説明

携帯型機器保持クリップ

【課題】より簡易な構成で、携帯型機器の保持と衣服等への着脱とが実効的に可能な携帯型機器保持クリップを提供する。
【解決手段】弾性体3に起因する弾性力が図中下縁の把持部に作用することで、下側部材1及び上側部材2はクリップとして機能する。弾性部は、下側部材1の取付面1Fから、閉じられた図形の輪郭形状に沿って切り抜かれる(一部を除く)ようにして形成されており、当該一部を軸にして当該取付面1Fに対して反り返り可能である。弾性部の先端には凸部122が、リアパネル51の被取付面51Aには凹部52がある。リアパネル51の下側部材1に対する回転に伴い、凸部122は弾性部の反り返りによって凹部52から離脱し、あるいは凸部122は前記反り返りの反動によって凹部52に嵌合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯型機器保持クリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロホン、携帯電話、携帯型の各種電子機器等の携帯型機器のためのクリップが提案されている。ここにクリップとは、当該携帯型機器を好適な態様ないし姿勢で保持可能であると共に、当該携帯型機器の使用者の着衣等に容易に着脱可能な機能をもつものを指す。このクリップがあれば、ユーザは、自分の身体等の適当な場所に携帯型機器を固着した状態で利用することができる。
【0003】
この場合、クリップは、携帯型機器の姿勢を変更するための適当な回転機構を備えていることが好ましい。例えば、携帯型機器がマイクロホンである場合、使用者の姿勢等に応じて、マイクロホンの姿勢を任意に変更可能であることが便宜だからである。
【0004】
このような携帯型機器保持クリップとしては、例えば特許文献1及び2に開示されているようなものが知られている。
【特許文献1】実開昭55−87074号公報
【特許文献2】米国特許第4100653号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においては、小型マイク・スピーカの向きを任意に変更できるよう、当該小型マイク・スピーカの外殻に回転自在に装着されたクリップを備えた小型マイク等の支持構造の技術が開示されている。
また、特許文献2では、金属製プレート等に形成された円弧状に並ぶ複数の窪み(depression)、この窪みに嵌合する突起(projection)をもつスプリング、このスプリングに軸回転可能に据え付けられたクリップ等を要素とする、「衣服等の薄い物質にマイクロホンスピーカを回転可能に取り付けるための構造(arrangement)」の技術が開示されている。特許文献2では、マイクロホンスピーカの姿勢固定に、前記の窪みと突起との嵌合が利用される。
【0006】
しかしながら、特許文献1において具体的に開示されている技術では、構成部品の点数が多く、それに伴って組み立て作業が困難となる不具合がある。また、部品点数が多いことは、コストアップを導き、あるいはクリップ自体を重くすることにもつながる。さらに、同技術では、小型マイク・スピーカの姿勢を固定するための力の発生源は、スプリングワッシャだけであるので、固定力が十分得られないのではないかという懸念もある。
【0007】
また、特許文献2においても、そのクレーム1における、スプリングと、クリップに弾性力を付勢する手段(means for resiliently urging (a) clip)(同文献の構成要件e参照)とを、仮に別個の部材で構成するというのであれば、前記の特許文献1と同様の不具合を被ることになる。
ただ、この特許文献2では、前述のスプリングが、マイクロホンスピーカ取り付け済みのクリップを衣服等へ装着するための弾性力の提供主体であると同時に、マイクロホンスピーカの回転姿勢を保持するための弾性力の提供主体でもある形態が開示されている(同文献の実施形態及び図面並びにクレーム5参照)。かかる形態であれば、部品点数は減少されていて、前記の不具合は解消されているともいえる。
【0008】
しかしながら、この形態では、次のような不具合がある。すなわち、マイクロホンスピーカの姿勢固定を確実にしようとして、スプリングの弾性力を強くすると、該スプリングのもつ突起を前記窪みから外すことが困難となってしまい、マイクロホンスピーカの姿勢変更をより困難にしてしまうのである。といって、当該弾性力を弱めてしまえば、今度は、回転姿勢にあるマイクロホンスピーカの保持力を弱めてしまう結果を招来する。
また、この形態では、マイクロホンスピーカを回転させるためには、第1に、前記突起をスプリングの弾性力に抗しながら前記窪みから引き抜き、第2に、その引き抜いた状態を維持したままマイクロホンスピーカを回転させる必要がある。この際、特に第2の工程においては、ユーザは、引き抜き動作と回転動作というベクトルの異なる動作を同時に行わなければならず、若干不便を強いられることになる。このように、この形態では、そもそも、良好な操作性という点に関し若干問題があるのである。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、より簡易な構成で、携帯型機器の保持と衣服等への着脱とが実効的に可能な携帯型機器保持クリップを提供することを目的とする。
また、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、より良好な操作性を享受可能でありつつも、携帯型機器の保持と衣服等への着脱とが実効的に可能な携帯型機器保持クリップを提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る携帯型機器保持クリップは、携帯型機器を保持すると共に、所定の薄い物質に着脱可能な携帯型機器保持クリップであって、第1把持部を有し、且つ、前記携帯型機器を保持する第1部材と、前記所定の薄い物質を介して前記第1把持部と当接可能な第2把持部を有する第2部材と、前記第1把持部及び前記第2把持部間にこれらを相互に接触させようとする弾性力を作用する弾性体と、備え、前記第1部材は更に、前記携帯型機器の被取付面と対向する対向面をもつ取付部と、該取付部に取り付けられて前記被取付面を貫通し、且つ、前記携帯型機器を、当該第1部材に対して、その軸心を中心として回転可能に保持する回転軸と、その輪郭形状の一部が前記対向面又は該対向面に接続する面に弾性変形可能に接続される部分である連係部をもつ弾性部と、前記回転軸の軸心から一定の距離にある円弧に乗るように前記被取付面に複数備えられる凹部に嵌合可能であり、且つ、前記弾性部の先端に備えられる凸部と、を備え、前記弾性部は、前記対向面に形成され且つ前記輪郭形状を包含する形状をもつ開口部に収まるように配置されており、且つ、当該弾性部は、前記連係部を軸として前記対向面に対して反り返り可能であり、前記凸部は、前記携帯型機器の前記第1部材に対する回転に伴い、前記弾性部の反り返りによって前記凹部から離脱し、又は、前記反り返りの反動によって前記凹部に嵌合する、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る携帯型機器保持クリップでは、前記弾性体に起因する弾性力は、少なくとも前記凸部及び前記凹部間の嵌合に際し、前記弾性部に対して作用するように構成してもよい。
【0012】
また、本発明に係る携帯型機器保持クリップでは、前記第1部材と前記弾性部は、一体成型により製造されるように構成してもよい。
【0013】
また、本発明に係る携帯型機器保持クリップでは、少なくとも前記第1部材は、樹脂材料から作られているように構成してもよい。
【0014】
また、本発明に係る携帯型機器保持クリップでは、前記凸部及び前記凹部は、略半球状の形態をもつように構成してもよい。
【0015】
また、本発明に係る携帯型機器保持クリップでは、前記第1部材及び前記第2部材間を、所定の軸を中心に回転可能に連結する連結手段を更に備え、前記第1把持部及び前記第2把持部は、前記所定の軸を境界として、前記第1部材及び前記第2部材の一方の側の端に位置し、前記弾性体は、前記所定の軸を境界として、前記第1部材及び前記第2部材の他方の側に、これら第1部材及び第2部材を離間させようとする弾性力を作用するように構成してもよい。
【0016】
この連結手段を備える態様では、当該連結手段が、前記第1部材及び前記第2部材のうち一方の部材に備えられる第1及び第2の突出部と、前記第1部材及び前記第2部材のうち他方の部材に備えられ、前記第1及び第2の突出部それぞれと嵌合可能な第1及び第2の嵌合孔、及び、これら第1及び第2の嵌合孔それぞれに通じ、前記第1及び第2の突出部それぞれが通過可能な幅を有する第1及び第2の通し孔と、を備え、前記突出部は、前記通し孔を通過することによって前記嵌合孔に嵌合し、前記所定の軸上には、前記第1の突出部及び前記第1の嵌合孔間の嵌合部分と、前記第2の突出部及び前記第2の嵌合孔間の嵌合部分とが存在するように構成してもよい。
【0017】
また、本発明に係る携帯型機器保持クリップでは、前記第1部材及び前記第2部材は、それぞれ、略直方体状の剛体を含むように構成してもよい。
【0018】
また、本発明に係る携帯型機器保持クリップでは、前記凸部は、前記弾性部の先端に複数備えられ、これら複数の凸部は前記凹部の複数に同時に嵌合可能であるように構成してもよい。
【0019】
また、本発明に係る携帯型機器保持クリップでは、前記弾性体は、コイルスプリングを含むように構成してもよい。
【0020】
また、本発明に係る携帯型機器保持クリップでは、前記弾性体は、板ばねを含むように構成してもよい。
【発明の効果】
【0021】
まず、本発明によれば、第1部材及び第2部材が、衣服等への所定の物質への着脱が可能なクリップとして機能することになる。
そして、本発明によれば、第1部材の対向面の開口部に収まるように配置される弾性部が備えられ、この弾性部の先端に備えられる凸部が、回転する携帯型機器の姿勢固定に利用されるようになっている。すなわち、本発明は、かかる姿勢固定について、特別の部材を用意する必要がなく、第1部材の一部を構成するかの如き弾性部を利用することで、当該姿勢固定を可能としている。したがって、本発明では、構成の簡易化を図ることができる。また、このように構成が簡易になることにより、本発明では更に、コストの低廉化、組み立ての容易化、軽量化等が図られることにもなる。
【0022】
また、本発明によれば、携帯型機器の第1部材に対する回転を実行しようとする場合、ユーザは、例えば当該第1部材(あるいは、これに加えて該第1部材に連結される第2部材)を右手で、携帯型機器を左手で掴み、相互に捻るようにするだけで、前記回転を行うことができる。これは、前記のような第1部材と弾性部との関係から、第1部材の対向面からは凸部だけが突出している状況を想定することが可能であり、そうであるなら、例えば剛体としての第1部材(及び第2部材)を回転させようとする力を働かせるだけで、当該凸部を凹部から離脱させること(該離脱は、弾性部の先端の反り返りによる。)を比較的容易に実現し得るからである。このことは、従来のように、ベクトルの異なる動作を一度に要求する構造に比べて、極めて有利ということができる。
このように、本発明によれば、極めて良好な操作性を享受することができるのである。
【0023】
ちなみに、この効果は、(1)第1部材が樹脂材料から作られていること、(2)凸部及び凹部が略半球状の形態をもつこと、等の要素を加えれば、より効果的に享受される。(1)によれば、前記反り返りがより容易になり得、(2)によれば、携帯型機器の第1部材に対する回転に伴う、凸部及び凹部間の離脱をよりスムースなものとなし得るからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下では、本発明の実施の形態について、図1から図10を参照して説明する。
本実施形態の携帯型機器保持クリップは、図1に示すように、下側部材1、上側部材2及びリアパネル51を備えている。このうち下側部材1及び上側部材2は、後の説明からも明らかとなるように、いわゆるクリップを構成する。
【0025】
下側部材1及び上側部材2はそれぞれ、概略、厚さ(図2では図中左右方向の長さを指す)の小さい略直方体形状をもつ。これら下側部材1及び上側部材2は、それぞれ、その略直方体形状の幅広面に第1連結部11及び第2連結部21を備えている。
【0026】
第1連結部11は、下側部材1の幅広面から突出する。その形態は、概ね、図中横方向に長い略直方体形状である。ただし、先端部分の角部はまるめられており、その側面視した形状は、図3に示すように、長方形の一辺に半円を接続したかの如き形状を呈している。
このような第1連結部11は、図4に示すように、下側部材1の幅方向(図4中左右方向)の中心線を挟んで備えられる2つの部分をもつ。これら2つの部分それぞれの外側を向く面には、図3又は図4に示すように、嵌合孔11Aが形成されている。また、同面には、嵌合孔11Aに通ずる通し孔11Bも形成されている。この通し孔11Bは、後述する突出部21Aが通過可能な幅を持つ。
さらに、前記2つの部分それぞれの内側を向く面には、図3又は図4に示すように、リブ11Cが形成されている。ここでリブ11Cとは、前記内側を向く面から突出した部分である。このリブ11Cの長さは、図3に示すように、同図中左右方向に示す第1連結部11の全長に一致する長さをもつ。
【0027】
一方、第2連結部21は、上側部材2の幅広面から突出する。その形態は、図2あるいは図6に示すように、概ね、側面視して図中縦方向に長い略台形状である。この形状の一部を構成する斜辺21L(図2及び図6参照)は、下側部材1の幅広面に対向する。斜辺21Lと幅広面とのなす角度は、所定の鋭角となるように定められている。なお、このような第2連結部21も、2つの部分をもつことは、図6及び図7から明らかなように、前記の第1連結部11と同様である。
第2連結部21を構成する前記2つの部分それぞれが対向する面には、図7に示すように、突出部21Aが形成されている。この突出部21Aは、前記の通し孔11Bを通過して、嵌合孔11Aに嵌合可能である。また、突出部21A及び嵌合孔11Aはそれぞれ円形輪郭をもつことから、各々の中心を軸として、第1連結部11(又は第2連結部21)は第2連結部21(又は第1連結部11)に対し回転可能である。
【0028】
下側部材1及び上側部材2は、弾性体3によって相互に接続されている。この弾性体3は、図9から明らかなように、板ばねである。該弾性体3は、例えば適当な金属により作ることができる。
この弾性体3は、図9に示すように、側面視して概ねL字状の形態をもつ。ただし、L字を構成する一辺と他辺とのなす角度は90度よりも小さい。このL字の一辺の端付近には、下側部材取付用孔321,321が形成されている。これに対応して、下側部材1には図4に示すように被取付用突起123,123が形成されている。この被取付用突起123,123は、後述する弾性部121の形成領域内にあり、したがって、該弾性部121は弾性体3の弾性力を受けうるようになっているが、この点については、後に改めて触れる。
【0029】
他方、弾性体3のL字の他辺の端付近には上側部材取付用溝322が形成されている。これに対応して、上側部材2には図7あるいは図8に示すように被取付用突起220が形成されている。
なお、本発明では、前記の上側部材取付用溝322に代えて、図9の(d)に示すように、取付用孔322’を形成してもよい。ただ、このような場合に比べると、図9(c)の場合の方が、弾性体3を比較的長期間運用するためには好ましい。なぜなら、図9(d)の場合、図9の(c)の場合に比べて、上側部材2及び弾性体3間で及ぼし合う力の作用点(図9(c)及び(d)それぞれの矢印F1及びF2参照)が、弾性力を主に生み出す弾性体3の折り曲げ部分(L字の角部)からみて、より遠くに位置するからである。これにより、図9の(d)の場合では、図9の(c)の場合に比べて、弾性体3により大きな力がかかりやすくなり、その疲労の進度を高めるのである。
【0030】
弾性体3は、これらの孔ないし溝及び突起間が相互に嵌合する(孔321,321と突起123,123が嵌合し、溝322が突起220に嵌合する。)ことにより、図2に示すように、下側部材1及び上側部材2間に組み付けられる。この組み付けにおいては、下側部材1及び上側部材2によって、弾性体3のL字の一辺と他辺とがより近づくような力がかけられる。これにより、下側部材1及び上側部材2間には弾性体3を起因とする弾性力が作用する。
より具体的には、下側部材1及び上側部材2の図中下縁同士については両者相互が接近するような弾性力が作用し、反対に、両者の図中上縁同士については両者相互が離間するような弾性力が作用する。なお、このように弾性力の作用方向が逆転する境界は、図2に示す弾性体3の配置状況からもわかるように、第1連結部11の嵌合孔11Aと第2連結部21の突出部21Aとが嵌合する部分(より正確には、両者の回転中心点)を含む図中左右方向に延びる水平線LLである。
【0031】
下側部材1及び上側部材2は、それぞれの図中下縁に沿うように、第1把持部14及び第2把持部24を備えている。これら第1把持部14及び第2把持部24は、前記弾性体3の弾性力が作用することによって相互に当接可能である。この当接が、例えば衣料等を介して行われれば、本実施形態に係る携帯型機器保持クリップを当該衣料等に装着することができる。このように、下側部材1及び上側部材2は、いわゆるクリップとして機能する。
【0032】
この際、前記の第2連結部21の斜辺21L及び第1連結部11のリブ11Cが有効に機能しうる。これは以下のような事情による。
【0033】
すなわち、まず、第1把持部14及び第2把持部24によって衣料等を挟み込もうとする場合、これら両者間を離間させる必要がある。その際には、下側部材1及び上側部材2それぞれの図中上端間を、弾性体3の弾性力に抗して近づけるような力を加えることになる。このとき、これら両者間をあまりに接近させることは好ましくない。なぜなら、そのようにすると、弾性体3に無用な力がかかることになり、その疲労の度合いを強め、あるいは場合によってはその破損を生じさせるおそれが高まるからである。
しかるに、本実施形態では、前述のように、下側部材1の幅広面と所定の鋭角をなす斜辺21Lが存在することにより、下側部材1及び上側部材2それぞれの図中上端間の距離が必要以上に接近するおそれが極めて低減されている。これは、両者間の距離が一定以上近づくと、下側部材1の幅広面と斜辺21Lとが相互に接するからである。つまり、斜辺21Lを含む第2連結部21は、下側部材1の上端及び上側部材2の上端間の接近限界距離を適正に保つストッパとして機能するのである。
以上により、結局、本実施形態では、斜辺21Lを含む第2連結部21が存在することにより、弾性体3のより長期的な運用が可能となるという利点が得られるのである。
なお、以上のような作用効果をより実効的に享受するためには、前記の所定の鋭角は、例えば、3度から70度程度、より好ましくは5度から45度の間で設定するのがよい。当該鋭角があまりに小さいと、場合によっては比較的厚手の衣服等へ着装が困難になり、あまりに大きいと、前記のストッパ機能が殆ど無意味になるからである。
【0034】
加えて、本実施形態では、前述のように、リブ11Cが存在することにより、弾性体3に無用な力がかかるおそれが更に低減されている。これは以下に述べる理由による。すなわち、弾性体3には、図9(a)に示すようにリブ11C(図中破線参照)の突端部が接する(図4において弾性体3が装着された場合も想定されたい。)。この接触部分は、より具体的には、当該弾性体3が上側部材2に接触する面とは反対側の、当該弾性体3を構成する面上にある。
このような接触部分の存在によって、下側部材1及び上側部材2それぞれの図中上端間が近づく場合においては、弾性体3の動きは、一定程度制約されることになる。より具体的には、図10(a)及び(b)の対比から明らかなように、当該弾性体3の動きのうち、第1連結部11を構成する2つの部分に挟まれた領域に当該弾性体3自体が入り込んでいくような動きが制約されるのである(図10(a)では、弾性体3が前記挟まれた領域に入り込んでいる様子が示されている。)。このことは結局、図10(b)に示すように、弾性体3の折り曲げ部分が必要以上に屈曲しないことに帰結するのである。
以上により、結局、本実施形態では、リブ11Cが存在することによっても、弾性体3のより長期的な運用が可能となるという利点が得られるのである。
なお、当該弾性体3の折り曲げ部分は、下側部材1及び上側部材2の双方から、いわばフリーの状態にされているため、前述のような弾性体3の動きの制約があると、当該折り曲げ部分は、従前の状態からみて上側部材2の方に近づいていくような動作を行うことになる。これは、いわば前記制約に対する補償の動作ということができる。
【0035】
なお、図示はしないが、前述の第1把持部14及び第2把持部24における相互の当接面には、互いに噛み合う凸凹面を形成しておくとよい。そのようにしておけば、前述したような衣料等への装着をより確実になし得る。
【0036】
リアパネル51は、図2に示すように下側部材1に取り付けられている。
リアパネル51及び下側部材1が取り付けられた状態において、リアパネル51の被取付面51Aは、下側部材1の取付面1Fに対向する。本実施形態においては特に、被取付面51A及び取付面1Fのいずれも、図2に示すように特段異例の段差を持たない平面である。
なお、リアパネル51の被取付面51Aとは反対側の面(図2中左側)には、マイクロホン、携帯電話、各種の携帯型の電子機器等の携帯型機器(不図示)が固持される。当該携帯型機器を固持するため、リアパネル51は、図1に示すように、複数の取付孔53,54及び55をもつ。
【0037】
また、リアパネル51及び下側部材1が取り付けられた状態において、下側部材1の幅広面に、該面から突出するように備えられた回転軸13は、図2に示すように、前記被取付面51Aを含むリアパネル51全体を貫通する。リアパネル51は、この回転軸13によって保持される。
ただし、リアパネル51における回転軸13を貫通させるための孔と、回転軸13の周面との間には一定のクリアランスが設定されており、リアパネル51と下側部材1とは、この回転軸13の軸心を中心として相対的に回転可能である。
回転軸13は、その軸方向に沿って2つの縊れ部をもつ。より外方(図2中左方)の縊れ部にはEリング131が備えられ、より内方(図2中右方)の縊れ部にはOリング132が備えられている。Eリング131は、回転軸13とリアパネル51との相対的位置関係を固定する役割を担う(ただし、前記の回転動作は阻害しない。)。Oリング132は、図2中右側から回転軸13に沿って水分が侵入することを防止し、もって図2中左側に位置することとなる携帯型機器を当該水分から防御する。
【0038】
以上述べた下側部材1、上側部材2及びリアパネル51はいずれも適当な樹脂材料から作られている。その結果、比較的軽量な携帯型機器保持クリップが提供される。
【0039】
最後に、下側部材1は、上述した要素の他、弾性部121を備えている。
本実施形態における弾性部121は、特に図4に詳細に示すような形状を有している。すなわち、図中上方の弾性部121の輪郭は、上下方向よりも左右方向に長い第1長方形と、この第1長方形の両端それぞれに重なるようにして配置される2つの円とによって構成される。他方、図中下方の弾性部121の輪郭は、前記の第1長方形の中程に接続された、図中左右方向よりも上下方向に長い第2長方形によって構成される。この第2長方形の図中下辺は下側部材1と一体的な繋がりをもっている(以下、この繋がっている部分を「連係部124」という。図4参照)。
【0040】
以上のように、弾性部121は、下側部材1から、前記の第1長方形、2つの円及び第2長方形からなる閉じられた図形を切り出したような輪郭をもつ。かかる輪郭をもつ弾性部121は、下側部材1ないし取付面1Fに形成された同様の輪郭をもつ開口部内に収まるように配置されている。
ただ、弾性部121は、その輪郭のうちの一部である連係部124によって、下側部材1との一体性を維持する。この一体性の維持は、弾性部121と下側部材1とを、当初から一体成型することにより好適に得ることができる。
【0041】
弾性部121は、図5に示すように、この連係部124を軸とすることによって、取付面1Fに対して反り返ることが可能となっている。
どの程度の力をかければ反り返りが生じるか、あるいはその反り返りが量的にどの程度可能であるか等(以下、簡単のため「反り返り能力」ということがある。)は、弾性部121全体の大きさ、連係部124の長さ(ないしは幅)、更には該連係部124がどのような材料から作られているか等に応じて異なる。
また、先に触れたように、本実施形態においては、図4に示すように、弾性体3を取り付けるための被取付用突起123,123が、弾性部121の輪郭形状内、より詳細には弾性部121の輪郭を形作る要素として説明した前記2つの円それぞれの中心に位置するように形成されている。そして、この被取付用突起123,123は、図2あるいは図4から明らかなように、前記水平線LLよりも図中上側に位置する。
以上により、弾性部121には、弾性体3による弾性力がかけられることになり、しかもその作用方向は図4中紙面に向かって向こう側(図2では図中左側)ということになる。
このようなことから、前記反り返り能力は、前記弾性体3に起因する弾性力の大きさによっても異なってくる。
【0042】
弾性部121は、その先端に、2つの略半球状の形態をもつ凸部122,122を備える。凸部122,122は、前記被取付用突起123,123と同様、弾性部121の輪郭を形作る要素として説明した前記2つの円それぞれの中心に位置するように配置される(図4参照)。ただし、この凸部122、122は、被取付用突起123,123が形成されている面からみて反対側の面に存在する。
一方、前述したリアパネル51の被取付面51Aには、前記凸部122,122に嵌合可能な略半球状の形態をもつ凹部52,52,…が備えられている。凹部52,52,…は、図1に示すように、前記の回転軸13の軸心から一定の半径を持つ円周に乗るように配置されている。
【0043】
1つの凹部52と、それに隣接する凹部52との距離は、前記の2つの凸部122,122間の間隔に依存して定められる。本実施形態では、次のような手順で定められる。
すなわち、第1に、2つの凸部122,122間の距離をD1とすると、ある1つの凹部52(以下、簡単のため「凹部52(A)」という。)と、当該凹部52(A)からみて2つ目(当該凹部52(A)を含まず)に位置する凹部52(以下、簡単のため「凹部52(B)」という。)との間の直線距離を前記D1に一致させる。第2に、凹部52(A)と凹部52(B)とのちょうど中間点に凹部52(C)を配置する。なお、本実施形態において、凹部52,52,…はそもそも円周に乗るように配置されるから、凹部52(C)も、当然そのように配置される。
要するに、この場合、隣接する凹部52,52間の前記円周に沿った距離は、R・(Sin-1(D1/2R))となる。ただし、Rは、前記一定の半径、即ち凹部52,52,…がその周に並ぶ円の半径である。
【0044】
凸部122,122と凹部52,52,…との関係が、このようにして定められているから、2つの凸部122,122は、2つの凹部52,52に同時に嵌合可能である。また、この状態では、図1に示すように、図中左方の凸部122と図中右方の凸部122との間に、凹部52が1つ存在するという状況が呈されることになる(前記の符号52(A),52(B),52(C)を用いれば、凸部122,122は、凹部52(A)及び凹部52(B)に嵌合し(図1中黒丸参照)、その間に嵌合していない凹部52(C)が存在するという状況が呈されることになる。)。
【0045】
なお、凸部122,122間の距離と、隣接する凹部52,52間の距離とは、双方向的に関連性を有する事柄であるから、前記とは逆に、先に、隣接する凹部52,52間の距離を定め、後に、それに基づいて凸部122,122間の距離を定める(換言すれば、弾性部121自体の大きさ、あるいは下側部材1の大きさを定める)ようにしてもよいことは言うまでもない。
【0046】
以上の他、上側部材2には、図1あるいは図7に示すように、引っ掛け用開口部23が形成されている。この引っ掛け用開口部23は、例えば何らかの建造物あるいは構造物の壁面から突出した部材等に、本実施形態に係る携帯型機器保持クリップを引っ掛ける際に利用することができる。
【0047】
次に、上述した構成となる携帯型機器保持クリップの動作について、既に参照した図1乃至図10に加え、図11を参照しながら説明する。
図11では、図中左側から右側にかけて、下側部材1及び上側部材2(以下、簡単のため、併せて単に「クリップ」と呼ぶことがある。)が、リアパネル51に対して、回転軸13の軸心を中心に反時計回りに回転していく様子が描かれている。
なお、クリップとリアパネル51との関係は回転に関し相対的であるから、図11は、リアパネル51が、クリップに対して回転していく様子を描くものと解釈することも当然可能である。以下においても、図11に合わせて、「クリップが回転する」という視点で説明するが、それは同時に、「リアパネル51(ないしはそれに固持される携帯型機器)が回転する」と言うことをも含意しうる。
【0048】
まず、図11(A)は図1と何ら変わるところがなく、クリップが、リアパネル51に対していわば正規の姿勢をとる状態が表されている。この状態では、リアパネル51の被取付面51Aに形成されている凹部52,52,…のうち、図11に示す凹部521及び523に、下側部材1の凸部122,122が嵌合している(図中黒丸参照)。
【0049】
続いて、この状態から、クリップを反時計回りに若干回転する。この際、下側部材1の弾性部121が機能する。その機序は以下のようである。
クリップが回転を始めると、凸部122の先端は、次第に浅くなっていく凹部521の内側面(なぜなら、凹部521は略半球状だからである。)から力を受ける。この力は、凸部122を、図11中紙面に向かってこちら側に移動させる方向に働く。そうすると、凸部122は下側部材1の弾性部121の先端に備えられていることから、当該弾性部121の先端も同じ方向の力を受ける。この際、弾性部121の先端は、当該方向に運動可能である。なぜなら、既述のように、弾性部121は、連係部124を軸として反り返り可能だからである(図5参照)。
クリップの回転が更に若干進むと、凸部122の先端は、隣接する凹部521及び522間の、いわば「峰」とも呼びうる部分に到達する。この峰とは、一方の凹部521の内側面と他方の凹部522のそれとが出会う部分である。この際における弾性部121の先端の反り返りの量は最大値をとる。図11(B)は、凸部122が凹部521及び522間の峰の上にある状態を示している。
以上述べた機序は、当然、図11における凹部523及び524間を移動する凸部122にもあてはまる。
【0050】
続いて、図11(B)の状態から、クリップを反時計回りに更に回転する。
そうすると、前述のように凹部521及び522間の峰の上にあった凸部122は、凹部522の内側面を滑り込むようにして、当該凹部522に嵌合する(凸部122は、図11中紙面に向かって向こう側に移動する。)。これは、反り返り状態にある弾性部121を元の状態に復帰させようとする弾性力が、当該弾性部121の先端、つまり凸部122に作用するからである。この弾性力は、前記連係部124を発生源の一つとして発生する。また、前述した構造から、弾性体3もまた当該弾性力の発生源の一つとなる(図9の取付用孔321,321及び図4の被取付用突起123,123参照)。
こうして、凸部122は、図11(C)に示すように、速やかに且つ確実に凹部522に嵌合する。ここで「速やかに且つ確実に」というのは、凸部122及び凹部522との嵌合には、弾性部121の弾性力のみならず、弾性体3の弾性力もまた作用することを考慮している。以上述べた機序は、当然、図11における凹部523及び524間を移動する凸部122にもあてはまる。
ちなみに、この凸部122及び凹部52間の嵌合では、いわゆるクリック音が発生し、また、ユーザはクリック感を感じることができる。
【0051】
以上のようにして、本実施形態によれば、クリップを携帯型機器に対して、あるいは携帯型機器をクリップに対して、容易に回転することが可能となっていると共に、一定の回転角度における当該携帯型機器の姿勢固定もまた確実になされ得るようになっているのである。
【0052】
以上述べたような構成及び作用を呈する、本実施形態に係る携帯型機器保持クリップによれば、以下のような効果が奏される。
(1)本実施形態に係る携帯型機器保持クリップでは、下側部材1と一体的に成型し得る弾性部121の発生する弾性力が、リアパネル51、ひいてはこれに固持される携帯型機器の姿勢固定に利用されている。したがって、本実施形態では、その姿勢固定のために特別の部品、部材等を用いる場合に比べて、構造がより簡易化されているということができ、部品点数増大による高コスト化を回避することができる。
また、同じ理由から、本実施形態に係る携帯型機器保持クリップの組み立ては、これを容易に行うことができる。さらに、このような効果により、本実施形態では、上側部材2や弾性体3が破損した場合に、携帯型機器保持クリップの分解、交換、及び再組立てを容易に行えるという利点も得られる。
なお、この組み立て容易という効果は、本実施形態に係る携帯型機器保持クリップが、通し孔11Bを構成要素とする第1連結部11と、第2連結部21とを備えていることから、より一層実効的になる。これは、前述のように、突出部21Aが通し孔11Bを通過し、もって嵌合孔11Aに嵌合するという、非常に簡易な組み立てを可能にする構造が採用されているからである。
また、かかる構造によれば、両者間の結合に別途ピンを利用する等という場合に比べて、組み立て容易性が向上するのは当然、当該ピンを準備するのに必要な材料費の節約等をも実現することが可能である。
【0053】
(2)本実施形態に係る携帯型機器保持クリップによれば、高い操作性を享受することができる。これは、先に図11を参照して述べたように、クリップを回転させようとする場合、あるいは回転中においては、比較的容易に、あるいはしなやかに凸部122と凹部52との離脱が実現されるからである。
この凸部122及び凹部52とのしなやかな離間が実現されることについては幾つかの理由がある。
第1に、弾性部121が下側部材1と一体性を維持しているため、携帯型機器の姿勢固定に利用されている凸部122は、該下側部材1の取付面1Fから突出しているだけであり(図3参照)、その結果、剛体としての下側部材1及びこれに連結された上側部材2を回転させようとする力を働かせるだけで、当該凸部122の凹部52からの離脱を比較的容易に実現し得るためである。
第2に、本実施形態の下側部材1及び弾性部121は、樹脂材料から作られているため、連係部124は比較的大きな弾性変形能力をもち、弾性部121の反り返りが比較的容易だからである。
第3に、凸部122及び凹部52共に、略半球状の形態をもち、リアパネル51と下側部材1との相対的回転において、凸部122の凹部52からの離脱に特別な障害がなく、該離脱がスムースに行われうるようになっているからである。これは、凸部及び凹部の形態が立方体、あるいは直方体であるような場合を想定すると明らかである。
なお、前記の第1の理由に関連して、剛体としての下側部材1の大きさ、該下側部材1に上側部材2を加えた構造体(即ち、クリップ)の大きさ、あるいは被取付面51Aから計った該クリップの高さは、凸部122の凹部52からの離脱のし易さという観点からは、取付面1Fから計った凸部122の突出長さに比べて、できるだけ大きい方が好ましい。そのようであれば、クリップないし下側部材1に対して、より大きな回転力をかけやすくなり、前記離脱がより容易になるからである。むろん、上述した大きさないし高さは、リアパネル51ないし携帯型機器の大きさに対して、好適な値にとどめるべきであるから、できるだけ大きくといっても、自ずと定まる制限は当然ある。
【0054】
(3) 本実施形態の携帯型機器保持クリップでは、上述のように、凸部122の凹部52からの離脱を比較的容易に行うことができ、もって高い操作性が享受され得るにもかかわらず、携帯型機器の姿勢固定をより確実になし得る。
これは、携帯型機器の姿勢固定が、弾性部121の先端の凸部122が凹部52に嵌合することによるほか、その嵌合に弾性体3に起因する弾性力が作用することによる。つまり、本実施形態では、携帯型機器の姿勢固定に、弾性部121(つまり、連係部124)の弾性力及び弾性体3の弾性力という、二重の弾性力を利用可能であることにより、当該姿勢固定をより確実になし得るのである。
また、本実施形態では、凸部122が2つ存在し、そのそれぞれが、図11を参照して説明したように凹部521及び凹部523(ないしは凹部522及び凹部524)という2つの凹部に嵌合する。このことも、携帯型機器の確実な姿勢固定に大きく貢献している。また、図1あるいは図11に示したような、1つの凹部52を挟む2つの凹部52に、2つの凸部122が嵌合するという具体的態様は、携帯型機器の姿勢をバランスよく維持するのに極めて好適な態様とういうことができる(仮に、凸部が1つしか存在せず、該凸部が1つの凹部にしか嵌合しない場合を想定すれば、本実施形態の優位性は明らかである。)。
【0055】
なお、前記のような、弾性部121に弾性力を作用する弾性体3の存在は、次のような効果をも発揮する。
すなわち、本実施形態に係る弾性部121は、携帯型機器の回転に伴い、常に反り返り運動を要求されること、また樹脂材料から作られていること等から、該弾性部121中の連係部124は比較的破損しやすい部分ということができる。しかし、仮にそのような破損が生じたとしても、前記のような弾性体3が存在すれば、該弾性体3が弾性部121の不在をいわばバックアップするような形となるので、クリップ運用上特段大きな支障が生じないという利点が得られるのである。
【0056】
(4) 本実施形態においては、リアパネル51に直接に凹部52を形成し被取付面51Aを形成する態様となっていることから、例えばかかる被取付面を別の部材(例えば、金属パネル等)で形成する場合と比べて、防水対策の点で有利である。なぜなら、別の部材で被取付面を形成する場合、当該別の部材の周囲全般に関して(例えば、前記金属パネルが四辺形であるなら、その辺全部に関して)、防水措置を施しておく必要があるのに対して、本実施形態では、図2に示すように、回転軸13の縊れ部にOリング132を設けておくだけで、十分実効的な防水効果を得ることができるからである。
なお、前記別の部材を設ければ、凸部122が被取付面51Aの表面を傷つけることを未然に防止することができるという利点は得られるが、本実施形態においても、被取付面51Aと取付面1Fとの間に所定の隙間を設定する等の対策を講じておけば、それとほぼ同様の効果を享受することはできる。より具体的な実現手段としては、回転軸13にワッシャを通し該ワッシャを被取付面51A及び取付面1F間に配置する等の手法を採用することができる。
【0057】
また、被取付面を別の部材で形成しないという点に関しては、本実施形態では次のような効果も奏される。すなわち、上述のリアパネル51には、携帯型機器あるいはフロントパネル等(いずれも不図示、以下、この段落では「フロントパネル」に代表させる。)が取り付けられ得る。その場合、リアパネル51とフロントパネルとは、例えばビス止めされる。
この際、仮に前記別の部材が存在する形態では、当該別の部材の存在領域にビス止めを実行することは当然できない。つまり、当該別の部材が存在する形態では、ビス止め位置の設定に相当程度大きな制約がかかる。
これに対して、本実施形態では前記別の部材が存在しないため、リアパネル51の被取付面51A上でさえあれば、前記のビス止め位置は、基本的に自由に設定され得るのである(被取付面51Aのうち、クリップに隠れる部分であっても、該クリップの回転によって表出しうる部分であれば、当該部分にもビス止めを実行することが可能である。)。
また、これによれば、本実施形態では、例えばリアパネル51とフロントパネルとのより強固な結合を実現する等といった、より実質的な配慮をなした上で、ビス止め位置を好適に設定することが可能となる。その結果、本実施形態によれば、前述のビス止め位置の設定自由度の向上といった設計上の効果に止まらず、前記実質的な配慮によって享受されうるその他の効果(前述の例に則せば、リアパネル51及びフロントパネル間の強固な結合)をも享受することが可能となるのである。
【0058】
なお、本発明は、前記別の部材を使用する形態であっても適用可能であり、これを積極的に排除する意図は有しない。
【0059】
なお、本発明は上記実施形態にかかわらず、種々の変形が可能である。その変形例としては、例えば次のようなものがある。
(1)まず、上述の実施形態では、弾性体3として板ばねを備えているが、本発明は、かかる形態に限定されない。例えば、図12から図16に示すように、コイル部32を有するコイルスプリングとしての弾性体320を利用することができる。なお、これら図12から図16は、それぞれ、上述の実施形態における図2、図4、図7、図8及び図9に対応するものである。
【0060】
この弾性体320は、図16に示すように、取付部31、コイル部32及び下側部材1に当接する当接部33を備えている。
取付部31は、図16に示すように、その円周の一部を欠いた円形状をもつ。かかる形状をもつ取付部31は、上側部材2上に形成された、全体的にみて略キノコ様の形態をもつ被取付突起22(図14及び図15参照)に引っ掛かり得る。なお、図14における被取付突起22周囲の破線は、当該被取付突起22に取付部31が引っ掛けられた場合に、該取付部31が位置する部分を表現している。
一方、当接部33は、略U字状の形態をもつ。この当接部33は、図12あるいは図13に示すように、下側部材1の幅広面に当接する。なお、図13における図中上下に走る中心線を跨ぐように描かれた破線(符号33M参照)は、当該下側部材1に当接部33が当接する部分を表している。
【0061】
コイル部32は、前記の取付部31及び当接部33と一体的に構成されており、弾性エネルギを蓄積する。この弾性エネルギの蓄積は、下側部材1及び上側部材2間に弾性体320を組み付ける際に、取付部31及び当接部33に所定の力がかかることにより行われる。このコイル部32の存在により、下側部材1及び上側部材2の各々には弾性力が作用する。下側部材1及び上側部材2それぞれの図中下縁同士間で働く弾性力の向きと、上縁同士間で働くそれとは、ちょうど正反対の関係にあることは、前述の実施形態と同様である。
【0062】
このような形態であっても、上述の実施形態と本質的に相違のない作用効果が得られることは明らかである。
また、この形態では特に、より多くの繰り返し使用に耐え得るという作用効果が得られる。というのも、上述の実施形態における弾性体3では図9に示す折り曲げ部分が弾性力の発生を一手に担うことになってしまうため、長期的に安定した弾性力を提供するという観点からは若干懸念があるからである。この観点からみると、弾性体320では、そのような懸念が殆どないのである(ただし、弾性体3でも、実用上十分な期間の運用は可能である。前記の「長期的に…若干懸念」というのは当然ながら程度問題である。)。
【0063】
ただ、弾性体320では、その構造が、上述の実施形態に比べて、より複雑になっているから、構造簡易化という効果、更にはコスト低廉化、組立て容易化等といった前述した効果の、より実効的な享受という点に関しては、上述の実施形態の方がより優位に立つ。
【0064】
(2)上述の実施形態では、弾性部121に凸部122が、リアパネル51の被取付面51Aに凹部52が形成されているが、場合によっては、この関係が逆であってもよい。すなわち、弾性部121に凹部を、リアパネル51の被取付面51Aに凸部を、それぞれ形成するのであってもよい。
【0065】
(3)上述の実施形態では、下側部材1と弾性部121とを一体成型することについて言及しているが、本発明は、必ずしもかかる形態に限定されない。例えば、下側部材の所定の箇所に開口部を予め形成しておくと共に、これとは別に「弾性部材」を形成し、その後、この「弾性部材」を前記開口部に収め、且つ、該「弾性部材」の縁と当該開口部の縁とを接続して前述のような連係部を形成する、等といった手法で、下側部材1及び弾性部121の一体的構造をつくり出すこともできる。
【0066】
(4)上述の実施形態では、下側部材1、上側部材2及びリアパネル51は、いずれも樹脂材料から作られているが、本発明は、この形態に限定されない。例えば、そのうちの全部又は一部を金属材料から作ってもよい。
【0067】
(5)上述の実施形態では、「リアパネル51に携帯型機器が固持される」という表現を採用しているが、本発明は、かかる表現においてリアパネル51と携帯型機器とを特別な関係に設定する意図は有しない。かかる表現では、リアパネル51は独自の部材であって、それとは別に携帯型機器が存在する、と受け取ることも可能であるが、そうではなくて、携帯型機器の一部としてのリアパネル51が存在する、というように解釈することもできる(この場合は、前記の表現に代えて、「リアパネル51に携帯型機器『本体』が固持される」、あるいは「リアパネル51に『該リアパネル51を除く携帯型機器の残部』が固持される」という表現を用いる方が、より正確ともいえる。)。
いずれにせよ、本発明の本質に関わる部分ではなく、リアパネル51が携帯型機器の一部を構成していようと、構成していまいと、本発明の範囲内にあることに変わりはない。
特許請求の範囲における「携帯型機器」という用語は、上述したような事情を踏まえて解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施形態に係る携帯型機器保持クリップの平面図である。
【図2】携帯型機器保持クリップの側面図(一部断面図)である。
【図3】下側部材の側面図である。
【図4】下側部材の平面図である。
【図5】図4のX1-X1断面図である。
【図6】上側部材の側面図である。
【図7】上側部材の平面図である。
【図8】図7のX2-X2断面図である。
【図9】弾性体の(a)第1平面図、(b)側面図及び(c)第2平面図であり、(d)は(c)の第2平面図に関する別の形態を示す図である。
【図10】第1連結部に形成されたリブの機能を説明するための図であり、(a)はリブがない場合、(b)はリブがある場合をそれぞれ示している。
【図11】本発明の実施形態に係る携帯型機器保持クリップの動作を説明するための図である。
【図12】本発明の別の実施形態に係る携帯型機器保持クリップの側面図(一部断面図)である。
【図13】図12の携帯型機器保持クリップの下側部材の平面図である。
【図14】図12の携帯型機器保持クリップの上側部材の平面図である。
【図15】図12の携帯型機器保持クリップの上側部材の断面図である。
【図16】図12の携帯型機器保持クリップの弾性体の(a)平面図及び(b)側面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 下側部材
11 第1連結部
11A 嵌合孔
11B 通し孔
1F 取付面
121 弾性部
122 凸部
124 連係部
13 回転軸
131 Eリング
132 Oリング
14 第1把持部
2 上側部材
21 第2連結部
21A 突出部
22 被取付突起
23 引っ掛け用開口部
24 第2把持部
3,320 弾性体
31 取付部
32 コイル部
33 当接部
51 リアパネル
51A 被取付面
52 凹部
53,54,55 取付孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯型機器を保持すると共に、所定の薄い物質に着脱可能な携帯型機器保持クリップであって、
第1把持部を有し、且つ、前記携帯型機器を保持する第1部材と、
前記所定の薄い物質を介して前記第1把持部と当接可能な第2把持部を有する第2部材と、
前記第1把持部及び前記第2把持部間にこれらを相互に接触させようとする弾性力を作用する弾性体と、
を備え、
前記第1部材は更に、
前記携帯型機器の被取付面と対向する対向面をもつ取付部と、
該取付部に取り付けられて前記被取付面を貫通し、且つ、前記携帯型機器を、当該第1部材に対して、その軸心を中心として回転可能に保持する回転軸と、
その輪郭形状の一部が前記対向面又は該対向面に接続する面に弾性変形可能に接続される部分である連係部をもつ弾性部と、
前記回転軸の軸心から一定の距離にある円弧に乗るように前記被取付面に複数備えられる凹部に嵌合可能であり、且つ、前記弾性部の先端に備えられる凸部と、
を備え、
前記弾性部は、前記対向面に形成され且つ前記輪郭形状を包含する形状をもつ開口部に収まるように配置されており、且つ、当該弾性部は、前記連係部を軸として前記対向面に対して反り返り可能であり、
前記凸部は、
前記携帯型機器の前記第1部材に対する回転に伴い、
前記弾性部の反り返りによって前記凹部から離脱し、又は、
前記反り返りの反動によって前記凹部に嵌合する、
ことを特徴とする携帯型機器保持クリップ。
【請求項2】
前記弾性体に起因する弾性力は、少なくとも前記凸部及び前記凹部間の嵌合に際し、前記弾性部に対して作用することを特徴とする請求項1に記載の携帯型機器保持クリップ。
【請求項3】
前記第1部材と前記弾性部は、一体成型により製造されることを特徴とする請求項1又は2に記載の携帯型機器保持クリップ。
【請求項4】
少なくとも前記第1部材は、樹脂材料から作られていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の携帯型機器保持クリップ。
【請求項5】
前記凸部及び前記凹部は、略半球状の形態をもつことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の携帯型機器保持クリップ。
【請求項6】
前記第1部材及び前記第2部材間を、所定の軸を中心に回転可能に連結する連結手段を更に備え、
前記第1把持部及び前記第2把持部は、前記所定の軸を境界として、前記第1部材及び前記第2部材の一方の側の端に位置し、
前記弾性体は、前記所定の軸を境界として、前記第1部材及び前記第2部材の他方の側に、これら第1部材及び第2部材を離間させようとする弾性力を作用する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の携帯型機器保持クリップ。
【請求項7】
前記連結手段は、
前記第1部材及び前記第2部材のうち一方の部材に備えられる第1及び第2の突出部と、
前記第1部材及び前記第2部材のうち他方の部材に備えられ、前記第1及び第2の突出部それぞれと嵌合可能な第1及び第2の嵌合孔、及び、これら第1及び第2の嵌合孔それぞれに通じ、前記第1及び第2の突出部それぞれが通過可能な幅を有する第1及び第2の通し孔と、
を備え、
前記突出部は、前記通し孔を通過することによって前記嵌合孔に嵌合し、
前記所定の軸上には、前記第1の突出部及び前記第1の嵌合孔間の嵌合部分と、前記第2の突出部及び前記第2の嵌合孔間の嵌合部分とが存在する、
ことを特徴とする請求項6に記載の携帯型機器保持クリップ。
【請求項8】
前記第1部材及び前記第2部材は、それぞれ、略直方体状の剛体を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の携帯型機器保持クリップ。
【請求項9】
前記凸部は、前記弾性部の先端に複数備えられ、
これら複数の凸部は前記凹部の複数に同時に嵌合可能であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の携帯型機器保持クリップ。
【請求項10】
前記弾性体は、コイルスプリングを含むことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の携帯型機器保持クリップ。
【請求項11】
前記弾性体は、板ばねを含むことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載に記載の携帯型機器保持クリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−177808(P2008−177808A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8768(P2007−8768)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】