説明

搬送装置及び搬送装置制御方法

【課題】処理装置が配列された製造ラインにおいて、搬送をコンベヤによって行い、搬送効率の低下を防止する。
【解決手段】工程順に配列された処理装置3a,3b,3cのポート部4に搬送物101(空フープ及び処理部品)を搬送する搬送コンベア1と、搬送コンベア1に沿って移動可能で搬送コンベア1上の搬送物101を処理装置3a,3b,3cの搬入ポート4aに移動させる第1の動作、搬出ポート4bの処理済みの搬送物101を搬送コンベア1上に移動させる第2の動作及び搬入ポート4aに残された空フープを搬出ポート4bに移動させる第3の動作を行う搬送台車2と、各処理装置3a,3b,3cから搬送要求信号を受信し搬送台車2を制御する制御手段とを備え、各処理装置3a,3b,3cから発生している未処理の搬送要求につき、第1乃至第3の動作のいずれか、工程順の位置、待ち時間を加味して優先度を算出し、搬送動作の順序を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、半導体工場などのクリーンルーム内に設置され、コンベヤにより搬送物を搬送する搬送装置及びこの搬送装置を制御するための搬送装置制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板などの製造ラインにおいては、大型の基板上に同一の回路パターンを複数形成し、この基板をダイシング(切断)して所望の回路基板を得て、次のボンディング工程に送るなど、複数の処理工程を経るようになっている。
【0003】
このような複数の処理工程を経る製造ラインにおいては、各処理工程毎に複数の処理装置を配置し、搬送物である半導体フープを順次、各処理装置に搬送するようにしている。このような製造ラインにおいて、各搬送物(半導体フープ)は、制御装置によって個々に管理され、搬送指示が発生した順番に、台車やコンベア等によって、処理装置に搬送されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、製品の製造工程ライン中の複数のシーケンサにより、それぞれ所定の製造作業が完了したときに記憶しておき、製造ライン制御装置により、随時各シーケンサが記憶した情報を読み取り、読み取った情報により作業完了が確認されると、作業完了情報を工程管理システムへ送出し、工程管理システムは、受信した作業完了情報により、所定の製造作業を完了した製品の次工程への分岐の可否を判断し、該当製品が出庫口シーケンサに到達する前に、出庫口シーケンサに対して次工程への分岐指示を行うようにした製造ラインの制御方法が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、届け先や順番がランダムに投入された各種商品を搬入し、商品毎に届け先別等で自動的に仕分けると共に、パレット等の積み付け場所に積み付けて搬出する自動積み付けシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−118209号公報
【特許文献2】特許第3532507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、各搬送物について、搬送指示が発生した順番に処理装置に搬送するようにすると、搬送をコンベヤによって行うようにした場合には、下流側で渋滞が発生してしまい、搬送効率が低下してしまう。すなわち、処理装置が処理中であるときに、その処理装置に搬送されるべき搬送物があると、その処理装置における処理が終了するまでは、その処理装置の搬入ポートへの搬送物の搬入を停止させざるを得ない。
【0008】
このような場合には、搬送物を指定の処理装置の搬入ポートに搬送した後、処理が開始されるまでに待ち時間が生ずる。待ち時間が生じたときには、コンベアを停止させざるを得ないため、搬送効率が低下するのである。
【0009】
そこで、本発明は、前述の実情に鑑みて提案されるものであって、複数の処理工程ごとにそれぞれ複数の処理装置が配列された製造ラインにおいて、各処理装置に搬送物を搬送する搬送装置において、搬送をコンベヤによって行うようにした場合においても、搬送効率を低下させることのない搬送装置及び搬送装置制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、以下の構成のいずれか一を有するものである。
【0011】
〔構成1〕
本発明に係る搬送装置は、一列の工程順に配列された複数の処理装置のポート部に対し空フープ及び処理部品からなる搬送物を搬送する搬送コンベアと、アームを備え搬送コンベアに沿って移動操作可能であり搬送コンベア上の処理前の搬送物を処理装置の搬入ポートに移動させる第1の搬送動作、処理装置の搬出ポートの処理済みの搬送物を搬送コンベア上に移動させる第2の搬送動作、及び、搬入ポートに残された空フープを搬出ポートに移動させる第3の搬送動作を行う搬送台車と、各処理装置から搬送要求信号を受信しこの搬送要求信号に基づいて搬送台車の動作を制御する制御手段とを備え、制御手段は、複数の処理装置から同時に発生している未処理の搬送要求について、少なくとも、それが第1乃至第3の搬送動作のいずれであるか、搬送要求をしている処理装置の工程順における位置、及び、その搬送要求がなされてからの待ち時間を加味した優先度を算出し、この優先度に従って、搬送動作の順序を決定することを特徴とするものである。
【0012】
〔構成2〕
本発明に係る搬送装置制御方法は、構成1を有する搬送装置を用いて、少なくとも、それが第1乃至第3の搬送動作のいずれであるか、搬送要求をしている処理装置の工程順における位置、及び、その搬送要求がなされてからの待ち時間を加味した優先度を算出し、この優先度に従って、搬送動作の順序を決定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
構成1を有する本発明に係る搬送装置においては、制御手段は、複数の処理装置から同時に発生している未処理の搬送要求について、少なくとも、それが第1乃至第3の搬送動作のいずれであるか、搬送要求をしている処理装置の工程順における位置、及び、その搬送要求がなされてからの待ち時間を加味した優先度を算出し、この優先度に従って、搬送動作の順序を決定するので、搬送コンベアにおける搬送物の渋滞を防止することができ、搬送効率を向上させることができる。
【0014】
構成2を有する本発明に係る搬送装置制御方法においては、複数の処理装置から同時に発生している未処理の搬送要求について、少なくとも、それが第1乃至第3の搬送動作のいずれであるか、搬送要求をしている処理装置の工程順における位置、及び、その搬送要求がなされてからの待ち時間を加味した優先度を算出し、この優先度に従って、搬送動作の順序を決定するので、搬送コンベアにおける搬送物の渋滞を防止することができ、搬送効率を向上させることができる。
【0015】
すなわち、本発明は、複数の処理工程ごとにそれぞれ複数の処理装置が配列された製造ラインにおいて、各処理装置に搬送物を搬送する搬送装置において、搬送をコンベヤによって行うようにした場合においても、搬送効率を低下させることのない搬送装置及び搬送装置制御方法を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る搬送装置の構成を示す平面図である。
【図2】本発明に係る搬送装置の構成を示す正面図である。
【図3】本発明に係る搬送装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明に係る搬送装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
〔搬送装置の構成〕
図1は、本発明に係る搬送装置の構成を示す平面図である。
【0019】
本発明に係る搬送装置は、図1及び図2に示すように、例えば、半導体フープなど、空フープ及び処理部品からなる搬送物101を搬送する搬送コンベア1を有している。この搬送コンベア1は、載置された搬送物101を、一列の工程順に配列された複数の処理装置3a,3b,3c,・・・のポート部4の近傍を通るように搬送する。
【0020】
複数の処理装置3a,3b,3c,・・・は、第1の処理工程を実行する複数の第1の処理装置3a,3a,・・・、第2の処理工程を実行する複数の第1の処理装置3b,3b,・・・、第3の処理工程を実行する複数の第1の処理装置3c,3c,・・・というように、各処理工程ごとにそれぞれ複数台が設置されている。これら処理工程の数及び各処理工程における処理装置の台数は、工程の内容に応じて、任意に設定される。
【0021】
各処理装置3a,3b,3c,・・・は、それぞれのポート部4に、搬入ポート4a及び搬出ポート4bを備えている。これら処理装置3a,3b,3c,・・・は、搬入ポート4aから搬送物101の処理部品を搬入し、搬入した処理部品に対して所定の処理を施して、搬出ポート4bに搬出するように構成されている。空フープは、処理部品が処理されている間に、搬入ポート4aから、処理装置3a,3b,3c,・・・内に搬入されずに搬入ポート4aに残され、搬出ポート4bに移動される。そして、処理が終了して搬出ポート4bに搬出された処理部品は、搬出ポート4bに移動された空フープに載置される。
【0022】
搬送物101が半導体フープである場合、搬入ポート4aには、空フープに処理部品である半導体基板が載置されたものが搬送され、半導体基板のみが処理装置3a,3b,3c,・・・内に搬入され、処理される。空フープは、半導体基板が処理されている間に、搬入ポート4aから搬出ポート4bに移動される。そして、処理が終了して搬出ポート4bに搬出された半導体基板は、搬出ポート4bに移動された空フープに載置される。
【0023】
図2は、本発明に係る搬送装置の構成を示す正面図である。
【0024】
そして、搬送コンベア1の上方には、図1及び図2に示すように、搬送台車2が設置されている。この搬送台車2は、搬送コンベア1に沿って移動操作可能であり、アーム5を備えている。このアーム5は、搬送コンベア1上の処理前の搬送物101を搬入ポート4aに移動させる第1の搬送動作(以下、「ジョブ(1)」という。)、搬出ポート4bの処理済みの搬送物101を搬送コンベア1上に移動させる第2の搬送動作(以下、「ジョブ(2)」という。)、及び、搬入ポート4aの空フープを搬出ポート4bに移動させる第3の搬送動作(以下、「ジョブ(3)」という。)が可能である。
【0025】
図3は、本発明に係る搬送装置の構成を示すブロック図である。
【0026】
この搬送装置において、搬送台車2は、図3に示すように、制御手段となる搬送台車制御装置6により、搬送台車ドライバ11を介して制御されて動作する。搬送台車制御装置6は、ジョブ管理部7、装置管理部8、搬送順序決定部9及び搬送指示実行部10を有して構成されている。
【0027】
ジョブ管理部7は、各処理装置3a,3b,3c,・・・が備えている制御部からの搬送要求信号を受信し、「搬送要求の発生位置」、「搬送要求の発生時刻」及び「搬送ジョブ(ジョブの種類)」を管理する。装置管理部8は、各処理装置3a,3b,3c,・・・のポート部4の状況及び各処理装置3a,3b,3c,・・・における処理状況を管理する。搬送順序決定部9は、ジョブ管理部7及び装置管理部8からの情報に基づいて、搬送要求の状況、搬送コンベア1及び搬送台車2の状況を把握し、搬送指示の優先度を算出し、「搬送ジョブ」を決定する。搬送指示実行部10は、搬送台車2に「搬送ジョブ」を指示する信号を送出し、搬送ジョブの完了までを管理する。
【0028】
〔搬送装置の動作〕
この搬送装置においては、搬送台車制御装置6による制御によって、本発明に係る搬送装置の制御方法が実施されて、以下の動作が実行される。すなわち、搬送台車2は、各処理装置3a,3b,3c,・・・に対して、アーム5により、搬送コンベア1上から所定の処理装置の搬入ポート4aに搬送物101を搬送する(「ジョブ(1)」)。搬入ポート4aに搬送された搬送物は、その処理装置において、所定の処理をなされる。この間、搬送台車2のアーム5は、搬入ポート4aの空フープを搬出ポート4bに移動させておく(「ジョブ(3)」)。
【0029】
処理装置における所定の処理の終了後には、搬送台車2のアーム5は、処理が終了された搬送物101を搬出ポート4bから搬送コンベア1上へ搬送する(「ジョブ(2)」)。このとき、搬送物101の搬送コンベア1上への搬送の前に、搬送コンベア1上に必要な空きエリアを確保する。すなわち、搬送コンベア1上に他の搬送物101が存在している場合は、搬送コンベア1上に必要な空きエリアが生ずるまでは、搬出ポート4bから搬送コンベア1上への搬送は行わない。搬送コンベア1上に必要な空きエリアができた時点で、搬出ポート4bから搬送コンベア1上への搬送を行う。
【0030】
図4は、本発明に係る搬送装置の動作を示すフローチャートである。
【0031】
すなわち、搬送台車制御装置6は、図4のフローチャートに示すように、ステップst1で搬送物101が所定の処理装置の前に搬送されると、ステップst2に進み、搬送台車2により、搬送物101を搬入ポート(INポート)4aに搬送し(「ジョブ(1)」)、ステップst3に進む。
【0032】
ステップst3では、当該処理装置により、搬送物101のうちの処理部品に対して、所定の処理が施される。このとき、当該処理装置には、処理部品のみが搬入され、空フープは、搬入ポート4aに残されている。
【0033】
次のステップst4では、搬送台車制御装置6は、搬入ポート4aに残された空フープを、当該処理装置の搬出ポート4bに移動させ、ステップst5に進む。
【0034】
ステップst5では、搬送台車制御装置6は、当該処理装置による処理が完了したか否かを判別する。処理が完了していればステップst6に進み、処理が完了していなければステップst5に留まる。
【0035】
ステップst6では、当該処理装置の搬出ポート(OUTポート)4bの前の搬送コンベア1上に空きエリアがあるか否かを判別する。搬送コンベア1上に空きエリアがあれば、ステップstステップst7に進み、搬送コンベア1上に空きエリアがなければ、ステップst6に留まる。
【0036】
ステップst7では、搬送台車制御装置6は、搬送台車2により、処理が終了された搬送物101を搬出ポート4bから搬送コンベア1上へ搬送し(「ジョブ(2)」)、ステップst8に進む。ステップst8では、搬送コンベア1上に搬送された搬送物101は、次の工程を実行する処理装置に搬送される。
【0037】
この動作は、一つの処理装置に対する動作として説明しているが、処理装置3a,3b,3c,・・・は複数台存在しているので、搬送台車制御装置6は、各処理装置3a,3b,3c,・・・について搬送順序の優先度を決定し、この優先度に応じて、搬送台車2を各処理装置3a,3b,3c,・・・のいずれかの前に移動させつつ、各処理装置3a,3b,3c,・・・について並行して、前述の動作を行う。
【0038】
搬送台車制御装置6は、以下の〔表1〕に示すように、搬送順序の優先度の決定を行う。まず、各処理装置3a,3b,3c,・・・について、同時に発生している各処理装置3a,3b,3c,・・・からの未処理の搬送要求について、ジョブ種類による優先度は、「ジョブ(1)」は「ジョブ(2)」よりも高く、「ジョブ(2)」は「ジョブ(3)」よりも高いものとする((1)>(2)>(3))。また、搬送台車制御装置6は、搬送要求がなされてからの待ち時間を確認し、優先度には、待ち時間の要素を加味する。
【0039】
また、工程順における位置(工程番号)については、搬送コンベア1の下流側の工程の優先度は、上流側の工程の優先度よりも高いものとする。
【0040】
さらに、搬送台車制御装置6は、搬送装置の状況を確認し、「ジョブ(3)」(搬入ポートから搬出ポートへの空フープの搬送)は、以下の条件時にのみ行うこととする。すなわち、「ジョブ(3)」は、当該処理装置において処理中の搬送物があり、かつ、他の搬入ポートに処理前の搬送物がない場合に行う。この条件が満たされる場合には、「ジョブ(3)」の優先度を高くする。
【0041】
【表1】

【0042】
より具体的には、これら優先度を判断する各項目に、重み付けを行い、以下の式に従って、優先度を算出する。
〔優先度〕=W1*〔ジョブ種類〕+W2*〔待ち時間〕+W3*〔工程番号〕+W4*〔「ジョブ(3)」の優先度〕
このようにして、各処理工程から送信される搬送要求について、優先度を決定し、この優先度の順序に従って搬送台車2による搬送を行うことにより、搬送コンベア1の渋滞を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、例えば、半導体工場などのクリーンルーム内に設置され、コンベヤにより搬送物を搬送する搬送装置に適用され、また、この搬送装置を制御するための搬送装置制御方法に適用される。
【符号の説明】
【0044】
1 搬送コンベア
2 搬送台車
3a 第1の処理装置
3b 第2の処理装置
3c 第3の処理装置
4 ポート部
4a 搬入ポート
4b 搬出ポート
5 アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一列の工程順に配列された複数の処理装置のポート部に対し、空フープ及び処理部品からなる搬送物を搬送する搬送コンベアと、
アームを備え、前記搬送コンベアに沿って移動操作可能であり、搬送コンベア上の処理前の搬送物を処理装置の搬入ポートに移動させる第1の搬送動作、処理装置の搬出ポートの処理済みの搬送物を搬送コンベア上に移動させる第2の搬送動作、及び、搬入ポートに残された空フープを搬出ポートに移動させる第3の搬送動作を行う搬送台車と、
前記各処理装置から搬送要求信号を受信し、この搬送要求信号に基づいて、前記搬送台車の動作を制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、複数の処理装置から同時に発生している未処理の搬送要求について、少なくとも、それが第1乃至第3の搬送動作のいずれであるか、搬送要求をしている処理装置の工程順における位置、及び、その搬送要求がなされてからの待ち時間を加味した優先度を算出し、この優先度に従って、搬送動作の順序を決定する
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
請求項1記載の搬送装置を用いて、少なくとも、それが第1乃至第3の搬送動作のいずれであるか、搬送要求をしている処理装置の工程順における位置、及び、その搬送要求がなされてからの待ち時間を加味した優先度を算出し、この優先度に従って、搬送動作の順序を決定する
ことを特徴とする搬送装置制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−16619(P2011−16619A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161987(P2009−161987)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】