説明

搬送モジュール、並びに、搬送装置

【課題】装置構成がコンパクトで、物品の搬送方向を迅速かつ任意の方向に変更可能な搬送モジュール、並びに、当該搬送モジュールを備えた搬送装置の提供を目的とする。
【解決手段】搬送装置1は、搬送モジュール50を主搬送経路2の中途に設けた構成とされている。搬送モジュール50は、複数の搬送セル60を2次元に配した構成とされており、そのそれぞれにモータ内蔵ローラ80が設けられている。各モータ内蔵ローラ80は、旋回軸を中心として旋回可能とされている。各搬送セル60のモータ内蔵ローラ80は、物品の搬送経路にあわせて旋回する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の搬送方向を所望の方向に変更可能な搬送モジュール、並びに、当該搬送モジュールを備えた搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、下記特許文献1に開示されているような払い出し装置や搬送装置が提供されている。特許文献1に開示されている搬送装置は、所定の方向に物品を搬送するために設けられた搬送ラインを横断するように払い出し装置が設けられた構成とされている。この種の搬送装置では、払い出し装置が設けられた位置に払い出しすべき物品が到来すると、払い出し装置が作動して払い出し対象となる物品を一旦持ち上げ、その後当該物品を搬送ラインに対して交差する方向に払い出す構成とされている。
【特許文献1】特開2006−44818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示されている搬送装置やこれに採用されている払い出し装置は、物品を搬送ラインから払い出す際に、一旦物品を持ち上げる必要があり、これに要する時間分だけ処理能力が低いという問題があった。また、上記したような構成の払い出し装置では、搬送ラインに対して所定の方向にしか物品を払い出すことができないという問題点があった。さらに、上記特許文献1に開示されている搬送装置は、払い出し装置の設置スペースを確保したり、払い出し装置の作動領域を確保せねばならず、全体構造が大型化してしまうという問題点があった。
【0004】
そこで、本発明は、装置構成がコンパクトで、物品の搬送方向を迅速かつ任意の方向に変更可能な搬送モジュール、並びに、当該搬送モジュールを備えた搬送装置の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解消すべく提供される請求項1に記載の発明は、物品を搬送するための搬送セルを複数、二次元に配置することにより搬送面が形成された搬送モジュールであって、前記搬送セルの一部又は全部が、ローラ支持体と、モータ内蔵ローラと、搬送方向変更手段とを有し、前記モータ内蔵ローラが、支軸と、前記搬送面を形成する筒体と、当該筒体の内部に内蔵されたモータとを有し、前記支軸がローラ支持体に対して相対回転不能に支持され、前記筒体が前記モータの動力を受けることによって支軸に対して相対回転可能なように支持されたものであり、前記搬送方向変更手段が、前記搬送面に対して垂直な旋回軸を中心としてモータ内蔵ローラを旋回させることにより、各搬送セルにおける物品の搬送方向を変更可能なものであることを特徴とする搬送モジュールである。
【0006】
本発明の搬送モジュールは、各搬送セルにモータ内蔵ローラが設けられており、このモータ内蔵ローラを搬送方向変更手段によって旋回軸を中心として旋回させるだけで物品の搬送方向を変更することができる。そのため、本発明の搬送モジュールによれば、従来技術のものよりも迅速に搬送方向を変更することができる。
【0007】
本発明の搬送モジュールは、各搬送セルに設けられたモータ内蔵ローラのモータ内蔵ローラの方向を旋回軸を中心として旋回させることにより変更できる。そのため、本発明によれば、モータ内蔵ローラの旋回量を適宜調整することにより、物品の搬送方向を任意の方向に変更可能な搬送モジュールを提供することができる。
【0008】
なお、本明細書において、モータ内蔵ローラの旋回量とは、モータ内蔵ローラが搬送面に対して垂直な旋回軸を中心として旋回する際の角度や、旋回に伴ってモータ内蔵ローラが移動する距離等を総称するものである。
【0009】
本発明の搬送モジュールは、搬送面を構成する筒体の内部に、当該筒体の駆動源となるモータが内蔵されたモータ内蔵ローラを採用している。そのため、本発明の搬送モジュールは、装置構成がコンパクトである。
【0010】
ここで、本発明の搬送モジュールは、上記したように搬送方向変更手段によって各搬送セルに設けられたモータ内蔵ローラの向きを調整することにより、物品の搬送方向を適宜変更できる構成とされている。そのため、物品の搬送方向を精度良く調整可能とするためには、モータ内蔵ローラの旋回量を正確に調整可能とすることが望ましい。
【0011】
そこで、かかる知見に基づいて提供される請求項2に記載の発明は、搬送方向変更手段が、モータ内蔵ローラを旋回軸を中心として旋回させるための旋回用モータを有するものであり、当該旋回用モータの作動に伴って発信されるパルス信号に基づいて、旋回軸を中心とするモータ内蔵ローラの旋回量が調整されることを特徴とする請求項1に記載の搬送モジュールである。
【0012】
かかる構成によれば、物品の搬送方向にあわせてモータ内蔵ローラの向きを正確に調整することができる。
【0013】
ここで、上記した本発明の搬送モジュールは、複数の搬送セルを備えている。そのため、各搬送セルが備えるモータ内蔵ローラをそれぞれ独立して旋回させて姿勢変化させることができれば搬送モジュールにおける物品の搬送経路を様々に変化させることができる。
【0014】
そこで、かかる知見に基づいて提供される請求項3に記載の発明は、各搬送セル毎に旋回軸を中心としてモータ内蔵ローラを旋回させることができることを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送モジュールである。
【0015】
かかる構成によれば、各搬送セルのモータ内蔵ローラをそれぞれ独立して旋回させ、姿勢変化させることができ、物品の搬送経路を様々に設定することができる。
【0016】
ここで、上記した搬送モジュールは、物品の搬送方向を変更する際に搬送方向変更手段によってモータ内蔵ローラの向きを変更することができる構成となっている。そのため、各搬送セル上を物品が通過することにより物品から反力を受けるとこの影響により、モータ内蔵ローラの向きが変化してしまう可能性がある。ここで、本発明の搬送モジュールを用いて物品の搬送方向を変更する場合は、各搬送セルを起点として搬送方向が切り替わる。そのため、搬送方向の変換の起点となる位置から物品の到達先となる目標位置までの距離が長いなどの条件が加味された場合、前記したモータ内蔵ローラの向きの変化が仮にごくわずかであったとしても、物品が目標とする位置から大きくずれた位置に到達する可能性もある。そのため、本発明の搬送モジュールは、モータ内蔵ローラを所定方向に向いた状態において、旋回することなくしっかりと固定可能な構成であることが望ましい。
【0017】
そこで、かかる知見に基づいて提供される請求項4に記載の発明は、旋回軸を中心としてモータ内蔵ローラが旋回するのを阻止可能な旋回阻止手段を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の搬送モジュールである。
【0018】
かかる構成によれば、モータ内蔵ローラが物品の通過等に伴って予期せぬ方向に旋回するのを防止することができる。従って、本発明によれば、物品を所望の方向に正確に搬送可能な搬送モジュールを提供することができる。
【0019】
ここで、上記した搬送モジュールは、物品の搬送方向を様々に変更可能なように、各搬送セルに設けられたモータ内蔵ローラが搬送面に対して垂直な旋回軸を中心として旋回可能とされている。上記した搬送モジュールにおいて、搬送方向の変更をスムーズに行えるようにするためには、モータ内蔵ローラが旋回軸を中心として一方向(正方向)に旋回可能とするだけではなく、これとは逆方向にも旋回可能な構成とすることが望ましい。かかる構成とした場合は、各搬送セルに設けられたモータ内蔵ローラが正、逆双方向に向けて旋回可能となる。そのため、物品の搬送をする際に各搬送セル上を通過する物品からの反力を受けてモータ内蔵ローラの姿勢が正方向あるいは逆方向にずれたり、これに伴って物品の搬送方向の調整精度が低下するのを抑制するためには、旋回阻止手段としてモータ内蔵ローラの旋回を正方向、逆方向の双方に阻止可能なものであることが望ましい。
【0020】
そこで、かかる知見に基づいて提供される請求項5に記載の発明は、搬送セルの一部又は全部に設けられたモータ内蔵ローラが旋回軸を中心として正、逆双方向に向けて旋回可能なものであり、前記搬送セルに設けられた旋回阻止手段が、旋回軸を中心とする正方向および逆方向の双方へのモータ内蔵ローラの旋回を阻止可能なものであることを特徴とする請求項4に記載の搬送モジュールである。
【0021】
かかる構成によれば、モータ内蔵ローラが正、逆双方向に旋回可能であり、物品の搬送方向をスムーズに変更可能であると共に、物品の通過等に伴ってモータ内蔵ローラが予期せぬ方向に旋回するのを防止でき、物品の搬送方向を正確に調整可能な搬送モジュールを提供できる。
【0022】
また同様の知見に基づいて提供される請求項6に記載の発明は、一又は複数の搬送セルに設けられたモータ内蔵ローラが旋回軸を中心として正、逆双方向に向けて旋回可能なものであり、前記搬送セルに設けられた旋回阻止手段は、モータ内蔵ローラが旋回軸を中心として所定方向に旋回することを条件として、当該旋回に伴う旋回量に相当する分だけ、前記旋回方向とは逆方向にモータ内蔵ローラを旋回させるものであることを特徴とする請求項4又は5に記載の搬送モジュールである。
【0023】
かかる構成によれば、物品の搬送方向をスムーズに変更可能であると共に、物品の通過等に伴ってモータ内蔵ローラが予期せぬ方向に旋回したり、これに伴って物品の搬送方向の調整精度が低下するのを最小限に抑制可能な搬送モジュールを提供できる。
【0024】
請求項7に記載の発明は、旋回連動機構を備えており、当該旋回連動機構が、各搬送セルが備える各モータ内蔵ローラの旋回軸を中心とする旋回を、複数の搬送セルについて連動させることが可能なものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の搬送モジュールである。
【0025】
かかる構成によれば、例えば物品を搬送する際にモータ内蔵ローラを旋回させて向きを変え、搬送方向を変更せねばならない場合に、向きを変えねばならないモータ内蔵ローラを一体的に旋回させることができる。従って、本発明の搬送モジュールによれば、一部又は全部の各搬送セルが備えるモータ内蔵ローラの向きを一体的に変更することができ、物品の搬送効率をより一層向上させることができる。
【0026】
請求項8に記載の発明は、物品を所定方向に搬送する搬送経路を有し、当該搬送経路に請求項1〜7のいずれかに記載の搬送モジュールが設けられていることを特徴とする搬送装置である。
【0027】
かかる構成によれば、搬送経路の中途に設けられた搬送モジュールによって物品を的確に仕分け可能な搬送装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、装置構成がコンパクトで、物品の搬送方向を迅速かつ任意の方向に変更可能な搬送モジュール、並びに、当該搬送モジュールを備えた搬送装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
続いて、本発明の一実施形態にかかる搬送装置1、並びに、搬送モジュール50について図面を参照しながら詳細に説明する。図1に示すように、搬送装置1は、主搬送経路2(搬送経路)と複数の従搬送経路3とを有する。そして、主搬送経路2の中途に搬送モジュール50が設けられている。
【0030】
主搬送経路2および従搬送経路3は、それぞれ従来公知のものと同様のローラコンベアによって構成されている。すなわち、主搬送経路2および従搬送経路3は、一対のフレーム6,6の間に、複数のローラ8やモータ内蔵ローラ10を並べて取り付けたものである。
【0031】
主搬送経路2は、物品を一定方向に向けて搬送可能なものである。主搬送経路2は、搬送モジュール50に対して物品の搬送方向上流側(図1において左側)に当たる上流側主搬送経路2aと、搬送モジュール50に対して搬送方向下流側(図1において右側)に当たる下流側主搬送経路2bとに大別することができる。
【0032】
従搬送経路3は、主搬送経路2において搬送されている物品を側方に向けて払い出すための搬送経路であり、搬送モジュール50に対して主搬送経路2における物品の搬送方向に対して交差する方向に隣接して設けられている。従搬送経路3は、主搬送経路2における物品の搬送方向に対して略直交する方向(図1において上方側)に物品を搬送可能な従搬送経路3aと、主搬送経路2における物品の搬送方向に対して斜め方向に物品を搬送可能な従搬送経路3bとに大別される。
【0033】
ローラ8は、いわゆるフリーローラであり、支軸に対して回転自在に支持された筒体を備えたものである。ローラ8は、フレーム6,6に対して支軸を固定することにより、フレーム6,6の長手方向に複数取り付けられている。
【0034】
モータ内蔵ローラ10は、外観形状がローラ8とほぼ同様であるが、内部に駆動源となるモータ20や減速機21等を備えている点がローラ8と異なる。さらに具体的に説明すると、モータ内蔵ローラ10は、図2に示すように筒体11と、閉塞部材12と、支軸13,14とを具備している。筒体11は、両端が開口した金属製のものであり、両端が閉塞部材12によって閉塞されている。支軸13,14は、それぞれ閉塞部材12a,12bから突出した軸体であり、閉塞部材12a,12bに軸受16,17を介して回転自在に取り付けられている。
【0035】
支軸13は、棒状の部材であり、閉塞部材12aおよび軸受16を介して回転自在に取り付けられている。支軸14は、支軸13と同様に棒状の部材であり、閉塞部材12bに対して軸受17を介して回転自在に取り付けられている。支軸14には、軸方向に貫通し、筒体11の内外を連通する貫通孔18が設けられている。支軸14の貫通孔18には、後述するモータ20への電源の供給や、モータ20に付属している位置検出素子等(図示せず)との電気部品あるいは電子部品との電気信号の送受信を行うケーブル23が挿通され、筒体11の外部に取り出されている。
【0036】
モータ内蔵ローラ10は、筒体11内にモータ20と減速機21とから構成される駆動ユニット25を内蔵している。モータ20は、電磁石からなる複数の固定子と、磁極を有する回転子と、位置検出素子とを備えたブラシレスモータである。モータ20の中心軸26は、回転子の回転動力を減速するための減速機21に軸受27を介して接続されている。
【0037】
減速機21は、図2に示すように遊星歯車列からなる減速機であり、中心軸26を介して伝播するモータ20の回転動力を所定の減速比で減速するものである。また、減速機21の出力軸28は、外歯車29を介して筒体11の内部に固定されている連結部材30に接続されている。そのため、モータ20の回転動力は、減速機21において減速され、減速機21の出力軸28および連結部材30を介して筒体11に伝播され、筒体11を回転駆動させる。
【0038】
主搬送経路2および従搬送経路3は、上記した構成のモータ内蔵ローラ10をローラ8と同様に一対のフレーム6,6間に取り付けた構成とされている。そして、モータ内蔵ローラ10とこれに隣接するローラ8との間や、隣接する2本のローラ8,8間にはベルト32が懸架されている。そのため、主搬送経路2および従搬送経路3は、モータ内蔵ローラ10の作動を作動させると、これにベルト32を介して直接的あるいは間接的に連結されたローラ8も回転し、ローラ8やモータ内蔵ローラ10に搭載された物品を搬送可能な状態となる。
【0039】
図1や図3、図4(a)に示すように、搬送モジュール50は、平面視が略正方形の形状を有するものであり、複数の領域に分割されている。そして、搬送モジュール50を構成する前記各領域には、搬送セル60が設けられている。すなわち、搬送モジュール50は、搬送セル60が平面視した状態で縦、横双方向、すなわち二次元に複数(本実施形態ではそれぞれ5つずつ)並ぶように設けたものである。本実施形態では、搬送モジュール50は、図1に示すように主搬送経路2における物品の搬送方向(図1において左右方向)に複数の搬送セル60が並べて配されると共に、主搬送経路2を構成するコンベアの幅方向、すなわち主搬送経路2における物品の搬送方向に対して交差する方向に複数の搬送セル60が並ぶように設けられている。
【0040】
搬送モジュール50の表面側には、物品を搬送するための搬送面Xが形成されている。本実施形態では、搬送モジュール50の表面側に露出した各搬送セル60のモータ内蔵ローラ80上において搬送モジュール50の表面に略平行に想定される面が搬送面Xに相当する。
【0041】
図5や図6に示すように、搬送セル60は、台座部61を有し、通常の設置状態においてこの上方となる位置に駆動機構部65の主要部が設けられている。駆動機構部65は、本体部70(ローラ支持体)や、内歯車71、蓋部72、外歯車73、旋回用モータ75から構成されている。
【0042】
本体部70は、図5や図6に示すようにモータ内蔵ローラ80を有し、これをベース部81に取り付けた構成とされている。さらに具体的には、モータ内蔵ローラ80は、上記した主搬送経路2や従搬送経路3に設けられていたモータ内蔵ローラ10と同様の構造とされている。すなわち、モータ内蔵ローラ80は、筒体11の内部にモータ20や減速機21を内蔵している。モータ内蔵ローラ80の筒体11は、搬送セル60のサイズに合わせて、上記した主搬送経路2や従搬送経路3で採用されているモータ内蔵ローラ10のものよりも短尺とされている。そして、モータ内蔵ローラ80は、筒体11の両端から突出した支軸13,14を有し、これらの支軸13,14に対して筒体11が旋回自在に支持された状態となっている。
【0043】
ベース部81は、図6等に示すように主要部が円盤状の板体82によって構成されており、この表面(通常の設置状態において上方を向く面)側に、一対のローラ支持片83,83が板体82に対して略垂直に立ち上がるように固定されている。ローラ支持片83は,83は、それぞれ板体82の周縁近傍に位置しており、互いに板体82の中心を介して対向する位置関係にある。モータ内蔵ローラ80の支軸13,14は、それぞれローラ支持片83,83に対して相対回転不能なように取り付けられている。
【0044】
ローラ支持片83,83に対して板体82の周方向に約90度ずれた位置には、蓋部支持片84,84が取り付けられている。蓋部支持片84,84は、それぞれ板体82の表面から略垂直上方に立ち上がるように取り付けられている。蓋部支持片84は、板体82と、これに対して上方に配される蓋体72との間を橋渡すように取り付けられ、蓋部72を裏面側から支持する部材である。
【0045】
ベース部81の略中央部には、貫通孔87が設けられている。また、ベース部81を構成する板体82の裏面側、すなわち通常の設置状態において下方側を向く面の中央部には、ベース部81に対して略垂直下方に向けて伸びる軸部88がベース部81と一体的に設けられている。軸部88は、中空で筒状の部材であり、前記した貫通孔87と連通している。軸部88は、後に詳述する台座部61に設けられた軸受90に差し込まれ回転自在に支持されている。軸部88には、ベース部81に取り付けられたモータ内蔵ローラ80に繋がるケーブル23が挿通されている。
【0046】
ベース部81の裏面側には、内歯車71が板体82に対して相対回転不能なように固定されている。内歯車71は、ベース部81や後に詳述する外歯車73、旋回用モータ75と組み合わさってモータ内蔵ローラ80の筒体11の向きを変えるための搬送方向変更手段78として機能する。
【0047】
内歯車71の外径は、図6に示すように板体82の外径と略同一とされている。内歯車71は、後に詳述する台座部61に設けられたコロ91上に配され、台座部61に対して平行な姿勢を保った状態で回転することができる。
【0048】
蓋部72は、図6に示すように天面85と、垂下部86,86とを有する。天面85は、外径が上記したベース部81の板体82や、内歯車71の外径と略同一の板体によって構成されており、この略中央部に矩形状の開口89を有する。開口89は、ベース部81に対して蓋部72を取り付けることによって、本体部70に設けられたモータ内蔵ローラ80を露出させることが可能な位置に、モータ内蔵ローラ80の大きさにあわせて形成されている。
【0049】
垂下部86は、図6に示すように天面85に対して垂直下方に伸びる片状の部分である。垂下部86は、ベース部81の上方に開口87からモータ内蔵ローラ80が露出するように蓋部72を配した状態において、ベース部81に設けられたローラ支持片83,83を外周側からカバーする部分である。
【0050】
図6等に示すように、外歯車73は、駆動機構部65の下方側に位置する台座部61から上方に向けて突出するように設けられた旋回用モータ75の回転軸に接続されている。外歯車73は、上記した内歯車71の内側に位置し、内歯車71と噛合している。そのため、旋回用モータ75を作動させると、これに連動して外歯車73やこれと一体化された本体部70等が外歯車73の中心を通る旋回軸Vを中心として旋回する。従って、搬送セル60は、旋回用モータ75を作動させることにより、モータ内蔵ローラ80を旋回軸Vを中心として正方向(本実施形態では右回り方向)および逆方向(本実施形態では反時計回り方向)に旋回させることができる。
【0051】
台座部61は、図5や図6等に示すように天面61aを有する。天面61aの中心には貫通孔61bが設けられており、貫通孔61bの外周側にはコロ91が周方向に4つ設けられている。また、天面61aの貫通孔61bに対応する位置には、軸受90が設けられており、軸受90と貫通孔61bとが連通している。軸受90および貫通孔61bには、上記したベース部81の軸部88が差し込まれ、旋回自在に支持されている。コロ91は、上記した外歯車73を下方側から支持すると共に、外歯車73およびこれと一体化されたベース部81の旋回を補助するために設けられている。
【0052】
本実施形態の搬送装置1、並びに、搬送モジュール50では、各搬送セル60毎に制御手段95が設けられている。各制御手段95は、図4(b),(c)に示すように、搬送モジュール50の台座51に設けられた制御手段95の設置用のスペース96に取り付けられている。
【0053】
各搬送セル60毎に設けられた制御手段95は、当該制御手段95が接続されたモータ内蔵ローラ80や、このモータ内蔵ローラ80を旋回させるために設けられた旋回用モータ75の駆動を制御することができる。また、制御手段95は、旋回用モータ75の作動に伴って旋回用モータ75から発信されるパルス信号に基づいてモータ内蔵ローラ80の旋回量、すなわちモータ内蔵ローラ80が旋回軸Vを中心としてどれだけ旋回したかを確認することができる。また、制御手段95は、旋回用モータ75を作動させることにより、外歯車73や内歯車71、ベース部81を旋回させ、モータ内蔵ローラ81を旋回軸Vを中心として旋回させると共に、旋回用モータ75の回転軸の回転量を制御して調整することにより、モータ内蔵ローラ80の旋回量を調整し、モータ内蔵ローラ80の姿勢、すなわちモータ内蔵ローラ80による物品の搬送方向を調整することができる。
【0054】
また、制御手段95は、モータ内蔵ローラ80を旋回軸Vを中心として旋回しないように維持すべき状態(以下、必要に応じて旋回阻止状態とも称す)において、モータ内蔵ローラ80が旋回するのを抑制するための旋回阻止手段としての機能も発揮しうる。具体的には、モータ内蔵ローラ80が旋回阻止状態にある場合、制御手段95は、モータ内蔵ローラ80を旋回させるための動力源として機能する旋回用モータ75から発信されるパルス信号を監視する。そして、制御手段95は、旋回用モータ75からパルス信号が発信されたことを検知すると、直ちに旋回用モータ75の回転量や回転方向を検知すると共に、当該回転量に相当する分だけ旋回用モータ75を前記回転方向とは逆方向に回転させる。制御手段95は、このような制御を実施することにより、モータ内蔵ローラ80の旋回を正方向および逆方向の双方に阻止することができる。従って、搬送モジュール50は、モータ内蔵ローラ80が旋回阻止状態である状況において搬送セル60上を通過する物品から受ける反力によってモータ内蔵ローラ80にいずれの方向から応力が作用しても、モータ内蔵ローラ80はほぼ一定の姿勢に維持される。
【0055】
続いて、本実施形態の搬送装置1および搬送モジュール50の動作について説明する。搬送装置1は、主搬送経路2に搭載された物品を上流側(図1において左側)から下流側(図1において右側)に向けて搬送する搬送形態(以下、通常搬送形態とも称す)の他、上流側主搬送経路2aから搬送モジュール50に向けて物品を搬送すると共に、当該物品を搬送モジュール50に搬送されてきた姿勢のまま側方に設けられた従搬送経路3(3a,3b)に向けて払い出す搬送形態(以下、第1仕分搬送形態とも称す)や、上流側主搬送経路2aにより搬送されてきた物品の前後関係を変化させることなく従搬送経路3(3a,3b)側に向けて払い出す搬送形態(以下、第2仕分搬送形態とも称す)、主搬送経路2を流れる物品の位置を搬送方向に対して交差する方向にずらす搬送形態(以下、幅寄せ搬送形態とも称す)等の様々な搬送形態で物品を搬送することができる。以下、搬送装置1における各搬送形態毎に分類して説明する。
【0056】
(通常搬送形態)
搬送装置1が通常搬送形態で作動する場合は、主搬送経路2に設けられた各モータ内蔵ローラ10が適宜作動する。具体的には、通常搬送形態で作動する場合は、主搬送経路2に設けられた全てのモータ内蔵ローラ10が作動状態とされたり、搬送すべき物品のある位置に対して下流側にあるモータ内蔵ローラ10が作動状態とされる等する。これにより、作動状態となったモータ内蔵ローラ10およびこれにベルト32を介して連結されたローラ8が作動状態となり、物品を搬送可能な状態となる。
【0057】
一方、搬送モジュール50は、物品の搬送に備えて各搬送セル60に設けられたモータ内蔵ローラ80の姿勢が調整される。具体的には、通常搬送形態で搬送装置1が作動する場合は、図1に示すように、各搬送セル60が備えるモータ内蔵ローラ80の筒体11が主搬送経路2を構成するローラ8やモータ内蔵ローラ10と略平行となるようにモータ内蔵ローラ80の姿勢が調整される。
【0058】
すなわち、仮に搬送モジュール50の上流側から搬送されてくる物品を下流側に向けて搬送する際に作動すべき位置にある搬送セル60のモータ内蔵ローラ80が、主搬送経路2のローラ8やモータ内蔵ローラ10に対して交差する姿勢となっている場合は、この搬送セル60に設けられた各制御手段95が、旋回用モータ75を作動させる。これにより、旋回用モータ75の出力軸に取り付けられた外歯車73が旋回すると共に、これと噛合している内歯車71や、これと一体化されている本体部70やモータ内蔵ローラ80が旋回軸Vを中心として旋回する。そして、モータ内蔵ローラ80が主搬送経路2に設けられたローラ8やモータ内蔵ローラ10と略平行になると、制御手段95は、旋回用モータ75を停止させる。
【0059】
上記したようにしてモータ内蔵ローラ80の姿勢が調整された後、搬送すべき物品が搬送モジュール50に差し掛かると、制御手段95は、各搬送セル60のモータ内蔵ローラ80を作動させる。これにより、上流側主搬送経路2aから搬送されてきた物品は、搬送モジュール50を通過して下流側主搬送経路2bに受け渡され、さらに下流側に向けて搬送される。
【0060】
(第1仕分搬送形態)
第1仕分搬送形態で搬送装置1が作動する場合は、図7(a)や図7(b)に示すように、上流側主搬送経路2aから搬送モジュール50に搬送されてきた物品がそのままの姿勢を維持した状態でその搬送方向が搬送モジュール50において矢印A,Bで示すように切り替えられる。具体的には、図7に示すように物品を平面視が矩形状のものと仮定した場合において、上流側主搬送経路2aにおいて辺W1側を先頭側として搬送モジュール50に物品が搬送されてくると、当該物品が搬送モジュール50においてその姿勢を変えることなくその搬送方向が上流側主搬送経路2aにおける搬送方向に対して略直交あるいは交差する方向に変換される。そのため、第1仕分搬送形態で搬送装置1が作動する場合、搬送モジュール50から払い出される物品は、前記した辺W1に対して直交する辺W2側あるいは辺W3側を先頭として従搬送経路3a,3bに向けて払い出される。
【0061】
第1仕分搬送形態における搬送装置1の動作をさらに具体的に説明すると、物品が上流側主搬送経路2aに搭載されると、上流側主搬送経路2aのモータ内蔵ローラ10が上記した通常搬送形態の場合と同様にして作動する。これにより、物品は、上流側主搬送経路2aの上流側から下流側に向けて搬送される。
【0062】
一方、搬送モジュール50については、上流側主搬送経路2aから物品が搬送されて来るのに先だって、各搬送セル60のモータ内蔵ローラ80が必要に応じて旋回軸Vを中心として旋回し、物品を従搬送経路3aあるいは従搬送経路3b側に向けて搬送可能な姿勢とされる。具体的には、図7(a)に矢印Aで示すように物品を従搬送経路3a側に向けて払い出す場合において、各搬送セル60のうちモータ内蔵ローラ80の筒体11が、従搬送経路3aを構成するローラ8やモータ内蔵ローラ10に対して略平行となっていないものが存在する場合がある。この場合は、各搬送セル60に設けられた制御手段95が旋回用モータ75を作動させて本体部70と共にモータ内蔵ローラ80を旋回軸Vを中心として旋回させ、モータ内蔵ローラ80が従搬送経路3aを構成するローラ8やモータ内蔵ローラ10に対して略平行となるように姿勢変化させる。
【0063】
また、図7(b)に矢印Bで示すように物品を従搬送経路3b側に向けて払い出す場合において、従搬送経路3bを構成するローラ8やモータ内蔵ローラ10に対して略平行となっていないものが存在する場合は、各搬送セル60に設けられた制御手段95が旋回用モータ75を作動させてモータ内蔵ローラ80を旋回軸Vを中心として旋回させ、モータ内蔵ローラ80が従搬送経路3bを構成するローラ8やモータ内蔵ローラ10に対して略平行となるように姿勢変化させる。
【0064】
搬送装置1が第1仕分搬送形態で作動する場合は、上記したようにして各搬送セル60が備えるモータ内蔵ローラ80の向きが調整されると共に、上流側主搬送経路2aや搬送モジュール50に設けられたモータ内蔵ローラ10,80が作動状態とされる。これにより、上流側主搬送経路2aから搬送されてきた物品が、予めモータ内蔵ローラ80の向きを調整した搬送モジュール50側に移載される。搬送モジュール50側に移載された物品は、そのままの姿勢で搬送方向が従搬送経路3a側あるいは従搬送経路3b側に切り替えられ、搬送モジュール50側から払い出される。
【0065】
(第2仕分搬送形態)
第2仕分搬送形態で搬送装置1が作動する場合は、図8(a)や図8(c)に示すように、上流側主搬送経路2aから搬送モジュール50に搬送されてきた物品が、その前後関係を変化させることなく従搬送経路3(3a,3b)側に向けて払い出される。具体的には、図8に示すように物品を平面視が矩形状のものと仮定した場合において、上流側主搬送経路2aにおいて辺W1側を先頭側として搬送モジュール50に搬送されてきた物品は、搬送モジュール50内において徐々にその搬送方向が従搬送経路3(3a,3b)側に向けて切り替えられる。そのため、第1仕分搬送形態で搬送装置1が作動する場合、搬送モジュール50から払い出される物品は、前記した辺W1を先頭としたままの姿勢で従搬送経路3a,3bに向けて払い出される。
【0066】
第2仕分搬送形態における搬送装置1の動作をさらに具体的に説明すると、物品が上流側主搬送経路2aに搭載されると、上流側主搬送経路2aのモータ内蔵ローラ10が上記した通常搬送形態の場合等と同様にして作動する。これにより、物品は、上流側主搬送経路2aの上流側から下流側に向けて搬送される。
【0067】
一方、搬送モジュール50は、物品を従搬送経路3aあるいは従搬送経路3b側に向けて払い出す際に物品が通過すると想定される位置にある各搬送セル60について、モータ内蔵ローラ80の姿勢が調整される。具体的には、図8(a)に矢印で示すように従搬送経路3a側に向けて物品を払い出す場合は、図8(a)にハッチングで示す領域(以下、必要に応じて物品通過エリアPとも称す)において図8(b)に矢印Aで示すような搬送経路で物品が搬送せねばならない。そこで、この場合は、図8(b)に矢印Aで示すような搬送経路を想定し、物品通過エリアPにある各搬送セル60が備えるモータ内蔵ローラ80の筒体11が前記した搬送経路に対して交差するようにモータ内蔵ローラ80を旋回軸V周りに旋回させる。
【0068】
また、図8(c)に矢印で示すように物品を従搬送経路3b側に向けて払い出す場合についても、従搬送経路3a側に物品を払い出す場合と同様にして各搬送セル60が備えるモータ内蔵ローラ80の姿勢が調整される。すなわち、図8(c)に示すように物品を払い出す場合は、図8(c)にハッチングで示す領域(物品通過エリアP)において、図8(d)に矢印Bで示すような搬送経路で物品が搬送されることとなる。そのため、従搬送経路3b側に向けて物品を払い出す場合は、物品通過エリアPにある各搬送セル60のモータ内蔵ローラ80の筒体11が矢印Bで示される搬送経路に対して交差するようにモータ内蔵ローラ80を旋回軸V周りに旋回させる。
【0069】
上記したようにして物品通過エリアPにある各搬送セル60のモータ内蔵ローラ80の向きを調整しつつ、当該モータ内蔵ローラ80や、上流側主搬送経路2aや従搬送経路3aあるいは従搬送経路3bに配されたモータ内蔵ローラ10を適宜作動させると、物品が主搬送経路2a側から搬送モジュール50を経由して従搬送経路3aあるいは従搬送経路3b側に払い出される。
【0070】
(幅寄せ搬送形態)
幅寄せ搬送形態で搬送装置1が作動する場合は、主搬送経路2aから搬送されてきた物品を搬送モジュール50において主搬送経路2の幅方向、すなわち主搬送経路2a,2bにおける物品の搬送方向に対して交差する方向に幅寄せされる。この際、搬送モジュール50を構成する複数の搬送セル60のうち、上流側主搬送経路2aや下流側主搬送経路2bに近いエリア(以下、必要に応じてそれぞれ上流側エリアU、下流側エリアDとも称す)に配された搬送セル60については、制御手段90によりモータ内蔵ローラ80が、主搬送経路2a,2bのローラ8やモータ内蔵ローラ10と平行となるように姿勢調整される。
【0071】
一方、主搬送経路2における物品の搬送方向の中間位置、すなわち上記した上流側エリアUと下流側エリアDとの間のエリア(以下、中間エリアMとも称す)に存在する搬送セル60については、主搬送経路2a,2bのローラ8やモータ内蔵ローラ10に対して交差する方向に向くように姿勢調整される。具体的には、例えば図9(a)に矢印Aで示すように、上流側主搬送経路2a側から搬送されてきた物品を図中上方側から下方側に向けて物品を幅寄せする場合は、中間エリアMに存在する搬送セル60のモータ内蔵ローラ80が、図中左上方にあるエリア(以下、上流側エリアU1とも称す)から右下方にあるエリア(以下、下流側エリアD1とも称す)に向けて物品を搬送可能なように姿勢変形される。また、図9(b)に矢印Bで示すように、上流側主搬送経路2a側から搬送されてきた物品を図中下方側から上方側に向けて物品を幅寄せする場合は、中間エリアMに存在する搬送セル60のモータ内蔵ローラ80が図中左下方にあるエリア(以下、上流側エリアU2とも称す)から右上方にあるエリア(以下、下流側エリアD2とも称す)に向けて物品を搬送可能なように姿勢変形される。
【0072】
幅寄せ搬送形態により物品を搬送する場合は、上記したようにして搬送モジュール50に設けられたモータ内蔵ローラ80の姿勢が調整されると共に、主搬送経路2や搬送モジュール50に設けられたモータ内蔵ローラ10,80が順次作動状態とされる。これにより、主搬送経路2aから搬送モジュール50に移載されてきた物品が搬送モジュール50において図9(a),(b)に矢印A,Bで示すように幅寄せされる。
【0073】
上記したように、本実施形態の搬送装置1は、通常搬送形態によって作動させることにより上流側主搬送経路2aから下流側主搬送経路2bに向けて物品を搬送するだけでなく、第1,2仕分搬送形態によって作動させることによって物品の搬送方向を所望の方向に変更したり、幅寄せ搬送形態によって作動させることにより物品の通過位置を物品の流れ方向に対して交差する方向にずらすことができる。そのため、本実施形態の搬送装置1によれば、多種多様な搬送経路を採用しつつ、物品をスムーズに搬送することができる。
【0074】
本実施形態の搬送装置1において採用されている搬送モジュール50は、物品を搬送するための搬送セル60を複数、二次元に配置して搬送面Xが形成されたものであり、各搬送セル60が、ローラ支持体として機能する本体部70や、モータ内蔵ローラ80、搬送方向変更手段78を備えている。そして、各搬送セル60に設けられたモータ内蔵ローラ80を搬送方向変更手段78によって旋回軸Vを中心として旋回させることにより、モータ内蔵ローラ80の向きを変え、搬送面X上を通過する物品の搬送方向を変更することができる。そのため、搬送モジュール50によれば、上記した従来技術の払い出し装置のように物品を一旦持ち上げる等することなく迅速かつスムーズに搬送方向を変更することができる。
【0075】
搬送モジュール50は、搬送方向変更手段78を構成する旋回用モータ75の回転量を調整することにより、モータ内蔵ローラ80の旋回量を適宜調整することができる。従って、搬送モジュール50によれば、物品の搬送方向をあらゆる方向に変更することができる。
【0076】
本実施形態では、搬送モジュール50を形成する全ての搬送セル60がモータ内蔵ローラ80や搬送方向変更手段78として機能する部材を備え、当該モータ内蔵ローラ80がそれぞれ旋回軸Vを中心として旋回可能なものであったが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、搬送モジュール50を形成する一部の搬送セル60が、モータ内蔵ローラ80ではなく、上記したローラ8のように駆動源を持たないものであったり、搬送方向変更手段78として機能する部材を備えず、モータ内蔵ローラ80あるいはこれに代わって取り付けられるローラ8のような駆動源を持たないローラを支軸に対して回転可能なように取り付けたものであってもよい。
【0077】
搬送モジュール50は、制御手段95によりモータ内蔵ローラ80を旋回させるために設けられた旋回用モータ75の作動に伴って発信されるパルス信号を検知し、当該パルス信号の信号数に基づいて、モータ内蔵ローラ80の旋回量、すなわちモータ内蔵ローラ80の向きが調整される構成とされている。そのため、搬送モジュール50は、物品の搬送方向にあわせて各搬送セル60が備えるモータ内蔵ローラ80の向きを正確に調整することができる。
【0078】
上記した実施形態では、旋回用モータ75の作動に伴って発信されるパルス信号の信号数に基づいて旋回用モータ75の回転量およびモータ内蔵ローラ80の旋回量を検知あるいは調整するものであったが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、例えば従来公知のロータリーエンコーダなどにより、旋回用モータ75やモータ内蔵ローラ80の支持体として機能する本体部70、内歯車71、外歯車73等のモータ内蔵ローラ80の回転に連動して作動する部材の回転量や作動量、移動距離等を検知し、これに基づいて旋回用モータ75の回転量やモータ内蔵ローラ80の旋回量を検知したり調整する構成としてもよい。
【0079】
上記した搬送モジュール50は、各搬送セル60において駆動源として機能するモータ20や減速機21を筒体11に内蔵したモータ内蔵ローラ80を採用している。そのため、搬送モジュール50は、装置構成がコンパクトである。
【0080】
本実施形態の搬送モジュール50は、モータ内蔵ローラ80を旋回させるための駆動源として機能する旋回用モータ75の回転軸の回転方向を正方向および逆方向に切り替えることにより、モータ内蔵ローラ80を旋回軸Vを中心として正、逆双方向に旋回させることができる構成となっている。そのため、搬送モジュール50は、各搬送セル60が備えるモータ内蔵ローラ80による物品の搬送方向、すなわち筒体11の向きを物品の搬送経路に対応するように迅速に切り替えることができる。
【0081】
なお、上記実施形態では、各搬送セル60のモータ内蔵ローラ80を旋回軸Vを中心として正、逆双方向に旋回させることができる構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、一部または全部の搬送セル60について、いずれか一方にのみ旋回可能な構成としてもよい。また、上記実施形態では、各搬送セル60のモータ内蔵ローラ80を旋回軸Vを中心として360度旋回可能な構成であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、旋回可能な角度に制限があるものであってもよい。
【0082】
上記したように、本実施形態で説明した搬送モジュール50は、各搬送セル60に設けられたモータ内蔵ローラ80の旋回量を制御手段95により、旋回用モータ75側から発信されてくるパルス信号に基づいて把握している。そして、モータ内蔵ローラ80を旋回しないように静止させておかねばならない状況下において、制御手段95が旋回用モータ75側からパルス信号を検知すると、当該パルス信号に基づいてモータ内蔵ローラ80に対して旋回軸Vを中心として旋回する方向に外力が作用したものと判断し、当該旋回に旋回量に相当する分だけ、前記旋回方向とは逆方向にモータ内蔵ローラ80を旋回させるように旋回用モータ75に電力を供給することとしている。すなわち、上記したように、本実施形態では、制御手段95が旋回軸Vを中心としてモータ内蔵ローラ80が旋回するのを阻止するための旋回阻止手段としても機能している。そのため、上記した構成によれば、物品の通過等に伴ってモータ内蔵ローラ80が予期せぬ方向に旋回したり、これに伴って物品の搬送方向の調整精度が低下するのを最小限に抑制することができる。
【0083】
本実施形態の搬送モジュール50は、制御手段95が、旋回軸Vを中心とするモータ内蔵ローラ80の旋回を阻止するための旋回阻止手段として機能するものであったが、本発明はこれに限定される訳ではなく、モータ内蔵ローラ80の旋回を阻止可能なブレーキのように、機械的に旋回を阻止可能な旋回阻止手段を設けた構成としてもよい。かかる構成によれば、制御手段95による一連の制御を簡略化することができる。
【0084】
上記実施形態で説明した搬送モジュール50は、全ての搬送セル60のそれぞれが独立的にモータ内蔵ローラ80の旋回を調整可能なものであったが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、搬送モジュール50は、全ての搬送セル60のうちの一部又は全部の搬送セル60が備える各モータ内蔵ローラ80が連動して旋回軸Vを中心として旋回可能な構成としてもよい。具体的には、図9に示すように、一般的にアイドラーと称されるもののように隣接する搬送セル60,60間において一方側の旋回を他方側に伝達可能なギアやローラ等を配した構成とすることが可能である。かかる構成によれば、例えば物品を搬送する際にモータ内蔵ローラ80を旋回させて向きを変え、搬送方向を変更せねばならない場合に、一体的に向きを変えねばならない位置にある各搬送セル60について、モータ内蔵ローラ80を一斉に旋回させることができる。従って、かかる構成とした場合は、各搬送セル60毎にモータ内蔵ローラ80による物品の搬送方向、すなわち筒体11の向きを調整可能な構成とした場合に比べて設定可能な搬送経路のバリエーションが少なくなるおそれはあるが、物品の搬送効率をより一層向上させることができる。
【0085】
上記実施形態で示した搬送装置1は、物品を所定方向に搬送するために設けられた主搬送経路2の中途に搬送モジュール50が設けられたものであるため、上流側主搬送経路2aによって搬送されてきた物品の搬送方向を様々な方向に調整することができる。従って、搬送装置1によれば、搬送モジュール50によって物品を的確に仕分けすることができる。
【0086】
上記実施形態で示した搬送装置1は、主搬送経路2の中途に搬送モジュール50を設けた構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば搬送モジュール50を所定の搬送経路の末端部分に設けた構成としてもよい。また、上記実施形態では、主搬送経路2の中途に単一の搬送モジュール50を設けた構成を例示したが、搬送モジュール50を複数並べて配置した構成としたり、間隔を開けて搬送モジュール50を複数配置した構成としてもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、主搬送路2の幅方向に単一の搬送モジュール50を配した構成の搬送装置1を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、主搬送経路2の幅方向に複数の搬送モジュール50を配した構成としてもよい。
【0088】
上記した搬送装置1は、例えば通常物品搬送形態で搬送する場合等において、搬送モジュール50を構成する各搬送セル60のモータ内蔵ローラ80の全てを旋回させる構成を例示したが、例えば物品が通過すると想定される経路上にある搬送セル60のモータ内蔵ローラ80のみを作動させる構成としてもよい。かかる構成によれば、作動するモータ内蔵ローラ80の数を必要最小限に抑制し、物品の搬送に伴って消費されるエネルギーを最小限に抑制できる。また、物品の搬送に供していない搬送セル60について、次の物品の搬送に備えてモータ内蔵ローラ80の向きを調整する構成とすれば、より一層スムーズに物品を搬送することができる。
【0089】
上記実施形態で示した例では、主搬送経路2の中途に設けられた搬送モジュール50によって必要に応じて物品の搬送方向を従搬送経路3a側に分岐させる構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、搬送モジュール50を複数の搬送経路の合流点に配し、各搬送経路から搬送されてくる物品を合流させるために用いてもよい。すなわち、上記実施形態において説明した搬送装置1の例をもって説明すると、物品の流れ方向が上記したのとは逆、すなわち従搬送経路3a,3bや下流側主搬送経路2b側から上流側主搬送経路2a側に向かうこととすれば、これらの搬送経路2b,3a,3bの合流点に配された搬送モジュール50において各搬送経路2b,3a,3bによって搬送されてきた物品を合流させ、上流側主搬送経路2aに向けて供給することができる。
【0090】
上記した搬送装置1は、第2搬送形態で物品を搬送する場合のように、搬送モジュール50において物品の搬送方向をカーブさせることができる。ここで、搬送方向をカーブさせる場合は、物品の搬送方向に対して前記カーブの外側に位置する搬送セル60のモータ内蔵ローラ80と、内側に位置する搬送セル60のモータ内蔵ローラ80とが同一の回転数やトルクで回転することとしてもよいが、必要に応じて前記カーブの内側に位置するモータ内蔵ローラ80と、外側に位置するモータ内蔵ローラ80とでその回転数やトルクを異ならせる構成としてもよい。かかる構成とすれば、物品をより一層安定して搬送できる可能性がある。
【0091】
上記実施形態で示した搬送モジュール50は、各搬送セル60が1本のモータ内蔵ローラ80を備えたものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数本のモータ内蔵ローラ80を備えたものとしたり、モータ内蔵ローラ80の他に動力源を持たないローラを備えた構成としてもよい。
【0092】
上記実施形態では、搬送モジュール50に隣接する位置に、主搬送経路2から分岐された物品を搬送するための従搬送経路3a,3bを備えた構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、従搬送経路3a,3bを設ける代わりに物品を投入可能な箱やエリア等を設けた構成としたり、従搬送経路3a,3bを設けつつ前記箱やエリアに相当するものを設けた構成としてもよい。すなわち、搬送装置1は、搬送モジュール50によって払い出された物品が直接、当該物品の払い出し先たる箱やエリア等に到達する構成としてもよい。
【0093】
上記実施形態で示した搬送モジュール50は、各搬送セル60毎に制御手段95を備えたものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、いくつかの搬送セル60あるいは全ての搬送セル60について制御手段95を共用する構成としてもよい。また、搬送モジュール50は、各制御手段95同士の間や主搬送経路2や従搬送経路3に設けられたモータ内蔵ローラ10を制御するための制御手段(図示せず)との間で互いに制御に関する情報を伝達可能な構成とし、他のモータ内蔵ローラ10やモータ内蔵ローラ80、旋回用モータ75等の動作に基づいてモータ内蔵ローラ80や旋回用モータ75の動作を制御する構成としてもよい。また、制御手段95は、何らかの上位制御手段に対して接続され、当該上位制御手段からの制御に基づいてモータ内蔵ローラ80や旋回用モータ75の動作を制御する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の一実施形態にかかる搬送装置を示す平面図である。
【図2】モータ内蔵ローラの内部構造を示す断面図である。
【図3】搬送モジュールを示す斜視図である。
【図4】(a)は搬送モジュールを示す平面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)のB−B断面図である。
【図5】(a)は搬送セルを示す平面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)のB−B断面図、(c)は(a)のC−C断面図である。
【図6】搬送セルの分解斜視図である。
【図7】(a),(b)は、物品が第1仕分搬送形態で搬送される際における搬送装置の動作を概念的に示す平面図である。
【図8】(a),(c)は、物品が第2仕分搬送形態で搬送される際における搬送装置の動作を概念的に示す平面図であり、(b),(d)は物品の搬送経路と搬送セルに設けられたモータ内蔵ローラの姿勢との関係を概念的に示す平面図である。
【図9】(a),(b)は、物品が幅寄せ搬送形態で搬送される際における搬送装置の動作を概念的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0095】
1 搬送装置
2 主搬送経路(搬送経路)
3 従搬送経路
11 筒体
20 モータ
50 搬送モジュール
60 搬送セル
65 駆動機構部
70 本体部(ローラ支持体)
75 旋回用モータ
78 搬送方向変更手段
80 モータ内蔵ローラ
95 制御手段(旋回阻止手段)
V 旋回軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送するための搬送セルを複数、二次元に配置することにより搬送面が形成された搬送モジュールであって、
前記搬送セルの一部又は全部が、ローラ支持体と、モータ内蔵ローラと、搬送方向変更手段とを有し、
前記モータ内蔵ローラが、支軸と、前記搬送面を形成する筒体と、当該筒体の内部に内蔵されたモータとを有し、前記支軸がローラ支持体に対して相対回転不能に支持され、前記筒体が前記モータの動力を受けることによって支軸に対して相対回転可能なように支持されたものであり、
前記搬送方向変更手段が、前記搬送面に対して垂直な旋回軸を中心としてモータ内蔵ローラを旋回させることにより、各搬送セルにおける物品の搬送方向を変更可能なものであることを特徴とする搬送モジュール。
【請求項2】
搬送方向変更手段が、モータ内蔵ローラを旋回軸を中心として旋回させるための旋回用モータを有するものであり、
当該旋回用モータの作動に伴って発信されるパルス信号に基づいて、旋回軸を中心とするモータ内蔵ローラの旋回量が調整されることを特徴とする請求項1に記載の搬送モジュール。
【請求項3】
各搬送セル毎に、旋回軸を中心としてモータ内蔵ローラを旋回させることができることを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送モジュール。
【請求項4】
旋回軸を中心としてモータ内蔵ローラが旋回するのを阻止可能な旋回阻止手段を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の搬送モジュール。
【請求項5】
搬送セルの一部又は全部に設けられたモータ内蔵ローラが旋回軸を中心として正、逆双方向に向けて旋回可能なものであり、
前記搬送セルに設けられた旋回阻止手段が、旋回軸を中心とする正方向および逆方向の双方へのモータ内蔵ローラの旋回を阻止可能なものであることを特徴とする請求項4に記載の搬送モジュール。
【請求項6】
一又は複数の搬送セルに設けられたモータ内蔵ローラが旋回軸を中心として正、逆双方向に向けて旋回可能なものであり、
前記搬送セルに設けられた旋回阻止手段は、モータ内蔵ローラが旋回軸を中心として所定方向に旋回することを条件として、当該旋回に伴う旋回量に相当する分だけ、前記旋回方向とは逆方向にモータ内蔵ローラを旋回させるものであることを特徴とする請求項4又は5に記載の搬送モジュール。
【請求項7】
旋回連動機構を備えており、
当該旋回連動機構が、各搬送セルが備える各モータ内蔵ローラの旋回軸を中心とする旋回を、複数の搬送セルについて連動させることが可能なものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の搬送モジュール。
【請求項8】
物品を所定方向に搬送する搬送経路を有し、当該搬送経路に請求項1〜7のいずれかに記載の搬送モジュールが設けられていることを特徴とする搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−174318(P2008−174318A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6909(P2007−6909)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(592026819)伊東電機株式会社 (71)
【Fターム(参考)】