説明

搬送装置及びこの搬送装置を備えた浮揚システム

【課題】搬送後の物体が空中に浮揚した状態となるように物体を搬送することが可能な搬送装置及びこの搬送装置を備えた浮揚システムを提供する。
【解決手段】物体Wを保持部33にて保持して浮揚装置10の上方の空中に搬送する搬送部30と、搬送部30に取り付けられ、物体Wが浮揚装置10から受けている浮揚力を検知する浮揚検知部70と、浮揚検知部70の検知信号に基づいて、物体Wが、物体Wを浮揚させることのできる浮揚力を受けていると判定した場合、保持部33を物体Wから離して浮揚状態とする制御部60とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体を浮揚させる浮揚装置に物体を搬送する搬送装置及びこの搬送装置を備えた浮揚システムに関する。
【背景技術】
【0002】
平板状の物体を浮揚させた状態で非接触で搬送する行為に関する技術として、流体圧浮揚手段によって流体を下方から放出し、その流体の圧力によって物体を浮揚させて搬送する非接触搬送装置がある(例えば、特許文献1参照)。また、振動体が放射する音波を下方から放射し、その放射圧による揚力により物体を浮揚させて搬送する非接触搬送装置もある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
また、物体の位置を非接触で認識し、目標位置に停止させる行為に関連する技術として、物体の先端位置と終端位置を非接触で検知する位置検知手段と、物体と目標停止位置との距離を計算する計算手段とを備え、位置検知手段からの物体の位置情報を基に、物体位置と目標停止位置との距離を計算し、その距離だけ搬送して停止するようにした技術がある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−227480号公報(図1、第5頁)
【特許文献2】特開平7−137822号公報(図1、第3頁)
【特許文献3】特開2004−010342号公報(図1、第4頁、第5頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1には、物体を浮揚装置まで搬送する手段について何等開示されておらず、また、特許文献2では手で物体を搬送するようにしている。この種の浮揚装置は例えば製造ラインにて用いられる装置であるため、浮揚装置への物体の搬送も、手動ではなく搬送装置によって自動で行われることが望ましい。
【0006】
また、非接触搬送装置によって搬送される物体は、そもそも他の部分との接触を好まない。よって、物体を浮揚装置上に搬送するに際しても、浮揚装置のステージ上に載せるのではなく、物体が浮揚する空中に直接搬送し、搬送後の物体が浮揚状態となるようにすることが望ましい。
【0007】
ところで、一般の製造ラインに用いられる搬送装置として、従来よりベルトコンベヤ式や吸着式のロボットハンドなど多くの搬送装置が存在する。ロボットハンドを用いれば、物体を保持したまま浮揚装置の上方の空中に搬送して位置させることは可能である。しかし、その搬送位置で物体を離した後、その物体が浮揚するかどうかは、そのときに物体に作用する浮揚力によって異なる。このように、物体を浮揚状態に搬送するにあたっては、単に目標位置に搬送すれば良いというものではなく、物体に十分な浮揚力が作用しているか等を確認する必要がある。しかし、このような搬送を行える搬送装置は未だ存在しない。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、搬送後の物体が空中に浮揚した状態となるように物体を搬送することが可能な搬送装置及びこの搬送装置を備えた浮揚システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る搬送装置は、物体に浮揚力を与えて浮揚させる浮揚装置の上方の空中に、保持部にて保持した物体を搬送する搬送部と、搬送部に取り付けられ、空中に位置した物体が浮揚装置から受ける浮揚力を検知する浮揚力検知部と、浮揚力検知部の検知信号に基づいて、物体が浮揚可能な浮揚力を受けているかどうかを判定し、浮揚可能な浮揚力を受けていると判定した場合、物体から保持部を離す制御部とを備えたものである。
【0010】
本発明に係る搬送装置は、物体に浮揚力を与えて浮揚させる浮揚装置の上方の空中に、保持部にて保持した物体を搬送する搬送部と、搬送部に取り付けられ、物体が前記保持部から離れたかどうかを検知する浮揚検知部と、浮揚検知部の検知信号に基づいて、浮揚装置からの浮揚力により物体が保持部から離れて浮揚したことを検知する制御部とを備えたものである。
【0011】
本発明に係る浮揚システムは、上記の搬送装置と、浮揚装置とを備え、制御部は、浮揚装置の出力を制御して浮揚装置が発生する浮揚力を制御するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、搬送後の物体が空中に浮揚した状態となるように物体を搬送することが可能な搬送装置を得ることができる。
また、この搬送装置を備えた浮揚システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1に係る浮揚システムの外観を示す模式図である。
【図2】搬送経路の説明図である。
【図3】本発明の実施の形態1の浮揚システムにおける動作の流れを示すフローチャートである。
【図4】図1の保持部の他の例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る浮揚システムの外観を示す模式図である。
【図6】図5の保持部の拡大断面図である。
【図7】本発明の実施の形態2の浮揚システムにおける動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る浮揚システムの外観を示す模式図で、図1(a)は平面図、図1(b)は側面図である。
【0015】
浮揚システム100は、物体Wに浮揚力を与えて空中に浮揚させる浮揚装置10と、浮揚装置10上の空中に物体Wを搬送する搬送装置20とを備えている。浮揚装置10は、具体的には例えば、物体Wを浮揚状態としたまま検査を行う検査装置や、物体Wを浮揚状態で所定の方向に搬送させる非接触搬送装置に適用される。浮揚装置10における揚力発生方法は、ステージ10aの表面からエアー等の流体を放出することによる方法や、音波や超音波による放射圧による方法など、任意の方法を採用できる。物体Wは、例えば太陽電池セルやウエハ、液晶ガラス基板等が該当する。
【0016】
搬送装置20は、搬送部30と、搬送部30に取り付けられた浮揚力検知部40と、位置検知部50と、浮揚システム100全体を制御する制御部60(図1(a)においては図示略)を備えている。搬送装置20は、浮揚装置10上方の空中の目標位置に物体Wを搬送する動作と、その目標位置にて物体Wが浮揚可能な浮揚力を受けているかどうかを判定し、浮揚可能な浮揚力を受けていると判定した場合に物体Wを離す動作と、物体Wの浮揚状態を監視する動作とを行う。物体Wを浮揚させることが可能な位置は、浮揚装置10の出力や物体Wの質量等によって異なるため、浮揚装置10の出力と物体Wの形状及び質量と浮揚する高さとの関係はあらかじめ計測されて制御部60内に記憶されている。この関係に基づき目標位置(XYZ位置)が設定されている。
【0017】
搬送部30は、本体31に接続されて先端部をXYZ方向に移動可能なアーム32と、アーム32の先端部に取り付けられ、物体Wを保持する保持部33とを有している。浮揚装置10の適用用途が非接触搬送装置であっても検査装置であっても、浮揚装置10において物体Wは非接触で用いられることから、物体Wを浮揚装置10の目標位置に搬送するにあたっても、非接触で搬送することが望ましい。よって、保持部33にはベルヌーイチャック方式で非接触で物体Wを保持できる保持部を採用している。しかし、物体Wが非接触方式の保持部での搬送に適さない場合や、接触式の保持部でも物体Wを安全に保持するような制御や機構を有するものであれば、非接触方式の保持部に限られたものではなく、接触式でもよい。
【0018】
浮揚力検知部40は、物体Wが浮揚装置10から受ける揚力を検知し、その検知信号を制御部60に出力する。浮揚力検知部40は、具体的には例えば圧力センサーにより構成される。他に例えば物体Wに加わる力を重量の変化として検知することでも同様に揚力の検知が可能であるため、重量センサーにより構成してもよい。
【0019】
位置検知部50は、物体Wを浮揚装置10の上方の目標位置に搬送後の物体Wの位置を検知するもので、本例では2つの距離センサーにより構成している。本例では物体Wが矩形状であり、目標位置に位置した物体Wの対角の2箇所の上方位置に距離センサーが配置され、物体WまでのZ軸方向の距離を検出する。この位置検知部50の検知結果により、浮揚状態が安定しているか、例えば傾いていたり落下していたりしないか等を検知することができる。
【0020】
距離センサーとしては、例えば光センサーや音センサーが用いられ、種類は問わない。光センサーの場合、投光部と受光部とを有し、投光部より投入されたレーザー光や赤外線等を物体Wが反射し、その反射光を受光部で受光し、その受光量によって物体Wの位置情報を算出する。また、音センサーの場合、検知用の照射波を物体Wが反射又は透過した音圧を検知することにより物体Wの距離と位置を特定する。なお、位置検知部50は、物体Wの対角部分の上方に配置した2つの距離センサーに限られず、物体Wの浮揚状態を検知できる構成であればよい。
【0021】
制御部60は、マイクロコンピュータで構成され、CPU、RAM及びROM等を備えており、ROMには制御プログラム及び後述のフローチャートに対応した搬送制御プログラム等が記憶されている。
【0022】
制御部60は、浮揚力検知部40の検知信号に基づいて搬送部30及び浮揚装置10の出力(つまり浮揚装置10が発生する浮揚力)を制御する。また、制御部60は、位置検知部50の検知信号に基づいて浮揚後の物体Wの位置を監視し、物体Wの浮揚状態に応じて搬送部30及び浮揚装置10の出力を制御する。
【0023】
制御部60は、上述したように位置検知部50の検知信号に基づいて搬送部30及び浮揚装置10を制御するが、その制御内容を以下に示す。なお、この制御内容は一例であって、以下のものに限定されるわけではない。
(1)物体Wが安定した浮揚状態を所定時間継続した場合、例えば物体Wの検査が正常に行われたものとして物体Wを目標位置から取り除く。目標位置から取り除いた後の物体Wの搬送先は任意であり、例えば、ラインの次の工程に搬送する。なお、安定した浮揚状態とは、目標高さ位置を含む所定の許容高さ範囲内に物体Wが存在する状態をいう。なお、許容高さ範囲は物体Wや浮揚装置10毎に異なるため、各状況に合わせて設定を行う。
(2)物体WのZ軸方向の位置が、所定の高さ範囲よりステージ10a側に近い場合、つまり、「物体Wと位置検知部50間距離」≒「浮揚装置10と位置検知部50間距離」の場合、物体Wは浮揚せずに落下しているため、搬送部30で再度、目標位置に置き直す(対策1)か又は浮揚しない物体Wとして浮揚装置10上から取り除く(対策2)など、状況に応じて対策を講じる。
(3)物体WのZ軸方向の位置が所定の許容高さ範囲より位置検知部50側へずれた位置で安定した場合、浮揚装置10の出力が高すぎるため、浮揚装置10の入力を下げる(対策3)などの対策を講じる。
(4)物体Wが、厚さが一様の平板であるとき、浮揚が安定状態であれば浮揚装置10からの距離はどこを測ってもおおよそ同じになる。よって、位置検知部50の検知結果が大きく異なる場合、物体Wの片側のみが落ちている状態、または片側のみ浮き上がっている状態であるため、搬送装置20でステージ10a上の目標位置に再度置き直す(対策1)、またはステージ10a上から取り除く(対策2)など、状況に応じて対策を講じる。
(5)同じ物体Wの目標位置への搬送を2回以上試みた場合でも、浮揚しない場合には、その物体Wを浮揚装置10上から取り除く(対策2)。そして、例えば次の物体Wの搬送を行う。
【0024】
以上の制御内容は予めプログラムされて搬送制御プログラムとして制御部60に記憶され、浮揚力検知部40及び位置検知部50からの検知信号に基づいて自動的に実施される。
【0025】
図2は、搬送経路の説明図である。
物体Wを浮揚装置10のステージ10a上空の目標位置に搬送する経路としては、以下の搬送経路Aと搬送経路Bがある。搬送経路A、Bのどちらの搬送経路を選択するかは任意である。
【0026】
搬送経路Aは、物体Wを目標位置よりも上方に搬送し、その位置から目標位置まで下降させる経路である。この搬送経路Aは、いわば、浮揚装置10が発生する浮揚力が物体Wの搬送に対して影響を与えない高さまで持ち上げ、その後、XY平面方向に移動させて目標位置の真上まで搬送した後、目標位置を目指して下降し、物体Wに、物体Wが浮揚する浮揚力が加わる高さで停止する経路に相当する。浮揚装置10が音波や超音波を利用するものであれば、振動板から発生した定常波の節で物体Wに揚力がかからない位置から目標位置に搬送してもよい。
【0027】
搬送経路Bは、物体Wを目標位置と同じ高さ位置から水平移動させ、目標位置まで搬送する経路である。この搬送経路Bの場合、目標位置は物体Wにかかる重力と浮揚装置10の揚力が釣り合う位置にあるため、正確に高さ制御を行わなければ揚力の加わり方により、物体Wの安定が悪くなり、搬送中に物体Wが落下する可能性がある。そのため、搬送経路Bを用いる場合は、浮揚装置10の出力を低下させるか、切るなど物体Wに揚力がかからないようにしておき、目標位置までの搬送が完了した後、浮揚装置10の出力を元の状態に戻し、物体Wに揚力が加わるように調整することが好ましい。
【0028】
搬送路Aは、浮揚装置10から物体Wに揚力がかからない位置での搬送となるため、物体Wが揚力の影響を受けて落下することがなく、安全に搬送できるため、工程内の歩留まりが改善され、それにともない浮揚装置10の保守作業量を低下させる効果が得られる。搬送路Bは、物体Wを搬送する高さを正確に制御すれば、搬送距離を短くすることができるため、物体W1つ当たりの搬送する時間が短縮され、作業効率が上がる効果が得られる。
【0029】
図3は、本発明の実施の形態1の浮揚システムにおける動作の流れを示すフローチャートである。以下、図3のフローチャートを参照して浮揚システムにおける動作の流れについて説明する。なお、図3には、一例として、上記(1)及び(2)の対策2の動作を示しているが、浮揚システム100は、(3)〜(5)の動作も併せて行うことが可能に構成されている。図3には、ある一つの物体Wに着目し、その物体Wを搬送装置20で搬送開始してからその物体Wに対する動作が終了するまでの流れを示している。なお、この例では搬送経路として搬送経路Bが設定され、浮揚装置10の出力は、物体Wを目標位置で浮揚させるために必要な出力よりも低い出力又は出力0となっているものとする。
【0030】
まず、搬送装置20は物体Wを保持部33で保持し(S1)、搬送経路Bで物体Wを浮揚装置10上の空中の目標位置まで搬送する(S2)。物体Wが目標位置に到達すると、制御部60は浮揚装置10の出力を上げて浮揚装置10が発生する浮揚力を上昇させる。そして、制御部60は、浮揚力検知部40の検知信号に基づいて物体Wが受けている浮揚力をチェックし(S3)、物体Wが浮揚可能な浮揚力を受けていると判定した場合には、浮揚に適した搬送位置に到達したものとして物体Wから保持部33を離して物体Wを浮揚させる(S5)。物体Wが浮揚可能な浮揚力を受けていないと判定した場合には、浮揚可能な浮揚力を受けてた状態となるように搬送部30を制御し、物体位置の微調整、すなわち主としてZ軸方向の微調整を行い(S4)、その上で物体Wから保持部33を離す(S5)。
【0031】
ここでの処理を浮揚力検知部40が圧力センサーである場合を例として具体的に説明すると、圧力センサーからの検知信号に基づいて物体Wが浮揚装置10から受ける圧力を検知し、保持部33が物体Wから離れた後も、物体Wに作用する圧力と物体Wの重量が釣り合う所定の均衡状態を保ち、物体Wが浮揚状態を継続し続けることが可能であるかをチェックし、可能と判定できるまで物体Wの位置を調整する。
【0032】
そして、物体Wの位置を調整して保持部33を物体Wから離した後、制御部60は位置検知部50の検知信号に基づき物体Wの位置、言い換えれば物体Wの浮揚状態を監視する(S6)。そして、安定浮揚状態のまま所定時間が経過すると(S7)、例えば検査が終了したものとして上記(1)において説明したように物体Wを浮揚装置10から取り除く(S8)。一方、ステップS6において不安定な浮揚状態、ここでは落下を検知した場合、浮揚しない物体Wとして浮揚装置10から取り除く(S8)。以上により一つの物体Wに対する動作が終了し、次の物体Wに対してステップS1からの動作が行われることになる。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態1では、物体Wが浮揚可能な浮揚力を受けているかを確認した上で保持部33を物体Wから離すようにした。また、物体Wが浮揚可能な浮揚力を受けていない場合には、搬送部30を制御して物体Wが浮揚可能な浮揚力を浮揚装置10から受けるように物体の位置を調整する。これにより、搬送後の物体Wが空中に浮揚した状態となるように物体Wを自動で搬送することができ、物体Wの落下率を低減できる。よって、物体Wの破損等の低減が可能で、歩留まりを向上できる。また、物体Wの落下率の低減が可能なため、物体Wが浮揚装置10に落下してぶつかることによる浮揚装置10のキズや破損を抑制でき、浮揚装置10の耐久性を向上できる。また、浮揚装置10の出力制御を自動で行うようにしたため、これまで人が手作業で行っていた浮揚装置10への乗せ替え作業がなくなる。すなわち、人による作業工程が1つ減るので人件費を削減できる。
【0034】
また、搬送後の物体Wの位置を監視するようにしたため、浮揚状態が悪化した場合、例えば物体Wが落下したり、所定の浮揚状態よりも浮きすぎた場合には、即座に対処できる。よって、ラインでのロスタイムが削減され、歩留まりを向上できる。
【0035】
この浮揚システム100の浮揚装置10の適用例として具体例を挙げると、物体内に発生したクラックを検知するクラック検知装置がある。クラック検知装置による例えば太陽電池セルのクラック検知では、非接触でセルを振動させて検査を行うため、超音波によってセルを浮揚させている。セルを浮揚状態にするには音圧が密になっている部分の上部にセルを水平に乗せる必要がある。また、セルが浮揚する揚力が得られる場所も限られるため目標位置を正確に指定し、セルを浮揚させるために必要な揚力がセルに十分かかっていることを確認する必要がある。本例の搬送装置20においては、浮揚力検知部40及び位置検知部50の検知信号に基づき物体Wを浮揚に適切な位置へ搬送し、安定した状態で浮揚させることができるため、クラック検知装置に用いて好適である。
【0036】
なお、図1には、1つの搬送部30で物体Wを持ち上げた例を示しているが、物体Wを水平に保ったまま浮揚装置10のステージ10a上に搬送するには図4に示すように複数の搬送部30を用いても良い。
【0037】
実施の形態2.
実施の形態2は、実施の形態1とは別の保持部を提案するものである。
【0038】
図5は、本発明の実施の形態2に係る浮揚システムの外観を示す模式図である。図6は、図5の保持部を示す断面図である。図5及び図6において図1と同一部分には同一符号を付す。
実施の形態2の浮揚システム100Aは、実施の形態1と同様の浮揚装置10と、搬送装置20Aとを有している。実施の形態2の搬送装置20Aは、実施の形態1の保持部33に代えて保持部33Aを備えている。また、実施の形態1の浮揚力検知部40に代えて、浮揚装置10からの浮揚力により物体Wが保持部33Aから離れて浮揚したかどうかを検知する浮揚検知部70を備えている。その他の構成は実施の形態1と同様である。また、制御部60における制御内容(1)〜(5)も実施の形態1と同様である。また、実施の形態1と同様の構成部分について適用される変形例は、本実施の形態2についても同様に適用される。
【0039】
保持部33Aは、図6に示すように、上下に対向する一対の指33a、33bと一対の指33a、33bの端部を連結する連結部33cとを有する断面コ字状のコ字部33dを一対、互いに離間して配置した構成を有し、その各コ字部33dそれぞれにアーム32が接続されている。この保持部33Aを備えた搬送装置20Aは、一対のコ字部33dそれぞれの下側の指33bの上面を跨ぐようにして物体Wを水平に載せて搬送するものであり、下側の指33bの物体Wとの接触面には、浮揚検知部70として物体Wの接触又は非接触を検知する接触センサーが配置されている。
【0040】
この保持部33Aの構造によれば、浮揚装置10の上方から目標位置に保持部33Aを下ろすにしたがって、一対の指33a、33bの間の隙間を介して物体Wに浮揚装置10による浮揚力が作用する。物体Wに十分な浮揚力が作用して、物体Wが下側の指33bから離れて浮いた状態となると、浮揚検知部70はこれを検知し、検知信号を制御部60に出力する。これにより、制御部60は、物体Wが浮揚したことを検知できる。また、少なくとも上側の指33aを緩衝材で形成するか又は上側の指33aの下面に緩衝材を設けることにより、物体Wが浮揚した際に上側の指33aに衝突しても物体Wに傷がつくことがない。なお、ここでは、保持部33Aを一対のコ字部33dによって形成する例を示したが、単に下側の指33bだけ、すなわち、単なる一対の平板で構成し、一対の平板を離間して配置し、一対の平板の上面を跨ぐようにして物体Wを載せて搬送するようにしてもよい。
【0041】
図7は、本発明の実施の形態2の浮揚システムにおける動作の流れを示すフローチャートである。図3に示した実施の形態1と同一処理については同一ステップ番号を付している。以下、図7のフローチャートを参照して浮揚システム100Aにおける動作の流れについて説明する。なお、図7には、一例として、上記(1)及び(2)の対策2の動作を示しているが、浮揚システム100Aは、(3)〜(5)の動作も併せて行うことが可能に構成されている。図7には、ある一つの物体Wに着目し、その物体Wを搬送装置20Aで搬送開始してからその物体Wに対する動作が終了するまでの流れを示している。なお、この例では搬送経路として搬送経路Bが設定され、浮揚装置10の入力又は出力は、物体Wを目標位置にて浮揚させるために必要な出力よりも低い出力又は出力0となっているものとする。
【0042】
まず、搬送装置20Aは物体Wを保持部33Aで保持し(S1)、搬送経路Bで物体Wを浮揚装置10上の空中の目標位置まで搬送する(S2)。物体Wが目標位置に搬送されたところで、制御部60は、浮揚装置10の出力を上げて浮揚装置10が発生する浮揚力を上昇させる。そして、制御部60は、浮揚検知部70の検知信号に基づいて、物体Wが保持部33Aの下側の指33bから離れて浮揚したかをチェックし(S3A)、浮揚したと判定した場合は、浮揚に適した搬送位置に到達したものとして物体Wから保持部33Aを離して物体Wを浮揚させる(S5)。浮揚していないと判定した場合、浮揚するように搬送部30を制御して物体Wの位置の微調整、すなわち主としてZ軸方向の微調整を行い(S4A)、その上で物体Wから保持部33Aを離す(S5)。
【0043】
以降の処理は実施の形態1と同様であり、制御部60は、位置検知部50の検知信号に基づき物体Wの位置、言い換えれば物体Wの浮揚状態を監視する(S6)。そして、安定浮揚状態のまま所定時間が経過すると(S7)、例えば検査が終了したものとして上記(1)において説明したように物体Wを浮揚装置10から取り除く(S8)。一方、ステップS6において、不安定な浮揚状態、ここでは落下していると判定した場合には、浮揚しない物体Wとして浮揚装置10から取り除く(S8)。以上により一つの物体Wに対する動作が終了し、次の物体Wに対してステップS1からの動作が行われることになる。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態2によれば、実施の形態1に比べて単純な保持部33Aの構成で、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0045】
10 浮揚装置、10a ステージ、20 搬送装置、20A 搬送装置、30 搬送部、31 本体、32 アーム、33 保持部、33A 保持部、33a 一対の指の上側の指、33b 一対の指の下側の指、33c 連結部、33d コ字部、40 浮揚力検知部、50 位置検知部、60 制御部、70 浮揚検知部、100 浮揚システム、100A 浮揚システム、W 物体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体に浮揚力を与えて浮揚させる浮揚装置の上方の空中に、保持部にて保持した物体を搬送する搬送部と、
前記搬送部に取り付けられ、前記空中に位置した物体が前記浮揚装置から受ける浮揚力を検知する浮揚力検知部と、
前記浮揚力検知部の検知信号に基づいて、前記物体が浮揚可能な浮揚力を受けているかどうかを判定し、浮揚可能な浮揚力を受けていると判定した場合、前記物体から前記保持部を離す制御部と
を備えたことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記物体が浮揚可能な浮揚力を受けていないと判定した場合、前記物体が浮揚可能な浮揚力を受けることができるように、前記搬送部を制御して前記物体の位置を調整することを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記物体を前記浮揚装置の上方に搬送後の前記物体の位置を検知する位置検知部を更に備え、
前記制御部は、前記位置検知部の検知信号に基づいて、浮揚後の前記物体の位置を監視することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の搬送装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記浮揚検知部の検知信号と予め記憶した前記物体の重量とに基づいて前記物体が浮揚可能な浮揚力を受けているかどうかを判定することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記浮揚検知部は、圧力センサー又は重量センサーであることを特徴とする請求項4記載の搬送装置。
【請求項6】
前記保持部はベルヌーイチャック方式の非接触の保持部であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の搬送装置。
【請求項7】
物体に浮揚力を与えて浮揚させる浮揚装置の上方の空中に、保持部にて保持した物体を搬送する搬送部と、
前記搬送部に取り付けられ、前記物体が前記保持部から離れたかどうかを検知する浮揚検知部と、
前記浮揚検知部の検知信号に基づいて、前記浮揚装置からの浮揚力により前記物体が前記保持部から離れて浮揚したことを検知することを特徴とする制御部と
を備えたことを特徴とする搬送装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記浮揚検知部からの検知信号に基づいて前記物体が前記保持部から離れていないことを検知した場合、前記物体が前記保持部から離れて浮揚するように、前記搬送部を制御して前記物体の位置を調整することを特徴とする請求項7記載の搬送装置。
【請求項9】
前記物体を前記浮揚装置の上方に搬送後の前記物体の位置を検知する位置検知部を更に備え、
前記制御部は、前記位置検知部の検知結果に基づいて前記物体が浮揚後の前記物体の位置を監視することを特徴とする請求項7又は請求項8記載の搬送装置。
【請求項10】
前記搬送部の前記保持部は、離間して配置された一対の平板で構成され、前記搬送部は、前記一対の平板の上面を跨ぐようにして前記物体を載せ、前記浮揚装置からの浮揚力が隙間を介して前記物体に作用するようにして前記物体を搬送するものであり、前記一対の平板の前記物体との接触面には、前記浮揚検知部として前記物体の接触又は非接触を検知する接触センサーが配置されていることを特徴とする請求項7乃至請求項9の何れか1項に記載の搬送装置。
【請求項11】
前記搬送部の前記保持部は、上下に対向する一対の指と一対の指の端部を連結する連結部とを有する断面コ字状のコ字部を一対、互いに離間して配置した構成を有し、前記搬送部は、前記一対のコ字部それぞれの下側の指の上面を跨ぐようにして前記物体を載せ、前記浮揚装置からの浮揚力が隙間を介して前記物体に作用するようにして前記物体を搬送するものであり、前記下側の指の前記物体との接触面には、前記浮揚検知部として前記物体の接触又は非接触を検知する接触センサーが配置されていることを特徴とする請求項7乃至請求項9の何れか1項に記載の搬送装置。
【請求項12】
前記コ字部の前記一対の指のうち、少なくとも前記上側の指を緩衝材で形成するか又は前記上側の指の下面に緩衝材を設けたことを特徴とする請求項11記載の搬送装置。
【請求項13】
前記位置検知部は前記浮揚装置の上方に設けられ、搬送後の前記物体までの距離を検知する距離センサーであることを特徴とする請求項1乃至請求項12の何れか1項に記載の搬送装置。
【請求項14】
前記距離センサーは、光センサー又は音センサーであることを特徴とする請求項13記載の搬送装置。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14の何れか1項に記載の搬送装置と、前記浮揚装置とを備え、前記制御部は、前記浮揚装置の出力を制御して前記浮揚装置が発生する浮揚力を制御することを特徴とする浮揚システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−142517(P2012−142517A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1118(P2011−1118)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】