説明

接合構造

【課題】 本願発明の課題は煩雑な表面処理を施すことなく所望の接合強度を得ることが可能な接合構造を提供すること。
【解決手段】 第1アルミ合金要素と、上記第1アルミ合金要素に接合される第2アルミ合金要素と、上記第1アルミ合金要素と第2アルミ合金要素の少なくとも何れか一方の接合部に突起を設けた構成になっているので、煩雑な表面処理を施すことなく所望の接合強度を得ることができると共に、アルミ合金製であるので突起の形成も容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接合構造に係り、特に、アルミ合金要素同士を接合する構造において、より強固な接合状態を得ることができるように工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
アルミ合金要素を接合する場合には、その接合部の表面にいわゆる「ショットブラスト処理」が施されており、それによって、摩擦係数を高めてより強固な接合状態を得ようとするものである。
【0003】
上記「ショットブラスト処理」を開示するものとしては、例えば、特許文献1、特許文献2等がある。
【0004】
【特許文献1】特開2001−262699号公報
【特許文献2】特開2002−155910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の構成によると次のような問題があった。
まず、ショットブラスト処理を施す作業が面倒であるという問題があった。
又、接合強度に関してもそれをさらに高めることが要求されていた。
【0006】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、煩雑な表面処理を施すことなく所望の接合強度を得ることが可能な接合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するべく本願発明の請求項1による接合構造は、第1アルミ合金要素と、上記第1アルミ合金要素に接合される第2アルミ合金要素と、上記第1アルミ合金要素と第2アルミ合金要素の少なくとも何れか一方の接合部に突起を設けたことを特徴とするものである。
又、請求項2による接合構造は、請求項1記載の接合構造において、上記第1アルミ合金要素と第2アルミ合金要素の何れか一方の接合部に突起を設け何れか他方の接合部を平坦面とし、上記突起を設けた何れか一方のアルミ合金要素の材料強度を何れか他方のアルミ合金要素の材料強度より高くしたことを特徴とするものである。
又、請求項3による接合構造は、請求項2記載の接合構造において、上記突起は軸力に抗する方向に延長・形成されていることを特徴とするものである。
又、請求項4による接合構造は、請求項2記載の接合構造において、上記突起は軸力に直交する方向の剪断力に抗する方向に延長・形成されていることを特徴とするものである。
又、請求項5による接合構造は、請求項1記載の接合構造において、上記第1アルミ合金要素と第2アルミ合金要素の両方の接合部に突起を設け、上記両方のアルミ合金要素の材料強度を同じにしたことを特徴とするものである。
又、請求項6による接合構造は、請求項5記載の接合構造において、上記突起は軸力に抗する方向に延長・形成されていることを特徴とするものである。
又、請求項7による接合構造は、請求項5記載の接合構造において、上記突起は軸力に直交する方向の剪断力に抗する方向に延長・形成されていることを特徴とするものである。
又、請求項8による接合構造は、請求項5記載の接合構造において、何れか一方のアルミ合金要素に設けられた突起は軸力に抗する方向に延長・形成されていて、何れか他方のアルミ合金要素に設けられた突起は軸力に直交する方向の剪断力に抗する方向に延長・形成されていることを特徴とするものである。
又、請求項9による接合構造は、請求項1〜請求項8の何れかに記載の接合構造において、上記第1アルミ合金要素と第2アルミ合金要素は高力ボルトによって接合されるものであることを特徴とするものである。
又、請求項10による接合構造は、請求項1〜請求項8の何れかに記載の接合構造において、上記第1アルミ合金要素と上記第2アルミ合金要素は建築物の柱や梁であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
以上述べたように本願発明の請求項1による接合構造は、第1アルミ合金要素と、上記第1アルミ合金要素に接合される第2アルミ合金要素と、上記第1アルミ合金要素と第2アルミ合金要素の少なくとも何れか一方の接合部に突起を設けた構成になっているので、従来のような煩雑な表面処理を施すことなく所望の接合強度を得ることができるものである。又、アルミ合金製であるので、突起の形成も容易である。
又、上記第1アルミ合金要素と第2アルミ合金要素の何れか一方の接合部に突起を設け何れか他方の接合部を平坦面とし、上記突起を設けた何れか一方のアルミ合金要素の材料強度を何れか他方のアルミ合金要素の材料強度より高くした場合には、上記作用・効果を確実に得ることができる。
又、上記突起を軸力に抗する方向に延長・形成した場合は、特に、軸力に対して有効に機能することになる。
又、上記突起を軸力に直交する方向の剪断力に抗する方向に延長・形成した場合には、特に、剪断力に対して有効に機能することになる。
又、上記第1アルミ合金要素と第2アルミ合金要素の両方の接合部に突起を設け、上記両方のアルミ合金要素の材料強度を同じにした場合にも、上記作用・効果を確実に得ることができる。
又、上記突起を軸力に抗する方向に延長・形成した場合は、特に、軸力に対して有効に機能することになる。
又、上記突起を軸力に直交する方向の剪断力に抗する方向に延長・形成した場合には、特に、剪断力に対して有効に機能することになる。
又、何れか一方のアルミ合金要素に設けられた突起は軸力に抗する方向に延長・形成されていて、何れか他方のアルミ合金要素に設けられた突起は軸力に直交する方向の剪断力に抗する方向に延長・形成されている場合には、特に、軸力と剪断力の両方に対して有効に機能することになる。
又、上記第1アルミ合金要素と第2アルミ合金要素を高力ボルトによって接合されるものとした場合には、ボルトによる接合力と突起による接合力の相乗効果により高い接合強度を得ることができる。
又、上記第1アルミ合金要素と上記第2アルミ合金要素は建築物の柱や梁である場合には、柱や梁の接合に際して強固な接合構造を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図1及び図2を参照して本発明の第1の実施の形態を説明する。まず、第1アルミ合金要素1と第2アルミ合金要素3がある。これら第1アルミ合金要素1と第2アルミ合金要素3は共にアルミ合金製(Al−Mg−Si系合金等)製である。上記第1アルミ合金要素1の接合面には山形突起5が複数列にわたって突出・形成されている。これら複数列の山形突起5は、図1(b)に示すように、軸力に対して抗することができるような方向、すなわち、軸力に直交する方向に延長・形成されている。
【0010】
上記第1アルミ合金要素1の材料強度は上記第2アルミ合金要素3の材料強度に比べて高く設定されている。
【0011】
又、図1(b)に示すように、上記第1アルミ合金要素1と第2アルミ合金要素3とを夫々の接合面を合わせるようにして押圧・密着させる。それによって、上記第1アルミ合金要素1側の複数列の突起5が第2アルミ合金要素3側の接合面に食い込むことになる。
後は、第1アルミ合金要素1と第2アルミ合金要素3とを別途用意された固定具(例えば、ボルト或いはリベット等)によって固定する。
【0012】
以上の構成を基にその作用を説明する。
まず、山形突起5を設けることにより噛み込み効果と接触面積の増大効果を得ることができ、それによって、高い摩擦係数を得ることが可能になる。
又、図1(b)に矢印aで示す軸力に対しては、山形突起5の食い込みによって物理的に大きな抵抗として作用することになるので、十分に抗することが可能になる。
又、図1(c)に矢印bで示す曲げに対しても、山形突起5の食い込みによって物理的に大きな抵抗として作用することになるので、十分に抗することが可能になる。
又、図1(c)に矢印cで示す剪断に対しては、接合面全体における接触面積の増大により抗することができる。
【0013】
以上本実施の形態によると次のような効果を奏することができる。
すなわち、山形突起5を設けることにより噛み込み効果と接触面積の増大効果を得ることができ、それによって、高い摩擦係数を得ることが可能になる。そして、図1(b)に矢印aで示す軸力、図1(c)に矢印bで示す曲げ、図1(c)に矢印cで示す剪断に対して有効に抗することができ、安定した接合状態を得ることができる。
又、従来のように、接合面に表面処理を施す必要もないので、接合作業がより簡単なものとなる。
【0014】
尚、突起の形状としては、図2に示すように、山形ではなく横断面形状が四角形の突起7でも良く、さらに、それ以外の形状の突起も想定される。
【0015】
次に、図3を参照して本発明の第2の実施の形態を説明する。この第2の実施の形態の場合には、第1アルミ合金要素1の山形突起5を、軸力に対して直交する方向に作用する剪断力に効果的に抗することができるように、軸力の方向に平行な方向に延長・形成したものである。
その他の構成は前記第1の実施の形態の場合と同様であり、同一部分には同一符号を付して示しその説明は省略する。
【0016】
したがって、前記第1の実施の形態の場合と同様の効果を奏することができると共に、山形突起5が軸力の方向に平行な方向に延長・形成されているので、軸力に直交する方向に作用する剪断力に対して有効に機能することになる。
【0017】
次に、図4を参照して本発明の第3の実施の形態を説明する。この第3の実施の形態の場合には、前記第1の実施の形態の構成において、第2アルミ合金要素3側にも山形突起5を突出・形成したものである。そして、第1アルミ合金要素1側の山形突起5と第2アルミ合金要素3の山形突起5とを噛合させるようにして接合したものである。又、この場合には上記第1アルミ合金要素1の材料強度は上記第2アルミ合金要素3の材料強度と同じに設定されている。
尚、その他の構成は前記第1の実施の形態の場合と同様であり、同一部分には同一符号を付して示しその説明は省略する。
【0018】
したがって、前記第1の実施の形態の場合と同様の効果を奏することができる。
【0019】
次に、図5を参照して本発明の第4の実施の形態を説明する。この第4の実施の形態の場合には、前記第2の実施の形態の構成において、第2アルミ合金要素3側にも山形突起5を突出・形成したものである。そして、第1アルミ合金要素1側の山形突起5と第2アルミ合金要素3の山形突起5とを噛合させるようにして接合したものである。又、この場合には上記第1アルミ合金要素1の材料強度は上記第2アルミ合金要素3の材料強度と同じに設定されている。
尚、その他の構成は前記第2の実施の形態の場合と同様であり、同一部分には同一符号を付して示しその説明は省略する。
【0020】
したがって、前記第2の実施の形態の場合と同様の効果を奏することができる。
【0021】
次に、図6を参照して本発明の第5の実施の形態を説明する。この第5の実施の形態の場合には、前記第1の実施の形態の構成において、第2アルミ合金要素3側に、第1アルミ合金要素1側の山形突起5に対して直交する方向に延長・形成されたも山形突起5を突出・形成したものである。そして、第1アルミ合金要素1側の山形突起5と第2アルミ合金要素3の山形突起5とを押圧・噛み込みさせるようにして接合したものである。又、この場合には上記第1アルミ合金要素1の材料強度は上記第2アルミ合金要素3の材料強度と同じに設定されている。
尚、その他の構成は前記第1の実施の形態の場合と同様であり、同一部分には同一符号を付して示しその説明は省略する。
【0022】
したがって、前記第1の実施の形態の場合と同様の効果を奏することができる。
【0023】
次に、図7を参照して本発明の第6の実施の形態を説明する。図7(a)に示すように、被接合アルミ合金要素21、23があり、これら両被接合アルミ合金要素21、23は隙間を25を存した状態で突き合わされている。これら両被接合アルミ合金要素21、23上には接合用アルミ合金要素27が設置されている。上記接合用アルミ合金要素27の接合面には、図7(b)に示すように、複数本の山形突起29が軸力に抗する方向に沿って延長・形成されている。又、上記接合用アルミ合金要素27の材料強度は被接合アルミ合金要素21、23の材料強度より高く設定されている。
【0024】
そして、図7(a)に示すように、上記接合用アルミ合金要素27と被接合アルミ合金要素21、23とを押し付けて山形突起29を食い込ませると共に図示しないボルトによって固定する。
よって、前記各実施の形態の場合と同様の効果を奏することができる。
【0025】
次に、図8を参照して本発明の第7の実施の形態を説明する。まず、図8(a)は建築物の柱31と梁33との接合に本願発明を適用する例を示すものである。又、図8(b)は梁33同士の接合に本願発明を適用する例を示すものである。何れの場合も既に説明したような効果を奏することができるものである。
【0026】
尚、本発明は前記第1〜第7の実施の形態に限定されるものではない。
まず、適用する接合部はこれを特に限定するものではない。
又、前記各実施の形態では、突起として、山形突起、断面が四角形の突起を例示しているが、それに限定されるものではなく、様々な形状の突起が想定される。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は接合構造に係り、特に、アルミ合金要素同士を接合する構造において、より強固な接合状態を得ることができるように工夫したものに関し、例えば、建築物の柱や梁の接合部に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す図で、図1(a)は接合構造の分解正面図、図1(b)は接合構造の正面図、図1(c)は接合構造の平面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す図で、第1アルミ合金要素の正面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態を示す図で、図3(a)は接合構造の分解正面図、図3(b)は接合構造の正面図、図3(c)は接合構造の平面図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態を示す図で、図4(a)は接合構造の分解正面図、図4(b)は接合構造の正面図、図4(c)は接合構造の平面図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態を示す図で、図5(a)は接合構造の分解正面図、図5(b)は接合構造の正面図、図5(c)は接合構造の平面図である。
【図6】本発明の第5の実施の形態を示す図で、図6(a)は接合構造の分解正面図、図6(b)は接合構造の正面図、図6(c)は接合構造の平面図である。
【図7】本発明の第6の実施の形態を示す図で、図7(a)は接合構造の正面図、図7(b)は接合用アルミ合金要素の斜視図である。
【図8】本発明の第7の実施の形態を示す図で、図8(a)は接合構造の正面図、図8(b)は接合構造の正面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 第1アルミ合金要素
3 第2アルミ合金要素
5 山形突起
7 突起
21 被接合アルミ合金要素
23 被接合アルミ合金要素
27 接合用アルミ合金要素
29 山形突起








































【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1アルミ合金要素と、
上記第1アルミ合金要素に接合される第2アルミ合金要素と、
上記第1アルミ合金要素と第2アルミ合金要素の少なくとも何れか一方の接合部に突起を設けたことを特徴とする接合構造。
【請求項2】
請求項1記載の接合構造において、
上記第1アルミ合金要素と第2アルミ合金要素の何れか一方の接合部に突起を設け何れか他方の接合部を平坦面とし、
上記突起を設けた何れか一方のアルミ合金要素の材料強度を何れか他方のアルミ合金要素の材料強度より高くしたことを特徴とする接合構造。
【請求項3】
請求項2記載の接合構造において、
上記突起は軸力に抗する方向に延長・形成されていることを特徴とする接合構造。
【請求項4】
請求項2記載の接合構造において、
上記突起は軸力に直交する方向の剪断力に抗する方向に延長・形成されていることを特徴とする接合構造。
【請求項5】
請求項1記載の接合構造において、
上記第1アルミ合金要素と第2アルミ合金要素の両方の接合部に突起を設け、
上記両方のアルミ合金要素の材料強度を同じにしたことを特徴とする接合構造。
【請求項6】
請求項5記載の接合構造において、
上記突起は軸力に抗する方向に延長・形成されていることを特徴とする接合構造。
【請求項7】
請求項5記載の接合構造において、
上記突起は軸力に直交する方向の剪断力に抗する方向に延長・形成されていることを特徴とする接合構造。
【請求項8】
請求項5記載の接合構造において、
何れか一方のアルミ合金要素に設けられた突起は軸力に抗する方向に延長・形成されていて、何れか他方のアルミ合金要素に設けられた突起は軸力に直交する方向の剪断力に抗する方向に延長・形成されていることを特徴とする接合構造。
【請求項9】
請求項1〜請求項8の何れかに記載の接合構造において、
上記第1アルミ合金要素と第2アルミ合金要素は高力ボルトによって接合されるものであることを特徴とする構造。
【請求項10】
請求項1〜請求項8の何れかに記載の接合構造において、
上記第1アルミ合金要素と上記第2アルミ合金要素は建築物の柱や梁であることを特徴とする接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−266300(P2006−266300A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−81597(P2005−81597)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(595034204)SUS株式会社 (40)
【出願人】(505090676)株式会社飯島建築事務所 (9)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】