説明

接続部材

【課題】 フィルム基材を必要とせず、仮圧着時にフィルム基材の剥離不具合や産業廃棄物がなく、接続時に導電粒子の電極上からの流出が少ない上に電極と導電粒子の接触が得やすく、また、接続部に気泡を含みにくいことから長期接続信頼性に優れ、導電粒子と電極との正確な位置合せが不要で作業性に優れた接続部材を提供する。
【解決手段】 導電材料とバインダとよりなる加圧方向に導電性を有する接着剤層の少なくとも片面に、引張強さが0.3kgf/mm以上であり、伸びが100%以下であるフェノキシ樹脂またはEVA共重合体を含む熱溶融層が設けられている接続部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品と回路板や、回路板同士を接着固定すると共に、両者の電極同士を電気的に接続する接続部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の小型薄型化に伴い、これらに用いる回路は高密度、高精細化している。このような電子部品の微細電極と基板との接続は、従来のはんだやゴムコネクタ等では対応が困難であることから、最近では分解能に優れた異方導電性の接着剤や膜状物(以下接続部材という)が多用されている。この接続部材は、導電粒子等の導電材料を所定量含有した接着剤からなるもので、この接続部材を電子部品と基板間あるいは電極や回路間に設け、加熱または加熱加圧手段を講じることによって、両者の電極同士が電気的に接続されると共に、電極に隣接して形成された電極同士には絶縁性を付与して、電子部品と回路とが接着固定されるものである。
【0003】
上記接続部材を高分解能化するための基本的な考え方は、導電粒子の粒径を隣接電極間の間隙よりも小さくすることで隣接電極聞における絶縁性を確保し、併せて導電粒子の含有量をこの粒子同士が接触しない程度とし、かつ電極上に確実に存在させることにより、接続部における導通性を得ることである。
【特許文献1】特開平08−148210号公報
【特許文献2】特開平08−316625号公報
【特許文献3】特開平08−148211号公報
【特許文献4】特開平04−293983号公報
【特許文献5】特開平04−234473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術は、フィルム基材上に一層或はそれ以上の異方導電性接続部材を形成してなる形状である。この技術においては、接続しようとする二つの電極部分のうちの片方に予め接続部材を仮圧着し、異方導電性接続部材を電極部分の片方に残し、フィルム基材を剥離した後、相対峙する電極の位置合せをし、仮圧着時より高い加熱加圧条件により接続を行ってきた。この仮圧着の温度を高くするとフィルム基材は異方導電性接続部材から容易に剥離するが、本圧着時における接続部材の接続信頼性が失われてしまう。また、仮圧着する電極が前工程で汚染されていると、フィルム基材剥離時に異方導電性接続部材がフィルム基材と剥離せず、接続部材ごと電極から剥離してしまう不具合が発生する。さらに近年、電子部品の需要の伸びに伴い、電子部品と回路の接続の作業性向上、即ち、タクトタイムの短縮化により、仮圧着時間を短縮したツール方式及びローラー式の仮圧着方法が行われるようになってきた。接続時間を短縮したこれらの方法はフィルム基材剥離時に異方導電性接続部材がフィルム基材と剥離せず、接続部材ごと電極から剥離してしまう不具合が多発する傾向にある。とくにローラー式の仮圧着方法は今までの加熱した金属ツールによる仮圧着とは異なり、金属ローラーにより加熱圧着するもので加熱時間が短い。このような方法においても、仮圧着後フィルム基材が容易に剥離可能な接続部材が必要である。しかしながら、フィルム基材と剥離しやすくすると、加熱加圧を行う前にシートあるいはロール状の巻き物からフィルム基材と異方導電性接続部材が剥離してしまう恐れがある。また、フィルム基材としてはPET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリ四フッ化エチレンなどが一般的であるが、使用後は再利用できず、産業廃棄物となってしまい環境保護上の問題もある。
【0005】
本発明は、かかる状況に鑑みなされたもので、熱溶融層によりフィルム基材を必要としないため、仮圧着時にフィルム基材の剥離不具合がなく、産業廃棄物を伴わず、接続時に導電粒子の電極上からの流出が少なく保持可能であり、かつ電極と導電粒子の接触が得やすく、また、接続部に気泡を含みにくいことから長期接続信頼性に優れ、導電粒子と電極との正確な位置合せが不要なことから作業性に優れた接続部材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、[1]導電材料とバインダとよりなる加圧方向に導電性を有する接着剤層の少なくとも片面に、引張強さが0.3kgf/mm以上であり、伸びが100%以下であるフェノキシ樹脂またはEVA共重合体を含む熱溶融層が設けられている接続部材である。
また、本発明は、[2] 熱溶融層が、加圧方向に導電性を有する接着剤層の両面に設けられている上記[1]に記載の接続部材である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、接続部材にフィルム基材を使用しないので、仮圧着時の時聞が短縮され、フィルム基材の剥離不具合がなく、高分解化、かつ、接続信頼性に優れた接続部材及びこれを用いることにより、それらの優れた性能を有する電極の接続構造並びに接続方法が簡単に得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明について図面を参照しながら説明する。図1〜3は本発明の一実施例を説明する接続部材の断面模式図である。本発明の接続部材は、導電材料とバインダとよりなる加圧方向に導電性を有する接着剤層1の少なくとも片面に2が形成された多層の接続部材3である。熱溶融層2は、電極接続時に溶融する必要があり、溶融温度が250℃以下が好ましい。また、熱溶融層2はフィルム基材としての役割を担う為、機械的強度を必要とする。したがって、引張強さがJ1S−K6887で0.3kgf/mm以上、より好ましくは1.0kgf/mm以上、伸びが100%以下である。熱溶融層として用いられる樹脂としては、導電性接着剤層1と親和性があり上記条件を満足するものであれば特に制限されないが、それらを例示すれば、高分子量エポキシ樹脂(フェノキシ樹脂)、EVA共重合体があげられる。また、導電性接着剤としては金属粒子や表面をメッキしたプラスチック粒子等の導電材料を絶縁性接着剤中に低濃度に分散したものが使われる。
【0009】
図2に示すように熱溶融層2は、導電性接着剤層1の両面に形成してもよい。両面に熱溶融層2が存在することにより、引張強さを1.0kgf/mm以上、伸びを100%以下にすることがより容易である。また、接続部材をシートあるいはロール状の巻物にした場合、重ね合わせた次の接続部材へ転写する可能性が少なくなる。さらに、突出した電極上に導電材料が捕捉され易く、電極間での絶縁性も良好に保たれる。
【0010】
図3に示すように導電性接着剤層1は、熱溶融層2の両面に形成してもよい。交互に突起した電極が存在する場合、電極上に導電材料が捕捉され易く、良好な接続抵抗が得られる。図1〜3において、図示していないが熱溶融層2をさらに多層構造として接着性などの機能を付加してもよい。
【0011】
本発明の接続部材を用いた電極の接続構造について、図4〜5により説明する。図4は、基板6に形成された突出電極7と、ガラス基板6’の平面電極8とが本発明の接続部材を介して接続された構造である。すなわち、相対峙する電極列間の少なくとも一方が突出した電極列間の構造であって相対峙する電極列間で接続されている。また、熱溶融層2が突出電極7の少なくとも突出する電極の周囲を覆っている。ここに平面電極8は、基板6’面からの凹凸がないか、あっても数μm以下とわずかな場合をいう。これらを例示すると、アディティブ法や薄膜法で得られた電極類が代表的である。図5は、基板に形成された電極が突出電極7と7’同士の場合である。すなわち、図2で示した両面に熱溶融層2及び2’を有する接続部材を介して接続した構造である。熱溶融層2及び2’はそれぞれ突出電極7と7’の突出する電極の周囲を覆っており、それぞれの基板面と接している。図4〜5において、基板6としてはポリイミドやポリエステルなどのプラスチックフィルム、ガラスエポキシなどの複合体、シリコンなどの半導体、ガラスやセラミックスなどの無機物などが例示できる。突出電極7は上記した他に、各種回路類や端子類も含むことができる。なお、図4〜5で示した各種電極類は、それぞれの任意に組み合せて適用できる。
【0012】
本発明の接続部材は熱溶融層2の引張強さが0.3kgf/m以上、より好ましくは1.0kgf/mm以上、伸びが100%以下であるので、熱溶融層2がフィルム基材としての機能を果たし、仮圧着時に基材を剥離する必要がなく、フィルム基材剥離不具合が無くなり、仮圧着のタクトタイムの短縮が可能である。また、従来、フィルム基材として使用したポリ四フッ化エチレン及びPET等の産業廃棄物が発生せず、環境保護にも適している。さらに、作業性及び運搬性の観点から接続部材はシートあるいはロール状の巻物とすることが可能である。
【実施例】
【0013】
次に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
(1)接続部材の作製
熱溶融層としてフェノキシ樹脂(高分子量エボキシ樹脂)を押出すことにより、厚み30μmの熱溶融層を得た。さらに、フェノキシ樹脂とマイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ樹脂(エポキシ当量185)の比率30/70とした酢酸エチル30重量%溶液に、粒径5±0.2μmのポリスチレン粒子にNi/Auの厚さ0.2/0.02μmの金属被覆を形成した導電性粒子を5体積%添加し混合分散した。この分散液を上記の熱溶融層にロールコータで塗布し、110℃、20分乾燥し、厚み50μmの接続部材を得た。この熱溶融層の引張強さはJ1S−K6887で2.0kgf/mmあり、伸びは80%であった。
(2)接続
ポリイミドフィルム上に高さ38μmのCu回路を有する二層FPC回路板(回路ピッチは70μm、電極幅20μmの平行回路の電極)とガラス1.1mm上に酸化インジウム厚み0.2μm(lTO、表面抵抗20Ω/口)の薄膜回路を有する平面電極側に導電性接着剤層がくるようにした。ロール状の前記接続部材を2mm幅に裁断し、ポリ四フッ化エチレンを介して、仮圧着を室温(25℃)、圧力0.5MPa、接続時間0.1sで金属ツールにより行った。接続部材は、ロールから導電性接着剤層が次層ロール表面の熱溶融層に転写することなく取り出せ、短時間で仮圧着することができた。この後、他の回路板と上下回路を位置合せし、150℃、20kgf/mm、15sで接続した。
【0014】
(3)評価
この接続体の断面を研磨し、電子顕微鏡観察したところ、図4相当の接続構造であった。隣接する電極間のスペースは気泡の混入が無く粒子が球状であったが、電極上は粒子が圧縮変形され、上下電極と接触保持されていた。相対峙する電極間を接続抵抗、隣接する電極間を絶縁抵抗として評価したところ、接続抵抗は1Ω以下、絶縁抵抗は10Ω以上であった。これらは85℃、85%、RH1000時間処理後も変化がほとんど無く、良好な長期信頼性を示した。
【0015】
(実施例2)
実施例1の熱溶融層としてEVAフィルム(厚み;30μm、引張強さ1.0kgf/mm、伸び90%)を用い、このフィルムに実施例1と同様に分散液を塗布し、接続部材を得た。そして、実施例1と同様にして図4相当の接続体を得た。実施例1と同様に評価したところ、良好な接続特性を示した。
【0016】
(実施例3)
実施例1と同様であるが、導電粒子層の他面に、さらに熱溶融層を形成し、図2の3層構造の接続部材を得た。実施例1のFPC同士を同様に接続し、図5相当の接続体を得た。実施例1と同様に評価したところ、良好な接続特性を示した。
【0017】
以上、詳述したように本発明によれば、フィルム基材を使用しないため、仮圧着時の時聞が短縮され、フィルム基材の剥離不具合がなく、高分解化かつ接続信頼性に優れた接続部材、及び、これを用いてそれらの特性を有した電極の接続構造並びに接続方法が簡単に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の接続部材を示す断面模式図。
【図2】本発明の他の接続部材を示す断面模式図。
【図3】本発明の他の接続部材を示す断面模式図。
【図4】本発明の接続部材を用いた電極の接続構造例を示す断面模式図。
【図5】本発明の接続部材を用いた電極の接続構造例を示す断面模式図。
【符号の説明】
【0019】
1 導電性接着剤層 2 熱溶融層
3 接続部材 4 導電材料
5 バインダ 6 基板
7 突出電極 8 平面電極





【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電材料とバインダとよりなる加圧方向に導電性を有する接着剤層の少なくとも片面に、引張強さが0.3kgf/mm以上であり、伸びが100%以下であるフェノキシ樹脂またはEVA共重合体を含む熱溶融層が設けられている接続部材。
【請求項2】
熱溶融層が、加圧方向に導電性を有する接着剤層の両面に設けられている請求項1に記載の接続部材。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−9215(P2007−9215A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−187861(P2006−187861)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【分割の表示】特願平10−78191の分割
【原出願日】平成10年3月26日(1998.3.26)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】