説明

接触・非接触共用型ICカードと非接触型ICカード、およびそれらの製造方法

【課題】 接触・非接触兼用型ICカード、または非接触単機能のICカードにおいて、カード基体内のアンテナコイルとICモジュール間の良好な接続を確保する。
【解決手段】 本接触・非接触共用型ICカード、または非接触型ICカードは、アンテナコイル20を形成したアンテナシート101と、少なくとも接触端子板側のコアシート102と、の間が熱溶融性接着シート106を介して積層され、アンテナコイルの両端部20a,20bとICモジュールのアンテナ接続用端子間を導電性接着剤で接続したICカードにおいて、前記アンテナシートのアンテナコイル20がアンテナシート用基材に非熱溶融性接着剤によりラミネートした金属箔をエッチングして形成したものであり、かつ該アンテナコイルの少なくとも両端部を形成面の反対側から切削し、アンテナシート用基材101cを貫通させて接続端子が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接触・非接触共用型ICカードと非接触型ICカード、およびそれらの製造方法に関する。詳しくは、カード基体内にアンテナコイルを有し、当該アンテナコイルと接触・非接触共用または非接触ICモジュールのアンテナ接続用端子とをICモジュールの直下で接続した形態のICカードとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
接触型と非接触型の双方の機能を有する接触・非接触共用型ICカードは、デュアルインターフェースカードまたはコンビカードとも言われている。このものは接触による確実な決済と非接触による簡易、迅速な認証機能を有することから、広範に使用されるようになっている。本来、デュアルインターフェースカードは、高度な暗号技術が必要であってセキュリティを求められる分野は接触IC機能(入金やATMでの引き落とし)で用いられ、小額決済やゲート通過等の利便性は非接触IC機能で用いられ、なおかつ両者のデータをICチップ内で共有できるメモリ領域があることが特徴である。
従って、クレジットカード、銀行カード等の金融系のカード、定期券のような交通系カード、社員証、学生証のようなIDカードなどを、それぞれ組み合わせ、セキュリティと利便性を同時に要求される分野で利用されている。
【0003】
一方、非接触型ICカードは、外部機器と接触通信を行なわないので、接触端子板をカード表面に持つ必要がない。そのため、一般的には、ICチップ(端子板のないICモジュールである場合もある。)をカード基体内に埋設してしまう形態になる。しかし、ICチップを埋設する形態では、ICカードの製造工程で何らかの不具合(ICチップ以外の原因の)が生じた場合は、ICチップを含めて再利用できなくなり損害が大きくなる。
そこで、非接触ICカードであっても、ICチップが端子基板(端子としての機能を持たない形式的なまたは装飾的な基板)に保持された形態にして使用し、基板のアンテナ接続用端子(非接触インターフェース)とカード基体内のアンテナコイル両端部をカード表面から切削した凹孔内で接続する、という形態が採用される場合がある。この形態では、製造不良が生じてもICチップを取り出して再使用できるという利点がある。本発明の非接触型ICカードはこのような形態のものを意味する。
【0004】
ところで従来から、前記の接触・非接触共用型ICカードの形態とその製造方法は、大別して3種類(従来方式1〜3)ほどがある。図9〜図11を参照して説明する。
従来方式の1は、図9の断面図に示す形態である。このものは接触用のIC端子板51やアンテナ20を備え一体化したICモジュールからなるアンテナ基板101を、樹脂や接着剤で平板化し(図9(A))、表裏面にカバーシート104,105を熱プレスや接着剤で貼り付けしたものである(図9(B))。この形態のものは、接触IC端子板51の位置精度を高くすることが困難であることや、プレス時にICチップの破壊を生じる問題があり、広く用いられることはなかった。
【0005】
従来方式の2は、図10に示す形態である。図の(A)、(B)は断面図、(C)は透視平面図である。このものは、多数の開口10hを設けたアンテナシート(金属箔をラミネートしたシートの該金属箔をエッチングしてアンテナ20を形成したシート)101の両面を熱融着性のカード基材102,103で挟み込みし(図10(A))、熱プレスして上記開口10hを通じて、上下のカード基材102,103を融着させて一体化する。個片にカード化した後、表面から切削加工して端子を露出させ、ICモジュール50を埋設すると同時にアンテナ20との電気的接続を行なう方法である(図10(B))。
この方法は接着シートを使用しない利点があるが、アンテナシート101の周囲部分を個片のカードのエッジの内側にする必要があるため(内側にしないと周囲部分が融着しないので剥がれてしまう)、個片化したアンテナシート100を使う必要があり、高い精度で位置合わせすることが難しいことや端子板51周囲の切削時に、基材間の剥離が生じる等、加工上多くの問題がある。
【0006】
アンテナシート101のアンテナ20の両端部20a,20bとICモジュール50のアンテナ接続用端子との接続は、カード表面側からICモジュール装着用凹部を掘削する際に、同時にアンテナの両端部20a,20bも掘削し、露出したアンテナ20の金属面とアンテナ接続用端子間に溶融金属(半田)や導電性接着剤9等を充填して電気的に接続する方法が行われている。
図10(C)は、ICカード基体(ICモジュール装着前の状態)を透視した平面図であり、カード基体10内に多数の開口10hを設けたアンテナシート101が埋設されていることを示している。
【0007】
従来方式の3は、図11の断面図に示す形態である。この方式はアンテナシート101に熱融着性でない基材を使用し、その両面のカード基材102,103とを接着シート106,107を介して貼り合わせる方法である。従来方式の2と類似点もあるが、アンテナシート101を個片に切断する必要がなく多面付けの状態で取り扱いできる利便性と、接着シート106,107を応力吸収を兼ねたスペーサシートとして用い得ることにより、カード表面の平滑性を良くし、同時に文字エンボス加工適性をも向上させられる利点がある。アンテナシート101のアンテナの両端部20a,20bとICモジュール50のアンテナ接続用端子との接続は、従来方式の2と同様に行う。
【0008】
しかし、従来方式の3では、アンテナシート101のアンテナコイル20面と接続するアンテナの両端部20a,20bが、ICカード1の表面側(接触端子板51面側)に向いているため、カードの表面側から、アンテナコイル両端部20a,20bが露出するように切削を行うと、アンテナコイル20の金属箔層に達するより前に、エンドミルの刃先が、まず熱溶融性接着シート106と接する界面に達することになる。
そうすると、エンドミル刃の高速回転により加熱され、比較的低温で溶け出す性質の熱溶融性接着シート106のかなりの厚みの層が粘着化し、その切削屑が、切削中の凹部形状の周辺部やエンドミル刃にまつわり付いて、ICモジュール装着用凹部30やアンテナコイル両端部20a,20bの高い精度での切削形状が得られなくなるという問題があった。特に、アンテナコイル両端部20a,20bは、金属箔層の厚み内に平らな底面が露出するように切削するのが好ましく、金属箔層を突き抜いてしまったり、底面の形状が変形すると接触不良となったり耐久性が低下する傾向がある。
【0009】
図12は、エンドミル切削によるICモジュール装着用凹部形状を示す図である。
図12(A)は、正常な切削形状であり、(B),(C)は切削屑により形状が変形した例である。図12(B)では、ICモジュール装着用凹部30の内側の一段と深くなった部分(第2凹部32)の形状が、正しい矩形状ではなく歪んだ形状になっていることを示し、導通用凹孔33a,33bも変形していることが認められる。エンドミルの刃先に粘着した接着剤が付着しているため、径が太くなり歪んでしまうためと考えられる。
図12(C)では、第2凹部32の周囲に接着剤カスやコア基材の切削カスが付着したり、導通用凹孔33a,33b内のコア基材を完全には削りきれなくなっている状態が示されている。エンドミルの刃先に熱溶融性接着剤の屑やカス等が付着し切削が不完全になるためと考えられる。
【0010】
ここで、参考のため、エンドミル刃について説明する。図13は、エンドミル刃の形状を示し、図13(A)は2枚刃、図13(B)は4枚刃を示している。いずれも上段は側面図、下段は刃先の正面図である。エンドミル刃は、他に先端が丸いボール状のものや平面(刃先先端の投影が)なもの、直筒状や先細りのテーパ状等各種がある。また、回転中心軸の両側に刃先がある2枚刃や4枚刃、片側にのみ刃先がある片刃とがある。
図13は、ほぼ直筒状の2枚刃と4枚刃を示している。ICカードのICモジュール装着用凹部や導通用凹孔の切削加工に使うものの刃先の直径は、5.0mmから1.0mm程度のものであり、先端が上記のほぼ平面(スクェア)なものが一般的に使用される。
図14は、正常な状態の刃先(左側)に対して、粘着剤が付着した刃先(右側)の概略図を示している。粘着剤が付着した状態では正常な切削が不可能になる。
【0011】
本願は、エンドミル刃に接着シートの切削屑等が付着しない状態でICモジュール装着用凹部や導通用凹孔を切削することを検討したものである。すなわち、カードの表面側からアンテナ端部を切削する際に、アンテナシートのアンテナコイル両端部が、カード表面側(端子板側)から見てアンテナシート用基材の反対側にあれば、エンドミル刃の先端が熱溶融性接着シートに接触した状態で金属箔層を切削することはなく、設計形状の導通用凹孔を切削することが可能になる。本発明はこのような観点に基づくものである。
【0012】
本願に直接関係する先行特許文献は検出できないが、接触型非接触型共用ICカードとその製造方法に関して特許文献1がある。しかし、同文献では接着シートを介してカード基体材料を積層することがないので、本願が問題とする現象が生じることはない。
特許文献2も、接触型非接触型共用ICカードおよびその製造方法に関するが、カード基体材料の積層に熱溶融性の接着シートを使用していない。
【0013】
【特許文献1】特開2000−207518号公報
【特許文献2】特開2000−182017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記のように、カード基体材料を接着シートを介して積層する場合、熱溶融性接着シート側からICモジュール装着用凹部やアンテナ端子への導通用凹孔を掘削すると、エンドミルの高速回転により加熱された接着シートの粘着化した樹脂や切削屑が、エンドミルや凹孔の周囲にまつわり付いて、設計形状の装着用凹部や導通用凹孔を掘削できなくなる問題がある。
そこで本発明では、導通用凹孔が切削されるアンテナコイル両端部の金属箔層を切削が進行する方向側から見て、アンテナシート用基材の直下側に形成して、金属箔層の切削時に熱溶融性接着シートの影響を受けなくすることを研究して完成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の要旨の第1は、アンテナコイルを形成したアンテナシートと、少なくともICカードの接触端子板側のコアシートと、の間が熱溶融性接着シートを介して積層されており、該アンテナシートのアンテナコイルの両端部と接触・非接触共用ICモジュールのアンテナ接続用端子間を導電性接着剤で電気的に接続した接触・非接触共用型ICカードにおいて、前記アンテナシートのアンテナコイルがアンテナシート用基材に熱硬化性接着剤によりラミネートした金属箔をエッチングして形成したものであり、かつアンテナシートの該アンテナコイルの両端部を形成面の反対側から切削し、アンテナシート用基材を貫通させて接続端子が形成されていることを特徴とする接触・非接触共用型ICカード、にある。
【0016】
本発明の要旨の第2は、アンテナコイルを形成したアンテナシートと、少なくともICカードの端子板側のコアシートと、の間が熱溶融性接着シートを介して積層されており、該アンテナシートのアンテナコイルの両端部と非接触ICモジュールのアンテナ接続用端子間を導電性接着剤で電気的に接続した非接触型ICカードにおいて、前記アンテナシートのアンテナコイルがアンテナシート用基材に熱硬化性接着剤によりラミネートした金属箔をエッチングして形成したものであり、かつアンテナシートの該アンテナコイルの両端部を形成面の反対側から切削し、アンテナシート用基材を貫通させて接続端子が形成されていることを特徴とする非接触型ICカード、にある。
【0017】
本発明の要旨の第3は、アンテナコイルを形成したアンテナシートと、少なくともICカードの接触端子板側のコアシートと、の間が熱溶融性接着シートを介して少なくとも各々1枚のコアシートが積層され、該アンテナシートのアンテナコイルの両端部と接触・非接触共用ICモジュールのアンテナ接続用端子間を導電性接着剤で電気的に接続した接触・非接触共用型ICカードの製造方法において、以下の(1)から(6)の工程、(1)アンテナシート用基材に、金属箔を熱硬化性接着剤を用いてラミネートし、アンテナシートを準備する工程、(2)上記アンテナシートの金属箔面にアンテナパターン形状にレジスト膜を形成してエッチングし、アンテナコイルと前記アンテナ接続用端子間とを接続するアンテナコイル両端部を形成する工程、(3)アンテナコイルを形成したアンテナシートの両面に、熱溶融性接着シートを介してコアシートを積層し、さらにその両面に透明オーバーシートを積層した後、熱圧プレスして一体のカード基体にする工程、(4)アンテナシートの前記アンテナコイル両端部がある側とは反対側面から、エンドミル刃を用いて、ICモジュール装着用凹部を切削する工程、(5)同様にして、エンドミル刃を用いてアンテナコイル両端部の一部が露出した導通用凹孔を形成する工程、(6)導通用凹孔内に導電性接着剤を充填すると共に、ICモジュールのICカード基体と接する部分に熱接着テープまたは液状接着剤を施して、ICモジュールをICモジュール装着用凹部内に装填し、ICモジュールのICカード基体への固定と、ICモジュールとアンテナコイルとの電気的接続を行なう工程、を有することを特徴とする接触・非接触共用型ICカードの製造方法、にある。
【0018】
本発明の要旨の第4は、アンテナコイルを形成したアンテナシートと、少なくともICカードのICモジュール基板側のコアシートと、の間が熱溶融性接着シートを介して少なくとも各々1枚のコアシートが積層され、該アンテナシートのアンテナコイルの両端部と非接触ICモジュールのアンテナ接続用端子間を導電性接着剤で電気的に接続した非接触ICカードの製造方法において、以下の(1)から(6)の工程、(1)アンテナシート用基材に、金属箔を熱硬化性接着剤を用いてラミネートし、アンテナシートを準備する工程、(2)上記アンテナシートの金属箔面にアンテナパターン形状にレジスト膜を形成してエッチングし、アンテナコイルと前記アンテナ接続用端子間とを接続するアンテナコイル両端部を形成する工程、(3)アンテナコイルを形成したアンテナシートの両面に、熱溶融性接着シートを介してコアシートを積層し、さらにその両面に透明オーバーシートを積層した後、熱圧プレスして一体のカード基体にする工程、(4)アンテナシートの前記アンテナコイル両端部がある側とは反対側面から、エンドミル刃を用いて、ICモジュール装着用凹部を切削する工程、(5)同様にして、エンドミル刃を用いてアンテナコイル両端部の一部が露出した導通用凹孔を形成する工程、(6)導通用凹孔内に導電性接着剤を充填すると共に、ICモジュールのICカード基体と接する部分に熱接着テープまたは液状接着剤を施して、ICモジュールをICモジュール装着用凹部内に装填し、ICモジュールのICカード基体への固定と、ICモジュールとアンテナコイルとの電気的接続を行なう工程、を有することを特徴とする非接触ICカードの製造方法、にある。
【発明の効果】
【0019】
本発明による接触・非接触共用型ICカードは、アンテナシートを熱溶融性接着シートを介して、コアシートと積層した構成を有するが、アンテナコイルの少なくとも両端部分の導通用凹孔がアンテナシート用基材側から切削されているので、当該導通用凹孔が変形したり、金属層を突き抜いた状態になっていることがない。従って、接触不良を生じることがなく、電気的特性や耐久性に優れたICカードとなる。
本発明による非接触型ICカードも、同様な効果を奏する。
【0020】
本発明による接触・非接触共用型ICカードの製造方法では、アンテナコイルの両端部に対する導通用凹孔の切削を熱溶融性接着シートが介在しないアンテナシート用基材側から切削するので、切削するエンドミル刃に熱溶融性接着シートの切削屑等がまとわり付くことがなく、設計どおりの導通用凹孔を切削でき、ICモジュールとアンテナコイル間の良好な接続を確保できる。また、そのため、ICカードの耐久性も優れたものとなる。
カード基体の積層工程を、アンテナの多面付けシート状態で行なうことができるので、前記従来法の2のように個片に切断して行なう場合よりも生産性を高めることができる。
本発明による非接触型ICカードの製造方法も、同様な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を図面を参照して説明することとする。
図1は、本発明の接触・非接触共用型ICカード(第1形態)の断面図、図2は、同平面図、図3は、本発明の非接触型ICカード(第2形態)の断面図、図4は、非接触ICカードの平面形態の一例を示す図、図5は、アンテナシートを示す図、図6は、ICモジュール装着用凹部とアンテナ接続用の導通用凹孔を示す図、図7は、導通用凹孔の詳細構造を示す図、図8は、接触・非接触共用ICモジュールを示す図、である。
【0022】
図1のように、本発明の接触・非接触共用型ICカード(第1形態)1は、カード基体100にICモジュール装着用凹部30を掘削し、当該凹部内に接触・非接触共用ICモジュール50を装着した構造にされている。なお、接触・非接触共用型ICカード1を本発明の第1形態とする。後に詳述するが、接触・非接触共用ICモジュール50は、表面側の接触端子板51の反対側面に接触・非接触共用ICチップ3を有し、当該ICチップ3の非接触インターフェースがアンテナ接続用端子52a,52bに接続している。そして、アンテナ接続用端子52a,52bが導通用凹孔33a,33bに充填した導電性接着剤を介してカード基体100内のアンテナコイル20の両端部20a,20bに接続するようにされている。
【0023】
なお、ICモジュール50にはテープ状にされたCOT(Chip On Tape)が多用されるが、COB(Chip On Board)でもCOF(Chip On Film)でも良いものである。
【0024】
接触・非接触共用型ICカード1の平面形態は、図2のようになる。ICカード基体100内にアンテナコイル20を有し、その両端部20a,20bが、接触端子板51面下のICモジュール装着用凹部30の両側で、導通用凹孔33a,33b内に充填した導電性接着剤により前記アンテナ接続用端子52a,52bに接続するようにされている。アンテナコイル20はカード基体100内に埋設されているので、外見からは勿論視認できないものである。
【0025】
カード基体100は、アンテナコイル20が形成されているアンテナシート101を中心層として、その両側に熱溶融性の接着シート106,107を介してコアシート102,103を積層し、さらに最表面に透明なオーバーシート104,105を積層した構成になっている。従来のプラスチックカード、例えば接触ICカードは自己融着性基材を積層し、熱プレスラミネートし一体化したカード基体を用いることが一般的であるが、非接触ICカードにおいてはエッチングによるアンテナシートを用いることが多く、そのようなアンテナシート基材は自己融着性を持たない材料(例えば、ポリイミド、PETなど)であるため、接着シート106,107が必須の構成となる。なお、コアシートやオーバーシートには、PET−G材料を主成分とするものが多く使用されるが、この相互間は熱融着するので、接着シートを使用しなくてよい。
カード基体の層構成は上記に限定されるものでなく、5層から11層程度までの各種の構成を採用することができる。以上の構成は、最近の接触・非接触共用型ICカード1に共通の構成である。
【0026】
本発明の接触・非接触共用型ICカード1の特徴は、アンテナシート101のアンテナコイル20の両端部20a,20bが、アンテナシート用基材101cの接触端子板51とは反対側面101bに形成されていることにある。図1では、アンテナコイル20の全体が反対側の面101bに形成されているが、少なくとも両端部20a,20bが反対側の面101bにあればよく、アンテナコイル20自体は接触端子板51側(以下、「表面側」ともいう。)の面101aにあってもよい。近年は、アンテナシート用基材101cの両面に金属箔層を設けて、両面の金属により共振回路構成のためのキャパシタを形成する場合も多く、その他の配線も表裏面に形成できるからである。
【0027】
このように反対側面101bにするのは、前記のように、両端部20a,20bを表面側から掘削する際に、その直上に熱溶融性接着シート106の層があると、その切削屑が生じてエンドミルによる切削に障害となる問題があり、それを避けるためである。
すなわち、表面側から切削してアンテナシート用基材101cを介して金属箔層を切削し、切削を当該金属箔層内で止めれば、上記のような問題が生じないことになる。
アンテナシート用基材101cと金属箔層の間にも薄層の接着剤層(図1では不図示)があるが、この層には熱硬化性の材料や融点の高い材料が使用され、しかも2〜10μm程度の極めて薄い層であるため、粘着性の切削屑による影響が殆どない利点がある。これに対し、熱溶融性接着シート106,107は、本来比較的低い温度で溶融することが条件であり、その厚みも数十μmにもなるので、エンドミルの発熱により接着シートがエンドミルに絡みつき、切削に与える影響が大きくなるのである。
【0028】
図3は、本発明の非接触型ICカード(第2形態)の断面図である。非接触型ICカード2を第2形態とする。第2形態も、カード基体100にICモジュール装着用凹部30を掘削し、当該凹部内に非接触ICモジュール60を装着した構造にされている。
非接触ICモジュール60は、表面側のICモジュール基板61の反対側面に非接触ICチップ4を有し、当該非接触ICチップ4の非接触インターフェースがアンテナ接続用端子62a,62bに接続している。そして、アンテナ接続用端子62a,62bが導通用凹孔33a,33bを介してカード基体100内のアンテナコイル20の両端部20a,20bに接続するようにされている。ICモジュール60は、アンテナ接続用端子以外の端子を持っていない。
【0029】
カード基体100も、第1形態のICカードと同様であり、アンテナコイル20が形成されているアンテナシート101を中心層として、その両側に接着シート106,107を介してコアシート102,103を積層し、さらに最表面に透明なオーバーシート104,105を積層した構成になっている。中心層という表現を用いたが、アンテナシート101は層構成の中で必ずしも対称的(シンメトリー)な配置になっていなくてもよい。図3の場合は、コアシート103がコアシート102に対して厚みのあるものが使用されている。コアシート103を厚くすることにより、従来基材部分に埋め込んで使用していたリライトラベルや点字ラベル等を貼りつける等の多機能化への利点が得られるからである。ただし、一般に広く流通するカードとしてはJISX6301:2005「識別カード−物理特性」ID−1カードに準拠させることが望ましく、カードの反りやサイズについては総合的に配慮する必要がある。
【0030】
なお、上記JISX6301:2005によれば、カードサイズの公称値は、横85.60mm×縦53.98mmであり、厚み0.76mmとされている。厚み許容寸法は、0.68〜0.84mmである。また、カード全体の反り(8.11)は、エンボス前のカードではカード厚みを含め1.5mm以下とされている。
【0031】
アンテナシート用基材に自己融着性基材を用いない限り、接着シート106,107が必須の構成であるのも同様である。カード基体100の層構成は、第1形態と同様に、各種の構成を採用できるものである。
【0032】
本製法ではアンテナカードを先行して製造し、端子部を切削した該アンテナカードにモジュール化したICチップを最終工程で接続することにより、長時間のラミネートプレスによるICチップのダメージを抑えることができるという利点がある。
なお、アンテナカードとはアンテナシートをプレスした後、カード形状(ID−1サイズ)に打ち抜いた状態をいう。エンドミルでザグリ切削前のカードを指すことが多い。
一方、アンテナシートとは、アンテナを形成した状態のシートをいう。多面付けの大判シートまたは1面付けのシートの意味で、プレス前の状態をいう。
【0033】
ICモジュール基板61をISOの規格に準じた位置に置く場合、平面形状は図2と同様になる。非接触型ICカード2は、外部装置と接触して電気的な通信をする必要がないので、本来の意味での接触端子パターンは必要ではない。ICモジュール基板61の背面側には、ICチップを搭載し、アンテナ接続用端子62a,62bを設けることは、第1形態のICカードと同様であり、同様の接続構造が採用される。ICモジュール基板61の表面側(カードから見た場合の表面側)には、接触端子パターンは必要ではないので、自由なデザインができ、表面保護、強度向上などを目的とした補強板を貼り付けることもできる。また、IC接触端子による位置の限定がないので、サイズ、平面搭載位置は自由に設定できる。
【0034】
図4は、本発明の非接触ICカードの平面形態の一例を示す図である。SIM5を保持するカード基体100に、非接触ICモジュール60を一体に組み込みした形態である。
SIM5をブリッジ16から折り取りする前においては、非接触ICカード2は接触端子板51と接触ICチップを有するので、接触型ICカードとしても機能する。SIM5を折り取りした残りの状態では、非接触ICモジュール60とアンテナコイル20により、非接触型ICカード2としてのみ機能することになる。ただし、この例に限らず各種の実施形態を採用できるものである。
【0035】
図5は、アンテナシート101を示す図であって個片化された状態を示す。図5(A)は、接触端子板面から見た表面図、図5(B)は、裏返して背面側から見た図である。
アンテナコイル20に相当する部分は、アンテナシート用基材101cの表裏どちらに配置しても構わないが、アンテナコイル両端部20a,20bは必ず背面側にあることが本発明では必須の条件である。図示してないが、共振回路構成の上で必要であればキャパシタとなるパターンを配しても良い。導電性部材8は、アンテナコイル20を表面側で跨いで接続する部分である。
【0036】
アンテナシート101は、このようなルールでパターン化されており、ミリングマシン(NC加工機)が彫り進んだ際に、最初に接触する面の金属箔層はエッチングにより除去されており、背面側に端子となる両端部20a,20bが配置されていることになる。
アンテナシート101はカード基体100と共に一体化された後、ICモジュールを埋め込むためのICモジュール装着用凹部30と、端子である両端部20a,20bを露出するための切削加工が行なわれる。この切削加工による凹孔を導通用凹孔33a,33bというものとする。
【0037】
図6は、ICモジュール装着用凹部とアンテナ接続用の導通用凹孔を示す図であって、図6の上段は平面図、下段は、導通用凹孔33a,33bを通る断面図、である。
ICモジュール装着用凹部30と導通用凹孔33a,33bの掘削には、異なる実施形態があって、図6(A)のように、ICモジュール装着用凹部30とアンテナ接続用導通用凹孔33a,33bが隣接接続していて階段状に切削する場合と、図6(B)のように、導通用凹孔33a,33bは、装着用凹部30とは多少離れた位置に独立した孔として形成される場合、とがある。ICモジュール装着用凹部30の切削と、アンテナ接続用の導通用凹孔33a,33bの切削の2つの工程は、連続的に1本のエンドミル刃により切削しても、2種類のエンドミル刃を用いて2つの工程として切削しても構わない。
【0038】
また、ICモジュール装着用凹部30は、ICモジュール50の周囲の端子基板部分を懸架する第1凹部(図6の断面図において破線より上の部分)31とICモジュール50のICチップをモールドした部分を納める部分であって第1凹部よりは深く掘削された第2凹部32とから構成されている。図6では、縦方向寸法が拡大図示されているため、かなり深い形状に見えるが、ICモジュール端子基板の横寸法が10mm〜15mm程度であるのに対し、ICチップ3をモールドした部分の最大厚みは、400μm乃至600μm程度のものだから、実際には偏平な掘削形状になる。
【0039】
<接触・非接触兼用型ICカードの製造工程>
次に、本発明の接触・非接触兼用型ICカードの製造方法について説明する。接触・非接触兼用ICモジュールは、COT等の接着シート貼り付け済の既製のものが予め準備されており、カード基材に対する必要な印刷等は既にされているものとする。
(1)まず、アンテナシートを準備する工程を行なう。
これには、アンテナシート用基材に金属箔をラミネートすることにより行なう。アンテナシート用基材にはPETシートを好ましく使用するが、後述のように各種材料を使用できるものである。厚みは、10μmから500μm程度のものを使用できる。金属箔には銅やアルミ箔を使用でき、厚みは、15μmから50μm程度のものが好ましい。
【0040】
アンテナシート用基材101cと金属箔をラミネートする接着剤には、熱可塑性、熱硬化性、または湿気硬化型などの種々の材料を使用できるが、エッチング工程に耐えられる耐熱性を備えるものが適切であり、熱硬化型接着剤が一般的には使用される。
本発明では、エッチング工程やICカードの使用環境で熱溶融しない熱硬化性接着剤の使用を前提としている。金属箔はアンテナシート用基材101cの片面にのみラミネートしても良いが両面に配線したり、キャパシタを形成する場合は両面ラミネートにする。
【0041】
(2)次に、アンテナシートの金属箔面にアンテナパターン形状にレジスト膜を形成してエッチングし、アンテナコイル20と前記アンテナ接続用端子間とを接続するアンテナコイル両端部20a,20bを形成する工程を行なう。
レジスト膜の形成は、レジスト印刷法によるものでも、フォトマスクを使用するフォトレジストであっても何れでも構わない。アンテナコイル20は、カードの周囲を数ターンするように形成されることが多いが、文字エンボス部を回避したり、アンテナ特性を考慮するため、ICカードの用途によって各種の形状が採用されている。
【0042】
(3)続いて、アンテナコイル20を形成したアンテナシート101の両面に、熱溶融性接着シートを介してコアシートを積層し、さらにその両面に透明オーバーシートを積層した後、熱圧プレスして一体のカード基体にする工程を行なう。
アンテナシート101の両面に、熱溶融性接着シート106,107を介してコアシート102,103を積層し、さらに両側の最表面に透明オーバーシート104,105を積層して仮止めする。その後、仮止め積層体を鏡面板間に挟んで、熱と圧を加えて一体にする工程を行なう。熱溶融性接着シート106,107には、比較的低温で接着する熱可塑性のものを使用できる。例えば、ポリエステル系のホットメルト接着シート等が用いられる。厚みは30μmから100μm程度のものが使用できる。積層材料は以上の構成に限定されないが、熱圧プレスした最終のカード基体100の厚みが、0.76±0.08mmの規格範囲に納まるように調整する。
【0043】
(4)続いて、アンテナシートの前記アンテナコイル両端部がある側とは反対側面から、エンドミル刃を用いて、ICモジュール装着用凹部を切削する工程を行なう。
一般に、上記(3)の工程までは、多面付けのシートの状態で加工することが多いが、この(4)の工程以降は、個片の一枚カードに断裁してから加工することが多い。
前記のように、アンテナシート用基材101cのアンテナコイル両端部20a,20bがある側とは反対面側から、エンドミル刃を用いて、ICモジュール装着用凹部30と導通用凹孔33a,33bを切削する。切削は、ミリングマシンにエンドミル刃を装着し、プログラムにより数値制御(NC制御)された切削方法が行なわれる。エンドミルの刃先は、オーバーシート104、コアシート102、接着シート106、アンテナシート用基材101cと彫り進み、金属箔層(コイル端部20a,20b)に到達してから設定された深さで停止する。ICモジュール装着用凹部30は、ICモジュール50の樹脂モールド部7が納まる深さまで切削する。
【0044】
(5)同様にして、エンドミル刃を用いてアンテナコイル両端部の一部が露出した導通用凹孔を形成する工程を行なう。通常は、導通用凹孔33a,33bは第1凹部31面に掘削されることになる。大きさは、直径が1mm〜3mm程度の円形や一辺が1mm〜3mmの矩形状等になる。深さは、金属箔の層が、1μm乃至十数μmの深さで浅く切削される程度とする。導通用凹孔33a,33bの底面が平面な底面を形成するように、金属箔の層中で停止するようにするのが好ましい。層中で停止することが広い接触面積が得られるからである。切削深さは、予め設定された深さまで彫り進められる。通常、金属箔の層を貫通しないように設定されている。
【0045】
図7は、導通用凹孔の詳細構造を示す図である。図6(B)の右側の導通用凹孔33aの断面図である。アンテナシート101は、アンテナシート用基材101cを中心層とし、その両側にアンテナコイルやキャパシタ、アンテナコイル両端部20a,20bが形成されている。図7では、アンテナコイル端部20aのみが図示されている。金属箔層はアンテナシート用基材101cの両側の接着剤101s1 ,101s2によりラミネートされていたものであるが、接着剤101s1側の金属箔層は既にエッチングされて除去され無くなっている。接着剤101s2側にはアンテナコイル端部20aが残っている。
【0046】
導通用凹孔33aは、ICモジュール装着用凹部30の第1凹部31面からさらに深く切削したものである。切削はアンテナシート用基材101c側から進行するので、厚みのある熱溶融性接着シートの切削屑等がエンドミル刃に残存する影響を小さくできる。
導通用凹孔33aの底面はアンテナコイル端部20aの金属層の中で平行な底面を形成するように停止するのが好ましい。平行な底面により導電性接着剤と金属層の接触面積を大きくできるからである。両端部の金属は銅箔からなるのが好ましい。酸化による皮膜抵抗を小さくできるからである。なお、接着剤101s1,101s2には、前記のように熱硬化性接着剤等を使用し、その厚みも2〜10μm程度の薄層であるので、切削屑等が発生してもその影響は小さくなる。
【0047】
深さの設定は、カードの層構成により変わることは当然のことであるが、計算により機械的に停止する方法と、端子(コイルの両端部金属)とエンドミル刃先の接触によりセンサーが働き、その情報をフィードバックして停止する方法と、がある。前者の方法が切削速度が早く、後者の方法では、Z軸方向の彫り進む速度は多少遅くなる。これらを併用することが精度向上と時間短縮に貢献する。
【0048】
(6)最後に、導通用凹孔33a,33b内に導電性接着剤を充填すると共に、ICモジュール50をICモジュール装着用凹部内に装填し、ICモジュールのICカード基体への固定と、ICモジュールとアンテナコイルとの電気的接続の工程行なう。
前記のように、接触・非接触兼用ICモジュールは、COT等の接着シート貼り付け済みであることが前提であるが、貼り付けしてない場合は、ICモジュール50が凹部30内でICカード基体100と接する部分に熱接着テープまたは液状接着剤を施す。
この工程では、端子(両端部20a,20b)露出、ICモジュール装着用凹部30の切削がされたカードをインプランター(ICモジュール貼り付け装置)のカードフィーダーにセットし、端子接続、モジュール装着がされた後に、簡易検査が行なわれる。
【0049】
図8は、接触・非接触共用ICモジュールを示す図で、図8(A)は接触端子板面図、図8(B)は背面図、図8(C)は、概略断面図である。接触・非接触共用ICモジュール50は、COT(チップオンテープ)と呼ばれるリール基板に連続して搭載された形態になっている。接触・非接触共用COTの特徴は、表面側には8個の接触端子(C1〜C8)、背面側には、図8(B)のように、ICチップ3搭載部と、表面側接触端子にワイヤ接続するための5箇所の開口(現状利用の5端子分)26と、アンテナ接続用端子52a,52bを有している。ICチップ3の非接触インターフェースであるA1,A2パッドとこのアンテナ接続用端子52a,52b間はワイヤ27で接続されている。ICチップ3とワイヤ接続部は、熱硬化型エポキシ樹脂等でモールドし、樹脂モールド部7として保護されている。
【0050】
接触・非接触共用COTの背面側には、アンテナ接続用端子52a,52b部分を除いて、カード基体100のICモジュール装着用凹部30へ接着するための非導電性熱接着テープをリールテープ全面に貼り付け(施す)しておく。あるいは、上記のように熱接着テープに変えて液状接着剤を用いてもよい。
この接着シート付き接触・非接触共用COTをインプランターにセットし、インプラント工程が開始される。切削済のICカード基体100について、端子露出検査、共振特性検査、電気特性検査等を行なう。合格品は次のユニットにおいて、導通用凹孔33a,33bにディスペンサー機構により熱硬化型導電性樹脂を注入する。熱硬化型導電性樹脂に代えて、半田ペーストや共晶半田を溶かして接続する方法も考えられるが、後半のインプラント工程の中で高温にしたヒータヘッドでの接続工程が必要になる。
【0051】
接着シート付き接触・非接触共用COT50は打ち抜かれ、続いて搭載、シーリング(必要に応じ、端子接続のための高熱ヘッドでのプレス)され、COTの飛び出しや位置、結線に関する簡易的な検査が行なわれ製造工程が完了する。この後、発行処理や文字エンボス、検査等の工程があるが、詳細は省略する。
【0052】
<非接触型ICカードの製造工程>
非接触型ICカードの製造方法も、上記接触・非接触兼用型ICカードと同様の工程で製造できる。前記のように、ISOの規定に制限されないので、ICモジュール基板61の位置や大きさ、形状等は自由にできる。ICモジュールの搭載位置をある程度自由に選べるので、別系統のシステムで動作する接触型ICカードと一枚のICカード内に共存させることもでき、SIMカード等とハイブリッドカードとすることもできる。一方、接触・非接触兼用型ICカードと同一の規格であれば、製造装置やプログラムを共用できる。
非接触ICモジュール60をリールテープ状にできること、ICモジュール背面に接着テープを施しておくことも同様である。
【0053】
カード基体100の層構成は必ずしも、アンテナシート101を中心層として対称構造(シンメトリー)にする必要はなく、片方に偏っていてもよい。基材の厚みを増やすことにより、リライト表示機能のついたラベルを後から埋め込んだり、点字ラベルを貼るなどの組み合わせをすることが可能となる。
【0054】
<その他の材質に関する実施形態>
(1)アンテナシート用基材について
ポリエチレンテレフタレート(PET)の他、PET−G、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリスチレン系、アクリル、ポリプロピレン、硬質塩化ビニル、ABS、ガラスエポキシ基板、などを使用することができる。
【0055】
(2)導電性接着剤について
熱硬化型の導電性樹脂には、銀粒子をベースとするエポキシ樹脂等が使用されるが、銅ペースト、カーボンとの異種金属配合型等を使用できる。硬化タイプには二液硬化型や熱硬化型等がある。熱硬化型導電性樹脂に代えて、半田ペーストや共晶半田を溶かして使用することもできる。
【実施例1】
【0056】
<ICカード基体の製造>
アンテナシート用基材101cとして、厚み38μmの2軸延伸白色PETシートを使用し、その両面に厚み35μmの圧延銅箔を、厚み2〜3μmのエポキシ系熱硬化型接着剤を介してラミネートした。銅箔面に感光性樹脂を塗工し、フォトマスクを介して露光して現像し、レジストパターンを形成した。これをエッチングして、図5のように、接触端子板面側に、ブリッジパターン8を残し、背面側にはアンテナコイル20とアンテナコイル端部20a,20b、ブリッジ接続部8a,8bを有するアンテナシート101とした。アンテナシート101の表裏の配線はブリッジ接続部8a,8bの2箇所を超音波接続したものである。
【0057】
このアンテナシートに対して、その表裏に厚み、50μmのポリエステル系ホットメルト接着シート106,107を介して厚み280μmの白色PET−G樹脂製シートからなるコアシート102,103を、さらにその外側に厚み50μmの透明PET−G樹脂製のオーバーシート104,105を積層し仮貼りした。これらのシートを仮積みした後、プレス機の熱板に置きプレスラミネートした。プレス工程の条件は、熱板温度120°C、圧力2.0MPa、成形加熱時間20分とした。カード基体100の総厚は800μm近くになった。その後、個々のカードサイズに裁断して積層工程を終了した。
【0058】
<接触・非接触ICモジュールの製造>
厚み100μmのガラスエポキシ基板の両面に銅箔を貼り付け、フォトエッチング処理を行なって表面に接触ICカード用端子パターンを形成し、裏面にはアンテナ接続用端子52a,52bの2箇所をその大きさが、2.0mm×3.0mmとなるように形成した。表裏の端子部分には、ニッケルめっき、次いで金めっきを施した。
接触端子板(約13.0mm×11.0mm)の背面側中央部分に、接触・非接触共用ICチップ3をダイボンディングし、5箇所のワイヤボンディング用開口26を介して接触端子裏面側金属面に金ワイヤ接続した。ICチップ3およびワイヤ接続部をエポキシ樹脂でトランスファーモールド(射出成型)して樹脂封止した。
【0059】
このCOTは、接触端子板51面が2列に配列してテープ状に連続的に形成されたものである。樹脂封止したICチップ3側の面に、アンテナ接続用端子(大きさ4.0mm×4.0mm)52a,52bの接続を妨げないように、ポリエステル系ホットメルト接着シートを仮り貼り付けし、インプラント工程の準備をした。
【0060】
<インプラント工程>
個片に裁断したICカード基体100にNC加工を施し、図1、図6(A)のように、ICモジュール装着用凹部30の形成とアンテナ接続のための導通用凹孔33a,33bの切削を行なった。双方の切削には、径1.0mmのエンドミル刃を使用した。
【0061】
この切削済みカードの導通用凹孔33a,33b内に導電性接着剤(銀ペースト)9を注入し、上記で準備したICモジュール50を装着した後、200°Cで1秒間、加熱加圧して固定し、導電性接着剤の硬化を促すエージング工程を経て、接触・非接触共用型ICカード1を完成した。
【実施例2】
【0062】
非接触ICモジュールの製造を以下のようにした以外は、実施例1と同様に加工して、非接触ICカード2を製造した。カード基体100の層構成も実施例1と同一にした。
【0063】
<非接触ICモジュールの製造>
ガラスエポキシ基板の両面に銅箔を貼り付け、フォトエッチング処理を行なって表面は無パターンとし、裏面にはアンテナ接続用端子62a,62bの2箇所をその大きさが、2.0mm×3.0mmとなるように形成した。裏の端子部分には、ニッケルめっき、次いで金めっきを施した。ICモジュール基板(約10.0mm×13.0mm)の背面側中央部分に、非接触用ICチップ4をダイボンディングした。アンテナ接続用端子62a,62bをワイヤ接続した後、エポキシ樹脂でトランスファーモールド(射出成型)して樹脂封止して、非接触ICモジュール60を完成した。
【0064】
<インプラント工程>
実施例1と同様にしてインプラント工程を行い、この切削済みカードの導通用凹孔33a,33b内に導電性接着剤(銀ペースト)9を注入し、上記で準備したICモジュール60を装着した後、200°Cで1秒間、加熱加圧して固定し、導電性接着剤の硬化を促すエージング工程を経て、非接触型ICカード2を完成した。
【0065】
実施例1も実施例2も、良品率をほぼ100%にすることができた。従来、熱溶融性接着シートの下側にあるアンテナコイル端部を切削した場合には、数%以上の不良品が発生したのに比較すれば、大幅な歩留り向上になった。また、耐久性も向上することが認められた。金属箔がアルミニウムである場合についても、別途試験を行なったが、同様に良好な装着用凹部や導通用凹孔の切削形状が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の接触・非接触共用型ICカード(第1形態)の断面図である。
【図2】同平面図である。
【図3】本発明の非接触型ICカード(第2形態)の断面図である。
【図4】非接触型ICカードの平面形態の一例を示す図である。
【図5】アンテナシートを示す図である。
【図6】ICモジュール装着用凹部とアンテナ接続用の導通用凹孔を示す図である。
【図7】導通用凹孔の詳細構造を示す図である。
【図8】接触・非接触共用ICモジュールを示す図である。
【図9】接触・非接触共用型ICカードの従来方式の1を示す図である。
【図10】接触・非接触共用型ICカードの従来方式の2を示す図である。
【図11】接触・非接触共用型ICカードの従来方式の3を示す図である。
【図12】変形したICモジュール装着用凹部形状を示す図である。
【図13】エンドミル刃の形状を示す図である。
【図14】エンドミル刃に接着シートの切削屑が付着した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1 接触・非接触共用型ICカード
2 非接触型ICカード
3 接触・非接触共用ICチップ 4 非接触ICチップ
5 SIM
7 樹脂モールド部
8 導電性部材、ブリッジパターン
9 導電性接着剤
16 ブリッジ
20 アンテナコイル
20a,20b アンテナコイル端部
26 ワイヤボンディング用開口
27 ワイヤ
30 ICモジュール装着用凹部
33a,33b 導通用凹孔
50 接触・非接触共用ICモジュール、COT
51 接触端子板
52a,52b アンテナ接続用端子
60 非接触ICモジュール
61 ICモジュール基板
62a,62b アンテナ接続用端子
100 カード基体
101 アンテナシート
102,103 コアシート
104,105 オーバーシート
106,107 接着シート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナコイルを形成したアンテナシートと、少なくともICカードの接触端子板側のコアシートと、の間が熱溶融性接着シートを介して積層されており、該アンテナシートのアンテナコイルの両端部と接触・非接触共用ICモジュールのアンテナ接続用端子間を導電性接着剤で電気的に接続した接触・非接触共用型ICカードにおいて、前記アンテナシートのアンテナコイルがアンテナシート用基材に熱硬化性接着剤によりラミネートした金属箔をエッチングして形成したものであり、かつアンテナシートの該アンテナコイルの両端部を形成面の反対側から切削し、アンテナシート用基材を貫通させて接続端子が形成されていることを特徴とする接触・非接触共用型ICカード。
【請求項2】
アンテナコイルの前記両端部以外の部分の一部または大部分が前記熱溶融性接着シート側に形成されていることを特徴とする請求項1記載の接触・非接触共用型ICカード。
【請求項3】
アンテナコイルの前記両端部の金属箔が銅箔であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の接触・非接触共用型ICカード。
【請求項4】
アンテナコイルを形成したアンテナシートと、少なくともICカードの端子板側のコアシートと、の間が熱溶融性接着シートを介して積層されており、該アンテナシートのアンテナコイルの両端部と非接触ICモジュールのアンテナ接続用端子間を導電性接着剤で電気的に接続した非接触型ICカードにおいて、前記アンテナシートのアンテナコイルがアンテナシート用基材に熱硬化性接着剤によりラミネートした金属箔をエッチングして形成したものであり、かつアンテナシートの該アンテナコイルの両端部を形成面の反対側から切削し、アンテナシート用基材を貫通させて接続端子が形成されていることを特徴とする非接触型ICカード。
【請求項5】
アンテナコイルの前記両端部以外の部分の一部または大部分が前記熱溶融性接着シート側に形成されていることを特徴とする請求項4記載の非接触型ICカード。
【請求項6】
アンテナコイルの前記両端部の金属箔が銅箔であることを特徴とする請求項4または請求項5記載の非接触型ICカード。
【請求項7】
アンテナコイルを形成したアンテナシートと、少なくともICカードの接触端子板側のコアシートと、の間が熱溶融性接着シートを介して少なくとも各々1枚のコアシートが積層され、該アンテナシートのアンテナコイルの両端部と接触・非接触共用ICモジュールのアンテナ接続用端子間を導電性接着剤で電気的に接続した接触・非接触共用型ICカードの製造方法において、以下の(1)から(6)の工程、
(1)アンテナシート用基材に、金属箔を熱硬化性接着剤を用いてラミネートし、アンテナシートを準備する工程、
(2)上記アンテナシートの金属箔面にアンテナパターン形状にレジスト膜を形成してエッチングし、アンテナコイルと前記アンテナ接続用端子間とを接続するアンテナコイル両端部を形成する工程、
(3)アンテナコイルを形成したアンテナシートの両面に、熱溶融性接着シートを介してコアシートを積層し、さらにその両面に透明オーバーシートを積層した後、熱圧プレスして一体のカード基体にする工程、
(4)アンテナシートの前記アンテナコイル両端部がある側とは反対側面から、エンドミル刃を用いて、ICモジュール装着用凹部を切削する工程、
(5)同様にして、エンドミル刃を用いてアンテナコイル両端部の一部が露出した導通用凹孔を形成する工程、
(6)導通用凹孔内に導電性接着剤を充填すると共に、ICモジュールのICカード基体と接する部分に熱接着テープまたは液状接着剤を施して、ICモジュールをICモジュール装着用凹部内に装填し、ICモジュールのICカード基体への固定と、ICモジュールとアンテナコイルとの電気的接続を行なう工程、
を有することを特徴とする接触・非接触共用型ICカードの製造方法。
【請求項8】
導通用凹孔の底面が金属箔層中に位置するようにして停止することを特徴とする請求項7記載の接触・非接触共用型ICカードの製造方法。
【請求項9】
アンテナコイルの前記両端部側の金属箔に銅箔を使用することを特徴とする請求項7または請求項8記載の接触・非接触共用型ICカードの製造方法。
【請求項10】
アンテナコイルを形成したアンテナシートと、少なくともICカードのICモジュール基板側のコアシートと、の間が熱溶融性接着シートを介して少なくとも各々1枚のコアシートが積層され、該アンテナシートのアンテナコイルの両端部と非接触ICモジュールのアンテナ接続用端子間を導電性接着剤で電気的に接続した非接触ICカードの製造方法において、以下の(1)から(6)の工程、
(1)アンテナシート用基材に、金属箔を熱硬化性接着剤を用いてラミネートし、アンテナシートを準備する工程、
(2)上記アンテナシートの金属箔面にアンテナパターン形状にレジスト膜を形成してエッチングし、アンテナコイルと前記アンテナ接続用端子間とを接続するアンテナコイル両端部を形成する工程、
(3)アンテナコイルを形成したアンテナシートの両面に、熱溶融性接着シートを介してコアシートを積層し、さらにその両面に透明オーバーシートを積層した後、熱圧プレスして一体のカード基体にする工程、
(4)アンテナシートの前記アンテナコイル両端部がある側とは反対側面から、エンドミル刃を用いて、ICモジュール装着用凹部を切削する工程、
(5)同様にして、エンドミル刃を用いてアンテナコイル両端部の一部が露出した導通用凹孔を形成する工程、
(6)導通用凹孔内に導電性接着剤を充填すると共に、ICモジュールのICカード基体と接する部分に熱接着テープまたは液状接着剤を施して、ICモジュールをICモジュール装着用凹部内に装填し、ICモジュールのICカード基体への固定と、ICモジュールとアンテナコイルとの電気的接続を行なう工程、
を有することを特徴とする非接触ICカードの製造方法。
【請求項11】
導通用凹孔の底面が金属箔層中に位置するようにして停止することを特徴とする請求項10記載の非接触ICカードの製造方法。
【請求項12】
アンテナコイルの前記両端部の金属箔が銅箔であることを特徴とする請求項10または請求項11記載の非接触ICカードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−157666(P2009−157666A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335450(P2007−335450)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】