説明

接着剤組成物及び加工方法

【課題】ハンダリフロー等における高温環境下でも剥離を生じることなく高い接着力を維持できる一方、不要になったときには被着体に糊残りすることなく容易に剥がすことができる接着剤組成物を提供する。
【解決手段】エポキシ(メタ)アクリルモノマー100重量部に対して、アクリルアミド基を有する(メタ)アクリルモノマー10〜40重量部、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリルモノマー40〜70重量部、複数の重合性官能基を有する架橋性(メタ)アクリルモノマー3〜12重量部を含有する(メタ)アクリルモノマー混合物と重合開始剤とを含有する接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンダリフロー等における高温環境下でも剥離を生じることなく高い接着力を維持できる一方、不要になったときには被着体に糊残りすることなく容易に剥がすことができる接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤に求められる性能はその用途により様々であるが、用途によっては、必要な間だけ強固に被着体に接着して固定できる一方で、使用後には容易に剥がせることが要求されることがある。
例えば、電子材料の製造方法においては、SUS等の金属板、ガラス板、シリコンウエハ等の支持板上に、接着剤を用いて電子部品や配線を固定し、アルカリエッチングやメッキ等の加工を加えた後、200℃以上の温度をかけてハンダを溶融して導電接続を行うハンダリフロー工程を行う。これらの一連の工程においては、電子部品や配線がずれないように高い接着強度が求められる。一方、一連の工程が完了した後には、糊残りすることなく支持板から電子材料を剥離することが求められる。
【0003】
高接着易剥離性の接着剤としては、例えば特許文献1には、接着剤中に熱膨張性マイクロカプセル等の発泡剤を配合した接着剤が開示されている。このような接着剤を加熱すると、発泡剤により接着剤の全体が発泡して、被着体との接着面積が低減することから、容易に剥離することができる。しかしながら、このような発泡型の易剥離性接着剤では、ハンダリフロー工程における加熱の際に発泡して、剥離してしまうという問題があった。
【0004】
特許文献2には、硬化型の接着剤中にアゾ化合物、アジド化合物等の気体発生剤を配合した接着剤が開示されている。このような接着剤に紫外線を照射したり加熱したりすると、接着剤が硬化するとともに、気体発生剤から発生した気体が被着体との接着面に放出され、接着面の少なくとも一部を剥がすことから、容易に剥離することができる。しかしながら、特許文献2に記載された接着剤も、ハンダリフロー工程における加熱の際に気体発生剤から気体が発生してしまい、剥離してしまうという問題があった。
【0005】
更に、特許文献3には、N,N−ジエチルアクリルアミドとN,N−ジエチルアクリルアミドの重合体と重合開始剤とを含有する樹脂組成物等が記載されており、該樹脂組成物は、接着剤として用いた場合に高接着強度発揮し、かつ、水中で容易に剥離することができることから仮固定方法に好適であることが記載されている。しかしながら、特許文献3に記載された樹脂組成物も耐熱性が低く、高温プロセスを経る加工の際に用いると接着剤が変質してしまったり、剥離後に被着体に糊残りしてしまったりするという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−131507号公報
【特許文献2】特開2003−231867号公報
【特許文献3】国際公開第2007/148506号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ハンダリフロー等における高温環境下でも剥離を生じることなく高い接着力を維持できる一方、不要になったときには被着体に糊残りすることなく容易に剥がすことができる接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、エポキシ(メタ)アクリルモノマー100重量部に対して、アクリルアミド基を有する(メタ)アクリルモノマー10〜40重量部、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリルモノマー40〜70重量部、複数の重合性官能基を有する架橋性(メタ)アクリルモノマー3〜12重量部を含有する(メタ)アクリルモノマー混合物と重合開始剤とを含有する接着剤組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者は、鋭意検討の結果、特定種類の(メタ)アクリルモノマーを特定の比で混合した(メタ)アクリルモノマー混合物と重合開始剤とを含有する接着剤組成物は、ハンダリフロー等における高温環境下でも剥離を生じることなく高い接着力を発揮できる一方、温水中に浸漬するだけで糊残りすることなく容易に剥離することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の接着剤組成物は、接着成分として(メタ)アクリルモノマー混合物を含有する。
上記(メタ)アクリルモノマー混合物は、エポキシ(メタ)アクリルモノマー、アクリルアミド基を有する(メタ)アクリルモノマー、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリルモノマー、及び、複数の重合性官能基を有する架橋性(メタ)アクリルモノマーを含有する。
【0011】
上記エポキシ(メタ)アクリルモノマーとは、エポキシ化合物を(メタ)アクリル酸で変性したモノマーである。このようなエポキシ(メタ)アクリルモノマーは、構造中にヒドロキシル基を有することから、これを含有する本発明の接着剤組成物は、ガラス基板等に対する高い接着性を発揮することができる。
【0012】
上記エポキシ(メタ)アクリルモノマーの原料となるエポキシ樹脂は、例えば、ノボラック型としてはフェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビフェニルノボラック型、トリスフェノールノボラック型、ジシクロペンタジエンノボラック型等が挙げられ、また、ビスフェノール型としてはビスフェノールA型、ビスフェノールF型、2,2’−ジアリルビスフェノールA型、ビスフェノールS型、水添ビスフェノール型、ポリオキシプロピレンビスフェノールA型等が挙げられる。なかでも、ビスフェノールA型等のエポキシ樹脂を(メタ)アクリル酸で変性したエポキシ(メタ)アクリルモノマーは、二つの(メタ)アクリル基を有し、かつ、該二つの(メタ)アクリル基間が芳香族炭化水素基や脂肪族炭化水素基等により隔てられていることから、これを含む接着剤組成物を硬化したときに硬化物の架橋点間距離が広くなり、柔軟性を維持しつつ架橋度を上げることができることから、より高い耐熱性を発揮することができる。
上記エポキシ(メタ)アクリルモノマーの市販品は、例えば、EBECRYL3701、EBECRYL3708(いずれもダイセルサイテック社製)等が挙げられる。
【0013】
上記アクリルアミド基を有する(メタ)アクリルモノマーは、アクリルアミド基により水素結合を形成できることから、これを含有する接着剤組成物を硬化したときに硬化物の凝集力を向上させることができる。また、これを含有する本発明の接着剤組成物は、ガラス基板等に対する高い接着性を発揮することができる。更に、アクリルアミド基が親水性であることにより、これを含有する本発明の接着剤組成物を用いた接着したときに、温水に浸漬することで硬化物が膨潤し、容易に剥離することができる。
【0014】
上記アクリルアミド基を有する(メタ)アクリルモノマーは、例えば、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド等が挙げられる。なかでも、ヒドロキシエチルアクリルアミドは側鎖末端にヒドロキシル基を有していることから、ガラス基板等の極性表面に対する高い接着力を発揮できることから好ましい。
上記アクリルアミド基を有する(メタ)アクリルモノマーの市販品は、例えば、HEAA(ヒドロキシエチルアクリルアミド、興人社製)、DMAA(ジメチルアクリルアミド、興人社製)、DEAA(ジエチルアクリルアミド、興人社製)等が挙げられる。
【0015】
上記(メタ)アクリルモノマー混合物において、上記エポキシ(メタ)アクリルモノマー100重量部に対する上記アクリルアミド基を有する(メタ)アクリルモノマーの配合量の下限は10重量部、上限は40重量部である。上記アクリルアミド基を有する(メタ)アクリルモノマーの配合量が10重量部未満であると、得られる接着剤組成物の凝集力が弱く、高温プロセスにおいて被着体の固定が困難となり、40重量部を超えると、高温プロセスで変色や焦げ付きが生じ、剥離時に糊残りする。上記アクリルアミド基を有する(メタ)アクリルモノマーの配合量の好ましい下限は15重量部、好ましい上限は30重量部である。
【0016】
上記ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーは、ヒドロキシル基を有することにより、これを含有する本発明の接着剤組成物のガラス基板等に対する接着性を向上させることができる。また、ヒドロキシル基が親水性であることにより、これを含有する本発明の接着剤組成物を用いた接着したときに、温水に浸漬することで硬化物が膨潤し、容易に剥離することができる。
【0017】
上記ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーは、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等が挙げられる。
上記ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーの市販品は、例えば、HEA(2−ヒドロキシエチルアクリレート、BASF社製)、HPA(2−ヒドロキシプロピルアクリレート、BASF社製)、4HBA(4−ヒドロキシブチルアクリレート、日本化成社製)等が挙げられる。
【0018】
上記(メタ)アクリルモノマー混合物において、上記エポキシ(メタ)アクリルモノマー100重量部に対する上記ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーの配合量の下限は40重量部、上限は70重量部である。上記ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーの配合量が40重量部未満であると、剥離しようと温水に浸漬しても接着力が充分に低減せず剥離が困難となり、70重量部を超えると、得られる接着剤組成物の接着力が低くなる。上記ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーの配合量の好ましい下限は50重量部、好ましい上限は65重量部である。
【0019】
上記複数の重合性官能基を有する架橋性(メタ)アクリルモノマーは、これを含有する本発明の接着剤組成物を硬化したときに、硬化物を三次元構造とすることができ、温水に浸漬したときの膨潤性をより高くして剥離を容易にすることができる。
【0020】
上記複数の重合性官能基を有する架橋性(メタ)アクリルモノマーは、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
上記複数の重合性官能基を有する架橋性(メタ)アクリルモノマーの市販品は、例えば、ライトアクリレートTMP−A(トリメチロールプロパントリアクリレート、興人社製)、ライトアクリレートDPE−6A(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、興人社製)等が挙げられる。
【0021】
上記(メタ)アクリルモノマー混合物において、上記エポキシ(メタ)アクリルモノマー100重量部に対する上記複数の重合性官能基を有する架橋性(メタ)アクリルモノマーの配合量の下限は3重量部、上限は12重量部である。上記複数の重合性官能基を有する架橋性(メタ)アクリルモノマーの配合量が3重量部未満であると、充分な剥離性向上効果が得られず、12重量部を超えると、架橋密度が高くなりすぎ温水に浸漬した場合に充分な膨潤度が得られず、剥離力を低減できない。上記複数の重合性官能基を有する架橋性(メタ)アクリルモノマーの配合量の好ましい下限は5重量部、好ましい上限は10重量部である。
【0022】
上記(メタ)アクリルモノマー混合物は、本発明の効果を阻害しない範囲で必要に応じて、上記以外の他の(メタ)アクリルモノマーを含有してもよい。
上記他の(メタ)アクリルモノマーは特に限定されず、例えば、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ウレタンアクリレート、ウレタンジアクリレート、シリコンアクリレート、シリコンジアクリレート等が挙げられる。
【0023】
本発明の接着剤組成物は、重合開始剤を含有する。上記重合開始剤は、光や熱による刺激により上記(メタ)アクリルモノマー混合物を硬化させ、接着力を発現させる役割を有する。なかでも、上記重合開始剤は、光重合開始剤又はレドックス重合開始剤が好適である。
【0024】
上記光重合開始剤の市販品は、例えば、IRGACURE907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、BASF社製)、やIRGACURE369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、BASF社製)等が挙げられる。
上記レドックス重合開始剤は、例えば、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイドと、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン等の3級アミンとの組み合わせ等が挙げられる。
【0025】
本発明の接着剤組成物における上記重合開始剤の配合量は特に限定されないが、上記(メタ)アクリルモノマー混合物100重量部に対して、好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は5重量部である。上記重合開始剤の配合量が0.1重量部未満であると、光等を照射しても充分に硬化せず充分な接着力が発現しないことがあり、5重量部を超えて配合しても、特に硬化性の向上はない。
【0026】
本発明の接着剤組成物は、更に、(メタ)アクリルポリマーを含有することが好ましい。このような(メタ)アクリルポリマーを含有することにより、本発明の接着剤組成物の凝集力を高めることができる。また、本発明の接着剤組成物を硬化させた際に、上記(メタ)アクリルポリマーが硬化物の架橋鎖に絡まることから、硬化物に柔軟性を付与することができる。
【0027】
上記(メタ)アクリルポリマーの重量平均分子量は特に限定されないが、好ましい下限は20000、好ましい上限は100000である。上記(メタ)アクリルポリマーの重量平均分子量が20000未満であると、硬化物の柔軟性向上効果が得られないことがあり、100000を超えると、上記(メタ)アクリルモノマー混合物との相溶性が低下することがある。
【0028】
上記(メタ)アクリルポリマーの市販品は、例えば、EBECRYL767(アクリルアクリレート、ダイセルサイテック社製)、UN5500(ウレタンアクリレート、根上工業社製)等が挙げられる。
【0029】
本発明の接着剤組成物における上記(メタ)アクリルポリマーの配合量は特に限定されないが、上記(メタ)アクリルモノマー混合物100重量部に対して、好ましい下限は50重量部、好ましい上限は100重量部である。上記(メタ)アクリルポリマーの配合量が50重量部未満であると、硬化物の柔軟性向上効果が得られないことがあり、100重量部を超えると、得られる接着剤組成物の接着性が低下することがある。
【0030】
本発明の接着剤組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で必要に応じて、無機フィラーや有機フィラー、粒子径が均一な微粒子等の従来公知の添加剤を含有してもよい。
【0031】
本発明の接着剤組成物を製造する方法は特に限定されず、例えば、上記(メタ)アクリルモノマー混合物に配合される各(メタ)アクリルモノマー、重合開始剤及びその他の成分を従来公知の方法により混練する方法等が挙げられる。
【0032】
本発明の接着剤組成物は、上記(メタ)アクリルモノマー混合物と重合開始剤とを含有することから、光を照射する等により(メタ)アクリルモノマー混合物が重合、硬化して高い接着力を発揮することができる。本発明の接着剤組成物の硬化物は、ハンダリフロー等における高温環境下(200〜300℃)でも剥離を生じることなく高い接着力を維持でき、温水中に浸漬しても剥離することのできない分解物が被着体に付着してしまう等の問題を防止することができる。そして、一連の工程後に不要になったときには、温水(25〜90℃、好ましくは60〜85℃)に浸漬することにより、被着体を損傷することなく容易に剥離することができる。
【0033】
本発明の接着性組成物は、例えば、電子材料の製造方法において、SUS等の金属板、ガラス板、シリコンウエハ等の支持板(仮固定部材)上に、本発明の接着剤組成物を用いて電子部品や配線(被加工部材)を固定し、アルカリエッチングやメッキ等の加工を加え、200℃以上の温度をかけてハンダを溶融して導電接続を行うハンダリフロー工程を行った後、温水に浸漬して加工済の電子部品等を回収するのに好適に用いることができる。本発明の接着性組成物を用いれば、加工中に電子部品等がずれてしまうこともなく、回収した電子部品等に糊残り等も発生しない。
本発明の接着剤組成物を用いて仮固定部材と被加工部品とを固定する工程と、仮固定部材に固定した被加工部品を加工する工程と、加工後に温水に浸漬して仮固定部材から加工済みの被加工部品を剥離する工程とを有する加工方法もまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、ハンダリフロー等における高温環境下でも剥離を生じることなく高い接着力を維持できる一方、不要になったときには被着体に糊残りすることなく容易に剥がすことができる接着剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
エポキシ(メタ)アクリルモノマーとしてEBECRYL3708(ダイセルサイテック社製)100重量部、アクリルアミド基を有する(メタ)アクリルモノマーとしてHEAA(ヒドロキシエチルアクリルアミド、興人社製)10重量部、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーとして4HBA(4−ヒドロキシブチルアクリレート、興人社製)70重量部、複数の重合性官能基を有する架橋性(メタ)アクリルモノマーとしてDPE−6A(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、興人社製)10重量部、重量平均分子量が20000〜100000である(メタ)アクリルポリマーとしてEBECRYL767(重量平均分子量21000、ダイセルサイテック社製)100重量部、及び、重合開始剤としてイルガキュア907(BASF社製)3重量部を混合して、接着剤組成物を調製した。
【0037】
(実施例2〜4、比較例1〜3)
配合量を表1に示した通りにした以外は実施例1と同様にして、接着剤組成物を調製した。
【0038】
(評価)
実施例及び比較例で調製した接着剤組成物について、以下の評価を行った。
結果を表1に示した。
【0039】
(1)接着力の評価
長さ76mm、巾26mm、厚み1.3mmのスライドグラスに、0.001gの接着剤組成物を塗布し、高圧水銀灯にて積算光量5000mJ/cm(365nm)の線量を照射した。照射後、同じサイズのスライドグラスを十字に重ね合わせ、評価用サンプル(加熱前)を得た。このときの接着面積は15mmであった。
得られた評価用サンプル(加熱前)を、リフロー炉(日本アントム社製、UNI5016F)に通過させて高温に曝し、評価用サンプル(加熱後)を得た。なお、評価用サンプルに熱電対を装着しリフロー炉での温度履歴を確認したところ、250〜260℃が3分、260〜280℃が2分、280〜283℃が1分であった。
【0040】
評価用サンプル(加熱前)及び評価用サンプル(加熱後)の接着力をJIS6850に準拠した方法により測定した。測定は、万能試験機にて、温度23℃、湿度55%、引っ張り速度10mm/分の条件で行った。
なお、比較例3では、加熱により剥離してしまい評価用サンプル(加熱後)を得ることはできなかった。
【0041】
(2)剥離性の評価
上記リフロー炉投入後の評価用サンプル(加熱後)を、85℃の温水が入ったビーカーに投入した。30分間浸せきすることにより、スライドグラス同士を剥離した後、スライドグラス上に残った接着剤組成物の糊残り状態を目視にて観察した。糊残り面積が接合面積全体の5%以下であった場合を「◎」、5%を超えて15%未満であった場合を「○」、15%以上であった場合を「×」と評価した。
【0042】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、ハンダリフロー等における高温環境下でも剥離を生じることなく高い接着力を維持できる一方、不要になったときには被着体に糊残りすることなく容易に剥がすことができる接着剤組成物を提供することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ(メタ)アクリルモノマー100重量部に対して、アクリルアミド基を有する(メタ)アクリルモノマー10〜40重量部、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリルモノマー40〜70重量部、複数の重合性官能基を有する架橋性(メタ)アクリルモノマー3〜12重量部を含有する(メタ)アクリルモノマー混合物と重合開始剤とを含有することを特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
重合開始剤は、光重合開始剤又はレドックス重合開始剤であることを特徴とする請求項1記載の接着剤組成物。
【請求項3】
重量平均分子量が20000〜100000である(メタ)アクリルポリマーを含有することを特徴とする請求項1又は2記載の接着剤組成物。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の接着剤組成物を用いて仮固定部材と被加工部品とを固定する工程と、仮固定部材に固定した被加工部品を加工する工程と、加工後に温水に浸漬して仮固定部材から加工済みの被加工部品を剥離する工程とを有することを特徴とする加工方法。



【公開番号】特開2012−241069(P2012−241069A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110641(P2011−110641)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】