接続構造、パワーモジュール及びその製造方法
【課題】
基板のパッドに対しリード端子を超音波接続する場合に、十分な接続強度であり、かつパッド破壊を抑えた高信頼な接続技術を提供する。
【解決手段】
金属ベース9及び絶縁膜8上のパッド8上に、パッド8及びリード端子11よりも硬いコーティング層14を形成する。超音波接続時には、超音波ツール13により超音波を印加することによってコーティング層14は破壊され、コーティング層14の両側にあるリード端子11とパッド10とが塑性流動により直接接続される。
基板のパッドに対しリード端子を超音波接続する場合に、十分な接続強度であり、かつパッド破壊を抑えた高信頼な接続技術を提供する。
【解決手段】
金属ベース9及び絶縁膜8上のパッド8上に、パッド8及びリード端子11よりも硬いコーティング層14を形成する。超音波接続時には、超音波ツール13により超音波を印加することによってコーティング層14は破壊され、コーティング層14の両側にあるリード端子11とパッド10とが塑性流動により直接接続される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に対しリード端子を接続する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載モジュールは比較的信頼性要求レベルの低い車室内に搭載されていた。そして、エンジンルーム内等に設置されるユニットに対しワイヤハーネスと呼ばれる配線によって接続され、そのユニットの制御を行っていた。ところが近年、軽量化や低コスト化をねらいとしたワイヤハーネスの省略を目的とし、車室内からエンジンルーム内へ搭載される車載モジュールが増加している。エンジンルーム環境では、最高温度が車室内に比べて高くなるため、発熱部品を多く搭載する車載モジュールでは高放熱化が重要である。また、搭載スペースに制約があるため、モジュールの小型化の要求も高い。
【0003】
中でも電力の変換や制御を行うパワーモジュールでは、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)チップやMOS(Metal-Oxide Semiconductor)チップなどの高発熱部品を数多く搭載する。モジュールの搭載環境温度や半導体の動作保証温度を考慮した場合、パワーモジュールに対し高放熱性が要求される。
【0004】
パワーモジュールの実装においては、部品を搭載する基板として熱抵抗の小さいセラミック基板や金属ベース基板等の高放熱基板が多く用いられている。セラミック基板はセラミック板の両面に導体層を形成する構造である。絶縁層に熱伝導性の良いセラミックを用いることにより放熱性を向上している。また、金属ベース基板はベースとなる金属板上に絶縁層を介して導体層を形成する構造である。絶縁層は熱伝導率が低いが、薄くすることにより熱抵抗を下げ熱伝導率の高いベース金属への放熱経路を確立している。従来は高放熱基板として信頼性の高いセラミック基板を用いることが多かったが、低コストの観点から、近年金属ベース基板を用いたパワーモジュールが多く開発されつつある。パワーモジュールの実装構造の例を図1に示す。
【0005】
このとき、外部端子の接続にはAlワイヤボンディングやリード端子が用いられる。このうち、リード端子は容易に端子幅を大きく端子厚を厚くすることが可能であり、流れる電流が大きいパワーモジュールにおいては有利である。Alワイヤボンディングにて接続する場合には、接続抵抗を下げるために相当数の接続が必要である。また、量産性に対する装置台数の影響が大きく、モジュールの生産台数が増加した場合新たな設備投資が必要となる。
【0006】
ただし、リード端子の接続にはんだを用いる場合、以下に示すことが懸念される。このパワーモジュールはその外部端子によりその他のモジュールと接続されるが、その接続に同様にはんだを用いるとすると、その加熱により外部端子とパワーモジュールを接続しているはんだを再溶融させる可能性がある。同じ融点のはんだを用いることはできないため異なる複数種のはんだが必要となり、組み立てプロセスが複雑化する。
【0007】
この問題の解決策として、パワーモジュールの基板に対しリード端子を超音波接続する方法がある。超音波接続はリード端子と基板パッドとの直接接合であるため、その他のモジュールと外部端子をはんだにより接合する場合においても再溶融という問題はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6-169161
【特許文献2】特開平10-261664
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
超音波接続の断面模式図を図2に示す。超音波接続は、基板のパッド上に供給した端子に対し、ツールにより加圧しながら超音波振動をさせることにより端子をパッドに接続する技術である。端子とパッドとの界面では、この超音波振動により端子及びパッドに形成されている酸化膜や付着している汚染物が除去され、新生面どうしが密着することにより接続がなされる。接続後のリード端子/パッド界面をSEM観察した結果を図3に示す。接続界面においてリード端子材とパッド材が局所的に交じり合った塑性流動領域が形成されていることが分かる。
【0010】
ただし、この超音波接続は加圧しながら接続するプロセスであるため、金属ベース基板を用いる場合、接続中にパッドにダメージが発生する。接続後にパッドが破壊した例を図4に示す。
【0011】
また、図4のようなパッドの破壊が発生する位置を示したものを図5に示す。小型化の要求の高いパワーモジュールでは、リード端子を狭ピッチで接続する必要がある。このため、ツールのヘッドサイズよりも端子接続部のサイズを小さくする場合が存在する。このとき、接続プロセスにおいてはリード端子の端部が加圧されながら接続されるため、パッドのツールにより加圧されている端子下部と端子のない加圧されていない部分との境界部、すなわち図5に示す端子端部直下において、超音波印加時に応力集中を起こして破壊する。
【0012】
このような問題に対し、端子接続部のサイズを大きくする、ツールのヘッドサイズを小さくするという対策が考えられる。しかし、端子接続部のサイズを大きくすることは小型化に不利である。また、ツールのヘッドサイズを小さくする場合は、端子を保持するメッシュ部分について超音波印加時の保持力の低下が懸念され、効果的にリード端子とパッドの界面に超音波エネルギーを伝えられず、リード端子の接続強度が低下する可能性がある。よって、メッシュ部分の構造適正化といった新たな開発課題を生むことになる。
【0013】
一方、別の対策として、超音波印加条件である加圧力や振幅を小さく、印加時間を短くするという方法がある。ただし、これは同時にリード端子の接続強度を低下させる要因となり、接続プロセスのマージンを小さくするデメリットがある。
【0014】
本発明の課題は、金属ベース基板のパッドに対しリード端子を超音波接続する場合において、パッド破壊のない高強度な接続部を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
図6に本発明におけるリード端子接続後の断面構造の一例を示す。本発明では、金属ベース基板のパッドに対し、コーティング層が形成されている。そのコーティング層はリード端子や基板のパッドよりも硬い物質である。このパッドに対し、超音波接続によりリード端子を接続する。接続時にそのコーティング層は破壊され、リード端子とパッドが接続される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コーティング層はリード端子やパッドよりも硬く、パッドのダメージに対する抑止効果がある。また、その厚さが薄く、端子材とパッド材とが局所的に交じり合う塑性流動領域の形成を妨げることなく、そのコーティング層がない場合に比べても遜色ない高強度な接続を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】パワーモジュールの実装構造の例を示した断面模式図である。
【図2】超音波接続の例を示した断面模式図である。
【図3】SEMによる超音波接続後のリード端子/パッド界面の断面観察図である。
【図4】超音波接続後にパッドが破壊した例を示す断面模式図である。
【図5】基板上方より見た、き裂の発生する端子端部直下を示した外観模式図である。
【図6】本発明におけるリード端子接続後の接続部断面模式図である。
【図7】本発明におけるリード端子接続前の接続部断面模式図である。
【図8】従来におけるリード端子接続前の接続部断面模式図である。
【図9】パッドのコーティング材が厚い場合の接続後の接続部断面模式図である。
【図10】端子端部直下の位置にコーティング材を形成させたパッドを持つ基板を用いて接続した場合の接続部の例を示した外観模式図である。
【図11】実施例に示す実験を行うに当たり、用いた洗浄条件及びNiめっき条件を示した図である。
【図12】実施例1において、Cu板(Cu無垢品、Niめっき品)に対しリード端子を超音波接続した後のリード端子/Cu板界面の断面観察図である。
【図13】実施例1において、Cu板(Cu無垢品、Niめっき品)に対するリード端子の超音波接続後に行ったせん断試験結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図7に本発明における接続前の接続部断面構造を示す。基板は金属ベース基板であり、一番下の金属ベース9上に絶縁層8が形成され、その上に配線層(図示せず)が形成される。そして、その配線層の一部であるパッド10に対し、リード端子11が接続されるが、このパッド10上にリード端子11やパッド10よりも硬いコーティング層14が薄く形成される。ここで硬いとは、その材料の弾性率が高いということである。
【0019】
先に述べた図6に接続後の断面構造を示す。リード端子11はツール13により加圧され、超音波振動が起こることにより、パッド10との界面において摺動する。このとき、接続界面ではリード端子11の酸化膜や界面に存在する汚染物が除去されるのと同時に、パッド上のコーティング層14が破壊される。そして、リード端子材とパッド材さらには破壊されたコーティング材が局所的に交じり合った塑性流動領域が形成され、接続が完了する。
【0020】
比較のために、コーティング層がない従来の場合の接続後の断面構造を図8に示す。その他の構成は図7と同様である。金属ベース9上に絶縁層8が形成され、その上に配線層が形成される金属ベース基板に対し、その配線層の一部であるパッド10に対してリード端子11が超音波接続されている。リード端子11とパッド10の界面では、同じく超音波振動により酸化膜や汚染物が除去されており、リード端子材とパッド材が局所的に交じり合った塑性流動領域101が形成されている。ただし、図5に示すような端子端部直下では、パッドに対し図4に示すようなき裂が発生している。
【0021】
一方、コーティング層14が厚い場合の接続後の断面構造の例を図9に示す。コーティング層14が厚い場合には、コーティング層14が破壊されず、接続前の状態を保っている。この場合には、塑性流動領域が形成されないため、接続強度はコーティング層14のない場合に比べて低下する。よって、コーティング層14は、超音波接合で破壊可能な程度に薄くする必要がある。
【0022】
上記図6、図8、図9を比較して分かるように、金属ベース基板のパッド10上にコーティング層14を形成させることにより、基板のパッドを破壊することを抑止できる。また、コーティング層14を薄くすることにより、接続界面ではリード端子材とパッド材さらにはコーティング層14が局所的に交じり合った塑性流動領域が形成され、高強度な接続を得ることができる。なお、上記ではパッド10側にコーティング層14を形成したが、パッド10側ではなくリード11表面にコーティング層14を形成しても、同様の効果が得られる。
【0023】
図6、図7、図8において、金属ベース9の厚さは例えば2mm、絶脂層8の厚さは例えば0.1mm、配線層(パッド10)の厚さは例えば0.1mm、リード端子11の厚さは例えば0.6mmである。配線層の上に形成するコーティング層の厚さは100nm以下である。
【0024】
また、各部材の具体例として、金属ベース9は例えばAlやAl合金(Alを主材料とする合金。主材料とは、50%以上を占める元素)、CuやCu合金(Cuを主材料とする合金)、FeやFe系合金(Feを主材料とする合金)等が望ましい。また、絶縁層8は樹脂やセラミックが適当である。樹脂を用いる場合には樹脂中に放熱フィラーを混入させるのがよい。配線層に関しては同じくAlやAl合金、CuやCu合金、FeやFe系合金等が良い。リード端子11には配線層と同一種の部材を選定するのが適当である。可能ならば、焼きなまし等により配線層よりも軟らかくしても良い。
【0025】
また、コーティング層14の材料はリード端子11や配線層よりも硬いものを選定する必要がある。配線層とリード端子11の材料としてCuやCu合金を選定している場合、Cr、Fe、Mo、Ni、Pt、Ta、V、W等が適当である。配線層及びリード端子11の材料が両方ともAlやAl合金を選定している場合には、上記に加えPdやTiも適用可能である。コーティング層14の製法は、めっき、蒸着、スパッタ等が挙げられる。
【0026】
そして、コーティング層14はき裂の発生しやすい部分、すなわち図5に示す端子端部直下に存在していれば良い。リード端子下部は、塑性流動領域の形成により接続がなされる部分であるため、コーティング層14は必須ではない。よって、図10に示すような端子端部直下の位置にコーティング層14を形成させたパッドを持つ基板を用いてもよい。また、この場合、リード端子下部のコーティング層14の無い部分にて接続がなされるため、コーティング層14は100nm以上あっても良い。
【0027】
特開平6-169161では、接続部材と被接続部材の少なくとも一方の接続面に超微粒子膜を形成し、その超微粒子膜を介して接続部材と被接続部材を超音波接続することにより、接続部材に対するダメージ軽減する方法を提案している。この方法による接続では、接続後に超微粒子膜を介した接続構造となるため、この接続部の接続強度は超微粒子膜自体の破壊強度に依存すると考えられる。この超微粒子膜を用いれば接続のエネルギーを小さくすることができることから、この超微粒子膜は接続部材や被接続部材に比べて同等もしくは軟らかい物質であると想像できるため、接続強度は低下する可能性がある。
【0028】
また特開平10-261664も、同様に電極パッドに対して金属層を間に介し、金属スタッドを超音波接続することにより、素子のダメージを軽減する方法を提案している。この間に介する金属層は金属スタッドよりも同等あるいは軟らかい物質であるため、前述の理由により同様に接続強度が低下する可能性がある。
【0029】
本発明では、リード端子材とパッド材の直接的な接続であるため、接続強度の低下は生じない。
【実施例1】
【0030】
パッド10としてのCu板に対してリード端子11を接続する実験を行い、本発明の効果について検証した。厚さ0.6mmのCu板に対し、酸洗浄を施したもの(Cu無垢品)及び酸洗浄の後Niめっきを施したもの(Niめっき品:約30nm厚)を用意した。Cu無垢品は、Cu板に対して酸洗、水洗を行い、Niめっき品については、さらにPd活性化、水洗、Niめっき、水洗を行なった。洗浄条件及びNiめっき条件の詳細を図11に示す。リード端子は長さ5mm、幅0.6mm、厚さ0.6mmのCuリードを用いた。このCuリードに対して同様に酸洗浄を行った後、用意したCu板(Cu無垢品及びNiめっき品)に対して超音波接続した。接続条件は、加圧力;80N/mm2、振幅;9?m、印加時間;0.1s、0.2s、0.4sとした。この超音波接続に用いたツールのヘッドサイズはCuリードの幅である0.6mmよりも大きな2mm角のものを用いた。
【0031】
超音波接続後に断面観察を行った。断面研磨の後研磨面をウェットエッチし、SEM観察を行った。観察結果を図12に示す。図12より、Cu無垢品のCuリードの端部においてCu板中にき裂が存在していた。一方、Niめっき品に関しては、超音波振動により接続界面はCu板表面からは沈んではいるものの、き裂は存在していなかった。また、Niめっき品において、接続界面にCuリード及びCu板のそれぞれのCuとNiめっきのNiとが交じり合った塑性流動領域が形成されていた。
【0032】
一方、超音波接続されているCuリードに対し、せん断試験を行うことにより接続強度を測定した。せん断試験条件は、せん断速度200?m/s、せん断高さ60?mにて行った。せん断試験結果を図13に示す。図13より、Cu無垢品に対してNiめっき品のせん断強度は同程度であった。以上により、Niめっきを形成させた場合においても高強度な接続部が得られることが分かり、本発明の効果が確認できた。
【実施例2】
【0033】
Cu板に対してリード端子を接続する実験を行い、コーティング層の厚さの影響を検証した。厚さ0.6mmのCu板に対し、酸洗浄の後Niめっきを施したものを用意した。Niめっきはその厚さを30nm、100nm、150nmと条件を変えて実験した。リード端子は実施例1と同じ、長さ5mm、幅0.6mm、厚さ0.6mmのCuリードを用いた。同様に酸洗浄を行った後、用意したCu板に対して超音波接続した。洗浄条件及びNiめっき条件、超音波接続条件に関しては実施例1と同条件にて行った。この超音波接続に用いたツールのヘッドサイズは、同様にCuリードの幅である0.6mmよりも大きな2mm角のものを用いた。
【0034】
超音波接続後に断面観察を行った。断面研磨の後研磨面をウェットエッチし、SEM観察を行った。その結果、今回検討したサンプルに関してはき裂は存在していなかった。また、30nm品及び100nm品においては、接続界面にCuリード及びCuパッドのそれぞれのCuとNiめっきのNiとが交じり合った塑性流動領域が形成されていたが、一方150nm品においてはNiめっきの残存部は見られるものの、塑性流動領域は確認できなかった。
【0035】
また同様に、せん断試験より接続強度を測定した。同条件でのせん断試験結果から、実施例1におけるCu無垢品のせん断強度に比べ、30nm品、100nm品では同程度であった。一方、150nm品では明らかな接続強度の低下が見られた。以上により、Niめっきの厚さに関して、超音波接合により破壊されてめっきの両側にあるリードとパッドが塑性流動可能になる程度に(例えば100nm以下に)する必要があることが分かった。
【実施例3】
【0036】
金属ベース基板に対し、リード端子を接続する実験を行い、本発明の効果について確認した。厚さ105?mのCu配線をもつAlベース基板(Al金属ベース上に絶縁膜がある)上のCuパッドに対し、酸洗浄を施したのみのもの(Cu無垢品)及び酸洗浄の後Niめっきを施したもの(Niめっき品:約30nm厚)を用意した。リード端子は実施例1と同じ、長さ5mm、幅0.6mm、厚さ0.6mmのCuリードを用いた。同様に酸洗浄を行った後、用意したAlベース基板上のCuパッドに対して超音波接続した。洗浄条件及びNiめっき条件、超音波接続条件に関しては実施例1と同条件にて行った。この超音波接続に用いたツールのヘッドサイズは、同様にCuリードの幅である0.6mmよりも大きな2mm角のものを用いた。
【0037】
超音波接続後に断面観察を行った。断面研磨の後研磨面をウェットエッチし、SEM観察を行った。Cu無垢品のCuリードの端部においてCuパッド中にき裂が存在していたが、Niめっき品に関してき裂は存在していなかった。また、Niめっき品において、接続界面にCuリード及びCuパッドのそれぞれのCuとNiめっきのNiとが交じり合った塑性流動領域が形成されていた。
【0038】
また同様に、せん断試験より接続強度を測定した。同条件でのせん断試験結果から、Cu無垢品に対してNiめっき品のせん断強度は同程度であった。以上により、金属ベース基板に対してもNiめっきを形成させた場合に高強度な接続部が得られることが分かり、本発明の効果が確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0039】
高度情報化社会において電気エネルギーの需要は高く、また、環境問題における省エネや、CO2排出の低減を目的とした化石燃料削減によるオール電化等の要求から、電力を高効率で使用するパワーエレクトロニクスの役割がますます重要になると考えられる。パワーエレクトロニクス分野においてはモジュール高発熱化の問題は大きく、高放熱化構造の検討が必須である。今回検討したモジュールは車載用途であるが、本発明構造は、車載用途の他、小型化、高放熱化の要求されるモジュールに対し有効であると考えられる。
【符号の説明】
【0040】
1・・・セラミック基板
2・・・配線層
3・・・セラミック板
4・・・はんだ
5・・・電子部品
6・・・外部端子
7・・・金属ベース基板
8・・・絶縁層
9・・・金属ベース
10・・・パッド
11・・・リード端子
12・・・メッシュ部分
13・・・超音波ツールのヘッド
14・・・コーティング層
50・・・発熱部品
100・・・リード端子材とパッド材及び破壊されたコーティング材が局所的に交じり合った塑性流動領域が形成されている接続面
101・・・リード端子材とパッド材が局所的に交じり合った塑性流動領域が形成されている接続面
200・・・パッド中に発生したき裂
201・・・超音波ツールのヘッド端部の位置
202・・・リード端子端部がパッドと接触する部分
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に対しリード端子を接続する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載モジュールは比較的信頼性要求レベルの低い車室内に搭載されていた。そして、エンジンルーム内等に設置されるユニットに対しワイヤハーネスと呼ばれる配線によって接続され、そのユニットの制御を行っていた。ところが近年、軽量化や低コスト化をねらいとしたワイヤハーネスの省略を目的とし、車室内からエンジンルーム内へ搭載される車載モジュールが増加している。エンジンルーム環境では、最高温度が車室内に比べて高くなるため、発熱部品を多く搭載する車載モジュールでは高放熱化が重要である。また、搭載スペースに制約があるため、モジュールの小型化の要求も高い。
【0003】
中でも電力の変換や制御を行うパワーモジュールでは、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)チップやMOS(Metal-Oxide Semiconductor)チップなどの高発熱部品を数多く搭載する。モジュールの搭載環境温度や半導体の動作保証温度を考慮した場合、パワーモジュールに対し高放熱性が要求される。
【0004】
パワーモジュールの実装においては、部品を搭載する基板として熱抵抗の小さいセラミック基板や金属ベース基板等の高放熱基板が多く用いられている。セラミック基板はセラミック板の両面に導体層を形成する構造である。絶縁層に熱伝導性の良いセラミックを用いることにより放熱性を向上している。また、金属ベース基板はベースとなる金属板上に絶縁層を介して導体層を形成する構造である。絶縁層は熱伝導率が低いが、薄くすることにより熱抵抗を下げ熱伝導率の高いベース金属への放熱経路を確立している。従来は高放熱基板として信頼性の高いセラミック基板を用いることが多かったが、低コストの観点から、近年金属ベース基板を用いたパワーモジュールが多く開発されつつある。パワーモジュールの実装構造の例を図1に示す。
【0005】
このとき、外部端子の接続にはAlワイヤボンディングやリード端子が用いられる。このうち、リード端子は容易に端子幅を大きく端子厚を厚くすることが可能であり、流れる電流が大きいパワーモジュールにおいては有利である。Alワイヤボンディングにて接続する場合には、接続抵抗を下げるために相当数の接続が必要である。また、量産性に対する装置台数の影響が大きく、モジュールの生産台数が増加した場合新たな設備投資が必要となる。
【0006】
ただし、リード端子の接続にはんだを用いる場合、以下に示すことが懸念される。このパワーモジュールはその外部端子によりその他のモジュールと接続されるが、その接続に同様にはんだを用いるとすると、その加熱により外部端子とパワーモジュールを接続しているはんだを再溶融させる可能性がある。同じ融点のはんだを用いることはできないため異なる複数種のはんだが必要となり、組み立てプロセスが複雑化する。
【0007】
この問題の解決策として、パワーモジュールの基板に対しリード端子を超音波接続する方法がある。超音波接続はリード端子と基板パッドとの直接接合であるため、その他のモジュールと外部端子をはんだにより接合する場合においても再溶融という問題はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6-169161
【特許文献2】特開平10-261664
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
超音波接続の断面模式図を図2に示す。超音波接続は、基板のパッド上に供給した端子に対し、ツールにより加圧しながら超音波振動をさせることにより端子をパッドに接続する技術である。端子とパッドとの界面では、この超音波振動により端子及びパッドに形成されている酸化膜や付着している汚染物が除去され、新生面どうしが密着することにより接続がなされる。接続後のリード端子/パッド界面をSEM観察した結果を図3に示す。接続界面においてリード端子材とパッド材が局所的に交じり合った塑性流動領域が形成されていることが分かる。
【0010】
ただし、この超音波接続は加圧しながら接続するプロセスであるため、金属ベース基板を用いる場合、接続中にパッドにダメージが発生する。接続後にパッドが破壊した例を図4に示す。
【0011】
また、図4のようなパッドの破壊が発生する位置を示したものを図5に示す。小型化の要求の高いパワーモジュールでは、リード端子を狭ピッチで接続する必要がある。このため、ツールのヘッドサイズよりも端子接続部のサイズを小さくする場合が存在する。このとき、接続プロセスにおいてはリード端子の端部が加圧されながら接続されるため、パッドのツールにより加圧されている端子下部と端子のない加圧されていない部分との境界部、すなわち図5に示す端子端部直下において、超音波印加時に応力集中を起こして破壊する。
【0012】
このような問題に対し、端子接続部のサイズを大きくする、ツールのヘッドサイズを小さくするという対策が考えられる。しかし、端子接続部のサイズを大きくすることは小型化に不利である。また、ツールのヘッドサイズを小さくする場合は、端子を保持するメッシュ部分について超音波印加時の保持力の低下が懸念され、効果的にリード端子とパッドの界面に超音波エネルギーを伝えられず、リード端子の接続強度が低下する可能性がある。よって、メッシュ部分の構造適正化といった新たな開発課題を生むことになる。
【0013】
一方、別の対策として、超音波印加条件である加圧力や振幅を小さく、印加時間を短くするという方法がある。ただし、これは同時にリード端子の接続強度を低下させる要因となり、接続プロセスのマージンを小さくするデメリットがある。
【0014】
本発明の課題は、金属ベース基板のパッドに対しリード端子を超音波接続する場合において、パッド破壊のない高強度な接続部を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
図6に本発明におけるリード端子接続後の断面構造の一例を示す。本発明では、金属ベース基板のパッドに対し、コーティング層が形成されている。そのコーティング層はリード端子や基板のパッドよりも硬い物質である。このパッドに対し、超音波接続によりリード端子を接続する。接続時にそのコーティング層は破壊され、リード端子とパッドが接続される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コーティング層はリード端子やパッドよりも硬く、パッドのダメージに対する抑止効果がある。また、その厚さが薄く、端子材とパッド材とが局所的に交じり合う塑性流動領域の形成を妨げることなく、そのコーティング層がない場合に比べても遜色ない高強度な接続を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】パワーモジュールの実装構造の例を示した断面模式図である。
【図2】超音波接続の例を示した断面模式図である。
【図3】SEMによる超音波接続後のリード端子/パッド界面の断面観察図である。
【図4】超音波接続後にパッドが破壊した例を示す断面模式図である。
【図5】基板上方より見た、き裂の発生する端子端部直下を示した外観模式図である。
【図6】本発明におけるリード端子接続後の接続部断面模式図である。
【図7】本発明におけるリード端子接続前の接続部断面模式図である。
【図8】従来におけるリード端子接続前の接続部断面模式図である。
【図9】パッドのコーティング材が厚い場合の接続後の接続部断面模式図である。
【図10】端子端部直下の位置にコーティング材を形成させたパッドを持つ基板を用いて接続した場合の接続部の例を示した外観模式図である。
【図11】実施例に示す実験を行うに当たり、用いた洗浄条件及びNiめっき条件を示した図である。
【図12】実施例1において、Cu板(Cu無垢品、Niめっき品)に対しリード端子を超音波接続した後のリード端子/Cu板界面の断面観察図である。
【図13】実施例1において、Cu板(Cu無垢品、Niめっき品)に対するリード端子の超音波接続後に行ったせん断試験結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図7に本発明における接続前の接続部断面構造を示す。基板は金属ベース基板であり、一番下の金属ベース9上に絶縁層8が形成され、その上に配線層(図示せず)が形成される。そして、その配線層の一部であるパッド10に対し、リード端子11が接続されるが、このパッド10上にリード端子11やパッド10よりも硬いコーティング層14が薄く形成される。ここで硬いとは、その材料の弾性率が高いということである。
【0019】
先に述べた図6に接続後の断面構造を示す。リード端子11はツール13により加圧され、超音波振動が起こることにより、パッド10との界面において摺動する。このとき、接続界面ではリード端子11の酸化膜や界面に存在する汚染物が除去されるのと同時に、パッド上のコーティング層14が破壊される。そして、リード端子材とパッド材さらには破壊されたコーティング材が局所的に交じり合った塑性流動領域が形成され、接続が完了する。
【0020】
比較のために、コーティング層がない従来の場合の接続後の断面構造を図8に示す。その他の構成は図7と同様である。金属ベース9上に絶縁層8が形成され、その上に配線層が形成される金属ベース基板に対し、その配線層の一部であるパッド10に対してリード端子11が超音波接続されている。リード端子11とパッド10の界面では、同じく超音波振動により酸化膜や汚染物が除去されており、リード端子材とパッド材が局所的に交じり合った塑性流動領域101が形成されている。ただし、図5に示すような端子端部直下では、パッドに対し図4に示すようなき裂が発生している。
【0021】
一方、コーティング層14が厚い場合の接続後の断面構造の例を図9に示す。コーティング層14が厚い場合には、コーティング層14が破壊されず、接続前の状態を保っている。この場合には、塑性流動領域が形成されないため、接続強度はコーティング層14のない場合に比べて低下する。よって、コーティング層14は、超音波接合で破壊可能な程度に薄くする必要がある。
【0022】
上記図6、図8、図9を比較して分かるように、金属ベース基板のパッド10上にコーティング層14を形成させることにより、基板のパッドを破壊することを抑止できる。また、コーティング層14を薄くすることにより、接続界面ではリード端子材とパッド材さらにはコーティング層14が局所的に交じり合った塑性流動領域が形成され、高強度な接続を得ることができる。なお、上記ではパッド10側にコーティング層14を形成したが、パッド10側ではなくリード11表面にコーティング層14を形成しても、同様の効果が得られる。
【0023】
図6、図7、図8において、金属ベース9の厚さは例えば2mm、絶脂層8の厚さは例えば0.1mm、配線層(パッド10)の厚さは例えば0.1mm、リード端子11の厚さは例えば0.6mmである。配線層の上に形成するコーティング層の厚さは100nm以下である。
【0024】
また、各部材の具体例として、金属ベース9は例えばAlやAl合金(Alを主材料とする合金。主材料とは、50%以上を占める元素)、CuやCu合金(Cuを主材料とする合金)、FeやFe系合金(Feを主材料とする合金)等が望ましい。また、絶縁層8は樹脂やセラミックが適当である。樹脂を用いる場合には樹脂中に放熱フィラーを混入させるのがよい。配線層に関しては同じくAlやAl合金、CuやCu合金、FeやFe系合金等が良い。リード端子11には配線層と同一種の部材を選定するのが適当である。可能ならば、焼きなまし等により配線層よりも軟らかくしても良い。
【0025】
また、コーティング層14の材料はリード端子11や配線層よりも硬いものを選定する必要がある。配線層とリード端子11の材料としてCuやCu合金を選定している場合、Cr、Fe、Mo、Ni、Pt、Ta、V、W等が適当である。配線層及びリード端子11の材料が両方ともAlやAl合金を選定している場合には、上記に加えPdやTiも適用可能である。コーティング層14の製法は、めっき、蒸着、スパッタ等が挙げられる。
【0026】
そして、コーティング層14はき裂の発生しやすい部分、すなわち図5に示す端子端部直下に存在していれば良い。リード端子下部は、塑性流動領域の形成により接続がなされる部分であるため、コーティング層14は必須ではない。よって、図10に示すような端子端部直下の位置にコーティング層14を形成させたパッドを持つ基板を用いてもよい。また、この場合、リード端子下部のコーティング層14の無い部分にて接続がなされるため、コーティング層14は100nm以上あっても良い。
【0027】
特開平6-169161では、接続部材と被接続部材の少なくとも一方の接続面に超微粒子膜を形成し、その超微粒子膜を介して接続部材と被接続部材を超音波接続することにより、接続部材に対するダメージ軽減する方法を提案している。この方法による接続では、接続後に超微粒子膜を介した接続構造となるため、この接続部の接続強度は超微粒子膜自体の破壊強度に依存すると考えられる。この超微粒子膜を用いれば接続のエネルギーを小さくすることができることから、この超微粒子膜は接続部材や被接続部材に比べて同等もしくは軟らかい物質であると想像できるため、接続強度は低下する可能性がある。
【0028】
また特開平10-261664も、同様に電極パッドに対して金属層を間に介し、金属スタッドを超音波接続することにより、素子のダメージを軽減する方法を提案している。この間に介する金属層は金属スタッドよりも同等あるいは軟らかい物質であるため、前述の理由により同様に接続強度が低下する可能性がある。
【0029】
本発明では、リード端子材とパッド材の直接的な接続であるため、接続強度の低下は生じない。
【実施例1】
【0030】
パッド10としてのCu板に対してリード端子11を接続する実験を行い、本発明の効果について検証した。厚さ0.6mmのCu板に対し、酸洗浄を施したもの(Cu無垢品)及び酸洗浄の後Niめっきを施したもの(Niめっき品:約30nm厚)を用意した。Cu無垢品は、Cu板に対して酸洗、水洗を行い、Niめっき品については、さらにPd活性化、水洗、Niめっき、水洗を行なった。洗浄条件及びNiめっき条件の詳細を図11に示す。リード端子は長さ5mm、幅0.6mm、厚さ0.6mmのCuリードを用いた。このCuリードに対して同様に酸洗浄を行った後、用意したCu板(Cu無垢品及びNiめっき品)に対して超音波接続した。接続条件は、加圧力;80N/mm2、振幅;9?m、印加時間;0.1s、0.2s、0.4sとした。この超音波接続に用いたツールのヘッドサイズはCuリードの幅である0.6mmよりも大きな2mm角のものを用いた。
【0031】
超音波接続後に断面観察を行った。断面研磨の後研磨面をウェットエッチし、SEM観察を行った。観察結果を図12に示す。図12より、Cu無垢品のCuリードの端部においてCu板中にき裂が存在していた。一方、Niめっき品に関しては、超音波振動により接続界面はCu板表面からは沈んではいるものの、き裂は存在していなかった。また、Niめっき品において、接続界面にCuリード及びCu板のそれぞれのCuとNiめっきのNiとが交じり合った塑性流動領域が形成されていた。
【0032】
一方、超音波接続されているCuリードに対し、せん断試験を行うことにより接続強度を測定した。せん断試験条件は、せん断速度200?m/s、せん断高さ60?mにて行った。せん断試験結果を図13に示す。図13より、Cu無垢品に対してNiめっき品のせん断強度は同程度であった。以上により、Niめっきを形成させた場合においても高強度な接続部が得られることが分かり、本発明の効果が確認できた。
【実施例2】
【0033】
Cu板に対してリード端子を接続する実験を行い、コーティング層の厚さの影響を検証した。厚さ0.6mmのCu板に対し、酸洗浄の後Niめっきを施したものを用意した。Niめっきはその厚さを30nm、100nm、150nmと条件を変えて実験した。リード端子は実施例1と同じ、長さ5mm、幅0.6mm、厚さ0.6mmのCuリードを用いた。同様に酸洗浄を行った後、用意したCu板に対して超音波接続した。洗浄条件及びNiめっき条件、超音波接続条件に関しては実施例1と同条件にて行った。この超音波接続に用いたツールのヘッドサイズは、同様にCuリードの幅である0.6mmよりも大きな2mm角のものを用いた。
【0034】
超音波接続後に断面観察を行った。断面研磨の後研磨面をウェットエッチし、SEM観察を行った。その結果、今回検討したサンプルに関してはき裂は存在していなかった。また、30nm品及び100nm品においては、接続界面にCuリード及びCuパッドのそれぞれのCuとNiめっきのNiとが交じり合った塑性流動領域が形成されていたが、一方150nm品においてはNiめっきの残存部は見られるものの、塑性流動領域は確認できなかった。
【0035】
また同様に、せん断試験より接続強度を測定した。同条件でのせん断試験結果から、実施例1におけるCu無垢品のせん断強度に比べ、30nm品、100nm品では同程度であった。一方、150nm品では明らかな接続強度の低下が見られた。以上により、Niめっきの厚さに関して、超音波接合により破壊されてめっきの両側にあるリードとパッドが塑性流動可能になる程度に(例えば100nm以下に)する必要があることが分かった。
【実施例3】
【0036】
金属ベース基板に対し、リード端子を接続する実験を行い、本発明の効果について確認した。厚さ105?mのCu配線をもつAlベース基板(Al金属ベース上に絶縁膜がある)上のCuパッドに対し、酸洗浄を施したのみのもの(Cu無垢品)及び酸洗浄の後Niめっきを施したもの(Niめっき品:約30nm厚)を用意した。リード端子は実施例1と同じ、長さ5mm、幅0.6mm、厚さ0.6mmのCuリードを用いた。同様に酸洗浄を行った後、用意したAlベース基板上のCuパッドに対して超音波接続した。洗浄条件及びNiめっき条件、超音波接続条件に関しては実施例1と同条件にて行った。この超音波接続に用いたツールのヘッドサイズは、同様にCuリードの幅である0.6mmよりも大きな2mm角のものを用いた。
【0037】
超音波接続後に断面観察を行った。断面研磨の後研磨面をウェットエッチし、SEM観察を行った。Cu無垢品のCuリードの端部においてCuパッド中にき裂が存在していたが、Niめっき品に関してき裂は存在していなかった。また、Niめっき品において、接続界面にCuリード及びCuパッドのそれぞれのCuとNiめっきのNiとが交じり合った塑性流動領域が形成されていた。
【0038】
また同様に、せん断試験より接続強度を測定した。同条件でのせん断試験結果から、Cu無垢品に対してNiめっき品のせん断強度は同程度であった。以上により、金属ベース基板に対してもNiめっきを形成させた場合に高強度な接続部が得られることが分かり、本発明の効果が確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0039】
高度情報化社会において電気エネルギーの需要は高く、また、環境問題における省エネや、CO2排出の低減を目的とした化石燃料削減によるオール電化等の要求から、電力を高効率で使用するパワーエレクトロニクスの役割がますます重要になると考えられる。パワーエレクトロニクス分野においてはモジュール高発熱化の問題は大きく、高放熱化構造の検討が必須である。今回検討したモジュールは車載用途であるが、本発明構造は、車載用途の他、小型化、高放熱化の要求されるモジュールに対し有効であると考えられる。
【符号の説明】
【0040】
1・・・セラミック基板
2・・・配線層
3・・・セラミック板
4・・・はんだ
5・・・電子部品
6・・・外部端子
7・・・金属ベース基板
8・・・絶縁層
9・・・金属ベース
10・・・パッド
11・・・リード端子
12・・・メッシュ部分
13・・・超音波ツールのヘッド
14・・・コーティング層
50・・・発熱部品
100・・・リード端子材とパッド材及び破壊されたコーティング材が局所的に交じり合った塑性流動領域が形成されている接続面
101・・・リード端子材とパッド材が局所的に交じり合った塑性流動領域が形成されている接続面
200・・・パッド中に発生したき裂
201・・・超音波ツールのヘッド端部の位置
202・・・リード端子端部がパッドと接触する部分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属層の上に第2の金属層を接続する接続構造の製造方法であって、
前記第1の金属層上に、前記第1の金属層及び前記第2の金属層よりも硬い材料によるコーティング層を形成する工程と、
前記コーティング層上に前記第2の金属層を配置し、超音波を印加して前記第1の金属層と第2の金属層を接合する工程と、
を含むことを特徴とする接続構造の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の接続構造の製造方法において、
超音波による接続時に前記コーティング層が破壊され、前記第1の金属層と第2の金属層が接合されることを特徴とする接続構造の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の接続構造の製造方法において、
前記第1の金属層とは前記第2の金属層とは、塑性流動により接続されることを特徴とする接続構造の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の接続構造の製造方法において、
前記第1の金属層または前記第2の金属層の材料がCuまたはCu合金であり、
前記コーティング層は、Cr、Fe、Mo、Ni、Pt、Ta、V、Wのいずれかの膜であることを特徴とする接続構造の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の接続構造の製造方法において、
前記第1の金属層及び前記第2の金属層の材料がAlまたはAl合金であり、
前記コーティング層は、Cr、Fe、Mo、Ni、Pt、Ta、V、W、Pd、Tiのいずれかの膜であることを特徴とする接続構造の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の接続構造の製造方法であり、
前記第1の金属層は、第3の金属層上に形成された絶縁層上に形成されていることを特徴とする接続構造の製造方法。
【請求項7】
導電板と、
前記導電板上の絶縁層と、
前記絶縁層の上の配線及び金属パッドと、
前記金属パッド接続された端子とを備えたパワーモジュールの製造方法において、
前記金属パッド上に前記金属パッドと前記端子よりも硬い材料によるコーティング層を形成し、
前記端子を前記コーティング層上に配置し、
超音波印加により前記コーティング層が破壊されて前記金属パッドと前記端子とが接続されることを特徴とするパワーモジュールの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のパワーモジュールの製造方法において、
前記端子に面している前記金属パッド上の、前記端子の端部が接触する部分及びその周辺において前記金属パッドと前記端子を構成する金属よりも硬い材料によるコーティング層を配置し、
超音波による接続時に前記コーティング層が破壊され、
前記金属パッドと前記端子が接続されることを特徴とする接続構造を有するパワーモジュールの製造方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載のパワーモジュールの製造方法において、
前記コーティング層の厚さが100nm以下であることを特徴とするパワーモジュールの製造方法。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれかに記載のパワーモジュールの製造方法において、
前記第1の金属層または前記第2の金属層の材料がCuまたはCu合金であり、
前記コーティング層は、Cr、Fe、Mo、Ni、Pt、Ta、V、Wのいずれかの膜であることを特徴とするパワーモジュールの製造方法。
【請求項11】
請求項7乃至9のいずれかに記載のパワーモジュールの製造方法において、
前記第1の金属層及び前記第2の金属層の材料がAlまたはAl合金であり、
前記コーティング層は、Cr、Fe、Mo、Ni、Pt、Ta、V、W、Pd、Tiのいずれかの膜であることを特徴とするパワーモジュールの製造方法。
【請求項12】
第1の金属層の上に第2の金属層が接続された接続構造において、
前記第1の金属層上に、前記第1の金属層及び前記第2の金属層よりも硬い材料によるコーティング層が形成され、
前記コーティング層が破片上になっている領域にて、前記第2の金属層が前記第1の金属層と塑性流動により接続されていることを特徴とする接続構造。
【請求項13】
第1の金属層、第1の絶縁層、第2の金属層とがこの順で並び構成され、かつ第2の金属層に対し、第1の絶縁層と反対側の面に第3の金属層を接続する構造を有するパワーモジュールの配線板であって、
前記第3の金属層に面している前記第2の金属層上の、前記第3の金属層の端部が接触する部分を含む領域において、前記第2の金属層及び前記第3の金属層よりも硬い材料によるコーティング層が配置されていることを特徴とするパワーモジュールの配線板。
【請求項14】
請求項13に記載のパワーモジュールの配線板において、
前記第1の金属層は、導電板であり、
前記第2の金属層は、配線及び金属パッドであり、
前記第3の金属層は、端子であることを特徴とするパワーモジュールの配線板。
【請求項1】
第1の金属層の上に第2の金属層を接続する接続構造の製造方法であって、
前記第1の金属層上に、前記第1の金属層及び前記第2の金属層よりも硬い材料によるコーティング層を形成する工程と、
前記コーティング層上に前記第2の金属層を配置し、超音波を印加して前記第1の金属層と第2の金属層を接合する工程と、
を含むことを特徴とする接続構造の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の接続構造の製造方法において、
超音波による接続時に前記コーティング層が破壊され、前記第1の金属層と第2の金属層が接合されることを特徴とする接続構造の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の接続構造の製造方法において、
前記第1の金属層とは前記第2の金属層とは、塑性流動により接続されることを特徴とする接続構造の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の接続構造の製造方法において、
前記第1の金属層または前記第2の金属層の材料がCuまたはCu合金であり、
前記コーティング層は、Cr、Fe、Mo、Ni、Pt、Ta、V、Wのいずれかの膜であることを特徴とする接続構造の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の接続構造の製造方法において、
前記第1の金属層及び前記第2の金属層の材料がAlまたはAl合金であり、
前記コーティング層は、Cr、Fe、Mo、Ni、Pt、Ta、V、W、Pd、Tiのいずれかの膜であることを特徴とする接続構造の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の接続構造の製造方法であり、
前記第1の金属層は、第3の金属層上に形成された絶縁層上に形成されていることを特徴とする接続構造の製造方法。
【請求項7】
導電板と、
前記導電板上の絶縁層と、
前記絶縁層の上の配線及び金属パッドと、
前記金属パッド接続された端子とを備えたパワーモジュールの製造方法において、
前記金属パッド上に前記金属パッドと前記端子よりも硬い材料によるコーティング層を形成し、
前記端子を前記コーティング層上に配置し、
超音波印加により前記コーティング層が破壊されて前記金属パッドと前記端子とが接続されることを特徴とするパワーモジュールの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のパワーモジュールの製造方法において、
前記端子に面している前記金属パッド上の、前記端子の端部が接触する部分及びその周辺において前記金属パッドと前記端子を構成する金属よりも硬い材料によるコーティング層を配置し、
超音波による接続時に前記コーティング層が破壊され、
前記金属パッドと前記端子が接続されることを特徴とする接続構造を有するパワーモジュールの製造方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載のパワーモジュールの製造方法において、
前記コーティング層の厚さが100nm以下であることを特徴とするパワーモジュールの製造方法。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれかに記載のパワーモジュールの製造方法において、
前記第1の金属層または前記第2の金属層の材料がCuまたはCu合金であり、
前記コーティング層は、Cr、Fe、Mo、Ni、Pt、Ta、V、Wのいずれかの膜であることを特徴とするパワーモジュールの製造方法。
【請求項11】
請求項7乃至9のいずれかに記載のパワーモジュールの製造方法において、
前記第1の金属層及び前記第2の金属層の材料がAlまたはAl合金であり、
前記コーティング層は、Cr、Fe、Mo、Ni、Pt、Ta、V、W、Pd、Tiのいずれかの膜であることを特徴とするパワーモジュールの製造方法。
【請求項12】
第1の金属層の上に第2の金属層が接続された接続構造において、
前記第1の金属層上に、前記第1の金属層及び前記第2の金属層よりも硬い材料によるコーティング層が形成され、
前記コーティング層が破片上になっている領域にて、前記第2の金属層が前記第1の金属層と塑性流動により接続されていることを特徴とする接続構造。
【請求項13】
第1の金属層、第1の絶縁層、第2の金属層とがこの順で並び構成され、かつ第2の金属層に対し、第1の絶縁層と反対側の面に第3の金属層を接続する構造を有するパワーモジュールの配線板であって、
前記第3の金属層に面している前記第2の金属層上の、前記第3の金属層の端部が接触する部分を含む領域において、前記第2の金属層及び前記第3の金属層よりも硬い材料によるコーティング層が配置されていることを特徴とするパワーモジュールの配線板。
【請求項14】
請求項13に記載のパワーモジュールの配線板において、
前記第1の金属層は、導電板であり、
前記第2の金属層は、配線及び金属パッドであり、
前記第3の金属層は、端子であることを特徴とするパワーモジュールの配線板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−61105(P2011−61105A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211241(P2009−211241)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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