説明

搬送装置及びその位置決め方法

【課題】センサフィードバックなしに、搬送装置の位置決め精度を高める技術を提供する。
【解決手段】搬送装置100は、自走台車10、自走台車に取り付けられたロボットアーム12、係合器14、及び、コントローラ18を備える。係合器14は、ロボットアーム12の先端に取り付けられている。また、係合器14は、ワークラック90の基準ブロック92と係合するように構成されている。係合器14は、係合すると基準ブロック92との相対位置が正確に定まるように構成されている。コントローラ18は、まず、係合器14が基準ブロック92に届く範囲に自走台車10を移動させる。次いで、自走台車10の車輪を受動回転自在状態としながら、係合器14を基準ブロック92に係合させるように係合器14を制御する。係合器14と基準ブロック92の間に作用する反力によって自走台車10の位置が修正される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク用ラックからワークを取り出す、又は、ワーク加工装置へワークを取り付けるための搬送装置に関する。特に、ワークをハンドリングするロボットアームが自走台車に取り付けられた搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークの加工ライン等では、ワークをラックから取り出して加工装置へ搬送すること、或いは、第1の加工装置からワークを取り外して第2の加工装置へワークを搬送すること、がしばしば要求される。そのような要求に応える装置として搬送装置が知られている。搬送装置の中には、ロボットアームを取り付けた自走台車で構成されるものがある(例えば特許文献1、特許文献2)。自走台車は、ラックと加工装置の間の比較的長距離を移動するのに便利である。ロボットアームは、ハンド(把持装置)をワークの把持予定部へ正確に位置決めする、或いは、ワークを高精度で加工装置に取り付けるために用いられる。
【0003】
ワークに要求される加工精度が高まるにつれて、搬送装置にも高い位置決め精度が要求されるようになってきた。搬送装置は、ラックに収納されたワークの決められた部分(把持予定部)の位置へロボットアーム手先を正確に移動させなければならない。或いは、搬送装置は、把持したワークを、加工装置の決められた位置へ正確に取り付けることができなければならない。即ち、ロボットアームの手先をワークラック或いはワーク加工装置に対して正確に位置決めすることが要求される。
【0004】
これまでは、特許文献1や特許文献2にて例示されているように、センサフィードバックによって搬送装置の位置決め精度を高めることが行われてきた。即ち、ロボットアームにセンサを設け、センサによってワークラック或いは加工装置との相対位置を検知し、予め決められた相対位置となるようにロボットアームを制御していた。或いは、自走台車にセンサを設け、センサによってワークラック或いは加工装置との相対位置を検知し、予め決められた相対位置となるように自走台車を制御していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−221784号公報
【特許文献2】特許第2680298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
センサフィードバックを構築するには非常にコストが嵩む。センサ等のハードウエアのコストのみならず、制御系のソフトウエアにもコストが嵩むからである。さらに、搬送するワーク形状、或いは、搬送経路を変更する毎にソフトウエアを変更する必要がある。センサフィードバックなしで高精度の位置決めが可能であるならば、自走台車の移動やロボットアームの動作がティーチングプレイバックで済むので経済的である。本明細書が開示する技術は、センサフィードバックなしに、搬送装置の位置決め精度を高める技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ワークラックや加工装置に対して自走台車を正確に位置決めできれば、ロボットアームはティーチングプレイバックで、即ちセンサフードバックなしでワークを高精度でハンドリングできる。即ち、ワークラックの所定位置へハンドを位置決めすることができ、また、加工装置の所定位置へワークを取り付けるようにハンドを移動させることができる。
【0008】
他方、ロボットアームにはワークの重量に対応するパワーが必要とされる。そのため、比較的重いワークを扱う搬送装置の場合、ロボットアーム先端を固定すると、車輪を受動回転自在とした自走台車をロボットアームの力で動かすことができる。本明細書が開示する搬送装置は、このロボットアームの駆動力を自走台車の位置決めに利用する。ワークラック又は加工装置に予め決められた基準ブロックを設けておき、ロボットアーム先端のハンドでその基準ブロックを掴みにいく。このとき、自走台車は車輪を受動回転自在の状態にしておく。ハンドが基準ブロックを把持する際、基準ブロックからハンドへ反力が作用する。自走台車の車輪は受動回転可能としてあるので、この反力によって自走台車が移動する。ハンドが基準ブロックを強固に把持すると、ハンドと基準ブロックの相対位置が正確に定まる。その結果、基準ブロックと自走台車の相対位置が正確に定まる。即ち、このとき搬送装置は、ロボットアーム先端が基準ブロックに対して固定され、あたかも、ロボットアーム基部、即ち、自走台車がロボットアームによる位置決め対象物であるかのように動作する。上記の搬送装置では、基準ブロックを把持する際、ロボットアームはティーチングプレイバックで動作すればよい。即ち、センサフィードバックなしに、自走台車を高精度に位置決めすることができる。自走台車の位置決め精度はロボットアームの先端の位置決め精度にほぼ等しい。
【0009】
上記の説明では、ワークをハンドリングするためのロボットアームを、自走台車を位置決めするための装置としても用いた。ロボットアームをワークハンドリングと自走台車位置決めの双方に用いることが低コストであり好ましいが、ワークハンドリングのためのロボットアームとは別個に自走台車を位置決めするための装置(位置決め装置)を設けてもよい。位置決め装置は、基準ブロックから受ける反力が車輪を受動回転自在とした自走台車を動かすことができるほどの駆動力を有していればよい。
【0010】
本明細書が開示する一実施形態は、搬送装置に具現化することができる。その搬送装置は、位置決め基準ブロックを有するワーク用ラックからワークを取り出す、又は、位置決め基準ブロックを有するワーク加工装置へワークを取り付けるための搬送装置である。搬送装置は、自走台車、自走台車に取り付けられたロボットアーム、係合器、及び、コントローラを備える。係合器は、自走台車とロボットアームのいずれか一方に取り付けられている。また、係合器は、位置決め基準ブロックと係合するように構成されている。係合器は、係合すると位置決め基準ブロックとの相対位置が正確に定まるように構成されている。コントローラは、まず、係合器が基準ブロックに届く範囲に自走台車を移動させる(粗位置決めステップ)。次いで、自走台車の車輪を受動回転自在状態としながら、係合器を位置決め基準ブロックに係合させるように係合器を制御する(高精度位置決めステップ)。なお以下では、「位置決め基準ブロック」を単に「基準ブロック」と称することがある。
【0011】
前述したように、ワークをハンドリングするためのハンドが先端に取り付けられたロボットアームが係合器を兼ねることが最も好ましい。ロボットアーム(係合器)は、その先端を固定したときに、車輪を受動回転自在状態とした自走台車を動かすことができる駆動力を有する。なお、「自走台車」とは、車輪によって走行することができる台車を意味する。特に本明細書では、予め定められた経路を自動的に移動することのできる台車を意味する。即ち、自走台車もティーチングプレイバックで動作する。
【0012】
ロボットアームが係合器を兼ねる場合を例として以下、説明する。上記の搬送装置では、コントローラは、粗位置決めステップとして、自走台車を所定の位置へ移動させる。「所定の位置」は、例えば、ワークラック又はワーク加工装置に設けられた基準ブロックがロボットアーム先端の2本のフィンガの間に位置するような自走台車の位置である。自走台車のこの移動は、ティーチングプレイバックで行えばよい。ティーチングプレイバックによる自走台車の位置決め精度は、例えば、誤差が概ね数cm程度であればよい。次いで、コントローラは、高精度位置決めステップとして、自走台車の車輪を受動回転自在状態としながら、フィンガを閉じる。フィンガが基準ブロックにしっかり係合するときに、数cmの誤差が修正される。即ち、フィンガが基準ブロックに係合するにつれて、上記誤差に起因してフィンガに生じる反力が自走台車を動かし、その結果、フィンガと基準ブロックの間に存在した誤差(即ち、自走台車を位置決めした際の誤差)が是正される。高精度位置決めステップにおけるロボットアームの動作もティーチングプレイバックでよい。
【0013】
上記した搬送装置は、自走台車とロボットアームそれぞれのティーチングプレイバック動作によって、ワークラックあるいはワーク加工装置に対して高精度に位置決めすることができる。また、本明細書は、さらに、ティーチングプレイバック動作による自走台車の高精度位置決めに適したアーム先端のハンドに関する技術も開示する。ハンドは、開閉する2本のフィンガを備えている。なお、ハンドは、3本以上のフィンガを備えていてもよい。そのようなハンドを備える搬送装置の一態様は、以下の通りである。フィンガ内側面がワークを把持する際のワーク当接面を構成しているとともに、フィンガ外側面が基準ブロックに当接するブロック当接面を構成している。位置決め基準ブロックは、空間を挟んで水平方向で対向する壁面を有するように構成されている。コントローラは、上記した空間に2本のフィンガが位置するように自走台車を移動する。コントローラは次いで2本のフィンガを開いてゆき、夫々のフィンガの外側面を、基準ブロックの対向する壁面の夫々に当接させる。
【0014】
また、搬送装置の他の態様は次の通りである。フィンガ外側面がワークを把持する際のワーク当接面を構成しているとともに、フィンガ内側面が基準ブロックに当接するブロック当接面を構成している。コントローラは、2本のフィンガの間に基準ブロックが位置するように自走台車を移動する。コントローラは、次いで、2本のフィンガを閉じてゆき、夫々のフィンガの内側面で基準ブロックを挟持する。
【0015】
いずれの態様も、フィンガの内外側面の一方がワークとの当接面を構成し、他方の面が基準ブロックとの当接面を構成する。ワークとの当接面はワーク形状に合致した形状とすることができるとともに、基準ブロックとの当接面は基準ブロックの形状に合致した形状とすることができる。さらに、基準ブロックとの当接面が基準ブロックとの係合によって傷んだとしても、ワークとの当接面には影響しないので、ワークを傷つけずに把持することができる。
【0016】
本明細書が開示する技術の他の態様は、ロボットアームを自走台車に取り付けた搬送装置をワーク用ラック又はワーク加工装置に対して位置決めする方法に具現化することもできる。その方法は、上記した粗位置決めステップと高精度位置決めステップを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、センサフィードバックなしに自走台車を高精度に位置決めすることができる搬送装置及び位置決め方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例の搬送装置の模式的側面図と上面図を示す。
【図2】ハンドの模式図を示す。
【図3】粗位置決めステップにおける搬送装置の動作を説明する図である。
【図4】高精度位置決めステップにおける搬送装置の動作を説明する図である。
【図5】ワーク把持ステップにおける搬送装置の動作を説明する図である。
【図6】ワーク移動ステップにおける搬送装置の動作を説明する図である。
【図7】他の実施例の搬送装置の模式的側面図を示す。
【実施例】
【0019】
図面を参照して実施例の搬送装置を説明する。図1は、実施例の搬送装置100の模式的側面図と模式的上面図を示している。この実施例における搬送装置100のミッションは、ワークラック90まで移動し、ワークラック90に載置されたワーク80を取り出し、ワーク加工装置まで移動し、把持したワークをワーク加工装置に取り付けることである。以下では特に、ワークラック90まで移動した後にワーク80を取り出す工程について説明する。なお、このとき、ワークラック90に対する搬送装置100の相対的な位置決めが重要なポイントとなる。
【0020】
搬送装置100は、ロボットアーム12を自走台車10に取り付けた構造を有している。自走台車10は、モータ(不図示)が駆動輪2を駆動することで走行することができる。なお、駆動輪で自ら移動することができる搬送装置100は、自走式搬送装置と呼ばれることがある。ロボットアーム12は、6関節(即ち6自由度)を有する多関節多リンク機構を有している。ロボットアームの機械的構造については説明を省略する。ロボットアーム12の先端にはハンド14が取り付けられている。ハンド14は2本のフィンガ16を有している。詳しくは後述するが、このハンド14は、ワーク80をハンドリングする機能と、自走台車10を高精度に位置決めする係合器の機能を兼ねる。自走台車10の内部にはコントローラ18が内蔵されている。
【0021】
自走台車10の走行経路は予めコントローラ18が記憶している。即ち、自走台車10は、予め教示された経路を予め決められたスケジュールで走行することができる。ロボットアーム12の動作パターンも予めコントローラ18が記憶している。ロボットアーム12は、予め教示されたパターンを予め決められたスケジュールで動作することができる。即ち、自走台車10とロボットアーム12は、ティーチングプイレバックで動作する。コントローラ18が、予め教示されたティーチングデータに基づいて、自走台車10とロボットアーム12を制御する。
【0022】
ワーク80とワークラック90について説明する。ワーク80には把持予定部82が設けられている。把持予定部82は、ワーク各部の形状のうち、把持するのに都合がよい箇所が選ばれる。搬送装置100のハンド14の形状、及び、フィンガ16の形状が、把持予定部82の形状に合わせて定められる。ワークラック90は、ワーク80を載置するラックである。ワーク80は、ワークラック90の既定の位置に正確に載置されている。即ち、ワークラック90の位置を基準として、ワーク80の把持予定部82の位置が正確に定まっている。ワークラック90にはまた、基準ブロック92が設けられている。基準ブロック92の取り付け位置は正確に定められている。即ち、ワークラック90の位置を基準として、基準ブロック92の位置が正確に定まっている。基準ブロック92は、ハンド14と係合するように作られている。基準ブロック92は、空間を挟んで水平方向で対向する壁面92a(図2参照)を有している。ハンド14の形状、把持予定部82の形状、及び、基準ブロック92の形状については次に詳しく説明する。
【0023】
図2は、ハンド14、把持予定部82、及び、基準ブロック92の形状と、それらの関係を説明する図である。図2(A)は、ハンド14の構造を示す図である。図2(B)は、把持予定部82の構造と、把持予定部82とハンド14の係合を説明する図である。図2(C)は、基準ブロック92の構造と、基準ブロック92とハンド14の係合を説明する図である。
【0024】
ハンド14は、相互に対向する2本のフィンガ16を有している。2本のフィンガ16は、開閉することができる。ここで「開く」とは、2本のフィンガ16が相互に離れる方向に移動することを意味し、「閉じる」とは、2本のフィンガ16が相互に近づく方向に移動することを意味する。各フィンガ16の内側面(相互に向き合っている面)16aにはくぼみが形成されている。このくぼみは、図2(B)に示すように、把持予定部82の突部82aとちょうど係合する形状である。即ち、図2(b)に示すように、2本のフィンガ16の間に把持予定部82が位置するようにハンド14を位置させて2本のフィンガ16を閉じると、ハンド14が把持予定部82を正確に掴むことができる。別言すると、フィンガ16の内側面16aは、ワーク80を把持するためのワーク当接面を構成している。
【0025】
各フィンガ16の外側面16bには突部が形成されている。この突部は、図2(C)に示すように、基準ブロック92の壁面92aに形成されたくぼみとちょうど係合する形状である。基準ブロック92は、空間を挟んで水平方向で対向する壁面92aを有している。なお、「水平方向で対向する」とは、壁面の法線が水平方向に伸びていること、別言すれば壁面92aは鉛直方向に拡がっていること、を意味する。図2(C)に示すように、一対の壁面92aの間の空間に2本のフィンガ16が位置するようにハンド14を位置させて2本のフィンガ16を開くと、ハンド14が基準ブロック92と係合することができる。別言すると、フィンガ16の外側面16bは、基準ブロック92と係合するための基準ブロック当接面を構成している。上記のとおり、ハンド14は、ワーク80を把持するための機能と、基準ブロック92と係合するための係合器の機能を兼ねる。
【0026】
図3から図6を参照して、搬送装置100がワークラック90に近づき、ワーク80を取り出すまでの動作を説明する。なお、図3から図6ではコントローラ18の図示は省略している。また、フィンガ16の内外面のくぼみと突部、把持予定部82の突部、及び、基準ブロック92の壁面のくぼみも図示を省略している。
【0027】
コントローラ18はまず、予め教示された経路に沿って自走台車10をワークラック90の近傍まで移動させる。このときの経路の最終位置(予定到達位置)は、ロボットアーム12の先端のハンド14(係合器)が基準ブロック92に届く範囲に設定されている。即ちコントローラ18は、ハンド14が基準ブロック92に届く範囲に自走台車10を移動させる。ここで、走行による自走台車10の予定到達位置は図3の符号10(b)の位置であったとする。しかし、移動時の誤差で自走台車10は図3の符号10(a)の位置に到達したとする。予定到達位置10(b)は、自走台車10の中心線100Lがワーク80の中心線82Lと一致する位置に相当する。自走台車10は実際には、走行時に生じる誤差により、予定到達位置10(b)から誤差Dだけ離れた位置10(a)に到達したと仮定する。車輪による走行では位置決め精度は概ね十数mmから数cmである。即ち、誤差Dが十数mmから数cmである。自走台車10が備えるハンド14(係合器)がワークラック90に設けられた基準ブロック92に届く範囲に自走台車10を移動する工程が粗位置決めステップに相当する。
【0028】
ロボットアーム12の初期姿勢は、自走台車10が予定到達位置10(b)に位置したときに、基準ブロック92の一対の壁面92aの間にフィンガ16が位置するように予め設定されている。より詳細には、ロボットアーム12の初期姿勢は、一対のフィンガ16の間の中心線が一対の壁面92aの間の中心線に一致するように予め定められている。即ち、粗位置決めステップでは、コントローラ18は、基準ブロック92の一対の壁面92aの間の空間にフィンガ16が位置するように自走台車10を移動させる。ここで、図3に示すように、自走台車10の実際の到達位置10(a)と予定到達位置10(b)の間に誤差Dが生じているとき、ハンド14の実際の位置も予定位置との間に誤差Dを生じている。
【0029】
次にコントローラ18は、自走台車10の車輪2を受動回転自在状態としながら、ハンド14のフィンガ16を開いてゆき、夫々のフィンガの外側面16bを、基準ブロック92の対向する壁面92aに当接させる。別言すると、コントローラ18は、ハンド14(係合器)を基準ブロック92に係合する。ここで、図2(C)で示したように、フィンガ16の外側面16bと壁面92aにはぴったり嵌り合う突部とくぼみが形成されている。従って、ハンド14が基準ブロック92に係合すると、基準ブロック92に対するハンド14の相対位置が正確に定まる。また、ロボットアーム12は、車輪2を受動回転自在状態とした自走台車10を動かすことができるだけの駆動力を有している。従って、フィンガ16を開いてゆき、ハンド14の位置が基準ブロック92に倣って矯正されるに従って自走台車10の位置も矯正される。図4に示すように、車輪による移動後は符号10(a)に位置していた自走台車10が、ハンド14を基準ブロック92に係合することによって、予定到達位置10(b)へ移動する。こうして、自走台車10の位置が予定到達位置10(b)へ移動する。図4では、自走台車10が実際の到達位置10(a)から予定到達位置10(b)へ移動し、自走台車10の中心線100Lがワーク80の中心線82Lに一致したことを示している。自走台車10の車輪2を受動回転自在状態としながらハンド14(係合器)を基準ブロック92に係合させることによって、自走台車10の位置を予定された位置10(b)へ正確に合わせる工程が、高精度位置決めステップに相当する。上述したように、高精度位置決めステップでは、2本のフィンガ16を開いてゆき、夫々のフィンガの外側面16bと、基準ブロック92の対向する壁面92aの夫々を当接させる。なお、「回転自在」とは、具体的には車輪とモータとの駆動経路を遮断し、車輪が自由に回転できるようにすることである。駆動経路を遮断するために、駆動経路にクラッチが介挿されている。
【0030】
次にコントローラ18は、予め教示されているパターンに従ってロボットアーム12を制御する。ここで、予め教示されているパターンは、ハンド14の中心を自走台車10の中心線100Lに合わせるように定められている。即ち、想定されている手順では、ワーク80の把持予定部82もワーク中心線82L上に位置することが予定されており、自走台車10の中心線100Lがワーク80の中心線82Lと一致する位置に自走台車10が位置するとき、ハンド14の中心を自走台車10の中心線100Lに合わせれば把持ができるようになっている(図5参照)。上記の予定に基づいたロボットアーム動作パターンが予めコントローラ18に記憶されている。前述したように粗位置決めステップと高精度位置決めステップによって自走台車10の位置は予定到達位置10(b)に正確に位置決めされているので、コントローラ18がティーチングプレイバックによって予め定められたパターンに沿ってロボットアームを動作させるとハンド14がワーク80の把持予定部82を確実に把持することができる。なお、ロボットアーム12でワーク80を把持する動作に先立って、自走台車10が移動してしまわないように、コントローラ18は自走台車10の車輪2にブレーキをかける。
【0031】
最後にコントローラ18は、予め定められた軌道に従って自走台車10を移動させ、所望のワーク加工装置までワークを搬送する(図4参照)。
【0032】
以上説明したとおり、搬送装置100は、動作をティーチングプレイバックするだけで自走台車10を正確に位置決めすることができる。搬送装置100は、位置決めのためのセンサやフィードバック制御を必要としないので低コストで実現できる。さらに、ワークを把持するためのハンド(及びフィンガ)を、自走台車の高精度位置決めのための係合器としても用いるので、安価に実現することができる。
【0033】
実施例の搬送装置の好適な変更例を説明する。図7は、他の実施例の搬送装置200の模式的側面図である。上記した実施例の搬送装置100は、ロボットアーム先端のハンド14が係合器を兼ねていた。搬送装置200では、ハンド14とは別個に、自走台車10の側面に係合器214を備えている。係合器214の構造はハンド14と同じであり、ハンド14のフィンガ16と同じ構造のフィンガ216を備えている。また、この搬送装置100と協働するワークラック290は、係合器214に対応する位置に基準ブロック292を備えている。搬送装置200の動作手順は、上記した搬送装置100の動作手順と同じである。
【0034】
実施例の搬送装置100は、フィンガ16の内側面16aがワーク当接面を構成し、外側面16bが基準ブロック当接面を構成した。これとは逆に、フィンガ16の外側面16bがワーク当接面を構成し、内側面16aが基準ブロック当接面を構成してもよい。例えば、ワークの把持予定部の構造を図2(C)に示す基準ブロック92の構造で置き換えるとともに、基準ブロックの構造を図2(B)に示す把持予定部82の構造で置き換えても良い。即ち、ハンドは開閉する2本のフィンガを備えており、フィンガ外側面がワークを把持する際のワーク当接面を構成しているとともに、フィンガ内側面が前記基準ブロックに当接するブロック当接面を構成してもよい。この場合、コントローラ18によるハンド(係合器)の制御手順は次の通りとなる。粗位置決めステップでは、2本のフィンガの間に前記基準ブロックが位置するように自走台車を移動する。高精度位置決めステップでは、2本のフィンガを閉じてゆき、夫々のフィンガの内側面で基準ブロックを挟持する。
【0035】
上記の実施例では、ワークラックからワークを取り出すケースを例に説明した。本明細書が開示する技術は、ワークを搬送し、次いで搬送したワークをワーク加工装置に取り付けるための搬送装置にも適用できる。その場合は、ロボットアームの先端にワーク把持用のハンドと、ハンドとは独立した係合器を取り付ければよい。ロボットアームの先端に実施例のハンド14を2個取り付けた搬送装置がその一例である。或いは、実施例のロボットアームを2本取り付けた搬送装置が他の例である。その場合、第1のハンドでワークを把持しながら、第2のハンドで加工装置に設けられた基準ブロックを把持すればよい。
【0036】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0037】
10:自走台車
12:ロボットアーム
14:ハンド(係合器)
16:フィンガ
18:コントローラ
80:ワーク
82:把持予定部
90:ワークラック
92:基準ブロック
100、200:搬送装置
214:係合器
216:フィンガ
290:ワークラック
292:基準ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置決め基準ブロックを有するワーク用ラックからワークを取り出す、又は、位置決め基準ブロックを有するワーク加工装置へワークを取り付けるための搬送装置であり、
自走台車と、
自走台車に取り付けられたロボットアームと、
自走台車とロボットアームのいずれか一方に取り付けられており、前記位置決め基準ブロックと係合するように構成された係合器と、
コントローラを備えており、
コントローラは、
前記係合器が前記位置決め基準ブロックに届く範囲に自走台車を移動させ、
自走台車の車輪を受動回転自在状態としながら、前記係合器を前記位置決め基準ブロックに係合させることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
ワークをハンドリングするためのハンドが先端に取り付けられたロボットアームが前記係合器を兼ねることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
ハンドは開閉する2本のフィンガを備えており、
フィンガ内側面がワークを把持する際のワーク当接面を構成しているとともに、フィンガ外側面が前記基準ブロックに当接するブロック当接面を構成しており、
位置決め基準ブロックは、空間を挟んで水平方向で対向する壁面を有しており、コントローラは、
前記空間に2本のフィンガが位置するように自走台車を移動し、
次いで2本のフィンガを開いてゆき、夫々のフィンガの外側面と、基準ブロックの対向する壁面の夫々を当接させることを特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
ハンドは開閉する2本のフィンガを備えており、
フィンガ外側面がワークを把持する際のワーク当接面を構成しているとともに、フィンガ内側面が前記基準ブロックに当接するブロック当接面を構成しており、コントローラは、
2本のフィンガの間に前記基準ブロックが位置するように自走台車を移動し、
次いで2本のフィンガを閉じてゆき、夫々のフィンガの内側面で基準ブロックを挟持することを特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項5】
ロボットアームを自走台車に取り付けた搬送装置をワーク用ラック又はワーク加工装置に対して位置決めする方法であり、
搬送装置が備える係合器が、ワーク用ラック又はワーク加工装置に設けられた位置決め基準ブロックに届く範囲に自走台車を移動する粗位置決めステップと、
自走台車の車輪を受動回転自在状態としながら、前記係合器を前記位置決め基準ブロックに係合する高精度位置決めステップと、
を含むことを特徴とする位置決め方法。
【請求項6】
ワークをハンドリングするためのハンドが先端に取り付けられたロボットアームが前記係合器を兼ねることを特徴とする請求項5に記載の位置決め方法。
【請求項7】
ハンドは開閉する2本のフィンガを備えており、
フィンガ内側面がワークを把持する際のワーク当接面を構成しているとともに、フィンガ外側面が前記基準ブロックに当接するブロック当接面を構成しており、
位置決め基準ブロックは、空間を挟んで水平方向で対向する壁面を有しており、
粗位置決めステップでは、前記空間に2本のフィンガが位置するように自走台車を移動し、
高精度位置決めステップでは、2本のフィンガを開いてゆき、夫々のフィンガの外側面と、基準ブロックの対向する壁面の夫々を当接させることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ハンドは開閉する2本のフィンガを備えており、
フィンガ外側面がワークを把持する際のワーク当接面を構成しているとともに、フィンガ内側面が前記基準ブロックに当接するブロック当接面を構成しており、
粗位置決めステップでは、2本のフィンガの間に前記基準ブロックが位置するように自走台車を移動し、
高精度位置決めステップでは、2本のフィンガを閉じてゆき、夫々のフィンガの内側面で基準ブロックを挟持することを特徴とする請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−173218(P2011−173218A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39588(P2010−39588)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】