説明

搬送装置

【課題】搬送装置におけるエアの消費量を抑制して省エネ化を促進すると共に、ワークの保持状態を確実且つ簡便に確認する。
【解決手段】本体部14には、エアが供給される第2供給通路44とベース部材12の吐出孔24との連通状態を切り換える供給切換機構16が設けられ、前記第2供給通路44に連通した連通路36におけるエアの圧力がワークの接近によって上昇することにより、前記供給切換機構16によって前記第2供給通路44と吐出孔24とが連通状態へと切り換えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを圧力流体による吸引作用下に保持して搬送することが可能な搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、半導体ウェハの搬送や、液晶、プラズマディスプレイ等の表示装置を構成するシート状部品からなるワークを、気体の流れによって生じるベルヌーイ効果を利用して吸引した状態で搬送可能な搬送装置が知られている。
【0003】
このような搬送装置は、搬送ヘッドの端面にワークを保持する保持面が形成され、該保持面の中央部には圧力流体が供給される吐出部が窪んで形成される。そして、搬送ヘッドの内部を通じて圧力流体を吐出部へと供給し、該吐出部から外周側へと流通させることにより、前記搬送ヘッドの保持面に負圧を発生させてワークを非接触で保持する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、近年、上述したような圧力流体の供給作用下にワークを保持搬送可能な搬送装置において、省エネ化やコスト削減等の観点から前記圧力流体の消費量を抑制したいという要請がある。
【0005】
【特許文献1】特開2003−245885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に係る従来技術においては、搬送ヘッドをワークに接近させて該ワークを保持するまでの間に圧力流体を常に供給した状態としているため、前記ワークを実際に保持するまでの間に消費される圧力流体の消費量が増大してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、エアの消費量を削減して省エネ化を促進すると共に、ワークの保持状態を確実且つ簡便に確認することが可能な搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、ボディと、
前記ボディの端部に設けられ、ワークに臨む保持面と、
前記ボディの内部に形成され、エア供給部から供給されたエアを前記保持面側に形成された吐出孔へと供給する第1通路と、
前記第1通路と別個に設けられ、前記エア供給部に連通すると共に前記ワーク側に向かって前記エアを導出する導出ポートに接続される第2通路と、
前記第1通路上に設けられ、該第1通路と前記吐出孔との間の連通状態を切換自在な切換機構と、
前記保持面における前記ワークの保持・非保持状態を検出可能な検出手段と、
を備え、
前記切換機構は、前記第2通路における前記エアの圧力変化に基づいて変位し、前記第1通路を連通させる切換弁を有することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、ボディの第1及び第2通路にエアが供給され、前記第2通路に供給されたエアが導出ポートを経てワーク側に導出される。そして、ワークがボディの保持面に対して接近し、該保持面で保持可能な距離まで到達することにより、前記第2通路内におけるエアの圧力が上昇し、その圧力上昇に伴って切換機構の切換弁が変位して第1通路を連通状態へと切り換え、前記エアが前記第1通路から吐出孔へと流通する。
【0010】
従って、搬送装置においてワークを保持可能に到達するまでは、第1通路及び吐出孔を通じた保持面側へのエア供給を停止し、前記ワーク保持可能な距離となった際に、切換機構の切換作用下に前記保持面へとエアを供給して前記ワークを保持することが可能となる。その結果、搬送装置におけるエアの消費量を削減して省エネ化及びコスト削減を図ることが可能となる。また、検出手段を設けることによってワークの保持・非保持状態を確実且つ容易に検出することができる。
【0011】
さらに、導出ポートを、ボディの保持面に開口して設けるとよい。
【0012】
さらにまた、導出ポートを、ボディとは別個の部材に設け、ワークと対峙するように開口して形成することにより、搬送装置のボディに対して前記導出ポートの位置をその使用環境等に応じて自在に配置することができる。
【0013】
またさらに、検出手段を、供給されるエアの流量を検出可能な流量センサとし、前記エアの流量変化に基づいてワークの保持・非保持状態を検出させるとよい。これにより、エアの流量が増大した際に、切換機構の切換作用下に前記エアが保持面へと供給されてワークが保持状態であることを容易に確認することが可能となる。
【0014】
また、保持面に、ワークを保持する際に該ワークが当接可能な当接部材を設けることにより、前記ワークを前記当接部材に当接させて保持することができるため、このワークの保持状態において該ワークが搬送装置に対して移動してしまうことが防止され、前記ワークを搬送装置に対して位置ずれさせることなく搬送することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0016】
すなわち、導出ポートを経てワーク側にエアを導出し、前記ワークの接近に伴って第2通路内における前記エアの圧力が上昇することにより、切換機構の切換弁が変位して第1通路が連通状態へと切り換え、前記エアを保持面へと供給して前記ワークを保持しているため、搬送装置におけるエアの消費量を削減して省エネ化及びコストの削減を図ることが可能となる。しかも、検出手段を設けることによってワークの保持・非保持状態を確実且つ容易に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る搬送装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0018】
図1において、参照符号10は、本発明の第1の実施の形態に係る搬送装置を示す。
【0019】
この搬送装置10は、図1〜図6に示されるように、円盤状に形成されたベース部材(ボディ)12と、前記ベース部材12の上部に設けられる本体部(ボディ)14と、前記本体部14に設けられ、前記ベース部材12に対するエアの供給状態を切り換える供給切換機構(切換機構)16とを含む。
【0020】
ベース部材12は、所定厚さからなる円盤状のブロック体からなり、その上端面の中央部に本体部14が図示しないボルトを介して連結されると共に、下端面に形成されたワーク保持面(保持面)18がワークWに対峙するように配設される。
【0021】
このベース部材12は、中央部に形成され軸線方向に沿って延在する第1供給通路(第1通路)20と、該第1供給通路20を中心として半径外方向に延在する複数(例えば、4本)の放射通路(第1通路)22と、該放射通路22の外端部に接続され半径内方向に延在する複数(例えば、4本)の吐出孔24とを有し、前記吐出孔24がベース部材12の下端面に形成された環状凹部26まで貫通している。すなわち、第1供給通路20は、複数の放射通路22及び吐出孔24を通じて環状凹部26と連通している。
【0022】
第1供給通路20は、一端部がベース部材12の上端面まで延在して開口すると共に、他端部が複数の放射通路22に対してそれぞれ接続されている。
【0023】
放射通路22は、第1供給通路20を中心として互いに等角度離間して半径外方向に延在し、ベース部材12の外周面まで貫通している。すなわち、放射通路22は、ベース部材12の軸線と直交した水平方向に延在している。なお、放射通路22の外端部は、封止プラグ28が挿入されて閉塞されているため、前記放射通路22は外部に対して非連通状態にある。
【0024】
吐出孔24は、放射通路22の外端部近傍において接続通路30を介して接続される。なお、接続通路30の上端部にも封止プラグ28が挿入されているため、前記接続通路30がベース部材12の外部と非連通状態にある。また、吐出孔24は、環状の環状凹部26に対して接線方向となるように接続される。
【0025】
環状凹部26は、ベース部材12の下端面から上端面側に向かって徐々に幅狭となる断面略台形状に形成され、その外周側に吐出孔24がそれぞれ接続されて開口している。
【0026】
一方、複数の放射通路22における隣接する2つの放射通路22の間には、半径外方向に向かって延在する検出通路32が形成されると共に、前記検出通路32の外端部近傍には、ベース部材12の下端面に向かって延在する検出ポート(導出ポート)34が接続される。検出通路32は、放射通路22と同様にベース部材12の軸線と直交方向に延在し、その外端部が封止プラグ28によって封止されている。また、検出通路32の内端部は、本体部14に形成された連通路(第2通路)36に接続される。
【0027】
検出ポート34は、ベース部材12の軸線と略平行に形成され、ベース部材12の下端面に開口すると共に、環状凹部26に対して半径外方向に所定間隔離間して設けられる。
【0028】
本体部14は、エアの供給される供給ポート38を有するメインボディ40と、該メインボディ40の側部に接続されるサブボディ42とを含む。
【0029】
メインボディ40は、上面に供給ポート38が形成され、前記供給ポート38の下部には下方に向かって一直線上に延在する第2供給通路(第1通路)44が接続される。第2供給通路44は、ベース部材12の第1供給通路20と一直線上となるように形成されて接続される。
【0030】
供給ポート38は、チューブ46を介してエア供給源48(図2参照)に接続され、前記エア供給源48から前記供給ポート38へとエアが供給される。なお、供給ポート38とエア供給源48との間には、前記エア供給源48から供給ポート38へと供給されるエアの流量を検出可能な流量センサ50が設けられている。
【0031】
また、供給ポート38には、側方に向かって延在するバイパス通路(第2通路)52が接続され、該バイパス通路52を通じてサブボディ42の連通路36と連通している。
【0032】
さらに、メインボディ40には、第2供給通路44と直交し、供給切換機構16の設けられる装着孔54が形成され、前記装着孔54は前記メインボディ40の側部に設けられて前記第2供給通路44と交差するように貫通している。装着孔54は、大径部位と、該大径部位に隣接した小径部位とから構成され、前記小径部位がサブボディ42側(矢印A方向)となるように形成される。また、装着孔54は、小径部位を通じてサブボディ42のバイパス通路52と連通すると共に、第2供給通路44と大径部位との間に形成されたサブ通路56を通じて該第2供給通路44と連通している。
【0033】
また、メインボディ40には、サブボディとの接合面に溝部を介してシール部材60aが設けられ、前記メインボディ40及びサブボディ42と外部との間の気密が保持されると共に、ベース部材12との接合面には、第2供給通路44を囲むように設けられた環状溝にシール部材60bが設けられ、前記ベース部材12の第1供給通路20及び前記第2供給通路44と外部との間の気密を保持している。
【0034】
サブボディ42は、メインボディ40と略同一高さで形成され、メインボディ40に臨む接合面には、供給ポート38に供給されたエアの流通する連通路36が形成される。この連通路36は、接合面と平行に形成されベース部材12側に向かって延在すると共に、装着孔54に臨む部位においてメインボディ40から離間する方向(矢印A方向)に直角に折曲し、該装着孔54から離間する方向に延在した後、再び折曲してベース部材12側に向かって延在している。そして、連通路36は、ベース部材12の検出通路(第2通路)32に接続されて連通している。なお、サブボディには、ベース部材12との接合面に連通路36を囲むようにシール部材60cが設けられ、前記検出通路32及び前記連通路36と外部との間の気密を保持している。
【0035】
すなわち、供給ポート38に供給されたエアの一部が、バイパス通路52、連通路36を通じて検出通路32へと供給された後、ベース部材12の検出ポート34から外部へと導出される。
【0036】
また、サブボディ42には、メインボディ40のバイパス通路52と同軸上にニードル孔62が形成され、供給切換機構16を構成する調整ニードル64(後述する)が設けられる。すなわち、ニードル孔62は、バイパス通路52と同様に、メインボディ40の第2供給通路44と直交方向(矢印A、B方向)に延在している。
【0037】
供給切換機構16は、装着孔54の内部に設けられ、該装着孔54の小径部位に沿って変位自在なスプール弁66と、大径部位に螺合されるホルダ68と、前記スプール弁66とホルダ68との間に介装されるスプリング70とを含む。
【0038】
また、バイパス通路52から連通路36へと流通するエアの流量を調整可能な調整ニードル64からなる流量調整機構を有する。この調整ニードル64は、スプール弁66に付与される背圧を最適に調整可能に設けられる。
【0039】
スプール弁66は、装着孔54の小径部位に挿通され、第2供給通路44の連通状態を切り換える軸部72と、前記軸部72に対して拡径し、前記装着孔54の大径部位に挿入されるフランジ部74とを有する。この軸部72には、第2供給通路44を閉塞可能なランド部76と、前記ランド部76に対して半径内方向に窪んで前記第2供給通路44を連通させる連通部78とが形成され、前記ランド部76が前記連通部78に対してフランジ部74側(矢印B方向)に設けられる。なお、ランド部76及び連通部78の幅寸法は、第2供給通路44の直径より大きく設定されている。
【0040】
すなわち、スプール弁66は、装着孔54に沿って変位することにより第2供給通路44に対して直交方向(矢印A、B方向)に変位し、その変位作用下にランド部76又は連通部78が前記第2供給通路44に臨むように配置されることによって該第2供給通路44の連通状態を切り換える。
【0041】
ホルダ68は、外周面にねじが刻設され、装着孔54の大径部位に対して螺合されると共に、その略中央部には、スプール弁66側(矢印A方向)に向かって突出したガイドピンが中央部に形成され、スプリング70の一端部が前記ガイドピンの外側に挿通されることによって前記スプリング70がガイドされる。
【0042】
スプリング70は、例えば、コイルスプリングからなり、スプール弁66のフランジ部74とホルダ68の端部との間に介装され、前記スプール弁66を前記ホルダ68から離間させる方向(矢印A方向)へと付勢している。
【0043】
調整ニードル64は、その一端部側の外周面に形成されたねじを介してニードル孔62に螺合されると共に、他端部には、先端に向かって徐々に縮径する先細部80が形成される。この先細部80は、連通路36を通じてバイパス通路52の内部に挿入される。そして、調整ニードル64を螺回させることによって該調整ニードル64がニードル孔62に沿って進退変位する。この調整ニードル64の外周面には、環状溝を介してOリング82が装着され、ニードル孔62の内周面に摺接している。これにより、連通路36及びバイパス通路52の内部を流通するエアが外部に漏出することがなく、前記連通路36及びバイパス通路52と外部との気密が保持される。
【0044】
すなわち、バイパス通路52を通じて連通路36へと流通するエアは、該バイパス通路52の内壁面と先細部80との間を通じて流通することとなるため、前記調整ニードル64を軸線方向(矢印A、B方向)に沿って進退動作させ、前記バイパス通路52と先細部80との間の間隙を調整することにより、前記連通路36を通じて検出ポート34へと流通するエアの流量を自在に調整可能となる。
【0045】
本発明の実施の形態に係る搬送装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。なお、搬送装置10が、ワークWに対して接近していない状態を初期状態として説明する。
【0046】
この初期状態において、エア供給源48から供給ポート38へとエアが供給され、前記エアが第2供給通路44へ供給されると共に、バイパス通路52を通じて連通路36へと流通する。この際、スプール弁66が、スプリング70の弾発作用下にホルダ68から離間する方向(矢印A方向)に変位し、フランジ部74が大径部位と小径部位との段差に係合され、且つ、ランド部76が第2供給通路44に臨んだ弁閉状態にある。そのため、第2供給通路44の連通がランド部76によって遮断され、該第2供給通路44に供給されたエアがベース部材12の第1供給通路20及び放射通路22へと流通することがない。
【0047】
一方、バイパス通路52を流通するエアは、調整ニードル64の先細部80と該バイパス通路52との間の間隙を通じて流通し、所定流量に調整された後に連通路36を通じてベース部材12の検出通路32へと供給される。そして、検出通路32から検出ポート34へと流通してベース部材12の下方に向かって導出される。この際、ベース部材12の下方には未だワークWが配置されていない状態であるため、検出ポート34、検出通路32及び連通路36の内部におけるエアの圧力の変化はわずかである。換言すれば、エアの圧力は、スプール弁66をスプリング70の弾発力に抗してホルダ68側(矢印B方向)へと変位させるほどの大きさには未だ達していない状態にある。
【0048】
次に、図示しないロボットアーム等を介して搬送装置10をワークWと対峙する位置まで移動させ、図6に示されるように、ベース部材12のワーク保持面18が前記ワークWの上方となるように移動させる。そして、搬送装置10のワーク保持面18と前記ワークWとが対峙し、所定間隔離間した平行な状態で、前記搬送装置10を前記ワークWに対して徐々に接近させていく。
【0049】
これにより、検出ポート34の下方にワークWが位置している状態となり、それに伴って、前記ワークWが前記検出ポート34から導出されるエアの流通抵抗となる。すなわち、検出ポート34から下方に向かって導出されるエアの流れが、該検出ポート34の下方に配置されたワークWによって妨げられる。
【0050】
その結果、検出ポート34にエアを供給している検出通路32及び連通路36内における前記エアの圧力が上昇し、前記連通路36におけるエアの圧力が上昇することによってスプール弁66の端部がその背圧によってホルダ68側(矢印B方向)に向かって押圧される。
【0051】
そして、スプール弁66が、連通路36内におけるエアの圧力上昇に伴ってスプリング70の弾発力に抗してホルダ68側(矢印B方向)へと変位し、該スプール弁66の連通部78が第2供給通路44に臨む位置まで変位した弁開状態となる(図6参照)。
【0052】
その結果、供給ポート38から第2供給通路44へと供給されていたエアが、スプール弁66の連通部78を通じてベース部材12の第1供給通路20へと流通する。この際、搬送装置10に供給されるエアの流量が増大し、その流量変化が流量センサ50によって検出される。これにより、搬送装置10によるワークWの保持が開始されたことが確認される。すなわち、流量センサ50は、ワークWの保持・非保持状態を検出可能な検出手段として機能する。
【0053】
この場合、第2供給通路44を流通するエアが、サブ通路56を通じて装着孔54側へと流通し、スプール弁66のフランジ部74をホルダ68側(矢印B方向)へと押圧しているため、連通路36におけるエアの背圧が低下した場合でも、前記スプール弁66が第2供給通路44のエアによって押圧されているため、前記スプール弁66がホルダ68側へと変位した弁開状態で保持される。
【0054】
このエアが、第1供給通路20から放射通路22にそれぞれ供給され、吐出孔24から環状凹部26へと導出される。この吐出孔24は、環状凹部26に対して接線方向となるように配置されているため、該吐出孔24から導出されたエアが前記環状凹部26に沿って旋回するように流通する。これにより、環状凹部26内においてエアによる旋回流が発生し、該エアは断面略台形状に窪んだ環状凹部26に沿ってその流速を増大させながら流通する。
【0055】
そして、ベース部材12のワーク保持面18と対向する位置に配置されたワークWと該ワーク保持面18との間を旋回流となったエアが前記ワーク保持面18に沿って高速で外周側へと流通することにより、前記ワーク保持面18とワークWとの間が負圧となる。
【0056】
これにより、ベース部材12のワーク保持面18と対向する位置に配置されたワークW(例えば、ウェハ等)が環状凹部26において発生する負圧により吸引され、一方、ベース部材12のワーク保持面18とワークWとの間に介在するエア(正圧)により反発力を受け、前記負圧と正圧とのバランスによってワークWが非接触状態で保持される。その結果、図6に示されるように、搬送装置10のワーク保持面18においてワークWを保持した状態で所定位置に搬送される。
【0057】
以上のように、第1の実施の形態では、搬送装置10におけるワーク保持面18とワークWとの離間距離を検出し、該ワークWが吸着可能な距離に到達した際に、供給切換機構16を切り換えて前記ワーク保持面18に対するエアの供給を開始して前記ワークWを保持することができる。その結果、ワークWの保持を行うまでの間には、ワーク保持面18に対するエアの供給を停止し、該ワークWを保持可能になった時点で前記エアの供給を開始するため、前記搬送装置10におけるエアの消費量を削減することが可能となる。
【0058】
ここで、第1の実施の形態に係る搬送装置10のエア消費量と、従来技術に係る搬送装置のエア消費量とを図7を参照しながら比較する。なお、図7中における実線が、第1の実施の形態に係る搬送装置10のエア消費量Cを示す特性であり、破線が、従来技術に係る搬送装置のエア消費量Dを示す特性である。
【0059】
この図7に示されるように、本実施の形態に係る搬送装置10は、ワークWが非保持状態にある状態(図7中、E以前)では、エア消費量Cが少なく、前記ワークWを吸着して保持し始めると共に前記エア消費量Cが増大し始め(図7中、E時点)、前記ワークWの保持状態(図7中、E以降)において一定に保持されることが諒解される。これに対して、従来技術に係る搬送装置では、ワークWの非保持状態から保持状態まで一定のエア消費量Dとなっていることが諒解される。
【0060】
このように、第1の実施の形態に係る搬送装置10では、エアの供給状態を切換可能な供給切換機構16を備えていない従来の搬送装置のように、ワークWを保持する前から常にエアを供給し続けておく必要がなく、前記エアの消費量を好適に削減して省エネ化及びコストの削減を図ることができる。
【0061】
また、エア供給源48と供給ポート38との間に設けられた流量センサ50によってエアの流量変化を検出することにより、前記エアの流量増減に基づいてワークWの保持・非保持状態を確実且つ容易に確認することができる。
【0062】
次に、第2の実施の形態に係る搬送装置100を図8及び図9に示す。なお、上述した第1の実施の形態に係る搬送装置10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0063】
この第2の実施の形態に係る搬送装置100では、該搬送装置100のワーク保持面18に対するワークWの接近状態を検知するための検出ポート102を、前記ワークWを保持可能なベース部材12とは別個の検出ブロック104に設け、前記検出ブロック104とサブボディ42の連通路36とを配管106を介して接続している点で、第1の実施の形態に係る搬送装置10と相違している。
【0064】
検出ブロック104は、例えば、搬送装置100から所定距離だけ離間した位置に設けられ、検出ポート102と、該検出ポート102に連通した接続ポート108とを有する。一方、搬送装置100には、サブボディ42の側面に連通路36と連通したサブポート110が形成され、該サブポート110と接続ポート108とが配管で接続されている。そして、供給ポート38に供給されたエアが、バイパス通路52、連通路36を介してサブポート110へと導かれ、配管106を介して検出ポート102へと供給される。
【0065】
この第2の実施の形態では、搬送装置100のワーク保持面18に対するワークWの接近状態を検知可能な検出ポート102を、該搬送装置100とは別体として離間させて配置することが可能となるため、前記搬送装置100の設置場所にかかわらず検出ポート102の配置を自在に設定することが可能となる。
【0066】
次に、第3の実施の形態に係る搬送装置150を図10及び図11に示す。なお、上述した第1の実施の形態に係る搬送装置10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0067】
この第3の実施の形態に係る搬送装置150では、ワーク保持面18に対するワークWの接近状態を検知するための検出ポート及び検出通路を別個に独立して設けずに、第1供給通路20、第2供給通路44及び放射通路160と共用している点で、第1及び第2の実施の形態に係る搬送装置10、100と相違している。
【0068】
この搬送装置150は、サブボディ152の連通路154が、メインボディ40に形成されたリターン通路158を介して第2供給通路44におけるスプール弁66の下流側に接続されると共に、ベース部材12の第1供給通路20が、複数の放射通路160に接続され、該放射通路160が半径外方向に向かって傾斜しながらワーク保持面18まで延在する吐出孔162に接続されている。
【0069】
そして、供給ポート38に供給されたエアは、搬送装置150がワークWに対して接近していない初期状態において、バイパス通路52、連通路154を通じてリターン通路158から第2供給通路44へと供給され、第1供給通路20及び放射通路160を通じて複数の吐出孔162からそれぞれ下方に向かって導出される。この際、ベース部材12の下方に未だワークWが配置されていない状態であるため、吐出孔162、放射通路160及び連通路154の内部におけるエアの圧力の変化はわずかである。換言すれば、エアの圧力は、スプール弁66をスプリング70の弾発力に抗してホルダ68側(矢印B方向)へと変位させるほどの大きさには未だ達していない状態にある。
【0070】
次に、搬送装置150をワークWに対峙させて徐々に接近させていくことにより、連通路154内におけるエアの圧力が上昇し、スプール弁66がスプリング70の弾発作用下に抗してホルダ68側(矢印B方向)に変位する。そして、供給ポート38に供給されたエアが第2供給通路44、第1供給通路20を通じて吐出孔162から導出され、ワーク保持面18においてワークWが保持される。すなわち、吐出孔162が、ワークWの接近状態を検知するための検出ポートとして機能し、第1供給通路20及び放射通路160が、検出通路として機能している。
【0071】
このように、第3の実施の形態では、ワークWの接近状態を検知するための検出ポート、検出通路を別個に設けずに、前記ワークWを保持する際にエアの供給される吐出孔162、第1供給通路20及び放射通路160を共用する構成としているため、その構造の簡素化及び製造コストの削減を図ることができると共に、メンテナンス性を向上させることができる。
【0072】
次に、第4の実施の形態に係る搬送装置200を図12A及び図12Bに示す。なお、上述した第1の実施の形態に係る搬送装置10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0073】
この第4の実施の形態に係る搬送装置200では、ワークWを保持可能なベース部材12のワーク保持面18に環状のパッド(当接部材)202を設けている点で、第1〜第3の実施の形態に係る搬送装置10、100、150と相違している。
【0074】
このパッド202は、図12A及び図12Bに示されるように、例えば、ゴム等の弾性材料から環状に形成され、環状凹部26に対して半径外方向に所定間隔離間して設けられると共に、前記ワーク保持面18に対して所定高さで突出するように設けられる。また、パッド202は、検出ポート34に臨むように設けられ、該パッド202には前記検出ポート34と連通する孔部204が開口している。すなわち、検出ポート34へと供給されたエアは、孔部204を通じて下方へと導出されることとなる。
【0075】
このように、第4の実施の形態では、ワークWを保持可能なベース部材12のワーク保持面18に環状のパッド202を設けることにより、前記ワーク保持面18で保持する前記ワークWを前記パッド202に当接させ、前記ワークWが搬送装置200に対して移動してしまうことを防止し、前記ワークWが搬送装置200に保持された状態で位置ずれさせることなく搬送することが可能となる(図12B参照)。
【0076】
なお、本発明に係る搬送装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る搬送装置を示す全体断面図である。
【図2】図1の搬送装置におけるエアの流通経路を示す概略回路図である。
【図3】図1のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図1のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】図1の搬送装置をベース部材側から見た平面図である。
【図6】図1の搬送装置においてスプール弁が変位し、供給ポートからのエアが吐出孔へと供給されてワークが保持された状態を示す全体断面図である。
【図7】図1の搬送装置におけるエアの流量と時間との関係を示す特性線図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る搬送装置を示す全体断面図である。
【図9】図8の搬送装置におけるエアの流通経路を示す概略回路図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る搬送装置を示す全体断面図である。
【図11】図10の搬送装置におけるエアの流通経路を示す概略回路図である。
【図12】図12A及び図12Bは、本発明の第4の実施の形態に係る搬送装置を示す全体断面図であり、図12Aは、ワークを保持する前の状態を示し、図12Bは、ワークを保持した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0078】
10、100、150、200…搬送装置
12…ベース部材 14…本体部
16…供給切換機構 18…ワーク保持面
20…第1供給通路 22、160…放射通路
24、162…吐出孔 26…環状凹部
34、102…検出ポート 36、154…連通路
38…供給ポート 44…第2供給通路
48…エア供給源 50…流量センサ
52…バイパス通路 54…装着孔
64…調整ニードル 66…スプール弁
68…ホルダ 70…スプリング
76…ランド部 78…連通部
80…先細部 104…検出ブロック
158…リターン通路 202…パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディと、
前記ボディの端部に設けられ、ワークに臨む保持面と、
前記ボディの内部に形成され、エア供給部から供給されたエアを前記保持面側に形成された吐出孔へと供給する第1通路と、
前記第1通路と別個に設けられ、前記エア供給部に連通すると共に前記ワーク側に向かって前記エアを導出する導出ポートに接続される第2通路と、
前記第1通路上に設けられ、該第1通路と前記吐出孔との間の連通状態を切換自在な切換機構と、
前記保持面における前記ワークの保持・非保持状態を検出可能な検出手段と、
を備え、
前記切換機構は、前記第2通路における前記エアの圧力変化に基づいて変位し、前記第1通路を連通させる切換弁を有することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
請求項1記載の搬送装置において、
前記導出ポートが、前記ボディの保持面に開口して設けられることを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
請求項1記載の搬送装置において、
前記導出ポートが、前記ボディとは別個の部材に設けられ、前記ワークと対峙するように開口して形成されることを特徴とする搬送装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の搬送装置において、
前記検出手段は、前記供給されるエアの流量を検出可能な流量センサからなり、前記エアの流量変化に基づいて前記ワークの保持・非保持状態を検出することを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の搬送装置において、
前記保持面には、前記ワークを保持する際に該ワークの当接可能な当接部材が設けられることを特徴とする搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−234688(P2009−234688A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80591(P2008−80591)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000102511)SMC株式会社 (344)
【Fターム(参考)】