に嵌挿されることにより、止め輪24Bがビット係止機構24の前記収納凹部24Aに達したところで弾性的に縮径させられていたこの止め輪24Bが拡径し、図2に示すようにその内周側部分が環状溝15c内に残ったまま外周側部分が収納凹部24A内に収容される。
【0031】
従って、この状態で掘削ビット15はケーシングトップ12の先端に、前記ヘッド部15aを突出させるとともに前記スカート部15bの外周部にまで前記張り出し筒部23が張り出すようにして前記軸線Oと同軸かつ該軸線O回りに回転自在に取り付けられ、さらに前記ビット係止機構24により、図2に示すように止め輪24Bが収納凹部24A内にある範囲では軸線O方向に移動可能とされ、かつこの図2に示す状態から掘削ビット15がケーシングトップ12に対して先端側に移動しようとすると、この収納凹部24A内に収納された止め輪24Bの外周側部分が該収納凹部24Aの前記先端側壁面24bに当接して、それ以上の先端側への移動が制限されることとなる。なお、この掘削ビット15のケーシングトップ12に対する後端側への移動は、例えば前記張り出し筒部23の先端が前記ヘッド部15aの後端面に当接したところで制限される。
【0032】
また、掘削ビット15後端側の前記スカート部15b内周は、前記デバイス14の先端部が挿入可能な孔部15dとされており、この孔部15dの内周には、デバイス14先端部外周の前記突条部27が回転方向T後方側に突出した先端部27aも含めて軸線Oに平行に挿通可能な凹溝部28が、突条部27と同数の複数(本実施形態では3つ)、軸線Oに平行に延びるように形成されている。さらに、孔部15dの孔底面15eは軸線Oに垂直な平坦面とされるとともに、この孔底面15e側の孔部15d内周には、前記凹溝部28の孔底側(先端側)部分に連通するように環状の凹所28aが形成されており、この凹所28aは、図2に示すように孔部15dに挿入されたデバイス14の先端面14eを前記孔底面15eに当接させた状態で、前記突条部27の先端部27aを収容可能な内径及び軸線O方向の幅を有している。従って、まず上述のように凹溝部28に突条部27を挿通させて孔部15dにデバイス14の先端部を挿入し、このデバイス14の前記先端面14eが孔底面15eに当接したところでデバイス14を回転方向Tに回転させると、この回転方向Tを向く突条部27の前記側壁27eが凹溝部28の回転方向T後方側を向く側壁28bに当接させられるので、前記ロッドアダプタ16からロッド13を介してデバイス14に与えられる掘削時の回転方向Tへの回転力が掘削ビット15に伝達可能となる。
【0033】
一方、これとは逆に、デバイス14の先端面14eが孔底面15eに当接した状態でデバイス14を回転方向Tの後方側に回転させると、この回転方向T後方側に突出した突条部27の前記先端部27aが凹所28a内において周方向に隣接した凹溝部28間に画成される突条29の先端側の空間に入り込むことにより、突条部27の前記側壁27cが凹溝部28の回転方向Tを向く側壁28cに当接させられ、さらにこの状態のままデバイス14をロッド13およびロッドアダプタ16ごと後退させると、先端部27aの後端側を向く側壁27dが突条29の先端側を向く側壁、すなわち凹所28aの先端側を向く側壁28dに当接し、これにより、L字型のフック状に形成された前記先端部27aが突条29の先端に引っ掛けられるようにして軸線O方向後端側に向けて凹所28aと係合可能とされる。すなわち、本実施形態では、デバイス14の先端部外周に、軸線O方向に延びる突条部27と、軸線Oに直交する断面がこの突条部27に対して突出する係合部(先端部27a)とが形成されるとともに、掘削ビット15の孔部15d内周には、前記突条部27と係合部とが挿通可能な凹溝部28と、こうして凹溝部28に突条部27と係合部とを挿通してデバイス14先端部を孔部15dに挿入した上で該デバイス14を前記軸線O回りの周方向の少なくとも一方(回転方向T後方)に回動させることにより前記係合部と軸線O方向後端側に向けて係合可能な被係合部(凹所28a)とが形成されていることとなる。また、こうして先端部27aと凹所28aとが係合した状態からデバイス14を回転方向Tに回転させると、前記先端部27aが凹所28aの突条29先端側の空間から抜け出るとともに前記突条部27の側壁27cが凹溝部28の側壁28cから離れてデバイス14と掘削ビット15との係合状態が解かれ、デバイス14のみを後退させることが可能となるので、前記掘削ビット15はデバイス14の軸線O回りの回転方向Tへの回転と回転方向T後方側への回転とにより、該デバイス14の先端に係脱可能に装着されることとなる。
【0034】
さらにまた、この掘削ビット15先端の前記ヘッド部15aには、その先端面に、前記軸線Oから僅かに間隔をあけた位置から外周側に放射状に延びるように、デバイス14に形成されたくり粉溝26と同数の複数(本実施形態では3つ)のくり粉溝30が周方向に等間隔に形成されており、これらのくり粉溝30は、ヘッド部15a先端面の外周端から掘削ビット15の外周面を軸線O方向後端側に向けて延びて前記スカート部15bの後端面すなわち当該掘削ビット15の後端面に開口させられている。なお、大径のヘッド部15aから小径のスカート部15bに至る部分では、このくり粉溝30は、図2に示すように軸線Oに沿った断面においてその底面30aが、ヘッド部15a外周では軸線Oに略平行に延びるようにされた後、後端側に向けて内周側に向かうように傾斜させられ、さらに緩やかに凹曲しつつスカート部15bにおいて再び軸線Oに略平行に延びるようにされている。また、前記ヘッド部15aの先端面には、前記くり粉溝30を避けるように超硬合金等の硬質材料からなるチップ31が植設されて複数設けられている。さらに、前記孔部15dの孔底面15eには軸線Oに沿って先端側に凹む止まり孔15fが形成されてデバイス14の前記中空部14cに連通可能とされており、この止まり孔15fからは先端外周側に向けてブロー穴15gが穿設されて、ヘッド部15a先端面に形成された少なくとも1の前記くり粉溝30の内周端に開口させられている。
【0035】
さらにまた、これらのくり粉溝30は、上述のように掘削ビット15の孔部15dにデバイス14の先端部を挿入した上でデバイス14を回転方向Tに回転させて前記凹溝部28の側壁28bに前記突条部27の側壁27eを当接させることによりデバイス14から掘削ビット15に回転方向Tへの回転力が伝達可能とした状態で、デバイス14の前記くり粉溝26にそれぞれ連通するように配置されており、これによりこれらのくり粉溝30,26は、掘削ビット15とデバイス14の外周に、前記ケーシングトップ12の張り出し筒部23より先端側の掘削ビット15外周側と、前記ロッド13とケーシングパイプ11の間の空間とを連通させるように、前記掘削ビット15からデバイス14の後端にかけて延設されることとなる。そして、このように連通させられたくり粉溝30,26の底面30a,26aと、該底面30a,26aに対向することとなる前記ケーシングトップ12及びケーシングパイプ11(ファーストケーシングパイプ11B)の内周面との間の間隔は、図2に示すようにデバイス14の先端面14e及び前記段差部22Bを掘削ビット15の前記孔底面15eおよびケーシングトップ12の前記段差部22Aにそれぞれ当接させた状態で、このケーシングトップ12の張り出し筒部23先端すなわち前記拡径部23aの先端内周縁と掘削ビット15外周の前記くり粉溝30の底面30aとの間隔Xが、他の部分における間隔に比べて最も小さくなるようにされている。
【0036】
なお、この間隔Xは、前記張り出し筒部23の先端と対向するくり粉溝30の底面30aが上述のように後端側に向かうに従い内周側に向かうように傾斜させられているため、この傾斜した底面30aに垂直な方向の間隔とされている。また、図2に符号Y〜Yで示すのは前記他の部分の間隔であって、間隔Yは掘削ビット15のスカート部15bにおいて軸線Oに略平行に延びるくり粉溝30の底面30aとケーシングトップ12の張り出し筒部23内周との間隔、間隔Yはデバイス14の前記中央部におけるくり粉溝26の底面26aとケーシングトップ12の小径とされた前記中央部の内周との間隔、間隔Yはデバイス14の一段拡径した後端側部分における底面30aとケーシングパイプ11(ファーストケーシングパイプ11B)内周との間隔を示している。
【0037】
このように構成された掘削工具は、ロッドアダプタ16に対し駆動軸18の図示しない駆動装置によって回転力が伝えられると共に、先端側に向けて軸線Oに沿う打撃力と推力が伝えられると、その回転力及び推力と打撃力がロッドアダプタ16からカップリング17、ロッド13を介しデバイス14に伝わることにより、掘削ビット15が回転しかつ打撃しながら地盤を削孔する。その際、ロッドアダプタ16の鍔部16aから緩衝材20を介しフロントアダプタ19に軸線Oに沿う打撃力と推力が伝えられ、その打撃力と推力がフロントアダプタ19から保護キャップ11Aを介してケーシングパイプ11及びファーストケーシングパイプ11Bに伝わる。
【0038】
なお、削孔時には、駆動装置からロッドアダプタ16、ロッド13,デバイス14の中空部16b,13c,14cを介して掘削ビット15の止まり孔15fに削孔水または圧縮空気等の流体が供給されることにより、掘削ビット15先端面のブロー穴15gからこの削孔水または圧縮空気等の流体が排出される一方、掘削時に生成されたくり粉はケーシングトップ12と掘削ビット15との間の間隔Xの隙間からくり粉溝30内に導入され、デバイス14のくり粉溝26を通ってデバイス14及びロッド13とファーストケーシングパイプ11B及びケーシングパイプ11との間を経ることにより後端側に押し出され、フロントアダプタ19の窓部19aから排出される。また、本実施形態の掘削工具では、掘削終了後は上述のように掘削ビット15とデバイス14との係合を解くことにより、掘削ビット15を始めケーシングトップ12およびファーストケーシングパイプ11Bを含めたケーシングパイプ11を削孔中に残したまま、デバイス14及びロッド13が引き抜かれて回収されるようになされている。
【0039】
しかして、前記掘削ビット15による削孔時、前記構成の掘削工具では、デバイス14の外周の途中位置に推力打撃伝達手段22の段差部22Bが形成されていると共に、ケーシングトップ12の後端側内周部12a底の段差部22Aが前記段差部22Bと対応する位置関係にあるので、この段差部22Bがケーシングトップ12の段差部22Aと衝合して当接することにより、デバイス14に推力と打撃力が伝わる度にケーシングトップ12が前方に押し込まれる一方、ケーシングトップ12の先端に掘削ビット15のスカート部15bの外周まで張り出す張り出し筒部23が設けられているので、常に掘削ビット15を包囲した状態でケーシングトップ12を削孔に建て込むことができる。
【0040】
そのため、ケーシングトップ12の張り出し筒部23によって削孔壁の崩壊を防ぐことができるので、従来技術のようにデバイス14側まで影響を受けることがなくなり、掘削作業を良好に行うことができる。しかも、ケーシングトップ12に張り出し筒部23が形成されていると、土砂などに対する充分な耐久性を保つこともできる。なお、前記推力打撃伝達手段22の段差部22A,22Bは本実施形態では先端側に向かうに従い内周側に向かうテーパ面状とされているが、軸線Oに垂直な平坦面状とされていてもよい。
【0041】
また、上述したように推力打撃伝達手段22におけるデバイス14の段差部22Bによってケーシングトップ12の段差部22Aを打撃すると、ケーシングトップ12に対し適正な打撃力と推力を伝達することができる。そのため、例えばケーシングパイプ11を介してファーストケーシングパイプ11Bからケーシングトップ12に打撃力や推力を伝達するような場合、ケーシングトップに与えられる打撃力や推力が減衰され、ケーシングトップの削孔に対しての建て込み力が弱まるおそれがあるが、ケーシングパイプ11の先端側にケーシングトップ12が取り付けられていても、ケーシングトップ12に打撃力や推力を減衰させることなく確実に伝達することができ、ケーシングトップ12を的確に建て込みさせることができる。
【0042】
その一方で、前記構成の掘削工具では、ケーシングトップ12がファーストケーシングパイプ11Bに対して軸線O方向に移動可能とされており、従ってこのケーシングトップ12の建て込みにかかる抵抗は、専ら当該ケーシングトップ12のみに作用することとなり、ファーストケーシングパイプ11Bを始めとするケーシングパイプ11への抵抗は軽減することが可能となる。このため、このケーシングパイプ11に与えられる打撃力や推力は少なくて済み、例えば上述のように駆動軸18からロッドアダプタ16に伝えられた打撃力や推力を、鍔部16aとフロントアダプタ19との間に介装された緩衝材20によって弱めてケーシングパイプ11に伝達しても、確実にケーシングパイプ11を建て込むことが可能となるので、このケーシングパイプ11に過大な打撃力や推力が与えられて破損が生じたりするのを防止することもできる。
【0043】
さらに、こうしてケーシングトップ12がファーストケーシングパイプ11Bに対して軸線O方向に移動可能とされることにより、前記掘削工具によれば、上述のように複数のケーシングパイプ11やロッド13を継ぎ足して削孔を行う場合に、例えばこれらケーシングパイプ11とロッド13の長さが異なっていたり、あるいは製造仕上がり寸法に誤差が生じたりしていても、この長さの差や寸法誤差が所定の範囲内であれば、前記推力打撃伝達手段22において段差部22Aに段差部22Bを確実に当接させて、デバイス14からケーシングトップ12に推力や打撃力を確実に伝達することが可能となる。すなわち、例えば図2に示すように継ぎ足されたケーシングパイプ11とロッド13の長さが等しい場合の最先端のロッド13とファーストケーシングパイプ11Bとの間隔Zに対し、誤差等によってファーストケーシングパイプ11Bが先端側に突出していたとしても、この突出量が図中に符号Wで示すファーストケーシングパイプ11Bが前記平坦面12bに当接するまでの範囲であれば、かかる寸法誤差等に拘わらず段差部22A,22Bを確実に当接させることができ、逆にファーストケーシングパイプ11Bが後端側に後退していても、その後退量が図中に符号Vで示す前記ケーシング係止手段21の止め輪21Aが収納凹部21Bの後端側壁面21bに当接するまでの範囲であれば、やはりロッド13とファーストケーシングパイプ11Bの先端の軸線O方向の相対位置に拘わらずに段差部22A,22Bを確実に当接させることが可能となるのである。
【0044】
また、本実施形態では、このようにケーシングトップ12をケーシングパイプ11(ファーストケーシングパイプ11B)に対して軸線O方向に移動可能に取り付けるに際し、このケーシングトップ12がケーシングパイプ11に対する軸線O方向先端側への移動範囲を制限する前記ケーシング係止機構21を介して取り付けられており、従ってケーシングトップ12がケーシングパイプ11に対して先端側に移動しすぎてファーストケーシングパイプ11Bの先端から抜け外れてしまったりするような事態を未然に防ぐことができる。さらに、本実施形態では、このケーシング係止機構21が、ケーシングトップ12の後端側内周部12aに嵌挿されるファーストケーシングパイプ11Bの外周に環状溝11aが形成されて、軸線Oに対する径方向に拡縮径可能な弾性部材としてC字状の止め輪21Aが取り付けられるとともに、前記後端側内周部12aにはこの止め輪21Aを収容可能な収納凹部21Bが形成された構成とされており、環状溝11aに取り付けられた止め輪21Aを縮径させた状態でファーストケーシングパイプ11Bの先端をケーシングトップ12の前記後端側内周部12aに嵌挿するだけでこのケーシングトップ12を係止して取り付けることができ、操作が容易であるという利点も得ることができる。また、例えばケーシングトップ12の前記後端側内周部12aの後端縁を後端側に向かうに従い漸次拡径するテーパ面状とすれば、ファーストケーシングパイプ11Bの先端を前記後端側内周部12aに挿入するだけで、このテーパ面に案内されて止め輪21Aが縮径させられるので、一層容易な操作でケーシングトップ12を係止して取り付けることができる。
【0045】
なお、本実施形態ではこのように、ファーストケーシングパイプ11Bの先端部外周に環状溝11aが形成されて止め輪21Aが取り付けられるとともに、ケーシングトップ12の後端側内周部12aに収納凹部21Bが形成されているが、これとは逆にケーシングトップ12の後端側内周部12aに環状溝を形成するなどしてC字状止め輪のような弾性部材を取り付けるとともに、ファーストケーシングパイプ11Bの先端部外周には収納凹部を形成してもよい。この場合に、ファーストケーシングパイプ11Bの先端部を前記後端側内周部12aに嵌挿する際には、はじめに弾性部材の内径がファーストケーシングパイプ11Bが挿入可能な外径にまで拡径され、この状態でファーストケーシングパイプ11Bを後端側内周部12aに嵌挿することにより、弾性部材が収納凹部の位置で縮径してその内周側が収納凹部に収納され、ケーシングトップ12が先端側に係止される。また、本実施形態では、ケーシングトップ12の後端側内周部12aにファーストケーシングパイプ11Bの先端部が嵌挿されるようにしているが、これとは逆にファーストケーシングパイプ11Bの先端側内周部にケーシングトップ12の後端部が嵌挿されるようにして、互いに対向するこれらファーストケーシングパイプ11Bとケーシングトップ12の内外周面の一方に弾性部材を、他方に収納凹部を形成するようにしてもよい。
【0046】
ただし、このようにケーシングトップの後端部をファーストケーシングパイプの先端側内周部に嵌挿してケーシングトップをケーシングパイプに対して移動可能に設けると、このケーシングトップ後端部を覆うケーシングパイプ先端の外周側に張り出す段差部に掘削ずり等が入り込んでケーシングトップの後端側への移動が前記所定の範囲よりも小さく拘束されたり、場合によってはこのケーシングトップの後端側への移動が不可能となったりするおそれが生じる。このため、このようにケーシングトップとケーシングパイプ(ファーストケーシングパイプ)との一方に他方を嵌挿してケーシングトップを移動可能に取り付けるには、本実施形態のようにケーシングトップ12の前記後端側内周部12aがファーストケーシングパイプ11Bの先端部を外嵌するように取り付けるのが望ましい。
【0047】
また、本実施形態では、こうしてファーストケーシングパイプ11Bの先端部を外嵌するケーシングトップ12の外径が一定とされるとともに、その先端の掘削ビット15のヘッド部15aにおける最大外径よりも小さくされており、従ってこの掘削ビット15により掘削される削孔の内周と当該掘削工具外周との間の間隔は後端側ほど大きくなって、ケーシングパイプ11の外周にはより大きな間隔を確保することが可能となるので、掘削ずりが後端側のケーシングパイプ11外周にまで流れ込んでこのケーシングパイプ11に大きな外圧抵抗が作用するのを防止することができ、かかる外圧抵抗によってケーシングパイプ11の建て込みに支障を来したりケーシングパイプ11に破損が生じたりするのを防ぐことができる。しかも、その一方で、このケーシングパイプ11先端のケーシングトップ12と削孔との間隔は、ケーシングパイプ11よりは小さく、このケーシングトップ12をガイドとして掘削を行うことができるため、削孔の直進性を確保して孔曲がりが生じるのを防ぐことができ、このような孔曲がりによってケーシングパイプ11に抵抗が作用して破損等が生じるような事態も未然に防止することが可能となる。
【0048】
一方、本実施形態では上述のようにケーシング係止機構21を弾性部材としての止め輪21Aと収納凹部21Bとから構成しているが、例えばこれを図5に示す第2の実施形態のケーシング係止機構41のように、前記ファーストケーシングパイプ11Bとケーシングトップ12との一方の内周に他方を嵌挿してファーストケーシングパイプ11B先端にケーシングトップ12を取り付けた場合において、これらケーシングトップ12とファーストケーシングパイプ11Bとの互いに嵌挿される内外周にそれぞれ形成された互いに螺合可能な雌雄ネジ山部41A,41Bと、各雌雄ネジ山部41A,41Bに連続して反対側のネジ山部41B,41Aを収容可能に形成された前記軸線O方向に延びる収納凹部41C,41Dとから構成するようにしてもよい。なお、この図5に示す第2の実施形態や後述する第3の実施形態において、前記第1の実施形態と共通する部分にはこれと同一の符号を配して説明を省略する。
【0049】
すなわち、この第2の実施形態においては、ファーストケーシングパイプ11Bの先端側内周部の先端縁に前記雌ネジ山部41Aが環状に形成されるとともに、これよりも後端側には、この雌ネジ山部41Aの雌ネジの谷の径と略同等あるいは僅かに大きな一定内径とされて該雌ネジ山部41Aに対して外周側に凹む前記収納凹部41Cが雌ネジ山部41Aに連続して前記軸線O方向に所定の幅で延びるように形成されており、この収納凹部41Cの後端側は内周側に向かう段差部41aを介して、ケーシングパイプ11の内径と等しくされたファーストケーシングパイプ11Bの後端側内周部に連ねられている。なお、前記雌ネジ山部41Aの山の内径はこのファーストケーシングパイプ11Bの後端側内周部の内径よりも僅かに大きくされている。
【0050】
一方、ケーシングトップ12の後端側外周部の後端縁には、前記雌ネジ山部41Aに螺合可能な雄ネジ山部41Bが環状に形成されるとともに、これよりも先端側には、この雄ネジ山部41Bの雄ネジの谷の径と略同等あるいは僅かに小さな一定外径とされて該雄ネジ山部41Bに対して内周側に凹む前記収納凹部41Dが雄ネジ山部41Bに連続して軸線O方向に所定の幅で延びるように形成されており、この収納凹部41Dの先端側は外周側に向かう段差部41bを介してケーシングトップ12の軸線O方向中央部の外周に連ねられている。なお、このケーシングトップ12の中央部の外径は、本実施形態では張り出し筒部23とされる先端部の外径よりも僅かに小径とされている。また、このケーシングトップ12の後端側内周部12aは、その内径がデバイス14の大径とされた後端部の外径よりも僅かに大きな程度とされるとともに、この後端側内周部12aからケーシングトップ12の小径となる中央部内周に至る段差部も、外周側の平坦面12bは第1の実施形態よりも小さくされており、場合によってはこの段差部が推力打撃伝達手段22のテーパ面状の段差部22Aのみとされていてもよい。
【0051】
従って、このように構成された第2の実施形態においては、前記雌ネジ山部41Aに雄ネジ山部41Bをねじ込んで螺合させ、さらにこの雄ネジ山部41Bをねじ込んでゆくことにより、雄ネジ山部41Bが雌ネジ山部41Aを通り越して収納凹部41Cに達するとともに雌ネジ山部41Aは収納凹部41Dに達し、ケーシングトップ12はその後端部がファーストケーシングパイプ11Bの先端側内周部に嵌挿された状態で軸線O方向に移動可能かつ軸線O回りに回転自在にファーストケーシングパイプ11B先端に取り付けられる。しかして、本実施形態のケーシング係止機構41においては、この状態からケーシングトップ12がファーストケーシングパイプ11Bに対して先端側に移動しようとすると、雌ネジ山部41Aの後端縁に雄ネジ山部41Bの先端縁が当接したところでケーシングトップ12の移動が拘束されて先端側に係止され、それ以上は再び雌雄ネジ山部41A,41Bを螺合させて雄ネジ山部41Bを雌ネジ山部41Aから抜き外すように回転させなければケーシングトップ12を移動させることができないので、第1の実施形態と同様に掘削中のケーシングトップ12の脱落等を防止することができる。
【0052】
また、本実施形態のケーシング係止機構41においては、このようにケーシングトップ12を先端側に係止して移動可能に取り付けた後でも雌雄ネジ山部41A,41Bを再び螺合させて回転させればケーシングトップ12を容易に取り外すことができるので、一旦取り付けたケーシングトップ12を取り外さなければならない事態が起きても操作が容易であるという利点を得られる。なお、ケーシングトップ12の軸線O方向後端側への移動は、このケーシングトップ12の後端が前記段差部41aに当接し、またはファーストケーシングパイプ11Bの先端が前記段差部41bに当接し、あるいはこれら双方が同時に当接することにより拘束される。また、本実施形態では上述のようにファーストケーシングパイプ11Bの先端側内周部にケーシングトップ12の後端側外周部が内嵌されることとなるが、ケーシングトップ12の後端側内周部12aに雌ネジ山部41Aを形成するとともにファーストケーシングパイプ11Bの先端側外周部にはこれに螺合可能な雄ネジ山部41Bを形成して、第1の実施形態と同様にファーストケーシングパイプ11B先端にケーシングトップ12が外嵌されるように取り付けてもよく、これにより、図5に符号Uで示すように当該掘削工具の外周においてファーストケーシングパイプ11B先端と前記段差部41bとの間に露出する収納凹部41D内に掘削ずりが入り込んだりするのを防ぐことができ、より円滑かつ確実なケーシングトップ12の移動を図ることができる。
【0053】
さらに、前記第1の実施形態やこの第2の実施形態では、前記デバイス14の先端に係脱可能に取り付けられる掘削ビット15も、そのスカート部15b外周を囲む張り出し筒部23を備えたケーシングトップ12に対して軸線O方向に移動可能とされており、しかもこの掘削ビット15もその先端側への移動範囲を拘束するビット係止機構24を介してケーシングトップ12の先端に取り付けられているので、ケーシングトップ12がファーストケーシングパイプ11Bに係止されるのに合わせて、その先端側への不用意な脱落等を防ぐことができ、掘削時の信頼性を高めることができる。また、これら第1、第2の実施形態のビット係止機構24は、第1の実施形態のケーシング係止機構21と同じく弾性的に拡縮径可能な弾性部材としてのC字状の止め輪24Bと該止め輪24Bの外周側部分を収容可能な収納凹部24Aとから構成されており、このケーシング係止機構21と同様に止め輪24Bを縮径させた状態で掘削ビット15のスカート部15bをケーシングトップ12の張り出し筒部23内に嵌挿するだけで、この掘削ビット15を容易に係止して取り付けることができるという利点も得られる。なお、これらケーシング係止機構21やビット係止機構24における拡縮径可能な弾性部材としては、前記C字状の金属製止め輪21A,24Bの他にも、収納凹部21B,24Aに収容されてケーシング12や掘削ビット15を係止可能なものなら、例えばゴムリングなどでも適用可能である。
【0054】
ただし、このビット係止機構についても、前記第2の実施形態のケーシング係止機構41と同じようにして、例えば図6に示す第3の実施形態のビット係止機構42のように、掘削ビット15のスカート部15b外周部と前記張り出し筒部23の内周部とにそれぞれ形成された互いに螺合可能な雌雄ネジ山部42A,42Bと、各雌雄ネジ山部42A,42Bに連続して反対側のネジ山部42B,42Aを収容可能に形成された軸線O方向に延びる収納凹部42C,42Dとから構成するようにしてもよい。すなわち、この第3の実施形態においては、ケーシングトップ12の張り出し筒部23の内周先端縁に雌ネジ山部42Aが環状に形成されるとともに、掘削ビット15のスカート部15b外周後端縁にはこの雌ネジ山部42Aと螺合可能な雄ネジ山部42Bが環状に形成され、また雌ネジ山部
42Aよりも後端側の張り出し筒部23内周部は雄ネジ山部42Bを収容可能な内径の収納凹部42Cとされるとともに、雄ネジ山部42Bよりも先端側のスカート部15b外周部は雌ネジ山部42Aを収容可能な外径の収納凹部42Dとされている。従って、このような第3の実施形態においても、そのビット係止機構42により掘削ビット15の先端側への移動範囲を収納凹部42D,42Cに収容された雌雄ネジ山部42A,42Bが互いに当接するまでに制限しつつ、該掘削ビット15を移動可能に取り付けることができ、また前記ケーシング係止機構41と同じように一旦取り付けた掘削ビット15を取り外すのも比較的容易であるという利点が得られる。
【0055】
さらにまた、前記第1の実施形態では、掘削ビット15とデバイス14の外周に、ケーシングトップ12の張り出し筒部23より先端側の掘削ビット15外周側と、前記ロッド13とファーストケーシングパイプ11Bも含めたケーシングパイプ11の間の空間とを連通させるように、掘削ビット15からデバイス14の後端にかけて、図2に符号Fで示すようなくり粉や掘削ずりの流れを形成するくり粉溝30,26が形成されており、このくり粉溝30,26の底面30a,26aと該底面30a,26aに対向するケーシングトップ12およびケーシングパイプ11(11B)の内周面との間の間隔が、ケーシングトップ12の張り出し筒部23の先端において、他の部分の間隔Y(Y〜Y)よりも小さな間隔Xとなるようにされている。従って、このくり粉溝30,26とケーシングトップ12およびケーシングパイプ11(11B)の内周面との間の空間には、くり粉や掘削ずりの入口となるこの張り出し筒部23先端の間隔Xよりも大きな粒のくり粉や掘削ずり、土砂等が入り込むことがないので、かかる大粒の土砂等によってくり粉溝30,26内に詰まりが生じるような事態を防止することができ、くり粉や掘削ずりをより確実にロッド13とケーシングパイプ11との間の空間に案内して後端側に送り出し、フロントアダプタ19の前記窓部19aから排出することが可能となる。
【0056】
加えて、前記第1の実施形態では、掘削ビット15の円筒状のスカート部15b内周が、デバイス14の先端部が挿入される孔部15dとされていて、このデバイス14の先端部外周には軸線O方向に延びる突条部27が形成される一方、孔部15d内周にはこの突条部27が挿通可能な凹溝部28が形成されており、掘削時にはデバイス14が回転方向Tに回転することによって突条部27の側壁27eが凹溝部28の側壁28bに当接させられ、デバイス14からの回転力が掘削ビット15に伝達させられる。すなわち、本実施形態では、このデバイス14と掘削ビット15とがスプライン嵌合させられているので、前記駆動軸18からロッドアダプタ16およびロッド13を介して伝えられる回転力をデバイス14から確実に掘削ビット15に伝達することができ、この掘削ビット15によって効率的な掘削を図ることができる。また、上述のように掘削ビット15の孔部15dからデバイス14の先端部を一旦抜き出して分離した後に再び挿入して掘削ビット15をデバイス14先端に取り付ける場合でも、このようなスプライン嵌合によれば操作が容易であり、万一突条部27が凹溝部28に嵌り込んでいないときでも、前記ビット係止機構24,42によって掘削ビット15の先端側への移動が制限されているので、掘削ビット15がデバイス14によって押し出されて脱落するようなこともない。しかも、本実施形態では、前記突条部27の外周面が先端側で一段低くされているとともに、回転方向Tを向く側壁27eの先端側部分は後端側に向かうに従い回転方向T側に向かう凹曲面状あるいは傾斜面状に切り欠かれており、上述のように掘削途中でデバイス14を掘削ビット15から分離させた後に再度デバイス14を装着する際に、デバイス14先端部を孔部15dに挿入しやすく、また突条部27と凹溝部28との位相が多少ずれていても、掘削ビットの前記突条29が側壁27e先端の前記凹曲面あるいは傾斜面に当たれば、この凹曲面または傾斜面に案内されるようにして掘削ビット15が回転して突条部27と凹溝部28の位相が合わせられるので、掘削ビット15の再装着が一層容易である。
【0057】
そして、さらにこの第1の実施形態の掘削工具では、前記突条部27の先端部27aが回転方向T後方に突出するL字型のフック状に形成されて係合部とされているとともに、凹溝部28の先端側にはこの先端部27aを収容可能な凹所28aが形成されて被係合部とされており、デバイス14を回転方向Tの後方に回転させて先端部27aを凹所28aの前記突条29の先端側の空間に収容し、そのままロッド13を介してデバイス14を後退させると、先端部27aの後端側を向く側壁27dと凹所28aの先端側を向いて前記側壁27dに対向する側壁28dとが軸線O方向後端側に向けて当接して係合部と被係合部とが係合し、これにより掘削ビット15もともに後退させることが可能となる。その一方で、本実施形態では、ケーシングトップ12もケーシング係止機構21によってケーシングパイプ11に係止されているので、デバイス14と掘削ビット15とを後退させるのに合わせてケーシングパイプ11もケーシングトップ12ごと後退させれば、地上からの操作によって当該掘削工具を一体的に削孔から後退させることができる。従って、例えば掘削中にジャミング等によって掘削不能状態に陥ったりした場合でも、掘削ビット15をケーシングトップ12に係止する前記ビット係止機構24に大きな負荷を作用させることなく、ケーシングパイプ11、ケーシングトップ12、ロッド13、デバイス14、および掘削ビット15を一体に後退させることができて、容易にこの掘削不能状態を回避することができ、その後に円滑に掘削を続行することが可能となる。
【0058】
ここで、本実施形態では係合部とされる前記突条部27の先端部27aが回転方向T後方側に突出するようにされているが、これを、回転方向T側に突出するようにして掘削時の回転方向Tにロッド13およびデバイス14を回転させることにより前記被係合部と係合可能とするようにしてもよく、また回転方向Tとその後方側とに突出する側面視にT字型をなすようにしてこれら回転方向Tとその後方の両方向いずれに回転させても係合可能とするようにしてもよい。また、このように係合部を突条部27から周方向に突出させるのに代えて、該係合部を径方向外周側に突出する凸部として形成する一方、凹溝部28には、この係合部も含めて突条部27を挿通可能な溝深さの深い部分と、デバイス14を回転させたときに係合部を除いた突条部27を収容可能な溝深さの浅い部分とを隣接して形成し、さらにこの溝深さの浅い部分に、デバイス14を回転させたときに係合部を収容可能な深い凹所を形成して被係合部とし、この凹所の先端側を向く側壁に前記凸部の後端側を向く側壁を当接させて軸線O方向後端側に前記係合部と被係合部とを係合可能とするようにしてもよい。ただし、このように係合部を径方向外周側に突出する凸部として形成した場合には、上述のように凹溝部28に溝深さの深い部分を形成しなければならず、この部分においてはスカート部15dの肉厚が薄くなってしまうので、係合部を凸部とする場合には本実施形態のように周方向に突出するように形成するのが望ましい。
【0059】
一方、このように係合部をデバイス14の突条部27がなす断面から突出する凸部とするとともに被係合部をこの凸部が収容可能な凹所として形成するのとは逆に、突条部27の例えば後端側寄りに該突条部27の断面から周方向に陥没する凹所を形成して係合部とする一方、凹溝部28側には該突条部27を挿通した上でデバイス14を回転させることにより前記凹所に嵌り込んで後端側に係合される突出部を形成して被係合部とするようにしてもよい。因みに、本実施形態においても見方を変えれば、デバイス14先端部外周の前記突条部27に形成された凹部27bが前記係合部とされる凹所とされ、この凹部27bに、掘削ビット15の孔部15dの隣接する凹溝部28間に画成される前記突条29が、前記被係合部としての突出部として嵌り込んで後端側に係合させられていると見ることもできる。
【0060】
ところで、このような掘削工具の前記ケーシングパイプ11は、最先端のファーストケーシングパイプ11Bも含めてケーシングトップ12と同じ鋼材等により形成されるのが一般的である。ところが、例えばトンネルの掘削工事などにおいては、トンネルの本孔を掘削する地盤の周囲に上述のような掘削工具によって削孔を形成してケーシングパイプ11を建て込み、このケーシングパイプ11から薬液を注入して地盤を安定させておいてから、建て込まれたケーシングパイプ11ごと地盤を掘削してトンネル本孔を削孔するような場合があり、そのような場合にはケーシングパイプ11はトンネル本孔掘削の際に破壊されやすいように、樹脂製や場合によっては紙製など、ケーシングトップ12よりも低強度の材質が用いられることが望ましい。
【0061】
しかしながら、従来は、このような低強度のケーシングパイプ11を用いると、建て込みの際の抵抗によってケーシングパイプ11に破損が生じてしまうおそれが高く、掘削条件等が制限されざるを得なかった。しかして、これに対して前記構成の掘削工具によれば、上述のようにケーシングトップ12がファーストケーシングパイプ11Bに対して軸線O方向に移動可能とされていて、ロッド13からデバイス14を介して伝達される打撃力及び推力に抗して作用するケーシング建て込み時の抵抗は専らケーシングトップ12のみに作用することとなるので、ファーストケーシングパイプ11Bを初めとするケーシングパイプ11への抵抗は軽減することが可能となり、しかも前記実施形態では万一ジャミング等が発生して掘削工具を後退させる場合でも、上述のように掘削ビット15はデバイス14に係合して後退させられるためケーシングパイプ11にはせいぜいケーシングトップ12までを後退させる引っ張り力を与えればよく、従ってケーシングパイプ11が低強度の材質によって形成されていても、その破損を防止することができ、上述のような掘削に用いて特に効果的である。
【0062】
以上述べたように、本実施形態に係る掘削工具によれば、削孔時、掘削ビットを常に包囲した状態でケーシングトップを削孔に建て込むことができるので、削孔壁の崩落を防止して掘削作業を良好に行うことができ、しかも土砂などに対する充分な耐久性を保つこともでき、またケーシングパイプにケーシングトップが取り付けられていても、ケーシングトップに打撃力や推力を減衰することなく確実に伝達することができ、ケーシングトップを的確に建て込みさせることができ、削孔を確実に良好に行うことができる効果がある。その一方で、このケーシングトップはケーシングパイプに対して軸線方向に移動可能に取り付けられているので、建て込み時にケーシングパイプに過大な抵抗が作用することがなく、また継ぎ足されるケーシングパイプとロッドとの間に寸法誤差等があったとしても、これをケーシングトップの移動によって調整することができて、推力打撃伝達手段により確実にケーシングトップに推力打撃力を伝達することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す側断面図である。
【図2】図1に示す実施形態の先端側部分の側断面図である。
【図3】図1に示す実施形態のデバイス(掘削工具本体)を示す(イ)先端側から見た正面図、(ロ)側面図、(ハ)後端側から見た背面図、(ニ)(イ)におけるAA側断面図(鎖線部分はBB断面図)である。
【図4】図1に示す実施形態の掘削ビットを示す(イ)先端側から見た正面図、(ロ)側面図、(ハ)後端側から見た背面図(ただし止め輪24は図示略)である。
【図5】本発明の第2の実施形態を示す先端側部分の側断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態を示す先端側部分(掘削ビット周辺)の側断面図である。
【図7】従来の掘削工具を示す断面図である。
【図8】従来の掘削工具に発生する問題を説明するための図である。
【符号の説明】
【0064】
11 ケーシングパイプ
11B ファーストケーシングパイプ
12 ケーシングトップ
13 ロッド
14 デバイス(掘削工具本体)
15 掘削ビット
15d 孔部
21,41 ケーシング係止機構
21A,24B 止め輪(弾性部材)
21B,24A,41C,41D,42C,42D 収納凹部
22 推力打撃伝達手段
23 張り出し筒部
24,42 ビット係止機構
26,30 くり粉溝
26a,30a くり粉溝26,30の底面
27 突条部
28 凹溝部
31 チップ
41A,42A 雌ネジ山部
41B,42B 雄ネジ山部
O ケーシングパイプの軸線
T 掘削時のロッド13の回転方向
X ケーシングトップ12の張り出し筒部23先端におけるくり粉溝30の底面30aとの間の間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に推力と打撃が伝達されるケーシングパイプと、このケーシングパイプの内部に同芯上に配置されていて、軸線方向に推力と打撃が伝達されると共に回転力が伝達されるロッドと、該ロッドの先端部に取り付けられた掘削工具本体と、該掘削工具本体の先端にこの掘削工具本体に対する回転が拘束されて装着される掘削ビットとを備えた掘削工具において、
前記ケーシングパイプの先端には、前記ケーシングパイプに対して軸線方向に移動可能でかつ軸線周りに回転可能な円筒状のケーシングトップが前記掘削工具本体に外嵌されるようにして取り付けられ、
前記ケーシングトップの先端には、前記掘削ビットの外周部まで張り出す張り出し筒部が形成され、
前記ケーシングトップの内周部及び前記掘削工具本体の外周部間に、前記ロッドに伝達された推力と打撃を前記ケーシングトップに伝達するとともに、前記ケーシングトップを軸線方向に移動させる推力打撃伝達手段を設けたことを特徴とする掘削工具。
【請求項2】
前記ケーシングトップは、前記ケーシングパイプに対する前記軸線方向の少なくとも先端側への移動範囲を制限するケーシング係止機構を介して該ケーシングパイプの先端に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の掘削工具。
【請求項3】
前記ケーシングトップとケーシングパイプとは、一方の内周に他方が嵌挿されて取り付けられているとともに、
前記ケーシング係止機構は、これらケーシングトップとケーシングパイプとの互いに嵌挿される内外周のうち、一方に取り付けられた前記軸線に対する径方向に拡縮径可能な弾性部材と、他方にこの弾性部材を収容可能に形成された収納凹部とから構成されていることを特徴とする請求項2に記載の掘削工具。
【請求項4】
前記ケーシングトップとケーシングパイプとは、一方の内周に他方が嵌挿されて取り付けられているとともに、
前記ケーシング係止機構は、これらケーシングトップとケーシングパイプとの互いに嵌挿される内外周にそれぞれ形成された互いに螺合可能な雌雄ネジ山部と、各雌雄ネジ山部に連続して反対側のネジ山部を収容可能に形成された前記軸線方向に延びる収納凹部とから構成されていることを特徴とする請求項2に記載の掘削工具。
【請求項5】
前記掘削ビットは、前記ケーシングトップに対して前記軸線方向に移動可能、かつこのケーシングトップに対する前記軸線方向の少なくとも先端側への移動範囲を制限するビット係止機構を介して該ケーシングトップの先端に取り付けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の掘削工具。
【請求項6】
前記ビット係止機構は、前記掘削ビットの外周部と前記張り出し筒部の内周部とのうち、一方に取り付けられた前記軸線に対する径方向に拡縮径可能な弾性部材と、他方にこの弾性部材を収容可能に形成された収納凹部とから構成されていることを特徴とする請求項5に記載の掘削工具。
【請求項7】
前記ビット係止機構は、前記掘削ビットの外周部と前記張り出し筒部の内周部とにそれぞれ形成された互いに螺合可能な雌雄ネジ山部と、各雌雄ネジ山部に連続して反対側のネジ山部を収容可能に形成された前記軸線方向に延びる収納凹部とから構成されていることを特徴とする請求項5に記載の掘削工具。
【請求項8】
前記ケーシングトップの最大径部の外径は、前記掘削ビットの最大外径以下で、かつ前記ケーシングパイプの外径以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の掘削工具。
【請求項9】
前記ケーシングトップとケーシングパイプとは、前記ケーシングトップの内周に前記ケーシングパイプの先端が嵌挿されて取り付けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の掘削工具。
【請求項10】
前記掘削ビットの後端部には前記掘削工具本体の先端部が挿入可能な孔部が形成されていて、
この掘削工具本体の先端部外周には前記軸線方向に延びる突条部が形成されるとともに、
前記孔部の内周には前記突条部が挿通可能な凹溝部が形成され、
前記掘削工具本体の回転によって前記突条部の側壁が前記凹溝部の側壁に当接することにより、
前記掘削ビットは前記掘削工具本体から回転力が伝達されることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の掘削工具。
【請求項11】
前記掘削工具本体の前記軸線方向に延びる突条部には、前記軸線に直交する断面がこの突条部に対して突出または陥没する係合部が形成されるとともに、
前記凹溝部に前記突条部と係合部とを挿通して、前記掘削工具本体の先端部を前記孔部に挿入した上で該掘削工具本体を前記軸線回りの周方向の少なくとも一方に回動させることにより、
前記係合部と前記軸線方向後端側に向けて係合可能な被係合部とが形成されていることを特徴とする請求項10に記載の掘削工具。
【請求項12】
前記掘削ビットと前記掘削工具本体の外周には、前記ケーシングトップの張り出し筒部より先端側の前記掘削ビットの外周側と、前記ロッドと前記ケーシングパイプの間の空間とを連通させるように、前記掘削ビットから前記掘削工具本体の後端にかけて、くり粉溝が形成され、
このくり粉溝の底面と該底面に対向する前記ケーシングトップおよびケーシングパイプの内周面との間の間隔は、前記ケーシングトップの張り出し筒部の先端において最も小さくされていることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の掘削工具。
【請求項13】
前記ケーシングパイプの少なくとも一部が、前記ケーシングトップよりも強度の低い材質によって形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の掘削工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−7890(P2009−7890A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172218(P2007−172218)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】