描画装置および描画方法
【課題】 光学系の設計を複雑にせず安定した重ね合わせ描画を行うための描画装置および描画方法。
【解決手段】 撮像部50と光照射部40とを備え、撮像された画像と撮像時のステージ10の移動誤差とから基板の変形に起因する下層パターンの位置ずれ量を算出する。次に撮像後から照射時までの間にステージ10の移動誤差を検出することで、検出時の移動誤差と光ビームが照射される照射時の実際のステージの移動誤差との差分である相対誤差の変動幅を小さくすることができる。そして、検出された移動誤差と下層パターンの位置ずれ量とを加算し上層パターンの形成位置を算出する。該位置に基づいて光ビームを照射することでステージ10の移動誤差に起因した位置ずれに対しても、光学系を複雑にすることなく安定した重ね合わせ描画を行うことができる。
【解決手段】 撮像部50と光照射部40とを備え、撮像された画像と撮像時のステージ10の移動誤差とから基板の変形に起因する下層パターンの位置ずれ量を算出する。次に撮像後から照射時までの間にステージ10の移動誤差を検出することで、検出時の移動誤差と光ビームが照射される照射時の実際のステージの移動誤差との差分である相対誤差の変動幅を小さくすることができる。そして、検出された移動誤差と下層パターンの位置ずれ量とを加算し上層パターンの形成位置を算出する。該位置に基づいて光ビームを照射することでステージ10の移動誤差に起因した位置ずれに対しても、光学系を複雑にすることなく安定した重ね合わせ描画を行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画装置の光学ヘッドに対して相対移動するステージ上に載置された半導体基板、液晶基板、プリント配線基板などに対して配線パターン等を描画する描画装置および描画方法に関する。特に、あらかじめ下層に形成されたパターンに基づき位置合わせを行いつつ露光を行うのに有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感光材料が塗布された半導体ウェハや液晶基板、プリント配線基板(以下、単に基板と称する)などの基板の表面に樹脂や金属配線等を所定のパターン形状にパターンニングするためのフォトリソグラフィの技術を利用した種々の露光装置が提案されている。そして、このような露光装置を用いて、金属配線等を順次積層してモジュールや回路基板の製造が行なわれている。
【0003】
通常、これらの基板に対して露光パターンを形成していく際、下層の露光パターンに上層の露光パターンを位置決めして重ねていく重ね合わせ露光が行なわれる。重ね合わせ露光では、下層の露光パターンが露光された後、各種の熱処理等を実行することによって基板に伸縮が発生し基板が変形することがある。そして、基板の変形に起因する下層の露光パターンの位置ずれが生じる。このため上層の露光パターンを露光するとき、下層の露光パターンに対する上層の露光パターンの位置補正を行なわなければ、下層の露光パターンに対して、重ねた上層の露光パターンの位置がずれてしまう。
【0004】
さらに、基板をステージに保持しつつ移動させながら露光する場合、ステージを移動させる移動機構の精度次第では真直度にばらつき(以降では、移動誤差と称する)が生じる。したがって、ステージを移動させつつ下層の露光パターンに対して上層の露光パターンを重ねて露光するためには、基板の変形とステージの移動誤差による下層の露光パターンに対する上層の露光パターンの位置ずれを補正して重ね合わせ露光を行う必要がある。そのため、ステージに保持された基板表面を撮像し、下層の露光パターンの位置ずれを算出し、上層の露光パターンの露光位置を補正して露光する技術がある。
【0005】
例えば、特許文献1では、移動するカラーフィルタ基板の移動方向にて、マイクロミラーデバイスで変調された光をカラーフィルタ基板に投影するための投影レンズを介して、露光位置の手前側を撮像する撮像手段を設け、カラーフィルタ基板にあらかじめ設けられたブラックマトリクスのピクセル上に位置合わせを行いつつ露光パターンを露光する技術が開示されている。このような構成の露光装置を用いることで、露光位置に近い位置でのステージの移動誤差を検出することができる。
【0006】
また、例えば特許文献2では移動するカラーフィルタ基板の移動方向にてDMD(Digital Micromirror Device:デジタル マイクロミラー デバイス:テキサス・インスツルメンツ社の登録商標)による露光位置の手前側を撮像位置としてCCDカメラを設けている。そして、カラーフィルタ基板にあらかじめ形成された基準となる機能パターン(下層パターン)に設定された基準位置を撮像し検出する。撮像時における該基準位置を基準としてDMDの駆動を制御して機能パターン(上層パターン)の像を形成することによって、機能パターンの重ね合わせ精度の向上を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−330622号公報
【特許文献2】特開2006−178056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のような露光装置ではマイクロミラーデバイスで変調された光をカラーフィルタ基板に投影するための投影レンズを介して、露光位置の手前側を撮像する撮像手段を設けるため、下層パターンを観測するにはカラーフィルタ基板の表面に塗布されたレジスト等を感光させない波長の光源を用いる必要がある。そのため共通の光学系を採用するには異なる波長に対して同一の撮像面で像が得られるように設計する必要があり光学設計が複雑になり現実的でない。
【0009】
特許文献2のような露光装置ではカラーフィルタ基板の移動方向にてDMDによる露光位置の手前側を撮像位置として撮像するCCDカメラを採用することで、独立してDMDとCCDカメラを設けることができ、特許文献1のような露光装置に比べて光学設計が容易になる。しかし、露光位置の手前側を撮像位置とする限りステージの移動誤差を検出したとしても安定したパターンの重ね合わせ精度を達成するに至っていなかった。
【0010】
なぜなら、周期や位相が未知であるステージの移動誤差に対して、撮像位置と露光位置との間の距離が長くなればなるほど、撮像位置で検出されたステージの移動誤差と実際に露光される露光位置でのステージの移動誤差との相対誤差の変動幅が大きくなり、安定した重ね合わせ露光を行うことができない。また、ステージの移動誤差は露光動作の度にバラつくため、露光位置の手前側で撮像する下層の露光パターンの位置と、露光位置での下層の露光パターンの位置とのずれが露光動作ごとに変動するという問題がある。
【0011】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、光学系の設計を複雑にせず、検出時の移動誤差と露光時の移動誤差との相対誤差の変動幅を小さくし、安定した重ね合わせ描画を行うための描画装置および描画方法である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するため、下層パターンがあらかじめ形成された基板を水平に保持するとともに、基板を保持して移動可能なステージと、ステージに保持された基板の描画予定領域に対して上層パターンの描画データに応じて光ビームを照射する光照射部と、光照射部に向かって相対移動するステージに保持された基板の描画予定領域に光ビームが照射される前に描画予定領域に形成された下層パターンを撮像する撮像部と、光照射部に向かって相対移動するステージの位置を、撮像部による撮像時に合わせて第1移動誤差として検出し、撮像部による撮像後から光照射部によって光ビームが照射されるまでの間にステージの位置を第2移動誤差として検出する移動誤差検出部と、上層パターンの描画データに応じて光照射部による描画を制御する制御部と、を具備し、制御部は、撮像部が取得した画像に含まれる下層パターンに基づき、画像内における下層パターンの位置ずれ量を取得し、画像内の下層パターンの位置ずれ量から第1移動誤差を除くことで基板上における下層パターンのずれである下層パターンの位置ずれ量を算出し、基板上における下層パターンの位置ずれ量に第2移動誤差を加えることで、第2移動誤差の検出時における下層パターンに対する上層パターンの形成位置を算出し、上層パターンの形成位置に基づいて光照射部による描画を制御することを特徴とする。
【0013】
このように構成された発明では、制御部において、撮像部で撮像された下層パターンの画像と、撮像時に検出された第1移動誤差とから撮像時の基板上における下層パターンの位置ずれ量を算出する。これにより、基板の変形に起因する下層パターンのずれを撮像時から照射時までの間にあらかじめ算出することができる。
【0014】
そして、移動誤差検出部は、撮像部による下層パターンの撮像後から光照射部によって光ビームが照射されるまでの間に移動するステージの第2移動誤差を検出する。制御部は下層パターンの位置ずれ量と、検出された第2移動誤差とから第2移動誤差の検出時における下層パターンに対する上層パターンの形成位置を算出することができる。これにより、ステージが撮像された位置よりも光ビームが照射される位置に近づいた状態でステージの移動誤差を検出することができ、光ビームが照射される位置に近い位置での下層パターンに対する上層パターンの形成位置を算出することができる。
【0015】
このように、下層パターンに対する上層パターンの形成位置を光ビームが照射される位置に近い位置で算出することで光ビームが照射される位置までのステージの移動する距離が短くなり、移動誤差検出部で検出される第2移動誤差と、光照射部から光ビームが照射される照射時の実際のステージの移動誤差との差分である相対誤差の変動幅を小さくすることができ、下層パターンに合わせて配線パターン等の上層パターンの安定した描画を行うができる。
【0016】
また、光照射部と撮像部と移動誤差検出部とを独立して設けているため、それぞれ独立した設計を行えることにより光学系が複雑になることを防ぐことができる。そのため、光学系の設計が容易となる。
【0017】
また、本願発明に係る描画装置において、移動誤差検出部は、制御部が上層パターンの形成位置を算出するのに要する時間と、上層パターンの形成位置に基づき光照射部による描画を制御するのに要する時間とを合わせた時間に応じて、光照射部によって光ビームが照射されるより前に第2移動誤差を検出することを特徴とする。
【0018】
このように構成された発明では、移動誤差検出部は第2移動誤差の検出を、制御部が上層パターンの形成位置を算出するのに要する時間と、上層パターンの形成位置に基づき光照射部による描画を制御するのに要する時間とを合わせた時間に応じて行う。そのため、第2移動誤差の検出を光照射部によって光ビームが照射される照射時に最大限に近づけることができる。したがって、さらに移動誤差検出部で検出される第2移動誤差と、光照射部から光ビームが照射される照射時の実際のステージの移動誤差との差分である相対誤差の変動幅をさらに小さくすることができるため、安定した下層パターンに対する上層パターンの重ね合わせ描画を行うことができる。
【0019】
また、本願発明に係る描画装置において、光照射部は、光ビームの光路をステージが進む方向と直交する方向に相対的にシフトさせる照射位置シフト機構を有し、制御部は、照射位置シフト機構を制御し、上層パターンの形成位置に基づき光ビームの光路をシフトさせることで、上層パターンの描画を制御することを特徴とする。このように構成された発明では、制御部が照射位置シフト機構を制御し、上層パターンの形成位置に基づき光ビームの光路をシフトさせることで、下層パターンに合わせた上層パターンの描画を行うことができる。
【0020】
また、本願発明に係る描画装置において、下層パターンの設計データをあらかじめ記憶しておく記憶部をさらに有し、制御部は、撮像部が取得した撮像画像に含まれる下層パターンと、下層パターンの設計データから生成した画像とを用いた画像処理により、ステージに保持された基板の下層パターンの位置を算出することを特徴とする。このように構成された発明では、制御部においてステージに保持された基板の下層パターンの位置を算出するため、下層パターンの撮像画像と、下層パターンの設計データから生成した画像とを画像処理することで確実に下層パターンの位置を算出することができる。
【0021】
また、本願発明に係る描画装置において、制御部における画像処理はパターンマッチング処理であることを特徴とする。このように構成された発明では、画像処理としてパターンマッチング処理を採用することで、画像間の位置合わせを行い確実に下層パターンの位置を算出することができる。
【0022】
本発明は、上記目的を達成するため、下層パターンがあらかじめ形成された基板をステージ上に水平に保持するとともに、基板を保持して移動する移動工程と、ステージに保持された基板の描画予定領域に対して上層パターンの描画データに応じて光ビームを照射する光照射工程と、ステージに保持された基板の描画予定領域に形成されている下層パターンを、光照射工程でステージに保持された基板の描画予定領域に光ビームが照射される前に撮像部によって撮像する撮像工程と、基板を保持して移動するステージの位置を、撮像工程での撮像時に合わせて第1移動誤差として検出し、撮像工程による撮像後から光照射工程で光ビームが照射されるまでの間にステージの位置を第2移動誤差として検出する移動誤差検出工程と、上層パターンの描画データに基づき光照射工程での描画を制御する制御工程と、を有し、制御工程は、撮像工程で取得された撮像画像に含まれる下層パターンに基づき、撮像画像内における下層パターンの位置ずれ量を取得し、撮像画像内における下層パターンの位置ずれ量から第1移動誤差を除くことで基板上における下層パターンのずれである下層パターンの位置ずれ量を算出し、基板上における下層パターンの位置ずれ量に第2移動誤差を加えることで、第2移動誤差の検出時における下層パターンに対する上層パターンの形成位置を算出し、上層パターンの形成位置に基づき光照射工程での描画を制御することを特徴とする。
【0023】
このように構成された発明では、制御工程において、撮像工程で撮像された下層パターンの画像と、移動誤差検出工程において撮像時に検出された第1移動誤差とから撮像時の基板上における下層パターンの位置ずれ量を算出する。これにより、基板の変形に起因する下層パターンの位置ずれ量を撮像時から照射時までの間にあらかじめ算出することができる。
【0024】
そして、移動誤差検出工程では、撮像工程での下層パターンの撮像後から光照射工程で光ビームが照射されるまでの間に移動するステージの第2移動誤差を検出する。制御工程では、下層パターンの位置ずれ量と、検出された第2移動誤差とから第2移動誤差の検出時における下層パターンに対する上層パターンの形成位置を算出することができる。これにより、下層パターンが撮像された位置よりも光ビームが照射される位置に近づいた状態でのステージの移動誤差を検出することができ、光ビームが照射される位置に近い位置での下層パターンに対する上層パターンの形成位置を算出することができる。
【0025】
このように、下層パターンに対する上層パターンの形成位置を光ビームが照射される位置に近い位置で算出することで照射位置までのステージの移動する距離が短くなり、移動誤差検出工程で検出される第2移動誤差と、光照射工程で光ビームが照射される照射時の実際のステージの移動誤差との差分である相対誤差の変動幅を小さくすることができ、下層パターンに合わせて配線パターン等の上層パターンの安定した描画を行うができる。
【0026】
また、本願発明に係る描画方法において、移動誤差検出工程は、制御工程で上層パターンの形成位置を算出するのに要する時間と、上層パターンの形成位置に基づき光照射工程で描画を制御するのに要する時間とを合わせた時間に応じて、光照射工程で光ビームが照射されるより前に第2移動誤差を検出することを特徴とする。
【0027】
このように構成された発明では、移動誤差検出工程での第2移動誤差の検出を、制御工程で上層パターンの形成位置を算出するのに要する時間と、上層パターンの形成位置に基づき光照射工程で描画を制御するのに要する時間とを合わせた時間に応じて行う。これにより、第2移動誤差の検出を光照射工程で光ビームが照射される照射時に最大限に近づけることができる。したがって、さらに照射位置に近い位置での下層パターンに対する上層パターンの形成位置を算出することができる。
【0028】
また、本願発明に係る描画方法において、光照射工程は、光ビームの光路をステージが進む方向と直交する方向に相対的にシフトさせる照射位置シフト工程を有し、制御工程は、照射位置シフト工程において、上層パターンの形成位置に基づき光ビームの光路をシフトさせることで、上層パターンの描画を制御することを特徴とする。このように構成された発明では、制御工程は、照射位置シフト工程において上層パターンの形成位置に基づき光ビームの光路をシフトさせることで、下層パターンに合わせた上層パターンの描画を行うことができる。
【0029】
また、本願発明に係る描画方法において、制御工程は、撮像工程で取得した撮像画像に含まれる下層パターンと、下層パターンの設計データから生成した画像とを用いた画像処理により、ステージに保持された基板の下層パターンの位置を算出することを特徴とする。このように構成された発明では、制御工程においてステージに保持された基板の下層パターンの位置を算出するため、下層パターンの撮像画像と、下層パターンの設計データから生成した画像とを画像処理することで確実に下層パターンの位置を算出することができる。
【0030】
また、本願発明に係る描画方法において、制御工程における画像処理はパターンマッチング処理であることを特徴とする。このように構成された発明では、画像処理としてパターンマッチング処理を採用することで、画像間の位置合わせを行い確実に下層パターンの位置を算出することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、撮像部で撮像された下層パターンの撮像画像と、移動誤差検出部によって撮像時に検出された第1移動誤差とから、基板の変形に起因する基板上における下層パターンの位置ずれ量を算出することができる。そして、撮像部による下層パターンの撮像後から光照射部によって光ビームが照射されるまでの間に検出される第2移動誤差と、下層パターンの位置ずれ量とから、ステージの移動誤差に起因する下層パターンの位置ずれを考慮した上層パターンの形成位置を算出することができる。
【0032】
このように、下層パターンに対する上層パターンの形成位置を光ビームが照射される位置に近い位置で算出することで照射位置までのステージの移動する距離が短くなり、移動誤差検出部で検出される第2移動誤差と、光照射部から光ビームが照射される照射時の実際のステージの移動誤差との差分である相対誤差の変動幅を小さくすることができ、下層パターンに合わせて配線パターン等の上層パターンの安定した描画を行うができる描画装置および描画方法を実現することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態にかかる露光装置の側面から見た全体側面図である。
【図2】図1に示す露光装置を上面から見た全体平面図である。
【図3】図1の露光装置を上面および側面から見た一部拡大図である。
【図4】光照射部の内部構造を示す模式図である。
【図5】照射位置シフト機構の構成を示す模式図である。
【図6】制御部が備える露光動作に関わる機能部を示すブロック図である。
【図7】撮像画像内における下層パターンの位置ずれを説明するための図である。
【図8】基板上における下層パターンの位置ずれを説明するための図である。
【図9】本発明に係る描画処理の一連の流れを示す図である。
【図10】描画処理の流れを詳細に説明するための図である。
【図11】シミュレーションの条件を示す図である。
【図12】シミュレーションにおける各位置での相対誤差を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は本発明の一実施形態にかかる露光装置100の側面から見た全体側面図であり、図2は図1に示す露光装置100を上面から見た全体平面図である。
【0035】
なお、図1および図2において、図示および説明の都合上、Z軸方向が鉛直方向を表し、XY平面が水平面を表すものとして定義するが、それらの位置関係を把握するために便宜上定義するものであって、以下に説明する各方向を限定するものではない。
【0036】
露光装置100は、感光材料が表面に付与された半導体基板やガラス基板、プリント配線基板等(以降、基板と称す)の上面に光ビームを照射して配線パターン等の所定のパターンを直接描画する描画装置である。
【0037】
この露光装置100では、本体フレーム101に対してカバー102が取り付けられて形成される本体内部と、本体フレーム101の外側である本体外部とに、露光装置100が備える各種の構成要素を有した構成となっている。
【0038】
露光装置100の本体内部には、主として、基板Wを保持するステージ10と、ステージ10を移動させるステージ移動機構20と、ステージ10の位置を計測するステージ位置計測部30と、基板Wの上面に光ビームを照射する光照射部40と、基板W上の描画予定領域を撮像する撮像部50と、ステージ10の移動誤差を検出する移動誤差検出部60と、基板W上のアライメントマークを撮像するアライメントカメラ70および基板Wを搬出入するための搬送装置80とを有している。また、露光装置100は、露光装置100が備える各部と電気的に接続されて、これらの各部の動作を制御する制御部90を備える。
【0039】
そして、露光装置100の本体外部には、本体内部と隣接する位置に基板収納カセット103を載置するためのカセット載置部104を備えている。基板収納カセット103には、描画処理(露光処理)を受けるべき未処理の基板Wが収納されており、本体内部に配置される搬送装置80によって基板Wが本体内部に搬入される。また、未処理の基板Wに対して露光処理が施された後、基板Wが搬送装置80によって本体部から搬出され基板収納カセット103に戻される。基板収納カセット103の受け渡しは、図示を省略する外部搬送装置によって行なわれる。
【0040】
ステージ10は矩形状の外形を有し、ステージ10の上面には図示を省略する複数の吸引孔が形成されている。これらの吸引孔は真空ポンプ等に接続されており、該真空ポンプを動作させることによって、ステージ10上に基板Wが載置されると、吸引孔の吸引圧によりステージ10の上面に基板Wが吸着固定される。すなわち、ステージ10の上面に基板Wを水平に保ちつつ、固定的に保持する。
【0041】
ステージ移動機構20は、ステージ10を主走査方向(Y軸方向)、副走査方向(X軸方向)、およびZ軸周り回転方向(θ軸方向)に移動させる。ステージ移動機構20は、ステージ10を回転させる回転機構11と、ステージ10を回転可能に支持する支持プレート12と、支持プレート12を副走査方向に移動させる副走査機構13と、副走査機構13を介して支持プレート12を支持するベースプレート14と、ベースプレート14を主走査方向に移動させる主走査機構15と、を有している。回転機構11、副走査機構13、および主走査機構15は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じてステージ10を移動させる。
【0042】
回転機構11は、ステージ10の内部に取り付けられた回転子により構成されたモータを有している。また、ステージ10の中央部下面側と支持プレート12との間には回転軸受機構が設けられている。このため、モータを動作させると、回転子がθ方向に駆動し、回転軸受機構の回転軸を中心としてステージ10が所定角度の範囲内で回転する。
【0043】
副走査機構13は、支持プレート12の下面に取り付けられた移動子とベースプレート14の上面に敷設された固定子とにより副走査方向の推進力を発生させるリニアモータ13aと、副走査方向に伸びる一対のガイドレール13bとを有している。このため、リニアモータ13aを駆動させると、ベースプレート14上のガイドレール13bに沿って支持プレート12およびステージ10が副走査方向に移動する。
【0044】
主走査機構15は、リニアモータ15aと、ベースプレート14と基台105との間に、ベースプレート14の一部を案内するよう主走査方向に伸びる一対のガイドレール15bとを備える。リニアモータ15aはベースプレート14の下面に取り付けられた移動子と、基台105上に敷設された固定子とを有している。このため、リニアモータ15aを駆動させると、基台105上のガイドレール15bに沿って、ベースプレート14、支持プレート12およびステージ10が主走査方向に移動する。なお、このようなステージ移動機構20としては、従来から多用されているX−Y−θ軸移動機構を用いることができる。
【0045】
ステージ位置計測部30は、ステージ10の位置を計測する機構である。ステージ位置計測部30は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じてステージ10の位置を計測する。例えば、ステージ10に向けてレーザ光を照射し、その反射光と出射光との干渉を利用して、ステージ10の位置を計測する機構により構成することができる。この場合、ステージ位置計測部30は、例えば、レーザ光を出射する出射部31と、ビームスプリッタ33と、ビームベンダ32と、第1干渉計34と、第2干渉計35とを備える。
【0046】
出射部31から出射されたレーザ光は、まずビームスプリッタ32に入射し、ビームベ
ンダ33に向かう第1分岐光と、第2干渉計35に向かう第2分岐光とに分岐される。第1分岐光は、ビームベンダ33により反射され、第1干渉計34に入射するとともに、第1干渉計34からステージ10の第1の部位に照射される。そして、第1の部位において反射した第1分岐光が、再び第1干渉計34へ入射する。第1干渉計34は、ステージ10の第1の部位に向かう第1分岐光と第1の部位で反射された第1分岐光との干渉に基づいて第1の部位の位置に対応した位置パラメータを計測する。
【0047】
一方、第2分岐光は、第2干渉計35に入射するとともに、第2干渉計35からステージ10の第2の部位(ただし、第2の部位は、第1の部位とは異なる位置である)に照射
される。そして、第2の部位において反射した第2分岐光が、再び第2干渉計35へ入射する。第2干渉計35は、ステージ10の第2の部位に向かう第2分岐光とステージ10の第2の部位で反射された第2分岐光との干渉に基づいて第2の部位の位置に対応した位置パラメータを計測する。
【0048】
制御部90は、第1干渉計34および第2干渉計25のそれぞれから、ステージ10の第1の部位の位置に対応した位置パラメータ、およびステージ10の第2の部位の位置に対応した位置パラメータを取得する。そして、取得した各位置パラメータに基づいて、ステージ10の位置を算出する。
【0049】
光照射部40は、レーザ光を出射するレーザ発振器41と、レーザ発振器41を駆動するレーザ駆動部42と、レーザ発振器41から出射された光(スポットビーム)を強度分布が均一な線状の光(ラインビーム)とする照明光学系43と、基板Wの上面に光を照射する光学ヘッド401とを備える。
【0050】
レーザ発振器41、レーザ駆動部42および照明光学系43は、ステージ10およびステージ移動機構20を跨ぐようにして基台105上に架設されたボックス106の内部に設けられる。また、レーザ発振器41、レーザ駆動部42および照明光学系43は制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じて動作する。
【0051】
ステージ10およびステージ移動機構20に対向するようにして基台105の上方に一対の脚部材107、108がステージ10の移動路の両側に立設される。そして、脚部材107の頂部を橋渡しするように梁部材109が横設されており、それぞれの脚部材108の頂部および梁部材109の上面を橋渡しするようにボックス106は設けられている。
【0052】
そして、光学ヘッド401は梁部材109の略中央部の側面に設けられている。光学ヘッド401は、レーザ発振器41から出射され、照明光学系43を介して入射した光に描画パターンに応じた空間変調を形成して基板Wの上面に照射する。
【0053】
続いて、光照射部40が備える光学ヘッド401の構成について図4を参照しながら説明する。図4は光照射部40の構成例を模式的に示す図である。
【0054】
光照射部40は、レーザ駆動部42が動作するとレーザ発振器41からレーザ光が出射され、出射されたレーザ光は照明光学系43を介して、光学ヘッド401の内部に導入される。
【0055】
光学ヘッド401は、レーザ発振器41からの光を光学ヘッド401内に導入する入射部44と、導入された光を変調するための空間光変調素子45と、入射部44からの光を空間光変調素子45へと導く光学系46と、空間光変調素子45で変調された光の光軸をシフトさせ、基板Wの上面において描画位置を副走査方向に相対的にシフトさせるための照射位置シフト機構47と、照射位置シフト機構47を介した光を基板Wの上面に導く投影光学系48とを備える。
【0056】
空間光変調素子45は、回折格子型の変調素子であり、半導体装置製造技術を利用して製造され、格子の深さを変更することができる回折格子となっている。回折格子型の光変調素子としては、例えば、GLV(Graiting Light Valve:グレーチング・ライト・バルブ)(シリコン・ライト・マシーンズ社の登録商標)を使用する。なお、GLVによる光の変調原理については、既知であるため詳細については説明を省略する。
【0057】
照射位置シフト機構47は空間光変調素子45によって描画パターンに応じて空間変調された光を副走査方向に沿ってシフトさせる。照射位置シフト機構47の詳細については後述する。
【0058】
投影光学系48は、対物レンズ482と、対物レンズ482を光軸に沿って移動させるアクチュエータとから構成されるフォーカス機構481を備えている。フォーカス機構481により対物レンズ482がZ軸方向に移動することよって、空間光変調素子45によって変調された光の焦点位置が調整される。焦点位置が調整された光は、基板Wの上面に照射され、基板W上のレジスト等の感光層を露光することにより、配線パターン等が描画される。
【0059】
次に、照射位置シフト機構47について図5を参照しながら詳細に説明する。図5は照射位置シフト機構47の構成を模式的に示す図である。
【0060】
照射位置シフト機構47は、1個以上の光学部品を備え、少なくとも1個の光学部品の位置あるいは姿勢を変更することによって、入射光の光路を副走査方向に沿ってシフトさせる。
【0061】
図5に示すように照射位置シフト機構47は2個のウェッジプリズム471と、一方のウェッジプリズム471を、他方のウェッジプリズム471に対して、入射光の光軸Lの方向に沿って直線的に移動させるウェッジプリズム移動機構472とを備える。ウェッジプリズム471は、光が入射する光学面と出射する光学面が非平行となるプリズムである。2個のウェッジプリズム471は、互いに略同一の構造を有しており、例えば、頂角、屈折率がいずれも同一となる構造を有している。
【0062】
2個のウェッジプリズム471は、固定ステージ473、可動ステージ474にそれぞれ固定され、対向する光学面が互いに平行となり、かつ、互いに逆向きとなるように、入射光の光軸Lの方向に沿って並んで配置される。各ウェッジプリズム471は、例えば固定バンド475を用いて各ステージ473、474に固定される。
【0063】
一方のウェッジプリズム471が配置される固定ステージ473は、ベース部476上に固定されている。他方のウェッジプリズム471が配置される可動ステージ474は、ベース部476上に設置された一対のガイドレール4721に沿って移動可能とされている。ガイドレール4721は、ベース部476上に、Z軸方向に沿って延在して形成されている。
【0064】
ベース部476には、回転モータ4722によって回転させられるボールねじ4723が配設されている。ボールねじ4723は、ガイドレール4721の延在方向に沿って延在しており、可動ステージ474のブラケット4741の雌ねじ部に螺合されている。この構成において、ボールねじ4723が回転モータ4722によって回動されることで、可動ステージ474がガイドレール4721に沿ってZ方向に移動する。
【0065】
つまり、可動ステージ474、ガイドレール4721、回転モータ4722、およびボールねじ4723により、他方のウェッジプリズム471を入射光の光軸Lの方向に沿って直線的に移動させるウェッジプリズム移動機構472が構成される。ウェッジプリズム移動機構472は、他方のウェッジプリズム471を、一方のウェッジプリズム471に対して光軸Lの方向に沿って直線的に移動させることによって、2個のウェッジプリズム471の光軸Lの方向に沿う離間距離を変化させる。
【0066】
上記構成を備える照射位置シフト機構47においては、2個のウェッジプリズム471の光軸Lに沿う離間距離を変化させることによって、ウェッジプリズム471に入射する光の経路をX軸方向に沿ってシフトさせることができる。なお、シフト量Δxは、2つのウェッジプリズム471の離間距離に応じて定まる。
【0067】
撮像部50は、光学ヘッド401と対応付けられており、主走査の際に光学ヘッド40が基板Wに対して相対的に移動する方向について定められた距離だけ上流側に配置されている。本実施形態では、光学ヘッド401の図1中の右側の側面に固定的に設置されている。すなわち、撮像部50は、ステージ10が主走査方向に移動することで、光学ヘッド401がステージ10に対して相対的に移動する方向の搬送装置80側の光学ヘッド401の側面に設置されている。
【0068】
具体的には、例えばLEDにより構成される光源と、鏡筒と、対物レンズと、リニアイメージセンサ(一次元イメージセンサ)により構成されるCCDイメージセンサとを備える。なお、撮像部50で採用される光源の波長は、基板W上のレジスト等を感光させない波長である。
【0069】
そして、対応する光学ヘッド401が描画を行う予定の基板W上の領域である描画予定領域を撮像する。したがって、主走査方向に移動するステージ10に載置された基板W上の描画予定領域に光照射部40から光ビームが照射される前に、該描画予定領域に形成された下層パターンを撮像することができる。なお、撮像部50は制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じて撮像データを取得し、取得した撮像データを制御部90に送信する。
【0070】
移動誤差検出部60は、ステージ10上に形成されたスケールパターン61と、エンコーダヘッド62と、エンコーダヘッド62を副走査方向に移動可能にするためのエンコーダ移動機構63とを備える。そして、ステージ10の主走査方向の移動によって生じる真直度のばらつきなどであるステージ10の水平方向の移動誤差を逐次検出する。
【0071】
スケールパターン61は、ステージ10の上面であって載置された基板Wに掛からない位置であるステージ10の側端部に主走査方向に伸びるように形成されており、スケールパターン61の主走査方向の長さはステージ10の長さにほぼ等しい。なお、スケールパターン61は各種のフォトリソグラフィ製法により、ガラス表面上へ硬質なクロム蒸着等により形成することができる。
【0072】
エンコーダヘッド62は、光学ヘッド401が取り付けられた梁部材109の光学ヘッド401が設置される側の面であって、光学ヘッド401の側方に位置するように設けられている。
【0073】
エンコーダ移動機構63は、エンコーダヘッド62と梁部材109の間に配設されている。エンコーダ移動機構63は、図示を省略するリニアモータと、梁部材109に敷設された副走査方向に伸びる一対のガイドレールと、エンコーダヘッド62を側面から固定的に支持する支持プレートとを備える。そして、リニアモータが駆動し支持プレートと梁部材109との間に敷設された移動子および固定子とにより副走査方向の推進力を発生させ、支持プレートをガイドレールに沿って副走査方向に移動させることで、エンコーダヘッド62を副走査方向に移動させる。
【0074】
図3を参照しつつ移動誤差検出部60について詳細に説明する。図3(a)はステージ10上に形成されたスケールパターン61を上方から見た図である。スケールパターン61は、図3(a)に示すようにY軸方向に直線状に形成された1本のXスケールXSと、XスケールXSと直交するようにX軸方向に直線状に等間隔に複数の短線状に形成されたYスケールYSとを備える。そして、ステージ10が主走査方向に移動することで、スケールパターン61は梁部材109に設けられたエンコーダヘッド62の下方を通過し、エンコーダヘッド62がスケールパターン61を検出する。
【0075】
エンコーダヘッド62によるスケールパターン61の検出について図3(b)を用いて説明する。図3(b)は、エンコーダヘッド62およびステージ10上に形成されたスケールパターン61をX軸方向から見た模式図である。なお、梁部材109やエンコーダ移動機構63は図示を省略している。
【0076】
エンコーダヘッド62は互いに直交する二軸方向(XY方向)に感度をもち、スケールパターン61に当たる光の回折と干渉を利用することでステージ10の位置を計測する。エンコーダヘッド62は、ステージ10に形成されたスケールパターン61に光Lを照射する光源621と、光源621から照射された光Lがスケールパターン61で反射されXスケールXSからの回折光を受光する第1受光素子622Xと、YスケールYSからの回折光を受光する第2受光素子622Yとを備える。
【0077】
第1受光素子622Xはステージ10のX軸方向の位置を検出する。X軸方向についてはあらかじめ基準位置が規定されており、エンコーダヘッド62からのXスケールXSの検出信号を解析し、X軸方向の基準位置と検出されたXスケールXSとのX軸方向の距離を位置ずれ量として取得することができる。そして、基準位置を当該位置ずれ量分だけずらせた位置が検出時のX軸方向のステージ10の位置として検出される。
【0078】
また、第2受光素子622Yはステージ10のY軸方向の位置を検出する。光源621から照射された光Lがスケールパターン61で反射されYスケールYSからの回折光を第2受光素子622Yが受光し信号を出力する。そして、あらかじめ設定したYスケールYSの数と検出されたYスケールYSの数を比較することで、本来のステージ10の位置からの位置ずれ量を取得することができる。そして、Y軸方向の本来のステージ10の位置を基準に当該位置ずれ量分だけずらせた位置が検出時のY軸方向のステージ10の位置として検出される。
【0079】
以上のように、移動誤差検出部60は、エンコーダヘッド62とスケールパターン61とから取得されたステージ10の水平方向の位置であるステージ10のX軸方向の位置とY軸方向の位置を取得することができる。本来のステージ10の位置である理想位置と、移動誤差検出部60によって取得されたステージ10の水平位置との差分を本発明においてはステージ10の水平方向の移動誤差とする。
【0080】
なお、移動誤差検出部60は制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じてステージ10の水平方向の移動誤差を検出し、検出した移動誤差を制御部90に送信する。
【0081】
アライメントカメラ70は、基板Wの上面にあらかじめ形成されたアライメントマークを撮像する。アライメントカメラ70は、梁部材109の図1中の左側の側面に下方を撮像できるように設置されている。言い換えると、梁部材109の光学ヘッド401が設置される面の反対面に設置されている。
【0082】
そして、アライメントカメラ70としては、前述した撮像部50とほぼ同様の構成を備えている。アライメントカメラ70が備えるCCDイメージセンサは、例えばエリアイメージセンサ(2次元イメージセンサ)により構成される。
【0083】
アライメントカメラ70によりアライメントマークを撮像するときには、ステージ10に載置された基板Wがアライメントカメラ70の下方に移動し、図示を省略する光源から出射された光が基板Wの上面に導かれ、その反射光をCCDイメージセンサで受光する。
これにより、基板Wの上面に形成されたアライメントマークの撮像データが取得されることになる。
【0084】
なお、アライメントカメラ50は制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じて撮像データを取得し、取得した撮像データを制御部90に送信する。
【0085】
搬送装置80は、カバー102に囲まれた本体内部の右手端部に配置されている。搬送装置80は制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じて、基板収納カセット103と、ステージ10との間で基板Wの受け渡しを行う。搬送装置80としては、例えば、従来から知られている搬送ロボットを用いることができる。
【0086】
制御部90は、各種の演算処理を実行しつつ、露光装置100が備える各部の動作を制御する。制御部90は、例えば各種演算処理を行うCPU、ブートプログラム等を記憶するROM、演算処理の作業領域となるRAM、プログラムや各種のデータファイルなどを記憶するハードディスクなどの記憶部、各種表示を行うディスプレイ、キーボード、および、マウスなどの入力部、LAN等を介してデータ通信機能を有するデータ通信部、等を有するコンピュータによって構成される。コンピュータにインストールされたプログラムにしたがってコンピュータが動作することにより、当該コンピュータが露光装置100の制御部90として機能する。なお、制御部90において実現される各機能部は、コンピュータによって所定のプログラムが実行されることによって実現されてもよいし、専用のハードウェアによって実現されてもよい。
【0087】
次に、制御部90によって実現される上記の構造による露光動作に関わる各機能部について図6を用いて説明する。図6は制御部90が備える露光動作に関わる各機能部と、描画を実際に制御する露光制御部900との関係をあらわすブロック図である。
【0088】
制御部90は、基板Wに描画すべき上層パターンを記述した描画パターンデータであるCADデータ911等の各種データを記憶しておく記憶部91と、CADデータ911を描画用のデータ単位として生成するデータ生成部92と、データ生成部92で生成されたデータをラスタライズするラスタライズ部93と、下層パターンのずれ量を算出するずれ量算出部94と、下層パターンに対する上層パターンの形成位置を算出する形成位置算出部95とを備えている。
【0089】
記憶部91は、上述したように外部のCAD等を用いて生成されたCADデータ911やラスタライズ部93でラスタライズされたラスターデータ912等を記憶する。また、前述したデータ以外にも各部で検出されたデータ等を記憶する。なお、CAD911は基板Wに対する一連の処理に先立って記録媒体あるいは通信ネットワーク等を介してあらかじめ記憶部91に準備されている。
【0090】
データ生成部92は、記憶部91からCADデータ911を読み出し、描画を行う所定の単位領域(ストライプ)にCADデータ911を分割し、ラスタライズ部93にストライプ単位で送信する。
【0091】
ラスタライズ部93は、データ生成部92によって生成されたストライプごとにラスタライズを行い、ラスタ形式のラスターデータ912を生成し記憶部91に記憶する。こうして、1ストライプ分のラスターデータ912の準備が終わると、ラスターデータ912は露光制御部900に送られる。
【0092】
ずれ量算出部94は、撮像部50で取得された基板W上の描画予定領域の撮像データと、移動誤差検出部60で検出されたステージ10の水平方向の移動誤差を受け取り、描画予定領域に形成されている下層パターンの基板Wに対する位置ずれ量を算出する。基板Wに対する下層パターンの位置ずれ量とは、基板W上に形成されている下層パターンの形成位置と、基板W上での下層パターンの設計位置との差分をあらわすものである。
【0093】
図7を参照しつつ下層パターンの位置ずれについて説明する。下層パターンの位置ずれは、2つの要因により引き起こされる。その一方はステージ10の移動誤差によって生じる位置ずれと、他方は基板Wの変形等によって生じる基板W上での設計位置からの下層パターンの位置ずれである。図7では、上述したステージ10の移動誤差および基板Wの変形等による下層パターンの位置ずれが生じていない場合のステージ10の理想位置と基板W上における下層パターンの設計位置を破線で示している。また、その時点におけるステージ10の実際位置および下層パターンの形成位置については実線で示している。なお、図7では、光学ヘッド401およびエンコーダヘッド62は図示を省略している。
【0094】
図7(a)は、下層パターンの設計位置を破線で表している。また、基板W上の下層パターンの形成位置を実線で表している。なお、この時点では描画処理動作前でありステージ10は静止しており上述したステージ10の移動誤差は生じていない。したがって、ステージ10の実際位置は理想位置でもあるため実線で表している。
【0095】
これに対し、基板Wには熱膨張等により変形が生じており、あらかじめ基板W上に形成されている下層パターンが、基板W上での設計位置からX軸方向にΔPX、Y軸方向にΔPYだけ位置ずれが生じている。したがって、下層パターンに対して上層パターンを精度良く重ねあわせて描画するためには、当該位置ずれを補正する必要がある。
【0096】
図7(b)は、描画処理が開始され撮像部50にてY軸方向に移動するステージ10上に保持された基板Wの描画予定領域を撮像する撮像時における、ステージ10の理想位置と基板W上の下層パターンの設計位置を破線で表している。また、撮像時のステージ10の実際位置と基板W上の下層パターンの形成位置を実線で表している。
【0097】
撮像データから算出される下層パターンの設計位置と形成位置との位置ずれ量の算出について図8を参照しつつ説明する。図8(a)は撮像部50から送られてくる下層パターンの1次元の撮像データを蓄積し、2次元の画像データとして生成したものである。また、図8(b)は、制御部90がステージ位置計測部30から送られてくるステージ10の位置に基づき、あらかじめ記憶部に記憶しておいた下層パターンの設計データから、撮像部50によって撮像された位置と略同じ位置を特定し、画像データに変換し生成した設計画像520である。図8で示された撮像データは、図7(b)で図示される下層パターンを含むように撮像されたものを表している。
【0098】
設計画像520には、配線パターン等の設計下層パターン521が含まれる。同様に、撮像画像510には基板W上にあらかじめ形成されている配線パターン等の形成下層パターン511が含まれる。
【0099】
設計画像520から、特徴的なパターンを有するテンプレート522を抽出する。同時に、テンプレート522に設計基準点523を設定し、設計基準点523の座標を記憶しておく。これが設計位置となる。なお、設計基準点523をテンプレート522の左上に設定しているが、これに限定されるものではなく、テンプレート522内で特定できる点(例えば、重心等)を設計基準点として設定してもよい。
【0100】
続いて、撮像画像510に対してテンプレート522を用いて、いわゆるパターンマッチング処理を行い、マッチング度が高い位置であるマッチング領域512を取得する。すなわち、このマッチング領域512の左上の点が検出基準点513となる。
【0101】
設計基準点523と検出基準点513のX方向およびY方向の差分が、撮像画像内における下層パターンの設計位置に対する形成位置のX軸方向の位置ずれ量ΔIPX、Y軸方向の位置ずれ量ΔIPYとして求まる。
【0102】
しかしながら、撮像部50によって撮像することで得られる撮像データは、ステージ10に保持された基板Wを撮像して取得したものである。すなわち、ステージ10が移動誤差による位置ずれを生じていた場合、ステージ10に保持された基板Wを撮像して取得した撮像データには、撮像時のステージ10の移動誤差と、基板W上での設計位置からの下層パターンの位置ずれとが重畳されている。そのため、撮像時におけるステージ10の移動誤差を撮像画像から得られた下層パターンの位置ずれ量から減算する必要がある。
【0103】
ここで、前述したようにステージ10の移動誤差はエンコーダヘッド62とスケールパターン61によって検出することができる。具体的には、YスケールYSに関してはあらかじめ設定したYスケールYSの数と撮像時に検出された数を比較することでΔISYを求める。一方、XスケールXSに関してはステージ10のX軸方向の基準位置と撮像時に検出されたXスケールXSとのX軸方向の距離をΔISYとして取得することができる。ΔISXおよびΔISYが撮像時におけるステージ10の移動誤差をあらわす。
【0104】
したがって、描画予定領域に形成されている下層パターンの基板W上の設計位置からの位置ずれ量を算出するには、撮像データから算出した撮像画像内の下層パターンの位置ずれ量であるΔIPX、ΔIPYから、撮像時のステージ10のX軸方向の移動誤差ΔISX、Y軸方向の移動誤差ΔISYを減算(ΔIPX−ΔISX、ΔIPY−ΔISY)すればよい。
【0105】
このようにして、基板W上の下層パターンの位置ずれ量としてY軸位置ずれ量ΔPYとX軸位置ずれ量ΔPXを算出することができる。そして、ずれ量算出部94で算出された基板W上の下層パターンのX軸位置ずれ量ΔPXとY軸位置ずれ量ΔPYは形成位置算出部95に送られる。なお、基板W上の下層パターンのX軸位置ずれ量ΔPXとY軸位置ずれ量ΔPYは、基板Wの変形にのみ起因する位置ずれであるため少なくとも描画処理中において、基板W上の描画予定領域の下層パターンのX軸位置ずれ量ΔPXとY軸位置ずれ量ΔPYは変化しない。
【0106】
形成位置算出部95は、ずれ量算出部94で算出された基板W上の下層パターンのX軸位置ずれ量ΔPXおよびY軸位置ずれ量ΔPYと、移動誤差検出部60よってあらかじめ設定されたタイミングで検出されたステージ10の移動誤差とを受け取り、下層パターンに対する上層パターンの形成位置を算出する。
【0107】
ここで、図7(c)を参照しつつ下層パターンに対する上層パターンの形成位置の算出について説明する。図7(c)は、撮像部50によって基板W上の描画予定領域が撮像されてから描画予定領域に光ビームが照射されるまでの間で、あらかじめ設定されたタイミングで移動誤差検出部60がステージ10の移動誤差を検出した検出時の、ステージ10の理想位置と基板W上の下層パターンの設計位置を破線で表し、検出時のステージ10の実際位置と基板W上の下層パターンの形成位置を実線で表している。
【0108】
下層パターンに対する上層パターンの形成位置は、基板W上の下層パターンのX軸位置ずれ量PXおよびY軸位置ずれ量PYと、ステージ10の移動誤差とが重畳された情報と言える。したがって、ずれ量算出部94で算出された基板W上の下層パターンのX軸位置ずれ量PXおよびY軸位置ずれ量PYと、あらかじめ設定されたタイミングで移動誤差検出部60によって検出されたステージ10のX軸方向の移動誤差ΔDSXと、Y軸方向の移動誤差ΔDSYとを合算(ΔPX+ΔDSX、ΔPY+ΔDSY)する。
【0109】
合算することで算出された下層パターンに対する上層パターンのX軸方向の位置ずれ量ΔPX+ΔDSX、Y軸方向の位置ずれ量ΔPY+ΔDSYだけ、本来の上層パターンの形成位置からずらせることで、ステージ10の移動誤差および基板W上での下層パターンの設計位置からの位置ずれを補正するための下層パターンに対する上層パターンの形成位置を算出することができる。なお、下層パターンに対する上層パターンの形成位置はX軸およびY軸からなるXY平面内の位置として算出される。そして、上層パターンの形成位置を露光制御部900に送信する。
【0110】
また、形成位置算出部95は下層パターンのX軸位置ずれ量ΔPXおよびY軸位置ずれ量ΔPYと、ステージ10のX軸方向の移動誤差ΔDSXおよびY軸方向の移動誤差ΔDSYとを合算するため四則演算処理を行う。そのため、前述したずれ量算出部94での処理に比べて演算処理の時間を短くすることができる。
【0111】
露光制御部900は、形成位置算出部95から送られてきた下層パターンに対する上層パターンの形成位置とラスターデータ912とを受け取る。そして、描画前に撮像された描画予定領域が光学ヘッド401の下方を通過するとき、ラスターデータ912に基づき空間光変調素子45を制御するとともに、下層パターンに対する上層パターンの形成位置のX位置に基づき照射位置シフト機構47を制御する。
【0112】
具体的には、照射位置シフト機構47を構成する2つのウェッジプリズム471の相対的な離間距離をX位置に応じて変化させる。すると、光ビームの光路がX軸方向にシフトする。すなわち、基板W上での描画位置を副走査方向に相対的にシフトさせることができる。このようにして、X軸方向について下層パターンに位置合わせを行いながら上層パターンを描画することができる。
【0113】
また、ラスターデータ912に応じて空間光変調素子45の入射光を空間変調するタイミングを、下層パターンに対する上層パターンの形成位置のY位置に基づき制御することで、主走査方向に相対的に描画位置をシフトさせることができる。このようにして、Y軸方向についても下層パターンに位置合わせを行いながら上層パターンを描画することができる。
【0114】
続いて、上述した露光装置100の動作の一例について図9、図10を用いて説明を行う。図9は露光処理に係る全体の処理の流れについて説明するためのフローチャートである。また、図10は、描画処理の流れを詳細に説明するためのフローチャートである。
【0115】
露光装置100は、制御部90から搬送装置80に動作指令を行い、基板Wを収納した基板収納カセット103から基板Wを取り出し露光装置100に搬入する。そして、露光装置100の内部に搬入された基板Wをステージ10の上面に載置する(ステップS11)。すると、真空ポンプが作動し基板Wが載置されたステージ10は吸引圧によりステージ10の上面に基板Wを水平に吸着固定する。基板収納カセット103から搬出された基板Wをステージ10に載置する前にプリアラメント処理を行ってもよい。
【0116】
また、基板収納カセット103から搬出される基板Wは、他の処理工程において別の露光装置等により基板Wの表面に下層パターンがあらかじめ形成されている。そして、基板Wの四隅には基板Wの姿勢を位置合わせするためのアライメントマークが形成されている。なお、アライメントマークは基板Wの四隅に限られず複数形成されていてもよい。
【0117】
基板Wをその上面に保持したステージ10は、制御部90からの動作指令に基づきステージ移動機構20が動作することでアライメント領域に移動する。そして、露光装置100はステージ10上に載置された基板Wと光学ヘッド401との相対位置を調整するアライメント処理(位置合わせ処理)を行う(ステップS12)。
【0118】
基板Wがステージ10上に載置される際、ほぼ所定の位置に載置されることになるが、微細なパターンを描画するにあたり位置精度として十分でない場合が多い。このため、アライメント処理を行い基板Wの位置や傾きを微調整して、以降の描画処理の精度を向上させる。
【0119】
アライメント処理では、基板Wの上面の四隅に形成されたアライメントマークをアライメントカメラ70によりそれぞれ撮像する。制御部90は、アライメントカメラ70により取得された画像中の各アライメントマークを抽出する。そして、各アライメントマークの位置に基づいて、基板Wの理想位置からのずれ量として、X軸方向のずれ量、Y軸方向のずれ量およびZ軸周りのθ方向のずれ量を算出する。そして、算出されたずれ量を低減させるように、制御部90は、回転機構11、副走査機構13、主走査機構15を駆動させ基板Wの位置を補正する。
【0120】
続いて、露光装置100は、アライメント処理が行なわれた基板Wに対して描画処理を行う(ステップS13)。描画処理の詳細については後述するが、ここでは、本実施例における描画処理の流れを簡単に説明する。
【0121】
露光装置100は、ステージ10を主走査方向および副走査方向に移動させつつ、光学ヘッド401から基板Wの上面に向けて光ビームを照射することにより、基板Wの上面に上層パターンを描画する。
【0122】
具体的には、制御部90からの指示に応じて、主走査機構15を動作させることでステージ10を主走査方向に沿って移動させる。これにより、基板Wを光学ヘッド401に対して主走査方向に沿って相対的に移動させることができる。基板Wの1ストライプ分の描画予定領域が光学ヘッド401の下方を通過すると、基板Wの表面に1ストライプ分の描画が行なわれることになる。
【0123】
1ストライプ分の描画が終了すると、制御部90は主走査機構15を動作させ、ステージ10を主走査方向に沿って基板Wを当該ストライプの描画を開始した元の位置に移動させる。さらに、制御部90は、副走査機構13を動作させることでステージ10を副走査方向に沿って、1ストライプの幅に相当する距離だけ移動させる。副走査方向への移動が終了すると、再び主走査方向にステージ10が走査されつつ描画が行なわれる。
【0124】
そして、先に描画された1ストライプ分の描画領域の隣に、さらに1ストライプ分の領域の描画が行なわれることになる。このように主走査方向の移動と副走査方向の移動が繰り返して行なわれることによって、基板Wの表面の全域に上層パターンが描画されることになる。
【0125】
基板Wの全域への描画処理が完了すると、制御部90はステージ移動機構20を動作させ描画処理済み基板Wを載置するステージ10を搬出位置に移動させる。そして、真空ポンプの動作が停止し、ステージ10上での吸着保持が解除される。制御部90の動作指令に応じて搬送装置80がステージ10の上面から描画処理済みの基板Wを露光装置100から搬出し、基板収納カセット103に搬入する(ステップS14)。
【0126】
次に描画処理(ステップS13)について詳細に説明する。図10は描画処理の流れを詳細に説明するための図である。
【0127】
制御部90からの動作指令に応じてステージ移動機構20が動作し、ステージ10が描画開始位置へと移動する(ステップS101)。描画開始位置は、ステージ10に載置された基板Wの書き出し位置に基づき決められており、制御部90が内部に記憶している。
【0128】
次に、制御部90のラスタライズ部93から露光制御部900に1ストライプ分のラスターデータ912が送られる。露光制御部900は1ストライプ分のラスターデータ912を受け取ったことを確認すると、主走査機構15を動作させステージ10の主走査方向の移動を開始する(ステップS102)。この時、光学ヘッド401から基板Wに向けて光ビームが照射される間は、ステージ10は一定速度で主走査方向に移動するように制御される。なお、ステージ10の移動速度は基板W上に塗布されたレジストの感光特性および光学ヘッド401から照射される光ビームの光量に基づき決められている。
【0129】
また、制御部90はステージ位置計測部30に対しても動作指令を行う。ステージ位置計測部30は、主走査方向に移動するステージ10に向けて連続的にレーザ光を照射し、その反射光と出射光との干渉からステージ10の主走査方向の位置を連続的に検出し制御部90に送信する。したがって、制御部90は、描画処理中においてステージ10の主走査方向の位置を常に把握することができる。
【0130】
ステージ10の主走査方向に沿う走査が開始されると、制御部90は撮像部50に対して動作指令を出す。撮像部50は動作指令に応じて主走査方向に移動するステージ10に保持された基板W上の描画予定領域を撮像し、描画予定領域に形成された下層パターンの撮像データを取得する(ステップS103)。ただし、撮像部50は主走査の方向について、光学ヘッド401から定められた距離だけ上流側に配置されている。したがって、撮像部50においては、光学ヘッド401に対して当該距離だけステージ10が移動し、描画を行う予定の基板W上の描画予定領域を光学ヘッド401によって描画される前に撮像した撮像データが取得されることになる。
【0131】
ここで、本実施形態においては、撮像部50は1次元イメージセンサを採用しているため1次元で撮像された撮像データは制御部90に順次送信される。そして、制御部90が1次元の撮像データを合成し2次元画像を生成する。本実施例では、生成された2次元画像の重心位置を含む1次元の撮像データが取得された時刻を撮像時とおいている。
【0132】
これと並行して、制御部90は移動誤差検出部60に対して動作指令を出しエンコーダヘッド62を動作させる。エンコーダヘッド62は、ステージ10上に形成されたスケールパターン61に向かって光を照射し、光の回折と干渉を利用してステージ10の移動誤差を連続的に検出することができる。そして、撮像部50による撮像時に合わせたタイミング(第1検出タイミング)で検出されるステージ10の移動誤差を第1移動誤差として検出する(ステップS104)。より正確には、連続的に検出されたステージ10の移動誤差を一時的に記憶しておき、撮像時に合わせたタイミングで記憶されたステージ10の移動誤差を第1移動誤差として取得する。
【0133】
このとき、エンコーダヘッド62によって検出されるステージ10の移動誤差は、エンコーダヘッド62の下方におけるステージ10の移動誤差を検出することとなる。しかしながら、ステージ10の移動誤差は、ステージ10全体に対して一様に発生しているものである。そのため、エンコーダヘッド62の下方で検出したステージ10の移動誤差であっても、ステージ10全体に対して生じている移動誤差として扱うことができる。すなわち、エンコーダヘッド62の下方で検出したステージ10の移動誤差は、同時刻の撮像部50または光学ヘッド401の下方におけるステージ10の移動誤差と等価であると言える。そして、移動誤差検出部60は、エンコーダヘッド62が検出したステージ10の移動誤差を制御部90に送信する。
【0134】
制御部90の露光に関係する機能部であるずれ量算出部94は、撮像部50から送れてくる撮像データを2次元画像として生成するとともに、移動誤差検出部60から送られてくる第1移動誤差を取得する。ずれ量算出部94は撮像部50から送られてくる1次元の撮像データから生成した2次元画像を用いて2次元画像内における下層パターンの位置ずれ量を算出する。
【0135】
このとき、2次元画像内における下層パターンの設計位置と、実際に基板Wに形成されている下層パターンの形成位置との差分が下層パターンの位置ずれ量として算出される。当該位置ずれ量は、図7(b)でも示した通りX軸方向の位置ずれ量ΔIPXおよびY軸方向の位置ずれ量ΔIPYで構成される。
【0136】
そして、ステップS104で取得されたステージ10の第1移動誤差を用いて、2次元画像内における下層パターンの位置ずれ量から第1移動誤差を減算することで、基板W上の下層パターンの位置ずれ量を算出する(ステップS105)。基板W上の下層パターンの位置ずれ量は、X軸方向の位置ずれ量としてX軸位置ずれ量PX、Y軸方向の位置ずれ量としてY軸位置ずれ量PYとして算出される。
【0137】
ステップS103およびステップS104での処理が行なわれた後も、一定の速度でステージ10は光学ヘッド401に向かって移動する。そして、撮像部50による撮像後から光学ヘッド401によって光ビームが照射されるまでの間にあらかじめ設定されたタイミング(第2検出タイミング)でエンコーダヘッド62によって検出されるステージ10の移動誤差を第2移動誤差として検出する(ステップS106)。
【0138】
ここで、ステージ10の第2移動誤差の検出について説明する。第2移動誤差を検出する第2検出タイミングは、後述する上層パターンの形成位置の算出に要する時間および算出された上層パターンの形成位置に基づき照射位置シフト機構47を制御し光ビームを基板Wへ照射するのに要する時間に基づいて決められる。すなわち、上層パターンの形成位置算出時間と、該形成位置に基づき光ビームの光路をシフトさせるのに要する時間とを合わせた時間だけ、光ビームが照射されるより前に第2移動誤差が検出されるように第2検出タイミングを設定しておく。
【0139】
このように、第2検出タイミングを設定することで光学ヘッド401によって光ビームが照射される照射位置に最も近づいた近接位置でのステージ10の移動誤差を検出することができる。移動誤差検出部60は、エンコーダヘッド62によって検出された第2移動誤差を制御部90へ送信する。
【0140】
形成位置算出部95は、ずれ量算出部94から送られてくる基板W上の下層パターンの位置ずれ量であるX軸位置ずれ量PXとY軸位置ずれ量PY、移動誤差検出部60から送られてくる第2検出タイミングで検出された第2移動誤差とを受け取る。形成位置算出部95は基板W上の下層パターンのX軸位置ずれ量PXおよびY軸位置ずれ量PYと、第2検出タイミングで検出された第2移動誤差のX軸方向の移動誤差ΔDSXおよびY軸方向の移動誤差ΔDSYとを加算することで、下層パターンに対する上層パターンのX軸方向の位置ずれ量ΔPX+ΔDSX、Y軸方向の位置ずれ量ΔPY+ΔDSYを算出する。
【0141】
そして、本来の上層パターンの形成位置をΔPX+ΔDSX、ΔPY+ΔDSYだけずらせた位置が下層パターンに対する上層パターンの形成位置として算出される(ステップS107)。
【0142】
形成位置算出部95で算出された下層パターンに対する上層パターンの形成位置を露光制御部900に送信する。露光制御部900は、上層パターンの形成位置に基づき照射位置シフト機構47を制御し光学ヘッド401から照射される光ビームの光路を必要に応じて副走査方向にシフトさせる。また、主走査方向については光学ヘッド401から光が照射されるタイミングを制御し補正する(ステップS108)。
【0143】
具体的には、形成位置算出部95から送られてくる下層パターンに対する上層パターンの形成位置はX軸方向の形成位置とY軸方向の形成位置からなる。露光制御部900は、X軸方向の形成位置に基づき照射位置シフト機構47を動作させる。すなわち、形成位置算出部95から送られてきた上層パターンのX軸方向の形成位置に光ビームを照射することができるように、照射位置シフト機構47内の2つのウェッジプリズム471の相対的な離間距離を変化させる。すると、光ビームの光路がX軸方向にシフトし、副走査方向に対して下層パターンに精度よく位置合わせを行いつつ上層パターンを描画することができる。
【0144】
また、主走査方向については成位置算出部95から送られてきた上層パターンのY軸方向の形成位置に光ビームが照射されるように、空間光変調素子45のオンとオフのタイミングを制御する。例えば、ステージ10の移動誤差等により本来の上層パターンの形成位置よりも主走査方向に描画が遅れる方向に1画素ずれていた場合は、空間光変調素子45のオンにするタイミングを1画素分遅らすことで、主走査方向に対して下層パターンに精度良く位置合わせを行いつつ上層パターンを描画することができる。
【0145】
以上の動作を1ストライプ分の描画が終わるまで行う。1ストライプ分の描画が完了すると、描画すべき次のストライプがあるか否かを判定し(ステップS109)、次のストライプがある場合は、制御部90による動作信号に応じてステージ移動機構20が動作し、ステージ10を開始位置に戻すとともに、ステージ10を1ストライプ分だけ副走査方向に相対移動させる(ステップS110)。
【0146】
また、同時にエンコーダ移動機構63にも制御部90から動作指令が送られ、エンコーダヘッド62も副走査方向に相対移動する(ステップS111)。つまり、エンコーダヘッド62はステージ10上に形成されたスケールパターン61を追従するように副走査方向に移動することができるため、描画処理時において継続してステージ10の移動誤差を検出することができる。
【0147】
そして、隣のストライプに対して、ステップS102からステップS109を繰り返し、基板Wの表面の全域に上層パターンが描画されたら描画処理を完了し搬送装置80によりステージ10から処理済みの基板Wが搬出される。
【0148】
以上説明したとおり、本発明の露光装置100のように撮像部50と移動誤差検出部60とを備えることで、まず基板の変形に起因する基板W上における下層パターンの位置ずれ量を算出することができる。そして、撮像部50とは別に移動誤差検出部60はステージ10の移動に起因するステージ10の移動誤差を検出することができる。すなわち、撮像部50と移動誤差検出部60と光学ヘッド401とをそれぞれ独立して設けることで、各構成の光学系の設計を簡素化することができる。
【0149】
また、ステージ10の移動誤差を検出するタイミングを自由に設定できるため、各処理に要する最低限の時間だけ確保すれば、ステージ10の移動誤差が検出される位置を、光学ヘッド401による照射位置に極限まで実質的に近づけることができる。
【0150】
次に、露光位置の手前側におけるステージ10の移動誤差を検証する。図11は、本シミュレーションの条件を示した模式図である。
【0151】
図11は、撮像部50によって描画予定領域の下層パターンが撮像された撮像時のステージ10の位置と、エンコーダヘッド62によって第2移動誤差が検出された検出時のステージ10の位置と、光学ヘッド401によって描画予定領域に光ビームが照射された照射時のステージ10の位置との位置関係を示している。なお、撮像部50による撮像時、およびエンコーダヘッド62による検出時にステージ10が位置する状態を破線で表し、光学ヘッド401による照射時のステージ10の位置を実線で表している。また、ステージ10上に載置された基板Wは図示を省略している。
【0152】
次に、ステージ10の主走査方向への移動速度を100[mm/秒]とする。また、描画予定領域が撮像部50によって撮像されてから、光学ヘッド401によって光ビームが照射される照射時までのステージ10の移動する距離を100[mm]とする。これは、光学ヘッド401と撮像部50との間の距離を意味し、光学ヘッド401と撮像部50を別体として設ける場合は、光学ヘッド401の筐体の大きさに依存する。そのため、これらの間の距離を近づけるには限界がある。本シミュレーションでは、この距離を前述したように100[mm]としている。
【0153】
移動誤差検出部60による第2移動誤差の検出時から、光学ヘッド401による照射時までのステージ10の移動する距離Dを10、20、30、50、70、100[mm]としてシミュレーションを行う。この距離Dは、光学ヘッド401によって光ビームが照射される位置にどれだけ近い位置でステージ10の移動誤差を検出できるかを意味している。
【0154】
エンコーダヘッド62はその下方をステージ10が通過するときのステージ10の移動誤差を検出する。しかし、撮像部50とは異なり光学ヘッド401との間の距離を考える必要はない。なぜなら、エンコーダヘッド62はステージ10の移動誤差を検出するタイミングを調整することで、任意の位置でのステージ10の移動誤差を検出することができるからである。
【0155】
また、本シミュレーションではステージ10に生じる移動誤差は正弦波としている。ステージ10の移動誤差は不規則に生じるため周期や位相をあらかじめ特定しておくことはできない。しかし、すべての信号は各周波数の正弦波に分けることができる。これはフーリエの定理により公知であり説明は省略する。そのため、本シミュレーションにおいては、ステージ10が移動することによって生じる水平方向の移動誤差の1つが振動数5.0[Hz]、振幅1.0[mm]ので発生している場合についてシミュレーションを行う。
【0156】
上述した条件で、下層パターンを撮像する撮像部50のみを用いて撮像時のタイミングでステージ10の移動誤差を検出した場合と、本発明のように移動誤差検出部60を用いて上述した第2検出タイミングでステージ10の移動誤差を検出した場合との、ステージ10の検出時の移動誤差と光ビームが照射される照射時の実際のステージ10の移動誤差との相対誤差の変動幅についてシミュレーションを行なった結果を図12と表1に示す。なお、相対誤差とは、検出されたステージ10の移動誤差を用いて、上層パターンの形成位置を補正した場合の下層パターンの位置に対する上層パターンの位置ずれ量を表すものである。
【0157】
したがって、検出時のステージ10の移動誤差と、光学ヘッド401によって光ビームが照射される照射時の移動誤差が完全に一致すれば相対誤差はゼロとなり、下層パターンに対する上層パターンの位置ずれが発生しない。これに対し、検出時のステージ10の移動誤差と、照射時の実際の移動誤差が正反対の値であった場合、下層パターンに対する上層パターンの補正を逆方向に行うことになる。したがって、相対誤差が大きくなればなるほど、下層パターンに対する上層パターンの位置ずれが大きくなり重ね合わせの描画精度が低下する。
【0158】
図12は、上述した条件でステージ10の移動誤差を検出した際、当該移動誤差が0度から360度の間で位相がずれた場合の相対誤差を表している。
【0159】
撮像部50によって撮像される位置(D=100mm)で検出されたステージ10の移動誤差と、光学ヘッド401による照射時のステージ10の移動誤差との相対誤差を見ると、位相が0度の時は相対誤差が最小で0mmとなり、位相が90度の時に相対誤差が最大で2.0mmとなっている。相対誤差がゼロになるのは、撮像時に検出された移動誤差と照射時に検出された移動誤差が同じであることをあらわしている。また、相対誤差が最大になるのは、撮像時に検出された移動誤差と照射時に検出された移動誤差との差が最大になっていることをあらわしている。
【0160】
位相が0度となるような場合であれば撮像時に検出されたステージ10の移動誤差を用いて、上層パターンの形成位置を算出し当該位置に基づいて描画を行うことで、下層パターンに対する上層パターンの位置ずれを補正し重ね合わせ描画を良好に行うことができる。言い換えると、撮像部50で撮像された撮像データのみを用いて上層パターンの形成位置を算出して補正することで重ね合わせ描画を良好に行うことができる。
【0161】
しかし、位相が90度となるような場合、撮像時に検出されたステージ10の移動誤差を用いて、上層パターンの形成位置を算出し当該位置に基づいて描画を行うと、本来補正すべき方向とは逆方向に補正することになる。これはステージ10の移動誤差を考慮せずに描画する場合に比べて、重ね合わせ描画の精度が2倍悪化することになる。
【0162】
すなわち、位相が一致する場合には描画精度は向上するが、逆に大きくずれた場合には描画精度は悪化するため安定した重ね合わせ描画を行うことができない。
【0163】
これに対し、エンコーダヘッド62によって第2移動誤差が検出される時のステージ10の位置と、光学ヘッド401によって光ビームが照射される位置との距離Dが、D=10mmの場合、位相が99度の時は相対誤差が最小で0となり、位相が10度の時に相対誤差が最大で0.31mmとなっている。
【0164】
すなわち、相対誤差が最大となるようなステージ10の移動誤差が生じている場合でも、本来のステージ10の振幅である1.0mmよりも確実に移動誤差の影響を低減することができる。そのため、ステージ10に生じる移動誤差の位相に関係なく下層パターンに対する上層パターンの重ね合わせ描画を安定した精度で行うことができる。
【0165】
表1は上述した条件でシミュレーションを行なった結果をまとめたものである。各距離Dにおける相対誤差の最大値、最小値、およびこれらの差分である相対誤差の範囲を示している。
【表1】
【0166】
距離Dを10mmから100mmに変えた場合を見ると、距離Dが小さくなればなるほど相対誤差の最小値(MIN)と最大値(MAX)との差である変動幅(RANGE)が小さくなっている。このことから、ステージ10の移動誤差が検出されてから、光学ヘッド401によって光ビームが照射されるまでの間のステージ10の移動する距離が短い方が重ねあわせ描画の精度を安定させることができる。
【0167】
以上のように、露光装置100が撮像部50と移動誤差検出部60とをそれぞれ備えることで、基板Wの変形に起因する基板W上における下層パターンの位置ずれと、ステージ10の移動に起因するステージ10の移動誤差による位置ずれとをそれぞれ取得することができる。その際、移動誤差検出部60では、第2移動誤差を検出するタイミングを撮像部50による撮像後から光学ヘッド401による光ビームの照射時までの間に設定することができ、第2移動誤差の検出時から光ビームの照射時までにステージ10が移動する距離を短くすることができる。
【0168】
これにより、ステージ10が移動することで生じる移動誤差の相対誤差の取りうる範囲である変動幅を小さくすることができるため、下層パターンに対する上層パターンの重ね合わせ描画を安定した精度で行うことができる。
【0169】
また、光学ヘッド401と移動誤差検出部60であるエンコーダヘッド62とを独立して設けているため、それぞれ独立した設計で実装することができ光学系の設計が複雑になることを防ぐことができる。
<変形例>
【0170】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく様々な変形が可能である。
【0171】
上記実施形態では、ステージ10の移動誤差を検出するためエンコーダヘッド62を用いたがこれに限られるものではない。例えば、エンコーダヘッド62に相当する構成として、顕微鏡および顕微鏡を介して基板表面に形成されたスケールパターン61を撮像するためのCCDイメージセンサを用いることができる。そして、撮像されたスケールパターン61の画像に基づき、パターンマッチング等の画像処理を行い、スケールパターン61の格子位置からステージ10の移動誤差を算出するように構成してもよい。
【0172】
また、上記実施形態では、エンコーダヘッド62はステージ10の副走査方向(X軸方向)の移動に同期して、エンコーダヘッド62も副走査方向に移動する構成となっているが、本発明の効果を得る上でこの構成に限られるものではない。例えば、ステージ10の副走査方向のステージサイズを大きくし、スケールパターン61の該方向の幅を長くする(例えば、基板Wの直径と同じ長さにする)ことで、エンコーダヘッド62を固定配置するように構成することも可能である。
【0173】
また、上記実施形態では、下層パターンに対する上層パターンの形成位置に基づき光ビームの照射位置を補正するため、照射位置シフト機構47を用いた光ビームの光路の補正を行っているが、この構成に限られるものではない。例えば、算出された上層パターンの形成位置に基づいてステージ10を補正する方向に移動させることで、光学ヘッド401に対して相対的に光ビームの照射位置をシフトすることができる。
【0174】
また、光学ヘッド401に送信する描画データ自身を算出された上層パターンの形成位置に基づき修正することでも同様の効果を得ることができる。
【0175】
また、上記実施形態では、半導体基板に対する描画装置および方法について説明したが、描画対象物はこれに限られない。例えば、プリント配線基板、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板やフォトマスク等の重ね合わせ描画を行う際に本発明が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0176】
2 コンピュータ
10 ステージ
20 ステージ移動機構
30 ステージ位置計測部
40 光照射部
47 照射位置シフト機構
50 撮像部
60 移動誤差検出部
90 制御部
94 ずれ量算出部
95 形成位置算出部
100 露光装置
W 基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画装置の光学ヘッドに対して相対移動するステージ上に載置された半導体基板、液晶基板、プリント配線基板などに対して配線パターン等を描画する描画装置および描画方法に関する。特に、あらかじめ下層に形成されたパターンに基づき位置合わせを行いつつ露光を行うのに有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感光材料が塗布された半導体ウェハや液晶基板、プリント配線基板(以下、単に基板と称する)などの基板の表面に樹脂や金属配線等を所定のパターン形状にパターンニングするためのフォトリソグラフィの技術を利用した種々の露光装置が提案されている。そして、このような露光装置を用いて、金属配線等を順次積層してモジュールや回路基板の製造が行なわれている。
【0003】
通常、これらの基板に対して露光パターンを形成していく際、下層の露光パターンに上層の露光パターンを位置決めして重ねていく重ね合わせ露光が行なわれる。重ね合わせ露光では、下層の露光パターンが露光された後、各種の熱処理等を実行することによって基板に伸縮が発生し基板が変形することがある。そして、基板の変形に起因する下層の露光パターンの位置ずれが生じる。このため上層の露光パターンを露光するとき、下層の露光パターンに対する上層の露光パターンの位置補正を行なわなければ、下層の露光パターンに対して、重ねた上層の露光パターンの位置がずれてしまう。
【0004】
さらに、基板をステージに保持しつつ移動させながら露光する場合、ステージを移動させる移動機構の精度次第では真直度にばらつき(以降では、移動誤差と称する)が生じる。したがって、ステージを移動させつつ下層の露光パターンに対して上層の露光パターンを重ねて露光するためには、基板の変形とステージの移動誤差による下層の露光パターンに対する上層の露光パターンの位置ずれを補正して重ね合わせ露光を行う必要がある。そのため、ステージに保持された基板表面を撮像し、下層の露光パターンの位置ずれを算出し、上層の露光パターンの露光位置を補正して露光する技術がある。
【0005】
例えば、特許文献1では、移動するカラーフィルタ基板の移動方向にて、マイクロミラーデバイスで変調された光をカラーフィルタ基板に投影するための投影レンズを介して、露光位置の手前側を撮像する撮像手段を設け、カラーフィルタ基板にあらかじめ設けられたブラックマトリクスのピクセル上に位置合わせを行いつつ露光パターンを露光する技術が開示されている。このような構成の露光装置を用いることで、露光位置に近い位置でのステージの移動誤差を検出することができる。
【0006】
また、例えば特許文献2では移動するカラーフィルタ基板の移動方向にてDMD(Digital Micromirror Device:デジタル マイクロミラー デバイス:テキサス・インスツルメンツ社の登録商標)による露光位置の手前側を撮像位置としてCCDカメラを設けている。そして、カラーフィルタ基板にあらかじめ形成された基準となる機能パターン(下層パターン)に設定された基準位置を撮像し検出する。撮像時における該基準位置を基準としてDMDの駆動を制御して機能パターン(上層パターン)の像を形成することによって、機能パターンの重ね合わせ精度の向上を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−330622号公報
【特許文献2】特開2006−178056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のような露光装置ではマイクロミラーデバイスで変調された光をカラーフィルタ基板に投影するための投影レンズを介して、露光位置の手前側を撮像する撮像手段を設けるため、下層パターンを観測するにはカラーフィルタ基板の表面に塗布されたレジスト等を感光させない波長の光源を用いる必要がある。そのため共通の光学系を採用するには異なる波長に対して同一の撮像面で像が得られるように設計する必要があり光学設計が複雑になり現実的でない。
【0009】
特許文献2のような露光装置ではカラーフィルタ基板の移動方向にてDMDによる露光位置の手前側を撮像位置として撮像するCCDカメラを採用することで、独立してDMDとCCDカメラを設けることができ、特許文献1のような露光装置に比べて光学設計が容易になる。しかし、露光位置の手前側を撮像位置とする限りステージの移動誤差を検出したとしても安定したパターンの重ね合わせ精度を達成するに至っていなかった。
【0010】
なぜなら、周期や位相が未知であるステージの移動誤差に対して、撮像位置と露光位置との間の距離が長くなればなるほど、撮像位置で検出されたステージの移動誤差と実際に露光される露光位置でのステージの移動誤差との相対誤差の変動幅が大きくなり、安定した重ね合わせ露光を行うことができない。また、ステージの移動誤差は露光動作の度にバラつくため、露光位置の手前側で撮像する下層の露光パターンの位置と、露光位置での下層の露光パターンの位置とのずれが露光動作ごとに変動するという問題がある。
【0011】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、光学系の設計を複雑にせず、検出時の移動誤差と露光時の移動誤差との相対誤差の変動幅を小さくし、安定した重ね合わせ描画を行うための描画装置および描画方法である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するため、下層パターンがあらかじめ形成された基板を水平に保持するとともに、基板を保持して移動可能なステージと、ステージに保持された基板の描画予定領域に対して上層パターンの描画データに応じて光ビームを照射する光照射部と、光照射部に向かって相対移動するステージに保持された基板の描画予定領域に光ビームが照射される前に描画予定領域に形成された下層パターンを撮像する撮像部と、光照射部に向かって相対移動するステージの位置を、撮像部による撮像時に合わせて第1移動誤差として検出し、撮像部による撮像後から光照射部によって光ビームが照射されるまでの間にステージの位置を第2移動誤差として検出する移動誤差検出部と、上層パターンの描画データに応じて光照射部による描画を制御する制御部と、を具備し、制御部は、撮像部が取得した画像に含まれる下層パターンに基づき、画像内における下層パターンの位置ずれ量を取得し、画像内の下層パターンの位置ずれ量から第1移動誤差を除くことで基板上における下層パターンのずれである下層パターンの位置ずれ量を算出し、基板上における下層パターンの位置ずれ量に第2移動誤差を加えることで、第2移動誤差の検出時における下層パターンに対する上層パターンの形成位置を算出し、上層パターンの形成位置に基づいて光照射部による描画を制御することを特徴とする。
【0013】
このように構成された発明では、制御部において、撮像部で撮像された下層パターンの画像と、撮像時に検出された第1移動誤差とから撮像時の基板上における下層パターンの位置ずれ量を算出する。これにより、基板の変形に起因する下層パターンのずれを撮像時から照射時までの間にあらかじめ算出することができる。
【0014】
そして、移動誤差検出部は、撮像部による下層パターンの撮像後から光照射部によって光ビームが照射されるまでの間に移動するステージの第2移動誤差を検出する。制御部は下層パターンの位置ずれ量と、検出された第2移動誤差とから第2移動誤差の検出時における下層パターンに対する上層パターンの形成位置を算出することができる。これにより、ステージが撮像された位置よりも光ビームが照射される位置に近づいた状態でステージの移動誤差を検出することができ、光ビームが照射される位置に近い位置での下層パターンに対する上層パターンの形成位置を算出することができる。
【0015】
このように、下層パターンに対する上層パターンの形成位置を光ビームが照射される位置に近い位置で算出することで光ビームが照射される位置までのステージの移動する距離が短くなり、移動誤差検出部で検出される第2移動誤差と、光照射部から光ビームが照射される照射時の実際のステージの移動誤差との差分である相対誤差の変動幅を小さくすることができ、下層パターンに合わせて配線パターン等の上層パターンの安定した描画を行うができる。
【0016】
また、光照射部と撮像部と移動誤差検出部とを独立して設けているため、それぞれ独立した設計を行えることにより光学系が複雑になることを防ぐことができる。そのため、光学系の設計が容易となる。
【0017】
また、本願発明に係る描画装置において、移動誤差検出部は、制御部が上層パターンの形成位置を算出するのに要する時間と、上層パターンの形成位置に基づき光照射部による描画を制御するのに要する時間とを合わせた時間に応じて、光照射部によって光ビームが照射されるより前に第2移動誤差を検出することを特徴とする。
【0018】
このように構成された発明では、移動誤差検出部は第2移動誤差の検出を、制御部が上層パターンの形成位置を算出するのに要する時間と、上層パターンの形成位置に基づき光照射部による描画を制御するのに要する時間とを合わせた時間に応じて行う。そのため、第2移動誤差の検出を光照射部によって光ビームが照射される照射時に最大限に近づけることができる。したがって、さらに移動誤差検出部で検出される第2移動誤差と、光照射部から光ビームが照射される照射時の実際のステージの移動誤差との差分である相対誤差の変動幅をさらに小さくすることができるため、安定した下層パターンに対する上層パターンの重ね合わせ描画を行うことができる。
【0019】
また、本願発明に係る描画装置において、光照射部は、光ビームの光路をステージが進む方向と直交する方向に相対的にシフトさせる照射位置シフト機構を有し、制御部は、照射位置シフト機構を制御し、上層パターンの形成位置に基づき光ビームの光路をシフトさせることで、上層パターンの描画を制御することを特徴とする。このように構成された発明では、制御部が照射位置シフト機構を制御し、上層パターンの形成位置に基づき光ビームの光路をシフトさせることで、下層パターンに合わせた上層パターンの描画を行うことができる。
【0020】
また、本願発明に係る描画装置において、下層パターンの設計データをあらかじめ記憶しておく記憶部をさらに有し、制御部は、撮像部が取得した撮像画像に含まれる下層パターンと、下層パターンの設計データから生成した画像とを用いた画像処理により、ステージに保持された基板の下層パターンの位置を算出することを特徴とする。このように構成された発明では、制御部においてステージに保持された基板の下層パターンの位置を算出するため、下層パターンの撮像画像と、下層パターンの設計データから生成した画像とを画像処理することで確実に下層パターンの位置を算出することができる。
【0021】
また、本願発明に係る描画装置において、制御部における画像処理はパターンマッチング処理であることを特徴とする。このように構成された発明では、画像処理としてパターンマッチング処理を採用することで、画像間の位置合わせを行い確実に下層パターンの位置を算出することができる。
【0022】
本発明は、上記目的を達成するため、下層パターンがあらかじめ形成された基板をステージ上に水平に保持するとともに、基板を保持して移動する移動工程と、ステージに保持された基板の描画予定領域に対して上層パターンの描画データに応じて光ビームを照射する光照射工程と、ステージに保持された基板の描画予定領域に形成されている下層パターンを、光照射工程でステージに保持された基板の描画予定領域に光ビームが照射される前に撮像部によって撮像する撮像工程と、基板を保持して移動するステージの位置を、撮像工程での撮像時に合わせて第1移動誤差として検出し、撮像工程による撮像後から光照射工程で光ビームが照射されるまでの間にステージの位置を第2移動誤差として検出する移動誤差検出工程と、上層パターンの描画データに基づき光照射工程での描画を制御する制御工程と、を有し、制御工程は、撮像工程で取得された撮像画像に含まれる下層パターンに基づき、撮像画像内における下層パターンの位置ずれ量を取得し、撮像画像内における下層パターンの位置ずれ量から第1移動誤差を除くことで基板上における下層パターンのずれである下層パターンの位置ずれ量を算出し、基板上における下層パターンの位置ずれ量に第2移動誤差を加えることで、第2移動誤差の検出時における下層パターンに対する上層パターンの形成位置を算出し、上層パターンの形成位置に基づき光照射工程での描画を制御することを特徴とする。
【0023】
このように構成された発明では、制御工程において、撮像工程で撮像された下層パターンの画像と、移動誤差検出工程において撮像時に検出された第1移動誤差とから撮像時の基板上における下層パターンの位置ずれ量を算出する。これにより、基板の変形に起因する下層パターンの位置ずれ量を撮像時から照射時までの間にあらかじめ算出することができる。
【0024】
そして、移動誤差検出工程では、撮像工程での下層パターンの撮像後から光照射工程で光ビームが照射されるまでの間に移動するステージの第2移動誤差を検出する。制御工程では、下層パターンの位置ずれ量と、検出された第2移動誤差とから第2移動誤差の検出時における下層パターンに対する上層パターンの形成位置を算出することができる。これにより、下層パターンが撮像された位置よりも光ビームが照射される位置に近づいた状態でのステージの移動誤差を検出することができ、光ビームが照射される位置に近い位置での下層パターンに対する上層パターンの形成位置を算出することができる。
【0025】
このように、下層パターンに対する上層パターンの形成位置を光ビームが照射される位置に近い位置で算出することで照射位置までのステージの移動する距離が短くなり、移動誤差検出工程で検出される第2移動誤差と、光照射工程で光ビームが照射される照射時の実際のステージの移動誤差との差分である相対誤差の変動幅を小さくすることができ、下層パターンに合わせて配線パターン等の上層パターンの安定した描画を行うができる。
【0026】
また、本願発明に係る描画方法において、移動誤差検出工程は、制御工程で上層パターンの形成位置を算出するのに要する時間と、上層パターンの形成位置に基づき光照射工程で描画を制御するのに要する時間とを合わせた時間に応じて、光照射工程で光ビームが照射されるより前に第2移動誤差を検出することを特徴とする。
【0027】
このように構成された発明では、移動誤差検出工程での第2移動誤差の検出を、制御工程で上層パターンの形成位置を算出するのに要する時間と、上層パターンの形成位置に基づき光照射工程で描画を制御するのに要する時間とを合わせた時間に応じて行う。これにより、第2移動誤差の検出を光照射工程で光ビームが照射される照射時に最大限に近づけることができる。したがって、さらに照射位置に近い位置での下層パターンに対する上層パターンの形成位置を算出することができる。
【0028】
また、本願発明に係る描画方法において、光照射工程は、光ビームの光路をステージが進む方向と直交する方向に相対的にシフトさせる照射位置シフト工程を有し、制御工程は、照射位置シフト工程において、上層パターンの形成位置に基づき光ビームの光路をシフトさせることで、上層パターンの描画を制御することを特徴とする。このように構成された発明では、制御工程は、照射位置シフト工程において上層パターンの形成位置に基づき光ビームの光路をシフトさせることで、下層パターンに合わせた上層パターンの描画を行うことができる。
【0029】
また、本願発明に係る描画方法において、制御工程は、撮像工程で取得した撮像画像に含まれる下層パターンと、下層パターンの設計データから生成した画像とを用いた画像処理により、ステージに保持された基板の下層パターンの位置を算出することを特徴とする。このように構成された発明では、制御工程においてステージに保持された基板の下層パターンの位置を算出するため、下層パターンの撮像画像と、下層パターンの設計データから生成した画像とを画像処理することで確実に下層パターンの位置を算出することができる。
【0030】
また、本願発明に係る描画方法において、制御工程における画像処理はパターンマッチング処理であることを特徴とする。このように構成された発明では、画像処理としてパターンマッチング処理を採用することで、画像間の位置合わせを行い確実に下層パターンの位置を算出することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、撮像部で撮像された下層パターンの撮像画像と、移動誤差検出部によって撮像時に検出された第1移動誤差とから、基板の変形に起因する基板上における下層パターンの位置ずれ量を算出することができる。そして、撮像部による下層パターンの撮像後から光照射部によって光ビームが照射されるまでの間に検出される第2移動誤差と、下層パターンの位置ずれ量とから、ステージの移動誤差に起因する下層パターンの位置ずれを考慮した上層パターンの形成位置を算出することができる。
【0032】
このように、下層パターンに対する上層パターンの形成位置を光ビームが照射される位置に近い位置で算出することで照射位置までのステージの移動する距離が短くなり、移動誤差検出部で検出される第2移動誤差と、光照射部から光ビームが照射される照射時の実際のステージの移動誤差との差分である相対誤差の変動幅を小さくすることができ、下層パターンに合わせて配線パターン等の上層パターンの安定した描画を行うができる描画装置および描画方法を実現することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態にかかる露光装置の側面から見た全体側面図である。
【図2】図1に示す露光装置を上面から見た全体平面図である。
【図3】図1の露光装置を上面および側面から見た一部拡大図である。
【図4】光照射部の内部構造を示す模式図である。
【図5】照射位置シフト機構の構成を示す模式図である。
【図6】制御部が備える露光動作に関わる機能部を示すブロック図である。
【図7】撮像画像内における下層パターンの位置ずれを説明するための図である。
【図8】基板上における下層パターンの位置ずれを説明するための図である。
【図9】本発明に係る描画処理の一連の流れを示す図である。
【図10】描画処理の流れを詳細に説明するための図である。
【図11】シミュレーションの条件を示す図である。
【図12】シミュレーションにおける各位置での相対誤差を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は本発明の一実施形態にかかる露光装置100の側面から見た全体側面図であり、図2は図1に示す露光装置100を上面から見た全体平面図である。
【0035】
なお、図1および図2において、図示および説明の都合上、Z軸方向が鉛直方向を表し、XY平面が水平面を表すものとして定義するが、それらの位置関係を把握するために便宜上定義するものであって、以下に説明する各方向を限定するものではない。
【0036】
露光装置100は、感光材料が表面に付与された半導体基板やガラス基板、プリント配線基板等(以降、基板と称す)の上面に光ビームを照射して配線パターン等の所定のパターンを直接描画する描画装置である。
【0037】
この露光装置100では、本体フレーム101に対してカバー102が取り付けられて形成される本体内部と、本体フレーム101の外側である本体外部とに、露光装置100が備える各種の構成要素を有した構成となっている。
【0038】
露光装置100の本体内部には、主として、基板Wを保持するステージ10と、ステージ10を移動させるステージ移動機構20と、ステージ10の位置を計測するステージ位置計測部30と、基板Wの上面に光ビームを照射する光照射部40と、基板W上の描画予定領域を撮像する撮像部50と、ステージ10の移動誤差を検出する移動誤差検出部60と、基板W上のアライメントマークを撮像するアライメントカメラ70および基板Wを搬出入するための搬送装置80とを有している。また、露光装置100は、露光装置100が備える各部と電気的に接続されて、これらの各部の動作を制御する制御部90を備える。
【0039】
そして、露光装置100の本体外部には、本体内部と隣接する位置に基板収納カセット103を載置するためのカセット載置部104を備えている。基板収納カセット103には、描画処理(露光処理)を受けるべき未処理の基板Wが収納されており、本体内部に配置される搬送装置80によって基板Wが本体内部に搬入される。また、未処理の基板Wに対して露光処理が施された後、基板Wが搬送装置80によって本体部から搬出され基板収納カセット103に戻される。基板収納カセット103の受け渡しは、図示を省略する外部搬送装置によって行なわれる。
【0040】
ステージ10は矩形状の外形を有し、ステージ10の上面には図示を省略する複数の吸引孔が形成されている。これらの吸引孔は真空ポンプ等に接続されており、該真空ポンプを動作させることによって、ステージ10上に基板Wが載置されると、吸引孔の吸引圧によりステージ10の上面に基板Wが吸着固定される。すなわち、ステージ10の上面に基板Wを水平に保ちつつ、固定的に保持する。
【0041】
ステージ移動機構20は、ステージ10を主走査方向(Y軸方向)、副走査方向(X軸方向)、およびZ軸周り回転方向(θ軸方向)に移動させる。ステージ移動機構20は、ステージ10を回転させる回転機構11と、ステージ10を回転可能に支持する支持プレート12と、支持プレート12を副走査方向に移動させる副走査機構13と、副走査機構13を介して支持プレート12を支持するベースプレート14と、ベースプレート14を主走査方向に移動させる主走査機構15と、を有している。回転機構11、副走査機構13、および主走査機構15は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じてステージ10を移動させる。
【0042】
回転機構11は、ステージ10の内部に取り付けられた回転子により構成されたモータを有している。また、ステージ10の中央部下面側と支持プレート12との間には回転軸受機構が設けられている。このため、モータを動作させると、回転子がθ方向に駆動し、回転軸受機構の回転軸を中心としてステージ10が所定角度の範囲内で回転する。
【0043】
副走査機構13は、支持プレート12の下面に取り付けられた移動子とベースプレート14の上面に敷設された固定子とにより副走査方向の推進力を発生させるリニアモータ13aと、副走査方向に伸びる一対のガイドレール13bとを有している。このため、リニアモータ13aを駆動させると、ベースプレート14上のガイドレール13bに沿って支持プレート12およびステージ10が副走査方向に移動する。
【0044】
主走査機構15は、リニアモータ15aと、ベースプレート14と基台105との間に、ベースプレート14の一部を案内するよう主走査方向に伸びる一対のガイドレール15bとを備える。リニアモータ15aはベースプレート14の下面に取り付けられた移動子と、基台105上に敷設された固定子とを有している。このため、リニアモータ15aを駆動させると、基台105上のガイドレール15bに沿って、ベースプレート14、支持プレート12およびステージ10が主走査方向に移動する。なお、このようなステージ移動機構20としては、従来から多用されているX−Y−θ軸移動機構を用いることができる。
【0045】
ステージ位置計測部30は、ステージ10の位置を計測する機構である。ステージ位置計測部30は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じてステージ10の位置を計測する。例えば、ステージ10に向けてレーザ光を照射し、その反射光と出射光との干渉を利用して、ステージ10の位置を計測する機構により構成することができる。この場合、ステージ位置計測部30は、例えば、レーザ光を出射する出射部31と、ビームスプリッタ33と、ビームベンダ32と、第1干渉計34と、第2干渉計35とを備える。
【0046】
出射部31から出射されたレーザ光は、まずビームスプリッタ32に入射し、ビームベ
ンダ33に向かう第1分岐光と、第2干渉計35に向かう第2分岐光とに分岐される。第1分岐光は、ビームベンダ33により反射され、第1干渉計34に入射するとともに、第1干渉計34からステージ10の第1の部位に照射される。そして、第1の部位において反射した第1分岐光が、再び第1干渉計34へ入射する。第1干渉計34は、ステージ10の第1の部位に向かう第1分岐光と第1の部位で反射された第1分岐光との干渉に基づいて第1の部位の位置に対応した位置パラメータを計測する。
【0047】
一方、第2分岐光は、第2干渉計35に入射するとともに、第2干渉計35からステージ10の第2の部位(ただし、第2の部位は、第1の部位とは異なる位置である)に照射
される。そして、第2の部位において反射した第2分岐光が、再び第2干渉計35へ入射する。第2干渉計35は、ステージ10の第2の部位に向かう第2分岐光とステージ10の第2の部位で反射された第2分岐光との干渉に基づいて第2の部位の位置に対応した位置パラメータを計測する。
【0048】
制御部90は、第1干渉計34および第2干渉計25のそれぞれから、ステージ10の第1の部位の位置に対応した位置パラメータ、およびステージ10の第2の部位の位置に対応した位置パラメータを取得する。そして、取得した各位置パラメータに基づいて、ステージ10の位置を算出する。
【0049】
光照射部40は、レーザ光を出射するレーザ発振器41と、レーザ発振器41を駆動するレーザ駆動部42と、レーザ発振器41から出射された光(スポットビーム)を強度分布が均一な線状の光(ラインビーム)とする照明光学系43と、基板Wの上面に光を照射する光学ヘッド401とを備える。
【0050】
レーザ発振器41、レーザ駆動部42および照明光学系43は、ステージ10およびステージ移動機構20を跨ぐようにして基台105上に架設されたボックス106の内部に設けられる。また、レーザ発振器41、レーザ駆動部42および照明光学系43は制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じて動作する。
【0051】
ステージ10およびステージ移動機構20に対向するようにして基台105の上方に一対の脚部材107、108がステージ10の移動路の両側に立設される。そして、脚部材107の頂部を橋渡しするように梁部材109が横設されており、それぞれの脚部材108の頂部および梁部材109の上面を橋渡しするようにボックス106は設けられている。
【0052】
そして、光学ヘッド401は梁部材109の略中央部の側面に設けられている。光学ヘッド401は、レーザ発振器41から出射され、照明光学系43を介して入射した光に描画パターンに応じた空間変調を形成して基板Wの上面に照射する。
【0053】
続いて、光照射部40が備える光学ヘッド401の構成について図4を参照しながら説明する。図4は光照射部40の構成例を模式的に示す図である。
【0054】
光照射部40は、レーザ駆動部42が動作するとレーザ発振器41からレーザ光が出射され、出射されたレーザ光は照明光学系43を介して、光学ヘッド401の内部に導入される。
【0055】
光学ヘッド401は、レーザ発振器41からの光を光学ヘッド401内に導入する入射部44と、導入された光を変調するための空間光変調素子45と、入射部44からの光を空間光変調素子45へと導く光学系46と、空間光変調素子45で変調された光の光軸をシフトさせ、基板Wの上面において描画位置を副走査方向に相対的にシフトさせるための照射位置シフト機構47と、照射位置シフト機構47を介した光を基板Wの上面に導く投影光学系48とを備える。
【0056】
空間光変調素子45は、回折格子型の変調素子であり、半導体装置製造技術を利用して製造され、格子の深さを変更することができる回折格子となっている。回折格子型の光変調素子としては、例えば、GLV(Graiting Light Valve:グレーチング・ライト・バルブ)(シリコン・ライト・マシーンズ社の登録商標)を使用する。なお、GLVによる光の変調原理については、既知であるため詳細については説明を省略する。
【0057】
照射位置シフト機構47は空間光変調素子45によって描画パターンに応じて空間変調された光を副走査方向に沿ってシフトさせる。照射位置シフト機構47の詳細については後述する。
【0058】
投影光学系48は、対物レンズ482と、対物レンズ482を光軸に沿って移動させるアクチュエータとから構成されるフォーカス機構481を備えている。フォーカス機構481により対物レンズ482がZ軸方向に移動することよって、空間光変調素子45によって変調された光の焦点位置が調整される。焦点位置が調整された光は、基板Wの上面に照射され、基板W上のレジスト等の感光層を露光することにより、配線パターン等が描画される。
【0059】
次に、照射位置シフト機構47について図5を参照しながら詳細に説明する。図5は照射位置シフト機構47の構成を模式的に示す図である。
【0060】
照射位置シフト機構47は、1個以上の光学部品を備え、少なくとも1個の光学部品の位置あるいは姿勢を変更することによって、入射光の光路を副走査方向に沿ってシフトさせる。
【0061】
図5に示すように照射位置シフト機構47は2個のウェッジプリズム471と、一方のウェッジプリズム471を、他方のウェッジプリズム471に対して、入射光の光軸Lの方向に沿って直線的に移動させるウェッジプリズム移動機構472とを備える。ウェッジプリズム471は、光が入射する光学面と出射する光学面が非平行となるプリズムである。2個のウェッジプリズム471は、互いに略同一の構造を有しており、例えば、頂角、屈折率がいずれも同一となる構造を有している。
【0062】
2個のウェッジプリズム471は、固定ステージ473、可動ステージ474にそれぞれ固定され、対向する光学面が互いに平行となり、かつ、互いに逆向きとなるように、入射光の光軸Lの方向に沿って並んで配置される。各ウェッジプリズム471は、例えば固定バンド475を用いて各ステージ473、474に固定される。
【0063】
一方のウェッジプリズム471が配置される固定ステージ473は、ベース部476上に固定されている。他方のウェッジプリズム471が配置される可動ステージ474は、ベース部476上に設置された一対のガイドレール4721に沿って移動可能とされている。ガイドレール4721は、ベース部476上に、Z軸方向に沿って延在して形成されている。
【0064】
ベース部476には、回転モータ4722によって回転させられるボールねじ4723が配設されている。ボールねじ4723は、ガイドレール4721の延在方向に沿って延在しており、可動ステージ474のブラケット4741の雌ねじ部に螺合されている。この構成において、ボールねじ4723が回転モータ4722によって回動されることで、可動ステージ474がガイドレール4721に沿ってZ方向に移動する。
【0065】
つまり、可動ステージ474、ガイドレール4721、回転モータ4722、およびボールねじ4723により、他方のウェッジプリズム471を入射光の光軸Lの方向に沿って直線的に移動させるウェッジプリズム移動機構472が構成される。ウェッジプリズム移動機構472は、他方のウェッジプリズム471を、一方のウェッジプリズム471に対して光軸Lの方向に沿って直線的に移動させることによって、2個のウェッジプリズム471の光軸Lの方向に沿う離間距離を変化させる。
【0066】
上記構成を備える照射位置シフト機構47においては、2個のウェッジプリズム471の光軸Lに沿う離間距離を変化させることによって、ウェッジプリズム471に入射する光の経路をX軸方向に沿ってシフトさせることができる。なお、シフト量Δxは、2つのウェッジプリズム471の離間距離に応じて定まる。
【0067】
撮像部50は、光学ヘッド401と対応付けられており、主走査の際に光学ヘッド40が基板Wに対して相対的に移動する方向について定められた距離だけ上流側に配置されている。本実施形態では、光学ヘッド401の図1中の右側の側面に固定的に設置されている。すなわち、撮像部50は、ステージ10が主走査方向に移動することで、光学ヘッド401がステージ10に対して相対的に移動する方向の搬送装置80側の光学ヘッド401の側面に設置されている。
【0068】
具体的には、例えばLEDにより構成される光源と、鏡筒と、対物レンズと、リニアイメージセンサ(一次元イメージセンサ)により構成されるCCDイメージセンサとを備える。なお、撮像部50で採用される光源の波長は、基板W上のレジスト等を感光させない波長である。
【0069】
そして、対応する光学ヘッド401が描画を行う予定の基板W上の領域である描画予定領域を撮像する。したがって、主走査方向に移動するステージ10に載置された基板W上の描画予定領域に光照射部40から光ビームが照射される前に、該描画予定領域に形成された下層パターンを撮像することができる。なお、撮像部50は制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じて撮像データを取得し、取得した撮像データを制御部90に送信する。
【0070】
移動誤差検出部60は、ステージ10上に形成されたスケールパターン61と、エンコーダヘッド62と、エンコーダヘッド62を副走査方向に移動可能にするためのエンコーダ移動機構63とを備える。そして、ステージ10の主走査方向の移動によって生じる真直度のばらつきなどであるステージ10の水平方向の移動誤差を逐次検出する。
【0071】
スケールパターン61は、ステージ10の上面であって載置された基板Wに掛からない位置であるステージ10の側端部に主走査方向に伸びるように形成されており、スケールパターン61の主走査方向の長さはステージ10の長さにほぼ等しい。なお、スケールパターン61は各種のフォトリソグラフィ製法により、ガラス表面上へ硬質なクロム蒸着等により形成することができる。
【0072】
エンコーダヘッド62は、光学ヘッド401が取り付けられた梁部材109の光学ヘッド401が設置される側の面であって、光学ヘッド401の側方に位置するように設けられている。
【0073】
エンコーダ移動機構63は、エンコーダヘッド62と梁部材109の間に配設されている。エンコーダ移動機構63は、図示を省略するリニアモータと、梁部材109に敷設された副走査方向に伸びる一対のガイドレールと、エンコーダヘッド62を側面から固定的に支持する支持プレートとを備える。そして、リニアモータが駆動し支持プレートと梁部材109との間に敷設された移動子および固定子とにより副走査方向の推進力を発生させ、支持プレートをガイドレールに沿って副走査方向に移動させることで、エンコーダヘッド62を副走査方向に移動させる。
【0074】
図3を参照しつつ移動誤差検出部60について詳細に説明する。図3(a)はステージ10上に形成されたスケールパターン61を上方から見た図である。スケールパターン61は、図3(a)に示すようにY軸方向に直線状に形成された1本のXスケールXSと、XスケールXSと直交するようにX軸方向に直線状に等間隔に複数の短線状に形成されたYスケールYSとを備える。そして、ステージ10が主走査方向に移動することで、スケールパターン61は梁部材109に設けられたエンコーダヘッド62の下方を通過し、エンコーダヘッド62がスケールパターン61を検出する。
【0075】
エンコーダヘッド62によるスケールパターン61の検出について図3(b)を用いて説明する。図3(b)は、エンコーダヘッド62およびステージ10上に形成されたスケールパターン61をX軸方向から見た模式図である。なお、梁部材109やエンコーダ移動機構63は図示を省略している。
【0076】
エンコーダヘッド62は互いに直交する二軸方向(XY方向)に感度をもち、スケールパターン61に当たる光の回折と干渉を利用することでステージ10の位置を計測する。エンコーダヘッド62は、ステージ10に形成されたスケールパターン61に光Lを照射する光源621と、光源621から照射された光Lがスケールパターン61で反射されXスケールXSからの回折光を受光する第1受光素子622Xと、YスケールYSからの回折光を受光する第2受光素子622Yとを備える。
【0077】
第1受光素子622Xはステージ10のX軸方向の位置を検出する。X軸方向についてはあらかじめ基準位置が規定されており、エンコーダヘッド62からのXスケールXSの検出信号を解析し、X軸方向の基準位置と検出されたXスケールXSとのX軸方向の距離を位置ずれ量として取得することができる。そして、基準位置を当該位置ずれ量分だけずらせた位置が検出時のX軸方向のステージ10の位置として検出される。
【0078】
また、第2受光素子622Yはステージ10のY軸方向の位置を検出する。光源621から照射された光Lがスケールパターン61で反射されYスケールYSからの回折光を第2受光素子622Yが受光し信号を出力する。そして、あらかじめ設定したYスケールYSの数と検出されたYスケールYSの数を比較することで、本来のステージ10の位置からの位置ずれ量を取得することができる。そして、Y軸方向の本来のステージ10の位置を基準に当該位置ずれ量分だけずらせた位置が検出時のY軸方向のステージ10の位置として検出される。
【0079】
以上のように、移動誤差検出部60は、エンコーダヘッド62とスケールパターン61とから取得されたステージ10の水平方向の位置であるステージ10のX軸方向の位置とY軸方向の位置を取得することができる。本来のステージ10の位置である理想位置と、移動誤差検出部60によって取得されたステージ10の水平位置との差分を本発明においてはステージ10の水平方向の移動誤差とする。
【0080】
なお、移動誤差検出部60は制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じてステージ10の水平方向の移動誤差を検出し、検出した移動誤差を制御部90に送信する。
【0081】
アライメントカメラ70は、基板Wの上面にあらかじめ形成されたアライメントマークを撮像する。アライメントカメラ70は、梁部材109の図1中の左側の側面に下方を撮像できるように設置されている。言い換えると、梁部材109の光学ヘッド401が設置される面の反対面に設置されている。
【0082】
そして、アライメントカメラ70としては、前述した撮像部50とほぼ同様の構成を備えている。アライメントカメラ70が備えるCCDイメージセンサは、例えばエリアイメージセンサ(2次元イメージセンサ)により構成される。
【0083】
アライメントカメラ70によりアライメントマークを撮像するときには、ステージ10に載置された基板Wがアライメントカメラ70の下方に移動し、図示を省略する光源から出射された光が基板Wの上面に導かれ、その反射光をCCDイメージセンサで受光する。
これにより、基板Wの上面に形成されたアライメントマークの撮像データが取得されることになる。
【0084】
なお、アライメントカメラ50は制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じて撮像データを取得し、取得した撮像データを制御部90に送信する。
【0085】
搬送装置80は、カバー102に囲まれた本体内部の右手端部に配置されている。搬送装置80は制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じて、基板収納カセット103と、ステージ10との間で基板Wの受け渡しを行う。搬送装置80としては、例えば、従来から知られている搬送ロボットを用いることができる。
【0086】
制御部90は、各種の演算処理を実行しつつ、露光装置100が備える各部の動作を制御する。制御部90は、例えば各種演算処理を行うCPU、ブートプログラム等を記憶するROM、演算処理の作業領域となるRAM、プログラムや各種のデータファイルなどを記憶するハードディスクなどの記憶部、各種表示を行うディスプレイ、キーボード、および、マウスなどの入力部、LAN等を介してデータ通信機能を有するデータ通信部、等を有するコンピュータによって構成される。コンピュータにインストールされたプログラムにしたがってコンピュータが動作することにより、当該コンピュータが露光装置100の制御部90として機能する。なお、制御部90において実現される各機能部は、コンピュータによって所定のプログラムが実行されることによって実現されてもよいし、専用のハードウェアによって実現されてもよい。
【0087】
次に、制御部90によって実現される上記の構造による露光動作に関わる各機能部について図6を用いて説明する。図6は制御部90が備える露光動作に関わる各機能部と、描画を実際に制御する露光制御部900との関係をあらわすブロック図である。
【0088】
制御部90は、基板Wに描画すべき上層パターンを記述した描画パターンデータであるCADデータ911等の各種データを記憶しておく記憶部91と、CADデータ911を描画用のデータ単位として生成するデータ生成部92と、データ生成部92で生成されたデータをラスタライズするラスタライズ部93と、下層パターンのずれ量を算出するずれ量算出部94と、下層パターンに対する上層パターンの形成位置を算出する形成位置算出部95とを備えている。
【0089】
記憶部91は、上述したように外部のCAD等を用いて生成されたCADデータ911やラスタライズ部93でラスタライズされたラスターデータ912等を記憶する。また、前述したデータ以外にも各部で検出されたデータ等を記憶する。なお、CAD911は基板Wに対する一連の処理に先立って記録媒体あるいは通信ネットワーク等を介してあらかじめ記憶部91に準備されている。
【0090】
データ生成部92は、記憶部91からCADデータ911を読み出し、描画を行う所定の単位領域(ストライプ)にCADデータ911を分割し、ラスタライズ部93にストライプ単位で送信する。
【0091】
ラスタライズ部93は、データ生成部92によって生成されたストライプごとにラスタライズを行い、ラスタ形式のラスターデータ912を生成し記憶部91に記憶する。こうして、1ストライプ分のラスターデータ912の準備が終わると、ラスターデータ912は露光制御部900に送られる。
【0092】
ずれ量算出部94は、撮像部50で取得された基板W上の描画予定領域の撮像データと、移動誤差検出部60で検出されたステージ10の水平方向の移動誤差を受け取り、描画予定領域に形成されている下層パターンの基板Wに対する位置ずれ量を算出する。基板Wに対する下層パターンの位置ずれ量とは、基板W上に形成されている下層パターンの形成位置と、基板W上での下層パターンの設計位置との差分をあらわすものである。
【0093】
図7を参照しつつ下層パターンの位置ずれについて説明する。下層パターンの位置ずれは、2つの要因により引き起こされる。その一方はステージ10の移動誤差によって生じる位置ずれと、他方は基板Wの変形等によって生じる基板W上での設計位置からの下層パターンの位置ずれである。図7では、上述したステージ10の移動誤差および基板Wの変形等による下層パターンの位置ずれが生じていない場合のステージ10の理想位置と基板W上における下層パターンの設計位置を破線で示している。また、その時点におけるステージ10の実際位置および下層パターンの形成位置については実線で示している。なお、図7では、光学ヘッド401およびエンコーダヘッド62は図示を省略している。
【0094】
図7(a)は、下層パターンの設計位置を破線で表している。また、基板W上の下層パターンの形成位置を実線で表している。なお、この時点では描画処理動作前でありステージ10は静止しており上述したステージ10の移動誤差は生じていない。したがって、ステージ10の実際位置は理想位置でもあるため実線で表している。
【0095】
これに対し、基板Wには熱膨張等により変形が生じており、あらかじめ基板W上に形成されている下層パターンが、基板W上での設計位置からX軸方向にΔPX、Y軸方向にΔPYだけ位置ずれが生じている。したがって、下層パターンに対して上層パターンを精度良く重ねあわせて描画するためには、当該位置ずれを補正する必要がある。
【0096】
図7(b)は、描画処理が開始され撮像部50にてY軸方向に移動するステージ10上に保持された基板Wの描画予定領域を撮像する撮像時における、ステージ10の理想位置と基板W上の下層パターンの設計位置を破線で表している。また、撮像時のステージ10の実際位置と基板W上の下層パターンの形成位置を実線で表している。
【0097】
撮像データから算出される下層パターンの設計位置と形成位置との位置ずれ量の算出について図8を参照しつつ説明する。図8(a)は撮像部50から送られてくる下層パターンの1次元の撮像データを蓄積し、2次元の画像データとして生成したものである。また、図8(b)は、制御部90がステージ位置計測部30から送られてくるステージ10の位置に基づき、あらかじめ記憶部に記憶しておいた下層パターンの設計データから、撮像部50によって撮像された位置と略同じ位置を特定し、画像データに変換し生成した設計画像520である。図8で示された撮像データは、図7(b)で図示される下層パターンを含むように撮像されたものを表している。
【0098】
設計画像520には、配線パターン等の設計下層パターン521が含まれる。同様に、撮像画像510には基板W上にあらかじめ形成されている配線パターン等の形成下層パターン511が含まれる。
【0099】
設計画像520から、特徴的なパターンを有するテンプレート522を抽出する。同時に、テンプレート522に設計基準点523を設定し、設計基準点523の座標を記憶しておく。これが設計位置となる。なお、設計基準点523をテンプレート522の左上に設定しているが、これに限定されるものではなく、テンプレート522内で特定できる点(例えば、重心等)を設計基準点として設定してもよい。
【0100】
続いて、撮像画像510に対してテンプレート522を用いて、いわゆるパターンマッチング処理を行い、マッチング度が高い位置であるマッチング領域512を取得する。すなわち、このマッチング領域512の左上の点が検出基準点513となる。
【0101】
設計基準点523と検出基準点513のX方向およびY方向の差分が、撮像画像内における下層パターンの設計位置に対する形成位置のX軸方向の位置ずれ量ΔIPX、Y軸方向の位置ずれ量ΔIPYとして求まる。
【0102】
しかしながら、撮像部50によって撮像することで得られる撮像データは、ステージ10に保持された基板Wを撮像して取得したものである。すなわち、ステージ10が移動誤差による位置ずれを生じていた場合、ステージ10に保持された基板Wを撮像して取得した撮像データには、撮像時のステージ10の移動誤差と、基板W上での設計位置からの下層パターンの位置ずれとが重畳されている。そのため、撮像時におけるステージ10の移動誤差を撮像画像から得られた下層パターンの位置ずれ量から減算する必要がある。
【0103】
ここで、前述したようにステージ10の移動誤差はエンコーダヘッド62とスケールパターン61によって検出することができる。具体的には、YスケールYSに関してはあらかじめ設定したYスケールYSの数と撮像時に検出された数を比較することでΔISYを求める。一方、XスケールXSに関してはステージ10のX軸方向の基準位置と撮像時に検出されたXスケールXSとのX軸方向の距離をΔISYとして取得することができる。ΔISXおよびΔISYが撮像時におけるステージ10の移動誤差をあらわす。
【0104】
したがって、描画予定領域に形成されている下層パターンの基板W上の設計位置からの位置ずれ量を算出するには、撮像データから算出した撮像画像内の下層パターンの位置ずれ量であるΔIPX、ΔIPYから、撮像時のステージ10のX軸方向の移動誤差ΔISX、Y軸方向の移動誤差ΔISYを減算(ΔIPX−ΔISX、ΔIPY−ΔISY)すればよい。
【0105】
このようにして、基板W上の下層パターンの位置ずれ量としてY軸位置ずれ量ΔPYとX軸位置ずれ量ΔPXを算出することができる。そして、ずれ量算出部94で算出された基板W上の下層パターンのX軸位置ずれ量ΔPXとY軸位置ずれ量ΔPYは形成位置算出部95に送られる。なお、基板W上の下層パターンのX軸位置ずれ量ΔPXとY軸位置ずれ量ΔPYは、基板Wの変形にのみ起因する位置ずれであるため少なくとも描画処理中において、基板W上の描画予定領域の下層パターンのX軸位置ずれ量ΔPXとY軸位置ずれ量ΔPYは変化しない。
【0106】
形成位置算出部95は、ずれ量算出部94で算出された基板W上の下層パターンのX軸位置ずれ量ΔPXおよびY軸位置ずれ量ΔPYと、移動誤差検出部60よってあらかじめ設定されたタイミングで検出されたステージ10の移動誤差とを受け取り、下層パターンに対する上層パターンの形成位置を算出する。
【0107】
ここで、図7(c)を参照しつつ下層パターンに対する上層パターンの形成位置の算出について説明する。図7(c)は、撮像部50によって基板W上の描画予定領域が撮像されてから描画予定領域に光ビームが照射されるまでの間で、あらかじめ設定されたタイミングで移動誤差検出部60がステージ10の移動誤差を検出した検出時の、ステージ10の理想位置と基板W上の下層パターンの設計位置を破線で表し、検出時のステージ10の実際位置と基板W上の下層パターンの形成位置を実線で表している。
【0108】
下層パターンに対する上層パターンの形成位置は、基板W上の下層パターンのX軸位置ずれ量PXおよびY軸位置ずれ量PYと、ステージ10の移動誤差とが重畳された情報と言える。したがって、ずれ量算出部94で算出された基板W上の下層パターンのX軸位置ずれ量PXおよびY軸位置ずれ量PYと、あらかじめ設定されたタイミングで移動誤差検出部60によって検出されたステージ10のX軸方向の移動誤差ΔDSXと、Y軸方向の移動誤差ΔDSYとを合算(ΔPX+ΔDSX、ΔPY+ΔDSY)する。
【0109】
合算することで算出された下層パターンに対する上層パターンのX軸方向の位置ずれ量ΔPX+ΔDSX、Y軸方向の位置ずれ量ΔPY+ΔDSYだけ、本来の上層パターンの形成位置からずらせることで、ステージ10の移動誤差および基板W上での下層パターンの設計位置からの位置ずれを補正するための下層パターンに対する上層パターンの形成位置を算出することができる。なお、下層パターンに対する上層パターンの形成位置はX軸およびY軸からなるXY平面内の位置として算出される。そして、上層パターンの形成位置を露光制御部900に送信する。
【0110】
また、形成位置算出部95は下層パターンのX軸位置ずれ量ΔPXおよびY軸位置ずれ量ΔPYと、ステージ10のX軸方向の移動誤差ΔDSXおよびY軸方向の移動誤差ΔDSYとを合算するため四則演算処理を行う。そのため、前述したずれ量算出部94での処理に比べて演算処理の時間を短くすることができる。
【0111】
露光制御部900は、形成位置算出部95から送られてきた下層パターンに対する上層パターンの形成位置とラスターデータ912とを受け取る。そして、描画前に撮像された描画予定領域が光学ヘッド401の下方を通過するとき、ラスターデータ912に基づき空間光変調素子45を制御するとともに、下層パターンに対する上層パターンの形成位置のX位置に基づき照射位置シフト機構47を制御する。
【0112】
具体的には、照射位置シフト機構47を構成する2つのウェッジプリズム471の相対的な離間距離をX位置に応じて変化させる。すると、光ビームの光路がX軸方向にシフトする。すなわち、基板W上での描画位置を副走査方向に相対的にシフトさせることができる。このようにして、X軸方向について下層パターンに位置合わせを行いながら上層パターンを描画することができる。
【0113】
また、ラスターデータ912に応じて空間光変調素子45の入射光を空間変調するタイミングを、下層パターンに対する上層パターンの形成位置のY位置に基づき制御することで、主走査方向に相対的に描画位置をシフトさせることができる。このようにして、Y軸方向についても下層パターンに位置合わせを行いながら上層パターンを描画することができる。
【0114】
続いて、上述した露光装置100の動作の一例について図9、図10を用いて説明を行う。図9は露光処理に係る全体の処理の流れについて説明するためのフローチャートである。また、図10は、描画処理の流れを詳細に説明するためのフローチャートである。
【0115】
露光装置100は、制御部90から搬送装置80に動作指令を行い、基板Wを収納した基板収納カセット103から基板Wを取り出し露光装置100に搬入する。そして、露光装置100の内部に搬入された基板Wをステージ10の上面に載置する(ステップS11)。すると、真空ポンプが作動し基板Wが載置されたステージ10は吸引圧によりステージ10の上面に基板Wを水平に吸着固定する。基板収納カセット103から搬出された基板Wをステージ10に載置する前にプリアラメント処理を行ってもよい。
【0116】
また、基板収納カセット103から搬出される基板Wは、他の処理工程において別の露光装置等により基板Wの表面に下層パターンがあらかじめ形成されている。そして、基板Wの四隅には基板Wの姿勢を位置合わせするためのアライメントマークが形成されている。なお、アライメントマークは基板Wの四隅に限られず複数形成されていてもよい。
【0117】
基板Wをその上面に保持したステージ10は、制御部90からの動作指令に基づきステージ移動機構20が動作することでアライメント領域に移動する。そして、露光装置100はステージ10上に載置された基板Wと光学ヘッド401との相対位置を調整するアライメント処理(位置合わせ処理)を行う(ステップS12)。
【0118】
基板Wがステージ10上に載置される際、ほぼ所定の位置に載置されることになるが、微細なパターンを描画するにあたり位置精度として十分でない場合が多い。このため、アライメント処理を行い基板Wの位置や傾きを微調整して、以降の描画処理の精度を向上させる。
【0119】
アライメント処理では、基板Wの上面の四隅に形成されたアライメントマークをアライメントカメラ70によりそれぞれ撮像する。制御部90は、アライメントカメラ70により取得された画像中の各アライメントマークを抽出する。そして、各アライメントマークの位置に基づいて、基板Wの理想位置からのずれ量として、X軸方向のずれ量、Y軸方向のずれ量およびZ軸周りのθ方向のずれ量を算出する。そして、算出されたずれ量を低減させるように、制御部90は、回転機構11、副走査機構13、主走査機構15を駆動させ基板Wの位置を補正する。
【0120】
続いて、露光装置100は、アライメント処理が行なわれた基板Wに対して描画処理を行う(ステップS13)。描画処理の詳細については後述するが、ここでは、本実施例における描画処理の流れを簡単に説明する。
【0121】
露光装置100は、ステージ10を主走査方向および副走査方向に移動させつつ、光学ヘッド401から基板Wの上面に向けて光ビームを照射することにより、基板Wの上面に上層パターンを描画する。
【0122】
具体的には、制御部90からの指示に応じて、主走査機構15を動作させることでステージ10を主走査方向に沿って移動させる。これにより、基板Wを光学ヘッド401に対して主走査方向に沿って相対的に移動させることができる。基板Wの1ストライプ分の描画予定領域が光学ヘッド401の下方を通過すると、基板Wの表面に1ストライプ分の描画が行なわれることになる。
【0123】
1ストライプ分の描画が終了すると、制御部90は主走査機構15を動作させ、ステージ10を主走査方向に沿って基板Wを当該ストライプの描画を開始した元の位置に移動させる。さらに、制御部90は、副走査機構13を動作させることでステージ10を副走査方向に沿って、1ストライプの幅に相当する距離だけ移動させる。副走査方向への移動が終了すると、再び主走査方向にステージ10が走査されつつ描画が行なわれる。
【0124】
そして、先に描画された1ストライプ分の描画領域の隣に、さらに1ストライプ分の領域の描画が行なわれることになる。このように主走査方向の移動と副走査方向の移動が繰り返して行なわれることによって、基板Wの表面の全域に上層パターンが描画されることになる。
【0125】
基板Wの全域への描画処理が完了すると、制御部90はステージ移動機構20を動作させ描画処理済み基板Wを載置するステージ10を搬出位置に移動させる。そして、真空ポンプの動作が停止し、ステージ10上での吸着保持が解除される。制御部90の動作指令に応じて搬送装置80がステージ10の上面から描画処理済みの基板Wを露光装置100から搬出し、基板収納カセット103に搬入する(ステップS14)。
【0126】
次に描画処理(ステップS13)について詳細に説明する。図10は描画処理の流れを詳細に説明するための図である。
【0127】
制御部90からの動作指令に応じてステージ移動機構20が動作し、ステージ10が描画開始位置へと移動する(ステップS101)。描画開始位置は、ステージ10に載置された基板Wの書き出し位置に基づき決められており、制御部90が内部に記憶している。
【0128】
次に、制御部90のラスタライズ部93から露光制御部900に1ストライプ分のラスターデータ912が送られる。露光制御部900は1ストライプ分のラスターデータ912を受け取ったことを確認すると、主走査機構15を動作させステージ10の主走査方向の移動を開始する(ステップS102)。この時、光学ヘッド401から基板Wに向けて光ビームが照射される間は、ステージ10は一定速度で主走査方向に移動するように制御される。なお、ステージ10の移動速度は基板W上に塗布されたレジストの感光特性および光学ヘッド401から照射される光ビームの光量に基づき決められている。
【0129】
また、制御部90はステージ位置計測部30に対しても動作指令を行う。ステージ位置計測部30は、主走査方向に移動するステージ10に向けて連続的にレーザ光を照射し、その反射光と出射光との干渉からステージ10の主走査方向の位置を連続的に検出し制御部90に送信する。したがって、制御部90は、描画処理中においてステージ10の主走査方向の位置を常に把握することができる。
【0130】
ステージ10の主走査方向に沿う走査が開始されると、制御部90は撮像部50に対して動作指令を出す。撮像部50は動作指令に応じて主走査方向に移動するステージ10に保持された基板W上の描画予定領域を撮像し、描画予定領域に形成された下層パターンの撮像データを取得する(ステップS103)。ただし、撮像部50は主走査の方向について、光学ヘッド401から定められた距離だけ上流側に配置されている。したがって、撮像部50においては、光学ヘッド401に対して当該距離だけステージ10が移動し、描画を行う予定の基板W上の描画予定領域を光学ヘッド401によって描画される前に撮像した撮像データが取得されることになる。
【0131】
ここで、本実施形態においては、撮像部50は1次元イメージセンサを採用しているため1次元で撮像された撮像データは制御部90に順次送信される。そして、制御部90が1次元の撮像データを合成し2次元画像を生成する。本実施例では、生成された2次元画像の重心位置を含む1次元の撮像データが取得された時刻を撮像時とおいている。
【0132】
これと並行して、制御部90は移動誤差検出部60に対して動作指令を出しエンコーダヘッド62を動作させる。エンコーダヘッド62は、ステージ10上に形成されたスケールパターン61に向かって光を照射し、光の回折と干渉を利用してステージ10の移動誤差を連続的に検出することができる。そして、撮像部50による撮像時に合わせたタイミング(第1検出タイミング)で検出されるステージ10の移動誤差を第1移動誤差として検出する(ステップS104)。より正確には、連続的に検出されたステージ10の移動誤差を一時的に記憶しておき、撮像時に合わせたタイミングで記憶されたステージ10の移動誤差を第1移動誤差として取得する。
【0133】
このとき、エンコーダヘッド62によって検出されるステージ10の移動誤差は、エンコーダヘッド62の下方におけるステージ10の移動誤差を検出することとなる。しかしながら、ステージ10の移動誤差は、ステージ10全体に対して一様に発生しているものである。そのため、エンコーダヘッド62の下方で検出したステージ10の移動誤差であっても、ステージ10全体に対して生じている移動誤差として扱うことができる。すなわち、エンコーダヘッド62の下方で検出したステージ10の移動誤差は、同時刻の撮像部50または光学ヘッド401の下方におけるステージ10の移動誤差と等価であると言える。そして、移動誤差検出部60は、エンコーダヘッド62が検出したステージ10の移動誤差を制御部90に送信する。
【0134】
制御部90の露光に関係する機能部であるずれ量算出部94は、撮像部50から送れてくる撮像データを2次元画像として生成するとともに、移動誤差検出部60から送られてくる第1移動誤差を取得する。ずれ量算出部94は撮像部50から送られてくる1次元の撮像データから生成した2次元画像を用いて2次元画像内における下層パターンの位置ずれ量を算出する。
【0135】
このとき、2次元画像内における下層パターンの設計位置と、実際に基板Wに形成されている下層パターンの形成位置との差分が下層パターンの位置ずれ量として算出される。当該位置ずれ量は、図7(b)でも示した通りX軸方向の位置ずれ量ΔIPXおよびY軸方向の位置ずれ量ΔIPYで構成される。
【0136】
そして、ステップS104で取得されたステージ10の第1移動誤差を用いて、2次元画像内における下層パターンの位置ずれ量から第1移動誤差を減算することで、基板W上の下層パターンの位置ずれ量を算出する(ステップS105)。基板W上の下層パターンの位置ずれ量は、X軸方向の位置ずれ量としてX軸位置ずれ量PX、Y軸方向の位置ずれ量としてY軸位置ずれ量PYとして算出される。
【0137】
ステップS103およびステップS104での処理が行なわれた後も、一定の速度でステージ10は光学ヘッド401に向かって移動する。そして、撮像部50による撮像後から光学ヘッド401によって光ビームが照射されるまでの間にあらかじめ設定されたタイミング(第2検出タイミング)でエンコーダヘッド62によって検出されるステージ10の移動誤差を第2移動誤差として検出する(ステップS106)。
【0138】
ここで、ステージ10の第2移動誤差の検出について説明する。第2移動誤差を検出する第2検出タイミングは、後述する上層パターンの形成位置の算出に要する時間および算出された上層パターンの形成位置に基づき照射位置シフト機構47を制御し光ビームを基板Wへ照射するのに要する時間に基づいて決められる。すなわち、上層パターンの形成位置算出時間と、該形成位置に基づき光ビームの光路をシフトさせるのに要する時間とを合わせた時間だけ、光ビームが照射されるより前に第2移動誤差が検出されるように第2検出タイミングを設定しておく。
【0139】
このように、第2検出タイミングを設定することで光学ヘッド401によって光ビームが照射される照射位置に最も近づいた近接位置でのステージ10の移動誤差を検出することができる。移動誤差検出部60は、エンコーダヘッド62によって検出された第2移動誤差を制御部90へ送信する。
【0140】
形成位置算出部95は、ずれ量算出部94から送られてくる基板W上の下層パターンの位置ずれ量であるX軸位置ずれ量PXとY軸位置ずれ量PY、移動誤差検出部60から送られてくる第2検出タイミングで検出された第2移動誤差とを受け取る。形成位置算出部95は基板W上の下層パターンのX軸位置ずれ量PXおよびY軸位置ずれ量PYと、第2検出タイミングで検出された第2移動誤差のX軸方向の移動誤差ΔDSXおよびY軸方向の移動誤差ΔDSYとを加算することで、下層パターンに対する上層パターンのX軸方向の位置ずれ量ΔPX+ΔDSX、Y軸方向の位置ずれ量ΔPY+ΔDSYを算出する。
【0141】
そして、本来の上層パターンの形成位置をΔPX+ΔDSX、ΔPY+ΔDSYだけずらせた位置が下層パターンに対する上層パターンの形成位置として算出される(ステップS107)。
【0142】
形成位置算出部95で算出された下層パターンに対する上層パターンの形成位置を露光制御部900に送信する。露光制御部900は、上層パターンの形成位置に基づき照射位置シフト機構47を制御し光学ヘッド401から照射される光ビームの光路を必要に応じて副走査方向にシフトさせる。また、主走査方向については光学ヘッド401から光が照射されるタイミングを制御し補正する(ステップS108)。
【0143】
具体的には、形成位置算出部95から送られてくる下層パターンに対する上層パターンの形成位置はX軸方向の形成位置とY軸方向の形成位置からなる。露光制御部900は、X軸方向の形成位置に基づき照射位置シフト機構47を動作させる。すなわち、形成位置算出部95から送られてきた上層パターンのX軸方向の形成位置に光ビームを照射することができるように、照射位置シフト機構47内の2つのウェッジプリズム471の相対的な離間距離を変化させる。すると、光ビームの光路がX軸方向にシフトし、副走査方向に対して下層パターンに精度よく位置合わせを行いつつ上層パターンを描画することができる。
【0144】
また、主走査方向については成位置算出部95から送られてきた上層パターンのY軸方向の形成位置に光ビームが照射されるように、空間光変調素子45のオンとオフのタイミングを制御する。例えば、ステージ10の移動誤差等により本来の上層パターンの形成位置よりも主走査方向に描画が遅れる方向に1画素ずれていた場合は、空間光変調素子45のオンにするタイミングを1画素分遅らすことで、主走査方向に対して下層パターンに精度良く位置合わせを行いつつ上層パターンを描画することができる。
【0145】
以上の動作を1ストライプ分の描画が終わるまで行う。1ストライプ分の描画が完了すると、描画すべき次のストライプがあるか否かを判定し(ステップS109)、次のストライプがある場合は、制御部90による動作信号に応じてステージ移動機構20が動作し、ステージ10を開始位置に戻すとともに、ステージ10を1ストライプ分だけ副走査方向に相対移動させる(ステップS110)。
【0146】
また、同時にエンコーダ移動機構63にも制御部90から動作指令が送られ、エンコーダヘッド62も副走査方向に相対移動する(ステップS111)。つまり、エンコーダヘッド62はステージ10上に形成されたスケールパターン61を追従するように副走査方向に移動することができるため、描画処理時において継続してステージ10の移動誤差を検出することができる。
【0147】
そして、隣のストライプに対して、ステップS102からステップS109を繰り返し、基板Wの表面の全域に上層パターンが描画されたら描画処理を完了し搬送装置80によりステージ10から処理済みの基板Wが搬出される。
【0148】
以上説明したとおり、本発明の露光装置100のように撮像部50と移動誤差検出部60とを備えることで、まず基板の変形に起因する基板W上における下層パターンの位置ずれ量を算出することができる。そして、撮像部50とは別に移動誤差検出部60はステージ10の移動に起因するステージ10の移動誤差を検出することができる。すなわち、撮像部50と移動誤差検出部60と光学ヘッド401とをそれぞれ独立して設けることで、各構成の光学系の設計を簡素化することができる。
【0149】
また、ステージ10の移動誤差を検出するタイミングを自由に設定できるため、各処理に要する最低限の時間だけ確保すれば、ステージ10の移動誤差が検出される位置を、光学ヘッド401による照射位置に極限まで実質的に近づけることができる。
【0150】
次に、露光位置の手前側におけるステージ10の移動誤差を検証する。図11は、本シミュレーションの条件を示した模式図である。
【0151】
図11は、撮像部50によって描画予定領域の下層パターンが撮像された撮像時のステージ10の位置と、エンコーダヘッド62によって第2移動誤差が検出された検出時のステージ10の位置と、光学ヘッド401によって描画予定領域に光ビームが照射された照射時のステージ10の位置との位置関係を示している。なお、撮像部50による撮像時、およびエンコーダヘッド62による検出時にステージ10が位置する状態を破線で表し、光学ヘッド401による照射時のステージ10の位置を実線で表している。また、ステージ10上に載置された基板Wは図示を省略している。
【0152】
次に、ステージ10の主走査方向への移動速度を100[mm/秒]とする。また、描画予定領域が撮像部50によって撮像されてから、光学ヘッド401によって光ビームが照射される照射時までのステージ10の移動する距離を100[mm]とする。これは、光学ヘッド401と撮像部50との間の距離を意味し、光学ヘッド401と撮像部50を別体として設ける場合は、光学ヘッド401の筐体の大きさに依存する。そのため、これらの間の距離を近づけるには限界がある。本シミュレーションでは、この距離を前述したように100[mm]としている。
【0153】
移動誤差検出部60による第2移動誤差の検出時から、光学ヘッド401による照射時までのステージ10の移動する距離Dを10、20、30、50、70、100[mm]としてシミュレーションを行う。この距離Dは、光学ヘッド401によって光ビームが照射される位置にどれだけ近い位置でステージ10の移動誤差を検出できるかを意味している。
【0154】
エンコーダヘッド62はその下方をステージ10が通過するときのステージ10の移動誤差を検出する。しかし、撮像部50とは異なり光学ヘッド401との間の距離を考える必要はない。なぜなら、エンコーダヘッド62はステージ10の移動誤差を検出するタイミングを調整することで、任意の位置でのステージ10の移動誤差を検出することができるからである。
【0155】
また、本シミュレーションではステージ10に生じる移動誤差は正弦波としている。ステージ10の移動誤差は不規則に生じるため周期や位相をあらかじめ特定しておくことはできない。しかし、すべての信号は各周波数の正弦波に分けることができる。これはフーリエの定理により公知であり説明は省略する。そのため、本シミュレーションにおいては、ステージ10が移動することによって生じる水平方向の移動誤差の1つが振動数5.0[Hz]、振幅1.0[mm]ので発生している場合についてシミュレーションを行う。
【0156】
上述した条件で、下層パターンを撮像する撮像部50のみを用いて撮像時のタイミングでステージ10の移動誤差を検出した場合と、本発明のように移動誤差検出部60を用いて上述した第2検出タイミングでステージ10の移動誤差を検出した場合との、ステージ10の検出時の移動誤差と光ビームが照射される照射時の実際のステージ10の移動誤差との相対誤差の変動幅についてシミュレーションを行なった結果を図12と表1に示す。なお、相対誤差とは、検出されたステージ10の移動誤差を用いて、上層パターンの形成位置を補正した場合の下層パターンの位置に対する上層パターンの位置ずれ量を表すものである。
【0157】
したがって、検出時のステージ10の移動誤差と、光学ヘッド401によって光ビームが照射される照射時の移動誤差が完全に一致すれば相対誤差はゼロとなり、下層パターンに対する上層パターンの位置ずれが発生しない。これに対し、検出時のステージ10の移動誤差と、照射時の実際の移動誤差が正反対の値であった場合、下層パターンに対する上層パターンの補正を逆方向に行うことになる。したがって、相対誤差が大きくなればなるほど、下層パターンに対する上層パターンの位置ずれが大きくなり重ね合わせの描画精度が低下する。
【0158】
図12は、上述した条件でステージ10の移動誤差を検出した際、当該移動誤差が0度から360度の間で位相がずれた場合の相対誤差を表している。
【0159】
撮像部50によって撮像される位置(D=100mm)で検出されたステージ10の移動誤差と、光学ヘッド401による照射時のステージ10の移動誤差との相対誤差を見ると、位相が0度の時は相対誤差が最小で0mmとなり、位相が90度の時に相対誤差が最大で2.0mmとなっている。相対誤差がゼロになるのは、撮像時に検出された移動誤差と照射時に検出された移動誤差が同じであることをあらわしている。また、相対誤差が最大になるのは、撮像時に検出された移動誤差と照射時に検出された移動誤差との差が最大になっていることをあらわしている。
【0160】
位相が0度となるような場合であれば撮像時に検出されたステージ10の移動誤差を用いて、上層パターンの形成位置を算出し当該位置に基づいて描画を行うことで、下層パターンに対する上層パターンの位置ずれを補正し重ね合わせ描画を良好に行うことができる。言い換えると、撮像部50で撮像された撮像データのみを用いて上層パターンの形成位置を算出して補正することで重ね合わせ描画を良好に行うことができる。
【0161】
しかし、位相が90度となるような場合、撮像時に検出されたステージ10の移動誤差を用いて、上層パターンの形成位置を算出し当該位置に基づいて描画を行うと、本来補正すべき方向とは逆方向に補正することになる。これはステージ10の移動誤差を考慮せずに描画する場合に比べて、重ね合わせ描画の精度が2倍悪化することになる。
【0162】
すなわち、位相が一致する場合には描画精度は向上するが、逆に大きくずれた場合には描画精度は悪化するため安定した重ね合わせ描画を行うことができない。
【0163】
これに対し、エンコーダヘッド62によって第2移動誤差が検出される時のステージ10の位置と、光学ヘッド401によって光ビームが照射される位置との距離Dが、D=10mmの場合、位相が99度の時は相対誤差が最小で0となり、位相が10度の時に相対誤差が最大で0.31mmとなっている。
【0164】
すなわち、相対誤差が最大となるようなステージ10の移動誤差が生じている場合でも、本来のステージ10の振幅である1.0mmよりも確実に移動誤差の影響を低減することができる。そのため、ステージ10に生じる移動誤差の位相に関係なく下層パターンに対する上層パターンの重ね合わせ描画を安定した精度で行うことができる。
【0165】
表1は上述した条件でシミュレーションを行なった結果をまとめたものである。各距離Dにおける相対誤差の最大値、最小値、およびこれらの差分である相対誤差の範囲を示している。
【表1】
【0166】
距離Dを10mmから100mmに変えた場合を見ると、距離Dが小さくなればなるほど相対誤差の最小値(MIN)と最大値(MAX)との差である変動幅(RANGE)が小さくなっている。このことから、ステージ10の移動誤差が検出されてから、光学ヘッド401によって光ビームが照射されるまでの間のステージ10の移動する距離が短い方が重ねあわせ描画の精度を安定させることができる。
【0167】
以上のように、露光装置100が撮像部50と移動誤差検出部60とをそれぞれ備えることで、基板Wの変形に起因する基板W上における下層パターンの位置ずれと、ステージ10の移動に起因するステージ10の移動誤差による位置ずれとをそれぞれ取得することができる。その際、移動誤差検出部60では、第2移動誤差を検出するタイミングを撮像部50による撮像後から光学ヘッド401による光ビームの照射時までの間に設定することができ、第2移動誤差の検出時から光ビームの照射時までにステージ10が移動する距離を短くすることができる。
【0168】
これにより、ステージ10が移動することで生じる移動誤差の相対誤差の取りうる範囲である変動幅を小さくすることができるため、下層パターンに対する上層パターンの重ね合わせ描画を安定した精度で行うことができる。
【0169】
また、光学ヘッド401と移動誤差検出部60であるエンコーダヘッド62とを独立して設けているため、それぞれ独立した設計で実装することができ光学系の設計が複雑になることを防ぐことができる。
<変形例>
【0170】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく様々な変形が可能である。
【0171】
上記実施形態では、ステージ10の移動誤差を検出するためエンコーダヘッド62を用いたがこれに限られるものではない。例えば、エンコーダヘッド62に相当する構成として、顕微鏡および顕微鏡を介して基板表面に形成されたスケールパターン61を撮像するためのCCDイメージセンサを用いることができる。そして、撮像されたスケールパターン61の画像に基づき、パターンマッチング等の画像処理を行い、スケールパターン61の格子位置からステージ10の移動誤差を算出するように構成してもよい。
【0172】
また、上記実施形態では、エンコーダヘッド62はステージ10の副走査方向(X軸方向)の移動に同期して、エンコーダヘッド62も副走査方向に移動する構成となっているが、本発明の効果を得る上でこの構成に限られるものではない。例えば、ステージ10の副走査方向のステージサイズを大きくし、スケールパターン61の該方向の幅を長くする(例えば、基板Wの直径と同じ長さにする)ことで、エンコーダヘッド62を固定配置するように構成することも可能である。
【0173】
また、上記実施形態では、下層パターンに対する上層パターンの形成位置に基づき光ビームの照射位置を補正するため、照射位置シフト機構47を用いた光ビームの光路の補正を行っているが、この構成に限られるものではない。例えば、算出された上層パターンの形成位置に基づいてステージ10を補正する方向に移動させることで、光学ヘッド401に対して相対的に光ビームの照射位置をシフトすることができる。
【0174】
また、光学ヘッド401に送信する描画データ自身を算出された上層パターンの形成位置に基づき修正することでも同様の効果を得ることができる。
【0175】
また、上記実施形態では、半導体基板に対する描画装置および方法について説明したが、描画対象物はこれに限られない。例えば、プリント配線基板、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板やフォトマスク等の重ね合わせ描画を行う際に本発明が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0176】
2 コンピュータ
10 ステージ
20 ステージ移動機構
30 ステージ位置計測部
40 光照射部
47 照射位置シフト機構
50 撮像部
60 移動誤差検出部
90 制御部
94 ずれ量算出部
95 形成位置算出部
100 露光装置
W 基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下層パターンがあらかじめ形成された基板を水平に保持するとともに、前記基板を保持して移動可能なステージと、
前記ステージに保持された前記基板の描画予定領域に対して上層パターンの描画データに応じて光ビームを照射する光照射部と、
前記光照射部に向かって相対移動する前記ステージに保持された基板の描画予定領域に
前記光ビームが照射される前に前記描画予定領域に形成された前記下層パターンを撮像する撮像部と、
前記光照射部に向かって相対移動する前記ステージの位置を、前記撮像部による撮像時に合わせて第1移動誤差として検出し、前記撮像部による撮像後から前記光照射部によって光ビームが照射されるまでの間に前記ステージの位置を第2移動誤差として検出する移動誤差検出部と、
前記上層パターンの描画データに応じて前記光照射部による描画を制御する制御部と、を具備し、
前記制御部は、
前記撮像部が取得した画像に含まれる下層パターンに基づき、前記画像内における下層パターンの位置ずれ量を取得し、前記画像内の下層パターンの位置ずれ量から前記第1移動誤差を除くことで前記基板上における下層パターンのずれである下層パターンの位置ずれ量を算出し、
前記基板上における前記下層パターンの位置ずれ量に前記第2移動誤差を加えることで、前記第2移動誤差の検出時における前記下層パターンに対する前記上層パターンの形成位置を算出し、
前記上層パターンの形成位置に基づいて前記光照射部による描画を制御することを特徴とする描画装置。
【請求項2】
前記移動誤差検出部は、前記制御部が前記上層パターンの形成位置を算出するのに要する時間と、前記上層パターンの形成位置に基づき前記光照射部による描画を制御するのに要する時間とを合わせた時間に応じて、前記光照射部によって光ビームが照射されるより前に第2移動誤差を検出することを特徴とする請求項1に記載の描画装置。
【請求項3】
前記光照射部は、前記光ビームの光路を前記ステージが進む方向と直交する方向に相対的にシフトさせる照射位置シフト機構を有し、
前記制御部は、前記照射位置シフト機構を制御し、前記上層パターンの形成位置に基づき前記光ビームの光路をシフトさせることで、前記上層パターンの描画を制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の描画装置。
【請求項4】
前記下層パターンの設計データをあらかじめ記憶しておく記憶部をさらに有し、
前記制御部は、前記撮像部が取得した撮像画像に含まれる下層パターンと、前記設計データから生成した画像とを用いた画像処理により、前記ステージに保持された前記基板の前記下層パターンの位置を算出することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の描画装置。
【請求項5】
前記制御部における前記画像処理はパターンマッチング処理であることを特徴とする請求項4に記載の描画装置。
【請求項6】
下層パターンがあらかじめ形成された基板をステージ上に水平に保持するとともに、前記基板を保持して移動する移動工程と、
前記ステージに保持された前記基板の描画予定領域に対して上層パターンの描画データに応じて光ビームを照射する光照射工程と、
前記ステージに保持された前記基板の描画予定領域に形成されている下層パターンを、前記光照射工程で前記ステージに保持された基板の描画予定領域に光ビームが照射される前に撮像部によって撮像する撮像工程と、
前記基板を保持して移動する前記ステージの位置を、前記撮像工程での撮像時に合わせて第1移動誤差として検出し、前記撮像工程による撮像後から前記光照射工程で光ビームが照射されるまでの間に前記ステージの位置を第2移動誤差として検出する移動誤差検出工程と、
前記上層パターンの描画データに基づき前記光照射工程での描画を制御する制御工程と、を有し、
前記制御工程は、
前記撮像工程で取得された撮像画像に含まれる下層パターンに基づき、前記撮像画像内における下層パターンの位置ずれ量を取得し、前記撮像画像内における下層パターンの位置ずれ量から前記第1移動誤差を除くことで前記基板上における下層パターンのずれである下層パターンの位置ずれ量を算出し、
前記基板上における前記下層パターンの位置ずれ量に前記第2移動誤差を加えることで、前記第2移動誤差の検出時における前記下層パターンに対する前記上層パターンの形成位置を算出し、
前記上層パターンの形成位置に基づき前記光照射工程での描画を制御することを特徴とする描画方法。
【請求項7】
前記移動誤差検出工程は、前記制御工程で前記上層パターンの形成位置を算出するのに要する時間と、前記上層パターンの形成位置に基づき前記光照射工程で描画を制御するのに要する時間とを合わせた時間に応じて、前記光照射工程で光ビームが照射されるより前に第2移動誤差を検出することを特徴とする請求項6に記載の描画方法。
【請求項8】
前記光照射工程は、前記光ビームの光路を前記ステージが進む方向と直交する方向に相対的にシフトさせる照射位置シフト工程を有し、
前記制御工程は、前記照射位置シフト工程において、前記上層パターンの形成位置に基づき前記光ビームの光路をシフトさせることで、前記上層パターンの描画を制御することを特徴とする請求項6または請求項7のいずれかに記載の描画方法。
【請求項9】
前記制御工程は、前記撮像工程で取得した撮像画像に含まれる下層パターンと、前記下層パターンの設計データから生成した画像とを用いた画像処理により、前記ステージに保持された前記基板の前記下層パターンの位置を算出することを特徴とする請求項6ないし請求8のいずれか一項に記載の描画方法。
【請求項10】
前記制御工程における前記画像処理はパターンマッチング処理であることを特徴とする請求項9に記載の描画方法。
【請求項1】
下層パターンがあらかじめ形成された基板を水平に保持するとともに、前記基板を保持して移動可能なステージと、
前記ステージに保持された前記基板の描画予定領域に対して上層パターンの描画データに応じて光ビームを照射する光照射部と、
前記光照射部に向かって相対移動する前記ステージに保持された基板の描画予定領域に
前記光ビームが照射される前に前記描画予定領域に形成された前記下層パターンを撮像する撮像部と、
前記光照射部に向かって相対移動する前記ステージの位置を、前記撮像部による撮像時に合わせて第1移動誤差として検出し、前記撮像部による撮像後から前記光照射部によって光ビームが照射されるまでの間に前記ステージの位置を第2移動誤差として検出する移動誤差検出部と、
前記上層パターンの描画データに応じて前記光照射部による描画を制御する制御部と、を具備し、
前記制御部は、
前記撮像部が取得した画像に含まれる下層パターンに基づき、前記画像内における下層パターンの位置ずれ量を取得し、前記画像内の下層パターンの位置ずれ量から前記第1移動誤差を除くことで前記基板上における下層パターンのずれである下層パターンの位置ずれ量を算出し、
前記基板上における前記下層パターンの位置ずれ量に前記第2移動誤差を加えることで、前記第2移動誤差の検出時における前記下層パターンに対する前記上層パターンの形成位置を算出し、
前記上層パターンの形成位置に基づいて前記光照射部による描画を制御することを特徴とする描画装置。
【請求項2】
前記移動誤差検出部は、前記制御部が前記上層パターンの形成位置を算出するのに要する時間と、前記上層パターンの形成位置に基づき前記光照射部による描画を制御するのに要する時間とを合わせた時間に応じて、前記光照射部によって光ビームが照射されるより前に第2移動誤差を検出することを特徴とする請求項1に記載の描画装置。
【請求項3】
前記光照射部は、前記光ビームの光路を前記ステージが進む方向と直交する方向に相対的にシフトさせる照射位置シフト機構を有し、
前記制御部は、前記照射位置シフト機構を制御し、前記上層パターンの形成位置に基づき前記光ビームの光路をシフトさせることで、前記上層パターンの描画を制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の描画装置。
【請求項4】
前記下層パターンの設計データをあらかじめ記憶しておく記憶部をさらに有し、
前記制御部は、前記撮像部が取得した撮像画像に含まれる下層パターンと、前記設計データから生成した画像とを用いた画像処理により、前記ステージに保持された前記基板の前記下層パターンの位置を算出することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の描画装置。
【請求項5】
前記制御部における前記画像処理はパターンマッチング処理であることを特徴とする請求項4に記載の描画装置。
【請求項6】
下層パターンがあらかじめ形成された基板をステージ上に水平に保持するとともに、前記基板を保持して移動する移動工程と、
前記ステージに保持された前記基板の描画予定領域に対して上層パターンの描画データに応じて光ビームを照射する光照射工程と、
前記ステージに保持された前記基板の描画予定領域に形成されている下層パターンを、前記光照射工程で前記ステージに保持された基板の描画予定領域に光ビームが照射される前に撮像部によって撮像する撮像工程と、
前記基板を保持して移動する前記ステージの位置を、前記撮像工程での撮像時に合わせて第1移動誤差として検出し、前記撮像工程による撮像後から前記光照射工程で光ビームが照射されるまでの間に前記ステージの位置を第2移動誤差として検出する移動誤差検出工程と、
前記上層パターンの描画データに基づき前記光照射工程での描画を制御する制御工程と、を有し、
前記制御工程は、
前記撮像工程で取得された撮像画像に含まれる下層パターンに基づき、前記撮像画像内における下層パターンの位置ずれ量を取得し、前記撮像画像内における下層パターンの位置ずれ量から前記第1移動誤差を除くことで前記基板上における下層パターンのずれである下層パターンの位置ずれ量を算出し、
前記基板上における前記下層パターンの位置ずれ量に前記第2移動誤差を加えることで、前記第2移動誤差の検出時における前記下層パターンに対する前記上層パターンの形成位置を算出し、
前記上層パターンの形成位置に基づき前記光照射工程での描画を制御することを特徴とする描画方法。
【請求項7】
前記移動誤差検出工程は、前記制御工程で前記上層パターンの形成位置を算出するのに要する時間と、前記上層パターンの形成位置に基づき前記光照射工程で描画を制御するのに要する時間とを合わせた時間に応じて、前記光照射工程で光ビームが照射されるより前に第2移動誤差を検出することを特徴とする請求項6に記載の描画方法。
【請求項8】
前記光照射工程は、前記光ビームの光路を前記ステージが進む方向と直交する方向に相対的にシフトさせる照射位置シフト工程を有し、
前記制御工程は、前記照射位置シフト工程において、前記上層パターンの形成位置に基づき前記光ビームの光路をシフトさせることで、前記上層パターンの描画を制御することを特徴とする請求項6または請求項7のいずれかに記載の描画方法。
【請求項9】
前記制御工程は、前記撮像工程で取得した撮像画像に含まれる下層パターンと、前記下層パターンの設計データから生成した画像とを用いた画像処理により、前記ステージに保持された前記基板の前記下層パターンの位置を算出することを特徴とする請求項6ないし請求8のいずれか一項に記載の描画方法。
【請求項10】
前記制御工程における前記画像処理はパターンマッチング処理であることを特徴とする請求項9に記載の描画方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−198372(P2012−198372A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62251(P2011−62251)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]