説明

接合対象部品と端子との接合構造

【課題】第1及び第2の半田鏝接触部で支持して半田鏝を容易に位置決めできることから、作業者の習熟度による作業時間及び半田付けの品質のばらつきを抑えられる。
【解決手段】端子へ電子素子を半田付けする場合には、左右の挟持ブロック間に電子素子を挿入して、挟持ブロック1前側及び後側の両リード線支持部の挿通溝にリード線を挿通させる。リード線は、端子が備えるリード線配置部31の収容部に収容されて、配置部に側面を当接又は近接させている。次に、電子素子のリード線を、半田鏝4を用いてリード線配置部31に半田付けする。半田付けは、半田鏝4の先端部分の角部を、半田鏝受部33の奥面33aに当接させると共に、側面部を半田鏝受部33の側壁33bの角部に当接させて、半田鏝4の先端部を半田鏝受部33により2点で支持して行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子と半田付けされる半田接続部分を有する接合対象部品と、半田接続部分と半田付けされる半田付け部を有する端子とを備えた接合対象部品と端子との接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子素子等の接合対象部品は、下記の特許文献1に示すように、ターミナルのリード線挿通スリットを挿通させたリード線を、リード線保持部材のリード線保持スリットに挿通させて電子素子を保持して位置決めした後、リード線をターミナルに半田付けして電気配線用のコネクタや回路基板に取り付けていた。
【0003】
【特許文献1】特開平7−130262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半田鏝を用いた半田付けには習熟性が必要とされており、作業者の習熟度により作業時間及び半田付けの品質に大きな差が生じていた。
【0005】
本発明は斯かる課題に鑑みてなされたもので、上記課題を解決できる接合対象部品と端子との接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本発明の接合対象部品と端子との接合構造は、端子と半田付けされる半田接続部分を有する接合対象部品と、前記半田接続部分と半田付けされる半田付け部を有する端子とを備えた接合対象部品と端子との接合構造であって、前記端子が、前記半田付け部に半田が流動可能な領域の互いに異なる平面上に第1の半田鏝接触部と第2の半田鏝接触部とを備え、両前記半田鏝接触部には、半田付けの際に半田鏝の異なる部分がそれぞれ接触することを特徴とする。
また、本発明は、前記第1の半田鏝接触部分には、半田鏝の先端部分の角部が接触し、前記第2の半田鏝接触部分には、半田鏝の側面部が接触することを特徴とする。
また、本発明は、前記接合対象部品が、その両端に半田接続部分であるリード線をそれぞれ有し、前記端子が、半田付けされる前記リード線が配置されるリード線配置部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1及び第2の半田鏝接触部で支持して半田鏝を容易に位置決めできることから、作業者の習熟度による作業時間及び半田付けの品質のばらつきを抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の最良の形態を説明する。
図1は本実施形態の電子素子a1と端子3a,3bとの接合構造を示す図であり、(a)は斜視図,(b)は正面図である。図2は、端子3aの構成の概略を示す図であり、(a)は斜視図,(b)は正面図である。
【0009】
まず、端子3a,3bの取り付けられる台座1について説明する。台座1は、端子3a,3bに対する電子素子a1の位置決めをするためのものである。図1に示すように、台座1は、略矩形の平板状を呈しており、上面の前端部及び後端部には、電子素子a1のリード線a2を支持するためのリード線支持部11がそれぞれ突設されている。リード線支持部11は、上方に向けて左右の幅が徐々に縮幅する略三角形の正面形状を有した平板体から構成されており、最も縮幅された上端部には、リード線a2の挿通される挿通溝11aが設けられている。挿通溝11aは、リード線支持部11を前面から後面にかけて貫通して、リード線支持部11の上縁から下側に向けてリード線a2とほぼ等しい幅で延びており、その下端部でリード線a2を支持する。
【0010】
また、台座1の上面の前後方向の中央部に位置する両リード線支持部11間には、電子素子a1を両側から挟み込んで支持するための一対の挟持ブロック12が突設されている。各挟持ブロック12は、略四角ブロック状を呈しており、電子素子a1の幅とほぼ等しい間隔を互いの間に設けて左右に並んで配置されている。
【0011】
また、各リード線支持部11の近傍には、後述する端子3a,3bのリード線配置部31を台座1の上方に突出させるための配置部突出部13が、それぞれ設けられている。前側のリード線支持部11の近傍に位置する配置部突出部13は、リード線支持部11と前後に並んでリード線支持部11の前方に配置されている。後側のリード線支持部11の近傍に位置する配置部突出部13は、リード線支持部11と前後に並んでリード線支持部11の後方に配置されている。各配置部突出部13は、台座1の上面を上方に向けて略四角ブロック状に膨出させて構成されており、台座1を上下方向に貫通する貫通孔を、上端面に開口させている。
【0012】
台座1の下側には、台座1を肉薄部にして形成された端子3a,3bの収容部14が設けられている。また、台座1の前端面の左右の両側部には、収容部14に収容された端子3a,3bの接続片34を、台座1の前方に突出させるための延出口14a,14bが設けられている。
【0013】
次に、台座1に取り付けられて電子素子a1の接合に用いられる端子3a,3bについて説明する。図2に示すように、端子3aは、金属製の平板体から形成されており、端子本体30から屈曲して上方に延びるリード線配置部31と、端子本体30の前縁から前方に延びる接続片34とを備えている。リード線配置部31は、略矩形の正面形状を有して上方に延びた平板状を呈しており、上端部には電子素子a1のリード線a2を収容するための収容部32が形成されている。収容部32は、リード線配置部31の上縁から下側にかけて徐々に左右の幅を縮幅させる略三角形の正面形状を呈しており、最も縮幅された配置部32aにリード線a2が配置される。配置部32aは、端子3aが台座1に取り付けられて配置部突出部13の貫通孔から上方に突出した状態で、リード線支持部11の挿通溝11aの下端部とほぼ等しい高さ、又は、それよりも上方に位置する高さに形成されている。
【0014】
リード線配置部31の前面には、配置部32aを挟んでリード線配置部31の左右に延びる半田鏝受部33が形成されている。半田鏝受部33は、半田鏝受部33内で溶融した半田が配置部32aに流動するように、配置部32aのやや上方に下縁を位置させて、リード線配置部31の左端から右端にかけて直線状に延びている。リード線配置部31の前面から奥面33aまでの半田鏝受部33の側壁33bの深さ、及び、奥面33aの上下方向の幅は、リード線a2の半田付けに用いられる半田鏝4の先端部分を収容できるように設定されている。
【0015】
端子3aは、図1に示すように、配置部突出部13の貫通孔からリード線配置部31を上方に突出させると共に、延出口14aから台座1の前方に接続片34を突出させて、端子本体30を収容部14に収容されて台座1に取り付けられる。
【0016】
端子3bは、端子3aと同様にリード線配置部31及び接続片34を備えているが、台座1の延出口14bから接続片34を突出させると共に、台座1の後端側の貫通孔からリード線配置部31を突出させて台座1に取り付けられることから、リード線配置部31と接続片34とを結ぶ端子本体30が、端子3aと異なる平面形状を有している。また、リード線配置部31の備える半田鏝受部33は、リード線配置部31の後面に形成されている。
【0017】
このようにして構成される端子3a,3bへの電子素子a1の半田付け方法について説明する。
図3は、端子3a,3bへの電子素子a1の半田付け方法を説明する斜視図である。図4は、半田鏝受部33で半田鏝4を支持した状態を説明する図である。
【0018】
まず、図1に示すように、左右の挟持ブロック12間に電子素子a1を挿入して、挟持ブロック12の前側及び後側の両リード線支持部11の挿通溝11aにリード線a2を挿通させる。これにより、電子素子a1は、挟持ブロック12により左右の両側を挟持されると共に、リード線a2を挿通溝11aに収容されて、台座1に位置決めされる。挿通溝11aに収容されたリード線a2は、端子3a,3bが備えるリード線配置部31の収容部32に収容され、配置部32aに側面を当接又は近接させて、配置部32aに配置される。
【0019】
次に、図3に示すように、電子素子a1のリード線a2を、半田鏝4を用いてリード線配置部31に半田付けする。半田付けは、図4(a)に示すように、半田鏝4の先端部分の角部を、半田鏝受部33の奥面33aに当接させると共に、側面部を半田鏝受部33の側壁33bの角部に当接させて、半田鏝4の先端部分を半田鏝受部33により2点で支持して行われる。
【0020】
本実施形態によれば、半田が配置部32aに流動可能な領域の半田鏝受部33の奥面33aに半田鏝4の角部が接触し、奥面33aと異なる平面上の上記領域に備えられた側壁33bの角部に半田鏝4の側面が接触して、半田付けが行われることから、半田付けを行う半田鏝4を奥面33a及び側壁33bの2点で支持し、半田鏝4の上下方向への移動を規制することができる。つまり、半田鏝受部33を備えずに半田鏝4の先端部分を1点で支持する図4(b)に示すリード線配置部310では、半田付作業時に半田鏝4の先端部分が上下方向に動いてしまい、半田鏝4の位置が不安定になるのに対し、半田鏝受部33の奥面33a及び側壁33bで半田鏝4の先端部分を2点で支持する図4(c)に示すリード線配置部31では、半田付作業時の半田鏝4の先端部分の位置を安定させることができる。このため、作業者は、半田鏝4の位置決めを容易に行うことができる。従って、作業者の習熟度による作業時間及び半田付けの品質のばらつきを抑えることができる。
【0021】
また、リード線配置部31が奥面33a及び側壁33bの2点で半田鏝4に接触することから、半田鏝4に1点で接触する場合に比べて、半田鏝4からリード線配置部31への熱の伝達を早くし、半田付けの作業時間を短縮することができる。
【0022】
上記実施形態では、第1及び第2の半田鏝接触部が半田鏝受部33から構成されている場合について説明した。しかしながら、リード線a2を半田付けする半田鏝4の先端部分を2点で支持できるように、配置部32aに半田が流動可能な領域の互いに異なる平面上に設けられているのであれば、第1及び第2の半田鏝接触部の構成は任意であり、図5〜図9に示す半田鏝受部330〜333から第1及び第2の半田鏝接触部を構成してもよい。なお、図5〜図9では、端子3aの備えるリード線配置部31を示しているが、端子3bの備えるリード線配置部31も、これらのリード線配置部31と同様に構成することができる。
【0023】
半田鏝受部330は、図5(a),(b)に示すように、配置部32aを挟んでリード線配置部31の左右に延びる略長円形の正面形状を有した窪みから形成されている。リード線配置部31の前面から奥面330aまでの半田鏝受部330の側壁330bの深さ、及び、半田鏝受部330の上下及び左右方向の長さは、リード線a2の半田付けに用いられる半田鏝4の先端部分を収容できるように設定されている。半田鏝受部330を備える端子3a,3bを用いても、図4を用いて上述したように、半田鏝4を奥面330a及び側壁330bの2点で支持しつつ、図6に示すようにリード線a2をリード線配置部31に半田付けできる。このため、半田付けの作業時間を短縮すると共に、半田付けの品質のばらつきを抑えることができる。
【0024】
図7に示す半田鏝受部331は、図5に示す半田鏝受部330の配置部32aの右側に延びる部分と同様に構成されている。半田鏝受部331を備える端子3a,3bを用いても、図4を用いて上述したように、半田鏝4を奥面331a及び側壁331bの2点で支持しつつ、図7(b)〜(d)に示すようにリード線a2をリード線配置部31に半田付けできる。このため、半田付けの作業時間を短縮すると共に、半田付けの品質のばらつきを抑えることができる。なお、半田鏝受部331は、配置部32aの左側に延びていてもよい。
【0025】
図8に示す半田鏝受部332は、配置部32aの右側に円形の正面形状を有した窪みを設けて構成されている。
リード線配置部31の前面から奥面332aまでの半田鏝受部332の側壁332bの深さ、及び、半田鏝受部332の直径は、リード線a2の半田付けに用いられる半田鏝4の先端部分を収容できるように設定されている。半田鏝受部332を備える端子3a,3bを用いても、図4を用いて上述したように、半田鏝4を奥面332a及び側壁332bの2点で支持しつつ、図8(b)〜(d)に示すようにリード線a2をリード線配置部31に半田付けできる。このため、半田付けの作業時間を短縮すると共に、半田付けの品質のばらつきを抑えることができる。なお、半田鏝受部332は、配置部32aの左側に設けられていてもよい。
【0026】
図9に示す半田鏝受部333は、配置部32aの右側にリード線配置部31を前面から後面にかけて貫通する貫通孔を設けて構成されている。半田鏝受部333は、円形の正面形状を有しており、前端側から後端側にかけて徐々に縮経している。リード線配置部31の前面から後面にかけての半田鏝受部333の直径は、リード線a2の半田付けに用いられる半田鏝4の先端部分を収容できるように設定されている。半田鏝受部333を備える端子3a,3bを用いても、半田鏝4を側壁333bで2点で支持しつつ、図10(a)〜(c)に示すようにリード線a2をリード線配置部31に半田付けできる。このため、半田付けの作業時間を短縮すると共に、半田付けの品質のばらつきを抑えることができる。なお、半田鏝受部333は、配置部32aの左側に設けられていてもよい。
【0027】
端子3a,3bが備える端子本体30の形状は、リード線配置部31と接続片34とを備えているのであれば任意であり、例えば、端子3aと端子3bとで同じ形状に形成されていてもよい。また、リード線配置部31の形状も、半田鏝受部33を備えていれば任意であり、例えば、リード線a2を収容するための収容部32を備えずに、リード線配置部31の上端面にリード線a2が配置されてもよい。
【0028】
また、半田付けの際には、半田鏝4の先端部分を、半田鏝受部33,330〜332の奥面33a,330a〜332aに当接させると共に、先端面を半田鏝受部33,330〜332の側壁33b,330b〜332bの角部に当接させてもよい。本発明の電子素子の取付構造は、例えば自動車の電気配線用のコネクタ内での電子素子の取り付けや、家電製品等の回路基板上での電子素子の取り付け等に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る電子素子と端子との接合構造を示す図であり、(a)は斜視図,(b)は正面図である。
【図2】図1に示す端子の構成の概略を示す図であり、(a)は斜視図,(b)は正面図である。
【図3】端子への電子素子の半田付け方法を説明する斜視図である。
【図4】半田鏝受部で半田鏝を支持した状態を説明する図である。
【図5】半田鏝受部の構成の他の例を示す第1の図であり、(a)は正面図,(b)は断面図である。
【図6】図5に示す半田鏝受部を用いた半田付け方法の一例を示す図である。
【図7】半田鏝受部の構成の他の例を示す第2の図であり、(a)は正面図,(b)〜(d)は半田付け方法の一例を示す図である。
【図8】半田鏝受部の構成の他の例を示す第3の図であり、(a)は正面図,(b)〜(d)は半田付け方法の一例を示す図である。
【図9】半田鏝受部の構成の他の例を示す第4の図であり、(a)は正面図,(b)は断面図である。
【図10】図9に示す半田鏝受部を用いた半田付け方法の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
a1 電子素子(接合対象部品)
a2 リード線(半田接続部分)
1 台座
11 リード線配置部
11a 挿通溝
12 挟持ブロック
13 配置部突出部
14 収容部
14a,14b 延出口
3a,3b 端子
30 端子本体
31 リード線配置部
32 収容部
32a 配置部(半田付け部)
33,330〜333 半田鏝受部
33a,330a〜333a 奥面(第1の半田鏝接触部)
33b,330b〜333b 側壁(第1の半田鏝接触部,第2の半田鏝接触部)
34 接続片
4 半田鏝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子と半田付けされる半田接続部分を有する接合対象部品と、前記半田接続部分と半田付けされる半田付け部を有する端子とを備えた接合対象部品と端子との接合構造であって、
前記端子は、前記半田付け部に半田が流動可能な領域の互いに異なる平面上に第1の半田鏝接触部と第2の半田鏝接触部とを備え、
両前記半田鏝接触部には、半田付けの際に半田鏝の異なる部分がそれぞれ接触することを特徴とする接合対象部品と端子との接合構造。
【請求項2】
前記第1の半田鏝接触部分には、半田鏝の先端部分の角部が接触し、
前記第2の半田鏝接触部分には、半田鏝の側面部が接触することを特徴とする請求項1に記載の接合対象部品と端子との接合構造。
【請求項3】
前記接合対象部品は、その両端に半田接続部分であるリード線をそれぞれ有し、
前記端子は、半田付けされる前記リード線が配置されるリード線配置部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の接合対象部品と端子との接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−27766(P2010−27766A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185754(P2008−185754)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】