説明

携帯型コンテンツ処理装置、制御方法及びプログラム

【課題】ポータブルデジタルプレーヤ10は、ユーザ33により携帯されて、自動車35の車室へ進入すると、車室のヘッドユニット39へ自動的に無線接続するようなっている。ポータブルデジタルプレーヤ10が効率的にヘッドユニット39を探索できるようにして、ワイヤレス送受信モジュール26における消費電力を低減する。
【解決手段】振動センサ29は、例えば衝撃振動、歩行中の振動、エンジン振動を検出する(S51)。振動センサ29の検出振動が所定のもの、すなわちポータブルデジタルプレーヤ10が車室に持ち込まれたときに対応するものであると判断される場合のみ(S52正)、ワイヤレス送受信モジュール26を作動させて(S53)、ヘッドユニット39の探索を行う(S54,S55)。探索頻度を下げつつも、ヘッドユニット39に迅速に無線接続することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載ヘッドユニット等の相手側コンテンツ処理装置へ無線接続して、コンテンツの再生を実施する携帯型コンテンツ処理装置、制御方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ユーザが携帯して記憶装置内の楽曲を適宜再生して聴くことができるポータブルプレーヤを開示する(特許文献1の図1)。該ポータブルプレーヤは、ユーザの移動に伴い、自宅や車室のネットワークへ無線接続されて、ユーザは、該ポータブルプレーヤの保有楽曲の再生音を該ポータブルプレーヤに代えて他のネットワークオーディオ装置から聴くことができるようにしている(特許文献1の図2〜図4:なお、特許文献1では、該ポータブルプレーヤ自体での再生を「自己再生」と、また、ネットワークを介する再生を「ネットワーク再生」と、それぞれ呼んでいる。)。
【特許文献1】特開2007−66472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ユーザが、ポータブルプレーヤで楽曲を聴きながら移動し、自車に乗込んだりすると、ポータブルプレーヤが自車のヘッドユニットへ自動的に無線接続されて、ポータブルプレーヤの楽曲をヘッドユニットから聴くことができるようになっていると、便利である。これを実現するためには、ポータブルプレーヤは、ユーザによる携帯中、頻繁に無線接続モジュールを作動させて、ヘッドユニットと無線接続できるか否かを監視する必要がある。
【0004】
一方、ポータブルプレーヤは、バッテリを電源としているので、使用時間を伸ばすために、消費電力を抑えることが必須である。ポータブルプレーヤが、ヘッドユニットの無線接続圏内に入ると速やかに該ヘッドユニットとの無線接続を実現するために、頻繁にヘッドユニットの探索を実施することはバッテリの電力切れを早めることになり、不利である。
【0005】
本発明の目的は、節電を達成しつつ、相手側コンテンツ処理装置の圏内に入りしだい、該相手側コンテンツ処理装置へ速やかに無線接続することができるようにした携帯型コンテンツ処理装置、制御方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、携帯型コンテンツ処理装置は、それが無線接続する相手側コンテンツ処理装置との探索時期を、携帯型コンテンツ処理装置に伝達する振動に基づき判断する。伝達振動には、瞬間的な振動だけでなく、所定時間にわたる変化である振動パターンも含めることができる。例えば相手側コンテンツ処理装置が車載のヘッドユニットである場合には、携帯型コンテンツ処理装置は、自動車の外から車室へ入るので、その移動過程や車室内における振動に特有のものが存在する。したがって、携帯型コンテンツ処理装置は、むやみに相手側コンテンツ処理装置を探索しないようにし、そのような特有の振動を検出した時に絞って、無線接続モジュールを作動させて、相手側コンテンツ処理装置の探索を行うようにする。
【0007】
本発明の携帯型コンテンツ処理装置は次のものを備えている。
無線接続モジュールの作動により相手側コンテンツ処理装置と無線接続してコンテンツデータの無線伝送を実施するデータ無線伝送手段、
振動を検出する振動センサ、
前記振動センサの検出振動に基づき相手側コンテンツ処理装置を探索する探索時期であるか否かを判断する探索時期判断手段、及び
探索時期であると判断された時期に、前記無線接続モジュールを停止状態から作動状態へ切替えて相手側コンテンツ処理装置を探索する探索手段。
【0008】
本発明の携帯型コンテンツ処理装置用制御方法は、無線接続モジュールの作動により相手側コンテンツ処理装置と無線接続してコンテンツデータの無線伝送を実施するものであり、次のステップを備えている。
前記相手側コンテンツ処理装置を探索する探索時期であるか否かを、振動センサにより検出した振動に基づき、判断するステップ、及び
探索時期であると判断された時期に、前記無線接続モジュールを停止状態から作動状態へ切替えて相手側コンテンツ処理装置を探索するステップ。
【0009】
本発明のプログラムは本発明の携帯型コンテンツ処理装置の各手段としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、相手側コンテンツ処理装置との無線接続圏内に入った可能性が高いことを、携帯型コンテンツ処理装置への伝達振動に基づき検出して、可能性が高い時に限定して、相手側コンテンツ処理装置の無線探索を行うので、相手側コンテンツ処理装置の探索頻度を抑制しつつ、すなわち、携帯型コンテンツ処理装置の電力消耗を抑えつつ、相手側コンテンツ処理装置との無線接続圏内に入った時には、遅滞なく相手側コンテンツ処理装置を見付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1はポータブルデジタルプレーヤ10の正面図である。ポータブルデジタルプレーヤ10は、本体11と、該本体11へジャックを挿抜自在とするイヤホン12とを備え、ユーザ33(図3)の衣服ポケットや鞄34等に入れて持ち運びできる寸法及び重量となっている。ポータブルデジタルプレーヤ10は内蔵バッテリの電力により駆動され、該内蔵バッテリはアダプタを使って自宅等で適宜充電可能になっている。本体11の前面には、カラーLCD(Liquid Crystal Display)14及び操作キー15がそれぞれ上側及び下側に配設されている。イヤホン12の先端側の左右の放音部からは、楽曲の再生中、その再生音が出力するようになっている。
【0012】
図2はポータブルデジタルプレーヤ10のハードウェア構成図である。ポータブルデジタルプレーヤ10は、カラーLCD14及び操作キー15の他に、メインコントローラ20、EEPROM(Erasable Programmable ROM)21、フラッシュメモリ22、DRAM(Dynamic Random Access Memory)23、USBコントローラ24、ハードディスク装置25、ワイヤレス送受信モジュール26、DAC(デジタル/アナログ変換器)27、オーディオ出力端子(ジャック)28及び振動センサ29を備えている。メインコントローラ20は、演算や制御を行い、カラーLCD14、操作キー15、EEPROM21、フラッシュメモリ22、DRAM23、USBコントローラ24、ハードディスク装置25、ワイヤレス送受信モジュール26、DAC27及び振動センサ29とデータを一方向又は双方向へ送受したり、それらへ制御信号を出力したりする。
【0013】
EEPROM21 は適宜、消去及び書込まれるデータを記憶する。フラッシュメモリ22はプログラムや固定データを記憶する。DRAM23は、メインコントローラ20が演算時にデータの一時的格納用に使用する。USBコントローラ24はUSBケーブルを接続される。ハードディスク装置25は、多数の楽曲ファイルをMP3等の所定のフォーマットで記憶している。ワイヤレス送受信モジュール26は、他の機器と直接又はネットワークを介して無線接続する際に、作動状態にされる。
【0014】
メインコントローラ20は、ハードディスク装置25の楽曲の再生時に、該楽曲のデータをハードディスク装置25から読み出して、復調及び復号し、処理後のデジタル信号をDAC27へ送る。DAC27は、このデジタル信号をアナログ信号へ変換して、オーディオ出力端子(ジャック)28へ出力する。振動センサ29は、例えば加速度センサから成り、ポータブルデジタルプレーヤ10へ伝達されてくる機械振動を検出する。
【0015】
図3はユーザ33によるポータブルデジタルプレーヤ10の使用形態の一例を示している。ユーザ33は、ポータブルデジタルプレーヤ10を鞄34内に入れて、自動車35へ乗込んだり、自動車35から降りたりする。
【0016】
図4は自動車35の車室内に構築されている車内LAN(Local Area Network)41の説明図である。ヘッドユニット39は、アクセスポイント42と共に車内LAN41へ有線で接続されている。スピーカ40は、自動車35の車室の左右にそれぞれ配備され、ヘッドユニット39から楽曲の音声信号を供給されて、該楽曲の再生音を車室へ出力する。ポータブルデジタルプレーヤ10は、車室内に持ち込まれた後、ワイヤレス送受信モジュール26の作動によりアクセスポイント42へ無線接続される。ユーザ33は、車室内でヘッドユニット39を操作して、ポータブルデジタルプレーヤ10のハードディスク装置25の楽曲の再生音を車内のスピーカ40から出力させて、聴くことができる。
【0017】
ユーザ33は、イヤホン12の放音部を耳に差し込んで、ポータブルデジタルプレーヤ10の楽曲をポータブルデジタルプレーヤ10で再生しながら、自動車35へ乗込む場合だけでなく、図3のように、ポータブルデジタルプレーヤ10を鞄34の中に入れて、楽曲を聴くことなく、自動車35へ乗込む場合がある。前者の場合では、ユーザ33が車室へ入りしだい、再生音の出力がポータブルデジタルプレーヤ10のイヤホン12から車内のスピーカ40へ自動に切り替わると、便利である。また、後者の場合も、ユーザ33が車室へ入りしだい、ヘッドユニット39におけるユーザ操作によりポータブルデジタルプレーヤ10の楽曲をスピーカ40から再生できるようにすると、便利である。該ポータブルデジタルプレーヤ10はこれを実現するものである。
【0018】
図5はポータブルデジタルプレーヤ10の各状態においてポータブルデジタルプレーヤ10の振動センサ29が検出する各種の振動を例示している。ユーザ33が、鞄34の中へポータブルデジタルプレーヤ10を入れて、自動車35へ乗込む場合のユーザ33の典型的な動作パターンとしては、(a)自動車35へ向かって歩行し、次に、(b)ユーザ33のドアを開けるために、停止し、次に、(c)ドアを開いて、自動車35内へ乗込み、次に、(d)鞄34を助手席等へ下ろし、次に、(e)エンジンを始動させ、次に(f)自動車35を走行させる。したがって、このような状態(a)〜(e)に対応する振動を監視することにより、ユーザ33の移動状況や現在の場所を把握することができる。
【0019】
図5における振動V1は、(a)の状態に対応し、すなわち歩行期間における検出振動であり、周波数及び振幅共に小さく、かつ所定時間、継続するという特徴をもつ。振動V2は、(d)の状態に対応し、鞄34を座席等へ下ろした時に検出されるものであり、振幅が大きくかつ短時間で終了するという特徴をもつ。V3は(e)及び(f)の状態に対応し、すなわちエンジン振動であり、周波数が高い一定値であるとともに、振幅が小さく、かつ所定時間、継続するという特徴をもつ。
【0020】
V1〜V3は相互に明確に識別することができる。これにより、例えば、ユーザ33が自動車35に乗込んで、ポータブルデジタルプレーヤ10が車内LAN41の無線接続圏に進入したことを、振動センサ29の検出振動から検出する場合には、個別の振動、又は個別の振動の集合としての振動パターンから検出することができる。具体的には、例えば、V2の振動、V1→V2の振動パターン、V1→V2→V3の振動パターンが検出された時、又はV3の開始時を、ポータブルデジタルプレーヤ10が車内LAN41の無線接続圏に進入したと判断する。
【0021】
所定振動又は所定振動パターンの出現ではなく、所定振動又は所定振動パターンの消失を、ポータブルデジタルプレーヤ10が車内LAN41の無線接続圏に進入したと判断するようにしてもよい。例えば、ユーザ33は自動車35へ乗り込むとき立ち止まるので、V1の終了を、ポータブルデジタルプレーヤ10が車内LAN41の無線接続圏に進入したと判断してもよい。なお、V3の終了は、ポータブルデジタルプレーヤ10が自動車35から出た時と推察され、この時に、ワイヤレス送受信モジュール26の作動を停止させて、ヘッドユニット39との無線接続を自動的に切ることができる。
【0022】
図6はポータブルデジタルプレーヤ10において実行されるネットワーク探索方法50のフローチャートである。ネットワーク探索方法50は、ユーザ33が自動車35に乗込んだ時に、ポータブルデジタルプレーヤ10を自動車35のヘッドユニット39へ自動接続させる。ネットワーク探索方法50は例えば一定時間間隔で作動する。
【0023】
S51では、振動センサ29の電源をオンにする。これにより、振動センサ29は作動状態に切り替わる。S52では、振動センサ29の検出振動が所定の振動に対応しているか否かを判定し、判定結果が正になりしだい、S53へ進む。該所定の振動とは、例えば、ポータブルデジタルプレーヤ10が車内LAN41の無線接続圏に進入した時の振動として前述したものであり、V2の振動、V1→V2の振動パターン、又はV1→V2→V3の振動パターンである。
【0024】
S53では、ワイヤレス送受信モジュール26の電源をオンにする。S54では、ワイヤレスネットワークとしての車内LAN41への接続処理を行う。S55では、車内LAN41へ接続処理ができたか否かを判定し、判定結果が正であれば、S56へ進み、否であれば、S57へ進む。なお、S55の判定結果が正である場合、S56をスキップして、直ちに、ネットワーク探索方法50を終了するようにしてもよい。
【0025】
S56では、節電のために、振動センサ29の電源がオフにされる。S57では、ワイヤレス送受信モジュール26の電源をオフにして、S52へ戻る。なお、S55の判定が正で、S56へ進んだか、又はネットワーク探索方法50を終了した場合には、ワイヤレス送受信モジュール26の電源はオンに維持されて、ポータブルデジタルプレーヤ10はヘッドユニット39との無線接続を保持する。ポータブルデジタルプレーヤ10は、ヘッドユニット39との接続の保持により、ハードディスク装置25内の楽曲のデータをヘッドユニット39へ送信することができ、これにより、ユーザ33は、ヘッドユニット39を操作して、該楽曲の再生音を車内のスピーカ40から聴くことができる。
【0026】
図7は携帯型コンテンツ処理装置64のブロック図である。携帯型コンテンツ処理装置64は、データ無線伝送手段65、振動センサ66、探索時期判断手段67及び探索手段68を備える。携帯型コンテンツ処理装置64は、さらに、無線接続制御手段76、電力残量検出手段78及び通知手段79を備えることができる。携帯型コンテンツ処理装置64は、無線接続モジュール72の作動により相手側コンテンツ処理装置73と無線接続し、無線接続によりコンテンツデータを相手側コンテンツ処理装置73へ送信、又は相手側コンテンツ処理装置73から受信して、該コンテンツデータに係るコンテンツを相手側コンテンツ処理装置73又は自機において再生性可能にしている。
【0027】
携帯型コンテンツ処理装置64及び相手側コンテンツ処理装置73の具体例はそれぞれ前述のポータブルデジタルプレーヤ10(図1)及びヘッドユニット39(図4)である。コンテンツデータについて、ポータブルデジタルプレーヤ10及びヘッドユニット39はそれぞれ送信側及び受信側になっているが、携帯型コンテンツ処理装置64及び相手側コンテンツ処理装置73では、コンテンツデータについて、携帯型コンテンツ処理装置64及び相手側コンテンツ処理装置73がそれぞれ受信側及び送信側となっていてもよいとする。
【0028】
携帯型コンテンツ処理装置64のコンテンツは、楽曲に限定されず、楽曲以外のオーディオやビデオであってもよい。相手側コンテンツ処理装置73は、車載に限定されず、無線LANを利用することができるホットスポット(hot spot)の機器(例:パソコン、及び楽曲を有料又は無料で配信するサーバ)であってもよい。
【0029】
さらに、携帯型コンテンツ処理装置64は、相手側コンテンツ処理装置73へ無線接続される直前において、自機のコンテンツを再生している状態にあってもよいし、なくてもよい。
【0030】
データ無線伝送手段65は、無線接続モジュール72の作動により相手側コンテンツ処理装置73と無線接続してコンテンツデータの無線伝送を実施する。振動センサ66は、携帯型コンテンツ処理装置64へ伝達されて来る振動を検出する。探索時期判断手段67は、携帯型コンテンツ処理装置64の検出振動に基づき相手側コンテンツ処理装置73を探索する探索時期であるか否かを判断する。探索手段68は、探索時期であると判断された時期に、無線接続モジュール72を停止状態から作動状態へ切替えて相手側コンテンツ処理装置73を探索する。
【0031】
携帯型コンテンツ処理装置64と相手側コンテンツ処理装置73との無線接続は、両者間の直接的な無線接続に限定されない。相手側コンテンツ処理装置73はネットワークへ有線接続されるが、携帯型コンテンツ処理装置64は該ネットワークへ無線接続されている接続形式であってもよい。また、該ネットワークは、インフラストラクチャー型ネットワークであっても、アドホック型ネットワークであってもよい。
【0032】
携帯型コンテンツ処理装置64は、相手側コンテンツ処理装置73の探索の際は、無線接続モジュール72を作動状態にする必要があり、無線接続モジュール72の頻繁な作動は、無線接続モジュール72との無線接続圏内に進入した時に、速やかに無線接続モジュール72を見付けて、無線接続モジュール72との無線接続状態となる利点があるものの、バッテリ81の電力を消耗させる。携帯型コンテンツ処理装置64では、探索手段68がむやみに相手側コンテンツ処理装置73の探索を行うことなく、探索時期判断手段67が、振動センサ66が所定の振動を検出した時に限定して、相手側コンテンツ処理装置73を探索することになっているので、無線接続モジュール72の探索頻度は大幅に減少し、これにより、携帯型コンテンツ処理装置64の電力消耗を抑制することができる。
【0033】
携帯型コンテンツ処理装置64は、相手側コンテンツ処理装置73との無線接続の圏内へ進入した可能性の十分にあることを振動センサ66の検出振動に基づき検出して、そのような時期に限定して、相手側コンテンツ処理装置73の探索を行う。したがって、探索頻度は低下するものの、探索効率を維持して、相手側コンテンツ処理装置73との無線接続の圏内へ進入した時には、速やかに相手側コンテンツ処理装置73との無線接続を確立することができる。
【0034】
好ましくは、検出振動には、所定時間にわたる検出振動の変化としての振動パターンが含まれる。振動パターンの具体例として、図5を参照して前述したV1→V2や、V1→V2→V3の振動パターンである。
【0035】
探索時期判断手段67が探索時期の判断の基にする検出振動には、例えば、所定の衝撃振動(例:図4のV2)、所定のエンジン振動(例:図4のV3)及び/又は携帯型コンテンツ処理装置を携帯するユーザの歩行中の所定の振動(例:図4のV1)がある。
【0036】
好ましくは、探索手段68は、相手側コンテンツ処理装置73の探索のために接続したネットワークのIDを割り出し、割り出したネットワークIDが所定のものでなければ、該IDには相手側コンテンツ処理装置は無いと判断する。例えば、自車の隣に他人の自動車が駐車しており、該他人の自動車にもワイヤレスネットワークが装備されている場合がある。このような場合に、探索手段68は、該他人の自動車のネットワークから漏れた電波に感応して、該他人の自動車のネットワークへ接続してしまうことがある。ネットワークIDを識別することによる相手側コンテンツ処理装置73の探索は、このような弊害を防止することができる。
【0037】
好ましくは、探索時期判断手段67は、相手側コンテンツ処理装置73を見付けた時の検出振動を学習し、学習結果の検出振動と振動センサ66が今回、検出した振動との対比に基づき相手側コンテンツ処理装置73の探索時期か否かを判断する。携帯型コンテンツ処理装置64が相手側コンテンツ処理装置73との無線接続圏内に進入したにもかかわらず、これを見逃すことを回避するために、検出振動と対比する基準振動との一致の幅は最初は比較的大きく設定される。結果、探索手段68による相手側コンテンツ処理装置73の探索頻度は増大し、その分、バッテリ81の電力の消耗は大きい。学習が進むに連れて、検出振動と対比する基準振動との一致の幅は減少し、探索成功率を高く維持したまま、探索頻度を減少させて、バッテリ81の電力消耗を抑制することができる。
【0038】
典型的には、相手側コンテンツ処理装置73は車載機器である。探索時期判断手段67は、振動センサ66の検出振動に基づき携帯型コンテンツ処理装置64が自動車外から自動車内へ持ち込まれたか否かを判断し、持ち込まれたと判断したならば、現在を相手側コンテンツ処理装置73の探索時期とする。前述のポータブルデジタルプレーヤ10による自動車35におけるヘッドユニット39の探索は、この具体例である。
【0039】
携帯型コンテンツ処理装置64は、好ましくは、無線接続制御手段76を備える。無線接続制御手段76は、探索手段68の探索の結果、相手側コンテンツ処理装置73が見付かれば、無線接続モジュール72の作動を維持して相手側コンテンツ処理装置73との無線接続を維持する。
【0040】
無線接続制御手段76は、相手側コンテンツ処理装置73との無線接続維持中、相手側コンテンツ処理装置73からの携帯型コンテンツ処理装置64へのアクセス無しの状態が所定時間値以上に達すると、無線接続モジュール72の作動を停止して、相手側コンテンツ処理装置73との無線接続を切る。こうして、相手側コンテンツ処理装置73との間に無線接続が確立された後も、無線接続が無駄と判断した場合には、無線接続モジュール72の作動を停止させて、節電を図ることができる。
【0041】
所定時間値以上のアクセス無し状態の経過に伴う無線接続の切断では、探索手段68は、相手側コンテンツ処理装置73との接続切断後、別の所定時間が経過してから相手側コンテンツ処理装置73との再接続を行うようになっていてもよい。これにより、相手側コンテンツ処理装置73との間で、再度、コンテンツデータの送受が開始されるようになった時の無線接続切れを極力回避することができる。
【0042】
携帯型コンテンツ処理装置64は電力残量検出手段78及び通知手段79を備えることができる。電力残量検出手段78は、携帯型コンテンツ処理装置64の電源としてのバッテリ81の電力残量を検出する。通知手段79は、電力残量が所定値未満であると、又は所定値未満になると、相手側コンテンツ処理装置73へ電力残量に係る情報を通知する。バッテリ81は例えば充電式又は乾電池式である。無線接続制御手段76は、通知手段79による相手側コンテンツ処理装置73への通知後に、無線接続モジュール72の作動を停止して、相手側コンテンツ処理装置73との無線接続を切る。このような通知がなされないまま、携帯型コンテンツ処理装置64と相手側コンテンツ処理装置73との無線接続が切れてしまうと、ユーザは、携帯型コンテンツ処理装置64が故障かと誤解し、振動センサ66が振動に検知するように、携帯型コンテンツ処理装置64を意図的に叩いたりする場合がある、該通知はこのような無駄な行為を抑制するとともに、ユーザの不審を防止することができる。
【0043】
好ましくは、探索手段68は、振動センサ66の検出振動が所定のエンジン振動に対応しているか否かに基づき携帯型コンテンツ処理装置64が自動車内に留まっているか否かを検出し、携帯型コンテンツ処理装置64が自動車内に留まっている期間では、車載機器が見付かるまで、車載機器の再探索を繰り返す。エンジン振動は、車内特有の振動であるので、携帯型コンテンツ処理装置64が車内にあることは、エンジン振動の検出により的確に把握することができる。相手側コンテンツ処理装置73がオフされている等の一時的な原因のために、携帯型コンテンツ処理装置64は相手側コンテンツ処理装置73へ一時的に無線接続できない場合があるが、再探索を行うことにより、相手側コンテンツ処理装置73が復帰した場合には、速やかに携帯型コンテンツ処理装置64を相手側コンテンツ処理装置73へ接続することができる。
【0044】
さらに、好ましくは、探索手段68は、車載機器の再探索の繰り返しは所定時間内又は所定回数内に制限する。探索手段68は、相手側コンテンツ処理装置73の再探索の繰り返しの時間間隔を時間経過に連れて伸ばしていくようになっていてもよい。
【0045】
好ましくは、無線接続制御手段76は、携帯型コンテンツ処理装置64が外部電源からの電力を供給されている期間では、バッテリ81の電力残量に関係なく、車載機器との接続を維持する。これにより、携帯型コンテンツ処理装置64の電源切れの心配のない場合には、携帯型コンテンツ処理装置64は相手側コンテンツ処理装置73へ継続的に無線接続されて、コンテンツデータを携帯型コンテンツ処理装置64−相手側コンテンツ処理装置73間で送受して、支障のない再生を確保することができる。
【0046】
図8は携帯型コンテンツ処理装置用制御方法90のフローチャートである。携帯型コンテンツ処理装置用制御方法90は無線接続モジュール72の作動により相手側コンテンツ処理装置73と無線接続してコンテンツデータの無線伝送を実施する。携帯型コンテンツ処理装置用制御方法90は、例えば、無線接続モジュール72の停止状態期間(=無給電期間)において、一定時間間隔で起動する。
【0047】
S91では、振動センサ66の検出振動に基づき相手側コンテンツ処理装置73を探索する探索時期であるか否かを判断する。S92では、S91の判断結果に基づき、判断結果が正であれば、S93へ進み、否であれば、携帯型コンテンツ処理装置用制御方法90を終了する。S93では、無線接続モジュール72を停止状態から作動状態へ切替えて相手側コンテンツ処理装置73を探索する。なお、S92で否となって携帯型コンテンツ処理装置用制御方法90を終了する場合は、無線接続モジュール72は引き続き無給電状態に維持されて、停止状態に維持されることになる。
【0048】
S91,S93の処理は、携帯型コンテンツ処理装置64の探索時期判断手段67及び探索手段68の機能にそれぞれ対応している。したがって、探索時期判断手段67及び探索手段68の機能について述べた具体的態様はS91,S93の処理についての具体的態様としても適用可能である。
【0049】
図7を参照して説明した、携帯型コンテンツ処理装置64の電力残量検出手段78及び通知手段79の各機能と、これら電力残量検出手段78及び通知手段79と共働する探索時期判断手段67、探索手段68及び無線接続制御手段76の各機能とにそれぞれ対応する処理を実施する各ステップから成る方法を構築することができる。そのような共働機能における探索時期判断手段67、探索手段68、無線接続制御手段76、電力残量検出手段78及び通知手段79の各機能の具体的態様は、該方法における各対応ステップの処理についての具体的態様としても適用可能である。
【0050】
本発明を適用したプログラムは、コンピュータを携帯型コンテンツ処理装置64の各手段として機能させる。本発明を適用した別のプログラムは、携帯型コンテンツ処理装置用制御方法90の各ステップをコンピュータに実行させる。
【0051】
本明細書は様々な発明を開示している。それら発明には、発明の最良の形態の項で説明した各装置及び各方法だけでなく、各装置及び各方法から独立の作用、効果を奏する1つ又は複数の要素を抽出したものや、1つ又は複数の要素を自明の範囲で変更したものや、さらに、各装置間及び各方法間で1つ又は複数の要素の組合せを入れ換えたものを含む。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】ポータブルデジタルプレーヤの正面図である。
【図2】ポータブルデジタルプレーヤのハードウェア構成図である。
【図3】ユーザによるポータブルデジタルプレーヤの使用形態の一例を示す図である。
【図4】自動車の車室内に構築されている車内LANの説明図である。
【図5】ポータブルデジタルプレーヤの各状態においてポータブルデジタルプレーヤの振動センサが検出する各種の振動を例示する図である。
【図6】ポータブルデジタルプレーヤにおいて実行されるネットワーク探索方法のフローチャートである。
【図7】携帯型コンテンツ処理装置のブロック図である。
【図8】携帯型コンテンツ処理装置用制御方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
64:携帯型コンテンツ処理装置、65:データ無線伝送手段、66:振動センサ、67:探索時期判断手段、68:探索手段、72:無線接続モジュール、73:相手側コンテンツ処理装置、76:無線接続制御手段、78:電力残量検出手段、79:通知手段、81:バッテリ、90:携帯型コンテンツ処理装置用制御方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線接続モジュールの作動により相手側コンテンツ処理装置と無線接続してコンテンツデータの無線伝送を実施するデータ無線伝送手段、
振動を検出する振動センサ、
前記振動センサの検出振動に基づき相手側コンテンツ処理装置を探索する探索時期であるか否かを判断する探索時期判断手段、及び
探索時期であると判断された時期に、前記無線接続モジュールを停止状態から作動状態へ切替えて相手側コンテンツ処理装置を探索する探索手段、
を備えることを特徴とする携帯型コンテンツ処理装置。
【請求項2】
前記検出振動には、所定時間にわたる検出振動の変化としての振動パターンが含まれることを特徴とする請求項1記載の携帯型コンテンツ処理装置。
【請求項3】
前記探索時期判断手段は、検出振動が所定の衝撃振動に相当するか否かに基づき相手側コンテンツ処理装置を探索する探索時期であるか否かを判断することを特徴とする請求項1又は2記載の携帯型コンテンツ処理装置。
【請求項4】
前記探索時期判断手段は、検出振動が所定のエンジン振動に相当するか否かに基づき相手側コンテンツ処理装置を探索する探索時期であるか否かを判断することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の携帯型コンテンツ処理装置。
【請求項5】
前記探索時期判断手段は、検出振動が、前記携帯型コンテンツ処理装置を携帯するユーザの歩行中の所定の振動に相当するか否かに基づき相手側コンテンツ処理装置を探索する探索時期であるか否かを判断することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の携帯型コンテンツ処理装置。
【請求項6】
前記探索手段は、相手側コンテンツ処理装置の探索のために接続したネットワークのIDを割り出し、割り出したネットワークIDが所定のものでなければ、該IDには相手側コンテンツ処理装置は無いと判断することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の携帯型コンテンツ処理装置。
【請求項7】
前記探索時期判断手段は、相手側コンテンツ処理装置を見付けた時の検出振動を学習し、学習結果の検出振動と前記振動センサが今回、検出した振動との対比に基づき相手側コンテンツ処理装置の探索時期か否かを判断することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の携帯型コンテンツ処理装置。
【請求項8】
前記相手側コンテンツ処理装置は車載機器であり、
前記探索時期判断手段は、前記振動センサの検出振動に基づき前記携帯型コンテンツ処理装置が自動車外から自動車内へ持ち込まれたか否かを判断し、持ち込まれたと判断したならば、現在を相手側コンテンツ処理装置の探索時期とすることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の携帯型コンテンツ処理装置。
【請求項9】
前記探索手段の探索の結果、相手側コンテンツ処理装置が見付かれば前記無線接続モジュールの作動を維持して前記相手側コンテンツ処理装置との無線接続を維持する無線接続制御手段を備えることを特徴とする請求項1〜8記載の携帯型コンテンツ処理装置。
【請求項10】
前記無線接続制御手段は、前記相手側コンテンツ処理装置との無線接続維持中、前記相手側コンテンツ処理装置からの前記携帯型コンテンツ処理装置へのアクセス無しの状態が所定時間値以上に達すると、前記無線接続モジュールの作動を停止して前記相手側コンテンツ処理装置との無線接続を切ることを特徴とする請求項9記載の携帯型コンテンツ処理装置。
【請求項11】
前記携帯型コンテンツ処理装置の電源としてのバッテリの電力残量を検出する電力残量検出手段、及び
電力残量が所定値未満であると、又は所定値未満になると、前記相手側コンテンツ処理装置へ電力残量に係る情報を通知する通知手段、
を備え、
前記無線接続制御手段は、前記通知手段による前記相手側コンテンツ処理装置への通知後に、前記無線接続モジュールの作動を停止して、前記相手側コンテンツ処理装置との無線接続を切ることを特徴とする請求項9又は10記載の携帯型コンテンツ処理装置。
【請求項12】
前記探索手段は、前記振動センサの検出振動が所定のエンジン振動に対応しているか否かに基づき前記携帯型コンテンツ処理装置が自動車内に留まっているか否かを検出し、前記携帯型コンテンツ処理装置が自動車内に留まっている期間では、車載機器が見付かるまで、車載機器の再探索を繰り返すことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の携帯型コンテンツ処理装置。
【請求項13】
前記探索手段は、車載機器の再探索の繰り返しは所定時間内又は所定回数内に制限することを特徴とする請求項12記載の携帯型コンテンツ処理装置。
【請求項14】
前記探索手段は、車載機器の再探索の繰り返しの時間間隔を時間経過に連れて伸ばしていくことを特徴とする請求項11又は12記載の携帯型コンテンツ処理装置。
【請求項15】
無線接続モジュールの作動により相手側コンテンツ処理装置と無線接続してコンテンツデータの無線伝送を実施する携帯型コンテンツ処理装置用制御方法において、
前記相手側コンテンツ処理装置を探索する探索時期であるか否かを、振動センサにより検出した振動に基づき、判断するステップ、及び
探索時期であると判断された時期に、前記無線接続モジュールを停止状態から作動状態へ切替えて相手側コンテンツ処理装置を探索するステップ、
を備えることを特徴とする携帯型コンテンツ処理装置用制御方法。
【請求項16】
請求項1〜13記載の携帯型コンテンツ処理装置の各手段としてコンピュータを機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−81746(P2009−81746A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250352(P2007−250352)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】