搬送ローラー、搬送装置及び印刷装置
【課題】重量及びコストを減少させると共に搬送媒体を汚染することを防止できる搬送ローラー及び搬送装置、印刷装置を提供する。
【解決手段】プレス加工により一対の端面61a,61bを突き合わせて円筒状に形成されると共に長手方向の一部に媒体を支持する媒体支持領域50を有する搬送ローラー15と、搬送ローラー15のうち媒体支持領域50以外の領域を軸支する軸受と、を備え、搬送ローラー15は、一対の端面61a,61bを突き合わせた繋ぎ目80のうち媒体支持領域50以外の領域に開口70を有する。
【解決手段】プレス加工により一対の端面61a,61bを突き合わせて円筒状に形成されると共に長手方向の一部に媒体を支持する媒体支持領域50を有する搬送ローラー15と、搬送ローラー15のうち媒体支持領域50以外の領域を軸支する軸受と、を備え、搬送ローラー15は、一対の端面61a,61bを突き合わせた繋ぎ目80のうち媒体支持領域50以外の領域に開口70を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ローラー、搬送装置及び印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷装置として種々のプリンターが提供されている。このようなプリンターでは、印刷用紙等の記録媒体(搬送媒体)を各種ローラーにより搬送する。具体的には、搬送ローラー及び従動ローラーで印刷部に搬送し、ここで印刷した後、排紙ローラー及び従動ローラーで記録媒体を排出するように構成されている。
【0003】
特に、搬送ローラーは、従動ローラーとの間に印刷用紙を挟持し、その状態で回転駆動することにより、用紙をキャリッジの移動方向と直交する副走査方向に移動させるようになっている。したがって、印刷用紙を記録位置まで精度良く搬送し、さらに印刷速度に合わせて順次送り込むことから、高い搬送力が要求されている。
【0004】
そこで、搬送ローラーに高い摩擦力を保持させるため、特許文献1には金属製丸棒の周面に目打ち加工によって多数の突起を形成する技術が開示されている。
ところが、この技術では、軸状(円柱状)の表面に周方向に沿って突起を形成するため、作業性が悪いといった課題がある。また、中実の材料を用いるため、搬送ローラーを用いる例えばプリンターの総重量コストが増大するといった課題もある。
【0005】
このような背景のもとに特許文献2には、中実軸のコストダウンを目的として、金属板を曲げ加工して円筒状(中空状)の軸(円筒軸)に成形し、この円筒軸を中実の金属製丸棒材に替えて用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3271048号公報
【特許文献2】特開2006−289496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、金属板を曲げ加工して円筒軸に成形する場合、金属板の端面同士を突き合わせているため、円筒軸の表面に全長に亘って僅かな隙間若しくは溝(繋ぎ目)が形成される。
このため、特許文献2の円筒軸を例えばプリンターの搬送ローラー等に適用すると、搬送ローラーとこれを支持する軸受との間に供給された潤滑油(グリス等)が、毛細管現象により、繋ぎ目を伝わって流れるという現象が発生する。
そして、潤滑油が搬送ローラーの記録媒体(搬送媒体)と接触する領域にまで浸透して、記録媒体を汚してしまうという問題が発生する。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、重量及びコストを減少させると共に搬送媒体を汚染することを防止できる搬送ローラーと、この搬送ローラーを用いた搬送装置、印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る搬送ローラー、搬送装置、印刷装置では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
本発明に係る搬送装置は、プレス加工により一対の端面を突き合わせて円筒状に形成されると共に長手方向の一部に媒体を支持する媒体支持領域を有する搬送ローラーと、前記搬送ローラーのうち前記媒体支持領域以外の領域を軸支する軸受と、を備え、前記搬送ローラーは、前記一対の端面を突き合わせた繋ぎ目のうち前記媒体支持領域以外の領域に開口を有することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、搬送ローラーとしてプレス加工により円筒状に形成された円筒軸を用いた場合であっても、媒体支持領域に接触する媒体が軸受に供給された潤滑油により汚染されることを防止できる。つまり、搬送ローラー用軸受に供給された潤滑油が搬送ローラーの繋ぎ目を伝わって流れたとしても、開口が流れ止めとして機能するので、潤滑油が媒体支持領域まで浸透することが防止できる。
更に、媒体支持領域が潤滑油により汚染されることも防止できるので良好な搬送力を維持できる。
【0011】
また、前記開口は、前記媒体支持領域と前記軸受に支持される領域との間に配置されることを特徴とする。
これにより、軸受に供給された潤滑油が繋ぎ目を伝わって媒体支持領域に到達(浸透)することを確実に防止できる。
【0012】
また、前記開口は、前記媒体支持領域の両側にそれぞれ少なくとも一つ以上配置されることを特徴とする。
これにより、繋ぎ目を伝わって流れる潤滑油による媒体支持領域の汚染を完全に防止できる。
【0013】
また、前記開口における前記一対の端面間の距離は、前記軸受に供給される潤滑油の表面張力に応じて設定されることを特徴とする。
これにより、毛細管現象により繋ぎ目を伝わって流れる潤滑油を開口において止めることが可能となる。つまり、潤滑油の毛細管現象の強さは、潤滑油の表面張力に比例し、毛細管の径(すなわち繋ぎ目の端面間の距離)に反比例するので、潤滑油の表面張力に応じて毛細管現象が発生しないように開口における端面間の距離を設定すればよい。
【0014】
また、前記媒体支持領域は、前記搬送ローラーの両端部を除く中央部に設けられていることを特徴とする。
搬送ローラーの両端部は、通常は歯車などの駆動系の連結部品を取り付けるための領域となり、記録用紙等の媒体に直接接触するのは、搬送ローラーの中央部となる。したがって、媒体に直接接触する中央部が潤滑油により汚染されないようにすることで、媒体の汚染を確実に防止できる。
【0015】
また、前記媒体支持領域は、無機粒子を含有した高摩擦層であることを特徴とする。
媒体として記録用紙を搬送する搬送ローラーにおいては、高摩擦層が媒体に直接接触する領域となるので、この領域が潤滑油により汚染されないようにすることで、媒体の汚染を確実に防止できる。また、高摩擦層による摩擦力が維持できるので、良好な搬送力を維持できる。
【0016】
本発明に係る印刷装置は、記録媒体を搬送ローラーにより搬送する搬送部と、前記搬送部により搬送される前記記録媒体に対して印刷処理を行う印刷部と、を備える印刷装置において、本発明に係る搬送装置を用いたことを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、搬送部の搬送ローラーが記録媒体と接触する際に、搬送ローラー用軸受に供給された潤滑油により記録媒体(搬送媒体)が汚染されないので、良好な印刷処理を維持することができる。
【0018】
本発明に係る搬送ローラーは、プレス加工により一対の端面を突き合わせて円筒状に形成され、長手方向の一部に媒体を支持する媒体支持領域を有し、前記一対の端面を突き合わせた繋ぎ目のうち前記媒体支持領域以外の領域に開口を有することを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、搬送ローラーとしてプレス加工により円筒状に形成された円筒軸を用いた場合であっても、媒体支持領域に接触する媒体が搬送ローラーに付着した液体等により汚染されることを防止できる。つまり、搬送ローラーに付着した液体等が搬送ローラーの繋ぎ目を伝わって流れたとしても、開口が流れ止めとして機能するので、液体等が媒体支持領域まで浸透することが防止できる。
更に、媒体支持領域が液体等により汚染されることも防止できるので良好な搬送力を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るインクジェットプリンターの側断面図である。
【図2】(a)は搬送ユニットの平面図、(b)は駆動系の側面図である。
【図3】(a)は搬送ローラー機構の概略構成図、(b)は軸受けの概略構成を示す図である。
【図4】(a)は搬送ローラーを示す平面図、(b)繋ぎ目を示す断面図、(c)は開口を示す断面図である。
【図5】開口の変形例を示す図である。
【図6】(a)、(b)はローラー本体の基材としての金属板を示す平面図である。
【図7】(a)〜(c)は金属板のプレス加工を説明するための工程図である。
【図8】(a)〜(c)は金属板のプレス加工を説明するための工程図である。
【図9】(a)〜(c)はローラー本体への高摩擦層の形成工程を示す図である。
【図10】高摩擦層を形成するための塗装ブースの概略構成図である。
【図11】搬送ローラーの繋ぎ目及び開口の変形例を示す図である。
【図12】搬送ローラーの繋ぎ目及び開口の変形例を示す図である。
【図13】搬送ローラーの繋ぎ目及び開口の変形例を示す図である。
【図14】(a)〜(c)は搬送ローラーの繋ぎ目の変形例を示す図である。
【図15】(a),(b)は開口の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンターの側断面図である。
図2(a)はインクジェットプリンターの搬送ユニットを示す平面図、図2(b)は搬送ユニットの駆動系を示す側面図である。
【0022】
図1に示すように、インクジェットプリンター1は、プリンター本体3と、プリンター本体3の後側上部に設けられた給紙部5と、プリンター本体3の前側に形成された排紙部7と、を備えて構成される。
【0023】
給紙部5には給紙トレイ11が設けられており、給紙トレイ11には複数枚の用紙(媒体、記録媒体、搬送媒体)Pが積載されるようになっている。ここで、用紙Pとしては、普通紙、コート紙、OHP(オーバーヘッドプロジェクタ)用シート、光沢紙、光沢フィルム等が用いられる。
給紙トレイ11の下流側には給紙ローラー13が設けられている。給紙ローラー13は、対向する分離パッド(図示せず)との間で給紙トレイ11の最上部に位置する用紙Pを挟圧し、前方へ送り出すように構成されている。
【0024】
送り出された用紙Pは、下側に配置された搬送ローラー15と、上側に配置された従動ローラー17と、からなる搬送ローラー機構19に至る。
そして、搬送ローラー機構19に至った用紙Pは、搬送ローラー15の回転駆動によって印刷処理に伴う精密で正確な搬送(紙送り)動作を受けつつ、搬送ローラー機構19の下流側に位置する印字ヘッド(印刷部)21へ搬送されるようになっている。
【0025】
印字ヘッド21は、キャリッジ23に保持されており、キャリッジ23は、給紙方向(用紙Pの搬送方向)と直交する方向に往復移動するよう構成されている。
印字ヘッド21と対向する位置には、プラテン24が配設されており、プラテン24は、キャリッジ23の移動方向に沿って間隔をあけて配置された、複数のダイヤモンドリブ25によって構成されている。ダイヤモンドリブ25は、印字ヘッド21によって用紙Pに印刷を行う際に、用紙Pを下側から支持するものであり、詳しくは、ダイヤモンドリブ25の頂面が支持面として機能するようになっている。
なお、印字ヘッド21による印字処理(印刷処理)は、制御部CONTによって制御されるようになっている。
【0026】
印字ヘッド21とダイヤモンドリブ25との距離は、用紙Pの厚さに応じて調節可能になっており、これによって用紙Pは、ダイヤモンドリブ25の頂面上を滑らかに通過しつつ、高品質に印刷されるようになっている。印字ヘッド21で印刷された用紙Pは、排紙部7に設けられる排紙ローラー27によって順次排出されるようになっている。
【0027】
排紙ローラー機構29は、下側に配置された排紙ローラー27と上側に配置された排紙ギザローラー28とを備えて構成されたもので、排紙ローラー27の回転駆動によって用紙Pを引き出し、排出するようになっている。
【0028】
ここで、搬送ローラー機構19及び排紙ローラー機構29の駆動部30及び搬送ローラー15、排紙ローラー27の駆動速度の関係について説明する。
プリンター本体3には、図2(a)、(b)に示すように、制御部CONTの制御下で駆動される搬送モーター32が設けられている。この搬送モーター32の駆動軸にはピニオン33が設けられており、ピニオン33には搬送駆動ギア35が歯合しており、搬送駆動ギア35には搬送ローラー15が内挿されて連結されている。
このような構成のもとに搬送モーター32等は、搬送ローラー15を回転駆動する駆動部30となっている。
【0029】
また、搬送ローラー15には、搬送駆動ギア35と同軸にインナーギア39が設けられており、このインナーギア39には中間ギア41が歯合しており、中間ギア41には排紙駆動ギア43が歯合している。排紙駆動ギア43の回転軸は、図2(a)に示すように排紙ローラー27の軸体45となっている。
このような構成のもとに、搬送ローラー機構19の搬送ローラー15と排紙ローラー機構29の排紙ローラー27とは、同一の駆動源である搬送モーター32からの回転駆動力を受け、駆動されるようになっている。
【0030】
なお、排紙ローラー27の回転速度は、各ギアのギア比を調整することにより、搬送ローラー15の回転速度より速くなるように設定されている。したがって、排紙ローラー機構29の排紙速度は、搬送ローラー機構19の搬送速度より増速率だけ速くなっている。
また、搬送ローラー機構19による用紙Pの挟持力(押圧力)は、排紙ローラー機構29による挟持力(押圧力)よりも大きく設定されている。したがって、搬送ローラー機構19と排紙ローラー機構29とが共に用紙Pを挟持しているとき、その用紙搬送速度は、排紙ローラー機構29の排紙速度とは関係なく、搬送ローラー機構19の搬送速度で規定されるようになっている。
【0031】
次に、本発明に係る搬送ローラー15及びこれを備える搬送ローラー機構19について説明する。
図3(a)は搬送ローラー機構19の概略構成を示す図、(b)は軸受けの概略構成を示す図である。
搬送ローラー15は、亜鉛メッキ鋼板やステンレス板等の金属板がプレス加工されて円筒状に形成されたローラー本体16と、このローラー本体16の表面に設けられた高摩擦層50とを備えてなるものである。
【0032】
また、この搬送ローラー15は、その両端部がプラテン24に一体成形された軸受26に回転可能に保持されている。図3(b)に示すように、軸受26は、上方に開口するU字形に形成され、このU字形部位に搬送ローラー15を嵌め込むことで、搬送ローラー15を前後側及び下側の3方向から軸支する。そして、軸受26と搬送ローラー15との接触面(搬送ローラー15の表面)には、グリスL等の潤滑油(潤滑液)が供給(塗布)される。
なお、高摩擦層50を有する搬送ローラー15とこれを支持する軸受26とにより、搬送部(搬送装置)20が構成される。
【0033】
また、搬送ローラー15の一端又は両端には、インナーギア39や搬送駆動ギア35が回転不能に係合し連結するための係合部(図示せず)が形成されている。搬送ローラー15には、種々の連結部品に連結するため、種々の形態の係合部が形成可能になっている。
また、高摩擦層50は、本実施形態ではローラー本体16の両端部を除く中央部に選択的に形成されている。
【0034】
従動ローラー17は、複数(例えば6個)のローラー17aが同軸に配列されて構成されたもので、搬送ローラー15の高摩擦層50に対向して該高摩擦層50に当接する位置に配置されたものである。これらローラー17aからなる従動ローラー17には、付勢バネ(図示せず)が取り付けられており、これによって従動ローラー17は、搬送ローラー15側に付勢されている。
したがって、従動ローラー17は、搬送ローラー15の高摩擦層50に所定の押圧力(用紙Pに対する挟持力)で接し、搬送ローラー15の回転動作に従動して回転するようになっている。また、搬送ローラー15と従動ローラー17との間で用紙Pを挟持する力が大きくなり、用紙Pの搬送性がより良好になっている。
なお、この従動ローラー17の各ローラー17aの表面には、高摩擦層50との摺接による損傷を緩和するため、例えばフッ素樹脂塗装等の低摩耗処理が施されている。
【0035】
また、ローラー本体16は、金属板がプレス加工され、対向する一対の端面が互いに近接させられて円筒状に形成されたものである。したがって、このローラー本体16は、一対の端面が僅かながら離間しており、これによって該端面間には繋ぎ目が形成されている。
【0036】
図4(a)は搬送ローラーを示す平面図、(b)は繋ぎ目を示す断面図、(c)は開口を示す断面図である。
搬送ローラー15(ローラー本体16)は、金属板65をプレス加工して、一対の端面61a,61bを突き合わせて円筒状に形成される。このため、搬送ローラー15の長手(軸)方向の全長に亘って、端面61a,61bを突き合わせた繋ぎ目80が形成される。
図4(b)に示すように、繋ぎ目80は、一対の端面61a,61bの内周側が密着し、外周側が離間した溝状になっている。或いは、繋ぎ目80は、一対の端面61a,61b同士が当接することなく、端面61a,61bが僅かに離間して、隙間として形成される場合もある。
搬送ローラー15(ローラー本体16)をプレス加工により成形する場合、一対の端面61a,61b同士を隙間なく完全に密着させることは非常に困難である。このため、搬送ローラー15(ローラー本体16)の表面には、繋ぎ目80として、溝又は隙間が形成される。そして、この繋ぎ目80の大きさ、すなわち端面61a,61b間の最大距離d1は、例えば200μm以下に形成される。
【0037】
このように、搬送ローラー15(ローラー本体16)の表面には、繋ぎ目80として、溝或いは隙間が形成される。そして、繋ぎ目80は、搬送ローラー15の全長に亘って形成されるので、軸受26に供給したグリスLが搬送ローラー15の表面に付着すると、グリスLは繋ぎ目80を毛細管現象により伝わり流れるようになる。特に、搬送ローラー15の強度を向上させるため、繋ぎ目80(端面61a,61bの最大距離d1)を小さくする程、グリスLの毛細管現象が強くなって、グリスLが繋ぎ目80に沿って流れやすくなる。
【0038】
搬送ローラー15(ローラー本体16)に形成された繋ぎ目80の一部には、開口70が設けられている。図4(c)に示すように、開口70は、繋ぎ目80を形成する一対の端面61a、61bにそれぞれ設けられた切欠部76,77により形成される。端面61a、61bを突き合わせたときに、切欠部76,77の間の最大距離d2が例えば1mm程度以上となるように設定され、開口70として機能する。
開口70は、搬送ローラー15(ローラー本体16)の全長に亘って形成された繋ぎ目80のうち、高摩擦層50が形成された領域と軸受26に支持される領域を除く領域に設けられる。つまり、高摩擦層50は搬送ローラー15のほぼ中央部に形成され、搬送ローラー15の両端側が軸受26に支持されるので、搬送ローラー15には少なくとも2つの開口70が設けられる。
【0039】
開口70は、軸受26に供給(塗布)されたグリスL(潤滑油)が繋ぎ目80(端面61a、61bの隙間)に沿って高摩擦層50まで達することを防止する目的で設けられる。
上述したように、軸受26とローラー本体16の間にはグリスLを供給しなければならないので、グリスLの油分がローラー本体16表面の繋ぎ目80に沿って毛細管現象により流れること自体は回避できない。そこで、繋ぎ目80の一部に開口70を設けることで、グリスLの毛細管現象を止めている。具体的には、繋ぎ目80のうち、軸受26に支持される領域と高摩擦層50が形成された領域の間に開口70を設けることで、グリスLが高摩擦層50に達することを防止している。
【0040】
そして、開口70の大きさ(一対の切欠部76,77間の最大距離d2)を調整することで、グリスLの毛細管現象を確実に止めることができる。すなわち、グリスLの毛細管現象の強さは、グリスLの油分の表面張力に比例し、繋ぎ目80の大きさ(切欠部76,77間の最大距離d2)に反比例するので、グリスLの表面張力に応じて毛細管現象が発生しないように開口70の大きさを設定する。つまり、開口70の切欠部76,77間の最大距離d2を設定する。
具体的には、グリスLの油分の表面張力が水とほぼ同一であると仮定すると、開口70における切欠部76,77間の最大距離d2を、例えば1mm程度以上に設定することで、毛細管現象を止めることができる。これに対応して、開口70の軸方向の長さも、例えば1mm程度以上に設定する。
【0041】
なお、繋ぎ目80を形成する一対の端面61a、61bのそれぞれに、開口70を形成するための切欠部76,77を形成する場合に限らない。つまり、図5に示すように、繋ぎ目80を形成する一対の端面61a、61bの一方(例えば端面61a)にのみに切欠部78を形成して、切欠部78と端面61bとにより開口70が形成される場合であってもよい。また、開口70の形状としては、矩形に限らず、円形等であってよい。
【0042】
次に、搬送ローラー15の製造方法について説明する。
搬送ローラー15を製造するには、まず、図6(a)に示すように矩形板状または帯状の大型金属板65を用意する。この大型金属板65としては、例えば厚さ1mm程度の亜鉛メッキ鋼板が用いられる。続いて、この大型金属板65をプレス加工することにより、図6(b)に示すように、ローラー本体16に対応する大きさの細長い矩形板状の金属板60、すなわちローラー本体16の基材を形成する。
また、図6(b)に示すように、金属板60の一対の端面61a、61bには、それぞれ、後に開口70となる切欠部76,77が形成される。
なお、図6(c)に示すように、金属板60の一対の端面61aにのみに、後に開口70となる切欠部78を形成する場合であってもよい(図5参照)。
【0043】
次いで、金属板60を図7(a)〜(c)、図8(a)〜(c)のプレス加工工程図に示すように円筒状(パイプ状)にプレス加工し、その両側(長辺側)の端面61a、61bを近接させる。
すなわち、まず、図7(a)に示す雄型101と雌型102とで金属板60をプレス加工し、金属板60の両側部62a、62bを円弧状(望ましくは略1/4円弧)に曲げる。なお、図7(a)においては、各部材を分かりやすくするため、金属板60と雄型101と雌型102との間にそれぞれ間隔を開けてこれらの部材を記しているが、この間隔は実際には存在せず、金属板60と雄型101、雌型102とはそれぞれの接触部においてほぼ密着している。これは、後述する図7(b)、(c)、図8(a)〜(c)においても同様である。
【0044】
続いて、図7(a)で得られた金属板60の幅方向(曲げ方向)における中央部を、図7(b)に示す雄型103と雌型104とでプレス加工し、円弧状(望ましくは略1/4円弧)に曲げる。
次いで、図7(c)に示すように、図7(b)で得られた金属板60の内部に芯型105を配置し、図7(c)に示す上型106と下型107とを用いて、図8(a)〜(c)に示すようにして金属板60の両側部62a、62bの各端面61a、61bを近接させる。
【0045】
ここで、図7(c)および図8(a)〜(c)に示す芯型105の外径は、形成する円筒状の中空パイプの内径と等しくしてある。また、上型106のプレス面106cの半径と下型107のプレス面107aの半径は、それぞれ、形成する中空パイプの外径の半径と等しくしてある。また、図8(a)〜(c)に示すように上型106は左右一対の割型であり、これら割型106a、106bは、それぞれ独立して昇降可能に構成されている。
【0046】
すなわち、図7(c)に示す状態から、図8(a)に示すように右側の割型106aを下型107に対して相対的に下降させ(以下、同様に型の移動は相対的移動を意味する)、金属板60の一方の側をプレス加工し、略半円形状に曲げる。なお、下型107も上型106と同様左右一対の割型とし(割面107b参照)、この図8(a)に示す工程の際に、同じ側の下型を上昇させてもよい。
次いで、図8(b)に示すように、芯型105を少し(一方の側の端面61aと他方の側の端面61bとを近接させることができる程度に)下降させるとともに、他方の側の割型106bを下降させ、金属板60の他方の側をプレス加工し、略半円形状に曲げる。
【0047】
その後、図8(c)に示すように、芯型105および一対の割型106a、106bをともに下降させ、円筒状の中空パイプ(ローラー本体16)を形成する。この状態で左右両側の端面61a、61bは、僅かな隙間を介して十分に近接した状態となる。すなわち、この円筒状の中空パイプにあっては、基材である金属板60の両端面61a、61bが互いに近接してなることでこれら両端面61a、61b間に繋ぎ目が形成され、したがってこの繋ぎ目は、両端面61a、61bが離間していることによって隙間を有したものとなっている。
【0048】
次いで、本実施形態では、形成した中空パイプ(ローラー本体16)の真円度を高め、振れを少なくするべく、従来公知のセンターレス研磨加工を行い、中空パイプ(ローラー本体16)の外周面を研磨する。
すると、この中空パイプは、センターレス研磨加工前に比べその真円度がより良好になり、また、振れ量も小さいローラー本体16となる。また、このローラー本体16にあっては、両端面61a、61b間がより狭まることで、図4(a)に示すように、これら両端面61a、61b間の隙間がより狭くされた繋ぎ目80が形成される。
【0049】
なお、プレス加工やセンターレス研磨加工では、金属板60の両端面61a、61b間の隙間が無くなるように、すなわち、両端面61a、61bが互いに当接するようにするのが好ましい。しかしながら、得られる中空パイプ(ローラー本体16)の真円度や振れ量を良好にしつつ、この隙間を完全に無くすのは非常に困難であり、したがって、現状ではある程度の隙間が形成されるようになる。
【0050】
このようにしてローラー本体16を形成したら、図3に示したように、このローラー本体16の表面に高摩擦層50を形成する。
この高摩擦層50の形成方法としては、乾式法及び湿式法(またはこれらを併用した方法)が採用可能であるが、本実施形態では乾式法が好適に採用される。
具体的には、まず、高摩擦層50の形成材料として、樹脂粒子と無機粒子とを用意する。樹脂粒子としては、エポキシ系樹脂やポリエステル系樹脂等からなる、直径10〜20μm程度の微粒子が好適に用いられる。
【0051】
また、無機粒子としては、酸化アルミニウム(アルミナ;Al2O3)や炭化珪素(SiC)、二酸化珪素(SiO2)等のセラミックス粒子が好適に用いられる。中でもアルミナは、比較的硬度が高く摩擦抵抗を高める機能が良好に発揮され、また、比較的安価であってコストダウンを妨げることもないため、より好適に用いられる。したがって、本実施形態では無機粒子としてアルミナ粒子52を用いるものとする。このアルミナ粒子52としては、破砕処理によって所定の粒径分布に調整されたものが用いられる。破砕処理によって製造されることにより、このアルミナ粒子52は端部が比較的鋭く尖ったものとなり、この鋭く尖った端部によって高い摩擦力を発揮するようになる。
【0052】
そして、ローラー本体16に樹脂粒子を塗布する。すなわち、ローラー本体16を塗装ブース(図示せず)内に配置し、さらにこのローラー本体16を単体の状態で例えば−(マイナス)電位にしておく。
そして、樹脂粒子を、静電塗装装置(図示せず)のトリボガンを用いてローラー本体16に向けて噴霧(噴出)し吹き付けつつ、この噴霧粒子(樹脂粒子)を+(プラス)高電位に帯電させる。すると、この帯電された樹脂粒子はローラー本体16の外周面に吸着され、樹脂膜を形成する。
【0053】
ここで、樹脂粒子の吹付による樹脂膜の形成は、図3に示した高摩擦層50の形成領域に対応させて、ローラー本体16の全長に亘って行うことなく、例えばその両端部をテープ等でマスキングしておくことにより、図9(a)に示すようにこの両端部を除いた中央部のみに行う。すなわち、ローラー本体16の中央部にのみ、選択的に樹脂膜51を形成する。この樹脂膜51には、吹付塗装後に+0.5KV程度の微弱な静電気が残存する。
なお、この吹付塗装に際しては、ローラー本体16を軸廻りに回転させることにより、その全周に亘って樹脂膜51をほぼ均一な厚さに形成する。
この樹脂膜51の膜厚については、アルミナ粒子52の粉径を勘案して、例えば10μm〜30μm程度に形成する。このような膜厚については、樹脂粒子の噴出量及び噴出時間等によって適宜に調整することができる。
【0054】
次いで、この樹脂膜51を形成したローラー本体16を塗装ブースから取り出し、ハンドリングロボット(図示せず)によって、図10に示す別の塗装ブース90に移す。この塗装ブース90には、その下部に一対の回転駆動部材91、91が設けられており、これら回転駆動部材91、91には、ローラー本体16を略水平に支持するためのチャック92が設けられている。そして、ローラー本体16の両端部をチャック92、92に保持させて固定し、さらに回転駆動部材91によってチャック92、92を回転させる。これにより、ローラー本体16をその軸廻りに、例えば100rpm〜500rpm程度の低速でゆっくり回転駆動させる。なお、ローラー本体16については、若干斜めに支持してもよいのはもちろんである。
【0055】
また、塗装ブース90には、その上部にコロナガン93が配置されており、このコロナガン93は、シャフト94上を図10中左右方向に移動するようになっている。また、塗装ブース90の底部には排気機構95が設けられており、これによって塗装ブース90内には下方に向かうゆっくりとした気流が形成されるようになっている。なお、この排気機構95の吸引風量は適宜に設定されるようになっている。
【0056】
このような構成のもとに、ローラー本体16をその軸廻りに回転させつつ、コロナガン93からアルミナ粒子52を噴霧し吹き付けることにより、ローラー本体16に形成した樹脂膜51上に、アルミナ粒子52を選択的に静電吸着させる。アルミナ粒子52を樹脂膜51上に選択的に静電吸着させるには、樹脂膜51の形成と同様に、ローラー本体16の両端部をテープ等でマスキングしておくことで行う。
【0057】
この静電塗装時には、チャック92及び回転駆動部材91の表面電位が、ローラー本体16の電位とほぼ等しくなり、しかも塗装ブース90の内面電位が、電気的に中立で略零電位となるように設定する。コロナガン93からのアルミナ粒子52が、ローラー本体16以外の部位に吸着されないようにするためである。この塗装ブース90の内表面電位を電気的に中立に保持するためには、塗装ブース90を、内表面電気抵抗が例えば1011Ω程度の鋼板を用いて製造するのが望ましい。
【0058】
そして、コロナガン93にかける電位を零Vとし、さらにこのコロナガン93に供給するエアーの圧力を0.2Mpa程度に低く設定して、このコロナガン93を図10中の左右方向に移動させつつ、上方より略零電位のアルミナ粒子52を吹き出させ、アルミナ粒子52を自重で鉛直方向に自然落下させる。すると、上述したように、ローラー本体16の樹脂膜51には、静電塗装によって形成されたことで微弱な静電気(約+0.5KV)が残存しているため、この静電気によってアルミナ粒子52が樹脂膜51の全周にほぼ均一に静電吸着する。このようにして静電吸着したアルミナ粒子52は、樹脂膜51表面に当接しさらに一部入り込んだ状態で、この樹脂膜51をバインダとしてローラー本体16の外周面に付着する。
【0059】
ここで、本実施形態では塗装ブース90の内面電位が電気的に中立で略零電位となっており、しかも塗装ブース90内の気流が下向きにゆっくりとした流れに形成されているので、アルミナ粒子52はその自重によって鉛直方向下方に自然落下する。落下方向の下方には、水平支持されたローラー本体16がその軸廻りにゆっくり回転しているので、このローラー本体16の外周面には、アルミナ粒子52がほぼ均一に散布される。
【0060】
したがって、特にマスキングされていない樹脂膜51の表面にアルミナ粒子52が均一に付着し、これによってローラー本体16には、図9(b)に示すようにその中央部の樹脂膜51中に、アルミナ粒子52が分散し露出する。すなわち、アルミナ粒子52は、静電吸着力によって樹脂膜51に当接した際、この樹脂膜51中に一部が入り込み、残部が樹脂膜51の表面から突き出た状態になる。その際、アルミナ粒子52はローラー本体16の表面に対して垂直に立った状態になり易いため、アルミナ粒子52は均一に分布され、その殆どが鋭く尖った端部(頂部)を外側に向けて付着する。
【0061】
したがって、アルミナ粒子52は樹脂膜51の表面から突き出た端部により、高い摩擦力を発揮するようになる。なお、アルミナ粒子52が用紙Pに対して必要かつ十分な摩擦力を発揮するには、樹脂膜51の面積に対して、アルミナ粒子52の占める面積が20%〜80%となるようにするのが好ましい。
なお、このアルミナ粒子52の塗布(散布)については、アルミナ粒子52が鉛直方向下方にゆっくりと散布されるのであれば、静電塗装法による塗布に限定されるものではなく、例えばスプレーガンを用いた塗布(散布)法であってもよい。
【0062】
このようにしてアルミナ粒子52を樹脂膜51上に散布し付着させたら、このローラー本体16を180℃〜300℃程度の温度で20分〜30分間程度加熱し、樹脂膜51を焼成し硬化させることによってアルミナ粒子52をローラー本体16に固着する。これにより、図9(c)に示すように樹脂膜51中にアルミナ粒子52が分散し露出してなる高摩擦層50が形成され、搬送ローラー15が得られる。
【0063】
なお、上述した実施形態では、樹脂粒子の塗布(吹付)とアルミナ粒子52(無機粒子)の塗布(吹付)とを別々の塗装ブースで実施したが、同一の塗装ブース内で行ってもよいのはもちろんである。
【0064】
次に、インクジェットプリンター1の動作について、図1、図2を参照して説明する。
給紙ローラー13によって給紙された用紙Pは、搬送ローラー機構19の上流側近傍に至ると、搬送ローラー15と従動ローラー17との間に引き込まれ、両ローラーの駆動によって下流側に位置する印字ヘッド21の下方に向けて定速で搬送される。
【0065】
その際、搬送ローラー15には高摩擦層50が形成されており、従動ローラー17がこの高摩擦層50に当接する位置に配置されているので、これら搬送ローラー15と従動ローラー17との間で用紙Pを挟持する力が大きくなり、用紙Pの搬送性がより良好になっている。
【0066】
更に、搬送ローラー15は、軸受26に供給したグリスLが高摩擦層50に付着することが防止されているので、用紙PがグリスLにより汚染されず、また、正確で安定した紙送り(搬送)が行われる。
【0067】
そして、用紙Pの印刷開始端が、印字ヘッド(印刷部)21の直下の所定の印刷位置に到達すると、印刷が開始される。その後、用紙Pの始端が排紙ローラー機構29に至ると、排紙動作が開始される。
なお、排紙ローラー機構29の搬送速度は搬送ローラー機構19の搬送速度より速く設定されているため、用紙Pにはバックテンションが掛かった状態で搬送される。ただし、搬送ローラー機構19と排紙ローラー機構29とが共に用紙Pを挟持しているときには、上述したようにその用紙搬送速度は搬送ローラー機構19の搬送速度で規定されている。
したがって、このように排紙ローラー機構29と搬送ローラー機構19とによって排紙と搬送とを同時に行う際にも、その用紙搬送速度は搬送ローラー機構19の搬送速度で規定されているため、搬送ムラのない正確で安定した紙送り(搬送)がなされるようになる。
【0068】
以上説明したように、本実施形態に係る搬送ローラー15によれば、プレス加工により円筒状に形成された円筒軸を用いた場合であっても、高摩擦層(媒体支持領域)50に接触する用紙(媒体)Pが搬送ローラー15に付着したグリスL等(液体等)により汚染されることを防止できる。つまり、繋ぎ目80に形成した開口70が、繋ぎ目80を伝わって流れるグリスLの流れ止めとして機能するので、グリスLが高摩擦層50まで浸透することが防止できる。更に、高摩擦層50がグリスL等により汚染されることも防止できるので良好な搬送力を維持できる。
【0069】
また、本実施形態の搬送部(搬送装置)20によれば、上述術した搬送ローラー(搬送ローラー)15を備えているので、コストダウン及び軽量化が可能であり、更に用紙Pを汚染することなく、良好な搬送を実現することができる。
【0070】
また、本実施形態のインクジェットプリンター(印刷装置)1によれば、上述した搬送部20を備えているので、コストダウン及び軽量化が可能であり、さらに高品質な印刷を行うことができる。
【0071】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0072】
例えば、搬送ローラー15(ローラー本体16)の繋ぎ目については、上述した実施形態に限定されることなく、以下に示すように、種々の形状を採用することができる。
【0073】
図11から図15は、繋ぎ目及び開口の変形例を示す図である。
図11に示すように、繋ぎ目81を螺旋状に形成してもよい。また、図12に示すように、繋ぎ目82を波線状に形成してもよい。そして、繋ぎ目81,82の一部には、開口71,72が設けられる。
【0074】
また、図13に示すように、繋ぎ目84をジグザグ(直線が左右に何回も折れ曲がっている形)状に形成してもよい。繋ぎ目84に対しては、繋ぎ目84の折れ曲がり部分に開口74を設けことができる。
【0075】
また、図14(a)に示すように、ローラー本体16の中心軸16aと平行な直線部85aとこれに交差する直線部85bとからなる、矩形波状の繋ぎ目85を形成してもよい。
この繋ぎ目85については、図14(b)に示すようにローラー本体16の全長に亘って形成されていてもよく、図14(c)に示すようにその中央部を除く両端部に選択的に形成されていてもよい。
図14(c)に示したように繋ぎ目85を両端部にのみ形成する場合には、これら繋ぎ目85間は、例えばローラー本体16の中心軸と平行な直線部86とすることができる。
また、このように繋ぎ目85を両端部にのみ形成し、その間の中央部については直線部86とした場合、高摩擦層50の形成領域を直線部86に対応させて形成するのが好ましい。
【0076】
そして、繋ぎ目85に対しては、図15(a)に示すように、中心軸16aに平行な直線部85aに開口75を形成する場合であってもよいし、図15(b)に示すように、中心軸16aに交差する直線部85bに開口76を形成する場合であってよい。
【0077】
また、開口70の形状、数、配置、分布等については、適宜変更することができる。
例えば、繋ぎ目に沿って複数の開口が連なるように配置することで、グリスL等の液体の流れを確実に止めることができる。大きな開口を一つ設ける場合よりも、小さな開口を複数連続して設ける方が、搬送ローラーの剛性低下を抑えることができる。
また、開口は、搬送ローラーに付着する液体の付着箇所よりも媒体支持領域に近い領域に形成することが好ましい。媒体支持領域に近接する部位に開口を設けることで、媒体支持領域がグリスL等に汚染されることを確実に防止できる。
【0078】
また、上述した実施形態では、本発明に係る搬送ローラーを、搬送ローラー機構19における搬送ローラー15に適用したが、これに限らない。排紙ローラー機構29における排紙ローラー27や排紙ギザローラー28に適用することもできる。また、搬送ローラー機構19における従動ローラー17にも適用することができる。
更に、用紙以外の媒体を搬送する搬送ローラーに対しても適用することができる。
また、印刷装置以外に用いられる搬送ローラー、搬送装置に適用することもできる。
【0079】
また、搬送ローラーに付着して繋ぎ目を毛細管現象により伝わり流れる液体としては、軸受に供給されるグリスLに限らない。搬送ローラーに取り付けられる搬送駆動ギア等に供給されたグリスL等であってもよい。更には、メンテナンス中に搬送ローラーに付着するインク等の液体の場合であってもよい。
【符号の説明】
【0080】
1…インクジェットプリンター(印刷装置)、 15…搬送ローラー、 16…ローラー本体、 20…搬送部、 21…印字ヘッド(印刷部)、 26…軸受、 50…高摩擦層(媒体支持領域)、 61a, 61b…端面、 70〜76…開口、 80〜85…繋ぎ目、 P…用紙(媒体)、 L…グリスL(潤滑油)、 d1,d2…距離
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ローラー、搬送装置及び印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷装置として種々のプリンターが提供されている。このようなプリンターでは、印刷用紙等の記録媒体(搬送媒体)を各種ローラーにより搬送する。具体的には、搬送ローラー及び従動ローラーで印刷部に搬送し、ここで印刷した後、排紙ローラー及び従動ローラーで記録媒体を排出するように構成されている。
【0003】
特に、搬送ローラーは、従動ローラーとの間に印刷用紙を挟持し、その状態で回転駆動することにより、用紙をキャリッジの移動方向と直交する副走査方向に移動させるようになっている。したがって、印刷用紙を記録位置まで精度良く搬送し、さらに印刷速度に合わせて順次送り込むことから、高い搬送力が要求されている。
【0004】
そこで、搬送ローラーに高い摩擦力を保持させるため、特許文献1には金属製丸棒の周面に目打ち加工によって多数の突起を形成する技術が開示されている。
ところが、この技術では、軸状(円柱状)の表面に周方向に沿って突起を形成するため、作業性が悪いといった課題がある。また、中実の材料を用いるため、搬送ローラーを用いる例えばプリンターの総重量コストが増大するといった課題もある。
【0005】
このような背景のもとに特許文献2には、中実軸のコストダウンを目的として、金属板を曲げ加工して円筒状(中空状)の軸(円筒軸)に成形し、この円筒軸を中実の金属製丸棒材に替えて用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3271048号公報
【特許文献2】特開2006−289496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、金属板を曲げ加工して円筒軸に成形する場合、金属板の端面同士を突き合わせているため、円筒軸の表面に全長に亘って僅かな隙間若しくは溝(繋ぎ目)が形成される。
このため、特許文献2の円筒軸を例えばプリンターの搬送ローラー等に適用すると、搬送ローラーとこれを支持する軸受との間に供給された潤滑油(グリス等)が、毛細管現象により、繋ぎ目を伝わって流れるという現象が発生する。
そして、潤滑油が搬送ローラーの記録媒体(搬送媒体)と接触する領域にまで浸透して、記録媒体を汚してしまうという問題が発生する。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、重量及びコストを減少させると共に搬送媒体を汚染することを防止できる搬送ローラーと、この搬送ローラーを用いた搬送装置、印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る搬送ローラー、搬送装置、印刷装置では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
本発明に係る搬送装置は、プレス加工により一対の端面を突き合わせて円筒状に形成されると共に長手方向の一部に媒体を支持する媒体支持領域を有する搬送ローラーと、前記搬送ローラーのうち前記媒体支持領域以外の領域を軸支する軸受と、を備え、前記搬送ローラーは、前記一対の端面を突き合わせた繋ぎ目のうち前記媒体支持領域以外の領域に開口を有することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、搬送ローラーとしてプレス加工により円筒状に形成された円筒軸を用いた場合であっても、媒体支持領域に接触する媒体が軸受に供給された潤滑油により汚染されることを防止できる。つまり、搬送ローラー用軸受に供給された潤滑油が搬送ローラーの繋ぎ目を伝わって流れたとしても、開口が流れ止めとして機能するので、潤滑油が媒体支持領域まで浸透することが防止できる。
更に、媒体支持領域が潤滑油により汚染されることも防止できるので良好な搬送力を維持できる。
【0011】
また、前記開口は、前記媒体支持領域と前記軸受に支持される領域との間に配置されることを特徴とする。
これにより、軸受に供給された潤滑油が繋ぎ目を伝わって媒体支持領域に到達(浸透)することを確実に防止できる。
【0012】
また、前記開口は、前記媒体支持領域の両側にそれぞれ少なくとも一つ以上配置されることを特徴とする。
これにより、繋ぎ目を伝わって流れる潤滑油による媒体支持領域の汚染を完全に防止できる。
【0013】
また、前記開口における前記一対の端面間の距離は、前記軸受に供給される潤滑油の表面張力に応じて設定されることを特徴とする。
これにより、毛細管現象により繋ぎ目を伝わって流れる潤滑油を開口において止めることが可能となる。つまり、潤滑油の毛細管現象の強さは、潤滑油の表面張力に比例し、毛細管の径(すなわち繋ぎ目の端面間の距離)に反比例するので、潤滑油の表面張力に応じて毛細管現象が発生しないように開口における端面間の距離を設定すればよい。
【0014】
また、前記媒体支持領域は、前記搬送ローラーの両端部を除く中央部に設けられていることを特徴とする。
搬送ローラーの両端部は、通常は歯車などの駆動系の連結部品を取り付けるための領域となり、記録用紙等の媒体に直接接触するのは、搬送ローラーの中央部となる。したがって、媒体に直接接触する中央部が潤滑油により汚染されないようにすることで、媒体の汚染を確実に防止できる。
【0015】
また、前記媒体支持領域は、無機粒子を含有した高摩擦層であることを特徴とする。
媒体として記録用紙を搬送する搬送ローラーにおいては、高摩擦層が媒体に直接接触する領域となるので、この領域が潤滑油により汚染されないようにすることで、媒体の汚染を確実に防止できる。また、高摩擦層による摩擦力が維持できるので、良好な搬送力を維持できる。
【0016】
本発明に係る印刷装置は、記録媒体を搬送ローラーにより搬送する搬送部と、前記搬送部により搬送される前記記録媒体に対して印刷処理を行う印刷部と、を備える印刷装置において、本発明に係る搬送装置を用いたことを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、搬送部の搬送ローラーが記録媒体と接触する際に、搬送ローラー用軸受に供給された潤滑油により記録媒体(搬送媒体)が汚染されないので、良好な印刷処理を維持することができる。
【0018】
本発明に係る搬送ローラーは、プレス加工により一対の端面を突き合わせて円筒状に形成され、長手方向の一部に媒体を支持する媒体支持領域を有し、前記一対の端面を突き合わせた繋ぎ目のうち前記媒体支持領域以外の領域に開口を有することを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、搬送ローラーとしてプレス加工により円筒状に形成された円筒軸を用いた場合であっても、媒体支持領域に接触する媒体が搬送ローラーに付着した液体等により汚染されることを防止できる。つまり、搬送ローラーに付着した液体等が搬送ローラーの繋ぎ目を伝わって流れたとしても、開口が流れ止めとして機能するので、液体等が媒体支持領域まで浸透することが防止できる。
更に、媒体支持領域が液体等により汚染されることも防止できるので良好な搬送力を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るインクジェットプリンターの側断面図である。
【図2】(a)は搬送ユニットの平面図、(b)は駆動系の側面図である。
【図3】(a)は搬送ローラー機構の概略構成図、(b)は軸受けの概略構成を示す図である。
【図4】(a)は搬送ローラーを示す平面図、(b)繋ぎ目を示す断面図、(c)は開口を示す断面図である。
【図5】開口の変形例を示す図である。
【図6】(a)、(b)はローラー本体の基材としての金属板を示す平面図である。
【図7】(a)〜(c)は金属板のプレス加工を説明するための工程図である。
【図8】(a)〜(c)は金属板のプレス加工を説明するための工程図である。
【図9】(a)〜(c)はローラー本体への高摩擦層の形成工程を示す図である。
【図10】高摩擦層を形成するための塗装ブースの概略構成図である。
【図11】搬送ローラーの繋ぎ目及び開口の変形例を示す図である。
【図12】搬送ローラーの繋ぎ目及び開口の変形例を示す図である。
【図13】搬送ローラーの繋ぎ目及び開口の変形例を示す図である。
【図14】(a)〜(c)は搬送ローラーの繋ぎ目の変形例を示す図である。
【図15】(a),(b)は開口の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンターの側断面図である。
図2(a)はインクジェットプリンターの搬送ユニットを示す平面図、図2(b)は搬送ユニットの駆動系を示す側面図である。
【0022】
図1に示すように、インクジェットプリンター1は、プリンター本体3と、プリンター本体3の後側上部に設けられた給紙部5と、プリンター本体3の前側に形成された排紙部7と、を備えて構成される。
【0023】
給紙部5には給紙トレイ11が設けられており、給紙トレイ11には複数枚の用紙(媒体、記録媒体、搬送媒体)Pが積載されるようになっている。ここで、用紙Pとしては、普通紙、コート紙、OHP(オーバーヘッドプロジェクタ)用シート、光沢紙、光沢フィルム等が用いられる。
給紙トレイ11の下流側には給紙ローラー13が設けられている。給紙ローラー13は、対向する分離パッド(図示せず)との間で給紙トレイ11の最上部に位置する用紙Pを挟圧し、前方へ送り出すように構成されている。
【0024】
送り出された用紙Pは、下側に配置された搬送ローラー15と、上側に配置された従動ローラー17と、からなる搬送ローラー機構19に至る。
そして、搬送ローラー機構19に至った用紙Pは、搬送ローラー15の回転駆動によって印刷処理に伴う精密で正確な搬送(紙送り)動作を受けつつ、搬送ローラー機構19の下流側に位置する印字ヘッド(印刷部)21へ搬送されるようになっている。
【0025】
印字ヘッド21は、キャリッジ23に保持されており、キャリッジ23は、給紙方向(用紙Pの搬送方向)と直交する方向に往復移動するよう構成されている。
印字ヘッド21と対向する位置には、プラテン24が配設されており、プラテン24は、キャリッジ23の移動方向に沿って間隔をあけて配置された、複数のダイヤモンドリブ25によって構成されている。ダイヤモンドリブ25は、印字ヘッド21によって用紙Pに印刷を行う際に、用紙Pを下側から支持するものであり、詳しくは、ダイヤモンドリブ25の頂面が支持面として機能するようになっている。
なお、印字ヘッド21による印字処理(印刷処理)は、制御部CONTによって制御されるようになっている。
【0026】
印字ヘッド21とダイヤモンドリブ25との距離は、用紙Pの厚さに応じて調節可能になっており、これによって用紙Pは、ダイヤモンドリブ25の頂面上を滑らかに通過しつつ、高品質に印刷されるようになっている。印字ヘッド21で印刷された用紙Pは、排紙部7に設けられる排紙ローラー27によって順次排出されるようになっている。
【0027】
排紙ローラー機構29は、下側に配置された排紙ローラー27と上側に配置された排紙ギザローラー28とを備えて構成されたもので、排紙ローラー27の回転駆動によって用紙Pを引き出し、排出するようになっている。
【0028】
ここで、搬送ローラー機構19及び排紙ローラー機構29の駆動部30及び搬送ローラー15、排紙ローラー27の駆動速度の関係について説明する。
プリンター本体3には、図2(a)、(b)に示すように、制御部CONTの制御下で駆動される搬送モーター32が設けられている。この搬送モーター32の駆動軸にはピニオン33が設けられており、ピニオン33には搬送駆動ギア35が歯合しており、搬送駆動ギア35には搬送ローラー15が内挿されて連結されている。
このような構成のもとに搬送モーター32等は、搬送ローラー15を回転駆動する駆動部30となっている。
【0029】
また、搬送ローラー15には、搬送駆動ギア35と同軸にインナーギア39が設けられており、このインナーギア39には中間ギア41が歯合しており、中間ギア41には排紙駆動ギア43が歯合している。排紙駆動ギア43の回転軸は、図2(a)に示すように排紙ローラー27の軸体45となっている。
このような構成のもとに、搬送ローラー機構19の搬送ローラー15と排紙ローラー機構29の排紙ローラー27とは、同一の駆動源である搬送モーター32からの回転駆動力を受け、駆動されるようになっている。
【0030】
なお、排紙ローラー27の回転速度は、各ギアのギア比を調整することにより、搬送ローラー15の回転速度より速くなるように設定されている。したがって、排紙ローラー機構29の排紙速度は、搬送ローラー機構19の搬送速度より増速率だけ速くなっている。
また、搬送ローラー機構19による用紙Pの挟持力(押圧力)は、排紙ローラー機構29による挟持力(押圧力)よりも大きく設定されている。したがって、搬送ローラー機構19と排紙ローラー機構29とが共に用紙Pを挟持しているとき、その用紙搬送速度は、排紙ローラー機構29の排紙速度とは関係なく、搬送ローラー機構19の搬送速度で規定されるようになっている。
【0031】
次に、本発明に係る搬送ローラー15及びこれを備える搬送ローラー機構19について説明する。
図3(a)は搬送ローラー機構19の概略構成を示す図、(b)は軸受けの概略構成を示す図である。
搬送ローラー15は、亜鉛メッキ鋼板やステンレス板等の金属板がプレス加工されて円筒状に形成されたローラー本体16と、このローラー本体16の表面に設けられた高摩擦層50とを備えてなるものである。
【0032】
また、この搬送ローラー15は、その両端部がプラテン24に一体成形された軸受26に回転可能に保持されている。図3(b)に示すように、軸受26は、上方に開口するU字形に形成され、このU字形部位に搬送ローラー15を嵌め込むことで、搬送ローラー15を前後側及び下側の3方向から軸支する。そして、軸受26と搬送ローラー15との接触面(搬送ローラー15の表面)には、グリスL等の潤滑油(潤滑液)が供給(塗布)される。
なお、高摩擦層50を有する搬送ローラー15とこれを支持する軸受26とにより、搬送部(搬送装置)20が構成される。
【0033】
また、搬送ローラー15の一端又は両端には、インナーギア39や搬送駆動ギア35が回転不能に係合し連結するための係合部(図示せず)が形成されている。搬送ローラー15には、種々の連結部品に連結するため、種々の形態の係合部が形成可能になっている。
また、高摩擦層50は、本実施形態ではローラー本体16の両端部を除く中央部に選択的に形成されている。
【0034】
従動ローラー17は、複数(例えば6個)のローラー17aが同軸に配列されて構成されたもので、搬送ローラー15の高摩擦層50に対向して該高摩擦層50に当接する位置に配置されたものである。これらローラー17aからなる従動ローラー17には、付勢バネ(図示せず)が取り付けられており、これによって従動ローラー17は、搬送ローラー15側に付勢されている。
したがって、従動ローラー17は、搬送ローラー15の高摩擦層50に所定の押圧力(用紙Pに対する挟持力)で接し、搬送ローラー15の回転動作に従動して回転するようになっている。また、搬送ローラー15と従動ローラー17との間で用紙Pを挟持する力が大きくなり、用紙Pの搬送性がより良好になっている。
なお、この従動ローラー17の各ローラー17aの表面には、高摩擦層50との摺接による損傷を緩和するため、例えばフッ素樹脂塗装等の低摩耗処理が施されている。
【0035】
また、ローラー本体16は、金属板がプレス加工され、対向する一対の端面が互いに近接させられて円筒状に形成されたものである。したがって、このローラー本体16は、一対の端面が僅かながら離間しており、これによって該端面間には繋ぎ目が形成されている。
【0036】
図4(a)は搬送ローラーを示す平面図、(b)は繋ぎ目を示す断面図、(c)は開口を示す断面図である。
搬送ローラー15(ローラー本体16)は、金属板65をプレス加工して、一対の端面61a,61bを突き合わせて円筒状に形成される。このため、搬送ローラー15の長手(軸)方向の全長に亘って、端面61a,61bを突き合わせた繋ぎ目80が形成される。
図4(b)に示すように、繋ぎ目80は、一対の端面61a,61bの内周側が密着し、外周側が離間した溝状になっている。或いは、繋ぎ目80は、一対の端面61a,61b同士が当接することなく、端面61a,61bが僅かに離間して、隙間として形成される場合もある。
搬送ローラー15(ローラー本体16)をプレス加工により成形する場合、一対の端面61a,61b同士を隙間なく完全に密着させることは非常に困難である。このため、搬送ローラー15(ローラー本体16)の表面には、繋ぎ目80として、溝又は隙間が形成される。そして、この繋ぎ目80の大きさ、すなわち端面61a,61b間の最大距離d1は、例えば200μm以下に形成される。
【0037】
このように、搬送ローラー15(ローラー本体16)の表面には、繋ぎ目80として、溝或いは隙間が形成される。そして、繋ぎ目80は、搬送ローラー15の全長に亘って形成されるので、軸受26に供給したグリスLが搬送ローラー15の表面に付着すると、グリスLは繋ぎ目80を毛細管現象により伝わり流れるようになる。特に、搬送ローラー15の強度を向上させるため、繋ぎ目80(端面61a,61bの最大距離d1)を小さくする程、グリスLの毛細管現象が強くなって、グリスLが繋ぎ目80に沿って流れやすくなる。
【0038】
搬送ローラー15(ローラー本体16)に形成された繋ぎ目80の一部には、開口70が設けられている。図4(c)に示すように、開口70は、繋ぎ目80を形成する一対の端面61a、61bにそれぞれ設けられた切欠部76,77により形成される。端面61a、61bを突き合わせたときに、切欠部76,77の間の最大距離d2が例えば1mm程度以上となるように設定され、開口70として機能する。
開口70は、搬送ローラー15(ローラー本体16)の全長に亘って形成された繋ぎ目80のうち、高摩擦層50が形成された領域と軸受26に支持される領域を除く領域に設けられる。つまり、高摩擦層50は搬送ローラー15のほぼ中央部に形成され、搬送ローラー15の両端側が軸受26に支持されるので、搬送ローラー15には少なくとも2つの開口70が設けられる。
【0039】
開口70は、軸受26に供給(塗布)されたグリスL(潤滑油)が繋ぎ目80(端面61a、61bの隙間)に沿って高摩擦層50まで達することを防止する目的で設けられる。
上述したように、軸受26とローラー本体16の間にはグリスLを供給しなければならないので、グリスLの油分がローラー本体16表面の繋ぎ目80に沿って毛細管現象により流れること自体は回避できない。そこで、繋ぎ目80の一部に開口70を設けることで、グリスLの毛細管現象を止めている。具体的には、繋ぎ目80のうち、軸受26に支持される領域と高摩擦層50が形成された領域の間に開口70を設けることで、グリスLが高摩擦層50に達することを防止している。
【0040】
そして、開口70の大きさ(一対の切欠部76,77間の最大距離d2)を調整することで、グリスLの毛細管現象を確実に止めることができる。すなわち、グリスLの毛細管現象の強さは、グリスLの油分の表面張力に比例し、繋ぎ目80の大きさ(切欠部76,77間の最大距離d2)に反比例するので、グリスLの表面張力に応じて毛細管現象が発生しないように開口70の大きさを設定する。つまり、開口70の切欠部76,77間の最大距離d2を設定する。
具体的には、グリスLの油分の表面張力が水とほぼ同一であると仮定すると、開口70における切欠部76,77間の最大距離d2を、例えば1mm程度以上に設定することで、毛細管現象を止めることができる。これに対応して、開口70の軸方向の長さも、例えば1mm程度以上に設定する。
【0041】
なお、繋ぎ目80を形成する一対の端面61a、61bのそれぞれに、開口70を形成するための切欠部76,77を形成する場合に限らない。つまり、図5に示すように、繋ぎ目80を形成する一対の端面61a、61bの一方(例えば端面61a)にのみに切欠部78を形成して、切欠部78と端面61bとにより開口70が形成される場合であってもよい。また、開口70の形状としては、矩形に限らず、円形等であってよい。
【0042】
次に、搬送ローラー15の製造方法について説明する。
搬送ローラー15を製造するには、まず、図6(a)に示すように矩形板状または帯状の大型金属板65を用意する。この大型金属板65としては、例えば厚さ1mm程度の亜鉛メッキ鋼板が用いられる。続いて、この大型金属板65をプレス加工することにより、図6(b)に示すように、ローラー本体16に対応する大きさの細長い矩形板状の金属板60、すなわちローラー本体16の基材を形成する。
また、図6(b)に示すように、金属板60の一対の端面61a、61bには、それぞれ、後に開口70となる切欠部76,77が形成される。
なお、図6(c)に示すように、金属板60の一対の端面61aにのみに、後に開口70となる切欠部78を形成する場合であってもよい(図5参照)。
【0043】
次いで、金属板60を図7(a)〜(c)、図8(a)〜(c)のプレス加工工程図に示すように円筒状(パイプ状)にプレス加工し、その両側(長辺側)の端面61a、61bを近接させる。
すなわち、まず、図7(a)に示す雄型101と雌型102とで金属板60をプレス加工し、金属板60の両側部62a、62bを円弧状(望ましくは略1/4円弧)に曲げる。なお、図7(a)においては、各部材を分かりやすくするため、金属板60と雄型101と雌型102との間にそれぞれ間隔を開けてこれらの部材を記しているが、この間隔は実際には存在せず、金属板60と雄型101、雌型102とはそれぞれの接触部においてほぼ密着している。これは、後述する図7(b)、(c)、図8(a)〜(c)においても同様である。
【0044】
続いて、図7(a)で得られた金属板60の幅方向(曲げ方向)における中央部を、図7(b)に示す雄型103と雌型104とでプレス加工し、円弧状(望ましくは略1/4円弧)に曲げる。
次いで、図7(c)に示すように、図7(b)で得られた金属板60の内部に芯型105を配置し、図7(c)に示す上型106と下型107とを用いて、図8(a)〜(c)に示すようにして金属板60の両側部62a、62bの各端面61a、61bを近接させる。
【0045】
ここで、図7(c)および図8(a)〜(c)に示す芯型105の外径は、形成する円筒状の中空パイプの内径と等しくしてある。また、上型106のプレス面106cの半径と下型107のプレス面107aの半径は、それぞれ、形成する中空パイプの外径の半径と等しくしてある。また、図8(a)〜(c)に示すように上型106は左右一対の割型であり、これら割型106a、106bは、それぞれ独立して昇降可能に構成されている。
【0046】
すなわち、図7(c)に示す状態から、図8(a)に示すように右側の割型106aを下型107に対して相対的に下降させ(以下、同様に型の移動は相対的移動を意味する)、金属板60の一方の側をプレス加工し、略半円形状に曲げる。なお、下型107も上型106と同様左右一対の割型とし(割面107b参照)、この図8(a)に示す工程の際に、同じ側の下型を上昇させてもよい。
次いで、図8(b)に示すように、芯型105を少し(一方の側の端面61aと他方の側の端面61bとを近接させることができる程度に)下降させるとともに、他方の側の割型106bを下降させ、金属板60の他方の側をプレス加工し、略半円形状に曲げる。
【0047】
その後、図8(c)に示すように、芯型105および一対の割型106a、106bをともに下降させ、円筒状の中空パイプ(ローラー本体16)を形成する。この状態で左右両側の端面61a、61bは、僅かな隙間を介して十分に近接した状態となる。すなわち、この円筒状の中空パイプにあっては、基材である金属板60の両端面61a、61bが互いに近接してなることでこれら両端面61a、61b間に繋ぎ目が形成され、したがってこの繋ぎ目は、両端面61a、61bが離間していることによって隙間を有したものとなっている。
【0048】
次いで、本実施形態では、形成した中空パイプ(ローラー本体16)の真円度を高め、振れを少なくするべく、従来公知のセンターレス研磨加工を行い、中空パイプ(ローラー本体16)の外周面を研磨する。
すると、この中空パイプは、センターレス研磨加工前に比べその真円度がより良好になり、また、振れ量も小さいローラー本体16となる。また、このローラー本体16にあっては、両端面61a、61b間がより狭まることで、図4(a)に示すように、これら両端面61a、61b間の隙間がより狭くされた繋ぎ目80が形成される。
【0049】
なお、プレス加工やセンターレス研磨加工では、金属板60の両端面61a、61b間の隙間が無くなるように、すなわち、両端面61a、61bが互いに当接するようにするのが好ましい。しかしながら、得られる中空パイプ(ローラー本体16)の真円度や振れ量を良好にしつつ、この隙間を完全に無くすのは非常に困難であり、したがって、現状ではある程度の隙間が形成されるようになる。
【0050】
このようにしてローラー本体16を形成したら、図3に示したように、このローラー本体16の表面に高摩擦層50を形成する。
この高摩擦層50の形成方法としては、乾式法及び湿式法(またはこれらを併用した方法)が採用可能であるが、本実施形態では乾式法が好適に採用される。
具体的には、まず、高摩擦層50の形成材料として、樹脂粒子と無機粒子とを用意する。樹脂粒子としては、エポキシ系樹脂やポリエステル系樹脂等からなる、直径10〜20μm程度の微粒子が好適に用いられる。
【0051】
また、無機粒子としては、酸化アルミニウム(アルミナ;Al2O3)や炭化珪素(SiC)、二酸化珪素(SiO2)等のセラミックス粒子が好適に用いられる。中でもアルミナは、比較的硬度が高く摩擦抵抗を高める機能が良好に発揮され、また、比較的安価であってコストダウンを妨げることもないため、より好適に用いられる。したがって、本実施形態では無機粒子としてアルミナ粒子52を用いるものとする。このアルミナ粒子52としては、破砕処理によって所定の粒径分布に調整されたものが用いられる。破砕処理によって製造されることにより、このアルミナ粒子52は端部が比較的鋭く尖ったものとなり、この鋭く尖った端部によって高い摩擦力を発揮するようになる。
【0052】
そして、ローラー本体16に樹脂粒子を塗布する。すなわち、ローラー本体16を塗装ブース(図示せず)内に配置し、さらにこのローラー本体16を単体の状態で例えば−(マイナス)電位にしておく。
そして、樹脂粒子を、静電塗装装置(図示せず)のトリボガンを用いてローラー本体16に向けて噴霧(噴出)し吹き付けつつ、この噴霧粒子(樹脂粒子)を+(プラス)高電位に帯電させる。すると、この帯電された樹脂粒子はローラー本体16の外周面に吸着され、樹脂膜を形成する。
【0053】
ここで、樹脂粒子の吹付による樹脂膜の形成は、図3に示した高摩擦層50の形成領域に対応させて、ローラー本体16の全長に亘って行うことなく、例えばその両端部をテープ等でマスキングしておくことにより、図9(a)に示すようにこの両端部を除いた中央部のみに行う。すなわち、ローラー本体16の中央部にのみ、選択的に樹脂膜51を形成する。この樹脂膜51には、吹付塗装後に+0.5KV程度の微弱な静電気が残存する。
なお、この吹付塗装に際しては、ローラー本体16を軸廻りに回転させることにより、その全周に亘って樹脂膜51をほぼ均一な厚さに形成する。
この樹脂膜51の膜厚については、アルミナ粒子52の粉径を勘案して、例えば10μm〜30μm程度に形成する。このような膜厚については、樹脂粒子の噴出量及び噴出時間等によって適宜に調整することができる。
【0054】
次いで、この樹脂膜51を形成したローラー本体16を塗装ブースから取り出し、ハンドリングロボット(図示せず)によって、図10に示す別の塗装ブース90に移す。この塗装ブース90には、その下部に一対の回転駆動部材91、91が設けられており、これら回転駆動部材91、91には、ローラー本体16を略水平に支持するためのチャック92が設けられている。そして、ローラー本体16の両端部をチャック92、92に保持させて固定し、さらに回転駆動部材91によってチャック92、92を回転させる。これにより、ローラー本体16をその軸廻りに、例えば100rpm〜500rpm程度の低速でゆっくり回転駆動させる。なお、ローラー本体16については、若干斜めに支持してもよいのはもちろんである。
【0055】
また、塗装ブース90には、その上部にコロナガン93が配置されており、このコロナガン93は、シャフト94上を図10中左右方向に移動するようになっている。また、塗装ブース90の底部には排気機構95が設けられており、これによって塗装ブース90内には下方に向かうゆっくりとした気流が形成されるようになっている。なお、この排気機構95の吸引風量は適宜に設定されるようになっている。
【0056】
このような構成のもとに、ローラー本体16をその軸廻りに回転させつつ、コロナガン93からアルミナ粒子52を噴霧し吹き付けることにより、ローラー本体16に形成した樹脂膜51上に、アルミナ粒子52を選択的に静電吸着させる。アルミナ粒子52を樹脂膜51上に選択的に静電吸着させるには、樹脂膜51の形成と同様に、ローラー本体16の両端部をテープ等でマスキングしておくことで行う。
【0057】
この静電塗装時には、チャック92及び回転駆動部材91の表面電位が、ローラー本体16の電位とほぼ等しくなり、しかも塗装ブース90の内面電位が、電気的に中立で略零電位となるように設定する。コロナガン93からのアルミナ粒子52が、ローラー本体16以外の部位に吸着されないようにするためである。この塗装ブース90の内表面電位を電気的に中立に保持するためには、塗装ブース90を、内表面電気抵抗が例えば1011Ω程度の鋼板を用いて製造するのが望ましい。
【0058】
そして、コロナガン93にかける電位を零Vとし、さらにこのコロナガン93に供給するエアーの圧力を0.2Mpa程度に低く設定して、このコロナガン93を図10中の左右方向に移動させつつ、上方より略零電位のアルミナ粒子52を吹き出させ、アルミナ粒子52を自重で鉛直方向に自然落下させる。すると、上述したように、ローラー本体16の樹脂膜51には、静電塗装によって形成されたことで微弱な静電気(約+0.5KV)が残存しているため、この静電気によってアルミナ粒子52が樹脂膜51の全周にほぼ均一に静電吸着する。このようにして静電吸着したアルミナ粒子52は、樹脂膜51表面に当接しさらに一部入り込んだ状態で、この樹脂膜51をバインダとしてローラー本体16の外周面に付着する。
【0059】
ここで、本実施形態では塗装ブース90の内面電位が電気的に中立で略零電位となっており、しかも塗装ブース90内の気流が下向きにゆっくりとした流れに形成されているので、アルミナ粒子52はその自重によって鉛直方向下方に自然落下する。落下方向の下方には、水平支持されたローラー本体16がその軸廻りにゆっくり回転しているので、このローラー本体16の外周面には、アルミナ粒子52がほぼ均一に散布される。
【0060】
したがって、特にマスキングされていない樹脂膜51の表面にアルミナ粒子52が均一に付着し、これによってローラー本体16には、図9(b)に示すようにその中央部の樹脂膜51中に、アルミナ粒子52が分散し露出する。すなわち、アルミナ粒子52は、静電吸着力によって樹脂膜51に当接した際、この樹脂膜51中に一部が入り込み、残部が樹脂膜51の表面から突き出た状態になる。その際、アルミナ粒子52はローラー本体16の表面に対して垂直に立った状態になり易いため、アルミナ粒子52は均一に分布され、その殆どが鋭く尖った端部(頂部)を外側に向けて付着する。
【0061】
したがって、アルミナ粒子52は樹脂膜51の表面から突き出た端部により、高い摩擦力を発揮するようになる。なお、アルミナ粒子52が用紙Pに対して必要かつ十分な摩擦力を発揮するには、樹脂膜51の面積に対して、アルミナ粒子52の占める面積が20%〜80%となるようにするのが好ましい。
なお、このアルミナ粒子52の塗布(散布)については、アルミナ粒子52が鉛直方向下方にゆっくりと散布されるのであれば、静電塗装法による塗布に限定されるものではなく、例えばスプレーガンを用いた塗布(散布)法であってもよい。
【0062】
このようにしてアルミナ粒子52を樹脂膜51上に散布し付着させたら、このローラー本体16を180℃〜300℃程度の温度で20分〜30分間程度加熱し、樹脂膜51を焼成し硬化させることによってアルミナ粒子52をローラー本体16に固着する。これにより、図9(c)に示すように樹脂膜51中にアルミナ粒子52が分散し露出してなる高摩擦層50が形成され、搬送ローラー15が得られる。
【0063】
なお、上述した実施形態では、樹脂粒子の塗布(吹付)とアルミナ粒子52(無機粒子)の塗布(吹付)とを別々の塗装ブースで実施したが、同一の塗装ブース内で行ってもよいのはもちろんである。
【0064】
次に、インクジェットプリンター1の動作について、図1、図2を参照して説明する。
給紙ローラー13によって給紙された用紙Pは、搬送ローラー機構19の上流側近傍に至ると、搬送ローラー15と従動ローラー17との間に引き込まれ、両ローラーの駆動によって下流側に位置する印字ヘッド21の下方に向けて定速で搬送される。
【0065】
その際、搬送ローラー15には高摩擦層50が形成されており、従動ローラー17がこの高摩擦層50に当接する位置に配置されているので、これら搬送ローラー15と従動ローラー17との間で用紙Pを挟持する力が大きくなり、用紙Pの搬送性がより良好になっている。
【0066】
更に、搬送ローラー15は、軸受26に供給したグリスLが高摩擦層50に付着することが防止されているので、用紙PがグリスLにより汚染されず、また、正確で安定した紙送り(搬送)が行われる。
【0067】
そして、用紙Pの印刷開始端が、印字ヘッド(印刷部)21の直下の所定の印刷位置に到達すると、印刷が開始される。その後、用紙Pの始端が排紙ローラー機構29に至ると、排紙動作が開始される。
なお、排紙ローラー機構29の搬送速度は搬送ローラー機構19の搬送速度より速く設定されているため、用紙Pにはバックテンションが掛かった状態で搬送される。ただし、搬送ローラー機構19と排紙ローラー機構29とが共に用紙Pを挟持しているときには、上述したようにその用紙搬送速度は搬送ローラー機構19の搬送速度で規定されている。
したがって、このように排紙ローラー機構29と搬送ローラー機構19とによって排紙と搬送とを同時に行う際にも、その用紙搬送速度は搬送ローラー機構19の搬送速度で規定されているため、搬送ムラのない正確で安定した紙送り(搬送)がなされるようになる。
【0068】
以上説明したように、本実施形態に係る搬送ローラー15によれば、プレス加工により円筒状に形成された円筒軸を用いた場合であっても、高摩擦層(媒体支持領域)50に接触する用紙(媒体)Pが搬送ローラー15に付着したグリスL等(液体等)により汚染されることを防止できる。つまり、繋ぎ目80に形成した開口70が、繋ぎ目80を伝わって流れるグリスLの流れ止めとして機能するので、グリスLが高摩擦層50まで浸透することが防止できる。更に、高摩擦層50がグリスL等により汚染されることも防止できるので良好な搬送力を維持できる。
【0069】
また、本実施形態の搬送部(搬送装置)20によれば、上述術した搬送ローラー(搬送ローラー)15を備えているので、コストダウン及び軽量化が可能であり、更に用紙Pを汚染することなく、良好な搬送を実現することができる。
【0070】
また、本実施形態のインクジェットプリンター(印刷装置)1によれば、上述した搬送部20を備えているので、コストダウン及び軽量化が可能であり、さらに高品質な印刷を行うことができる。
【0071】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0072】
例えば、搬送ローラー15(ローラー本体16)の繋ぎ目については、上述した実施形態に限定されることなく、以下に示すように、種々の形状を採用することができる。
【0073】
図11から図15は、繋ぎ目及び開口の変形例を示す図である。
図11に示すように、繋ぎ目81を螺旋状に形成してもよい。また、図12に示すように、繋ぎ目82を波線状に形成してもよい。そして、繋ぎ目81,82の一部には、開口71,72が設けられる。
【0074】
また、図13に示すように、繋ぎ目84をジグザグ(直線が左右に何回も折れ曲がっている形)状に形成してもよい。繋ぎ目84に対しては、繋ぎ目84の折れ曲がり部分に開口74を設けことができる。
【0075】
また、図14(a)に示すように、ローラー本体16の中心軸16aと平行な直線部85aとこれに交差する直線部85bとからなる、矩形波状の繋ぎ目85を形成してもよい。
この繋ぎ目85については、図14(b)に示すようにローラー本体16の全長に亘って形成されていてもよく、図14(c)に示すようにその中央部を除く両端部に選択的に形成されていてもよい。
図14(c)に示したように繋ぎ目85を両端部にのみ形成する場合には、これら繋ぎ目85間は、例えばローラー本体16の中心軸と平行な直線部86とすることができる。
また、このように繋ぎ目85を両端部にのみ形成し、その間の中央部については直線部86とした場合、高摩擦層50の形成領域を直線部86に対応させて形成するのが好ましい。
【0076】
そして、繋ぎ目85に対しては、図15(a)に示すように、中心軸16aに平行な直線部85aに開口75を形成する場合であってもよいし、図15(b)に示すように、中心軸16aに交差する直線部85bに開口76を形成する場合であってよい。
【0077】
また、開口70の形状、数、配置、分布等については、適宜変更することができる。
例えば、繋ぎ目に沿って複数の開口が連なるように配置することで、グリスL等の液体の流れを確実に止めることができる。大きな開口を一つ設ける場合よりも、小さな開口を複数連続して設ける方が、搬送ローラーの剛性低下を抑えることができる。
また、開口は、搬送ローラーに付着する液体の付着箇所よりも媒体支持領域に近い領域に形成することが好ましい。媒体支持領域に近接する部位に開口を設けることで、媒体支持領域がグリスL等に汚染されることを確実に防止できる。
【0078】
また、上述した実施形態では、本発明に係る搬送ローラーを、搬送ローラー機構19における搬送ローラー15に適用したが、これに限らない。排紙ローラー機構29における排紙ローラー27や排紙ギザローラー28に適用することもできる。また、搬送ローラー機構19における従動ローラー17にも適用することができる。
更に、用紙以外の媒体を搬送する搬送ローラーに対しても適用することができる。
また、印刷装置以外に用いられる搬送ローラー、搬送装置に適用することもできる。
【0079】
また、搬送ローラーに付着して繋ぎ目を毛細管現象により伝わり流れる液体としては、軸受に供給されるグリスLに限らない。搬送ローラーに取り付けられる搬送駆動ギア等に供給されたグリスL等であってもよい。更には、メンテナンス中に搬送ローラーに付着するインク等の液体の場合であってもよい。
【符号の説明】
【0080】
1…インクジェットプリンター(印刷装置)、 15…搬送ローラー、 16…ローラー本体、 20…搬送部、 21…印字ヘッド(印刷部)、 26…軸受、 50…高摩擦層(媒体支持領域)、 61a, 61b…端面、 70〜76…開口、 80〜85…繋ぎ目、 P…用紙(媒体)、 L…グリスL(潤滑油)、 d1,d2…距離
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス加工により一対の端面を突き合わせて円筒状に形成されると共に長手方向の一部に媒体を支持する媒体支持領域を有する搬送ローラーと、
前記搬送ローラーのうち前記媒体支持領域以外の領域を軸支する軸受と、
を備え、
前記搬送ローラーは、前記一対の端面を突き合わせた繋ぎ目のうち前記媒体支持領域以外の領域に開口を有する搬送装置。
【請求項2】
前記開口は、前記媒体支持領域と前記軸受に支持される領域との間に配置される請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記開口は、前記媒体支持領域の両側にそれぞれ少なくとも一つ以上配置される請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記開口における前記一対の端面間の距離は、前記軸受に供給される潤滑油の表面張力に応じて設定される請求項1から3のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記媒体支持領域は、前記搬送ローラーの両端部を除く中央部に設けられている請求項1から4のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記媒体支持領域は、無機粒子を含有した高摩擦層である請求項1から5のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項7】
記録媒体を搬送ローラーにより搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送される前記記録媒体に対して印刷処理を行う印刷部と、
を備える印刷装置において、
前記搬送部として請求項1から6のいずれか一項に記載の搬送装置を用いた印刷装置。
【請求項8】
プレス加工により一対の端面を突き合わせて円筒状に形成され、
長手方向の一部に媒体を支持する媒体支持領域を有し、
前記一対の端面を突き合わせた繋ぎ目のうち前記媒体支持領域以外の領域に開口を有する搬送ローラー。
【請求項1】
プレス加工により一対の端面を突き合わせて円筒状に形成されると共に長手方向の一部に媒体を支持する媒体支持領域を有する搬送ローラーと、
前記搬送ローラーのうち前記媒体支持領域以外の領域を軸支する軸受と、
を備え、
前記搬送ローラーは、前記一対の端面を突き合わせた繋ぎ目のうち前記媒体支持領域以外の領域に開口を有する搬送装置。
【請求項2】
前記開口は、前記媒体支持領域と前記軸受に支持される領域との間に配置される請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記開口は、前記媒体支持領域の両側にそれぞれ少なくとも一つ以上配置される請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記開口における前記一対の端面間の距離は、前記軸受に供給される潤滑油の表面張力に応じて設定される請求項1から3のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記媒体支持領域は、前記搬送ローラーの両端部を除く中央部に設けられている請求項1から4のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記媒体支持領域は、無機粒子を含有した高摩擦層である請求項1から5のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項7】
記録媒体を搬送ローラーにより搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送される前記記録媒体に対して印刷処理を行う印刷部と、
を備える印刷装置において、
前記搬送部として請求項1から6のいずれか一項に記載の搬送装置を用いた印刷装置。
【請求項8】
プレス加工により一対の端面を突き合わせて円筒状に形成され、
長手方向の一部に媒体を支持する媒体支持領域を有し、
前記一対の端面を突き合わせた繋ぎ目のうち前記媒体支持領域以外の領域に開口を有する搬送ローラー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−285256(P2010−285256A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141181(P2009−141181)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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