説明

揚水装置

【課題】海水又は淡水を水面近傍に効率良く揚水することが可能な揚水装置を提供すること。
【解決手段】海水中又は淡水中に配置され、液体を揚水するための揚水筒2と、揚水筒2内に圧縮気体を供給し、揚水筒2内を気液混合水とするための空気供給管3とを備え、揚水筒2は、揚水筒2内の気液混合水と揚水筒2外の液体との比重差によって、液体又は液体と微小固体物との混合体を吸い込み水面近傍へと排出することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水又は淡水を水面近傍に揚水する揚水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物プランクトンは、太陽光を受けて光合成を行う。したがって、植物プランクトンが水面近傍に多く生息すれば、太陽光を受け易くなり、光合成が活発になり、温暖化防止に寄与することになる。
【0003】
また、魚類は、水中のプランクトンを餌とするため、プランクトンが豊富に生息する水域は、良質な漁場となる。したがって、プランクトンが水面近傍に多く生息する水域は、水面近傍が良質な漁場となるため、漁業の効率化が図られる。
【0004】
特許文献1には、魚の好適な生育環境を実現することを目的とし、海中に設置した海水ポンプによって海水を循環させる海水循環システムが開示されている。
【特許文献1】特開2002−66593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような海水ポンプを用いて海水を揚水する装置では、揚水効率が低い。したがって、プランクトンを効率良く海面付近に導くことができない。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、海水又は淡水を水面近傍に効率良く揚水することが可能な揚水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、海水中又は淡水中に配置され、液体を揚水するための揚水筒と、前記揚水筒内に圧縮気体を供給し、前記揚水筒内を気液混合水とするための空気供給管と、を備え、前記揚水筒は、前記揚水筒内の気液混合水と前記揚水筒外の液体との比重差によって、液体又は液体と微小固体物との混合体を吸い込み水面近傍へと排出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、揚水筒は、揚水筒内の気液混合水と揚水筒外の液体との比重差によって、液体を吸い込み水面近傍へと排出するため、効率良く液体を水面近傍へと揚水することができる。このため、海水中又は淡水中のプランクトンを水面近傍へと導くことができる。これにより、植物プランクトンの光合成が活発になり、温暖化防止に寄与する。また、プランクトンが水面近傍に導かれることによって、水面近傍が良質な漁場となり、漁業の効率化が図られる。さらに、揚水筒は液体と微小固体物との混合体を吸い込み水面近傍へと排出するものであるため、微小固体物を液体と共に効率良く水面近傍へと導くこともできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下では、海水を揚水する揚水装置について説明する。
【0010】
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る揚水装置100について説明する。図1は、揚水装置100を示す模式図である。
【0011】
揚水装置100は、海10の中に直立して配置された揚水筒2と、揚水筒2内に圧縮空気を供給するための空気供給管3とを備える。なお、揚水筒2は、斜めに配置してもよい。
【0012】
揚水筒2は、海水を吸込口2aから吸い込み、吐出口2bから吐出するものであり、海水を汲み上げる機能を有するものである。
【0013】
揚水筒2の吸込口2aは海面11よりも深く配置される。また、吐出口2bは海面11の近傍、例えば、海面11よりも僅かに突出した位置や、海面11よりも僅かに下の海中に配置される。
【0014】
揚水筒2の下部は、図示のようにU字状に形成され、吸込口2aは上方、つまり海面11に向かって開口する。吸込口2aを上向きに形成することによって、吸込口2aが海底近傍に位置する場合でも、海底に沈殿する沈殿物を吸い込むことが防止される。
【0015】
なお、海底近傍に存在する微小固体物を海水と共に汲み上げる場合には、揚水筒2の吸込口2aは下方、つまり海底に向かって開口するようにしてもよい。このように構成すれば、海水と微小固体物との混合体を効率良く海面11近傍へと導くことができる。ここで、微小固体物とは、例えば、海底近傍に存在する金属や鉱物等である。
【0016】
揚水筒2は、直接海底に設置してもよく、また、海面11に浮かべられるフロート等に連結して浮遊支持するようにしてもよい。
【0017】
空気供給管3は、空気圧縮機4からの圧縮空気を揚水筒2内へと供給するためのものであり、揚水筒2の吐出口2bを挿通し、揚水筒2内へと挿入されて配置される。このように、空気供給管3は揚水筒2内に配置される。
【0018】
空気供給管3の下端には、揚水筒2内に開口し揚水筒2内へ圧縮空気を供給する供給口3aが形成される。空気供給管3の長さは、供給口3aが揚水筒2内であれば、どのような長さでもよい。
【0019】
空気圧縮機4は、海面11に浮かべられるフロート等に設置される。また、陸上に設置し、配管を通じて空気供給管3に接続するようにしてもよい。
【0020】
以上のように構成される揚水装置100の動作について説明する。
【0021】
海水で満たされた揚水筒2内へ空気供給管3を通じて圧縮空気を供給すると、揚水筒2内は海水と空気が混合した気液混合水にて満たされた状態となる。
【0022】
揚水筒2内の気液混合水は、比重が揚水筒2外の海水と比較して小さいため、揚水筒2内の気液混合水と揚水筒2外の海水との比重差によって、揚水筒2内には吸込口2aから海水が吸い込まれる。吸い込まれた海水は揚水筒2内を上昇し、吐出口2bから海面11へ排出される。
【0023】
このように、揚水筒2内に圧縮空気を供給することによって、揚水筒2内の気液混合水と揚水筒2外の海水との比重差によって、海水は、揚水筒2によって汲み上げられ海面11へと排出される。
【0024】
したがって、揚水筒2の吸込口2aを海中におけるプランクトンが多く生息する領域に配置すれば、プランクトンを海面11近傍へと導くことができる。
【0025】
なお、揚水装置100の揚程は、揚水筒2内の気液混合水の比重、及び空気供給管3の供給口3aの海面11からの高さによって変更可能であり、その場の状況に応じて適宜変更される。揚水筒2内の気液混合水の比重は、空気供給管3を通じて供給される空気流量によって調整される。
【0026】
以上の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0027】
揚水筒2は、揚水筒2内の気液混合水と揚水筒2外の海水との比重差によって、海水を吸い込み海面11近傍へと排出するため、効率良く海水を海面11近傍へと揚水することができる。このため、海水中のプランクトンを海面11近傍へと効率良く導くことができる。
【0028】
これにより、海面11近傍に植物プランクトンが多く生息することになるため、植物プランクトンは太陽光を受け易くなり、光合成が活発になる。植物プランクトンの光合成が活発になれば、大気中の二酸化炭素が植物プランクトンによって多く吸収されるため、温暖化防止に寄与することになる。
【0029】
また、海面11近傍にプランクトンが多く生息することによって、プランクトンを餌とする魚類が海面11に近い位置に群れをつくるようになる。これにより、海面11近傍は良質な漁場となり、漁業の効率化が図られる。
【0030】
また、揚水装置100を用いれば、海洋深層水を容易に汲み上げることも可能となる。
【0031】
また、空気供給管3を通じて海水中に空気を送り込むことによって、海水中の酸素濃度を上昇させることができるため、水質を浄化させることも可能となる。
【0032】
さらに、海底近傍に金属や鉱物等の微小固体物が存在する場合には、その微小固体物を海水と共に効率良く海面11近傍へと導くことができる。これにより、海底近傍に存在する有用な固体物を効率良く回収することが可能となる。
【0033】
次に、図2〜図4を参照して、以上で説明した実施の形態の他の形態について説明する。図2〜図4は、本発明の他の実施の形態に係る揚水装置を示す模式図である。なお、以下に説明する他の形態において、上述した揚水装置100と同様の構成には同一の符号を付し説明を省略する。
【0034】
図2に示す揚水装置200は、空気供給管3が複数(3A〜3C)設けられる。空気供給管3を複数設けることによって、圧縮空気の供給量を増加させることができるため、より効率良く海水を汲み上げることができる。複数の空気供給管3における供給口3aの海面11からの高さは、同一の高さ及び異なる高さのどちらでもよいが、異なる高さに設けた場合には、圧縮空気は揚水筒2内で間隔を隔てて供給されることになるため、供給口3aからの圧縮空気の噴射によって揚水筒2内の海水の上昇が妨げられることがなく、海水はスムーズに上昇する。
【0035】
図3に示す揚水装置300では、空気供給管3は、揚水筒2外に配置される。また、図4に示す揚水装置400では、空気供給管3は、揚水筒2外に配置され、かつ複数設けられる。空気供給管3を揚水筒2外に配置することによって、海水が揚水筒2内をよりスムーズに上昇することが可能となる。
【0036】
以上にて説明した揚水装置200〜400においても、上述した揚水装置100と同様の作用効果を奏する。
【0037】
なお、以上の実施の形態では、海水を揚水する揚水装置について説明したが、本発明の揚水装置は淡水を揚水する装置にも適用することができる。淡水とは、河川水、沼沢水、又は湖水である。本発明の揚水装置を河川水、沼沢水、又は湖水を揚水する装置に適用した場合でも、上述した実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0038】
また、以上の実施の形態では、揚水筒2内に圧縮空気を供給すると説明したが、空気の代わりに酸素や窒素等の気体を供給するようにしてもよい。
【0039】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る揚水装置は、海水又は淡水を汲み上げる装置として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態に係る揚水装置を示す模式図である。
【図2】本発明の他の実施の形態に係る揚水装置を示す模式図である。
【図3】本発明の他の実施の形態に係る揚水装置を示す模式図である。
【図4】本発明の他の実施の形態に係る揚水装置を示す模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水中又は淡水中に配置され、液体を揚水するための揚水筒と、
前記揚水筒内に圧縮気体を供給し、前記揚水筒内を気液混合水とするための空気供給管と、を備え、
前記揚水筒は、前記揚水筒内の気液混合水と前記揚水筒外の液体との比重差によって、液体又は液体と微小固体物との混合体を吸い込み水面近傍へと排出することを特徴とする揚水装置。
【請求項2】
前記淡水は、河川水、沼沢水、又は湖水であることを特徴とする請求項1に記載の揚水装置。
【請求項3】
前記空気供給管は、前記揚水筒内に配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の揚水装置。
【請求項4】
前記空気供給管は、前記揚水筒外に配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の揚水装置。
【請求項5】
前記空気供給管は、複数設けられることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の揚水装置。
【請求項6】
複数の前記空気供給管のそれぞれには、前記揚水筒内へ圧縮気体を供給する供給口が形成され、
それぞれの前記供給口は、異なる高さに設けられることを特徴とする請求項5に記載の揚水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−214096(P2009−214096A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1405(P2009−1405)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(508049097)
【Fターム(参考)】