説明

接着性樹脂組成物および半導体装置

【課題】
電子部材の銅を含有する面の接着において、高い接着性を有する接着性樹脂組成物を提供すること。また、かかる接着性樹脂組成物を用いて接着された高信頼性かつ高生産性の半導体装置を提供すること。
【解決手段】
電子部材の銅を含有する面の接着に用いられる接着性樹脂組成物であって、ラジカル重合性二重結合を有する化合物(A)、ラジカル開始剤(B)、グアニジン誘導体及び/又はグアナミン誘導体(C)、充填剤(D)を含むことを特徴とする接着性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着性樹脂組成物および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC等の半導体素子を金属フレームや有機基板に接着する方法としては、熱硬化性接着剤組成物を使用する方法が一般的なものとなっている。中でもアクリル系の熱硬化性接着剤組成物からなる樹脂ペーストを、電子部材の銅を含有する面との接着に用いる場合、硬化時にブリードアウトと呼ばれる樹脂成分のにじみ出し現象が生じることがあり、半導体装置の信頼性および半導体装置の生産性を低下させる原因となっている。このブリードアウトを防止するためには、燐原子を含む有機チタン化合物などを配合したペーストが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
0001
【特許文献1】特開2004―168933
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、電子部材の銅を含有する面の接着において、高い接着性を有する接着性樹脂組成物を提供するものである。また、かかる接着性樹脂組成物を用いて接着された高信頼性かつ高生産性の半導体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、
電子部材の銅を含有する面の接着に用いられる接着性樹脂組成物であって、ラジカル重合性二重結合を有する化合物(A)、ラジカル開始剤(B)、グアニジン誘導体及び/又はグアナミン誘導体(C)、充填剤(D)を含むことを特徴とする接着性樹脂組成物、
が提供される。
また、本発明によれば、
上記接着性樹脂組成物をダイアタッチ材料または放熱部材接着用材料として用いて製作されることを特徴とする半導体装置、
が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、接着性樹脂組成物を銅を含有する面との接着に用いる場合にブリードアウトの発生を低減することができ、接着性に優れる接着性樹脂組成物を提供するものである。また、本発明は、上記接着性樹脂組成物を用いた高信頼性かつ高生産性の半導体装置を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る接着性樹脂組成物および半導体装置について詳細に説明する。
【0009】
本発明の接着性樹脂組成物は、電子部材の銅を含有する面の接着に用いられる接着性樹脂組成物である。銅を含有する面を有する電子部材としては、ウェハー、チップ、銅箔、基板およびリードフレーム等が挙げられる。電子部品の銅を含有する面に、接着性樹脂組成物を塗布し、硬化した場合、ブリードアウトと呼ばれる樹脂成分の基板へのにじみ出し現象が生じることがあり、この現象により、半導体装置の信頼性および生産性が低下する場合があるが、本発明の接着性樹脂組成物はこの現象を防止するものである。
【0010】
本発明の接着性樹脂組成物は、樹脂(A)、ラジカル開始剤(B)、グアニジン誘導体及び/又はグアナミン誘導体(C)、充填剤(D)を含むものである。
各構成要素について以下に詳細に述べる。
【0011】
本発明に用いられる樹脂(A)は、ラジカル重合性二重結合を有する化合物を含むものである。
本発明に用いられるラジカル二重結合性化合物としては特に制限は無く、(メタ)アクリロイル化合物、ビニル化合物、アリル化合物、マレイミド化合物などの各種のものが用いられる。また、それぞれのラジカル二重結合性化合物を単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0012】
(メタ)アクリロイル化合物は、例えば2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルメチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルメチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルテトラヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルメチルテトラヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルメチルテトラヒドロフタル酸、2−ヒドロキシ1,3−ジ(メタ)アクリロイロキシプロパン、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4―シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、エチル−α−(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャルブチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他のアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャルブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジンクモノ(メタ)アクリレート、ジンクジ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフロロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフロロブチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリロイロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N,N'−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N'−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、1,2−ジ(メタ)アクリルアミドエチレングリコール、ジ(メタ)アクリロイロキシメチルトリシクロデカン、2−(メタ)アクリロイロキシエチル、N−(メタ)アクリロイロキシエチルマレイミド、N−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N−(メタ)アクリロイロキシエチルフタルイミド及びその重合体や(メタ)アクリル変性ポリブタジエンなどがあるが特に限定しない。
【0013】
また、前記(メタ)アクリロイル化合物は、硬化性、作業性、接着性、信頼性等の点より2種類以上の(メタ)アクリロイル化合物を併用しても構わない。また、前記(メタ)アクリロイル化合物が、1分子に官能基を2つ以上含む多官能の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であっても構わない。具体的には、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどが挙げられる。
【0014】
前記ビニル化合物は、n−ビニル−2−ピロリドン、スチレン誘導体、α−メチルスチレン誘導体などがあるが、特に限定しない。
【0015】
アリル化合物は、アリルエステル化合物であることが好ましく、この様なアリルエステル系化合物としては、例えばジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルトリメリート、ジアリルマレート、アリルメタクリレート、アリルアセトアセタートなどが挙げられる。 このようなアリルエステル系化合物の数平均分子量は、特に限定されないが、500〜10,000が好ましく、特に500〜8,000が好ましい。数平均分子量が前記範囲内であると、硬化収縮を特に小さくすることができ、それによって密着性の低下を防止することができる。
【0016】
前記範囲の数平均分子量を有するアリルエステル系化合物としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、5−ノルボルネン−endo−2,3−ジカルボン酸、1,4−ジシクロジカルボン酸、アジピン酸等のジカルボン酸やそのメチルエステル誘導体と炭素数2〜8であるアルキレンジオールにより合成されたポリエステルの末端にアリルアルコールをエステル化により付加した両末端アリルエステル系化合物等が挙げられる。
【0017】
前記ラジカル重合性二重結合を有する化合物は、特に限定されないが、樹脂(A)中に10〜100重量%含まれることが好ましく、特に30〜85重量%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、260℃の弾性率を向上させる効果に優れる。
【0018】
樹脂(A)中に、エポキシ樹脂を含む場合、0.1〜30重量%以下であることが好ましい。
特に0.1〜10重量%以下が好ましい。含有量が前記範囲であると靭性、低応力性および接着性をより好適なものとすることができるという効果を奏する。
【0019】
本発明に用いられる(B)成分のラジカル開始剤としては、例えばメチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ジ(tert−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(tert−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル―4,4−ジ(tert−ブチルパーオキシ)バレラート、2,2−ジ(4,4−ジ(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン)プロパン、p−メタンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメメチルブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、ジ(2−tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチルー2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジーtert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン、ジイソブチルパーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジ―n−プロピルパーオキシジカルボネート、ジイソプロピルパーオキシジカルボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカルボネート、ジsec−ブチルパーオキシジカルボネート、クミルパーオキシネオデカネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート、tert−ヘキシルネオデカネート、tert−ブチルパーオキシネオヘプタネート、tert−ヘキシルパーオキシピバラート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、2,5−ジメチル−2,5、−ジ(2−ジエチルヘキノイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、tert−ヘキシパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシマレイン酸、tert−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサネート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシモノカーボネート、tert−ヘキシルパーオキシベンゾネート、2,5―ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシアセトネート、tert−パーオキシー3−メチルベンゾネート、tert−ブチルパーオキシベンゾネート、tert−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、3,3',4,4'−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等が挙げられるが、これらを必要に応じて複数使用しても良い。
【0020】
上述した(B)成分のラジカル開始剤は、前記樹脂(A)100重量部に対して0.1〜20重量部含まれることが好ましく、特に0.5〜10重量部が好ましい。含有量が前記の下限値未満であると重合に必要なラジカル活性種の量が十分でないため、完全に硬化せず十分な密着強度が得られない場合があり、含有量が前記上限値を超えると室温でのラジカル活性種の発生量が多くなり反応が進み、液状接着剤の粘度が24時間以内に大きく上昇する場合がある。
【0021】
本発明に用いられる(C)成分のグアニジン誘導体及び/又はグアナミン誘導体は、例えば、ジシアンジアミド、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンジフェニルグアニジン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、アラントイン、グリコールウリル、メラミン、メラミンシアヌレート、アミノグアニジンメチルイソビグアニジン、ジメチルイソビグアニジン、テトラメチルイソビグアニジン、ヘキサメチルイソビグアニジン、ヘプタメチルイソビグアニジン、ビグアニド、ビュレットなどが挙げられるが、これらを必要に応じて複数使用しても良い。
上述した樹脂(A)と(C)成分を組み合わせることにより、銅を含有する接着面において、(C)成分と銅との相互作用により、樹脂(A)成分と銅との濡れ性が変わり、ブリードが抑制できる効果がある。
【0022】
グアニジン誘導体及び/又はグアナミン誘導体としては、下記式(1)であらわされるグアニジン誘導体及び/又はグアナミン誘導体を用いることが好ましい。
【0023】
【化2】

【0024】
特に、ジシアンジアミド及び/又はベンゾグアナミンであることが好ましい。これにより、ブリードが抑制され、かつ硬化性に優れるため、十分な接着強度が得られる。
【0025】
上述した(C)成分のグアニジン誘導体及び/又はグアナミン誘導体は、前記樹脂(A)100重量部に対して0.1〜20重量部含まれることが好ましく、さらに、0.3〜10重量部含まれることが好ましい。(C)成分のグアニジン誘導体及び/又はグアナミン誘導体を前記範囲内とすることにより、ブリードの抑制と接着強度を両立して達成し、半導体装置の信頼性を高いものとすることができる。
【0026】
本発明に用いられる(D)成分の充填剤としては、銀粉、金粉、銅粉、アルミニウム粉、ニッケル粉、パラジウム粉などの金属粉、酸化アルミニウム粉末、窒化アルミニウム粉末、酸化チタン粉末、アルミニウムナイトライド粉末、窒化ホウ素粉末、酸化ケイ素粉末、炭化ケイ素粉末などのセラミック粉末、ポリエチレン粉末、ポリアクリル酸エステル粉末、ポリテトラフルオロエチレン粉末、ポリアミド粉末、ポリウレタン粉末、ポリシロキサン粉末などの高分子粉末などが挙げられるが、これらは単独あるいは2種類以上を併用して用いることもできる。特に導電性、熱伝導性が要求される場合には銀粉を使用することが好ましく、通常電子材料用として市販されている銀粉であれば、還元粉、アトマイズ粉などが入手可能である。
【0027】
前記充填材の平均粒径は、1μm以上30μm以下であることが好ましい。平均粒径を前記範囲の下限値以上とすることにより樹脂組成物の粘度をより好適なものとすることができ、良好な作業性を得ることができる。また平均粒径を前記範囲の上限値以下とすることで、ノズルを使用して樹脂組成物を吐出する場合にもノズル詰まりを起こすことなく、良好な塗布作業性を得ることができる。
【0028】
前記充填材の形状はフレーク状、球状など特に限定されないが、例えば銀粉の場合には保存性や作業性を向上させるためにフレーク状であることが好ましく、一方シリカ粉末などの非金属粉の充填剤の場合には、チップスタック時にチップ表面を傷つけないために球状であることが好ましい。さらに、充填材の配合量は目的に応じて適宜調整することが可能であるが、接着性樹脂組成物中に30重量%以上、95重量%以下であることが好ましい。これにより、接着性樹脂組成物の塗布時の作業性と、接着性樹脂組成物の硬化後の良好な導電性を両立することが出来る。なお、より好ましい配合量については、用いる充填材の種類によって異なる。例えば銀粉を用いる場合は、接着性樹脂組成物中に65重量%以上、95重量%以下であることが好ましく、シリカを用いる場合には、接着性樹脂組成物中に30重量%以上、70重量%以下であることが好ましい。銀粉を用いる場合には、銀粉の配合量を前記範囲の下限値以上とすることで良好な導電性を得ることができる。また銀粉の配合量を前記範囲の上限値以下とすることにより接着性樹脂組成物の粘度をより好適なものとすることができ、良好な作業性を得ることができる。一方、シリカを用いる場合には、シリカの配合量を前記範囲の下限値以上とすることで良好な機械的強度を有する硬化物を得ることができる。またシリカの配合量を前記範囲の上限値以下とすることにより樹脂組成物の粘度をより好適なものとすることができ、良好な作業性を得ることができる。
【0029】
また、本発明の接着性樹脂組成物は、マレイミド基を有する化合物を含んでもよい。これにより、3次元的網目構造を形成し、十分な接着強度および耐熱性に優れる。
マレイミド基を有する化合物として、例えばマレイミド樹脂が挙げられる。マレイミド樹脂は、1分子内にマレイミド基を1つ以上含む化合物であり、加熱によりマレイミド基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化する樹脂である。例えば、N,N'−(4,4'−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンなどのビスマレイミド樹脂が挙げられる。より好ましいマレイミド樹脂は、ダイマー酸ジアミンと無水マレイン酸の反応により得られる化合物、マレイミド酢酸、マレイミドカプロン酸といったマレイミド化アミノ酸とポリオールの反応により得られる化合物である。マレイミド化アミノ酸は、無水マレイン酸とアミノ酢酸またはアミノカプロン酸とを反応することで得られ、ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリレートポリオールが好ましく、芳香族環を含まないものが特に好ましい。マレイミド基は、アリル基と反応可能であるのでアリルエステル樹脂との併用も好ましい。アリルエステル樹脂としては、脂肪族のものが好ましく、中でも特に好ましいのはシクロヘキサンジアリルエステルと脂肪族ポリオールのエステル交換により得られる化合物である。アリルエステル系化合物の数平均分子量は、特に限定されないが、500〜10,000が好ましく、特に500〜8,000が好ましい。数平均分子量が前記範囲内であると、硬化収縮を特に小さくすることができ、密着性の低下を防止することができる。
【0030】
また、本発明の接着性樹脂組成物は、溶剤を含んでもよい。これにより、半導体装置の製造における作業性が向上する。溶剤としては、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2-メチルー2,4−ペンタンジオール、2-エチルー1,3−ヘキサンジオール、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノイソアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ホロン、イソホロン、N−メチルピロリドンなどがあげられる。溶剤の含有量は、特に限定されないが、接着性樹脂組成物中に0.1〜30重量%含まれることが好ましく、特に1〜10重量%が好ましい。それよりも多いと硬化中に溶剤が揮発することによって硬化物中に気泡が多くなり、十分な弾性率を得ることができないためである。
【0031】
さらに、本発明の接着性樹脂組成物はカップリング剤、消泡剤、界面活性剤などの添加剤を使用することも可能である。本発明の接着性樹脂組成物は、例えば、各成分を予備混合した後3本ロールを用いて混練し、その後真空下脱泡することにより製造することができる。
【0032】
本発明の半導体装置は、上記した接着性樹脂組成物をダイアタッチ材料または放熱部材接着用材料として製作される半導体装置である。
本実施形態における樹脂ペーストを用いて半導体装置10を作製する方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、市販のダイボンダーを用いて、基材2の所定の部位に樹脂ペーストをディスペンス塗布した後、半導体素子3をマウントし、加熱硬化して接着層1を形成する。その後、ワイヤーボンディングして、エポキシ樹脂を用いて封止材層5を形成することによって半導体装置10を作製する。またはフリップチップ接合後アンダーフィル材で封止したフリップチップBGA(Ball Grid Array)などの半導体チップ裏面に樹脂組成物をディスペンスしヒートスプレッダー、リッドなどの放熱部品を搭載し加熱硬化するなどである。
【0033】
本発明の半導体装置は、電子部材の銅を含有する面上に、100μm以下のブリードアウトを有することが好ましい。
ここで、100μm以下のブリードアウトとは、電子部材の銅を有する面上において、接着性樹脂組成物の硬化物の周囲に発生するブリードアウトの幅の最大値が100μm以下であることを指す。ブリードアウトを上述の範囲とすることにより、ダイボンディング強度が向上し、また、その後にワイヤーボンディング工程を有する場合、ワイヤーボンディング工程での不良発生を抑止する効果がある。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定
されるものではない。
【0035】
(実施例1)
ラジカル重合性二重結合を有する化合物(A)としてジアリルエステル化合物(昭和電工(株)製、DA101)、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート(共栄社化学(株)製、ライトエステル1、6HX)を、アルコール性水酸基を有する化合物として1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート(日本化成化学(株)製、CHDMMA)、マレイミド基を有する化合物として、ビスマレイミド化合物(大日本インキ(株)製、MIA−201を、グアニジン誘導体及び/又はグアナミン誘導体(C)としてジシアンジアミドを、カップリング剤としてテトラスルフィド結合を有するカップリング剤(日本ユニカー(株)製、A−1289)、グリシジル基を有するカップリング剤(信越化学工業(株)製、KBM−403E)を、ラジカル重合開始剤(B)として1,1−ジ(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(日本油脂(株)製、パーヘキサCS)を、充填材(D)としては平均粒径8μm、最大粒径30μmのフレーク状銀粉(以下銀粉)を、表1に記載の配合割合で配合し、3本ロールを用いて混練し脱泡することで接着性樹脂組成物を得た。なお、表1に記載の配合割合は重量部である。
【0036】
(実施例2)
実施例1のジシアンジアミドをベンゾグアナミンにした以外は、すべて実施例1と同様にして、接着性樹脂組成物を得た。
【0037】
(実施例3)
実施例1の1,6−ヘキサンジオールジメタクリレートをポリエチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学(株)製、ライトエステル4EG)にし、充填材として銀粉をシリカにした以外はすべて実施例1と同様にして、接着性樹脂組成物を得た。
【0038】
(実施例4)
実施例3のジシアンジアミドをベンゾグアナミンにした以外は、すべて実施例3と同様にして、接着性樹脂組成物を得た。
【0039】
(実施例5)
ラジカル重合性二重結合を有する化合物(A)としてジアリルエステル化合物(昭和電工(株)製、DA101)、を、グアニジン誘導体及び/又はグアナミン誘導体(C)としてジシアンジアミドを、カップリング剤としてテトラスルフィド結合を有するカップリング剤(日本ユニカー(株)製、A−1289)、グリシジル基を有するカップリング剤(信越化学工業(株)製、KBM−403E)を、ラジカル重合開始剤(B)として1,1−ジ(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(日本油脂(株)製、パーヘキサCS)を、充填材(D)として銀粉を用いた以外は、すべて実施例1と同様に実施した。
【0040】
(実施例6)
実施例5のジアリルエステル化合物(昭和電工(株)製、DA101)を1,4ビニル結合の割合が72%のポリブタジエンと無水マレイン酸との反応により得られる無水マレイン酸変性ポリブタジエン(数平均分子量3100、酸価74meqKOH/g、Satomer社製、Ricobond1731)にした以外は、すべて実施例5と同様に実施した。
【0041】
(比較例1)
実施例1で、ジシアンジアミドを使用しない以外は、すべて実施例1と同様に実施した。
【0042】
(比較例2)
実施例4で、ベンゾグアナミンを使用しない以外は、すべて実施例4と同様に実施した。
【0043】
(比較例3)
実施例5で、ジシアンジアミドを使用しない以外は、すべて実施例5と同様に実施した。
【0044】
(比較例4)
実施例6で、ジシアンジアミドを使用しない以外は、すべて実施例6と同様に実施した。
【0045】
(ブリードアウトの測定)
約500μgの接着性樹脂組成物を銅フレーム上に塗布し、シリコンチップをマウントし、25℃で2h放置後、窒素雰囲気下175℃で30分硬化した。硬化後に光学顕微鏡でブリードアウトを観測した。各実施例における結果を表1に示す。
【0046】
(耐リフロー性)
表1に示す樹脂組成物を用いて、下記のリードフレームとシリコンチップを175℃30分間硬化し接着した。さらに、封止材料(スミコンEME−7026、住友ベークライト(株)製)を用い封止し、半導体装置を作製した。この半導体装置を用いて、30℃、相対湿度60%、168時間吸湿処理した後、IRリフロー処理(260℃、10秒、3回リフロー)を行った。IRリフロー処理後の半導体装置を超音波探傷装置(透過型)により剥離の程度を測定した。ダイアタッチ部の剥離面積が10%未満の場合を合格とした。剥離面積の単位は%である。
パッケージ:QFP(14×20×2.0mm)
リードフレーム:銀めっきした銅フレーム
チップサイズ:6×6mm
樹脂組成物の硬化条件:オーブン中175℃、30分
【0047】
【表1】

【0048】
表1に示す通り、実施例1〜6の接着性樹脂組成物を銅フレーム上に塗布すると、ブリードアウトの長さは100μm未満であり、高い接着性および耐リフロー性を有する結果となった。一方、比較例1〜4の接着性樹脂組成物を銅フレーム上に塗布すると、500〜800μmのブリードアウトが確認され、その接着性および耐リフロー性は実施例に比べ劣る結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部材の銅を含有する面の接着に用いられる接着性樹脂組成物であって、樹脂(A)、ラジカル開始剤(B)、グアニジン誘導体及び/又はグアナミン誘導体(C)、充填剤(D)を含み、かつ、前記樹脂(A)はラジカル重合性二重結合を有する化合物を含むことを特徴とする接着性樹脂組成物。
【請求項2】
前記グアニジン誘導体及び/又はグアナミン誘導体(C)は、下記式(1)であらわされる化合物である請求項1に記載の接着性樹脂組成物。
【化1】

(R、R’は、炭素原子数1〜8個、窒素原子0〜2個の有機基、または、水素、ハロゲンであって、R、R’は結合して環構造を形成してもよい。)
【請求項3】
前記ラジカル重合性二重結合を有する化合物(A)が、(メタ)アクリロイル化合物、ビニル化合物、アリル化合物からなる群から選ばれるものである請求項1または2に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の接着性樹脂組成物をダイアタッチ材料または放熱部材接着用材料として用いて製作されることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
電子部材の銅を含有する面上に、前記接着性樹脂組成物の硬化物から100μm以下のブリードアウトを有する請求項5に記載の半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−1853(P2013−1853A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135717(P2011−135717)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】